JP2014154331A - 酸化物超電導線材及び酸化物超電導線材の接続構造体並びに酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材及び酸化物超電導線材の接続構造体並びに酸化物超電導線材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】端部において水分の浸入による超電導特性の低下を防ぐ酸化物超電導線材及び当該酸化物超電導線材の接続構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】テープ状の基材と中間層と酸化物超電導層とを備えた酸化物超電導積層体と、少なくとも前記酸化物超電導層側を覆う安定化層と、からなる酸化物超電導線材であって、前記酸化物超電導積層体の長手方向端部がAgを含む先端被覆層により覆われていることを特徴とする酸化物超電導線材。また、前記酸化物超電導線材同士が接続された酸化物超電導線材の接続構造体であって、一対の酸化物超電導線材に加え、これらと同構造を有する接続用酸化物超電導線材を備え、前記長手方向端部同士を隣接して対向配置された前記第1及び第2の酸化物超電導線材を跨るように前記接続用酸化物超電導線材が橋渡しして接合されていることを特徴とする酸化物超電導線材の接続構造体。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物超電導線材及び酸化物超電導線材の接続構造体並びに酸化物超電導線材の製造方法に関する。
近年Bi系超電導線材BiSrCaCu8+δ(Bi2212)、BiSrCaCu10+δ(Bi2223)やRE−123系超電導線材REBaCu7−x(RE123:REはYやGdなどを含む希土類元素)といった酸化物超電導線材の開発が進んでいる。これら酸化物超電導線材は、臨界温度が90〜100K程度であり、液体窒素温度以上で超電導性を示すため、実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体あるいは超電導コイル等として使用することが要望されている。
Bi系の超電導線材は、Bi系の超電導層をAgのシース材で被覆した状態となるようにPowder In Tube法(PIT法)などにより製造された構造となっている。一方、RE−123系超電導線材は、テープ状の金属基材上に中間層を介し成膜法により酸化物超電導層を積層し、さらに前記酸化物超電導層上に薄い銀の保護層を形成し、その上に銅などの良導電性金属材料からなる安定化層を設けた構造が採用されている。
ところで、RE−123系酸化物超電導線材は水分と接触すると水分と反応し超電導特性が低下することが知られている。したがって、酸化物超電導線材に水分を付着させることが無いように保管及び使用することが求められる。しかしながら、長期間の使用において室温と低温のヒートサイクルに伴う結露などで水分が付着する虞があるため、酸化物超電導線材の長期的信頼性を確保するためには、酸化物超電導層の全周を何らかの層で保護する構造を採用する必要がある。例えば、金属基材上に中間層と酸化物超電導層を積層したテープ状の酸化物超電導積層体を備え、両縁部を折り曲げた横断面C型形状の補強テープ線で前記酸化物超電導積層体を覆い重なり部を半田付けすることで、前記酸化物超電導積層体を外部から遮断した構造が知られている。
また、RE−123系の酸化物超電導線材を実用機器に応用するために、酸化物超電導線材を接続する技術が要望されている。例えば、特許文献1には、図8に示すように、基材202上に中間層203、酸化物超電導層204、安定化層205が積層された一対の酸化物超電導線材211、212の端部近傍を重ねあわせて、重ね合わせ部220を形成し、当該重ね合わせ部220を、半田(図示略)により接合し、さらに接続板206によって補強した接続構造体200が開示されている。
特開2007−266149号公報
しかしながら、特許文献1に記載の接続構造体200においては、接続板206によって、接続部を補強することによって接続部の機械的な強度の向上を望むことができるものの、接続部分を外部から完全に遮断する機能を有していないため、酸化物超電導線材211、212の端部211a、212aに水分が浸入し、酸化物超電導線材212、212の酸化物超電導層204が劣化する虞があった。
酸化物超電導線材211、212の端部211a、212aは、酸化物超電導層204が露出している。この酸化物超電導層204は、半田との密着性が悪いため、半田を介して接続板206を接続しても水分の浸入を防ぐことができない。また、酸化物超電導線材211、212の端部211a、212aにめっき被覆層を形成し、当該めっき被覆層によって端部211a、212aを水分から封止することも考えられるが、端部211a、212aは異なる材質からなる複数の層が露出しておりめっき被覆層を均一に形成することは困難である。加えて、基材として好適な材料である、ハステロイ等のニッケル合金等はめっきとの密着性が悪く、めっき被覆層が剥離する虞がある。
本発明は、以上のような実情に鑑みなされたものであり、端部において水分の浸入による超電導特性の低下を防ぐ酸化物超電導線材を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため本発明の酸化物超電導線材は、テープ状の基材と中間層と酸化物超電導層とを備えた酸化物超電導積層体と、少なくとも前記酸化物超電導層を覆う安定化層と、からなる酸化物超電導線材であって、前記酸化物超電導積層体の長手方向端部がAgを含む先端被覆層により覆われていることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導積層体の長手方向端部がAgを含む先端被覆層によって覆われているため、端部からの水分の浸入が防がれ、酸化物超電導線材の水分による劣化を抑制できる。
