JP2014141633A - 脂肪族ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを含むスラリーを安定的に反応槽へ供給することにより、脂肪族ポリエステルを効率的かつ安定的に製造する方法を提供する。
【解決手段】脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むスラリーの調製工程、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経てポリエステルを得る脂肪族ポリエステルの製造方法において、スラリー調製工程の温度(T1)とスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)の関係が、T1<T2を満たす脂肪族ポリエステルの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪族ポリエステルの製造方法に関し、さらに詳しくは、効率的かつ安定的な脂肪族ポリエステルの製造方法に関する。
近年環境問題が重視されてきており、プラスチックの原料となる化石燃料原料の枯渇問題、大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境負荷の問題に対する対策が必要となっている。
こうした背景のもと、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールからなる脂肪族ポリエステルは、原料の脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸は植物由来のグルコースから発酵法を用いて製造でき、また脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールなども植物由来原料から製造できるので、原料供給が化石燃料原料の枯渇とは無関係になるとともに、植物の育成により二酸化炭素が吸収されるため二酸化炭素排出削減に大きく貢献することができ、又、生分解性プラスチックとしても期待されている。
脂肪族ポリエステルは、通常、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、エステル化反応と溶融重縮合反応を行って得られる。これらの反応は、通常、回分法、連続法、或いは回分法と連続法とを組み合わせた方法で行われる。これらの中で工業的に大量生産する場合は、生産性、品質安定性、経済性などの面から連続法が有利であり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど芳香族ポリエステルにおいても大量生産されているものでは連続法によるものが圧倒的に多い。
脂肪族ポリエステルを連続法で製造する場合、通常エステル化反応原料として、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるスラリーを用い、これを反応工程に連続的に供給してエステル化反応を進める。このときスラリーを安定して反応工程に供給することが重要であるが、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるスラリーは脂肪族ジカルボン酸が沈降しやすいだけでなく、スラリー槽からエステル化工程に供給するライン中で脂肪族ジオール中に溶解していた脂肪族ジカルボン酸が析出して閉塞現象を引き起こすなど、不安定であることが多いという問題がある。
例えば、特許文献1には、ジカルボン酸とグリコールとからなるスラリーを調製する際のスラリーの温度を、設定値の±4℃以内に制御してエステル化反応槽に供給するポリエステルの製造方法について、また特許文献2には、粒度分布の幅と平均粒径の比を制御した芳香族ジカルボン酸をジオール中に懸濁分散させてスラリーを形成させる方法について、さらに特許文献3には、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるスラリーを調製する際のスラリー調製工程中のスラリー温度とスラリー中の水分量を制御してエステル化反応槽に供給する脂肪族ポリエステルの製造方法について記載されている。しかしながら、スラリー調製槽の温度とスラリー調製槽からエステル化反応槽間のスラリー移送ラインの温度の関係についての記載はない。
特開2007−009145号公報 特開平9−95466号公報 特開2009−256643号公報
本発明は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを含むスラリーを安定的に反応槽へ供給することにより、脂肪族ポリエステルを効率的かつ安定的に製造する方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく検討を行った結果、ポリエステル製造工程におけるスラリー調製工程の温度とスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度とを特定の関係を満たすように調整することにより、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを含むスラリーを安定的に反応槽へ供給することができ、これにより脂肪族ポリエステルの効率的かつ安定的な製造が可能となることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち本発明の要旨は以下の[1]〜[8]のとおりである。
[1]脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むスラリーの調製工程、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経てポリエステルを得る脂肪族ポリエステルの製造方法において、スラリー調製工程の温度(T1)とスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)の関係が下記(1)式を満たすことを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
T1<T2・・・(1)
[2]スラリー調製工程の温度(T1)が脂肪族ジオール成分の凝固点以上60℃以下であることを特徴とする[1]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[3]スラリー移送ラインの温度(T2)が脂肪族ジオール成分の凝固点を超え230℃以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[4]スラリー調製工程におけるスラリー滞留時間が0.1時間以上48時間以下であることを特徴とする[1]乃至[3]の何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[5]スラリー中に含まれる水分量が0.01質量%以上10質量%以下であることを特徴とする[1]乃至[4]の何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[6]脂肪族ジオールの主成分が1,4-ブタンジオールであり、脂肪族ジカルボン酸
の主成分がコハク酸であることを特徴とする[1]乃至[5]の何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
[7] 脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むスラリーを調製するスラリー調製槽、該スラリーをエステル化するエステル化反応槽、及びエステル化反応物を重縮合する重縮合反応槽を少なくとも有する脂肪族ポリエステル製造装置であって、該スラリー調製槽からスラリーを抜き出すスラリー抜き出しライン、該スラリー抜き出しラインから三方弁により該スラリー調製槽にスラリーが循環するスラリー循環ライン、及び該スラリー抜き出しラインから三方弁により該エステル化反応槽へスラリーが供給されるスラリー供給ラインを有し、該三方弁に対し少なくとも、該スラリー循環ラインが該スラリー調製槽に向かって下方向に傾斜されているか、または該スラリー供給ラインが該エステル化反応槽に向かって下方向に傾斜されている脂肪族ポリエステル製造装置。
[8] 脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むスラリーを調製するスラリー調製槽
、調製したスラリーを貯蔵するスラリー貯槽、該貯蔵したスラリーをエステル化するエステル化反応槽、及びエステル化反応物を重縮合する重縮合反応槽を少なくとも有する脂肪族ポリエステル製造装置であって、該スラリー貯槽からスラリーを抜き出すスラリー抜き
出しライン、該スラリー抜き出しラインから三方弁により該スラリー貯槽にスラリーが循環するスラリー循環ライン、及び該スラリー抜き出しラインから三方弁により該エステル化反応槽へスラリーが供給されるスラリー移送ラインを有し、該三方弁に対し少なくとも、該スラリー循環ラインが該スラリー貯槽に向かって下方向に傾斜されているか、または該スラリー移送ラインが該エステル化反応槽に向かって下方向に傾斜されている脂肪族ポリエステル製造装置。
本発明により、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを含むスラリーを安定的に反応槽へ供給することができ、これにより脂肪族ポリエステルを効率的かつ安定的に製造することができる。
図1は、本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法におけるスラリー調製工程の一実施形態を示す概略図である。 図2は、本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法におけるエステル化反応工程の一実施形態を示す概略図である。 図3は、本発明に係る脂肪族ポリエステルの製造方法における溶融重縮合反応工程の一実施形態を示す概略図である。
以下に、本発明の構成要件等について詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
[脂肪族ポリエステルの製造方法]
