本明細書中、以下の語句は、文脈において異なることを示さない限り、以下に示すことを示す。
本明細書中「化合物A」は、(S)−5−アミノメチル−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−2、3−ジヒドロ−2−チオキソ−1H−イミダゾール、(R)−5−アミノメチル−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−2、3−ジヒドロ−2−チオキソ−1H−イミダゾール、及びそれらの混合物、それらの薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩を含む。ある態様では、ネピカスタット((S)−5−アミノメチル−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−2、3−ジヒドロ−2−チオキソ−1H−イミダゾール塩酸塩)が用いられる。
本明細書中「化合物B」は、(R)−5−アミノメチル−l−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−2、3−ジヒドロ−2−チオキソ−1H−イミダゾール、それらの薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩を意味する。
「薬学的に許容される塩」は、無機酸塩、例えば塩酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルフィン酸塩、硝酸塩、及び同様の塩;有機酸塩、例えばリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、及びアルカン酸塩、例えば酢酸塩、HOOC−(CH2)n−COOH(n=0−4)、及び同様の塩を含む。
加えて、化合物が酸付加塩として得られた場合には、遊離の塩基は、酸性塩の溶液をアルカリ性にすることにより容易に得られる。逆に、生成物が遊離の塩基の場合、付加塩、特に薬学的に許容される塩は、適切な有機溶媒及び溶液を酸性にすることにより、塩基性の化合物から、従来の手順と同様の手順で酸付加塩が得られる。当該技術分野において通常の知識を有する者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を合成するのに用いられる様々な合成方法を理解できるであろう。
本明細書中、用語「患者」とは、ホ乳類を示す。ある実施態様中では、用語「患者」は、ヒトを示す
用語「投与する(administer)」「投与すること(administering)」又は「投与(administration)」とは、本明細書中、患者に化合物Aを直接投与すること又はその医薬組成物を投与することを示す。
用語「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」とは、本明細書中、病態又は少なくとも一つの症状を、部分的に又は完全に和らげる、阻害する、妨げる、改善する、及び/又は、緩和することをいう。
用語「罹っている(suffer)」又は「罹っていること(suffering)」とは、本明細書中、患者の一つ以上の診断された又は疑われている病態をいう。
用語「罹る可能性がある(susceptible)」とは、本明細書中、少なくとも一つの病態の症状を示す可能性があることをいう。
当該分野における通常の技術を有する者であれば、理解できることであるが、「物質乱用」は、しばしば、身体的及び/又は精神的に「依存」症状が関わる。また、物質乱用の場合に、依存症の個体からやめさせると、その個体はしばしば、睡眠及び気分障害及び乱用していた薬物への激しい渇望を含む特定の症状を示し、これは「離脱」として知られている。本明細書中に記載する方法は、薬物乱用それ自体、依存、及び離脱の治療を含む。
用語「物質乱用」とは本明細書中、精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th Ed. Text revision(2000))(「DSM−IV TR」)に記載された基準を参照し定義することができ、これは米国精神医学会、DSM−IV作成委員会が作成した。物質乱用の特徴は、物質の繰り返し使用に関連する再発及び顕著な有害作用から生じる不適切な物質の使用パターンである。DSM−IV TRに引用されているように、物質乱用とは、以下の少なくとも一つの症状を12ヶ月以内に引き起こす、臨床的に著しい障害又は苦痛につながる物質乱用と定義できる。その症状とは、(1)職場、学校、又は家庭において義務の重要な役割を履行することができないことによる物質の使用の再発;(2)身体的に有害な状況における物質の使用の再発;(3)物質に関連した法的な問題による再発;及び(4)乱用物質の影響により社会的又は対人的な問題が継続又は再発しているにもかかわらず継続的な物質の使用を継続すること、である。加えて、DSM−IV TRでは、物質乱用は、物質依存の基準にはなかった症状を必要としている。ある態様では、物質乱用の患者にネピカスタットを投与することにより、患者の乱用物質の使用量又は頻度が減少する。ある態様では、化合物Aを患者に投与することにより、少なくとも一つの物質乱用の症状を軽減する。例えば、これに限られるものではないが、多幸感、無気力、興奮、無謀さ、判断力の低下、衝動強迫、攻撃性、怒り、乱用してきた物質の渇望、及び気分障害がある。ある態様では、化合物Aを投与することにより、患者にとってストレスのたまる出来事による乱用物質の渇望を減少させることができる。
本明細書中、用語「症状を軽減する」とは、少なくとも一つの患者の病態の症状の頻度及び大きさを減少することを示す。特定の具体例では、患者は回復に向かい、もはや症状がなくなる。
本明細書中、用語「症状を増加させる」とは、少なくとも一つの患者の病態の頻度及び重篤性を増加させることを示す。
用語「物質依存」とは、本明細書中、DSM−IV TRに記載された基準を参照し定義することができる。DSM−IV TRに記載された物質依存の症状とは、以下の群から選択される少なくとも三つの症状を同じ12ヶ月の期間以内に同時に引き起こす、臨床的に著しい障害及び苦痛へとつながる物質の使用パターンと定義できる。その症状とは、(1)(a)望ましい効果を得るために実質的に物質の量が増加したことによる;又は(b)同一量の物質の継続的使用により実質的に効果が減少したことによる;耐性(2)(a)特定の物質による特徴的な離脱症状;又は(b)離脱症状を和らげ又は避けるために摂取された同一又は密接な関連性のある物質による離脱症状;(3)乱用物質は、しばしば想定されていたよりも大用量又は長期間にわたって摂取されること;(4)乱用物質の制御への継続的な望み又は成功しない努力があること;(5)乱用物質の取得活動、物質の使用、又はその影響からの回復に多大な時間が費やされること;(6)乱用物質の使用のために、重要な社会的、職業的又は娯楽の活動を諦め、又は減らすこと;及び(7)乱用物質の使用は、身体的又は精神的問題が発生又は悪化させることを継続的に又は再発するらしいことを知っていながら、続けてしまうことである。物質依存とは、耐性又は離脱が起こる身体的依存であってもよく、耐性又は離脱が起こらない非身体的依存性であってもよい。ある態様では、物質依存に対する化合物Aによる治療により、患者による使用量又は頻度を減少させる。ある態様では、化合物Aによる治療により患者において少なくとも一つのDSM−IV TR記載の物質依存の症状を減少させる。ある態様では、物質依存に対する化合物Aによる治療により、例えば、これに限定されるものではないが、多幸感、無気力、興奮、無謀さ、判断力の低下、衝動強迫、攻撃性、怒り、使用してきた依存物質の渇望、及び気分障害がある。ある態様では、化合物Aによる治療により、患者にとってストレスのたまる出来事による乱用物質の渇望を減少させる。
本明細書中「回復」とは、少なくとも一つの物質乱用の症状又は依存性が減少することを示す。ある態様では、回復という用語は、患者がアゴニストによる治療を受けている場合や、関連する物質を入手することが制御された状況にある場合には、適さない。ある態様では、回復とは、患者における物質乱用又は依存による少なくとも一つの症状が起こらない状態を示す。ある態様では、回復とは、患者における物質乱用又は依存による全ての症状が軽減された状態を示す。ある態様では、回復とは、患者における物質乱用又は依存による症状が起こらない状態を示す。ある態様では、回復とは、物質の使用が起こらない状態を示す。
ある態様では、回復は、少なくとも一つの短期間の完全回復、短期間の部分的回復、持続的な完全回復、及び持続的な部分的回復によって特徴づけられ、乱用及び物質依存の症状が一つも起こらない状態が1ヶ月以上続く場合にのみ適用する。これらの4つのタイプの回復の定義は、依存が消失してからの時間の間隔(短期間又は持続的回復)の違いによって、少なくとも一つの物質依存性又は乱用の継続性があるかどうかに基づいている(部分的又は完全回復)。
用語「短期間の完全回復」とは、少なくとも1ヶ月、しかし12ヶ月よりも短い期間、物質依存又は物質乱用の症状がないことを示す。
用語「短期間の部分的回復」とは少なくとも1ヶ月、しかし12ヶ月よりも短い期間、物質依存又は乱用物質の症状の少なくとも一つがあったが、物質依存又は乱用物質の基準には達しないことを示す。
用語「持続的な完全回復」とは、少なくとも12ヵ月以上にわたり、物質依存又は物質乱用の症状を生じていないことを示す。
用語「持続的な部分的回復」とは、少なくとも12ヶ月にわたり、物質依存又は物質乱用の症状の少なくとも一つがあったが、物質依存又は物質乱用の基準には達しないことを示す。
ある態様では、化合物Aによる治療は患者の回復を促進する。ある態様では、化合物Aによる治療が患者の回復している期間を引き延ばす。
用語「回復している期間を引き延ばす(prolong a period of remission)」とは、回復している患者の再発までの時間が増加することを示す。ある態様では、ストレスのたまる出来事が生じると、回復が途切れることがある。ある態様では、再発は、回復が途切れたときに起こる。ある態様では、化合物Aによる治療は、ストレスのたまる出来事による回復の途切れが生じうる可能性を減少させる。ある態様では、化合物Aによる治療は、短期間の部分的回復、短期間の完全回復、持続的な完全回復、持続的な部分的回復の少なくとも一つを促進する。
「離脱」とは、関連物質の投与を軽減、遅延、又は中止したときに起こる症状の集合を言う。離脱の物質特異的症状は、例えば、社会的、職業的、及び他の重要な機能領域における臨床的に著しい障害又は苦痛につながる。これらの症状は、一般的な医学的な病態ではないため、他の精神障害によって説明することができない。必ず出はないが、離脱は通常、物質依存に関連していない。ある態様では、化合物Aによる治療により、患者の離脱の少なくとも一つの症状を軽減できる。ある態様では、離脱症状は、これらに限られるものではないが、例えば、無気力、興奮、無謀さ、判断力の低下、衝動強迫、攻撃性、怒り、乱用してきた物質の渇望、気分障害、及び睡眠障害がある。ある態様では、化合物Aによる治療により、患者にとってストレスのたまる出来事による乱用物質の渇望を減少させる。
用語「物質依存」とは、DSM−IV TRに言及されている以下の少なくとも一つの病態があることによって特徴づけられる:アルコール乱用;アルコール依存症;アルコール中毒;アルコール中毒による錯乱;アルコール離脱;アルコール離脱による錯乱;アルコール誘導性不安障害;アルコール誘導性気分障害;アルコール依存性継続的健忘障害;アルコール誘導性痴呆障害;錯覚を伴うアルコール誘発性精神障害;幻覚を伴うアルコール誘導性精神障害;アルコール誘導性性機能障害;アルコール誘導性睡眠障害;アルコール関連障害でここに明示されていないもの(NOS);アンフェタミン乱用;アンフェタミン依存;アンフェタミン中毒;アンフェタミン中毒性錯乱;アンフェタミン離脱;アンフェタミン誘導性不安障害;アンフェタミン誘導性気分障害;妄想を伴うアンフェタミン誘導性精神障害、;幻覚を伴うアンフェタミン誘導性精神障害;アンフェタミン誘導性性機能障害;アンフェタミン誘導性睡眠障害;アンフェタミン関連障害NOS;カンナビス乱用;カンナビス依存;カンナビス中毒;カンナビス中毒性錯乱;カンナビス誘導性不安障害;妄想を伴うカンナビス誘導性精神障害;幻覚を伴うカンナビス誘導性精神障害;カンナビス関連障害NOS;コカイン乱用;コカイン依存;コカイン中毒;コカイン中毒性錯乱;コカイン離脱;コカイン誘導性不安障害;コカイン誘導性気分障害;妄想を伴うコカイン誘導性精神障害;幻覚を伴うコカイン誘導性精神障害;コカイン誘導性性機能障害;コカイン誘導性睡眠障害;コカイン関連障害NOS;吸入剤乱用;吸入剤依存;吸入剤中毒;吸入剤中毒性錯乱;吸入剤誘導性不安障害;吸入剤誘導性気分障害;吸入剤誘導性持続性痴呆;妄想を伴う吸入剤誘導性精神障害;幻覚を伴う吸入剤誘導性精神障害;吸入剤関連障害NOS;オピオイド乱用;オピオイド依存;オピオイド中毒;オピオイド中毒性錯乱;オピオイド離脱;オピオイド誘導性気分障害;妄想を伴うオピオイド誘導性精神障害;幻覚を伴うオピオイド誘導性精神障害;オピオイド誘導性性機能障害;オピオイド誘導性睡眠障害;オピオイド関連障害NOS;フェンシクリジン乱用;フェンシクリジン依存;フェンシクリジン中毒;フェンシクリジン中毒性錯乱;フェンシクリジン誘導性不安障害;フェンシクリジン誘導性気分障害;妄想を伴うフェンシクリジン誘導性精神障害;幻覚を伴うフェンシクリジン誘導性精神障害;及びフェンシクリジン関連障害NOSがある。
用語「中止(cessation)」及び「離脱(remission)」は、DSM−IV TRに言及されている病態の特徴に従う必要はなく:ニコチン離脱;ニコチン関連障害でここに明示されていないもの;身体的依存を伴うニコチン依存;身体的依存を伴わないニコチン依存;短期間の完全回復したニコチン依存;短期間の部分回復したニコチン依存;持続的に完全回復したニコチン依存;持続的に部分的回復したニコチン依存;アゴニスト治療によるニコチン依存;オピオイド離脱;オピオイド関連障害で明示されていないもの;身体的依存を伴うオピオイド依存;身体的依存を伴わないオピオイド依存;短期間の完全回復したオピオイド依存;短期間の部分回復したオピオイド依存;持続的に完全回復したオピオイド依存;持続的に部分的回復したオピオイド依存;アゴニスト治療によるオピオイド依存;及び、制御された環境下でのオピオイド依存;エタノール離脱;身体的依存を伴うエタノール依存;身体的依存を伴わないエタノール離脱;短期間の完全回復をするエタノール離脱;短期間の部分的回復するエタノール離脱;持続的に完全回復したエタノール離脱;持続的に部分的回復したエタノール離脱;アゴニスト治療によるエタノール離脱;制御された環境下でのエタノール離脱;アンフェタミン離脱;及びコカイン離脱がある。
本明細書中「アゴニスト治療による(on agonist therapy)」とは、アゴニストを物質乱用、依存、又は離脱の治療に用いることを示す。用語「アゴニスト」とは、患者が乱用、依存、又は離脱していた物質の反応の少なくとも一つ又は部分的な反応を誘発する化合物に限られず、例えば、小分子又は複合有機化合物又はタンパク質を含む因子をいう。例えば、「アゴニスト治療によるオピオイド依存」とはメタドン治療によるオピオイド依存を示す。
あらゆる種類の物質の使用の減少によって離脱症状を引き起こしうる。例えば、いずれもニコチンを含むが、タバコ製品の使用を中止すると、ニコチン離脱症状が通常起こる。ヒトは、葉巻タバコ(cigarette)、葉巻(cigar)、又はパイプタバコの喫煙に限られず、タバコの経口又は鼻腔内摂取、又は噛みタバコも含む、あらゆる形態のタバコの使用を中止した結果、しばしば、ニコチンの離脱症状に苦しむ。そのような経口又は鼻腔内摂取するタバコは、嗅ぎタバコ及び噛みタバコに限られない。ニコチンの使用中止又はニコチンの使用量の減少後、しばしば24時間以内に、不機嫌、憂鬱な気分;意識朦朧; 不眠;興奮性、フラストレーション又は怒り;不安;神経性振戦; 集中力の欠如;落ち着きのなさ;心拍の低下;食欲増進又は体重増加;及びタバコ又はニコチンの渇望の症状が現れる。それらの症状は、しばしば社会的、職業上の、又は他の重要な機能を有する領域において臨床的に著しい苦痛又は障害を引き起こす。本明細書中に示す方法は、そのような症状が一般的な医学的病態でない場合にも、及び他の医学的障害としてうまく説明されない場合にも、ニコチン離脱症状に起因する一つ又はそれ以上の症状を緩和するのに用いることができる。本発明の方法は、ニコチン置換療法においてタバコから置換又は部分的置換した患者にも用いられる。こうして、そのような患者のあらゆる形態のニコチン依存を軽減し及び完全に消滅させるのを助ける。
典型的には自己投与において、注射又は経口、喫煙又は鼻腔内投与による、オピオイドの投与を中断又は減少させることは、しばしば、オピオイド離脱の特徴を示す状態を引き起こす。この離脱症状は、オピオイドアンタゴニスト、例えばナロキソン又はナルトレキソンをオピオイド使用の後に投与することによっても引き起こされる。オピオイドの離脱症状は、一般的にオピオイドアゴニスト効果と反対の症状によって特徴づけられる。そのような離脱症状には、不安;落ち着きのなさ;筋肉痛、しばしば背中及び脚に起こるもの;オピオイドの渇望;興奮及び痛みへの過敏性;不機嫌;吐き気又は嘔吐;流涙;鼻漏;乳頭膨張;立毛;発汗;下痢;あくび;発熱;及び不眠を含む。例えばヘロインといった、短時間効果型のオピオイドの依存の場合、離脱症状は通常、最後の投与後6−24時間以内に起こるのに対し、例えばメタドンといった、長時間効果型のオピオイドでは症状が出るまでに2−4日かかる。これらの症状は、しばしば、社会的、職業的、及び他の重要な機能領域における臨床的に著しい障害又は苦痛につながる。本明細書中に示す方法は、そのような症状が一般的な医学的病態でない場合にも、及び他の医学的障害としてうまく説明されない場合にも、オピオイド離脱症状に起因する一つ又はそれ以上の症状を緩和するのに用いることができる。
エタノール(例えば、エタノール含有飲料)をやめ又は減少することにより、エタノール離脱症状が起こる。エタノール離脱症状は、エタノール摂取をやめ又は減少させた4ないし12時間以内に血中エタノール濃度が急速に落ちることにより特徴づけられる。このようなエタノール離脱症状は、エタノールの渇望;自律神経系の活動高進(例えば、発汗又は心拍100以上);手の震え;不眠;吐き気;嘔吐;一過性の幻覚、幻触または幻聴;精神運動性激越;不安;及びてんかんの大発作を含む。これらの症状は、しばしば、社会的、職業的、及び他の重要な機能領域における臨床的に著しい障害又は苦痛につながる。本明細書中に示す方法は、そのような症状が一般的な医学的病態でない場合にも、及び他の医学的障害としてうまく説明されない場合にも、エタノール離脱症状に起因する一つ又はそれ以上の症状を緩和するのに用いることができる。
コカイン乱用及び依存は、認知、行動上、及び身体的症状を生じうる。コカイン乱用及び依存の症状には、様々な程度の注意欠陥・多動性障害及び多幸感;活力、興奮、及び社会性の増加;空腹感及び疲労の減少;身体的及び精神的な感受性の顕著な増加;情動不安;痛みの減少;及びコカインの渇望が含まれる。呼吸器への影響には、例えば、気管支炎、息切れ、及び胸痛があり、及び心血管系への影響には、例えば、動悸、不整脈、心筋症、及び心臓発作が含まれる。症状には、瞳孔散大、吐き気、嘔吐、頭痛、回転揺性目眩、不安、動揺性目眩、精神障害、及び錯乱が含まれる。鼻からの吸引(snorting)又は吸入(sniffing)によるコカインの投与では、耳、鼻及び喉への影響、例えば、鼻粘膜炎症,鼻粘膜痂皮、反復性鼻血、鼻づまり、及び顔面痛を含む症状を生じる。ある態様では、化合物Aによる治療は、患者において少なくとも一つのコカイン乱用及び依存の症状を軽減する。ある態様では、ネピカスタット治療により、コカイン乱用及び依存による少なくとも一つの陰性自覚症状を増加させる。
コカインの離脱症状には、疲労、喜びの欠如、抑鬱、興奮、睡眠障害、食欲増加、精神運動遅延、動揺、過剰な疑い深さ、及びコカインの渇望がある。化合物Aによる治療により、少なくとも一つのコカインの離脱症状を軽減することができる。
物質依存は相によって特徴づけられる:獲得、維持、消滅、及び再発がある。本明細書中、用語「獲得」とは、患者の物質に対する依存が開始し及び得られる物質依存相を示す。ある態様では、化合物Aによる治療は、患者における獲得の進展を阻害する。ある態様では、化合物Aによる治療は、患者における物質の使用量及び頻度の少なくとも一つを減少させる。ある態様では、獲得相における化合物Aによる治療により、患者における少なくとも一つの物質乱用及び依存によるDSM−IV記載の症状を軽減させる。ある態様では、獲得相における化合物Aによる治療により、実施例に示したような、及びこれに限定されることなく、多幸感,無気力,興奮 無謀さ, 判断力の低下、衝動強迫、攻撃性、怒り、乱用及び依存してきた物質の渇望、及び気分障害の少なくとも一つの物質乱用及び依存の症状を軽減する。ある態様では、ある態様では、化合物Aによる治療により、患者にとってストレスのたまる出来事による乱用物質の渇望を減少させることができる。
「維持」とは、患者による安定した投与又は使用による物質依存相を示す。ある態様では、物質の使用量及び頻度の少なくとも一つにおいて現れる10%の変動は、安定な行動であると考えられている。ある態様では、維持相における化合物Aによる治療は、患者における少なくとも一つの物質乱用及び依存によるDSM−IV記載の症状を軽減する。ある態様では、維持相における化合物Aによる治療は、乱用物質及び依存の症状の少なくとも一つを減少させる。ある態様では、実施例に示したような、及びこれに限定されることなく、維持相における化合物Aによる治療は、多幸感、無気力,興奮、無謀さ,判断力の低下、衝動強迫、攻撃性、怒り、乱用及び依存してきた物質の渇望、及び気分障害の少なくとも一つの物質乱用及び依存の症状を軽減する。ある態様では、化合物Aを投与することにより、維持相にある患者にとってストレスのたまる出来事による乱用物質の渇望を減少させることができる。
「消滅」とは、物質が患者に提供されない又は患者が物質の使用を控える物質依存相を示す。ある態様では、消滅相における物質依存が消滅又は減少することを示す。ある態様では、消滅相において少なくとも一つの離脱症状が生じることを示す。ある態様では、患者において化合物Aによる治療は消滅相を促進する。ある態様では、消滅相にある化合物Aによる治療は、患者における少なくとも一つの乱用及び依存物質によるDSM−IV記載の症状を減少させる。ある態様では、実施例に示したような、及びこれに限定されることなく、消滅相における化合物Aによる治療は、多幸感,無気力,興奮 無謀さ,判断力の低下、衝動強迫、攻撃性、怒り、乱用及び依存してきた物質の渇望、及び気分障害の少なくとも一つの物質乱用及び依存の症状を軽減する。ある態様では、化合物Aによる治療により、患者の消滅相における離脱症状を軽減する。ある態様では、化合物Aを投与することにより、消滅相にある患者にとってストレスのたまる出来事による乱用物質の渇望を減少させることができる。
「再発」とは、患者がある期間物質を使用しなかった後に物質乱用又は依存症状の再発を示す。ある態様では、回復後に再発する。ある態様では、再発の前に症状を消滅させるためのトレーニングを受けている。ある態様では、再発は、呼び水、ストレス、又は物質の使用において以前関わった関連するきっかけ又は刺激の環境に曝されることにより起こる。ある態様では、化合物Aによる治療は、患者における再発の頻度を減少させる。ある態様では、再発相にある化合物Aによる治療は、患者における少なくとも一つの乱用及び依存物質によるDSM−IV記載の症状を減少させる。ある態様では、実施例に示したような、及びこれに限定されることなく、再発相における化合物Aによる治療は、多幸感,無気力,興奮 無謀さ,判断力の低下、衝動強迫、攻撃性、怒り、乱用及び依存してきた物質の渇望、及び気分障害の少なくとも一つの物質乱用及び依存の症状を軽減する。ある態様では、化合物Aによる患者において、再発相における治療により離脱症状を軽減する。ある態様では、化合物Aを投与することにより、再発相にある患者にとってストレスのたまる出来事による乱用物質の渇望を減少させることができる。
物質乱用、依存、離脱の治療は、相に従い行われる。ある態様では、患者が物質を使用しない最初の期間は、化合物Aによる治療の開始前が好ましい。ある態様では、最初は、化合物Aを低容量で投与する。ある態様では、望ましい治療効果が見られるまでは、投与量を上げていく。ある態様では、患者の症状、副作用及び物質の渇望を最小限にするという病態の治療に最適な投与量を決定するために化合物Aの投与量を上げていく。
ある態様では、化合物Aによる治療が回復を促進する。ある態様では、化合物Aの投与量は、患者に回復が見られた後は、変わらない又は徐々に減らす。
本発明は、少なくとも一つの物質からの、乱用、依存又は離脱の少なくとも一つの症状に罹り又は罹る可能性のある患者の治療方法を提供する。方法には、患者に治療上の有効量の化合物Aを投与することを含む。ある態様では、依存薬物及び治療薬から選択される少なくとも一つの物質がある。ある態様では、依存薬物は、神経刺激剤、オピオイド、幻覚剤、吸入剤、鎮静剤、精神安定剤、睡眠剤、抗不安剤、及び違法薬物から選択される。ある態様では、神経刺激剤は、β−フェニルイソプロピルアミン誘導体である。ある態様では、β−フェニルイソプロピルアミン誘導体は、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、及びメタンフェタミンから選択される。ある態様では、神経刺激剤は、エクスタシー、フェンメトラジン、メチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ペモリン、マジンドール、(−)カチノン、及びフェンフルラミンから選択される。ある態様では、オピオイドは、ロータブ、トラマドール、ヘロイン、メタドン、ヒドロコドン、及びオキシコドンから選択される。ある態様では、幻覚剤は、シロシビン、幻覚キノコ、リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)、フェンシクリジン(PCP)、及びケタミンから選択される。ある態様では、吸入剤は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、1、3、5−トリフルオロベンゼン、1、2、4−トリフルオロベンゼン、ペンタフルオロトルエン、ペンタフルオロベンゼン、及びペルフルオロベンゼンから選択される。ある態様では、治療薬は、麻酔剤、鎮痛剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤、筋弛緩剤、非ステロイド性抗炎症薬、OTC薬、及び抗うつ薬から選択される。ある態様では、依存薬物は、コカイン、アルコール、カフェイン、アヘン、カンナビノイド、カンナビス、ベンゾジアゼピン、カリソプロドール、タバコ、ニコチン、バイコジン、ローセット、ペルコセット、ペルコダン、及びタイロックスがある。ある態様では、依存薬物はコカインであり、化合物Aが患者のコカイン乱用及び依存の症状である、注意欠陥・多動性障害;多幸感;活力、興奮、及び社会性の増加;空腹感及び疲労の減少;身体的及び精神的な感受性の顕著な増加; 痛みの減少; 気管支炎; 息切れ; 胸痛; 動悸; 不整脈; 心筋症;心臓発作; 瞳孔散大; 吐き気; 嘔吐; 頭痛; 回転揺性目眩; 動揺性目眩;不安;精神病; 錯乱; 鼻粘膜炎症; 鼻粘膜痂皮; 反復性鼻血; 鼻づまり; 顔面痛; 情動不安;及びコカインの渇望の少なくとも一つを減少させる。ある態様では、依存薬物はコカインであり、化合物Aがコカイン乱用及び依存の陰性自覚症状を増加させる。ある態様では、依存薬物はコカインであり、化合物Aは、疲労、喜びの欠如、抑鬱、興奮、睡眠障害、食欲増加、精神運動遅延、動揺、過剰な疑い深さ、及びコカインの渇望から選択されるコカイン離脱症状を減少させる。ある態様では、化合物Aによる治療により、患者の、注意欠陥・多動性障害IV評価尺度(ADHD−IV)、ハミルトン鬱病評価尺度(HAM−D)、ハミルトン不安評価尺度(HAM−A)、ベック抑鬱評価尺度(BDI)、神経精神科検査によるやる気スコア、及び認知機能検査スケールの値の少なくとも一つを改善する。ある態様では、認知機能評価尺度は、ウェクスラー成人知能検査−改訂版(WAIS−R)、ウェクスラー記憶検査−改訂版(WMS−R)、レイの聴覚性言語性記憶の検査(RAVLT、試行I−VII)、レイの視覚認知能力検査(RCFT)、及びトレイルメイキングテスト(TMT、A及びB部)から選択される。ある態様では、化合物Aは、患者による物質の使用量及び頻度の少なくとも一つを減少させる。ある態様では、化合物Aは、患者による少なくとも一つの物質による乱用、依存又は離脱症状の少なくとも一つを減少させる。ある態様では、化合物Aは、職場、学校、又は家庭において義務の重要な役割を履行することができないことによる物質の使用の再発;身体的に有害な状況における物質の使用の再発;物質に関連する法的な問題による再発;及び、乱用物質の影響により社会的又は対人的な問題が継続又は再発するにもかかわらず行うコカインの継続的な使用から選択される、患者において再発した物質乱用の少なくとも一つの症状を減少させる。ある態様では、化合物Aは、耐性;離脱;乱用物質は、しばしば想定されていたよりも大用量又は長期間にわたって摂取されること;乱用物質の制御への継続的な望み及び/又は成功しない努力があること;乱用物質の取得活動、物質の使用、又はその影響からの回復に多大な時間が費やされること;乱用物質の使用のために、重要な社会的、職業的又は娯楽の活動を諦め、及び/又は減らすこと;及び、物質により発生又は悪化させると考えられている継続的に及び/又は再発する身体的及び/又は精神的問題であることを知っていながら、物質の使用を続けてしまうことから選択される少なくとも一つの物質依存による症状を減少させる。ある態様では、化合物Aは、患者の回復を促進する。ある態様では、回復は、短期間の完全回復、短期間の部分的回復、持続的な完全回復、及び持続的な部分的回復により特徴づけられる。ある態様では、化合物Aは、患者において再発までの期間を引き延ばす。ある態様では、方法は、随伴性マネジメント及び認知行動療法の少なくとも一つの治療をさらに含む。ある態様では、方法はさらに、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、ノルエピネフリン−ドパミン再取り込み阻害剤(NDRI)、セロトニン5−ヒドロキシトリプタミン1A(5HT1A)受容体アンタゴニスト、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤、アデノシン受容体アンタゴニスト、アデノシンA2A受容体アンタゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、ナトリウムチャネルブロッカー、カルシウムチャンネルブロッカー、中枢及び末梢αアドレナリン受容体アンタゴニスト、中枢αアドレナリン受容体アゴニスト、中枢又は末梢βアドレナリン受容体アンタゴニスト、NK−1受容体アンタゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、非典型的抗うつ剤/抗精神病薬、三環系抗うつ剤、抗けいれん剤、グルタミン酸アンタゴニスト,γ−アミノ酪酸(GABA)アゴニスト、GABA代謝酵素阻害剤、GABA合成活性化剤、部分ドパミンD2アゴニスト、ドパミン代謝酵素阻害剤、カテコール−O−メチル−トランスフェラーゼ阻害剤、オピオイド受容体アンタゴニスト、気分安定剤、直接的又は間接的ドパミン受容体アゴニスト、5HT1受容体部分アゴニスト、セロトニン5HT2受容体アンタゴニスト、オピオイド、カルボキシラーゼ阻害剤、オピオイド受容体部分アゴニスト、ニコチン受容体部分アゴニスト、及び吸入剤から選択される少なくとも一つの他の薬剤の治療上の有効量を同時投与することを含む。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、及びフルオキセチンから選択されるSSRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、デュロキセチン、ミルタザピン、及びベンラファキシンから選択されるSNRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ブプロピオン及びアトモキセチンから選択されるNRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、NDRIであるブプロピオンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤はジスルフィラムである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるイストラデフィリンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ラモトリジン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピン、及びバルプロ酸から選択されるナトリウムチャネルブロッカーである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ニモジピン、ラモトリジン、及びカルバマゼピンから選択されるカルシウムチャンネルブロッカーである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢及び末梢αアドレナリン受容体アンタゴニストであるプラゾシンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢αアドレナリン受容体アゴニストであるクロニジンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢又は末梢βアドレナリン受容体アンタゴニストであるプロプラノロールである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ブプロピオン、オランゼピン、リスペリドン、及びクエチアピンから選択される非典型的抗うつ剤/抗精神病薬である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、アミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、及びトリミプラミントリミプラミンから選択される三環性抗うつ薬である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、フェニトイン、ラモトリジン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピン、バルプロ酸、トピラメート、チアガピン、ビバガトリン、及びレベチラセタムから選択される抗けいれん剤である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、グルタミン酸アンタゴニストであるトピラメートである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、バクロフェン、バルプロ酸、及びトピラメートから選択されるGABAアゴニストである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミン代謝酵素阻害剤であるカルビドパである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミンD2受容体部分アゴニストであるアリピプラゾールである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ナルトレキソン及びナロキソンから選択されるオピオイド受容体アンタゴニストである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、カルバマゼピン及びリチウムから選択される気分安定剤である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アマンタジン、マジンドール、及びメチルフェニデートから選択される直接的又は間接的ドパミン受容体アゴニストである。ある態様では、少なくとも他の薬剤は、5HT1受容体部分アゴニストであるゲピロンである。ある態様では、少なくとも他の薬剤は、セロトニン5HT2受容体アンタゴニストであるリタンセリンである。ある態様では、少なくとも他の薬剤は、オピオイドであるメタドンである。ある態様では、少なくとも他の薬剤は、オピオイド受容体部分アゴニストであるブプレノルフィンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ニコチン受容体部分アゴニストであるチャンピックスである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、1、3、5−トリフルオロベンゼン、1、2、4−トリフルオロベンゼン、ペンタフルオロトルエン、ペンタフルオロベンゼン、及びペルフルオロベンゼンから選択される吸入剤である。ある態様では、方法は、ベンゾジアゼピン、レボドパ、カリソプロドール、モダフィニル、アカンプロセート,γ−ブチロラクトン,γ−ヒドロキシ酪酸、アヘン、シロシビン、幻覚キノコ、タバコ、及びニコチンから選択される少なくとも一つの他の薬剤を、治療上の有効量を同時投与することを含む。ある態様では、化合物Aは、物質を禁断中の期間経過後に患者に投与される。ある態様では、化合物Aを治療上の有効量を、治療効果が見られるまで増量して患者に投与する。ある態様では、化合物Aの用量は、回復してから減少させる。ある態様では、化合物Aの用量は、回復してからも変化がない。