また、本発明の酸化物超電導線材の接続構造体は、前記酸化物超電導線材同士が接続された酸化物超電導線材の接続構造体であって、前記酸化物超電導線材のうち一方を第1の酸化物超電導線材とし、他方を第2の酸化物超電導線材とし、前記第1及び第2の酸化物超電導線材に加え、これらと同構造を有する接続用酸化物超電導線材を備え、前記長手方向端部同士を隣接して対向配置された前記第1及び第2の酸化物超電導線材を跨るように前記接続用酸化物超電導線材が橋渡しして配置され、前記第1の酸化物超電導線材と前記接続用酸化物超電導線材の前記安定化層同士が導電性接合材により接合され、前記第2の酸化物超電導線材と前記接続用酸化物超電導線材の前記安定化層同士が導電性接合材により接合されていることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材の接続構造体は、接続部分における酸化物超電導線材の端部が先端被覆層により覆われているため、接続部での水分の浸入による酸化物超電導線材の劣化を抑制することができる。
また、本発明の酸化物超電導線材の接続構造体は、前記第1の酸化物超電導線材と前記接続用酸化物超電導線材、又は前記第2の酸化物超電導線材と前記接続用酸化物超電導線材の接合部において、一方の酸化物超電導線材の長手方向端部を覆うように、一方の酸化物超電導線材から他方の酸化物超電導線材を跨ぐ補強部材が接着層を介して接続されていることを特徴とする。
酸化物超電導線材の各端部を覆うように補強部材を接着することにより、酸化物超電導線材の接続構造体の引張り方向及び曲げ方向の機械強度を高めることができる。
また、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、テープ状の基材と中間層と酸化物超電導層とを備えた酸化物超電導積層体を用い、前記酸化物超電導積層体の長手方向端部にスパッタ法によりAgを含む先端被覆層を成膜した後に、酸素アニール処理を行う工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、スパッタ法により先端被覆層を成膜した後に、酸素アニール処理を行うことで、成膜時の熱によって酸化物超電導層の酸素が抜けてしまった場合であっても、その後に酸素アニール工程を有するため、酸化物超電導層に再度酸素を供給し超電導特性を向上させることができる。
本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導積層体の長手方向端部がAgを含む先端被覆層によって覆われているため、端部からの水分の浸入が防がれ、酸化物超電導線材の水分による劣化を抑制できる。
本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態を模式的に示す部分断面傾視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材(被覆酸化物超電導線)の第2実施形態を模式的に示す部分断面傾視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材(被覆酸化物超電導線)の第3実施形態を模式的に示す横断面傾視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材(被覆酸化物超電導線)の第3実施形態を模式的に示す斜視図であり、図4(a)は長手方向端部の被覆手順を示し、図4(b)は係る手順を経て被覆された長手方向端部を示す。 本発明に係る接続構造体の第1実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明に係る接続構造体の第1実施形態の変形例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る接続構造体の第2実施形態を模式的に示す断面図である。 従来例としての酸化物超電導線材の接続構造体を示す。
以下、本発明に係る酸化物超電導線材の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(酸化物超電導線材の第1実施形態)
図1に本発明に係る第1実施形態の酸化物超電導線材15を示す。酸化物超電導線材15は、テープ状の基材10の主面(表面)に中間層11、酸化物超電導層12が積層された酸化物超電導積層体16と、その外周部16a及び長手方向端部16bに積層された保護層(第1の安定化層)13から構成される。
以下、図1を基に、酸化物超電導線材15の各構成要素について詳しく説明する。
基材10は、通常の酸化物超電導線材の基材として使用し得るものであれば良く、可撓性を有する長尺のテープ状であることが好ましい。また、基材10に用いられる材料は、機械的強度が高く、耐熱性があり、線材に加工することが容易な金属を有しているものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、ハステロイ等のニッケル合金等の各種耐熱性金属材料、もしくはこれら各種金属材料上にセラミックスを配した材料などが挙げられる。中でも、市販品であれば、ハステロイ(商品名、米国ヘインズ社製)が好適である。このハステロイの種類には、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等が挙げられ、ここではいずれの種類も使用できる。また、基材10として、ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni−W合金テープ基材等を適用することもできる。基材10の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は10〜500μm、好ましくは20〜200μmである。
基材10の主面には、中間層11が形成される。中間層11は、一例として拡散防止層、ベッド層、配向層、及びキャップ層がこの順に積層された構造を適用することができる。
拡散防止層は、この層よりも上面に他の層を形成する際に加熱処理した結果、基材10や他の層が熱履歴を受ける場合に、基材10の構成元素の一部が拡散し、不純物として酸化物超電導層12側に混入することを抑制する機能を有する。拡散防止層の具体的な構造としては、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、不純物の混入を防止する効果が比較的高いAl、Si、又はGZO(GdZr)等から構成される単層構造あるいは複層構造が望ましい。
