JP6193010B2 - (メタ)アクリル酸の製造方法、及び、親水性樹脂の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸の製造方法、及び、親水性樹脂の製造方法 Download PDF

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本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法、及び、親水性樹脂を製造する方法に関する。
(メタ)アクリル酸はアクリル樹脂や吸水性樹脂等の原料として工業的に広く利用されており、通常、(メタ)アクリル酸の製法としては、固定床多管式連続反応器を用い酸化物触媒の存在下、プロピレンやイソブチレンを接触気相酸化によりアクロレインやメタクロレインとし、得られたアクロレインやメタクロレインの接触気相酸化により(メタ)アクリル酸を製造する二段酸化方法が一般的である。プロピレンやイソブチレンは化石資源由来の原料であるため、再生可能資源から製造することが望まれている。
再生可能な資源であるバイオマス等を利用して、(メタ)アクリル酸を商業的規模で経済的に製造する試みが行われている。バイオマスからの(メタ)アクリル酸の生成方法としては、天然物から得られる糖類やセルロース等を分解して得られる糖類を更に発酵により調製される3−ヒドロキシプロピオン酸(3HPとも称す)や3−ヒドロキシイソ酪酸等の3−ヒドロキシカルボン酸を、脱水することにより(メタ)アクリル酸を調製する方法が挙げられる。
従来の方法としては、バイオマス由来のポリヒドロキシアルカノエート(PHAとも称す)を加熱することによるアクリル酸の製法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、PHAを含むバイオマスを加熱するアクリル酸の製法であって、PHAがポリ3−ヒドロキシプロピオネート又は3−ヒドロキシプロピオネートを含むポリマーであり、PHAからのアクリル酸収率が少なくとも約50%であることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。更に、遺伝子組み換えPHAバイオマスからのモノマー成分の製法であって、触媒存在下でバイオマスを加熱し、モノマーを遊離させ、モノマーの収率がPHAに対して約70%であることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、α−又はβ−ヒドロキシカルボン酸を含む水溶液を、不活性なセラミック等や酸性の固体触媒を保持したところへ導入して加熱することにより、α,β−不飽和カルボン酸を調製する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。更に、β−ヒドロキシカルボニル化合物をある流量、温度にて、実質的に液体状態で反応器に供給し、反応器中では実質的に不活性ガスの無い状態で反応し、1つ以上の蒸発可能な生成物に転化させること、及び、生成物はα,β−不飽和カルボニル化合物であり、高収率であることが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
米国特許第7166743号明細書 米国特許第6897338号明細書 国際公開第2011/100608号 国際公開第2005/095320号 国際公開第2007/106100号
しかしながら、上記特許文献1〜3の方法では、PHAというポリマーを原料としてアクリル酸を製造しているため、アクリル酸収率の変動や製造時に生成する重質な残渣分のため、長期間安定的に高収率で製造を行うことが困難であるという問題を見出した。また、上記特許文献4〜5の方法では、オリゴマーやダイマー等を含んだ原料を用いてアクリル酸を製造しているため、オリゴマー等の重合物が反応器内等に付着し、最終的に反応器等が閉塞してしまい、長期間安定に製造することが困難であるという問題や、付着物が触媒表面を覆うことによって、触媒活性が低下するため、(メタ)アクリル酸の収率が低下するという問題を見出した。
このように、上記文献に記載の製法では、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することにおいて、まだ充分ではなく、工夫の余地があった。
そこで本発明の課題は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から(メタ)アクリル酸を製造する際に、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することにある。
言い換えれば、本発明の課題は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物をそのまま脱水反応に使用すると、閉塞、触媒活性の低下がおこるおそれがあることであった。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討した結果、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から(メタ)アクリル酸を製造するにあたり、該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む条件で、(メタ)アクリル酸の製造を実施することにより、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができることを見出した。また、本発明者らは、本製法で得られた(メタ)アクリル酸を用いて吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂を好適に製造することができることも見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含むことを特徴とする、(メタ)アクリル酸の製造方法である。
また、本発明は、前記分解工程を加熱により行うことを特徴とする上記製造方法である。
更に、本発明は、前記3−ヒドロキシカルボン酸が3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする上記製造方法である。
本発明は、更に、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、親水性樹脂を製造する方法であって、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程、及び、(c)該(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる重合工程を含むことを特徴とする、親水性樹脂の製造方法でもある。なお、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分とは、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸を含むものであればよく、必要に応じてその他の単量体を更に含むものであってもよい。ここで、該単量体成分は、重合時において、架橋剤、重合開始剤等を含む組成物に含まれるものであってもよい。
また、本発明は、前記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする上記製造方法である。
本発明は更に、前記製造方法により得られた(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合することを特徴とする親水性樹脂の製造方法でもある。
本発明は、前記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする上記製造方法でもある。
本発明を言い換えて纏めると、分解工程で、オリゴマーを低分子化してから脱水することで、閉塞や活性低下を抑制できるということである。
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法によれば、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができる。また、本製法で得られた(メタ)アクリル酸を使用して、親水性樹脂を好適に製造することができる。
図1は、本発明の製造方法に係る反応式を例示する図である。 図2は、図1から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含むことを特徴とするものである。
