以下、本発明の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明のポリウレタンの製造方法は、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とを、糖及び/又はその誘導体の存在下に反応させる工程を有するポリウレタンの製造方法であって、該糖及び/又はその誘導体の存在量が、反応系内の糖及び/又はその誘導体以外のポリヒドロキシ化合物と糖及び/又はその誘導体との合計に対して0.1〜80重量ppmであることを特徴とする。
上記ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物との反応に際しては更に鎖延長剤を存在させてもよい。
また、本発明のポリウレタンの製造方法は、通常、ジカルボン酸及び/又はその誘導体とジヒドロキシ化合物とをエステル化及び/又はエステル交換反応させてポリウレタン原料となるポリエステルポリオールを製造する工程を有する。
なお、本発明でいうポリウレタンとは、特に制限がない限り、熱可塑性ポリウレタン又はポリウレタンウレアを示し、この2種類の樹脂はほぼ同じ物性をとることが従来から知られている。一方、構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンとは、鎖延長剤として短鎖ポリオールを使用して製造されるものであり、ポリウレタンウレアとは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用して製造されるものである。
[糖及び/又はその誘導体]
本発明において、ポリウレタンの反応系に存在させる糖としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース、スクロース、ラフィノース、デンプン等の2糖又は多糖類が挙げられる。これらの中でも、グルコース、スクロース、キシロースが好ましい。これらの糖類が好ましい理由の一つは、イソシアネート化合物と効率的に反応して、架橋の核となることが挙げられる。
また、糖誘導体としては、糖から誘導される成分であれば、特に限定されないが、例えば、デオキシリボース、フコース、フクロース、ラムノース、キノボース、パラトース等のデオキシ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコール類、グルコノラクトン等の糖脱水素体、レボグルコサン、4−デオキシ−3−ヘキソスロース等の1分子脱水体、ヒドロキシメチルフルフラール、フルフラール等の3分子脱水体、2−ヒドロキシ−3−オキソブタナール、エリトロース、アセトール、グリコアルデヒド等のグルコースのレトロアルドール生成物、及び前記具体例の水素化生成物やその脱水体等が挙げられる。なお、ここで「脱水体」とは、加熱による脱水体、発酵中の菌による脱水体のいずれであってもよい。
これらの中でも特に、反応速度を制御し易い点から、適度な官能基数を持つグルコース及びキシロースの1〜4分子脱水体が好ましく、その中でも酸素原子を2個以上含むカルボニル化合物が特に好ましい。これら糖誘導体は糖から化学変換、熱分解、発酵などの方法によって誘導することができる。
本発明において、上記の糖の1種又は2種以上が反応系に存在してもよく、糖誘導体の1種又は2種以上が反応系に存在してもよく、糖の1種又は2種以上と糖誘導体の1種又は2種以上が反応系に存在してもよい。
また、本発明において、糖及び/又はその誘導体は、ポリエステルポリオール及びイソシアネート化合物を含むポリウレタンの製造原料に対して別途添加されたものであってもよく、これらの原料に含まれて反応系に存在するものであってもよい。
即ち、例えばポリエステルポリオール、イソシアネート化合物、必要に応じて用いられる鎖延長剤、好ましくはポリエステルポリオール及び/又は鎖延長剤として、糖及び/又はその誘導体を含むものを用いることにより反応系に存在させてもよい。
糖及び/又はその誘導体を含むポリエステルポリオールとしては、例えば、後述の方法で、ジカルボン酸成分とジヒドロキシ化合物とをエステル化及び/又はエステル変換反応させてポリエステルポリオールを製造する際に、原料のジカルボン酸成分及び/又はジヒドロキシ化合物、好ましくはジヒドロキシ化合物として、糖及び/又はその誘導体を含むジヒドロキシ化合物を用いることにより、得られるポリエステルポリオールに糖及び/又はその誘導体が含有されたものが挙げられる。
本発明において、ポリウレタン製造時に反応系に存在させる糖及び/又はその誘導体量は、反応系内の糖及び/又はその誘導体以外のポリヒドロキシ化合物と糖及び/又はその誘導体との合計に対して0.1〜80重量ppmである。この糖及び/又はその誘導体量が0.1重量ppm未満では糖及び/又はその誘導体を存在させることによる反応速度の向上効果、得られるポリウレタンの引張強度や弾性回復率等の物性の向上効果を十分に得ることができず、逆に80重量ppmを超えると、重合が阻害され、反応速度が低下する傾向にある。この反応速度の低下は、糖及び/又はその誘導体によるポリウレタン製造時に用いられる触媒の劣化が原因であると推定される。
好ましい糖及び/又はその誘導体の存在量は、反応系内の糖及び/又はその誘導体以外のポリヒドロキシ化合物と糖及び/又はその誘導体との合計に対して0.2〜40重量ppm、特に好ましくは0.5〜10重量ppmである。
なお、ここで、反応系内のポリヒドロキシ化合物としては、通常、ポリウレタン製造に用いられるポリエステルポリオール及び必要に応じて用いられる後述の鎖延長剤や架橋剤が挙げられる。
本発明において、糖及び/又はその誘導体を反応系内に存在させることによる反応速度の向上効果、及び得られるポリウレタンの引張強度や弾性回復率等の向上効果の作用機構の詳細は明らかではないが、糖及び/又はその誘導体は、分子中の水酸基数が多いため、反応により、得られるポリウレタンの架橋度を上げることができ、この結果、ポリウレタン化の重合反応を促進すると共に、得られるポリウレタンに架橋構造を導入して引張強度や弾性回復率等の物性を向上させることによると考えられる。ここで言う反応速度の向上とは、同一時間内においてより高分子量のポリウレタンが得られることを示す。
[ポリエステルポリオールの製造]
次に、本発明のポリウレタンの製造原料として好適に用いられるポリエステルポリオール(以下、「本発明のポリエステルポリオール」と称す場合がある。)の製造方法について説明する。
このポリエステルポリオールは、ジカルボン酸及び/又はその誘導体(以下「ジカルボン酸成分」と称す場合がある。)とジヒドロキシ化合物とをエステル化及び/又はエステル交換反応させることにより製造される。
(1)ジカルボン酸成分
本発明に用いるジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸誘導体、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸誘導体が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、合成・人工皮革や塗料のような耐候性を必要とされる用途には、光による黄変が少ない点で脂肪族ジカルボン酸及び/又はその誘導体を主成分とするものが好ましい。一方、弾性繊維等、強度を必要とされる用途には、凝集力の高い芳香族ジカルボン酸及び/又はその誘導体を主成分とするものが好ましい。
ここでいう「主成分とする」とは、全ジカルボン酸成分に対する含有量が、通常50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、例えば、前記芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、具体的には、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。
