JP2014162961A - 錫微粒子含有液の製造方法及びインクジェット用錫インク - Google Patents
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Abstract
【課題】極性溶媒に分散安定な錫微粒子を含んだ錫微粒子含有液の製造方法、及びそれを用いた錫インクを提供する。
【解決手段】炭素数6以上であり、かつ、沸点180℃以上であるアルコール中に、軟化点が120〜160℃であるロジンと2−エチルヘキサン酸錫(II)とを溶解させた混合液を、還元処理してロジンで被覆した錫微粒子を析出させることを特徴とする錫微粒子含有液の製造方法であり、また、得られた錫微粒子含有液の23℃における粘度を2〜1000mPa・sに調製したことを特徴とするインクジェット用錫微粒子含有インクである。
【選択図】なし
【解決手段】炭素数6以上であり、かつ、沸点180℃以上であるアルコール中に、軟化点が120〜160℃であるロジンと2−エチルヘキサン酸錫(II)とを溶解させた混合液を、還元処理してロジンで被覆した錫微粒子を析出させることを特徴とする錫微粒子含有液の製造方法であり、また、得られた錫微粒子含有液の23℃における粘度を2〜1000mPa・sに調製したことを特徴とするインクジェット用錫微粒子含有インクである。
【選択図】なし
Description
本発明は、分散安定な錫微粒子含有液の製造方法、及び、これによって得られた錫微粒子含有液を用いてなるインクジェット用錫インクに関する。詳しくは、平均粒子径が1〜150nmである錫微粒子を含んで分散安定性に優れ、インクジェットヘッドにて塗工が可能なインクジェット用錫インクを得ることができる錫微粒子含有液の製造方法、及びそのインクジェット用錫インクに関するものである。
フリップ実装に用いられる接続用金属材料としては、錫を主成分とした組成によるマイクロボールによる微細バンプ形成方法が主に利用されている。その他にもスクリーン印刷法といった印刷技術を用いたバンプ形成法も知られている。これらの方法は、バンプ形成の生産性という点で高い特徴を有するが、今後、電子部材の小型化や実装密度の高密度化には、バンプピッチの狭ピッチ対応が望まれている。
近時ではマイクロボール法やスクリーン印刷法でのバンプはバンプピッチ80μm未満が限界点であり、これ以上の狭ピッチ化は技術的に困難である。この他にも例えば無電解メッキ法を利用して狭ピッチ化検討が進められるなどの事例もあるが、無電解メッキ法を利用する方法では製造工程数が多くリードタイムが長くなり、且つコスト負荷も多いといった問題がある。
従って、今後は狭ピッチ対応が可能で且つシンプルな工程によるバンプ形成技術が求められており、この要求に応える方法として印刷技術を用いるプロセスの期待が高まっている。印刷技術を用いることで、基板にインクを精密塗布してリフロー、洗浄するという簡易な省工程での生産が可能となる。印刷法としては前記スクリーン印刷法やインクジェット印刷法が注目されている。これら印刷技術を使用する場合は、印刷プロセス(塗工)、リフロープロセス(焼成)に適合できるインキの選定が重要となる。
すなわち、インクは微細な精密塗工を行う必要性から、ナノサイズの錫粒子を分散させた形態が望まれる。粒子がナノサイズになるとミクロン粒子よりもファインピッチの描画が可能となるだけでなく、溶媒の最適化により粒子がブラウン運動で溶媒中に浮遊して流動性を有するインクの形態を示す。また、粒子サイズがナノオーダーレベルまで小さくなると金属の融点が低下する性質も期待できることから、焼成プロセスが必要となる材料加工がある場合は焼成プロセス自体の低温化も期待できる。
ところが、一般的には、ナノ金属微粒子は比表面積が大きく表面活性が高いので金属微粒子がそのままの状態で安定な粒子となっていることはなく、分散安定化させるために製造過程においてナノ粒子表面を酸化皮膜や有機物で覆って凝集を阻害させる処理が必須であり、このような保護層が粒子表面に存在することで安定したナノ粒子粉末としている。しかしながら、有機物からなる保護層は、ナノ金属微粒子を焼成してバンプを形成する場合、有機物が残存すると導通不良を引き起こす恐れがあるため事前に除去する必要がある。その場合焼成と同時に除去するか、焼成時に金属と分離した後、洗浄等により除去するようにすると効率的であるが、従来ナノ金属微粒子製造において使用されている各種分散剤等の有機物は、上記焼成時においても除去が困難であり、同時にフラックス洗浄剤等による洗浄においても除去しにくいという欠点があった。そこで、一つの試みとして、従来保護層の形成に使用されてきた有機物の代わりに、焼成によって容易に金属と分離し、かつ、洗浄剤等で容易に除去できる材料として、フラックス成分としても用いられるロジンを用いることができれば非常に優位である。