ベッド層は、基材10と酸化物超電導層12との界面における構成元素の反応を抑え、この層よりも上面に設ける層の配向性を向上させるために用いられる。ベッド層の具体的な構造としては、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、耐熱性が高いY、CeO、La、Dy、Er、Eu、Ho、などの希土類酸化物から構成される単層構造あるいは複層構造が望ましい。
配向層は、その上に形成されるキャップ層や酸化物超電導層12の結晶配向性を制御したり、基材10の構成元素が酸化物超電導層12へ拡散することを抑制したり、基材10と酸化物超電導層12との熱膨張率や格子定数といった物理的特性の差を緩和したりする機能等を有するものである。配向層の材料には、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)等の金属酸化物を用いると、後述するイオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と呼ぶことがある。)において、結晶配向性の高い層が得られ、キャップ層や酸化物超電導層12の結晶配向性をより良好にできるため、特に好適である。
キャップ層は、酸化物超電導層12の結晶配向性を配向層と同等ないしそれ以上に強く制御したり、酸化物超電導層12を構成する元素の中間層11への拡散や、酸化物超電導層12の積層時に使用するガスと中間層11との反応を抑制したりする機能等を有するものである。キャップ層の材料には、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、CeO、LaMnO、Y、Al、Gd、ZrO、Ho、Nd等の金属酸化物が酸化物超電導層12との格子整合性の観点から好適である。そのなかでも、酸化物超電導層12とのマッチング性から、CeO、LaMnOが特に好適である。
ここで、キャップ層にCeOを用いる場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
酸化物超電導層12に用いられる材料には、通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、例えば、RE−123系超電導体、Bi系超電導体などの銅酸化物超電導体などが挙げられる。RE−123系超電導体の組成は、例えば、REBaCu(7−x)(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素、xは酸素欠損を表す。)が挙げられ、具体的には、Y123(YBaCu(7−x))、Gd123(GdBaCu(7−x))が挙げられる。Bi系超電導体の組成は、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δ(nはCuOの層数、δは過剰酸素を表す。)が挙げられる。
また、本実施形態において用いられる酸化物超電導層12の材料は、銅酸化物超電導体であり、以下、特に指定がなければ、酸化物超電導層12に用いる材料を銅酸化物超電導体とする。
上述の基材10、中間層11、酸化物超電導層12によって、酸化物超電導積層体16を構成する。図1に示すように、この酸化物超電導積層体16の横断面における外周部(周面)16aには保護層(第1の安定化層)13の一部である外周層13aが形成され、長手方向端部16bには同じく保護層13の一部である先端被覆層13bが形成されて、酸化物超電導線材15が構成されている。
保護層13は、酸化物超電導層12とこの層よりも上面に設ける層との間で起こる化学反応を抑制し、一方の層の元素の一部が他方の層側に侵入して組成がくずれることにより起こる超電導特性が低下するのを防いだりするなどの機能を有するものである。また、酸化物超電導層12に酸素を取り込ませやすくするために、加熱時には酸素を透過しやすくさせる機能も有する。保護層13は、AgあるいはAg合金から形成される。
また、保護層13のうち外周層13a及び先端被覆層13bは、事故時に発生する過電流をバイパスする安定化層としての機能を有する。
保護層13の一部である外周層13aの膜厚は、0.1μm以上5μm以下とすることができる。外周層13aの膜厚が5μm以下の薄い層とすることで、コストの低減を図ることができる。膜厚が0.1μm未満である場合には、酸素アニール時の熱処理によってAg凝集が凝集し、保護層13にピンホールが発生し、酸化物超電導層12の一部が露出する虞がある。
Ag又はAg合金からなる保護層13は、スパッタ法等の成膜法により形成することができる。以下に、保護層13の成膜手順の一例について説明する。
まず、Ag又はAg合金からなるターゲットと酸化物超電導積層体16を、内部を真空状態に減圧しArガスを導入した処理容器内に配置する。このとき、酸化物超電導積層体16は、酸化物超電導層12をターゲット方向に向けて配置する。次に前記ターゲットに電圧を印加し放電させることでArガスをイオン化してプラズマを生成する。プラズマ中に生成されたArのイオンが、前記ターゲットをスパッタしてターゲットからAgのスパッタ粒子がはじき出され、当該スパッタ粒子が酸化物超電導層12上に堆積することで、保護層13の外周層13aの一部が成膜される。
このとき、Ag粒子は、酸化物超電導層12上のみならず、酸化物超電導積層体16の側面側にも回り込んで保護層13の外周層13aが形成される。また、成膜条件によっては、基材10の裏面側にもAgの薄い層が形成される。
次いで、酸化物超電導積層体16を基材10側がターゲットと対向するように反転し、上記と同様の工程を経ることで、基材10の裏面に保護層13の外周層13aを形成する。
保護層13の外周層13aの成膜後に、酸素雰囲気下において300〜500℃、5〜20hの熱処理を行う(第1酸素アニール処理)。酸化物超電導層12は、成膜後には酸素が不足した結晶構造となっているため、酸素アニール処理を行うことによって、酸化物超電導層12に酸素を供給して結晶構造を整えることができる。
次いで、保護層13の一部である先端被覆層13bをスパッタ法により形成する。外周層13aを成膜した酸化物超電導積層体16の長手方向端部16bをターゲットに対向させ、上述と同様の工程を経ることで、酸化物超電導積層体16の長手方向端部16bに保護層13の先端被覆層13bを形成し、さらに酸素雰囲気下における熱処理(第2酸素アニール処理を行う。