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むスラリーの調製工程、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経てポリエステルを得る脂肪族ポリエステルの製造方法において、スラリー調製工程の温度(T1)とスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)の関係が次式(1):
T1<T2・・・(1)
を満たすことに特徴を有するものである。
本発明の方法において、上記した各工程は、本発明の効果を損なわず脂肪族ポリエステルを製造できれば、連続した工程ではなくてもよいが、好ましくは、前の工程に異なる工程をはさむことなく続けて次の工程を行なう。以下これを、本明細書では連続製造方法ということがある。
脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールは、それぞれ主成分であることが好ましい。主成分とは、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に由来する単位の85モル%以上が脂肪族ジカルボン酸に由来する単位となる量であること、ポリエステルを構成する全ジオール成分に由来する単位の85モル%以上が脂肪族ジオールに由来する単位となる量であることを意味する。
<脂肪族ジカルボン酸成分>
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法における、脂肪族ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものであれば、脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を含有していてもよいし、複数の脂肪族ジカルボン酸を混合して用いてもよい。このように、脂肪族ジカルボン酸を主成分とする組成物を、本発明では脂肪族ジカルボン酸成分ということがある。脂肪族ジカルボン酸成分が含有する脂肪族ジカルボン酸としては、通常、炭素数
が2以上40以下の鎖状あるいは脂環式の炭化水素基にカルボキシル基が2つ結合したものが用いられる。具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等が挙げられる。これらの中で、得られるポリエステルの物性の面から、分子内の全炭素数が4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、より具体的にはコハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、コハク酸、無水コハク酸がさらに好ましい。なお、これらは単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
コハク酸または無水コハク酸の使用量は、得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から、全脂肪族ジカルボン酸に対して50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びジフェニルジカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
また、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸等は、公知の技術を利用して植物由来原料から得られたものを使用することもできる。
<脂肪族ジオール成分>
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法における、脂肪族ジオールは、脂肪族ジオールを主成分とするものであれば、脂肪族ジオール以外のジオールを含有していてもよいし、複数の脂肪族ジオールを混合して用いてもよい。このように、脂肪族ジオールを主成分とする組成物を、本発明では脂肪族ジオール成分ということがある。脂肪族ジオール成分が含有する脂肪族ジオールとしては、通常、炭素数が2以上10以下の鎖状あるいは脂環式の炭化水素基に水酸基が2つ結合したものが用いられるが、より融点の高いポリマーが得られるという観点から、炭素数が偶数のジオールまたはそれらの混合物を主成分とすることが好ましい。ここで、炭素数が偶数のジオールまたはそれらの混合物を主成分とするとは、炭素数が偶数のジオールまたはそれらの混合物のモル比率が、全ジオールに対して50モル%以上であることをいう。
脂肪族ジオールとしてより具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中で得られるポリエステルの物性の面から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好ましい。なお、これらは単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
1,4−ブタンジオールの使用量は、得られる脂肪族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から、全脂肪族ジオールに対して50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましくい。
また、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等は、公知の技術を利用して植物由来原料から得られたものを使用することもできる。
<その他の共重合成分>
本発明において、ポリエステルのその他の構成成分となる共重合成分としては、例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸等のオキシカルボン酸及びこれらオキシカルボン酸のエステルやラクトン、オキシカルボン酸重合体等;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール;プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの無水物等の3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物等が挙げられる。
また、3官能以上のオキシカルボン酸、3官能以上のアルコール、3官能以上のカルボン酸、二重結合を有し共重合成分となった際に多官能基となる共重合成分等は、少量加えることにより高粘度のポリエステルを得やすくなる。これらの中で、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸や、二重結合を有するフマル酸が好ましく、中でも3官能以上のオキシカルボン酸が更に好ましく、リンゴ酸が特に好ましい。
3官能以上の多官能化合物の使用量は、全ジカルボン酸成分に対して、下限が好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.05モル%以上であり、上限が好ましくは5モル%以下、より好ましくは0.5モル%以下である。この範囲の上限超過ではゲル(未溶融物)が生成しやすく、下限未満では粘度上昇の効果が得にくい傾向がある。また、イソシアネート化合物やカーボネート等の鎖延長剤をさらに高分子量化させる目的等で含有させてもよい。
<脂肪族ポリエステルの製造>
以下に、本発明における脂肪族ポリエステルの製造方法として、脂肪族ポリエステルの連続製造方法を例にとり説明する。
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法は、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを連続する複数の反応槽において、スラリー調製工程、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経て連続的にポリエステルを得るにおいて、
スラリー調製工程の温度(T1)とスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)の関係が次式(1):
T1<T2・・・(1)
を満たすこと以外は従来公知のポリエステルの製造方法を採用できる。なお、本発明によりスラリーの性状が安定し、反応系へのスラリーの連続的な安定供給が可能であり、連続製造方法においてその効果を充分発揮する。
本発明において、スラリー調製工程とは主として脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオール、必要に応じて多官能化合物等を混合してスラリーを得るまでをいう。なお、本発明におけるスラリー調製工程は、スラリー貯槽(B)を有していても、有していなくてもよい。すなわち、スラリー調製工程とは、スラリー貯槽(B)を有する場合は、例として図1におけるスラリー調製槽(A)からスラリー移送ライン(9)の入り口までであり、スラリー貯槽(B)を有さない場合は、例として図1におけるスラリー調製槽(A)からスラリー供給ライン(6)の入り口までである。
上記のとおり、本発明の方法において、スラリー調製工程の温度(T1)とスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)の関係は、T1<T2を満たす、すなわちスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)は、スラリー調製工程の温度(T1)を常に超えるものである。なお、
本発明において、「スラリー調製工程の温度」および「スラリー移送ラインの温度」は、それぞれ、「スラリー調製工程のスラリー温度」および「スラリー移送ラインのスラリー温度」と同義である。
ここで、T1とT2の温度の差は、下限が通常0.1℃以上、好ましくは0.5℃以上、より好ましくは1℃以上であり、上限が通常210℃以下、好ましくは160℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは40℃以下、特に好ましくは20℃以下、最も好ましくは10℃以下である。温度差が下限未満では、脂肪族ジオール中に溶解していた脂肪族ジカルボン酸がスラリー移送ライン途中での放熱等より析出し、閉塞を引き起こしやすくなる傾向がある。また、上限超過では、スラリー移送ライン途中での脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の反応が進行して水が発生するため、ガス化した水蒸気のポンプへのかみこみにより汲み不良の原因となったり、酸性度が上昇して腐食原因となったりする傾向がある。