一方、インクジェット印刷法においては、一般的な工業用ピエゾ方式のインクジェット印刷ではピコリットルオーダーの微小液滴を吐出できるが、より微小なシングルミクロンレベルのパターニング及び接合方法を考えた場合は、フェムトリットルオーダーの液滴を吐出できる静電分注方式のインクジェット装置用いた微細パターニングが望まれる。しかしながら、静電分注方式の場合はインク自体の極性状態が印刷装置からのインク吐出性に影響を及ぼすことから、インク材料設計の観点からは、溶媒はアルコールなどの極性溶媒を選択することが好ましい(但し、吐出可能であれば溶媒は水系溶媒でもよい)。ところが、ナノ金属微粒子の保護層として、ロジンを使用した場合、一般的にフラックスとして使用されているロジン自体が水に溶けにくい性質を持つため、静電分注方式のインクジェット装置を使用して微細なバンプを形成するには適さないという問題があった。
例えば従来の方法について、特許文献1では、錫微粒子の保護剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)やPVA(ポリビニルアルコール)を好適に用いる方法が開示されている。しかしながら、この特許文献1記載の発明は、液晶ディスプレイのブラックマトリックス材料等に用いられる黒色材料としての錫微粒子の製造方法であって、フリップ実装に用いられる接続用金属材料に関するものではなく、保護剤を焼成した後の残渣有機物分の除去については検討されていない。また、この錫ナノ粒子を含むインクジェットインクは、非極性溶媒でのインキ化が主たる目的であり、極性溶媒は対象範囲外であるので静電分注方式のインクジェット印刷には利用することができない。
また、この特許文献1において、錫微粒子に対する保護剤については、末端にアミノ基を有するアミン化合物としてC8〜C14のアルキルアミン、またはヒドロキシル基を有する化合物を利用して、被覆剤分子層を設けることが好ましいとあり、ロジンで直接錫粒子を被覆するものではない。更には、フラックス成分として水添ロジン(分子量304)を含有させたインクを調製しているが、これは、非極性溶媒のインク中に混合しているのみであって、合成段階から直接錫微粒子自身の保護層を形成し、極性溶媒中に安定分散化するものではない。
特許文献2には、インクジェット方式に適用できるはんだ接合材料が紹介されている。しかしながら、金属粒子の大きさは0.5μm以上2.0μm以下となっている。一般的に150nmを超える粒子径の場合、インクジェット方式での印刷では安定吐出が難しくなり、例えば、本発明が適用できる静電分注式インクジェット装置での印刷においては容易に粒子がノズル詰まりを起こすことが予測される。
ナノオーダーの金属錫微粒子を含有した狭ピッチ用バンプは、静電分注式インクジェット装置のような印刷装置でピコリットルもしくはフェムトリットルオーダーの微小な液滴を吐出して印刷後焼成することで形成できる。金属錫の融点が230℃程度であることから、焼成温度は通常260℃前後、高くても300℃以下の温度で行うことが望ましい。しかしながら、焼成工程において、金属の表面や内部の有機物成分の大部分が分解消失しないと、次の洗浄工程後においても樹脂残りという不具合が生じる。そのため、インクの焼成後に粒子表面の有機物を少なくするインクの設計、もしくは有機物を除去できるインクの設計が課題となっている。
また、ロジンを金属微粒子の分散剤に用いる場合、ロジンを均一に溶解し、かつ、そのままインクジェット用インクとして使用するために適切な極性溶媒の選択が技術的課題となっている。
本発明は、上記のような従来技術の問題を鑑みてなされたものであり、極性溶媒に分散安定な錫微粒子を含んだ錫微粒子含有液の製造方法、及びそれを用いた錫インクを提供することを目的とする。具体的には、錫微粒子の合成段階で有機物であるロジンを共存させることによって、極力不要な有機物成分の排除を図った錫インクを提供するものである。