3−ヒドロキシカルボン酸は、後述のようにして調製することができるが、その際に(例えば、発酵液からの3−ヒドロキシカルボン酸の精製・濃縮工程等において)、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物も生成してしまう場合が多い。そこで、本発明は、3−ヒドロキシカルボン酸だけでなく、その重合物も含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を高収率で製造する方法を提供する。
本発明における3−ヒドロキシカルボン酸としては、3−ヒドロキシプロピオン酸(以下、3HPともいう)、3−ヒドロキシイソ酪酸等が挙げられ、好ましくは3−ヒドロキシプロピオン酸である。また、(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、好ましくはアクリル酸である。
上記3−ヒドロキシカルボン酸は、1種でも2種以上でも用いることができる。また、(メタ)アクリル酸は、使用した3−ヒドロキシカルボン酸の種類に応じて得られる。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物は、該3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含んでいれば良い。また、3−ヒドロキシカルボン酸(単量体)、溶媒や3−ヒドロキシカルボン酸の調製において生成する副生物等を含んでいてもよい。
原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物及び3−ヒドロキシカルボン酸の総量の濃度は、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは15〜93質量%、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜90質量%である。
また原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の濃度は、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは15〜93質量%、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜90質量%である。
ここで、本明細書において、重合物とは、3−ヒドロキシカルボン酸が分子間エステル結合にて連なった多量体を意味する。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物としては、例えば3HPの重合物を例に挙げると、下式(1)に示すように、3HPの水酸基とカルボキシル基が分子間エステル結合したポリエステルが挙げられる。
式(1)中、aは1〜100である。アクリル酸の収率を高くする、分解残渣を低減する等の点から、好ましくは1〜80、より好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜30である。
Figure 0006193010
本発明で用いる原料組成物は、(メタ)アクリル酸の収率向上等の観点から、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含み、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体(式(1)においてa=2)〜20量体(式(1)においてa=19)の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と3−ヒドロキシカルボン酸重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。また、上限としては特に限定されないが、原料組成物の調製にかかるコストや設備の点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
(メタ)アクリル酸の収率向上という観点から、より好ましい原料組成物は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含み、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体(式(1)においてa=2)〜15量体(式(1)においてa=14)の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と3−ヒドロキシカルボン酸重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上である。更に好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上であり、最も好ましくは40質量%以上である。また、上限としては特に限定されないが、原料組成物の調製にかかるコストや設備の点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
(メタ)アクリル酸の収率向上という観点から、更に好ましい原料組成物は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含み、該3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち3量体(式(1)においてa=2)〜9量体(式(1)においてa=8)の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と3−ヒドロキシカルボン酸重合物の合計100質量%に対して、10質量%以上である。更に一層好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上であり、最も好ましくは40質量%以上である。また、上限としては特に限定されないが、原料組成物の調製にかかるコストや設備の点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
また原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸重合物のうち20量体(式(1)においてa=19)以上の重合物の合計が、3−ヒドロキシカルボン酸と3−ヒドロキシカルボン酸重合物の合計100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、原料組成物の粘度が高くなり取扱いが煩雑になる、高分子量の重合物が析出して、配管の閉塞や原料組成物の供給組成のふれに起因する(メタ)アクリル酸収率の低下や変動等の虞がある。
なお、3−ヒドロキシカルボン酸や2量体〜9量体程度の低分子量の成分は、液体クロマトグラフィーで、10量体以上の成分はサイズ排除クロマトグラフィーで、分析することができる。
原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸単位は、液体クロマトグラフィーやサイズ排除クロマトグラフィーの分析値から求めることができ、また、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料組成物を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液中で加熱し、加水分解させ、液体クロマトグラフィーで、生成した3−ヒドロキシカルボン酸を定量することにより求めることもできる。
なお、3−ヒドロキシカルボン酸単位とは、−CH−CHR−COO−(Rは水素又はメチル基)を意味する。また、3−ヒドロキシカルボン酸1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位1モル;3−ヒドロキシカルボン酸2量体1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位2モル;3−ヒドロキシカルボン酸3量体1モルは、3−ヒドロキシカルボン酸単位3モル;・・・というようにカウントする。
なお、3−ヒドロキシカルボン酸は、分子間脱水反応によりエステル結合で連なったオリゴマーやポリマーを形成しやすい。この反応は非常に進行しやすく、室温での保管中でもオリゴマーが生成し、いずれは平衡組成に達する。更に発酵液からの精製や濃縮工程等で加熱されると、より一層オリゴマー生成速度は速くなる。また、オリゴマー化反応は、水が副生する平衡反応であるため、その平衡組成は水の濃度に依存し、水濃度が高いと低分子量オリゴマーが多くなり、水濃度が低いと高分子量オリゴマーが多くなる。
