JP2014157118A - 蒸気タービンの液膜計測装置及び計測方法 - Google Patents

蒸気タービンの液膜計測装置及び計測方法 Download PDF

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慶拓 石川
Miyuki Akiba
美幸 秋葉
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Abstract

【課題】蒸気タービン翼の表面に付着した液膜の厚さ及び/又はその分布を高精度で測定する。
【解決手段】蒸気タービンの静翼1に設置された多数の液膜センサ2と少なくとも一つの校正用液膜センサ2aとを有する蒸気タービンの液膜計測装置であって、前記校正用液膜センサ2aの上面を所定の距離離れて覆う天井部を有する液膜測定部14を備える。
【選択図】図3

Description

本発明の実施形態は蒸気タービンの液膜計測装置及び計測方法に関する。
蒸気タービンによって発電機を駆動する発電プラントでは、蒸気タービンの低圧段へ飽和状態に近い蒸気を流入させる。このため、蒸気タービンの最終段に近い段では、蒸気が湿り蒸気となって大量の液滴を含んだ状態となる。この液滴が蒸気タービン静翼の翼面に付着して液膜を形成する。この液膜が再度主流へ向かって飛散すると、粗大液滴となり、動翼へ衝突して翼浸食の原因となるだけではなく、動翼の劣化を促進させるとともに、翼形状の変化によりタービンの性能も低下する。
さらに、粗大液滴の動翼への衝突は制動損失などの湿り損失も増大させる。従って、蒸気タービン翼面の液膜の挙動(翼面上の分布や厚さ)を把握するということは、液膜除去技術を開発し、蒸気タービンの信頼性を向上させる上で極めて重要である。
蒸気タービン翼表面上の液膜の挙動を把握するためには、液膜厚さを計測する必要がある。そのための手法として、コンダクタンス法、キャパシタンス法、触針法、超音波エコー法、レーザーフォーカス変位計による方法が知られている。これらのうち、コンダクタンス法は他の方法と比較して計測装置が単純で、計測データの処理速度が速いといった特長がある。
図6はこのコンダクタンス法による液膜厚さ計測手段を蒸気発生器の伝熱管に適用した例である(特許文献1)。この液膜厚さ計測手段は、図6に示すように、伝熱管20に取り付けられた筒状の本体26と、この本体26内に隙間を持って設けられる一対の電極4a、4bと、本体26と電極4a、4bとの間に充填された絶縁体3と、本体26内に設けられた熱電対25a〜25cとから構成されている。この電極4a、4b間に生じ電位差を電圧計10で測定し、これをデータ処理部24で液膜9の厚さに変換する。その際、熱電対25a〜25cにより伝熱管20の温度分布を計測し液膜9によって移送される熱輸送量を算出している。
特開2010−2349号公報
ところで、上述した液膜計測装置は蒸気発生器の伝熱管に付着した液膜を測定するものであるが、本発明者等はこのコンダクタンス法による液膜計測装置が、取り付けが容易でかつ観測窓や光源が不要であるという特徴を有することから、蒸気タービン翼のように閉じられた空間内にあるタービン翼の表面に付着した液膜厚さ等の計測に適用可能であることを新たに知見した。
その際、従来の液膜計測装置をタービン翼表面の液膜厚さ又は液膜分布の測定に適用した場合、液膜計測装置の電極間に生じる電位差と液膜厚さの関係を予め求めておく必要があるが、そのためには、蒸気タービン内で凝縮した水の電気伝導率を知る必要がある。
しかし、蒸気タービン内から凝縮した水を取り出して電気伝導率を調べるのは一般に困難であるのに加え、水質の変化により液膜計測中に水の電気伝導率が変化したり、タービン翼の段落毎に電気伝導率が異なる場合もあり、凝縮水の電気伝導率を正確に測定することが困難であった。その結果、液膜センサを高精度で校正することができなくなり、タービン翼に付着した液膜の厚さ及びその分布を精度良く測定することができないという課題があった。
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたもので、蒸気タービン翼の表面に付着した液膜の厚さ及び/又はその分布を高精度で測定することが可能な蒸気タービンの液膜計測装置及び計測方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本実施形態に係る蒸気タービンの液膜計測装置は、蒸気タービンの静翼に設置された多数の液膜センサと少なくとも一つの校正用液膜センサとを有する蒸気タービンの液膜計測装置であって、前記校正用液膜センサの上面を所定の距離離れて覆う天井部を有する液膜測定部を備えることを特徴とする。
第1の実施形態に係る液膜計測装置の断面構成図。 第1の実施形態に係る蒸気タービンの断面構成図。 第1の実施形態に係る校正用液膜センサの断面構成図。 (a)は第2の実施形態に係る校正用液膜センサの断面構成図、(b)は(a)のA−A線矢視図。 第3の実施形態に係る液膜計測装置の構成図。 第4の実施形態に係る液膜計測装置の構成図。 従来の液膜計測装置の断面構成図。
以下、本発明に係る液膜計測装置及び計測方法の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、蒸気タービンの静翼の表面に付着した液膜の厚さ及び/又はその分布を測定する例について説明するが、これに限定されず、他の機器の液膜測定に適用できることはもちろんである。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る液膜計測装置を図1乃至図3により説明する。なお、従来技術と同一または類似の構成には共通の符号を付し重複説明は省略する。
(全体構成)
本実施形態の液膜計測装置は、図1に示すように、蒸気タービンの静翼1の表面上に取り付けられた多数の液膜センサ2と、各液膜センサ2に信号線5によって接続された信号処理回路8と、コンピュータ等からなるデータ処理部11とから構成される。
図2は1段分の蒸気タービンの段落15の子午断面を示した図であり、静翼1はダイヤフラム内輪17とダイヤフラム外輪18によって固定され、動翼30はロータ28に固定され、多数の液膜センサ2は静翼1の表面上に複数配置され、静翼1の表面上の液膜9の厚さ及び/又はその分布を測定する。
各液膜センサ2は、絶縁体3で取り囲まれた一対の電極4aと電極4bとからなり、電極4aと電極4bの間には信号線5を介して付加抵抗器6、直流電源7、電圧計10等からなる信号処理回路8が接続されている。なお、図1では、便宜上液膜センサの本体等は省略している。
(校正用液膜センサ)
次に、校正用液膜センサ2aについて図3を用いて説明する。
液膜センサ2により静翼1の表面上に付着した液膜9の厚さを高精度で測定するためには、当該液膜9の電気伝導率を正確に知る必要がある。
そのため本実施形態では、蒸気タービンの静翼1の表面上に取り付けられた多数の液膜センサ2のうち少なくとも一つを校正用液膜センサ2aとし、当該校正用液膜センサ2aの上面を覆うように、既知の高さ13を有する筐体状の液膜測定部14を設置する。この液膜測定部14の材質は例えばカーボン、セラミック等の絶縁材からなり、また、液膜測定部14の高さ13は例えば1〜2mmに設定される。