本発明者らは、このような課題を解決するために、錫インクを形成する錫微粒子に対して、錫微粒子の合成段階から有機バインダーや溶媒の影響を調べて、インクジェット用インクとしての最適な組成設計を行った。その結果、インク中で、錫微粒子表面を直接ロジンで保護する合成方法によれば、より良好な分散性および熱分解特性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、炭素数6以上であり、かつ、沸点180℃以上であるアルコール中に、軟化点が120〜160℃であるロジンと2−エチルヘキサン酸錫(II)とを溶解させた混合液を、還元処理してロジンで被覆した錫微粒子を析出させることを特徴とする錫微粒子含有液の製造方法である。
また、本発明は、炭素数6以上であり、かつ、沸点180℃以上であるアルコール中に、軟化点が120〜160℃であるロジンと2−エチルヘキサン酸錫(II)とを溶解させた混合液を、還元処理してロジンで被覆した錫微粒子を析出させ、該錫微粒子含有液の23℃における粘度を2〜1000mPa・sに調製したことを特徴とするインクジェット用錫微粒子含有インクである。
インクジェット印刷において、インクは微小液滴になるため、揮発性の高い水やアルコールではインクジェット装置のノズル面で乾燥してしまうことから、本発明で用いる極性溶媒(アルコール)の沸点は180℃以上であり、好適には、2−エチルヘキサノールであるのがよい。また、インクジェット方式での印刷における安定吐出を考慮して、錫微粒子の平均粒子径が1〜150nm、好ましくは1〜100nmであるのがよい。なお、ここで言う錫微粒子の平均粒子径は、粒径アナライザー(動的光散乱法による粒度分布計;大塚電子製FPAR−1000)にて実計測し、分散液中のニッケル粒子の平均一次粒子径(流体力学的径)を光子相関法で求めた自己相関関数によりキュムラント法での解析によって得た。また、錫微粒子含有液の23℃における粘度は、E型粘度計(コーンプレート型の回転粘度計;東機産業製)を用いて、23℃での粘度測定を行った。
本発明によれば、錫微粒子表面を直接ロジンで保護することによって、分散安定性及び熱分解特性に優れた錫微粒子含有液を得ることができる。しかも、得られた錫微粒子含有液では、錫微粒子が極性溶媒中に分散していることから、そのまま静電方式のインクジェットヘッドによる安定吐出が可能になる。特に、この錫微粒子含有液を用いて得られたインクジェット用錫微粒子含有インクでは、ロジンを錫粒子の保護剤とすることで、従来のPVP(ポリビニルピロリドン)等と比較して熱分解性を向上させることができ、洗浄などによる処理にて除去を容易とすることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明の錫微粒子含有液の製造方法では、ロジンと2−エチルヘキサン酸錫(II)とを、炭素数6以上であり、かつ、沸点180℃以上であるアルコール中に溶解させて共存させる。このうちロジンは、水には不溶であるが特定の有機溶媒には可溶であり、軟化点が120〜160℃の固形物を用いるのが好適である。ロジンが良好に溶解する母溶媒を用いることにより、有機溶媒中で均一な金属微粒子が還元反応で生成させることができ、例えば静電式インクジェット装置に適した錫インクが得られるようになる。
先ず、本発明の錫微粒子含有液の製造方法では、ロジンと2−エチルヘキサン酸錫(II)とを、炭素数6以上であり、かつ、沸点180℃以上であるアルコール中に溶解させて共存させる。このうちロジンは、水には不溶であるが特定の有機溶媒には可溶であり、軟化点が120〜160℃の固形物を用いるのが好適である。ロジンが良好に溶解する母溶媒を用いることにより、有機溶媒中で均一な金属微粒子が還元反応で生成させることができ、例えば静電式インクジェット装置に適した錫インクが得られるようになる。
ここで、本発明で用いられるロジンについては、所定の有機溶媒に可溶であれば天然ロジンがそのまま使用でき、また、各種誘導体に加工されたものを使用することもできる。天然ロジンは、松の木に含まれる松脂と呼ばれる天然樹脂であって、アビエチン酸を主成分としている。組成式C20H30O2で表され、分子量302の3環性ジテルペン類が主成分であり、類似した化学構造の樹脂酸が10種類程度混ざった形でロジンを構成している。ロジンは採取方法により三つの方式で生産されており、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンの3種類に分類されている。3種類のロジン共にアビエチン酸が主成分であるが、それぞれに含まれている成分はその割合が異なっている。