JP2012091157A - グリセリン脱水用触媒、ならびに、この触媒を用いたアクロレインの製造方法、アクリル酸の製造方法、および親水性樹脂の製造方法 - Google Patents

グリセリン脱水用触媒、ならびに、この触媒を用いたアクロレインの製造方法、アクリル酸の製造方法、および親水性樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】副生成物であるプロピオンアルデヒドの生成量を低減し、アクロレインを高収率で製造でき、かつ触媒性能を長期にわたって維持できるグリセリン脱水用触媒、ならびに、この触媒を用いたアクロレインの製造方法、アクリル酸の製造方法、および親水性樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】リン酸の希土類金属塩を含有し、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0より大きく1.5より小さいグリセリン脱水用触媒。また、この触媒の存在下において、グリセリンを脱水させてアクロレインを得るアクロレインの製造方法。さらに、得られたアクロレインを酸化してアクリル酸を得るアクリル酸の製造方法。さらに、得られたアクリル酸を含む単量体成分を重合する親水性樹脂の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、グリセリンの脱水反応に用いられる触媒、ならびに、この触媒を用いたアクロレインの製造方法、アクリル酸の製造方法、および吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂の製造方法に関するものである。
植物油から製造されるバイオディーゼルは、化石燃料の代替燃料としてだけではなく、二酸化炭素の排出量が少ない点でも注目され、需要の増大が見込まれている。このバイオディーゼルを製造するとグリセリンが副生するため、その有効利用を図る必要がある。
グリセリンの有効利用を図る一例として、グリセリンを原料にしてアクロレインを製造する方法がある。例えば、本出願人により出願された特許文献1には、リン酸の希土類金属塩を含有するグリセリン脱水用触媒、およびこの触媒を用いてアクロレインを製造する方法が開示されている。特許文献1に開示される触媒では、希土類金属としてY,La,Ce,Pr,Ndが用いられ、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0となるように原料化合物を仕込んで、触媒が調製されている。
特開2009−274982号公報
特許文献1に開示されるグリセリン脱水用触媒は、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0であるリン酸の希土類金属塩を含有する。本発明者は、これらのグリセリン脱水用触媒が比較的高いアクロレイン選択性を発現することを見出していたが、副生成物としてプロピオンアルデヒドが生成するとの問題があった。アクロレインは、ポリアクリル酸等の親水性樹脂原料として用いることができるが、アクロレイン中にプロピオンアルデヒドが多く含まれると、アクロレインからアクリル酸を経て得られるポリアクリル酸(親水性樹脂)中に、プロピオンアルデヒドに由来して生成するプロピオン酸が残存し、臭気の原因となるため好ましくない。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、副生成物であるプロピオンアルデヒドの生成量を低減し、アクロレインを高収率で製造でき、かつ触媒性能を長期にわたって維持できるグリセリン脱水用触媒、ならびに、この触媒を用いたアクロレインの製造方法、アクリル酸の製造方法、および親水性樹脂の製造方法を提供することにある。
本発明者は、種々検討の結果、リン酸の希土類金属塩を含有し、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rを所定の範囲内に調整した触媒を、グリセリンの脱水反応に用いることにより、アクロレインの収率を大きく低減することなく、プロピオンアルデヒドの生成量を低減できるとともに、触媒性能を長期にわたって維持できることを見出して、本発明を完成した。すなわち、本発明のグリセリン脱水用触媒とは、リン酸の希土類金属塩を含有し、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0より大きく1.5より小さいところに特徴を有する。
また、本発明は、本発明の触媒の存在下において、グリセリンを脱水させてアクロレインを得ることを特徴とするアクロレインの製造方法を提供する。この製造方法において、好ましくは、グリセリンガスを含有する反応ガスと触媒とを接触させる気相反応によりグリセリンを脱水させる。
さらに、本発明は、上記のようなアクロレインの製造方法で得られるアクロレインを酸化してアクリル酸を得ることを特徴とするアクリル酸の製造方法や、このようにして得られるアクリル酸を含む単量体成分を重合することを特徴とする親水性樹脂の製造方法も提供する。本発明の製造方法により得られた親水性樹脂は、プロピオンアルデヒドに由来して生成し、臭気の原因となるプロピオン酸の含有量が少ないため、紙おむつ等に用いられる吸水性樹脂等に好適に用いることができる。
本発明のグリセリン脱水用触媒は、アクロレインの収率を大きく低減することなく、プロピオンアルデヒドの生成量を低減できるとともに、触媒性能を長期にわたって維持できる。また、この触媒を使用すれば、グリセリンの脱水反応により、副生成物であるプロピオンアルデヒドの含有量が少ないアクロレインを長期にわたり高収率で製造することができる。このようにして得られたアクロレインを用いれば、アクリル酸を経て、例えば、臭気の極めて少ない吸水性樹脂を容易に製造できる。
〔グリセリン脱水用触媒〕
本発明のグリセリン脱水用触媒は、リン酸の希土類金属塩を含有し、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0より大きく1.5より小さいところに特徴を有する。本発明の触媒は、リン酸の希土類金属塩を触媒活性成分として有し、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが所定の範囲内にある限り、他の成分を含有してもよい。触媒に含まれるリン酸の希土類金属塩は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
リン酸の希土類金属塩を構成するリン酸の形態は特に限定されない。リン酸の希土類金属塩を構成するリン酸としては、オルトリン酸;ピロリン酸、トリリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸等が挙げられる。これらのリン酸塩は、1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
リン酸の希土類金属塩を構成する希土類金属元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれであってもよい。これらの希土類金属元素は、1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。なお、プロメチウム(Pm)は放射性を有している点で、好ましく用いられない。これらの希土類金属元素の中でも、優れた触媒性能を発揮する点で、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、およびガドリニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イットリウム、セリウム、およびネオジムよりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ネオジムがさらに好ましい。