本発明は、患者における少なくとも一つの物質における少なくとも一つの物質依存相を治療するための方法も提供する。ある態様では、少なくとも一つの物質依存相は、獲得、維持、消滅、及び再発から選択される。方法は、患者に化合物Aの治療上の有効量を投与することを含む。ある態様では、化合物Aは、患者における獲得相の進行を阻害する。ある態様では、化合物Aは、患者における消滅相の進展を促進する。ある態様では、化合物Aは、患者における再発の回数を減少する。ある態様では、少なくとも一つの物質から依存薬物及び治療薬から選択される物質である。ある態様では、依存薬物は、神経刺激剤、オピオイド、幻覚剤、吸入剤、鎮静剤、精神安定剤、睡眠剤、抗不安剤、及び違法薬物から選択されるものである。ある態様では、神経刺激剤は、β−フェニルイソプロピルアミン誘導体である。ある態様では、β−フェニルイソプロピルアミン誘導体は、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、及びメタンフェタミンから選択されるものである。ある態様では、神経刺激剤は、エクスタシー、フェンメトラジン、メチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ペモリン、マジンドール、(−)カチノン、及びフェンフルラミンから選択されるものである。ある態様では、オピオイドは、ロータブ、トラマドール、ヘロイン、メタドン、ヒドロコドン、及びオキシコドンから選択されるものである。ある態様では、幻覚剤は、シロシビン、幻覚キノコ、リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)、フェンシクリジン(PCP)、及びケタミンから選択されるものである。ある態様では、吸入剤は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、1、3、5−トリフルオロベンゼン、1、2、4−トリフルオロベンゼン、ペンタフルオロトルエン、ペンタフルオロベンゼン、及びペルフルオロベンゼンから選択されるものである。ある態様では、治療薬は、麻酔剤、鎮痛剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤、筋弛緩剤、非ステロイド性抗炎症薬、OTC薬、及び抗うつ薬から選択されるものである。ある態様では、依存薬物は、アルコール、カフェイン、アヘン、カンナビノイド、カンナビス、ベンゾジアゼピン、カリソプロドール、タバコ、ニコチン、バイコジン、ローセット、ペルコセット、ペルコダン、及びタイロックスから選択されるものである。ある態様では、化合物Aの処方により、患者の、ADHD−IV、HAM−D、HAM−A、BDI、神経精神病による無気力評価尺度、及び認知機能評価尺度のスコアの少なくとも一つを改善する。ある態様では、認知機能評価尺は、WAIS−R、WMS−R、RAVLT、試行I−VII、RCFT、及びTMT、A及びB部から選択される。ある態様では、化合物Aは、患者において少なくとも一つの物質の使用量及び頻度の少なくとも一つを減少させる。ある態様では、化合物Aは、患者における少なくとも一つの物質による乱用、依存又は離脱症状の少なくとも一つを減少させる。ある態様では、化合物Aは、職場、学校、又は家庭において重要な役割を履行することができないことによる物質の使用の再発;身体的に有害な状況における物質の使用の再発;物質に関連した法的な問題による再発;及び、乱用物質の影響により起き又は悪化した社会的又は対人的な問題が継続又は再発するにもかかわらず行う物質の継続的な使用の再発から選択される、患者による物質乱用の少なくとも一つの症状を減少させる。ある態様では、化合物Aは、耐性;離脱;乱用物質は、しばしば想定されていたよりも大用量又は長期間にわたって摂取されること;乱用物質の使用を減少し又は制御することへの継続的な望み及び/又は成功しない努力すること;乱用物質の取得活動、物質の使用、及びその影響からの回復の少なくとも一つの活動に多大な時間が費やされること;乱用物質の使用のために、重要な社会的、職業的又は娯楽の活動を諦め、及び/又は減らすこと;及び、物質により発生又は悪化させると考えられている継続的に及び/又は再発する身体的及び/又は精神的問題であることを知っていながら、物質の使用を続けてしまうことから選択される少なくとも一つの物質依存による症状を減少させる。ある態様では、化合物Aは、患者の回復を促進する。ある態様では、回復は、短期間の完全回復、短期間の部分的回復、持続的な完全回復、及び持続的な部分的回復の少なくとも一つにより特徴づけられる。ある態様では、化合物Aは、患者において再発までの期間を引き延ばす。ある態様では、方法は更に、予備的マネジメント及び認知行動療法の少なくとも一つにより治療することを含む。ある態様では、方法はさらに、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、ノルエピネフリン−ドパミン再取り込み阻害剤(NDRI)、セロトニン5−ヒドロキシトリプタミン1A(5HT1A)受容体アンタゴニスト、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤、アデノシン受容体アンタゴニスト、アデノシンA2A受容体アンタゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、ナトリウムチャネルブロッカー、カルシウムチャンネルブロッカー、中枢及び末梢αアドレナリン受容体アンタゴニスト、中枢αアドレナリン受容体アゴニスト、中枢又は末梢βアドレナリン受容体アンタゴニスト、NK−1受容体アンタゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、非典型的抗うつ剤/抗精神病薬、三環系抗うつ剤、抗けいれん剤、グルタミン酸アンタゴニスト,γ−アミノ酪酸(GABA)アゴニスト、GABA代謝酵素阻害剤、GABA合成活性化剤、部分ドパミンD2アゴニスト、ドパミン代謝酵素阻害剤、カテコール−O−メチル−トランスフェラーゼ阻害剤、オピオイド受容体アンタゴニスト、気分安定剤、直接的又は間接的ドパミン受容体アゴニスト、5HT1受容体部分アゴニスト、セロトニン5HT2受容体アンタゴニスト、オピオイド、カルボキシラーゼ阻害剤、オピオイド受容体部分アゴニスト、ニコチン受容体部分アゴニスト、及び吸入剤から選択される少なくとも一つの他の薬剤の治療上の有効量を同時投与することを含む。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、及びフルオキセチンから選択されるSSRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、デュロキセチン、ミルタザピン、及びベンラファキシンから選択されるSNRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ブプロピオン及びアトモキセチンから選択されるNRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、NDRIであるブプロピオンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤はジスルフィラムである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるイストラデフィリンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ラモトリジン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピン、及びバルプロ酸から選択されるナトリウムチャネルブロッカーである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ニモジピン、ラモトリジン、及びカルバマゼピンから選択されるカルシウムチャンネルブロッカーである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢及び末梢αアドレナリン受容体アンタゴニストであるプラゾシンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢αアドレナリン受容体アゴニストであるクロニジンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢又は末梢βアドレナリン受容体アンタゴニストであるプロプラノロールである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ブプロピオン、オランゼピン、リスペリドン、及びクエチアピンである非典型的抗うつ剤/抗精神病薬である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、アミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、及びトリミプラミントリミプラミンから選択される三環性抗うつ薬である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、フェニトイン、ラモトリジン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピン、バルプロ酸、トピラメート、チアガピン、ビバガトリン、及びレベチラセタムから選択される抗けいれん剤である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、グルタミン酸アンタゴニストであるトピラメートである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、バクロフェン、バルプロ酸、及びトピラメートから選択されるGABAアゴニストである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミン代謝酵素阻害剤であるカルビドパである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミンD2受容体部分アゴニストであるアリピプラゾールである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ナルトレキソン及びナロキソンから選択されるオピオイド受容体アンタゴニストである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、カルバマゼピン及びリチウムから選択される気分安定剤である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アマンタジン、マジンドール、及びメチルフェニデートから選択される直接的又は間接的ドパミン受容体アゴニストである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、5HT1受容体部分アゴニストであるゲピロンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、セロトニン5HT2受容体アンタゴニストであるリタンセリンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、オピオイドであるメタドンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、オピオイド受容体部分アゴニストであるブプレノルフィンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ニコチン受容体部分アゴニストであるチャンピックスである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、1、3、5−トリフルオロベンゼン、1、2、4−トリフルオロベンゼン、ペンタフルオロトルエン、ペンタフルオロベンゼン、及びペルフルオロベンゼンから選択される吸入剤である。ある態様では、方法はさらに、ベンゾジアゼピン、レボドパ、カリソプロドール、モダフィニル、アカンプロセート,γ−ブチロラクトン,γ−ヒドロキシ酪酸、アヘン、シロシビン、幻覚キノコ、タバコ、及びニコチンから選択される少なくとも一つの他の薬剤を、治療上の有効量を同時投与することを含む。ある態様では、化合物Aは、物質の禁断中の期間経過後に患者に投与される。ある態様では、化合物Aを治療上の有効量を、治療効果が見られるまで増量して患者に投与する。ある態様では、化合物Aの用量は、回復してから減少させる。ある態様では、化合物Aの用量は、回復してからも変化がない。
本発明は、患者におけるコカイン依存の少なくとも一つの相を治療するための方法も提供する。ある態様では、少なくとも一つの物質依存相は、獲得、維持、消滅、及び再発から選択される。ある態様では、方法は、化合物Aの治療上の有効量を投与することを含む。ある態様では、化合物Aは、患者における獲得相の進行を阻害する。ある態様では、化合物Aは、患者における消滅相の進展を促進する。ある態様では、化合物Aは、患者における再発の回数を減少させる。ある態様では、化合物Aは、患者においてコカインの乱用、依存、又は離脱の症状の少なくとも一つを減少させる。ある態様では、化合物Aは、職場、学校、又は家庭において重要な役割を履行することができないことによるコカインの使用の再発;身体的に有害な状況におけるコカインの使用の再発;コカインに関連した法的な問題による再発;及び、コカインの影響により起き又は悪化した社会的又は対人的な問題が継続又は再発するにもかかわらず行うコカインの継続的な使用の再発から選択される、患者によるコカイン乱用の少なくとも一つの症状を減少させる。ある態様では、化合物Aは、耐性;離脱;乱用物質は、しばしば想定されていたよりも大用量又は長期間にわたって摂取されること;コカインの使用を減少し又は制御することへの継続的な望み及び/又は成功しない努力をすること;コカインの取得活動、コカインの使用、及びその影響からの回復の少なくとも一つの活動に多大な時間が費やされること;コカインの使用のために、重要な社会的、職業的又は娯楽の活動を諦め、及び/又は減らすこと;及び、コカインの使用により継続的に又は再発すると考えられている身体的又は精神的問題が発生又は悪化するらしいことを知っていながらコカインの使用を続けてしまうこと、から選択される少なくとも一つのコカイン依存による症状を減少させる。ある態様では、化合物Aは、注意欠陥・多動性障害;多幸感;活力、興奮、及び社会性の増加;空腹感及び疲労の減少;身体的及び精神的な感受性の顕著な増加;痛みの減少;気管支炎;息切れ;胸痛;動悸;不整脈;心筋症;心臓発作;瞳孔散大;吐き気;嘔吐;頭痛;回転揺性目眩;動揺性目眩;不安;精神障害; 錯乱; 鼻粘膜炎症; 鼻粘膜痂皮; 反復性鼻血; 鼻づまり; 顔面痛; 情動不安;及びコカインの渇望から選択されるコカイン乱用及び依存の少なくとも一つの症状を減少させる。ある態様では、化合物Aは、コカイン乱用及び依存の陰性自覚症状の少なくとも一つを増加させる。ある態様では、化合物Aは、患者の回復を促進する。ある態様では、回復は、短期間の完全回復、短期間の部分的回復、持続的な完全回復、及び持続的な部分的回復により特徴づけられる。ある態様では、化合物Aは、患者において再発までの期間を引き延ばす。ある態様では、方法は、随伴性マネジメント及び認知行動療法の少なくとも一つの治療をさらに含む。ある態様では、方法はさらに、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、ノルエピネフリン−ドパミン再取り込み阻害剤(NDRI)、セロトニン5−ヒドロキシトリプタミン1A(5HT1A)受容体アンタゴニスト、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤、アデノシン受容体アンタゴニスト、アデノシンA2A受容体アンタゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、ナトリウムチャネルブロッカー、カルシウムチャンネルブロッカー、中枢及び末梢αアドレナリン受容体アンタゴニスト、中枢αアドレナリン受容体アゴニスト、中枢又は末梢βアドレナリン受容体アンタゴニスト、NK−1受容体アンタゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、非典型的抗うつ剤/抗精神病薬、三環系抗うつ剤、抗けいれん剤、グルタミン酸アンタゴニスト,γ−アミノ酪酸(GABA)アゴニスト、GABA代謝酵素阻害剤、GABA合成活性化剤、部分ドパミンD2アゴニスト、ドパミン代謝酵素阻害剤、カテコール−O−メチル−トランスフェラーゼ阻害剤、オピオイド受容体アンタゴニスト、気分安定剤、直接的又は間接的ドパミン受容体アゴニスト、5HT1受容体部分アゴニスト、セロトニン5HT2受容体アンタゴニスト、オピオイド、カルボキシラーゼ阻害剤、オピオイド受容体部分アゴニスト、ニコチン受容体部分アゴニスト、及び吸入剤から選択される少なくとも一つの他の薬剤の治療上の有効量を同時投与することを含む。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、及びフルオキセチンから選択されるSSRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、デュロキセチン、ミルタザピン、及びベンラファキシンから選択されるSNRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ブプロピオン及びアトモキセチンから選択されるNRIである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、NDRIであるブプロピオンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤はジスルフィラムである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるイストラデフィリンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ラモトリジン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピン、及びバルプロ酸から選択されるナトリウムチャネルブロッカーである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ニモジピン、ラモトリジン、及びカルバマゼピンから選択されるカルシウムチャンネルブロッカーである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢及び末梢αアドレナリン受容体アンタゴニストであるプラゾシンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢αアドレナリン受容体アゴニストであるクロニジンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、中枢又は末梢βアドレナリン受容体アンタゴニストであるプロプラノロールである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、非典型的抗うつ剤/抗精神病薬ブプロピオン、オランゼピン、リスペリドン、及びクエチアピン。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、アミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、及びトリミプラミンから選択される三環性抗うつ薬である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、フェニトイン、ラモトリジン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピン、バルプロ酸、トピラメート、チアガピン、ビバガトリン、及びレベチラセタムから選択される抗けいれん剤である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、グルタミン酸アンタゴニストであるトピラメートである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、バクロフェン、バルプロ酸、及びトピラメートから選択されるGABAアゴニストである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミン代謝酵素阻害剤であるカルビドパである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミンD2受容体部分アゴニストであるアリピプラゾールである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ナルトレキソン及びナロキソンから選択されるオピオイド受容体アンタゴニストである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、カルバマゼピン及びリチウムから選択される気分安定剤である。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ドパミン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、アマンタジン、マジンドール、及びメチルフェニデートから選択される直接的又は間接的ドパミン受容体アゴニストである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、5HT1受容体部分アゴニストであるゲピロンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、セロトニン5HT2受容体アンタゴニストであるリタンセリンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、オピオイドであるメタドンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、オピオイド受容体部分アゴニストであるブプレノルフィンである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ニコチン受容体部分アゴニストであるチャンピックスである。ある態様では、少なくとも一つの他の薬剤は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、1、3、5−トリフルオロベンゼン、1、2、4−トリフルオロベンゼン、ペンタフルオロトルエン、ペンタフルオロベンゼン、及びペルフルオロベンゼンから選択される吸入剤である。ある態様では、方法は、ベンゾジアゼピン、レボドパ、カリソプロドール、モダフィニル、アカンプロセート,γ−ブチロラクトン,γ−ヒドロキシ酪酸、アヘン、シロシビン、幻覚キノコ、タバコ、及びニコチンから選択される少なくとも一つの他の薬剤を、治療上の有効量を同時投与することを含む。ある態様では、化合物Aは、物質の禁断中の期間経過後に患者に投与される。ある態様では、化合物Aを治療上の有効量を、治療効果が見られるまで増量して患者に投与する。ある態様では、化合物Aの用量は、回復してから減少させる。ある態様では、化合物Aの用量は、コカイン依存から回復してからも変化がない。ある態様では、化合物Aは、患者の二次的物質による乱用、依存、又は離脱症状の少なくとも一つを治療する。ある態様では、少なくとも一つの二次的物質は、乱用薬物及び治療薬から選択されるものである。ある態様では、依存薬物が、神経刺激剤、オピオイド、幻覚剤、吸入剤、鎮静剤、精神安定剤、睡眠剤、抗不安剤、及び違法薬物から選択されるものである。ある態様では、神経刺激剤は、β−フェニルイソプロピルアミン誘導体である。ある態様では、β−フェニルイソプロピルアミン誘導体は、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、及びメタンフェタミンから選択されるものである。ある態様では、神経刺激剤は、エクスタシー、フェンメトラジン、メチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ペモリン、マジンドール、(−)カチノン、及びフェンフルラミンから選択されるものである。ある態様では、オピオイドは、ロータブ、トラマドール、ヘロイン、メタドン、ヒドロコドン、及びオキシコドンから選択されるものである。ある態様では、幻覚剤は、シロシビン、幻覚キノコ、リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)、フェンシクリジン(PCP)、及びケタミンから選択されるものである。ある態様では、吸入剤は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、1、3、5−トリフルオロベンゼン、1、2、4−トリフルオロベンゼン、ペンタフルオロトルエン、ペンタフルオロベンゼン、及びペルフルオロベンゼンから選択されるものである。ある態様では、治療薬は、麻酔剤、鎮痛剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤、筋弛緩剤、非ステロイド性抗炎症薬、OTC薬、及び抗うつ薬から選択されるである。ある態様では、乱用薬物は、アルコール、カフェイン、アヘン、カンナビノイド、カンナビス、ベンゾジアゼピン、カリソプロドール、タバコ、ニコチン、バイコジン、ローセット、ペルコセット、ペルコダン、及びタイロックスである。
薬学的に許容される誘導体は、酸、塩基、エノールエーテル、及びエステル、エステル、水和物、溶媒和物、及びプロドラッグの形態が含まれる。誘導体は、例えば、対応する中性薬剤の少なくとも一つの性質において薬物動態学的性質が優れたものが選択される。化合物Aは、製剤化の前に誘導体化されていてもよい。
化合物A又は薬学的に許容される誘導体の治療上の有効量は、中毒又は依存の重症度、依存、年齢及び患者の健康度合い、使用されてきた化合物の効力、及びその他の因子に依存して様々である。ある特定の態様では、治療上の有効量は、約0.1ミリグラム/(体重)kg(mg/kg)/日ないし約50mg/(体重)kg/日である。他の態様では、用量は、約1.0ないし約10mg/kg/日である。それゆえ、ある態様では、70kgのヒトにおける治療上の有効量は、約7.0ないし約3500mg/日であり、他のある態様では、約70ないし約700mg/日である。
そのような疾患を治療の当該技術分野における通常の熟練者は、必要以上の試験を行うことなく、及び自分の知識や適用説明書に基づいて、中毒又は依存の治療又は予防のための化合物Aの治療上の有効量を確定することができる。一般には、一例として、これに限定されることなく、化合物Aは、医薬組成物として以下の経路によって投与される。経口、全身性(例えば、経皮、鼻腔内又は坐剤によって)又は非経口(例えば、筋肉内、静脈内又は皮下)である。医薬組成物は、一例として、これに限定されることなく、錠剤、丸薬、カプセル剤、半固体、散剤、持続性放出製剤、溶液、懸濁液、エリキシル剤、エアロゾル、又は、他のあらゆる適切な組成物の形態をとることができ、及びこれらは、一般に、化合物Aと少なくとも一つの薬学的に許容される賦形剤と併用される。許容される賦形剤は、一例として、これに限定されることなく、非毒性、投与補助剤、及び化合物の治療効果に悪影響を与えるようなものでない化合物である。そのような賦形剤は、例えば、あらゆる、固体、液体、半固体、又は、エアロゾルの場合には、当該技術分野における熟練者が一般に入手できるガス状の賦形剤であってもよい。
固体の医薬賦形剤は、一例として、これに限定されることなく、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白墨、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、脱脂粉乳等がある。液体及び半固体の賦形剤は、水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール及び石油、動物性、植物性、又は合成油脂(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等)を含む様々な油脂から選択されるものを含む。好ましい液体の担体は、特に注射用溶液としては、一例として、これに限定されることなく、水、生理食塩水、デキストロース水溶液及びグリコール類がある。圧縮ガスをエアロゾル形態の化合物の分散に用いてもよい。不活性ガスが適切であり、その目的に用いられる一例として、これに限定されることなく、窒素、一酸化炭素、亜酸化窒素等がある。
医薬製剤は、一例として、これに限定されることなく、さらに保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を調節する塩、緩衝剤、マスキング剤又は抗酸化剤を含んでいてもよい。ある特定の態様では、更に他の治療に有効な物質を含んでいてもよい。他の適切な医薬担体及びその剤形は、A. R. Alfonso Remington’s Pharmaceutical Sciences 1985、17th ed. Easton、Pa.:Mack Publishing Companyに記載されている。
組成物中の化合物Aの用量は、例えば、剤形、投与単位の用量、賦形剤の種類、及び医薬品科学における当該技術分野における者に知られている他の因子により、様々である。一般に、最終組成物は、10%(重量)ないし90%(重量)が化合物であり、好ましくは25%(重量)ないし75%(重量)であり、残部に賦形剤を含む。好ましくは、医薬組成物は、継続的な治療においては単一の投与ユニットの形態によって投与され、又は、症状の緩和が特に必要な場合に投与する際に、単一の投与ユニットの形態で投与される。
[14C]−ネピカスタットの経口投与後、血漿中において、放射性同位体の大部分はネピカスタットのN−結合グルクロニド(代謝物2、M2)に付随したが、同定できない極性断片(Ml)が存在した。複数回投与においてもネピカスタットの顕著な凝集は見られずT1/2は、単回及び複数回投与において同様であった。T1/2は10−14時間であった。速いアセチレーター表現型及び遅いアセチレーター表現型の間でCmax又はAUCの有意差は見られなかったが、N−アセチル代謝物のCmax又はAUCは予想通り、速いアセチレーターに比べ、遅いアセチレーターではずっと低い値となった。絶食及び食後の40mg錠剤の服用による薬物動態を比較すると、血漿中濃度の有意差は見られなかった。Taxは絶食では1.4時間だったのに対し、食後の服用では3.5時間に増加した。
男性及び女性において40mgを単回投与した場合のネピカスタットの薬物動態を比較した。AUCは約43%女性の方が男性よりも大きく、Cmaxは約23%女性の方が男性よりも大きかった。T1/2は、女性の方が男性よりも長かった。ネピカスタット40mg投与後10日の薬物動態は、T1/2には違いはなかったが、AUCは健常者の方がCHEFの患者よりも高かった。いずれの集団においても、複数回投与による顕著な蓄積はなかった。
ヒトにおいて、化合物に関連する放射能は、速やかに消失した。87.4%の投与された放射性標識体は、最初の72時間で82.4%が尿中に、及び5.01%が糞便中に回収された。10日間で、合計平均93.8%の放射性標識体が排泄された。血漿中、放射性同位体のTaxはl−2時間(ネピカスタットと同様である)であった。速い及び遅いアセチレーターのいずれにおいても、ネピカスタットのN−結合グルクロニドは、0ないし48時間以上にわたり、血漿(26.8%)及び尿中(57.9%)に合計の放射性同位体は、もっとも大きな率で存在していた。血漿中の合計の放射性同位体の末端T1/2は非常に長く(〜100時間)、遅く消失する低濃度の極性断片の存在によるものと考えられる。
ネピカスタットの認知機能への影響を調べるため、被験者に5又は40mgのネピカスタットを投与したが、気分、睡眠、又は認知において顕著な障害はなかった。甲状腺における123Iの取り込みを調べるため、5、40、及び100mgのネピカスタットを投与したが、プラセボに対して有意差はなかった。単回で200mgのネピカスタットの投与後、取り込みの減少は、プラセボに対して有意となったが、10mgのメチマゾール投与後におけるものよりは顕著に低かった。第I相臨床試験における単回投与試験において、5ないし800mg(塩酸塩として計算)のネピカスタットの投与は、全般に健常者の男性において、耐性の値は良好であった。
第I相臨床試験における複数回投与において、5及び40mgのネピカスタットの投与は、健常者の男性において、耐性の値は良好であった。
8日間以上200mgを投与した者6人中5人は、自然に湿疹が現れた。
6日間200mgのネピカスタット投与後に、1人は心房不整脈及び断続的な右脚ブロックを形成した。
16人の治療を希望しないコカイン依存の入院患者のボランティアを、二重盲検、対象者内のプラセボコントロールと対比し、試験した。インフォームドコンセントを行った後、参加の可能性のあるボランティアは、外来患者用の精神医学上の及び医学上のスクリーニングを行った。適格性を有するボランティアを選び、身体検査、EKG、妊娠試験及び精神医学上の試験を完了した。参加者(n=12)は、毎日、投与量を増加させてコカイン投与を受け(0mg、10mg、20mg、及び40mg)、ネピカスタットを増量する増量法を用いて行った(0mg、80mg、160mg)。並行群の参加者(n=4)は、試験中盲検試験を保つため、毎日、プラセボを処置された。それぞれの用量を処置する段階において、毎日4日間に渡り、又はネピカスタットの半減期の4倍以上の10ないし14時間間隔で投与した。それぞれの用量において4日目には、参加者は、コカインを0mg、10mg、20mg、及び40mgの順に投与を受けた。コカインは、心血管及び主観的な効果の両方がベースラインに戻るのに十分な1時間間隔で投与した。心血管の指標は、継続的なEGKを用いて注意深くモニターし、コカインの投与を含む全ての過程を通じて頻繁に血圧を測定し、及び、停止パラメータを適切に設定し、あらかじめセットされた心血管の指標の限界を超える場合には、コカインを投与しないようにした。以前の試験において、コカイン32mgを6回の投与し、14分の間隔で投与することが安全であり、投与間隔が1時間であれば、更に安全性が高いことが示されている。10mgのコカイン投与の薬物動態の分析のため、投与から3日目に0mgネピカスタット及び、3日目に80mg及び160mgのネピカスタットを投与したものの血液サンプルを集めた。得られた情報からは、相互作用は考えられない。
それぞれの参加者は、試験が完了するまでに、約12日間かかる。16人の参加者は、試験を1年以内に完了する。
試験に参加するには、参加者は:
1.試験の時点で治療を必要としていない、英語を話すボランティアであること;
2.18−55歳であること;
3.コカイン依存のDSM−IV TR基準を満たすこと;
4.自己申告書において静注によるコカイン使用及び少なくとも一つのコカイン使用による陽性尿があったこと;
5.生体情報として、安静時の脈拍が50及び95bpmの間にあること、血圧が85−150mmHg(最高血圧)及び45−96mmHg(最低血圧)であること;この基準は、承認の2日前に満たさなければならない;
6.血液及び化学物質検査において正常値の範囲内にあること(+/−10%)制限には以下の例外がある:a)肝臓機能検査値(総ビリルビン、ALT、AST、及びアルカリホスファターゼ)<正常値の3倍まで、及びb)腎機能検査値(クレアチニン及びBUN)<正常値の2倍まで;
7.臨床的に正常な洞律動を示すEKGベースラインを有すること、及び臨床的に顕著な不整脈を有しないこと;
8.治療履歴を持ち、簡単な医師の試験により、許可した医師及び治験責任医師の判断において、試験の参加に臨床的に顕著な禁忌がないこと。
参加予定者は、以下のいずれかに該当すると、参加できない:
1.てんかん発作の病歴又は疑いのある事実又は脳障害;
2.以前に、意識消失、胸痛、又はてんかん発作を含みコカインに対する医学的副作用があったこと;
3.神経又は精神障害、例えば;
・精神障害、双極性疾患又はSCIDにより大うつと診断されたこと;
・臨床面接において器質性脳疾患又は痴呆と判断されたこと;
・現在治療が必要又は試験のコンプライアンスが困難になるであろう何らかの精神疾患の病歴があること;
・自殺を試みた経歴があること、及び/又は、SCIDにより現在自殺願望/計画を持っていると評価されたこと;
4.参加予定者が降圧薬を服用しているにもかかわらず、臨床的に重篤な心臓病又は高血圧であるとPIにより判断されたこと;
5.一親等以内の親族に早期の心血管疾患の有病又は死亡の家族歴があるとPIにより判断されたこと;
6.神経内分泌系、自己免疫系、腎臓系、肝臓系、又は活動性感染症を含む未治療または不安定な疾患の事実があること;