また、天然ロジンのほかに各種変性ロジンも使用できる。例えば、共役二重結合部をジエン反応によるマレイン化ロジン、二重結合部を水素化した水添ロジン、カルボン酸部をエステル化したエステル化ロジン、その他金属塩による処理、不均化処理など変性した誘導体を使用することができる。これらの天然ロジン、各種変性ロジンは、他のオリゴマー類と比較して分子量が小さく分子量分布が狭いことから各種物質との相溶性が良好である。また、Tg(ガラス転移温度)以下では脆く、加熱すると容易に流動性が生じ、低粘度化するためはんだフラックスとしてもよく利用される樹脂である。化合物としての融点は170℃前後を示すが、混合物であることから融点降下の影響を示したり、微量に含まれているテレビン油や中性成分の影響でやや低めの軟化点を示す特徴を有している。本発明で用いられるロジンの好ましい軟化点としては120〜160℃の範囲であり、この範囲より低いと極性溶媒に過剰に溶解しやすくなり錫微粒子に対する分散安定効果が低下する。反対にこの範囲より高いと極性溶媒に溶解しにくくなり、還元反応を阻害したり、流動性が低下するため、ロジンが本来有するフラックス効果が低下したりする。なお、ここでいう「軟化点」とはJIS K-5902に準じた測定方法にて定義されるものであり、実際にロジンが流動開始する温度である。
本発明における錫微粒子含有液の合成に用いる溶媒は、錫化合物である2−エチルヘキサン酸錫(II)とロジンとを溶解することができるアルコール溶媒である必要がある。単に極性基を有していればよいということではなく、インクジジェットインク化を考えた場合には、沸点が180℃以上である1−オクタノール、1−デカノール、2−エチルヘキサノールなどの高級アルコールであることが吐出安定性の点から望ましく、吐出−着弾後に速やかにインクが乾燥するように沸点が300℃以下であることが実用上望ましい。これらの中では、特に2−エチルヘキサノールが最も好ましい。なお、エタノールなど沸点の低い溶媒も合成に用いる事はできるが、そのまま合成液をインクジェットインクにした場合にはインクジェット装置のノズル先端部で溶媒が揮発し、ノズル面が乾いて吐出不良を起こす可能性があるので好ましくない。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのアルコールの一種であるグリコール(ジオール)は、2−エチルヘキサン酸錫(II)を溶解することができないことから合成には利用できない。さらに、グリセリンもグリコール溶媒と同様の理由で合成には利用できない。
一般に、金属ナノ粒子の湿式合成には、金属錯体の分解法と金属イオンの還元法との2種類が知られており、いずれも前駆体から0価原子を取り出す方法である。このうち、金属錯体の分解法は、溶媒中の金属錯体を高温に加熱することで熱分解反応を起こして金属ナノ粒子を得る方法である。しかしながら、本発明で用いる錫錯体においては、錫の融点が230℃付近であり、この温度以下での加熱条件しか採用できない。さらには、錫のナノ粒子サイズ効果による融点降下により、理論上、錫の融点は5nmでは160℃以下になるため、可能な限り低温で錫ナノ粒子を得るため還元剤を用いた還元法を採用した。金属イオンの還元法においては、有機酸、アルコール、ポリオール、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素、ジボランなどを還元剤として利用される。還元力の強い還元剤としてはヒドラジン、水素化ホウ素アルカリ金属塩、ジボランなどが用いられている。水素ガスも金属ナノ粒子の還元剤として用いる事ができる。遷移金属ナノ粒子の調製においては沸点がより高いアルコールを用いたポリオール法がよく利用される。そのほか、クエン酸などの有機酸によるイオンの還元は穏やかな方法として利用されている。アルコール還元法は良好な触媒を調製する方法として知られている。
