JP2014164866A - フィラメント、および、その製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力を可視光に変換する効率が高いフィラメントの製造方法を提供する。
【解決手段】金属製の基材1を白色散乱体層2で被覆する。白色散乱体層2は、可視光吸収材が添加された白色散乱体粒子で構成されている。白色散乱体粒子は、白色散乱体層の厚み方向について基材1に近い領域21の平均粒径が基材1から遠い領域22の平均粒径よりも小さい。白色散乱体層2は、基材1の赤外光放射を抑制する。これにより、可視光光束効率の高いフィラメントを提供できる。また、白色散乱体層の表面に近い領域の平均粒径を大きくすることにより、反射率を向上させ、赤外光放射をより抑制できる。さらに、基材に近い領域の平均粒径を表面に近い領域よりも小さくすることにより、白色散乱体層と基材との密着性を高めることができる。
【選択図】図1
【解決手段】金属製の基材1を白色散乱体層2で被覆する。白色散乱体層2は、可視光吸収材が添加された白色散乱体粒子で構成されている。白色散乱体粒子は、白色散乱体層の厚み方向について基材1に近い領域21の平均粒径が基材1から遠い領域22の平均粒径よりも小さい。白色散乱体層2は、基材1の赤外光放射を抑制する。これにより、可視光光束効率の高いフィラメントを提供できる。また、白色散乱体層の表面に近い領域の平均粒径を大きくすることにより、反射率を向上させ、赤外光放射をより抑制できる。さらに、基材に近い領域の平均粒径を表面に近い領域よりも小さくすることにより、白色散乱体層と基材との密着性を高めることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、エネルギー利用効率を改善した光源用フィラメントの製造方法に関する。
タングステン等から成るフィラメントを通電して加熱すると、熱放射が起こる。この熱放射を利用した白熱電球が広く用いられているが、その放射の大部分は赤外域で起こる。このため、従来のフィラメントは、可視光放射効率が高くない。特許文献1には、電球ガラスの表面に赤外光反射コートを施し、フィラメントから放射された赤外光を反射してフィラメントに再吸収させ、フィラメントを再加熱して高効率化を図ることが提案されている。
特許文献1に記載の、赤外放射を赤外線反射コートで反射してフィラメントに再吸収させる技術は、フィラメントによる赤外光の反射率が70%と高いために再吸収が効率良く起こらない。
そこで本発明では、反射率の高い白色散乱体でフィラメントを被覆することにより、フィラメントが放射する赤外光をフィラメントに再吸収させる(すなわち、フィラメントの赤外光放射を抑制する)構造を提供する。しかしながら、フィラメントは、2000Kを超えるような高温で使用されるため、金属製のフィラメント基材と白色散乱体との熱膨張係数の違いにより、白色散乱体層がフィラメント基材から剥離しやすいという問題がある。
本発明の目的は、電力を可視光に変換する効率が高いフィラメントを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のフィラメントは、金属製の基材と、基材を被覆する白色散乱体層とを有する。白色散乱体層は、可視光吸収材が添加された白色散乱体粒子で構成されている。白色散乱体粒子は、白色散乱体層の厚み方向について基材に近い領域の平均粒径が基材から遠い領域の平均粒径よりも小さい。表面に近い領域の平均粒径を大きくすることにより、白色散乱体層の表面の反射率を向上させることができる。また、基材に近い領域の平均粒径を表面に近い領域よりも小さくすることにより、白色散乱体層と基材との密着性を高めることができる。
本発明によれば、金属製の基材上に、赤外光放射を抑制した白色散乱体層で覆うことにより、可視光光束効率の高いフィラメントを提供できる。白色散乱体層の表面に近い領域の平均粒径を大きくすることにより、反射率を向上させ、赤外光放射をより抑制できる。また、基材に近い領域の平均粒径を表面に近い領域よりも小さくすることにより、白色散乱体層と基材との密着性を高めることができる。
本発明の一実施形態のフィラメントについて説明する。
<フィラメントの構造>