リン酸の希土類金属塩は、触媒性能を向上させる点から、結晶構造を有することが好ましい。リン酸の希土類金属塩の結晶構造は特に限定されず、例えば、正方晶、単斜晶、六方晶等が挙げられる。触媒に含まれるリン酸の希土類金属塩が結晶構造を有していることは、触媒をX線回折分析することにより確認できる。
本発明の触媒において、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rは、1.0より大きく、1.5より小さい。なお、前記モル比P/Rは、1.02以上が好ましく、1.05以上がより好ましく、また1.4以下が好ましく、1.3以下がより好ましい。前記モル比P/Rを1.0より大きくすることで、グリセリン脱水反応時に生成するアクロレイン収率を大きく低下させることなく、副生するプロピオンアルデヒド(PALD;プロパナール)の選択率を低減することができる。アクロレインは、例えば吸水性樹脂等に用いられるポリアクリル酸の原料に用いられる。しかし、アクロレイン中にプロピオンアルデヒドが多く含まれると、アクロレインからアクリル酸を経て得られるポリアクリル酸中に、プロピオンアルデヒドに由来して生成するプロピオン酸が残存し、臭気の原因となるため好ましくない。また、前記モル比P/Rを1.0より大きく1.5より小さくすることで、長期にわたり触媒性能を高く維持することができる。なお、前記モル比P/Rは、リン酸の希土類金属塩を調製する際に用いる原料化合物の仕込み量から算出された値を意味する。また、本発明において、「希土類金属」とは「希土類金属元素」を意味する。
本発明の触媒は、リン酸の希土類金属塩としてリン酸ネオジム塩、リン酸イットリウム塩、またはリン酸セリウム塩を含有し、リン(P)とネオジム(Nd)とのモル比P/Nd、リン(P)とイットリウム(Y)とのモル比P/Y、またはリン(P)とセリウム(Ce)とのモル比P/Ceが1.0より大きく1.5より小さいことも好ましい。希土類金属としてネオジム、イットリウム、またはセリウムを用いれば、高いアクロレイン収率を有し、プロピオンアルデヒドの選択率の低いグリセリン脱水用触媒を容易に得ることができる。
本発明の触媒は、リン酸の希土類金属塩が担体に担持された担持型の触媒であってもよい。使用可能な担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物や複合酸化物;ゼオライト等の結晶性メタロシリケート;ステンレス、アルミニウム等の金属や合金;活性炭、炭化ケイ素等の無機物等が挙げられる。
触媒の形状は特に限定されず、例えば、球状、柱状、リング状、鞍状、ハニカム状、スポンジ状等が挙げられる。
本発明の触媒は、モル比P/Rが所定の範囲内であってリン酸の希土類金属塩を活性成分として有していればよく、それ以外は特に限定されるものではない。なお、触媒に含まれる活性成分が多いほど、アクロレインの工業的生産に適することから、リン酸の希土類金属塩を非担持型の触媒として用いる場合には、リン酸の希土類金属塩の含有量は、触媒100質量%に対して、好ましくは5〜100質量%、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。リン酸の希土類金属塩を担体型の触媒として用いる場合には、リン酸の希土類金属塩の含有量は、触媒100質量%に対して、好ましくは0.01〜70質量%、より好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。
本発明の触媒は、リン酸の希土類金属塩を含有し、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0より大きく1.5より小さいため、グリセリン脱水反応により生成するアクロレイン収率を大きく低下させることなく、副生するプロピオンアルデヒドの選択率を低減することができる。また、長期にわたり触媒性能を高く維持することができる。
〔グリセリン脱水用触媒の製造〕
本発明の触媒は、混練法、濃縮法、沈殿法、共沈法、ゾルゲル法、水熱法等の従来公知の触媒調製法により調製することができる。混練法としては、リン酸化合物と希土類金属化合物を含む原料化合物を混練して得られた固形物(触媒前駆体)を焼成する方法を採用すればよい。濃縮法、沈殿法、共沈法、ゾルゲル法、水熱法としては、リン酸化合物と希土類金属化合物を含む原料化合物を溶媒に加え、処理法に応じた物理処理を施すことにより生成した固形物(触媒前駆体)を焼成する方法を採用すればよい。触媒を調製する際のリン酸化合物および希土類金属化合物の使用量は、得られる触媒のモル比P/Rが所定の範囲内になるように、適宜調整すればよい。
触媒の原料化合物として用いられるリン酸化合物としては、H3PO2、H3PO3、H3PO4、H427、H5310、H6410等のリン酸;リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル;リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム等のリン酸アンモニウム;P46、P48、P49、P410等のリン酸化物を用いればよい。これらのリン酸化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのリン酸化合物は、調製法に応じて、好適な形態の化合物を適宜選べばよい。
触媒の原料化合物として用いられる希土類金属化合物としては、希土類金属酸化物;希土類金属水酸化物(希土類金属水酸化物の脱水縮合物を含む);硝酸塩、炭酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩等の希土類金属の無機塩;ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の希土類金属の有機酸塩等を用いればよい。これらの希土類金属化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの希土類金属化合物は、調製法に応じて、好適な形態の化合物を適宜選べばよい。
例えば、混練法により触媒を調製する場合は、リン酸化合物として、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム等のリン酸アンモニウムを使用し、希土類金属化合物として、希土類金属酸化物、希土類金属水酸化物、希土類金属の硝酸塩等を使用することが好ましい。このような化合物を用いれば、原料化合物を容易に入手できるとともに、混練が容易となり、リン酸の希土類金属塩を高純度で得やすくなる。
ゾルゲル法により触媒を調製する場合は、リン酸化合物として、H3PO2、H3PO3、H3PO4、H427、H5310、H6410等のリン酸、またはリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム等のリン酸アンモニウムを使用し、希土類金属化合物として希土類金属水酸化物(希土類金属水酸化物の脱水縮合物を含む)を使用することが好ましい。このような化合物を用いれば、希土類金属水酸化物を含有する溶液にリン酸化合物を加えることで、触媒前駆体として、リン酸と希土類金属を含有するゾルまたはゲル状物を調製しやすくなる。
希土類金属水酸化物を含有する溶液にリン酸化合物を加えるときの添加速度や温度は特に限定されない。添加の際の温度は、通常、0℃〜120℃の範囲で行えばよい。希土類金属水酸化物を含有する溶液にリン酸化合物を加えたものは、そのまま放置することが好適である。この放置の間に、リン酸と希土類金属を含有するゾルまたはゲル状物の生成量が増加する。
ゾルゲル法において好ましく用いられる希土類金属水酸化物は、次のように調製すればよい。すなわち、希土類金属の無機塩や希土類金属の有機酸塩等の水溶性の希土類金属塩を、水を含む溶媒に添加することにより、希土類金属水酸化物を調製すればよい。この際、水を含む溶媒には、希土類金属塩に加え、アンモニアやアミン等のアルカリ性化合物を添加して、pHを2〜13の範囲(好ましくはpH4〜11の範囲であり、より好ましくはpH7〜9の範囲)に調整することが好ましい。水を含む溶媒としては、水のみを溶媒として用いることが、簡便かつ安価な点で好ましい。溶媒に加える希土類金属塩の量は、溶媒と希土類金属塩の総量を100質量%としたときに、1〜30質量%とすることが好ましく、2〜20質量%とすることがより好ましく、3〜15質量%とすることがさらに好ましい。
