以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図1(a)(b)乃至図4は本発明の耐熱容器の実施の一形態を示すものである。
すなわち、上記本発明の耐熱容器は、図1(a)(b)に符号1で示すもので、容器本体2と、該容器本体2の上端開口部を閉塞させる蓋体3とから構成されている。
上記蓋体3は、金属製の外板として、図1(a)(b)及び図2に示すように、方形(図では正方形)の平板状の天井部5と、該天井部5の二組の対辺のうちの一方の組の対辺の位置より下方に屈曲する一対の蓋側壁部6とからなり、且つ下端側が開放された樋形状の蓋外板4を備える。
上記蓋外板4の各蓋側壁部6の内面には、水平方向に或る間隔を隔てた2個所に、内向きに突出する保持部材7が設けてあり、該各保持部材7の上側に、後述するように該蓋外板4の内側に配置させる蓋用断熱部材8の外周縁部を、後述する係止用突部9を介し係止させて保持できるようにしてある。
上記蓋用断熱部材8は、上記蓋外板4の天井部5よりもやや小さい方形の平板状としてある。更に、上記蓋用断熱部材8には、方形の平面形状の外周縁部となる四辺のうち、該蓋用断熱部材8を上記蓋外板4の内側に配置させる際に各蓋側壁部6に臨む配置となる一組の対辺の外側に、外向きに突出する係止用突部9が、それぞれ対応する辺の全長に亘り設けられた構成としてある。これにより、上記蓋用断熱部材8は、上記蓋外板4の各蓋側壁部6が存在しない側の外側から、上記各係止用突部9を上記各蓋側壁部6の内面の各保持部材7の上側に引っ掛けた状態でスライドさせる操作により、上記蓋外板4の内側に配置させることができるようにしてあり、この状態で、上記蓋外板4の内側に上記蓋用断熱部材8を取外し可能に保持させてなる組立て構造の上記蓋体3を形成できるようにしてある。
上記蓋体3における上記蓋外板4の内側に配置させた上記蓋用断熱部材8の上面と、上記蓋外板4の天井部5の下面との間には、上下方向に或る寸法Dを有する隙間10が形成されるように、上記蓋外板4に設けた各保持部材7の上下方向の配置と、上記蓋用断熱部材8の外周縁部における各係止用突部9の上下方向の配置が設定されている。
なお、本発明の耐熱容器1において、外部となるのは、上記蓋体3の上側であり、容器内部となるのは該蓋体3の下側である。よって、本発明の耐熱容器1を連続加熱炉(図示せず)に投入した場合、上記蓋体3は、上方から下方へ向けて入熱が生じるようになる。この際、上記蓋体3にて蓋外板4と蓋用断熱部材8との間に設けた隙間10では、内部に存在している空気が上方から加熱されるようになるため、この加熱された空気の密度が低くなって浮力が生じても、該隙間10内で空気の自然対流が生じることはない。よって、上記隙間10の寸法Dは、空気の自然対流熱伝達を考慮する必要がないため、上記蓋外板4より上記蓋用断熱部材8への空気を介した熱伝導の抑制が有利になるという観点から考えると、本発明の耐熱容器1全体の高さ寸法より自ずから導かれる制限内で、できるだけ大きな寸法に設定することが望ましい。
更に、上記蓋用断熱部材8は、上記のようにして蓋外板4の内側に保持させた状態のときに、該蓋用断熱部材8の下面の上下方向位置が、上記蓋外板4の各蓋側壁部6の下端と揃うように設定してあるものとする。
又、上記蓋用断熱部材8は、シリカボードや、その他の断熱材として一般的に使用されている断熱材料を用いるようにしてあるものとする。なお、上記断熱材料が、上記した蓋用断熱部材8の形状に成形可能であり、且つ該成形物に、割れ、欠け、削れ等の損傷が容易に生じないような強度及び剛性を付与することが可能な場合は、上記蓋用断熱部材8は、上記断熱材料を成形してなるものとすればよい。一方、上記断熱材料が、成形物としても割れ、欠け、削れ等の損傷を防止するための十分な強度や剛性が得られない場合や、上記蓋用断熱部材8に所望される形状への成形自体が困難な場合は、図1(b)に示すように、上記蓋用断熱部材8は、所望される外形に合わせて成形した中空の殻部材11により断熱材料12を被覆してなる構成として、上記殻部材11によって該蓋用断熱部材8に所望される強度及び剛性を担保させるようにすればよい。