スパッタ法の成膜時は、Ag粒子を被成膜体に衝突させるため熱が発生し、この熱によって上記の第1酸素アニール処理によって、酸化物超電導層12に供給された酸素が抜けてしまう場合がある。そこで、第1酸素アニール処理と同条件において第2酸素アニール処理を行うことにより、再度酸化物超電導層12に酸素を供給する。この工程を経ることにより、酸化物超電導層12に再度酸素を供給し超電導特性を向上させることができる。
以上の工程を経ることにより、酸化物超電導積層体16の外周部16a及び長手方向端部16bに保護層13を形成し、図1に示す酸化物超電導線材15が構成される。
なお、上述した第1酸素アニール処理は、略すことができる。
第1実施形態の酸化物超電導線材15は、酸化物超電導積層体16の長手方向端部16bをAgからなる先端被覆層13bにより覆っているため、長手方向端部16bからの水分の浸入が防がれ、酸化物超電導線材15の水分による劣化を抑制できる。同様に、酸化物超電導積層体16の幅方向端部を含む外周部(周面)16aがAgからなる外周層13aによって覆われているため、外周部16aからの水分の浸入が防がれ、酸化物超電導線材15の水分による劣化を抑制できる。
また、この酸化物超電導線材15の外周に第2実施形態として後述するめっき被覆層17を設ける場合においては、密着性が高く均一な膜厚を有するめっき被覆層17を形成することが可能となり、より耐水分性能を向上させることができる。加えて、第3実施形態として後述する外周を半田層19を介して金属テープ18によって気密に覆う場合においては、外周が半田と密着性の良い保護層13で覆われているため、気密性を高めることができる。
(酸化物超電導線材の第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態である被覆酸化物超電導線材(酸化物超電導線材)1を表す模式図である。なお、上述の実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
第2実施形態の被覆酸化物超電導線材1は、上述した第1実施形態の酸化物超電導線材15の外周部15b及び長手方向端部15aをめっき被覆層(第2の安定化層)17によって覆う構成を有する。即ち、被覆酸化物超電導線材1は、図1に示す酸化物超電導線材15の全周を外部と気密に覆うめっき被覆層17により被覆することで構成する。
なお、第2実施形態の酸化物超電導線材1並びに後述する第3実施形態の酸化物超電導線材2は、その構成要素に第1実施形態の酸化物超電導線材15を有しているため、本明細書中において明確に区別する目的で、第2実施形態及び第3実施形態の酸化物超電導線材を「被覆」酸化物超電導線材と称する。
基材10と酸化物超電導層12は、保護層13と比較してめっきの密着性が悪い。また、基材10と常温の酸化物超電導層12は、保護層13と比較して著しく電気抵抗値が高いため、電解めっきにより、均一な厚みを有するめっき層を形成することができない。
しかしながら、本実施形態の酸化物超電導積層体16の外周部16a及び長手方向端部16bは、保護層13によって完全に被覆されており、密着性に優れ均一な膜厚を有するめっき被覆層17を形成することができる。
酸化物超電導線材15上に積層されためっき被覆層(第2の安定化層)17は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層12が何らかの原因で超電導状態から常電導状態に遷移しようとした時に、保護層(第1の安定化層)13とともに、酸化物超電導層12の電流が転流するバイパスとなる安定化層として機能する。
また、めっき被覆層17により、酸化物超電導線材15を外部から完全に遮断することが可能となり、より確実に水分の浸入を防ぐことができる。
めっき被覆層17に使用する金属としては、銅、ニッケル、金、銀、クロム、錫などを挙げることができ、これ等の金属のうち一種又は二種以上を組み合わせて用いる事ができる。
また、被覆酸化物超電導線材1を超電導限流器に使用する場合、めっき被覆層(安定化層)14は、クエンチが起こり常電導状態に転移した時に発生する過電流を瞬時に抑制するために用いられる。この用途の場合、めっき被覆層17に用いられる材料は、例えば、Ni−Cr等のNi系合金等の高抵抗金属が挙げられる。
めっき被覆層17の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜100μmとすることができる。めっき被覆層17の厚さが10μm未満の場合においては、めっき被覆層17にピンホールが発生する可能性があり、水分の浸入を確実に防ぐことができない虞がある。また、めっき被覆層17の厚さが100μmを超える場合は、被覆酸化物超電導線材1の厚みが肥大化し屈曲性が悪くなるため望ましくない。したがって、めっき被覆層の厚さは10μm以上、100μm以下であることが望ましい。
(酸化物超電導線材の第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態である被覆酸化物超電導線材(酸化物超電導線材)2の断面を表す模式図であり、図4(a)は端部15aの被覆手順を示し、図4(b)は被覆酸化物超電導線材2の端部2aの模式図である。
なお、上述の実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
第3実施形態の被覆酸化物超電導線材1は、上述した第1実施形態の酸化物超電導線材15の外周部15b及び長手方向端部15aを金属テープ(第2の安定化層)18及び金属箔44によって覆う構成を有する。即ち、被覆酸化物超電導線材2は、図1に示す酸化物超電導線材15の外周部15b及び長手方向端部15aを半田層19、43を介し金属テープ18及び金属箔44によって被覆することで構成する。
図3に断面図として示すように被覆酸化物超電導線材2は、酸化物超電導線材15の酸化物超電導層12側に半田層19を設けた金属テープ18を配置し、当該金属テープ18を酸化物超電導線材15の周面を横断面略C字型をなすように包み込んで折り曲げ加工し、半田層19を加熱溶融させてロールにより加圧することにより構成されている。
