JP2014162087A - ハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法およびハードコート被膜付き樹脂基板 - Google Patents

ハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法およびハードコート被膜付き樹脂基板 Download PDF

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Abstract

【課題】ハードコート被膜がプライマー層上の接着層を包含するように形成されたハードコート層を有することで、耐擦傷性に優れ、耐候性が改善されたハードコート被膜付き樹脂基板において、耐候性を低下させることなくハードコート被膜付き樹脂基板を効率よく製造する方法および該方法によるハードコート被膜付き樹脂基板を提供する。
【解決手段】樹脂基板の一方の面上に、樹脂フィルムを介してプライマー層と接着層とハードコート層とを、樹脂基板側から順に有するハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法であって、樹脂フィルムの一方の主面上にプライマー層を形成させる工程、プライマー層上に接着層を形成し樹脂フィルム積層体を得る工程、樹脂フィルム積層体の樹脂フィルムの他方の主面上に射出成形により樹脂基板を形成する工程、接着層上にハードコート層形成用組成物を塗布、硬化させる工程をその順に有する。
【選択図】図3B

Description

本発明は、ハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法および該方法で得られるハードコート被膜付き樹脂基板に関する。
近年、自動車等の車輌用の窓材や家屋、ビル等の建物に取り付けられる建材用の窓ガラスとして、これまでの無機ガラス板に代わって透明樹脂板の需要が高まっている。特に、自動車等の車両では、軽量化のために、窓材に透明樹脂板を用いることが提案されており、とりわけ芳香族ポリカーボネート系の透明樹脂板は、耐破壊性、透明性、軽量性、易加工性などに優れるため、有望な車両用窓材としてその使用が検討されている。しかしながら、このような透明樹脂板は、無機ガラス板の代わりに使用するには耐擦傷性や耐候性の点で問題があった。
そこで、透明樹脂板の耐擦傷性および耐候性を向上させる目的で、種々のハードコート剤、特にシリコーン系ハードコート剤を用いて透明樹脂板の表面に被膜、すなわちハードコート層を形成することが提案されている。またその際、ハードコート層と透明樹脂板との密着性を向上させるために、透明樹脂板上にプライマー層を設けることも提案されている。
しかし、透明樹脂板とハードコート層との間にプライマー層が設けられた構造においては、プライマー層を用いることによりハードコート層1層のみの処理に比較して密着性、および耐紫外線性は向上しているが、長期使用後のクラックの発生や密着性の低下など、耐候性の問題があった。特に、紫外線照射および高湿度を繰り返す環境下に長時間置くと、プライマー層とハードコート層との間の密着性が低下し、剥離が生じ易いという問題があった。ここで、耐候性とは長期間の屋外使用で黄変、塗膜のクラック、剥離が発生しないことであるが、試験結果を得るためには数年から10年超の長時間が必要となる。そのため、人工的に紫外線や温湿度環境等を設定した促進耐候性試験により、耐候性を評価することが一般的に行われている。
このような耐候性の問題に対して、特許文献1には、ハードコート層とプライマー層との間に加水分解性シリル基および/またはSiOH基を有するシリル基含有アクリル系ポリマーを主成分として含有する接着層を設けたハードコート層付き樹脂基板が提案されている。そして、特許文献1により、耐擦傷性に優れるとともに、促進耐候試験後の密着性(以下、「耐候密着性」ともいう。)、耐候試験後のクラック性(以下、「耐候クラック性」ともいう。)等の耐候性を十分に有するハードコート被膜付き樹脂基板が得られている。
ここで、樹脂基板上に、プライマー層、接着層、ハードコート層の各層を形成するための組成物を順次塗布し乾燥する等して、バッチ式でハードコート被膜を形成する方式では、生産効率が低いという問題点がある。一方、透明樹脂板上にハードコート層とプライマー層からなるハードコート被膜を形成する方法において、各層をそれぞれ塗布・乾燥等する2コート方式では生産性が低いとして、特許文献2においては、プライマー層をポリカーボネート樹脂フィルム上に共押出で形成し、この樹脂フィルムのプライマー層と反対側の面上にポリカーボネート樹脂基板を射出成形することで生産性よくハードコート層付き樹脂基板を製造する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の3層のハードコート被膜では、プライマー層と接着層を樹脂フィルムと共に共押出で形成することは困難であり、特許文献2の方法をそのまま適用しても生産性の向上には繋がらなかった。
国際公開第2012/046784号 特開2006−35519号
本発明は、樹脂基板上にプライマー層形成用組成物、接着層形成用組成物、およびハードコート層形成用組成物を順次、塗布、乾燥して得られる、耐擦傷性に優れるとともに、促進耐候試験後の密着性(以下、「耐候密着性」ともいう。)、耐候試験後のクラック性(以下、「耐候クラック性」ともいう。)等の耐候性が改善されたハードコート被膜付き樹脂基板において、改善された耐候性を低下させることなく該ハードコート被膜付き樹脂基板を効率よく製造する方法および該方法で得られた耐擦傷性および耐候性に優れるとともに生産性の高いハードコート被膜付き樹脂基板を提供することを目的とする。
本発明は以下の構成のハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法およびハードコート被膜付き樹脂基板を提供する。
[1]射出成形により形成される樹脂基板の一方の面上に、前記樹脂と同種の樹脂からなるフィルムを介してハードコート被膜を有するハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法であって、下記(1)〜(4)の工程を有するハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法。
(1)前記樹脂フィルムの一方の主面上に、ガラス転移点が前記射出成形の温度−240℃の温度より高く、質量平均分子量が20,000〜1,300,000のアクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分を固形分の主体として含有するプライマー層形成用組成物を塗布し乾燥させて、プライマー層を形成させる工程
(2)前記プライマー層の上に、ガラス転移点が前記射出成形の温度−240℃の温度より高く、質量平均分子量が20,000〜500,000であり、側鎖に芳香族炭化水素基を有する重合単位を含有せず、かつ側鎖に加水分解性シリル基および/またはSiOH基を有する重合単位(ua)を含有するアクリル系ポリマー(Ab)を主成分として含有する接着層形成用組成物を塗布し乾燥させて、0.5〜4.0μmの膜厚の接着層を形成し、樹脂フィルム積層体を得る工程
(3)前記樹脂フィルム積層体における前記樹脂フィルムの他方の主面上に射出成形により樹脂基板を形成し樹脂フィルム積層体付き樹脂基板を得る工程
(4)前記樹脂フィルム積層体付き樹脂基板の前記接着層上にオルガノポリシロキサン(S)を主成分として含有するハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させて、ハードコート被膜付き樹脂基板を得る工程
[2]前記樹脂基板および樹脂フィルムを構成する樹脂がポリカーボネートであり、前記アクリル系ポリマー(Aa)のガラス転移点が60℃超150℃以下であり、前記アクリル系ポリマー(Ab)のガラス転移点が60℃超100℃以下である[1]記載の製造方法。
[3]前記アクリル系ポリマー(Ab)は、前記重合単位(ua)をポリマーを構成する重合単位全体に対して10〜20モル%の割合で含有するとともに、メタクリル酸メチルに基づく重合単位(ub)を含有し、前記重合単位(ub)の含有割合は、前記重合単位(ua)を除いた前記アクリル系ポリマー(Ab)を構成する重合単位の全体に対して80〜100モル%である[2]記載の製造方法。
[4]前記オルガノポリシロキサン(S)が、下記T1〜T3で表される含ケイ素結合単位を、前記単位の個数の割合で、T1:T2:T3=0〜5:30〜45:50〜70、かつT3/T2≧1.5の割合で含み、分子内のケイ素原子に結合するアルコキシ基の個数(A)に対するケイ素原子に結合する水酸基の個数(B)の割合、(B)/(A)が分子平均で12.0〜100であり、質量平均分子量が800〜8,000であるオルガノポリシロキサン(a)と、下記T1〜T3で表される含ケイ素結合単位を有し、前記オルガノポリシロキサン(a)の質量平均分子量の1/10〜1/1.5倍の質量平均分子量を有するオルガノポリシロキサン(b)を前記オルガノポリシロキサン(a)の100質量%に対して100〜500質量%の割合で含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
T1:R−Si(−OX)(−O−)
T2:R−Si(−OX)(−O−)
T3:R−Si(−O−)
(式中、Rは炭素数が1〜6のアルキル基を表し、Xは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Oは2つのケイ素原子を連結する酸素原子を表す。)
[5]前記重合単位(ua)が下記一般式(ua1)で示される[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
Figure 2014162087
(ただし、式(ua1)中、各記号は以下の意味を示す。
;水素原子またはメチル基
;炭素数1〜3のアルキル基
;独立して炭素数1〜3のアルキル基
m;0または1
Y;アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい炭素原子数2〜6の2価の炭化水素基。)
[6]前記プライマー層形成用組成物は非重合性の紫外線吸収剤を含有し、前記紫外線吸収剤の含有量が、前記プライマー樹脂成分の100質量%に対して10〜50質量%である[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法で得られるハードコート被膜付き樹脂基板。
本明細書において、「ハードコート被膜」とは、樹脂基板上に形成された少なくとも表層部にハードコート層を有する被膜をいう。本発明においては、プライマー層形成用組成物、接着層形成用組成物、およびハードコート層形成用組成物を樹脂基板上に順次、塗布、乾燥させて得られる被膜全体を、「ハードコート被膜」という。より具体的には、本発明においては、樹脂基板上にプライマー層形成用組成物を塗布、乾燥することでプライマー層が形成される。次いで、プライマー層上に接着層形成用組成物を塗布、乾燥することで該プライマー層上に接着層が形成され、さらに、この接着層上にハードコート層形成用組成物を塗布し乾燥させると、接着層を取り込むかたちでハードコート層が形成される。このようにして得られるハードコート被膜は、プライマー層とハードコート層からなるハードコート被膜である。
また、本発明において、製造過程におけるプライマー層と接着層、および得られるハードコート被膜付き樹脂基板におけるプライマー層とハードコート層については、各層間の界面において互いに相溶する部分があってもよいが、少なくともこれらの層は独立した層として顕微鏡等で認識可能な層である。このような層間の界面の状態を考慮して、本明細書においては、特に断りのない限り各層の膜厚は、樹脂基板のような被形成面との間で安定した界面が得られる基板上に単独で成膜したときの層の厚さを意味する。
また、「加水分解性シリル基」とは、ケイ素原子に加水分解性基が直接結合したシリル基をいう。ここで、「加水分解性基」とは、加水分解により水酸基(−OH基)となる基をいう。したがって、「加水分解性シリル基および/またはSiOH基」とは、一部が加水分解により水酸基(−OH基)となったものを含めて、ケイ素原子に加水分解性基が結合したシリル基を意味する。加水分解性基の具体例については後で詳述する。
本明細書において、「主成分」および「主体」とは、各種樹脂成分、または、プライマー層形成用組成物、接着層形成用組成物、ハードコート層形成用組成物等の固形分において、各々の材料全体に対して、主成分または主体となる材料を50〜100質量%含むことを意味する。
本明細書において、各層形成用組成物の「固形分」とは、該組成物に含まれる溶媒等の層形成過程で揮発して得られる層中に残らない成分以外の成分、すなわち不揮発成分の全体をいう。具体的には、各層形成用組成物における「固形分」とは、該組成物を150℃で45分間保持した後の残留成分をいう。
また、「アクリル系ポリマー」とは、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびにこれらが有するカルボキシ基が反応して得られる各種誘導体の少なくとも1種(以下、「アクリル系モノマー」という。)に基づく重合単位を含有し、アクリル系モノマーに基づく重合単位の合計がポリマーの重合単位全体に対して50モル%以上であるホモポリマーおよびコポリマー(共重合体)を総称していう。
本発明によれば、ハードコート被膜がプライマー層形成用組成物、接着層形成用組成物、およびハードコート層形成用組成物を順次、塗布、乾燥して得られる被膜からなることで、耐擦傷性に優れるとともに、耐候性が改善されたハードコート被膜付き樹脂基板において、改善された耐候性を低下させることなく該ハードコート被膜付き樹脂基板を効率よく製造することができる。
また、本発明によれば、耐擦傷性および耐候性に優れるとともに生産性の高いハードコート被膜付き樹脂基板を提供できる。
本発明の製造方法で得られるハードコート被膜付き樹脂基板の一例の断面図である。 本発明の製造方法における樹脂フィルム積層体の一例の断面図である。 本発明の製造方法における樹脂フィルム積層体付き樹脂基板の一例の断面図である。 本発明の製造方法において樹脂基板を射出成形する際の一例の断面図である。 本発明の製造方法において樹脂基板を射出成形する際の一例の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
本発明の製造方法は、射出成形により形成される樹脂基板の一方の面上に、前記樹脂と同種の樹脂からなるフィルムを介してハードコート被膜を有するハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法であって、下記(1)〜(4)の工程を有することを特徴とする。
(1)前記樹脂フィルムの一方の主面上に、ガラス転移点が前記射出成形の温度−240℃の温度より高く、質量平均分子量が20,000〜1,300,000のアクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分を固形分の主体として含有するプライマー層形成用組成物を塗布し乾燥させて、プライマー層を形成させる工程(以下、必要に応じて、プライマー層形成工程または(1)工程という。)
(2)前記プライマー層の上に、ガラス転移点が前記射出成形の温度−240℃の温度より高く、質量平均分子量が20,000〜500,000であり、側鎖に芳香族炭化水素基を有する重合単位を含有せず、かつ側鎖に加水分解性シリル基および/またはSiOH基を有する重合単位(ua)を含有するアクリル系ポリマー(Ab)を主成分として含有する接着層形成用組成物を塗布し乾燥させて、0.5〜4.0μmの膜厚の接着層を形成し樹脂フィルム積層体を得る工程(以下、必要に応じて、接着層形成工程または(2)工程という。)
(3)前記樹脂フィルム積層体における前記樹脂フィルムの他方の主面上に射出成形により樹脂基板を形成し樹脂フィルム積層体付き樹脂基板を得る工程(以下、必要に応じて、射出成形工程または(3)工程という。)
(4)前記樹脂フィルム積層体付き樹脂基板の前記接着層上にオルガノポリシロキサン(S)を主成分として含有するハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させて、ハードコート層を形成しハードコート被膜付き樹脂基板を得る工程(以下、必要に応じて、ハードコート層形成工程または(4)工程という。)
本発明の製造方法によれば、ハードコート被膜がプライマー層形成用組成物、接着層形成用組成物、およびハードコート層形成用組成物を順次、塗布、乾燥して得られる被膜からなるハードコート被膜付き樹脂基板の製造において、例えば、(1)工程と(2)工程で、長尺の樹脂フィルム上にプライマー層形成用組成物および接着層形成用組成物を順次、塗布、乾燥してプライマー層と接着層の2層を連続的に形成させて樹脂フィルム積層体とした後、所定のサイズとして(3)工程で樹脂フィルム積層体の樹脂フィルム上に樹脂基板を射出成形し、最後に(4)工程で接着層上にハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させて上記接着層を取り込むかたちでハードコート層を形成する方法をとることができる。このように、本発明の製造方法によれば、上記ハードコート被膜付き樹脂基板の製造において、プライマー層と接着層を形成する際の自由度が増し、ハードコート被膜が有する各層を樹脂基板毎に塗工・乾燥等により形成させるバッチ式の方法に比べて各段に生産性のよい方法とすることができる。
また、このようにして得られる本発明のハードコート被膜付き樹脂基板は、耐擦傷性および耐候性に優れるとともに生産性の高いハードコート被膜付き樹脂基板である。