希土類金属水酸化物を調製する際に使用する前記アルカリ性化合物としては、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、sec−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;ピリジン;炭酸アンモニウム;尿素等が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでもアンモニアが特に好ましい。
アルカリ性化合物は、水を含む溶媒に希土類金属塩を加えた溶液にアルカリ性化合物を添加する際、アルカリ性化合物を少しずつ添加してもよく、アルカリ性化合物を一括で添加してもよいが、希土類金属水酸化物の粒径を均一化させるためには、アルカリ性化合物を少しずつ添加することが好ましい。アルカリ性化合物を添加する際の溶液の温度は特に限定されないが、揮発性のアルカリ性化合物を選択した場合にその化合物の揮発によるpH調整の困難性と、希土類金属水酸化物の良好な生成を考慮すれば、通常0℃〜120℃の範囲にあればよく、好ましくは20℃〜50℃の範囲にあればよい。また、アルカリ性化合物の添加が終了した後には、直ちにリン酸化合物を添加せずに、そのまま放置することが好適である。この放置の間に、希土類金属水酸化物の粒子が成長し、かつ、当該粒子の大きさの均一化が起こる。
リン酸化合物と希土類金属化合物を含む原料化合物を混練して得られた固形物(触媒前駆体)、あるいは、リン酸化合物と希土類金属化合物を含む原料化合物を溶媒に加えて生成した固形物(触媒前駆体)を焼成することにより、本発明の触媒が得られる。触媒前駆体は、焼成温度が高いほど、また、焼成時間が長いほど、得られるリン酸の希土類金属塩の結晶化が進む傾向がある。従って、結晶構造を有するリン酸の希土類金属塩を含有する触媒を得るためには、これらの傾向を考慮して、焼成条件を適宜決定すればよい。焼成は、例えば、空気雰囲気下、500℃〜1500℃で3時間〜15時間行うことが好ましく、600℃〜1400℃で3時間〜10時間行うことがより好ましく、700℃〜1200℃で3時間〜5時間行うことがさらに好ましい。
触媒前駆体の焼成に先立って、触媒前駆体の前加熱処理を行ってもよい。例えば、触媒前駆体にアンモニア成分や硝酸成分が含まれる場合は、触媒前駆体に前加熱処理を施さずに焼成すると、アンモニア成分や硝酸成分に由来するガスが発生し、触媒前駆体や触媒の飛散や爆発を引き起こすおそれがある。従って、焼成の際に発生するガスの量を減らすために、触媒前駆体の焼成に先立って、触媒前駆体を前加熱処理してもよい。前加熱処理は、例えば、触媒前駆体を、150℃〜450℃の空気雰囲気または不活性ガス雰囲気に置けばよい。さらに、触媒前駆体の焼成または前加熱処理に先立って、触媒前駆体中の水分を除去するために、乾燥処理を行ってもよい。
リン酸の希土類金属塩を担体に担持させる場合には、例えば、リン酸の希土類金属塩の原料化合物を含有する溶液を担体に含浸させて加熱する含浸法;担体を含有する液中でリン酸の希土類金属塩を析出させるか、あるいは、リン酸の希土類金属塩を析出させた液中に担体を添加する析出沈殿法;リン酸の希土類金属塩または前記触媒前駆体を担体と混合する混練法等を採用すればよい。
以上の方法により、グリセリン脱水用触媒を製造することができる。製造されたグリセリン脱水用触媒は、グリセリンの脱水反応に使用される触媒として有用である。従って、本発明のグリセリン脱水用触媒は、グリセリンの脱水反応により、アクロレインを製造する方法に使用することができる。
〔アクロレインの製造方法〕
本発明のアクロレインの製造方法について説明する。本発明によるアクロレインの製造方法は、本発明のグリセリン脱水用触媒の存在下において、グリセリンを脱水させてアクロレインを得るものである。
本発明の製造方法は、例えば、固定床反応器、流動床反応器、移動床反応器などから任意に選択された反応器内で、グリセリンガスを含有する反応ガスと触媒とを接触させる気相脱水反応により、アクロレインを製造するものである。なお、本発明の製造方法は、グリセリンガスを含有する反応ガスと触媒とを接触させる気相脱水反応に限定されるものではなく、グリセリン溶液と触媒とを接触させる液相脱水反応を適用することも可能である。後者の場合、液相脱水反応は、固定床と蒸留塔を組み合わせた方法、撹拌槽と蒸留塔を組み合わせた方法、一段式の撹拌槽を用いる方法、多段式の撹拌槽を用いる方法、多段式の蒸留塔を用いる方法、および、これらを組み合わせた方法など、従来公知の様々な方法で実施することができる。これらの方法は、バッチ式または連続式のいずれでもあってもよいが、通常は連続式で実施される。
アクロレインの合成原料となるグリセリンは、特に限定されず、精製グリセリンおよび粗製グリセリンのいずれであってもよい。グリセリンは、パーム油、パーム核油、ヤシ油、大豆油、ナタネ油、オリーブ油、ごま油等の植物油のエステル交換反応により得られるグリセリン;魚油、牛脂、豚脂、鯨油等の動物性油のエステル交換反応で得られるグリセリン;等の天然資源由来のグリセリンであってもよい。また、エチレン、プロピレンなどから化学合成されたグリセリンであってもよい。
以下では、工業的生産性に優れた気相脱水反応を利用するアクロレインの製造方法を例に挙げて説明する。
グリセリン脱水用触媒が充填された触媒層に導入する反応ガスは、グリセリンのみで構成されるガスであっても、反応ガス中のグリセリン濃度を調整するために、グリセリンの脱水反応に不活性なガスを含有していてもよい。不活性ガスとしては、例えば、水蒸気、窒素ガス、二酸化炭素ガス、空気等が挙げられる。反応ガス中におけるグリセリン濃度は、通常は0.1〜100モル%の範囲であり、好ましくは1モル%以上であり、アクロレインの製造を経済的かつ高効率に行うために、より好ましくは5モル%以上である。
反応ガスの流量は、触媒の単位容積あたりのガス空間速度(GHSV)で表すと、通常50〜20000hr-1、好ましくは10000hr-1以下であり、アクロレインの製造を経済的かつ高効率で行うために、より好ましくは4000hr-1以下である。
グリセリンの気相脱水反応では、その反応温度が低すぎたり高すぎたりするとアクロレインの収率が低下することになってしまうので、反応温度は、通常は200℃〜500℃、好ましくは250℃〜450℃、より好ましくは300℃〜400℃である。ここで、気相脱水反応における「反応温度」とは、反応器の温度制御を行なうための熱媒等の設定温度を意味する。
反応ガスの圧力は、グリセリンが凝縮しない範囲の圧力であれば、特に限定されるものではないが、通常0.001〜1MPaであればよく、好ましくは0.01〜0.5MPa、より好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは0.2MPa以下である。
グリセリンの脱水反応を連続的に行うと、触媒の表面に炭素状物質が付着して触媒の活性が低下することがある。特に、アクロレイン選択率が低下し、プロピオンアルデヒド選択率が上昇する。このような場合には、触媒と再生用ガスとを高温で接触させる再生処理
を行えば、触媒の表面に付着した炭素状物質を除去して触媒の活性を復活させることができる。再生用ガスとしては、例えば、酸素、酸素を含有する空気等の酸化性ガスが挙げられる。再生用ガスには、必要に応じて、窒素、二酸化炭素、水蒸気等の再生処理に不活性なガスを含有させてもよい。触媒と酸素との接触により、急激な発熱が懸念される場合には、その急激な発熱を抑制するためにも、不活性ガスを再生用ガスに含有させることが推奨される。再生処理の温度は、触媒を熱劣化させることなく、炭素状物質を除去できる温度であれば、特に限定されるものではないが、触媒製造の際の焼成温度以下であることが好ましい。
