JP2014142361A - サンプルにおける検体の存在および/または濃度を決定する方法 - Google Patents

サンプルにおける検体の存在および/または濃度を決定する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】サンプルにおける検体の存在および/または濃度を決定する方法の提供。
【解決手段】検体レベルをモニタリングするための組成物、方法、およびシステムが本明細書において提供される。本開示は、臨床設定における生物学的流体において、検体(例えば、シトレート、カルシウム、ホスフェート、およびマグネシウム)のリアルタイムなモニタリングのための方法およびシステムを提供する。一実施形態において、本開示は、検体を提供する工程;検体レセプター、およびインジケーターを提供する工程であって、ここで上記検体レセプターおよび上記インジケーターの少なくとも一部分は、レセプター/インジケーター複合体を形成する、工程;上記レセプター/インジケーター複合体を上記検体と接触させる工程;および検出可能なシグナルを生み出すために上記検体が上記レセプター/インジケーター複合体と相互作用するのを可能にする工程を含む方法を提供する。
【選択図】なし

Description

関連出願への相互参照
本願は、2009年7月1日に出願された米国仮特許出願第61/222,285号に対する優先権を主張し、この米国仮特許出願第61/222,285号は、本明細書中で参考として援用される。
背景
持続的腎代替療法(CRRT)は、体外血液処置(EBT)の形態であって、これは急性腎不全(ARF)または末期腎臓病(ESRD)を有する患者のために集中治療室(ICU)で実施されており、これらの患者は、複数の共存症を伴いしばしば血行力学的に不安定である。CRRTの特定の形態、持続的静静脈血液濾過(CVVH)において、血液は血液濾過器を介してポンプで輸送され、尿毒症毒素を含んだ血漿限外濾過物は、1時間当たり1リットル〜10リットルの速度で捨てられる(溶質の対流除去)。等量の、生理学的電解質および塩基濃縮物を伴う滅菌晶質溶液(代替流体、CRRT流体)は、体積減少(volume depletion)および血行力学的崩壊を回避するために血液濾過器の前(前希釈)、または血液濾過器の後(後希釈)のいずれかで、同時に血液回路へと注入される。
理論的および生理学的観点から、1日当たり24時間連続して作動するとき、CVVHは、本来の腎臓の機能を複製するための全ての入手可能な腎代替療法(RRT)形式の中で、今日、最も忠実(closest)であり、腎不全で危篤状態の患者に好ましい処置形式である。それにもかかわらず、ICUにおけるRRTの90%が間欠的血液透析(IHD)、持続低効率透析(SLED)、または時には持続的静静脈血液濾過透析(CVVHDF)として実施される。RRTのこれら後者の方法の全てに共通しているのは、ほとんどの溶質の除去が、優勢に、血液濾過器の膜を介する血漿から透析流体への拡散のプロセスによることである。拡散は、より大きな溶質の除去においてあまり有効ではなく、また、対流よりもより予測できない小さい溶質の運動を提供し、従って、理論的見地から、CVVHはRRTの優れた方法である。
ICUにおけるCVVHの限定された使用についての最も重要な理由は、24時間処置における体外回路の凝固を防ぐために血液凝固阻止が必須であることである。全身の血液凝固阻止は、危篤状態の患者における容認できない率の主要な出血性合併症を有し、安全になされ得ない。同様に、体外血液処置(例えば、プラズマフェレーシス、特殊なカラム上での血漿吸収、血液銀行手順、脂質アフェレーシスシステム、血漿吸収ベースの内毒素除去、生きた尿細管細胞を含むバイオ人工腎臓装置での処置、または肝臓代替療法回路での処置が挙げられる)はまた、強力な血液凝固阻止を必要とする。
限局性シトレート血液凝固阻止(RCA:regional citrate anticoagulation)は、あらゆる全身の出血傾向を誘導することなく、回路凝固の臨床問題に対する可能な解決策として現れた。三価のアニオンであるシトレートは、ヒト血漿において、代謝の中間体として存在する。このイオンは、血漿においてイオン化カルシウムとキレート化し、単一の負のCa−シトレート複合体をもたらし、遊離イオン化カルシウムレベルを減少させる。凝固カスケードは、最適な機能のために遊離イオン化カルシウムを必要とするので、体外血液回路(EBC)における血液凝固は、EBCの動脈(入り)四肢へのシトレートの注入によって完全に防がれ得る。血液が体外処理ユニットを通過するとき、血液凝固阻止効果は、EBCの静脈(戻り)四肢への遊離イオン化カルシウムの局所注入によって完全に逆転され得る。従って、理論的に、限局性シトレート血液凝固阻止は、全身の(患者内)出血傾向のない、非常に強力および完全に可逆性の両方であり得る。