この内、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸が好ましい。また、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレート及びジメチルイソフタレートが好ましい。例えば、ジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールのポリエステルのように、任意の芳香族ジカルボン酸を使用することにより、所望の芳香族ポリエステルポリオールポリウレタンが製造できる。
脂肪族ジカルボン酸としては、通常、炭素数が2以上40以下の鎖状又は脂環式ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が2以上40以下の、鎖状又は脂環式ジカルボン酸としては、具体的には、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸及びシクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらの内、脂肪族ジカルボン酸としては、得られるポリウレタンの物性の面から、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸又はこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、例えば、前記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステル、並びに無水コハク酸等の前記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物等が挙げられる。これらの内、脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、又はこれらの混合物が好ましい。
本発明に用いるジカルボン酸成分は、バイオマス資源から誘導される成分を含有していてもよい。ジカルボン酸成分に含まれるバイオマス資源から誘導される好ましい成分としては、例えば、アジピン酸、コハク酸及びセバシン酸が挙げられるが、この中でもコハク酸が特に好ましい。
本発明において、ジカルボン酸成分がバイオマス資源から誘導された成分を含むとは、ジカルボン酸成分が1種類の場合、石油由来原料である例えばコハク酸と、バイオマス資源由来の例えばコハク酸との混合物でもよく、また、2種類以上のジカルボン酸の混合物の場合、少なくとも1種類のジカルボン酸成分がバイオマス資源由来であればよく、バイオマス資源由来のジカルボン酸成分と石油由来原料のジカルボン酸成分との混合物であってもよい。バイオマス資源由来のジカルボン酸成分と石油由来原料のジカルボン酸成分との混合物の場合、バイオマス資源由来のジカルボン酸成分が、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40%モル以上、更に好ましくは60%モル以上、特に好ましくは90〜100モル%である。
本発明でいうバイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプン、糖、及びセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体、並びに植物体又は動物体を加工してできる製品等が含まれる。
この中でも、より好ましいバイオマス資源は、植物資源である。植物資源としては、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、ソバ、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥及び食品廃棄物等が挙げられる。
この中でも、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、ソバ、大豆、油脂、古紙及び製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは木材、稲わら、籾殻、古米、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙及び製紙残渣であり、最も好ましくはトウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ及びサゴヤシである。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素元素、Na、K、Mg及びCa等の多くのアルカリ金属並びにアルカリ土類金属を含有する。
そしてこれらのバイオマス資源は、特に限定はされないが、例えば、酸及びアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理並びに物理的処理等の公知の前処理及び糖化の工程を経て炭素源へ誘導される。
その工程には、例えば、通常、特に限定はされないが、バイオマス資源をチップ化する、削る及び擦り潰す等の前処理による微細化工程が含まれる。必要に応じて、更にグラインダー又はミルによる粉砕工程が含まれる。
こうして微細化されたバイオマス資源は、更に前処理及び糖化の工程を経て炭素源へ誘導される。その具体的な方法としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸又は燐酸等の強酸による酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理及び酸化剤処理等の化学的方法や、微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法、並びに微生物又は酵素処理による加水分解等の生物学的処理が挙げられる。
前記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース、ペントサン、サッカロース、澱粉、セルロース等の2糖又は多糖類、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸及びセラコレン酸等の脂肪酸、並びにグリセリン、マンニトール、キシリトール及びリビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が挙げられる。これらの中でも、グルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース及びセルロースが好ましい。
これらの炭素源を用いて、ジカルボン酸生産能を有する微生物を用いた微生物変換による発酵法又は加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応等の反応工程を含む化学変換法並びに該発酵法と該化学変換法との組み合わせにより、ジカルボン酸が合成される。これらの中でも微生物変換による発酵法が好ましい。
前記ジカルボン酸生産能を有する微生物はジカルボン酸生産能を有する微生物である限り特に制限されないが、例えば、エシェリヒア・コリ等の腸内細菌、バチルス属細菌及びコリネ型細菌などが挙げられる。これらの中でも、好気性微生物、通性嫌気性微生物又は微好気性微生物を使用することが好ましい。
好気性微生物としては、例えば、コリネ型細菌(Coryneform Bacterium)、バチルス(Bacillus)属細菌、リゾビウム(Rhizobium)属細菌、アースロバクター(Arthrobacter)属細菌、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌、ノカルディア(Nocardia)属細菌及びストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌などが挙げられ、コリネ型細菌がより好ましい。