グリセリンの脱水反応により得られたアクロレイン含有ガスは、そのままアクリル酸の製造における反応ガスとして供給してもよいが、アクロレイン含有ガス中には副生成物を含んでいることから、精製することが好ましい。副生成物としてはプロピオンアルデヒド以外に、例えば、フェノール、1−ヒドロキシアセトン、アリルアルコール等が挙げられる。またバイオディーゼル由来のグリセリンを原料に用いた場合には、副生成物として、例えば、フェノール、1−ヒドロキシアセトン、メトキシアセトン、3−メトキシプロパナール等が挙げられる。アクロレイン含有ガスを精製する場合は、このアクロレイン含有ガスを直接、蒸留などの精製工程に供給してもよいし、一度捕集して粗製アクロレインとした後に精製工程に供給してもよい。アクロレイン含有ガスを一度捕集する場合は、このアクロレイン含有ガスを冷却して液化させる方法や、アクロレイン溶解能を有する水等の溶剤に吸収させる方法等がある。精製工程により得られたアクロレインがガス状物質として得られる場合は、この精製アクロレインガスをそのままアクリル酸の製造における反応ガスとして供給してもよいし、一度捕集して精製アクロレインとした後に、この精製アクロレインをアクリル酸の製造に使用してもよい。
粗製アクロレインを精製する際には、主として、フェノールおよび/または1−ヒドロキシアセトンを除去する。これらの副生成物を除去することにより、アクロレインからアクリル酸を製造する際におけるアクリル酸の収率が向上する。特に、1−ヒドロキシアセトンを除去すれば、アクロレインからアクリル酸を製造する際の酢酸の発生量を減らすことができる。
アクリル酸の収率が向上することを考慮すれば、フェノールおよび/または1−ヒドロキシアセトンの除去量を多くすることが好ましいと考えられる。そこで、精製後のアクロレイン(A)とフェノール(Ph)との質量比Ph/Aは、1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることが好ましく、0.4以下であることがさらに好ましい。また精製後のアクロレイン(A)と1−ヒドロキシアセトン(H)との質量比H/Aは、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることが好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。なお、フェノールおよび/または1−ヒドロキシアセトンの除去量を多くすれば、アクロレインの損失が増大することやアクロレインの精製が煩雑になることがある。このことを考慮すれば、質量比Ph/Aおよび質量比H/Aは、1×10-9以上であることが好ましく、1×10-7以上であることがより好ましく、1×10-5以上であることがさらに好ましい。
アクロレイン、フェノールおよび1−ヒドロキシアセトンの沸点は、それぞれ、約53℃、約182℃および約146℃である。この沸点差を利用すれば、粗製アクロレインからフェノールおよび/または1−ヒドロキシアセトンを除去することができる。その方法としては、例えば、液状の粗製アクロレインを蒸留塔で処理して除去目的物よりも低沸点のアクロレインを分留する方法、ガス状の粗製アクロレインを凝集塔で処理してアクロレインよりも高沸点の除去目的物を凝集する方法、蒸散塔内に導入した粗製アクロレインにガスを吹き込んで除去目的物よりも低沸点のアクロレインを気化させる方法等が挙げられる。
また、アクロレイン、フェノールおよび1−ヒドロキシアセトンの融点は、それぞれ、約−87℃、約43℃および約−17℃である。この融点差を利用すれば、粗製アクロレインからフェノールおよび/または1−ヒドロキシアセトンを除去することができる。その方法としては、例えば、粗製アクロレインを冷却してフェノールおよび/または1−ヒドロキシアセトンの析出物を除去する方法等が挙げられる。
なお、プロピオンアルデヒドについては、その沸点が約48℃、融点が約−81℃であり、アクロレインとの沸点差または融点差を利用して、粗製アクロレインから除去することも可能であるが、アクロレインとの沸点差および融点差がいずれも小さいので、アクロレインの損失が多くなることがある。それゆえ、本発明の触媒は、グリセリンの脱水反応において、プロピオンアルデヒドの発生量を減らすことができるので、特に有用である。
粗製アクロレインを他の化合物の合成原料として用いる場合は、粗製アクロレインを生成しなくてもよい。例えば、粗製アクロレインからアクリル酸を製造する場合、粗製アクロレインを精製せずに後工程でアクリル酸を精製することにより、アクリル酸中の不純物を除去すればよい。粗製アクロレインを精製しないで用いれば、工程を簡略化し、製造コストを低減できる点で、好ましい。
以上の方法により、アクロレインを製造することが可能である。製造されたアクロレインは、すでに公知となっているように、アクリル酸、1,3−プロパンジオール、アリルアルコール、メチオニン等のアクロレイン誘導体;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等の親水性樹脂等の合成原料として有用である。従って、本発明によるアクロレインの製造方法は、アクロレイン誘導体や親水性樹脂の製造方法に取り入れることが当然可能である。
〔アクリル酸の製造方法〕
本発明のアクリル酸の製造方法について説明する。本発明によるアクリル酸の製造方法は、上記のようなアクロレインの製造方法により得られるアクロレインを酸化してアクリル酸を得るものである。すなわち、本発明のアクリル酸の製造方法は、本発明のグリセリン脱水用触媒の存在下において、グリセリンを脱水させてアクロレインを得る工程と、前記アクリロレインを酸化してアクリル酸を得る工程を有する。従って、本発明のアクロレインの製造方法により得られるアクロレインは、アクリル酸の原料として用いることができる。
アクリル酸を製造するには、アクロレインを含有するガス(以下、「アクロレイン含有ガス」と称する場合がある)と、アクロレインを酸化するための触媒(以下、「アクロレイン酸化用触媒」と称する場合がある)とを、固定床反応器、移動床反応器、流動床反応器等から任意に選択された酸化反応器内に共存させ、温度200℃〜400℃で、アクロレインを気相酸化することが好ましい。なお、アクロレインの酸化に伴って、プロピオンアルデヒドからプロピオン酸が生成するが、本発明の触媒を用いて得られたアクロレインは、プロピオンアルデヒドの含有量が低く抑えられているので、プロピオン酸の生成量は少ない。
アクロレイン酸化用触媒としては、分子状酸素または分子状酸素含有ガスを用いたアクロレインの接触気相酸化によりアクリル酸を製造する場合に用いられる従来公知のアクロレイン酸化用触媒であれば、特に限定されるものではないが、例えば、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化銅等の金属酸化物の混合物や複合酸化物等が挙げられる。これらの触媒のうち、モリブデンおよびバナジウムを主成分とするモリブデン−バナジウム系触媒が特に好適である。また、アクロレイン酸化用触媒は、上記のような金属酸化物の混合物や複合酸化物が担体(例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物や複合酸化物、炭化ケイ素等の無機物)に担持された担持型の触媒であってもよい。
アクリル酸の製造に用いられるアクロレイン含有ガスに対する酸素の添加量は、酸素が多すぎると、アクロレインの燃焼が生じて爆発の危険を伴うおそれがあるので、その上限値を適宜設定する必要がある。
アクロレインの気相酸化反応により、粗製アクリル酸を含有するガス状物が得られる。このガス状物を冷却凝縮や溶剤捕集等により液化し、必要に応じて、この液化物に含まれる水や捕集溶剤を従来公知の方法(例えば、蒸留)により除去した後、晶析操作を施すことにより、高純度のアクリル酸を得ることができる。