7.HIV感染者であり現在症状があること、AIDSと診断されたこと、又は高レトロウイルス薬の投与を受けていること;
8.妊娠又は授乳中であること。それ以外の女性は妊娠できない(例えば、外科的に不妊とした,不妊症、又は閉経後であること)、又は信頼できる形態の避妊を行っていること(例えば、禁欲していること,経口避妊薬,子宮内避妊器具、コンドーム、又は殺精子剤)。全ての女性は、病院の許可の前及び試験参加の終わりにおいて、尿による妊娠検査で、陰性でなければならない。
9.喘息であること、又は現在α又はβアゴニスト、テオフィリン、又は他の交感神経様作用薬を使用していること;
10.PI及び/又は許可する医師が安全に及び/又はうまく試験を完了させるには除外した方がよいと判断した他の疾患、病態を持つ、又は向精神薬を使用している者。
兆候が見え始めた時点で中止する基準
11.薬物のスクリーンで、コカインの違法使用を示す場合、コカイン、アルコール、オピオイド、又は他の乱用薬物で本プロトコールの一環として得られたものでないものについて尿が陽性、又は呼気検査で検出されたこと;
12.試験の手続に従えない者;
13.コカインに過剰に反応することにより以下の中止の基準に該当する場合。
中止の基準
参加者は、プロトコールに残るには、継続的に基準に適合していなければならない。顕著な不整脈又は生体情報が以下の許容範囲外にある場合には、コカイン投与を開始してはならない。安静時脈拍は、<130bpm、及び血圧が165mmHg(最高血圧)及び100mmHg(最低血圧)以下であること。コカイン投与を受けて、生体情報が一過性の増加をすることはありうるため、これらの値は、治験に含むか/含まないかの基準値よりも高い。加えて、コカインの繰り返し投与は、コカイン毒性の兆候(動揺、精神障害、、試験の手続に協力できないこと)がある場合には行わない(及び、治験医がコカインの投与を中止する)。
以後の参加を中止する基準
以下のいずれかの兆候が現れた場合には、中止する。
1.最高血圧 BP>180mmHgが5分間以上続いたこと;
2.最低血圧 BP>120mmHgが5分間以上続いたこと;
3.心拍>(220−年齢×0.85)bpmが5分間以上続いたこと。
患者選別基準の論理的根拠
参加者は、より強力な内受容効果を受けることを避けるため、静注によるコカイン投与を受ける必要がある。判断未確定の心血管系疾患の患者の参加を避けるため、年齢の基準はあらかじめ定めていた。潜在的な基礎疾患の悪化を防ぐため活動性HIV疾患の参加者は除いた;コカイン依存により高いリスクを負う無症候性HIV疾患の患者もこの中に含めた。喘息患者(又は喘息治療薬服用者)は、βアゴニスト薬及びコカインの有害な相互作用の可能性のために除いた。
治験薬
コカインは、DA/NE、及びセロトニンのシナプス前小胞への取り込みを阻害することによる典型的な神経作動効果を有する。コカインは約90分という短い排泄半減期を持つ。コカインの主な臨床効果は、精神運動の活発化及び交感神経系の緊張の増加であり、心拍及び血圧が上昇する事象として現れる。
コカインは単回投与で上限40mgまでの用量で投与され、上限は13分間隔で20mgの用量を10回投与することからなる自己投与で200mgまで投与できる。これらの用量は、本試験の参加者が毎日使用していたと報告した用量に比べて、少量である;典型的には、毎日平均250mgないし500mg以上の投与パターンであった。
提案した投与量よりもずっと多い用量となると、てんかん発作に関わり、重篤な心血管毒性及び死亡につながる。これらの毒性の可能性は、比較的低用量を用いること、そのおそれのあるボランティアへの注意深いスクリーニングを行うこと、コカイン投与後、参加者への注意深いモニタリングを行うこと、及び有害作用を生じた場合にはすみやかに医学的な介入を行えることにより、改善される。
コカインは静注により投与されるため、バイオアベイラビリティは完全である。コカインは、まず血漿中エステラーゼによりベンゾイルエクゴニンに代謝され、これはネピカスタットにより影響を受けるとの報告はない。ベンゾイルエクゴニン、及び他の少量の代謝物は腎排泄される。
ヒトへの静注用のコカインは、NIDAとの契約で得、コカインに関するNIDAのIND承認書はFDAから得て提出した。
午前7時に、用量を増加させてネピカスタット投与する(0mg、80mg、及び160mg)。それぞれの投与レベルで4日間投与を続ける。
低い用量から始め、最初の試験手続を完了した後に用量を増加させることにより、ネピカスタット及びコカインの併用のリスクを最小限にする。このアプローチは、これまで7%ないし20%のボランティアに起こっていた発疹の可能性も減らすことができる。発疹は、用量及び治療期間に関連する。用量が160mgを超えると、発疹のリスクが大きくなる。
ネピカスタットは、酵素阻害剤でないため薬物動態学的相互作用は想定していないが、10mgのコカイン投与において行った薬物動態学的評価により、ネピカスタットのそれぞれの用量レベルにおける投与で3日目に確認できた。ネピカスタットは、NEの合成を減らすため、ネピカスタットでの治療中、コカインの効果は小さくなると考えられる。ネピカスタットは血漿中及び脳内のDA濃度を高めるため、DA介在性の副作用、例えば、被害妄想が起こることが考えられる。これらの症状は、CHFでの試験中には見られなかったが、これらの試験において刺激薬は投与されなかった。
同意に従い、参加者は、薬物使用を行っている証拠としてコカイン陽性尿サンプルを提出する必要がある。(使用可能な装置の数に限定があるため)ある参加者には、スクリーニング中及び試験中テレメトリーを装着するように指示し、心拍及び動きを記録した。この装置からのデータから、これらのパラメータの変化により薬物使用を特定できる。
ニコチンに曝されるのを制限するため、試験前2時間以内は、コカイン摂取又は暴露に関わる喫煙は禁止される。参加者は、試験期間中、違法な及び処方による薬物の使用は控えるように指示され、これは毎日の尿及び呼気中のアルコールレベルによって確認される。
参加者は、検査期間中、その日のだいたい同じ時間に服用するように指示されている。コカインは検査室で投与される。2分以上かけて、コカイン又は生理食塩水のプラセボを、シリンジポンプを用いて投与する。薬物投与の1時間後、心拍及び血圧をモニターした。
参加者は目的の治療を受け、身体検査を受ける。血液は、CBC、電解質、LFT、及びクレアチニンを含む標準的検査のために、採取される。HIVスクリーニングは、参加者にサービスとして行われ、陽性の者はカウンセリングし、治療について言及した。
(使用可能な装置の数に限定があるため)アクチハートミニミッター(Actiheart Mini Mitter)を用いて、ある参加者は参加許可の前に心拍及び動きを測定した。ミニミッターは、参加者の皮膚にペーストを用いて付着し、2週間までの期間で、侵襲なしにEGK及び動きを記録した。データは後の分析のためにPCにダウンロードできる。
参加者は、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)による、参加/排除の基準により決定されるコカイン及びニコチン依存のDSM−IV TR基準を満たさなければならない。MINIは、1990年に米国及び欧州で精神科医及び臨床医によってDSM−IV TR及びICD−10精神疾患のために開発された短い、構造的な診断用面接である。MINIは、臨床精神薬理学試験及び免疫学研究における評価及び結果の追跡に用いられている、精神評価及び構造化された精神科の面接の一つであり、世界でもっとも広く用いられている精神科の構造化診断の面接方法である。この装置は、被験者が薬物依存症の基準に適合しているか、及び何らかの大きな精神疾患を有しているかの判断において用いられる(例えば、情動障害、統合失調症)。
嗜癖重症度指標−ライト 臨床学的因子(ASI−Lite CF)バージョンは、検査の間、訓練を受けた研究員により投与される。嗜癖重症度指標−ライトは、参加者の状態による、参加者の7つの分野における面接者による重症度の指標である(医療、雇用、薬物使用、アルコール使用、法的、家族/社会、及び精神)。ライトバージョンは、ASI構成スコアの計算に、全ての質問を維持したままのASIの短いバージョンである。ASIの家族歴部分でも、ASI−ライトバージョンでは、最小限の家族歴の情報を集め、維持されている。
1996年に改訂されたベック鬱評価尺度(BDI)の第3世代がある。この尺度は、オリジナルの、約10分で終了する21項目の質問形式である。BDI−IIは、BDI−IAに対して改訂され、鬱/苦痛のよい指標として存在する。この指標は、参加者のうち、試験期間中に臨床的に鬱になった者に対して用いられ、参加者の安全を計るにも有用である。
現在、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状を、ADHD−IV評価スケールを用いて毎週評価している。
神経精神科検査(Neuropsychiatric Inventory)により得られたやる気スコアをベースラインで補正した。
頬の中を綿棒でこすってワットマンFTAカードに適用し、DNAを得た。これらのカードは、DNA抽出のための生体サンプルを安全に安定して保存することができる。予想されたゲノムDNAは50−100μgであり、現在入手可能な方法で500以上の遺伝子型のアッセイに十分用いられる量である。
表現型は、5’エクソヌクレアーゼベース(タクマン社)の表現型アッセイを用いて行った。アッセイは、アプライドバイオシステム社(ABI;アッセイバイデザイン)によって行われた。対立遺伝子の分離は、ABI3730リアルタイムPCRサイクラーによって行った。
コカインの薬物動態の分析のための血液サンプルは、0mgのネピカスタット投与期間中(検査第1日)及び80mg及び160mgのネピカスタット投与期間中(検査第4及び8日)に採取した。血液サンプルは、それぞれの用量レベルのネピカスタット投与3日目に、コカイン10mg投与後、15、20、30、40、50、60、90、120、180、240、300、360、420及び480分後に採取した。それぞれの用量レベルのネピカスタット投与に合わせて、他の用量のコカイン(0−40mg)も投与し、薬物動態評価が他の評価に影響しないようにした。血液を採取し、血漿を分離して、分析まで-70℃で凍結させた。コカイン及びBEは液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析装置(LC/MS/MS)を用いてアッセイした。これらのアッセイにおいては、参照試験機は、2.5ng/mlの定量限界がある。薬物動態分析により、ネピカスタットはコカインの薬物動態に影響を与えることが明確になった。
DBHは、NE貯蔵顆粒に貯蔵されNEとともに分泌される。それゆえ、血漿中DBHは、中枢神経系における酵素活性のよい指標となる。血液は、毎日午前10時に採取し(コカイン/プラセボ投与前)、次の分析のために保存した。DBH活性は、チラミン−オクトパミン法を用い、上述した高速液体クロマトグラフィー−蛍光分析法を用いて測定した。これにより、DBHの経時変化の測定が可能となり、ネピカスタットによるDBH阻害の薬力学に関する考察を提供することができる。DBIは、気分の変化をモニターするために、プロトコールを通じて繰り返し投与された。
0ないし100にスコア化するために、デジタル化された連続する10cmの直線からなるコンピュータ化された視覚的アナログスケール(VAS)を用いて主観的効果を測定した。参加者は、カーソルを左端から、ラインに沿って左又は右に動かして鬱の度合いを左又は右のマウスボタンによって表すよう指示されている。VASはコカインによる多幸感、情動不安及び渇望を迅速に反映するようデザインされている。これらは、「何らかの薬物の効果」「高い」「よい効果」「興奮している」及び「悪影響」「被害妄想」「疑い深い」及び「入手できればコカインを使用する」「コカインを渇望する」「今はコカインを拒否できる」及び「コカインを欲する」。VAS測定は、コカイン投与前、及び、投与後5、10、15、20、30、及び45分に行われた。
コカイン投与後5分後、(違法薬物提供者から現在購入するとしたら)$50/mgを基準に、その用量の薬物にいくら支払うかを参加者に質問した。コカインの価格は時間と場所により変化し、応答を標準化するため、基準値を提供した。
治験薬による治療最終日の第13日、「試験期間」の全ての参加患者は、お金、又は、一連の二重盲検用のプラセボの投与又は20mgコカイン投与を選択した。ある期間ではプラセボ(生理食塩水)のみが選択可能であった。他の期間では20mgコカインのみが選択可能であった。参加者は自己投与のプラセボ又はお金、又は、20mgコカイン又はお金を選択した。これは、朝(午前)及び昼(午後)に行い、順序はランダムに、プラセボ又はネピカスタットが被験者の数に釣り合うように投与した。
実験(選択)項:
それぞれの試験期間中、それぞれ患者は、注射(青又は、緑)又はお金の一連の選択をするように求められる。色は、サンプル期間中の投与量に対応する(コカイン0mg又は20mg)。選択した2つの期間のそれぞれについて、点滴(一つの期間にはコカイン0mg静注、及び他の期間にはコカイン20mg)又はお金に関して参加者は10の選択をする。参加者は、お金を増額するオプション($0.05、$0.05、$0.05、$0.05、$1、$4、$7、$10、$13、及び$16)又は患者管理鎮痛(PCA)ポンプを用いたコカイン(0mg又は20mg/静注/点滴)の一連の選択をすることができる。
コカイン点滴を選択した患者は、PCAボタンを用い、それに対してお金を選択した者は、治験監督者に口頭で申告させた。点滴は、2分以上に渡って行われ、3分の休止時間をおく。そのような場合、5分間隔の選択がなされることになる。
参加者はコカイン投与を選択したことを申告した直後にコカインを受け取る。あらかじめセットされた最大200mgまでの投与における生体情報が残る(10×20mg)。お金の選択者は、選択の直後に受け取るが、このお金は退院までに使わなければならない。
表は、合計16人の参加者の実験における選択期間である。
ネピカスタットの12の標本数は、最初の評価に適切な、治療されたグループが中程度から大きな大きさのものであれば、検出される。プロット(図1)は、有効なサイズが5ないし15に変化する様子を表す。サイズ12より大きいと、違いを検知する分析能力が上がっていくが、コストが増加する。プラセボ投与群は、盲検試験を保つためのものであり、比較群としては扱うことは意図していない。
ネピカスタット治療群においては、分析は、主としてネピカスタットの効果に向けられている。プラセボ治療群は、主として盲検を保つためにある。副作用及び有害作用(AEs)は表にし、ANOVA又はカイ二乗検定を用いて、治療条件で比較した。コカイン静注及びプラセボ投与における、ネピカスタット治療の主作用及び心血管への作用と、プラセボを用いた治療における効果とを、反復測定分散分析(時間が繰り返し単位)(ANOVA)、ピーク効果一元配置分散分析及び、及び必要なら曲線下面積ANOVAを用いて比較した。
チラミンからオクトパミンへの変換を測定することにより、ウシ及びヒトのドパミンβ−ヒドロキシラーゼ活性を測定した。ウシ副腎のドパミンβ−ヒドロキシラーゼはシグマ化学(St Louis、MO、USA)から得たのに対し、ヒトのドパミンβ−ヒドロキシラーゼは神経芽細胞腫細胞株SK−N−SHの培地から精製した。アッセイは、pH5.2及び32℃で、0.125M NaAc、10mMフマル酸、0.5−2μMCuSO4、0.1mg.ml−1、0.1mMチラミン及び4mMアスコルビン酸を含んでいる培地中で行った。典型的なアッセイでは、反応混合物に0.5−1ミリ単位の酵素を加え、続いて、カタラーゼ、チラミン及びアスコルビン酸を含んだ基質混合物を加えて反応が開始した(最終容積200μl)。サンプルは、適切な濃度のネピカスタット又は化合物Bを含み又は含まず、37℃で30ないし40分培養された。25mM EDTA、240μM 3−ヒドロキシチラミン(内部標準)を含む停止液でクエンチした。サンプルはオクトパミンを、逆相カラムクロマトグラフィー(HPLC、280nMの紫外線を検出)で分析した。HPLCは、流速1ml.分−1であり、リクロカート125−4 RP−18カラムを用い、及び均一溶出、10mM塩酸、10mM 1−ヘプタンスルホン酸、12mM テトラブチルアンモニウムホスファート及び10%メタノールで行った。活性%は、内部標準を用いて作成した非線形4次元係数濃度反応曲線で適合させして、コントロールに基づいて計算した。
ネピカスタット(S−エナンチオマー)及び化合物B(R−エナンチオマー)は、ウシ及びヒトドパミンβ−ヒドロキシラーゼの濃度依存的阻害活性を有する。算出したIC50値は、それぞれ8.5±0.8nM及び9.0±0.8nMであった。化合物B(IC50値は、ウシ及びヒト酵素それぞれに対し、25.1±0.6nM及び18.3±0.6nMであった)は、ネピカスタットよりもわずかに活性が弱かった。ネピカスタットは、強力な阻害剤であることが示された。S−エナンチオマー(ネピカスタット)の阻害活性は、下限ぎりぎりではあったがR−エナンチオマー(化合物B)よりも有意に阻害効果があり、その阻害活性は立体特異的であることがわかった。
選択された12の酵素及び受容体に対するネピカスタットの効果は、受容体は、確立されたアッセイを通じて決定した。それぞれの酵素アッセイの根底にある理念の簡単な説明は、図2にある。結合データは、用量反応曲線により、4係数ロジスティック方程式に組み込んで分析した。Ki値は、チェン・プルソフの等式を用いて計算した。酵素活性は、IC50値(酵素活性の50%阻害に必要な濃度)で表した。
ネピカスタットは、他の酵素(チロシンヒドロキシラーゼ、アセチルCoA合成酵素、アシルCoA−コレステロールアシルトランスフェラーゼ、Ca2+/カルモジュリンタンパク質キナーゼII、シクロオキシゲナーゼ−I、HMG−CoA還元酵素、中性エンドペプチダーゼ、一酸化窒素合成酵素、ホスホジエステラーゼIII、ホスホリパーゼA2、及びタンパク質キナーゼC)及び神経伝達物質受容体(α1A、α1B、α2A、α2B、β1及びβ2アドレノセプター、M1ムスカリン受容体、D1及びD2ドパミン受容体、μオピオイド受容体、5−HT1A、5HT2A、及び5HT2Cセロトニン受容体)に対する親和性(IC50又はKi>10μM)は無視できる程度である。ネピカスタットは、他の12の受容体及び13の神経伝達物質受容体に対する親和性は無視できる程度であるため、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼに対する高い選択性を示すといえる。
SHRに関連する試験においては、薬物、ネピカスタット((S)−5−アミノメチル−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−1、3−ジヒドロイミダゾール−2−チオン塩酸塩)及び対応するR−エナンチオマー(化合物B)投与チューブを用いて経口投与した。イヌの試験では、薬物はカプセルに充填し、経口的に投与した。全ての投与は、遊離塩基等価体として示す。
雄のSHR(15−16週齢、チャールスリバー社、Wilmington、MA、USA)をインビボ試験に用いた。試験の日には、動物は体重を計り、ランダムに媒体(コントロール)又は適切な用量のネピカスタット(3、10、30又は100mg.kg−1、経口)又は化合物B(30mg.kg−1、経口)を12時間ごとに、3回連続して投与するために振り分けた。3回目の投与の6時間後、ラットはハロタン麻酔をし、頭部を切除し、組織を迅速に摘出し、計量し、氷冷した過塩素酸に浸け、液体窒素で凍結させて、−70℃で続く分析まで保存した。ノルアドレナリン及びドパミン濃度を定量するため、組織を短時間超音波処理し、13,000rpm、30分間、4℃で遠心分離した。上清に、3、4−ジヒドロキシベンジルアミン(内部標準)を混合し、ノルアドレナリン及びドパミンを電気化学的に検出した。
コントロール動物の基部組織カテコールアミン含有量(μg.g−1湿重量)は、以下の通りであった。腸間膜動脈(ノルアドレナリン、10.40±1.03;ドパミン、0.25±0.02)、左心室(ノルアドレナリン、1.30±0.06;ドパミン、0.02±0.00)及び大脳皮質(ノルアドレナリン、0.76±0.03;ドパミン、0.14±0.01)。ネピカスタットは、試験した3つの組織において、用量依存的にノルアドレナリン含有量を減少させ及びドパミン含有量及び、ドパミン/ノルアドレナリン比を増加させた。
これらの変化は、≧3mg.kg−1投与の場合において、腸間膜動脈及び左心室において統計的に有意であった(p<0.05)が、大脳皮質においては、30及び100mg.kg−1においてのみであった。最高投与量(100mg.kg−1、経口)では、ノルアドレナリンは、腸間膜動脈、左心室及び大脳皮質においてそれぞれ、47%、35%、42%減少し、及びドパミンは、それぞれ820%、800%及び86%増加した。ネピカスタットを30mg.kg−1、経口で投与した場合、R−エナンチオマー(化合物B)と比べて、腸間膜動脈及び左心室において大きく変化した。
雄のビーグル犬もインビボ試験に使用した(10−16kg、Marshall farms USA Inc、North Rose、NY、USA)。試験の日に、イヌを計量し、5日間、空のカプセル(コントロール)又は、適切な用量のネピカスタット(0.05、0.5、1.5又は5mg/kg−1;経口、bid)を投与するためにランダムに振り分けた。第5日における最初の投与の6時間後に、ペントバルビタールで安楽死させ、組織(大脳皮質、腎動脈、左心室)を速やかに摘出した。組織は、続いて処置して及びノルアドレナリン及びドパミンの分析に用いた。
データは、平均±平均値の標準誤差(SEM)で表される。組織及び血漿カテコールアミンのデータは、それぞれノンパラメトリック一元配置分散分析(ANOVA)又は二元配置ANOVAを用いて分析し、フィッシャーの最小有意差法を用いて対比較した。P<0.05であれば、統計的に有意である。
コントロール動物の基部組織におけるカテコールアミン含有量(μg.g−1 湿重量)配下の通りであった。腎動脈(ノルアドレナリン、10.7±1.05;ドパミン、0.22±0.01)、左心室(ノルアドレナリン、2.11±0.18;ドパミン、0.07±0.03)及び大脳皮質(ノルアドレナリン、0.26±0.02;ドパミン、0.03±0.00)であった。コントロール動物と比較すると、ネピカスタットは、試験した3つの組織において、用量依存的にノルアドレナリン含有量を減少させ及びドパミン含有量及び、ドパミン/ノルアドレナリン比を増加させた。
これらの変化は、3つの組織において≧0.1mg.kg−1.日−1の投与量において統計的に有意(p<0.05)であった。最高投与量(5mg.kg−1、bid、経口)では、腎動脈、左心室及び大脳皮質において、それぞれノルアドレナリンは88%、91%及び96%、及びドパミンは627%、700%及び166%増加した。
雄のビーグル犬を、15日間、空のカプセル(コントロール)又はネピカスタット(2mg/kg−1、経口、bid)を経口投与するためにランダムに振り分けた。毎日、最初の投与の6時間後に、ドパミン及びノルアドレナリンの血漿中濃度を測定するために静脈血サンプルを採取した。サンプルを、ヘパリン及びグルタチオンを含むをチューブに収集し、−4℃で遠心分離し、分離した血漿を、−70℃で分析まで保存した。カテコールアミンのベースラインの濃度は、二群の動物において互いに有意には異ならなかった。ネピカスタットで処理した群の、血漿中ノルアドレナリン及びドパミン濃度はそれぞれ、460.3±59.6及び34.4±11.9pg.ml−1、コントロール群はそれぞれ、401.9±25.5±及び41.1±8.8 pg.ml−1であった。コントロール群と比較すると、ネピカスタット(2mg.kg−1、bid、経口)は、有意にノルアドレナリンの血漿中濃度を有意に低下させ、ドパミンの血漿中濃度及びドパミン/ノルアドレナリン比を増加させた。
この経路における活性の上昇が疾患の悪化につながるため、薬理学的方法による交感神経機能の阻害による調節は、治療戦略としてうっ血性心不全の管理に魅力的である。この試験の目的は、ネピカスタットの効果の薬理学的特徴づけであり、ここでネピカスタットは、酵素であるドパミンβ−ヒドロキシラーゼの阻害による交感神経におけるノルアドレナリン合成の調節を行う化合物である。
インビボでのドパミンβ−ヒドロキシラーゼの阻害は、ノルアドレナリン受容体神経支配を受ける組織における、基質(ドパミン)レベルの上昇及び生成物(ノルアドレナリン)のレベルの低下につながると予測された。この予測は、インビボでの、中枢及び末梢組織におけるネピカスタットのカテコールアミンレベルへの影響を見る実験で証明された。SHR及びビーグル犬ともに、ネピカスタットは、用量依存的に末梢(腸間膜又は腎動脈、左心室)及び中枢(大脳皮質)組織におけるノルアドレナリン含有量の低下及びドパミン含有量の上昇を引き起こした。この観点からすると、化合物Bは、IC50値が酵素の前者のエナンチオマーであるネピカスタットよりも弱い作用である。ドパミン/ノルアドレナリン比も上昇したが、ドパミンのノルアドレナリンへの置換は、化学量論量的に起こったように見えなかった。これは、神経内の代謝による、組織のドパミンレベルの過小評価により説明できると考えられる。
ネピカスタットに大脳皮質におけるカテコールアミンレベルの調節能があることは、血液脳関門を薬物が浸透することを示唆している。イヌの大脳皮質におけるカテコールアミン量の変化の程度は、末梢組織におけるものに匹敵するものであった。しかし、SHRにおいてはネピカスタットが低容量(≦10mg.kg−1)の場合、大脳皮質におけるカテコールアミン量に影響を与えることなく、末梢組織において有意にノルアドレナリン及びドパミン含有量に変化を与えた。このことは、少なくともSHRにおいては、薬物は適度に末梢選択性を有するという。
血漿中ノルアドレナリン濃度は、このパラメータは、神経系への取り込み及びカテコールアミンの代謝によるクリアランスによる影響を受けることはあるが、全般的な交感神経の活性のよい基準となる。イヌにおいて、血漿中のノルアドレナリン濃度のベースラインは、初期に驚くほど上昇したが、これはおそらく静脈切開術による血液サンプリングの方法によるストレスを反映していると考えられる。それにもかかわらず、コントロール群と比較すると、ネピカスタット処置によって、神経への取り込み又は代謝排泄に対して間接的ではあるが、神経伝達物質合成の減少及び放出に対応する、血漿中ノルアドレナリン濃度の有意な減少が見られた。ノルアドレナリン放出は、神経性ノルアドレナリンの総貯蔵の小分画であるので、ノルアドレナリン生合成の阻害剤が、ノルアドレナリン放出に影響を与えるのは、存在するカテコールアミンの貯蔵分が十分に使い果たされた後のこととなる。従って、血漿中ノルアドレナリン濃度の減少は、ネピカスタット投与第4日まで統計的に顕著な変化がなかったのは、交感神経系の緩やかな調節のためと考えられる。
事実の蓄積から、うっ血性心不全における慢性の交感神経系の活性の高進は、不適応応答によることが示唆されている。この主張は、うっ血性心不全の患者へのカルベジロールの影響による長期の有病率及び死亡率に対して有利な効果を示した臨床試験によって裏付けられている。しかし、ほとんどの患者が、心血管系ホメオスタシスをサポートするのに、何らかのレベルの交感神経駆動を必要としていることは注目すべきである。事実、カルベジロールを含むβブロッカーによる治療評価は、特に治療開始による血流力学的低下の傾向により制限されている。交感神経系の高進による突然の離脱から生じる望ましくない効果には、注意深い用量滴定が必要である。ネピカスタットといったドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤は、以下の理由によりこのような望ましくない作用を有しない。まず、このクラスの薬物は、アドレナリン放出を停止させるのではなく減弱させる、次に、徐々に系を変化させるため、用量滴定を必要としないためである。β−ブロッカーに対する他のネピカスタットの利点は、ドパミン受容体への作動活性によりドパミンレベルを上昇させ、腎血管拡張、利尿及びナトリウム利尿といった腎機能に有益な効果をもたらす。
ネピカスタットは強力で、交感神経系の高進に関連のある心血管障害として評価される疾患の治療に有効である選択的で経口活性のあるドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤である。
ネピカスタットは、テトラロン3(CH2Cl2中−65℃で3、5−ジフルオロフェニルアセチルクロライドとエチレンをAlCl3−触媒によるフリーデルクラフツ反応させることにより得られる。)を、寺島により見出された条件(LAH、(−)−1R、2S−N−メチルエフェドリン、2−エチルアミノピリジン)で、キラル還元することによりR−(+)−テトラロール4a(92−95%ee)を得、これをR−(+)−メシレートに変換し、続いてアジ化ナトリウムと反応させることによりアジド及びジヒドロナフタレン7(9:1)の混合物が得られる。アジドを水素化し、生成物を無水塩酸で処理し、得られたS−(−)−アミン塩酸塩をストレッカー反応(ホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加体及びKCN)によりS−(−)−アミノニトリルに変換した。ヘテロ環の形成は、アミノニトリルの一連のジホルミル化反応、続くチオシアン酸による処置により行われる。競合するニトリル加水分解によって、一級アミドが相当量生成する。ニトリルのアミンへの還元は、THF中LAHを用いて行った(93−96%ee)。エナンチオマーは、寺島・ケトン還元の同様の経路で(+)−1S、2R−N−メチルエフェドリンを不斉補助基として用いて行った(91.6%ee)。不斉中心の絶対配置は、S−(−)−2−テトラロールに関する先行文献をもとに決定した。
融点は、ユニメルト・トーマス・フーバー・キャピラリー融点測定装置又はメトラーFB81HT細胞を有するメトラーFP90プロセッサーで測定し、補正しなかった。質量は、フィニガンMAT8230(電子衝撃法又は化学イオン化法)又はフィニガンMAT TSQ70(LSIMS)分光計によって行った。1H NMRスペクトルは、ブルカーACF300、AM300、AMX300又はEM390分光計及びケミカルシフトは、ppm(δ)で、テトラメチルシランを内部標準として用いて得られた。IRスペクトルは、ニコレットSPC FT−IR分光計により行った。UVスペクトル解析は、バリアン・キャリー3 UV−可視分光計により行った(リーマンラボ社)。旋光度は、パーキン・エルマーモデル141で測定した。キラルHPLC測定は、レジスキラルAGPカラム(4.6×100mm)で行った。溶出は、20℃で、2%アセトニトリル−98% 20mMKH2PO4(pH4.7)、流量1mL/分で行った。
5、7−ジフルオロ−2−テトラロン。SOCl2(100mL)を1度に加え、3、5−ジフルオロフェニル酢酸(100g、0.58mol)に加え、15時間攪拌後、揮発性物質を減圧下留去した。生成した油性の酸クロライドをCH2Cl2(200mL)に溶解し、メカニカルスターラーで攪拌下AlCl3(154g、1.16mol)のCH2Cl2(1.0L)懸濁液に滴下した。懸濁液は、−65℃ドライアイス/アセトン浴で冷やし、及び反応液の温度が<−60℃となるよう酸クロライド溶液を加えた。添加の後、エチレンガスを10分間−65℃で急速に反応混合物に吹き込んだ。反応混合物を、攪拌下、2時間以上かけて0℃まで戻し、その後−10℃に冷却し、水(500mL)を最初は滴下し、その後急速に加えた。有機層を分離し、食塩水(100mL)で洗浄し、及びMgSO4で乾燥した。有機層を減圧留去し、クーゲルロール収集装置により真空蒸留し、90−110℃で沸騰した物質を集め(1.0ないし0.7mmHg))、暗色の油性残渣を得た。蒸留物は、100−105℃で再蒸留し(0.3mmHg)、白色固体として得られた(73.6g、0.40 mol; 70%)。融点46℃; IR(KBr) 1705 cm−1; 1H NMR(CDCl3)δ2.55(t、J=7.5 Hz、2H)、3.10(t、J= 7.5 Hz、2H)、3.58(s、2H)、6.70(m、2H); MS m/z 182(M+)。Anal.Calcd for C10H8F2O:C、65.93; H、4.42。Found:C、65.54; H、4.42。
(R)−(+)−2−ヒドロキシ−5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフタレン。(−)1R、2S−N−メチルエフェドリン(81.3g、0.454 mol)の無水Et2O溶液(1.1L)に、1.0M水素化アルミニウムリチウムのEt2O溶液(416mL、0.416 mol)を45分かけて滴下し、穏やかに還流が続くようにした。添加終了後、反応混合物を還流温度で1時間加熱した後、室温に戻した。2−エチルアミノピリジン(111g、0.98mol)溶液の無水Et2O(100mL)溶液を加え、穏やかに還流が続くような温度で加熱した。反応混合物はさらに1時間還流し、その間に薄い黄緑色の懸濁液となった。反応混合物を、ドライアイス/アセトン浴を用いて−65℃に冷却し、5、7−ジフルオロ−2−テトラロン(23.0g、126 mmol) のEt2O(125mL)溶液を、内部温度を−60℃以下に保つように滴下した。滴下終了後、反応混合物は、−65℃ないし−68℃3時間攪拌し、MeOH(100mL)を、内部温度が−60℃以下を保つようにクエンチした。反応は更に−65 ℃で10分攪拌し、その後、約−20℃まで戻した。3N HCl(2L)溶液を<35 ℃となるように添加の速度を制限した。完全に溶解させるため、攪拌速度を増加させた後、層を分離し、エーテル層を食塩水(200mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。エーテル溶液を減圧留去し、残渣を温かいEt2O(20mL)に溶解し、続いてヘキサン(200mL)を加えた。シード溶液は、0℃で1時間、氷浴で冷却したところ、結晶を析出したので、結晶を収集し、真空で乾燥し、アルコールを得た(10.9g、47 %)。融点85 ℃;[α]25 D+38.1°(c=1.83、CHCl3); キラルHPLC93.4% ee:1H NMR(CDCl3)δ1.70(br s、1H)、1.76−1.88(m、2H)、1.99−2.06(m、2H)、2.63−3.08(m、3H)、4.15(m、1H)、6.60(m、2H)。 Anal.Calcd for C10H10F2O:C、65.21; H、5.47. Found:C、65.38:H、5.42。(S)−エナンチオマー 4bのスペクトルは同一である:融点84−85 ℃; [α]25 D−37.8°(c=1、2、4、CHCl3); 92.4% ee キラルHPLC.Anal.Calcd for C10H10F2O:C、65.21; H、5.47。 Found:C、65.47; H、5.39。
(R)−(+)−2−メタンスルホニルオキシ−5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフタレン。溶液R−(+)−5、7−ジフルオロ−2−テトラロール(59.0g、320 mmol)及びEt3N(74.2mL、53.9 g、530 mmol)の無水Et2O溶液(1.78 L)を、氷−MeOH浴を用いて冷却し(−15 ℃)、及びアルゴン雰囲気下、攪拌しながらMsCl(37.2mL、55.3g、480 mmol)を5−10分以上かけて滴下した。5時間後、反応が終了し(TLCにより確認)、固体を溶解するために水を加えた。少量の酢酸エチルを加え、固体を完全に溶解させた。有機層を分離し、1N HCl、NaHCO3水溶液、食塩水で、この順に洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を留去すると、オフホワイトの固体が得られ(87.1g、332 mmol)、そのまま次の反応に用いた。i−Pr2Oによる少量サンプルの滴定により、分析用のサンプルを得た:融点78.8−80.5 ℃; [α]25 D+16.8°(c=1.86、CHCl3); 1H NMRδ2.13−2.28(m、2H)、2.78−2.96(m、2H)、3.07(s、3H)、3.09(dd、J= 17.1 Hz、4.7、1H)、3.20(dd、J= 17.2、4.7 Hz、1H)、5.20(m、1H)、6.67(m、2H)。Anal.Calcd for C11H12F2O3S:C、50.37; H、4.61。Found:C、50.41; H、4.64。(S)−エナンチオマー5bのスペクトルは同一である。融点79.9−80.9 ℃; [α]25 D−16.6°(c=2.23、CHCl3)。Anal.Calcd for C11H12F2O3S:C、50.37; H、4.61. Found:C、50.41; H、4.65。