コリネ型細菌は、これに分類されるものであれば特に制限されないが、例えば、コリネバクテリウム属に属する細菌、ブレビバクテリウム属に属する細菌又はアースロバクター属に属する細菌などが挙げられる。このうち、コリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属するものが好ましく、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacteriumlactofermentum)に分類される細菌が更に好ましい。
ジカルボン酸生産能を有する微生物としてコハク酸生産菌を用いる場合、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性が増強され、ラクテートデヒドロゲナーゼ活性が低下した株を用いることが好ましい。
微生物変換における反応温度及び圧力等の反応条件は、選択される菌体又はカビなどの微生物の活性に依存することになるが、ジカルボン酸を得るための好適な条件を各々の場合に応じて選択すればよい。
本発明で使用されるジカルボン酸成分は、通常、着色の少ないものであることが好ましい。本発明で使用されるジカルボン酸成分の黄色度(YI値)は、その上限が、通常50以下であることが好ましく、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは6以下、特に好ましくは4以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20以上であることが好ましく、より好ましくは−10以上、さらに好ましくは−5以上、特に好ましくは−3以上、最も好ましくは−1以上である。
YI値が50以下であるジカルボン酸成分を使用することにより、得られるポリウレタンの着色を抑えることができる。一方、YI値が−20以上であるジカルボン酸成分を使用することにより、その製造に極めて高額の設備投資を要しない他、多大な製造時間を要しないなど経済的に有利である。なお、本明細書におけるYI値は、JIS−K7105に基づく方法で測定される値である。
(2)ジヒドロキシ化合物
本発明に用いるジヒドロキシ化合物としては、2個の水酸基を有する、芳香族ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ジヒドロキシ化合物としては、これらのうち、得られるポリエステルポリオールの取扱いのし易さや物性のバランスの点で、脂肪族ジヒドロキシ化合物、即ち、直鎖又は分岐の鎖状或いは脂環式ジヒドロキシ化合物が好ましく、その炭素数の下限値は好ましくは2以上であり、上限値が好ましくは10以下、より好ましくは6以下のものが挙げられる。
脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
この内、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールが好ましく、その中でも、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオール並びにこれらの混合物が好ましく、更には、1,4−ブタンジオールを主成分とするもの、又は、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
ここでいう「主成分とする」とは、全ジヒドロキシ化合物に対して、通常50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であることをさす。
水酸基の間のメチレン鎖、及び炭素数が偶数のジヒドロキシ化合物を使用すると、得られるポリエステルポリオールを用いて製造されるポリウレタンの機械強度が高まり、炭素数が奇数又は分岐構造を有するジヒドロキシ化合物を使用すると得られるポリエステルポリオールの取り扱い性が向上する。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2個の水酸基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物であれば、特に制限はされないが、炭素数の下限値が好ましくは6以上であり、上限値が通常好ましくは15以下の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン及びビス(p−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン等が挙げられる。
本発明において、ポリエステルポリオールの製造に用いる全ジヒドロキシ化合物中、芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量は、通常30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
また、ジヒドロキシ化合物としては、両末端ヒドロキシポリエーテルを用いることもできる。両末端ヒドロキシポリエーテルの炭素数の下限値が通常4以上であることが好ましく、より好ましくは10以上であり、上限値が通常1000以下であることが好ましく、より好ましくは200以下、更に好ましくは100以下である。
両末端ヒドロキシポリエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリ1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合ポリエーテル等を使用することもできる。
これらの両末端ヒドロキシポリエーテルの使用量は、得られるポリエステルポリオール中の両末端ヒドロキシポリエーテル由来の構成単位の含有量として、通常90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
本発明において、これらのジヒドロキシ化合物は、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジヒドロキシ化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造されたものであってもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物又は環状エーテルを化学反応によりジヒドロキシ化合物に変換したものであってもよい。
例えば、発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン及びγ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造してもよいし、発酵法で直接1,4−ブタンジオールを製造してもよいし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でも発酵法で直接1,4−ブタンジオールを製造する方法とコハク酸を還元触媒により水添して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。
コハク酸を水添する際に用いる還元触媒としては、例えば、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Cu及びCo並びにその化合物が挙げられる。より具体的には、Pd/Ag/Re、Ru/Ni/Co/ZnO、Cu/Zn酸化物、Cu/Zn/Cr酸化物、Ru/Re、Re/C、Ru/Sn、Ru/Pt/Sn、Pt/Re/アルカリ、Pt/Re、Pd/Co/Re、Cu/Si、Cu/Cr/Mn、ReO/CuO/ZnO、CuO/CrO、Pd/Re、Ni/Co、Pd/CuO/CrO3、リン酸Ru、Ni/Co、Co/Ru/Mn、Cu/Pd/KOH及びCu/Cr/Znが挙げられる。この中でもRu/Sn又はRu/Pt/Snが触媒活性の点で好ましい。
