JP2014143107A - 発光管および放電灯 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の態様は、機械的な強度と直線透過率に優れた発光管および放電灯を提供する。
【解決手段】アルミナの結晶を主相として含む多結晶アルミナからなり、前記アルミナの結晶粒子の平均粒子径が5μm以上、直線透過率が10%以上である発光管が提供される。
【選択図】図5

Description

本発明の態様は、一般に、発光管に関し、具体的には、高輝度な放電灯に用いるのに適した発光管に関する。
メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、水銀ランプなどの高輝度な放電灯には、透光性を有する発光管が設けられている。発光管の内部には、一対の電極が突出するとともに、ScIなどの金属ハロゲン化物、ナトリウム、水銀などが封入されている。そして、一対の電極間に高電圧を印加することでアーク放電を発生させ、このアーク放電による熱で封入した金属ハロゲン化物などを解離させて特有の波長を有する光を発生させるようにしている。
従来、発光管は石英(SiO)から形成されていたが、耐食性および耐熱衝撃性の点で問題があるため、発光管を多結晶アルミナ(透光性アルミナ)から形成するようになってきている。
ここで、発光管の材料として多結晶アルミナを用いる場合には、機械的な強度と直線透過率(インライン透過率)に優れた多結晶アルミナとすることが重要となる。
そのため、アルミナ(酸化アルミニウム;Al)にMgO、La、Yなどの焼結用助剤を添加することで機械的な強度と直線透過率を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
アルミナにMgOなどの焼結用助剤を添加すれば、アルミナの結晶粒界に焼結用助剤から生成された相が形成されるので、アルミナの結晶粒子の成長が抑制される。そのため、アルミナの結晶粒子が大きくなるのが抑制されるので、機械的な強度が向上する。
しかしながら、アルミナの結晶粒界に焼結用助剤から生成された相があると、光の屈折や散乱が生じやすくなり、直線透過率が低下することが判明した。すなわち、アルミナの結晶粒子の大きさを適正なものとするために添加した焼結用助剤が直線透過率を低下させる要因となることが判明した。つまり、機械的な強度の向上と直線透過率の向上との間には、トレードオフの関係が存在することになる。
例えば、特許文献1には、「Alの最大粒子の長軸は30μm以下、短軸は20μm以下で、上記介在する酸化物の最大粒子の長軸は10μm以下、短軸は5μm以下である」ことが記載されている。この場合、介在する酸化物の円相当径の最大値は8μm程度となる。円相当径の最大値が8μm程度の酸化物がアルミナの結晶粒界にあれば、アルミナの結晶粒界における光の屈折や散乱の影響により、発光管の内部で発生し放出される光の直進性が阻害されるおそれがある。そのため、特許文献1の図8に記載されているように、機械的な強度は優れるが、直線透過率が6%程度となり直線透過率の向上に改善の余地を残していた。
特許第3700176号公報
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、機械的な強度と直線透過率に優れた発光管および放電灯を提供する。
第1の発明は、アルミナの結晶を主相として含む多結晶アルミナからなり、前記アルミナの結晶粒子の平均粒子径が5μm以上、直線透過率が10%以上である発光管である。 この発光管によれば、機械的な強度と直線透過率に優れたものとすることができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記アルミナの結晶粒子の平均粒子径が7.5μm以上である発光管である。
この発光管によれば、直線透過率をさらに向上させることができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記直線透過率が15%以上である発光管である。
この発光管によれば、機械的な強度と直線透過率に優れたものとすることができる。
第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、Laを成分に含む焼結用助剤から生成された相を、前記アルミナの結晶粒界にさらに有し、前記アルミナの結晶からなる主相の総面積をS1、前記焼結用助剤から生成された相の総面積をS2とした場合に以下の式を満足し、前記焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値が5μm以下である発光管である。

この発光管によれば、機械的な強度と直線透過率に優れたものとすることができる。
第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、Laを成分に含む焼結用助剤から生成された相を、前記アルミナの結晶粒界にさらに有し、前記アルミナの結晶からなる主相の総面積をS1、前記焼結用助剤から生成された相の総面積をS2とした場合に以下の式を満足し、前記焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値が4.5μm以下である発光管である。

