JP6193010B2 - (メタ)アクリル酸の製造方法、及び、親水性樹脂の製造方法 - Google Patents
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このように、上記文献に記載の製法では、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することにおいて、まだ充分ではなく、工夫の余地があった。
また、本発明は、前記分解工程を加熱により行うことを特徴とする上記製造方法である。
更に、本発明は、前記3−ヒドロキシカルボン酸が3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする上記製造方法である。
また、本発明は、前記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする上記製造方法である。
本発明は、前記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする上記製造方法でもある。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
上記3−ヒドロキシカルボン酸は、1種でも2種以上でも用いることができる。また、(メタ)アクリル酸は、使用した3−ヒドロキシカルボン酸の種類に応じて得られる。
原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物及び3−ヒドロキシカルボン酸の総量の濃度は、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは15〜93質量%、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜90質量%である。
また原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の濃度は、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは15〜93質量%、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜90質量%である。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物としては、例えば3HPの重合物を例に挙げると、下式(1)に示すように、3HPの水酸基とカルボキシル基が分子間エステル結合したポリエステルが挙げられる。
式(1)中、aは1〜100である。アクリル酸の収率を高くする、分解残渣を低減する等の点から、好ましくは1〜80、より好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜30である。
また原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち20量体(式(1)においてa=19)以上の重合物の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と3−ヒドロキシカルボン酸重合物の合計100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、原料組成物の粘度が高くなり取扱いが煩雑になる、高分子量の重合物が析出して、配管の閉塞や原料組成物の供給組成のふれに起因する(メタ)アクリル酸収率の低下や変動等の虞がある。
原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸単位は、液体クロマトグラフィーやサイズ排除クロマトグラフィーの分析値から求めることができ、また、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液中で加熱し、加水分解させ、液体クロマトグラフィーで、生成した3−ヒドロキシカルボン酸を定量することにより求めることもできる。
なお、3−ヒドロキシカルボン酸単位とは、−CH2−CHR−COO−(Rは水素又はメチル基)を意味する。また、3−ヒドロキシカルボン酸1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位1モル;3−ヒドロキシカルボン酸2量体1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位2モル;3−ヒドロキシカルボン酸3量体1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位3モル;・・・というようにカウントする。
一方、高分子量の3−ヒドロキシカルボン酸重合物は、3−ヒドロキシカルボン酸から水を除去しながら調製することができる。例えば、加熱によりオリゴマーを形成し、更に減圧下、触媒存在下で、水を除去しながら反応させることで取得できる。この場合も、水の除去程度によって、平均分子量や3量体〜20量体のオリゴマーの含有量は変化する。また、微生物中で高分子量の3−ヒドロキシカルボン酸重合物を形成させることもできる。