以下、図面を参照しながら本発明の製造方法について説明する。図1は、本発明の製造方法により得られるハードコート被膜付き樹脂基板の一例の断面図である。このハードコート被膜付き樹脂基板20は、樹脂基板4の一方の面上に、該樹脂基板の樹脂と同種の樹脂からなるフィルム1と、プライマー層2と、ハードコート層5とを、樹脂基板4側から順に有する構成である。なお、ハードコート層5は、製造過程でプライマー層2上に形成された接着層を取り込むかたちで形成された層である。
ハードコート被膜付き樹脂基板20の製造工程において、(2)工程終了後に得られる樹脂フィルム積層体10を図2Aに、(3)工程終了後に得られる樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11を図2Bに示す。樹脂フィルム積層体10は、樹脂フィルム1の一方の面上にプライマー層2と接着層3をその順に有する構成である。樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11は、樹脂基板4の一方の面上に、樹脂フィルム1と、プライマー層2と、接着層3をその順に有する構成である。
本発明の製造方法においては、(4)工程により樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11の接着層3上にハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させることで、接着層3を取り込むかたちにハードコート層5が形成され、図1に示す構成のハードコート被膜付き樹脂基板20が得られる。
以下に、図1に示すハードコート被膜付き樹脂基板20を例にして、図2A、図2Bを参照しながら、本発明の製造方法の各工程を、樹脂フィルム1、プライマー層2、接着層3、ハードコート層5、樹脂基板4を形成するための材料とともに説明する。
(1)工程:プライマー層形成工程
本発明の製造方法においては、(1)工程で樹脂フィルム1の一方の主面上に、ガラス転移点が樹脂基板4の射出成形の温度−240℃の温度より高く、質量平均分子量が20,000〜1,300,000のアクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分を固形分の主体として含有するプライマー層形成用組成物を塗布し乾燥させて、プライマー層2を形成する。
樹脂フィルム1およびプライマー層2はいずれも、樹脂基板4の構成材料により材料が規定される。したがって、以下に樹脂基板4の構成材料をまず説明する。
樹脂基板4は後述の(3)工程で射出成形により形成される。樹脂基板4を構成する樹脂としては、射出成形が可能な透明な樹脂であれば特に制限されない。具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。なかでも、芳香族ポリカーボネート(以下、ポリカーボネートと略記する。)が好ましい。ポリカーボネー卜としては、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる分岐していてもよい熱可塑性ポリカーボネート重合体または共重合体である。ポリカーボネートの製造法は特に限定されるものではなく、従来から知られているホスゲン法(界面重合法)または溶融法(エステル交換法)等によって製造することができる。溶融法で製造されたポリカーボネートは、末端基のOH基量を調整したものであってもよい。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノ一ル、4,4−ジヒドロキシジフェニル等か挙げられる。なかでも好ましいのは、ビスフェノ一ルAである。この樹脂の難燃性を一層高める目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムを1個以上結合させた化合物、および/または、シロキサン構造を有する両未端フェノール性OH基を含有したポリマーまたはオリゴマー等を、少量共存させることができる。
分岐したポリカーボネートを得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で示されるポリヒドロキシ化合物類、または、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等を前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用すればよく、その使用量は0.01〜10モル%の範囲が好ましく、特に好ましいのは0.1〜2モル%である。
ポリカーボネートとしては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート、または2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。さらに、この樹脂の難燃性を一層高める目的で、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーを共重合させることができる。ポリカーボネートは、2種以上の組成の異なる樹脂の混合物であってもよい。
ポリカーボネートのヘイズは、厚さ1mmの成形品での測定で好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下であり、最も好ましくは5%以下である。ヘイズが10%以上であると得られるハードコート被膜付き樹脂基板における透明性が不十分となり易い。
樹脂基板4には、透明性を損なわない程度にベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、サリシレート系化合物、トリアリールトリアジン系化合物等の有機系紫外線吸収剤や、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等無機系紫外線遮蔽剤を含有してもよく、また、他の光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、熱線反射剤、熱線吸収剤、難燃剤、滑剤、顔料、フィラー等を含んでいてもよい。
(1)工程に用いる樹脂フィルム1は、樹脂基板4を構成する樹脂と同種の樹脂からなる。樹脂基板4と同様にポリカーボネートが好ましい。樹脂フィルム1に使用されるポリカーボネートは、上記同様のポリカーボネートが挙げられる。
また、樹脂フィルム1が、紫外線吸収剤を含有する場合、その紫外線吸収剤含有量は、使用する紫外線吸収剤の紫外線吸収能および樹脂フィルム1の厚みによるが、通常は0.5質量%未満である。
樹脂フィルム1の厚みは、好ましくは50〜250μmであり、より好ましくは100〜200μmである。樹脂フィルム1の厚みが小さすぎても大きすぎても取り扱いが難しく、成形等の際の作業性に劣る。
(1)工程に用いる樹脂フィルム1のサイズは最終的に得られるハードコート被膜付き樹脂基板より大きければ特に限定されない。生産効率を高める観点から、好ましくは長尺のロール品が好ましい。
(1)工程において、樹脂フィルム1上へのプライマー層2の形成にはプライマー層形成用組成物を用いる。プライマー層形成用組成物は、ガラス転移点(以下、Tgという。)が樹脂基板4の射出成形の温度−240℃の温度より高く、質量平均分子量(以下、適宜「Mw」と示す。)が20,000〜1,300,000のアクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分を固形分の主体として含有する。
プライマー層2は、後述する接着層3とともに、樹脂基板4とハードコート層5との密着性を向上させるために設けられる層である。本発明の製造方法により得られるハードコート被膜付き樹脂基板20のプライマー層2は、樹脂基板4の射出成形時に樹脂基板4と密着成形される樹脂フィルム1に直接接する層でありアクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分を主体とすることで、樹脂フィルム1を介して樹脂基板4との密着性が確保される。また、プライマー層2とハードコート層5との間の密着性は、後述する接着層3を介して確保される。
プライマー層2を主として構成するプライマー樹脂成分は、アクリル系ポリマー(Aa)を主成分とする。プライマー樹脂成分におけるアクリル系ポリマー(Aa)の割合は、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
後述の(3)工程において、樹脂基板4が射出成形される際には、樹脂フィルム1と樹脂基板4が接するようにして射出成形が行われる。プライマー層2はこの射出成形時の温度に耐えることが必要とされる。なお、本明細書において、射出成形の温度とは、射出成形時の樹脂基板4を構成する樹脂の温度をいう。プライマー層2を主として構成するプライマー樹脂およびその主成分であるアクリル系ポリマー(Aa)のTgが、射出成形の温度−240℃より高ければ、(3)工程における射出成形の温度に十分耐えることが可能である。アクリル系ポリマー(Aa)のTgの上限は特に制限されないが、150℃程度が好ましい。また、アクリル系ポリマー(Aa)のMwが上記範囲にあれば、プライマー層2としての密着性や強度の性能が十分に発揮される。アクリル系ポリマー(Aa)のMwは20,000〜1,300,000が好ましく、50,000〜1,000,000がより好ましい。なお、本明細書においてMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値をいう。
上記のとおり樹脂基板4の樹脂はポリカーボネートが好ましく、その場合、アクリル系ポリマー(Aa)のTgは60℃超150℃以下が好ましい。Tgが60℃以下であると、(3)工程における射出成形の温度に十分耐えることが困難であるとともに、得られる被膜に肌荒れ等が起こりやすく、150℃を超えると得られる被膜の平滑性が十分でなく、いずれも外観上好ましくない。なお、アクリル系ポリマー(Aa)のTgは、より好ましくは70〜120℃、特に好ましくは90〜110℃である。
アクリル系ポリマー(Aa)としては、通常、樹脂基板4とハードコート層5とを密着するためのプライマー層2に使用されるアクリル系ポリマーのうち、上記TgおよびMwを満足するアクリル系ポリマーが、特に限定されることなく用いられる。好ましくは、メタクリル基を有するモノマーに基づく重合単位を有するアクリル系ポリマー(Aa)が用いられる。アクリル系ポリマー(Aa)の重合単位となるモノマーについては、アクリル基を有するモノマーとしてアクリル酸エステルが、メタクリル基を有するモノマーとしてメタクリル酸エステルがそれぞれ挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステル等の「(メタ)アクリル……」なる表記は、「アクリル……」と「メタクリル……」の両方を意味する。
上記メタクリル基を有するモノマーとしては、炭素数が6以下のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。つまり、アクリル系ポリマー(Aa)としては、炭素数が6以下のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を「主なモノマー」(具体的には、原料モノマー全体に対して90〜100モル%、以下同じ。)とするホモポリマーや、それらのモノマー同士のコポリマーが好ましい。上記ホモポリマーとしては、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。
また、炭素数が6以下のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる主なモノマーと、それ以外のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの少なくとも1種とのコポリマーも好ましい。上記それ以外のモノマーとしては、炭素数7以上のアルキル基や炭素数12以下のシクロアルキル基を有するメタクリル酸エステルやアクリル酸エステルが挙げられる。また、これらのモノマーとともに、ヒドロキシ基のような官能基を含有するアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、または(メタ)アクリル酸を共重合させて得られるコポリマーも使用することができる。上記シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基等が挙げられる。
アクリル系ポリマー(Aa)の酸価は、1mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が1mgKOH/gを超えると、得られる被膜にクラック等が発生して外観上好ましくない。アクリル系ポリマー(Aa)の酸価は、より好ましくは0.8mgKOH/g以下であり、0mgKOH/gであることが特に好ましい。ここで、酸価とは、試料1g中の樹脂酸などを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいい、JIS K 0070の測定方法に準じて測定することができる値である。
アクリル系ポリマー(Aa)は、上記各種(メタ)アクリル酸アルキルエステルを原料モノマーとして、必要に応じて、全原料モノマー量に対して10モル%未満の(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のモノマー、分子量調節剤、重合開始剤、懸濁安定剤、乳化剤等とともに、通常(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合する方法、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合方法によって製造することができる。
なお、アクリル系ポリマー(Aa)として好適な上記特性を有するアクリル系ポリマーが市販されているので、本発明においては、これらの市販品を使用することができる。
例えば、ダイヤナールLR269(商品名、三菱レイヨン社製、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、Tg;105℃、Mw;100,000、固形分:30質量%)、LR248(商品名、三菱レイヨン社製、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、Tg;102℃、Mw;155,000、固形分:30質量%)等のような、予め適当な溶媒に溶解された溶液として市販されているものをアクリル系ポリマー(Aa)溶液として使用することができる。
また、ダイヤナールBR80(商品名、三菱レイヨン社製、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、Tg;105℃、Mw;90,000)、ダイヤナールBR88(商品名、三菱レイヨン社製、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、Tg;105℃、Mw;430,000)、M−4003(商品名、根上工業社製、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、Tg;105℃、Mw;810,000)等のような市販品をアクリル系ポリマー(Aa)として、適当な溶媒に溶解して使用することが可能である。
アクリル系ポリマー(Aa)は、このようなアクリル系ポリマーの1種の単独からなってもよく、2種以上を混合して使用することも可能である。
プライマー層2は、該層を主として構成するプライマー樹脂成分としてアクリル系ポリマー(Aa)以外の樹脂成分を含有してもよい。このような樹脂成分としては、ビニル系ポリマー、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。こられの樹脂成分は、具体的には、プライマー層形成用組成物に配合して用いられる。以下、プライマー層が任意に含有する各成分についても同様に、プライマー層形成用組成物に配合することで、得られるプライマー層に含有される。
プライマー層2には紫外線吸収剤が含まれていることが好ましい。これにより、プライマー層2が紫外線を吸収し、樹脂基板4や樹脂フィルム1に紫外線が到達しないので、樹脂基板4や樹脂フィルム1の黄変を抑制することができる。紫外線吸収剤としては、紫外線のうちでも比較的長波長の領域、例えば350〜380nmにおける吸収性能が高い紫外線吸収剤が好ましい。
プライマー層に含有される紫外線吸収剤としては、上記吸光特性を有するとともに、非重合性である紫外線吸収剤が好ましい。非重合性の紫外線吸収剤として、具体的には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、ベンジリデンマロネート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を用いることができる。これらのなかでもベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
プライマー層に含有される紫外線吸収剤は、これらの1種であってもよく、2種以上を併用してもよい。
プライマー層2中の紫外線吸収剤の含有量は、該層を主として構成するプライマー樹脂成分の100質量%に対して、10〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%がより好ましく、25〜35質量%が特に好ましい。プライマー層2中の紫外線吸収剤の含有量を上記範囲とすることでハードコート被膜の密着性を十分とでき、かつ樹脂基板への耐候性の付与を十分とすることができる。