まず、本発明のフィラメントの構造について図1(a)〜(c)を用いて説明する。本発明のフィラメントは、金属製の基材1と、基材1を被覆する白色散乱体層2とを有し、白色散乱体層2には、可視光領域の光を吸収する可視光吸収材が添加された白色散乱体粒子で構成されている。白色散乱体粒子は、白色散乱体層2の厚み方向について基材1に近い領域21の平均粒径が基材から遠い領域22、23の平均粒径よりも小さい。
まず、本発明のフィラメントの構造について図1(a)〜(c)を用いて説明する。本発明のフィラメントは、金属製の基材1と、基材1を被覆する白色散乱体層2とを有し、白色散乱体層2には、可視光領域の光を吸収する可視光吸収材が添加された白色散乱体粒子で構成されている。白色散乱体粒子は、白色散乱体層2の厚み方向について基材1に近い領域21の平均粒径が基材から遠い領域22、23の平均粒径よりも小さい。
このように白色散乱体粒子は、白色散乱体層2の厚み方向について基材1に近い領域21の平均粒径が、基材1から遠い領域22,23の平均粒径よりも小さいため、基材1への接触面積が大きく、金属製の基材1への密着性が高い。よって、フィラメント使用時に高温(例えば2000K以上)になって熱膨張係数の違いによる応力が生じても、基材から剥離しにくい。また、白色散乱体層2の表面の粒径が大きいため、赤外光領域を含め広い波長範囲で反射率が高い。また、白色散乱体層2は、可視光吸収材が添加されているため、可視光領域の反射率を低下させることができる。
このように、本実施形態のフィラメントは、高い拡散反射性を備えながら、高温になっても金属基材への密着性の高い白色散乱体層を提供することができる。
例えば、白色散乱体層2は、図1(a)〜(c)のように複数層構造とし、表面に近い層ほど平均粒径が大きくなるように構成することができる。図1(a)のフィラメントは、2層構造であり、基材1側の層21は、所定の粒径の白色散乱体粒子で構成され、表面側の層22は、層21の粒子の粒径よりも大きい粒径の白色散乱体粒子で構成されている。図1(b)のフィラメントは、3層構造であり、基材1側の層121、中間の層122、最表面の層123の順に粒径が大きい白色散乱体粒子で構成されている。図1(c)のフィラメントは、3層構造であり、いずれの層も2種類の粒径の白色散乱体粒子が混合された構成であるが、基材1側の層221、中間の層222、最表面の層223の順に平均粒径が大きくなるように2種類の粒径の混合割合が定められている。すなわち、基材1側の層221は、小さい粒径の白色散乱体粒子の割合がもっとも高く、中間の層222、最表面の層223の順に小さい粒径の白色散乱体粒子の割合が小さくなっている。
最表面の層22,123,223は、白色散乱体粒子の平均粒径が1μm以上50μm以下であることが望ましい。平均粒径を1μmにすることにより、光散乱断面積を大きくすることができるため、数十μm程度という成膜が比較的容易な膜厚で十分に高い拡散反射率が得られる。また、平均粒径を50μm以下にすることにより、電気泳動堆積法により白色散乱体層2を成膜することができる。
また、基材に接する層21,121,221は、白色散乱体粒子の平均粒径が1μm未満であることが望ましい。特に、500nm以下であることが望ましい。これにより、金属製の基材1との接触面積が、粒径が大きな白色散乱体粒子よりも大きくなるため、基材との密着性を高めることができる。
なお、複数層構造ではなく、膜厚方向に連続的に粒径が変化する構造にすることも可能である。
このような構造のフィラメントを電流供給等により加熱すると、フィラメントから幅広い波長の光が放射される。放射された光のすべてが白色散乱体層で反射され、一旦フィラメントに戻されるが、効率良く高温加熱された白色散乱体層中の可視光吸収材からは可視光のみが放射される。よって、系全体としては、赤外光放射を抑制し、可視光のみを放射していることになり、高効率に可視光を放射することができる。この原理については、後で詳しく説明する。
フィラメントの基材は、高い融点を有する金属、例えば、HfC(融点4160K)、TaC(融点4150K)、ZrC(融点3810K)、C(融点3800K)、W(融点3680K)、Re(融点3453K)、Os(融点3327K)、Ta(融点3269K)、Mo(融点2890K)、Nb(融点2741K)、Ir(融点2683K)、Ru(融点2583K)、Rh(融点2239K)、V(融点2160K)、Cr(融点2130K)、およびZr(融点2125K)、のうちのいずれかを含有する材料によって形成する。