<スラリー調製工程>
スラリー調製工程中のスラリーの温度の制御は、温水や熱媒等流通可能なジャケット式の加熱器、電熱ヒーター等を用いて行うことができる。スラリー調製工程の温度(T1)、すなわちスラリー調製工程中のスラリー温度は、例えば、攪拌混合槽下部及びスラリー循環ライン、スラリー供給ライン等の配管に設けた温度センサで計測した温度をスラリー温度とする。
スラリー温度(T1)は、設定温度となるように、ジャケット式の場合、温水もしくは熱媒の流量を調整して温度制御を行うことができる。
スラリー温度(T1)は、下限が通常脂肪族ジオールの凝固点以上であり、上限が好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。スラリー温度が下限未満であると、脂肪族ジカルボン酸が凝固し、安定したスラリー供給ができなくなる。一方、スラリー温度が上限を超えると、スラリーの粘度が低下することによりスラリー粒子の沈降速度が大きくなり、槽内で固液の沈降分離が促進され、安定したスラリー供給が困難となる。また、エステル化反応が進行することによるスラリーモル比、粘性の経時変化により、安定したスラリー供給が困難となり、製品品質の振れも大きくなる傾向にある。
スラリー調製工程におけるスラリー滞留時間は、下限が通常0.1時間以上、好ましくは0.3時間以上、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1時間以上であり、また上限が通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下、さらに好ましくは4時間以下である。滞留時間が下限未満であるとスラリーが均一とならず、移送途中の配管で脂肪族ジカルボン酸等の固体が沈降し、閉塞を引き起こす場合がある。一方、滞留時間が上限を超えると脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の反応進行により発生した水が増加するため、エステル化反応工程へ持ち込まれる水分量が増加しエステル化反応槽内での飛散物が増え、スラリー供給口付近で固着が生じ、安定した供給を困難とするばかりでなく、飛散物や長期滞留物の槽壁面からの剥離、落下等により製品中の異物発生原因となる場合がある。
スラリー中の水分量は、下限が通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、上限が10質量%以下、好ましくは5%質量以下、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下、最も好ましくは1%質量以下である。スラリー中の水分量を下限未満に管理しようとすると、吸着法等の水分の除去設備が必要となり、経済的に不利となる。一方、スラリー中の水分量が上限を超えると、エステル化反応工程への持ち込み水分量が多くなり、エステル化反応槽内での飛散物が増え、スラリー供給口付近で固着が生じ、安定したスラリー供給を困難とするばかりでなく、飛散物や長期滞留物の層壁面からの剥離、落下等により製品中異物発生の
原因となる場合がある。
ここで、スラリー中の水分量は、原料ジカルボン酸及びジオールが持ち込む水分と、スラリー調製工程中のスラリー温度が高い、或いは滞留時間が長いことによるエステル化反応の進行に伴う副生水によるので、原料水分管理と、スラリー調製工程の温度と滞留時間で調整を行うことができる。スラリー温度が80℃以下程度でエステル化反応が進行するのは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのスラリーではほとんど見られず、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのスラリーにおいて特徴的である。
スラリー中の脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比は、下限が通常0.8以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0以上である。上限が通常2.0以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.3以下、最も好ましくは1.2以下である。下限より少ないと、スラリーの粘性が高くなり、安定したスラリー供給ができなくなる場合がある。一方、上限を超えると、スラリーの沈降速度が大きくなり、槽内で固液の沈降分離が促進され、安定したスラリー供給が困難となる場合がある。
脂肪族ジカルボン酸成分は、通常、固体(粒子)としてスラリー調製工程に供給される。スラリー調製工程に供給される脂肪族ジカルボン酸(粒子)の平均粒径D(50)は、下限が通常1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限が通常500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μ以下である。下限より小さいと、スラリーの粘性が著しく増大し、安定したスラリー供給ができなくなるだけでなく、取り扱い時の微粉の舞いや粉塵爆発の危険性があり、取り扱いに困難を伴う場合がある。上限超過ではスラリー粒子の沈降速度が大きくなり、槽内で固液の沈降分離が促進され、安定したスラリー供給が困難となる場合がある。
脂肪族ジカルボン酸(粒子)の累積体積百分率曲線の90%における粒径D(90)は、固体中に含まれている大粒径部分の割合を示す指標として用いることができ、平均粒径D(50)に対するD(90)の比が大きいと粒径分布が広く、平均粒径D(50)に対するD(90)の比が小さいと粒径分布が狭くなる傾向にある。脂肪族ジカルボン酸(粒子)の平均粒径D(50)ならびに累積体積百分率曲線の90%における粒径D(90)の比で表されるD(90)/D(50)は、上限が2.5以下、好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.8以下である。上限を超えると、スラリー粒子の沈降速度が大きくなり、槽内で固液の沈降分離が促進され、安定したスラリー供給が困難となる傾向がある。D(90)/D(50)の最小値は、理論上は1.0であるが下限は通常1.2以上である。
なお、本明細書では、それぞれの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置マスターサイザー2000(シスメックス株式会社製)を用いて乾式法により測定し、試料をサンプルトレイにおいた後、1サンプルにつき2秒間の測定を3回実施し、この平均値を平均粒径D(50)と定義し、また、平均粒径測定時に得られる粒子サイズ分布より、累積体積百分率曲線の90%における粒径、即ち小粒径サイズのほうから累積したときの全体積のうち90%に相当する粒径をD(90)と定義する。
また、スラリー調製工程がスラリー調製槽とスラリー貯槽からなる場合は、スラリー調製槽及びスラリー貯槽の両設備に対し、本発明の手法を適用することができる。
上記工程で調製されたスラリーは、移送ラインによりエステル化工程へ移送される。スラリー移送ライン中のスラリーの温度の制御は、温水や熱媒等流通可能なジャケット式の加熱器、電熱ヒーター等を用いて行うことができる。
スラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)、すなわちスラリー移送ライン中のスラリーの温度は、例えば、スラリー移送ラインの配管に設けた温度センサで計測した温度をスラリー温度とする。
スラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)は、下限が脂肪族ジオール成分の凝固点を超える温度、好ましくは21℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、上限が通常230℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは60℃以下、特に好ましくは50℃以下である。温度が下限未満では、脂肪族ジオール中に溶解していた脂肪族ジカルボン酸がスラリー移送ライン途中での放熱等より析出し、閉塞を引き起こしやすくなる傾向がある。また、上限超過では、スラリー移送ライン途中での脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の反応が進行して水が発生するため、ガス化した水蒸気のポンプへのかみこみにより汲み不良の原因となったり、酸性度が増加して腐食原因となったりする傾向がある。
<エステル化反応工程>
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応は、連続する複数の反応槽で行うことも、一つの反応槽で行うこともできる。
反応温度は、使用する原料化合物に応じて適宜設定されるが、下限が通常200℃以上、好ましくは210℃以上、より好ましくは215℃以上、さらに好ましくは218℃以上、特に好ましくは233℃以上である。上限は通常250℃以下、好ましくは245℃以下、より好ましくは240℃以下、特に好ましくは235℃以下である。下限未満であるとエステル化反応速度が遅く、長時間の反応が必要となり、脂肪族ジオールの脱水分解等の好ましくない反応が多くなる場合がある。上限超過では脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸の分解が多くなり、また反応槽内に飛散物が増加し異物発生原因となりやすく反応物に濁り(ヘーズ)を生じやすくなる場合がある。
また、エステル化反応温度は一定温度であることが好ましい。一定温度であることによりエステル化率が安定する。一定温度は設定温度±5℃、好ましくは±2℃である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。
反応圧力は、下限が通常50kPa以上、好ましくは60kPa以上、より好ましくは70kPa以上であり、上限が通常200kPa以下、好ましくは130kPa以下、より好ましくは110kPa以下である。下限未満では反応槽内に飛散物が増加し反応物のヘーズが高くなり異物増加の原因となりやすく、また脂肪族ジオールの反応系外への留出が多くなり重縮合反応速度の低下を招きやすくなる傾向がある。上限超過では脂肪族ジオールの脱水分解が多くなり、重縮合速度の低下を招きやすくなる傾向がある。
