JP2014159641A - 補修方法およびそれにより補修されたガスタービンの耐熱部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】母材1上にアンダーコート層2と、トップコート層3とが順に形成された部材のトップコート層3の損傷部4を補修する方法であって、加圧により水を噴射させてトップコート層3の損傷部4を除去するトップコート層除去工程と、加圧により水を噴射させてトップコート層3が除去されて露出したアンダーコート層2を、アンダーコート層2を除去した部分の外周に前記露出したアンダーコート層2が残存するよう除去するアンダーコート層除去工程と、アンダーコート層除去工程で露出したアンダーコート層2が除去された母材1上に、アンダーリコート層6を形成するアンダーリコート層形成工程と、形成されたアンダーリコート層6の上に、トップリコート層7を形成するトップリコート層形成工程と、を備えている補修方法。
【選択図】図1
Description
静翼や動翼などに形成されるTBCのアンダーコート層2は、母材1への密着力が高くなるよう低圧プラズマ溶射法(LPPS)あるいは高速フレーム溶射法(HVOF)で形成されている。ブラスト法は膜の局所を剥離するパワーが強くないため、高い密着力で形成されたアンダーコート層2を剥離(除去)することは非常に難しい。すなわち、一部のアンダーコート層2を剥離できたとしても、母材1表面にアンダーコート層2が残留してしまう可能性が高い。
また、ブラスト法ではブラスト材を噴射するため、ブラスト後にエアブロー等の表面洗浄処理が必要となる。但し、洗浄処理を行ったとしても、ブラスト材が残存しやすいため、新しく形成されるアンダーコート層2にブラスト材が取り込まれ、母材1とアンダーコート層2との密着性が低下するなど、膜性能に影響を与える懸念がある。
上記発明の一態様において、前記トップコート層が除去された前記アンダーコート層を剥離すると同時に、前記母材の表面を粗面化するとよい。上記発明の一態様において、前記トップリコート層の厚さは、除去された前記トップコート層の厚さであるとよい。上記発明の一態様において、前記アンダーリコート層の厚さは、除去された前記アンダーコート層の厚さであるとよい。
交流TIGは、金属の母材を負極に、電極を正極として電流を流すと、母材から熱電子が放出され、母材表面の酸化被膜を選択的に除去することができるというクリーニング効果を有する。アンダーリコート層を施工した後、アンダーコート層とアンダーリコート層とをまとめてクリーニング処理すれば、境界部を含めた、コーティング層表面の酸化物等の密着性を阻害する異物が無くなり、表面を活性化するため、トップリコート層の密着性が改善できる。新たに形成されたアンダーリコート層の表面を交流TIGを用いてクリーニング処理すると、アンダーリコート層とトップリコート層との密着性を向上させることができるようになる。そのため、部分補修後のTBCの耐久性をより高いレベルで維持させることができる。
(1)図1(a)
本実施形態では、補修対象部材として耐熱合金からなる母材1上に、TBCとして金属からなるアンダーコート層2と、酸化物セラミックスからなるトップコート層3が積層されてなる部材を用い、該部材のトップコート層3の損傷部4を補修する。
母材(耐熱合金)1としては、例えば、IN738LCなどのNi基耐熱合金を用いる。
アンダーコート層2は、例えば、MCrAIY合金(Mは、Ni、Co、Fe等の金属元素またはこれらのうち2種類以上の組み合わせを示す)などとされ、低圧プラズマ溶射法により、部品の使用温度等の使用環境他により決定されるが、一般的に、0.05mm以上0.2mm以下の厚さで形成されている。
トップコート層3は、例えば、8質量%イットリア部分安定化ジルコニアなどとされ、大気プラズマ溶射法により、部品の使用温度等の使用環境他により決定されるが、一般的に、0.1mm以上1mm以下の厚さで形成されている。
(2)図1(b)
トップコート層除去工程では、ウォータージェット剥離手法を用いて、損傷部4の周辺のトップコート層3を剥離させる。ウォータージェット剥離には、水のみを用い、ノズル(水噴出口)5の内径、ノズルワーク間距離d1、噴射水圧、ノズルの送り速度などを剥離させたいトップコート層3の材質や膜厚などに応じて適宜設定する。剥離させる領域は、部材における損傷部4の位置や損傷部4の状態などによって適宜決定される。
アンダーコート層除去工程では、トップコート層除去工程でトップコート層3が除去されて露出したアンダーコート層2を、ウォータージェット剥離手法を用いて剥離させる。図1(c)に示すように、アンダーコート層2は、アンダーコート層2のトップコート層3が除去された部分の外周縁を残して除去するのが好ましい。そうすることで、新たに形成されるアンダーリコート層6が、既存のトップコート層3の上に積層されないようにすることができる。ウォータージェット剥離には、任意のアブレッシブ材(ガーネットなど)を所定の濃度となるように加えた水を用いるか、アブレッシブ無しの場合は、トップコート剥離よりも高圧の水流を用いて、ノズル(水噴出口)5の内径、ノズルワーク間距離d2、噴射水圧、ノズルの送り速度などを、剥離させたいアンダーコート層2の材質や膜厚などに応じて適宜設定する。剥離させる領域は、部材における損傷部4の位置や損傷部4の状態などによって適宜決定される。
アブレッシブを使用するか否かは、アブレッシブを使用すると、比較的低圧の水流でも
大きな加工能力が得られるため、ポンプの能力を低く抑えられ、装置の価格を低く抑えられる、剥離直後の表面粗度が水のみよりも大きくなり、そのままリコートする場合には有利になる等の利点があるが、反面、アブレッシブのコストや、内部等へのダメージや、アブレッシブ材の十分な洗浄が必要等の欠点もあるので、装置能力や、部品側の要求等を鑑みて選択されるべきである。
アンダーリコート層形成工程では、既存のアンダーコート層2と同様の組成及び厚さの膜となるようアンダーリコート層6を低圧プラズマ溶射法によって形成させる。なお、アンダーリコート層形成工程では、低圧プラズマ溶射法を用いたが、高速フレーム溶射法やコールドスプレー法を用いても良い。