白色散乱体層を構成する白色散乱体粒子としては、セラミックス粒子を用いる。セラミックス粒子を構成するセラミックスとしては、融点が2000K以上のものを用いる。例えば、ルテチア(Lu2O3)、ハフニア(HfO2)、イットリア(Y2O3)、トリア(ThO2)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO2)、イッテルビア(Yb2O3)、ストロンチア(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化ホルミウム(Ho2O3)、窒化ジルコニア(ZrN)、窒化チタン(TiN)、および、窒化ホウ素(BN)、のうちのいずれかを含有するものを用いる。これらのセラミックス粒子(白色散乱体)は、赤外から可視領域にわたって吸収がほとんどなく非常に高い反射特性を示すからである。また、数多くある白色散乱体の中で上記白色散乱体は、フィラメントが効率よく発光する2000K以上の温度領域であっても高い反射特性を維持する。
可視光吸収材としては、不純物元素であるCe、Eu、Mn、Ti、Sn、Tb、Au、Ag、Cu、Al、Ni、W、Pb、As、Tm、Ho、Er、DyおよびPr等を用いることができる。白色散乱体への不純物元素のドープ濃度は、例えば、0.0001%〜10%に設定する。
また、フィラメントの基材は、予め表面が鏡面に研磨加工されていることが好ましい。例えば、波長4000nm以上の赤外光の反射率が90%以上であることが好ましい。より短波長の赤外光、例えば波長1000nm以上における赤外光の反射率が90%以上であると、更なる光束効率の向上を期待することが出来るため好ましい。基材の表面粗さは、中心線平均粗さRaが1μm以下、最大高さRmaxが10μm以下、および、十点平均粗さRzが10μm以下、のうちの少なくとも1つを満たすことが好ましい。
<放射の原理>
次に、本発明の製造方法で製造されるフィラメントの放射の原理を、黒体放射におけるキルヒホッフの法則に基づいて、以下説明する。
次に、本発明の製造方法で製造されるフィラメントの放射の原理を、黒体放射におけるキルヒホッフの法則に基づいて、以下説明する。
自然対流熱伝達の無い条件下(例えば真空中)における材料(ここではフィラメント)の入力エネルギーに対するエネルギー損失は平衡状態では以下の式(1)で与えられる。
(数1)
P(total)=P(conduction)+P(radiation) ・・・(1)
P(total)=P(conduction)+P(radiation) ・・・(1)
ここで、P (total)は、全入力エネルギー、P(conduction)は、フィラメントに電流を供給するリード線を経て損失されるエネルギー、P(radiation)は、フィラメントが、加熱された温度で外部空間に光を放射して損失するエネルギーである。フィラメントは、その温度が2300K以上の高温になると、リード線を経て損失されるエネルギーはわずか5%程度になり、残りの95%以上のエネルギーは、光放射によって外部にエネルギーが損失されるため、入力電力の殆ど全てのエネルギーを光に変えることができる。しかしながら、従来の一般的なフィラメントから放射される放射光の内、可視光成分の割合は、図2に示したようにわずか10%程度で、大部分が赤外放射光成分であるため、そのままでは効率の良い可視光源とはならない。
上記式(1)におけるP(radiation)の項は一般的に、下記式(2)で記述することができる。
式(2)においてε(λ)は、各波長における放射率、αλ−5/(exp(β/λT)−1)の項は、プランクの放射則を示す。α=3.747×108 Wμm4/m2、β=1.4387×104 μmK、である。また、ε(λ)は、キルヒホッフの法則によって反射率R(λ)と式(3)の関係にある。
(数3)
ε(λ)=1−R(λ) ・・・(3)
式(2)と式(3)を関連付けて議論すると、仮に反射率が全ての波長に亘って1である材料は、式(3)よりε(λ)=0となり、ひいては、式(2)における積分値が0となるため放射による損失が起こらなくなる。この物理的意味は、P(total)=P(conduction)となるため、少量の入力エネルギーでも光放射による損失が無く、フィラメントが非常に高い温度まで達することを意味している。すなわち、本加熱物体を外から見たら、放射がないため、高温か低温か全くわからず、触ってみてはじめてわかる状態である。