本発明においては、常温でアルコール溶媒中に2−エチルヘキサン酸錫(II)とロジンとを溶解させたのち、撹拌しながら還元剤を添加することで還元反応により錫イオンを錫ナノ粒子に還元させる。このときの還元剤の使用量は、ヒドラジン等の強い還元剤を使用する場合は2−エチルヘキサン酸錫(II)1モルに対して1〜1.1モルの範囲であることが好ましい。この範囲より少ないと低温での還元反応のため還元反応の進行が遅くなり、また、この範囲より多くてもそれ以上反応速度が上がらず、かえって余剰の還元剤の除去に手間がかかるため好ましくない。また、ロジンの添加量としては、2−エチルヘキサン酸錫(II)に対して2〜5質量%の範囲が好ましい。この範囲より少ないと金属ナノ粒子の分散安定が得られず、この範囲より多いと粒子表面に作用しない余剰なロジンを洗浄除去する工程が必要となるため好ましくない。反応においては常温で反応を実施して差し支えないが、加熱する場合は錫ナノ粒子の融点効果を考慮して160℃未満が好ましい。反応時間は反応液の濃度、還元剤の種類等で変わるが、おおよそ30分〜3時間で完了する。
得られた反応液は溶媒を追加する等の方法で粘度を調整した後そのままインクジェットインクとして用いることもできし、必要により、遠心分離機にかけて金属ナノ粒子を沈降させ、上澄みを除去したのち、アセトン等により洗浄することで還元剤、余剰のロジンなどの不要な有機物を洗浄除去し、再度溶媒を添加して分散し、沈降物を1μm程度のメッシュでろ別により除くようにしてインクジェットインクとしてもよい。このときインクジェットインクの粘度は2〜1000mPa・sにする。この範囲より低いとインク吐出時に液滴が分離せず所望のドットが印字できないことがあり、また、この範囲より大きいと、静電式容量式インクジェット装置の吐出可能粘度を超えるので印字ができない。粘度範囲を調整する手段は溶媒を添加して希釈する、あるいは、溶媒粘度の異なる他の溶媒に置換する等の方法がある。
このようにして得られたインクジェット用錫粒子含有インクはバンプ形成用インクとして利用することができる。バンプ形成用インクとして用いる場合は、錫粒子含有インク中の錫の含有割合として10〜20質量%濃度のインクを調整し、静電容量式インクジェット方式にて0.1〜1fl(フェムトリットル)の吐出量にて10〜100回重ね印字することにより必要量の錫粒子を含有するパターンを印字したのち、ギ酸蒸気等の還元雰囲気下ホットプレート上で200〜260℃で10〜60分間焼成したのち、フラックス洗浄液で残渣の有機物を除去することで10〜60μm径のバンプを形成することができる。
以下、実施例等に基づき、本発明をより具体的に説明する。なお、特に断りのない限り、部は質量部を表し、%は質量%を表す。また、分散液の調製及び評価、並びにインクジェットインキの評価方法は、以下のとおりである。
(溶解性、還元性)
評価は、均一に粒子合成反応が行えるかどうかを金属液の調製(混合)状態で判定した。目視で良好に各原料成分が濁ることなく透明に溶解しているものは溶解性がよく錫合成ができる(○)、また、各原料が溶媒中に溶解しないで馴染まず原料成分が分離沈降したり、金属液が濁ったりする状態は錫合成ができない(×)と判定評価した。また、還元剤を添加したのち、灰褐色の錫微粒子が析出し、均一に分散しているかどうかを目視で観察した。
評価は、均一に粒子合成反応が行えるかどうかを金属液の調製(混合)状態で判定した。目視で良好に各原料成分が濁ることなく透明に溶解しているものは溶解性がよく錫合成ができる(○)、また、各原料が溶媒中に溶解しないで馴染まず原料成分が分離沈降したり、金属液が濁ったりする状態は錫合成ができない(×)と判定評価した。また、還元剤を添加したのち、灰褐色の錫微粒子が析出し、均一に分散しているかどうかを目視で観察した。
(錫粒子の同定、粒径測定)
粒子合成後の合成液中の粒子については、合成液を遠心分離にて沈降させ、アセトンで洗浄を行い、乾燥後に得られた錫微粒子粉末をX線回折装置(XRD)(リガク社製)にて錫の同定を行った。同様に錫微粒子粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製:S4700)を用いて3万倍の倍率で観察し、電子顕微鏡写真より観察された錫微粒子の数平均の粒径を求めた。
粒子合成後の合成液中の粒子については、合成液を遠心分離にて沈降させ、アセトンで洗浄を行い、乾燥後に得られた錫微粒子粉末をX線回折装置(XRD)(リガク社製)にて錫の同定を行った。同様に錫微粒子粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製:S4700)を用いて3万倍の倍率で観察し、電子顕微鏡写真より観察された錫微粒子の数平均の粒径を求めた。
(粘度測定)
インクジェットインクについては、E型粘度計(コーンプレート型の回転粘度計;東機産業製)を用いて、23℃での粘度測定を行った。得られた結果が2〜1000mPa・sであれば、静電式パターニング装置(インクジェット印刷法)の吐出に適すると判断することができる。