一方、高分子量の3−ヒドロキシカルボン酸重合物は、3−ヒドロキシカルボン酸から水を除去しながら調製することができる。例えば、加熱によりオリゴマーを形成し、更に減圧下、触媒存在下で、水を除去しながら反応させることで取得できる。この場合も、水の除去程度によって、平均分子量や3量体〜20量体のオリゴマーの含有量は変化する。また、微生物中で高分子量の3−ヒドロキシカルボン酸重合物を形成させることもできる。
また、重合物の分解物とは、上記重合物が加熱によりエステル結合部分が分解して低分子化され、重合度が低下したものを意味する。
例えば3HPの重合物の分解物を例に挙げると、下式(2)に示すように、3HPのポリエステルであって、重合度が原料の重合物よりも小さいものが挙げられる。また、下式(3)に示すように、重合物の分解によって得られた、末端に二重結合を持った、重合度が原料の重合物よりも小さい化合物が挙げられる。
Figure 0006193010
ここで重合物及び重合物の分解物は、単一の重合度ではなく分布を持つため、a、b、cはいずれも平均の重合度を表す。重合物の分解物は、原料の重合物より重合度が小さいため、a>b、a>cである。
式(2)、式(3)中、b、cは、それぞれ0〜10である。気化の容易さ、アクリル酸収率の向上、及び、脱水触媒上での重質物の生成や、触媒活性の低下抑制等の点から、好ましくは0〜8であり、より好ましくは0〜5であり、更に好ましくは0〜3であり、特に好ましくは0〜2である。
上記重合物を、分解工程にて低分子成分へ分解することにより、3HP(式(2)においてb=0)、3HP2量体(式(2)においてb=1)、3HP3量体(式(2)においてb=2)、3HP4量体(式(2)においてb=3)、アクリル酸(式(3)においてc=0)、アクリル酸2量体(式(3)においてc=1)、アクリル酸3量体(式(3)においてc=2)、アクリル酸4量体(式(3)においてc=3)等が生成する。
また分解工程においては、反応条件によっては3HPや3HPの重合物の水酸基が脱水して、二重結合が生成することもある。例えば3HPからアクリル酸が、3HP2量体からアクリル酸2量体が、3HP3量体からアクリル酸3量体が生成するような反応が進行する場合がある。これらの生成物は、上記の重合物の分解物と同様の化合物であり、目的物であるアクリル酸の生成に寄与できることから、本発明においては重合物の分解物に含まれる。また上記反応ルートにより生成したアクリル酸の多量体のエステル結合が分解して、さらに重合度が低い生成物が生成することもある。
しかし、この段階では、目的成分であるアクリル酸の収率はまだ満足できるレベルではない。そこで、分解工程で得られた生成物を、更に脱水工程にて脱水触媒と接触させることにより、3HPからアクリル酸を生成させる。これにより、脱水工程出口でのアクリル酸収率は非常に高いものとなる。
また、上記の様に重合物を低分子化することにより、脱水工程では3HPが脱水してアクリル酸が生成するのに加え、例えばアクリル酸の2量体、3量体や4量体といった低重合度の分解物を脱水触媒と後述の条件で接触させることにより、それらの多量体が分解してアクリル酸を生成したり、また、3HPの2量体、3量体や4量体といった低重合度の分解物を脱水触媒と後述の条件で接触させることにより、3HPとアクリル酸が生成し、その3HPから脱水反応によって更にアクリル酸を生成したりするといった効果が期待でき、アクリル酸の収率がより一層向上することとなる。
以下に、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物、該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程について順に説明する。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物には溶媒が含まれていてもよい。溶媒としては、3−ヒドロキシカルボン酸及びその重合物を溶解できるものであれば、特に限定されないが、例えば、水、アルコール、炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、アミン、アミド等が挙げられる。これらは、1種でも2種以上でも用いることができる。溶媒の沸点は、気化が容易になるため3−ヒドロキシカルボン酸よりも低い方が好ましい。好適には水である。
本発明において、原料組成物中に溶媒を含有させる場合、原料組成物における溶媒の濃度は、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは7〜85質量%、更に好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは10〜70質量%、最も好ましくは10〜60質量%である。溶媒の濃度が5質量%以上であれば、粘度の低下により原料組成物の取り扱いが容易になり、また(メタ)アクリル酸生成工程を気相反応で実施するときは、3−ヒドロキシカルボン酸やその重合物の蒸発が促進される効果が期待できる。一方、90質量%以下とすることにより、蒸発にかかる熱量を抑制し、用役費の低減に寄与できる。
原料組成物中に水を含有させる場合、上述のように水が3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の組成分布に影響を与えるため、水の濃度を適切に調整することが好ましい。上記3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物に含まれる水の濃度の好ましい範囲は、上述した原料組成物における溶媒の濃度の好ましい範囲と同様である。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物には、3−ヒドロキシカルボン酸や3−ヒドロキシカルボン酸の重合物以外の成分、例えば、3−ヒドロキシカルボン酸を発酵等により合成する際の副生物等が含まれていても良い。当該副生物としては、具体的には、発酵において3−ヒドロキシカルボン酸と共に副生される可能性のある、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、フマル酸、ピルビン酸、グリコール酸、乳酸、エタノール、アミノ酸類、1,3−プロパンジオール、グリセリン、ヒドロキシプロピオンアルデヒド、アラニン等が例示される。
本発明で用いられる3−ヒドロキシカルボン酸は、種々の源から得ることができ、地球温暖化及び環境保護の観点から、炭素源としてリサイクル可能な生物由来資源を用いることが好ましい。
3−ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、農作物等から得られる糖類やセルロース等を分解して得られる糖類から、更に発酵により調製された、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシイソ酪酸等を用いることができる。
本発明においては、原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の少なくとも一部又は全部が、発酵により得られる3−ヒドロキシカルボン酸であることが好ましい。
また3−ヒドロキシカルボン酸の原料として、バイオマス等の生物由来資源であることが好ましい。
3−ヒドロキシカルボン酸は、公知の方法で入手可能であり、例えば、国際公開第2008/027742号に記載されている、Streptomyces griseus ATCC21897由来beta−alanine aminotransferase遺伝子導入大腸菌を用いた、グルコースを炭素源とした発酵により得ることができる。また、国際公開第2001/016346号に記載されている、Klebsiella pneumoniae由来グリセリン脱水酵素及び大腸菌由来アルデヒド酸化酵素導入大腸菌を用いた、グリセリンを炭素源とした発酵によっても得ることができる。
3−ヒドロキシカルボン酸の入手方法の例として上記公知文献を記載したが、発酵に用いる細菌又は組換え細菌は特に限定されず、3−ヒドロキシカルボン酸生成能を有する生物を用いた発酵により入手した3−ヒドロキシカルボン酸であれば、本発明の製法で利用可能である。また、微生物によって3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を製造することもでき、その重合物を原料組成物として用いても良い。また、発酵以外にも、原料とする糖類と生物とを接触させることにより生成した3−ヒドロキシカルボン酸でも、本発明の製法で(メタ)アクリル酸へ変換することができる。