限局性シトレート血液凝固阻止は、20年より長い間実施されている。しかしながら、限外濾過物または血液の重大な組成の分析に対する単純かつ有効なプロトロルの不足に起因して、RCAの実施に関連する多くの複雑な状況が起こる。以下の複雑な状況は、よく記録されている:高ナトリウム血症;代謝性アルカローシス;代謝性アシドーシス、低カルシウム血症1(患者からの正味のカルシウム欠損に起因する)、低カルシウム血症2(全身のシトレートの蓄積に起因する)、跳ね返りの低カルシウム血症(CVVHが停止した後のシトレートからのカルシウムの放出に起因する)、低リン酸血症、血液凝固阻止のレベルの変動、看護および医師の誤り、イオン化低マグネシウム血症、フィルター性能の衰え、微量金属減少(trace metal depletion)など。これらの全ては、検体、具体的にはシトレートおよびイオン化カルシウムのリアルタイムのモニタリングが可能となる場合に解決され得る。
さらに、上のCVVHシステムを用いて、患者の全身の血漿シトレートレベルは、シトレートの身体での代謝に依存して0mmol/L〜3mmol/Lの範囲で変動し得る。3mMまでの全身のシトレートの蓄積は、血漿総カルシウムレベルを比例的に増加させるためにカルシウム注入が増加されない限り、重大な全身性イオン化低カルシウム血症をもたらし得るので、全身のシトレートレベルおよび総カルシウムレベルを監視することが必要である。
シトレートおよびイオン化カルシウムの研究所での試験は、通常の臨床ICU設定において利用可能ではない。シトレートレベルおよびカルシウムレベルにおける目立つ変化はまた、CVVHの間の2〜3時間に発達し得、6時間毎の普通の血漿化学モニタリングでは、彼らが有害な臨床続発症を有する前にこのような問題を時宜を得た手法で検出できないほど速い。流出流体は、患者の血漿溶質組成についての豊富な情報を含む。この流体は、少量のアルブミン、小さいペプチド、および存在するサイトカインをも有する澄んだ晶質である。上記流出流体の透明度および最小限の粘度は、光学センサアレイおよび/または化学センサアレイのための理想の環境に備える。しかしながら、現行の臨床実行において、一切のさらなる分析なく、それは捨てられる。
さらに、低マグネシウム血症として公知の、血中の低減されたMg(II)濃度は、虚弱、筋肉の痙攣、心不整脈、振せんを伴う神経系の被刺激性の増加、アテトーシス、痙動、眼振、および伸筋足底反射をもたらし得る。さらに、錯乱、失見当、幻覚、鬱病、癲癇発作、高血圧、頻脈、およびテタニーがあり得る。しかしながら、マグネシウムの便利で信頼できる臨床モニタリングプロトコルの不足に起因して、総血漿カルシウムと総血漿マグネシウムとの間の2.5:1のモル濃度比は、市販されている高Mg代替流体を用いることによって、通常維持される。ホスフェート欠損もまた、非常に大きいものであり得、CRRT代替流体にホスフェートが添加されない限り、CVVHの間の毎日の高クリアランスゴール(clearance goal)を伴う重度の低リン酸血症をすぐにもたらし得る。
臨床設定において検体(例えば、シトレート、イオン化カルシウム、マグネシウム、ホスフェートなど)のレベルを測定するための有効なリアルタイムな方法を開発する必要性がある。このような方法は、現在捨てられている流出流体を利用し得る。
本開示は、一般に、サンプルにおける検体の存在および/または濃度レベルを決定する方法に関する。より詳しくは、いくつかの実施形態において、本開示は、サンプルにおけるシトレート、イオン化カルシウム、マグネシウム、および/またはホスフェートの濃度を測定する方法に関する。
1つの実施形態において、本開示は、検体を提供する工程;検体レセプター、およびインジケーターを提供する工程であって、ここで上記検体レセプターおよび上記インジケーターの少なくとも一部分は、レセプター/インジケーター複合体を形成する、工程;上記レセプター/インジケーター複合体を上記検体と接触させる工程;および検出可能なシグナルを生み出すために上記検体が上記レセプター/インジケーター複合体と相互作用するのを可能にする工程を含む方法を提供する。