上記容器本体2は、金属製の外板として、図1(a)(b)及び図3に示すように、上記蓋体3の天井部と対応する方形の平板状の底板部14と、該底板部14の各辺の位置より上向きに立ち上がる容器側壁部15a,15bとからなり、且つ中空で、上端側が開放された略直方体形状の容器外板13を備える。
上記容器外板13にて互いに対向する二組の容器側壁部15aと15bのうち、一方の組の容器側壁部15aは、他方の組の容器側壁部15bの上端の位置より、上記蓋外板4の各蓋側壁部6の上下方向寸法に対応する分、上方に突出するようにしてある。これにより、上記容器外板13は、上記他方の組の容器側壁部15bの上側に、上記蓋外板4の各蓋側壁部6を載置することにより、上記一方の組の容器側壁部15aの突出部分(図3に示した一点鎖線よりも上方の部分)により、上記蓋外板4における各蓋側壁部6の両端部同士の間を塞ぐことができるようにしてある。
又、上記容器外板13には、上記底板部14の外周縁における複数個所、たとえば、上記蓋体3の各保持部材7と上下方向に対応する配置となる4個所に、保持部材16が設けてあり、該各保持部材16の上側に、後述するように該容器外板13の内側に配置させる容器用断熱部材17の外周縁部の対応する個所を載置させて保持できるようにしてある。
上記容器用断熱部材17は、平面形状を上記蓋用断熱部材8と対応する方形とした平板状の底板18と、該底板18の周縁部より上方に立ち上がる四方の側壁19とからなり、上端側が開放された中空立方体形状としてある。
更に、上記容器用断熱部材17には、該容器用断熱部材17を上記容器外板13の内側に配置させる際に上記各保持部材16に臨む配置となる上記底板18の一組の対辺の外側に、外向きに突出する係合用突部20が設けられた構成としてある。これにより、上記容器用断熱部材17は、上記容器外板13の内側へ上方より挿入することで、上記各保持部材16の上側に、上記係合用突部20を受けさせた状態で配置できるようにしてあり、この状態で、上記容器外板13の内側に上記容器用断熱部材17を取外し可能に保持させてなる組立て構造の上記容器本体2を形成できるようにしてある。
上記容器本体2における上記容器外板13の内側に配置させた上記容器用断熱部材17の下面と、上記容器外板13の底板部14の上面との間には、上記各保持部材16の高さ寸法に対応して隙間21が形成されている。隙間21の寸法Lについては、以下のように設定してある。
すなわち、上記容器本体2では、本発明の耐熱容器1の外部となるのは該容器本体2の下側及び周方向の外側であり、一方、容器内部となるのは、該容器本体2の内側である。よって、本発明の耐熱容器1を連続加熱炉(図示せず)で使用する場合、上記容器本体2では、主として下方から上方へ向けて入熱が生じるようになる。よって、上記容器本体2にて上記容器外板13と容器用断熱部材17との間に設けられた隙間21では、内部に存在している空気が下方から加熱されるようになる。
このため、通常であれば、上記隙間21では、下端側で暖められた空気(気体)の密度が低くなって浮力が生じて上端側へ移動し、その後、上端側で冷却されて下降する自然対流(ベナール・セル)が生じるようになり、上記容器外板13から上記容器用断熱部材17への自然対流熱伝達が生じるようになってしまう。
そこで、本発明の耐熱容器1では、上記隙間21の寸法Lを、グラスホフ数(Gr)とプラントル数(Pr)との積の値を基に設定して、上記したような空気の自然対流の発生を防止するようにしてある。
上記グラスホフ数(Gr)は、自然対流の駆動力を表す無次元数で、空気層の温度が一定ならば、外界との温度差ΔT、及び、上記隙間21の寸法Lに対して、次式の関係がある。
Gr ∝ ΔT×L3
又、上記プラントル数(Pr)は、流体に固有の値を取る物性値であり、空気であれば、0.7程度である。
上記ベナール・セルと云われる自然対流の発生条件は、Pr・Grが1700を超える場合であり、よって、上記外界との温度差ΔTが大きいほど、あるいは、上記隙間21の寸法Lが大きいほど、上記グラスホフ数が大きくなり、上記Pr・Grの値で規定されるベナール・セルの発生条件を超えやすくなる。