本発明に用いる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物としては、発酵工程を経て得られたものであって、より不純物が少ない原料組成物を用いることが好ましい。
不純物が少ない原料組成物を得る方法としては、発酵液からの精製工程を経た3−ヒドロキシカルボン酸を用いて、原料組成物を調製する方法が挙げられる。発酵液からの精製工程には公知の方法が利用可能である。具体的には、発酵により得られた粗製3−ヒドロキシカルボン酸を、カルシウム塩を用いて沈殿させて、3−ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩として回収した後、硫酸等の酸と反応させて、3−ヒドロキシカルボン酸を精製する方法;発酵により得たアンモニウム型の3−ヒドロキシカルボン酸を、電気透析又は陽イオン交換法によって3−ヒドロキシカルボン酸に化学変換させて精製する方法;等が利用できる。
また、発酵により得られたアンモニウム塩型の3−ヒドロキシカルボン酸水溶液に、水に不混和性のアミン溶媒を添加し加熱することにより、アンモニアを除去して3−ヒドロキシカルボン酸のアミン溶液を得ることができる。そこに水を加えて加熱することにより、3−ヒドロキシカルボン酸の水溶液を得ることができる。
また、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧を利用して、蒸発にて精製することもできる。しかし、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧は小さく、かつ加熱によりオリゴマー化等の副反応が進行しやすいため、減圧下での薄膜蒸発のような熱履歴の小さな蒸発方法が好ましい。
更に、3−ヒドロキシカルボン酸をアルコールによってエステル化し、得られた3−ヒドロキシカルボン酸エステルを蒸留にて精製した後、3−ヒドロキシカルボン酸エステルを加水分解することで、精製した3−ヒドロキシカルボン酸を得ることもできる。
前述のように、発酵により3−ヒドロキシカルボン酸を製造する場合、発酵由来の不純物を除去するための精製工程を行うことが望ましい。また発酵液中の3−ヒドロキシカルボン酸濃度は高くないため、そのままの濃度で(メタ)アクリル酸製造工程で使用すると、加熱のためのエネルギーが過大になったり、反応装置が大きくなり、コストが嵩んだりする要因となる。その点から発酵液からの3−ヒドロキシカルボン酸の精製工程や濃縮工程を経た方が好ましいが、それらの工程で加熱されたり、濃縮によって3−ヒドロキシカルボン酸濃度が高くなったりすると、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の生成は避けられない。従って、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含んだ原料組成物からの、高収率での(メタ)アクリル酸の製造法は工業的に非常に重要である。
3−ヒドロキシカルボン酸重合物の分解工程は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を含む原料を加熱することにより実施される。
分解触媒の非存在下で分解工程を実施する場合、分解温度は、180〜700℃が好ましく、190〜650℃がより好ましく、200〜600℃が更に好ましい。180℃未満では、分解が不充分で、(メタ)アクリル酸収率が低下したり、分解しきれなかった重合物が分解器内に蓄積し、内部が閉塞したり、熱伝導度の低下により分解効率が低下したりする虞がある。また、700℃を超えると、分解による副生物の生成が多くなり、(メタ)アクリル酸収率の低下や、得られた(メタ)アクリル酸の純度の低下、(メタ)アクリル酸精製工程の煩雑化等の懸念がある。
また、3−ヒドロキシカルボン酸重合物の分解工程は、触媒存在下にて実施しても良い。この場合、分解温度は、150〜600℃が好ましく、160〜550℃がより好ましく、170〜500℃が更に好ましく、180〜450℃が特に好ましい。
分解工程で用いる触媒(以下、分解触媒ともいう)は、3−ヒドロキシカルボン酸重合物を分解する効能を有していれば特に限定されず、例えば酸触媒や塩基触媒が挙げられ、特に固体酸触媒や固体塩基触媒が好ましい。
分解器内の滞留時間は、分解器の構造にも依るが、5秒〜5時間が好ましい。より好ましくは、10秒〜3時間である。滞留時間が短すぎると分解が不充分になる場合があり、また長すぎると副反応により、最終的な(メタ)アクリル酸の収率が低下する虞がある。
分解器内の圧力は、原料組成物や生成物の蒸発が起こる場合は、低いほど分解生成物の蒸発が起こりやすくなるため有利であるが、引き続く脱水反応器の適正な圧力や設備等のコストも合わせて選択する必要がある。分解器内の圧力としては、好ましくは10kPa〜1000kPaであり、より好ましくは30kPa〜300kPaであり、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
分解器は、原料組成物に効率的に熱を伝える構造が好ましい。例えば、水平管型や垂直管型の自然循環式分解器、強制循環式分解器、多管式熱交換器等が挙げられる。
また、分解器内の原料組成物の流路に、ラシヒリング、ベルルサドル、球状成型物、金網の成型物(ディクソンパッキン、マクマホンパッキン等)、メラパック(スルザーケムテック社製)といった不規則充填物や規則充填物等の、単位充填容積当たりの表面積が大きな充填物を充填し、そこに原料組成物を供給することで、原料組成物が接する表面積を大きくして分解させる方法も挙げられる。こうすることにより、供給した原料組成物が、表面積の大きな充填物と接触することになり、伝熱面積が増え、効率的に熱が伝わり、短時間で分解が進み、そのため、分解器内での副反応を抑制することができる。
上記充填物の材料としては、鉄やステンレス等の金属材料や、シリカ、セラミック等の無機材料等が使用できる。
また、原料組成物を流動床式の分解器に供給して、分解させても良い。例えば、粉体状の不活性固体や触媒を不活性ガスで流動化させ、加熱された流動床式分解器に原料組成物を供給し、分解させても良い。
このように、分解器にて3−ヒドロキシカルボン酸の重合物から分解して生じた低分子成分は、原料組成物中に含まれている溶媒や3−ヒドロキシカルボン酸といった低分子化合物と共に次工程の脱水工程へと送られる。この際、分解器の出口の3−ヒドロキシカルボン酸の重合物から分解して生じた低分子成分を含む混合物は、分解器の中で蒸発してガスの状態となっていることが好ましい。ガスの状態で脱水触媒と接触させることで、脱水反応器の閉塞等を抑制できる。
また、分解生成物の蒸発を容易にするために、不活性気体の存在下に分解工程を実施しても良い。不活性気体としては、水蒸気、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。好ましくは、水蒸気、窒素である。
不活性気体の供給量としては、原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数の0.5モル倍〜100モル倍が好ましく、1モル倍〜50モル倍がより好ましい。原料組成物中に水が含まれる場合は、その水が分解工程で蒸発して生成した水蒸気も、上記不活性気体に含める。
次に、脱水工程で使用する反応器としては、中に固体触媒を保持し、加熱することができればよく、例えば、固定床連続反応器、流動床連続反応器等が使用でき、固定床連続反応器が好ましい。
脱水工程では、分解工程から得られた出口ガスを、脱水触媒と接触させる気相反応であることが好ましい。気相反応とすることで、脱水触媒上での重質分の析出やそれに伴う活性劣化を抑制したり、反応管の閉塞等を抑制したりできる。
上記固定床連続反応器を用いる場合は、反応器内に触媒を充填して加熱しておき、そこに分解器の出口ガスを供給すればよい。分解器の出口ガスは、上昇流、下降流、水平流、いずれも好適に使用できる。また、熱交換の容易さから、固定床多管式連続反応器が好適に使用できる。
上記流動床連続反応器を用いる場合は、反応器の中に粉末状の触媒を入れ、分解器の出口ガスや、別途供給する不活性ガス等で触媒を流動させながら、反応させることができる。触媒が流動しているため、重質分による閉塞が起こりにくい。また、触媒の一部を連続的に抜き出して、新しい触媒や再生した触媒を連続的に供給することもできる。
脱水工程は分解工程の後にあれば良く、その間に別の工程があっても良い。例えば、分解器の出口ガスを、所定の温度に加熱/冷却する温度調整工程を経て、反応器で脱水工程を実施しても良い。