更に、バイオマス資源から公知の有機化学触媒反応の組み合わせによりジヒドロキシ化合物を製造する方法も用いることができ、例えば、バイオマス資源としてペントースを利用する場合には公知の脱水反応、触媒反応の組み合わせで容易にブタンジオール等のジヒドロキシ化合物を製造することができる。
バイオマス資源由来から誘導されたジヒドロキシ化合物には、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的には、アミノ酸、蛋白質、アンモニア、尿素又は発酵菌由来の窒素原子が含まれてくる。
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物中に含まれる窒素原子含有量は、該ジヒドロキシ化合物に対する重量濃度で、上限は通常2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常、0.01ppm以上であることが好ましく、より好ましくは0.05ppm以上、精製工程の経済性の理由から更に好ましくは0.1ppm以上、より更に好ましくは1ppm以上、特に好ましくは10ppm以上である。
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物中に含まれる窒素原子含有量を前記上限以下とすることにより、重合反応の遅延化や得られるポリエステルポリオールのカルボキシル末端数量の増加、着色、一部ゲル化、及び安定性の低下などを防ぐことができる。一方、前記下限以上とすることにより、精製工程が煩雑となるのを防ぎ、経済的に有利になる。窒素原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
また、別の態様としては、ジカルボン酸成分及びジヒドロキシ化合物中に含まれる窒素原子含有量が、ポリエステルポリオール製造原料総和に対する重量濃度で、上限は通常2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常0.01ppm以上であることが好ましく、より好ましくは0.05ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上である。
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物を用いる場合には、酸による中和工程を含む精製処理により硫黄原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的に、硫黄原子が含有される不純物としては、例えば、硫酸、亜硫酸及び有機スルホン酸塩等が挙げられる。
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物中に含まれる硫黄原子含有量は、該ジヒドロキシ化合物に対する重量濃度で、上限は通常100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下、最も好ましくは0.5ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常0.001ppm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.05ppm以上、特に好ましくは0.1ppm以上である。
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物中に含まれる硫黄原子含有量を前記上限以下とすることにより、重合反応の遅延化や得られるポリエステルポリオールのカルボキシル末端数量の増加、着色、一部ゲル化、及び安定性の低下などを防ぐことができる。一方、前記下限以上とすることにより、精製工程が煩雑となるのを防ぎ、経済的に有利になる。硫黄原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
また、別の態様としては、ジカルボン酸成分及びジヒドロキシ化合物中に含まれる硫黄原子含有量が、ポリエステルポリオール製造原料総和に対する重量濃度で、上限は通常100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは20ppm以下であり、更に好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下、最も好ましくは0.5ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常0.001ppm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.05ppm以上、特に好ましくは0.1ppm以上である。
本発明において、バイオマス資源由来のジヒドロキシ化合物をポリエステルポリオール原料として使用するにあたり、上記不純物に起因するポリウレタンの着色を抑制するため、反応系に連結されるジヒドロキシ化合物を貯蔵するタンク内の酸素濃度又は温度を制御してもよい。
前記制御により、不純物自体の着色や不純物により促進されるジヒドロキシ化合物の酸化反応が抑制され、例えば、1,4−ブタンジオールを使用する場合の2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジヒドロキシ化合物の酸化生成物によるポリウレタンの着色を防止することができる。
酸素濃度を制御して原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、例えば、公知の金属製又はこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、並びにガラス製又は樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが挙げられる。
金属製タンクの構成材料としては、公知のものが使用され、具体的には、例えば、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304及びSUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ並びにチタン等が挙げられる。
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対する体積%として、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上であることが好ましく、より好ましくは0.0001%以上であり、更に好ましくは0.001%以上、最も好ましくは0.01%以上であり、上限が通常10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の酸素濃度を0.00001%以上とすることにより、管理工程が煩雑となるのを防ぎ、経済的に有利である。また、酸素濃度を10%以下とすることにより、ジヒドロキシ化合物の酸化反応生成物によるポリウレタンの着色が増大するのを防ぐことができる。
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の貯蔵温度は、下限が通常15℃以上であることが好ましく、より好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは50℃以上、最も好ましくは100℃以上であり、上限が230℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下、最も好ましくは160℃以下である。