ε(λ)=1−R(λ) ・・・(3)
式(2)と式(3)を関連付けて議論すると、仮に反射率が全ての波長に亘って1である材料は、式(3)よりε(λ)=0となり、ひいては、式(2)における積分値が0となるため放射による損失が起こらなくなる。この物理的意味は、P(total)=P(conduction)となるため、少量の入力エネルギーでも光放射による損失が無く、フィラメントが非常に高い温度まで達することを意味している。すなわち、本加熱物体を外から見たら、放射がないため、高温か低温か全くわからず、触ってみてはじめてわかる状態である。
この原理によれば、赤外光領域から可視光領域にわたって広範囲の波長で吸収がなく、反射率が非常に高い特性(すなわち、赤外光領域から可視光領域にわたって放射率が非常に低い特性)を示す白色散乱体層でフィラメント基材を被覆することにより、フィラメントを加熱しても、赤外光領域から可視光領域での放射を抑制できる。しかしながら、本白色散乱体のままでは、可視光領域での放射も抑制されるため、可視光光束効率の良いフィラメントとはならない。そこで、赤外光領域の放射を抑制したまま可視光領域の放射効率を向上させ、可視光光束効率の良いフィラメントとするために、可視光領域の反射率を低減(放射率を増大)させる工夫を凝らす(式(3)参照)。本発明では、可視光領域の反射率を低減させるために、白色散乱体に不純物(可視光吸収材)を添加する。これにより、白色散乱体に可視光領域に吸収帯域を生じさせ、可視光光束効率の高いフィラメントを実現できる。これを具体例をあげて説明する。
Wフィラメントの表面に機械的研磨を施し、表面粗さが、中心線平均粗さRa1μm以下、最大高さRmax10μm以下、および、十点平均粗さRz10μm以下、のうちの少なくとも1つを満たすように鏡面研磨されたWフィラメント(φ2mmの線材)の反射率と、このフィラメントが2500Kに加熱された際に示す放射効率の波長依存特性(放射スペクトル)を図3に示す。なお、図3は、シミュレーションおよび実験により求めたものである。図3のように、このWフィラメントの可視光光束効率は、16.9 lm/Wである。
図3の鏡面研磨Wフィラメント(基材)上に、可視光吸収材を添加していない白色散乱体(Lu2O3)の層で被覆したフィラメントの反射率および放射率(2500K)の波長依存特性を図4に示す。図4は、シミュレーションおよび実験により求めたものである。図4のように、このフィラメントは、白色散乱体層の作用により、紫外光領域、可視光領域および赤外光領域において、反射率が連続してほぼ1と非常に高く、放射率はほぼ0である。このため図3のフィラメントの可視光光束効率は、3.1 lm/Wと、低い数値になっている。なお、図4において、紫外光領域並びに7μm以上の波長における赤外部の低反射率部分は、各々、Lu2O3白色体の伝導帯エネルギー吸収(紫外部)、並びにLu2O3の光学フォノン吸収(赤外部:1TOフォノン、1LOフォノン、2TOフォノン、2LOフォノン、等)によるものである。
これに対し、図3の鏡面研磨Wフィラメント(基材)を、可視光吸収材としてCeを1%程度ドープした白色散乱体(Lu2O3)の層(厚さ100μm)で被覆したフィラメントの反射率の波長依存特性および放射効率(2500K)の波長依存特性(放射スペクトル)を図5に示す。図5は、シミュレーションおよび実験により求めたものである。図5に示すように、Ceをドープしたことにより、視感度曲線のピーク550nm付近を中心とする可視光領域で反射率がゼロに近くなる帯域が生じている。これにより、可視光領域で放射効率が高まっている。また、可視光領域以外の紫外光領域および赤外光領域では、白色散乱体の作用により、反射率がほぼ1の非常に高い値を示している。これにより、赤外光領域の放射効率を0.1以下に抑制できている。このように、可視光領域の反射率を低減した白色散乱体で被覆することにより、本発明のフィラメントは、133.5 lm/Wという非常に高い可視光光束効率が得られる。この可視光光束効率は、従来の白熱電球の略10倍の効率である。