(S)−(−)−2−アミノ−5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフタレン塩酸塩。アジ化ナトリウム(40.0g、0.62 mol)にDMSO(1 L)を加えた。メシレート(138g、0.53 mol)を1度に加え、加え、反応混合物を50℃16時間N2雰囲気下で加熱した。反応混合物をH2O(1.8 L)で希釈し、ペンタンで抽出し(4x250mL)、続いて、合わせたペンタン抽出液を、H2O(2x100mL)、食塩水(100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を減圧留去したところ、油状の揮発性物質を得たので、すぐにペンタンでシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、ジヒドロナフタレンを揮発性の油状物として得た(8.50g、51.2 mmol)。さらに、ペンタン/CH2Cl2(9:1)で溶出すると、アジド(101g、483 mmol)を無色の油状物として得た。IR(CHCl3) 2103cm−1; m/z 171(M+)。アジド6aを酢酸エチル(1200mL)に溶かし、2.5 L パール加圧反応容器(60 psi)中で、10% Pd/C(6g)を用い6時間かけて水素化した。各時間ごとに、反応容器を真空に排気し、混入したN2を除くために水素を充填した。生じた混合物をセライト濾過し、HClのエーテル溶液(1N、500mL)中で攪拌し、細かい沈殿を酢酸エチルで濾過し、及び無水エーテルで洗浄した(濾過に約4時間要した)。湿潤固体を丸底フラスコに移し、残溶媒を真空下で除去し、白色固体を得た(90.4g、412 mmol; 77.9%)。融点>280 ℃; [α]25 D−60.2°(c=2.68、MeOH); 1H NMR(d6−DMSO)δ1.79(m、1H)、2.33(m、1H)、2.63(m、1H)、2.83−2.92(m、2H)、3.14(dd、J= 16.7、5.0 Hz、1H)、3.46(m、1H)、6.93(d、J= 9.4 Hz、1H)、7.00(dt、J= 9.4、2.5 Hz、1H). Anal.Calcd for C10H12ClF2N:C、54.68; H、5.51; N、6.37。 Found:C、54.31; H、5.52; N、6.44。(R)−エナンチオマー8bのスペクトルは同じである。融点>280 ℃; [α]25 D+58.5°(c=1.63、MeOH)。Anal.Calcd for C10H12ClF2N:C、54.68; H、5.51; N、6.37. Found:C、54.64; H、5.51; N、6.40。
(S)−(−)−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)(シアノメチル)アミン。アミン塩酸塩8a(50.27g、229 mmol)をNaOH(10.0g. 250 mmol)の水(150mL)溶液で処理し、溶液を得るためにNaOHの粒を数個加えた。更に水(300mL)を加え、混合物を50 ℃浴に浸け、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム付加体(30.8g、230 mmol)で処理した。30分攪拌後、KCN(15.0g、230 mmol)を加えた。反応混合物は、更に1時間、80 ℃で攪拌し、室温に冷却し、酢酸エチルで抽出し、結晶化する油状物を得た(51.3g)。TLC(5%MeOH−CH2Cl2)では、出発物質のアミンが約10−15%残った。シリカゲルクロマトグラフィーでは、ニトリル体(39.4g)及び、空気中で速やかに炭酸塩を形成する出発物質の遊離アミン(7.12g)を得た。アミンの再利用により、5.35gの生成物を得た。合わせた収率(44.8 g、202 mmol; 87.5%):融点73.1−76.5 ℃; [α]25 D−58.0°(c=1.63、CHCl3); 1H NMR(CDCl3)δ1.50(br s、1H)、1.70(m、1H)、2.05(m、1H)、2.55−3.04(m、4H)、3.22(m、1H)、3.70(s、2H)、6.62(m、2H); MS m/z 222(M+)。 Anal.Calcd for C12H12F2N2:C、64.85; H、5.44; N、12.60. Found:C、65.07; H、5.47; N、1、2、44。(R)−エナンチオマー9bのスペクトルは、同一であった。融点64.4−73.6 ℃;[α]25 D+52.3°(c=2.12、CHCl3)。Anal.Calcd for C12H12F2N2:C、64.85; H、5.44; N、12.60. Found:C、65.14; H、5.54; N、12.53。
(S)−(−)−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−5−シアノ−2、3−ジヒドロ−2−チオキソ−1H−イミダゾール。ニトリル(44.7g、201 mmol)のブチルホルメート(240mL)溶液を、N2下19時間、加熱還流し(120 ℃ 浴)、溶媒を減圧下留去した。溶媒の残部を除くためにトルエンを加え、留去し、残渣を高真空下乾燥し、油状物を得た(53.2g)。ホルムアミド及びエチルホルメート(48.7mL、44.7g、604 mmol)の無水THF(935mL)溶液を氷/MeOH(−15 ℃)下で冷却し、攪拌下、t−BuOK(1M THF中、302mL、302 mmol)を20分以上かけて加えた。18時間攪拌後、溶媒を留去し、残渣を1N HCl(990mL)及びエタノール(497mL)に溶かし、KSCN(78.1g、804 mmol)で処理した。混合物を85 ℃で1、3、5 分攪拌後、氷浴につけると沈殿を生じた。濾過し、固体をスラリーとして10% MeOH/CH2Cl2のヘキサンで詰めたシリカゲル(1kg)にアプライした。10% アセトン/CH2Cl2で溶出し、生成物(18.05g、62.1 mmol; 30.8%)を得た。融点:240.7−249.2 ℃; [α]25 D−69.1°(c=1.18、DMSO); 1H NMR(d6−DMSO)δ2.18(br m、1H)、2.47(m、1H)、2.75(m、1H)、3.03−3.35(m、3H)、5.19(m、1H)、6.94(d、J= 9.3 Hz、1H)、7.03(dt、J= 9.3、2.4 Hz、1H)、8.29(s、1H)、13.3(br s、1H); MS m/z 291(M+)。Anal.Calcd for C14H11F2N3S: C、57.72; H、3.80; N、14.42. Found: C、57.82; H、3.92; N、14.37。(1:1 MeOH/CH2Cl2の溶媒で、カラムを更に溶出すると、1級アミド11aが得られる:融点261.9−262.7 ℃; [α]25 D−90.5°(c=0.398); IR(KBr) 1593、1630 cm−1; 1H NMR(d6−DMSO)δ2.14(m、1H)、2.15−2.28(m、1H)、2.74−3.05(m、4H)、5.64(m、1H)、6.90(d、J= 9.2 Hz、1H)、7.05(dt、J= 9.5、2.4 Hz、1H)、8.73(s、3H)、9.70(br s、1H)、13.7(br s、1H); MS m/z 309(M+)。Anal.Calcd for C14H13F2N3OS・0.25H2O:C、53.57; H、4.33; N、13.39。 Found:C、53.32; H、3.96:N、13.24。(R)−エナンチオマーのスペクトルは同一である。融点243.1、2、44.7 ℃;[α]25 D+74.9°(c=2.14、DMSO)。Anal.Calcd for C14H11F2N3S:C、57.72;H、3.80;N、14.42。Found:C、57.85;H、3.85;N、14.45。
(S)−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−5−アミノメチル−2、3−ジヒドロ−2−チオキソ−1H−イミダゾール。上述のニトリル(5.00g、17.2mmol)のTHF(75mL)溶液を氷浴中、アルゴン下攪拌し、均一な溶液を得た。LAHのTHF(1M 34.3mL、34.3mmol)溶液を10分以上かけて加え、溶液を30分間、0℃で攪拌し、1.5時間室温に戻した。再び0 ℃に冷却し、飽和酒石酸ナトリウムカリウム溶液で、処理し混合物が自由に攪拌できるまで加えた。更に酒石酸溶液(30mL)を加え、有機層を分離し、水層を10%MeOH/CH2Cl2(200mL)で抽出し、混合物を15分攪拌し、水(100−150mL)を加えた。有機層を分離し、水層を10% MeOH/CH2Cl2(2x125mL)で抽出した。抽出物を合わせ、乾燥し(MgSO4)、留去した。残渣を5% MeOH/CH2Cl2の溶出液で、シリカゲルクロマトグラフィー(5.2g)にかけ、遊離のアミン(2.92g、9.89mmol;58%)を得た。融点170℃;[α]25 D−11.0°(c=1.59、DMSO)。Anal.Calcd for C14H15F2N3S・0.25H2O:C、56.07;H、5.21;N、14.01。Found:C、56.11;H、5.10;N、14.14。
(S)−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−5−アミノメチル−2、3−ジヒドロ−2−チオキソ−1H−イミダゾール塩酸塩(ネピカスタット)。塩酸塩は、メタノール(250mL)に溶かした遊離アミン2a(3.12g、10.6mmol)に加熱しながら塩酸のエーテル溶液(1M、20mL、20mmol)を加えることにより合成した。溶媒を乾燥するまで留去することなく、部分的に減圧留去し、酢酸エチルで数回共蒸着することにより置換した。生じた沈殿を酢酸エチル(150mL)及びエーテル(150mL)で濾過し、エーテルで洗浄し、窒素下で乾燥し、続いて高真空下、78℃で20時間乾燥して塩酸塩(3.87g)を得た。融点245℃(dec);[α]25 D+9.65°(c=1.70、DMSO);(93%eeキラルHPLC);1H NMR(T=320°K、DMSO)δ2.07(m、1H)、2.68−3.08(m、4H)、4.09(m、3H)、4.77(m、1H)、6.84(m、2H)、7.05(s、1H)、8.57(br s、3H)、1、2、4(br s、1H)。Anal.Calcd for C14H16ClF2N3S0.5H2O:C、49.33;H、5.03;N、12.33。Found:C、49.44;H、4.96;N、12.18。(R)−エナンチオマー(R)−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−5−アミノメチル−2、3−ジヒドロ−のスペクトルは、同一であった。融点261−263℃; [α]25 D−10.8°(c=1.43、DMSO)、91.6% ee キラルHPLC。Anal.Calcd for C14H16ClF2N3S〇.35H2O:C、49.73; H、4.98; N、1、2、42。Found:C、49.80; H、4.93; N、12.39。
ネピカスタットは、ウシ(IC50=8.5±0.8nM)及びヒト(IC50=9.0±0.8nM)のDBHの競合阻害剤であることが示された。R−エナンチオマー(R)−1−(5、7−ジフルオロ−1、2、3、4−テトラヒドロナフト−2−イル)−5−アミノメチル−2、3−ジヒドロ−2−チオキソ−1H−イミダゾール(IC50=25.1±0.6nM; 18.3±0.6nM)であり、SKF102698(IC50=67.0±4.2nM; 85.0±3.7nM)は、それぞれウシ及びヒトの酵素に対してより低い阻害剤であった。DBH活性は、チラミンからオクトパミンへの変換アッセイにより測定した。ウシの副腎から得られるDBHは、シグマアルドリッチ社(St Louis、MO)より得た。ヒトから分泌されるDBHは、神経芽細胞腫細胞SK−N−SH株の培地から精製した。アッセイは、pH5.2、32℃下、0.125M酢酸エチル、10mMフマル酸、0.5−2μMCuSO4、0.1mg/mLカタラーゼ、0.1mMチラミン及び4mMアスコルビン酸存在下で行った。典型的なアッセイでは、0.5−1ミリユニット(milliunit)の酵素を反応混合物に加え、続いてカタラーゼ、チラミン、及びアスコルビン酸を含む基質混合物を加えて反応を開始した(最終の容積は、200μL)。試料は、37℃30−40分間、適切な濃度の阻害剤を含み又は含まずに培養した。反応を、25mM EDTA及び240μM3−ヒドロキシチラミン(内部標準)を含む反応停止液でクエンチした。試料は、逆相HPLCによって280nMのUVを検出するUV検出計を用いて、オクトパミンを分析した。残存%活性は、コントロール(阻害剤なし)に基づいて、内部標準及び非線形4係数用量反応曲線から得られたIC50値で補正し、計算した。
確立したアッセイによって11の異なる酵素によるネピカスタットの活性を測定した。選択した13の受容体に対するネピカスタットの親和性は、標準的な濾過技術及び膜調製法を用いて放射性リガンド結合アッセイによって決定した。結合データは、4係数ロジスティクス方程式に反復曲線を適用して決定した。Ki値は、チェン−プルソフ式を用いて計算した。図3は、DBH及び選択された系列の酵素及び受容体の範囲をネピカスタットの相互作用の表を表す。ネピカスタットは、他の系列の酵素及び神経伝達物質の受容体のに対して弱い親和性しか持たなかった。これらのデータは、ネピカスタットは、DBHのインビトロにおける強力で高選択的阻害活性を有することを示唆した。さらに、S−エナンチオマーであるネピカスタットはR−エナンチオマーよりも約2−3倍強力であり、このことは、立体選択的であることを示している。
ネピカスタットの経口投与を自然発症高血圧ラット(SHR)及び通常のイヌに投与したところ、用量依存的に末梢動脈(腎臓の又は腸間膜)、左心室及び大脳皮質における組織ドパミン(DA)/ノルエピネフリン(NE)比が増加した。通常のイヌに対し、慢性的なネピカスタットの経口投与によっても、血漿DA/NE比を持続的に増加させた。無麻酔ラットに急速にネピカスタットの経口投与を行うと、用量依存的及び長期間の(>4時間)降圧効果、及び節前交感神経刺激に対する降圧薬の反応の減弱が起こった。血清T3及びT4レベルは、腸間膜動脈においてドパミン/ノルエピネフリン比が上昇したが、用量(6.2mg/kg、経口、bid、10日間)にる影響はなかった。心血管組織に対する交感神経駆動による強い調節能に基づき、ネピカスタットは、うっ血性心不全の治療において臨床的な評価を得ている。
うっ血性心不全(CHF)は、アメリカ合衆国において主要な死因である。CHFは、自律神経系及びレニン−アンジオテンシン系(RAS)の顕著な活性化を特徴とする。これらの2つの神経ホルモン系の同時の活性化は、CHFの永続化及び進展に関係するとされる。神経ホルモン系のこれらの効果を阻害する治療は、CHFの病歴をよい方向に変更すると考えられる。事実、アンジオテンシンIIの生成を阻害するアンジオテンシン−変換酵素(ACE)阻害剤は、CHF患者の疾病率及び死亡率を減少させる。しかし、ACE阻害剤は、SNSを減弱させる限定的な間接的能力しかない。現在臨床評価を受けているβ−アドレナリン受容体アンタゴニストによるSNS阻害は、確実なアプローチである。直接SNSを調節する別の方法には、NEをドパミン(DA)に変換する酵素であるドパミンβ−ヒドロキシラーゼ(DBH)の阻害を介したノルエピネフリン(NE)生合成の阻害がある。DBHの阻害は、組織レベルのNEを減少させ、組織レベルのDAを上昇させ、それにより組織内DA/NE比を高める。このアプローチは、β−アドレナリン受容体アンタゴニストに対して大きな利点を有する。例えば、α−アドレナリン受容体刺激を減少させ、DAレベルを上昇させる。腎臓の血管拡張、ナトリウム利尿を促進し、アルドステロン放出を減少させる。以前のDBH阻害剤、フザリン酸及びSKF−102698は、小さい効果及び特異性という欠点のため心疾患の臨床開発から除外された。
ネピカスタットは、自然発症高血圧ラット(SHR)及び正常ビーグル犬におけるインビボの生化学試験に用いる。試験日には、動物の体重を測定し、ランダムにプラセボ(担体)又は適切な用量のネピカスタットを投与するために分類する。朝に開始して、それぞれのラットに、12時間ごとに3回経口投与した。3回目の投与6時間後、ラットにハロタン麻酔をかけ、断頭し、及び組織(大脳皮質、腸間膜動脈及び左心室)を迅速に摘出し、計量し、氷冷した0.4M過酸化水素酸に浸け、液体窒素で凍結させ、分析まで−70℃で保存した。組織NE及びDA濃度は、HPLCにより電気化学的検出を用いて濃度を分析した。雄のビーグル犬(10−16kg、Marshall farms USA Inc、North Rose、NY)を試験に用いた。試験日には、イヌは、ランダムにプラセボ(空のカプセル)又は適切な用量のネピカスタットを投与した。それぞれのイヌは、4.5日にわたり1日2回投与された。第5日、最初の投与から6時間後、イヌをペントバルビタールで安楽死させ、及び組織(大脳皮質、腎動脈、左心室)を摘出し、計測し、氷冷した0.4M過酸化水素酸に浸け、液体窒素で凍結させ、分析まで−70℃で保存した。組織NE及びDA濃度は、HPLCにより電気化学的検出を用いて濃度を分析した。
ネピカスタットの経口投与により、SHR及びイヌの(腸間膜又は腎)動脈、左心室及び大脳皮質において用量依存的にDA/NE比を上昇させた。
最高投与量(SHRには100mg/kg、及びイヌには5mg/kg)では、DA/NE比が、それぞれ動脈、左心室及び大脳皮質において、14、11及び3.2倍(SHR)及び95、151及び80倍(イヌ)であった。SHRにおいて30mg/kgを投与した場合、SKF−102698(1)は、DA/NE比は、5.5倍、3.5倍及び2.7倍となり、同じ投与量でネピカスタットでは、腸間膜動脈、左心室及び大脳皮質において、それぞれ8.3、7.5及び1.5倍となった。SHRにおいて30mg/kgでは、化合物Bは、DA/NE比は腸間膜動脈、左心室及び大脳皮質においてそれぞれ2.6、3.5及び1.1倍増加したのみだった。これらのデータから、ネピカスタットはSHR及びイヌにおいて期待した生化学的効果を有するが、後者においてより強力であることを示唆している。更に、ネピカスタットはSHRにおいて、化合物B及びSKF−102698(1)よりも強力であった。
正常なイヌに対して、ネピカスタット(14.5日間処理)による血漿DA/NE比への慢性的な効果を調べた。動物は、14.5日間、ランダムに、経口又はプラセボ(空のカプセル)又はネピカスタット(2mg/kg、bid)を投与した。毎日、血漿中のDA及びNE濃度の測定のために最初の投与の6時間後、血漿サンプルを採取した。サンプルは、ヘパリン及びグルタチオンを含むチューブに採取し、−4℃で遠心分離し、分析まで−70℃で保存した。
ネピカスタットの経口投与(2mg/kg;bid)によって効果のピークが約6−7日後に、その後新たな安定状態に達するのが7−14日後であるようなDA/NE比の増加が見られた。
心血管組織に高交感神経駆動するモデルである、意識下拘束したSHRで、インビボでの血流力学的活性をさらに評価した。SHRにおける血流力学試験では、雄SHR(15−16週齢)を試験に用いた。動物は、エーテルにより軽度に麻酔し、血圧測定及び薬物投与のために左大腿動脈及び静脈にそれぞれカテーテルを通した。動物を、拘束装置に入れ、30−40分間回復させた。ベースライン測定の後、動物に経口で担体又は適切な用量のネピカスタットを投与し、4時間血流力学係数を連続的に記録した。動物をペントバルビタールで麻酔し、温熱パッド(37℃)にのせ、ハーバード・ローデント・ベンチレーターで通気した。アトロピン及びツボクラリン(1mg/kg、静注)投与後、ステンレススチールロッド(1.5mm厚、150mm長)を動物の眼窩から挿入した。ロッドに80Vの1msパルス電気刺激を与え、異なる周波数(0.15、0.45、1.5、5、15Hz)による周波数−昇圧反応曲線を得た。
ネピカスタットの経口投与は、用量依存的降圧効果をもたらした。拘束装置に置き、30−40分間回復させた。ベースライン測定後、動物は担体又はネピカスタットの最適な投与量のネピカスタットを投与し、血流力学係数を続けて4時間記録した。ネピカスタットは、0.3mg/kg(180、210及び240分)及び1mg/kg(30、210及び240分)全ての投与量及び時点で、有意な平均動脈性血圧の低下を起こした。
平均血圧の最大の低下は、10mg/kg投与した場合に、53±4mmHg(コントロール担体に比較して33%減少)であった。反応は遅く、安定状態に達するのに、3−4時間かかる。現在のところ、最高投与量(30mg/kg)における抗高血圧効果の消失の正確な理由は、明確でない。心拍数は、10及び30mg/kg(それぞれ9.8及び10.5%)でわずかに有意な下降があったことを除いては、有意に影響されなかった。この試験に従い、ラットは穿刺を行い、ネピカスタット投与による脊髄の節前神経刺激(PNS)反応を投与後5時間後に測定した。周波数−昇圧反応曲線は有意に右にシフトした(p<0.05)。心拍数はPNSでは有意には影響を受けなかった。これらのデータは、ネピカスタットは交感神経駆動による血管系への阻害し、及びSHRでの抗高血圧効果のメカニズムであると考えられる。
ネピカスタットのヘテロ環部分は、ホ乳類の甲状腺機能の強力な抑制剤であるメチマゾールに構造的に似ているので、ネピカスタットの甲状腺機能の影響を2.0及び6.2mg/kg、経口、bid、10日にわたりヨウ素欠乏性スプラーグドーリー(SD)系ラット(n=9−12)で評価した。メチマゾール(1mg/kg、経口、bid)は、ポジティブコントロールとして用い、投与4時間後のホ乳類の血清中でのT3(第3日、31%、p<0.05;第7日及び9日、42%及び44%、p<0.01)及びT4(第3日及び第7日、46%及び58%、p<0.01)を有意に減少させたのに対し、ネピカスタットは試験中、有意な効果を示さなかった(第3、7及び9日)。両投与量において、ネピカスタット投与により腸間膜動脈における有意にDA/NE比(担体コントロールと比較してp<0.01)が上昇したが、第10日の最終投与4時間後の皮質においては上昇しなかった。
この試験は、ネピカスタットが、DBHの強力な選択的及び経口での阻害剤であることを示唆している。この化合物は、動物モデルの有意な行動学上の影響を欠き、これらの発見は将来の研究の主題となるだろう。化合物ネピカスタットは、心血管組織の交感神経駆動を効果的に調節するため、CHFの治療に試されてきた。
ドパミン及びノルエピネフリン濃度は、942のうっ血性心不全(CHF)患者の血漿サンプルから決定した。試験の目的は:
1.投与後4週間後における様々な用量のネピカスタットの、経心筋の(動脈性−冠状動脈洞)及び冠状静脈洞のカテコールアミンレベル、及び、12週を超える投与によるネピカスタットの安全性及び耐性を評価するためである。
2.以下の評価項目のベースラインからの変化によるネピカスタットの効果を評価するためである:
a)4及び12週後の血漿中(静脈)カテコールアミンレベル
b)4及び12週後のクオリティオブライフ(QoL)、CHF症状、包括的な評価、及びNYHA分類
c)4週間後の、心拍出量、全身血管抵抗、MVO2、肺動脈圧、及び肺動脈楔入圧を含む血流力学係数
d)CHFの12週を超える治療による入院率及び治療薬の投与量の変化
e)4及び12週後の血圧及び心拍
f)4及び12週後の6分間歩行試験
g)12週後の左心室駆出分画率、左心室収縮末期容積、及び左心室拡張末期容積
血液サンプルは、第4及び12週の投与2時間後、仰臥位の患者の末梢血管から採取された。さらなるサンプルは、第0日(例えば、投与を開始する前の日)の投与2時間後に対応する時間に、仰臥位の患者から採取した。加えて、患者群は、第4週の投与2時間後及び第0日(例えば、投与開始の前の日)の投与2時間後に、右心及び冠状静脈洞カテーテルを行った。患者のグループから、これらの患者の動脈性静脈及び冠状動脈洞から3回分のサンプルを採取した。
放射酵素測定法で、ドパミン及びノルエピネフリンの遊離塩基の濃度を決定した。この方法は、血漿サンプルをカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ及びトリチウムS−アデノシルメチオニンと培養することを含む。培養が完了すると、液体/液体抽出により血漿からO−メチルカテコールアミンを抽出し、薄相クロマトグラフィーによって、分離した。それぞれのカテコールアミンに関連するバンドにマークをつけ、計数のため、シンチレーションバイアルに削る入れた。定量限界は、ドパミン又はノルエピネフリン1pg/血漿mLである。直線的変化は、0.045mLないし1mLの血漿を用いて、1ないし333000pg/血漿mLの範囲である。
採取したヒト血漿サンプルは、品質コントロール(QC)サンプルとして用い、1日1回、常用される方法の動作のモニターのために分析した。
前臨床のインビトロ及びインビボ薬理学試験をネピカスタットで行った。化合物のDBH阻害能をインビトロ試験で評価した。インビトロでの試験は、化合物によるDBHの阻害活性、及び選択的受容体の結合親和性の評価のためにある。インビボ試験は、4つのカテゴリーに分類した:1)生化学的効果(例えば、組織中ノルエピネフリンレベルの減少能及びドパミンレベルの増加能)、2)甲状腺機能への効果、3)心血管効果、及び4)行動学的効果。
ネピカスタットは、ウシ及びヒトDBHの強力な阻害剤である。ヒトDBHに対するネピカスタットのIC50は9nM(CL6960)であり、DBH阻害剤SKF−102698(85nM)よりも有意に低かった。ネピカスタットのSエナンチオマーは、化合物B(18nM)として示されるRエナンチオマーよりも強力であった。
選択した受容体に対するネピカスタットの結合親和性を測定した。ネピカスタットは、M1、D1及びD2、及び5HT1A、2A及び2Cに対しては5.0よりも小さい親和性であった。同様に、ラット及びサルにおいて、ネピカスタットのN−アセチル代謝物は、これらの受容体に対して親和性を有しなかった。ネピカスタット及びその一次代謝産物は、上述した受容体の強力な阻害剤ではなかった。
自然発症高血圧ラット(SHR)におけるフェニレフリンに対するインビトロでの大動脈収縮反応は、正常血圧ウイスター−京都ラットと比較して、減弱された。毎日、SHRにネピカスタット(10mg/kg、経口)を21日間投与することによってフェニレフリン応答性は、ウイスター−京都ラットに匹敵するものとなった。
結局、ネピカスタットは、ラット及びイヌに対して効果的なDBH阻害剤であることがわかった。経口又は静脈内投与によって、両方の種においても心臓、腸間膜又は腎動脈、及び大脳皮質での有意な(p<0.05)組織内ノルエピネフリンの減少、ドパミンの増加、及びドパミン/ノルエピネフリンレベルの増加につながった。
自然発症高血圧雄ラット(SHR)による試験で、ネピカスタットは、経口投与又は6.2mg/kgでの腸間膜動脈への静注0.5ないし4時間後にノルエピネフリンを減少させ、及びドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比を増加させた。これらのパラメータの有意な変化は、12時間間隔で行った二つの静注(15mg/kg)の2回目の投与後6時間におけるSD系雄ラットの左心室でも見られた。雄のSHRに対する10又は30mg/kgの経口投与後、組織内カテコールアミンの24時間経過を試験した。1時間後のドパミン/ノルエピネフリン比の増加は有意であり、それは持続した(10mg/kgの腸間膜動脈投与で12時間、30mg/kgの左心室投与で24時間)。有意な変化は、雄のSD系ラットにおいて腸間膜動脈への2.0及び6.2mg/kg、経口、bid投与では、10日後、ドパミン及びノルエピネフリンレベルの有意な変化が見られたが、大脳皮質においては有意な効果は見られなかった。SHRに1又は10mg/kg/日、経口で7又は25日間投与した場合、ドパミン増加及びドパミン/ノルエピネフリン比の増加が腸間膜動脈及び大脳皮質において見られた。これらを考え合わせると、ラットにおいて、ネピカスタットの腸間膜動脈への急性又は慢性投与(25日間まで)では、ノルエピネフリンの減少及びドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比の増加が見られることがわかった。
雄のSHR及びSD系ラットにおいて、0.3、1、3、10、30、及び100mg/kgの経口投与6時間後に測定すると、ネピカスタットの効果は、用量依存的であることがわかった。SHRにおいては、ドパミン/ノルエピネフリン比の有意な変化が、0.3mg/kg投与で腸間膜動脈において、3.0mg/kg投与で左心室において、及び10mg/kg投与で大脳皮質において見られた。SD系ラットにおいては、ドパミン/ノルエピネフリン比の増加が、3.0mg/kg投与で腸間膜動脈において、1.0mg/kg投与で左心室において、及び100mg/kg投与でのみ大脳皮質においても見られた。第2回目の投与−反応試験では、SHRにおいては、12時間間隔で3.0、10、30、又は100mg/kgのいずれかを3回投与し、3回目の投与6時間後に組織を摘出した。ネピカスタットは、左心室及び腸間膜動脈において有意な用量依存的ノルエピネフリン(10mg/kg)の減少及びドパミン(3.0mg/kg)、及びドパミン/ノルエピネフリン比(3.0mg/kg)の増加をもたらした。ネピカスタットのドパミン及びノルエピネフリン濃度、及びドパミン/ノルエピネフリン比への影響は、大脳皮質では30及び100mg/kgにおいてのみであった。同様の有意な用量−反応効果が、ウイスター系雌ラットの左心室において、ネピカスタットを7日間、飲料水(0.3、0.6、及び1.0mg/ml)に混ぜて投与した場合に見られた。結論としては、ネピカスタットは、ラットの大脳皮質(60−100mg/kg/日)においては、左心室及び腸間膜動脈(1−6mg/kg/日)よりもDBH阻害能は小さいことがわかった。
ネピカスタット(Sエナンチオマー)は、12時間間隔で3回投与(30mg/kg、経口)した後、SHRの左心室及び腸間膜動脈において、Rエナンチオマーよりも有意な効果が見られた。ネピカスタットは、1回投与後または3回投与後(30mg/kg)のSHRの左心室及び腸間膜動脈において、DBH阻害剤SKF−102698よりもノルエピネフリンの減少及びドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比の増加において、有意に効果が見られた。インビボ研究の結果から左心室及び腸間膜動脈における効果は、精製したDBH(上述参照)を用いたインビトロ研究によく対応していた。しかし、ネピカスタットは大脳皮質においては、ノルエピネフリンレベルの減少及びドパミンレベルの増加において、SKF−102698よりも有意に効果が小さかった。ノルエピネフリンは、レニンの放出を促進し、血漿中レニン活性を増加させることが示されている。それゆえ、ネピカスタット投与に伴うノルエピネフリンレベルの現象が、血漿中レニン活性の現象につながるか、関心のあるところである。しかし、雄SHRにおいてネピカスタット(30及び100mg/kg/日、経口、5日間)は、血漿中レニン活性を変化させなかった。それゆえ、SHRに対して組織内ノルエピネフリンレベルを低下させる濃度のネピカスタットを投与しても、血漿中レニン活性は変化しないことがわかった。
ネピカスタットは、十二指腸内に30mg/kgを投与5時間後雄ビーグル犬の腸間膜動脈においては、有意にノルエピネフリンレベルの減少及びドパミン/ノルエピネフリン比を増加させたが、ドパミンレベルは変化させなかった。ネピカスタットを雄ビーグル犬に4.5日(5、15、及び30mg/kg、bid、又は10、30、及び60mg/kg/日)を投与した場合、10mg/kg/日及び60mg/kg/日まで安定状態を経て、有意なノルエピネフリンの減少、及び有意なドパミン及び腎動脈、腎皮質、及び腎髄質におけるドパミン/ノルエピネフリン比の増加が見られた。同様の結果が、左心室においても見られたが、ドパミンには有意な変化はなかった。大脳皮質においては、ノルエピネフリンは、30及び60mg/kg/日の場合には有意に減少し、及びドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比は、全ての用量において有意に増加した。結論としては、ネピカスタットは、イヌにおいて10mg/kg/日において強力な経口阻害活性のあるDBH阻害剤である。
ネピカスタットは、インビボでの甲状腺ペルオキシダーゼの強力な阻害剤であるメチマゾールと構造的類似性がある。低ヨウ素食を与えられたSD系雄ラットに、ネピカスタットを10日間4又は12.4mg/kg/日、経口投与したところ、トリヨードチラミン又はチロキシンの血清レベルには、影響を与えなかった。それに対し、メチマゾール(2mg/kg/日)は、血清中トリヨードチラミン又はチロキシンを有意に減少させた。それゆえ、ネピカスタットは、メチマゾールとは異なり、トリヨードチラミン又はチロキシンに影響を与えないことがわかった。
意識下、拘束ストレスを与えたSHR(1.0−30mg/kg、経口)においては、ネピカスタット誘導性の有意な4時間までの降圧効果が見られ、心拍を有意に減少させた(10及び30mg/kg)。意識下、拘束ストレスを与えたSHR(10mg/kg、経口)によるネピカスタットの降圧効果は、ドパミン受容体(DA−1)アンタゴニストであるSCH−23390による前処理によっては減少しなかった。また、ネピカスタット(10mg/kg)は、血圧を意識下、拘束ストレスを与えた正常血圧ウイスター−京都ラットにおいて4時間後血圧を降下させたが、減少度(−13mmHg)は、SHR(−46mmHg)よりも小さかった。まとめると、ネピカスタットは、SHRの方が大きな効果があったが、SHR及び正常血圧ラットの両方において、血圧の低下を起こした。SHRにおける降圧効果は、DA−1受容体を介していないと考えられる。
また、脊髄穿刺したSHRに対する節前神経刺激に対し、ネピカスタットの投与(3mg/kg、経口)5時間後、有意に高血圧性及び頻脈性の反応を減少させた。それゆえ、ネピカスタットは、交感神経刺激に対する血圧上昇を減少させる。
麻酔したSHRにネピカスタット(3.0mg/kg、静注)を急速静注すると、3時間以上にわたり、平均動脈圧が低下するが、腎血流は低下させず、又は尿生産、又はナトリウム又はカリウムの尿排泄は変化させなかった。腎における血管抵抗の計算値は、投与に従い低下するした。ネピカスタットによる腎性血管拡張効果がDA−1受容体を介しているかを確かめるために、DA−1アンタゴニストSCH−23390を用いた。しかし、この化合物は、単独投与した場合には血圧を低下させたが、これにより結果の説明がつかなくなった。結局、ネピカスタットは、麻酔したSHRにおいて腎機能を損なうことはなく、動脈圧が低下するにもかかわらず、腎血流は減少しなかった。
SHRに21日間毎日のネピカスタット(1及び10mg/kg、経口)を投与し、心拍又は最高血圧をテール・カフ法(tail cuff method)により測定した。しかし、ネピカスタット(10mg/kg、経口)拘束ストレスを与え、動脈カニュレを用いて血圧を測定した場合には有意な降圧効果が見られた。
ネピカスタットは、血圧無線遠隔変換器(radio−telemetry blood pressure transducer)を装着したSHRを用いた場合には、30日間30及び100mg/kg/日を投与した場合、有意に血圧が低下したが、3及び10mg/kg/日においては有意な効果は見られなかった。24時間以上かけて30及び100mg/kg/日を投与した場合、30日以上にわたり効果の減少は見られなかった。心拍は増加せず、自発運動量に影響はなかった。血圧低下を起こさなかったアンジオテンシン変換酵素阻害剤エナラプリル(1mg/kg、経口)とネピカスタット(30mg/kg)の30日以上の併用によっては、降圧効果の相乗効果が見られ、有意な左心室重量の減少が見られた。左心室重量の減少は、エナラプリル単独では見られない。それゆえ、ネピカスタットを、30日間、SHRに30及び100mg/kg/日投与すると、血圧降下が見られ、エナラプリルと併用すると、左心室重量の減少を伴う付加的な血圧降下作用が見られた。
血圧無線遠隔変換器を装着した正常血圧ウイスターラットにおけるネピカスタットによる血圧降下の影響は、30及び100mg/kg/日を7日間投与した場合、SHRよりも小さかった。30mg/kg/日において血圧降下の減少値のピークは−10 mmHgであり、SHRでは−20であった。100mg/kg/日において血圧降下の減少値のピークは−17 mmHgであり、SHR−42であった。それゆえ、正常血圧ラットでは、SHRにおいてより大きな血圧降下作用を有することがわかった。
麻酔した正常犬おいて、ネピカスタットの急速静注(1−10mg/kg、静注)5時間後、動脈圧、左心圧(dp/dtピークを含む)、心拍、心拍出量又は腎血流といった心血管効果は生じなかった。意識下、常に血圧無線遠隔変換器を装着したイヌにおいても、単回投与(3−30mg/kg、静注)の12時間後、同様に効果は欠如していた。
頸動脈を動脈閉塞させた麻酔した雄ビーグル犬に対し、ネピカスタット(30mg/kg、十二指腸内投与)を投与した場合、直接の腎神経刺激、又は動脈圧の上昇による腎血流の減少といった有意な阻害効果を示さなかった。しかし、麻酔した雄のビーグル犬において、ネピカスタット投与5時間後、ノルエピネフリンレベルの減少及びドパミン/ノルエピネフリン比の有意な増加を引き起こしたが、ドパミンレベルの増加は見られなかった。それゆえ、組織内ノルエピネフリンレベルは有意に減少したが、有意な交感神経系の機能的な応答の阻害は見られなかった。
頸動脈を動脈閉塞させた麻酔した雄ビーグル犬に対し、ネピカスタット4.5日間、10mg/kg/日を投与した場合、統計的に有意な血圧低下及び心拍の増加は見られなかった。ネピカスタット処置により、静注のチラミン刺激に対し有意に心拍増加反応を減少させたが、血圧上昇の阻害においては、有意にではなくわずかに反応したのみだった。それゆえ、組織内ノルエピネフリンレベルの低下が最大値の場合における投与量でのネピカスタットの慢性投与は、主として交感神経系の機能的な応答に対する阻害効果を持たない。