インクジェットインクについては、E型粘度計(コーンプレート型の回転粘度計;東機産業製)を用いて、23℃での粘度測定を行った。得られた結果が2〜1000mPa・sであれば、静電式パターニング装置(インクジェット印刷法)の吐出に適すると判断することができる。
(インクジェット(IJ)吐出性)
得られたインキを、静電式パターニング装置(インクジェット印刷法)(浜松ナノテクノロジー社製)を用いて10plの液滴を100滴吐出したところで吐出評価を行った。このとき、静電式パターニング装置のノズルからインキが最後まで吐出できたものは吐出性良好(○)、また、ノズルにインキが詰まるなどしてインキが吐出できなかったものは吐出性不良(×)と評価した。
得られたインキを、静電式パターニング装置(インクジェット印刷法)(浜松ナノテクノロジー社製)を用いて10plの液滴を100滴吐出したところで吐出評価を行った。このとき、静電式パターニング装置のノズルからインキが最後まで吐出できたものは吐出性良好(○)、また、ノズルにインキが詰まるなどしてインキが吐出できなかったものは吐出性不良(×)と評価した。
(実施例1)
金属成分液の調製として、2−エチルヘキサン酸錫(II)(和光純薬工業 試薬)5.0gを2−エチルヘキサノール(和光純薬工業 試薬特級)5.0gに溶解し、この溶液に、2−エチルヘキサノールにて1%濃度に調製したロジン溶液をロジン(荒川化学工業製 商品名マルキードNo.34)が0.1g(ロジン2−エチルヘキサノール溶液10.0g)となるよう加えて、さらに2−エチルヘキサノールを5.0g加えて攪拌した。その後、析出する錫微粒子の核として、この溶液にエチレングリコール(関東化学 試薬特級)にて0.5%濃度に調製した硝酸銀(和光純薬工業 試薬特級)を硝酸銀が0.025g(硝酸銀エチレングリコール溶液5.0g)となるようさらに加えた。このときの溶液は不溶物のない透明な液体であった。その後、テトラヒドロほう酸ナトリウム(和光純薬工業 試薬)0.5gと2−エチルヘキサノール5.0gを別の容器に入れて混合し、前記の調整した金属成分液をこれに攪拌させながら加え、2時間攪拌した。
金属成分液の調製として、2−エチルヘキサン酸錫(II)(和光純薬工業 試薬)5.0gを2−エチルヘキサノール(和光純薬工業 試薬特級)5.0gに溶解し、この溶液に、2−エチルヘキサノールにて1%濃度に調製したロジン溶液をロジン(荒川化学工業製 商品名マルキードNo.34)が0.1g(ロジン2−エチルヘキサノール溶液10.0g)となるよう加えて、さらに2−エチルヘキサノールを5.0g加えて攪拌した。その後、析出する錫微粒子の核として、この溶液にエチレングリコール(関東化学 試薬特級)にて0.5%濃度に調製した硝酸銀(和光純薬工業 試薬特級)を硝酸銀が0.025g(硝酸銀エチレングリコール溶液5.0g)となるようさらに加えた。このときの溶液は不溶物のない透明な液体であった。その後、テトラヒドロほう酸ナトリウム(和光純薬工業 試薬)0.5gと2−エチルヘキサノール5.0gを別の容器に入れて混合し、前記の調整した金属成分液をこれに攪拌させながら加え、2時間攪拌した。
攪拌後、還元反応により得られた錫合成液を1μmフィルターで通液したものを、錫微粒子を含有する分散液として回収した。
(比較例1)
実施例1の錯化剤(2−エチルヘキサン酸錫(II))を塩化錫(II)(無水)(和光純薬工業社製 試薬)に変更した以外は実施例1と同様にしたところ、塩化錫(II)(無水)が2−エチルヘキサノールに不溶であったため、実施例1のように錫粒子を合成することができなかった。
実施例1の錯化剤(2−エチルヘキサン酸錫(II))を塩化錫(II)(無水)(和光純薬工業社製 試薬)に変更した以外は実施例1と同様にしたところ、塩化錫(II)(無水)が2−エチルヘキサノールに不溶であったため、実施例1のように錫粒子を合成することができなかった。
(比較例2)
実施例1の還元剤(テトラヒドロほう酸ナトリウム)をヒドロキノン(和光純薬工業社製 試薬)に変更した以外は実施例1と同様にして分散液を回収した。得られた分散液を目視にて確認したところ、反応溶液の色は通常錫粒子が生成すると濃い灰褐色に変化するが、まったく変化せず、ヒドロキノンでは錫粒子の還元反応が起こらなかった。