別の実施形態において、本開示は、検体レセプターおよびインジケーターを含むレセプター/インジケーター複合体;および検体を含み、ここで上記検体は、上記レセプター/インジケーター複合体におけるインジケーターと置き換わり;そしてここで、上記置き換わったインジケーターは、検出可能なシグナルを生み出すシステムを提供する。
本開示の特徴および利点は、以下の実施形態の記載の解釈に際して当業者に容易に明らかである。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
方法であって、該方法は、
検体を提供する工程;
検体レセプター、およびインジケーターを提供する工程であって、ここで該検体レセプターおよび該インジケーターの少なくとも一部分は、レセプター/インジケーター複合体を形成する、工程;
該レセプター/インジケーター複合体を該検体と接触させる工程;および
検出可能なシグナルを生み出すために該検体が該レセプター/インジケーター複合体と相互作用するのを可能にする工程
を含む、方法。
(項目2)
前記検体が生物学的流体に存在する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記生物学的流体に存在する前記検体の濃度レベルをモニタリングする工程をさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記生物学的流体が、血液濾過もしくは透析を有する血液濾過器もしくは透析装置、またはこれら2つのプロセスの任意の組み合わせにおいて生み出される、体外血液回路流出流体を含む、項目2に記載の方法。
(項目5)
フローインジェクション分析機器を用いることによって前記検出可能なシグナルを検出する工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記検出可能なシグナルを較正曲線と相関させて、前記検体の濃度を決定する工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記検体が、イオン化カルシウム、シトレート、ホスフェート、およびマグネシウムからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記検体が前記レセプター/インジケーター複合体と相互作用することを可能にする工程が、該検体が該レセプター/インジケーター複合体におけるインジケーターの少なくとも一部分と置き換わって、レセプター/検体複合体を形成することを可能にする工程を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記検体が前記レセプター/インジケーター複合体と相互作用することを可能にする工程が、該検体が該レセプター/インジケーター複合体に結合することを可能にする工程を含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記インジケーターが、発色団、蛍光物質、アリザリンコンプレクソン、5−カルボキシフルオレセイン、ピロカテコールバイオレット、およびキシレノールオレンジからなる群から選択される少なくとも1つのインジケーターを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記検体がホスフェートおよびシトレートを含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
ホスフェートおよびシトレートの濃度を推定するための数学的処理を用いる工程をさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記数学的処理が、人工ニューラルネットワーク(ANN)を含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
システムであって、該システムは、
検体レセプターおよびインジケーターを含むレセプター/インジケーター複合体;および検体を含み、ここで該検体は、該レセプター/インジケーター複合体において該インジケーターを置き換え;そしてここで、置き換えられたインジケーターが検出可能なシグナルを生み出す、システム。
