JP2014156450A - (メタ)アクリル酸の製造方法、及び、親水性樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、該原料組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる工程を含むことを特徴とする、(メタ)アクリル酸の製造方法。
【選択図】なし
Description
また、上記特許文献4〜5では、オリゴマーやダイマー等を原料としてアクリル酸を製造しているため、オリゴマー等の重合物が反応器内等に付着し、最終的に反応器等が閉塞してしまい、長期間安定に製造することが困難であるという問題や、付着物が触媒表面を覆うことによって、触媒活性が低下するため、(メタ)アクリル酸の収率が低下するという問題を見出した。
このように、上記文献に記載の製法では、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することにおいて、まだ充分ではなく、工夫の余地があった。
なお、上記特許文献4〜5に記載の発明は、本発明とは異なり、3−ヒドロキシカルボン酸を用いて特定のオリゴマーを作製するという思想にもとづくものでは無かった。
また、本発明は、前記3−ヒドロキシカルボン酸が3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする上記製造方法である。
また、本発明は、上記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする上記製造方法である。
本発明は、前記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする上記製造方法でもある。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
上記3−ヒドロキシカルボン酸は、1種でも2種以上でも用いることができる。また、(メタ)アクリル酸は、使用した3−ヒドロキシカルボン酸の種類に応じて得られる。
原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物及び3−ヒドロキシカルボン酸の総量の濃度は、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは15〜93質量%、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜90質量%である。
また原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の濃度は、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは15〜93質量%、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜90質量%である。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物としては、例えば3HPの重合物を例に挙げると、下式(1)に示すように、3HPの水酸基とカルボキシル基が分子間エステル結合したポリエステルが挙げられる。
式中、nは任意の値を取り得るが、本発明においては、以下のように、特定の範囲のnの値を有する重合物が、特定の割合で原料組成物中に含まれていることにより、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる。
一方、高分子量の3−ヒドロキシカルボン酸重合物は、3−ヒドロキシカルボン酸から水を除去しながら調製することができる。例えば、加熱によりオリゴマーを形成し、更に減圧下、触媒存在下で、水を除去しながら反応させることで取得できる。この場合も、水の除去程度によって、平均分子量や3〜20量体のオリゴマーの含有量は変化する。また、微生物中で高分子量の3−ヒドロキシカルボン酸重合物を形成させることもできる。
また原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち20量体(式(1)においてn=19)以上の重合物の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と3−ヒドロキシカルボン酸重合物の合計100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、原料組成物の粘度が高くなり取扱いが煩雑になる、高分子量の重合物が析出して、配管の閉塞や原料組成物の供給組成のふれに起因する(メタ)アクリル酸収率の低下や変動等の虞がある。
原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸単位は、液体クロマトグラフィーやサイズ排除クロマトグラフィーの分析値から求めることができ、また、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液中で加熱し、加水分解させ、液体クロマトグラフィーで、生成した3−ヒドロキシカルボン酸を定量することにより求めることもできる。