本発明におけるプライマー層2は、紫外線吸収剤を含有し、かつ上記プライマー層2に含まれるアクリル系ポリマー(Aa)の酸価が1mgKOH/g以下であり、Tgが60℃超150℃以下であり、Mwが50,000〜1,000,000であるのが好ましい。
プライマー層2は、さらに光安定剤等を含有してもよい。光安定剤としては、ヒンダードアミン類;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。プライマー層2中の光安定剤の含有量は、該層を主として構成するプライマー樹脂成分の100質量%に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
(1)工程においては、上記した樹脂フィルム1の一方の面上に、上記のプライマー層2が含有する成分、すなわち、アクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分、および紫外線吸収剤等の任意成分等に加えて、通常、溶媒を含むプライマー層形成用組成物を塗布し乾燥させて、プライマー層2を形成する。
プライマー層形成用組成物が含有する溶媒としては、アクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分を安定に溶解することが可能な溶媒であれば、特に限定されない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メトキシエタノール、ジアセトンアルコール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、灯油等の炭化水素類;アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒の量は、アクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分の100質量%に対して、50〜10,000質量%であることが好ましく、100〜10,000質量%が特に好ましい。なお、プライマー層形成用組成物中の固形分の含有量は、組成物全量に対して0.5〜75質量%であることが好ましく、1〜60質量%であることが特に好ましい。
上記プライマー層形成用組成物は、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
プライマー層形成用組成物を上記樹脂フィルム1上に塗布する方法は、特に限定されないが、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、ダイコート法、スピンコート法等が挙げられる。また、乾燥のための加熱条件は、特に限定されないが、50〜140℃で5分間〜3時間であることが好ましい。
プライマー層2上に以下の(2)工程で接着層3を形成させる前のプライマー層2の膜厚は、最終的に得られるハードコート被膜付き樹脂基板20において、プライマー層2として必要とされる要件を満たすような膜厚であれば特に制限されないが、プライマー層2上に形成される接着層3および接着層3を取り込むかたちで形成されるハードコート層5の膜厚を考慮して適宜調整される。
最終的に得られるハードコート被膜付き樹脂基板20において、プライマー層2の膜厚が薄すぎると、ハードコート被膜付き樹脂基板20の耐候クラック性、耐候密着性、耐候試験後の着色性が低下する。なお、最終的に得られるハードコート被膜付き樹脂基板20におけるプライマー層2の膜厚は、(2)工程によるプライマー層2上への接着層3の形成、(3)工程による樹脂基板4の射出成形、および(4)工程による接着層3上へのハードコート層形成用組成物の塗布、硬化によるハードコート層5の形成により、これらの(2)〜(4)工程の前の膜厚に比べて薄くなる可能性もあるので、(2)〜(4)工程の前のプライマー層2の膜厚は、最終的に得られるハードコート被膜付き樹脂基板20において、樹脂基板4および樹脂フィルム1とハードコート層5とをプライマー層2を介して十分に密着および接着するのに必要かつ十分な膜厚とすることが好ましい。
このように、接着層3の形成、樹脂基板4の射出成形、およびハードコート層5の形成が行われる前の、すなわち(1)工程終了後のプライマー層2の膜厚は、具体的には、0.1μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜7μmであることが特に好ましい。
(2)工程:接着層形成工程
本発明の製造方法においては、次いで(2)工程により、上記(1)工程で得られた樹脂フィルム1上のプライマー層2の上に、Tgが射出成形の温度−240℃の温度より高く、Mwが20,000〜500,000であり、側鎖に芳香族炭化水素基を有する重合単位を含有せず、かつ側鎖に加水分解性シリル基および/またはSiOH基を有する重合単位(ua)を含有するアクリル系ポリマー(Ab)を主成分として含有する接着層形成用組成物を塗布し乾燥させて、接着層3を0.5〜4.0μmの膜厚で形成して、図2Aに断面図が示されるような樹脂フィルム積層体10を得る。図2Aは、図1に示されるハードコート被膜付き樹脂基板20の製造に用いられる、樹脂フィルム1の一方の面上に、プライマー層2と接着層3をその順に有する樹脂フィルム積層体10の断面図である。
ここで、接着層3は、次の(3)工程で樹脂基板4と密着される樹脂フィルム1上に形成された上記プライマー層2と後述するハードコート層5との間の密着性および接着性を向上させるために設けられる上記膜厚の層であり、上記アクリル系ポリマー(Ab)を主成分として構成される。なお、接着層3は最終的に得られるハードコート被膜付き樹脂基板20においてはハードコート層5に取り込まれているため独立した層として確認できない層であり、製造過程においてのみ独立して存在する層である。以下に、接着層3を主として構成するアクリル系ポリマー(Ab)について説明する。
アクリル系ポリマー(Ab)は芳香族炭化水素基を側鎖に有する重合単位を含有しない。アクリル系ポリマー(Ab)が、芳香族炭化水素基を有する重合単位を含有するとハードコート層形成用組成物の主構成成分であるオルガノポリシロキサン(S)との反応性が不十分となり、プライマー層2とハードコート層5との間の密着性、特に耐候密着性の向上が望めない。また、プライマー層とのなじみも不十分となり、後述するように、ハードコート被膜の耐擦傷性が十分に得られない。
接着層3を主として構成するアクリル系ポリマー(Ab)においては、該ポリマーが有する加水分解性シリル基および/またはSiOH基が、ハードコート層形成用組成物の主構成成分であるオルガノポリシロキサン(S)の加水分解性シリル基および/またはSiOH基と反応してシロキサン結合(−O−Si−O−)を形成する。これにより、ハードコート層5が接着層3を取り込むように形成され、プライマー層2とハードコート層5との密着性、特に耐候密着性を得ていると考えられる。
なお、以下の(3)工程において、樹脂基板4が射出成形される際には、通常、(2)工程で得られた樹脂フィルム積層体10は、樹脂フィルム1と樹脂基板4が接するように金型に配置されて射出成形が行われる。したがって、接着層3はプライマー層2と同様にこの射出成形時の温度に耐えることが必要とされる。接着層3を主として構成するアクリル系ポリマー(Ab)のTgが、射出成形の温度−240℃より高ければ、(3)工程における射出成形の温度に十分耐えることが可能である。アクリル系ポリマー(Ab)のTgの上限は特に制限されないが、100℃程度が好ましい。また、アクリル系ポリマー(Ab)のMwが上記の範囲にあれば、これを含む接着層形成用組成物の塗工性も良好であり、適切な膜厚が得られるとともに、接着層3としての密着性や強度の性能が十分に発揮される。アクリル系ポリマー(Ab)のMwは20,000〜500,000が好ましく、40,000〜200,000がより好ましい。
ここで、上記のとおり樹脂基板4の樹脂はポリカーボネートが好ましく、その場合、アクリル系ポリマー(Ab)のTgは60℃超100℃以下が好ましい。Tgが60℃以下であると、(3)工程における射出成形の温度に十分耐えることが困難であるとともに、得られる被膜に肌荒れ等が起こりやすく十分な耐候密着性が得られない。また、Tgが100℃を超えると得られる被膜の平滑性が十分でなく、外観上好ましくない。なお、アクリル系ポリマー(Ab)のTgは、より好ましくは、65〜100℃、特に好ましくは70〜100℃である。
アクリル系ポリマー(Ab)としては、上記重合単位(ua)を含有し、上記範囲のTgおよびMwを有するアクリル系ポリマーであれば特に制限されない。
アクリル系ポリマー(Ab)は、該ポリマーを構成する重合単位全体に対して重合単位(ua)を10〜20モル%の割合で含有することが好ましく、12〜18モル%が好ましく、14〜16モル%がより好ましい。重合単位(ua)の割合を上記範囲とすることで、後述するハードコート層形成用組成物の主構成成分であるオルガノポリシロキサン(S)の有する末端基(例えば、Si−OX基。ただし、−OXは水酸基またはアルコキシ基を示す。)との反応を十分に行うことができる。また、重合単位(ua)以外のアクリル系モノマーに基づく重合単位の含有量が十分に確保されプライマー層2とのなじみも良好となる。よって、接着層3を設けたことによるプライマー層2とハードコート層5との密着性向上の効果が十分となる。また、未反応の加水分解性基の残存量も少なく、経時での後架橋によるクラック発生の可能性もほとんどない。
アクリル系ポリマー(Ab)のTgは、通常、重合単位(ua)以外の重合単位の種類により調整できる。例えば、耐候密着性の観点から重合単位(ua)をポリマーを構成する重合単位全体に対して10〜20モル%の割合で含有するアクリル系ポリマー(Ab)について、Tgを60℃超100℃以下とするためには、該アクリル系ポリマー(Ab)は、メタクリル酸メチルに基づく重合単位(ub)を、該重合単位(ub)の含有割合が重合単位(ua)を除いたアクリル系ポリマー(Ab)を構成する重合単位の全体に対して80〜100モル%となる範囲で含有することが好ましい。
アクリル系ポリマー(Ab)は、側鎖に加水分解性シリル基および/またはSiOH基を有する重合単位(ua)を含有する。重合単位(ua)に含有される加水分解性シリル基および/またはSiOH基の数は、通常1個であるが2個以上とすることもできる。加水分解性シリル基および/またはSiOH基は、アクリル系ポリマーの側鎖を構成する炭化水素基に、C−Si結合を介して結合されていることが好ましい。
アクリル系ポリマー(Ab)が有する重合単位(ua)としては、下記一般式(ua1)で示される重合単位が好ましい。なお、一般式(ua1)で示される重合単位を、以下、重合単位(ua1)ともいう。
Figure 2014162087
(ただし、式(ua1)中、各記号は以下の意味を示す。
;水素原子またはメチル基であり、メチル基が好ましい。
;炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましい。
;独立して炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましい。
m;0または1であり、0が好ましい。
Y;アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい炭素原子数2〜6の2価の炭化水素基。なお、炭素数原子数には、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合およびエステル結合の炭素原子は含まない。)
式(ua1)中のYとして、具体的には、−(CHn1−Q−(CHn2−で示される2価の有機基が挙げられる。Qは単結合、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−または−O−であり、Qが単結合の場合、n1+n2は、2〜6の整数が好ましく、2または3がより好ましい。Qが単結合以外の場合、n1は2〜3の整数、n2は2〜3の整数であって、n1+n2は、4〜6が好ましく、n1、n2が独立して2または3であり、n1+n2が4〜5であるのがより好ましい。
Yは好ましくは、−(CH−、−(CH−、−(CH−O−C(=O)−NH−(CH−であり、より好ましくは−(CH−または−(CH−である。
式(ua1)中、−SiR (OR3−mは加水分解性シリル基を示し、ORで示されるアルコキシ基が加水分解性基である。上記のとおり、加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはイソプロポキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。
アクリル系ポリマー(Ab)について、重合単位(ua)として重合単位(ua1)を含有する下記組成式(Ab1)に示されるアクリル系ポリマー(Ab1)を例にして、以下に説明する。
Figure 2014162087
式(Ab1)において、Xは水素原子、または加水分解性シリル基以外の置換基を有してもよい炭素数1〜4の炭化水素基を示す。Rは独立に水素原子または非重合性の1価の有機基(ただし、主鎖の炭素に−C(=O)−O−が結合する構造を除く)を示す。R、R、R、m、Yは上記式(ua1)におけるのと同じ意味である。p、t、sは、p+t+s=100モル%としたときの各重合単位のモル%を示す。上記のとおり重合単位(ua1)の割合を示すsは10〜20モル%が好ましく、100モル%≧t+s≧50モル%、0モル%≦p≦50モル%である。
式(Ab1)において、[]tで囲まれた重合単位は、加水分解性シリル基を有しないアクリル系モノマーに基づく重合単位を示し、重合単位の1種またはXが異なる2種以上の重合単位をまとめて示している。したがって、t+sがアクリル系ポリマー(Ab1)におけるアクリル系モノマーに基づく重合単位のモル%となる。一方、[]pで囲まれた重合単位は、アクリル系モノマー以外のモノマーに基づく重合単位を示す。耐候密着性の観点からpは10モル%以下が好ましく、0モル%がより好ましい。すなわちアクリル系ポリマー(Ab)は、アクリル系モノマーに基づく重合単位のみで構成されることが好ましい。
さらに、アクリル系ポリマー(Ab1)としては、Rがメチル基であるメタクリル酸またはその誘導体に基づく重合単位のみで構成されたアクリル系ポリマーが好ましい。このようなアクリル系ポリマー(Ab1)としては、例えば、Rがメチル基である重合単位(ua1)と、メタクリル酸メチル(MMA)に基づく重合単位(ub)を含有する下記組成式(3)に示されるアクリル系ポリマー(3)が好ましい。
Figure 2014162087
式(3)において、Xは水素原子、または加水分解性シリル基以外の置換基を有してもよい炭素数1〜18の炭化水素基(ただし、非置換のメチル基を除く)を示す。R、R、m、Yは上記式(ua1)におけるのと同じ意味である。t1、t2、sは、t1+t2+s=100モル%としたときの各重合単位のモル%を示す。sは10〜20モル%が好ましく、t2は、50〜90モル%、t1は0〜20モル%が好ましい。より好ましくは、t1=0モル%であり、t2が80〜90モル%である。各重合単位のモル%を上記範囲とすることで、樹脂基板4の樹脂がポリカーボネートである場合に好ましい、Tgが60℃超100℃以下のアクリル系ポリマー(Ab)としてのアクリル系ポリマー(3)が得られる。
なお、アクリル系ポリマー(3)としては、重合単位(ua1)とMMAに基づく重合単位(ub)のみで構成されるアクリル系ポリマーが好ましい。アクリル系ポリマー(Ab)がアクリル系ポリマー(3)のように、重合単位(ua)とMMAに基づく重合単位(ub)を含有する場合、アクリル系ポリマー(Ab)を構成する全重合単位から重合単位(ua)を除いた重合単位における重合単位(ub)の割合は、80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましく、100モル%が特に好ましい。
ここで、アクリル系ポリマー(3)において、重合単位(uc)は、重合単位(ua1)、重合単位(ub)以外のアクリル系モノマーに基づく重合単位を示し、重合単位の1種またはXが異なる2種以上の重合単位をまとめて示すものである。Xとしては、例えば、炭素数2〜8の直鎖状、分岐状、環状の各種飽和炭化水素基が挙げられる。Xが直鎖アルキル基の場合、分岐型アルキル基に比較して、プライマー層主成分の、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー(Aa)との相溶性が高いため、接着層として好適である。また、直鎖の長さによってポリマーのTgを適切に制御することも可能である。
また、これらの炭化水素基は、加水分解性シリル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、水酸基、エポキシ基等が挙げられる。水酸基に置換された炭化水素基を側鎖に有することにより、ハードコート層形成用組成物との親和性が高まり、接着層のハードコート層への取り込みが円滑に行われ、密着性が向上し好ましい。
アクリル系ポリマー(Ab)の特に好ましい態様として下記組成式(4)に示されるMMAに基づく重合単位(ub)と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに基づく重合単位(ua)をt:sのモル比で含有するアクリル系ポリマー(4)が挙げられる。ここでt+s=100モル%として、tおよびsの割合は、上記アクリル系ポリマー(3)で説明したt2とsの割合と同様にできる。
Figure 2014162087
なお、アクリル系ポリマー(4)は、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに基づく重合単位に代えて、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等に基づく重合単位を含有するアクリル系ポリマーであってもよい。これらの中でも、入手のし易さ、取り扱い性、架橋密度および反応性などの点から、上に例示した3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが特に好ましい。
