JP2014162450A - 自転車用フレーム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ハンドルと接合しうるヘッドパイプ、サドルを保持する立パイプ、該ヘッドパイプと立パイプとを結合する上パイプ及び下パイプを少なくとも備え、
合成樹脂と、10質量%〜40質量%の補強繊維と、を含有する樹脂組成物を成型して得られた成型体であり、得られた成型体における前記補強繊維の異方性度が下記(1)及び(2)の条件を満たす自転車用フレームである。
(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度が0.4〜1.0である。
(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度が0.6〜1.0である。
【選択図】なし
Description
また、本発明のさらなる目的は、実用上充分な強度を備えた樹脂組成物製の自転車用フレームの簡易な製造方法を提供することにある。
即ち、本発明の第1の実施形態に係る自転車用フレームは、ハンドルが装着されるヘッドパイプ、サドルを保持する立パイプ、該ヘッドパイプと立パイプとを連結する上パイプ及び下パイプを少なくとも備え、合成樹脂と、5質量%〜60質量%の補強繊維と、を含有する樹脂組成物を成形して得られた成型体であり、得られた成型体における補強繊維の異方性度が下記(1)及び(2)の条件を満たす自転車用フレームである。
(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度が0.4〜1.0である。
(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度が0.6〜1.0である。
また、本発明の自転車用フレームは樹脂成型品であるため、金属を用いたフレームに比して軽量であるという利点をも有するものである。
前記補強繊維としては、炭素繊維、ケブラー繊維(商品名)などの高強度繊維に代表されるアラミド繊維、及びガラス繊維から選ばれる1種以上であることが好ましい態様であり、充分な強度を得られるという観点からは、補強繊維は、軽量且つ高強度の炭素繊維がより好ましい。また、樹脂組成物中の補強繊維の含有量は、5質量%〜60質量%であることを要し、10質量%〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは15質量%〜35質量%の範囲である。
(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度が0.4〜1.0である。
(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度が0.6〜1.0である。
なお、前記射出成形としては、前記樹脂組成物を、少なくとも、前記上パイプと前記立パイプとの接合部近傍及び前記上パイプと前記ヘッドパイプとの接合部近傍より、射出圧100MPa〜200MPa、射出速度30mm/s〜50mm/sの射出条件で射出されることが好ましい。
また、本発明によれば、実用上充分な強度を備えた樹脂組成物製の自転車用フレームの簡易な製造方法を提供することができる。
まず、本発明の第1の実施形態に係る自転車用フレームについて説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を示すものである。
本発明の自転車用フレームは、ハンドルが装着されるヘッドパイプ、サドルを保持する立パイプ、該ヘッドパイプと立パイプとを連結する上パイプ及び下パイプを少なくとも備え、合成樹脂と、5質量%〜60質量%の補強繊維と、を含有する樹脂組成物を成形して得られた成型体であり、得られた成型体における補強繊維の異方性度が下記(1)及び(2)の条件を満たす自転車用フレームである。
(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度が0.4〜1.0である。
(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度が0.6〜1.0である。
補強繊維を含む樹脂成型体において補強繊維異方性度が高い、即ち、補強繊維が一定方向に揃った状態では、配向方向における強度と剛性がより向上し、耐変形強度が向上すると共に、成型体の外観も優れたものとなる。本発明者らの検討によれば、自転車用フレームの構造と応力集中との関連を考慮した結果、自転車用フレームにおいて、乗車する人体の荷重が最も集中する立パイプにおいては、成型体中の補強繊維の異方性度は0.6以上とすることを要し、フレームそれぞれにおける他の部材との接合性、荷重や変形、及び外観上の露出度を総合的に考慮した結果、少なくとも上記(1)及び(2)の条件を満たす成型体とすることで、自転車用フレームが実用上充分な剛性と強度とを達成し、さらに外観上も優れたものとなることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明の自転車用フレームの形成に用いられる樹脂組成物は、少なくとも、射出成型可能な合成樹脂と補強繊維とを含有し、補強繊維の含有量は、樹脂組成物の全固形分中、5質量%〜60質量%の範囲であることを要する。上記含有量において、成型体における充分な強度と剛性が得られ、加工性にも優れる。