なお、白色散乱体(セラミックス粒子)は、表面に吸着しているOH基(水)、並びに表面の結晶欠陥(ダングリングボンド)が、赤外領域に大きな吸収を作り出すため、これらを除去する処理を予め施しておくことが望ましい。処理方法としては、広く知られた公知の方法を用いることができる。例えば、セラミックス粒子を、NH4F(バッファード弗酸)等により洗浄し、OH基のHをFに置換した後、真空または酸化雰囲気中で1000℃以上の高温で焼成し、OF基を除去されるとともに、結晶欠陥を回復させる処理を繰り返し行う方法を用いる。
<フィラメントの製造方法>
上述してきたフィラメントの製造方法について、以下説明する。
上述してきたフィラメントの製造方法について、以下説明する。
本実施形態では、図6のように、白色のセラミックス粒子50を分散させた溶媒51に、陰極となるフィラメントの基材1と、陽極となる電極53とを浸漬し、基材1と電極53との間に電源54から直流電圧を印加する。これにより、セラミックス粒子50を基材1上に電気泳動により堆積させ、白色散乱体層2を基材1上に成膜する(成膜工程)。
この成膜工程として、所定の平均粒径のセラミックス粒子を用いて、図1(a)〜(c)における基材1側の層21、121、221を形成する工程と、層21,121,221のセラミックス粒子よりも大きな平均粒径のセラミックス粒子を用いて、層22、122、222を形成する工程とを行う。図1(b)、(c)の構造の場合には、さらに大きな平均粒径のセラミックス粒子を用いて、層123,223を形成する工程を行う。
このとき、平均粒径が異なるセラミックス粒子をそれぞれ分散させた溶媒51を用意し、1層堆積させるごとに、分散しているセラミックス粒子の平均粒径が異なる溶媒51に基材1を移動させて順次堆積させていくことが可能である。
また、セラミックス粒子の粒径によって沈降速度が異なることを利用して、一種類の溶媒で膜厚方向に平均粒径の異なる複数層を形成することも可能である。具体的には、粒径の異なる2種類以上のセラミックス粒子を適当な比率で混合し、溶媒51に分散させる。所定の時間放置すると、粒径の大きいセラミックス粒子の多くは沈降し、粒径の小さいセラミックス粒子と少しの粒径の大きいセラミックス粒子が分散している状態となる。この状態で電圧を印加し、電気泳動により粒径の小さいセラミックス粒子と少しの粒径の大きいセラミックス粒子が混合された状態で基材1上に堆積する。これにより、例えば、図1(c)の層221を成膜する。一定膜厚に達したら、溶媒51の中で撹拌子を回転させる等して沈降していた粒径の大きいセラミックス粒子を溶媒51にゆっくり再分散させ始めると、基材1上にその時点で分散していた粒径の小さいセラミックス粒子と粒径の大きいセラミックス粒子とが混合されて電気泳動により基材1上に堆積する。これにより、層221の上に、平均粒径が順次に大きくなる層222、223を堆積させることができる。この方法によれば、膜厚方向に平均粒径が連続的に変化した白色散乱体層2を形成することも可能である。
基材1は、製造すべきフィラメントの形状(例えば、らせん状に巻回された線材)に、予め加工されたものを用いる。陽極として用いる電極53としては、任意の金属(例えばステンレス)を用いることができる。
また、直流電源54の性能および印加電圧や印加時間についても特別な制限はないが、印加電圧が高いほど成膜速度が大きくなり、成膜時間を短縮できる。このため、50V以上の電圧を印加できる環境が実用的には好ましい。なお、電圧の印加時間が長いほど、堆積される膜厚は大きくなる。よって、印加時間の調整することにより、膜厚を制御することができる。
セラミックス粒子50を分散させる溶媒51としては、アルコールを用いることが望ましい。コスト、安全面の観点から、イソプロピルアルコールが特に望ましい。
さらに、アルコール溶媒51に対して、濃度0.1vol%以上5vol%以下の範囲で水を添加することが望ましい。純粋なアルコールは誘電率が低いため、溶媒51とした場合に、電気泳動によるセラミックス粒子50の移動が遅くなってしまうためである。水を濃度0.1vol%以上添加することにより溶媒51の誘電率を高めることができ、電気泳動堆積の成膜速度を高めることができる。ただし、5vol%を超える濃度で添加すると、陽極である基材1上で水の電気分解によるガス発生が激しくなり、セラミックス粒子50の基材1への堆積が阻害される。このため、成膜される白色散乱体層が均質な膜にならずに、多孔質な膜となってしまう。よって、水の濃度は、5vol%以下であることが望ましい。