ネピカスタットでは、1.0−30mg/kg、経口の急性投与後においても、マウスにおいて有意な総運動行動への影響は見られず、自発運動への影響は見られなかった(10−100mg/kg、腹腔内投与)。ラットへの急性投与(3−100mg/kg、腹腔内投与)では、自発運動又は音への驚愕反応への影響はなかった。
行動学的影響は、10日間10、30、及び100mg/kg/日、経口投与によっては、見られなかった。直腸温も影響を受けなかった。運動行動及び音への驚愕反応は、DBH阻害剤SKF−102698(100mg/kg/日、経口)及び中枢性α−アドレナリン受容体アゴニストクロニジン(20mg/kg、bid、経口)によって有意に減少した。SHRに30日を超える投与(3−100mg/kg/日、経口)をしても運動行動には影響を与えなかった。それゆえ、ネピカスタットは、ラットにおいて、中枢神経系を介した行動学的効果は検出されなかった。
ネピカスタットは、ヒトにおいてはインビトロで、ラット及びイヌにおいてはインビボで、DBH強力な競合阻害剤である。ラットにおいては、ネピカスタット6mg/kg/日の経口投与は、心臓及び腸間膜動脈においてDBH阻害を起こした。他のDBH阻害剤SKF−102698と異なり、ネピカスタットでは大脳皮質でなく、左心室及び腸間膜動脈への選択性を示した。ネピカスタットでは、行動学的な影響はラットでは見られなかった。イヌにおいては、DBH阻害効果の安定状態が心臓、腎動脈及び腎臓において10mg/kg/日投与の場合に見られた。ネピカスタットは、SHRにおいて交感神経刺激(3mg/kg、経口)によるによると昇圧反応を有意に減少させ、30日間、毎日1回の投与(30mg/kg/日、経口)において血圧を有意に低下させた。結論としては、ネピカスタットは、強力な交感神経系作用を左右するDBH阻害剤であるといえる。
ネピカスタットの高用量投与による以下の薬物動態を評価するために試験をデザインした。雄及び雌のラットの薬物動態を比較するため、及び脳におけるネピカスタットのレベルを定量することにより、ネピカスタットの中枢神経系への浸透性を決定するためのデザインである。
体重180−220gの雄ラット(Crl:CD BR Vaf+)を、投与前終夜及び投与後4時間、絶食させた。2%1−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(粘度50センチポワズ)、1%ベンジルアルコール、及び0.6%トゥイーン80(全てシグマ化学社)を含む水で製剤化して投与した。投与溶液の薬物濃度は、10、30、及び100mg/kg投与についてはそれぞれ5、15、及び50mg/mlであり、液体クロマトグラフィー(LC)で確認した。5mg/ml投与用は、透明な溶液であり、それよりも高い濃度のものは半透明な懸濁液であった。投与体積は、2.0ml/kgとした。投与後の様々な時間において、血液サンプルはヘパリンコーティングシリンジによる心穿刺によって採取し、血漿を遠心分離により得た。ラットの脳は外科的に摘出し、全てのサンプルは分析まで−20℃で凍結しておいた。
血漿(0.05又は0.5ml)に、内部標準(5μg/mlのネピカスタットモノフルオロ類似体及び5mg/mlジチオスレイトールを含む50μlメタノール)を混合した。サンプルは、200mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0、(0.5ml)と混合し、3mLの酢酸エチル/ヘキサンで抽出し(1/1、重量/重量)。分析体を含む有機層を250mM 250μlを酢酸で逆抽出し、100μlの水層をLCで測定した。LCは、Keystone Hypersil BDS 15cm C8カラムを用いて室温で行った。移動相Aは、5mMドデカンスルホン酸でpH3.0にした12.5mMリン酸カリウム、移動相Bアセトニトリルである。溶媒組成は、溶媒の構成が、40%のBで1ml/minの流量であった。261nmでのUV吸収を検出した。分析体の濃度は、未処置のラットに既知の濃度の血漿の分析体を投与して作成した標準曲線から決定した。血漿中濃度データは、μg/ml(遊離塩基)で示す。
脳は、簡単に生理食塩水で洗浄し、ペーパータオルで拭き、重量を測定した(1.5−2.0g)。内部標準(20μg/mlのネピカスタットのモノフルオロ類似体を含むメタノール溶液50μl)を加え、0.5mg/mlジチオスレイトールを含むpH7.0、200mMリン酸ナトリウム5mL溶液で脳をホモジナイズした。ホモジネート(2ml)を10mLの酢酸エチル/ヘキサン(1/1、重量/重量)で抽出した。有機層を穏やかに250mM酢酸の150μlで逆抽出した。
水層に100μlのメタノール(あらゆる乳濁液を分散する)を加え、血漿を表す100μlをLCで分析した。脳組織中のレベルは、g(遊離塩基)/g脳組織で表される。
薬物動態のパラメータを、平均血漿中濃度から計算した。血漿中半減期(T1/2)は、0.693/β、ここでβは、排泄速度は排泄速度定数によって、直線的回帰がある場合には、log血漿中濃度 対 時間のデータを末端の直線的部分で決定する。血漿中濃度対時間曲線下面積(AUC)は、時間ゼロから最後の定量可能な血漿中濃度を示した時間までを、台形ルールで計算した。AUCのゼロから無限大(総AUC)は、以下の通り計算した:
総AUC=AUC(0−Clast)+Clast/β、ここでClastは最後の定量可能な血漿中濃度である。
雄ラットに対しネピカスタット10、30、又は100mg/kgを単回経口投与した場合の血漿中濃度が得られた。ネピカスタットの血漿中濃度は用量の増加に伴い上昇し、総AUC及び用量の間の関係は、直線的であった。排泄半減期は、高用量において、わずかに増加しているように見えた(雄ラットにおける10、30、及び100mg/kgの経口投与の場合、それぞれ1.70、2.09、及び3.88時間であった)。ネピカスタットを30mg/kgを雌ラットに経口投与した場合、ネピカスタットの血漿中総AUCは、同用量を雄ラットに投与した場合よりも雌ラットにおいて77%高かった。脳内ネピカスタットレベル(μg/gで表す)は、初期には血漿中濃度(μg/mlで表す)よりも低かった。しかし、投与2時間後、ネピカスタットの濃度は血漿中よりも高くなった。
血漿中ネピカスタットレベルは、雄ラットに対する10ないし100mg/kg投与の場合、総AUCに基づき直線的に増加した。
血漿中ネピカスタットレベルは、30mg/kgの投与量の場合、雌ラットにおける方が雄ラットよりも高かった。
雄ラットに対しネピカスタット10mg/kgを投与した場合、脳内濃度は、初期には血漿中よりも低かったが、投与2時間後には脳内におけるネピカスタットの濃度は、血漿中よりも高くなった。
この試験の目的は、自然発症高血圧ラットに対する単回経口投与による腸間膜動脈でのドパミン及びノルエピネフリンレベルへのネピカスタット(10mg/kg)の効果を、24時間の時間経過で調べることにある。カテコールアミンレベルは、ネピカスタット(10mg/kg)又は担体(dH2O;10ml/kg)の単回経口投与の1、2、4、6、8、12、16、又は24時間後において測定した。
16−17週齢、300−400gの自然発症高血圧雄ラット(SHR)は食餌及び水を自由に与えられた。動物は午後試験の前に、計量し、ランダムに以下の処理群(各群n=9):ネピカスタット10mg/kgの単回経口投与、又は1、2、4、6、8、12、16、又は24時間後に解剖する担体(10ml/kg)の単回経口投与の群、のいずれかに振り分けた。
ネピカスタットは、塩酸塩として合成され、ネピカスタットは担体(dH2O)に溶解し、10ml/kgの経口の繰り返し投与が可能なように調製した。全ての用量のネピカスタットは、遊離塩基等価体として投与し、投与の朝に調製した。
動物に解剖の朝、毎分投与した。投与1、2、4、6、8、12、16及び24時間後、9匹の処置した動物及び9匹の担体を投与した動物をハロタン麻酔し、断頭し、迅速に左心室及び腸間膜動脈を摘出して計量した。腸間膜動脈は0.4M過酸化水素酸0.5mLの入った遠心管に入れ、左心室は空のクリオチューブに入れた。両組織は、液体窒素で急速凍結し、−70℃で保存した。腸間膜動脈カテコールアミンレベルは、電気化学的検出方法を用いてHPLCにより分析した。断頭の際に体内からの血液を、ヘパリンを含んだチューブに採取し、4℃で遠心し、血漿サンプルとした。
それぞれの処理群は各時点で担体群と比較した。TRT、HARVEST効果をもつ二元配置分散分析(ANOVA)により分析し、それらの相互作用を調べた。TRT因子による一元配置ANOVAを、各摘出時に行った。処置群及び担体群における比較分析を、フィッシャーの最小有意差法を用いて、実験あたりの同過誤率を制御するために行った。ノルエピネフリン値は、4時間後の時点においてのみ担体よりも有意(p<0.05)に低かった。6時間後の時点では、下限ぎりぎりではあったが有意に低かった(0.05<p<0.1)。ドパミンレベルは、2及び6時間後の摘出の際は担体よりも有意に高かった。ドパミン/ノルエピネフリン比は、1、2、4、6及び12時間後の時点において、担体よりも有意(p<0.05)に高かった。
一般に、自然発症高血圧ラットに対するネピカスタット10mg/kgの投与1、2、4、6、8、12、16又は24時間後において、腸間膜動脈におけるノルエピネフリン又はドパミンレベルに統計的に有意な効果を与えなかった。しかし、処置後最初の12時間においては、持続的なドパミン/ノルエピネフリン比の増加が見られた。16及び24時間後の摘出における分析おいては、3つのパラメータには変化はなかった。
この試験の目的は、SD系ラットに対する静脈内投与によるネピカスタット(以下、ネピカスタットと呼ぶ)の左心室での、ドパミン及びノルエピネフリンレベルへの影響を調べることにある。動物は、12時間ごとに、担体(75%プロピレングリコール+25%DMSO;1.0ml/kg)又は15mg/kgのネピカスタット2回の静脈内投与(iv)を受ける。組織内ノルエピネフリン及びドパミンレベルを最後の化合物投与6時間後に測定した。
300−400gの16ないし17週齢のSD系雄ラットに、食餌及び水を自由に与えた。午後試験の前に、動物を計量し、ランダムに以下の処理群(各群n=10):担体(1.0ml/kg)又はネピカスタット15mg/kg、のいずれかに振り分けた。
ネピカスタットを合成し、適切な容量の担体(75%プロピレングリコール+25%DMSO)に溶解し、1.0ml/kgとして投与できるように調製した。ネピカスタットは、遊離塩基等価体として投与し、初回投与の前日の午後に調製した。
それぞれのラットに、摘出前日の午後に尾静脈に静注した。投与は、12時間後、翌朝にも行われた。最終投与の6時間後、ラットにハロタン麻酔をかけ、断頭し、左心室を迅速に摘出して計量した。左心室は、氷冷した0.4M過酸化水素酸1.0mL中に加え、組織は、組織内ドパミン及びノルエピネフリンレベルを、電気化学的検出方法により液体クロマトグラフィーにより測定した。
ノルエピネフリンを処置の主作用として一元配置分散分析(ANOVA)を行った。クラスカル・ワリス検定をドパミンについて行い、処置群間に不均一な分散があるため、まずそれらの比を計算した。続いて、フィッシャーの最小有意差法を用いて、ネピカスタット処置ラット及び担体処置ラットを比較した。タイプ1の実験あたりの同過誤率5%以下となるようにボンフェローニ補正をすべてのp値を出す際に行った。
ネピカスタット15mg/kg投与の場合、担体投与動物と比較して、ノルエピネフリンレベルを51%有意に(p<0.01)減少させ、ドパミンレベルは472%有意に(p<0.01)増加し、ドパミン/ノルエピネフリン比は1117%有意に(p<0.01)増加した。
結論としては、SD系ラットへのネピカスタットの静脈内投与により、左心室においてDBHを有意に阻害したことがわかった。
この試験では、自然発症高血圧雄ラット(SHR)における皮質、左心室、及び腸間膜動脈における、ドパミン及びノルエピネフリンレベルを変化させる、ネピカスタットの効果を評価した。動物には、12時間間隔で3、10、30又は100mg/kgを経口で、3回投与した。
この試験では、Sエナンチオマー(ネピカスタット)をRエナンチオマー(化合物B)との効果の比較も、3回投与(30mg/kg)して行った。またこの試験では、ネピカスタットを、以前ラットにおいて経口活性があることが示されていたDBH阻害剤である、SKF−102698、とも比較した。
化合物は、遊離塩基等価体として調製し投与した。ネピカスタットを適切な容量の担体に溶解した(ネピカスタットはdH2O、及びSKF−102698はPEG400:dH2O=50:50(容積:容積))。用量3、10、30、及び100mg/kgのネピカスタット、及び30mg/kgのSKF−102698を10.0ml/kgとなるように調製した。
15ないし16週齢自然発症高血圧雄ラット(SHR)(チャールス・リバー社)に食餌及び水を自由に与えた。動物は計量し、ランダムに以下の処置群:1)担体としての蒸留水(dH2O)、又は3、10、30、及び100mg/kgのネピカスタット、2)化合物B30mg/kgの蒸留水溶液、又は、3)担体としてのPEG400:dH2O又はSKF−102698を30mg/kg、に振り分けた。それぞれのラットに朝から開始して、3回、12時間間隔で経口投与した(投与チューブを用いた経口投与)。3回目の投与の6時間後、ラットをハロタン麻酔し、断頭し、皮質、腸間膜動脈、及び左心室を速やかに摘出し、計量し、氷冷した0.4M過酸化水素酸中に加え、液体窒素で凍結し、−70℃で保存した。組織内ドパミン及びノルエピネフリンレベルを高速液体クロマトグラフィー及び電気化学的検出方法により分析した。
4種の統計分析を行った。最初のシリーズは、様々な投与量のネピカスタット、及び30mg/kgの化合物Bを担体コントロール動物と比較した。因子を用量及びブロッキング因子を日とするノンパラメトリック一元配置分散分析(ANOVA)を、それぞれの組織及び種について別々に行った。全ての結果を報告する。処置群及びコントロール群の比較分析を、実験あたりの同過誤率を制御するためにダネット検定を用いて行った。2つめの統計的試験では、SKF−102698と、PEG−dH2O担体処置群とを、ノンパラメトリックt−検定を用いて比較した。3つめの統計的試験では、30mg/kgにおける化合物Bと、ネピカスタットとをノンパラメトリックt−検定を用いて比較した。4つめの統計的試験では、30mg/kgにおけるネピカスタットと、SKF−102698とを、2つの異なる担体を用いたため、差異の違いを計算する直線的対比を以下の式に従い行った:
変化=(30mg/kg−担体)NEPICASTAT−(30mg/kg−担体)SKF−102698
この新しい変数にSASプロシージャーの一般的線形モデルによってゼロを代入しテストした。
大脳皮質におけるドパミンレベルは、30及び100mg/kgのネピカスタット投与において、担体よりも有意に大きく(p<0.05)、ノルエピネフリンレベルは有意に低く(p<0.05)、及びドパミン/ノルエピネフリン比は有意に大きかった(p<0.05)。
左心室におけるドパミンレベルは、3、10、30及び100mg/kg投与において、担体よりも有意に大きかった(p<0.05)。ノルエピネフリンレベルは、10、30及び100mg/kg投与において有意に低かった(p<0.05)。左心室におけるドパミン/ノルエピネフリン比は、ネピカスタット3、10、30、及び100mg/kg投与において、担体よりも有意に大きかった(p<0.05)。
SHRの腸間膜動脈におけるドパミンレベルは、3、10、30及び100mg/kg投与において担体よりも有意に大きかった(p<0.05)。ノルエピネフリンレベルは、10、30、及び100mg/kg投与において担体よりも有意に低いとはいえなかった(p>0.05)。腸間膜動脈におけるドパミン/ノルエピネフリン比は、ネピカスタットいずれのレベルにおいても担体よりも有意に大きかった(p<0.05)。
化合物Bによる処置により、大脳皮質においてドパミン及びノルエピネフリンは両方とも、担体と比較して有意に増加し(p<0.01)、ドパミン/ノルエピネフリン比には影響を及ぼさなかった。ノルエピネフリンレベルは、ネピカスタットにおいて化合物Bと比較して有意に低下した(p<0.01)。
化合物Bによる処置により担体と比較して、左心室において、ドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比が有意に増加したが(p<0.01)、ノルエピネフリンレベルは有意に低下しなかった。ネピカスタットは化合物Bよりも、ノルエピネフリンレベルをより有意に低下させ、ドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比を増加させた(p<0.01)。
化合物Bによる処置により担体と比較して、腸間膜動脈において、ドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比が有意に増加したが(p<0.0l)、ノルエピネフリンレベルを有意に低下させなかった。ネピカスタットは化合物Bよりも有意に、ノルエピネフリンレベル低下させ、ドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比を増加させた(p<0.01)。
大脳皮質におけるネピカスタットをSKF−102698と比較すると、30mg/kg投与において、ドパミンレベルは皮質において、SKF−102698の30mg/kg投与の担体に対する場合よりも有意に増加した(p<0.01)。担体に対する増加は、SKF−102698における方がネピカスタットよりも有意であった(p<0.01)。ノルエピネフリンレベルは、担体に対する減少は、ネピカスタットよりもSKF−102698の方が有意に低下させた(p<0.01)。皮質におけるドパミン/ノルエピネフリン比は、SKF−102698の担体に対するよりも有意に増加させ(p<0.01)、SKF−102698の方がネピカスタットにおけるよりも担体に対する増加は大きかった(p<0.01)。
左心室におけるドパミンレベルは、SKF−102698では担体に対するよりも有意に増加し(p<0.01)、担体に対する増加はネピカスタットの方がSKF−102698よりも大きかった(p<0.01)。SKF−102698処置によっては、ノルエピネフリンレベルは、担体に対して増加しなかったが、ネピカスタット処置では、SKF−102698よりも、担体と比較して有意にノルエピネフリンを低下させた(p<0.01)。左心室においてはドパミン/ノルエピネフリン比は、SKF−102698の担体に対するよりも有意に増加し(p<0.05)、ネピカスタットの方が、SKF−102698の担体に対するよりも増加が大きかった(p<0.05)。
腸間膜動脈におけるドパミンレベルは、SKF−102698では担体に対するよりも有意に大きく、担体に対する増加はネピカスタットの方がSKF−102698よりも大きかった。ノルエピネフリンレベルは、SKF−102698の担体に対するよりも有意に低下し、ネピカスタットは担体に対して、SKF−102698の担体に対してよりも、より有意に低下させた。左心室におけるドパミン/ノルエピネフリン比は、SKF−102698の担体に対するよりも有意に大きく、ネピカスタットの担体に対する増加の方がSKF−102698の担体に対するよりも大きかった。
結論としては、SHRに対し、12時間間隔で投与した場合、3回目の経口投与6時間後において、腸間膜動脈、左心室、及び大脳皮質において、ネピカスタットはインビボでの強力なDBH阻害剤であることがわかった。30mg/kgの場合、Sエナンチオマーであるネピカスタットが、Rエナンチオマー(化合物B)よりも3つのすべての組織において、より強力であった。さらに、ネピカスタットは、3回の30mg/kg投与した場合、腸間膜動脈及び左心室においては、24時間以上に渡りSKF−102698よりも有効であったが、大脳皮質においては有効でなかった。
ネピカスタットは、遊離塩基等価体として合成及び投与した。ネピカスタット及びメチマゾールは担体に溶解させて(66.7%プロピレングリコール:33.3%dH2O)適切な濃度の投与用溶液を得、全ての投与が1.0ml/kgで行われるようにした。
重量180−200gのSD系雄ラットに、投与14日前にヨウ素欠乏食を自由に与えた(ピュリナ社、5891C、Lot1478、0.066±0.042mgヨウ素/試料kg)。動物を計量し、ランダムに以下の処置群(各群n=12):ネピカスタット2.0mg/kg、ネピカスタット6.2mg/kg、メチマゾール1mg/kg、又は担体1ml/kgに振り分けた。。各群のラットは、夜及び次の朝に約12時間間隔で、10日連続で行った。
10日目の2回目の投与の4時間後、ハロタン麻酔し、断頭し、及び皮質、線条体、及び腸間膜動脈を摘出し、計量した。甲状腺機能の決定のためのコントロールとして用いただけであるため、組織サンプルはメチマゾール群からは摘出しなかった。腸間膜動脈、皮質、及び線条体を速やかに氷冷した0.4M過酸化水素酸に浸け、その日、HPLCによりノルエピネフリン及びドパミンレベルの測定に用いられるまで保存した。
眼窩血サンプルは第−3、0、3、7、及び9日(第0日が、最初の投与日である)に採血した。血清サンプルは、放射性免疫アッセイを用いてT3及びT4レベルを分析した。
T3及びT4レベルの変化を統計的評価するために、ベースラインからの変化を第−3日から計算した。ノンパラメトリック二元配置被験者内分散分析(ANOVA)を行った。また一元配置ANOVAも、コントロールからの有意差を検出するために行った。実験あたりの同過誤率を制御するためフィッシャーの最小有意差法により、コントロール及びそれぞれの処置群を合わせて行った。
動物へのネピカスタット2.0及び6.2mg/kg投与によるノルエピネフリンレベルは、皮質においては、担体コントロールに対して有意に変化しなかった(p>0.05)。2.0及び6.2mg/kg投与群における腸間膜動脈におけるノルエピネフリンレベルは有意に低下し(p<0.05)、2.0及び6.2mg/kgにおいて両投与群とも線条体におけるノルエピネフリンレベルは、担体コントロールに比べ、下限ぎりぎりではあったが有意に低下した(p<0.10)。
ネピカスタット2.0又は6.2mg/kg投与群のドパミンレベルは、3つのすべての組織においていずれの投与量においても、担体コントロールに対して有意に変化しなかった(p>0.05)。
ネピカスタット2.0及び6.2mg/kg投与による皮質及び線条体におけるドパミン/ノルエピネフリン比は、担体コントロールに対して有意に変化しなかったが(p>0.05)、ネピカスタット2.0及び6.2mg/kg投与による腸間膜動脈における比は、担体コントロールよりも有意に高くなった(p<0.05)。
ネピカスタット2.0又は6.2mg/kg投与では、ラット血清中の遊離T3又は総T4レベルを変化させることによる甲状腺機能には影響を与えなかった。陽性コントロールであるメチマゾール1.0mg/kg投与では、T3レベルを全ての処置日及びT4レベルを第3及び7日において、担体コントロールよりも有意に低下させた(p<0.05)。メチマゾール処置動物のT4レベルは、第9日において下限ぎりぎりではあったが有意に低下した(p<0.15)。
ネピカスタット(2.0又は6.2mg/kg)では、ドパミン又はノルエピネフリンレベル、又はドパミン/ノルエピネフリン比に担体と比べて有意な変化は見られなかった(p>0.05)。線条体においては、6.2mg/kg投与群においてノルエピネフリンレベルに下限ぎりぎりではあったが有意な減少が見られたが(p<0.10)、他の有意な変化は見られなかった。ネピカスタット2.0及び6.2mg/kg投与では、腸間膜動脈において有意にノルエピネフリンレベルを低下させ(p<0.05)、有意にドパミン/ノルエピネフリン比を増加させたが(p<0.05)、ドパミンレベルに有意差はなかった。それゆえ、10日間の投与により、ネピカスタットは、SD系ラットのインビボにおいて、大脳皮質又は線条体よりも腸間膜動脈に大きな効果を持つ、有効なドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤であることがわかった。
この試験は、ネピカスタットをイヌに投与することにより、腎髄質及び腎皮質におけるドパミン及びノルエピネフリンレベルを決定する目的がある。雄ビーグル成犬を、ランダムに4群に、各群8匹を振り分け、ネピカスタットを経口投与した。ネピカスタットは、5、15及び30mg/kgを単カプセル剤として投与した。担体は空のカプセルとした。それぞれのイヌに朝と午後に2用量を投与した(8−10時間間隔)。第5日朝に1用量を投与し、その6時間後にイヌを安楽死させた。腎髄質及び腎皮質サンプルを迅速に摘出し、計量し、氷冷した0.4M過酸化水素酸に浸け、液体窒素で凍結し、−70℃で保存した。
ノルエピネフリン(NE)及びドパミン(D)レベルの定量のため、それぞれの組織を0.4M過酸化水素酸中、簡易な超音波処理をした。超音波後、ホモジネートを30分間4℃において13,000rpmで遠沈した。それぞれの上清を除去し、3、4−ジヒドロキシベンジルアミン(DHBA)を加えた。それぞれのサンプルからの抽出物は、電気化学的検出方法によりHPLC分離した。この方法は、それぞれの検体において定量限界2.0ng/mLであり、直線範囲は2.0ng/mLないし400ng/mLである。
それぞれの検体において、組織の重量において計算し、組織のグラム数に対し、μグラムで表した。ドパミン、ノルエピネフリン及びドパミンレベルのノルエピネフリンレベルの比(D/NE)をそれぞれのイヌについて計算した。加えて、計算上の平均値及びD/NE比をそれぞれの処置群においてそれぞれの検体について計算した。
体重9−16kgの雄ビーグル犬(マーシャルファーム、North Rose、NY)を用いた。動物は水を自由に飲め、毎日1回午前10時までに食餌を与えられる。動物は、ランダムに以下の処置群(n=8/群):プラセボ(空のカプセル)、又はネピカスタット2mg/kg bid(4mg/kg/日)、の一つに振り分けた。それぞれの動物は、毎日2用量、朝及び午後(8−10時間間隔)に投与される。血液サンプル(10ml)は、毎日、血漿中ネピカスタット及びカテコールアミンレベルの測定のために採血した。血液は、1時間以内にヘパリン及びグルタチオンを含むチューブに集め、−4℃で遠心した。血漿は、一つは血漿中カテコールアミンの測定のため、及びもう一つはネピカスタットの分析のために、2つのサンプルに分けた。
組織サンプルも、後の時点で組織内カテコールアミンの分析に必要と思われたときのために、イヌから採取した。第15日、午前の投与6時間後、最終血液サンプルを採血した(10ml)。イヌは、ペントバルビタールナトリウム(40mg/kg、静注)で麻酔し、解剖台にのせ、2回目のペントバルビタール(80mg/kg、静注)で安楽死させた。速やかに正中開胸手術を行い、腹部切開を行った。腎動脈及び左心室を切り取った。開頭して前頭葉の大脳皮質を露出させ、生体組織を採取した。組織サンプルを計量し、氷冷した0.4M過酸化水素酸に浸け、液体窒素で凍結し、分析まで−70℃で保存した。
血漿中のノルエピネフリン(NE)、ドパミン(DA)及びエピネフリン(EPI)は、電気化学的検出方法を用いてHPLCにより分析した。ネピカスタットの血漿中濃度は電気化学的検出方法を用いてHPLCにより分析した。
Box−Cox変換は、対数が適切な変動安定化変換であることを示した;それゆえすべての分析は対数値で行われる。イヌ1の第10日のDA濃度BQL(定量下限未満)を0とした;ln(0)は、欠損とした。分析は混合モデル(PROC MIXEDを用いた)を用いて行った。分析の日及び処置のカテゴリー変数が固定されており、イヌの処置が変量効果である。固定効果は、薬剤及びプラセボ群が日々変わることによる、日及び処置の相互作用が含まれる。間違った項目を特定のコントラストに訂正するCONTRASTによってコントラストが計算される。特に、比較する処置群のコントラストで平均2乗誤差を含む。
ヘルマート変換を用いて安定状態の期間を計算した(SAS PROC GLMマニュアルを参照)。これらの変換は、それぞれの処置の平均を、それ以降の時点の処置の平均と比較する。安定状態の時間は、ヘルマートコントラストが統計的に有意であるとした最初の時点からの最大時間である。しかし、この方法は、本件に現れる場合のような、なだらかな変化のプロセスを検出することができないため、安定状態にある間の検体濃度の勾配も計算した。それぞれのイヌの安定状態にある間の勾配が計算され、動物ごとの勾配が得られる。そこから、勾配の単変量統計が計算され、平均勾配からの通常理論(Normal theory)の信頼区間、及び勾配ゼロの場合の仮説が試みられ、通常理論のp値が計算される。この勾配分析は、安定状態は濃度変化の期間であったかどうかの決定の基礎として用いられる。
プラセボ群と比較し、ネピカスタット(2mg/kg、bid)は、有意に血漿中NE(2.1倍)及びEPI(1.91倍)を減少させ、有意に血漿中DA(7.5倍)及びDA/NE比(13.6倍)を増加させた。
血漿中NE及びEPIのピーク値の減少が第6日及び第8日にそれぞれ見られたが、血漿中DA及びDA/NE比の増加が第7日及び第6日にそれぞれ見られた。血漿中NE、DA及びEPIの安定状態は、それぞれおよそ第4、8及び6日であったと見られる。血漿中DA及びDA/NE比の変化は、全ての日の投与後において、プラセボと比較して有意に異なっていた。血漿中NEは、第4−9日及び第11−13日の投与後において、プラセボと比較して有意に異なっていた。血漿中EPIは、第7−9日及び第12日の投与後において、プラセボと比較して有意に異なっていた。
ネピカスタットの投与(2mg/kg、bid)により、全ての薬物投与の日のネピカスタットは血漿中濃度において有意に現れた。ピーク濃度は、投与2日後に現れた。有意なネピカスタットのN−アセチル代謝物はいずれの日においても有意に現れることはなかった。
ネピカスタット(2mg/kg、bid、経口)の慢性投与(14.5日間)により、血漿NE及びEPIの有意な低下、及び血漿中DA及びDA/NE比の有意な増加が見られた。これらの変化は、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ酵素を阻害することを介して交感神経副腎系を阻害することを反映している。
ネピカスタットを計量し、カプセルごとに5、15、及び30mg/kg投与量となるようにカプセル剤を調製した(サイズ13−トーパック社;East Hanover、NJ)最初のイヌの体重を用いてそれぞれの動物の投与量を決定した。0mg/kg/日とは、イヌに空のカプセル(プラセボ)を投与する。全ての用量のネピカスタットは、遊離塩基等価体として投与した。
重量10−12kgの32の雄ビーグル犬を、ランダムに以下の4つの処置群(各群n=8):ネピカスタット0mg/kg/日(プラセボ)、10mg/kg/日(5mg/kg bid)、30mg/kg/日(15mg/kg bid)、又は60mg/kg/日(30mg/kg bid)、に振り分けた。イヌの番号は、用量群Aには1−16をつけ、用量群Bには17−32をつけた。組織摘出のための最終の手術は、1日16動物行い、2日以上がかかった。最初の化合物を投与する2又は3日前に、それぞれのイヌの重量を測定し、頭部、伏在静脈、及び頸静脈を覆う皮膚の部分の毛を剃った。投与は、1カプセルを経口投与、2回目は8−10時間後に投与することから構成される。第1−3日はスケジュール通り投与した。血漿中化合物濃度のベースラインを決定するために、第4日には、午前の投与前に頸静脈から3mLの血液を採取した。次に、午前の投与を行い、投与1、2、4及び8時間後、血漿中化合物濃度を決定するために、3mLの血液サンプルを採取した。血液サンプルは、ヘパリンを含むチューブに入れ、4℃で遠沈し、−20℃で分析まで保存した。次に午後の投与をスケジュール通り行った。スケジュール通り午前の投与を行った。午前の投与約6時間後、血漿中化合物濃度の決定のために、最終の頸静脈から3mL血液サンプルを採取した。イヌにペントバルビタールナトリウムを、頭部又は伏在静脈に投与して麻酔し(〜40mg/kg)、解剖室に運び、さらにペントバルビタールナトリウムを投与した(〜80mg/kg、静注)。左心室、腎動脈、腎臓、腎髄質、腎皮質及び大脳皮質を速やかに摘出し、計量し、2mLの0.4M過酸化水素酸に加え、液体窒素で凍結させて−70℃で分析まで保存した。その後、カテコールアミン類をHPLCにより電気化学的検出方法を用いて分析した。すべての組織サンプルは2つの部分に分け、第2の部分は即時に液体窒素により凍結し、組織内化合物濃度の決定まで−70℃で保存した。第3に、貫壁サンプルは左心室から切り出し、即時に液体窒素で凍結させ、−70℃で分析まで保存し、受容体結合実験において用いた。
貫壁のサンプルを50mMトリス−HCl、5mM Na2EDTA緩衝液(pH7.4、4℃)で、ポリトロンP−10組織破砕装置を用いて(セッティング10、2x15秒間破砕)ホモジナイズした。ホモジネートは、500×gで10分間遠沈し、上清を氷浴で保存した。沈殿物は、再度懸濁して洗浄し、500×gで遠沈し、上清を合わせた。合わせた上清を48,000×gで20分間遠沈した。沈殿物は、再度懸濁して洗浄し、ホモジナイズ用の緩衝液で1回及び50mMトリス−HCl、0.5mMEDTA緩衝液で2回洗浄した(pH7.4、4℃)。沈殿した膜は−70℃で、必要となるまで保存した。飽和試験は、50mMトリス−HCl、0.5mM EDTA(pH7.4、32℃)を含む[3H] CGP−12177で行った。非特異的結合を10μMイソプロテレノールによって特定した。総結合、非特異的結合、及び総カウントチューブを、0.016nMないし2nMの8つの濃度の[3H] CGP−12177のためにセットした。サンプルは、32℃60分間で培養した。サンプルはブランデルセルハーベスターを用いて0.1%PEI前処理GF/Bガラス繊維フィルターマットで濾過した。サンプルは、3回3秒間、室温の水で洗浄した。アクアゾルシンチレーション試薬をそれぞれのバイアルに加え、液体シンチレーションカウンターで放射性同位体を特定した。飽和結合等温を、最初の総リガンド濃度から遊離リガンド濃度への変換の後に分析した(総−結合=遊離)。個々の飽和等温をそれぞれの組織において計算した。細胞膜はタンパクとして、バイオ−ラッドタンパク質結合法を用いてγグロブリンを標準物質として細胞膜のアッセイをした。受容体の密度は、タンパク質に対するmgで表され、それぞれの処置群の平均をとった。組織内カテコールアミン濃度は、ネピカスタット処置群をプラセボ(コントロール)群と比較して分析した。ノンパラメトリック一元配置分散分析(ANOVA)により、投与量を因子として、それぞれの組織及びそれぞれのカテコールアミン類を別々に測定した。それぞれの投与量における処置群とコントロールの対比分析を、実験あたりの同過誤率を制御するためダネット検定を用いて行った。Student−Neuman−Kuels及びフィッシャーの最小有意差法を検証のために行った。組織及び血漿中の化合物濃度の分析は、2つの方法で行った。1つ目は、それぞれのパラメータを、それぞれの対応する用量を対応する用量の因子のパラメータとして比較するために個別のt−検定を行った。例えば、10mg/kg投与を3回行った場合、特定の組織又は血漿においては、30mg/kg投与群と匹敵する化合物濃度が見られるはずである。加えて、一元配置ANOVAにおいて、直線的直交コントラストを3つのすべての用量について計算した。対比t−検定は、担体群とネピカスタット10mg/kg/日投与群とにおいて結合の差異があるかを決定するために行った。
イヌに0、5、15、又は30mg/kgのネピカスタットのカプセル剤 bidを10、30、及び60mg/kg/日となるよう4.5日間投与し、最後の投与の6時間後に組織を摘出した。腎動脈においては、10、30及び60mg/kg/日のネピカスタット投与の場合には、それぞれ86%、81%及び85%、有意にノルエピネフリンレベルを低下させた(p<0.01)。ドパミンレベルは10、30及び60mg/kg/日投与の場合には、それぞれ180%、273%及び268%、有意に増加させた(p<0.01)。10、30及び60mg/kg/日のネピカスタット投与の場合には、ドパミン/ノルエピネフリン比を、それぞれ1711%、1767%及び1944%、プラセボに比べて有意に増加させた(p<0.01)。10及び60mg/kg/日のネピカスタット投与の場合、大脳皮質ドパミンレベルは、それぞれ632%及び411%、有意に増加した(p<0.01)。ドパミン/ノルエピネフリン比は、10mg/kg/日のネピカスタット投与の場合には、531%増加し、及び60mg/kg/日のネピカスタット投与後においては、有意に(p<0.01)612%増加した。ノルエピネフリンレベルは、2つの投与量においては有意に変化をしなかった(p>0.01)。30mg/kg/日投与では、ノルエピネフリンは63%、有意に減少し(p<0.01)、比は86%、有意に増加したが(p<0.01)、ドパミンレベルはプラセボに対して174%、かろうじて増加した(0.05<p<0.10)。10、30及び60mg/kg/日のネピカスタット投与の場合、ノルエピネフリンレベルは左心室においては、それぞれ85%、58%及び79%、有意に減少した(p<0.01)。ドパミン/ノルエピネフリン比はプラセボ動物に対して、それぞれ852%、279%及び607%有意に(p<0.01)。10、30、及び60mg/kg/日のネピカスタット投与の場合には、ドパミンレベルの有意な変化は見られなかった。