なお、3−ヒドロキシカルボン酸単位とは、−CH2−CHR−COO−(Rは水素又はメチル基)を意味する。また、3−ヒドロキシカルボン酸1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位1モル;3−ヒドロキシカルボン酸2量体1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位2モル;3−ヒドロキシカルボン酸3量体1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位3モル;・・・というようにカウントする。
本発明においては、上記のような3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を加熱することにより、(メタ)アクリル酸を生成させることができる。加熱時には、重合物のエステル基が分解することで、3−ヒドロキシカルボン酸、重合度が低下した3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、アクリル酸やアクリル酸の重合物が生成する反応や、3−ヒドロキシカルボン酸や3―ヒドロキシカルボン酸の重合物の水酸基が脱水することで、アクリル酸やアクリル酸の重合物が生成する反応が起こる。これらの反応が複合的に進行することで、(メタ)アクリル酸を効果的に生成することができる。
しかし、上記特定の原料組成物を用い、これを加熱するという、本発明の(メタ)アクリル酸の製法によれば、低コストで、かつ、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる。
本発明において、原料組成物中に溶媒を含有させる場合、原料組成物100質量%における溶媒の濃度は、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは7〜85質量%、更に好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは10〜70質量%、最も好ましくは10〜60質量%である。溶媒の濃度が5質量%以上であれば、粘度の低下により原料組成物の取り扱いが容易になり、また(メタ)アクリル酸生成工程を気相反応で実施するときは、3−ヒドロキシカルボン酸やその重合物の蒸発が促進される効果が期待できる。一方、90質量%以下とすることにより、蒸発にかかる熱量を抑制し、用役費の低減に寄与できる。
本発明においては、原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の少なくとも一部又は全部が、発酵により得られる3−ヒドロキシカルボン酸であることが好ましい。
また3−ヒドロキシカルボン酸の原料として、バイオマス等の生物由来資源であることが好ましい。
不純物が少ない原料組成物を得る方法としては、発酵液からの精製工程を経た3−ヒドロキシカルボン酸を用いて、原料組成物を調製する方法が挙げられる。発酵液からの精製工程には、公知の方法が利用可能である。具体的には、発酵により得られた粗製3−ヒドロキシカルボン酸を、カルシウム塩を用いて沈殿させて、3−ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩として回収した後、硫酸等の酸と反応させて、3−ヒドロキシカルボン酸を精製する方法;発酵により得たアンモニウム型の3−ヒドロキシカルボン酸を、電気透析又は陽イオン交換法によって3−ヒドロキシカルボン酸に化学変換させて精製する方法;等が利用できる。
また、発酵により得られたアンモニウム塩型の3−ヒドロキシカルボン酸水溶液に、水に不混和性のアミン溶媒を添加し加熱することにより、アンモニアを除去して3−ヒドロキシカルボン酸のアミン溶液を得ることができる。そこに水を加えて加熱することにより、3−ヒドロキシカルボン酸の水溶液を得ることができる。
また、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧を利用して、蒸発にて精製することもできる。しかし、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧は小さく、かつ加熱によりオリゴマー化等の副反応が進行しやすいため、減圧下での薄膜蒸発のような熱履歴の小さな蒸発方法が好ましい。
更に、3−ヒドロキシカルボン酸をアルコールによってエステル化し、得られた3−ヒドロキシカルボン酸エステルを蒸留にて精製した後、3−ヒドロキシカルボン酸エステルを加水分解することで、精製した3−ヒドロキシカルボン酸を得ることもできる。
当該加熱(以下、加熱工程ともいう)は、触媒の存在下、非存在下のいずれにおいても行うことができる。