例えば3HPの重合物の分解物を例に挙げると、下式(2)に示すように、3HPのポリエステルであって、重合度が原料の重合物よりも小さいものが挙げられる。また、下式(3)に示すように、重合物の分解によって得られた、末端に二重結合を持った、重合度が原料の重合物よりも小さい化合物が挙げられる。
式(2)、式(3)中、b、cは、それぞれ0〜10である。気化の容易さ、アクリル酸収率の向上、及び、脱水触媒上での重質物の生成や、触媒活性の低下抑制等の点から、好ましくは0〜8であり、より好ましくは0〜5であり、更に好ましくは0〜3であり、特に好ましくは0〜2である。
また分解工程においては、反応条件によっては3HPや3HPの重合物の水酸基が脱水して、二重結合が生成することもある。例えば3HPからアクリル酸が、3HP2量体からアクリル酸2量体が、3HP3量体からアクリル酸3量体が生成するような反応が進行する場合がある。これらの生成物は、上記の重合物の分解物と同様の化合物であり、目的物であるアクリル酸の生成に寄与できることから、本発明においては重合物の分解物に含まれる。また上記反応ルートにより生成したアクリル酸の多量体のエステル結合が分解して、さらに重合度が低い生成物が生成することもある。
しかし、この段階では、目的成分であるアクリル酸の収率はまだ満足できるレベルではない。そこで、分解工程で得られた生成物を、更に脱水工程にて脱水触媒と接触させることにより、3HPからアクリル酸を生成させる。これにより、脱水工程出口でのアクリル酸収率は非常に高いものとなる。
また、上記の様に重合物を低分子化することにより、脱水工程では3HPが脱水してアクリル酸が生成するのに加え、例えばアクリル酸の2量体、3量体や4量体といった低重合度の分解物を脱水触媒と後述の条件で接触させることにより、それらの多量体が分解してアクリル酸を生成したり、また、3HPの2量体、3量体や4量体といった低重合度の分解物を脱水触媒と後述の条件で接触させることにより、3HPとアクリル酸が生成し、その3HPから脱水反応によって更にアクリル酸を生成したりするといった効果が期待でき、アクリル酸の収率がより一層向上することとなる。
本発明において、原料組成物中に溶媒を含有させる場合、原料組成物における溶媒の濃度は、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは7〜85質量%、更に好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは10〜70質量%、最も好ましくは10〜60質量%である。溶媒の濃度が5質量%以上であれば、粘度の低下により原料組成物の取り扱いが容易になり、また(メタ)アクリル酸生成工程を気相反応で実施するときは、3−ヒドロキシカルボン酸やその重合物の蒸発が促進される効果が期待できる。一方、90質量%以下とすることにより、蒸発にかかる熱量を抑制し、用役費の低減に寄与できる。
原料組成物中に水を含有させる場合、上述のように水が3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の組成分布に影響を与えるため、水の濃度を適切に調整することが好ましい。上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物に含まれる水の濃度の好ましい範囲は、上述した原料組成物における溶媒の濃度の好ましい範囲と同様である。
3−ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、農作物等から得られる糖類やセルロース等を分解して得られる糖類から、更に発酵により調製された、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシイソ酪酸等を用いることができる。
本発明においては、原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の少なくとも一部又は全部が、発酵により得られる3−ヒドロキシカルボン酸であることが好ましい。
また3−ヒドロキシカルボン酸の原料として、バイオマス等の生物由来資源であることが好ましい。
不純物が少ない原料組成物を得る方法としては、発酵液からの精製工程を経た3−ヒドロキシカルボン酸を用いて、原料組成物を調製する方法が挙げられる。発酵液からの精製工程には公知の方法が利用可能である。具体的には、発酵により得られた粗製3−ヒドロキシカルボン酸を、カルシウム塩を用いて沈殿させて、3−ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩として回収した後、硫酸等の酸と反応させて、3−ヒドロキシカルボン酸を精製する方法;発酵により得たアンモニウム型の3−ヒドロキシカルボン酸を、電気透析又は陽イオン交換法によって3−ヒドロキシカルボン酸に化学変換させて精製する方法;等が利用できる。
また、発酵により得られたアンモニウム塩型の3−ヒドロキシカルボン酸水溶液に、水に不混和性のアミン溶媒を添加し加熱することにより、アンモニアを除去して3−ヒドロキシカルボン酸のアミン溶液を得ることができる。そこに水を加えて加熱することにより、3−ヒドロキシカルボン酸の水溶液を得ることができる。
また、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧を利用して、蒸発にて精製することもできる。しかし、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧は小さく、かつ加熱によりオリゴマー化等の副反応が進行しやすいため、減圧下での薄膜蒸発のような熱履歴の小さな蒸発方法が好ましい。