合成樹脂は、流動状態として射出成型可能であれば特に制限はないが、自転車用フレームとしての強度、剛性を達成するという観点からは、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、POM、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンエーテル、及び芳香族ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられ、なかでも、成型体の強度及び加工制御が容易な点から、ポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂としては、より具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66などが好ましい。
そのような観点から、本発明においては、樹脂材料として既述の機械的強度や耐ひずみ性の良好な合成樹脂基材を選択し、且つ、後述するように補強繊維の含有量を5質量%〜60質量%に限定したものである。
本発明に使用される補強繊維としては、所謂、繊維補強プラスチック(FRP)に使用されるものであれば特に制限はなく用いることができる。
補強繊維としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、セラミック(SiC、Al2O3等)繊維、金属(ボロン、ステンレス等)繊維、ポリパラフェニレンベンオキサゾール繊維などを用いることができ、なかでも、炭素繊維、ケブラー繊維(商品名)に代表されるアラミド繊維及びガラス繊維などが好ましく挙げられる。さらに、軽量で高強度であり、入手が容易であるという観点から、炭素繊維がより好ましい。
補強繊維のサイズは、繊維の平均径が0.5μm〜40μm、平均長さが0.1mm〜10mmのものが好ましく、より好ましくは、平均径が1μm〜30μm、平均長さが0.2mm〜6mmの範囲である。なお、補強繊維を樹脂に添加して混合し樹脂組成物を配合する際、或いは加圧して射出する際に、繊維の一部が応力により切断されることがあるが、フレームを構成する樹脂マトリックス中における補強繊維の平均長さが上記範囲であることにより、本発明の効果がより良好に発現される。
補強繊維の平均径、平均長さが上記好ましい範囲内であることで、樹脂組成物中への分散性、異方性度の制御が行いやすく、添加による剛性や強度向上効果が充分に得られる。
また、補強繊維の平均径は、異方性度を測定したX線走査装置により、1画像において観察される繊維の直径を少なくとも20箇所計測し、算術平均によって求められた平均長さを意味する。
本発明に係る樹脂組成物に含まれる補強繊維は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
補強繊維は、樹脂との密着性向上、均一分散性向上などの目的で、予め、シランカップリング剤、無水マレイン酸、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等により表面処理されたものを用いてもよい。
(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度が0.4〜1.0である。
(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度が0.6〜1.0である。
補強繊維の異方性度は、X線走査装置(Bruker社製、SkyScan−1072)により3D画像を撮影し、測定領域の中心軸方向に平行な補強繊維の角度を0°とし、垂直な補強繊維の方向を90°として、平均切片長MILとEigen解析の方法で算出した値である。なお、本発明においては、異方性度は測定対象領域において3箇所を測定した平均値を表示している。
なお、本明細書におけるパイプの中心軸とは、パイプの断面の中央点をつないで形成される直線を指すものとする。即ち、パイプの断面が円形であれば、円の中心点を通りパイプの長手方向と平行な直線を中心軸とし、パイプの断面が楕円形であれば長軸と短軸との交点を通りパイプの長手方向と平行な直線を中心軸とし、パイプの断面や円形の直径が変化する場合においては、それぞれの断面の中心点をつないで形成される直線を指す。