(項目15)
前記検体が生物学的流体に存在する、項目14に記載のシステム。
(項目16)
前記検体が生物学的流体に存在し、そして該生物学的流体が、血液濾過もしくは透析を有する血液濾過器もしくは透析装置、またはこれら2つのプロセスの任意の組み合わせにおいて生み出される、体外血液回路流出流体である、項目14に記載のシステム。
(項目17)
フローインジェクション分析機器をさらに含む、項目14に記載のシステム。
(項目18)
前記検体が、イオン化カルシウム、シトレート、ホスフェート、およびマグネシウムからなる群から選択される、項目14に記載のシステム。
本開示のより完全な理解は、付随する図と組み合わせて得られる以下の記載を参照することによって得られ得る。
図1は、1つの実施形態に従う、インジケーター置き換えアッセイを介した検体感知の機構を示すイメージである。 図2は、1つの実施形態に従う、レセプター/インジケーター複合体(Fura−2)に結合する検体(Ca2+)を介した検体感知の機構を示すイメージである。 図3Aは、1つの実施形態に従う、代表的なシトレートレセプターの構造を示す。 図3Bは、1つの実施形態に従う、代表的なシトレートレセプターの構造を示す。 図4は、1つの実施形態に従う、数個の代表的なCa2+レセプターを示す。 図5は、1つの実施形態に従う、数個の代表的なMg2+レセプターを示す。 図6は、1つの実施形態に従う、公知の化合物からのMg2+レセプター2および3(図5)の合成スキームを示す。 図7は、1つの実施形態に従う、代表的なMg2+レセプターを示す。 図8は、1つの実施形態に従う、H−bpmpに基づく代表的なホスフェートレセプターを示す。 図9は、1つの実施形態に従う、H−bpmpを用いてインジケーター置き換えアッセイを介した検体感知の機構を示すイメージである。 図10は、1つの実施形態に従う、ホスフェート検体の添加の際の、H−bpmpレセプターおよびピロカテコールバイオレットインジケーターを含む溶液のUV−Visスペクトルの変化を示す。 図11は、1つの実施形態に従う、代表的なインジケーターの構造を示す。 図12Aおよび12Bは、1つの実施形態に従う、シトレート(11A)およびCa2+(11B)についてのサンプル較正曲線を示す。 図13は、1つの実施形態に従う、フローインジェクション分析(「FIA」)機器の作動原理を示す。 図14は、1つの実施形態に従うFIA機器の概要描写である。 図15は、アリザリンコンプレクソンおよびシトレートとのレセプター2の提案される結合方式を示す。 図16Aは、1つの実施形態に従う、シトレートの添加の際のレセプター2およびアリザリンコンプレクソンの両方を含む溶液のUV−Visスペクトルの変化を示す。矢印は、シトレート濃度が増加する際のスペクトル変化を指し示す。図16Bは、1つの実施形態に従う、540nmでの吸光度をモニタリングすることによるシトレート濃度の外挿較正曲線を示す。 図17Aは、1つの実施形態に従う、Ca2+の添加の際のFura−2を含む溶液のUV−Visスペクトルの変化を示す。矢印は、Ca2+濃度が増加する際のスペクトル変化を指し示す。図17Bは、1つの実施形態に従う、373nmでの溶液の吸光度をモニタリングすることによるCa2+濃度の外挿較正曲線を示す。
本開示は、種々の改変および代替の形態の影響を受けやすいが、特定の実施例の実施形態は、図に示されて、本明細書中でより詳細に記載される。しかしながら、特定の実施例の実施形態の記載が、本開示を、開示される特定の形態に限定することを意図しないことが理解されるべきであるが、しかしこれに反して、本開示は、添付の特許請求の範囲により定義されるような全ての改変物および等価物を含む。
本開示は、一般に、サンプルにおける検体の存在および/または濃度レベルを決定する方法に関する。より詳しくは、いくつかの実施形態において、本開示は、サンプルにおけるシトレート、イオン化カルシウム、マグネシウム、および/またはホスフェートの存在および/または濃度レベルを決定する方法に関する。