更に、3−ヒドロキシカルボン酸をアルコールによってエステル化し、得られた3−ヒドロキシカルボン酸エステルを蒸留にて精製した後、3−ヒドロキシカルボン酸エステルを加水分解することで、精製した3−ヒドロキシカルボン酸を得ることもできる。
分解触媒の非存在下で分解工程を実施する場合、分解温度は、180〜700℃が好ましく、190〜650℃がより好ましく、200〜600℃が更に好ましい。180℃未満では、分解が不充分で、(メタ)アクリル酸収率が低下したり、分解しきれなかった重合物が分解器内に蓄積し、内部が閉塞したり、熱伝導度の低下により分解効率が低下したりする虞がある。また、700℃を超えると、分解による副生物の生成が多くなり、(メタ)アクリル酸収率の低下や、得られた(メタ)アクリル酸の純度の低下、(メタ)アクリル酸精製工程の煩雑化等の懸念がある。
また、3−ヒドロキシカルボン酸重合物の分解工程は、触媒存在下にて実施しても良い。この場合、分解温度は、150〜600℃が好ましく、160〜550℃がより好ましく、170〜500℃が更に好ましく、180〜450℃が特に好ましい。
分解工程で用いる触媒(以下、分解触媒ともいう)は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を分解する効能を有していれば特に限定されず、例えば酸触媒や塩基触媒が挙げられ、特に固体酸触媒や固体塩基触媒が好ましい。
分解器内の圧力は、原料組成物や生成物の蒸発が起こる場合は、低いほど分解生成物の蒸発が起こりやすくなるため有利であるが、引き続く脱水反応器の適正な圧力や設備等のコストも合わせて選択する必要がある。分解器内の圧力としては、好ましくは10kPa〜1000kPaであり、より好ましくは30kPa〜300kPaであり、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
また、分解器内の原料組成物の流路に、ラシヒリング、ベルルサドル、球状成型物、金網の成型物(ディクソンパッキン、マクマホンパッキン等)、メラパック(スルザーケムテック社製)といった不規則充填物や規則充填物等の、単位充填容積当たりの表面積が大きな充填物を充填し、そこに原料組成物を供給することで、原料組成物が接する表面積を大きくして分解させる方法も挙げられる。こうすることにより、供給した原料組成物が、表面積の大きな充填物と接触することになり、伝熱面積が増え、効率的に熱が伝わり、短時間で分解が進み、そのため、分解器内での副反応を抑制することができる。
上記充填物の材料としては、鉄やステンレス等の金属材料や、シリカ、セラミック等の無機材料等が使用できる。
また、原料組成物を流動床式の分解器に供給して、分解させても良い。例えば、粉体状の不活性固体や触媒を不活性ガスで流動化させ、加熱された流動床式分解器に原料組成物を供給し、分解させても良い。
このように、分解器にて3−ヒドロキシカルボン酸の重合物から分解して生じた低分子成分は、原料組成物中に含まれている溶媒や3−ヒドロキシカルボン酸といった低分子化合物と共に次工程の脱水工程へと送られる。この際、分解器の出口の3−ヒドロキシカルボン酸の重合物から分解して生じた低分子成分を含む混合物は、分解器の中で蒸発してガスの状態となっていることが好ましい。ガスの状態で脱水触媒と接触させることで、脱水反応器の閉塞等を抑制できる。
不活性気体の供給量としては、原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数の0.5モル倍〜100モル倍が好ましく、1モル倍〜50モル倍がより好ましい。原料組成物中に水が含まれる場合は、その水が分解工程で蒸発して生成した水蒸気も、上記不活性気体に含める。
脱水工程では、分解工程から得られた出口ガスを、脱水触媒と接触させる気相反応であることが好ましい。気相反応とすることで、脱水触媒上での重質分の析出やそれに伴う活性劣化を抑制したり、反応管の閉塞等を抑制したりできる。
上記固定床連続反応器を用いる場合は、反応器内に触媒を充填して加熱しておき、そこに分解器の出口ガスを供給すればよい。分解器の出口ガスは、上昇流、下降流、水平流、いずれも好適に使用できる。また、熱交換の容易さから、固定床多管式連続反応器が好適に使用できる。
上記流動床連続反応器を用いる場合は、反応器の中に粉末状の触媒を入れ、分解器の出口ガスや、別途供給する不活性ガス等で触媒を流動させながら、反応させることができる。触媒が流動しているため、重質分による閉塞が起こりにくい。また、触媒の一部を連続的に抜き出して、新しい触媒や再生した触媒を連続的に供給することもできる。
また、分解器と反応器を一体化しても良い。例えば、反応管に、分解層として表面積の大きい充填物を充填し、当該分解層の下に触媒を充填することにより、分解層を分解工程、触媒層を脱水工程として連続した運転も、好ましい形態の1つである。
また、1つ乃至は複数の分解層と、触媒を充填した多管式の反応器を連結して運転することも、好ましい形態である。