これらの部材のうち、サドルを保持し、乗車する人の体重が直接掛かる立パイプ18、及び、自転車用フレームの全体の形態保持に重要な部材である下パイプ16の強度を最優先して設計することで、上記補強繊維の異方性度を決定したものである。
図2において、(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度の測定領域が、領域(A)、(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度の測定領域が、領域(B)で、それぞれ表されている。また、上パイプにおける補強繊維の異方性度の測定領域は、上パイプのヘッドパイプ側である領域(C)と、上パイプの立パイプ側である領域(D)である。
また、下パイプ16における領域(A)では、フレーム全体の強度を維持する観点から、異方性度は0.4〜1.0の範囲であることを要し、好ましくは、0.5〜1.0の範囲である。
また、上パイプ14における異方性度には特に制限はないが、自転車用フレームの強度をより高めるという観点からは、異方性度は0.3〜1.0であることが好ましい。特に、上パイプ14におけるヘットパイプ側である領域(C)では、フレーム全体の強度をより高いレベルに維持する観点から、異方性度は0.3〜1.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.4〜1.0の範囲である。
なお、樹脂組成物は、立パイプ18と上パイプ14との接合部の近傍に位置する射出口である(I)に示す位置の射出口及び上パイプ14とヘッドパイプ12との接合部近傍である(III)に示す位置の射出口とを、少なくとも用いて射出して成型することが好ましい。その場合、まず、最も異方性度が高いことを要する立パイプ18〔領域(B)〕と下パイプ16〔領域(A)〕に補強繊維を含む樹脂組成物が注入され、良好な配向が達成される。
図3は、後述する実施例1で自転車用フレームを作製する際における樹脂組成物の射出口(I)、(II)、及び(III)の位置及び当該射出口を用いて形成した自転車フレーム内の樹脂の流れを示したモデル図である。この図を参照して詳細に説明する。
図3に示すように、ここでは、(I)、(II)及び(III)に示す位置の射出口から樹脂組成物を射出する。このため、(II)の位置から射出された樹脂組成物は、(III)に示す位置から射出された樹脂組成物と合流して下パイプ16に流入し、領域(A)の異方性度がより良好となる。また、立パイプ18を形成する樹脂組成物は、(I)に示す位置から射出されるため、既述のように、領域(B)において、異方性度がより良好となるため、領域(A)及び領域(B)において、本発明に規定する異方性度の値が達成される。
なお、補強繊維の異方性度が0.35未満であると樹脂成型体の表面にウェルドラインと称する外観不良〔図3において、模式的に波線で表す〕が生じやすくなるが、当該領域(D)は、製品化の際にマークや着色を施される領域であるために特に問題はない。なお、異方性度が0.35以下であってもよい領域(D)としては、上パイプ14の全長を100としたときに、立パイプ18側の10〜50の範囲であることが好ましく、10〜30の範囲であることがより好ましい。
上記好ましい補強繊維の異方性度を達成するために本発明の自転車用フレームの製造方法について説明する。
本発明の自転車用フレームは、例えば、少なくとも基材となる合成樹脂と補強繊維と、を含む前記樹脂組成物を、タンブラーやミキサー等の混合機で混合した後、1軸又は2軸の押出機等、通常の溶融混練装置に供給し、200℃〜360℃程度で溶融混練して、補強繊維を含有する樹脂組成物のペレットを作製する。作製した樹脂組成物ペレットを、射出成型装置に供給して所望のフレーム形状に成型することで製造される。
なお、ペレットは、補強繊維が予め配合された市販品を用いてもよく、例えば、トレカ(登録商標)長繊維ペレット TLPシリーズ(東レ製)などが好ましく用いられる。
本発明の製造方法は、ハンドルを装着しうるヘッドパイプ12、サドルを保持する立パイプ18、該ヘッドパイプ12と立パイプ18とを連結する上パイプ14及び下パイプ16を少なくとも備える自転車用フレームを射出成形する際に、合成樹脂と、10質量%〜40質量%の補強繊維と、を含有する樹脂組成物を加熱溶融し、射出成形により形成された成型体における前記補強繊維の異方性度が下記(1)及び(2)の条件を満たすように射出成形する工程を含む。
(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度が0.4〜1.0である。
(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度が0.6〜1.0である。
既述のように、射出口より遠い部分では若干異方性度が低下するが、溶融樹脂が立パイプ18を経る流路と、下パイプ16を経る流路においては比較的樹脂の流速が早く、異方性度が高い水準で維持され、両者の流路が接合する上パイプ14と立パイプ18との接合部近傍である領域(D)では比較的異方性度は低くなる。