金属テープ18は、横断面略C字型に折り曲げられ、表面壁18aと側壁18bと裏面壁18c、18cとからなり、酸化物超電導線材15の酸化物超電導層12側から基材10側の裏面幅方向端部近傍を覆っている。また、金属テープ18の内周面側には半田層19が形成される。
以上のように、金属テープ18によって酸化物超電導線材15を被覆することで、内部に水分を浸入させない気密な構造を実現できる。
なお、本実施形態において金属テープ18の半田層19は、酸化物超電導線材15と接する面(内側面)のみに形成されているが、金属テープ18の両面に半田層19を設けていても良い。
また、酸化物超電導線材15を金属テープ18によって略C字型に被覆する以外にも、酸化物超電導線材15の外周に半田層19を設けた金属テープ18を螺旋巻きにするなどして気密に被覆しても良い。
金属テープ18を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることから銅製が好ましい。また、被覆酸化物超電導線材2を超電導限流器に使用する場合においては、金属テープ18に用いられる材料は、例えば、Ni−Cr等のNi系合金等の高抵抗金属を用いる事が良い。
金属テープ18の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、9〜60μmとすることができる。金属テープ18の厚さが薄すぎると破れが生じる虞があり、また厚すぎると、金属テープ18を横断面略C字型に成形することが困難となるのみならず、成形時に高い応力を加える必要があるため酸化物超電導層12が劣化する虞がある。
半田層19に用いる半田は、特に限定されるものではなく従来公知の半田を使用可能である。例えば、Sn、Sn−Ag系合金、Sn−Bi系合金、Sn−Cu系合金、Sn−Zn系合金などのSnを主成分とする合金よりなる鉛フリー半田、Pb−Sn系合金半田、共晶半田、低温半田などが挙げられ、これらの半田を一種又は二種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、融点が300℃以下の半田を用いることが好ましい。これにより、300℃以下の温度で金属テープ18と保護層13を半田付けすることが可能となるので、半田付けの熱によって酸化物超電導層12の特性が劣化することを抑止できる。
第2実施形態の被覆酸化物超電導線材2においても、金属テープ18は、酸化物超電導層12の電流が転流するバイパスとなる安定化層として機能する。また、金属テープ18により、酸化物超電導線材15を外部から完全に遮断することが可能となり、より確実に水分の浸入を防ぐことができる。
図4(b)に示すように、第2実施形態の被覆酸化物超電導線材2の端部2aは、その外周部2bと同様に、半田層43を介して金属箔44により覆われて構成される。
被覆酸化物超電導線材2の端部2aは、一面に半田層43を形成した金属箔44の前記半田層43を形成した面上に、外周を金属テープ18で被覆した酸化物超電導線材15の端部15aを配置し(図4(a)参照)、前記端部15aを金属箔44によって包囲し前記半田層43を溶融、凝固させることによって形成されている。
以下、図4(a)及び図4(b)を基に被覆酸化物超電導線材2の端部2aの被覆手順の一例を説明する。
まず、図4(a)に示すように、酸化物超電導線材15の端部15aを、矩形状を有し、少なくとも上面に半田層43からなる層を備えた金属箔44の中央付近に配置する。
次いで、金属箔44を図4(a)に示す矢印P、矢印Qが示す方向にこの順に折りたたむことにより酸化物超電導線材15の端部15aを包囲する。
次いで金属箔44の酸化物超電導線材15の端部15aの先に構成される部分を閉じるように加圧し、更に加熱することで金属箔44上の半田層43を溶融させ接合する。
次いで、図4(a)に示す矢印Rが示す方向に折り返し、折り返し部に半田からなる箔を挟み込み、当該箔を溶融し接合させることで、水分が浸入し得る経路を複雑に構成し、水分浸入をより効果的に抑制する構造として、被覆酸化物超電導線材2を形成する。
なお、上述の被覆手順の一例においては、金属箔44を折りたたむ順序を、矢印P、Q、Rを用いてP−Q−Rの順序であるとして説明したが、これに限定されるものではなく、P−R−Q、Q−P−R、Q−R−P、R−P−Q、R−Q−Pの順序であっても良い。
金属箔44を構成する金属材料としては、上述の酸化物超電導線材15の横断面外周を覆う金属テープ18と同様の物を用いる事ができる。また、半田層43を構成する金属材料としては、上述の半田層19と同様に融点が300℃以下の物を用いる事で、半田付けの熱によって酸化物超電導層12の特性が劣化することを抑止できる。
被覆酸化物超電導線材2は、金属箔44と金属テープ18によって外周が覆われた酸化物超電導線材15の外周面の一部と酸化物超電導線材15の端部15aを覆い、各部において、金属箔44は、半田層43を介し酸化物超電導線材15と接合されている。酸化物超電導線材15と金属箔44との境界面及び、金属箔44同士の接触部は、半田層43により接合され完全に封止されているため、当該境界面及び接触部からの水分の浸入を抑制することができる。
特に、酸化物超電導線材15の端部15aは、半田と密着性の良い、先端被覆層13bによって覆われているため、半田層19と酸化物超電導線材15は、容易に密着し気密性の高い被覆酸化物超電導線材2を形成することができる。
(接続構造体の第1実施形態)
以下、本発明に係る接続構造体の第1実施形態について図面に基づいて説明する。
図5に本発明の第1実施形態の酸化物超電導線材の接続構造体30の断面図を示す。酸化物超電導線材の接続構造体30は、第1の酸化物超電導線材4と第2の酸化物超電導線材5を接続用酸化物超電導線材6を介して接続する構成を有する。
なお、本実施形態の接続構造体30において接続される、第1及び第2の酸化物超電導線材4、5並びに接続用酸化物超電導線材6は、図2を基に説明した被覆酸化物超電導線材1と同等構造である。