上記触媒としては、ゼオライト等の結晶性メタロシリケート;結晶性メタロシリケートに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等を、イオン交換等の方法によって担持したもの;カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト等の天然又は合成粘土化合物;硫酸、ヘテロポリ酸、リン酸又はリン酸塩(リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸マンガン、リン酸ジルコニウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属を、アルミナやシリカ等の担体に担持させた触媒;Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、V2O5、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−ZrO2、TiO2−WO3、TiO2−ZrO2等の無機酸化物又は無機複合酸化物;MgSO4、Al2(SO4)3、K2SO4、AlPO4、Zr(SO4)2等の金属の硫酸塩、リン酸塩等の固体酸性物質;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の固体塩基性物質;等が挙げられる。好適には、Al2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、TiO2、ゼオライト、ゼオライトにアルカリ金属やアルカリ土類金属を担持したもの、リン酸やリン酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属をシリカ等の担体に担持した触媒である。
上記触媒の物性としては、触媒活性等の点から、BET法による比表面積は、0.01〜500m2/gが好ましく、0.1〜400m2/gがより好ましい。触媒活性、生成物の(メタ)アクリル酸の選択率、触媒寿命等の点から、ハメットの酸度関数H0は、+4〜−10が好ましく、+2〜−8がより好ましい。また、触媒活性や反応器の圧力損失の点から、触媒の大きさは、長径が0.1mm〜50mmが好ましく、0.5mm〜40mmがより好ましい。
反応圧力は、特に限定されないが、原料組成物の分解方法、脱水反応の生産性、脱水反応後の捕集効率等を勘案して決定することができる。反応圧力としては、10kPa〜1000kPaが好ましく、より好ましくは30kPa〜300kPa、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
脱水反応は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物を分解器に通して低分子化することで得られた、3−ヒドロキシカルボン酸や低分子化された3−ヒドロキシカルボン酸の重合物と脱水触媒とを接触させることで実施できるが、その際3−ヒドロキシカルボン酸や3−ヒドロキシカルボン酸の重合物が気体の状態で脱水触媒と接触することが好ましい。3−ヒドロキシカルボン酸や3−ヒドロキシカルボン酸の重合物が液体の状態で脱水触媒と接触すると、重質分の生成による反応器の閉塞や、それに伴う触媒活性の急激な劣化等が起こる場合がある。またそれらの抑制のためにより高温での反応を実施する場合もあるが、その場合は原料や生成物の過分解による(メタ)アクリル酸収率の低下や不純物の増加、触媒上のコーキングの増加による活性低下、触媒の構造変化や触媒の成分飛散による触媒の不可逆的な活性低下等の問題点が生じるおそれもある。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を分解器で低分子化することで、それらの気化を容易にする。また分解器内で3−ヒドロキシカルボン酸やその重合物の水酸基が脱水反応を起こし二重結合が生成することでも、沸点が低下し、気化を容易にする効果が期待できる。上記のような問題を回避して、安定的な脱水反応を長期にわたって実施することが可能となる。
酸化剤としては、過酸化水素水、有機過酸化物、硝酸、亜硝酸等が溶解した液状の酸化剤を使用しても良いし、ガス状の酸化剤を使用しても良い。好ましくは、ガス状の酸化剤である。
ガス状の酸化剤は、炭素状物質の酸化分解のために該炭素状物質に酸素元素を供給することが可能な気体分子であり、例えば、酸素(空気中の酸素も酸化剤に該当する)、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素等を挙げることができる。これらの酸化剤のうち、一種以上のガス状酸化剤が含まれていれば良く、例えば、空気と酸素との混合ガス、一酸化窒素と酸素との混合ガス等を使用しても良く、また、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム及び水蒸気等の不活性ガスから任意に選択した一種以上のガスと酸化剤との混合ガスを使用しても良い。好ましくは酸素を含んだガスである。
酸化剤濃度としては、温度制御や生産コスト等の点から、好ましくは1〜21体積%である。
処理時間としては、(メタ)アクリル酸の生産性等の点から、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間である。