この発光管によれば、機械的な強度と直線透過率に優れたものとすることができる。
第6の発明は、上述した発光管を備えた放電灯である。
この放電灯によれば、ランプ効率の向上を図ることができる。
本発明の態様によれば、機械的な強度と直線透過率に優れた発光管および放電灯を提供できる。
本発明の実施の形態に係る発光管および放電灯を例示するための模式図である。 発光管を例示するための模式図である。 アルミナの結晶粒子の平均粒子径と機械的な強度との関係を例示するためのグラフ図である。 焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値と、直線透過率との関係を例示するためのグラフ図である。 アルミナの結晶粒子の平均粒子径と、直線透過率との関係を例示するためのグラフ図である。 アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の面積が占める割合(占有面積比率)と、直線透過率との関係を例示するためのグラフ図である。 直線透過率とランプ効率との関係を例示するためのグラフ図である。 直線透過率の測定方法を例示するための模式図である。(a)は発光管2を置かない状態で測定する様子を表し、図8(b)は発光管2を置いた状態で測定する様子を表している。 発光管2の製造方法について例示をするためのフローチャートである。 (a)〜(f)は、一次焼結の焼成温度の影響を例示するための電子顕微鏡写真である。 熱間静水圧プレス処理に用いる処理装置200を例示するための模式図である。 熱間静水圧プレス処理の工程を例示するための模式図である。 熱間静水圧プレス処理の温度条件と圧力条件とを例示するための模式図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。尚、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(発光管および放電灯の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る発光管および放電灯を例示するための模式図である。 図1は、一例として、メタルハライドランプの構成を例示するための模式図である。
図2は、発光管を例示するための模式図である。
図1に示すように、放電灯1には、発光管2、電極3、外管4、リード線5、本体部6、端子7、封止部8が設けられている。
図1、図2に示すように、発光管2は円筒状の本体部2aの両端に半球状の端部2bが接続された形態を有している。また、半球状の端部2bには、細管部2cがそれぞれ接続されている。発光管2の内部は放電空間2dとなっている。
電極3は、一対設けられ、先端部3aと導入部3bを有する。
先端部3aの一方の端部は、放電空間12の内部に突出している。一対の先端部3aは、所定の距離を置いて対向配置されている。先端部3aは、例えば、Ta(タンタル)やMo(モリブデン)などから形成することができる。先端部3aの他方の端部は、細管部2cの内部に設けられ、導入部3bと電気的に接続されている。
導入部3bの先端部3aと電気的に接続される側の端部は細管部2cの内部に設けられている。導入部3bの反対側の端部は細管部2cから露出している。導入部3bは、例えば、Nb(ニオビウム)などから形成することができる。
細管部2cの内壁と、先端部3a及び導入部3bとの間には、シール材からなる封止部8が設けられ、放電空間2dが気密に封止されている。封止部8を形成するためのシール剤は、例えば、SiO、Al、Dyなどを含むフリットガラスとすることができる。
放電空間2dには、放電媒体が封入されている。放電媒体は、金属ハロゲン化物9と、不活性ガスとを含む。金属ハロゲン化物9は、例えば、ScIなどとすることができる。不活性ガスは、例えば、アルゴンガスなどとすることができる。またさらに、水銀を含めることができる。
外管4は、発光管2の本体部2aと同芯に設けられている。すなわち、二重管構造となっている。外管4の一方の端部は塞がれており、外管4の他方の端部は本体部6により封止されている。外管4と発光管2との間に形成された閉空間は、例えば、大気圧よりも減圧された雰囲気とすることができる。外管4は、例えば、石英ガラスなどから形成することができる。
リード線5は、電極3の導入部3bと端子7を電気的に接続する。
本体部6は、樹脂などの絶縁性材料から形成されている。
端子7の一方の端部は本体部6の内部に設けられ、リード線5が電気的に接続されている。端子7の他方の端部は本体部6から露出している。
放電灯1を機器に装着した際には、機器に設けられた点灯回路と端子7とが電気的に接続されるようになっている。
次に、放電灯1の作用について説明する。