図4は、外界が空気の場合におけるPr・Grの計算値であり、高温側温度とPr・Grの値の関係を示すグラフである。なお、低温側温度は50℃としてある。
上記図4からは、たとえば、上記隙間21の寸法Lを3mmに設定すれば、外界の温度が500℃であっても、上記Pr・Grが1700を超えることはないため、上記隙間21における空気の自然対流(ベナール・セル)の発生を抑制できることが分かる。
なお、上記Pr・Grの計算値は、本発明の耐熱容器1の外界、すなわち、本発明の耐熱容器1を使用する連続加熱炉の雰囲気や、使用温度等の条件に応じて、必ずしも図4に示したものに一致しない。よって、本発明の耐熱容器1は、設計する際に、予め使用予定の連続加熱炉の条件に応じて上記Pr・Grの計算式を求め、該Pr・Grの値が1700を超えないように、上記隙間21の寸法Lを設定するようにすればよい。
更に、上記容器用断熱部材17は、上記したように容器外板13の内側に保持させた状態で、該容器用断熱部材17の各側壁19の上端の上下方向位置が、上記容器外板13の他方の組の容器側壁部15bの上端と揃うように設定してある。これにより、前記したように容器外板13の上方に蓋外板4を載置して、容器本体2の上側に蓋体3を配置させた状態では、図1(b)に示すように、上記容器用断熱部材17の各側壁19の上端に、上記蓋体3の蓋用断熱部材8の周縁部の下面を密着させて、該容器用断熱部材17の底板18及び各側壁19と蓋用断熱部材8とに囲まれた内側に、図示しないデータロガー等を収容するための収容空間22が形成されるようにしてある。
又、上記容器用断熱部材17は、上記蓋用断熱部材8と同様に、使用する断熱材料の成形性や、成形物の強度や剛性に応じて、断熱材料の成形物、あるいは、図1(b)に示すように、該容器用断熱部材17に所望される外形に合わせて成形した中空の殻部材23により断熱材料12を被覆してなる構成とすればよい。
なお、図示してないが、上記容器用断熱部材17又は蓋用断熱部材8のいずれか一方と、上記容器外板13又は蓋外板4のいずれか一方には、容器外部に露出させて配置するセンサを上記収容空間22に収容する図示しないデータロガーに接続するための配線を通して配置するための切り欠きや孔が設けてある。24は本発明の耐熱容器1のハンドリングを容易にするために容器本体2に設けたハンドルである。
以上の構成としてある本発明の耐熱容器1を使用する場合は、先ず、容器外板13に容器用断熱部材17を取り付けて容器本体2を組立てる。又、蓋外板4には、蓋用断熱部材8を取り付けて蓋体3を組立てる。
次に、上記容器本体2では、容器外部に配置するセンサに接続したデータロガー(図示せず)を、容器用断熱部材17の内側に配置し、その後、該容器本体2の上側に、上記蓋体3を載置して、上記データロガーを収容空間22に収容した状態の本発明の耐熱容器1を形成させる。
その後、上記本発明の耐熱容器1は、図示しない連続加熱炉で使用すると、上記センサによる加熱処理の計測結果が、上記収容空間22に収容してあるデータロガーに、履歴として記録されるようになる。
この際、上記連続加熱炉にて、本発明の耐熱容器1の上側に配置された熱源からの入熱は、上記蓋体3を経て上記収容空間22へ向かうようになるが、この際、上記蓋外板4と、蓋用断熱部材8との間に設けてある隙間10では、空気の自然対流が生じないため、自然対流熱伝達が抑制される。
又、上記蓋用断熱部材8は、上記蓋外板4より各保持部材7を介して熱伝導を受けるようになるが、該蓋用断熱部材8では、上記各保持部材7と接触する部分が外周縁部の一部のみとされているため、該接触部分の面積が大幅に制限されている。
以上により、上記蓋用断熱部材8では、入熱が抑制されると共に、該蓋用断熱部材8を構成している断熱材料12の断熱性能による内外方向の断熱が行われるため、該蓋用断熱部材8を通して上記収容空間22へ進入する熱量は大幅に抑制できる。