溶媒51には、添加剤として、硝酸塩を加えることが望ましい。硝酸塩は、セラミックス粒子50の溶媒51中での分散安定性を高め、電気泳動堆積の効率を著しく向上させるためである。セラミックス粒子50の粒径が小さい場合(1μm未満)には、比表面積が大きくなるため、添加濃度は10−3 M(ただし、Mは、mol/Lを意味する)以上であることが好ましい。セラミックス粒子50の粒径が1μm以上50μm以下の場合、硝酸塩の添加濃度は、濃度10−6M以上10−2M以下の範囲に設定することが好ましい。硝酸塩であれば、どのようなものであってもよいが、一例としては、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)を用いることができる。また、セラミックス粒子50が硝酸塩を添加した溶媒51中に一様に分散するよう、電気泳動堆積を行う前に超音波を照射することが望ましい。
白色散乱体層の膜厚は、十分な反射率が得られる厚さであることが望ましい。具体的には、30μm以上の膜厚であることが望ましい。膜厚30μm以上の白色散乱体層を堆積するためには、上述のセラミックス粒子50を分散した溶媒51を用いた場合、75Vの印加電圧で20分以上電気泳動堆積を行えばよい。
なお、白色散乱体膜の耐久性を高めるために、電気泳動堆積後に白色散乱体層の焼成を行う。焼成温度は1500℃以上であることが望ましい。雰囲気や焼成時間については、所望の条件に設定することができる。
可視光吸収材が添加された白色散乱体層を形成するため、可視光吸収材が予めドープされているセラミックス粒子を用いることができる。例えば、可視光吸収材としてCeを用いる場合、Ceの塩(例としてCeCl3)を溶解した溶液をセラミックス粒子を混合し、乾燥させることにより静電的にCe3+をセラミックス粒子に吸着させる。その後、焼成(1500℃)することにより、Ceがドープされているセラミックス粒子を製造することができる。その後、このセラミックス粒子を用いて電気泳動堆積法により白色散乱体層を成膜することにより、可視光吸収材が添加された白色散乱体層を形成できる。
また、セラミックス粒子50として、可視光吸収材が予めドープされていないセラミックス粒子を用いて、図1(a)〜(c)の基材1上に層21,121,221を形成し、可視光吸収材が予めドープされているセラミックス粒子50を用いて最表面層22,123,223を堆積してもよい。図1(b)、(c)の3層構造の場合、中間層122,222は、ドープされているセラミックス粒子であってもドープされていないセラミックス粒子であってもよい。
また、可視光吸収材を添加していないセラミックス粒子を堆積した層の上に、可視光吸収材が含まれる材料(例としてCeCl3の溶液)を塗布し、その後、セラミックス粒子の層を焼結(例えば、1500℃以上)することにより、可視光吸収材が拡散したセラミックス粒子層(白色散乱体層)を形成することもできる。
本発明のフィラメントは、白熱電球のフィラメントやマントルヒータに利用することができる。また、平板状の基材に白色散乱体層を形成し、これを対象物に張り付けることにより、白色耐火材、断熱材として用いることができる。例えば、服の表面に張り付け、耐火服として使用することができる。
本発明の実施例を以下に示す。
タングステン基材1上に、図6を用いて実施形態で説明した電気泳動堆積法により、平均粒径100nmの酸化ルテチウム(Lu2O3)粒子を厚さ20μmで堆積し、その上に、平均粒径3μmの酸化ルテチウムの粒子を厚さ50μmで堆積し、白色散乱体層2を成膜した。その後、白色散乱体層2をアルゴンガス雰囲気下1800℃で1時間焼結した。
比較例として、タングステン基材1上に、電気泳動堆積法により、平均粒径3μの酸化ルテチウムの粒子を厚さ50μmで堆積し、1層構造の白色散乱体層を成膜した。その後、白色散乱体層2をアルゴンガス雰囲気下1800℃で1時間焼結した。
ただし、実施例および比較例のいずれもセラミックス粒子には、可視光吸収材は添加していない。
焼結後の実施例の試料の写真を、図7(a)に示す。実施例の試料は、基材1に対して白色散乱体層2が密着性を保持し、剥離していなかった。これに対し、焼結後の比較例の試料の写真を、図7(b)に示す。基材に対して、白色散乱体層が剥離していた。