また、分解器と反応器を一体化しても良い。例えば、反応管に、分解層として表面積の大きい充填物を充填し、当該分解層の下に触媒を充填することにより、分解層を分解工程、触媒層を脱水工程として連続した運転も、好ましい形態の1つである。
また、1つ乃至は複数の分解層と、触媒を充填した多管式の反応器を連結して運転することも、好ましい形態である。
脱水反応の触媒、つまり脱水触媒は、3−ヒドロキシカルボン酸を(メタ)アクリル酸に転化する触媒作用を有するものであれば特に限定されない。
上記触媒としては、ゼオライト等の結晶性メタロシリケート;結晶性メタロシリケートに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等を、イオン交換等の方法によって担持したもの;カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト等の天然又は合成粘土化合物;硫酸、ヘテロポリ酸、リン酸又はリン酸塩(リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸マンガン、リン酸ジルコニウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属を、アルミナやシリカ等の担体に担持させた触媒;Al、SiO、TiO、ZrO、SnO、V、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−ZrO、TiO−WO、TiO−ZrO等の無機酸化物又は無機複合酸化物;MgSO、Al(SO、KSO、AlPO、Zr(SO等の金属の硫酸塩、リン酸塩等の固体酸性物質;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の固体塩基性物質;等が挙げられる。好適には、Al、SiO、SiO−Al、TiO、ゼオライト、ゼオライトにアルカリ金属やアルカリ土類金属を担持したもの、リン酸やリン酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属をシリカ等の担体に担持した触媒である。
上記触媒は、触媒成型体であっても良い。その成型体形状としては、限定されるものではなく、球状、シリンダー型、リング型、ハニカム型等が挙げられる。
上記触媒の物性としては、触媒活性等の点から、BET法による比表面積は、0.01〜500m/gが好ましく、0.1〜400m/gがより好ましい。触媒活性、生成物の(メタ)アクリル酸の選択率、触媒寿命等の点から、ハメットの酸度関数Hは、+4〜−10が好ましく、+2〜−8がより好ましい。また、触媒活性や反応器の圧力損失の点から、触媒の大きさは、長径が0.1mm〜50mmが好ましく、0.5mm〜40mmがより好ましい。
触媒層の温度は、150℃〜500℃に保持することが好ましい。より好ましくは200℃〜450℃、更に好ましくは220℃〜430℃、一層好ましくは250℃〜400℃である。この温度範囲(150℃〜500℃)であると、反応速度が速く、副反応も生じにくく、(メタ)アクリル酸の収率が高くなる。
反応圧力は、特に限定されないが、原料組成物の分解方法、脱水反応の生産性、脱水反応後の捕集効率等を勘案して決定することができる。反応圧力としては、10kPa〜1000kPaが好ましく、より好ましくは30kPa〜300kPa、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
脱水反応は、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物を分解器に通して低分子化することで得られた、3−ヒドロキシカルボン酸や低分子化された3−ヒドロキシカルボン酸の重合物と脱水触媒とを接触させることで実施できるが、その際3−ヒドロキシカルボン酸や3−ヒドロキシカルボン酸の重合物が気体の状態で脱水触媒と接触することが好ましい。3−ヒドロキシカルボン酸や3−ヒドロキシカルボン酸の重合物が液体の状態で脱水触媒と接触すると、重質分の生成による反応器の閉塞や、それに伴う触媒活性の急激な劣化等が起こる場合がある。またそれらの抑制のためにより高温での反応を実施する場合もあるが、その場合は原料や生成物の過分解による(メタ)アクリル酸収率の低下や不純物の増加、触媒上のコーキングの増加による活性低下、触媒の構造変化や触媒の成分飛散による触媒の不可逆的な活性低下等の問題点が生じるおそれもある。
3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を分解器で低分子化することで、それらの気化を容易にする。また分解器内で3−ヒドロキシカルボン酸やその重合物の水酸基が脱水反応を起こし二重結合が生成することでも、沸点が低下し、気化を容易にする効果が期待できる。上記のような問題を回避して、安定的な脱水反応を長期にわたって実施することが可能となる。
上記の分解工程や脱水工程によって、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物からの(メタ)アクリル酸の製造を安定に維持することができるが、それでもなお、分解器内、反応器内や触媒上に炭素状物質が徐々に付着する場合がある。その場合、分解器、反応器、配管等の閉塞、分解器の熱伝導効率の低下による分解効率の低下、触媒活性の低下による生産性の低下や選択率の低下等の問題が生じる虞がある。その場合、生成した炭素状物質を除去することによって、正常な状態に戻すことができる。
脱水触媒上の炭素状物質を除去するには、脱水触媒に酸化剤を接触させて、前記炭素状物質を除去して、触媒を再生することができる。
酸化剤としては、過酸化水素水、有機過酸化物、硝酸、亜硝酸等が溶解した液状の酸化剤を使用しても良いし、ガス状の酸化剤を使用しても良い。好ましくは、ガス状の酸化剤である。
ガス状の酸化剤は、炭素状物質の酸化分解のために該炭素状物質に酸素元素を供給することが可能な気体分子であり、例えば、酸素(空気中の酸素も酸化剤に該当する)、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素等を挙げることができる。これらの酸化剤のうち、一種以上のガス状酸化剤が含まれていれば良く、例えば、空気と酸素との混合ガス、一酸化窒素と酸素との混合ガス等を使用しても良く、また、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム及び水蒸気等の不活性ガスから任意に選択した一種以上のガスと酸化剤との混合ガスを使用しても良い。好ましくは酸素を含んだガスである。
触媒再生において触媒の加熱温度は、高温であるほど触媒再生時間を短縮できるが、あまり高すぎると触媒の構造変化等によって、触媒の活性や選択率が低下する虞がある。通常好ましい範囲は300〜800℃であり、より好ましくは320〜700℃であり、更に好ましくは350〜600℃である。800℃を超えると、例えばシンタリングによる触媒表面積の低下や、相転移による触媒の結晶構造変化等の、触媒における物理的構造及び化学的性質が変わることになって、触媒活性や選択率が低下する虞がある。温度は、触媒種によっても上限は異なるが、触媒調製の際に触媒を焼成する場合、焼成温度を超えない温度で加熱することが好ましい。
上記加熱温度を制御するには、該触媒を加熱するための加熱器の設定温度、酸化剤濃度、及びガス流量等を調整すると良い。この場合、加熱器の設定温度及び/又は酸化剤の濃度が高いほど、触媒を加熱する温度が高くなる。そして、触媒加熱温度を連続的に測定しつつ、加熱器の設定温度及び/又は酸化剤の濃度を調整して触媒加熱温度を制御することも可能である。また、特開平5−192590号公報に開示されている触媒加熱温度の制御方法も挙げられる。
酸化剤濃度としては、温度制御や生産コスト等の点から、好ましくは1〜21体積%である。
処理時間としては、(メタ)アクリル酸の生産性等の点から、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間である。
本発明において、反応器出口から得られる反応生成物を冷却して(メタ)アクリル酸を含む組成物を得る方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、反応生成ガスを熱交換器に導入し、反応生成ガスの露点以下の温度で凝縮して得る方法や、反応生成ガスを溶剤等の捕集剤に接触させて吸収する方法等により冷却して、(メタ)アクリル酸を含む組成物を得ることができる。