反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは4時間以下である。
エステル化反応を行う脂肪族ジカルボン酸成分に対する脂肪族ジオール成分のモル比は、エステル化反応槽の気相及び反応液相に存在する、脂肪族ジカルボン酸及びエステル化された脂肪族ジカルボン酸に対する、脂肪族ジオール及びエステル化された脂肪族ジオールとのモル比を表し、反応系で分解されエステル化反応に寄与しない脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール及びそれらの分解物は含まれない。分解されてエステル化反応に寄与しないとは、例えば、脂肪族ジオールである1,4−ブタンジオールが分解してテトラヒドロフランになったものはこのモル比には含めない。
本発明において、上記モル比は、下限が通常1.10以上、好ましくは1.12以上、より好ましくは1.15以上、特に好ましくは1.20以上である。上限が通常2.00以下、好ましくは1.80以下、より好ましくは1.60以下、特に好ましくは1.55
以下である。下限未満ではエステル化反応が不十分になりやすく後工程の反応である重縮合反応が進みにくく高重合度のポリエステルが得にくくなる場合がある。上限超過では脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸の分解量が多くなる場合がある。このモル比を好ましい範囲に保つためにエステル化反応系に脂肪族ジオールを適宜補給することが好ましい。
本発明において、エステル化率80%以上のエステル化反応物を、後述する重縮合反応に供する。ここで、エステル化率とは、エステル化反応物中の全酸成分に対するエステル化された酸成分の割合を示すものであり次式で表される。
エステル化率(%)=(ケン化価−酸価)/ケン化価)×100
エステル化反応物のエステル化率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。下限未満であると後工程の反応である重縮合反応性が悪くなる傾向がある。また、重縮合反応時の飛散物が増え、壁面に付着して固化し、さらにこの飛散物が反応物内に落下し、ヘーズの悪化、(異物発生)の要因となる場合がある。上限は後工程の反応である重縮合反応のためには高いほうが良いが、通常99%以下である。
エステル化反応物の末端カルボキシル基濃度は、下限が好ましくは500当量/トン以上、より好ましくは600当量/トン以上、特に好ましくは700当量/トン以上である。上限が好ましくは2500当量/トン以下、より好ましくは2000当量/トン以下、特に好ましくは1800当量/トン以下である。下限未満では、脂肪族ジオールの分解が多くなる傾向があり、上限超過では後工程の反応である重縮合反応性が悪くなる傾向がある。また、重縮合反応時の飛散物が増え、壁面に付着して固化し、さらにこの飛散物が反応物内に落下し、ヘーズの悪化(異物発生)の要因となる場合がある。
本発明において、エステル化反応におけるジカルボン酸とジオールとのモル比、反応温度、反応圧力及び反応率を上記範囲にして連続反応を行い、連続的に重縮合反応に供することにより、ヘーズが低く異物が少ない高品質の脂肪族ポリエステルを効率的に得ることができる。
<重縮合反応工程>
重縮合反応は連続する複数の反応槽を用い減圧下で行うことができる。
重縮合反応槽の反応圧力は、下限が通常0.01kPa以上、好ましくは0.03kPa以上であり、上限が通常1.4kPa以下、好ましくは0.4kPa以下である。重縮合反応時の圧力が高すぎると、重縮合時間が長くなり、それに伴いポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が引き起こされ、実用上充分な特性を示すポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。一方、超高真空重縮合設備を用いて製造する手法は重縮合反応速度を向上させる観点からは好ましい態様であるが、極めて高額な設備投資が必要となるため、経済的には不利である。
反応温度は、使用する原料化合物に応じて適宜設定されるが、下限が通常215℃以上、好ましくは220℃以上であり、上限が通常270℃以下、好ましくは260℃以下である。下限未満であると、重縮合反応速度が遅く、高重合度のポリエステル製造に長時間を要するばかりでなく、高動力の撹拌機も必要となるため、経済的に不利となる傾向がある。一方、上限超過であると製造時のポリエステルの熱分解が引き起こされやすく、高重合度のポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。
反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは8時間以下である。反応時間が短すぎると反応が不充分で高重合度のポリエステルが得にくく、その成形品の機械物性が劣る傾向となる。一方、反応時
間が長すぎると、ポリエステルの熱分解による分子量低下が顕著となり、その成形品の機械物性が劣る傾向となるばかりでなく、ポリエステルの耐久性に悪影響を与えるカルボキシル基末端量が熱分解により増加する場合がある。
<触媒>
エステル化反応及び重縮合反応は触媒を使用することにより、反応が促進される。エステル化反応においてはエステル化反応触媒が無くても十分な反応速度を得ることができる。また、エステル化反応時にエステル化反応触媒が存在するとエステル化反応によって生じる水により触媒が反応物に不溶の析出物を生じ、得られるポリエステルの透明性を損なう(即ちヘーズが高くなる)ことがあり、また触媒が異物化することがあるので、触媒はエステル化反応中には添加使用しないことが好ましい。また、触媒を反応槽の気相部に添加するとヘーズか高くなることがあり、また触媒が異物化することがあるので反応液中に添加することが好ましい。
重縮合反応においては無触媒では反応が進みにくく、触媒を用いることが好ましい。重縮合反応触媒としては、一般には、周期表1〜14族の金属元素のうち少なくとも1種を含む化合物(以下「金属元素化合物」ということがある。)が用いられる。金属元素としては、具体的には、例えば、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。それらの中で、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、亜鉛、鉄、ゲルマニウムが好ましく、チタン、ジルコニウム、タングステン、鉄、ゲルマニウムがより好ましい。
さらに、ポリエステルの熱安定性に影響を与えるカルボキシル基末端濃度を低減させるためには、上記金属元素の中では、ルイス酸性を示す周期表3〜6族の金属元素が好ましい。具体的には、例えば、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン等が挙げられる。特に、入手のし易さからチタン、ジルコニウムが好ましく、反応活性の点からチタンがより好ましい。
本発明において、触媒として、これらの金属元素を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩またはβ―ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、さらには前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が好ましく用いられる。
触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。また、重縮合は無溶媒で行うことが好ましいが、これとは別に、触媒を溶解させるために少量の溶媒を使用してもよい。
この触媒溶解用の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等のジオール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ヘプタン、トルエン等の炭化水素化合物、水ならびにそれらの混合物等が挙げられる。その使用量は、触媒濃度が、通常0.0001質量%以上、99質量%以下となる量である。
さらに具体的には、チタン化合物としては、例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート等のテトラアルキルチタネート及びこれらの加水分解物;チタン(オキシ
)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
これらの中で、テトラアルキルチタネート及びその加水分解物が好ましいものとして挙げられる。さらに具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー等が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー等がより好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート等がさらに好ましい。
これらのチタン化合物は、単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
また、チタン化合物は、前述した溶媒、周期表2族の金属化合物、及びリン酸エステル化合物を混合することにより得られる液状物として用いることが好ましい。また、後述するジルコニウム化合物、ゲルマニウム化合物、その他の金属化合物についても、液状物として用いることが好ましい。
ここで、周期表2族の金属化合物としては、例えば、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中で、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等が好ましい。
リン酸エステル化合物としては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらの中で、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート等が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