アクリル系ポリマー(Ab)は、例えば、以下の(i)または(ii)の方法により合成できる。
(i)加水分解性シリル基および/またはSiOH基を有するアクリル系モノマー(以下、「シリル基含有アクリル系モノマー(ma)」ということがある。)と、メタクリル酸メチル(MMA)等のシリル基含有アクリル系モノマー(ma)以外のアクリル系モノマーと、アクリル系モノマー以外のオレフィン系モノマーとを上に説明した各重合単位のモル比で含有するモノマー原料を共重合させる。
(ii)側鎖に水酸基、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基等の反応性の官能基を有するアクリル系モノマー(以下、「反応性基含有アクリル系モノマー(mr)」ということがある。)と、メタクリル酸メチル(MMA)等の反応性の官能基を有しないアクリル系モノマーと、アクリル系モノマー以外のオレフィン系モノマーとを含有するモノマー原料を共重合させた後、得られた共重合体(アクリル系ポリマー(Ab)の前駆体)に、上記反応性基含有アクリル系モノマー(mr)の官能基に反応性の官能基と加水分解性シリル基および/またはSiOH基とを有する化合物を反応させる。この場合、共重合の際に用いる原料モノマーのモル比および、該共重合体に加水分解性シリル基および/またはSiOH基を有する化合物を反応させる割合を調整することで、各重合単位のモル比が上記範囲にあるアクリル系ポリマー(Ab)を得ることができる。
(i)および(ii)の方法で共通するモノマー原料を共重合する方法は、溶液重合が好ましい。具体的には、各重合単位のモノマーを所定のモル比で含有するモノマー原料の溶液に、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド類、または2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ化合物からなる群から選択されるラジカル重合用開始剤を加え、加熱下(40〜150℃、特に50〜120℃で1〜10時間、特に3〜8時間)に反応させることにより容易に得られる。
(i)においては得られたアクリル系ポリマー(Ab)を精製して後述の接着層形成用組成物に用いてもよく、上記の重合反応後のアクリル系ポリマー(Ab)を含む溶液をそのまま接着層形成用組成物に用いてもよい。
また、(ii)においても得られたアクリル系ポリマー(Ab)の前駆体を精製して次の反応に用いてもよく、得られたアクリル系ポリマー(Ab)の前駆体を含む溶液をそのまま次の反応に用いてもよい。
(ii)において、アクリル系ポリマー(Ab)の前駆体が有する反応性の官能基が水酸基である場合、水酸基に反応性の官能基、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基等と加水分解性シリル基および/またはSiOH基とを有する化合物を反応させることで、アクリル系ポリマー(Ab)が得られる。この場合、反応性の官能基は、反応コントロールのし易さの点でイソシアネート基が好ましい。イソシアネート基と加水分解性シリル基および/またはSiOH基とを有する化合物としては、例えば3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
なお、アクリル系ポリマー(Ab)の前駆体が有する反応性の官能基の全てを反応させなくとも、官能基の一部がそのまま残留するかたちにアクリル系ポリマー(Ab)を設計してもよい。
アクリル系ポリマー(Ab)は、このようなアクリル系ポリマーの1種の単独からなってもよく、2種以上を混合して使用することも可能である。また、接着層3は、本発明の効果を損なうことのない範囲で該層を主として構成するアクリル系ポリマー(Ab)以外のその他の成分を必要に応じて含有してもよい。このような成分としては、アクリル系ポリマー(Ab)以外の樹脂成分、ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの成分は、アクリル系ポリマー(Ab)の100質量%に対して、合計で15質量%以下の範囲で接着層3に含有されてもよい。
(2)工程においては、上記した樹脂フィルム1上のプライマー層2の上に、上記の接着層3が含有する成分、すなわち、アクリル系ポリマー(Ab)を主成分とする固形成分に加えて、通常、溶媒を含む接着層形成用組成物を塗布し乾燥させて、接着層3を形成する。
接着層形成用組成物が含有する溶媒としては、アクリル系ポリマー(Ab)を安定に溶解することが可能な溶媒であれば、特に限定されない。具体的には、上記プライマー層形成用組成物と同様の溶媒が挙げられる。
溶媒の量は、アクリル系ポリマー(Ab)を含む樹脂成分100質量%に対して、50〜10,000質量%であることが好ましく、100〜10,000質量%が特に好ましい。なお、接着層形成用組成物中の固形分の含有量は、組成物全量に対して0.5〜75質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることが特に好ましい。また、この接着層形成用組成物は、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
接着層形成用組成物をプライマー層2上に塗布する方法としては、特に限定されない。プライマー層形成用組成物を樹脂基板上に塗布するのと同様の方法が挙げられる。また、乾燥のための加熱条件は、特に限定されないが、50〜140℃で5分間〜3時間であることが好ましい。
上記接着層形成用組成物を用いてプライマー層2上に形成される接着層3の膜厚は、最終的に得られるハードコート被膜付き樹脂基板20において、接着層3を取り込んで形成されるハードコート層5が必要とされる密着性の要件を満たす膜厚、すなわち、0.5〜4.0μmである。以下の(3)工程が行われる前の接着層3の膜厚を上記範囲とすることで、最終的に得られるハードコート被膜付き樹脂基板20においてハードコート層5とプライマー層2の密着性が確保され、ハードコート被膜全体としての耐候密着性、耐候クラック性等の耐候性向上の効果を十分に上げることができる。
接着層3の膜厚が上記の最小値未満であると、プライマー層2とハードコート層5との密着性向上によるハードコート被膜全体としての耐候密着性、耐候クラック性等の耐候性向上の効果を十分に上げることができない。反対に、接着層3の膜厚が上記の最大値を超えると、接着層3が含有するアクリル系ポリマー(Ab)中の加水分解性シリル基および/またはSiOH基のうちで、ハードコート層形成用組成物中のオルガノポリシロキサン(S)と結合する割合が減少し、接着層3内部での結合の割合が増加する。その結果、接着層3がハードコート層5に十分に取り込まれず、さらにアクリル系ポリマー(Ab)中の加水分解性シリル基および/またはSiOH基の結合が増加した部分に応力が発生するため、耐候クラックの原因となる。
以下の(3)工程が行われる前の接着層3の膜厚は、好ましくは1.0〜3.8μmであり、より好ましくは2.0〜3.5μmである。なお、この膜厚は、樹脂基板のような基板上に単独で成膜したときの層の厚さである。
このようにして、図2Aに示すような断面を有する樹脂フィルム1の一方の面上にプライマー層2と接着層3がその順に形成された樹脂フィルム積層体10が得られる。なお、(1)工程で記したとおり長尺の樹脂フィルム1にプライマー層と接着層の2層を連続的に形成させて樹脂フィルム積層体10とした場合、以下の(3)工程の前に、射出成形される樹脂基板4における樹脂フィルム積層体10を密着させる面の大きさに合わせて、通常の方法で切断される。
(3)工程:射出成形工程
次いで(3)工程により、上記(2)工程で得られた樹脂フィルム積層体10における樹脂フィルム1の他方の主面上に射出成形により樹脂基板4を形成し図2Bに示されるような樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11を得る。射出成形する樹脂基板4については、上記(1)工程で説明したとおりである。樹脂としてはポリカーボネートが好ましいがこれに限定されない。
射出成形の方法は特に限定されず、通常、金型を用いて樹脂を射出成形するのと同様の方法が適用できる。図3Aおよび図3Bに、本発明の製造方法において樹脂基板を射出成形する際の一例の断面図を示す。図3Aおよび図3Bには、上型の金型12aと下型の金型12bを備え、その2つの金型12a、12bにより形成される空間に溶融樹脂を射出注入して樹脂基板が成形できる装置を用いて樹脂フィルム積層体付き樹脂基板を得る方法が示されている。図3Aおよび図3Bに示す方法を例にして(3)工程を具体的に説明する。
(3)工程では、図3Aに示すように、下型の金型12bに上記(2)で得られた樹脂フィルム積層体10を、金型12bの底面に樹脂フィルム積層体10の接着層3が接するように配置する。その後、図3Bに示すように、下型の金型12b上に上型の金型12aを設置し、上型の金型12aの樹脂注入口から2つの金型12a、12bにより形成される空間に溶融樹脂を射出注入し該空間を溶融樹脂で充填し、樹脂フィルム積層体10の樹脂フィルム1に接するように樹脂基板4を成形する。これにより、樹脂フィルム1と樹脂基板4との間の密着性が高い樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11を得る。
製品形状として2次曲面あるいは3次曲面の絞り比が高い樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11を得るには、予め樹脂フィルム積層体10を金型の樹脂フィルム積層体10配置面の形状に賦形後、金型内に配置することが好ましい。樹脂フィルム積層体10と射出成形により形成される樹脂基板4を積層一体成形する場合、例えば、得られる樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11の曲率(H/D)が0.1を超えると、樹脂フィルム積層体10上に皺が発生することがある。この様な場合、予め樹脂フィルム積層体10を真空成形、圧空成形、プレス成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形等により予備成形を行うことが好ましく、真空成形等により形状を付与することにより賦形性に優れる樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11が得られる。
射出成形により形成される樹脂基板4の厚みは、用途によって適宜選択すればよい。窓材用途の場合、樹脂基板4の厚みは、1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは2mm〜20mmである。
ここで、射出成形の温度は、すなわち溶融樹脂の温度は、用いる樹脂の種類による。樹脂としてはポリカーボネートを用いる場合には、溶融樹脂の温度は概ね270〜380℃に設定される。また、射出成形時には2つの金型12a、12bは、通常、それぞれ電気ヒーター等で溶融樹脂の温度より200〜300℃低い温度で加温される。
本発明の製造方法においては、この射出成形時の温度に耐えられるように、上記によりプライマー層2および接着層3の材料を選択して樹脂フィルム1上に形成しているため、得られる樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11におけるプライマー層2および接着層3は、上記(2)工程後に比して変わりなく機能する。
(4)工程:ハードコート層形成工程
本発明の製造方法においては、次いで(4)工程により、上記(3)工程で得られた樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11の接着層3上にオルガノポリシロキサン(S)を主成分として含有するハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させて、接着層3を取り込むかたちにハードコート層5を形成する。これにより、例えば、図1に断面が示されるハードコート被膜付き樹脂基板20が得られる。
ハードコート層形成用組成物が主成分として含有するオルガノポリシロキサン(S)としては、硬化性のオルガノポリシロキサンであれば、特に限定されることなく用いることができる。
一般にオルガノポリシロキサンは、M単位、D単位、T単位、Q単位と呼ばれる含ケイ素結合単位から構成される。この内、本発明の製造方法におけるハードコート層5の形成に用いられる硬化性のオルガノポリシロキサンは、主としてT単位またはQ単位から構成されるオリゴマー状のポリマーが好ましい。
硬化性のオルガノポリシロキサンにおいて、T単位はT1、T2、T3と呼ばれる3種の単位に分類される。T1は他のケイ素原子に結合した酸素原子の数が1個、T2はその酸素原子の数が2個、T3はその酸素原子の数が3個である。本明細書等においては、他のケイ素原子に結合した酸素原子をOで表し、他のケイ素原子に結合できる1価の官能基をZで表す。
なお、他のケイ素原子に結合した酸素原子を表すOは、2個のケイ素原子間を結合する酸素原子であり、Si−O−Siで表される結合中の酸素原子である。したがって、Oは、2つの含ケイ素結合単位のケイ素原子間に1個存在する。言い換えれば、Oは、2つの含ケイ素結合単位の2つのケイ素原子に共有される酸素原子を表す。後述する含ケイ素結合単位の化学式において、1つのケイ素原子にOが結合しているように表現するが、このOは他の含ケイ素結合単位のケイ素原子と共有している酸素原子であり、2つの含ケイ素結合単位がSi−O−O−Siで表される結合で結合することを意味するものではない。
モノマーは、(R’−)Si(−Z)4−aで表される。ただし、aは0〜3の整数、R’は水素原子または1価の有機基、Zは水酸基または他のケイ素原子に結合できる1価の官能基を表す。この化学式において、a=3の化合物がMモノマー、a=2の化合物がDモノマー、a=1の化合物がTモノマー、a=0の化合物がQモノマーである。モノマーにおいて、Z基は通常加水分解性基である。また、R’が2または3個存在する場合(aが2または3の場合)、複数のR’は異なっていてもよい。R’としては、後述する好ましいRと同じ範疇のものが好ましい。
モノマーのZ基が加水分解性基である場合、そのZ基としては、アルコキシ基、塩素原子、アシルオキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。多くの場合、モノマーとしてはZ基がアルコキシ基のモノマーが使用される。
オルガノポリシロキサン(S)としては、これら硬化性のオルガノポリシロキサンのうちでも、T単位を主な含ケイ素結合単位として構成される硬化性のオルガノポリシロキサンが好ましい。以下、特に言及しない限り、硬化性のオルガノポリシロキサンを単にオルガノポリシロキサンという。また、本明細書において、T単位を主な構成単位とするオルガノポリシロキサン(以下、必要に応じて「オルガノポリシロキサン(T)」という。)とは、M単位、D単位、T単位およびQ単位の合計数に対するT単位数の割合が50〜100%のオルガノポリシロキサンをいう。オルガノポリシロキサン(S)としては、該T単位数の割合が70〜100%のオルガノポリシロキサン(T)がより好ましく、該T単位数の割合が90〜100%のオルガノポリシロキサン(T)が特に好ましい。また、T単位以外に少量含まれる他の単位としてはD単位とQ単位が好ましく、特にQ単位が好ましい。
すなわち、オルガノポリシロキサン(S)としては、これら硬化性のオルガノポリシロキサンのうちでも、T単位とQ単位のみで構成され、その個数の割合がT:Q=90:10〜100:0であるオルガノポリシロキサン(T)が特に好ましい。
なお、オルガノポリシロキサンにおけるM単位、D単位、T単位、Q単位の数の割合は、29Si−NMRによるピーク面積比の値から計算できる。
オルガノポリシロキサン(S)としては、下記T1〜T3で表されるT単位を有するオルガノポリシロキサン(T)がさらに好ましい。
T1:R−Si(−OX)(−O−)
T2:R−Si(−OX)(−O−)
T3:R−Si(−O−)
(式中、Rは炭素数が1〜6のアルキル基を表し、Xは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Oは2つのケイ素原子を連結する酸素原子を表す。)
上記化学式におけるRは、1種に限定されず、T1、T2、T3はそれぞれ複数種のRを含んでいてもよい。また、上記化学式における−OXは水酸基またはアルコキシ基を表す。−OXはT1およびT2の間で同一であっても異なっていてもよい。T2における2つの−OXは異なっていてもよく、例えば、一方が水酸基で他方がアルコキシ基であってもよい。また、2つの−OXがいずれもアルコキシ基である場合、それらのアルコキシ基は異なるアルコキシ基であってもよい。ただし、後述のように、通常は2つのアルコキシ基は同一のアルコキシ基である。
なお、2個のケイ素原子を結合する酸素原子(O)を有しない、−OXのみを3個有するT単位を以下T0という。T0は、実際には、オルガノポリシロキサン中に含まれる未反応のTモノマーに相当し、含ケイ素結合単位ではない。このT0は、T1〜T3の単位の解析においてT1〜T3と同様に測定される。