アクロレインの酸化反応により得られた粗製アクリル酸は、副生成物として、プロピオン酸を含んでいる。粗製アクリル酸中におけるプロピオン酸の含有量は、アクリル酸の原料であるアクロレインの製造段階で、本発明の触媒を用いているので、比較的少ない。しかし、アクリル酸から吸水性樹脂を製造する場合には、プロピオン酸が臭気の原因となるので、粗製アクリル酸からプロピオン酸を除去することが好ましい。そこで、粗製アクリル酸を精製してプロピオン酸を除去する。
アクリル酸およびプロピオン酸の沸点は、いずれも、約141℃である。それゆえ、沸点差を利用して、粗製アクリル酸からプロピオン酸を除去することは困難である。これに対し、アクリル酸およびプロピオン酸の融点は、それぞれ、約12℃および約−21℃である。それゆえ、融点差を利用して、粗製アクリル酸からプロピオン酸を除去することは容易である。つまり、粗製アクリル酸からのプロピオン酸を除去するには、粗製アクリル酸に晶析操作を施せばよい。具体的には、粗製アクリル酸を冷却して、プロピオン酸よりも先に析出するアクリル酸を回収すればよい。この場合、粗製アクリル酸の冷却温度は、好ましくは−18℃〜10℃、より好ましくは4℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。なお、粗製アクリル酸が酢酸、アクロレイン、水等のプロピオン酸以外の不純物を含んでいる場合には、これらの不純物を蒸留等の従来公知の方法により除去した後、晶析操作によりプロピオン酸を除去することが好ましい。
晶析操作は、粗製アクリル酸からプロピオン酸を分離することができる限り、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、例えば、特開平9−227445号公報や特表2002−519402号公報に記載された方法を用いて行うことができる。
晶析操作は、粗製アクリル酸を晶析装置に供給して結晶化させることにより、精製アクリル酸を得る工程である。なお、結晶化の方法としては、従来公知の結晶化方法を採用すればよく、特に限定されるものではないが、結晶化は、例えば、連続式または回分式の晶析装置を用いて、1段または2段以上で実施することができる。得られたアクリル酸の結晶は、必要に応じて、さらに洗浄や発汗等の精製を行うことにより、さらに純度の高い精製アクリル酸を得ることができる。
連続式の晶析装置としては、例えば、結晶化部、固液分離部および結晶精製部が一体になった晶析装置(例えば、新日鐵化学社製のBMC(Backmixing Column Crystallizer)装置、月島機械社製の連続溶融精製システム)や、結晶化部(例えば、GMF GOUDA社製のCDC(Cooling Disk Crystallizer)装置)、固液分離部(例えば、遠心分離器、ベルトフィルター)および結晶精製部(例えば、呉羽テクノエンジ社製のKCP(Kureha Crystal Purifier)精製装置)を組み合わせた晶析装置等を使用することができる。
回分式の晶析装置としては、例えば、Sulzer Chemtech社製の層結晶化装置(動的結晶化装置)、BEFS PROKEM社製の静的結晶化装置等を使用することができる。
動的結晶化とは、例えば、結晶化、発汗、融解を行うための温度制御機構を備えた管状の結晶器と、発汗後の母液を回収するタンクと、結晶器に粗製アクリル酸を供給する循環ポンプとを備え、結晶器の下部に設けた貯蔵器から循環ポンプにより粗製アクリル酸を結晶器の管内上部に移送できる動的結晶化装置を使用して晶析を行う方法である。また、静的結晶化とは、例えば、結晶化、発汗、融解を行うための温度制御機構を備えた管状の結晶器であり、下部に抜き出し弁を有する結晶器と、発汗後の母液を回収するタンクとを備えた静的結晶化装置を使用して晶析を行う方法である。
具体的には、粗製アクリル酸を液相として結晶器に導入し、液相中のアクリル酸を冷却面(管壁面)に凝固・生成させる。冷却面に生成した固相の質量が、結晶器に導入した粗製アクリル酸の質量に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%になった段階で、直ちに、液相を結晶器から排出し、固相と液相とを分離する。液相の排出は、ポンプで汲み出す方式(動的結晶化)、結晶器から流出させる方式(静的結晶化)のいずれであってもよい。他方、固相は、結晶器から取り出した後、さらに純度を向上させるために、洗浄や発汗等の精製を行ってもよい。
動的結晶化や静的結晶化を多段で行う場合、向流の原理を採用すれば、有利に実施することができる。このとき、各段階で結晶化されたアクリル酸は、残留母液から分離され、より高い純度を有するアクリル酸が生成する段階に供給される。他方、残留母液は、より低い純度を有するアクリル酸が生成する段階に供給される。
なお、動的結晶化では、アクリル酸の純度が低くなると、結晶化が困難になるが、静的結晶化では、動的結晶化に比べて、残留母液が冷却面に接触する時間が長く、また、温度の影響が伝わり易いので、アクリル酸の純度が低下しても、結晶化が容易である。それゆえ、アクリル酸の回収率を向上させるために、動的結晶化における最終的な残留母液を静的結晶化に付して、さらに結晶化を行ってもよい。
必要となる結晶化段数は、どの程度の純度が要求されるかに依存するが、高純度のアクリル酸を得るために必要な段数は、精製段階(動的結晶化)が通常1〜6回、好ましくは2〜5回、より好ましくは2〜4回であり、ストリッピング段階(動的結晶化および/または静的結晶化)が通常0〜5回、好ましくは0〜3回である。通常、供給される粗製アクリル酸より高い純度を有するアクリル酸が得られる段階は、すべて精製段階であり、それ以外の段階は、すべてストリッピング段階である。ストリッピング段階は、精製段階から残留母液に含まれるアクリル酸を回収するために実施される。なお、ストリッピング段階は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、蒸留塔を用いて、晶析装置の残留母液から低沸点成分を分離する場合には、ストリッピング段階は省略してもよい。
動的結晶化および静的結晶化のいずれを採用する場合であっても、晶析操作で得られるアクリル酸の結晶は、そのまま製品としてもよいし、必要に応じて、さらに洗浄や発汗等の精製を行ってから製品としてもよい。他方、晶析操作で排出される残留母液は、系外に取り出してもよい。
以上の方法により、アクリル酸を製造することができる。製造されたアクリル酸は、すでに公知となっているように、アクリル酸エステル等のアクリル酸誘導体;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等の親水性樹脂等の合成原料として有用である。従って、本発明のアクリル酸の製造方法は、アクリル酸誘導体や親水性樹脂の製造方法に取り入れることが当然可能である。
〔親水性樹脂の製造方法〕
本発明による親水性樹脂の製造方法は、上記のようなアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸を含む単量体成分を重合するものである。すなわち、本発明の親水性樹脂の製造方法は、本発明のグリセリン脱水用触媒の存在下において、グリセリンを脱水させてアクロレインを得る工程と、前記アクリロレインを酸化してアクリル酸を得る工程と、前記アクリル酸を含む単量体成分を重合する工程を有する。従って、本発明のアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸は、吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂の原料として用いることができる。
グリセリンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸は、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸と比較して、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸の不純物を多く含んでおり、これらの不純物は、親水性樹脂の臭気や着色の原因となることがある。それゆえ、得られたアクリル酸を精製することが重要となる。アクリル酸に含まれる不純物のうち、プロピオン酸は、アクリル酸と沸点が近いので、その含有量が多いと、蒸留によるアクリル酸の精製が困難になる。そこで、本発明による親水性樹脂の製造方法には、好ましくは晶析による精製を行ってプロピオン酸を除去したアクリル酸が好適に用いられる。