1つの実施形態において、本開示は、検体を提供する工程;検体レセプターおよびインジケーターを提供する工程であって、ここで上記検体レセプターおよび上記インジケーターの少なくとも一部分は、レセプター/インジケーター複合体を形成する、工程;上記レセプター/インジケーター複合体を上記検体と接触させる工程;および検出可能なシグナルを生み出すために上記検体が上記レセプター/インジケーター複合体と相互作用するのを可能にする工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記検体は、上記レセプター/インジケーター複合体におけるインジケーターの少なくとも一部分と置き換わって、レセプター/検体複合体を形成する。他の実施形態において、上記検体は、レセプター/インジケーター複合体に結合し得る。
本開示は、リアルタイムで、または一定の間隔(例えば、1時間ごと)で検体の濃度レベル(例えば、シトレート、カルシウム、マグネシウム、およびホスフェート)のモニタリングを可能にする方法を提供することにより、CVVHまたは同様の手順に関連する臨床問題の多くを解決し得る方法を提供する。最大限の安全性のために、特定の実施形態において、上記方法は、モニタリング人員に処置設定を見直し、調整するように促して、CVVHまたは同様の手順の安全な継続を確実にするための、全身の検体レベルにおけるあらゆる変化の警告を提供し得る。さらに、いくつかの実施形態において、本開示の方法は、カルシウム+マグネシウムの投薬を含む、投与量の微調整についての情報を提供し得、また、シトレート代謝速度のモニタリングを介して肝臓の代謝機能を監視し得る。
シトレートと遊離イオン化カルシウムとの間の相互作用に起因して、本開示の目標は、サンプル(例えば、体液)における検体(例えば、シトレートおよび/またはイオン化カルシウム(例えば、遊離および/または総イオン化カルシウム))の濃度レベルを測定するための方法を提供することにより達成され得る。1つの実施形態において、レセプターおよびインジケーターは、CVVHの間にフィルター流出流体ラインにおいて提供され得る。このことは、患者の全身の血液における検体レベルの間接的な測定を可能にする。
1つの実施形態において、本開示の方法は、検体(例えば、シトレートまたは異なる検体)の定量化のためにインジケーター置き換えアッセイ(IDA:indicator displacement assay)を利用し得る。図1は、本開示の1つの実施形態に従う、IDAを示すイメージを含む。図1に示されるように、IDAは、検体レセプターがインジケーター(例えば、発色団または蛍光物質)と弱く会合した複合体を形成するのを最初に可能にし、平衡に達するプロセスである。この平衡は、インジケーターよりもレセプターに対してより良好な構造的相補性を有する検体が系に導入されるときに影響される。上記レセプター/インジケーター複合体は、減り始め、レセプター/検体複合体が形成するのを可能にする。同時に、上記レセプターの空洞の中の上記インジケーターは放出される。上記インジケーターの化学的環境の変動に起因して、その出力シグナル、通常は吸収スペクトルまたは発光スペクトル、は改変される。この変化は、関連する平衡を記載する必要なパラメーターが公知であるという条件で検体濃度の分析において便利に使用され得る。
別の実施形態において、本開示は、検体がレセプター/インジケーター複合体に結合するのを可能にすることによる検体の検出に備える。検体結合の後、検出可能なシグナルが生み出される。1つの例は図2に示され、それは、レセプター/インジケーター複合体Fura−2に対するイオン化カルシウムの結合を示すイメージを含む。
本開示の方法の成功は、少なくとも部分的に、検体に結合するレセプターまたはレセプター/インジケーター複合体の親和性に依存する。多様な異なるレセプターが使用され得る。検体がシトレートである特定の実施形態において、レセプターは、2,4,6−トリエチルベンゼンコアに基づく。しかしながら、レセプターは、官能基を集める任意の骨格を使用し得る。種々の官能基(例えば、グアニジニウムおよびフェニルボロン酸が挙げられるが、これらに限定されない)は、1位、3位、および5位において置換される。グアニジニウムは、その形状が、シトレートに存在するカルボキシレートの結合について伝導性があるので有利な官能基であり、それは幅広いpH範囲にわたってプロトン化されたままとなる。フェニルボロン酸(phenylboronic acid)は、共有結合によってシトレートのα−ヒドロキシカルボキシレート部分と強固なボロン酸エステル(boronate ester)を形成し得、シトレート結合についての別の有利な官能基になる。