10、30及び60mg/kg/日のネピカスタット投与の場合、腎皮質において、プラセボと比較してノルエピネフリンレベルは、それぞれ86%、66%及び85%、有意に減少した(p<0.01)。これらの濃度において、ドパミンレベルは、それぞれ156%、502%及び208%、有意に増加した(p<0.01)。10、30、及び60mg/kg/日投与の場合、ドパミン/ノルエピネフリン比は、それぞれ1653%、1440%及び1693%、有意に増加した(p<0.01)。10、30及び60mg/kg/日ネピカスタット投与の場合、腎髄質、ドパミン/ノルエピネフリン比は、プラセボに対してそれぞれ555%、636%及び677%、有意に増加した(p<0.01)。10及び60mg/kg/日投与の場合、ドパミンレベルは522%、有意に増加し(p<0.01)、30mg/kg/日では、それぞれ150%及び156%、下限ぎりぎりではあったが有意に増加した(0.05<p<0.10)。10mg/kg/日のネピカスタット投与の場合、ノルエピネフリンレベルは72%、プラセボに対して有意に減少した(p<0.01)。60mg/kg/日投与の場合、69%、下限ぎりぎりではあったが有意に減少した(0.05<p<0.10)。
第4日のネピカスタットの血漿中濃度及び、第5日の組織及び血漿中濃度は、それぞれの投与レベルと、対応濃度の因子レベルは、用量に依存していた。それゆえ、投与点は以下の例外を除いて直線的であることがわかった(有意な結果からは、このデータは直線的でないことを示唆している)。
腎髄質:3×10<30(p<0.05)
腎髄質:6×10<60(p=0.077)
血漿(第4日):2×30>60(p=0.076)
第5日においては、全ての組織内ネピカスタットレベルは、血漿中よりも高かった。
10mg/kg/日のネピカスタット投与群における左心室サンプルでは、担体処置群と差がなかった。
ネピカスタットについて、チロシンヒドロキシラーゼ、NO合成酵素、ホスホジエステラーゼIII、ホスホリパーゼA2、中性エンドペプチダーゼ、Ca2+/カルモジュリンタンパク質キナーゼII、アセチルCoA合成酵素、アシルCoA−コレステロールアシルトランスフェラーゼ、HMG−CoA還元酵素、タンパク質キナーゼ(非選択的)及びシクロオキシゲナーゼ−Iに対する酵素活性を調べた。図4に示されるように、ネピカスタットは、調べた12すべての酵素についてIC50>10μMであり、ドパミン−β−ヒドロキシラーゼ阻害剤として抗選択的であるといえる。(>1000倍)。
ウシDBHはシグマ化学社(St.Louis、MO)から入手した。ヒト分泌性DBHは、神経芽細胞腫細胞株SK−N−SHの培養細胞から精製され、阻害活性のデータを得るために用いた。25mLゲルを含むレンチルレクチンセファロースカラムを充填し、50mM KH2PO4、pH6.5、0.5M NaClで並行化した。カラムは、50mMKH2PO4、pH6.5、0.5M NaCl中10% メチルα、D−マンノピラノシド35mLを含む溶液を0.5ml/分で溶出した。最も多く酵素活性を有する分画を集め、YM30膜を用いてアミコン攪拌細胞で濃縮した。メチルα、D−マンノピラノシドを50mM KH2PO4、pH6.5、0.1M NaClによるバッファー交換で除いた。濃縮した酵素溶液、−25℃で保存した。
基質としてチラミン及びアスコルビン酸を用いてDBH活性を測定するのにHPLCアッセイを用いた。この方法は、逆相HPLCクロマトグラフィーによるチラミン及びオクトパミンの分離及び定量に基づく(Feilchenfeld, N.B., Richter, H. & Waddell, W.H. (1982). Anal. Biochem: A time−resolved assay of dopamine β−hydroxylase activity utilizating high−pressure liquid chromatography. 122: 124−128)。アッセイは、pH5.2、37℃で、0.125M NaAc、10mMフマル酸、0.5〜2.0μMCuSO4、0.1mg/mlカタラーゼ(6,500 u、べーリンガーマンハイム社、Indianapolis、IN)、0.1mM チラミン、及び4mM アスコルビン酸を用いて行った。典型的なアッセイとしては、0.5−1.0ミリユニットの酵素を反応混合物に加え、カタラーゼ、チラミン及びアスコルビン酸を含む基質混合物を加えて反応を開始した(最終容積200μl)。試料は37℃で30〜40分間培養した。反応は、25mM EDTA及び240μM 3−ヒドロキシチラミン(内部標準)を含む停止溶液でクエンチした。試料(150μl)をギルソンオートサンプラーにアプライし、280nmUV検出のHPLCで分析した。PC−1000ソフトウエア(サーモセパレーション(Thermo Separations)社製、Fremont、CA)をデータの統合及び分析に用いた。HPLCは、流速1ml/分、リクロカート125−4RP−18カラムを用いて10mM 酸、10mM 1−ヘプタンスルホン酸、12mMテトラブチルアンモニウムホスファート、及び10%メタノールを含む均一濃度溶出で行った。残物質の活性%は、阻害剤を含まないコントロールから計算し、内部標準及び非線形4係数用量反応曲線から得られたIC50値で補正した。
[14C]−チラミンの精製。[14C]チラミン塩酸塩はC18ライトロードカラム(2つのカラムを1つに結合したもの)で精製し、2mLのMeOHで洗浄し、2mLの50mM KH2PO4、pH2.3、30%アセトニトリル、及び続いてpH2.3、4mLの50mM KH2PO4で洗浄した。真空マニホールド(Speed Mate 30、アプライドセパレーション(Applied Separations)社)を用いて、真空でカラムを洗浄し、溶出した。[14C]チラミンをアプライし、カラムを50mM KH2PO4、pH2.3 6mLで洗浄し、30% アセトニトリルを含む50mM KH2PO4 2mLで溶出した。溶出液は、アセトニトリルを除くために凍結乾燥し、H2Oに再懸濁させ、−20℃で保存した。
酵素アッセイは放射活性法によって行った。酵素活性は、[14C]チラミンを基質として用い、C18カラムを用いて生成物を分離する。アッセイは、200mL容器に、100mM NaAc、pH5.2、10mM フマル酸、0.5μMCuSO4、4mM アスコルビン酸、0.1mg/mlカタラーゼ及び様々な濃度のチラミンを加えて行った。それぞれの反応における総カウント数は〜150,000cpmであった。ウシDBH(各反応につき0.18ng)を37℃中、反応緩衝液中、チラミン及び阻害剤と混合した。反応は、アスコルビン酸/カタラーゼ混合物を加えることにより開始し、37℃で30分間培養した。反応は、25mM EDTA、50mM KH2PO4、pH2.3の100mLで停止させた。MeOHであらかじめ洗浄し、50mMKH2PO4、pH2.3で平衡化したC18ライトロードカラム(2つのカラムを1つに結合したもの)に全混合物をアプライした。シンチレーションバイアルへの溶出液は、KH2PO4、pH2.3緩衝液で2回、続いて2mLの同じ緩衝液で洗い込んだ。レディセーフシンチレーション液(16ml)をシンチレーションバイアルに加え、14C放射性同位体の計測のために試料を加えた。
チラミン濃度:0.5、1、2、3、4mMの場合における阻害の速度を調べるため、0、1、2、4、8nMのネピカスタット濃度で試験した。14Cカウントは、上述で行ったのと同一であった。酵素を含まないブランクコントロールは、バックグラウンドを得るために行った。データは、バックグラウンドの計算のために集められ、nmol/分 活性に変換し、プロットした(1/V対1/S軸)。Km’は、傾斜及びY切片から計算され、Ki値を得るために、線形回帰により計算した。
基質濃度が37℃でpH5.2、0.1mMチラミン、4mMアスコルビン酸の場合におけるヒト及びウシDBHに対するSKF−102698、ネピカスタット及び化合物BのIC50値をHPLCアッセイにより求めた。3つのすべての化合物とも、用量依存的にウシ及びヒトのいずれの酵素についてDBH阻害活性を有していた。
ネピカスタット、化合物B及びSKF−102698のIC50値から、Sエナンチオマー(ネピカスタット)はヒトの酵素についてRエナンチオマーよりも強力であることがわかった(化合物Bよりも3倍、ウシDBHに対して2倍)。ネピカスタットは、SKF−102698よりも8倍ウシDBHに対して、及び9倍ヒトDBHに対して活性を有することがわかった。
0.6mMにおけるKmは、ラインウィーバー−バークプロットで求めた。ネピカスタット(1−8nM)は競合阻害剤において見られるKmに大きなシフトが見られた。ネピカスタットによるウシDBH阻害は、チラミンと競合していると考えられる。線形回帰によりKiは、4.7±0.4nMと算出した。
ネピカスタットは強力なヒト及びウシDBH阻害剤である。SKF−102698の8−9倍強力な阻害効果を有する。ネピカスタット(Sエナンチオマー)は、化合物B(Rエナンチオマー)よりも2−3倍強力である。ネピカスタットによるウシDBH阻害は、Kiが4.7±0.4nMとなり、チラミンと競合していると考えられる。
ネピカスタットの親和性は、標準的放射性リガンド結合アッセイ法によって測定した。
競合結合データは、4パラメータロジスティック法により逐次曲線にフィッティングさせて、分析した。ヒル係数及びIC50値は直接得られた。競合するリガンドのpKi(−log Ki)は、チェンプルソフの等式によりIC50値から計算した。
ネピカスタットは、α1受容体に対して中程度の親和性を有した(pKiは6.9−6.7)。他の全ての受容体に対する親和性は比較的低かった(pKi<6.2)。
投与に際しては、担体とネピカスタット粉末を混合し、振とうすることにより、ネピカスタット製剤60−mg/mlを調製しておいた。6−及び20−mg/mlのネピカスタット製剤は、60−mg/ml製剤を担体で希釈することにより得た。再構成したネピカスタット製剤は使用期間中、活性を保っていた。水溶性の担体及びネピカスタット製剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベンジルアルコール、及びポリソルベート80を含んでいる。
用量選択は、マウスにネピカスタット250、1000、又は2500mg/kgを単回経口投与する急性毒性試験に基づいて行った。1000及び2500mg/kgの場合に毒性の臨床的なサインが現れ死亡した。
担体又はネピカスタット製剤の単回経口投与は、げっ歯類用挿管器を用いて強制投与により行った。経口ルートが選択されたのは、臨床的に投与される経路と考えられるからである。投与用量は、投与前に記録した個々の体重に基づいて計算した(本明細書において体重は表にしていない)。食餌及び水は、プロトコールに1.5時間と特定して記載しなかった場合には、2.5ないし3.5時間前にやめさせた。この違いは試験の整合性に影響を与えるものではなかった。
臨床所見を投与前に記録した。投与後、最初の60分、それぞれの処置群のマウスは、3匹までの群として、約10分間隔で臨床所見を評価し、プロトコール仕様の行動テストを行った。30−mg/kg投与群の1匹、及び100−mg/kg投与群の1匹は投与後に死亡したので、試験から除いた。残ったマウスは、観察/試験期間の終了後に安楽死させ、試験から除いた。
各群6匹の雄マウスに、それぞれ投与チューブを用いて0(担体)、30、100、又は300mg/kgのネピカスタットを単回経口投与した。臨床所見は、試験製剤の投与60分後に開始した。観察終了後、残ったすべてのマウスは安楽死させ、試験から除いた。
担体コントロール群と比較して、30−、100−、及び300−mg/kg群において体温低下が見られた。処置に関連した臨床的挙動又は相対的な行動の変化は見られなかった。直腸温度データ及び観察及び行動試験データが得られた。処置に関連した臨床的挙動又は相対的な行動の変化は見られなかった。異常な群衆性(その他の反応としてリストに挙げた)は、100−mg/kg投与群に見られたが、300−mg/kg投与群には見られなかった;これは偶然に起こったことと考えられる。100−mg/kg投与群に1匹見られた臨床学的/行動学的変化とは、不活発化、異常な歩き方及び姿勢、誘発行動の減少、異常な無抵抗性、及び穏やかな/継続した発声であった;これらの変化は、ネピカスタットによるものではない。30−及び100−mg/kg投与群において、投与後1匹ずつ死亡したことは、偶然であると考えられ、試験から除いた。
この試験の目的は、DBH阻害剤であるSKF−102698及びネピカスタット投与により、自発運動又は音への驚愕反応に変化を及ぼすかを調べることにある。それゆえ、これらの行動の変化は、これらの化合物の中枢神経系での働きを反映していると考えられる。
成熟SD系雄ラット(試験日の体重250−350g)は、チャールスリバー社から入手した。ラットは、9時から21時に電気をつける通常の明/暗サイクルで飼育した。動物は、つがいで通常の金属ワイヤーケージで、食餌及び水は自由に摂らせた。
自発運動箱は、18”×18”、高さ12”のプレキシガラス(登録商標)の箱からなる。プレキシガラス(登録商標)の箱は、1インチ幅フォトビームの及び箱ごとに32まで番号を付けらたフォトセンサーからなるオムニテックデジスキャン動物行動モニター(モデル番号RXXCM−16)によって囲まれている。オムニテックデジスキャン分析装置によって、フォトビームの遮断の数を分析した(モデル番号DCM−8)。動物は、外部音を遮断するため、ホワイトノイズ装置の稼働している部屋の中で試験をした。
音への驚愕反応試験は、8つのSR−Lab小動物用驚愕反応測定装置(サンディエゴインスツルメンツ社、San Diego、CA)による自動試験台において行った。ラットは、それぞれ、防音装置を組み込んだプレキシガラス(登録商標)シリンダー(直径10cm)に入れた。騒音(上昇及び下降時間が1秒の広帯域雑音)を、動物の30cmの上のスピーカから発せられる。電圧加速度計により被検体の動きを0ないし4095の任意の電圧に変換する。
薬物投与前に、72のラットそれぞれを驚愕装置に入れ、5分の順応時間の後、ラットに騒音を15分にわたり20秒間ずつ(計45回の驚愕)騒音に曝した。驚愕11ないし45の平均の驚愕をそれぞれのラットについて計算した(最初の10回の驚愕は除く。)。これらのラットのうち、それぞれの群において同様の平均驚愕値を示した、64を8処置群のいずれかに振り分けた。8つの処置群とは:SKF−102698(100mg/kg)及びその担体(50%水/50%ポリエチレングリコール)、クロニジン(40μg/kg)、ネピカスタット(3、10、30及び100mg/kg)、及びそれらの担体であるdH2O、である。以前の試験から、ラット間において驚愕反応には顕著な多様性があるが、その日及びその次の日に測定することにより、ラット内において高度の一貫性があることが示されている。
この試験方法により、その次の日に、8匹のラットにそれぞれの薬物処置をし、即時に運動行動箱に入れ、ラットの運動行動を4時間観察した(各処置群1匹のラット)。次にラットを移動ケージに15分おいた。15分の開始時に、クロニジン投与を受けたラットは次の40μg/kgの注射を受けた。次にラットを驚愕装置に入れ、5分の順応期間の後、90dBの騒音に1分間隔で4時間曝した。
運動行動を評価するために、水平行動(光線を遮断した回数)、動きの回数、及び休息時間を測定した。それぞれのパラメータを別々に分析した。それぞれの時間間隔(又はサンプルという)について、その日の処置による効果を試験するために、二元配置分散分析(ANOVA)を順位化したデータ(ノンパラメトリック法)を用いて行った。処置群と担体コントロール群の対比試験を、ダネットt−検定によっても行った。
驚愕反応を評価するため、それぞれの驚愕の直前に、200ミリ秒間に発揮される平均の力、及び最大の力を測定した。平均最大、及び平均電圧(MAXMEAN及びAVGMEAN)を、それぞれの試験(TRIALN)のそれぞれの処置(TREAT)ごとに計算し、これらの値をプロットした。プロットは本明細書に添付した。試験1−60を時間=1、試験61−120を時間=2、試験121−180を時間=3及び試験181−240を時間=4とした。平均最大及び平均驚愕反応を、それぞれの処置についてそれぞれの時間で計算した。平均値を、共分散を用いて分析した。研究者の関心となっているのは、ある時間における処置間の比較であって、時間による処置内の影響ではない。それゆえ、驚愕反応を時間で分析した。モデルは、試験された日、驚愕反応のベースライン、及び処置の項目を含む。日は阻害要因であり、驚愕反応のベースラインは共変数である。上述のそれぞれの目的物には、3つの異なるモデルがあった。多重比較の可能なダネット検定の手法で、様々な用量のネピカスタットを担体と比較した。
4つのネピカスタット処置群を担体処置したコントロール群と比較したが、全体としては、試験中3つの項目について、いずれの時間においても、有意な差はなかった。
担体処置したコントロール群と比較し、クロニジン処置群は、2及び2.5時間における水平方向の運動が有意に活発となり、2時間では運動量が有意に増加し、2時間では休息時間が有意に減少した(すべてp<0.05)。1時間後では、クロニジン処置群が、担体処置したコントロール群よりも休息時間は有意に多かったことは注目すべきである(p<0.05)。
担体処置したコントロール群と比較して、SKF−102698処置群は、有意に水平方向の活動が減少し、2.5時間において運動量が有意に減少した(両方ともp<0.05)。SKF−102698処置群は、担体処置したコントロール群よりも1.5及び4時間後では運動量が有意に増加していたことは注目すべきである(いずれもp<0.05)。SKF−102698及び担体処置群において、休息時間に有意な差はなかった。
一般に、水平運動及び運動量は、最初の2時間で減少し、最後の2時間に低くとどまった。同様に、休息時間は、最初の2時間で増加し、最後の2時間は多かった。
ネピカスタットは、ラットの自発運動に有意に影響を与えなかった。動物にネピカスタット3、10、30又は100mg/kgを投与した場合、担体処置したコントロール群と比較して、水平方向の運動、運動量及び休息時間に有意差はなかった。
驚愕反応において、全体としていずれの反応についてもいずれの時間においても、ネピカスタット及び担体処置による有意差は見られなかった(p>0.05)。全体として、時間2における平均驚愕反応は、下限ぎりぎりではあったが有意であり、(p=0.0703)、ダネット検定では、ネピカスタット30mg/kg投与群において、担体群よりも有意に平均驚愕反応が見られた(p<0.05)。ベースラインは、平均驚愕反応において、統計的には、時間3及び4の両方において平均驚愕反応は有意であり(p≦0.05)、時間1及び2における、最大驚愕反応、及び時間2における平均驚愕反応は下限ぎりぎりではあったが有意であった(p≦0.10)。
SKF−102698(100mg/kg)では、いずれの時間において驚愕反応を測定した場合でも、担体との有意差はなかった。
クロニジンは、担体に比べ、最大及び平均驚愕反応を時間1において(p<0.01)、及び時間2においては平均驚愕反応についてのみ(p=0.0352)、統計的に有意に低下した。クロニジン処置において、時間2における最大驚愕反応、及び時間3における平均驚愕反応は、水投与群よりも下限ぎりぎりではあったが有意であった。
ネピカスタット3、10、30、又は100mg/kg投与では、いずれの時間においても担体と比較して、最大または平均驚愕反応に効果を及ぼさなかった。SKF−102698投与では、担体(PEG)の場合と同様の挙動を示した。クロニジンは、有効に早期の段階からの最大及び平均驚愕反応を低下させ、後半では担体投与の場合と同じように挙動した。
ラットに対するネピカスタット投与の慢性の投与効果を見た。最初の投与前3ないし13日目の間に、ラットを驚愕装置に入れ、5分の順化の時間の後、ラットに20分に渡り、1分間に平均1回の118dBの騒音を与えた(試験間の間隔の変数は、30から90秒とした。)。驚愕反応を測定し、最後の20の驚愕反応をそれぞれのラットについて計算した。ラットは、ランダムに8つの処置群:ネピカスタット、5、15又は50mg/kg、bid;SKF−102698、50mg/kg、bid;クロニジン、20μg/kg、bid:d−アンフェタミン、2mg/kg、bid;dH2O又はシクロデキストリン(SKF−102698の担体)に分類した。ラットに10ml/kg投与の経口強制投与を行った。ラットには、午前及び夕方に10日間投与した。午前及び夕方の投与時間間隔は、6及び10時間である。以前の研究により、驚愕反応への多様性には有意差はあるが、その日および次の日において高い一貫性を示し、この手順が音への驚愕反応に最も適切であることが示されている。
96全てのラットを同日に試験することは不可能であったため(8処置群、n=12)、投与計画をずらし、毎日8ラットについて実施した。これら12グループの8ラットは、それぞれ8つの処置群から1匹ずつ選ぶことからなることで、日の違いのバランスをとることができる。さらに、すべての処置群は8つの運動行動装置によってもバランスをとったが、驚愕反応装置に関しては、処置群間のバランスとれなかった。
投与中及び慢性投与の後に以下の行動試験;中核体温、運動行動、音への驚愕反応、及び聴覚驚愕に対するプレパルスインヒビション、を行った。
動物は、ホワイトノイズ発生装置の稼働している部屋の中で行った。運動行動試験は、第10日の中核体温を測定した直後に行った(第10日のネピカスタット及びSKF−102698の第10日の朝の投与を行った約3時間35分後で、クロニジン及びd−アンフェタミンの毎日の投与の20分前)。運動行動試験は、1時間行った。診断用プログラムは、光線及び光センサーが適切に働くかを確認するために、運動行動装置はそれぞれの試験の前に作動させた。運動行動は、行動テストとなる中枢ドパミンレベルの変化に敏感に応答し(Dietze and Kuschinsky, 1994)、この行動試験はDBH阻害剤のインビボ試験として可能性のある敏感な試験であることがわかった。D−アンフェタミンは、このアッセイにおいて陽性コントロールとして用いた。
ラットの中核体温の測定は、直腸プローブを2cmそれぞれのラットの直腸に挿入して行った。それぞれのラットの中核体温は3回測定し、平均を計算した。中核温度は、第10日の慢性投与の直前に行い(ベースラインを決定するため)、第1日、5、及び10日のネピカスタット及びSKF−102698の朝の投与の3.5時間後、及びクロニジン及びd−アンフェタミン投与の15分前に行った。中核体温は、ドパミン及びノルエピネフリンレベルに敏感に反応し、この行動試験が、DBH阻害剤のインビボ試験として可能性のある敏感なアッセイであることがわかった。クロニジン(α2アゴニスト)、及びd−アンフェタミン(ドパミン分泌剤)をこのアッセイのポジティブコントロールとして行った。
音への驚愕反応(速い筋収縮が強い音のノイズのバースト音に合わせて、起こること)、及びプレパルスインヒビション(驚愕しない刺激の直後に驚愕刺激を与えた場合における、驚愕反応のあらゆる減少を分析することにより測定した感覚運動ゲーティング)を8つのSR−Lab(サンディエゴインスツルメンツ社, San Diego, CA)による試験台において行った。ラットは、それぞれ防音装置を組み込んだプレキシガラスシリンダー(直径10cm)に入れた。聴覚騒音(上昇及び下降時間が1秒の広帯域雑音)を、動物の30cmの上のスピーカーから発せられる。また、これらのスピーカーは、試験期間中68dBのバックグラウンドのノイズを出していた。プレキシガラスシリンダーの下に電圧加速度計を備えた電圧加速度計により、被検体の動きを電圧に変換し、続いてSR−Labソフトウエアおよびインターフェース集合体を有するPCで修正してデジタル化(目盛り0ないし4095)する。デシベル計は、スピーカーの8つの試験台の平均値の±1%の修正を行うために用いた。加えて、SR−Lab修正装置は、8つの驚愕検出装置をそれぞれ平均値の±2%の修正をするために用いた。驚愕反応及びプレパルスインヒビションテストは、運動行動試験の直後(朝のネピカスタット及びSKF−102698注射の約4時間40分後、及び第10日の追加のクロニジン及びd−アンフェタミンの投与10分後)。驚愕反応及びプレパルスインヒビションテストは、それぞれのラットをSR−Lab試験台に置き、5分間の順応時間を経て、異なる3つのうちの1つのバースト音を、1分間に平均1回で(30から90秒の様々な試行間隔)、1時間にわたり行った(合計60のバースト音及び驚愕反応)。これらの異なる3つのタイプのバースト音は、大きなバースト音(118dB)、及び比較的静かなバースト音(77dB)で構成され、比較的静かなバースト音は大きなバースト音よりも100m秒前に発生させた(プレパルスインヒビションテスト)。試験のバースト音は、擬似乱数に従い発生させた。プレパルスインヒビションは、中脳辺縁系ドパミンレベルの変化に敏感である。さらに、音への驚愕反応は、ドパミン及びノルエピネフリンレベルの変化にも敏感であり、このことからこれらの行動試験は、インビボでのDBH阻害剤の効果測定の試験として可能性のある敏感なアッセイである。クロニジン及びd−アンフェタミンは、音への驚愕反応及びプレパルスインヒビションの陽性コントロールとして用いた。
毎日の行動試験は以下のようにスケジュールされている。t=0で、DBH阻害剤を注射する。3.5時間後、中核体温を測定する。3時間35分後、運動行動を測定する。4時間40分、驚愕反応及びプレパルスインヒビションを測定する。
3回の体温測定を試験時間ごとに個々に行う。3つの記録値の平均を計算した。
それぞれのラットの自発運動を、試験中に光線を遮った合計として計算した。
被検体の反応を、刺激の後40m秒後に記録した。驚愕反応をそれぞれのバースト音の直後から、40回の平均をとって計算した(1/ミリ秒)。音への驚愕反応は、118dBの聴覚刺激によって得られた被検体の驚愕の平均反応を計算した。プレパルスインヒビション値は、118dBパルス単独の平均値から、77dB−118dBパルスの対比較による平均値(上述したプレパルスインヒビションテスト)を引いたものを、118dBパルス単独の平均値で割ったものである([118dBパルス単独−プレパルスインヒビション]÷118dB単独)。
全体の一元配置ANOVAを、それぞれの動物のベースラインが変化する都度行った。続くt−検定を、興味があったので比較のため行った。
自発運動行動を15分ごとに1時間測定した。それぞれの時間帯(15分ごと)に分析した。処置群間における差を見るためクラスカル・ワリス検定(ノンパラメトリック検定)を行った。全体として有意な差が見られなかったら、多重比較のためのボンフェローニの補正を行った。
各処置(TREAT)及び各試験(TRIALN)について、トライアルタイプT(TRIALT)について平均電圧(AVGMEAN)及び平均プレパルスインヒビション率(RATIO)を計算した。プレパルスインヒビション値は、118dBパルス単独の平均値から、77dB−118dBパルスの対比較による平均値(プレパルスインヒビション試験の仕方は、上述)を引いたものを、118dBパルス単独の平均値で割ったものである([118dBパルス単独−プレパルスインヒビション]÷118dB単独)。
これらの値は、それぞれの処置の試験番号及び試験のタイプに対してプロットし、これらのプロットは本明細書に添付した。y軸は変化することに注意すべきである。試験1−15は時間1、試験16−30は時間2、試験31−45は時間3、及び試験46−60は時間4に対応する。時間に対し、平均プレパルスインヒビション率及び動物の驚愕の平均を示したプロットも添付した。
平均驚愕反応及びプレパルスインヒビション率を、分散分析を用いて分析した。このモデルは、治療薬、治療薬を投与された動物、時間及び治療の相互作用の項目を含む。治療薬を投与された誤差項を用いて治療効果を調べた。時間による全体としての治療効果を調べた。フィッシャーの最小有意差法を用いて、多重比較を行った。全体としての処置又は時間による処置の効果が有意でなかった場合には(p値>0.05)、ボンフェローニ補正を行った。全体としての治療効果が有意でなかった場合には、特定の対比較を行った。さらに、特定の対治療の効果が有意でなかった場合には(p値>0.05)、時間に対する治療効果の修正を行った。全体としての治療効果及び時間に対する処置がともに有意でなかった場合には(p値>0.05)、個別の比較についての時間及び平均時間について、ボンフェローニ補正を行った。
分析に際しては、体重の投与前からの変化をそれぞれの動物について計算した。反復測定二元配置ANOVAを用いて、治療効果全体、時間、及び時間経過による治療の相互作用を評価した。一元配置ANOVAは、その日の治療効果を評価するために用いた。
第1日目の陽性コントロール(d−アンフェタミン及びクロニジン)は、慢性投与によって有意に中核体温を上昇させたが、他の化合物はいずれもどの時点においても中核体温に有意差はなかった。
d−アンフェタミン群は、担体コントロール群よりも全ての時点において有意に自発運動を増加させた。しかし、クロニジン群は、担体コントロール群と比べ有意差はなかった。SKF−102698 50mg/kg bid群は、最初の45分では担体コントロール群よりも有意に自発運動を低下させたが(例えば、サンプル1−3)、45分以降では有意差はなかった。
どの時点においても、全体としてネピカスタットは有意な治療効果を示さなかった。対比較によってもネピカスタット治療群は、担体コントロール群と比較して、有意差はなかった。また、2つの担体コントロール群(dH2O及びSKFの担体)は、有意差はなかった。
プレパルスインヒビションにおいてはいずれの治療群も、有意な差を示さなかった。全体として統計的に、SKF−102698群及びシクロデキストリン群において、時間による有意な差はなかった(p=0.0001)。時間経過による治療効果の相互作用は、統計的にはシクロデキストリン対dH2O(p=0.0283)では有意差があったが、他ではなかった。治療効果は、関心のある比較においてはいずれも有意差はなかった。しかし、SKF投与群は、シクロデキストリン投与群よりも下限ぎりぎりではあったが高い割合で、プレパルスインヒビション効果があった(p=0.0782)。
時間1及び2において、クロニジン投与群はプレパルスインヒビションにおいて担体コントロール投与群よりも、ちょうど有意な効果を示したが、時間3及び4においては、担体投与群よりも有意な差は示さなかった。d−アンフェタミンもSKF−102698も、それらの担体からいずれの時間においても有意差はなかった。ネピカスタット投与群は、dH2Oと比較していずれの時間においても有意差はなかった。
SKF−102698投与群だけは、音への驚愕反応に有意差があった。関心のあった全ての比較対象において、時間経過による治療効果は統計的に有意差があった(全てp=0.0001)。時間経過による治療効果の相互作用は、統計的にはアンフェタミン対dH2O、クロニジン対dH2O、及びシクロデキストリン対dH2O(全てp<0.05)において有意差があったが、他は有意差はなかった。治療効果は、SKF−102698 50mg/kg bid対シクロデキストリン(p=0.0007)、及びネピカスタット 50mg/kg bid対SKF−102698 50mg/kg bid(p=0.0047)において有意差があったが、他はなかった。SKF−102698 50mg/kg bid投与群は、シクロデキストリン投与群よりも有意に低い驚愕反応を示し、ネピカスタット50mg/kg bid投与群と比較しても有意に低い驚愕反応を示した。
SKF−102698(50mg/kg bid)投与群は、シクロデキストリン投与群よりもいずれの時間においても有意に低い驚愕反応を示した。時間1及び3、ネピカスタット(50mg/kg bid)投与群は、SKF−102698(50mg/kg bid)投与群に比べ、有意に高い驚愕反応を示した。その他の有意差は見られなかった。
全体として又は対比較において、投与前からの体重の変化による有意差は見られなかった。
d−アンフェタミン投与群は、担体コントロール投与群よりも投与前からの体重変化が、有意に小さかった(p<0.01)。毎日分析した結果、担体コントロール投与群は、アンフェタミン投与群よりも処置日4−10において、投与前からの体重増加が有意であった。しかし、クロニジン投与群では、担体コントロール投与群に比べ、いずれの時点においても、有意差はなかった。SKF−102698(50mg/kg bid)投与群では、担体コントロール投与群(SKF担体)と比べて、処置前から有意に小さい増加であった。毎日分析した結果、第3及び6日を除く第2−10日において、投与前に比べ、SKF−担体コントロール投与群は、SKF−102698投与群よりも有意に大きな体重増加が見られた。重要なことは、SKF−担体及び担体コントロール投与群では、いずれの日においても体重の変化はなかった。
全体として、いずれの時点においてもいずれの用量においても、ネピカスタットによる体重による治療効果に有意な変化はなかった。対比較では、いずれの時点でもネピカスタット−処置群は、担体コントロール投与群に比べて有意差はなかった。興味深いことに、体重変化においてSKF−102698(50mg/kg bid)投与群及びネピカスタット(50mg/kg bid)投与群においては、全体として有意差があった。毎日分析した結果、SKF−102698(50mg/kg bid)投与群はネピカスタット(50mg/kg bid)投与群よりも第7−9日において体重は有意に低かった。
1−メチル−4−フェニル−1,2、3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)はRBI社(Natick, MA)より購入した。MPTPは、投与において2mg/mL濃度(遊離塩基)で水に懸濁させ、各動物に、体重(kg)と同じ体積(ml)を皮下注射した。950g動物は、2mg/mLのMPTPを0.95mL、結果として2.0mg/kgの投与を受ける。
サルは、13h/11hの明暗サイクル下、食餌及び水を自由に摂取できるようにした。すべての手順はNIHのガイドラインに従い、動物実験委員会(IACUC)の承認を得ている。動物は、それぞれ飼育され、少なくとも行動試験の1ヶ月前から、集団に慣れるようにした。
6匹のリスザルのうち、3匹は障害を与えず、3匹は障害を与え(2mg/kgのMPTPを3ヶ月前に投与した)ネピカスタットの最適な投与経路の研究のために用いた。(i)食餌に混入させ、(ii)経口シリンジ、及び(iii)経口投与チューブを含む3経路を試みた。ネピカスタット溶液(5mg/ml)をマシュマロに混入させたものを、障害を与えなかった3匹のサルに試みたところ、まずい味によるためと考えられるが摂取せず、よい投与経路とはいえなかった。経口シリンジによるネピカスタット(0.5、2、及び5mg/kg)投与を、障害を与えなかった3匹のサル及び障害を与えた3匹のサルに試みたところ、最高濃度において吐き出す経口にあったため、許容できる投与経路ではなかった。経口投与チューブによる投与では、3匹のMPTP障害を与えたサルに最高濃度の薬物(5mg/kg)を投与したところ、うまく投与できた。
ネピカスタットの安全性及び耐容性を調べるために3匹は障害を与えず、3匹は障害を与えた(2mg/kgのMPTPを3ヶ月前に投与した)6匹のリスザルを用いた。動物に、0.5、2.0、又は5.0mg/kgの濃度のネピカスタットを毎日2回、5日間(異なる投与レベルの場合には2日間のウォッシュアウト期間を設けた)投与した(午前10時及び午後2時)。ネピカスタットは、0.5、2.0及び5.0mg/kg投与の場合には経口シリンジで、及び5.0mg/kg投与の場合には投与チューブで行った。薬物は、低濃度の2投与群では、十分な耐容性があった。5.0mg/kgを投与した障害を与えなかった1匹のサルは、投与期間の最後の2日にうすいベージュ色の軟便となり、1日は薬物による離脱であるとわかった。
24匹のリスザルのうち、14の雌及び10の雄をパーキンソン病モデルとして用いた。24の動物をランダムに各群6匹ずつ4つの処置群のいずれか振り分けた。投与群は、以下のように構成される:プラセボ(水)処置を受けるグループA(6匹);ネピカスタット1mg/kg/日(0.5mg/kgを1日2回)投与を受けるグループB(5匹);4mg/kg/日(2mg/kg1日2回)投与を受けるグループC(6匹);及び10mg/kg/日(5mg/kg1日2回)投与を受けるグループD(6匹)。グループBは、MPTP障害の直後に1匹死亡したが、補充しなかった。
障害を与える前に各動物は、赤外線行動モニター(IRAM)ケージを用いて自発運動行動の定量的な評価を行った。全ての記録は60分間ずつ10回行われ、2週間を超えて記録した。動物の行動は、1ないし3人の臨床評価者によって、パーキンソン病臨床評価尺度(CRS)を1日1回(正午ないし午後1時)、3ないし5日連続して評価した。正常動物では、通常CRSで3よりも大きな評価は現れない。活動モニタリング(IRAM)及び臨床評価により、それぞれの動物の平均ベースライン行動値が作成できた。
動物には、2.0mg/kg(遊離塩基)のMPTPを皮下注射によってパーキンソン様症状を発生させた。MPTP障害の2ないし4週間後に行動評価を行った。自発運動をIRAMで60分、3ないし5日観察した。1ないし3人の臨床評価者が3ないし5日間、動物の臨床行動(CAS)を評価した。