該組成物中の(メタ)アクリル酸濃度は、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜95質量%、更に好ましくは20〜95質量%である。
精製工程は、蒸留、抽出、膜分離、晶析等の公知の技術により実施でき、それらを組み合わせて実施しても良い。
上記のようにして得られた(メタ)アクリル酸を含む反応生成物は、捕集や精製工程の取扱いを、重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。重合禁止剤としては、メトキノン、酢酸マンガン、ニトロソフェノール、クペロン、N−オキシル化合物、ジブチルチオカルバミン酸銅、フェノチアジン、ハイドロキノン等が例示できる。また、必要に応じて酸素含有ガスを供給してもよい。
当該方法としては、具体的には、晶析により(メタ)アクリル酸を精製する工程を含む。
ここで、粗(メタ)アクリル酸とは、冷却工程で得られた(メタ)アクリル酸を含む組成物を指し、特に(メタ)アクリル酸の水溶液が好適に用いられる。
晶析工程は、粗(メタ)アクリル酸からプロピオン酸を分離することができる従来公知の方法、例えば、特開平9−227445号公報や特表2002−519402号公報に記載された方法等を用いて行うことができる。
分解工程及び脱水工程を含むプロセスにて得られた生成物から、例えば上記のような精製工程で(メタ)アクリル酸を分離した後、残った不純物は、リサイクルして再利用することができる。例えば3−ヒドロキシカルボン酸、式(2)で表される3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、式(3)で表される(メタ)アクリル酸の重合物を分解工程や脱水工程の原料として再利用することで(メタ)アクリル酸の収率を向上させることができる。
上述した本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法において、不純物を再利用する工程(リサイクル工程)を好適に適用することができる。言い換えれば、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、不純物を再利用する工程を含むことが好ましい。ここで不純物とは、反応生成物に含まれるもののうち、(メタ)アクリル酸の原料となりうるもの、すなわち3−ヒドロキシカルボン酸、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、(メタ)アクリル酸の重合物を指す。例えば、反応終了後に残存した3−ヒドロキシカルボン酸や上記オリゴマーを上述した各工程の原料として再利用することが好ましい。
図1は、本発明の製造方法の3HPの重合物を原料とする反応式を例示する図である。図2は、図1から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。本発明に係る反応工程においては、主生成物としてアクリル酸を生成するとともに、3HPや、(原料より)低分子化されたオリゴマー等の不純物が残存する場合がある。図2で示した反応式は、脱水工程後に残存した不純物を分解工程や脱水工程の原料として再利用する。
本発明による親水性樹脂の製造方法は、上記のような(メタ)アクリル酸の製造方法により得られる、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合することを特徴とする。すなわち、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸は、吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂の原料として用いることができる。
親水性樹脂としては、吸水性樹脂であることが好ましい。
このような吸水性樹脂の具体例や物性測定法は、例えば、米国特許第6,107,358号、米国特許第6,174,978号、米国特許第6,241,928号等に記載されている。
また、生産性向上の観点から好ましい製造方法は、例えば、米国特許第6,867,269号、米国特許第6,906,159号、米国特許第7,091,253号、国際公開第2001/038402号、国際公開第2006/034806号等に記載されている。
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸の一部は、ラインを介して、吸水性樹脂の製造プロセスに供給される。吸収性樹脂の製造プロセスにおいては、(メタ)アクリル酸を中和工程、重合工程、乾燥工程に導入して、所望の処理を施すことにより、吸水性樹脂を製造する。各種物性の改善を目的として所望の処理を施してもよく、例えば、重合中又は重合後に架橋工程を介在させてもよい。
(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸(塩)の中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等、従来公知の塩基性物質を適宜用いればよい。
また、ポリ(メタ)アクリル酸の中和率は、特に限定されるものではなく、任意の中和率(例えば、30〜100モル%の範囲内における任意の値)となるように調整すればよい。
なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。また、表1、表3、及び、表4中、「2量体」〜「13量体」は、それぞれ、3HPの「2量体」〜「13量体」を示す。