オルガノポリシロキサン中のT0〜T3は、核磁気共鳴分析(29Si−NMR)によりオルガノポリシロキサン中のケイ素原子の結合状態を測定することにより、解析することができる。T0〜T3の数の比は、29Si−NMRのピーク面積比から求める。オルガノポリシロキサン分子中の−OXは、赤外吸光分析により解析できる。ケイ素原子に結合した水酸基とアルコキシ基の数の比は、両者の赤外吸収ピークのピーク面積比から求める。オルガノポリシロキサンのMw、数平均分子量(以下、適宜「Mn」と示す。)、および分散度(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値をいう。このようなオルガノポリシロキサンの特性は、分子1個の特性をいうものではなく、各分子の平均の特性として求められるものである。
オルガノポリシロキサン(T)において、1分子中に複数存在するT1、T2、T3はそれぞれ異なる2種以上が存在していてもよい。例えば、Rが異なる2種以上のT2が存在していてもよい。このようなオルガノポリシロキサンは、2種以上のTモノマーの混合物から得られる。例えば、Rが異なる2種以上のTモノマーの混合物から得られるオルガノポリシロキサン中には、Rが異なるそれぞれ2種以上のT1、T2、T3が存在すると考えられる。Rが異なる複数のTモノマーの混合物から得られたオルガノポリシロキサン中の異なるRの数の比は、T単位全体として、Rが異なるTモノマー混合物の組成比を反映している。しかし、T1、T2、T3それぞれにおけるRが異なる単位の数の比は、Rが異なるTモノマー混合物の組成比を反映しているとは限らない。なぜならば、たとえTモノマーにおける3個の−OXが同一であっても、Tモノマー、T1、T2の反応性がRの相違によって異なる場合があるからである。
オルガノポリシロキサン(T)は、R−Si(−OM)で表されるTモノマーの少なくとも1種から製造されることが好ましい。この式において、Rは上記のRと同一であり、Mは炭素数1〜3のアルキル基を表す。Mは非置換のアルキル基以外に、アルコキシ置換アルキル基などの置換アルキル基であってもよい。1分子中の3個のMは異なっていてもよい。しかし、通常は3個のMは同一のアルキル基である。Mは、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、炭素数1または2であることがより好ましい。具体的なMとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基等が挙げられる。
Rは炭素数が1〜6のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。Rとしては、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
オルガノポリシロキサン(T)としては、Rとして炭素数1〜4のアルキル基を有するTモノマーの単独またはその2種以上を使用して得られるオルガノポリシロキサンが好ましい。
Rとして炭素数1〜6のアルキル基を有するTモノマーの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランが挙げられる。特に、メチルトリメトキシシランまたはエチルトリメトキシシランが好ましい。
R−Si(−OM)で表されるTモノマー以外の(R’−)Si(−Z)4−aで表されるTモノマー(a=3)としては、例えば、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシランなどが挙げられる。
(R’−)Si(−Z)4−aで表されるDモノマー(a=2)において、2個のR’は同一であっても、異なっていてもよい。同一の場合は、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。異なる場合は、一方のR’が炭素数1〜4のアルキル基であり、他方のR’が前記官能基や官能基含有有機基などで置換された置換有機基であることが好ましい。また、Z基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基、アセトキシ基等が好ましい。
Dモノマーとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−シアノエチルメチルジメトキシシランが挙げられる。
(R’−)Si(−Z)4−aで表されるQモノマー(a=0)において、4個のZ基は異なっていてもよいが、通常は同一である。Z基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基またはエトキシ基であることが好ましい。Qモノマーとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、が挙げられる。
本発明に用いるオルガノポリシロキサン(T)は、上記Tモノマー等を部分加水分解縮合させることによって得られる。通常、Tモノマー等と水とを溶媒中で加熱することによりこの反応を行う。反応系には触媒を存在させることが好ましい。モノマーの種類、水の量、加熱温度、触媒の種類や量、反応時間等の反応条件を調節して、目的のオルガノポリシロキサンを製造することができる。また、場合によっては、市販のオルガノポリシロキサンをそのまま目的のオルガノポリシロキサンとして使用することや、市販のオルガノポリシロキサンを使用して目的とするオルガノポリシロキサンを製造することも可能である。
上記触媒としては、酸触媒が好ましい。酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。特に、酢酸が好ましい。上記溶媒としては親水性の有機溶媒が好ましく、特にアルコール系溶媒が好ましい。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エトキシエタノール、ジアセトンアルコール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。反応温度は、触媒が存在する場合室温で反応させることができる。通常は、20〜80℃の反応温度から目的に応じて適切な温度を採用する。
後述のように、本発明に用いるオルガノポリシロキサン(T)のうちでも、オルガノポリシロキサン(a)は、T0やT1の存在量が少なく、かつT2とT3の存在量の比が特定の範囲にある比較的高分子量のオルガノポリシロキサンであり、このようなオルガノポリシロキサンは比較的温和な反応条件を選択することにより製造することができる。
上記縮合反応の反応性はRによって変化し、Rが異なると水酸基の反応性も変化する。通常Rが小さいほど(例えば、Rがアルキル基の場合、アルキル基の炭素数が少ないほど)、水酸基の反応性は高い。したがって、加水分解性基の反応性と水酸基の反応性の関係を考慮して、Tモノマーを選択することが好ましい。
オルガノポリシロキサン(S)は、このようにして得られる硬化性のオルガノポリシロキサン(T)の1種の単独からなってもよく、2種以上からなってもよい。耐擦傷性、耐候性の観点から特に好ましいオルガノポリシロキサン(T)の組合せは、以下に説明するオルガノポリシロキサン(a)とオルガノポリシロキサン(b)との組合せである。ただし、本発明にオルガノポリシロキサン(S)として用いる硬化性オルガノポリシロキサンはこれらに限定されるものではない。また、オルガノポリシロキサン(a)およびオルガノポリシロキサン(b)が、それぞれ単独でオルガノポリシロキサン(S)として本発明に使用されることを妨げるものでもない。
(オルガノポリシロキサン(a))
本発明に用いるオルガノポリシロキサン(a)は、T1〜T3の各単位を、T1:T2:T3=0〜5:30〜45:50〜70、かつT3/T2≧1.5の割合で含む。また、オルガノポリシロキサン(a)中のOX基について、それがアルコキシ基である個数(A)とそれが水酸基である個数(B)との割合、(B)/(A)が分子平均で12.0〜100である。かつ、オルガノポリシロキサン(a)のMwは800〜8,000である。なお、オルガノポリシロキサン(a)は、TモノマーであるT0を実質的に含まない。
オルガノポリシロキサン(a)を構成するT1、T2およびT3の割合については、上記条件に加えて、(T2+T3)/(T1+T2+T3)が0.85〜1.00の範囲にあることが好ましく、0.90以上1.00未満であることがより好ましい。また、T3/T2については、好ましい範囲は1.5〜2.0である。
オルガノポリシロキサン(a)を構成するT1、T2およびT3の割合を、各分子の平均組成でこのような範囲にすることで、オルガノポリシロキサン(a)と後述するオルガノポリシロキサン(b)とを組み合わせて、上記ハードコート層形成用組成物に用いた際に、得られるハードコート層5の耐擦傷性および耐候性を向上させることが可能となる。
オルガノポリシロキサン(a)における(B)/(A)は、縮合反応性を示すパラメータである。この値が大きいほど、つまりアルコキシ基に比べて水酸基の割合が多いほど、オルガノポリシロキサン(a)とオルガノポリシロキサン(b)とを組み合わせてハードコート層形成用組成物に用いた場合に、ハードコート層形成時の硬化反応が促進される。また、ハードコート層形成時に未反応で残ったアルコキシ基は、ハードコート層5の耐擦傷性の低下を招くおそれがあり、後硬化が進行すればマイクロクラックの原因ともなるため、アルコキシ基に比べて水酸基の割合が多いほどよい。オルガノポリシロキサン(a)における(B)/(A)は、12.0〜100であるが、好ましくは16.0から60である。
(B)/(A)の値が12.0未満であると、アルコキシ基に比べて水酸基の割合が少なすぎて、硬化反応促進の効果が得られず、またアルコキシ基の影響により耐擦傷性の低下を招くおそれがあり、後硬化が進行してマイクロクラックの原因となる。つまり、(B)/(A)の値が12.0未満であると、ハードコート層形成に際して、オルガノポリシロキサン(a)とオルガノポリシロキサン(b)の硬化反応により形成される三次元架橋構造(ネットワーク)に、オルガノポリシロキサン(a)の一部が組み込まれずブリードアウトしやすくなること等に起因して、架橋密度が低下し、耐摩耗性が得られない、硬化が十分に進行しにくくなる等の問題が発生するおそれがある。(B)/(A)の値が100を超えると、アルコキシ基に比べて水酸基の割合が多すぎて、硬化反応によるハードコート層の収縮応力が大きくなりすぎるおそれがあり、クラックの原因となる。
オルガノポリシロキサン(a)のMwは800〜8,000であり、好ましくは、1,000〜6,000である。オルガノポリシロキサン(a)のMwがこの範囲にあることで、オルガノポリシロキサン(a)とオルガノポリシロキサン(b)とを組み合わせてハードコート層形成用組成物に用いた場合に、得られるハードコート層5の耐擦傷性および耐候性を十分に向上させることができる。
本発明において、特に耐擦傷性に優れたハードコート層5を形成するために用いるオルガノポリシロキサン(a)を得るには、原料の加水分解性シラン化合物として、全Tモノマー中70質量%以上がメチルトリアルコキシシラン、好ましくはアルコキシ基の炭素数は1〜3、を用いることが好ましい。ただし、密着性の改善、親水性、撥水性等の機能発現を目的として少量のメチルトリアルコキシシラン以外のTモノマーを併用することもできる。
オルガノポリシロキサン(a)を製造する方法としては、上記のように、溶媒中で酸触媒存在下にモノマーを加水分解縮合反応させる。ここで加水分解に必要な水は、モノマー1モルに対して通常、水1〜10モル、好ましくは1.5〜7モル、さらに好ましくは3〜5モルである。モノマーを加水分解および縮合する際に、コロイダルシリカ(後述する)が存在する反応系で行うこともでき、このコロイダルシリカとして水分散型のコロイダルシリカを使用した場合は、水はこの分散液から供給される。酸触媒の使用量は、モノマー100質量%に対して、0.1〜50質量%が好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。溶媒としては、上記アルコール系溶媒が好ましく、得られるオルガノポリシロキサン(a)の溶解性が良好な点から、具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、または2−ブタノールが特に好ましい。
通常、反応温度は20〜40℃、反応時間は1時間〜数日間が採用される。モノマーの加水分解縮合反応は発熱反応であるが、系の温度は60℃を超えないことが好ましい。このような条件で十分に加水分解反応を進行させ、ついで、得られるオルガノポリシロキサンの安定化のため40〜80℃で1時間〜数日間縮合反応を進行させることも好ましく行われる。
オルガノポリシロキサン(a)は、また、市販のオルガノポリシロキサンから製造することができる。市販のオルガノポリシロキサンは、通常水酸基に比較してアルコキシ基の割合が高いオルガノポリシロキサンであるので、特に、上記(B)/(A)以外は目的とするオルガノポリシロキサン(a)に類似した市販のオルガノポリシロキサンを使用し、加水分解反応で水酸基の割合を高めて、オルガノポリシロキサン(a)を製造することが好ましい。
オルガノポリシロキサン(a)の原料として使用できる市販のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物である以下のオルガノポリシロキサンがある。なお、「ND」の表記は、核磁気共鳴分析装置、日本電子社製、ECP400(商品名)を用いて29Si−NMRのピーク面積比を測定した際に、検出量以下であることを示す(以下同様)。
メチル系シリコーンレジンKR−220L(商品名、信越化学工業社製);T0:T1:T2:T3=ND:ND:28:72、Si−OH/SiO−CH=11.7、Mw=4720、Mn=1200、Mw/Mn=3.93。
メチル系シリコーンレジンKR−500(商品名、信越化学工業社製);T0:T1:T2:T3=ND:15:58:27、Si−OH基由来のピークはFT−IRにより確認されず、実質SiO−CHのみ存在。Mw=1240、Mn=700、Mw/Mn=1.77。
上記のような市販のオルガノポリシロキサンからオルガノポリシロキサン(a)を製造する場合、市販のオルガノポリシロキサンを、酸触媒存在下で主にアルコキシ基の加水分解を行うことが好ましい。例えば、市販のオルガノポリシロキサンに0〜10倍量(質量)の溶媒を加え、よく撹拌し、次いで0.1〜70質量%程度の濃度の酸水溶液を添加して、15〜80℃、好ましくは20〜70℃の温度で1〜24時間撹拌する等の方法が挙げられる。用いる溶媒としては水溶媒が使用でき、そのほか水を添加した上記アルコール系溶媒も使用できる。
(オルガノポリシロキサン(b))
本発明に用いるオルガノポリシロキサン(b)は、上記T1〜T3で表される含ケイ素結合単位を有し、オルガノポリシロキサン(a)のMwの1/10〜1/1.5倍のMwを有するオルガノポリシロキサンである。T1、T2、T3の数の比、T3/T2の割合、(B)/(A)の比は特に限定されない。
オルガノポリシロキサン(b)のMwは、好ましくは組み合わされるオルガノポリシロキサン(a)の1/8〜1/1.5倍である。オルガノポリシロキサン(b)のMwがオルガノポリシロキサン(a)のMwの1/1.5倍を超えると、言い換えれば、オルガノポリシロキサン(a)のMwがオルガノポリシロキサン(b)のMwの1.5倍未満では、得られるハードコート層5の靱性が低下し、クラックの発生の要因となる。また、オルガノポリシロキサン(b)のMwがオルガノポリシロキサン(a)のMwの1/10倍未満では、言い換えれば、オルガノポリシロキサン(a)のMwがオルガノポリシロキサン(b)のMwの10倍を超えると、得られるハードコート層5の耐擦傷性が低くなり、十分な耐擦傷性を有するハードコート層5を得ることができない。
より好ましいオルガノポリシロキサン(b)は、T0、T1、T2およびT3で示される各含ケイ素結合単位が、これらの単位の個数の割合で、T0:T1:T2:T3=0〜5:0〜50:5〜70:10〜90の範囲にあるオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサン(b)中のT0およびT1の割合が大きいということは、一般にそのオルガノポリシロキサンを製造する際に、原料モノマーの加水分解反応や縮合反応が不充分であったことを示す。オルガノポリシロキサン(b)において、T0およびT1の割合が大きいと、これとオルガノポリシロキサン(a)とを含有するハードコート層形成用組成物を用いて、ハードコート層5を形成させる際の熱硬化時に、クラックの発生が多くなる傾向となる。また、一般にオルガノポリシロキサンを製造する際に、原料モノマーの縮合反応を進行させすぎると得られるオルガノポリシロキサンのT3の割合が高くなる。オルガノポリシロキサン(b)において、T3の割合が必要以上に高くなると、これとオルガノポリシロキサン(a)を含むハードコート層形成用組成物を用いて、ハードコート層5を形成させる際の熱硬化時に、適切な架橋反応が困難になるため、ハードコート層5を形成できなくなるおそれがあり、また十分な耐擦傷性を有するハードコート層5を得ることができないことがある。
オルガノポリシロキサン(b)としては、オルガノポリシロキサン(a)と同様にTモノマー等から製造することができる。また、市販のオルガノポリシロキサンをそのままオルガノポリシロキサン(b)として使用することができる。オルガノポリシロキサン(b)として使用することができる市販のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記のオルガノポリシロキサンがある。なお、「trace」の表記は、核磁気共鳴分析装置、日本電子社製、ECP400(商品名)を用いて29Si−NMRのピーク面積比を測定した際に、0.01以上0.25以下であることを示す(以下同様)。
トスガード510(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製);分子量:Mn=1370、Mw=1380、Mw/Mn=1.01。T単位の個数:(M単位とD単位とQ単位のそれぞれの個数の総量)=99.9以上:ND。T0:T1:T2:T3=ND:2:36:62。