図3Aおよび3Bは、数個の代表的なシトレートレセプターを例示する。これらのシトレートレセプターのそれぞれは、当業者によって容易に合成され得る。最初の試みは、レセプター2がシトレートについての好ましいレセプターであり得ることを示している。シトレートレセプターとグルコース、フルクトース、またはラクテートとの間の相互作用は、無視されるに足るほど微々たるものである。他の化合物またはイオン(例えば、バイカーボネート、塩化物、ホスフェート、およびβ−ヒドロキシブチレート)はまた、干渉をもたらさないことが予想される。
検体がカルシウムである実施形態において、多様なCa2+レセプター(そのいくつかのみが図4に示される)が、使用され得、異なる販売業者から現在市販されている。それらの多くは、共通のEDTA模倣部分を有し、それは、溶液においてCa2+と安定な複合体を形成する。このような部分が発色団または蛍光物質に付加されるとき、改変された分光学的特性は錯化後に生じる。1つの実施形態において、カルシウムレセプターは、Fura−2であり得、それは、Invitrogenから市販されている。Ca2+とのFura−2の高い錯化定数のおかげで、Fura−2は、競合するアニオン(例えば、シトレート3−、PO 3−など)との錯体からCa2+を引き抜き得た。さらに、Fura−2は、他のイオン(例えば、Mg2+、Na、Kなど)にまさってCa2+に対して高い選択性を示す。Fura−2の吸収バンドは、273nmに集まる。このことは、透析流体における残留のタンパク質によってもたらされる干渉が本質的に存在することなく、Ca2+の検出が行われることを可能にしており、上記タンパク質は一般に330nmより下の吸収を生み出す。
検体がマグネシウムである実施形態において、多様なMg2+レセプターが、使用され得る。当業者に認識されるように、最新の市販されているMg2+レセプターは、Ca2+に対してより高い親和性を示す。従って、適切なMg2+レセプターを選ぶとき、Ca2+にまさってMg2+に親和性を示すレセプターが選択され得る。
1つの実施形態において、適切なMg2+レセプターは、図5に示されるレセプターを含み得る。レセプター2および3(図5から)は、図6に示すような対応するアクリジンまたはキサンテン前駆体から合成され得る。4,5−ジフルオロアクリジン(4)の2つのフッ素原子は、適切な求核剤で処理されるときに、SNAR機構によって置き換えられ得る。中性のホスフィンがC−9において共役付加する間に負に荷電した亜リン酸種がフッ素原子を置き換えることが報告された。9,9−ジメチルキサンテン(6)の二回のオルト−リチウム化は、ペンタン中のn−BuLiおよびTMEDAでの10分間の還流によって達成される。クロロジエチルホスフェートでのクエンチは、エチルホスホネート中間体をもたらす。5および7は、濃HCl溶液中での還流によって容易に加水分解され得て、それぞれ、所望されるレセプター2および3を生じ得る。さらに、レセプター2または3(図5から)の立体的および電子的特性は、図7に示されるようにホスホネート基のアルキル化によってさらに微調整され得る。
本開示はまた、ホスフェートの試験を可能にする。種々の程度の選択性を有する多くのホスフェートレセプターは、当該分野において公知である。1つの実施形態において、適切なホスフェートレセプターは、図8に示されるレセプターを含み得る。H−bpmpは、一般的なアニオン(例えば、塩化物イオン、重炭酸イオン、硝酸イオンなど)にまさって選択性を示すことが報告されているので、(Han,M.S.et.al.Angew.Chem.,Int.Ed.2002,41,3809?3811)において報告され
るように好ましい実施形態はH−bpmpを使用する。上記レセプターは、文献手順に従うことにより合成され得る。1つの実施形態に従う感知機構は、図9に示される。ピロカテコールバイオレット(PV)は、ホスフェートまたは他の競合するアニオンの非存在下で2つのZn2+金属中心に配位し得る。ホスフェート溶液の添加の際に、PVは置き換えられ、そのプロトン化状態に対する変化は、溶液の色を淡いネイビーから茶色っぽい黄色へと変化させる。