(液体クロマトグラフィーの分析条件)
使用カラム:Inertsil ODS−4(ジーエルサイエンス株式会社製) 2本
溶離液:アセトニトリル/水/リン酸/リン酸二水素カリウム=35/64/0.7/0.3(重量比)
検出器:UV 205nm
カラム温度:50℃
(サイズ排除クロマトグラフィーの分析条件)
使用カラム:TSKgel Super H200(東ソー株式会社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV 205nm
カラム温度:40℃
アクリル酸の収率(モル%)=100×(生成したアクリル酸のモル数)/(供給した3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数)
3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数=(3−ヒドロキシカルボン酸のモル数+2量体のモル数×2+3量体のモル数×3+4量体のモル数×4+5量体のモル数×5+6量体のモル数×6+7量体のモル数×7+8量体のモル数×8+9量体のモル数×9+10量体以上の多量体の重量(g)/72)
3HPの発酵による製造を、特開2012−085635号公報の実施例1の方法に従って行った。得られた発酵液から濾過にて菌体を分離し、得られた濾液700gに、n−ドデカノール100gを添加し、エバポレーターで水を留去した。最終的に50℃、2.7kPaで留出がなくなるまで行った。
得られた残液を、80℃、10Paの薄膜蒸発器にかけ、3HPとn−ドデカノールの混合物を留分として取得した。得られた留分に等量の水を添加し、混合して水相に3HPを抽出した。油水分離した油相に再度等量の水を添加し、3HPの抽出を行った。油水分離した水相を合わせて濾過を行い、3HP水溶液を得た。3HPの濃度は16質量%であった。
上記で得られた3HP水溶液を、エバポレーターを用いて濃縮を行い、原料液を調製した。この原料液を液体クロマトグラフィーで分析すると、3HP以外に2量体から9量体までのオリゴマーが確認された。その組成を表1に示す。また、サイズ排除クロマトグラフィーで分析したところ、10量体以上の重合物は検出できなかった。
内径10mmのステンレス管に、ステンレス製の1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し分解器とした。また内径10mmのステンレス管に、脱水触媒としてγ−アルミナを充填し、電気炉内に設置し脱水反応器とした。分解器の出口と脱水反応器の入口をステンレス管で連結し、分解器の出口ガスを直接脱水反応器へ導入できる様にし、連結管でガスが冷えないように、連結管の周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
分解器内の温度を375℃とし、脱水反応器内の温度を300℃とし、原料液を毎時2.2gの速度で分解器の上部に供給した。同時に窒素ガスを毎時7Lの速度で供給した。分解器の出口ガスはそのまま脱水反応器へ供給し、8時間継続して反応を実施した。脱水反応器の出口ガスを冷却捕集し、得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アクリル酸の収率は92モル%であった。反応液中には3量体以上のオリゴマーは検出できなかった。
実施例1において、分解器出口のガスを、脱水反応器に供給せず、そのまま冷却捕集した。捕集した反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アクリル酸収率は53モル%であった。またその組成を表2に示す。なお、表2の結果から、原料液の重合物が分解器で分解したことが示されている。
実施例1において、原料液を分解器に通さず、直接脱水反応器に供給した。1時間後、脱水反応器の内圧が急上昇したため、反応を停止した。冷却後、脱水反応器の中を確認すると、触媒層に褐色の付着物が多量に存在し、反応管が閉塞していた。閉塞するまでに得られた反応液を分析したところアクリル酸収率は80モル%であった。
硝酸カリウム1.7gとリン酸水素二アンモニウム1.1gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK1P0.5Si20からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
上記の(原料3HP調製例)の前半部分と同様の工程で、濃度16質量%の3HP水溶液を得た。得られた3HP水溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行い、原料液を調製した。この原料液を液体クロマトグラフィーで分析すると、3HP以外に2量体から9量体までのオリゴマーが確認された。その組成を表3に示す。各オリゴマーを3HPモノマー換算すると、3HP80質量%相当の水溶液と計算できる。
(アクリル酸の晶析精製)