KP851(商品名、信越化学工業社製);分子量:Mn=1390、Mw=1400、Mw/Mn=1.01、T単位の個数:(M単位とD単位とQ単位のそれぞれの個数の総量)=99.9以上:ND。T0:T1:T2:T3=trace:21:58:21。
(ハードコート層形成用組成物)
(4)工程においては、樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11の接着層3上にオルガノポリシロキサン(S)を主成分として含有するハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させて、ハードコート層5を形成する。
ハードコート層形成用組成物におけるオルガノポリシロキサン(S)の含有量は、溶媒等の揮発成分を除く固形分全量に対して、50〜100質量%であり、60〜95質量%が好ましい。
ハードコート層形成用組成物におけるオルガノポリシロキサン(S)としては、上記のとおりオルガノポリシロキサン(T)が好ましく、オルガノポリシロキサン(T)のうちでもオルガノポリシロキサン(a)とオルガノポリシロキサン(b)の組み合わせがより好ましい。オルガノポリシロキサン(a)とオルガノポリシロキサン(b)の含有割合としては、オルガノポリシロキサン(a)の100質量%に対して、オルガノポリシロキサン(b)が100〜500質量%となる割合が好ましい。
オルガノポリシロキサン(a)の100質量%に対するオルガノポリシロキサン(b)の割合としては、150〜400質量%がより好ましい。オルガノポリシロキサン(S)は、オルガノポリシロキサン(a)およびオルガノポリシロキサン(b)以外のオルガノポリシロキサンをオルガノポリシロキサン(S)の全量に対して20質量%以下の割合で含有できる。その場合、オルガノポリシロキサン(a)および同(b)以外のオルガノポリシロキサンとしてもオルガノポリシロキサン(T)が好ましい。オルガノポリシロキサン(S)は、好ましくは、オルガノポリシロキサン(a)とオルガノポリシロキサン(b)のみで構成される。オルガノポリシロキサン(S)が上記割合で両者を含有することで、硬化反応により形成されるオルガノポリシロキサン三次元架橋構造が、主としてオルガノポリシロキサン(b)の三次元架橋構造中に(a)成分オルガノポリシロキサンが適度に組み込まれた構成となり、得られるハードコート層5の耐候性および耐擦傷性を良好なものとすることができる。
なお、ハードコート層5は接着層3を取り込むかたちに形成される。このようなハードコート層5において、プライマー層2と接する側は、接着層3を構成していた成分の占める割合が高く、表層はほぼハードコート層形成用組成物が単独で硬化して得られる成分のみからなる。これにより、ハードコート層5においては、プライマー層2との密着性に優れるとともに、表層部分はハードコート層形成用組成物が単独で硬化して得られる層と同等のハードコート機能、例えば、優れた耐擦傷性等を有する。
本発明に用いるハードコート層形成用組成物には、上記オルガノポリシロキサン(S)の他に、種々の添加剤が含まれていてもよい。例えば、得られるハードコート被膜付き樹脂基板20のハードコート層5の耐擦傷性をさらに向上させるために、ハードコート層5がシリカ微粒子を含有することが好ましく、そのために、シリカ微粒子が含有されるハードコート層形成用組成物が好ましく用いられる。ハードコート層形成用組成物にシリカ微粒子を配合するために、具体的には、コロイダルシリカを配合することが好ましい。なお、コロイダルシリカとは、シリカ微粒子が、水またはメタノール、エタノール、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒中に分散されたものをいう。
また、シリカ微粒子は、上記オルガノポリシロキサン(S)の製造過程で、原料のモノマーに配合することもできる。コロイダルシリカを含む反応系中でオルガノポリシロキサン(S)を製造することにより、シリカ微粒子を包含するオルガノポリシロキサン(S)が得られる。例えば、コロイダルシリカにTモノマーと必要に応じて水や酸触媒を添加し、コロイダルシリカの分散媒中で上記のようにオルガノポリシロキサン(S)を製造することができる。このようにして得られたオルガノポリシロキサン(S)を使用して、シリカ微粒子を含むハードコート層形成用組成物を製造することができる。
ハードコート層形成用組成物に含有される上記シリカ微粒子は、平均粒径(BET法)が1〜100nmであることが好ましい。平均粒径が100nmを超えると、粒子が光を乱反射するため、得られるハードコート層5のヘーズ(曇価)の値が大きくなり、光学品質上好ましくない場合がある。さらに、平均粒径は5〜40nmであることが特に好ましい。これは、ハードコート層5に耐擦傷性を付与しつつ、かつハードコート層5の透明性を保持するためである。また、コロイダルシリカは、水分散型と有機溶剤分散型のどちらも使用することができるが、水分散型を使用することが好ましい。さらには、酸性水溶液中で分散させたコロイダルシリカを用いることが特に好ましい。さらに、コロイダルシリカには、アルミナゾル、チタニアゾル、セリアゾル等のシリカ微粒子以外の無機質微粒子を含有させることもできる。
ハードコート層形成用組成物におけるシリカ微粒子の含有量としては、固形分全量に対して1〜50質量%となる量が好ましく、5〜40質量%となる量がより好ましい。ハードコート層形成用組成物における固形分中のシリカ微粒子の含有量が1質量%未満では、得られるハードコート層5において十分な耐擦傷性を確保できないことがあり、上記含有量が50質量%を越えると、固形分中のオルガノポリシロキサン(S)の割合が低くなりすぎて、オルガノポリシロキサン(S)の熱硬化によるハードコート層形成が困難になる、得られるハードコート層5にクラックが発生する、シリカ微粒子同士の凝集が起こってハードコート層5の透明性が低下する、などのおそれがある。
ハードコート層形成用組成物は、塗工性向上の目的で、消泡剤や粘性調整剤等の添加剤をさらに含んでいてもよく、プライマー層2との密着性向上の目的で、密着性付与剤等の添加剤を含んでいてもよく、また、塗工性および得られる塗膜の平滑性を向上させる目的で、レベリング剤を添加剤として含んでいてもよい。これらの添加剤の配合量は、オルガノポリシロキサン(S)の100質量%に対して、各添加剤成分毎に0.01〜2質量%となる量が好ましい。また、ハードコート層形成用組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、染料、顔料、フィラーなどを含んでいてもよい。
ハードコート層形成用組成物は、さらに硬化触媒を含有してもよい。硬化触媒としては、脂肪族カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、コハク酸等)のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;ベンジルトリメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の四級アンモニウム塩;アルミニウム、チタン、セリウム等の金属アルコキシドやキレート;過塩素酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、イミダゾール類及びその塩、トリフルオロメチルスルホン酸アンモニウム、ビス(トルフルオルメチルスルホニル)ブロモメチルアンモニウム等が挙げられる。硬化触媒の配合量は、オルガノポリシロキサン(S)の100質量%に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。硬化触媒の含有量が0.01質量%より少ないと十分な硬化速度が得られにくく、10質量%より多いとハードコート層形成用組成物の保存安定性が低下したり、沈殿物を生じたりすることがある。
また、ハードコート層形成用組成物は、樹脂基板の黄変を抑制するために、さらに紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、ベンジリデンマロネート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種を使用してもよく2種以上を併用してもよい。また、ハードコート層5からの上記紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制するために、トリアルコキシシリル基を有する紫外線吸収剤を用いてもよい。トリアルコキシシリル基を有する紫外線吸収剤は、オルガノポリシロキサン(S)の熱硬化によるハードコート層形成の際に、加水分解反応により水酸基に変換され、次いで脱水縮合反応によりハードコート層中に組み込まれ、紫外線吸収剤のハードコート層からのブリードアウトを抑制することができるものである。このようなトリアルコキシシリル基として、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。ハードコート層形成用組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、オルガノポリシロキサン(S)の100質量%に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜15質量%であることが特に好ましい。
通常の使用においてハードコート層形成用組成物は、常温でのハードコート層形成用組成物のゲル化を防止し、保存安定性を増すために、pHを3.5〜6.0に調整することが好ましく、3.5〜5.0に調整することがより好ましい。pHが2.0以下あるいは7.0以上の条件下では、ケイ素原子に結合した水酸基が極めて不安定であるため保存に適さない。本発明に用いるハードコート層形成用組成物におけるpHの範囲は、プライマー層に用いるアクリル系ポリマー(Aa)の種類とMw、紫外線吸収剤の種類と配合量、接着層形成用組成物に用いるアクリル系ポリマー(Ab)の構造とMw、ハードコート層形成用組成物が含有するオルガノポリシロキサン(S)の種類、プライマー層の膜厚、接着層の膜厚、最終的に得られるハードコート層の膜厚、ハードコート層形成用組成物の塗工方法、ハードコート層形成用組成物の乾燥および硬化方法等によるが、概ね3.5〜4.5を好ましいpHの範囲とすることができる。
pH調整の手法としては、酸の添加、硬化触媒の含有量の調整等が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、この中でも酢酸または塩酸が好ましい。
本発明に用いるハードコート層形成用組成物は、通常、必須成分であるオルガノポリシロキサン(S)、および任意成分である種々の添加剤等が溶媒中に溶解、分散した形態で調製される。上記ハードコート層形成用組成物中の全固形分が溶媒に安定に溶解、分散することが必要であり、そのために溶媒は、少なくとも20質量%以上、好ましくは50質量%以上のアルコールを含有する。
このような溶媒に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、ジアセトンアルコール、または2−ブトキシエタノール等が好ましく、これらのうちでも、オルガノポリシロキサンの溶解性が良好な点、塗工性が良好な点から、沸点が80〜160℃のアルコールが好ましい。具体的には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、ジアセトンアルコール、または2−ブトキシエタノールが好ましい。
ハードコート層形成用組成物に用いる溶媒としては、オルガノポリシロキサン(S)を製造する際に、原料モノマー、例えばアルキルトリアルコキシシランを加水分解することに伴って発生する低級アルコール等や、水分散型コロイダルシリカ中の水で加水分解反応に関与しない水分、有機溶媒分散系のコロイダルシリカを使用した場合にはその分散有機溶媒も含まれる。
さらに、本発明に用いるハードコート層形成用組成物においては、上記以外の溶媒として、水/アルコールと混和することができるアルコール以外の他の溶媒を併用してもよく、このような溶媒としては、アセトン、アセチルアセトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類が挙げられる。
ハードコート層形成用組成物において用いる溶媒の量は、ハードコート層形成用組成物中の全固形分100質量%に対して、50〜3,000質量%であることが好ましく、150〜2,000質量%であることがより好ましい。
(4)工程においては、上記ハードコート層形成用組成物を、上記(3)工程で得られた樹脂フィルム積層体付き樹脂基板11の接着層3上に塗布して塗膜を形成し、上記塗膜中のオルガノポリシロキサン(S)を主成分として含有する硬化性成分を硬化させてハードコート層5とする。ハードコート層形成用組成物は、塗布後接着層3と十分に親和し、次いで行われる上記硬化に際して、ハードコート層形成用組成物中のオルガノポリシロキサン(S)が接着層3のアクリル系ポリマー(Ab)と反応する。これにより、接着層3はハードコート層5に取り込まれ、図1に断面図の一例が示されるハードコート被膜付き樹脂基板20が得られる。
ハードコート層形成用組成物を塗布する方法としては、特に限定されないが、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、ダイコート法、スピンコート法等の通常の塗工方法が挙げられる。塗工方法によってハードコート層形成用組成物の粘度、固形分濃度等を適宜調整することが好ましい。
接着層3上に塗布されたハードコート層形成用組成物は、通常、常温から樹脂基板4、樹脂フィルム1、プライマー層2および接着層3の熱変形温度未満の温度条件下で溶媒が乾燥、除去された後、加熱硬化される。溶媒の乾燥条件としては、例えば20〜60℃、15分間〜10時間の条件が挙げられる。また、減圧度を調整しながら真空乾燥などを用いてもよい。熱硬化反応は、樹脂基板4、樹脂フィルム1、プライマー層2および接着層3の耐熱性に問題がない範囲において高い温度で行う方がより早く硬化を完了させることができ好ましい。しかし、例えば、オルガノポリシロキサン(S)として、Rがメチル基であるオルガノポリシロキサン(a)や同(b)を用いた場合、加熱硬化時の温度が250℃以上では、熱分解によりメチル基が脱離するため、好ましくない。よって、硬化温度としては、50〜200℃が好ましく、80〜160℃が特に好ましく、90℃〜140℃がとりわけ好ましい。硬化時間は10分間〜4時間が好ましく、20分間〜3時間が特に好ましく、30分間〜2時間がとりわけ好ましい。
ハードコート層形成用組成物を接着層3上に塗布して形成される塗膜の膜厚は(硬化前の膜厚)は、組成物における固形分濃度による。ハードコート層形成用組成物が硬化した後に形成されるハードコート層の膜厚が以下の範囲になるように、固形分濃度を勘案する等して、適宜調整することが好ましい。
ハードコート層の膜厚は、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがさらに好ましく、2μm以上10μm以下であることが特に好ましい。なお、ハードコート層の膜厚とは、樹脂基板のような基板上にハードコート層形成用組成物を単独で用いて成膜して得られるハードコート層の厚さをいう。
本発明の製造方法において、ハードコート層の膜厚が小さすぎると得られるハードコート被膜付き樹脂基板において十分な耐擦傷性を確保することは困難である。一方、上記ハードコート層の膜厚が大きすぎると、クラックや剥離が発生しやすくなるおそれがある。よって、十分な耐擦傷性を確保しつつ、クラックや剥離の発生を抑制するためには、ハードコート層の膜厚は、1μm以上20μm以下であることが好ましい。
以上、本発明のハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明の製造方法はこれらに限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて、その構成を適宜変更できる。
このようにして、本発明の製造方法により、本発明のハードコート被膜付き樹脂基板が得られる。本発明のハードコート被膜付き樹脂基板は、上記構成のプライマー層と接着層をその片面に順に有する樹脂フィルムの他面に射出成形により樹脂基板を形成し、さらに接着層上にハードコート層形成用組成物を塗布、硬化させることで、接着層を取り込むかたちにハードコート層が形成された構成を有するものであって、耐擦傷性に優れるとともに耐候密着性、耐候クラック性等の耐候性に優れる。さらに、上記本発明の製造方法により製造されることで生産性の高いハードコート被膜付き樹脂基板である。
なお、本発明のハードコート被膜付き樹脂基板においては、さらなる耐擦傷性や膜強度向上のために、上記ハードコート被膜付き樹脂基板のハードコート層の上に、主成分がSiOとなるトップコート層を施してもよい。主成分がSiOとなるトップコート層の形成方法としては、上記ハードコート層上にポリ(パーヒドロ)シラザンを塗工し硬化する手法や、蒸着、スパッタなどの手法を適用することが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。例1〜8が実施例であり、例9〜13が比較例である。
[プライマー層形成用組成物の調製]
(調製例P1)
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(Mn=120,000、Mw=340,000、分散度(Mw/Mn)=2.8、酸価0mgKOH/g、Tg;105℃)と、ベンゾフェノール系紫外線吸収剤としてのジベンゾイルレゾルシノール(DBR、クラリアント社製、350〜380nmにおける吸光係数の平均値;5.5g/(mg・cm))を、PMMA100質量%に対してDBRを30質量%の割合で配合した。これを、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコール=85:15(質量比)からなる溶媒に溶解し、固形分が10質量%となるように調整し、プライマー層形成用組成物P−1を得た。