図10に示されるようにホスフェートは著しいスペクトル変化をもたらすが、最初の結果は、シトレートがH−bpmpレセプターに対してより高い親和性を示すという事実に起因して、シトレートがホスフェート感知に対して重度の干渉をもたらし得ることを示している。2つの干渉する改変体が決定されるべきであるこのようなシステムにおいて、パターン認識の使用を導入することが必要であった。ホスフェート感知が実施されるとき、読出しシグナルに対する変化は、溶液中のホスフェートの濃度だけではなく、シトレートの濃度によっても決定される。ホスフェートの影響は最小限であるが、シトレート感知が実施されるときにも同じことが当てはまる。生データの人工ニューラルネットワーク(ANN)処理のような数学的処理は、ホスフェートおよびシトレートの両方の実際の濃度を推定するのを助け得る。1つの実施形態において、UV−Vis測定の処理は、Statistica Artificial Neural Networkソフトウェアを用いて成し遂げられ得る。
100%水性バッファー溶液の代わりに75%MeOH:25%水性バッファー(v/v)を含む溶媒系の使用により、シトレートにまさってホスフェートに対する選択性を改善することが見出される。このことは、ホスフェート測定において、より高い正確性をもたらし得る。さらに、ホスフェート感知集合(ensemble)溶液の安定性はまた、このような溶媒系において、劇的に改善される。
本開示における使用に適したインジケーターは、レセプター/インジケーター複合体から検体に置き換えられるときに検出可能なシグナルを生み出すことが可能なインジケーター、または検体が上記レセプター/インジケーター複合体に結合されているときに検出可能なシグナルを生み出すことが可能なインジケーターを含む。適切なインジケーターの例としては、発色団、蛍光物質、アリザリンコンプレクソン、5−カルボキシフルオレセイン、ピロカテコールバイオレット、およびキシレノールオレンジが挙げられるが、これらに限定されない。図11は、カテコール部分または複数のアニオン残基のいずれかで特徴づけされるいくつかの代表的なインジケーターを図解する。1つの実施形態において、アリザリンコンプレクソンは、シトレート濃度の分析のためのインジケーターとして使用される。アリザリンコンプレクソンは、可逆性のボロン酸/ジオール相互作用に由来するレセプター2との比較的高い結合親和性を示す。レセプターとインジケーターとの間のこの相互作用は、レセプター/インジケーター複合体が、大部分の形を成すのを可能にするほど強く、従って大きなスペクトル変化が獲得される。このことは、シトレート濃縮物測定作業を実施するときに誤りを最小限にすることにおいて特に都合がよい。しかしながら、会合の強さは、依然として、インジケーターがシトレートによって、本質的な完了まで置き換えられるのを可能にするほど穏やかである。較正曲線は、シトレートまたは別の検体の公知の濃度で光の特定の波長の吸光度を曲線で表示することにより作り出され得る。図12Aおよび12Bは、シトレートおよびカルシウムについての代表的な較正曲線を示す。後に、未知のサンプルの濃度は、単純にUV−Vis吸収を調べること、および確立された較正曲線と比較することによって決定され得る。しかしながら、温度は平衡にかなり影響するので、温度を説明することは重要である。分析の間の室温の変化は、偏った結果をもたらし得る。
検出可能なシグナルが生み出された後、いくつかの実施形態において、このシグナルは、多様な方法を介して検出され得る。1つの実施形態において、上記シグナルは、分光計の使用を介して検出され得る。別の実施形態において、上記シグナルは、フローインジェクション分析(FIA)機器の使用を介して検出され得る。例えば、Ocean Optics,Inc.からの連続インジェクション分析(SIA)システムが使用され得る。いくつかの実施形態において、一般のUV/vis分光計が非常に空間的不利なので、検出のこの方法は、特に都合がよい。SIAシステムは、5’’×6’’×6’’の寸法を有し、重さは、約8lbsである。それはまた、パーソナルコンピューターの補助での体積の正確な制御で液体移動および混合を自動化し得る。組み込みのコンパクトUV−Vis光度計は、次に吸収スペクトルを捕捉し得、取得されたデータは同時に分析され得る。このSIA機器の作動原理は、図13に示される。感知溶液および透析流体のアリコートは、光学シグナル測定のための内臓のフローセルへとさらに押し込まれる前に混合コイルへと吸引される。このSIA装置は、間欠的測定が自動様式でなされることを可能にする。特定の適用についてのプログラムに依存して、度数(frequency)は1分ほどと同じくらい速いものであり得る。