触媒の非存在下で加熱工程を実施する場合、加熱温度は、180〜700℃が好ましく、190〜650℃がより好ましく、200〜600℃が更に好ましい。180℃未満では、加熱が不十分で、(メタ)アクリル酸収率が低下したり、未反応の重合物が加熱器内に蓄積し、内部が閉塞したり、熱伝導度の低下により加熱効率が低下したりする虞がある。また、700℃を超えると、加熱による副生物の生成が多くなり、(メタ)アクリル酸収率の低下や、得られた(メタ)アクリル酸の純度の低下、(メタ)アクリル酸精製工程の煩雑化等の懸念がある。
触媒の存在下で加熱工程を実施する場合、加熱温度は、150〜600℃が好ましく、160〜550℃がより好ましく、170〜500℃が更に好ましく、180〜450℃が特に好ましい。
加熱工程で用いる触媒は、特に限定されず、例えば酸触媒や塩基触媒が挙げられ、特に固体酸触媒や固体塩基触媒が好ましい。
また、加熱器内の原料組成物の流路に、ラシヒリング、ベルルサドル、球状成型物、金網の成型物(ディクソンパッキン、マクマホンパッキン等)、メラパック(スルザーケムテック社製)といった不規則充填物や規則充填物等の、単位充填容積当たりの表面積が大きな充填物を充填し、そこに原料組成物を供給することで、原料組成物(液体)が接する表面積を大きくして反応させる方法も挙げられる。こうすることにより、供給した原料組成物が、表面積の大きな充填物と接触することになり、伝熱面積が増え、効率的に熱が伝わり、短時間で反応が進み、そのため、加熱器内での副反応を抑制することができる。
上記充填物の材料としては、鉄やステンレス等の金属材料や、シリカ、セラミック等の無機材料等が使用できる。
さらに、一定量の液相を加熱器内保持し、そこに原料組成物を液体で供給しながら(メタ)アクリル酸を生成する反応を液相で行い、生成した(メタ)アクリル酸類を蒸発させて加熱器内から留去する方法も好ましい形態である。(メタ)アクリル酸の生成に必要な滞留時間は、温度、圧力、加熱量や加熱器内に存在する液体原料の量によって制御することができる。また3−ヒドロキシカルボン酸や、低重合度の3−ヒドロキシカルボン酸の重合物や(メタ)アクリル酸の重合物の留出を抑制するために、加熱器に蒸留塔を設置し還流をかけてもよい。
不活性気体の供給量としては、原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数の0.5モル倍〜100モル倍が好ましく、1モル倍〜50モル倍がより好ましい。原料組成物中に水が含まれる場合は、その水が加熱工程で蒸発して生成した水蒸気も、上記不活性気体に含める。
上記のような条件で原料組成物を加熱することで、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物が反応して低分子化(分解)し、効率よく(メタ)アクリル酸を生成させることができる。また原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸や、重合物の分解により生成した3−ヒドロキシカルボン酸が脱水することで、更に(メタ)アクリル酸を生成させることができる。
上記脱水触媒と接触させる脱水工程で使用する反応器としては、中に固体触媒を保持し、加熱することができればよく、例えば、固定床連続反応器、流動床連続反応器等が使用でき、固定床連続反応器が好ましい。
上記固定床連続反応器を用いる場合は、反応器内に触媒を充填して加熱しておき、そこに原料組成物の蒸気を供給すればよい。原料組成物の蒸気は、上昇流、下降流、水平流、いずれも好適に使用できる。また、熱交換の容易さから、固定床多管式連続反応器が好適に使用できる。
上記流動床連続反応器を用いる場合は、反応器の中に粉末状の触媒を入れ、原料組成物の蒸気や、別途供給する不活性ガス等で触媒を流動させながら、反応させることができる。触媒が流動しているため、重質分による閉塞が起こりにくい。また、触媒の一部を連続的に抜き出して、新しい触媒や再生した触媒を連続的に供給することもできる。
上記触媒としては、ゼオライト等の結晶性メタロシリケート;結晶性メタロシリケートに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等を、イオン交換等の方法によって担持したもの;カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト等の天然又は合成粘土化合物;硫酸、ヘテロポリ酸、リン酸又はリン酸塩(リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸マンガン、リン酸ジルコニウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属を、アルミナやシリカ等の担体に担持させた触媒;Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、V2O5、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−ZrO2、TiO2−WO3、TiO2−ZrO2等の無機酸化物又は無機複合酸化物;MgSO4、Al2(SO4)3、K2SO4、AlPO4、Zr(SO4)2等の金属の硫酸塩、リン酸塩等の固体酸性物質;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の固体塩基性物質;等が挙げられる。好適には、Al2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、TiO2、ゼオライト、ゼオライトにアルカリ金属やアルカリ土類金属を担持したもの、リン酸やリン酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属をシリカ等の担体に担持した触媒である。