一方、上記連続加熱炉にて、本発明の耐熱容器1の下側に配置された熱源からの入熱は、上記容器本体2を経て上記収容空間22へ向かうようになるが、この際、上記容器外板13と、容器用断熱部材17との間に設けてある隙間21は、前記したように空気の自然対流の発生を抑えることができるような寸法Lに設定してあるために、この隙間21においても、自然対流熱伝達が抑制される。
又、上記容器用断熱部材17は、上記容器外板13より各保持部材16を介して熱伝導を受けるようになるが、該容器用断熱部材17では、上記各保持部材16と接触する部分が外周縁部の一部のみとされているため、該接触部分の面積が大幅に制限されている。
以上により、上記容器用断熱部材17では、入熱が抑制されると共に、該容器用断熱部材17を構成している断熱材料12の断熱性能による内外方向の断熱が行われるため、該容器用断熱部材17を通して上記収容空間22へ進入する熱量は大幅に抑制できる。
このように、本発明の耐熱容器1によれば、容器外部の上下方向の熱源から、上記容器用断熱部材17と蓋用断熱部材8に囲まれた収容空間22まで達する入熱を大幅に制限することができるため、該収容空間22を、容器外部の熱に対する耐熱性の高い空間とすることができて、該収容空間22に収容してあるデータロガーを熱から保護することができる。
又、上記蓋体3は、蓋外板4と蓋用断熱部材8とからなる組立て構造としてあるため、使用後に分解することで、該蓋外板4と蓋用断熱部材8の外気に曝される面積を拡大させることができて、速やかに冷却させることができる。
同様に、上記容器本体2は、容器外板13と容器用断熱部材17とからなる組立て構造としてあるため、使用後に分解することで、該容器外板13と容器用断熱部材17の外気に曝される面積を拡大させることができて、速やかに冷却させることができる。
したがって、本発明の耐熱容器1は、連続加熱炉で使用した後であっても、速やかに冷却して再使用することが可能になる。
更に、上記蓋体3は、蓋外板4と蓋用断熱部材8との組立て構造としてあることから、上記蓋外板4と蓋用断熱部材8のいずれか一方に劣化や損傷が生じた場合は、分解して劣化や損傷が生じた蓋外板4又は蓋用断熱部材8の一方のみを交換することができる。
又、同様に、上記容器本体2は、容器外板13と容器用断熱部材17との組立て構造としてあることから、上記容器外板13と容器用断熱部材17のいずれか一方に劣化や損傷が生じた場合は、劣化や損傷が生じた容器外板13又は容器用断熱部材17の一方のみを交換することができる。
次に、図5(a)(b)は本発明の実施の他の形態として、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態の応用例を示すものである。
すなわち、本実施の形態の耐熱容器1は、図1(a)(b)乃至図3に示したと同様の構成において、蓋体3における蓋外板4に設けた各保持部材7と、その上側に係止させる蓋用断熱部材8の係止用突部9との間に、部材同士の熱伝導に関与する接触面積を低減させるための接触面積低減部材25を介装させた構成としてある。
上記接触面積低減部材25は、たとえば、横方向に延びる三角柱形状としてあり、図5(a)に示すように、該三角柱形状における或る1つの側面を、上記保持部材7の上面に取り付けると共に、上記1つの側面に隣接しない1つの側稜(側辺)を、上記蓋用断熱部材8の係止用突部9の下面に接触させるようにしてある。
かかる構成によれば、上記蓋体3においては、蓋外板4の熱が各保持部材7から上記接触面積低減部材25を経て上記蓋用断熱部材8へ熱伝導されるようになるが、この際、上記接触面積低減部材25と、上記蓋用断熱部材8の係止用突部9との接触部分が線接触となるため、上記熱伝導に関与する接触面積は小さく制限される。
又、上記接触面積低減部材25は、図5(b)に示すように、三角柱形状における或る1つの側面を、上記蓋用断熱部材8の係止用突部9の下面における上記各保持部材7と対応する個所に取り付けると共に、上記1つの側面に隣接しない1つの側稜(側辺)を、それぞれ対応する保持部材7の上面に接触させる構成としてもよい。