これらの中で、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド等が好ましく、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド等がより好ましく、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが特に好ましい。ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートを触媒として用いることにより、
着色のない高重合度のポリエステルを得ることができる。
これらのジルコニウム化合物は、単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
ゲルマニウム化合物としては、例えば、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さ等から、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウム等が好ましく、酸化ゲルマニウムが特に好ましい。
これらのゲルマニウム化合物は、単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
その他の金属化合物としては、例えば、炭酸スカンジウム、スカンジウムアセテート、スカンジウムクロリド、スカンジウムアセチルアセトネート等のスカンジウム化合物、炭酸イットリウム、イットリウムクロリド、イットリウムアセテート、イットリウムアセチルアセトネート等のイットリウム化合物、バナジウムクロリド、三塩化バナジウムオキシド、バナジウムアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネートオキシド等のバナジウム化合物、モリブデンクロリド、モリブデンアセテート等のモリブデン化合物、タングステンクロリド、タングステンアセテート、タングステン酸等のタングステン化合物、セリウムクロリド、サマリウムクロリド、イッテルビウムクロリド等のランタノイド化合物等が挙げられる。
これらの金属化合物は、単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
これらの重縮合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限が通常0.1質量ppm以上、好ましくは0.5質量ppm以上、より好ましくは1質量ppm以上であり、上限が通常3000質量ppm以下、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは250質量ppm以下、特に好ましくは130質量ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、ポリエステル中のカルボキシル基末端濃度が多くなる場合があるため、カルボキシル基末端量ならびに残留触媒濃度の増大によりポリエステルの熱安定性や耐加水分解性が低下する傾向がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリエステル製造中にポリエステルの熱分解が誘発され、実用上有用な物性を示すポリエステルが得られにくくなる傾向がある。
触媒の反応系への添加位置は、重縮合反応工程以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよいが、水が多く存在、もしくは発生している状況下で触媒が共存すると触媒が失活し、異物が析出する原因となり製品の品質を損なう場合があるため、エステル化反応工程以後に添加するのが好ましい。
[脂肪族ポリエステルの製造装置]
<スラリー調製槽、反応槽>
スラリー調製槽では、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールが均一に混合され、エステル化反応槽へ供給される。スラリー調製は、連続的に行っても、間欠的に行ってもよいが、連続的に行った方が効率的で望ましい。例えば、スラリー調製を連続的に行う場合について以下に説明する。
脂肪族ジカルボン酸は通常固体であり、スラリー調製槽上部に配されたホッパーからテーブルフィーダー、スクリューフィーダーなどの粉体フィーダーを用いて連続的にスラリー調製槽へ供給される(何れも図示せず)。脂肪族ジカルボン酸はその含水率にもよるが、圧密されると容易に固結するため、ホッパー内ではその充填高さは10m以下、好ましくは5m以下、滞留時間は24時間以下となる様に供給することが望ましい。また脂肪族
ジカルボン酸の固結を防ぐため、ホッパー内に乾燥ガス、例えば乾燥窒素を流通させておくことが望ましい。さらに固結した脂肪族ジカルボン酸の塊が粉体フィーダーに供給されると脂肪族ジカルボン酸の供給が不安定になるため、脂肪族ジカルボン酸は解砕機を通した後ホッパーへ供給することが好ましい。
一方、脂肪族ジオールは通常液体であり、ポンプにより連続的にスラリー調製槽へ供給される(図示せず)。脂肪族ジオールはスラリー調製槽内の気液界面などに付着した脂肪族ジカルボン酸を洗い流すために、その一部もしくは全てを気液界面などにスプレーして供給することが望ましい。
通常、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールはそれぞれの比がスラリー調製槽内で一定となる様にスラリー調製槽へ連続的に供給される。その制御は、例えば、スラリー調製槽の液面が一定となる様に脂肪族ジカルボン酸を供給し、その流量に応じて脂肪族ジオールを供給するフィードフォワード制御、もしくはスラリー調製槽の液面が一定となる様に脂肪族ジカルボン酸を供給し、スラリーを構成する脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオール量比で決まるスラリー密度が一定となるよう脂肪族ジオールを供給するフィードバック制御などが考えられる。スラリー調製槽では、液面が槽の内壁と接触する部位に付着した脂肪族ジカルボン酸が一気に剥がれ落ちる現象が生じるため、スラリー密度に対して応答するフィードバック制御が好ましい。
本発明に用いるスラリー調製工程におけるスラリー調製槽(A)及びスラリー貯槽(B)の型式に特に制限は無く、公知のものが使用でき、例えば、縦型攪拌混合槽、縦型熱対流式混合槽等を挙げることができる。スラリー調製工程は、スラリー調製槽1基とすることもできるし、図1のように同種または異種の複数基の槽を、スラリー調製槽(A)及びスラリー貯槽(B)として直列させた複数槽とすることもできるが、複数槽とすることが好ましく、攪拌装置と循環ラインが具備された装置であることが好ましい。
本発明で用いる攪拌装置の型式としては、往復回転式攪拌機、ジェット式攪拌機、プロペラ式攪拌機、タービン式攪拌機、パドル式攪拌機等を挙げることができる。攪拌翼としては、アンカー翼、タービン翼、パドル翼、プロペラ翼等を挙げることができる。特に、脂肪族ジカルボン酸結晶が沈殿しない様、撹拌槽全体に大きな循環流をつくりだすことが可能な大型翼、例えばアンカー翼、マックスブレンド(登録商標)翼(住友重機械工業株式会社)、フルゾーン(登録商標)翼(株式会社神鋼環境ソリューション)などが好ましい。またその撹拌所要動力は、用いる脂肪族ジカルボン酸の粒径分布にもよるが通常0.3kW/m3以上であり、0.5kW/m3以上であることが好ましい。
本発明におけるスラリー調製工程において、スラリー貯槽(B)を有する場合、スラリー調製槽(A)で調製されたスラリーは後続のスラリー貯槽(B)へ連続的もしくは間欠的に供給する。間欠的に供給するには、例えば、スラリー調製槽(A)下部のスラリー抜き出しライン(4)からポンプ(C)によりスラリーを抜き出し、ポンプ吐出側に設置した三方弁を介してスラリーをスラリー調製槽(A)へ循環しながら、間欠的にスラリー貯槽(B)へ供給する。
スラリー抜き出しラインはスラリーが滞留しないよう配置することが望ましく、例えば三方弁吐出側の配管は、三方弁の流路が切り替わった時にスラリーが配管内に残留しないよう、スラリー調製槽及び/又はスラリー貯槽に向かって下向きに傾斜させることが望ましい。このように配管を傾斜させることにより、スラリーの滞留が生じず、脂肪族ジカルボン酸の凝集を抑制することができ、安定したスラリー供給が可能となる。当該特徴は、独立した本発明の一つを構成する。
また、配管の傾斜は、配管の全領域であっても一部であってもよいが、三方弁に隣接する箇所が傾斜していることが望ましい。
配管の傾斜角は限定されないが、好ましくは0.1°以上、より好ましくは0.2°以上、さらに好ましくは0.3°以上であり、一方、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下、さらに好ましくは30°以下である。
調製されたスラリーの流量は、配管内でスラリーが分離しない流速となるよう設定され、例えば、後続のスラリー貯槽(B)の液面が一定となる様に、間欠的にスラリーを供給する。
スラリー貯槽(B)へ供給されたスラリーは、スラリー貯槽(B)で貯蔵される。スラリー貯槽(B)では、静置状態でもよいが、スラリー調製槽(A)と同様に攪拌装置を備えていてもよい。スラリー貯槽(B)でのスラリーの貯蔵時間は特に限定されないが、下限が通常0.1時間以上、好ましくは0.3時間以上、より好ましくは0.5時間以上、好ましくは1時間以上であり、また上限が通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは4時間以下である。貯蔵時間が下限未満であると、スラリー貯槽(B)からエステル化反応槽(E)へのスラリー移送の際、スラリーの流量が安定しない傾向にある。一方、貯蔵時間が上限を超えると脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の反応進行により発生した水が増加するため、エステル化反応工程へ持ち込まれる水分量が増加しエステル化反応槽内での飛散物が増え、スラリー供給口付近で固着が生じ、安定した供給を困難とするばかりでなく、飛散物や長期滞留物の槽壁面からの剥離、落下等により製品中の異物発生原因となる場合がある。