本発明のアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸を、吸水性樹脂や水溶性樹脂等の親水性樹脂を製造するための原料として用いる場合、重合反応を制御しやすく、得られる親水性樹脂の品質が安定し、吸水性能、無機材料の分散性能等の各種性能が改善される。
吸水性樹脂を製造する場合には、例えば、本発明によるアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸および/またはその塩を単量体成分の主成分(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)とし、さらに0.001〜5モル%(アクリル酸に対する値)程度の架橋剤、0.001〜2モル%(単量体成分に対する値)程度のラジカル重合開始剤を用いて、架橋重合させた後、乾燥、粉砕することにより、吸水性樹脂が得られる。
ここで、吸水性樹脂とは、架橋構造を有する水膨潤性水不溶性のポリアクリル酸であって、自重の3倍以上、好ましくは10〜1000倍の純水または生理食塩水を吸水することにより、水溶性成分(水可溶分)が好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%以下である水不溶性ヒドロゲルを生成するポリアクリル酸を意味する。このような吸水性樹脂の具体例や物性測定法は、例えば、米国特許明細書第6,107,358号、第6,174,978号、第6,241,928号等に開示されている。
また、生産性向上の観点から好ましい製造方法は、例えば、米国特許明細書第6,867,269号、第6,906,159号、第7,091,253号等、ならびに、国際公開第01/038402号パンフレット、国際公開第2006/034806号パンフレット等に開示されている。
アクリル酸を原料として、中和、重合、乾燥等により、吸水性樹脂を製造する一連の工程は、例えば、以下の通りである。
本発明のアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の一部または全部を、ラインを介して、吸水性樹脂の製造プロセスに供給する。吸収性樹脂の製造プロセスにおいては、アクリル酸を中和工程、重合工程、乾燥工程に導入して、所望の処理を施すことにより、吸水性樹脂を製造する。各種物性の改善を目的として所望の処理を施してもよく、例えば、重合中または重合後に架橋工程を介在させてもよい。
中和工程は、任意の工程であり、例えば、所定量の塩基性物質の粉末または水溶液と、アクリル酸やポリアクリル酸(塩)とを混合する方法が例示されるが、従来公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではない。なお、中和工程は、重合前または重合後のいずれで行なってもよく、また、重合前後の両方で行なってもよい。アクリル酸やポリアクリル酸(塩)の中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等、従来公知の塩基性物質を適宜用いればよい。ポリアクリル酸の中和率は、特に限定されるものではなく、任意の中和率(例えば、30〜100モル%の範囲内における任意の値)となるように調整すればよい。
重合工程における重合方法は、特に限定されるものではなく、ラジカル重合開始剤による重合、放射線重合、電子線や活性エネルギー線の照射による重合、光増感剤による紫外線重合等、従来公知の重合方法を用いればよい。重合開始剤、重合条件等各種条件については、任意に選択することができる。もちろん、必要に応じて、架橋剤や他の単量体、さらには水溶性連鎖移動剤や親水性高分子等、従来公知の添加剤を添加してもよい。
ラジカル重合開始剤による重合としては、例えば、水溶液重合法、逆相懸濁重合法等が挙げられる。ここで、水溶液重合法は、分散溶媒等を用いることなく、アクリル酸水溶液中のアクリル酸を重合する方法であり、例えば、米国特許明細書第4,625,001号、第4,873,299号、第4,286,082号、第4,973,632号、第4,985,518号、第5,124,416号、第5,250,640号、第5,264,495号、第5,145,906号、第5,380,808号等、ならびに、欧州特許公報第0 811 636号、第0 955 086号、第0 922 717号等に開示されている。また、逆相懸濁重合法は、アクリル酸水溶液を疎水性の有機溶媒に懸濁させた状態で、アクリル酸水溶液中のアクリル酸を重合する方法であり、例えば、米国特許明細書第4,093,776号、第4,367,323号、第4,446,261号、第4,683,274号、第5,244,735号等に開示されている。
重合後のアクリル酸塩系ポリマー(すなわち、吸水性樹脂)は、乾燥工程に付される。乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、熱風乾燥機、流動層乾燥機、ナウター式乾燥機等、従来公知の乾燥手段を用いて、所望の乾燥温度、好ましくは70〜230℃で、適宜乾燥させればよい。
乾燥工程を経て得られた吸水性樹脂は、そのまま用いてもよく、さらに所望の形状に造粒したり、粉砕してもよく、表面架橋をしてもよい。また、還元剤、香料、バインダー等、従来公知の添加剤を添加する等、用途に応じた後処理を施してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(1) グリセリン脱水用触媒の初期性能評価
(1−1) 触媒の製造
実施例1(ゾルゲル法による触媒の製造例)
Nd(NO33水溶液(信越化学工業社製、Nd23換算濃度:221g/kg)461.14gに蒸留水1800gを加えた後、得られた水溶液を撹拌しながら、ここに、高速液体クロマトグラフ用ポンプ(日立製作所社製「L7110」)を用いて、28質量%アンモニア水187.58gを3時間かけて一定速度で滴下した。滴下後、この溶液を撹拌しながら15時間放置して熟成させることにより、ネオジム水酸化物を含有する溶液を得た。この溶液に、この溶液を撹拌しながら、高速液体クロマトグラフ用ポンプを用いて、リン酸水溶液(H3PO4濃度:85質量%)78.22gを3時間かけて一定速度で滴下した。滴下後、この溶液を撹拌しながら15時間放置し、リン酸とネオジム(希土類金属)を含有するゾルまたはゲル状物を得た。このゾルまたはゲル状物を、0.005MPa、60℃の条件で脱水した後、空気雰囲気下、120℃で10時間乾燥した。得られた乾燥物を、乾燥物中に存在していると考えられる含窒素成分を分解除去する目的で、450℃の窒素雰囲気に10時間置き(前加熱処理)、その後、空気雰囲気下、1000℃で5時間焼成することにより焼成物を得た。この焼成物を粉砕して、目開き0.7mmおよび2.0mmの篩を用いて篩い分けし、0.7〜2.0mmの範囲に分級された焼成物を触媒とした。得られた触媒は、リン酸の希土類金属塩であるリン酸ネオジム塩を含有するグリセリン脱水用触媒である。
実施例2および比較例1〜4(ゾルゲル法による触媒の製造例)
Nd(NO33水溶液、アンモニア水、リン酸水溶液の使用量を表1に記載した量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。得られた触媒は、リン酸の希土類金属塩であるリン酸ネオジム塩を含有するグリセリン脱水用触媒である。
Figure 2012091157
実施例3(混練法による触媒の製造例)