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の貯蔵温度を15℃以上とすることにより、ポリエステルポリオール製造時の昇温に時間を要するのを防ぎ、ポリエステルポリオールの製造が経済的に有利になるとともに、ジヒドロキシ化合物の種類によってこれが固化してしまうことを防ぐことができる。一方、230℃以下とすることにより、ジヒドロキシ化合物の気化を抑えて高圧対応の貯蔵設備が必要となるのを防ぎ、経済的に有利になるとともに、ジヒドロキシ化合物の劣化が防ぐことができる。
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の圧力は、通常、乾燥窒素ガス又は乾燥空気による微加圧であることが好ましい。圧力が低すぎたり、高すぎる場合には、管理設備が煩雑になり経済的に不利となる。
本発明において、色相の良いポリウレタンを得るために、ポリエステルポリオールの製造に用いられるジヒドロキシ化合物の酸化生成物の含有量の上限は、通常、ジヒドロキシ化合物中の重量濃度として、10000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5000ppm以下、更に好ましくは3000ppm以下、最も好ましくは2000ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常、1ppm以上であることが好ましく、精製工程の経済性の理由から、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは100ppm以上である。
なお、バイオマス資源由来のジヒドロキシ化合物は、通常蒸留により精製されるが、本発明において、糖及び/又はその誘導体を含むジヒドロキシ化合物を用いて糖及び/又はその誘導体を含むポリエステルポリオールを製造し、この糖及び/又はその誘導体を含むポリエステルポリオールを用いて、ポリウレタン製造の反応系に所定量の糖及び/又はその誘導体を存在させる場合には、発酵液に由来する糖及び/又はその誘導体を含有させた状態でポリエステルポリオールの製造に用いることもできる。
糖及び/又はその誘導体を含むジヒドロキシ化合物を用いて、ジヒドロキシ化合物を含むポリエステルポリオールを製造する場合、この原料ジヒドロキシ化合物中の糖及び/又はその誘導体の含有量は、反応系に糖及び/又はその誘導体を前述の存在量で存在させることができるような量であればよいが、例えば糖及び/又はその誘導体を0.1〜100重量ppm含むジヒドロキシ化合物を好ましく用いることができる。なお、ここで糖及び/又はその誘導体の含有量は、糖及び/又はその誘導体を含んだジヒドロキシ化合物中の含有量、即ち、糖及び/又はその誘導体とジヒドロキシ化合物との合計に対する糖及び/又はその誘導体の含有量である。
(3)ポリエステルポリオールの製造
本発明におけるポリエステルポリオールは、前記ジカルボン酸成分とジヒドロキシ化合物とをエステル化及び/又はエステル交換反応させることにより製造される。
特に、バイオマス資源由来のジカルボン酸成分及び/又はジヒドロキシ化合物を用いる場合、ポリエステルポリオールの製造反応中、酸素濃度を特定値以下に制御された反応槽内でポリエステルポリオールを製造してもよい。
このことにより、不純物である窒素化合物の酸化反応によるポリエステルポリオールの着色、又は、例えば、ジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオールを使用する場合の1,4−ブタンジオールの酸化反応により生成する2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジヒドロキシ化合物の酸化反応生成物によるポリエステルポリオールの着色を抑制することができるため、色相の良いポリエステルポリオールを製造することができる。
前記製造反応とは、原料を反応槽へ仕込み、昇温を開始した時点から反応槽で常圧もしくは減圧下にて所望の粘度のポリエステルポリオールを製造し、反応槽を減圧から常圧以上に復圧するまでの間と定義する。
製造反応中の反応槽中の酸素濃度は、反応槽全体積に対する体積%として、下限は、特に限定されないが通常1.0×10−9%以上であることが好ましく、より好ましくは1.0×10−7%以上であり、上限が通常10%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下、最も好ましくは0.01%以下である。酸素濃度を1.0×10−9%以上とすることにより、管理工程が煩雑となるのを防ぐことができる。また、10%以下とすることにより、ポリエステルポリオールの着色が著しくなるのを防ぐことができる。
バイオマス資源由来のジカルボン酸成分を反応槽に供給する場合、ジカルボン酸成分が固体であれば、固体状態のまま反応槽に供給することができる。その供給中、あるいは供給後反応槽内の酸素濃度が所望の濃度になるように製造反応開始前に操作することが重要である。酸素濃度の調整に際して、原料ジカルボン酸成分が気相に舞い上がって操作がしにくくなる場合があるので供給時の原料ジカルボン酸成分の粒径(平均粒径)は0.01mm〜100mm、好ましくは0.05mm〜10mmを採用することが好ましい。
また、バイオマス資源由来のジカルボン酸成分を、ポリエステルポリオール原料として反応槽に供給するにあたり、ジカルボン酸成分を溶融状態で供給したり、又は反応槽の前段に原料ジヒドロキシ化合物若しくは適当な溶剤にジカルボン酸成分を溶解させる溶解槽を設け、原料ジカルボン酸成分の溶液若しくは懸濁液として反応槽に供給することもできる。
また、バイオマス資源由来のジカルボン酸成分を、ポリエステルポリオール原料として使用するにあたり、ジカルボン酸成分を貯蔵タンクから反応器へ移送する工程において、酸素濃度と湿度を制御してもよい。これにより不純物である硫黄成分による移送管内の腐食を防止することができ、更には窒素源の酸化反応による着色を抑えることができ、色相の良いポリエステルポリオールを製造することができる。
移送管の種類としては、具体的には、例えば、通常の公知の金属製又はこれらの内面にガラス及び樹脂などのライニングを施したもの、並びにガラス製又は樹脂製のものなどが挙げられる。強度の面などから金属製又はそれらにライニングを施したものが好ましい。
金属製移送管の構成材料としては、公知のものが使用され、具体的には、例えば、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304及びSUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ並びにチタン等が挙げられる。
移送管内の酸素濃度は、移送管全体積に対する体積%で、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上であることが好ましく、より好ましくは0.01%以上である。一方、上限が通常16%以下であることが好ましく、より好ましくは14%以下、更に好ましくは12%以下である。酸素濃度を0.00001%以上とすることにより、設備投資や管理工程が煩雑になるのを防ぎ経済的に有利である。一方、16%以下とすることにより、製造されるポリエステルポリオールの着色を抑えることができる。
移送管内の湿度は、下限は特に限定されないが、通常0.0001%以上であることが好ましく、より好ましくは0.001%以上であり、更に好ましくは0.01%以上、最も好ましくは0.1%以上であり、上限が80%以下であることが好ましく、より好ましくは60%以下、更に好ましくは40%以下である。
移送管内の湿度を0.0001%以上とすることにより、管理工程が煩雑となるのを防ぎ経済的に有利である。また、80%以下とすることにより、貯蔵タンク又は配管の腐食を防ぐことができる。更に、移送管内の湿度を80%以下とすることにより、貯蔵タンク又は配管へのジカルボン酸成分の付着、ジカルボン酸成分のブロック化等の問題を防ぎ、これらの付着現象による配管の腐食を抑制することができる。