この液膜測定部14は蒸気の流れる方向29に対して開口部を有し、静翼1の表面状に付着し流動する液膜9を液膜測定部14の内部に貯留する。
なお、校正用液膜センサ2aを複数設置してもよく、また、校正精度を向上させるために液膜測定部の高さ13を種々の高さに設定してもよい。
さらに、上記実施形態では液膜測定部14に液膜9を貯留する構成としているが、これに限定されず、出口側にも開口部を設けて、流動状態の液膜9を測定するようにしてもよい。その際、筐体状の液膜測定部14は筐体の側面部材により蒸気タービンの静翼1に支持される。
このように、校正用液膜センサ2aは液膜測定部14に貯留又は流動する液膜9の電気伝導率を測定する。
(作用)
このように構成された液膜計測装置において、蒸気タービンの静翼1の表面上に付着した液膜9が液膜測定部14の内部に流れ込んだ状態で測定を開始すると、電極4aと電極4bの間に電位差が生じる。この電位差を信号処理回路8で計測し、この測定値をデータ処理部11で処理し記録する。このように既知の液膜測定部の高さ13(液膜厚さ)に対する電位差の計測値から、稼働中の蒸気タービンの静翼1の表面上を流動する液膜9の電気伝導率をリアルタイムで測定することが可能となる。
そして、この電気伝導率を静翼1の表面上に配置された多数の液膜センサ2の測定値に適用してデータ処理することにより、静翼1の表面上を流動する液膜9の厚さ及びその分布を正確に測定することが可能となる。
(効果)
本実施形態によれば、少なくとも一つの校正用液膜センサ2aを蒸気タービンの静翼1に設けることにより、稼働中の蒸気タービンの静翼1の表面上を流動する液膜9の電気伝導率をリアルタイムで測定することが可能となり、これにより静翼1の表面上を流動する液膜9の厚さ及び/又はその分布を高精度で測定することが可能となる。
また、校正用液膜センサ2aを複数設置することにより、さらにその際、液膜測定部の高さ13を種々の高さに設定することにより、校正精度を向上させ、液膜9の厚さ及び/又はその分布の測定精度をさらに向上させることができる。
さらに、液膜9の電気伝導率が蒸気流の成分によって変動するような場合でも、本実施形態では電気伝導率をリアルタイムで測定し校正することが可能となるため、静翼1の表面上を流動する液膜9の厚さ及び/又はその分布をリアルタイムで精度良く測定することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る液膜計測装置を図4(a)、(b)により説明する。なお、上記実施形態と同一または類似の構成には共通の符号を付し重複説明は省略する。
第2の実施形態は蒸気タービンの静翼の表面に設けられた凹部と天井部と電極等から校正用液膜センサ2bを構成している。
本第2の実施形態に係る校正用液膜センサ2b、図4(a)、(b)に示すように、蒸気タービンの静翼1の表面に凹部35を形成し、当該凹部35の中央表面に液膜9の流れ方向と直角に天井部36を設置し、凹部35と天井部36との間に液膜測定部34を形成している。
天井部36は絶縁材からなり、溶接等により凹部35の上方に固定してもよいし、タービン静翼1の表面に凹部35と天井部36が形成されるように切削した後、天井部36の凹部35側の面に絶縁材を貼り付けてもよい。また、天井部36は凹部35の底部に対し所定の高さ13となるように設けられる。
このように構成された液膜計測装置において、蒸気タービンの静翼1の表面を流動する液膜9は凹部35にも流れ込み、その際、液膜測定部34で凹部35内を流動する液膜9の電気伝導率を測定する。
本実施形態によれば、稼働中の蒸気タービンの静翼1の表面上を流動する液膜9の電気伝導率をリアルタイムで測定することができるとともに、蒸気タービンの静翼1の表面に凹部35及び天井部36を設け液膜測定部34を形成したことにより、蒸気タービンの静翼1の表面の液膜9の流動抵抗を低減させることができる。
なお、各液膜センサ2も同様に蒸気タービンの静翼1の表面に形成された凹部35及び天井部36から構成してもよい。
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る液膜計測装置を図5により説明する。なお、上記実施形態と同一または類似の構成には共通の符号を付し重複説明は省略する。
図5は静翼1と動翼30からなる4段落15a〜15dを備える蒸気タービンの子午断面図であり、図5中の29は段落15aから15dへ向かって流れる蒸気流の流れを示している。
本実施形態では、各段落15a〜15dの静翼1に少なくとも1つの校正用液膜センサ2aをそれぞれ設置する構成としている。なお、図5では、各静翼1に設置される多数の液膜センサ2は省略している。
このように構成された本実施形態において、各静翼1に設けられた校正用液膜センサ2aは液膜測定部14に流れ込む液膜9の電気伝導率を計測し、これにより各静翼1に設置された多数の液膜センサ2を校正し、各静翼1における液膜9の厚さ及び/又はその分布を高精度で測定する。
本実施形態によれば、各静翼1にそれぞれ少なくとも1つの校正用液膜センサ2aを設置することで、各段落15a〜15dを流れる凝縮水の電気伝導率が段落によって異なる場合でも、各静翼1における液膜9の厚さ及び/又はその分布をリアルタイムで正確に測定することができる。
また、一部の校正用液膜センサ2aが故障した場合でも他の校正用液膜センサ2aを用いることで、蒸気タービンの運転を止めることなく、各静翼1における液膜9の厚さ及び/又はその分布を継続して測定することができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る液膜計測装置を図5により説明する。なお、上記実施形態と同一または類似の構成には共通の符号を付し重複説明は省略する。
図6は、蒸気タービンの静翼列を上流側から俯瞰図で、複数の静翼1が周方向に配列している。
本実施形態では各静翼1に少なくとも1つの校正用液膜センサ2aをそれぞれ設置している。なお、図6では、各静翼に設置される多数の液膜センサ2は省略している。
これにより周方向に配置された各静翼1における液膜9の厚さ及び/又はその分布をリアルタイムで正確に測定することができる。
また、上記第2乃至第4の実施形態でも、複数設置された校正用液膜センサ2a、2bの液膜測定部の高さ13を種々の高さに設定することにより、校正精度を向上させ、液膜9の厚さ及び/又はその分布の測定精度をさらに向上させることができる。
以上、本発明の実施形態の例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、適宜変更可能である。また、実施形態やその変更例に記載された作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
1…静翼、2…液膜センサ、2a、2b…校正用液膜センサ、3…絶縁体、4a、4b…電極、5…信号線、8…信号処理回路、11…データ処理部、13…液膜測定部、14…液溜め部、15、15a〜15d…段落、17…ダイヤフラム内輪、18…ダイヤフラム外輪、20…伝熱管、28…ロータ、29…蒸気流、30…動翼、34…液膜測定部、35…凹部、36…天井部。