機器に設けられた点灯回路により30kV程度の高圧パルスが、端子7に印加されると、一対の電極3の先端部3a間にアーク放電が発生する。このアーク放電による熱により、放電空間2dに封入されている金属ハロゲン化物9が蒸発し、さらに金属とハロゲンとに解離することで特有の波長を有する光が発生する。
発生した光は、発光管2と外管4を透過し、放電灯1の外部に放出される。
ここで、発光管2の内部において発生した光は発光管2を透過して外部に放出されるため、発光管2の直線透過率を向上させることが重要となる。
また、発光管2の機械的な強度を充分なものとする必要がある。
発光管2の材料として多結晶アルミナを用いる場合には、アルミナの結晶粒子の大きさを大きくすれば直線透過率を高くすることができる。しかしながら、アルミナの結晶粒子の大きさを大きくすれば、発光管2の機械的な強度が低下することになる。
図3は、アルミナの結晶粒子の平均粒子径と機械的な強度との関係を例示するためのグラフ図である。
図3における縦軸は強度指数、横軸はアルミナの結晶粒子の平均粒子径である。
強度指数とは、結晶粒子の平均粒子径が10μmのアルミナから形成された発光管2の機械的な強度に対する値である。また、発光管2の機械的な強度は、発光管2の内部に水圧を付加し、発光管2が破壊された時の圧力(水圧)としている。
図3から分かるように、アルミナの結晶粒子の平均粒子径を大きくすれば、発光管2の機械的な強度が低下する。すなわち、発光管2の機械的な強度の向上と直線透過率の向上との間には、トレードオフの関係が成立することになる。
従来技術においては、直線透過率を確保するためにアルミナの結晶粒子の平均粒子径を大きくして、光の直進性が妨げられる要因となる粒界の影響を低減させてきた。しかしながら、アルミナの結晶粒子の平均粒子径を大きくすると機械的な強度が低下してしまうので、発光管2の機械的な強度と直線透過率の両方を向上させることは困難であった。
そこで、以下に説明する多結晶アルミナからなる発光管2とすることで機械的な強度と直線透過率を向上させるようにしている。
この場合、以下に説明する多結晶アルミナからなる発光管2とすれば、前述した発光管2の形態にかかわらず機械的な強度と直線透過率を向上させることができる。すなわち、発光管2の材料として以下に説明する多結晶アルミナを用いるものとすれば、前述した発光管2や放電灯1の形態は適宜変更することができる。
前述したように、従来の多結晶アルミナの場合には、アルミナの結晶粒子の平均粒子径を小さくすれば発光管2の機械的な強度を高めることができるが、直線透過率が低下してしまうことになる。
本発明者の得た知見によれば、アルミナに焼結用助剤を添加すればアルミナの結晶粒子の成長を抑制することができるので、発光管2の機械的な強度を向上させることができる。そして、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値を適切な範囲とすれば、光の屈折や散乱を抑制することができるので直線透過率の向上を図ることができる。
すなわち、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値を適切な範囲とすれば、発光管2の機械的な強度と直線透過率の両方を向上させることができる。
ここで、焼結用助剤としては、例えば、La、MgO、Ta、Ho、Y、Yb、Dy、Sc、Ce2O、Er、Lu、Sm、Tmなどの酸化物を用いることができる。
そのため、以下においては一例として、焼結用助剤がLaである場合について説明することにする。
図4は、焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値と、直線透過率との関係を例示するためのグラフ図である。
また、図4は、アルミナの結晶粒子の平均粒子径が5μm以上の場合である。
なお、焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値の測定方法、直線透過率の測定方法に関する詳細は後述する。
図4から分かるように、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値を5μm以下とすれば、直線透過率が10%以上となるようにすることができる。
この場合、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値を4.5μm以下とすれば、直線透過率をさらに向上させることができる。
図5は、アルミナの結晶粒子の平均粒子径と、直線透過率との関係を例示するためのグラフ図である。
また、図5は、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値が5μm以下の場合である。
なお、アルミナの結晶粒子の平均粒子径の測定方法に関する詳細は後述する。
図5から分かるように、アルミナの結晶粒子の平均粒子径を5μm以上とすれば、直線透過率が10%以上となるようにすることができる。
この場合、アルミナの結晶粒子の平均粒子径を7.5μm以上とすれば、直線透過率をさらに向上させることができる。