かかる構成によれば、上記蓋体3において、蓋外板4の熱が各保持部材7から上記接触面積低減部材25を経て上記蓋用断熱部材8の係止用突部9へ熱伝導される際には、上記各保持部材7と、それに対応する接触面積低減部材25との接触部分が線接触となるため、上記熱伝導に関与する接触面積は小さく制限される。
なお、図5(a)(b)の各実施の形態において、その他の構成は図1(a)(b)及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
したがって、上記図5(a)(b)のいずれの構成においても、上記図1(a)(b)乃至図4の実施の形態と同様の効果に加えて、上記蓋体3における上記蓋外板4から蓋用断熱部材8への熱伝導による入熱を更に抑制することができることから、該蓋用断熱部材8を通して収容空間22へ進入する熱量をより抑制できて、該収容空間22の容器外部の熱に対する耐熱性の向上化を図ることができる。
次いで、図6(a)(b)は本発明の実施の更に他の形態として、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態の別の応用例を示すものである。
すなわち、本実施の形態の耐熱容器1は、図1(a)(b)乃至図3に示したと同様の構成において、容器本体2における容器外板13に設けた各保持部材16と、その上側に載置させる容器用断熱部材17の係合用突部20との間に、部材同士の熱伝導に関与する接触面積を低減させるための接触面積低減部材26を介装させた構成としてある。
上記接触面積低減部材26は、たとえば、横方向に延びる三角柱形状として、図6(a)に示すように、該三角柱形状における或る1つの側面を、上記保持部材16の上面に取り付けると共に、上記1つの側面に隣接しない1つの側稜(側辺)を、上記容器用断熱部材17の係合用突部20の下面に接触させるようにしてある。
かかる構成によれば、上記容器本体2においては、容器外板13の熱が各保持部材16から上記接触面積低減部材26を経て上記容器用断熱部材17へ熱伝導されるようになるが、この際、上記接触面積低減部材26と、上記容器用断熱部材17の係合用突部20との接触部分が線接触となるため、上記熱伝導に関与する接触面積は小さく制限される。
又、上記接触面積低減部材26は、図6(b)に示すように、三角柱形状における或る1つの側面を、上記容器用断熱部材17の係合用突部20の下面における上記各保持部材16と対応する個所に取り付けると共に、上記1つの側面に隣接しない1つの側稜(側辺)を、それぞれ対応する保持部材16の上面に接触させる構成としてもよい。
かかる構成によれば、上記容器本体2において、容器外板13の熱が各保持部材16から上記接触面積低減部材26を経て上記容器用断熱部材17の係合用突部20へ熱伝導される際には、上記各保持部材16と、それに対応する接触面積低減部材26との接触部分が線接触となるため、上記熱伝導に関与する接触面積は小さく制限される。
なお、図6(a)(b)の各実施の形態において、その他の構成は図1(a)(b)及び図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
したがって、上記図6(a)(b)のいずれの構成においても、上記図1(a)(b)乃至図4の実施の形態と同様の効果に加えて、上記容器本体2における上記容器外板13から容器用断熱部材17への入熱を更に抑制することができることから、該容器用断熱部材17を通して収容空間22へ進入する熱量をより抑制できて、該収容空間22の容器外部の熱に対する耐熱性の向上化を図ることができる。
なお、上記図5(a)(b)の実施の形態、及び、図6(a)(b)の実施の形態では、上記三角柱形状の接触面積低減部材25,26の断面は、図示した以外の三角形としてもよい。又、上記接触面積低減部材25,26は、三角柱を例示したが、上端面と下端面のいずれか一方が、上記蓋用断熱部材8の係止用突部9、又は、容器用断熱部材17の係合用突部20に線接触するようにしてあれば、断面が半円形、半楕円形等で、水平方向に延びる柱状のものとしてもよい。更には、上記接触面積低減部材25,26は、上端面と下端面のいずれか一方が、他方に比して面積が減少する形状としてあれば、断面が台形、半円形、半楕円形等で、水平方向に延びる柱状のものとしてもよく、又、片方が点接触となるような角錐形状や円錐形状としてもよい。