いくつかの場合には、臨床評価尺度の総合平均スコアが3よりも大きいことと定義されるパーキンソン病症状を示すには、追加のMPTP(2mg/kg)投与が必要となった。有効性評価の試験開始後3週間以内に、すべての動物は、MPTP後の行動評価(IRAM及びCRS)を受けた。この最終MPTP後評価に基づき、臨床パーキンソン様症状のベースラインを作成し、統計分析の前処理値とした。
L−ドパに対する反応性、及びネピカスタットの有効性を動物で確かめた。試験は、最後のMPTP投与の後、4ないし12週間に行った。2.5、5、又は7.5mg/kgの濃度のL−ドパを、1日2回(午前10時及び午後2時)7日続けて強制経口投与した。IRAM及びCRSによって行動を評価した。臨床評価は、最後の4日間、午前10時の投与後60ないし90分後に行った。評価者(1ないし3人)は、どの処置群かを知らされずに行った。IRAM評価は、期間中最後の2ないし5日間、午後2時の投与後すぐから行った。それぞれの用量の間には少なくとも2日のウォッシュアウト期間を設けた。
ネピカスタット又は水(プラセボ)を12日間の投与後、L−ドパ投与後少なくとも2日のウォッシュアウト期間を設けた。薬物は、1日2回午前10時及び午後2時に強制経口投与によって投与された。行動はIRAM及びCRSによって評価した。CRSは、ネピカスタット投与の最後の5日間、午前10時の投与後、60ないし90分後に行った。評価者(1ないし3人)は、どの処置群かを知らされずに行った。IRAMは、薬物処置の最後の5日間に、午後2時の投与直後から90分かけて行った。
統計分析のために、自発運動及び臨床評価値をモニターした。各動物について、平均の自発運動を、MPTP障害を与える前後で測定した。MPTP障害前のベースラインは、1時間のモニター時間で10回行い平均をとった。MPTP(前処理)障害後の行動評価は、有効性評価の試験開始後3週間以内に行った。MPTP障害後の自発運動は、1時間のモニター時間で3ないし5回行い平均をとった(IRAMS)。活動のモニタリングは、「動きの回数/10分」として記録した。より高いスコアであるほど、素早く動いていることになる。ウィルコクソン符号順位検定を用いてMPTP障害前後の活動をそれぞれの投与群の動物について比較した(グループAないしD)。
それぞれの薬物レベルによる投与後、少なくとも90分にわたり、10分間隔でIRAMにより自発運動をモニターした。率が高いと、動きが速い動物であるといえる(パーキンソン病症状を示していない)。
統計分析は、プラセボ及び1、4、及び10mg/kgの試験薬物を投与した場合における記述統計、及び10分間ごとのデータの平均をグラフ化することからなる。次にグラフから傾向を見出した。グラフによる分析と違いがなかったため、さらなる統計分析は行わなかった。
IRAMデータが十分集まらなかったので、MPTP(前処置)障害後と2.5、5.0、及び7.5mg/kg L−ドパ及びネピカスタット(1、4、10mg/kg/日又はプラセボ)処置との、統計分析の比較は行わなかった。ネピカスタット投与では90分間のデータが集まったが、MPTP障害後60分後のデータのみが収集された。
CRSでは、MPTP障害前の動物で臨床評価尺度のスコアが3よりも大きいものはいなかった。MPTP障害後の臨床評価尺度のスコアは、有効性評価の試験開始後3週間以内に1ないし3の臨床評価者が3ないし5日連続で測定を行い、平均をとった(CRS)。
8つのパーキンソン病の特徴をそれぞれの動物について評価し、これら8つの特徴のスコアを足し合計スコアを得た。それぞれの動物について、それぞれの投与量での単一の臨床評価スコアは、複数の投与日について(投与量ごとに)全ての臨床評価者(1ないし3人)の得たスコアの平均をとることにより得た。この平均CRSを統計分析に用いた。より低いスコアの方が、パーキンソン病でないと評価される。
統計分析は以下により構成される:(1)プラセボとネピカスタット1、4、及び10mg/kg/日投与の場合の平均CRSを、クラスカル・ワリス検定(ノンパラメトリック分散分析)を用いて比較した。この比較を、それぞれの動物について、MPTP後の最終評価によって修正されたそれぞれの薬物濃度において、繰り返した。修正された臨床評価スコアとは、各濃度におけるMPTP後の臨床評価スコアの比である。(2)対比較
(前処理としての)MPTP障害後の2.5、5.0、及び7.5mg/kg L−ドパ及びプラセボ処置の平均CRSを、フリードマン検定(ノンパラメトリック分散分析、反復測定)を用いて比較した。同じ分析を1、4、及び10mg/kg濃度のネピカスタットでも行った。ノンパラメトリックデータを分析するときは、ダネットポストホック分析を必要であれば、行った。
IRAM(行動モニタリング)及びCRS(臨床評価尺度)は、それぞれのリスザルのMPTP障害の程度を評価するために用いた。
グループA:プラセボ処置群の場合、動きの多様性/10分/動物の程度が高かったため、IRAM群における障害前及び障害後において有意差はなかった。ウィルコクソン符号順位検定:W=19、N=6、P<0.06であり、帰無仮説は採択された。グループAの平均CRSは、8.9、幅4.8ないし15.4だった。全ての動物においてMPTP障害の後、臨床評価スコアが有意に増加した。(障害を与えなかった)正常動物は、通常スコアは3より小さい。
グループB:1mg/kg/日処置群の場合、動きの多様性/10分/動物の程度が高かったため、IRAM群における障害前及び障害後において有意差はなかった。ウィルコクソン符号順位検定:W=9、N=5、p<0.06であり、臨床評価スコア(CRS)の帰無仮説は採択された。グループBの平均CRSは、10.32、幅4.3ないし16.1だった。全ての動物においてMPTP障害の後、臨床評価スコアが有意に増加した。(障害を与えなかった)正常動物は、通常スコアは3より小さい。
グループC:4mg/kg/日処置群の場合、動きの多様性/10分/動物の程度が高かったため、IRAM群における障害前及び障害後において有意差はなかった。ウィルコクソン符号順位検定:W=17、N=6、P>0.06であり、臨床評価スコア(CRS)の帰無仮説は採択された。グループCの平均CRSは、8.97、幅6.5ないし17.3だった。全ての動物においてMPTP障害の後、臨床評価スコアが有意に増加した。(障害を与えなかった)正常動物は、通常スコアは3より小さい。
グループD:10mg/kg/日処置群の場合、動きの多様性/10分/動物の程度が高かったため、IRAM群における障害前及び障害後において有意差はなかった。ウィルコクソン符号順位検定:W=21、N=6、P>0.06であり、臨床評価スコア(CRS)の帰無仮説は採択された。グループDの平均CRSは、8.02、幅4.0ないし15.6だった。全ての動物においてMPTP障害の後、臨床評価スコアが有意に増加した。(障害を与えなかった)正常動物は、通常スコアは3より小さい。
IRAM測定による投与群内における、ベースライン(MPTP障害前)及びMPTP障害後の自発運動は、各動物におけるIRAMの高い多様性から全体として有意差はなかった。CRS結果は、MPTP障害前及びMPTP障害後における違いを表している。MPTP障害前の動物ではスコアは3よりも大きくはなかった。MPTP障害後におけるスコアは3よりも大きかった。すべての投与群(AからD)において、平均CRSは、可能な合計スコア24のうち8ないし10を占めていた。
プラセボ処置群及び3つの濃度のネピカスタット(1、4、10mg/kg/日)を、MPTP障害を与えたリスザルに投与したことによって検出しうる違いはなかった。ネピカスタット4及び10mg/kg/日投与のいずれにおいても、及びプラセボは(前処理としての)MPTP障害後の状態に有意な改善が見られた。全ての投与群において、L−ドパ5mg/kg及び7.6mg/kg投与のいずれにおいても、グループCの7.5mg/kg投与及びグループBの5mg/kg/投与における例外を除いて、(前処理としての)MPTP障害後の状態に、有意な改善が見られた。MPTP障害後と比較して、L−ドパ2.5mg/kg投与の場合には、有意な差は見られなかった。
フリードマン検定、記述統計及び、及びダネットポストホック検定を行い、プラセボ処置との行動モニターを全てのネピカスタット濃度で投与後10−90分において処置群及びL−ドパ投与群を比較した。それぞれの投与量で10分間隔のプロットを行った。プラセボと比較した場合、薬物の違いによる(ネピカスタット)4及び10mg/kg/日投与における違いはなかった。1mg/kg/日投与においては、動物はプラセボ処置群よりも遅かった。4つの異なる処置群(ネピカスタット1、4、及び10mg/kg、及びプラセボ)についての非−対比較分析により、ネピカスタットは、MPTP障害の非ヒトPDモデルであるプラセボ(水)と比較して、パーキンソン病の症状を有意に示さなかった。動物(同一群について処置の前後で試験した)の対比較分析により、ネピカスタット4及び10mg/kg/日投与においては、(前処理としての)MPTP障害後と比較して有意にパーキンソン様症状を示した。プラセボは、有意な効果といえるかの境界にあった。同じ対比較を用いて、L−ドパ5及び7.5mg/kgを試みたところ、全ての群においてMPTP障害後の状態と比較して、グループB(L−ドパ5mg/kgで効果なし)及びグループC(L−ドパ7.5mg/kgで効果なし。)以外では、有意な効果が得られた。しかし、L−ドパ2.5mg/kgでは、有意な効果は見られなかった。
薬物動態研究は、リスザルにおけるネピカスタットの血漿中濃度を測定することによって行った。この研究では、安全性及び耐容性試験と同時に行った。3つのMPTP障害を起こさせたリスザル(#353、358及び374)を用いた。分析のために1mLの血液を採取した(各動物の大腿静脈から採血した)。異なる薬物濃度の間には2日間のウォッシュアウト期間を設けて、濃度1、4、及び10mg/kgのネピカスタットを5日間投与した。血液は、最初の薬物投与の1時間前にベースラインを作成するために、及びそれぞれの濃度において最初の投与の6時間後に採取した。
第2に、薬物動態研究は、安定状態のネピカスタットの血漿濃度を決定するために行った。この研究は、3つの異なる濃度をそれぞれ12日間投与した場合における薬効研究と同時に行った。1mLの血液を大腿静脈から第1日の最初の投与後6時間後、第7日の最初の投与後6時間後、及び第12日の最初の投与の6時間後に採取した。ベースラインにおける血漿濃度は、投与1週間前に採血したサンプルから決定した。
また、この研究は対比較分析を表すが、ここでこの分析は、動物間の多様性を減らすため、同一動物の処置前後を比較し、少数の動物を使用する非−対比較研究よりも有意な薬効の検出においてより適切である。
自然発症高血圧雄ラット(280−345g;チャールスリバー社, Kingston, NY)を終夜絶食させ、エーテル麻酔した。血圧の記録及び化合物投与のために、それぞれ大腿動脈及び大腿静脈にPE50チューブを挿入した。動物をMAYO拘束器に入れて、脚を緩く拘束器にテープで留めた。実験中を通して、実験中それぞれのチューブの開存性を保つためヘパリンナトリウム生理食塩水(50単位のヘパリンナトリウム/ml)を使用した。IBMパソコンを用いて、MI2 BioReport(登録商標)ソフトウエアモジュールを用いて以下のパラメータ:平均動脈圧(MAP)、心拍(HR)、及び試験中の特定の時間におけるそれぞれのパラメータのベースラインからの変化を記録した。
全ての化合物は、使用の日に溶解させた。ネピカスタットは、遊離塩基濃度が1mg/mlとなるように脱イオン化水(担体)に溶解させた。経口投与容積は、ネピカスタット又は担体は10ml/kgとした。遊離塩基濃度が0.2mg/mlとなるようにSCH−23390を生理食塩水(担体)に溶かした。ネピカスタット又は生理食塩水は、1.0ml/kgを、続いて0.2mLの等張生理食塩水を静脈内にボーラス投与した。
外科的手術の後、各動物は、少なくとも1時間の回復期間を与えられた。動物は、ランダムに4つの処置群に割り振られた。すなわち、担体(静注)/担体(経口);担体(静注)/ネピカスタット(経口);SCH−23390(静注)/担体(経口);又はSCH−23390(静注)/ネピカスタット(経口)である。一旦動物が安定(少なくとも1時間)したら、血圧及び心拍のベースラインを、15分以上の平均をとることにより決定した。一旦血圧及び心拍のベースラインが確定されると、動物にSCH−23390(200μg/kg)又は担体(生理食塩水、1ml/kg)を、静脈内投与した。15分後、ネピカスタット(10mg/kg)又は担体(脱イオン化水、10ml/kg)を投与した。
血圧及び心拍のベースラインを決定するために静脈内投与の15分前にパラメータを測定した。続いて、SCH−23390又は担体投与の5、10、及び15分後にパラメータを測定した。続くネピカスタットの経口投与又は担体は、パラメータは15、30、60、90、120、150、180、210、及び240分後に記録した。
実験の終わりには、各動物はハロタン麻酔し、断頭して安楽死させた。皮質、左心室(尖)、及び腸間膜動脈を解剖し、計量し、0.4M過酸化水素酸で固定した。次に組織は液体窒素で凍結させ、−70℃で保存した。後日、生化学的分析をこれらの組織について行い、ドパミン及びノルエピネフリンレベルを含むカテコールアミンレベルを測定した。血圧及び心拍は別々に分析した。血圧及び心拍のベースラインからの変化は、処置、時間及びそれらの相互作用を用いて分散分析(ANOVA)により分析した。分析は、静注後及び経口投与後ともに行った。さらなる分析は、それぞれ効果の主要素を時間として、ANOVAによって時間ごとに分析した。全体として有意な治療効果がなかった場合には、ボンフェローニ補正を用いてフィッシャーの最小有意差法により分析を行った。
追加の分析を、それぞれの処置群によるベースラインの比較を行うために主要な処置の効果及び以下の対比較を行うためにANOVAを行った。SCH−23390(静注)/担体(経口)対 担体(静注)/担体(経口)、担体(静注)/ネピカスタット(経口)対 担体(静注)/担体(経口)、及びSCH−23390(静注)/ネピカスタット(経口)対 担体(静注)/ネピカスタット(経口)を比較した。
処置群間において、心拍のベースライン又は平均動脈圧に有意差はなかった。
SCH−23390投与を静脈内処置により行うと、経口投与後120分から240分にかけて、担体コントロール投与群と比較して心拍の有意な減少が見られた(p<0.05)。ネピカスタットは、担体処置動物において見られたほど、心拍を減少させなかった。投与後150及び180分においては統計的には有意であった(p<0.05)。試験を通して、心拍は大きな多様性が見られたことは注目すべきである。
SCH−23390の静脈内投与では、静注後15分間において、わずかだが(5±1mmHg)、担体投与群よりも平均動脈圧に有意な減少が見られた(p<0.05)。ネピカスタットの経口投与においては、投与30分以降試験時間中において平均動脈圧が有意に減少した(p<0.05)。SCH−23390による前処理では、ネピカスタット単独の時に見られたように有意な降圧効果は見られなかった。
15週齢の雄Crl:COBS(WI)BRラットを用いた。常に血圧無線遠隔変換器(TA11PA−C40、データサイエンス社, St. Paul, MN)を装着した24のラットを動脈圧、心拍、及び運動行動の測定に用いた。ラットは、ペントバルビタールナトリウム(60mg/kg、静注)で麻酔し、腹部の毛を剃った。無菌下、解剖は正中線に従って行った。腹部の大動脈にカテーテルのついた無線遠隔電送器のユニットを、カニュレを通して装着した。電送器を腹筋に縫いつけた後、皮膚を閉じた。それぞれのラットは、薬物投与の前に少なくとも2週間回復させた。試験開始の3日前、ラットをランダムに4処置群:担体(経口)、ヒドララジン(10mg/kg、経口)、ネピカスタット(30mg/kg、経口)、ネピカスタット(100mg/kg、経口)、に振り分けた。
最高血圧(SBP)、最低血圧(DBP)、平均血圧(MBP)、心拍(HR)、及び運動行動(MA)をモニターした。ネピカスタット及びヒドララジンを微量のトゥイーン80を含む水溶液として調製した。すべての投与において、ラットに遊離塩基等価体が10ml/kgとなるように投与した。
SBP、DBP、MBP、HR、及びMAのデータを継続的に収集するためにコンピュータ化されたデータ収集システムを用い、各ラットにつき、5分ごとに10秒ずつ行った。これらは1時間ごとに平均値を取り、標準誤差(SEM)を計算した。全ての値は、平均値±標準誤差で表した。統計的に有意差があるとは、p値が0.05よりも小さいことと定義する。MBP、HR及びMAのデータは別々に分析した。それぞれの分析は、毎日26時点で行われた。主効果を、治療及び時間及びそれらの相互作用として二元配置ANOVAを用いて分析した。全体としての治療効果又は有意な相互作用を検出した場合には、その時点において一連の一元配置ANOVAを行った。各時点での対比較はダネットの手法を用いて行った。全体としての治療効果が見られなかった場合には、コントロールとの対比較はボンフェローニ補正を用いて臨界値を補正して行った。
これらのパラメータの前処置の数値を計算した後、それぞれのラットのグループに、7日間毎日、担体、ネピカスタット又はヒドララジンの投与を行った。
ネピカスタットの経口投与30mg/kg(以後全て経口投与である)は、血圧をゆっくりと下げる傾向にあったが、第1日においては、血圧低下効果は確実ではなかった。効果が進み、最大の低下効果は、−10mmHgが第2日の13時間に見られた。同様の降圧効果が試験を通して見られた。100mg/kg、最大−11mmHg降圧反応を第1日目の投与から22時間後に生じた(p<0.01)。MBPは、減少し続け、第3日目に最低値は約−17mmHgとなった(p<0.01)。MBPは試験中ずっと低いままだった。
ヒドララジン10mg/kgを投与すると10時間以内に急速な血圧低下を生じた。MBPは、第1日の1時間以内に最大の−24mmHg(p<0.01)の低下が見られた。同様の一過性の降圧効果が試験を通じて見られた。
ネピカスタット30及び100mg/kg投与では、第1日目にはHRに確実な影響を与えなかった。しかし、第2日目、ネピカスタット100mg/kg投与においては、投与3時間後には−100b/mmの徐脈反応が現れた。有意であるが、様々な程度の、はっきりしない徐脈効果が、第3−7日において見られた。比較として、ヒドララジンは10mg/kg投与で、様々な程度の頻脈が試験を通じて見られた。
試験を通じて、いずれの薬物による治療もMAには確実な影響を与えなかった。
体重は毎日記録した。体重の投与前からの変化に関しては、全体としての治療効果、日、日と治療効果相互作用を要素として用いて二元配置ANOVAにより分析した。次に、一元配置ANOVAを毎日行い、薬物治療群と担体コントロール投与群との対比較を、ダネットの手法、及び複数の比較対象がある場合に適合させるためにフィッシャーの最小有意差法を用いて行った。担体処置の対象と比較して、いずれの薬物も体重には効果はなかった(p<0.05)。ネピカスタット100mg/kg投与では、第3日において体重が減少する傾向にあったが、統計的には有意ではなかった。
ネピカスタットは、ドパミンからノルエピネフリンへの変換を減少させる。基本的なネピカスタット活性の測定は、血漿又は尿中ドパミンのノルエピネフリンに対する比の増加率で計算する。ネピカスタット処置は、血漿又は尿中レベルのドパミン又はドパミン/ノルエピネフリン比を上昇させることがわかった。
図5では、健常志願者にネピカスタットを投与した場合における24時間後の尿中ドパミンレベルを示す。
反復測定分散分析モデルを用いて分析したところ、プラセボ投与に対し、200mgのネピカスタット投与群は平均臥位血漿ドパミン/ノルエピネフリン比の有意な増加が見られた(p<0.05)。尿中ドパミンレベルは、ネピカスタット40mg及び200mgの投与後10日間増加した。
慢性心疾患(CHF)の患者に、毎日ネピカスタット40、80、及び120mgを投与し、一般に10日は耐容性があった。有意な副作用が見られたのは、160mgにおいてだった。
160mgで8日間以上治療した場合、8患者の中の4人に湿疹が生じた。発疹した中の2人は掻痒を伴った。1人の患者は発疹に息切れを伴った。
80mgを投与された中の1人の患者は、症候性起立性低血圧のため試験から離脱した。同時投与の治療薬は、ヒドララジン及び3つの利尿剤を含む。プラセボを含み全ての投与量において、起立性低血圧が偶発的に起こった。160mg投与を受けた8患者の中の6人は、症候性起立性低血圧を生じた。
CHF患者における試験中2人が死亡した。1人はCHF(患者は80mg 1日1回投与を受けていた)の悪化によるものであり、もう1人はプラセボ投与を受けていた患者の突然死だった。
薬物と関連すると思われる深刻な副作用は、クレアチニンレベルであり、これは入院が必要である。医学的に有意な症状で、試験薬物と関係のないと思われるものは、2患者におけるCHFの悪化(1人は続いて急性のMI及び心停止を起こした)、1患者における不安定狭心症、1患者における非典型的胸痛、及びの乳房癌の病歴のある1患者における副腎腫瘤である。
うっ血性心不全患者における試験では、ネピカスタット投与後10日間の、血漿ドパミンレベル、ノルエピネフリンレベル、及びドパミン/ノルエピネフリン比の変化を調べた。
うっ血性心不全患者における試験では、ネピカスタット投与後30日間の、血漿ドパミンレベル、ノルエピネフリンレベル、及びドパミン/ノルエピネフリン比、及び、レベル及び比の変化を調べた。30日間のネピカスタット処置により、ドパミン/ノルエピネフリンレベルが上がった。
げっ歯類にネピカスタットを投与した場合における脳内のドパミン/ノルエピネフリン比を測定した。げっ歯類にネピカスタット又はジスルフィラムを投与した場合、ドパミン/ノルエピネフリン比は、増加した。
関連する分野における通常の技術を有する者にとっては明らかなことであるが、ここに記載した他の適切な方法及び適用の変更及び改変は、適切であり、発明の範囲及びそのいかなる態様からも外れることはない。発明は特定の態様と関連して記載されているが、それは、以下の請求項によって定義される発明の精神及び範囲に含まれている代替案、変更、及び等価体を網羅するために記載している。
ラットにおける薬物の短期記憶又はワーキングメモリに対する効果を調べるために遅延場所あわせ課題(delayed-matching-to-position (DMTP) test)を行った。
ネピカスタットのDMTP課題の開始前に、最高用量のネピカスタット(100mg/kg経口)急性及び繰り返し投与による、行動学的/生理学的効果を評価するため、及び、フィゾスチグミンを繰り返し投与し最大耐容経口用量を調べるために、予備試験を行った。
予備試験において、ネピカスタット(30及び100mg/kg経口)又は担体を、同一の重量範囲に調節された(400−480g)SD系雄ラット(n=8)に急性投与した。薬物又は担体投与1、3及び24時間後に、各動物がどのような処置を受けたか知らされていない観察者によって観察された。同様に別の試験において、フィゾスチグミン(1、3、10又は30mg/kg経口)又は担体を各グループ8匹のラットに投与した。薬物又は担体投与1、3及び24時間後に観察した。
繰り返し試験の予備試験は、ネピカスタット(100mg/kg経口)又は担体を1日2回(06:00及び18:00)、10日間(第11日は1回)各グループ8匹のラットに投与した。動物の重量は試験を通じてモニターされ、第5日には、盲検試験による独立した観察者によって、行動学的/生理学的効果を評価するために、以下の繰り返し投与を行った。別々の試験として、各グループ8匹のラットに、担体又はフィゾスチグミン(0.3、1、3又は10mg/kg経口)を同じ投与スケジュールで投与した。動物の体重は、試験期間中を通してモニターした。
ネピカスタット(30又は100mg/kg急性経口投与)によっては、明らかな行動学的/生理学的変化はもたらさなかった。同様に、ネピカスタット100mg/kgの繰り返し経口投与による明らかな効果はなかった。しかし、後者の投与によって、動物の体重は11日後に平均28g減少したが、コントロールでは平均1g増加した。薬物処置を受けた11日間の動物は、コントロール群に比べて、取り扱いにおいて怒りっぽくなっていた。
フィゾスチグミンの急性投与は、3mg/kg以上の投与量においては、明らかな行動学的効果が見られた(そしゃく運動及び唾液)。毒性のサインが30mg/kg経口(チアノーゼ、震え、頭を持ち上げる、運動失調)から見られた。フィゾスチグミン3及び10mg/kgの繰り返しの経口投与では、毒性が見られた(10mg/kg投与群の8匹のうち3匹は第2日に死亡し、3mg/kg投与群においては8匹のうち2匹は第5日に震えを起こしていた。)。フィゾスチグミン0.3又は1mg/kg投与では影響はなかった。
これらの研究結果から、DMTP課題のためのネピカスタット投与の最高用量は30mg/kg(経口)とし、フィゾスチグミンの繰り返し投与には1mg/kg(経口)に減らして用いることとした。
DMTP課題において、間隔を0、8、16又は32秒遅らせていき、ラットはレバーの場所を覚えるように訓練され、食餌を報酬として得る。以下の訓練では、DMPT試験で行いながら、ネピカスタット(1、3、10及び30mg/kg、経口 bid)又はフィゾスチグミン(1.0mg/kg、経口、bid)の10日間に渡る繰り返し投与の効果を見た。試験の第11日目には、ネピカスタット及びフィゾスチグミン処理された動物に、スコポラミン臭素酸塩(0.1mg/kg、皮下投与、30 mmの前処理時間)を同時投与した。DMTPのパイロット試験は、スコポラミン0.1mg/kgの選択精度によっては著しい障害を与えることがわかったため、スコポラミンの用量は、DMTPのパイロット試験のデータに基づいて選択した。ネピカスタット又はフィゾスチグミンを投与する群に加え、以前担体を投与した群にスコポラミンを投与した。他の群のラットは、実験中担体のみを投与した。最終のスコポラミンの試験は、慢性投与がDMTP課題においてスコポラミンに起因する障害の選択精度を小さくできるかを決定する目的がある。
この試験において依存する項目は、訂正の選択、選択をするまでの待ち時間、及び70分試験時間中に完成できた回数である。最初の項目の変化は、記憶及び/又は注意機能の変化を示唆しているのに対し、後の2つの項目の変化は、薬物による非認識下の効果の指標となる。
試験開始時に体重200−290gだった56匹のSD系雄ラットを用いた。ケージによって4つのグループに分け、ラット1匹につき約12−15gの食餌を与えた。これは、ラットに食餌を自由に与えた場合の約85%の重さに当たる。体重が減り始めた動物には追加の食餌を与えた。水は自由に摂取できるようにした。動物は、午前6時に点灯し12:12時間ごとの明/暗サイクルで飼育した。
キャムデン社の、2つの伸縮自在のレバー及び食餌ケースが中央に位置するオペラント箱12個を用いて行動試験を行った。食餌ケースの前には、ラットがそれを後ろへ押して食餌を得られるフラップがついている。箱は修正して、仕切を食餌ケースのいずれの側でも適合するようにした。仕切は、透明なパースペックスであり、箱の床から天井までの大きさであり、中心付近では105mmとなっている。オペラント箱は、音及び光が減弱される構造体に包まれている。装置の制御には、ポールフレイコントロールシステムインターレース(Paul Fray Control System Interlaces)及びアラクニッドソフトを内蔵したアコーンA5000(Acorn A5000)コンピュータプログラムが用いられている。
試験中ケージは点灯しておき、まずラットを製剤「A」としてノイス(Noyes)45mgの食餌ペレットを、食餌ケースのフラップの後ろから取り出すように訓練した。次にラットを左と右の両方のレバーを押して報酬として食餌を得るように訓練した。左又は右のいずれかのレバーは30mm中、ランダムに現れている。レバーを押すとレバーが戻り、食餌ペレットが出てきて、ケースの電灯が光る。電灯は、食餌ペレットを取るまでついたままである。
次に、DMTP課題を開始した。これ以降の全ての訓練は、仕切のある実験ケージで行った。試験はまず50分行われた。ラットを実験ケージに入れ、ケージの電灯を点灯させて実験を開始した。試験は30秒間隔(ITI)で行われ、2つのうちの1つのレバー(サンプルレバー)が装置の中に挿入されている。レバー押し行動が行われるまでは、レバーは入ったままである。レバー押し行動によりレバーが戻り、ケースの電灯が光る(食餌は出てこない)。ケースのフラップを押すと、ケースの電灯が消滅し、両方のレバーが入る。サンプルレバーを押して(例えば、以前紹介した)両方のレバーが戻ると、食事ペレットが出てきて、ケースの電灯が光る。ケースの電灯はフラップを押すまではついている。間違ったレバー(サンプルレバーと反対のレバー)押しでは、食餌ペレットは出ず、10秒でタイムアウト(TO)となり、ケージのライトが消される。次の試験は、30秒のITIで開始される。挿入されたレバーは、挿入されたレバーは、半ランダムに決定されている。16回の試験ブロックのうち右及び左のレバーは8回ずつサンプルレバーとなっている。
訂正の手順をこれ以降の訓練において用いた。サンプルレバー(左又は右)として設定されるかどうかは、訂正なしの試行においては、コンピュータによって決めた(例えば、最初の試行及び続く試行で正しい選択が行われる)。不正確な選択の都度、選ばれなかったレバー(例えば「正しい」レバー)を続く試行においては、「訂正」試行ではサンプルレバーとして設定した。これらの訂正の試行は、固定化した行動を防ぐために行った(例えば、いつも左又は右のいずれかを押し、50%の正解率となること)。訂正の試行が行われた回数を記録したが、正解率の評価には、訂正試行以外のデータのみを用いた。
以下の24の試行のうち、動物は位置の適合試験において高い正確性を有していた。25回目の試行では、サンプルレバー押しから、次の選択レバーが現れるまでの間に、遅延時間を設けた。サンプルレバーを押し、最初にフラップを押した後、0(即時)、4、8又は16秒間、選択レバーは入ったままである。4タイプの指令(0、4、8又は16秒遅延)が、16試行ブロックに対して各4回ずつ2回は左に、及び2回は右になるように半ランダムにセットした。ラットが、遅延時間後30秒の予定時間内に選択行動をとらなかった場合、試行は終了し、次の試行が始まるという時間制限を設けた。そのような試行は、不完全として数え、データ分析には含めなかった。ITIの終了後、同じ試行を開始した。試行25以降は、不正確な選択によるタイムアウトはなくし、試行時間を70秒とした。
0−16秒の遅延を設けた以下の26試行(試行25−50)のうち、試行間の間隔は10秒とし、その後の8試行(試行51−58)は、遅延を64秒まで伸ばした。しかし、64秒の遅延は効率が悪かったため、その後の試行には用いなかった。試行59では、0、8、16及び32秒の遅延を設けた。これらの遅延は、以下の全ての試行において用いた。59の試行を行い、24以上を完了したのは、56のラットのうち51のみだった(正しい選択及び正しくない選択の和)。これらのラットは、行動の評価(正解率、反応までの時間、及び正解した回数)によって、半ランダムに以下の7群:担体/担体(n=7)、担体/スコポラミン(n=)、ネピカスタット1.0mg/kg/スコポラミン(n=7)、ネピカスタット3.0mg/kg/スコポラミン(n=7)、ネピカスタット10.0mg/kg/スコポラミン(n=7)、ネピカスタット30mg/kg/スコポラミン、及びフィゾスチグミン/スコポラミン(n=8)、に振り分けた。
60−69試行を行うため、1日のうち午前6時及び午後6時に、ラットに担体、フィゾスチグミン(Phys)又はネピカスタット(1、3、10又は30mg/kg)を投与した。試行68及び69の担体処置の動物が高い選択精度を示したため、0、8、16及び32秒の遅延を最終試行(試行70)でも行い、担体/担体処置群以外に、試験前30分前にスコポラミン臭素酸塩0.1mg/kgを投与しておいた(皮下投与)。担体/担体群の動物には、最終試行の30分前に生理食塩水を投与した(皮下投与)。それゆえ、11日間における7群への薬物投与は以下の通りである:
データを収集し、1)正解率、2)選択からサンプルレバーを選ぶまでの反応時間、及び3)正解及び不正解の選択が完了した合計数を含む項目をDMPT研究において分析した。先の2つの依存項目は、不正解の試行の回数の計算のためにのみ収集した。
統計分析の検出力及び検出感度を増加させるため、最初の10の薬物処置期間(試行60−69)において、第1日から第10日までの試験のデータの図が含まれているが、データは2つのブロックに分けた(ブロック1−5)。また、担体/担体及び担体/スコポラミン投与群は最初の10日間の試験で同じ処置を受けるため、統計分析のために、まとめてブロック1−5に設定した。
薬物処置の被検体間の因子及び被検体内の遅延時間(0、8、16又は32秒)の二元配置分散分析(ANOVA)を、正しい選択の確率及び反応時間の分析のために用いた。これらの分析は、別々に行われ、それぞれのブロックのデータごとに行った。一元配置ANOVAをそれぞれの遅延について行った結果、有意な相互作用が見られた。両側ダネットt−検定に続く一元配置ANOVAにより有意な主効果が得られた。適切な場合には、完了した試行の平均回数を分析するためにダネットポストホック検定に続く一元配置ANOVAを行った。
全ての統計分析は、スーパーアノーバソフトウエアを用いて、マッキントッシュコンピュータで行った。アルファは、試験中0.05にセットした。4つの遅延時間の試行において選択を完了することができなかった動物は、分析の正解率及び遅延に対する応答試験の分析からは除外した。正解率及び反応の遅延の分析には、5ブロックに分けた薬物投与群及びスコポラミン投与群の動物の数を、分析に含め記録した。遅延時間を設けた試行における、薬物の全体としての効果の評価は、試行を完了した全ての動物の数が含まれている。
フィゾスチグミン硫酸塩(1.0mg/kg、RBI社)及びネピカスタット(1、3、10及び30mg/kg、ロシュ社)は、1日2回、午前6時及び午後6時に経口投与した。スコポラミン臭素酸塩(0.1mg/kg、シグマ社)は、前の試行の30分前に投与した。フィゾスチグミン及びネピカスタットは、蒸留水に溶解又は懸濁させ、2.5ml/kgとして投与した。スコポラミン臭素酸塩は、生理食塩水に溶解させ、1.0ml/kgとして投与した。全ての投与用量は、体重を基準に表示した。
最初の試験ブロックでは、DMTP課題において正解率及び遅延に対する選択反応において、薬物処置群において有意な効果は示さなかった。薬物処置は、完了した試行の数に影響を与えなかった(F(5,45)=0.319、p=0.899)。
ブロック2において、ネピカスタット及びフィゾスチグミンは、試行中、いずれの項目においても有意な効果を示さなかった。効果は統計的には有意差はなかったが(F(5,45)=1.717、p=0.150)、試行を完了できた動物が減っていったという傾向があった。これはネピカスタット3又は30mg/kg及びフィゾスチグミン投与群において、わずかであるがより顕著に見られた効果であった。4種の遅延においては、ネピカスタット30.0mg/kg投与群の動物は7動物のうち4動物しか試行を完了できなかった。
ブロック3においては、フィゾスチグミン処置群は、遅延とは独立した選択の不正確性があった。正解率のANOVAによる分析では、薬物処置の有意な主効果が見られたが、薬物処置×遅延時間の相互作用においては、有意差は見られなかった。薬物処置の主効果をダネットポストホック検定で分析したところ、フィゾスチグミン処置群のみが担体処置群に比べて有意差を示した。薬物処置群は、このブロックにおいて、反応の遅延又は試行を完了した数において、有意差を示さなかった(F(5,45)=0.701、p=0.625)。
ブロック4では、薬物処置による正解率への効果はあったが、統計的有意差までは示さなかった(p=0.056)。しかし、薬物処置群のANOVA分析により、薬物処置×遅延に対する応答の相互作用において、有意に遅延に対する応答に障害を与え、有意差を示した。続く一元配置ANOVAにより、統計的には0、8、16及び32秒遅延による処置は、32秒遅延のみ有意であった;0、8、16及び32秒遅延による場合、それぞれ、F(5,40)=2.115、p=0.084;F(5,40)=1.403、p=0.244;F(5,40)=2.259、p=0.067;F(5,40)=3.325、p=0.013であった。ダネットポストホック検定において、32秒遅延におけるネピカスタット10.0mg/kg投与群のみ担体処置群よりも長い遅延時間が可能であった。薬物治療は、ブロック4において試験を完了した回数は、有意ではなかった(F(5,45)=1.533、p=0.199)。
ブロック5では、ネピカスタットを試みたところ、用量及び遅延時間依存性の選択の正確性に障害が生じ、二元配置ANOVAにより処置×遅延に対する応答の相互作用における有意差が見られ、続く一元配置ANOVAでは、0、8、16及び32秒遅延では、有意な差(32秒遅延、F(5,39)=0.327、p=0.894;F(5,39)=0.825、p=0.539;F(5,39)=1.188、p=0.333;F(5,39)=3.018、p=0.021、0、8、16及び32)が見られた。ダネットポストホック検定では、32秒遅延における、ネピカスタット10及び30mg/kg処置群は、担体処理の動物よりは効果は大きかった。