上記触媒の物性としては、触媒活性等の点から、BET法による比表面積は、0.01〜500m2/gが好ましく、0.1〜400m2/gがより好ましい。触媒活性、生成物の(メタ)アクリル酸の選択率、触媒寿命等の点から、ハメットの酸度関数H0は、+4〜−10が好ましく、+2〜−8がより好ましい。また、触媒活性や反応器の圧力損失の点から、触媒の大きさは、長径が0.1mm〜50mmが好ましく、0.5mm〜40mmがより好ましい。
反応圧力は、特に限定されないが、脱水反応の生産性、脱水反応後の捕集効率等を勘案して決定することができる。反応圧力としては、10kPa〜1000kPaが好ましく、より好ましくは30kPa〜300kPa、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
このように、加熱工程に脱水触媒と接触させる工程を組み合わせる多段の加熱工程とすることで、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の分解により(メタ)アクリル酸を生成させ、更にその生成物と脱水触媒とを接触させることで、原料組成物中に含まれていた3−ヒドロキシカルボン酸や、重合物の分解によって生成した3−ヒドロキシカルボン酸が脱水反応し、更に(メタ)アクリル酸の収率を向上させ、効率よく製造することができる。また最初の加熱工程で生成した、低分子化された3−ヒドロキシカルボン酸やアクリル酸の重合物を脱水触媒と接触させることで、更なる重合物の分解が促進され、(メタ)アクリル酸の収率が向上することも期待できる。
ガス状の酸化剤は、炭素状物質の酸化分解のために該炭素状物質に酸素元素を供給することが可能な気体分子であり、例えば、酸素(空気中の酸素も酸化剤に該当する)、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素等を挙げることができる。これらの酸化剤のうち、一種以上のガス状酸化剤が含まれていれば良く、例えば、空気と酸素との混合ガス、一酸化窒素と酸素との混合ガス等を使用しても良く、また、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム及び水蒸気等の不活性ガスから任意に選択した一種以上のガスと酸化剤との混合ガスを使用しても良い。好ましくは酸素を含んだガスである。
酸化剤濃度としては、温度制御や生産コスト等の点から、好ましくは1〜21体積%である。
処理時間としては、(メタ)アクリル酸の生産性等の点から、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間である。
該組成物中の(メタ)アクリル酸濃度は、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜95質量%、更に好ましくは20〜95質量%である。
精製工程は、蒸留、抽出、膜分離、晶析等の公知の技術により実施でき、それらを組み合わせて実施しても良い。
上記のようにして得られた(メタ)アクリル酸を含む反応生成物は、捕集や精製工程の取扱いを、重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。重合禁止剤としては、メトキノン、酢酸マンガン、ニトロソフェノール、クペロン、N−オキシル化合物、ジブチルチオカルバミン酸銅、フェノチアジン、ハイドロキノン等が例示できる。また、必要に応じて酸素含有ガスを供給してもよい。
当該方法としては、具体的には、晶析により(メタ)アクリル酸を精製する工程を含む。
ここで、粗(メタ)アクリル酸とは、冷却工程で得られた(メタ)アクリル酸を含む組成物を指し、特に(メタ)アクリル酸の水溶液が好適に用いられる。
晶析工程は、粗(メタ)アクリル酸からプロピオン酸を分離することができる従来公知の方法、例えば、特開平9−227445号公報や特表2002−519402号公報に記載された方法等を用いて行うことができる。
加熱工程を含むプロセスにて得られた生成物から、例えば上記のような精製工程で(メタ)アクリル酸を分離した後、残った不純物は、リサイクルして再利用することができる。例えば3−ヒドロキシカルボン酸、重合度が低下した3−ヒドロキシカルボン酸の重合物や(メタ)アクリル酸の重合物を加熱工程の原料として再利用することで(メタ)アクリル酸の収率を向上させることができる。