スラリー貯槽(B)からエステル化反応槽(E)へのスラリー移送に関しては、スラリー貯槽(B)のスラリーは後続のエステル化反応槽(E)へ連続的もしくは間欠的に供給する。間欠的に供給するには、例えば、スラリー貯槽(B)下部のスラリー抜き出しライン(7)から循環ポンプ(D)によりスラリーを抜き出し、ポンプ吐出側に設置した三方弁を介してスラリーをスラリー貯槽(B)へ循環しながら、間欠的にエステル化反応槽(E)へ供給する。
スラリー抜き出しライン(7)はスラリーが滞留しないよう配置することが望ましく、例えば三方弁吐出側の配管は、三方弁の流路が切り替わった時にスラリーが配管内に残留しないよう、スラリー貯槽(B)及び/又はエステル化反応槽(E)に向かって下向きに傾斜させることが望ましい。このように配管を傾斜させることにより、スラリーの滞留が生じず、脂肪族ジカルボン酸の凝集を抑制することができ、安定したスラリー供給が可能となる。当該特徴は、独立した本発明の一つを構成する。
また、配管の傾斜は、配管の全領域であっても一部であってもよいが、三方弁に隣接する箇所が傾斜していることが望ましい。
配管の傾斜角は限定されないが、好ましくは0.1°以上、より好ましくは0.2°以上、さらに好ましくは0.3°以上であり、一方、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下、さらに好ましくは30°以下である。
スラリーの流量は、配管内でスラリーが分離しない流速となるよう設定され、例えば、後続のエステル化反応槽(E)の液面が一定となる様、間欠的にスラリーを供給する。スラリーのエステル化反応槽への供給では、スラリーは後述のエステル化反応槽内に配されたインナーコイルに接触しないよう供給する。
本発明におけるスラリー調製工程において、スラリー貯槽(B)を有さない場合、調製されたスラリーはスラリー調製槽(A)から後続のエステル化反応槽(E)へ連続的もしくは間欠的に供給する。間欠的に供給するには、例えば、スラリー調製槽(A)下部のスラリー抜き出しライン(4)から循環ポンプ(C)によりスラリーを抜き出し、ポンプ吐
出側に設置した三方弁を介してスラリーをスラリー調製槽(A)へ循環しながら、間欠的にエステル化反応槽(E)へ供給する。
スラリー抜き出しライン(4)はスラリーが滞留しないよう配置することが望ましく、例えば三方弁吐出側の配管は、三方弁の流路が切り替わった時にスラリーが配管内に残留しないよう、スラリー調製槽(A)及び/又はエステル化反応槽(E)に向かって下向きに傾斜させることが望ましい。このように配管を傾斜させることにより、スラリーの滞留が生じず、脂肪族ジカルボン酸の凝集を抑制することができ、安定したスラリー供給が可能となる。当該特徴は、独立した本発明の一つを構成する。
また、配管の傾斜は、配管の全領域であっても一部であってもよいが、三方弁に隣接する箇所が傾斜していることが望ましい。
配管の傾斜角は限定されないが、好ましくは0.1°以上、より好ましくは0.2°以上、さらに好ましくは0.3°以上であり、一方、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下、さらに好ましくは30°以下である。
調製されたスラリーの流量は、配管内でスラリーが分離しない流速となるよう設定され、例えば、後続のエステル化反応槽(E)の液面が一定となる様、間欠的にスラリーを供給する。スラリーのエステル化反応槽(E)への供給では、スラリーは後述のエステル化反応槽内(E)に配されたインナーコイルに接触しないよう供給する。
本発明に用いるエステル化反応槽(E)としては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよく、また、単数槽としても、同種または異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部及び軸受、軸、攪拌翼からなる通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転するタイプも用いることができる。
攪拌の形態にも制限はなく、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、反応液の一部を反応槽の外部に配管等で持ち出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法もとることができる。
攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
エステル化反応槽(E)では副生水を除去するために多量の熱を必要とする。その熱は通常エステル化反応槽に設置したインナーコイル内に熱媒を流すことで与えられる。槽内にインナーコイルを配するため、撹拌翼はその径が槽径に対して通常0.2〜0.5、特に0.25〜0.4で設定されることが好ましい。またその撹拌所要動力は、熱媒から槽内流体に効率的に熱を供給するため、通常、0.5kW/m3以上、好ましくは1.0kW/m3以上、さらに好ましくは1.5kW/m3以上となるよう設定されることが好ましい。
本発明に用いる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽等を挙げることができる。重縮合反応槽は、1基とすることができ、或いは、同種または異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできるが、反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は界面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した横型攪拌重合機を選定することが好ましい。
<製造ライン例>
以下に、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸、脂肪族ジオールとして1,4−ブタンジ
オール(以下「BG」ということがある。)、多官能化合物としてリンゴ酸を原料とした、本発明にかかる脂肪族ポリエステルの製造方法の好ましい実施態様について、添付図面の参照符号を付記しつつ説明するが、本発明は図示の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明におけるスラリー調製工程の一実施形態を示す概略図、図2は、エステル化反応工程の一実施形態を示す概略図、図3は、本発明における重縮合反応工程の一実施形態を示す概略図である。
図1において、原料のコハク酸を、原料供給ライン(1)を通じて攪拌機を有するスラリー調製槽(A)に供給する。BGを原料供給ライン(2)より、リンゴ酸を原料供給ライン(3)より、スラリー調製槽(A)へ供給する。ポンプ(C)を使用して、スラリー抜き出しライン(4)、循環ライン(5)を通じてスラリーを循環させながら攪拌混合を行い、スラリーを調製する。調製したスラリーは、スラリー供給ライン(6)を通じ、攪拌機を有するスラリー貯槽(B)へ移送する。移送されたスラリーは、ポンプ(D)を使用して、スラリー抜き出しライン(7)、循環ライン(8)を通じてスラリーを循環させながら攪拌混合を行いつつ、貯槽(B)よりスラリー移送ライン(9)を通じてエステル化反応槽(E)に連続的に供給される。また、原料のリンゴ酸は原料供給ライン(3)より、スラリー調製槽へ固体として添加することもできるし、原料供給ライン(10)よりBG溶液もしくは、BGスラリーとしてスラリー移送ライン(9)に添加することもできる。
図2において、原料のコハク酸及びリンゴ酸は、図1のスラリー調製工程でBGと混合されスラリーとなり、スラリー移送ライン(9)からエステル化反応槽(E)に供給される。また、エステル化反応時に触媒添加する場合は、触媒調製槽(図示せず)でBGの溶液とした後、BG供給ライン(11)より供給することもできるし、BG及び触媒供給ライン(24)から再循環BGの再循環ライン(22)に供給し、両者を混合した後、エステル化反応槽(E)の液相部に供給することもできる。
エステル化反応槽(E)から留出するガスは、留出ライン(13)を経て精留塔(F)で高沸成分と低沸成分とに分離される。通常、高沸成分の主成分はBGであり、低沸成分の主成分は、水及びBGの分解物であるテトラヒドロフラン(以下「THF」いうことがある。)である。
精留塔(F)で分離された高沸成分は抜出ライン(20)から抜き出され、ポンプ(J)を経て、一部はBG再循環ライン(22)からエステル化反応槽(E)に循環され、一部は循環ライン(21)から精留塔(F)に戻される。また、余剰分は抜出ライン(23)から外部に抜き出される。一方、精留塔(F)で分離された軽沸成分はガス抜出ライン(14)から抜き出され、コンデンサ(G)で凝縮され、凝縮液ライン(16)を経てタンク(H)に一時溜められる。タンク(H)に集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン(17)、ポンプ(K)及び循環ライン(18)を経て精留塔(F)に戻され、残部は、抜出ライン(19)を経て外部に抜き出される。コンデンサ(G)はベントライン(15)を経て排気装置(図示せず)に接続されている。エステル化反応槽(E)内で生成したエステル化反応物は、抜出ポンプ(I)及びエステル化反応物の抜出ライン(12)を経て第1重縮合反応槽(L)に供される。
図2に示す工程においては、再循環ライン(22)に触媒供給及びBG供給ライン(24)が連結されているが、両者は独立してエステル化反応槽(E)の気相部に接続されていてもよい。また、図1の原料供給ライン(10)はエステル化反応槽(E)の液相部に接続されていてもよいし、気相部に接続されていてもよい。
重縮合槽前のエステル化反応物に触媒を添加する場合は、触媒調製槽(図示せず)で所定濃度に調製した後、図3における触媒供給ライン(29)を経て、供給ライン(28)
から供給されるBGでさらに希釈された後、前述の図2に示すエステル化反応物の抜出ライン(12)に供給される。