すなわち、従来は、アルミナの結晶粒子の平均粒子径を5μm〜7.5μm程度とすれば、発光管2の機械的な強度を高めることができたが、直線透過率は低いものとなっていた。
これに対して、本実施の形態によれば、アルミナの結晶粒子の平均粒子径を5μm〜7.5μm程度としても直線透過率が10%以上となるようにすることができる。
また、本発明者の得た知見によれば、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の面積を抑制すれば、直線透過率を向上させることができる。
図6は、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の面積が占める割合(占有面積比率)と、直線透過率との関係を例示するためのグラフ図である。
また、図6は、アルミナの結晶粒子の平均粒子径が5μm以上、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値が5μm以下の場合である。 なお、占有面積比率の測定方法に関する詳細は後述する。
図6から分かるように、占有面積比率を0.55%以下とすれば、直線透過率が10%以上となるようにすることができる。
この場合、占有面積比率を0.50%以下とすれば、直線透過率をさらに向上させることができる。
また、本発明者の得た知見によれば、発光管2の直線透過率を向上させることができれば、放電灯1のランプ効率を向上させることができる。
図7は、直線透過率とランプ効率との関係を例示するためのグラフ図である。
図7における縦軸はランプ効率指数、横軸は直線透過率である。
ランプ効率指数とは、直線透過率が25%の時のランプ効率に対する比率である。
また、図7は、前述した多結晶アルミナからなる発光管2を備えた放電灯1における直線透過率とランプ効率との関係を例示するものである。
なお、ランプ効率の測定方法に関する詳細は後述する。
図7に示すように、直線透過率を向上させることができれば、ランプ効率指数、すなわち、ランプ効率を向上させることができる。
そして、直線透過率を10%以上とすれば、ランプ効率を向上させることができるとともに、直線透過率の変動によるランプ効率の変動を抑制することができる。すなわち、直線透過率を10%以上とすれば、ランプ効率の向上と安定化を図ることができる。
(測定方法)
次に、アルミナの結晶粒子の平均粒子径、直線透過率、焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値、占有面積比率、およびランプ効率について、それぞれの測定方法を説明する。
(アルミナの結晶粒子の平均粒子径の測定方法)
アルミナの結晶粒子の平均粒子径は、以下のようにして測定した。
まず、発光管2を破壊して測定用のサンプルを作成する。
次に、サンプルの表面をレーザ顕微鏡を用いて撮像する。
この際、発光管2の内壁面を撮像した。
レーザ顕微鏡は、オリンパス製、走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS−1100とした。 撮像範囲(観察範囲)は、680μm×480μmとした。
アルミナの結晶粒界にある相は遷移金属を含んでいるため輝度が高い。そのため、画像解析により高輝度部分をアルミナの結晶粒界にある相として分離することができる。
画像解析には、Win−ROOFVer6.4(三谷商事)を用いた。
Win−ROOFVer6.4を用いた画像解析は、以下のようにすることができる。
撮像された画像をモノクロ化し、単色閾値2000〜2300の範囲内で二値化して、アルミナの結晶粒子と、アルミナの結晶粒界にある相とを分離する。
そして、Win−ROOFVer6.4のコマンドを実行することで、アルミナの結晶粒子径を算出する。
この場合、アルミナの結晶粒子径は、Win−ROOFVer6.4の「円相当径」により算出することができる。
そして、アルミナの結晶粒子の平均粒子径は、算出された複数の円相当径の相加平均を算出することで求めることができる。
(直線透過率の測定方法)
図8は、直線透過率の測定方法を例示するための模式図である。
図8(a)は発光管2を置かない状態で測定する様子を表し、図8(b)は発光管2を置いた状態で測定する様子を表している。
直線透過率の測定には、紫外線可視分光光度計100を用いた。
紫外線可視分光光度計100は、島津製作所製、UVmini−1240とした。
測定用の光は、波長が1100nmの光とした。
また、測定用の光の受光部に測定用の光以外の光が入射しないように、暗箱中で測定した。
まず、図8(a)に示すように、測定用の光の投光部と受光部との間に発光管2を置かない状態で測定を行い、発光管2を置かない状態における信号強度を測定する。
次に、図8(b)に示すように、測定用の光の投光部と受光部との間に発光管2を置く。 発光管2は、発光管2の中心軸が測定用の光の光軸に対してほぼ垂直となるように保持させた。この際、発光管2のパーティングラインに測定用の光が当たらないようにするために、発光管2の保持位置を調整した。