該組成物中の(メタ)アクリル酸濃度は、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜95質量%、更に好ましくは20〜95質量%である。
このようにして得られた反応生成物の組成物中には、主な反応生成物である水、(メタ)アクリル酸が含まれており、その他に副生物や原料組成物中の溶媒や不純物が含まれる場合がある。溶媒が水の場合は、(メタ)アクリル酸の水溶液の状態で重合物製造の原料とすることができる。また、精製工程を加えることにより、高純度の(メタ)アクリル酸にすることができる。
精製工程は、蒸留、抽出、膜分離、晶析等の公知の技術により実施でき、それらを組み合わせて実施しても良い。
上記のようにして得られた(メタ)アクリル酸を含む反応生成物は、捕集や精製工程の取扱いを、重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。重合禁止剤としては、メトキノン、酢酸マンガン、ニトロソフェノール、クペロン、N−オキシル化合物、ジブチルチオカルバミン酸銅、フェノチアジン、ハイドロキノン等が例示できる。また、必要に応じて酸素含有ガスを供給してもよい。
このように、本発明で得られた(メタ)アクリル酸の組成物を精製することにより、高純度の(メタ)アクリル酸を得ることができる。したがって、本発明の方法は、高純度の(メタ)アクリル酸の製造方法をも提供する。
当該方法としては、具体的には、晶析により(メタ)アクリル酸を精製する工程を含む。
上記のガス状の反応生成物を、冷却凝縮や溶剤捕集等により液化し、必要に応じて、この液化物に含まれる水や捕集溶剤を従来公知の方法(例えば、蒸留)により除去したものを、晶析方法によって高純度の(メタ)アクリル酸を得る方法を以下に示す。
ここで、粗(メタ)アクリル酸とは、冷却工程で得られた(メタ)アクリル酸を含む組成物を指し、特に(メタ)アクリル酸の水溶液が好適に用いられる。
晶析工程は、粗(メタ)アクリル酸からプロピオン酸を分離することができる従来公知の方法、例えば、特開平9−227445号公報や特表2002−519402号公報に記載された方法等を用いて行うことができる。
分解工程及び脱水工程を含むプロセスにて得られた生成物から、例えば上記のような精製工程で(メタ)アクリル酸を分離した後、残った不純物は、リサイクルして再利用することができる。例えば3−ヒドロキシカルボン酸、式(2)で表される3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、式(3)で表される(メタ)アクリル酸の重合物を分解工程や脱水工程の原料として再利用することで(メタ)アクリル酸の収率を向上させることができる。
以上の方法により、(メタ)アクリル酸を製造することができる。かくして製造された(メタ)アクリル酸は、すでに公知となっているように、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム等の親水性樹脂;等の合成原料として有用である。従って、本発明による(メタ)アクリル酸の製造方法は、(メタ)アクリル酸誘導体や親水性樹脂の製造方法に取り入れることが当然可能である。
<リサイクル工程>
上述した本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法において、不純物を再利用する工程(リサイクル工程)を好適に適用することができる。言い換えれば、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、不純物を再利用する工程を含むことが好ましい。ここで不純物とは、反応生成物に含まれるもののうち、(メタ)アクリル酸の原料となりうるもの、すなわち3−ヒドロキシカルボン酸、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、(メタ)アクリル酸の重合物を指す。例えば、反応終了後に残存した3−ヒドロキシカルボン酸や上記オリゴマーを上述した各工程の原料として再利用することが好ましい。
以下に、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法に係る反応式を例示する図と、該反応式に更にリサイクル工程を適用した図とを示す。
図1は、本発明の製造方法の3HPの重合物を原料とする反応式を例示する図である。図2は、図1から更に、不純物を再利用する工程を示す図である。本発明に係る反応工程においては、主生成物としてアクリル酸を生成するとともに、3HPや、(原料より)低分子化されたオリゴマー等の不純物が残存する場合がある。図2で示した反応式は、脱水工程後に残存した不純物を分解工程や脱水工程の原料として再利用する。
<親水性樹脂の製造方法>
本発明による親水性樹脂の製造方法は、上記のような(メタ)アクリル酸の製造方法により得られる、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合することを特徴とする。すなわち、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸は、吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂の原料として用いることができる。
本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸を、吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂を製造するための原料として用いた場合、重合反応を制御しやすく、得られた親水性樹脂の品質が安定し、吸水性能、無機材料の分散性能等の各種性能が改善される。
親水性樹脂としては、吸水性樹脂であることが好ましい。
吸水性樹脂を製造する場合には、例えば、本発明の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸、及び/又はその塩((メタ)アクリル酸を部分中和して得た塩)を単量体成分の主成分(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)とし、さらに0.001〜5モル%((メタ)アクリル酸に対する値)程度の架橋剤、0.001〜2モル%(単量体成分に対する値)程度のラジカル重合開始剤を用いて、架橋重合させた後、乾燥・粉砕することにより、吸水性樹脂を得ることができる。
ここで、吸水性樹脂とは、架橋構造を有する水膨潤性水不溶性のポリ(メタ)アクリル酸であって、自重の3倍以上、好ましくは10〜1000倍の純水又は生理食塩水を吸水することにより、水溶性成分(水可溶分)が好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%以下である水不溶性ヒドロゲルを生成するポリ(メタ)アクリル酸を意味する。
このような吸水性樹脂の具体例や物性測定法は、例えば、米国特許第6,107,358号、米国特許第6,174,978号、米国特許第6,241,928号等に記載されている。
また、生産性向上の観点から好ましい製造方法は、例えば、米国特許第6,867,269号、米国特許第6,906,159号、米国特許第7,091,253号、国際公開第2001/038402号、国際公開第2006/034806号等に記載されている。
(メタ)アクリル酸を出発原料として、中和、重合、乾燥等により、吸水性樹脂を製造する一連の工程は、例えば以下の通りである。
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸の一部は、ラインを介して、吸水性樹脂の製造プロセスに供給される。吸収性樹脂の製造プロセスにおいては、(メタ)アクリル酸を中和工程、重合工程、乾燥工程に導入して、所望の処理を施すことにより、吸水性樹脂を製造する。各種物性の改善を目的として所望の処理を施してもよく、例えば、重合中又は重合後に架橋工程を介在させてもよい。
中和工程は、任意の工程であり、例えば、所定量の塩基性物質の粉末又は水溶液と、(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸(塩)とを混合する方法が例示されるが、従来公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではない。なお、中和工程は、重合前又は重合後のいずれで行なってもよく、また、重合前後の両方で行なってもよい。