移送管内の温度は、下限が通常−50℃以上であることが好ましく、より好ましくは0℃以上である。一方、上限が通常200℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは50℃以下である。温度を−50℃以上とすることにより、移送コストを抑えることができる。また、200℃以下とすることにより、ジカルボン酸成分の脱水反応等が併発するのを抑えることができる。
移送管内の圧力は、通常、0.1kPaから1MPaであることが好ましく、操作性の観点から0.05MPa以上0.3Mpa以下であることがより好ましい。
ポリエステルポリオールを製造する際に用いるジヒドロキシ化合物の使用量は、ジカルボン酸成分のモル数に対し、所望の分子量のポリエステルポリオールとなるに必要なジヒドロキシ化合物量に実質的に等モルであるが、一般には、エステル化及び/又はエステル交換反応中のジヒドロキシ化合物の留出があることから、0.1〜20モル%過剰に用いることが好ましい。
また、エステル化及び/又はエステル交換反応は、エステル化触媒の存在下に行うのが好ましい。エステル化触媒の添加時期は特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、またある程度水を除去した後、あるいは減圧開始時に添加してもよい。
ジカルボン酸を原料とした場合は原料ジカルボン酸自体が触媒作用を示すので、反応初期は触媒添加をすることなく反応させ、生成水の生成速度見合いで、反応速度が不十分になったときに原料成分とは異なるエステル化触媒を添加するのが一般的である。このとき原料成分と異なるエステル化触媒を添加する時期は、無添加反応初期のエステル化反応速度に比し、成行きエステル化反応速度が好ましくは1/3以下、より好ましくは1/5以下になったときとするのが、反応が制御しやすく好ましい。
エステル化触媒としては、例えば、水素原子及び炭素原子を除く周期表第1族〜第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、例えば、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれる、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、金属アルコキシド、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物及びハロゲン化物等の無機化合物並びにそれらの混合物が挙げられる。
なお、これらの触媒成分は、前述の理由からバイオマス資源から誘導される原料中に含まれる場合がある。その場合は、特に原料の精製を行わず、そのまま金属を含む原料として使用してもよい。
上記のエステル化触媒の中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、エステル化反応時に溶融或いは溶解した状態であると反応速度が高くなる理由から、エステル化反応時に液状であるか、製造されるポリエステルポリオールに溶解する化合物が好ましい。
チタン化合物としては、例えば、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロ
ヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。
また、好ましいチタン化合物としては、例えば、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート及びブチルチタネートダイマー等も挙げられる。
更には、好ましいチタン化合物としては、例えば、酸化チタン、又はチタンと珪素とを含む複合酸化物(例えば、チタニア/シリカ複合酸化物)も挙げられる。
これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン並びにチタニア/シリカ複合酸化物が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー及びチタニア/シリカ複合酸化物がより好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート及びチタニア/シリカ複合酸化物が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラアセテート、ジルコニウムアセテートヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテート、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド及びジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート並びにそれらの混合物が例示される。
更には、ジルコニウム化合物としては、酸化ジルコニウムや、ジルコニウムと珪素とを含む複合酸化物も好適に使用される。
これらの中では、ジルコニルジアセテート、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテート、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド及びジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましく、ジルコニルジアセテート、ジルコニウムテトラアセテート、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド及びジルコニウムテトラ−n−ブトキシドがより好ましく、特にジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが好ましい。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、例えば、酸化ゲルマニウム及び塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、並びにテトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
これらのエステル化触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルポリオールに対する金属換算の重量濃度として、下限値が通常1ppm以上であることが好ましく、より好ましくは3ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量を30000ppm以下とすることにより、経済的に有利であるばかりでなく得られるポリエステルポリオールの熱安定性を向上することができる。また、1ppm以上とすることにより、ポリエステルポリオール製造反応時の重合活性を向上させることができる。
ジカルボン酸成分とジヒドロキシ化合物とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下であることが好ましく、より好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜100Torrであることが好ましく、常圧〜10Torrがより好ましい。
反応時間は、下限が通常10分以上であることが好ましく、上限が通常10時間以下であることが好ましく、より好ましくは5時間以下である。
また、エステル化反応及び/又はエステル交換反応は常圧もしくは減圧で実施されるが、反応速度見合い、及び原料ジヒドロキシ化合物の沸点、共沸溶剤を共存させる場合はその沸点見合いで、減圧の時期、減圧度を調整することが好ましい。より安定した操作を行うためには、エステル化反応及び/又はエステル交換反応開始時には常圧で反応を行い、成り行きのエステル化反応及び/又はエステル交換反応速度が初期速度の1/2以下になった後、好ましい時期に減圧を開始することが好ましい。減圧開始時期は、触媒添加時期の前後のいずれでも構わない。