発光管2は、破壊や加工したサンプル片とせず実際の形状のままとした。
つまり、直線透過率を発光管2の形状を含めて評価した。
そして、測定用の光を発光管2に照射し、発光管2を透過して受光部により受光された光の信号強度を測定する。
直線透過率(%)は、以下の式により算出した。

また、発光管2のパーティングライン以外の部分を任意に3箇所測定し、その平均値を最終的な直線透過率とした。
(焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値の測定方法、および占有面積比率の測定方法)
焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値、および占有面積比率は、以下のようにして測定した。
まず、発光管2を破壊して測定用のサンプルを作成する。
次に、サンプルの表面を電子顕微鏡を用いて撮像する。
この際、発光管2の内壁面を撮像した。
電子顕微鏡は、日立製作所製、走査電子顕微鏡S−3000Nとした。
撮像範囲(観察範囲)は、425μm×320μmとした。
アルミナの結晶粒界にある相は遷移金属を含んでいるため輝度が高い。そのため、画像解析により高輝度部分をアルミナの結晶粒界にある相として分離することができる。
画像解析には、Win−ROOFVer6.4(三谷商事)を用いた。
Win−ROOFVer6.4を用いた画像解析は、以下のようにすることができる。
撮像された画像をモノクロ化し、単色閾値150〜210の範囲内で二値化して、アルミナの結晶粒子と、アルミナの結晶粒界にある相とを分離する。
そして、Win−ROOFVer6.4のコマンドを実行することで、焼結用助剤から生成された相の円相当径を算出する。
この場合、焼結用助剤から生成された相の円相当径は、Win−ROOFVer6.4の「円相当径」により算出することができる。
そして、算出された複数の円相当径のうちの最大値を、焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値とした。
また、算出された複数の円相当径に基づいて、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の総面積を算出する。
この際、ポアの部分は除外して相の総面積を算出した。
そして、占有面積比率(%)を以下の式により算出した。

ここで、S1はアルミナの結晶からなる主相の総面積、S2は焼結用助剤から生成された相の総面積である。
(ランプ効率の測定方法)
放電灯1は、図1、図2において例示をしたものとした。
放電空間2dに封入される放電媒体は、希土類系のハロゲン化物、水銀、およびアルゴンガスとした。アルゴンガスの圧力は、50torr〜300torrとした。
放電灯1を光束球内で10分間点灯後、マルチチャンネル分光器を用いて全光束照度(lm)を測定した。また、同時に、放電灯1への入力電力(W)を測定した。
ランプ効率(lm/W)は、以下の式により算出した。
ランプ効率(lm/W)=全光束照度/入力電力
(発光管2の製造方法)
次に、前述した多結晶アルミナからなる発光管2の製造方法について説明する。
前述したように焼結用助剤としては種々の酸化物を用いることができる。
そのため、以下においては一例として、焼結用助剤がLaである場合について説明することにする。
図9は、発光管2の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
図9に示すように、まず、原料であるAlとLa、純水、バインダー及び分散剤を湿式混合分散させスラリーを生成する。
スラリーの生成は、以下のようにして行うことができる。
ボールミルにAlとLaを投入する。
Alの割合は99.8wt%〜82wt%、Laの割合は0.01wt%〜18wt%とすることができる。
そして、AlとLaの混合体(粉体)に対して、純水、バインダー及び分散剤を加える。
純水は、混合体重量の20%〜100%に相当する量を加える。分散剤は、混合体重量の0.2%〜1%に相当する量を加える。
そして、ボールミルで10時間以上湿式混合してスラリーを生成する。
Alの純度は95wt%以上、好ましくは98wt%以上、さらに好ましくは99wt%以上とされる。
Alの出発原料としては、AACH(アンモニウム・アルミニウム・カーボネイト・ハイドロオキサイド)を用いることができる。
この場合、AACHの純度は4N(フォーナイン)以上、粒径分布は0.05μm以上1.0μm以下とされる。
Laの純度は3N(スリーナイン)以上、粒径分布は0.1μm以上2.0μm以下とされる。
バインダーは、例えば、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリルエマルジョン、糖アルコールなどとすることができる。
分散剤は、例えば、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸のアンモニウム塩などとすることができる。
次に、生成したスラリーに必要に応じて消泡剤を加え、真空下で脱泡する。