更に、上記接触面積低減部材25,26は、上下両端部間での熱抵抗が大きくなるようにするという観点から考えると、断熱材料のような熱抵抗の大きな材料製とすることが望ましい。
更に又、図5(a)の実施の形態の接触面積低減部材25は、対応する保持部材7と一体物としてもよい。同様に、図6(a)の実施の形態の接触面積低減部材26は、対応する保持部材16と一体物としてもよい。
又、図5(b)の実施の形態の接触面積低減部材25は、蓋用断熱部材8の係止用突部9の下面に一体に設けてもよい。同様に、図6(b)の実施の形態の接触面積低減部材26は、容器用断熱部材17の下面に一体に設けてもよい。
なお、断熱材料のような材料自体の熱抵抗で、上下両端部間での大きな熱抵抗を担保することができる任意の形状の介装部材を、上記蓋体3における蓋外板4に設けた各保持部材7と、その上側に係止させる蓋用断熱部材8の係止用突部9との間や、上記容器本体2における容器外板13に設けた各保持部材16と、その上側に載置させる容器用断熱部材17の係合用突部20との間に介装させる構成としてもよいことは勿論である。
更に、図7は本発明の実施の更に他の形態として、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態の更に別の応用例を示すものである。
すなわち、本実施の形態の耐熱容器1は、図1(a)(b)乃至図3に示したと同様の構成において、図1(a)(b)及び図2に示したように蓋外板4の内側に、下面がフラットな蓋用断熱部材8を取り付ける構成に代えて、下面の中央部に凹部27を有する蓋用断熱部材8aを、上記蓋外板4の内側に取り付けて蓋体3を構成するようにしてある。
上記蓋用断熱部材8aの凹部27の平面形状は、容器用断熱部材17の各側壁19の内側の形状に対応した方形としてある。
その他の構成は図1(a)(b)乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
本実施の形態の耐熱容器1によれば、収容空間22の上方での蓋用断熱部材8aの厚み寸法は、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態における蓋用断熱部材8の厚み寸法よりも低下する。このため、本実施の形態の耐熱容器1では、蓋体3側から上記収容空間22への入熱に対する断熱性能は低下するが、上記収容空間22の容積は拡大させることができる。
したがって、上記蓋用断熱部材8aは、図1(a)(b)乃至図3に示した下面がフラットな蓋用断熱部材8と共に予め用意して、共通の蓋外板4に取り付けることができるようにしておけば、本発明の耐熱容器1に作用する熱負荷の大小に応じて、上記蓋用断熱部材8又は8aのいずれか一方を選択して蓋外板4に取り付けることにより、上記収容空間22の容積を変化させることができる。
このため、本実施の形態の上記蓋用断熱部材8aを装備した耐熱容器1は、上方からの熱負荷が小さい条件の連続加熱炉(図示せず)に投入する場合に、上記収容空間22にデータロガー(図示せず)をより多く搭載する、あるいは、より大型で高性能のデータロガー(図示せず)を搭載するといった要望に容易に対応することが可能になる。
ところで、連続加熱炉は、熱源の配置に様々な形式があり、その熱源の配置形式に応じて、本発明の耐熱容器1を投入した場合に該耐熱容器1に作用する熱負荷の方向に偏りが生じる場合がある。
この点に鑑みて、本発明の耐熱容器1は、上記したような熱負荷の作用する方向に偏りが生じる環境で使用する場合は、熱負荷の作用が小さくなる方向を考慮して、図8(a)(b)(c)のような構成としてもよい。
図8(a)は、水平方向の外周側から作用する熱負荷が小さい場合の構成を示すものである。
すなわち、本実施の形態の耐熱容器1は、図1(a)(b)乃至図3に示したと同様の構成において、容器本体2を、底板18と四方の側壁19を有する容器用断熱部材17を備える構成に代えて、上記底板18のみに対応する矩形の平板状の容器用断熱部材17aを、容器外板13の内側に取り付けた構成としたものである。