上述した本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法において、不純物を再利用する工程(リサイクル工程)を好適に適用することができる。言い換えれば、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、不純物を再利用する工程を含むことが好ましい。ここで不純物とは、反応生成物に含まれるもののうち、(メタ)アクリル酸の原料となりうるもの、すなわち3−ヒドロキシカルボン酸、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、(メタ)アクリル酸の重合物を指す。例えば、反応終了後に残存した3−ヒドロキシカルボン酸や上記オリゴマーを上述した各工程の原料として再利用することが好ましい。
図1は、本発明の製造方法の3HPの重合物を原料とする反応式を例示する図である。図2は、図1から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。本発明に係る反応工程においては、主生成物としてアクリル酸を生成するとともに、3HPや、(原料より)低分子化されたオリゴマー等の不純物が残存する場合がある。図2で示した反応式は、加熱工程後に残存した不純物を加熱工程の原料として再利用する。
本発明による親水性樹脂の製造方法は、上記のような(メタ)アクリル酸の製造方法により得られる、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合することを特徴とする。すなわち、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸は、吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂の原料として用いることができる。
親水性樹脂としては、吸水性樹脂であることが好ましい。
このような吸水性樹脂の具体例や物性測定法は、例えば、米国特許第6,107,358号、米国特許第6,174,978号、米国特許第6,241,928号等に記載されている。
また、生産性向上の観点から好ましい製造方法は、例えば、米国特許第6,867,269号、米国特許第6,906,159号、米国特許第7,091,253号、国際公開第2001/038402号、国際公開第2006/034806号等に記載されている。
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸の一部は、ラインを介して、吸水性樹脂の製造プロセスに供給される。吸収性樹脂の製造プロセスにおいては、(メタ)アクリル酸を中和工程、重合工程、乾燥工程に導入して、所望の処理を施すことにより、吸水性樹脂を製造する。各種物性の改善を目的として所望の処理を施してもよく、例えば、重合中又は重合後に架橋工程を介在させてもよい。
(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸(塩)の中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等、従来公知の塩基性物質を適宜用いればよい。
また、ポリ(メタ)アクリル酸の中和率は、特に限定されるものではなく、任意の中和率(例えば、30〜100モル%の範囲内における任意の値)となるように調整すればよい。
なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。また、表1中、「2量体」〜「20量体」は、それぞれ、3HPの「2量体」〜「20量体」を示す。
(液体クロマトグラフィーの分析条件)
使用カラム:Inertsil ODS−4(ジーエルサイエンス株式会社製) 2本
溶離液:アセトニトリル/水/リン酸/リン酸二水素カリウム=35/64/0.7/0.3(重量比)
検出器:UV 205nm
カラム温度:50℃
(サイズ排除クロマトグラフィーの分析条件)
使用カラム:TSKgel Super H200(東ソー株式会社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV 205nm
カラム温度:40℃
アクリル酸の収率(モル%)=100×(生成したアクリル酸のモル数)/(供給した3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数)
3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数=(3−ヒドロキシカルボン酸のモル数+2量体のモル数×2+3量体のモル数×3+4量体のモル数×4+5量体のモル数×5+6量体のモル数×6+7量体のモル数×7+8量体のモル数×8+9量体のモル数×9+10量体以上の多量体の重量(g)/72)
3HPの発酵による製造を、特開2012−085635号公報の実施例1の方法に従って行った。得られた発酵液から濾過にて菌体を分離し、得られた濾液700gに、n−ドデカノール100gを添加し、エバポレーターで水を留去した。最終的に50℃、2.7kPaで留出がなくなるまで行った。