ブロック5において、ネピカスタット及びフィゾスチグミンは、試行を完了した数は有意ではなかった(F(5,45)=1.692、p=0.156)。
スコポラミン臭素酸塩を投与しても、多くの動物は、試行において遅延による効果を示さなかった。10.0mg/kgのネピカスタット+スコポラミン投与群においては、1匹のラット、30.0mg/kgのネピカスタット+スコポラミン投与群においては2匹のラットのみが4つの遅延時間において、試行を完了できた。事実、担体/担体及び担体/スコポラミンにおいてそれぞれ7匹及び4匹のラットが試行を完了し、それ以外の全ての群において、4つの遅延による試行を完了できたのはn<4であった。
全てのスコポラミン処置群において、試行を完了することができた数は減少した(F(6、16)=8.801、p=0.001)。
スコポラミン処置群のうちの少数のために、選択の正確性及び反応遅延データによってANOVAを行わなかった。加えて、4つの遅延において正解率の平均を求められなかった。担体/スコポラミン群の正確性を担体/担体群と比較したt−検定からは、スコポラミンは有意に背tんたくの正確性を減少させることがわかった(t(9)=4.15、p=0.003)。被検体が4匹よりも小さい場合には、それ以上の分析は行わなかった。しかし、興味深いことに、ネピカスタット+スコポラミン30.0mg/kg処置群の中の2匹は、スコポラミン単独よりも正確な選択をした。この30.0mg/kg処置動物は、担体/スコポラミン処置群又は他のスコポラミン処置群のいずれの動物よりも、正確な選択をした。
ネピカスタット単独で投与した場合、DMTP課題においては、ネピカスタットの記憶向上効果にはつながらないと考えられる。遅延に伴う記憶障害は、担体処置した5つのブロックでは、消失したと考えられることは、注目すべきである。しかし、第5ブロックは遅延性の記憶障害が起こり、0秒遅延では100%の正確性、32秒遅延では80%の正確性であった。このように担体処置動物では、天井効果は見られなかった。
とりわけ、第5ブロックにおいてネピカスタットは選択的な記憶混乱効果があった。フィゾスチグミンは、いずれの処置日の効果も改善せず、第3ブロックにおいては正確性に関して遅延非依存性の障害が現れた(第5及び6日)。第11日、スコポラミン臭素酸塩(0.1mg/kg)及びネピカスタット又はフィゾスチグミンを同時投与した、スコポラミン負荷試験は、DMTP課題を完了した被検体が少なかったために、分析できなかった。しかし、ネピカスタット及びスコポラミン30.0mg/kg投与を受けた中の2匹のラットはDMTP課題を行え、選択の正確性は、他のいずれのスコポラミン処置動物よりも正確であった。これよりネピカスタットは、「非認識性」の他のマスクされていた効果のため、スコポラミンによって引き起こされた記憶の破壊をいくらか弱めることが可能であるといえる。
ネピカスタットは、有意に用量及び遅延時間依存性の選択の正確性への障害を引き起こす。ネピカスタット10.0mg/kg処置された動物は、0、8及び16秒遅延では、正確性において何ら障害を受けなかった。対照的に、32秒の遅延では、ネピカスタット10.0mg/kg投与群においては、担体処置群に比べて、障害を受けた。最高用量30.0mg/kg投与を行った場合、0秒遅延では正確性に障害はなく、8及び16秒遅延においては正確性に障害が出る傾向にあり、担体と比較して、32秒遅延の場合には有意な障害が生じた。これらの薬物による遅延時間依存性の選択の正確性への障害は、化合物は直接短期記憶又はワーキングメモリに作用していることが考えられる。動物は十分に動くことができ、DMTP課題を正確に行うことができる。短い遅延の場合及び、保持間隔が長い場合にだけ、障害を起こす。試験した化合物で、このモデルの試験化合物で、ようなプロフィールを示したものはほとんどなかった。記憶障害を誘発するとされる多くの化合物は、全ての遅延で選択の正確性の障害が見られた(例えば、MK−801、スコポラミン)。ネピカスタットの10.0mg/kg投与では、第4ブロックの試行において、32秒遅延の場合に、担体処置動物よりも完了するのに時間がかかり、効果は小さかった。効果は用量非依存的であり、30.0mg/kgを投与した場合には効果は見られなかった。ネピカスタット投与動物は、担体投与動物よりも完了しにくい傾向にある:この傾向は、最後の2ブロックの試行で見られた。しかし、様々なデータがあるため、これらの傾向は、統計的有意性には届かなかった。この多様なデータは予想外だった。これは、慢性の経口投与管理による最初のストレスが、これらの食餌摂取動物において、特に最初の数ブロックの試行において効果を落とさせたものと考えられる。すべての群において、最初と2番目のブロックにおいて試行を完了した数が減少した。最初の減少から回復した動物は、より一貫した行動を次の3ブロックにおける試行では示した。
我々は、動物の体重はある場合には5%を超えて総体重が減少し始めたことを発見した。体重減少を示した動物は別にして、毎日の試行の後に追加の食餌を与えた。この追加によって試行が完了したかどうかに多様性が出たのかもしれない。しかし、体系的な記録はなされていないが、大まかな観察から30mg/kg投与群には、他の群よりも追加の食餌を与えるべきだった。この観察は、ネピカスタット100mg/kgの経口投与による予備試験に顕著な体重減少を引き起こした結果と一致している。
フィゾスチグミンは、DMTP課題においてラットの行動を改善しなかった。フィゾスチグミンを投与された動物は、ブロック3においては正解率に有意に障害が出た。対照的に、フィゾスチグミンによって障害された正解率へのネピカスタット投与の効果は、遅延時間とは関係ないものであった:相互作用に関する分散分析は、統計的有意差を有しなかった。それゆえ、正確な反応へのフィゾスチグミンの効果は、この用量を投与した場合に見られる行動学上の毒性効果の二次的なものであると考えられる。フィゾスチグミンによる、統計的な有意差はなく、選択の正確性の障害により、試行の最後の2ブロックにおいて動物は、耐性を獲得していると考えられる。
最後に、フィゾスチグミンはスコポラミンによる試験中、スコポラミンの効果を弱めることはなかった。異なる用量のフィゾスチグミンによりスコポラミンに対して効果がある可能性がある。我々は、本件の投与管理によってフィゾスチグミンによりスコポラミンの効果を弱めるかを試みたことがなかったので、本件の結果を比較すべきデータの履歴がない。フィゾスチグミンの効果がなかったのは、急性投与に比べて、低容量の場合、フィゾスチグミンの慢性投与を行わなければならなかったのであると考えられる。動物は、スコポラミンの効果を減弱するのに必要な高用量のフィゾスチグミンの繰り返し投与による耐容性がなかったと考えられる(予備試験の結果を参照)。加えて、ネピカスタットはスコポラミンの効果を弱めるようではなかったが、30.0mg/kgのネピカスタットを投与した2匹は、スコポラミン試験中、他のスコポラミン処置群よりも選択の正確性が上昇したことは興味深い。さらなる研究が必要である。ネピカスタットによる急性又は慢性投与により、スコポラミンの効果を弱めるか明確にする必要がある。
ネピカスタットは、8日間の投与により、特定の記憶破壊効果を生じたと見られる。フィゾスチグミンは改善せず、3ブロックの試験期間において遅延時間非依存的な選択正解率への障害を引き起こした(第5及び6日)。スコポラミン負荷試験において、第11日に動物に、スコポラミン臭素酸塩(0.1mg/kg)及びネピカスタット又はフィゾスチグミンを同時投与したが、DMTP課題を完了できたネピカスタット及びフィゾスチグミン処置群が少なかったために、分析できなかった。しかし、30.0mg/kgのネピカスタット及びスコポラミン投与を受けたラットのうちDMTP課題を完了できた2匹のラットは、他のスコポラミン処置を受けたどのラットよりも高い選択正解率を示した。これよりネピカスタットは、「非認識性」の他のマスクされていた効果のため、スコポラミンによって引き起こされた認識破壊をいくらか弱めることが可能であるといえる。最終ブロックの試験において、ネピカスタット誘導性投与量及び遅延時間依存性の障害による選択正解率の減少を試験した。これは他の記憶障害薬からは予測できない発見であった。スコポラミン及びMK−801、といった注意及び/又は運動/やる気の因子の障害による選択正解率への遅延時間非依存的障害によると考えられる。対照的に、変化及び注意又は変化/注意行動を説明できない。この結果は、受容体又は薬理作用において新しい受容体に選択的又は、ワーキングメモリの重要な基質である。
近年、我々はネピカスタットが、選択的ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤であることを示し、SHRにおいて急性の降圧効果の効果の研究を行った。ネピカスタット降圧効果は、慢性的に同系統のラットで行った。さらに、我々は、ネピカスタット及びアンジオテンシン変換酵素阻害剤エナラプリルとの同時投与の相乗効果の可能性を調べた。この処置によるSHRにおける心肥大効果も調べた。
雄SHR/NCR1 BR ラット(食餌を与える時に22−28週齢)で、/NCrI BR ラットと体重の合うラットを用いた。4種の実験を順に行った。
シリーズI
担体
エナラプリル 10mg/kg
ネピカスタット 3mg/kg
ネピカスタット 10mg/kg
シリーズII
担体
エナラプリル 10mg/kg
ネピカスタット 30mg/kg
ネピカスタット 100mg/kg
シリーズIII
担体
エナラプリル 1mg/kg
ネピカスタット 30mg/kg
ネピカスタット 30mg/kg+エナラプリル1mg/kg
シリーズIV
エナラプリル 1mg/kg(E1)
ネピカスタット 15mg/kg+E1
ネピカスタット 30mg/kg+E1
ネピカスタット 60mg/kg+E1
それぞれの動物の処置において、動脈性血圧、心拍、及び運動行動を観察するために24匹のSHRに常に血圧無線遠隔変換器を装着した。ラットをペントバルビタールナトリウム(60mg/kg、腹腔内投与)で麻酔し、腹部の毛を剃った。麻酔下、正中線に従い解剖した。腹部の大動脈にカテーテルのついた無線遠隔電送器のユニットを、カニュレを通して装着した。電送器を腹筋に縫いつけた後、皮膚を閉じた。それぞれのラットは、薬物投与の前に少なくとも2週間回復させた。ラットは、8時から20時に電気をつける通常の明/暗サイクルで個別に飼育した。
実験開始の3日前、ラットをランダムに4処置群に振り分け、最高血圧(SBP)、最低血圧(DBP)、平均血圧(MBP)、心拍(HR)、及び運動行動(MA)をモニターした。投与前のパラメータを測定した後、それぞれの群のラットに30日間毎日ネピカスタット及び/又はエナラプリルを投与した(後述参照)。
最後の処置の24時間後、ラットは安楽死させ、左心室を摘出し、重量を測定し(湿重量)、乾燥重量を得るため少なくとも24時間、凍結乾燥した。投与前のこれらのパラメータを測定した後、それぞれの群のラットは30日のネピカスタット及び/又はエナラプリルを30日間投与した。
各試験の開始において、無線遠隔装置を装着した各群のラットの数は常に6とした。シリーズIでは、ウイスター−京都ラット(WKY)は7匹を同様に飼育し、担体(水)を投与したのに対し、シリーズIII及びIVでは2匹のラットを各群に追加し、同様に処置した(SHRの肥大化への影響の統計分析を行うためにそれぞれの群の動物の数を2匹ずつ増やした)。これらのラットは無線遠隔装置の装着又はモニタリングは行わなかった。
ネピカスタット及びエナラプリルはいずれも水溶液として調製した。すべての投与において、ラットに遊離塩基等価体が10ml/kgとなるように投与した。エナラプリル(バソテック(登録商標))は、市販されているものを地域の薬局から入手した。
SBP、DBP、MBP、HR、及びMAのデータを継続的に収集するためにコンピュータ化されたデータ収集システムを用いた。収集は各ラットにつき、5分ごとに10秒ずつ行った。これらは1時間ごとに平均値を取り、標準誤差(SEM)を計算した。処置終了後には、左心室重量(乾燥及び湿重量)を測定した。体重は毎日記録した。
全ての値は、平均値±標準誤差で表した。統計的に有意差があるとは、p値が0.05よりも小さいことと定義する。
MBP、HR及びMAのデータは別々に分析した。それぞれの分析は、毎日26時点で行われた。二元配置ANOVAには、主効果として、治療及び時間及びそれらの相互作用を用いた。全体としての治療効果又は有意な相互作用を検出した場合には、その時点における一元配置ANOVAを行った。各時点での対比較はダネットの手法を用いて行った。全体としての治療効果が見られなかった場合には、コントロールとの対比較はボンフェローニ補正を用いて臨界値を補正して行った。
左心室重量については、組織の湿重量及び乾燥重量は最終体重を共変量として共分散による分析を行ったのに対し、組織の湿重量/体重及び組織の乾燥重量/体重の比を分析する際にはクラスカル・ワリス検定を用いた。全体としての処置の効果を全グループについて検出できなかった場合には、ボンフェローニ補正を行ってから多重比較を行った。
体重については、投与前からの変化に関する二元配置ANOVAを処置、日、及び日ごとの処置との相互作用による全体の効果を分析するために行った。一元配置ANOVAを日ごとに行い、薬物処置群と担体コントロール投与群との対比較を、ダネットの手法及びフィッシャーの最小有意差法によって多重比較に適合させて行った。
シリーズI及びIIについては、ネピカスタット3及び10mg/kgの経口投与(これ以降は全て経口投与である)では、30日間のいずれの時点においても血圧に有意な効果を与えなかった(データは掲示してない)。ネピカスタット30mg/kgでは、第1日においてMBPを緩やかに下げ、第3日目は最大−20mmHgとなり(p<0.01)、24時間ではほとんど回復しなかった。同様の降圧薬の効果が試験中見られた。100mg/kgでは、第1日の投与後21時間後に−29mmHgの降圧反応が見られた。MBPは続けて減少し、第3日の最低値は約−42mmHg(p<0.01)であり、MBPは、ずっと低いままだった。
エナラプリル10mg/kgは継続してMBPを低下させた。最大下降比は、第5日の投与後1時間以内に現れた。MBPは−29mmHg(p<0.01)は、第5日に投与後1時間後に現れた。
シリーズIIIにおいて、エナラプリル1mg/kg(n=6)又はネピカスタット30mg/kg(n=6)の単独投与では、降圧効果は小さかったが、2つの化合物(n=6)の同時投与は大きな降圧反応を起こした(第1日、16時間後に−21mmHg、p<0.01)。反応開始及び進行は、ゆっくりで緩やかだった。第2日に2回目の同時投与を行った場合、ほぼ1日に渡り、より大きな効果が見られた(−25mmHg、13時間後にp<0.01)。相乗効果は試験中を通じて見られた。
シリーズIVにおいては、エナラプリルにより降圧しない用量でのネピカスタットの相乗効果を調べた。エナラプリル(1mg/kg)存在下では、ネピカスタット60mg/kgは最初、15又は30mg/kg投与の場合より大きく長いエナラプリルの効果が見られたが、第8日ないし第30日においては、大きな効果は見られなかった。それゆえ、試したネピカスタットの投与量(15、30及び60mg/kg)には関係がなかったといえる。ネピカスタット15mg/kg及びE1群は、低い平均血圧を示し、より大きな標準誤差となった(2匹のラットは他よりも大きい降圧効果を示した)。
ネピカスタット3及び10mg/kg投与群は、30日間の試験においては、継続して心拍(HR)に影響を与えたわけではなかった。しかし、ネピカスタット100mg/kg投与群では、投与後最初の数時間においては、担体コントロール投与群よりも低いHRを示す傾向にあった。エナラプリル1mg/kg投与群ではHRに影響を与えなかったのに対し、ネピカスタット10mg/kg投与群は、投与2時間以内に一過性のわずかな頻脈を起こす傾向があった。シリーズIIIにおいては、例えば、エナラプリル(1mg/kg)、ネピカスタット(30mg/kg)又はそれらの併用では、いずれも継続的にはHRに影響を与えなかった。シリーズIVにおいて、ネピカスタット(15、30及び60mg/kg)及びエナラプリル(1mg/kg)処置群は、エナラプリル(1mg/kg)単独処置群よりも、より低いHRを示す傾向にあった。
試験を通じて、運動行動(MA)についてはいずれの薬物処置群も有意な効果を示さなかった。
SHRにおいて、ネピカスタット3−100mg/kg投与群は、心臓の肥大化を示さなかった(p>0.05)。エナラプリル(10mg/kg)は、シリーズIIにおいて、左心室重量を有意に減少させたが、シリーズIでは見られなかった。シリーズIIIにおいては、エナラプリル1mg/kg投与群では肥大化は見られなかったが、エナラプリル(1mg/kg)及びネピカスタット(30mg/kg)の同時投与群では左心室重量がSHRにおいて有意に減少した(p<0.01)。しかし、シリーズIV、エナラプリル(1mg/kg)及びネピカスタット15、30及び60mg/kgの同時投与群では、エナラプリル単独と比べて左心室重量に差はなかった(p>0.05)。
担体処置群と比較して、SHRへのネピカスタット3及び10mg/kg投与群は、SHRの体重に影響を与えなかった(p>0.05)。しかし、ネピカスタット30及び100mg/kg投与群においては、体重が大きく増加した(p<0.05)。
比較として、エナラプリル10mg/kg投与群では、ラットの体重を有意に減少するか、影響はなかった(p<0.05)。エナラプリル1mg/kg投与群では、わずかに体重を減少したが、エナラプリル(1mg/kg)及びネピカスタット(30及び60mg/kg)の同時投与群では、ラットの体重はわずかに増加した。
担体、エナラプリル、及びネピカスタット3及び10mg/kg処置群のラットの投与前の体重は、それぞれ387±11、415±1、2、407±4、及び415±12gであった。
担体、エナラプリル、及びネピカスタット30及び100mg/kg処置群のラットの投与前の体重は、それぞれ399±10、389±6、389±9、及び401±10gであった。
担体、エナラプリル、及びエナラプリルを含みまは含まないネピカスタット30mg/kg処置群のラットの投与前の体重は、それぞれ365±9、371±8、361±7、及び369±7gであった。
エナラプリル単独及びネピカスタット15、30、及び60mg/kgとの同時投与を行ったラットの投与前の体重は、それぞれ357±6、363±6、347±8、及び346±8gであった。
30日間の処置を4シリーズ行い観察したところ4匹が死亡した。死亡の原因は特定されていないが、ネピカスタット処置に関連するものではないように見えた。
30日間の慢性のネピカスタットの経口投与による血圧、心拍、運動行動及び左心室重量への影響を、4シリーズで行い、血圧無線遠隔変換器を装着した自然発症高血圧ラット(SHR)で評価した。ネピカスタット3及び10mg/kg(n=6)投与群では血圧に影響はなかった。ネピカスタット30mg/kg(n=6)投与群では、降圧効果のピークは−20mmHgで、第3日に生じた(p<0.01)。降圧効果は、緩やかであったが、試験中を通じて検出された。ネピカスタット100mg/kg(n=5)投与群では、より大きな降圧効果を示した。効果は緩やかで、第3日に−42mmHgでピークが生じた(p<0.01)。降圧効果は、残りの試験期間中も比較的生じた。比較のため、アンジオテンシン変換酵素阻害剤エナラプリル(10mg/kg、n=6)投与したところ、−20ないし−30mmHgの降圧効果が試験期間中を通して見られた。エナラプリル(1mg/kg)の単独投与では、有意な降圧効果を示さなかったが、ネピカスタット(30mg/kg;n=6)との同時投与では、大きく長期間の降圧効果が見られた(p<0.01)。相乗効果を30日間見られた。エナラプリル(1mg/kg)によるネピカスタットの相乗的な降圧効果は、15、30、及び60mg/kgで見られたが、これらの効果は用量依存的ではなかった。
ネピカスタット3−10mg/kg又はエナラプリル1mg/kg投与群においては、有意な心拍への効果は見られなかった。しかし、ネピカスタット30又は100mg/kg投与群は、ラットの起床時間にわずかに徐脈が見られた。対照的に、エナラプリル10mg/kg投与においては一過性の頻脈が見られた。ネピカスタット(15、30、及び60mg/kg)及びエナラプリル(1mg/kg)の同時投与では、エナラプリル(1mg/kg)単独投与の場合よりも心拍が遅くなった。いずれの処置群においても運動行動への影響は見られなかった。
ネピカスタット30(n=6)及び100(n=5)mg/kg処置群においては、SHRの左心室肥大化に関し、有意な効果は見られなかった。エナラプリル(1mg/kg、n=8)又はネピカスタット(30mg/kg、n=7)単独でも、肥大化を防がなかったが、両化合物の同時投与では(n=8)、有意にSHRの左心室重量を減少させた。しかし、同時投与の左心室重量への効果はネピカスタット(15、30及び60mg/kg)の用量依存的ではなく、統計的にはエナラプリル(1mg/kg)単独と差がなかった。
4シリーズの試験において、4匹が30日間の投与経過において死亡した。3匹はネピカスタット投与群で、1匹は担体投与群においてであった。死亡の原因は特定されていないが、ネピカスタット処置に関連するものではないように見えた。
ネピカスタット30及び100mg/kg投与において、SHR30日間の投与において、反射的な頻脈を生ずることなくSHRの血圧を有意に低下させた。降圧効果を生じない用量のエナラプリル(1mg/kg)とネピカスタット(30mg/kg)の同時投与では、SHRにおいて、抗高血圧及び心室肥大を防止した。しかし、これらの効果は、ネピカスタット(15、30及び60mg/kg)に用量依存的ではなかった。
試験は、麻酔した、装置を搭載したイヌにおいて、自律神経作用薬の応答に対するネピカスタットの効果を評価するために行われた。
ビーグルは、朝晩に食餌を与え、0(担体)又はネピカスタット60mg/kgを、十二指腸カニュレを通じて単回の十二指腸内投与をした。担体−コントロール投与群は雄1匹及び雌1匹、及びネピカスタット−処置群は雄2匹及び雌2匹ずつからなる。それぞれの動物は、イソフルレンガスで麻酔下、外科的手術により装置を装着した。試験製剤を投与する前、自律神経作用薬である、ノルエピネフリン(3μg/kg)、イソプロテレノール(0.3μg/kg)、及びアセチルコリン(10μg/kg)を静脈内投与し、平均血圧を測定した。各動物に試験製剤を単回ボーラス投与し、自律神経作用薬による血圧変化を投与後約1、2、及び3時間後に測定した。実験終了後、それぞれのイヌは安楽死させ、試験から除いた。
イヌは、試験化合物の血流力学係数を求める場合によく使われるので、用いた。ビーグル犬は、マーシャルファーム社(North Rose、NY)から購入した。それぞれのイヌは、供給業者の施した耳の入れ墨によって各個体を特定した。動物は実験室の条件下に少なくとも投与の少なくとも3週間、慣らせた。順応期間中、各動物についての一般的な条件を検討し、健康的であると考えられる条件を用いた。イヌはランダムに処置群に振り分けた;雄は偶数、雌は奇数の番号に振り分けた。
各群に振り分けた後、イヌは個別にステンレススチールのケージに飼育し、試験番号、及び入れ墨で特定した。飼育の部屋の環境はコントロールできるようになっている。ケージは毎日洗浄し、動物は消毒したケージに1週間おきに移し替えられた。ピュリナ認定ケーナインチャウ(Purina Certified Canine Chow)(登録商標)を1日1回及び水は自由に与えた。
処置の日、イヌは約14ないし16ヶ月である。雄は体重10.3ないし12.9kgで、雌は8.51ないし1.2kgだった。
投与においては、ネピカスタット粉末を担体と混合して60−mg/mlの懸濁液とした。使用の間60−mg/mlのネピカスタット製剤は、有効性を保っていた。各投与の日に、ノルエピネフリン(60μg/ml)、イソプロテレノール(6μg/ml)、及びアセチルコリン(200μg/ml)の水溶液を、滅菌水で調製した。
雄1匹及び雌1匹の担体−コントロール投与群に1ml/kgの担体、及び雄2匹及び雌2匹のネピカスタット−処置群に1ml/kgの60mg/mlのネピカスタット溶液を投与した。総投与量は、各動物とも60mg/kgである。
投与量は、ネピカスタットの2つの試験に基づいて選択した。イヌにおける急性毒性研究において、400mg/kgの経口投与により一過性の臨床兆候が現れた。1ヶ月の研究では、1日1回、5、20、又は80mg/kgの経口投与を行った。80mg/kg/日では、毒性の臨床兆候が現れた。
担体又はネピカスタット製剤の単回の十二指腸内投与は、十二指腸カニュレを通して、直接十二指腸に投与した。十二指腸ルートを選択したのは、ネピカスタットの投与経路として経口ルートが提案されている経路だからである。投与容積は、投与前に記録した個々の体重に基づいて計算した(本明細書においてデータは表にしていない)。それぞれの試験の後、イヌを測定し、過量のペントバルビタールナトリウム(300mg/kg、静注)で安楽死させ、試験から除いた。
プロトコールに記載された手順に従い、イヌに外科的に装置を装着した。イヌは外科的手術の前には、終夜、絶食させた。試験を行う各動物は、まず、ケタミン(10mg/kg)及びジアゼパム(0.5mg/kg)の混合物を静注で注入して麻酔した。各動物は試験中、体温を保つために温水が循環しているパッドの敷いてある手術用テーブルに乗せ、機械的に換気した。麻酔用の手術台をイソフルランガスで充満させた(酸素中1.5%ないし2%の1回換気量、流量約1.5L/分)。直腸温度は、血中のガス濃度を測定するためだけにモニターし、データは本明細書には記載していない。外部針電極を皮下に埋込み、麻酔を標準肢導出II心電図(ECG)でモニターした。
左大腿静脈にカニュレを通し、自律神経作用薬の投与のためポリエチレンチューブの先を大静脈に通した。左大動脈にポリエチレンチューブのカニュレを50U/mlのヘパリン−生理食塩水溶液で満たしたポリエチレンチューブのカニュレを通した。動脈カニュレの先は胸大動脈に通し、外部圧力トランスデューサーに接続し、最高血圧及び最低血圧を記録した。動脈血サンプルは、血中pH、PCO2、及びPO2の分析のために動脈カニュレから採取した。
正中線に沿った開腹手術を行い、幽門括約筋の尾方にある十二指腸を摘出した。十二指腸に針を挿入し、生理食塩水を満たしたカニュレの先は、試験製剤の投与のために針を通して細胞内腔まで達した。針は切開部位から抜き取り、カニュレはそこに固定し、カニュレの栓は腹部から外に出し、及び切開した腹部の皮膚を再び閉じた。
外科的な測定の際は、必要ならば排気設備をつけ、動脈血pH、PCO2濃度がほぼ通常値になるようにした(pH=7.43ないし7.50及びPCO2=22ないし27mmHg)。
自律神経作用薬である、ノルエピネフリン(3μg/kg)、イソプロテレノール(0.3μg/kg)、及びアセチルコリン(10μg/kg)を静脈内にボーラス投与(約15秒)し、大腿静脈カニュレを用いて、各投与間は約10分をかけて行った。それぞれの薬剤の投与後、カニュレは3mLの水で洗浄した。薬剤の投与は、最初のアセチルコリン投与の約20分後に行った。
2回目のアセチルコリン投与の約30分後、担体又はネピカスタットを1ml/kgで、各動物に投与した。十二指腸に、十二指腸カニュレを通じてボーラス投与した。投与直後に十二指腸カニュレは担体溶液3mLで洗浄した。投与約50、110、及び170分後、10分間隔で自律神経作用薬を繰り返し投与した。
大動脈血圧、心拍、及びECGは、継続的に直接ポリグラフレコーダに記録した。血中pH、PCO2、及びPO2の値は、血液サンプルを採取したおよその時間で、血中ガス分析器から手動でポリグラフチャートに記録した。心拍、ECG、及び血中ガス係数は、麻酔のレベル及び動物の調製の安定性を測定することのみに用いた;これらのデータは、本明細書には掲載していない。
最高血圧、最低血圧、及び平均大動脈血圧は、投与前(ベースライン)及びそれぞれ薬剤のピーク反応(ベースラインからの最大変化)の時点で測定した。最高血圧、最低血圧、及び平均大動脈血圧、及び血中pH、PCO2、及びPO2は、試験製剤投与の約50、110、及び170分後に測定した。
ノルエピネフリンに対する反応は、それぞれのノルエピネフリン投与において、平均大動脈血圧、及びピーク血圧の時点での増加によって特徴づけられる。イソプロテレノール及びアセチルコリンに対する反応は、それぞれのイソプロテレノール及びアセチルコリン投与において、平均大動脈血圧、及びピーク血圧の時点での増加によって特徴づけられる。
試験の最後に、それぞれのイヌは過量のペントバルビタールナトリウム(約300mg/kg、静注)で安楽死させ、試験から除いた。
本件処置に関連する投与前後におけるノルエピネフリンの応答の違いはなかった。イヌにおける担体コントロール群では、投与後のノルエピネフリン応答は、投与前よりも小さいものだった;これは偶然と考えられる。イソプロテレノールの投与前後における応答の違いはなかった。本件処置に関し、アセチルコリンの投与前後の応答の違いはなかった。
外科的に装置を装着したビーグル犬の十二指腸に60mg/kgのネピカスタットを投与した。自律神経作用薬(ノルエピネフリン、イソプロテレノール、及びアセチルコリン)の静脈内投与に対する血圧の反応を投与前及び投与の約1、2、及び3時間後に測定した。処置に関する自律神経作用薬の応答の違いは見られなかった。
DBH阻害剤(DBHI)であるネピカスタット急性腹腔内投与によるマウスの自発運動への効果を調べた。このクラスの化合物は自発運動に影響があるとされている。
成熟雄CD−1(ICR)マウス(試験日の体重30−40g)を、8匹を1群として、午前9時から午後9時までの通常の明/暗サイクルで飼育した。食餌及び水は自由に摂取させた。いずれの動物も投薬を受けたことがない。いずれの動物も1回しか使われない。
自発運動を、自動化された14ステーション活性モニタリングシステムでモニターした(サンディエゴ社)。各ステーションは、壁に等間隔で設置された3つの光線放出器及び3つの光線検出器を含む透明なパースペックスケージからなる(25cm×45cm×20cm;w×1×h)。
マウスは少なくとも1時間前に試験室に入れた。マウスを個別にいずれかのケージに入れ、30分間探索させた。この馴化期間の後、マウスの腹腔内にネピカスタット(10、30及び100mg/kg)、SKF−102698(30及び100mg/kg)、コカイン(30mg/kg)又は担体を投与し、即時に同じケージに戻した。60分の前処理時間の後、運動行動を180分観察した。各動物について30分ごとに活動数及び移動数(2回連続の光線の遮りと定義される)を記録した。
処置、時間間隔、及び時間に対する処置の効果の相互作用の、全体としての効果を評価するために、総合順位データ(ノンパラメトリック技術)を用いて、反復測定二元配置分散分析(ANOVA)により行った。一元配置ANOVAは、あるならば、いずれの時間間隔において処置の効果があるかを調べるために、それぞれの時間間隔において行った。ダネットの手法及びフィッシャーの最小有意差法を用いて、複数比較の問題を修正して対比較を各時間間隔について行った。
ネピカスタットの投与量は3−100mg/kgであり、これを水に溶解させ、超音波をかけた。SKF−102698の投与量は、30−100mg/kgとした。コカイン塩酸塩は、30mg/kgとした。化合物の投与体積は、1ml/100gとなるようにした。報告した全ての投与は遊離塩基の形態で存在し、コカインのみ塩を用いた。
全体評価の分析モデルでは、処置及び時間において有意な効果が見られたが(p<0.01)、時間に対する処置の効果の相互作用に関しては、有意な効果は見られなかった。分析の各時点は、時間間隔1−4の総合的な効果であるが(例えば、最初の120分は、全てp<0.01だった)、全体として有意な処置の効果は、時間間隔5及び6においては見られなかった(例えば、最後の60分)。
活動数及び移動数の両方についてコカインを担体投与群と比較した場合、処置及び時間において、いずれも有意な効果があったのに対し(両方ともp<0.01)、時間に対する処置の効果の相互作用に関しては、有意な効果は見られなかった。各時間間隔においてコカイン投与群は、総活動度及び移動度において、時間間隔1−4においては、有意差を示したが、5及び6群においては示さなかった(全てp<0.05)。
対照的に、担体コントロール投与群と比較して、ネピカスタット−処置群又はSKF−102698−処置群において、いずれの時間間隔においても、総活動数又は移動数に有意差はなかった。
コカインは、投与量30mg/kgにおいて、運動促進剤としての効果を示した。対照的に、ネピカスタット3、10、30又は100mg/kgの急性投与では、いずれの時間間隔においても、担体コントロール投与群と比較して、総活動数又は移動数に有意差はなかった。同様に、SKF−10269830の30及び100mg/kgの投与では、いずれの時間間隔においても、担体コントロール投与群と比較して、総活動数又は移動数に有意差はなかった。これらのデータから、DBHIは、マウスの運動行動に影響を与えないことが示唆される。
ネピカスタット及びドパミン−β−ヒドロキシラーゼ阻害剤の急性投与は、自然発症高血圧ラットの左心室において、腸間膜動脈における酵素を阻害することが示された。7日及び25日間におけるネピカスタット1mg/kg又は10mg/kgを経口投与した場合、SHRの大脳皮質及び腸間膜動脈におけるノルエピネフリン及びドパミンレベルの変化を調べた。
ネピカスタット1及び10mg/kgを遊離塩基の形態で調製した。薬物は担体(dH2O)に溶解し、10.0ml/kgとなるように調製した。
試験の開始時に16−17週齢である自然発症高血圧雄ラット(SHR)を用いた。動物は、食餌及び水を自由に摂取できるようにした。動物はランダムに以下のいずれかの処置群:ネピカスタットの経口投与10mg/kg、1mg/kg、又は脱イオン水で調製した担体、をそれぞれに10ml/kgとなるように投与する群に振り分けた。ラットは、7又は25日間、担体、1mg/kg又は10mg/kgネピカスタット(n=8)を、第25日だけn=9で経口投与した。第7日には、化合物を投与した4時間後、動物はハロタン麻酔して断頭し、皮質及び腸間膜動脈は摘出し、計量し、及び24匹のラットで分析した(n=8/処置群)。残りの31匹のラットは、以下の18日間、3つの処置のうちのどれかについて経口投与を受けた。最後の処置から4時間後、この投与群から腸間膜動脈及び皮質を摘出し、計量し、カテコールアミンレベルの分析に用いた。
第25日に安楽死させた動物は、血圧を測るためにも用いられた。最後の血圧は、第22日に測定した。
統計的には、3つの処置を、各時期において(第7又は第25日間)、3つの分析をノンパラメトリック一元配置分散分析(ANOVA)により行った。対比較分析をコントロール群と比較して、実験あたりの同過誤率を制御するためにサンプルサイズの違いを適合させて、フィッシャーの最小有意差法を用いて行った。それぞれの変数は、別々に分析した。図6−11において、*はp<0.05、及び、**はP<0.01を示す。
7日間の処置した場合、10mg/kg投与群は、担体投与群と比べて大脳皮質におけるノルエピネフリンレベルは、有意に低く(p<0.1)、ドパミン/ノルエピネフリン比(p<0.05)は有意に高かった。7日間の処置の場合、担体と比較しても、いずれの二つの処置群(1又は10mg/kgネピカスタット)においても、ドパミンレベルに有意な差はなく(p>0.05)、又は、1mg/kgネピカスタット投与群においてもノルエピネフリンレベル又はドパミン/ノルエピネフリン比に有意差はなかった(図6−8)。10mg/kgネピカスタット投与群において、第7日におけるドパミン/ノルエピネフリン比は、わずかに有意差があった(p<0.05)。
25日間の1mg/kgネピカスタット投与群においては、担体投与群と比べて皮質におけるドパミンレベルが有意に高かった(p<0.05)。この投与群においては、担体投与群と比べて皮質中のドパミン/ノルエピネフリン比も有意に高かった(p<0.01)。10mg/kgネピカスタット投与群においてもこの比は、担体に比べて有意に大きかった(p<0.05)。いずれの投与群においても、コントロールと比較して、ノルエピネフリンレベルに有意差はなく(p>0.05)、10mg/kg投与群におけるドパミンレベルにも有意差はなかった(図6−8)。
腸間膜動脈において、第7日(p<0.05)及び25日(p<0.01)の投与において、10mg/kg投与群は、担体投与群に比べて、ドパミン及びドパミン/ノルエピネフリン比が有意に高かった。担体投与群は、ノルエピネフリンレベルに有意な差はなかった。有意に(p<0.05)コントロールネピカスタット1mg/kg投与群(図9−11)と比べても、有意に差はなかった。
ネピカスタットは、7及び25日に投与した場合、ドパミン−β−ヒドロキシラーゼを有意に阻害した。自然発症高血圧ラット(SHR)皮質及び腸間膜用いられた。10mg/kgでは、1mg/kgのネピカスタット投与群に比べ、より大きな阻害が見られたので、測定した効果は用量依存的であったといえる。
当該関連技術分野の通常の知識を有するものには明白であるが、ここに記載した、方法や適用における他の適切な変更及び適用は適切であり、本発明の範囲から離れることなく又はあらゆる態様に用いることができる。発明は、特定の態様に関連して記載されているが、本発明を限定するために記載したのではなく、反対に、本発明の範囲及び発明の変更及び等価体が、以下の発明の範囲で定義される及び発明の範囲及び精神そのような代替、変更及び等価体もカバーするものである。