なお、上記各領域の補強繊維の好ましい異方性度を達成しようとする場合、さらに、射出口より遠い位置においても異方性度をより向上させたい場合には、金型全体を高温に維持したり、或いは、射出条件を以下に記載するように調整したりすることで、本発明の製造方法において目的とする補強繊維の異方性度が達成される。
補強繊維として平均繊維長5mm、繊維径約5μmの炭素繊維とポリアミド6(ナイロン6:登録商標)とを含有する炭素繊維含有樹脂ペレット(東レ製、トレカ長繊維ペレット TLP1060:商品名)を樹脂組成物として用いた。樹脂組成物中の炭素繊維含有量は30質量%である。
図3は、実施例1の自転車用フレーム作製における射出ゲート(射出口)の位置及び該射出ゲートから射出された樹脂の流れを示したモデル図である。
射出条件は、図3において(I)、(II)及び(III)で示される位置に設けられた射出ゲート3点を用い、サイクル時間71.93秒、射出時間2.11秒、射出圧146.1MPa、射出速度43.2mm/sで樹脂の射出を行った。
成型体をX線解析装置(Bruker社製、SkyScan−1072)により3D画像を撮影し、既述の方法により解析し、図2における領域(A)〜領域(D)の繊維の異方性度を測定した。測定されたそれぞれの繊維の異方性度を下記表2に示す。
前記実施例1で得られた合成樹脂製自転車用フレームを、JIS D 9401強度試験に準拠して、評価した。即ち、図1のフレームの内側に7.5°±0.5°だけ傾けて、下方に850Nの力を100,000回加える疲労試験を行ったところ、損傷、変形、及びゆがみは観察されなかった。
準備された前記ペレットを用い、ファナック(株)製の15t射出成型機によって、図1に示す形状の自転車用フレーム10を成型した。射出条件及び樹脂組成物を注入する射出口の位置を、表1に示す条件に変えることで、表2に示すそれぞれの領域における異方性度を変更させるように調整して射出成形を行い、実施例1と同様にして比較例1〜3の自転車用フレームを得た。
得られた比較例1〜3の自転車用フレームを、実施例1と同様にして、各領域の繊維の異方性度を測定した。また、実施例1と同様にして強度試験を行った。これらの結果を下記表2に示した。
このように、本発明によれば、強度、剛性、及び外観に優れた樹脂製の自転車用フレームを提供することができる。
12 ヘッドパイプ
14 上パイプ
16 下パイプ
18 立パイプ
Claims (5)
- ハンドルが装着されるヘッドパイプ、サドルを保持する立パイプ、該ヘッドパイプと立パイプとを連結する上パイプ及び下パイプを少なくとも備え、
合成樹脂と、5質量%〜60質量%の補強繊維と、を含有する樹脂組成物を成型して得られた成型体であり、
得られた成型体における前記補強繊維の異方性度が下記(1)及び(2)の条件を満たす自転車用フレーム。
(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度が0.4〜1.0である。
(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度が0.6〜1.0である。 - 前記合成樹脂が、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレンアクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、及び芳香族ポリエーテルケトンからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の自転車用フレーム。
- 前記補強繊維が、炭素繊維、アラミド繊維及びガラス繊維から選ばれる1種以上である請求項1または請求項2に記載の自転車用フレーム。
- ハンドルが装着されるヘッドパイプ、サドルを保持する立パイプ、該ヘッドパイプと立パイプとを連結する上パイプ及び下パイプを少なくとも備える自転車用フレームの製造方法であって、
合成樹脂と、5質量%〜60質量%の補強繊維と、を含有する樹脂組成物を加熱溶融し、射出成形する工程を経て形成された成型体における前記補強繊維の異方性度が下記(1)及び(2)の条件を満たすように射出成形する工程を含む自転車用フレームの製造方法。
(1)下パイプにおける補強繊維の異方性度が0.4〜1.0である。
(2)立パイプにおける補強繊維の異方性度が0.6〜1.0である。 - 前記射出成形が、前記樹脂組成物を、少なくとも、前記上パイプと前記立パイプとの接合部近傍より、射出圧100MPa〜200MPa、射出速度30mm/s〜50mm/sの射出条件で射出されることにより行われる、請求項4に記載の自転車用フレームの製造方法。
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