微粉砕した酸化ネオジム(関東化学社製)69.34gとリン酸水素二アンモニウム57.61gを順次乳鉢に秤量し、乳棒で30分間粉砕しながら混合した。得られた混合物を、空気雰囲気下、120℃で24時間乾燥させた。得られた乾燥物を、乾燥物中に存在していると考えられる含窒素成分を分解除去する目的で、450℃の空気雰囲気下に10時間置き(前加熱処理)、その後、空気雰囲気下、1000℃で5時間焼成することにより焼成物を得た。この焼成物を、目開き0.7mmおよび2.0mmの篩を用いて篩い分けし、0.7〜2.0mmの範囲に分級された焼成物を触媒とした。得られた触媒は、リン酸の希土類金属塩であるリン酸ネオジム塩を含有するグリセリン脱水用触媒である。
実施例4,5(混練法による触媒の製造例)
酸化ネオジムおよびリン酸水素二アンモニウムの使用量を表2に記載した量に変更したこと以外は、実施例3と同様にして触媒を製造した。得られた触媒は、リン酸の希土類金属塩であるリン酸ネオジム塩を含有するグリセリン脱水用触媒である。
Figure 2012091157
実施例6(ゾルゲル法による触媒の製造例)
実施例1においてNd(NO33水溶液461.14gに蒸留水1800gを加えて得られた水溶液を用いる代わりに、硝酸イットリウム(キシダ化学社製)200.8gに蒸留水820.0gを加えて得られた水溶液を用い、アンモニア水、リン酸水溶液の使用量を表3に記載した量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。得られた触媒は、リン酸の希土類金属塩であるリン酸イットリウム塩を含有するグリセリン脱水用触媒である。
実施例7および比較例5,6(ゾルゲル法による触媒の製造例)
硝酸イットリウム、蒸留水、アンモニア水、リン酸水溶液の使用量を表3に記載した量に変更したこと以外は、実施例6と同様にして触媒を製造した。なお、比較例5では、焼成は1100℃で行った。
Figure 2012091157
実施例8,9および比較例7,8(ゾルゲル法による触媒の製造例)
硝酸イットリウムの代わりに硝酸セリウムを表4に記載した量使用し、蒸留水、アンモニア水、リン酸水溶液の使用量を表4に記載した量に変更したこと以外は、実施例6と同様にして触媒を製造した。得られた触媒は、リン酸の希土類金属塩であるリン酸セリウム塩を含有するグリセリン脱水用触媒である。
Figure 2012091157
(1−2) グリセリン脱水用触媒を使用したアクロレインの製造
上記(1−1)に記した実施例1〜9および比較例1〜8で製造した触媒を使用して、次に示す常圧気相固定床流通反応形式により、グリセリンを脱水してアクロレインを製造した。触媒15mLをステンレス製反応管(内径10mm、長さ500mm)に充填して固定床反応器を準備し、この反応器を360℃の塩浴に浸漬した。その後、反応器内に窒素ガスを流量62mL/minで30分間流通させた後、80質量%グリセリン水溶液の気化ガスと窒素ガスとからなる反応ガス(反応ガス組成:グリセリン27モル%、水34モル%、窒素39モル%)を流量(GHSV)640hr-1で流通させた。反応器に反応ガスを流通させてから2.5〜3.0時間の30分間における反応器からの流出ガスを、アセトニトリル中に冷却吸収して捕集した。なお、以下では「捕集した流出ガスの冷却吸収物」を「流出物」ということがある。
流出物の一部を採り、検出器にFIDを備えるガスクロマトグラフィ(GC)装置により、流出物の定性および定量分析を行った。GCによる定量分析には、内部標準法を採用した。GCによる定性分析の結果、アクロレインとともに、プロピオンアルデヒド等の副生成物が検出された。定量分析結果から、グリセリン転化率(GLY転化率)、アクロレイン選択率(ACR選択率)、およびプロピオンアルデヒド選択率(PALD選択率)を算出した。これらの算出式は、以下の通りである。
GLY転化率(%)=(1−(流出物中のグリセリンのモル数)/(30分間で反応器に流入させたグリセリンのモル数))×100
ACR選択率(%)=((アクロレインのモル数)/(30分間に反応器に流入させたグリセリンのモル数))×100/グリセリン転化率×100
PALD選択率(%)=((プロピオンアルデヒドのモル数)/(30分間に反応器に流入させたグリセリンのモル数))×100/グリセリン転化率×100
(2) グリセリン脱水用触媒の寿命評価
実施例10
グリセリン脱水用触媒として、上記実施例1で得られた触媒を用い、上記(1−2)に記載した方法に従いアクロレインを製造した。ただし、反応器には反応ガスを24時間流通させた。この間、反応器に反応ガスを流通させてから所定時間(3,5,7,9,18または24時間)経過前から30分間における反応器からの流出ガスをアセトニトリル中に冷却吸収して捕集し、各々の所定時間における流出物の定性および定量分析を行った。
実施例11
実施例10において、グリセリン脱水用触媒として上記実施例2で得られた触媒を用いた以外は、実施例10と同様にアクロレインを製造し、性能評価を行った。
比較例9
実施例10において、グリセリン脱水用触媒として上記比較例4で得られた触媒を用いた以外は、実施例10と同様にアクロレインを製造し、性能評価を行った。
(3) グリセリン脱水用触媒の初期性能評価と寿命評価の結果
グリセリン脱水用触媒の初期性能評価に係る実験結果を表5に、寿命評価に係る実験結果を表6に示す。表5から分かるように、リン酸希土類金属塩としてリン酸ネオジム塩を含有し、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0より大きい触媒を用いた場合(実施例1〜5、比較例4)、アクロレイン(ACR)選択率を比較的高く維持しつつ、プロピオンアルデヒド(PALD)選択率を低く抑えることができる。モル比P/Rが1.0より大きい触媒(実施例1〜5、比較例4)は、モル比P/Rが1.0以下の触媒(比較例1〜3)と比べて、プロピオンアルデヒド(PALD)選択率が約1/4以下に低減した。リン酸の希土類金属塩としてリン酸イットリウム塩またはリン酸セリウム塩を含有し、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0より大きい触媒を用いた場合(実施例6〜9、比較例6,8)も、アクロレイン(ACR)選択率を比較的高く維持しつつ、プロピオンアルデヒド(PALD)選択率を低く抑えることができた。モル比P/Rが1.0より大きい触媒(実施例6〜9、比較例6,8)は、モル比P/Rが1.0以下の触媒(比較例5,7)と比べて、プロピオンアルデヒド(PALD)選択率が低減した。
しかし、表6から分かるように、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.5以上の触媒を用いた場合(比較例9)は、反応開始の9時間経過後から、グリセリン(GLY)転化率が低下し始め、触媒寿命の点で工業的な実用が難しいと判断された。一方、リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.5より小さい触媒を用いた場合は(実施例10,11)、反応開始から24時間経過しても触媒性能の低下は見られなかった。
Figure 2012091157
Figure 2012091157
(4) アクリル酸の製造例
下記に示す工程で、グリセリンからアクリル酸の製造を行った。
(i)前段反応工程:グリセリンを脱水してプロピオンアルデヒドとアクロレインとを含む反応生成物を得た。
(ii)前段精製工程:(i)で得られた反応生成物を精製して後段反応に供することができるプロピオンアルデヒドとアクロレインとを含む組成物を得た。
(iii)後段反応工程:(ii)で得られた組成物を酸化反応に供して粗製アクリル酸を含む反応生成物を得た。
(iv)後段精製工程:(iii)で得られた反応生成物を蒸留して粗製アクリル酸を得た後、この粗製アクリル酸を晶析により精製してアクリル酸を得た。
以下、上記の各工程を順に説明する。
(i)前段反応工程