その他の構成は図1(a)(b)乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
本実施の形態の耐熱容器1によっても、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
又、図8(b)は、下方から作用する熱負荷が小さい場合の構成を示すものである。
すなわち、本実施の形態の耐熱容器1aは、図1(a)(b)乃至図3に示したと同様の構成において、前記した容器本体2に代えて、容器本体の外形を保持するための上端側が開放された直方体状の金属板29と、収容空間22の形状を保持するための上端側が開放された直方体状の金属板30で、断熱材料12を挟んでなる一体構造の容器本体28を用いる構成としたものである。
その他の構成は図1(a)(b)乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
本実施の形態の耐熱容器1aによれば、容器外部の上方の熱源から蓋体3を経て上記収容空間22まで達する入熱は大幅に制限することができるため、該収容空間22を、容器上方の熱源の熱に対して高い耐熱性を有する空間とすることができる。
又、上記蓋体3については、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態と同様に、使用後の速やかな冷却が可能であること、及び、蓋外板4と蓋用断熱部材8のいずれか一方のみに劣化や損傷が生じた場合は、該劣化や損傷が生じたもののみを交換できること、等の効果を得ることができる。
更に、図8(c)は、上方から作用する熱負荷が小さい場合の構成を示すものである。
すなわち、本実施の形態の耐熱容器1bは、図1(a)(b)乃至図3に示したと同様の構成において、図1(b)及び図3に示した蓋体3に代えて、外形を保持するための下端側が開放された直方体状の金属板32の内側に、断熱材料12を取り付けてなる一体構造の蓋体31を用いる構成としたものである。
その他の構成は図1(a)(b)乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
本実施の形態の耐熱容器1bによれば、容器外部の下方の熱源から容器本体2を経て収容空間22まで達する入熱は大幅に制限することができるため、該収容空間22を、容器下方の熱源の熱に対して高い耐熱性を有する空間とすることができる。
又、上記容器本体2については、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態と同様に、使用後の速やかな冷却が可能であること、及び、容器外板13と容器用断熱部材17のいずれか一方に劣化や損傷が生じた場合は、該劣化や損傷が生じたもののみを交換できること、等の効果を得ることができる。
図9(a)(b)は本発明の実施の更に他の形態として、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態における蓋体3の変形例を示すものである。
すなわち、本実施の形態の耐熱容器1の蓋体3は、図1(a)(b)及び図2に示した蓋体3と同様の構成において、蓋外板4の内側に前記所定の寸法Dの隙間10を隔てて配置した蓋用断熱部材8を、前記した保持部材7に代えて、保持部材としてのボルト33とナット34を介して上記蓋外板4に取り付けた構成としてある。
上記取付構造を実施する場合は、図9(b)に示すように、上記蓋用断熱部材8の各係止用突部9に、長手方向の或る間隔の複数個所にボルト挿通孔35を穿設する。
又、上記蓋外板4の天井部5には、上記蓋用断熱部材8の各ボルト挿通孔35と対応する個所に、それぞれボルト挿通孔36を穿設する。
上記蓋外板4と蓋用断熱部材8の対応するボルト挿通孔36と35の周縁部同士の間には、上記隙間10の寸法Dを保持するための断熱材製のスリーブ形状の間隔保持部材37を配置する。