次に、脱泡したスラリーを用いて鋳込成形を行う。例えば、脱泡したスラリーを石膏型、多孔質樹脂型或いは多孔質セラミックス型に注入して未焼結のセラミックス成形体を形成する。未焼結のセラミックス成形体は、発光管2の形態を有したものとされる。
鋳込み成形を用いれば、種々の形態を有する発光管2を容易に製造することができる。 例えば、発光管2の両端部の径が発光管2の中央部の径の1/2以下であり、発光管2の両端部と中央部とが滑らかに接続された形態を有する発光管2を容易に製造することができる。この様な形態を有する発光管2とすれば、金属蒸気のリークおよびクラックの発生を抑制することができる。
なお、未焼結のセラミックス成形体中にCa成分の混入が予想される場合には、鋳込み成形に引き続いて仮焼工程及び温水(酸)を用いた洗浄工程を設け、Ca成分の除去を行うようにすればよい。
なお、Laの代わりに前述したMgOなどの焼結用助剤を用いることもできる。
また、鋳込み成形の代りに押出し成形或いは射出ブロー成形を行うようにしてもよい。 射出ブロー成形を行う場合には、純水を添加せずに混合を行い、射出ブロー成形後に脱脂処理してから一次焼結を行うようにすればよい。
次に、未焼結のセラミックス成形体を乾燥させた後、一次焼結する。
一次焼結の条件は、雰囲気を真空、空気、N、Ar、H又は水蒸気とし、焼成温度を1300℃以上1500℃以下、焼成時間を0.5時間以上とする。そして、一次焼結により嵩密度が98%以上となるようにする。
ここで、一般的には、一次焼結の焼成温度は1350℃〜1800℃程度であるが、この様な温度範囲で一次焼結を行うと、前述した組成を有する多結晶アルミナが得られないことが判明した。
すなわち、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の状態が制御しきれないことが判明した。
図10(a)〜(f)は、一次焼結の焼成温度の影響を例示するための電子顕微鏡写真である。
なお、図10は、後述する熱間静水圧プレス(HIP;Hot Isostatic Pressing )処理後の多結晶アルミナの表面を撮影したものである。
図10においては、図10(a)の場合の焼成温度が一番低く、図10(f)の場合の焼成温度が一番高くなっている。そして、図10(a)から図10(f)になるに従い、焼成温度が段階的に高くなっている。また、各写真中における白点の部分が、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相である。
図10(a)〜図10(f)から分かるように、一次焼結の焼成温度が変化すれば、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の大きさや総面積が変化する。そのため、原料粒子の形状や原料の純度(Feなどの不純物の除去)を管理したとしても、前述した組成を有する多結晶アルミナを得ることができず、直線透過率にばらつきが発生したり、より高い直線透過率が得られなかったりするおそれがある。
本発明者の得た知見によれば、一次焼結における焼成温度を1250℃以上1350℃未満とすれば、アルミナの結晶粒界にある焼結用助剤から生成された相の大きさや総面積を適正なものとすることができる。
次に、一次焼結体を熱間静水圧プレス処理する。
次に、熱間静水圧プレス処理されたものに機械加工などを施すことで、発光管2の製造が完了する。
ここで、熱間静水圧プレス処理についてさらに説明する。
図11は、熱間静水圧プレス処理に用いる処理装置200を例示するための模式図である。
図11に示すように、処理装置200には、圧力容器201、ジャケット202、上蓋203、下蓋204、るつぼ206、断熱層207、ヒータ208、配管209、配管210、排気ポンプ211、及びコンプレッサ212が設けられている。
圧力容器201は円筒状を呈している。
ジャケット202は、圧力容器201の外壁を覆うように設けられている。ジャケット202の内部には冷却水が流れるようになっている。
上蓋203は、圧力容器201の上側の開口を塞ぐように設けられている。
下蓋204は、圧力容器201の下側の開口を塞ぐように設けられている。
るつぼ206は、円筒状を呈し、下蓋204側が閉鎖され、上蓋203側が開口した形態を有している。るつぼ206は、下蓋204の上方に設けられている。るつぼ206の内部には、一次焼結体22が収納される。
断熱層207は、るつぼ206を覆うようにして設けられている。
ヒータ208は、断熱層207とるつぼ206の間に設けられている。
排気ポンプ211は、配管209を介して圧力容器201に接続されている。排気ポンプ211は、圧力容器201の内部のガスを排気する。
コンプレッサ212は、配管210を介して圧力容器201に接続されている。コンプレッサ212は、圧力容器201の内部を所定の圧力まで加圧する。コンプレッサ212による加圧に用いられるガスとしては、例えば、N、Ar、H、Oからなる群より選ばれた少なくとも一種を用いることができる。