別の実施形態において、図14に示されるFIAの作動原理に基づく機器は、連続のリアルタイムな様式で測定するために使用され得る。1つの実施形態において、試験される透析流体は、定常の速さでフローインジェクション分析(FIA)機器に通じるラインへとポンプで輸送される。特定の検体(例えば、Ca2+、シトレート、マグネシウム、ホスフェートなど)についての感知集合ストック溶液のアリコートは、ラインへとポンプで輸送されて、透析流体と混合され、種々の検出器(例えば、UV−Vis分光光度計、CCDカメラなど)によって収集される光学シグナルを誘導する。光学シグナルが一般に好ましいが、特定の状況において都合がよい場合に他の方法も考慮され得、その方法としては、近赤外線分光法、ラマン分光法、電位差滴定などが挙げられるがこれらに限定されない。脱ガスモジュールは、混合の間にガスの泡が生み出される場合に使用されるものであり得た。
本開示のよりよい理解を容易にするために、いくつかの実施例の特定の局面の以下の実施例が与えられる。以下の実施例が、本開示の範囲全体を限定または定義すると解釈されることはない。
実施例1
シトレート、Ca2+、Mg2+、およびCOを除く、代表的な透析流体の全ての不可欠な構成要素を含む水溶液を調製する。上のストック溶液から7.40のpHを有する100mMのHEPESバッファーを調製する。シトレート感知集合体を以下のように調製する:1)75mLのMeOHと25mLのHEPESバッファーを混合し、2)特定の量のシトレートレセプター2およびアリザリンコンプレクソンを溶解して、それらの濃度を、それぞれ100μMおよび250μMにする。
感知集合体へのシトレートの添加の際に、アリザリンコンプレクソンは、レセプター2の空洞から置き換えられ、レセプター2とシトレートとの間のより大きな親和定数を生む。ボロン酸/ジオール相互作用の他に、荷電対は、シトレートとレセプター2との間の錯化についての追加の推進力を提供する(図15)。
図16Aは、レセプターの空洞内およびレセプターの空洞外にあるときのアリザリンコンプレクソンの吸収スペクトルの変化を実証する。シトレート濃度が増加するにつれて、337nmおよび540nmでのアリザリンコンプレクソンの吸収最大量は増加し、他方、447nmでの最大量は減少する。較正曲線は、540nmでの溶液吸光度に対して、対応するシトレート濃度を曲線で表示することにより作られる(図16B)。
実施例2
上で言及したストック溶液を用いて、25μMでのFura−2の溶液を調製する。Ca2+を含むサンプルのアリコートを添加し、UV−Visスペクトルにおける変化を観測する。Ca2+濃度が増加するにつれて、373nmでの吸収最大量は減少し、他方330nmでの最大量は増加する(図17A)。較正曲線は、373nmでの溶液吸光度に対して、対応するCa2+濃度を曲線で表示することにより作られる(図17B)。未知のサンプルのCa2+濃度は、Fura−2溶液へのその添加、373nmでの吸光度を調べること、および較正曲線を比較することにより取得され得る。Fura−2は、1)透析物流体に存在する別の普及している二価カチオンであるMg2+が干渉せず、2)Ca2+に対して比較的弱い結合親和性を有するシトレートがCa2+結合においてFura−2を置き換えないほど、Ca2+との高い結合定数を示す。
実施例3
ヘンリーフォード病院のICUユニットから取得された8人の患者の透析物流体サンプルを、図12Aおよび12Bに示される較正曲線を用いて[Ca2+]および[シトレート]について試験した。透析物流体におけるCa2+およびシトレートの濃度を、結果として生じる溶液の吸収スペクトルに基づいて計算した(表1)。
従って、本開示は、言及される目的および利点ならびに本明細書中で固有であるものを獲得するようによく適合される。数多くの変化が当業者によってなされ得るが、このような変化は、添付の特許請求の範囲によって部分的に説明されるように、本開示の趣旨の中に包含される。

Claims (1)

  1. 本願明細書に記載された発明。
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