Claims (8)

  1. 蒸気タービンの静翼に設置された多数の液膜センサと少なくとも一つの校正用液膜センサとを有する蒸気タービンの液膜計測装置であって、
    前記校正用液膜センサの上面を所定の距離離れて覆う天井部を有する液膜測定部を備えることを特徴とする蒸気タービンの液膜計測装置。
  2. 前記液膜測定部は、前記静翼の表面に立設されて前記天井部を支持する支持部を備えることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの液膜計測装置。
  3. 前記校正用液膜センサは前記静翼表面に形成された凹部の底面に設置され、
    前記天井部は前記凹部の前記底面から所定の距離離れて前記校正用液膜センサの上面を覆うことを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの液膜計測装置。
  4. 前記天井部の前記校正用液膜センサに対向する面が絶縁材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液膜計測装置。
  5. 前記液膜センサ及び校正用液膜センサはコンダクタンス式の液膜センサであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蒸気タービンの液膜計測装置。
  6. 前記液膜測定部を、蒸気タービンを構成する複数の静翼にそれぞれ設置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蒸気タービンの液膜計測装置。
  7. 前記液膜測定部を複数備え、前記複数の液膜測定部の前記天井部と前記校閲用液膜センサの距離が異なるものを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蒸気タービンの液膜計測装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液膜計測装置を用いて蒸気タービンの静翼に付着した液膜の厚み及び/又は液膜分布を測定することを特徴とする蒸気タービンの液膜計測方法。
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