前段反応に用いた触媒(前段反応触媒)として、実施例1に示した触媒を使用した。この触媒50mLをステンレス製反応管(内径25mm、長さ500mm)に充填し、固定床反応器として準備し、この反応器を360℃のナイターバス中に設置した。反応器出口部には、コンデンサーを設け、約4℃の冷却水を流した。反応系を真空ポンプで62kPaまで減圧し、圧力の調整には、真空一定装置を用いた。その後、グリセリン含有ガスを反応器内に流通させた。ここでグリセリン含有ガスとして、グリセリン44容量%、水56容量%からなる混合ガスを、ガス空間速度(GHSV)420hr-1の流量で流通させた。グリセリン含有ガスの流通開始から24時間供給し、反応器から流出するガスをコンデンサーで全て凝縮させ、氷浴で冷却した受器に回収した。回収された反応生成物の重量は1088gであり、供給原料の98質量%であった。得られた反応生成物をガスクロマトグラフィで定量分析した結果、反応生成物中、アクロレイン34質量%、プロピオンアルデヒド0.4質量%、1−ヒドロキシアセトン8.0質量%、水45質量%、重質分12.6質量%であった。
(ii)前段精製工程
(i)で得られた反応生成物を常圧条件下、0.48kg/hで10段のオールダーショウ式連続蒸留塔の5段目に供給し、ボトム温度96℃、還流比2の条件で運転した。塔頂から、アクロレイン97質量%、プロピオンアルデヒド0.3質量%、水3質量%を含む留出液を0.16kg/hで得た。
(iii)後段反応工程
後段反応に用いた酸化触媒(後段反応触媒)は、次のように調製した。加熱撹拌している水2500mLにパラモリブデン酸アンモニウム350g、メタバナジン酸アンモニウム116gおよびパラタングステン酸アンモニウム44.6gを溶解させた後、三酸化バナジウム1.5gを添加した。これとは別に、加熱撹拌している水750mLに硝酸銅87.8gを溶解させた後、酸化第一銅1.2gおよび三酸化アンチモン29gを添加した。これら2つの液を混合した後、担体である直径3〜5mmの球状α−アルミナ1000mLを加え、撹拌しながら蒸発乾固させて触媒前駆体を得た。この触媒前駆体を400℃で6時間焼成してアクリル酸製造用酸化触媒を調製した。なお、アクリル酸製造用酸化触媒の担持金属組成は、Mo126.11Cu2.3Sb1.2である。
上記の後段反応触媒50mLを充填したステンレス製反応管(内径25mm、長さ500mm)を固定床酸化反応器として準備し、この反応器を260℃のナイターバス中に設置した。その後、(ii)で得られた組成物を反応器に供給した。反応器出口部分には、コンデンサーを設け、約15℃の冷却水を流した。ここで、プロピオンアルデヒド含有ガスとして、アクロレイン6.5容量%、プロピオンアルデヒド0.03容量%、酸素6容量%、水13容量%、窒素74.5容量%からなる混合ガスを、空間速度(GHSV)1600hr-1の流量で流通させた。プロピオンアルデヒドとアクロレインとを含む組成物を反応開始から22時間供給し、反応器から流出するガスをコンデンサーで凝縮させ、氷浴で冷却した受器およびその後に設けたコールドトラップに回収した。回収された粗製アクリル酸を含む反応生成物の重量は503gであり、供給原料の98質量%であった。ガスクロマトグラフィで定量分析した結果、反応生成物中、粗製アクリル酸65.6質量%、プロピオン酸0.16質量%、ギ酸0.8質量%、酢酸1.04質量%、水32.4質量%であった。グリセリンを原料とするアクリル酸の製造においては、プロピレンを原料とする従来公知のアクリル酸の製造方法に比べて、副生成物であるプロピオン酸、ギ酸などの有機酸の副生量が増加することが分かる。
(iv)後段精製工程
(iii)で得られた反応生成物を段数10の蒸留塔の5段目に0.2kg/hで供給し、還流比1、塔頂からの留出量0.070kg/hの条件で連続蒸留を行った。その結果、塔底より、アクリル酸88.4質量%、プロピオン酸0.24質量%、酢酸1.02質量%、ギ酸0.05質量%、水10.3質量%の組成を有する粗製アクリル酸を0.140kg/hで得た。この粗製アクリル酸を、母液として、室温(約15℃)〜−5.5℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。分離した結晶を融解させてから、一部をサンプリングして分析し、残りを母液として室温(約15℃)〜5.0℃の温度範囲まで冷却して結晶を析出させ、同温度で保持した後、吸引濾過により結晶を液体から分離する晶析操作を行った。合計2回の晶析操作により、最終的に、純度99.9質量%以上のアクリル酸を得ることができた。結果を表7に示す。なお、プロピオン酸は検出限界(1ppm)以下であった。
Figure 2012091157
(5) 吸水性樹脂の製造例
アクリル酸の製造例において、2回目の晶析操作で得られた酢酸およびプロピオン酸の合計量が200質量ppmのアクリル酸に重合禁止剤を60質量ppm含有するアクリル酸を調製した。別途、鉄を0.2質量ppm含有する水酸化ナトリウムから得られたNaOH水溶液に対して、上記のアクリル酸を冷却下(液温35℃)で添加することにより、75モル%中和を行なった。アクリル酸や水中の鉄は検出限界以下であり、よって、単量体の鉄含有量は計算値で約0.07質量ppmであった。
得られた、中和率75モル%、濃度35質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.05モル%(アクリル酸ナトリウム水溶液に対する値)を溶解させることにより、単量体成分を得た。この単量体成分350gを容積1Lの円筒容器に入れ、2L/minの割合で窒素を吹き込んで、20分間脱気した。次いで、過硫酸ナトリウム0.12g/モル(単量体成分に対する値)およびL−アスコルビン酸0.005g/モル(単量体成分に対する値)の水溶液をスターラー撹拌下で添加して、重合を開始させた。重合開始後に撹拌を停止し、静置水溶液重合を行なった。単量体成分の温度が約15分(重合ピーク時間)後にピーク重合温度108℃を示した後、30分間重合を進行させた。その後、重合物を円筒容器から取り出し、含水ゲル状架橋重合体を得た。得られた含水ゲル状架橋重合体を、45℃でミートチョッパー(孔径8mm)により細分化した後、170℃の熱風乾燥機で20分間加熱乾燥させた。さらに、乾燥重合体(固形分:約95%)をロールミルで粉砕し、JIS標準篩で粒径600〜300μmに分級することにより、ポリアクリル酸系吸水性樹脂(中和率75%)を得た。
本発明によるアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性は、プロピレンを原料とするアクリル酸の製造方法により得られたアクリル酸の重合性と同等であり、得られた吸水性樹脂は、臭気がなく、物性も同等であった。
本発明は、グリセリンからアクロレインを収率よく製造することを可能にする。従って、例えば、バイオディーゼルの製造時に副生するグリセリンの有効利用を図るうえでの重要な技術として、バイオディーセルの普及ならびに地球温暖化対策に多大の貢献をなすものである。

Claims (5)

  1. リン酸の希土類金属塩を含有するグリセリン脱水用触媒であって、
    リン(P)と希土類金属(R)とのモル比P/Rが1.0より大きく1.5より小さいことを特徴とするグリセリン脱水用触媒。
  2. 前記希土類金属がイットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、およびガドリニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のグリセリン脱水用触媒。
  3. 請求項1または2に記載の触媒の存在下において、グリセリンを脱水させてアクロレインを得ることを特徴とするアクロレインの製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法で得られるアクロレインを酸化してアクリル酸を得ることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
  5. 請求項4に記載の製造方法により得られるアクリル酸を含む単量体成分を重合することを特徴とする親水性樹脂の製造方法。
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