さらに、実施例の試料に通電加熱し、2000K以上に加熱したが、白色散乱体層2は、その形状を維持し、剥離は生じなかった。これにより、実施例の試料は、高温に加熱されても剥離を生じないことが確認された。
1…基材(陰極)、50…セラミックス粒子、51…溶媒、53…陽極(電極)、54…電源
Claims (11)
- 金属製の基材と、前記基材を被覆する白色散乱体層とを有し、
前記白色散乱体層は、可視光吸収材が添加された白色散乱体粒子で構成され、前記白色散乱体粒子は、前記白色散乱体層の厚み方向について前記基材に近い領域の平均粒径が前記基材から遠い領域の平均粒径よりも小さいことを特徴とするフィラメント。 - 請求項1に記載のフィラメントにおいて、前記白色散乱体層は、複数層構造であり、最表面層は、前記白色散乱体粒子の平均粒径が1μm以上50μm以下であることを特徴とするフィラメント。
- 請求項2に記載のフィラメントにおいて、前記白色散乱体層を構成する前記複数層のうち前記基材に接する層は、前記白色散乱体粒子の平均粒径が1μm未満であることを特徴とするフィラメント。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフィラメントであって、前記白色散乱体粒子は、ルテチア、ハフニア、イットリア、トリア、マグネシア、ジルコニア、イッテルビア、ストロンチア、酸化カルシウム、酸化ベリリウム、酸化ホルミウム、窒化ジルコニア、窒化チタン、および、窒化ホウ素、のうちのいずれかを含有することを特徴とするフィラメント。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフィラメントであって、前記可視光吸収材は、Ce、Eu、Mn、Ti、Sn、Tb、Au、Ag、Cu、Al、Ni、W、Pb、As、Tm、Ho、Er、Dy、および、Prのうちのいずれか一つを含むことを特徴とするフィラメント。
- 金属製の基材を、可視光吸収材が添加された白色散乱体層で被覆したフィラメントの製造方法であって、
白色のセラミックス粒子を分散させた溶媒に、陰極となる前記基材と、陽極となる電極とを浸漬し、前記基材と前記電極の間に電圧を印加することにより、前記セラミックス粒子を前記基材上に電気泳動により堆積させ、前記白色散乱体層を形成する成膜工程を含み、
前記成膜工程は、所定の平均粒径のセラミックス粒子を前記基材上に堆積させ、第1の層を形成する工程と、前記所定の平均粒径よりも大きな平均粒径のセラミックス粒子を前記第1の層の上に堆積させ、第2の層を形成する工程とを含むことを特徴とするフィラメントの製造方法。 - 請求項6に記載のフィラメントの製造方法であって、前記溶媒に分散された前記セラミックス粒子の粒径は、複数種類であり、
前記成膜工程は、前記複数種類のセラミックス粒子を前記溶媒に分散させた後、沈降させ、この状態で前記基材と前記電極の間に電圧を印加して前記第1の層を形成し、前記溶媒を撹拌して前記セラミックス粒子を再分散させ、前記基材と前記電極の間に電圧を印加して前記第2の層を形成することを特徴とするフィラメントの製造方法。 - 請求項6または7に記載のフィラメントの製造方法であって、前記第2の層の前記セラミックス粒子の平均粒径は、1μm以上であることを特徴とするフィラメントの製造方法。
- 請求項6ないし8のいずれか1項に記載のフィラメントの製造方法であって、前記成膜工程の後、前記白色散乱体層を加熱し、前記セラミックス粒子同士を焼結する工程を行うことを特徴とするフィラメントの製造方法。
- 請求項6ないし9のいずれか1項記載のフィラメントの製造方法であって、前記セラミックス粒子には、前記可視光吸収材が予めドープされていることを特徴とするフィラメントの製造方法。
- 請求項6ないし8のいずれか1項記載のフィラメントの製造方法であって、前記成膜工程の後、堆積した前記セラミックス粒子の層の上に、前記可視光吸収材が含まれる材料を塗布し、前記セラミックス粒子の層を焼結することにより前記可視光吸収材を前記層に拡散させる焼結拡散工程をさらに含むことを特徴とするフィラメントの製造方法。
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