次に、エステル化反応物の抜出ライン(12)からフィルター(R)を経て第1重縮合反応槽(L)に供給されたエステル化反応物は、減圧下に重縮合されてポリエステル低重合体となり、その後、抜出用ギヤポンプ(O)及び出口流路である抜出ライン(30)、フィルター(S)を経て第2重縮合反応槽(M)に供給される。第2重縮合反応槽(M)では、通常、第1重縮合反応槽(L)よりも低い圧力でさらに重縮合反応が進む。得られた重縮合反応物は、抜出用ギヤポンプ(P)及び出口流路である抜出ライン(31)、フィルター(T)を経て、第3重縮合槽(N)に供給される。第3重縮合反応槽(N)は、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの攪拌翼を具備した横型の反応槽である。抜出ライン(31)を通じて第2重縮合反応槽(M)から第3重縮合反応槽(N)に導入された重縮合反応物は、ここでさらに重縮合反応が進められた後、抜出用ギヤポンプ(Q)、フィルター(U)及び出口流路である抜出ライン(32)を経てダイスヘッド(V)から溶融したストランドの形態で抜き出され、水等で冷却された後、回転式カッター(W)で切断されてポリエステルペレットとなる。
ここで、符号(25)、(26)、(27)は、それぞれ、第1重縮合反応槽(L)、第2重縮合反応槽(M)、第3重縮合反応槽(N)のベントラインである。フィルターR、S、T、Uは、必ずしも全部設置する必要は無く、異物除去効果と運転安定性とを考慮して適宜設置することができる。
上記製造ラインにおいて、スラリー調製工程及びスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ライン(9)は、例えば、それぞれ独立した温水ジャケットによる加熱方式を採用することにより、スラリー調製工程の温度(T1)及びスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ライン(9)の温度(T2)を制御することができる。また、T1は、例えばスラリー調製槽(A)及び、スラリー貯槽(B)の下部に設けた温度センサで検出を行い、T2は、例えばスラリー移送ライン(9)の配管に設けた温度センサで検出を行い、常にT1<T2の関係式を満たすように制御することができる。
<脂肪族ポリエステルの物性>
本発明の方法により得られる脂肪族ポリエステルの固有粘度は、下限が好ましくは1.3dL/g以上、特に好ましくは1.6dL/g以上である。上限が好ましくは2.8dL/g以下、より好ましくは2.5dL/g以下、特に好ましくは2.3dL/g以下である。固有粘度が下限未満であると、成形品にしたとき十分な機械強度が得にくい。固有粘度が上限超過であると、成形時に溶融粘度が高く成形しにくくなる場合がある。
脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基濃度は、好ましくは5当量/トン以上30当量/トン以下である。下限は低いほど熱安定性、耐加水分解性がよいが、好ましくは5当量/トン以上であり、上限はより好ましくは25当量/トン以下である。上限超過では熱安定性が悪く成形時等に熱分解が多くなる傾向がある。
脂肪族ポリエステルのペレットのハンター色座標におけるカラーb値は、好ましくは0.0以上3.0以下である。上限はより好ましくは2.5以下である。上限超過では成形品にしたとき黄色味があり好ましくないことがある。
脂肪族ポリエステルの溶液ヘーズは、好ましくは0.01%以上2.5%以下である。下限は低いほど透明な製品が得られてよいが、好ましくは0.01%以上であり、上限はより好ましくは2.2%以下である。上限超過では成形品に濁りが生じ、異物が多くなる場合がある。ここで溶液ヘーズとは、フェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合液を溶媒として、試料濃度10質量%の溶液の光路長10mmにおける濁度をい
い%で表す。
さらに、本発明の方法で得られる脂肪族ポリエステルは、固有粘度が1.3〜2.5dL/g、かつ末端カルボキシ基濃度が5〜30当量/トン、かつカラーb値が0.0〜3.0、かつ溶液ヘーズが0.01〜2.5%であることにより成形性、熱安定性、色調、透明性のバランスの取れた良好なポリエステル成形品の原料となることができる。
<脂肪族ポリエステル組成物>
本発明の方法で得られる脂肪族ポリエステルに、芳香族−脂肪族共重合ポリエステル、及び脂肪族ポリオキシカルボン酸等を配合することができる。また必要に応じて、カルボジイミド化合物、充填材、可塑剤等を配合することができ、さらに必要に応じて、他の生分解性樹脂、例えば、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン及び/またはキトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物を配合することができる。さらに、成形体の物性や加工性を調整する目的で、熱安定剤、可塑剤、滑剤、ブロッキング防止剤、核剤、無機フィラー、着色剤、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤、改質剤、架橋剤等を配合してもよい。これらは、当業者の技術常識の範囲で本発明の効果が損なわれない使用範囲で用いればよい。
脂肪族ポリエステル組成物の製造方法は、特に限定されないが、ブレンドした脂肪族ポリエステル及びその他の原料を同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブレンダー等の通常の混練機を用いて混練することによって混合する方法等が挙げられる。また、各々の原料を直接成形機に供給して組成物を調製すると同時に、その成形体を得ることも可能である。
<脂肪族ポリエステルの用途>
本発明の方法で得られる脂肪族ポリエステル及びその組成物は、熱安定性、引張強度、引張伸び等の実用物性を有するので射出成形法、中空成形法、及び押出成形法等の汎用プラスチック成形法等により、フィルム、ラミネートフィルム、シート、板、延伸シート、モノフィラメント、マルチフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体等の成形品に利用可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法は次の通りである。
<スラリー中水分濃度 (質量%)>
5mL容器にスラリー2g、水分量の分かっているテトラヒドロフラン(THF)2gを秤量し、1分間振とうした後、静置して固液分離を行った。上澄み液をマイクロシリンジで採取し、カールフィッシャー水分計にて水分濃度を測定した。得られた水分濃度からTHF中の水分量を差し引いた値を、スラリー質量に対する水分濃度(質量%)とした。
<エステル化反応物の末端カルボキシル基濃度(AV) (当量/トン)>
試料0.3gをベンジルアルコール40mLに入れ、180℃で20分間加熱し、10
分間冷却した後、0.1mol・L−1のKOH/メタノール溶液で滴定して求めた値を、エステル化反応物の全量に対するカルボキシル基の濃度(当量/トン)で表した。
<固有粘度(IV) (dL/g)>
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(3)より求めた。
IV=((1+4Kηsp0.5−1)/(2KC)・・・(3)
(ただし、ηsp=η/η−1であり、ηは試料溶液落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズ定数である。Kは0.33を採用した。)
(実施例1)
[重合用触媒の調製]
撹拌装置付きのガラス製ナス型フラスコに、酢酸マグネシウム・4水和物を100質量部入れ、さらに1500質量部の無水エタノール(純度99質量%以上)を加えた。さらにエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合質量比は45:55)を65.3質量部加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを122質量部添加した。さらに10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、ナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体を得た。オイルバスの温度をさらに80℃まで上昇させ、5Torr(666.5Pa)の減圧下でさらに濃縮を行い粘稠な液体を得た。この液体状の触媒を、1,4−ブタンジオール(BG)に溶解させ、チタン原子含有量が3.36質量%となるよう調製した。この触媒溶液のBG中における保存安定性は良好であり、窒素雰囲気下40℃で保存した触媒溶液は少なくとも40日間析出物の生成が認められなかった。また、この触媒溶液のpHは6.3であった。
[脂肪族ポリエステルの製造]
図1に示すスラリー調製工程と図2に示すエステル化工程及び図3に示す重縮合工程により、次の要領で脂肪族ポリエステル樹脂の製造を行った。
先ず、リンゴ酸を0.15質量%含有したコハク酸を、原料供給ライン(1)を通じて攪拌機を有するスラリー調製槽(A)に供給した。続いて、コハク酸1.00モルに対して、BGが1.30モル、リンゴ酸が総量0.0033モルの割合となるようにBGを原料供給ライン(2)より、リンゴ酸を原料供給ライン(3)より、スラリー調製槽(A)へ供給した。このとき、原料から持ち込まれた水分量は、スラリー質量当たり300質量ppmであった。ポンプ(C)を使用して、スラリー抜き出しライン(4)、スラリー循環ライン(5)を通じてスラリーを循環させながら攪拌混合を1時間以上行い、スラリーを調製した。
調製したスラリーは、スラリー供給ライン(6)を通じ、攪拌機を有するスラリー貯槽(B)へ全量移送した。移送されたスラリーは、ポンプ(D)を使用して、スラリー抜き出しライン(7)、スラリー循環ライン(8)を通じてスラリーを循環させながら攪拌混合を行い、また、スラリー移送ライン(9)を通じ、予め、窒素雰囲気下エステル化率97質量%の脂肪族ポリエステル低分子量体(エステル化反応物)を充填した攪拌機を有するエステル化反応槽(E)に、45.5kg/hとなるように40℃のスラリーを連続的に供給した。このとき、供給したスラリー中の水分量は0.5質量%であった。
このとき、スラリー調製工程中のスラリー温度(T1)は、ジャケットに温水を流して40℃となるように調整した。スラリー中の水分量は、スラリー調製工程におけるスラリ
ー滞留時間を、スラリー調製槽、スラリー貯槽併せて7時間として調整を行った。スラリー調製槽におけるスラリーの調製は、スラリー貯槽内のスラリーが枯渇しない範囲で、原料供給、攪拌混合及びスラリー貯槽への移送を定期的に行った。エステル化反応槽(E)に供給するスラリー温度(T2)はジャケットに温水を流して50℃となるように調整した。