実施例1の還元剤(テトラヒドロほう酸ナトリウム)をヒドロキノン(和光純薬工業社製 試薬)に変更した以外は実施例1と同様にして分散液を回収した。得られた分散液を目視にて確認したところ、反応溶液の色は通常錫粒子が生成すると濃い灰褐色に変化するが、まったく変化せず、ヒドロキノンでは錫粒子の還元反応が起こらなかった。
(比較例3)
実施例1の粒子保護材ロジンをN,N,N‘,N’−テトラキス−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(東京化成工業社製 試薬)に変更した以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。得られた分散液を目視にて確認したところ、反応溶液の色が濃い灰褐色に変化していくことが認められて還元反応は起こったが、しばらくして錫粒子の凝集物が多く見られるようになった。ほとんどが沈殿し、上澄みがほぼ透明となった。
実施例1の粒子保護材ロジンをN,N,N‘,N’−テトラキス−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(東京化成工業社製 試薬)に変更した以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。得られた分散液を目視にて確認したところ、反応溶液の色が濃い灰褐色に変化していくことが認められて還元反応は起こったが、しばらくして錫粒子の凝集物が多く見られるようになった。ほとんどが沈殿し、上澄みがほぼ透明となった。
(比較例4)
実施例1の粒子保護材ロジンを没食子酸(アルドリッチ社製 試薬)に変更した以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。没食子酸が2−エチルヘキサノールに不溶であったため、実施例1のように錫粒子を合成することができなかった。
上記実施例1及び比較例1〜4に関する情報をまとめて表1に示す。
実施例1の粒子保護材ロジンを没食子酸(アルドリッチ社製 試薬)に変更した以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。没食子酸が2−エチルヘキサノールに不溶であったため、実施例1のように錫粒子を合成することができなかった。
上記実施例1及び比較例1〜4に関する情報をまとめて表1に示す。
Claims (4)
- 炭素数6以上であり、かつ、沸点180℃以上であるアルコール中に、軟化点が120〜160℃であるロジンと2−エチルヘキサン酸錫(II)とを溶解させた混合液を、還元処理してロジンで被覆した錫微粒子を析出させることを特徴とする錫微粒子含有液の製造方法。
- 沸点180℃以上であるアルコールが、2−エチルヘキサノールである請求項1記載の錫微粒子含有液の製造方法。
- 炭素数6以上であり、かつ、沸点180℃以上であるアルコール中に、軟化点が120〜160℃であるロジンと2−エチルヘキサン酸錫(II)とを溶解させた混合液を、還元処理してロジンで被覆した錫微粒子を析出させ、該錫微粒子含有液の23℃における粘度を2〜1000mPa・sに調製したことを特徴とするインクジェット用錫微粒子含有インク。
- 錫微粒子の平均粒子径が1〜150nmである請求項3記載のインクジェット用錫微粒子含有インク。
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JP2013035718A JP2014162961A (ja) | 2013-02-26 | 2013-02-26 | 錫微粒子含有液の製造方法及びインクジェット用錫インク |
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2013
- 2013-02-26 JP JP2013035718A patent/JP2014162961A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
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JP2020105339A (ja) * | 2018-12-27 | 2020-07-09 | 旭化成株式会社 | 錫又は酸化錫インク、塗膜を含む製品及び導電性基板の製造方法 |
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