(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸(塩)の中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等、従来公知の塩基性物質を適宜用いればよい。
また、ポリ(メタ)アクリル酸の中和率は、特に限定されるものではなく、任意の中和率(例えば、30〜100モル%の範囲内における任意の値)となるように調整すればよい。
重合工程における重合方法は、特に限定されるものではなく、ラジカル重合開始剤による重合、放射線重合、電子線や活性エネルギー線の照射による重合、光増感剤による紫外線重合等、従来公知の重合方法を用いればよい。また、重合開始剤、重合条件等の各種条件については、任意に選択することができる。もちろん、必要に応じて、架橋剤や他の単量体、さらには水溶性連鎖移動剤や親水性高分子等、従来公知の添加剤を添加してもよい。
重合後の(メタ)アクリル酸塩系ポリマー(すなわち、吸水性樹脂)は、乾燥工程に付される。乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、熱風乾燥機、流動層乾燥機、ナウター式乾燥機等、従来公知の乾燥手段を用いて、所望の乾燥温度、好ましくは70〜230℃で、適宜乾燥させればよい。乾燥工程を経て得られた吸水性樹脂は、そのまま用いてもよく、さらに所望の形状に造粒・粉砕、表面架橋をしてから用いてもよく、還元剤、香料、バインダー等の従来公知の添加剤を添加する等、用途に応じた後処理を施してから用いてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。また、表1、表3、及び、表4中、「2量体」〜「13量体」は、それぞれ、3HPの「2量体」〜「13量体」を示す。
また、下記調製例、実施例、比較例における液体クロマトグラフィー分析等は、以下の条件により行った。
(液体クロマトグラフィーの分析条件)
使用カラム:Inertsil ODS−4(ジーエルサイエンス株式会社製) 2本
溶離液:アセトニトリル/水/リン酸/リン酸二水素カリウム=35/64/0.7/0.3(重量比)
検出器:UV 205nm
カラム温度:50℃
(サイズ排除クロマトグラフィーの分析条件)
使用カラム:TSKgel Super H200(東ソー株式会社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV 205nm
カラム温度:40℃
下記実施例中のアクリル酸の収率は、次の定義に従って求めた。
アクリル酸の収率(モル%)=100×(生成したアクリル酸のモル数)/(供給した3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数)
3−ヒドロキシカルボン酸単位のモル数=(3−ヒドロキシカルボン酸のモル数+2量体のモル数×2+3量体のモル数×3+4量体のモル数×4+5量体のモル数×5+6量体のモル数×6+7量体のモル数×7+8量体のモル数×8+9量体のモル数×9+10量体以上の多量体の重量(g)/72)
(原料3HP調製例)
3HPの発酵による製造を、特開2012−085635号公報の実施例1の方法に従って行った。得られた発酵液から濾過にて菌体を分離し、得られた濾液700gに、n−ドデカノール100gを添加し、エバポレーターで水を留去した。最終的に50℃、2.7kPaで留出がなくなるまで行った。
得られた残液を、80℃、10Paの薄膜蒸発器にかけ、3HPとn−ドデカノールの混合物を留分として取得した。得られた留分に等量の水を添加し、混合して水相に3HPを抽出した。油水分離した油相に再度等量の水を添加し、3HPの抽出を行った。油水分離した水相を合わせて濾過を行い、3HP水溶液を得た。3HPの濃度は16質量%であった。
上記で得られた3HP水溶液を、エバポレーターを用いて濃縮を行い、原料液を調製した。この原料液を液体クロマトグラフィーで分析すると、3HP以外に2量体から9量体までのオリゴマーが確認された。その組成を表1に示す。また、サイズ排除クロマトグラフィーで分析したところ、10量体以上の重合物は検出できなかった。
Figure 0006193010
(実施例1)
内径10mmのステンレス管に、ステンレス製の1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し分解器とした。また内径10mmのステンレス管に、脱水触媒としてγ−アルミナを充填し、電気炉内に設置し脱水反応器とした。分解器の出口と脱水反応器の入口をステンレス管で連結し、分解器の出口ガスを直接脱水反応器へ導入できる様にし、連結管でガスが冷えないように、連結管の周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
分解器内の温度を375℃とし、脱水反応器内の温度を300℃とし、原料液を毎時2.2gの速度で分解器の上部に供給した。同時に窒素ガスを毎時7Lの速度で供給した。分解器の出口ガスはそのまま脱水反応器へ供給し、8時間継続して反応を実施した。脱水反応器の出口ガスを冷却捕集し、得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アクリル酸の収率は92モル%であった。反応液中には3量体以上のオリゴマーは検出できなかった。
(比較例1)
実施例1において、分解器出口のガスを、脱水反応器に供給せず、そのまま冷却捕集した。捕集した反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アクリル酸収率は53モル%であった。またその組成を表2に示す。なお、表2の結果から、原料液の重合物が分解器で分解したことが示されている。
Figure 0006193010
(比較例2)
実施例1において、原料液を分解器に通さず、直接脱水反応器に供給した。1時間後、脱水反応器の内圧が急上昇したため、反応を停止した。冷却後、脱水反応器の中を確認すると、触媒層に褐色の付着物が多量に存在し、反応管が閉塞していた。閉塞するまでに得られた反応液を分析したところアクリル酸収率は80モル%であった。
(脱水触媒〔破砕触媒〕の調製)
硝酸カリウム1.7gとリン酸水素二アンモニウム1.1gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK0.5Si20からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
(実施例2)
上記の(原料3HP調製例)の前半部分と同様の工程で、濃度16質量%の3HP水溶液を得た。得られた3HP水溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行い、原料液を調製した。この原料液を液体クロマトグラフィーで分析すると、3HP以外に2量体から9量体までのオリゴマーが確認された。その組成を表3に示す。各オリゴマーを3HPモノマー換算すると、3HP80質量%相当の水溶液と計算できる。
Figure 0006193010
内径10mmのステンレス管に、ステンレス製の1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し分解器とした。また内径10mmのステンレス管に、上記の脱水触媒(破砕触媒)を充填し、電気炉内に設置し脱水反応器とした。分解器の出口と脱水反応器の入口をステンレス管で連結し、分解器の出口ガスを直接脱水反応器へ導入できる様にし、連結管でガスが冷えないように、連結管の周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
分解器内の温度を375℃、脱水反応器内の温度を300℃とし、上記の3HPの重合物を含む組成物を毎時16.7gの速度で分解器の上部に供給した。同時に窒素ガスを毎時3Lの速度で供給した。分解器の出口ガスはそのまま脱水反応器へ供給し、4時間継続して反応を実施した。脱水反応器の出口ガスを冷却捕集し、得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3HPおよび3HPの重合物は検出できず、アクリル酸の収率は99モル%であった。
(実施例3)
(アクリル酸の晶析精製)
実施例2で得られたアクリル酸の水溶液を蒸留し、塔底より、アクリル酸88.2質量%を含む粗製アクリル酸を得た。この粗製アクリル酸を、母液として、室温(約20℃)〜−5.7℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。分離した結晶を融解させてから、一部をサンプリングして分析し、残りを母液として室温(約20℃)〜4.9℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。合計2回の晶析操作により、精製アクリル酸を得た。アクリル酸純度は99.9質量%以上であった。