図5に示すように、本実施形態の酸化物超電導線材の接続構造体30は、第1及び第2の酸化物超電導線材4、5の端部4a、5a同士を隣接して対向配置し、この端部4a、5aを跨るように接続用酸化物超電導線材6を橋渡しして配置されている。また、第1の酸化物超電導線材4と接続用酸化物超電導線材6のめっき被覆層(第2の安定化層)17同士が導電性接合材22により接合され、第2の酸化物超電導線材5と接続用酸化物超電導線材6のめっき被覆層17同士が導電性接合材22により接合されている。
以下に第1実施形態の接続構造体30の接続方法について以下に説明する。
まず、第1及び第2の酸化物超電導線材4、5を、接続しようとする端部4a、5a同士を距離eだけ離間して隣接させる。このとき、第1及び第2の酸化物超電導線材4、5は、基材10、10に対し酸化物超電導層12、12を形成した側を揃えて配置する。
次に、隣接された第1及び第2の酸化物超電導線材4、5の端部4a、5aに跨るように、接続用酸化物超電導線材6を橋渡しする。このとき、第1及び第2の酸化物超電導線材4、5に対して接続用酸化物超電導線材6は、基材10に対して酸化物超電導層12を積層した側を対向させて重ね合わせることが望ましい。このように重ね合わせることで、接続部での電気抵抗が低い接続構造体30を構成することができる。
次に、上述の工程において重ねられた第1の酸化物超電導線材4のめっき被覆層17と、接続用酸化物超電導線材6のめっき被覆層17とを、導電性接合材22により接合する。同様に、第2の酸化物超電導線材5のめっき被覆層17と、接続用酸化物超電導線材6のめっき被覆層17とを、導電性接合材22により接合することで、接続構造体30を形成する。
導電性接合材22として従来公知の半田を使用可能であり、特に融点が300℃以下の半田を用いることが好ましい。これにより、300℃以下の温度で金属テープと保護層13を半田付けすることが可能となるので、半田付けの熱によって酸化物超電導層12の特性が劣化することを抑止できる。
接続用酸化物超電導線材6が橋渡しして配置されることによって形成される第1及び第2の酸化物超電導線材4、5と接続用酸化物超電導線材6のめっき被覆層17同士の重ね合わせ部の長さdは、10〜1000mmが望ましい。
めっき被覆層17同士の重ね合わせ部の長さdを大きくすることで、第1の酸化物超電導線材4から導電性接合材22を介して接続用酸化物超電導線材6に流れる電流の経路において、電流方向に対する導電性接合材22の断面積を大きくすることができる。第2の酸化物超電導線材5と接続用酸化物超電導線材6との間でも同様であり、全体として接続構造体30の接続部分における抵抗値を抑制することができる。したがって、めっき被覆層17の重ね合わせ部の長さdは、長いほうが接続部分の電気抵抗の観点において好ましく、具体的には、10mm以上であることが望ましく、30mm以上であることがより好ましい。しかしながら、めっき被覆層17の重ね合わせ部の長さdが1000mmを超える場合は、接続部分が長くなりすぎて、接続構造体30の屈曲性が悪くなる。したがって、めっき被覆層17の重ね合わせ部の長さdは、1000mm以下が望ましく、200mm以下であることがより好ましい。
第1及び第2の酸化物超電導線材4、5の接続しようとする端部4a、5a同士の距離eは、特に限定されるものではなく、接続用酸化物超電導線材6の長さ、第1の酸化物超電導線材4と接続用酸化物超電導線材6のめっき被覆層17同士の重ね合わせ部の長さd、第2の酸化物超電導線材5と接続用酸化物超電導線材6のめっき被覆層17の重ね合わせ部の長さd等に応じて適宜決定すればよい。また、端部4aと端部5aの間(即ち距離eの領域)を半田で埋めても良い。
また、図5に示すように、接続構造体30において、第1及び第2の酸化物超電導線材4、5と接続用酸化物超電導線材6は、基材10、10に対して酸化物超電導層12、12が積層される側同士を対向させて重ね合わせることが望ましい。このように重ね合わせることで、接続部での電気抵抗が低い接続構造体30を構成することができる。
本実施形態においては、接続する第1の酸化物超電導線材4と第2の酸化物超電導線材5とが同方向に積層されて配置され、接続用酸化物超電導線材6を介して接続するため接続部分で第1及び第2の酸化物超電導線材4、5の表裏の逆転がなく、取扱いが容易となる。しかしながら、例えば1対の酸化物超電導線材をその積層方向を逆転して配置して、接続用酸化物超電導線材6を用いずに接続する構造としても良い。
本実施形態の接続構造体30は、その接続部分において第1及び第2の酸化物超電導線材4、5の端部4a、5a並びに接続用酸化物超電導線材6の両端部6a、6bがめっき被覆層17により被覆されているため、接続部分において酸化物超電導層12への水分の浸入を防ぎ、水分による超電導特性の低下を抑制することができる。
(接続構造体の第1実施形態の変形例)
上述の酸化物超電導線材の第1実施形態において、接続する酸化物超電導線材は、図2を基に説明した被覆酸化物超電導線材(酸化物超電導線材)1である。しかしながら、接続される酸化物超電導線材はこれに限らず、図1を基に説明した酸化物超電導線材15、図3、図4を基に説明した被覆酸化物超電導線材(酸化物超電導線材)2であっても良い。
これらのうち、図3、図4を基に説明した、酸化物超電導線材15の外周部15b及び長手方向端部15aを保護層13を介して金属テープ(第2の安定化層)18及び金属箔44によって覆う構成を有する被覆酸化物超電導線材2を用いて接続構造体31を構成する変形例を図6に示す。なお、上述の実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図6に示す本実施形態の変形例の接続構造体31は、上述の接続構造体30と比較して、接続される酸化物超電導線材の構成に違いを有し、これによって、上述の接続構造体30と同様の効果を得ることができる。
即ち、本実施形態の接続構造体31において接続される、第1及び第2の酸化物超電導線材7、8並びに接続用酸化物超電導線材9は、図3、図4を基に説明した被覆酸化物超電導線材2と同等構造である。なお、図6において、各酸化物超電導線材7、8、9の端部7a、8a、9a、9bの金属箔44は、煩雑さを回避する目的で略して図示されており、図4(a)、(b)を基に説明した被覆手順で金属箔44により被覆されている。
(接続構造体の第2実施形態)
以下、本発明に係る接続構造体の第2実施形態について図面に基づいて説明する。