ポリエステルポリオールの製造に用いる反応装置としては、公知の縦型又は横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には凝縮器を結合し、該凝縮器にて重縮合反応中に生成する揮発成分又は未反応原料を回収する方法が好ましい。
工業的製法においては、反応をもっぱら留出成分の流出量で判断し、反応の終点を決定するが、適切な流出量は原料ジヒドロキシ化合物の沸点(流出のしやすさ)に依存する。一般的には、反応中の酸価で反応終点を決定する。また、所望の分子量にポリエステルポリオールを調整する処理(再縮合や原料ジヒドロキシ化合物を加えての解重合)を場合によっては加える。また、一般的には流出量見合いで反応終点を判断するが、反応終了後、かかる生成物の酸価を測定し、酸価が目標規格外であれば、更にエステル化反応及び/又はエステル交換反応を再実行し、生成ポリエステルポリオールの酸価を所望の酸価に調整する。
前記反応の終点とする酸価は1.0mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mgKOH/g以下、更に好ましくは0.2mgKOH/g以下をもって終点とすることが好ましい。また、前記反応終了時の好ましい水分量は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下であり、終点時の適切な酸価と水分量を調整するため、場合によっては水と共沸し、かつ2相形成し、活性水素をもたない共沸溶剤を添加して、反応を行うこともできる。この共沸溶剤はかかる性能を有していれば特に制限はないが、ベンゼン及びトルエンなどの安価な芳香族化合物が一般的である。
このようなポリエステルポリオール製造反応後は、そのまま保存又はウレタン化反応に供給することもできるし、添加触媒を失活させる処理を行った後、保存又はウレタン化反応に供給することもできる。添加触媒を失活させる方法に特に制限は無いが、亜リン酸トリエステル等の触媒失活添加剤を用いるのが、水処理等のポリエステルポリオール構造が壊れる懸念のある方法よりも好ましい。
(4)ポリエステルポリオール
本発明のポリウレタンの製造に用いられるポリエステルポリオールとしては、以下の組み合わせでジカルボン酸成分とジヒドロキシ化合物とをエステル化又はエステル交換反応させて製造されたポリエステルポリオールが具体的に例示できる。
コハク酸を用いたポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸とエチレングリコールとのポリエステルポリオール、コハク酸と1,3−プロピレングリコールとのポリエステルポリオール、コハク酸と2−メチル−1,3−プロパンジオールとのポリエステルポリオール、コハク酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとのポリエステルポリオール、コハク酸とネオペンチルグリコールとのポリエステルポリオール、コハク酸と1,6−ヘキサメチレングリコールとのポリエステルポリオール、コハク酸と1,4−ブタンジオールとのポリエステル、及びコハク酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールとのポリエステルポリオールなどが挙げられる。
シュウ酸を用いたポリエステルポリオールとしては、例えば、シュウ酸とエチレングリコールとのポリエステルポリオール、シュウ酸と1,3−プロピレングリコ−ルとのポリエステルポリオール、シュウ酸と2−メチル−1,3−プロパンジオールとのポリエステルポリオール、シュウ酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとのポリエステルポリオール、シュウ酸とネオペンチルグリコールとのポリエステルポリオール、シュウ酸と1,6−ヘキサメチレングリコールとのポリエステルポリオール、シュウ酸と1,4−ブタンジオールとのポリエステルポリオール、及びシュウ酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールとのポリエステルポリオールなどが挙げられる。
アジピン酸を用いたポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸とエチレングリコールとのポリエステルポリオール、アジピン酸と1,3−プロピレングリコ−ルとのポリエステルポリオール、アジピン酸と2−メチル−1,3−プロパンジオールとのポリエステルポリオール、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとのポリエステルポリオール、アジピン酸とネオペンチルグリコールとのポリエステルポリオール、アジピン酸と1,6−ヘキサメチレングリコールとのポリエステルポリオール、アジピン酸と1,4−ブタンジオールとのポリエステルポリオール、及びアジピン酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールとのポリエステルポリオールなどが挙げられる。
その他、上記のジカルボン酸の2種以上を組み合わせて用いたポリエステルポリオールも好ましく、コハク酸とアジピン酸とエチレングリコールとのポリエステルポリオール、コハク酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールとのポリエステルポリオール、テレフタル酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールとのポリエステルポリオール、及びテレフタル酸とコハク酸と1,4−ブタンジオールとのポリエステルポリオールなどが挙げられる。
これらのポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は水酸基価換算で通常500〜5000であることが好ましく、より好ましくは700〜4000、更に好ましくは800〜3000である。ポリエステルポリオールの数平均分子量が500以上であると、このポリエステルポリオールを用いてポリウレタンとして満足する物性のものが得られる。また、5000以下であると、ポリエステルポリオールの粘度が高すぎることなく、取り扱い性が良好である。
更にこのポリエステルポリオールのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定による分子量分布(Mw/Mn)は通常1.2〜4.0であることが好ましく、より好ましくは1.5〜3.5、更に好ましくは1.8〜3.0である。分子量分布を1.2以上とすることによりポリエステルポリオール製造の経済性が向上する。また4.0以下とすることにより、このポリエステルポリオールを用いて得られるポリウレタンの物性が向上する。
更にこれらのポリエステルポリオールは、ウレタン製造反応を無溶剤で行う場合は、40℃で液状が好ましく、更に好ましくは40℃の粘度が15000mPa・s以下である。
本発明のポリエステルポリオールは常温で固体であっても液体(液状)であっても特に制限されないが、取り扱いの上では常温で液体であるのが好ましい。
本発明のポリエステルポリオール中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は該ポリエステルポリオール中の重量濃度として1000ppm以下であることが好ましい。ポリエステルポリオール中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下であり、その中でも40ppm以下が好ましく、更には30ppm以下が好ましく、20ppm以下が最も好ましい。