実施例2で得られたアクリル酸の水溶液を蒸留し、塔底より、アクリル酸88.2質量%を含む粗製アクリル酸を得た。この粗製アクリル酸を、母液として、室温(約20℃)〜−5.7℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。分離した結晶を融解させてから、一部をサンプリングして分析し、残りを母液として室温(約20℃)〜4.9℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。合計2回の晶析操作により、精製アクリル酸を得た。アクリル酸純度は99.9質量%以上であった。
上記で得られた精製アクリル酸に重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを60質量ppm添加した。別途、鉄を0.2質量ppm含有する苛性ソーダから得られたNaOH水溶液に対して、上記の重合禁止剤を添加したアクリル酸を、冷却下(液温35℃)で添加することにより、75モル%中和を行った。得られた、中和率75モル%、濃度35質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(アクリル酸ナトリウム水溶液に対する値)を溶解させることにより、単量体成分を得た。この単量体成分300gを容積1Lの円筒容器に入れ、2L/minの割合で窒素ガスを吹き込んで、20分間脱気した。次いで、過硫酸ナトリウム0.10g/モル(単量体成分に対する値)およびL−アスコルビン酸0.004g/モル(単量体成分に対する値)の水溶液をスターラー攪拌下で添加して、重合を開始させた。重合開始後に攪拌を停止し、静置水溶液重合を行った。単量体成分の温度が約15分後(重合ピーク時間)にピーク重合温度106℃を示した。その後、30分間重合を進行させた。その後、重合物を円筒容器から取り出し、含水ゲル状架橋重合体を得た。得られた含水ゲル状架橋重合体は、45℃でミートチョッパー(孔径:8mm)により細分化した後、170℃の熱風乾燥機で20分間加熱乾燥させた。更に、乾燥重合体(固形分:約95%)をロールミルで粉砕し、JIS標準篩で粒径600〜300μmに分級することにより、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率:75%)を得た。
硝酸カリウム17gとリン酸水素二アンモニウム11gを水1000gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素200gを加えた後、水を蒸発させ濃縮を行った。得られた混合物を、押出成型器にてリング状の成型体とした。成型体を空気雰囲気中120℃で20時間乾燥し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK1P0.5Si20からなる成型触媒を得た。リング状成型触媒の大きさは、外径6mm、内径2mm、高さ7mmであった。
上記の(原料3HP調製例)の前半部分と同様の工程で、濃度16質量%の3HP水溶液を得た。得られた3HP水溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行い、原料液を調製した。この原料液を液体クロマトグラフィーで分析すると、3HP以外に2量体から13量体までのオリゴマーが確認された。その組成を表4に示す。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (4)
- 3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、
(a)液状で供給された該原料組成物から、180℃以上の分解温度で該重合物のガス状分解物を生成させる分解工程、及び、
(b)該分解物を脱水触媒と気相で接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程
を含み、
該重合物の分解物は、3−ヒドロキシカルボン酸、その2量体、(メタ)アクリル酸、及び、その2量体を含み、
該原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の濃度は、20質量%以上であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸の製造方法。 - 前記3−ヒドロキシカルボン酸は、3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、親水性樹脂を製造する方法であって、
(a)液状で供給された該原料組成物から、180℃以上の分解温度で該重合物のガス状分解物を生成させる分解工程、
(b)該分解物を脱水触媒と気相で接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程、及び、
(c)該(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる重合工程
を含み、
該重合物の分解物は、3−ヒドロキシカルボン酸、その2量体、(メタ)アクリル酸、及び、その2量体を含み、
該原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の濃度は、20質量%以上であることを特徴とする親水性樹脂の製造方法。 - 前記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
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