図7に本発明の第2実施形態の酸化物超電導線材の接続構造体32の断面図を示す。第2実施形態の接続構造体32は、図6を基に説明した第1実施形態の変形例である接続構造体31と類似した構成を有し、前記接続構造体31に加えて補強部材45を有する点が異なる。
即ち、第2実施形態の接続構造体32は、第1の酸化物超電導線材7と接続用酸化物超電導線材9の接合部並びに第2の酸化物超電導線材8と接続用酸化物超電導線材9の接合部において、一方の酸化物超電導線材の長手方向端部を覆うように、一方の酸化物超電導線材から他方の酸化物超電導線材を跨ぐ補強部材45が接着層46を介して接続されている。
なお、上述の実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態の接続構造体32は、各酸化物超電導線材7、8、9の端部7a、8a、9a、9bを補強部材45によって覆うことによって補強されている。
第1の酸化物超電導線材7の端部7aにおいて、補強部材45は、端部7aに構成される金属箔44を覆い、第1の酸化物超電導線材7の外周を覆う金属テープ18と接続用酸化物超電導線材9の外周を覆う金属テープ18とを跨ぐように接着層46を介し接続されている。
同様に、第2の酸化物超電導線材8の端部8a及び接続用酸化物超電導線材9の両端部9a、9bに補強部材45が構成されている。
このように各端部7a、8a、9a、9bを覆うように補強部材45を接着することにより、接続構造体32の引張り方向及び曲げ方向の機械強度を高めることができる。
接着層46を構成する材料としては、半田、接着剤などを用いる事ができる。特に半田を用いる場合においては、融点が300℃以下の物を用いる事が好ましい。これにより、半田付けの熱によって酸化物超電導層12の特性が劣化することを抑止できる。
なお、本実施形態においては、補強部材45により補強する酸化物超電導線材の接続構造体として、図6を基に説明した接続構造体31を用いて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、図5を基に説明した接続構造体30や、図1に示す酸化物超電導線材15同士を接続する接続構造体であっても補強部材45を適用することにより、各接続構造体の機械的強度を高めることができる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(試料の作製)
まず、ハステロイC−276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ1000mmのテープ状の基材の表面を平均粒径3μmのアルミナを使用し研磨した。次に、前記基材の表面をアセトンにより脱脂、洗浄した。
この基材の主面上にスパッタ法によりAl(拡散防止層;膜厚100nm)を成膜し、その上に、イオンビームスパッタ法によりY(ベッド層;膜厚30nm)を成膜した。
次いで、このベッド層上に、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)によりMgO(金属酸化物層;膜厚5〜10nm)を形成し、その上にパルスレーザー蒸着法(PLD法)により500nm厚のCeO(キャップ層)を成膜した。次いでCeO層上にPLD法により2.0μm厚のGdBaCu7−δ(酸化物超電導層)を形成した。
さらに酸化物超電導層側からスパッタ法により酸化物超電導層上に2μm厚のAgからなる層を形成し、さらに基材の裏面側からスパッタ法により基材上に2μm厚のAgからなる層を形成することで、横断面全周に保護層(第1の安定化層)を形成した酸化物超電導線材を得た。なお、成膜圧力を0.1Pa、成膜ガスをArとした。
次に500℃で10時間、酸素雰囲気中において酸素アニール処理を行い、26時間の炉冷却後に取り出した。
上述の手順を経て得た酸化物超電導線材を各実施例及び比較例において3本用意し、うち1本を接続用酸化物超電導線材Cとし、長さ100mmに切断し、残る2本の酸化物超電導線材のうち一方を第1の酸化物超電導線材Aとし、他方を第2の酸化物超電導線材Bとした。
これらの酸化物超電導線材A、B、Cを以下の実施例及び比較例で共通して使用する。
(実施例1)
上述の第1及び第2の酸化物超電導線材A、B並びに接続用酸化物超電導線材Cの各端部にスパッタ法により5μm厚のAgからなる先端被覆層を形成した。(成膜条件:成膜圧力0.1Pa、成膜ガスAr)
次いで、この線材を上述と同様の条件において酸素アニール処理を行い、さらにこの酸化物超電導線材の外周及び長手方向端部を電解めっきによりCuからなるめっき被覆層(第2の安定化層)によって覆い、実施例1に係る酸化物超電導線材(図2の被覆酸化物超電導線材1)を作製した。
これ等の第1及び第2の酸化物超電導線材の端部同士を50mm離間して隣接させ、当該端部を跨るように接続用酸化物超電導線材を橋渡しし、各酸化物超電導線材を半田により接続し、実施例1の接続構造体(図5の接続構造体30)を作製した。
(実施例2)
上述の第1及び第2の酸化物超電導線材A、B並びに接続用酸化物超電導線材Cの各端部にスパッタ法により5μm厚のAgからなる先端被覆層を形成した。(成膜条件:成膜圧力0.1Pa、成膜ガスAr)
次いで、この線材を上述と同様の条件において酸素アニール処理を行い、さらにこの酸化物超電導線材の横断面外周部及び長手方向端部をCu製の金属テープ(第2の安定化層)及びCu製の金属箔によって覆い、実施例2に係る酸化物超電導線材(図3及び図4(b)の被覆酸化物超電導線材2)を作製した。
これ等の第1及び第2の酸化物超電導線材の端部同士を50mm離間して隣接させ、当該端部を跨るように接続用酸化物超電導線材を橋渡しし、各酸化物超電導線材を半田により接続し、実施例2の接続構造体(図6の接続構造体31)を作製した。
(実施例3)
上述の実施例2に示した接続構造体に、さらに各酸化物超電導線材の端部を覆い一方の酸化物超電導線材から他方の酸化物超電導線材を跨ぐCuからなる箔状の補強部材を接着層(半田)を介して接続し実施例3の接続構造体(図7の接続構造体32)を作製した。
(比較例1)
上述の第1及び第2の酸化物超電導線材A、B並びに接続用酸化物超電導線材Cの外周及び長手方向端部を電解めっきによりCuからなるめっき被覆層(第2の安定化層)によって覆い、比較例1に係る酸化物超電導線材を作製した。