なお、ポリメタクリル酸メチルのMn、Mw、およびMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製のHLC−8220GPC、RI検出、カラム:TSKguardcolum SuperHZ−L +TSKgel SuperHZ4000+HZ3000+HZ2500+HZ2000、溶離液:THF)によって求めた。
[接着層形成用組成物の調製]
以下に示す方法で、接着層形成用組成物を調製した。なお、得られた樹脂等のMwは、上記と同様のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求めた。
(調製例S1)
撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた0.5Lのフラスコに、窒素気流下で、メチルメタクリレート(MMA)の85gと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTM)の37g、1−メトキシ−2−プロパノールの240gおよびジアセトンアルコールの42gを混合したものを入れ、80℃に加熱した。その後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)の0.98gを投入し、80℃で8時間撹拌し、MMAとMPTMとを共重合させることで、アクリル系ポリマー(Ab−1)を得た。アクリル系ポリマー(Ab−1)におけるMMA重合単位とMPTM重合単位とのモル比は85:15であった。こうして得られた溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコールの85:15(質量比)混合溶媒で希釈して固形分を10質量%として、接着層形成用組成物S−1を得た。得られたアクリル系ポリマー(Ab−1)のTgは、72℃、Mwは、44,000であった。
(調製例S2)
撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた0.1Lのフラスコに、窒素気流下で、MMAの21gとMPTMの9.3g、1−メトキシ−2−プロパノールの61g、およびジアセトンアルコールの11gを混合したものを入れ、80℃に加熱した。その後、重合開始剤としてAIBNの0.46gを投入し、80℃で8時間撹拌し、MMAとMPTMとを共重合させることで、アクリル系ポリマー(Ab−2)を得た。アクリル系ポリマー(Ab−2)におけるMMA重合単位とMPTM重合単位とのモル比は85:15であった。こうして得られた溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコールの85:15(質量比)混合溶媒で希釈して固形分を10質量%として、接着層形成用組成物S−2を得た。得られたアクリル系ポリマー(Ab−2)のTgは、80℃、Mwは、160,000であった。
(調製例S3)
撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた0.1Lのフラスコに、窒素気流下で、MMAの21gとMPTMの9.3g、1−メトキシ−2−プロパノールの61gおよびジアセトンアルコール11gを混合したものを入れ、80℃に加熱した。その後、重合開始剤としてAIBNの0.15gを投入し、80℃で8時間撹拌し、MMAとMPTMとを共重合させることで、アクリル系ポリマー(Ab−3)を得た。アクリル系ポリマー(Ab−3)におけるMMA重合単位とMPTM重合単位とのモル比は85:15であった。こうして得られた溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコールの85:15(質量比)混合溶媒で希釈して固形分を10質量%として、接着層形成用組成物S−3を得た。得られたアクリル系ポリマー(Ab−3)のTgは、84℃、Mwは、370,000であった。
(調製例S4)
撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた0.5Lのフラスコに、窒素気流下で、MMAの90gとMPTMの25g、1−メトキシ−2−プロパノールの61g、およびジアセトンアルコールの230gを混合したものを入れ、80℃に加熱した。その後、重合開始剤としてAIBNの1.1gを投入し、80℃で8時間撹拌し、MMAとMPTMとを共重合させることで、アクリル系ポリマー(Ab−4)を得た。アクリル系ポリマー(Ab−4)におけるMMA重合単位とMPTM重合単位とのモル比は90:10であった。こうして得られた溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコールの85:15(質量比)混合溶媒で希釈して固形分を10質量%として、接着層形成用組成物S−4を得た。得られたアクリル系ポリマー(Ab−4)のTgは、91℃、Mwは、170,000であった。
(調製例S5)
撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた0.5Lのフラスコに、窒素気流下で、MMAの80gとMPTMの50g、1−メトキシ−2−プロパノールの260g、およびジアセトンアルコールの45gを混合したものを入れ、80℃に加熱した。その後、重合開始剤としてAIBNの0.33gを投入し、80℃で8時間撹拌し、MMAとMPTMとを共重合させることで、アクリル系ポリマー(Ab−5)を得た。アクリル系ポリマー(Ab−5)におけるMMA重合単位とMPTM重合単位とのモル比は80:20であった。こうして得られた溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコールの85:15(質量比)混合溶媒で希釈して固形分を10質量%として、接着層形成用組成物S−5を得た。得られたアクリル系ポリマー(Ab−5)のTgは、65℃、Mwは、180,000であった。
(調製例S6)
撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた0.5Lのフラスコに、窒素気流下で、MMAの61gとMPTMの27g、1−メトキシ−2−プロパノールの180g、およびジアセトンアルコールの31gを混合したものを入れ、80℃に加熱した。その後、重合開始剤としてAIBNの6.1gを投入し、80℃で8時間撹拌し、MMAとMPTMとを共重合させることで、アクリル系ポリマー(Ab−6)を得た。アクリル系ポリマー(Ab−6)におけるMMA重合単位とMPTM重合単位とのモル比は85:15であった。こうして得られた溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコールの85:15(質量比)混合溶媒で希釈して固形分を10質量%として、接着層形成用組成物S−6を得た。得られたアクリル系ポリマー(Ab−6)のTgは、72℃、Mwは、15,000であった。
(調製例S7)
撹拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた0.5Lのフラスコに、窒素気流下で、MMAの62g、n−ブチルメタクリレート(BMA)の26g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の13g、MPTMの25g、およびジアセトンアルコールの210gを混合したものを入れ、80℃に加熱した。さらに、重合開始剤としてAIBNの0.6gを投入し、80℃で3時間撹拌して、MMA、BMA、HEMAおよびMPTMを共重合させることで、アクリル系ポリマー(Ab−7)を得た。アクリル系ポリマー(Ab−7)におけるMMA重合単位、BMA重合単位、HEMA重合単位、MPTM重合単位とのモル比は62:18:10:10であった。こうして得られた溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコールの85:15(質量比)混合溶媒で希釈して固形分を10質量%として、接着層形成用組成物S−7を得た。得られたアクリル系ポリマー(Ab−7)のTgは、46℃、Mwは、100,000であった。
(調製例S8)
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(Mn=120,000、Mw=340,000、分散度(Mw/Mn)=2.8、酸価0mgKOH/g、Tg=105℃)を、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコール=85:15(質量比)からなる溶媒に溶解し固形分を10質量%として接着層形成用組成物S−8を得た。
表1に接着層形成用組成物(S−1)〜(S−8)が含有するアクリル系ポリマー(Ab−1)〜(Ab−8)について、ポリマーを構成する重合単位のモル比と、Tg、Mw等を示す。
Figure 2014162087
[樹脂フィルム積層体の製造:(1)工程および(2)工程]
(製造例1)
厚さ130μmのビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂フィルム(旭硝子社製)に、プライマー層形成用組成物P−1をスピンコート方式で塗布した。次いで、これを25℃で20分間放置後、熱風循環式乾燥器(楠本化成社製、HISPEC HS250)を使用し、120℃で30分間加熱して硬化させて、プライマー層付き樹脂フィルムを得た((1)工程)。得られたプライマー層付き樹脂フィルムにおけるプライマー層の膜厚は3.3μmであった。
次に、こうして樹脂フィルム上に形成されたプライマー層の上に接着層形成用組成物S−1を、硬化後の接着層の膜厚が0.7μmになるようにスピンコート方式で塗布し、25℃で20分間放置後、120℃で30分間加熱して硬化させた((2)工程)。こうして、ポリカーボネート樹脂フィルム上にプライマー層と接着層がその順に形成された図2Aに断面が示されるのと同様の樹脂フィルム積層体10Aを作製した。
(製造例2)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−1を、硬化後の接着層の膜厚が1.7μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Bを作製した。
(製造例3)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−1を、硬化後の接着層の膜厚が3.4μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Cを作製した。
(製造例4)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−2を、硬化後の接着層の膜厚が0.7μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Dを作製した。
(製造例5)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−3を、硬化後の接着層の膜厚が0.7μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Eを作製した。
(製造例6)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−4を、硬化後の接着層の膜厚が1.7μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Fを作製した。
(製造例7)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−5を、硬化後の接着層の膜厚が0.7μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Gを作製した。
(製造例8)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−1を、硬化後の接着層の膜厚が5.2μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Hを作製した。
(製造例9)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−6を、硬化後の接着層の膜厚が0.7μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Iを作製した。
(製造例10)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−7を、硬化後の接着層の膜厚が0.7μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Jを作製した。
(製造例11)
製造例1と同様にして得られたプライマー層付き樹脂フィルムのプライマー層上に接着層形成用組成物S−8を、硬化後の接着層の膜厚が1.7μmになるようにスピンコート方式で塗布した以外は、製造例1と同様にして樹脂フィルム積層体10Kを作製した。
[ハードコート層形成用組成物の調製]
以下に示す方法で、ハードコート層形成用組成物を調製した。なお、オルガノポリシロキサンの分析は、以下に示す方法によって行った。
(1)ケイ素原子結合水酸基の個数(B)/ケイ素原子結合アルコキシ基の個数(A)
以下に示す各例に用いたオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合アルコキシ基として、ケイ素原子結合メトキシ基(SiO−CH)を有するもののみであったため、上記(B)/(A)として、以下の方法により求めたSi−OH/SiO−CHの比を用いた。すなわち、赤外吸光分析装置(FT−IR、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、型式:Avatar/Nicolet FT−IR360)を使用し、900cm−1付近のSi−OHに由来する吸収と、2860cm−1付近のSiO−CHに由来する吸収との面積比から、Si−OH/SiO−CHの個数の比を求めた。
(2)オルガノポリシロキサン中のケイ素原子の結合状態の解析
オルガノポリシロキサン中のケイ素原子の結合状態、具体的には、T0〜T3の存在比を、核磁気共鳴分析装置(29Si−NMR:日本電子社製、ECP400)を用いて、29Si−NMRのピーク面積比から求めた。測定条件は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製10mmφ試料管使用、プロトンデカップリング、パルス幅45°、待ち時間15sec、緩和試薬:Cr(acac)を0.1質量%、外部標準試料:テトラメチルシランである。また、各構造に由来する29Si−NMRの化学シフトは、以下のとおりである。
(T0〜T3)
T0:−40〜−41ppm
T1:−49〜−50ppm
T2:−57〜−59ppm
T3:−66〜−70ppm
(3)Mn、Mw、および分散度Mw/Mn
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、Waters社製のWaters2695、RI検出、カラム:Styragel ガードカラム+HR1+HR4+HR5E、溶離液:クロロホルム)によって求めた。
(製造例12:オルガノポリシロキサン(a)の合成およびオルガノポリシロキサン(a)を含有する溶液の調製)
0.2Lのフラスコに、メチル系シリコーンレジンKR−500(信越化学工業社製、Si−OH基由来のピークはFT−IRにより確認されず、実質SiO−CHのみである。各T単位の存在比は、T0:T1:T2:T3=ND:15:58:27、Mn=700、Mw=1240、Mw/Mn=1.77)の10gに、1−ブタノールの10gを加えてよく撹拌し、酢酸の10g、イオン交換水の10gを加え、さらによく撹拌した。この溶液を40℃で16時間撹拌し、オルガノポリシロキサン(a)としてオルガノポリシロキサンMSi−1(以下、単に「MSi−1」という。)を含有する溶液(MSi−1濃度:25質量%)を得た。
得られたMSi−1について、FT−IRおよびH−NMRにより、原料であるKR−500との比較を行ったところ、SiO−CH基由来のピークの減少とSi−OH基由来のピークの出現を確認した。FT−IRのピーク面積比から求めたMSi−1のSi−OH/SiO−CHの比((B)/(A))は49.2であった。MSi−1はT単位からなり、29Si−NMRの化学シフトから求めた各T単位の存在比は、T0:T1:T2:T3=ND:2:38:60あった。また、MSi−1のMnは520、Mwは1,150、Mw/Mnは2.22であった。
(製造例13:オルガノポリシロキサン(b)の合成およびオルガノポリシロキサン(b)組成物の溶液の調製)
1Lのフラスコに、約30nmの平均粒子径をもつ水分散シリカゾル(pH3.1、シリカ微粒子固形分;20質量%)の174gと酢酸の14gを仕込み、メチルトリメトキシシランの194gを添加した。1時間撹拌した後、組成物のpHは4.5で安定化した。この組成物を25℃で4日間熟成し、部分加水分解縮合させた。こうして、シリカゾルを包含するオルガノポリシロキサン(b)としてシリカ含有オルガノポリシロキサンPSi−1(以下、単に「PSi−1」という。)を含有する溶液(PSi−1濃度:44質量%、PSi−1におけるシリカゾル:オルガノポリシロキサン(b)=34.8:94(質量比))を得た。