得られた残液を、80℃、10Paの薄膜蒸発器にかけ、3HPとn−ドデカノールの混合物を留分として取得した。得られた留分に等量の水を添加し、混合して水相に3HPを抽出した。油水分離した油相に再度等量の水を添加し、3HPの抽出を行った。油水分離した水相を合わせて濾過を行い、3HP水溶液を得た。3HPの濃度は16質量%であった。
上記で得られた3HP水溶液を、エバポレーターを用いて濃縮を行い、濃縮度合いを変えた原料を複数調製した。これらの原料を液体クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーで分析したところ、3HPの9量体まで生成していることが確認できた。それらの組成を表1に示す。3−ヒドロキシプロピオン酸重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシプロピオン酸と3−ヒドロキシプロピオン酸重合物の合計に対して、原料1で2.2質量%、原料2で10.6質量%、原料3で56.8質量%であった。
上記で調製した原料3を、反応器に入れ、触媒として三酸化アンチモンを添加して更に重合を実施した。温度を徐々に上げ、減圧度を上げながら、生成する水を除去した。最終的に260℃、100Paで5時間保持した。得られた重合物を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3HP及び2〜9量体のオリゴマーは検出できなかった。サイズ排除クロマトグラフィーで分析すると平均分子量8000のポリマーであった。重合物のうち10〜20量体は2.5質量%であった。得られた重合物を粉砕し、水に懸濁させて50質量%スラリーとし、これを原料4とした。従って、3−ヒドロキシプロピオン酸重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシプロピオン酸と3−ヒドロキシプロピオン酸重合物の合計に対して2.5質量%であった。
内径10mmのステンレス製反応管に、脱水触媒としてγ−アルミナを充填し、その上にステンレス製の1.5mmのディクソンパッキンを蒸発層として積層した。反応管を電気炉にて350℃に加熱し、上記原料2を毎時4.0gの速度で反応管の上部に供給した。同時に、毎時3Lの速度で窒素ガスを流した。
反応管の下部から抜き出した反応ガスを、冷却捕集し反応液を得た。得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アクリル酸の収率は92モル%であった。また反応液中のアクリル酸の濃度は37質量%であった。
原料2に含まれる水の蒸発潜熱は、生成したアクリル酸1g当たり3217Jと計算できる(100℃の水の蒸発潜熱2265J/gの値を使用)。
実施例1において、原料2を原料1に変え、原料の供給速度を毎時8.4gにした以外は同様に実施した。原料の供給速度は、単位時間当たりの3−ヒドロキシプロピオン酸単位の供給モル数が同じになるように設定した。捕集した反応液を分析したところ、アクリル酸収率は92モル%であった。また反応液中のアクリル酸の濃度は18質量%であった。原料1に含まれる水の蒸発潜熱は、生成したアクリル酸1g当たり9806Jと計算できる。実施例1に比べて、水の蒸発にかかる熱量が3倍必要となる。気相反応では、製造コストにおけるエネルギーコストの割合が高く、その中でも原料蒸発にかかるエネルギーが非常に大きいため、原料1のような3HPの3〜20量体が少なく、低分子量の成分と水が多い原料を用いた場合は、製造コストが非常に高くなる。
実施例1において、原料2を原料4に変え、原料の供給速度を毎時3.2gにした以外は同様に実施した。原料の供給速度は、単位時間当たりの3−ヒドロキシプロピオン酸単位の供給モル数が同じになるように設定した。捕集した反応液を分析したところ、アクリル酸収率は71モル%であった。このように原料4のような3HPの3〜20量体の少ない、高分子量の3HP重合物を原料とした場合は、アクリル酸収率が大きく低下した。
実施例1において、原料2を原料3に変え、原料の供給速度を毎時2.0gにした以外は同様に実施した。原料の供給速度は、単位時間当たりの3−ヒドロキシプロピオン酸単位の供給モル数が同じになるように設定した。捕集した反応液を分析したところ、アクリル酸収率は90モル%であった。また反応液中のアクリル酸の濃度は71質量%であった。
内径10mmのステンレス製反応管に、ステンレス製の1.5mmのディクソンパッキンのみを充填し、触媒の非存在下で反応を行った。反応管を電気炉にて400℃に加熱し、上記原料3を毎時2.0gの速度で反応管の上部に供給した。同時に、毎時3Lの速度で窒素ガスを流した。
反応管の下部から抜き出した反応ガスを、冷却捕集し反応液を得た。得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、反応液中のアクリル酸の濃度は39質量%であった。
実施例3において、原料3を原料1に変え、原料の供給速度を毎時8.4gにした以外は同様に実施した。原料の供給速度は、単位時間当たりの3−ヒドロキシプロピオン酸単位の供給モル数が同じになるように設定した。捕集した反応液を分析したところ、反応液中のアクリル酸の濃度は9質量%であった。