これ等の第1及び第2の酸化物超電導線材の端部同士を50mm離間して隣接させ、当該端部を跨るように接続用酸化物超電導線材を橋渡しし、各酸化物超電導線材を半田により接続し、比較例1の接続構造体を作製した。
なお、比較例1の接続構造体は、実施例1の接続構造体と類似した構成を有し、各線材の端部が先端被覆層によって覆われていない点に相違点を有する。
(比較例2)
上述の第1及び第2の酸化物超電導線材A、B並びに接続用酸化物超電導線材Cの横断面外周部及び長手方向端部をCu製の金属テープ(第2の安定化層)及びCu製の金属箔によって覆い、比較例2に係る酸化物超電導線材を作製した。
これ等の第1及び第2の酸化物超電導線材の端部同士を50mm離間して隣接させ、当該端部を跨るように接続用酸化物超電導線材を橋渡しし、各酸化物超電導線材を半田により接続し、比較例2の接続構造体を作製した。
なお、比較例2の接続構造体は、実施例2の接続構造体と類似した構成を有し、各線材の端部が先端被覆層によって覆われていない点に相違点を有する。
(プレッシャークッカー試験)
実施例1〜3並びに比較例1、2に対して、高温(120℃)・高湿(100%)・高圧力(2気圧)下に100時間放置するプレッシャークッカー試験を行い、その前後での臨界電流値及び接続抵抗値の比を測定した。放置前の臨界電流値(Ic)に対する放置後の臨界電流値(Ic)の比をIc/Icとし、放置前の接続抵抗値(R)に対する放置後の接続抵抗値(R)の比をR/Rとして、表1に測定結果を示す。
なお、各実施例及び比較例は5個のサンプルを用意し測定を行い、各サンプルの平均値をとった。
なお、このような過酷な試験条件において、Ic/Ic≧0.95であり、R/R≦2.0であれば、実使用において殆ど劣化は起こらないものと考えられる。
Figure 2014154331
実施例1〜3においては、Ic/Ic≧0.95であり、R/R≦2.0である。即ち、プレッシャークッカー試験によって、臨界電流値の低下は少なく、また接続抵抗値の上昇が少なく、大きな劣化が起こらないことが確認された。即ち、各接続構造体に水分が浸入することが抑制できた。
一方比較例1、2においては、プレッシャークッカー試験後に臨界電流値並びに接続抵抗値が著しく劣化している。これは、プレッシャークッカー試験において酸化物超電導層に水分が浸入し劣化したためと考えられる。
(引張強度試験)
次に、実施例2及び実施例3の接続構造体の接続部における引張強度を測定した。
接続構造体を有する酸化物超電導線材の両端を保持し引張試験機により引張強度試験を行い、破断した応力を測定した。
各実施例は5個のサンプルを用意し測定を行い、各サンプルの平均値をとった結果を表2に示す。
Figure 2014154331
実施例3の接続構造体は、全てのサンプルにおいて接続部以外の部分が破断した。表2に示す実施例3の引張強度は、接続部以外の破断が起きた際の応力であり、接続部はこれ以上の強度を有すると考えられる。
この結果から、補強部材により補強することにより、接続構造体の強度を高めることができることが確認された。
1、2…被覆酸化物超電導線材(酸化物超電導線材)、2a、4a、5a、6a、6b、7a、8a、9a、9b、15a、16b…端部、2b、15b、16a…横断面外周部、4、7…第1の酸化物超電導線材、5、8…第2の酸化物超電導線材、6、9…接続用酸化物超電導線材、10…基材、11…中間層、12…酸化物超電導層、13…保護層(第1の安定化層)、13a…外周層、13b…先端被覆層、15…酸化物超電導線材、16…酸化物超電導積層体、17…めっき被覆層(第2の安定化層)、18…金属テープ(第2の安定化層)、19、43…半田層、22…導電性接合材、30、31、32…接続構造体、44…金属箔、45…補強部材、46…接着層

Claims (4)

  1. テープ状の基材と中間層と酸化物超電導層とを備えた酸化物超電導積層体と、
    少なくとも前記酸化物超電導層を覆う安定化層と、からなる酸化物超電導線材であって、
    前記酸化物超電導積層体の長手方向端部がAgを含む先端被覆層により覆われていることを特徴とする酸化物超電導線材。
  2. 請求項1に記載の酸化物超電導線材同士が接続された酸化物超電導線材の接続構造体であって、
    前記酸化物超電導線材のうち一方を第1の酸化物超電導線材とし、他方を第2の酸化物超電導線材とし、前記第1及び第2の酸化物超電導線材に加え、これらと同構造を有する接続用酸化物超電導線材を備え、
    前記長手方向端部同士を隣接して対向配置された前記第1及び第2の酸化物超電導線材を跨るように前記接続用酸化物超電導線材が橋渡しして配置され、
    前記第1の酸化物超電導線材と前記接続用酸化物超電導線材の前記安定化層同士が導電性接合材により接合され、
    前記第2の酸化物超電導線材と前記接続用酸化物超電導線材の前記安定化層同士が導電性接合材により接合されていることを特徴とする酸化物超電導線材の接続構造体。
  3. 前記第1の酸化物超電導線材と前記接続用酸化物超電導線材、又は前記第2の酸化物超電導線材と前記接続用酸化物超電導線材の接合部において、
    一方の酸化物超電導線材の長手方向端部を覆うように、一方の酸化物超電導線材から他方の酸化物超電導線材を跨ぐ補強部材が接着層を介して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の酸化物超電導線材の接続構造体。
  4. テープ状の基材と中間層と酸化物超電導層とを備えた酸化物超電導積層体を用い、
    前記酸化物超電導積層体の長手方向端部にスパッタ法によりAgを含む先端被覆層を成膜した後に、酸素アニール処理を行う工程を有することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
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CN109564801A (zh) * 2016-08-09 2019-04-02 株式会社藤仓 氧化物超导线材

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