エステル化反応槽(E)の内温は230℃、圧力は101kPaとし、生成する水とTHF及び余剰のBGを、留出ライン(13)から留出させ、精留塔(F)で高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は精留塔(F)の液面が一定になるように、抜出ライン(23)を通じて、その一部を外部に抜き出した。一方、水とTHFを主体とする低沸成分は塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(H)の液面が一定になるように、抜出ライン(19)より外部に抜き出した。同時に、BG再循環ライン(22)より100℃の精留塔(F)の塔底成分(98質量%以上がBG)全量を、またBG及び触媒供給ライン(24)より、エステル化反応槽で発生したTHFと等モルのBGを併せて供給し、エステル化反応槽内のコハク酸に対するBGのモル比が1.30となるように調整した。
エステル化反応槽(E)で生成したエステル化反応物は、抜き出しポンプ(I)を使用し、エステル化反応物の抜出ライン(12)から連続的に抜き出し、エステル化反応槽(E)内液のコハク酸ユニット換算での平均滞留時間が3時間になるように液面を制御した。抜出ライン(12)から抜き出したエステル化反応物は、第1重縮合反応槽(L)に連続的に供給した。系が安定した後、8時間毎にエステル化反応槽(E)の出口で採取したエステル化反応物サンプル18点の末端カルボキシル濃度(AV)の平均値と触れ幅を表1に示す。
予め前述手法で調製した触媒溶液を、触媒調製槽において、チタン原子としての濃度が0.12質量%となるようにBGで希釈した触媒溶液を調製した後、触媒供給ライン(29)及び供給ライン(28)を通じて、1.4kg/hで連続的にエステル化反応物の抜出ライン(12)に供給した(触媒は反応液の液相に添加された)。供給量は運転期間中安定していた。
第1重縮合反応槽(L)の内温を240℃、圧力を2.0kPaとし、滞留時間が120分になるように液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(25)から、水、THF、BGを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応器(M)に連続的に供給した。
第2重縮合反応槽(M)の内温を240℃、圧力を0.4kPaとし、滞留時間が150分になるように液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(26)から、水、THF、BGを抜き出しながら、さらに重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、抜き出しギヤポンプ(P)により抜出ライン(31)を経由し、第3重縮合反応器(N)に連続的に供給した。第3重縮合反応器(N)の内温は240℃、圧力は130Pa、滞留時間は180分間とし、さらに、重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、ダイスヘッド(V)からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター(W)でカッティングしペレットとした。
スラリー調製及びエステル化反応、重縮合反応は連続7日間行い、反応スタート後16時間経過してから8時間毎にサンプリングして得られた脂肪族ポリエステルのサンプル18点の固有粘度(IV)を測定した。その平均値と触れ幅を表1に示す。
(実施例2)
スラリー調製工程中のスラリー温度(T1)を50℃となるように調整し、エステル化
反応槽(E)に供給するスラリー温度(T2)を60℃となるように調整した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。供給したスラリー中の水分量は1.3質量%であった。表1に得られた結果を示す。
(比較例1)
スラリー調製工程中のスラリー温度(T1)を50℃となるように調製し、エステル化反応槽(E)に供給するスラリー温度(T2)を45℃となるように調整した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。供給したスラリー中の水分量は0.5質量%であった。表1に得られた結果を示す。エステル化反応槽(E)に供給するスラリー移送ライン中でコハク酸の析出が発生し、エステル化反応槽へのスラリー供給量が低下したため、重縮合工程における反応滞留時間の増加により急激な粘度上昇が起こりゲル化した。
(実施例3)
スラリー調製工程中のスラリー温度(T1)を65℃となるように調整し、エステル化反応槽(E)に供給するスラリー温度(T2)を80℃、かつスラリー調製工程での滞留時間を30時間とした以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。供給したスラリー中の水分量は11.9質量%であった。表1に得られた結果を示す。スラリー中の水分が高く反応系へのスラリーの安定な供給がしにくくなり、実施例1と比べて反応物の末端カルボキシル基濃度(AV)のばらつきが大きくなった。
Figure 2014141633
本発明により、脂肪族ポリエステルの製造時における安定な生産が可能になり、品質のばらつきが少ない製品を得ることができる。これにより脂肪族ポリエステルの利用拡大が期待できる。よって、本発明は脂肪族ポリエステルの利用が期待できる任意の分野に利用可能であり、その工業的価値は顕著である。
1 原料供給ライン
2 原料供給ライン
3 原料供給ライン
4 スラリー抜き出しライン
5 スラリー循環ライン
6 スラリー供給ライン
7 スラリー抜き出しライン
8 スラリー循環ライン
9 スラリー移送ライン
10 原料供給ライン
A スラリー調製槽
B スラリー貯槽
C ポンプ
D ポンプ
11 触媒供給ライン
12 エステル化反応物の抜き出しライン
13 留出ライン
14 ガス抜き出しライン
15 ベントライン
16 凝縮液ライン
17 抜き出しライン
18 循環ライン
19 抜き出しライン
20 抜き出しライン
21 循環ライン
22 BG再循環ライン
23 抜き出しライン
24 BG及び触媒供給ライン
E エステル化反応槽
F 精留塔
G コンデンサ
H タンク
I 抜き出しポンプ
J、K ポンプ
25、26、27 ベントライン
28 供給ライン
29 触媒供給ライン
30、31、32 重縮合反応物抜き出しライン
L 第一重縮合反応槽
M 第二重縮合反応槽
N 第三重縮合反応槽
O、P、Q 抜き出しギヤポンプ
R、S,T,U フィルター
V ダイスヘッド
W 回転式カッター

Claims (8)

  1. 脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むスラリーの調製工程、エステル化反応工程、重縮合反応工程を経てポリエステルを得る脂肪族ポリエステルの製造方法において、スラリー調製工程の温度(T1)とスラリー調製工程からエステル化反応工程間のスラリー移送ラインの温度(T2)の関係が下記(1)式を満たすことを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
    T1<T2・・・(1)
  2. スラリー調製工程の温度(T1)が脂肪族ジオール成分の凝固点以上60℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  3. スラリー移送ラインの温度(T2)が脂肪族ジオール成分の凝固点を超え230℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  4. スラリー調製工程におけるスラリー滞留時間が0.1時間以上48時間以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  5. スラリー中に含まれる水分量が0.01質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  6. 脂肪族ジオールの主成分が1,4-ブタンジオールであり、脂肪族ジカルボン酸の主成
    分がコハク酸であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
  7. 脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むスラリーを調製するスラリー調製槽、該スラリーをエステル化するエステル化反応槽、及びエステル化反応物を重縮合する重縮合反応槽を少なくとも有する脂肪族ポリエステル製造装置であって、該スラリー調製槽からスラリーを抜き出すスラリー抜き出しライン、該スラリー抜き出しラインから三方弁により該スラリー調製槽にスラリーが循環するスラリー循環ライン、及び該スラリー抜き出しラインから三方弁により該エステル化反応槽へスラリーが供給されるスラリー供給ラインを有し、該三方弁に対し少なくとも、該スラリー循環ラインが該スラリー調製槽に向かって下方向に傾斜されているか、または該スラリー供給ラインが該エステル化反応槽に向かって下方向に傾斜されている脂肪族ポリエステル製造装置。
  8. 脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを含むスラリーを調製するスラリー調製槽、調製したスラリーを貯蔵するスラリー貯槽、該貯蔵したスラリーをエステル化するエステル化反応槽、及びエステル化反応物を重縮合する重縮合反応槽を少なくとも有する脂肪族ポリエステル製造装置であって、該スラリー貯槽からスラリーを抜き出すスラリー抜き出しライン、該スラリー抜き出しラインから三方弁により該スラリー貯槽にスラリーが循環するスラリー循環ライン、及び該スラリー抜き出しラインから三方弁により該エステル化反応槽へスラリーが供給されるスラリー移送ラインを有し、該三方弁に対し少なくとも、該スラリー循環ラインが該スラリー貯槽に向かって下方向に傾斜されているか、または該スラリー移送ラインが該エステル化反応槽に向かって下方向に傾斜されている脂肪族ポリエステル製造装置。
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