得られたPSi−1中のオルガノポリシロキサン(b)は、T単位を主とした結合構造をもち、29Si−NMRの化学シフトから求めた各T単位の存在比は、T0:T1:T2:T3=ND:2:54:44であった。得られたオルガノポリシロキサン(b)には、モノマー状のT0体[R−Si(OH)](RはCH)がほぼ存在せず、原料のメチルトリメトキシシランはオリゴマー状のオルガノポリシロキサンにほぼ完全に転換されていることが確認された。得られたオルガノポリシロキサン(b)のMnは400、Mwは670、Mw/Mnは1.68であった。
次いで、上記で得られたPSi−1の溶液100質量%に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の4質量%を加え、25℃で24時間以上熟成した。希釈溶媒として、1−ブタノール:イソプロパノール:メタノール:1−メトキシ−2−プロパノールが40:40:15:5(質量比)からなる混合溶媒を用いて、固形分が25質量%(150℃、45分)、粘度が4.4mPa・sのオルガノポリシロキサン(b)を含有するPSi−1組成物の溶液を調製した。
(調製例H1)
上記製造例1で得られたMSi−1を含む溶液に、上記製造例2で得られたPSi−1を含む溶液を、MSi−1:PSi−1=20:80(質量比)で配合し、よく混合することによって、ハードコート層形成用組成物HC−1を得た。ここで、ハードコート層形成用組成物HC−1における、オルガノポリシロキサン(a)100質量%に対するオルガノポリシロキサン(b)の割合は300質量%であった。
(調製例H2)
組成物溶液の配合比率をMSi−1:PSi−1=30:70(質量比)とする以外は、調製例H1と同様にして、ハードコート層形成用組成物HC−2を作製した。なお、ハードコート層形成用組成物HC−2における、オルガノポリシロキサン(a)100質量%に対するオルガノポリシロキサン(b)の割合は170質量%であった。
得られたハードコート層形成用組成物HC−1、HC−2が含有する各成分の含有量およびオルガノポリシロキサン(T)の構成について表2に示す。表2中、(B)/(A)は、Si−OH/SiO−CHの比を示す。OPSはオルガノポリシロキサンを、UVAは紫外線吸収剤を意味する。
Figure 2014162087
[ハードコート被膜付き樹脂基板の作製:(3)工程および(4)工程]
(例1)
製造例1で製造した樹脂フィルム積層体10A(サイズ:170mm×170mm)を、平板金型(キャビティサイズ:400mm×400mm、厚み4mm)の内面を構成する一方の面の中央に、該樹脂フィルム積層体の接着層が接するように配置し、金型を閉じた。次いで、若干(2mm)金型を開いた後、該金型内へビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂(Bayer社製、AG−2677(商品名)、Mw;48,000)を溶融樹脂温度300℃、金型温度90℃の成形条件で射出注入した。上記平板金型内を溶融樹脂で充填率が100%となるように充填した後、直ぐに金型を2mm/secの速度で閉じた。成形品を金型から取り出して樹脂フィルム積層体付き樹脂基板を得た((3)工程)。
この樹脂フィルム積層体付き樹脂基板の接着層上に、ハードコート層形成用組成物HC−1をディップコート方式で該組成物を樹脂基板上に単独で塗布、硬化させたときの膜厚として5.0μmになる量を塗布し、25℃で20分間放置後、120℃で1時間加熱して硬化させた。このようにして、下から順にポリカーボネート樹脂基板、ポリカーボネート樹脂フィルムが積層され、その上にプライマー層と、ハードコート層からなるハードコート被膜を有するハードコート被膜付き樹脂基板20Aを作製した((4)工程)。
(例2)
製造例2で製造した樹脂フィルム積層体10Bを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Bを作製した。
(例3)
製造例3で製造した樹脂フィルム積層体10Cを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Cを作製した。
(例4)
製造例3で製造した樹脂フィルム積層体10Cを使用し、ハードコート層形成用組成物HC−2を使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Dを作製した。
(例5)
製造例4で製造した樹脂フィルム積層体10Dを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Eを作製した。
(例6)
製造例5で製造した樹脂フィルム積層体10Eを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Fを作製した。
(例7)
製造例6で製造した樹脂フィルム積層体10Fを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Gを作製した。
(例8)
製造例7で製造した樹脂フィルム積層体10Gを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Hを作製した。
(例9)
製造例8で製造した樹脂フィルム積層体10Hを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Iを作製した。
(例10)
製造例9で製造した樹脂フィルム積層体10Iを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板を作製しようとしたが、工程(3)で射出成型金型内表面への接着層樹脂残りが発生したため、ハードコート層形成用組成物の塗布が行えず、この段階で作製を中止した。
(例11)
製造例10で製造した樹脂フィルム積層体10Jを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板11を作製しようとしたが、工程(3)で射出成型金型内表面への接着層樹脂残りが発生したため、ハードコート層形成用組成物の塗布が行えず、この段階で作製を中止した。
(例12)
製造例11で製造した樹脂フィルム積層体10Kを使用する以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Jを作製した。
(例13)
樹脂フィルム積層体の代わりにポリカーボネート/PMMA共押フィルム(C003(商品名)、住友化学社製、厚さ:ポリカーボネート;110μm、PMMA層;20μm)を用い、平板金型の内面を構成する一方の面に、上記共押フィルムのPMMA層が接するように配置した以外は、例1と同様にして、ハードコート被膜付き樹脂基板20Kを作製した。
[ハードコート被膜付き樹脂基板の評価]
上記例1〜13において、以下の方法で射出成形時の樹脂残り、射出成形後の外観を評価した。また、例1〜9、例12、13でそれぞれ得られたハードコート被膜付き樹脂基板20A〜20Kについて、以下の方法で初期における外観、耐擦傷性、密着性、および耐候性試験後の外観(耐候クラック性)、耐候密着性を評価した。結果を、接着層形成用組成物の種類および製造過程におけるプライマー層、接着層、ハードコート層の膜厚とともに示す。
<1>射出成形工程評価
<1−1>射出成形金型内表面への接着層樹脂残り
射出成形金型内表面への接着層の樹脂残りを目視によって観察し、下記基準にしたがって異常の有無を判定した。
○:異常なし
×:金型内表面への樹脂残りあり
<1−2>射出成形品初期外観
射出成形((3)工程)後、ハードコート層塗工((4)工程)前の射出成形品の外観を目視によって観察し、下記基準にしたがって異常の有無を判定した。
○:異常なし
×:成形品の接着層側表面に荒れあり
<2>初期評価
<2−1>初期外観
初期のハードコート被膜の外観を目視によって観察し、下記基準にしたがって異常の有無を判定した。
○:異常なし
×:ハードコート被膜にクラックまたは剥離あり
<2−2>初期耐擦傷性
JIS K7105(6.4)に準拠し、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、型式:HGM−2)により、試験前のヘーズ(曇価)を測定した。また、JIS K5600(5.9)に準拠し、テーバー磨耗試験機(東洋精機製作所社製、型式:ROTARY ABRASION TESTER)に磨耗輪 CALIBRASE(登録商標)CS−10F(TABER社製)を装着し、荷重500g下で500回転後(試験後)のヘーズ(曇価)を測定した。試験後と試験前のヘーズ(曇価)差ΔH500を耐擦傷性とした。耐擦傷性の判定基準としては、ΔH500≦+10であれば合格と判定される。
<2−3>初期密着性
JIS K5600(5.6)に準拠し、カミソリ刃を用いて、ハードコート被膜に1mm間隔で縦、横11本ずつ切れ目を入れて100個の碁盤目を作製し、セロテープ(登録商標)(ニチバン社製、CT24)をよく付着させた後、剥離テストを行った。ハードコート被膜が剥離せずに残存したマス目数をXとし、X/100で初期密着性を表示した。
<3>耐候性試験
光源にメタルハライドランプを用いた促進耐候性試験機(ダイプラ・ウインテス製;ダイプラ・メタルウェザーKW−R5TP−A)を用い、光の照射、結露、暗黒の3条件を連続で90サイクル(1080時間)負荷した。ここで、光照射の条件は、照度80mW/cm、ブラックパネル温度63℃、相対湿度80%で4時間光を照射するものであり、結露の条件は、光を照射せずに相対湿度98%でブラックパネル温度を63℃から30℃に自然冷却させて4時間保持するものであり、暗黒の条件は、光を照射せずにブラックパネル温度75℃、相対湿度90%で4時間保持するものである。さらに、前記結露の前後に水によるシャワー処理を各10秒間ずつ実施した。
<3−1>耐候クラック性(外観)
上記耐候性試験において、50サイクル(600時間)後のハードコート被膜の外観を目視によって観察し、下記基準で異常の有無を判定した。
○:異常なし
×:ハードコート被膜にクラックまたは剥離あり
<3−2>耐候クラック性(耐久時間(時間))
上記耐候性試験中、10サイクル終了毎にハードコート被膜の外観を目視によって観察し、ハードコート被膜にクラック、剥離等の異常が確認されたサイクル数を記録した。耐久時間は、異常が確認された直前のサイクル数(10サイクル単位)に12時間を乗じて算出した。なお、例4は90サイクル(1080時間)後も外観に異常が認められなかった。
<3−3>耐候密着性
上記耐候性試験後のハードコート被膜について初期密着性と同様の剥離テストを行った。ハードコート被膜が剥離せずに残存したマス目数をXとし、X/100で耐候密着性を表示した。
Figure 2014162087
なお、表3中、HC層はハードコート層を、HC被膜はハードコート被膜を意味する。
表3からわかるように、Mwが20,000以上かつTgが、上記射出成形の温度300℃−240℃=60℃より高いシリル基含有のアクリル系ポリマー(Ab)を主成分とする接着層を有する例1〜8のハードコート被膜付き樹脂基板20A〜20Hでは、接着層の射出成形金型への樹脂残りによる悪影響が見られず、成形体の表面外観も優れていた。さらに、耐候性試験後のハードコート被膜の外観が良好であるうえに、耐候密着性にも優れていた。
これに対して、例9のハードコート被膜付き樹脂基板20Iは、用いた樹脂フィルム積層体10Hにおける接着層の膜厚が本発明の範囲外であり、接着層の射出成形金型への樹脂残りによる悪影響が見られず、成形体の表面外観も優れていたが、耐候性試験後のハードコート被膜の外観が悪く、耐候密着性も悪かった。また、Mwが20,000未満であるシリル基含有アクリル系ポリマーを主成分とする接着層を有する樹脂フィルム積層体10Iを用いた例10と、Tgが60℃以下であるシリル基含有アクリル系ポリマーを主成分とする接着層を有する樹脂フィルム積層体10Jを用いた例11では、射出成形後に金型への樹脂残りがみられ、成形体の表面外観も荒れていた。そのため、ハードコート層が形成できなかった。
また、加水分解性シリル基を持たない組成物により接着層を構成した例12では、接着層の射出成形金型への樹脂残りによる悪影響が見られず、成形体の表面外観も優れていたが、ハードコート層とプライマー層との密着性が不十分であるため、耐候性試験後のハードコート被膜の耐候密着性が悪かった。
さらに、樹脂フィルム積層体の代わりにポリカーボネート/PMMA共押フィルムを使用した例13では、PMMA層に含まれるUVA量が不十分であるため耐候性試験後のハードコート被膜の耐候密着性が悪かった。
本発明の製造方法により効率よく得られるハードコート被膜付き樹脂基板は、耐擦傷性および耐候性に優れ、自動車や各種交通機関に取り付けられる車輌用の窓ガラス、家屋、ビル等の建物に取り付けられる建材用の窓ガラス、として好適に使用することができる。
20…ハードコート被膜付き樹脂基板、10…樹脂フィルム積層体、11…樹脂フィルム積層体付き樹脂基板、12a,12b…金型
1…樹脂フィルム、2…プライマー層、3…接着層、4…樹脂基板、5…ハードコート層。

Claims (7)

  1. 射出成形により形成される樹脂基板の一方の面上に、前記樹脂と同種の樹脂からなるフィルムを介してハードコート被膜を有するハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法であって、下記(1)〜(4)の工程を有するハードコート被膜付き樹脂基板の製造方法。
    (1)前記樹脂フィルムの一方の主面上に、ガラス転移点が前記射出成形の温度−240℃の温度より高く、質量平均分子量が20,000〜1,300,000のアクリル系ポリマー(Aa)を主成分とするプライマー樹脂成分を固形分の主体として含有するプライマー層形成用組成物を塗布し乾燥させて、プライマー層を形成させる工程
    (2)前記プライマー層の上に、ガラス転移点が前記射出成形の温度−240℃の温度より高く、質量平均分子量が20,000〜500,000であり、側鎖に芳香族炭化水素基を有する重合単位を含有せず、かつ側鎖に加水分解性シリル基および/またはSiOH基を有する重合単位(ua)を含有するアクリル系ポリマー(Ab)を主成分として含有する接着層形成用組成物を塗布し乾燥させて、0.5〜4.0μmの膜厚の接着層を形成し、樹脂フィルム積層体を得る工程
    (3)前記樹脂フィルム積層体における前記樹脂フィルムの他方の主面上に射出成形により樹脂基板を形成し樹脂フィルム積層体付き樹脂基板を得る工程
    (4)前記樹脂フィルム積層体付き樹脂基板の前記接着層上にオルガノポリシロキサン(S)を主成分として含有するハードコート層形成用組成物を塗布し硬化させて、ハードコート被膜付き樹脂基板を得る工程
  2. 前記樹脂基板および樹脂フィルムを構成する樹脂がポリカーボネートであり、前記アクリル系ポリマー(Aa)のガラス転移点が60℃超150℃以下であり、前記アクリル系ポリマー(Ab)のガラス転移点が60℃超100℃以下である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記アクリル系ポリマー(Ab)は、前記重合単位(ua)をポリマーを構成する重合単位全体に対して10〜20モル%の割合で含有するとともに、メタクリル酸メチルに基づく重合単位(ub)を含有し、前記重合単位(ub)の含有割合は、前記重合単位(ua)を除いた前記アクリル系ポリマー(Ab)を構成する重合単位の全体に対して80〜100モル%である請求項2記載の製造方法。
  4. 前記オルガノポリシロキサン(S)が、下記T1〜T3で表される含ケイ素結合単位を、前記単位の個数の割合で、T1:T2:T3=0〜5:30〜45:50〜70、かつT3/T2≧1.5の割合で含み、分子内のケイ素原子に結合するアルコキシ基の個数(A)に対するケイ素原子に結合する水酸基の個数(B)の割合、(B)/(A)が分子平均で12.0〜100であり、質量平均分子量が800〜8,000であるオルガノポリシロキサン(a)と、下記T1〜T3で表される含ケイ素結合単位を有し、前記オルガノポリシロキサン(a)の質量平均分子量の1/10〜1/1.5倍の質量平均分子量を有するオルガノポリシロキサン(b)を前記オルガノポリシロキサン(a)の100質量%に対して100〜500質量%の割合で含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
    T1:R−Si(−OX)(−O−)
    T2:R−Si(−OX)(−O−)
    T3:R−Si(−O−)
    (式中、Rは炭素数が1〜6のアルキル基を表し、Xは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Oは2つのケイ素原子を連結する酸素原子を表す。)
  5. 前記重合単位(ua)が下記一般式(ua1)で示される請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
    Figure 2014162087
    (ただし、式(ua1)中、各記号は以下の意味を示す。
    ;水素原子またはメチル基
    ;炭素数1〜3のアルキル基
    ;独立して炭素数1〜3のアルキル基
    m;0または1
    Y;アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい炭素原子数2〜6の2価の炭化水素基。)
  6. 前記プライマー層形成用組成物は非重合性の紫外線吸収剤を含有し、前記紫外線吸収剤の含有量が、前記プライマー樹脂成分の100質量%に対して10〜50質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法で得られるハードコート被膜付き樹脂基板。
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