この状態で、上記蓋外板4と蓋用断熱部材8の対応するボルト挿通孔36と35に、首下部に断熱材製の座金状の環状部材38を嵌めた状態のボルト33を、上方から挿通させて配置すると共に、該ボルト33の下端側に、上記と同様の環状部材38を嵌めてからナット34を締め込むようにすればよい。これにより、上記蓋外板4と蓋用断熱部材8の間、蓋外板4とボルト33との間、蓋用断熱部材8とナット34との間には、それぞれ断熱材製の部材37,38が介装されるようにして、上記蓋外板4から蓋用断熱部材8への上記ボルト33とナット34を介した熱伝導を抑制できるようにしてある。
その他の構成は図1(a)(b)及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
以上の構成としてある本実施の形態の蓋体3を用いた耐熱容器1は、図1(a)(b)乃至図4の実施の形態と同様に使用して、同様の効果を得ることができる。
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の耐熱容器1の平面形状は、正方形以外に長方形としてもよい。又、収容空間22の平面形状も、周囲に設ける断熱材料の厚み寸法に応じて、正方形以外の長方形としてもよい。
又、各図に示した本発明の耐熱容器1,1a,1bの各部の寸法や寸法比は、図示するための便宜上のもので、実際の寸法や寸法比を必ずしも反映したものではない。
図5(a)又は(b)の実施の形態と、図6(a)又は(b)の実施の形態は併用してよい。
図7の実施の形態には、図5(a)(b)の実施の形態と、図6(a)(b)の実施の形態を、単独で又は併用して適用してもよい。
図8(a)の実施の形態には、図5(a)(b)の実施の形態と、図6(a)(b)の実施の形態を、単独で又は併用して適用してもよい。この際、蓋体3にて保持部材7と蓋用断熱部材8の係止用突部9との間に介装させる接触面積低減部材25を、上下方向寸法が異なる接触面積低減部材25に交換することで、蓋外板4と上記蓋用断熱部材8との間に形成する隙間10の寸法Dを調整可能としてもよい。同様に、容器本体2にて保持部材16と容器用断熱部材17aの係合用突部20との間に介装させる接触面積低減部材26を、上下方向寸法が異なる接触面積低減部材26に交換することで、容器外板13と上記容器用断熱部材17との間に形成する隙間21の寸法Lを調整可能としてもよい。
図8(b)の実施の形態には、図5(a)(b)の実施の形態を適用してもよい。図8(c)の実施の形態には、図6(a)(b)の実施の形態を適用してもよい。
又、図7の実施の形態、図8(a)(b)の各実施の形態には、図9(a)(b)の実施の形態のボルト33とナット34による蓋用断熱部材8の取付手法を適用してもよい。
更に、図8(a)の実施の形態に、図9(a)(b)の実施の形態を適用する場合は、蓋外板4と上記蓋用断熱部材8との間に配置する間隔保持部材37を、上下方向寸法が異なる間隔保持部材37に交換することで、蓋外板4と上記蓋用断熱部材8との間に形成する隙間10の寸法Dを調整可能としてもよい。
図9(a)(b)の実施の形態では、間隔保持部材37はボルト33を挿通させるスリーブ形状のものとして示したが、蓋外板4と蓋用断熱部材8との間に形成する隙間10の寸法Dに対応する上下方向寸法を備えていれば、スリーブ形状以外の任意の形状のものを用いてよく、又、配置も適宜変更してもよい。
図1(a)(b)乃至図4の実施の形態、図5(a)(b)の実施の形態、図7の実施の形態及び図8(a)(b)の実施の形態では、蓋外板4に設ける保持部材7は、水平方向に3つ以上配列して設けた構成としてもよく、又、水平方向に延びる1つの保持部材7を設ける構成としてもよい。
図1(a)(b)乃至図4の実施の形態、図6(a)(b)の実施の形態、図7の実施の形態及び図8(a)及び(c)の実施の形態では、容器外板13に設ける保持部材16は、水平方向に3つ以上配列して設けた構成としてもよく、又、水平方向に延びる1つの保持部材16を設ける構成としてもよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。