トップリコート形成工程では、既存のトップコート層3と同様の組成及び厚さの膜となるようトップリコート層7を大気プラズマ溶射法によって形成させる。
(実施例1)
補修対象部材の母材1は、IN738LC(Cr−16.0質量%Co−8.5質量%Mo−1.7質量%W−2.6質量%Ta−1.7質量%Nb−0.9質量%Al−3.4質量%Ti−3.4質量%Zr−0.05質量%B−0.01質量%Ni−残部)とした。また、母材1は、表面がブラスト法によって粗面化処理されており、大きさは、直径約30mm、板厚約5mmとした。母材1上に、CoNiCrAlY(Co−32質量%Ni−21質量%Cr−8質量%Al−0.5質量%Y)からなるアンダーコート層2がLPPSによって形成され、アンダーコート層2上に8質量%イットリア部分安定化ジルコニアからなるトップコート層3が大気プラズマ溶射法によって形成されている部材を使用した。トップコート層3及びアンダーコート層2の膜厚は、それぞれ0.5mm及び0.1mmとした。
実施例1で用いた補修対象部材のトップコート層3が形成されていないものを比較例1とした。
図3に、上記結果を示す。同図において、横軸は試験片名、縦軸は水平亀裂限界歪である。実施例1の水平亀裂限界歪(平均)は4.6%であり、比較例1と同程度となった。母材1の破断歪レベルが室温では約5%程度以下であることを考慮すると、母材1が塑性域に入って十分に変形してからの亀裂発生であることがわかる。以上より、実施例1に係る補修方法によれば、母材1とアンダーリコート層6との密着性が良好となることがわかった。
補修対象部材は、実施例1と同様の構成の部材を用いた。大きさは、直径約30mm×板厚5mmとした。
図4に、実施例2に係る補修方法における各工程の試験片の模式図を示す。後述するレーザ熱サイクル試験では、レーザは、試験片中央に照射されるため、部分コーティングの最弱部と考えられる、膜の継部を中央へ配するように、以下の試験片を作成した。図4に示すように、補修対象部材のトップコート層3の一部をウォータージェット剥離手法によって剥離させた。剥離条件は、ノズル内径:0.43mm、噴射水圧:385MPa、ノズル送り速度:60mm/min、ノズルワーク間距離(スタンドオフ):15mmとし、水のみをトップコート層3に向けて噴射させた。
補修前の補修対象部材を比較例2とした。
例えば、遮熱コーティング膜11の表面を1200℃以上の高温とし、遮熱コーティング膜11と母材1との界面の温度を800〜1000℃とすることで、実機ガスタービンと同様の温度条件とすることができる。なお、本試験装置による加熱温度と温度勾配は、レーザ装置10の出力とガス流Fとを調整することで、容易に所望の温度条件とすることができる。
図7に、上記結果を示す。同図において横軸は試験片名、縦軸は比較例2の熱サイクル耐久性の結果を100%としたときの熱サイクル寿命比である。実施例2の既存のトップコート層3とトップリコート層7との継部における熱サイクル寿命は、比較例2の熱サイクル寿命の半分程度であった。トップコート層3及びアンダーコート層2をブラスト法にて剥離させて補修した部材の継部には、早期から割れが目視できる場合が多いことを考慮すると、実施例2の耐久性は向上していると判断できる。上記結果によって、補修によって生じる既存のトップコート層3とトップリコート層7との継部を運転条件の厳しくない部分に持ってくる等の対策をすることで実用可能となることがわかった。また、トップリコート層7をYbSZとした場合で、実施例2のトップリコート層7を縦割れ組織とすると比較例2の10倍以上の熱サイクル寿命比が得られることが分かり、その場合は、部分コーティング部でも通常部以上の耐久性を維持できることがわかった。
2 アンダーコート層
3 トップコート層
4 損傷部
5 ノズル(ウォータージェット剥離手法)
6 アンダーリコート層
7 トップリコート層
10 熱サイクル試験装置
11 遮熱コーティング膜
12 試料ホルダ
13 本体部
14 冷却ガスノズル
15 マスキング材
16 ブラスト材の照射範囲
17 ノズル(ブラスト法)
111 試料
Claims (6)
- 母材上にアンダーコート層と、トップコート層とが順に形成された部材の前記トップコート層の損傷部分を補修する方法であって、
加圧により水を噴射させて前記トップコート層の前記損傷部分を除去するトップコート層除去工程と、
加圧により水を噴射させて前記トップコート層が除去されて露出した前記アンダーコート層を、アンダーコート層を除去した部分の外周に前記露出したアンダーコート層が残存するよう除去するアンダーコート層除去工程と、
前記アンダーコート層除去工程で前記アンダーコート層が除去された前記母材上に、アンダーリコート層を形成するアンダーリコート層形成工程と、
形成された前記アンダーリコート層の上に、トップリコート層を形成するトップリコート層形成工程と、を備えている補修方法。 - 前記水が、アブレイシブ材を含む請求項1に記載の補修方法。
- 前記トップコート層が除去された前記アンダーコート層を剥離すると同時に、前記母材の表面を粗面化する請求項1又は請求項2に記載の補修方法。
- 前記トップリコート層の厚さは、除去された前記トップコート層の厚さである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補修方法。
- 前記アンダーリコート層の厚さは、除去された前記アンダーコート層の厚さである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の補修方法。
- 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の補修方法により、補修されたガスタービンの耐熱部材。
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