なお、圧力容器201の内部を所定の圧力まで加圧する際には、排気ポンプ211により圧力容器201の内部のガスを排気し、加圧に用いられるガスと置換するようにする。
処理装置200を用いた熱間静水圧プレス処理は、以下のようにして行うことができる。 まず、発光管2の形態を有する一次焼結体22をるつぼ206の内部に収納する。
そして、収納された一次焼結体22の上からビーズ213を充填し、ビーズ213で一次焼結体22を覆う。ビーズ213の材料は、一次焼結体22の材料と同じとすることができる。
次に、この様にして一次焼結体22とビーズ213が収納されたるつぼ206を圧力容器201の内部にセットする。
一次焼結体22と同じ材料のビーズ213で覆った状態で熱間静水圧プレス処理を行うようにすれば、焼結を充分に完結させることができる。
なお、ビーズ213、及びるつぼ206の材料は、一次焼結体22の材料と同じ、若しくは、一次焼結体22の主成分と同じ(Al)、あるいは、一次焼結体22の形成に用いられた焼結用助剤(例えば、Laなど)と同じとすることもできる。
一次焼結体22の形成に用いられた焼結用助剤(例えば、La)と異なる酸化物(例えば、MgO)を用いてビーズ213やるつぼ206を形成した場合には、形成された発光管2の表面に酸化物が不純物として残る可能性がある。しかしながら、酸化物が不純物として残ったとしても、表面のみであるため、後述する機械加工により簡単に除去することができる。
また、ビーズ213、及びるつぼ206の材料を一次焼結体22の形成に用いられた焼結用助剤と同じとすれば、アルミナの結晶粒子の成長を抑制することができる。
低温、低圧の条件であれば、ビーズ213、及びるつぼ206の材料を一次焼結体22の形成に用いられた焼結用助剤と同じとしても、アルミナの結晶粒子の成長の抑制には全く関与しない。しかしながら、1350℃以上の高温、且つ、500atm以上の高圧のもとでは、一次焼結体22の形成に用いられた焼結用助剤と同じ元素がるつぼ206の内部に存在すると、アルミナの結晶粒子の成長が抑制されると考えられる。
次に、熱間静水圧プレス処理の処理条件についてさらに説明する。
図12は、熱間静水圧プレス処理の工程を例示するための模式図である。
図12に示すように、圧力容器201の内部の温度を室温から1580℃まで上昇させ、1580℃を6時間程度維持する。昇温速度は、200℃/hとすることができる。
また、昇温とともに圧力容器201の内部の圧力を大気圧から1000atmまで上昇させ、1000atmを6時間程度維持する。
加圧に用いられるガスとしては、例えば、N、Ar、H、Oからなる群より選ばれた少なくとも一種を用いることができる。
図13は、熱間静水圧プレス処理の温度条件と圧力条件とを例示するための模式図である。
図13から分かるように、熱間静水圧プレス処理を1300℃未満で行えば、充分な透光性が得られない。また、1800℃を越えるとLaがAlに固溶され、直線透過率の向上に不利となる。
また、圧力を500atm未満で行えば、充分な透光性が得られない。1200atmを越えるとクラックが発生する。
そのため、熱間静水圧プレス処理の温度は1300℃以上1800℃以下、圧力は500atm以上1200atm以下とすることが好ましい。
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
1 放電灯、2 発光管、2d 放電空間、3 電極、4 外管、5 リード線、6 本体部、7 端子、8 封止部、9 金属ハロゲン化物

Claims (6)

  1. アルミナの結晶を主相として含む多結晶アルミナからなり、前記アルミナの結晶粒子の平均粒子径が5μm以上、直線透過率が10%以上である発光管。
  2. 前記アルミナの結晶粒子の平均粒子径が7.5μm以上である請求項1記載の発光管。
  3. 前記直線透過率が15%以上である請求項1または2に記載の発光管。
  4. Laを成分に含む焼結用助剤から生成された相を、前記アルミナの結晶粒界にさらに有し、
    前記アルミナの結晶からなる主相の総面積をS1、前記焼結用助剤から生成された相の総面積をS2とした場合に以下の式を満足し、
    前記焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値が5μm以下である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光管。
  5. Laを成分に含む焼結用助剤から生成された相を、前記アルミナの結晶粒界にさらに有し、
    前記アルミナの結晶からなる主相の総面積をS1、前記焼結用助剤から生成された相の総面積をS2とした場合に以下の式を満足し、
    前記焼結用助剤から生成された相の円相当径の最大値が4.5μm以下である請求項1〜4のいずれか1つに記載の発光管。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の発光管を備えた放電灯。
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