原料及びガスの供給管と、生成した蒸気成分と供給したガスの抜き出し管を備えたステンレス製の反応器に、原料3を5g仕込み、オイルバスにつけて内温を250℃に昇温した。原料3を毎時25.6gの速度で、また窒素ガスを毎時6Lの速度で反応器に供給した。また同時に、生成した蒸気成分と窒素ガスを反応器からガスの抜き出し管を通じて抜き出した。抜き出した蒸気成分は冷却捕集し反応液を取得した。反応器中に一定量の液が存在し、原料と生成物の収支が安定になるまで連続して反応を行った。安定時に得られた反応液を分析したところ、アクリル酸収率は70モル%であった。
(アクリル酸の晶析精製)
実施例2で得られたアクリル酸の水溶液を蒸留し、塔底より、アクリル酸88.2質量%を含む粗製アクリル酸を得た。この粗製アクリル酸を、母液として、室温(約20℃)〜−5.7℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。分離した結晶を融解させてから、一部をサンプリングして分析し、残りを母液として室温(約20℃)〜4.9℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。合計2回の晶析操作により、精製アクリル酸を得た。アクリル酸純度は99.9質量%以上であった。
上記で得られた精製アクリル酸に重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを60質量ppm添加した。別途、鉄を0.2質量ppm含有する苛性ソーダから得られたNaOH水溶液に対して、上記の重合禁止剤を添加したアクリル酸を、冷却下(液温35℃)で添加することにより、75モル%中和を行った。得られた、中和率75モル%、濃度35質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(アクリル酸ナトリウム水溶液に対する値)を溶解させることにより、単量体成分を得た。この単量体成分300gを容積1Lの円筒容器に入れ、2L/minの割合で窒素ガスを吹き込んで、20分間脱気した。次いで、過硫酸ナトリウム0.10g/モル(単量体成分に対する値)およびL−アスコルビン酸0.004g/モル(単量体成分に対する値)の水溶液をスターラー攪拌下で添加して、重合を開始させた。重合開始後に攪拌を停止し、静置水溶液重合を行った。単量体成分の温度が約15分後(重合ピーク時間)にピーク重合温度106℃を示した。その後、30分間重合を進行させた。その後、重合物を円筒容器から取り出し、含水ゲル状架橋重合体を得た。得られた含水ゲル状架橋重合体は、45℃でミートチョッパー(孔径:8mm)により細分化した後、170℃の熱風乾燥機で20分間加熱乾燥させた。更に、乾燥重合体(固形分:約95%)をロールミルで粉砕し、JIS標準篩で粒径600〜300μmに分級することにより、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率:75%)を得た。
また実施例5では、実施例2で得られたアクリル酸が、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸と同等の重合性があり、実施例2で得られたアクリル酸を用いて、臭気がなく、物性も充分に優れる吸水性樹脂を得ることができることを確認した。一方、上記条件を満たさない原料組成物を用いた比較例1〜3では、アクリル酸の収率が低くなったり、製造コストが非常に高くなったりした。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (4)
- 3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、
該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、
該原料組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる工程を含むことを特徴とする、(メタ)アクリル酸の製造方法。 - 前記3−ヒドロキシカルボン酸は、3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、親水性樹脂を製造する方法であって、
該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物のうち3〜20量体の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であり、
該原料組成物を加熱することにより(メタ)アクリル酸を生成させる工程と、
該(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる重合工程とを含むことを特徴とする親水性樹脂の製造方法。 - 前記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
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