(吸水性樹脂の製造)
上記で得られた精製アクリル酸に重合禁止剤としてp−メトキシフェノールを60質量ppm添加した。別途、鉄を0.2質量ppm含有する苛性ソーダから得られたNaOH水溶液に対して、上記の重合禁止剤を添加したアクリル酸を、冷却下(液温35℃)で添加することにより、75モル%中和を行った。得られた、中和率75モル%、濃度35質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(アクリル酸ナトリウム水溶液に対する値)を溶解させることにより、単量体成分を得た。この単量体成分300gを容積1Lの円筒容器に入れ、2L/minの割合で窒素ガスを吹き込んで、20分間脱気した。次いで、過硫酸ナトリウム0.10g/モル(単量体成分に対する値)およびL−アスコルビン酸0.004g/モル(単量体成分に対する値)の水溶液をスターラー攪拌下で添加して、重合を開始させた。重合開始後に攪拌を停止し、静置水溶液重合を行った。単量体成分の温度が約15分後(重合ピーク時間)にピーク重合温度106℃を示した。その後、30分間重合を進行させた。その後、重合物を円筒容器から取り出し、含水ゲル状架橋重合体を得た。得られた含水ゲル状架橋重合体は、45℃でミートチョッパー(孔径:8mm)により細分化した後、170℃の熱風乾燥機で20分間加熱乾燥させた。更に、乾燥重合体(固形分:約95%)をロールミルで粉砕し、JIS標準篩で粒径600〜300μmに分級することにより、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率:75%)を得た。
(脱水触媒〔成型触媒〕の調製)
硝酸カリウム17gとリン酸水素二アンモニウム11gを水1000gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素200gを加えた後、水を蒸発させ濃縮を行った。得られた混合物を、押出成型器にてリング状の成型体とした。成型体を空気雰囲気中120℃で20時間乾燥し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK0.5Si20からなる成型触媒を得た。リング状成型触媒の大きさは、外径6mm、内径2mm、高さ7mmであった。
(実施例4)
上記の(原料3HP調製例)の前半部分と同様の工程で、濃度16質量%の3HP水溶液を得た。得られた3HP水溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行い、原料液を調製した。この原料液を液体クロマトグラフィーで分析すると、3HP以外に2量体から13量体までのオリゴマーが確認された。その組成を表4に示す。
Figure 0006193010
内径22mmのステンレス管に、ステンレス製の3mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し分解器とした。また内径22mmのステンレス管に、上記の脱水触媒(成型触媒)を充填し、電気炉内に設置し脱水反応器とした。分解器の出口と脱水反応器の入口をステンレス管で連結し、分解器の出口ガスを直接脱水反応器へ導入できる様にし、連結管でガスが冷えないように、連結管の周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
分解器内の温度を300℃、脱水反応器内の温度を300℃とし、上記の3HPの重合物を含む組成物を毎時18gの速度で分解器の上部に供給した。同時に窒素ガスを毎時1.8Lの速度で供給した。分解器の出口ガスはそのまま脱水反応器へ供給し、8時間継続して反応を実施した。脱水反応器の出口ガスを冷却捕集し、得られた反応液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3HP及び3HPの重合物は検出できず、アクリル酸の収率は97モル%であった。
本発明によるアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性は、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性と同等であり、得られた吸水性樹脂は、臭気がなく、物性も同等であった。
上記結果から、分解工程及び脱水工程の2段階反応を行った実施例1、実施例2、及び、実施例4では、アクリル酸を高い収率で得ることができたことがわかる。なお、得られた組成物中に、例えば3−ヒドロキシカルボン酸、式(2)で表される3−ヒドロキシカルボン酸の重合物、式(3)で表される(メタ)アクリル酸の重合物が残存している場合は、アクリル酸を精製工程で分離した後、該3−ヒドロキシカルボン酸や該重合物を分解工程や脱水工程の原料として再利用することが好ましい。これにより、アクリル酸の収率を更に向上させることができる。また、実施例3では、実施例2で得られたアクリル酸が、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸と同等の重合性があり、実施例2で得られたアクリル酸を用いて、臭気がなく、物性も充分に優れる吸水性樹脂を得ることができることを確認した。一方、脱水工程を行わなかった比較例1では、アクリル酸の収率は実施例と比較して低く、また、分解工程を行わなかった比較例2では、反応から1時間経過後、副生物が生成して反応管が閉塞した。
このように、3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、(a)該重合物の分解物を生成させる分解工程、及び、(b)該分解物を脱水触媒と接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程を含む、(メタ)アクリル酸の製造方法を用いることによって、反応器等の閉塞や触媒活性の低下を抑制し、(メタ)アクリル酸を高収率で、長期間にわたり安定して製造することができるという作用機序は、すべて同様であるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

Claims (4)

  1. 3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、
    (a)液状で供給された該原料組成物から、180℃以上の分解温度で該重合物のガス状分解物生成させる分解工程、及び、
    (b)該分解物脱水触媒と気相で接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程
    を含み、
    該重合物の分解物は、3−ヒドロキシカルボン酸その2量体、(メタ)アクリル酸、及び、その2量体を含み、
    該原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の濃度は、20質量%以上であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸の製造方法。
  2. 前記3−ヒドロキシカルボン酸は、3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
  3. 3−ヒドロキシカルボン酸の重合物を含む原料組成物から、親水性樹脂を製造する方法であって、
    (a)液状で供給された該原料組成物から、180℃以上の分解温度で該重合物のガス状分解物生成させる分解工程、
    (b)該分解物脱水触媒と気相で接触させることにより(メタ)アクリル酸を生成させる脱水工程、及び、
    (c)該(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を重合して親水性樹脂を生成させる重合工程
    を含み、
    該重合物の分解物は、3−ヒドロキシカルボン酸その2量体、(メタ)アクリル酸、及び、その2量体を含み、
    該原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の重合物の濃度は、20質量%以上であることを特徴とする親水性樹脂の製造方法。
  4. 前記親水性樹脂が吸水性樹脂であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
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