ポリエステルポリオール中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は主に原料中の窒素原子に由来するものであるが、ポリエステルポリオール中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量が20ppm以下であると得られるポリウレタンの着色が少なくなる。
本発明のポリエステルポリオールは、通常、着色の少ないポリエステルポリオールであることが好ましい。本発明のポリエステルポリオールのハーゼン色数で表した値(APHA値:JIS−K0101に準拠)は、その上限が、通常50以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、特に好ましくは25以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上、更に好ましくは5以上である。
APHA値が50以下であるポリエステルポリオールは、例えばこのポリエステルポリオールを原料とするポリウレタンのフィルム及びシート等の使用用途が制限されないという利点を有する。一方、APHA値が1以上であるポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオールを製造する製造プロセスが煩雑ではなく、極めて高額の設備投資が不要であり経済的に有利である。
また、本発明において、糖及び/又はその誘導体を含むポリエステルポリオールを用いてポリウレタン製造の反応系に所定量の糖及び/又はその誘導体を存在させる場合、このポリエステルポリオール中の糖及び/又はその誘導体の含有量は、反応系に糖及び/又はその誘導体を前述の存在量で存在させることができる量であればよいが、例えば糖及び/又はその誘導体を0.1〜80重量ppm、特には0.2〜40重量ppm、とりわけ0.5〜10重量ppm含むポリエステルポリオールを好ましく用いることができる。なお、ここで糖及び/又はその誘導体の含有量は、糖及び/又はその誘導体を含んだポリエステルポリオール中の含有量、即ち、糖及び/又はその誘導体とポリエステルポリオールとの合計に対する糖及び/又はその誘導体の含有量である。
本発明において、ポリウレタンの製造には、上述のポリエステルポリオールの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリエーテルポリオールをポリカーボネートジオールと混合して用いてもよく、変性により共重合ポリオールにして用いてもよい。
[ポリウレタンの製造]
次に、本発明によるポリウレタンの製造方法について説明する。
本発明においては、糖及び/又はその誘導体の所定量の存在下に、前述のポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンを製造する。この際、必要に応じて鎖延長剤を用いてもよい。
(1)イソシアネート化合物
本発明において用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート及びα,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、合成・人工皮革や塗料のような耐候性を必要とされる用途には、光による黄変が少ない点で脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートを使用することが好ましい。中でも、物性が良く入手が容易な点で1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。一方、弾性繊維等、強度を必要とされる用途には、凝集力の高い芳香族ジイソシアネートを使用することが好ましく、物性が良く入手が容易な点で、特にトリレンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと称することがある)を用いることが好ましい。またイソシアネート化合物のNCO基の一部をウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド及びイミド等に変性したものであってもよく、更に多核体には前記以外の異性体を含有しているものも含まれる。
これらのイソシアネート化合物の使用量は、ポリエステルポリオールの水酸基及び鎖延長剤の水酸基及びアミノ基の1当量に対し、通常0.1当量〜10当量であることが好ましく、より好ましくは0.8当量〜1.5当量、更に好ましくは0.9当量〜1.05当量である。
イソシアネート化合物の使用量を上記上限以下とすることにより、未反応のイソシアネート基が好ましくない反応を起こすのを防ぎ、所望の物性が得られ易い。また、イソシアネート化合物の使用量を上記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量が十分に大きくなり、所望の性能を発現させることができる。
イソシアネート化合物は、ポリエステルポリオールや鎖延長剤等、イソシアネート化合物以外のポリウレタン原料に含まれる水分と反応して一部消失するため、それを補填する量を所望のイソシアネート化合物使用量に加えても良い。具体的には、反応の際イソシアネート化合物と混合する前に、ポリエステルポリオールや鎖延長剤等の水分量を測定しておき、その水分の物質量の2倍に相当するイソシアネート基を持つイソシアネート化合物を、所定の使用量に加えるものである。
イソシアネート基が水分と反応して消失する機構は、イソシアネート基が水分子との反応でアミン化合物となり、そのアミン化合物が更にイソシアネート基と反応してウレア結合を形成することにより、水1分子に対しイソシアネート基2つが消失するものである。この消失により必要とされるイソシアネート化合物が不足し、所望の物性が得られなくなる恐れがあるため、上記に記載の方法で水分量に見合う量を補填するためのイソシアネート化合物を添加することが有効である。
(2)鎖延長剤
本発明においては、必要に応じて2つ以上の活性水素を有する鎖延長剤を用いてもよい。鎖延長剤は、主として、2個以上の水酸基を有する化合物及び2個以上のアミノ基を有する化合物に分類される。この中でも、ポリウレタン用途には短鎖ポリオール、具体的には2個以上の水酸基を有する化合物を、ポリウレタンウレア用途には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましい。
また、鎖延長剤として、分子量(数平均分子量)が500以下の化合物を併用すると、ポリウレタンエラストマーのゴム弾性が向上するために、物性上更に好ましい。
2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール及び1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール及びビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、並びにキシリレングリコール及びビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。
2個以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン及び4,4′−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン及び1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
この中でも本発明において好ましいのは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ジアミノペンタン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミンであり、特に、取扱いや保管の容易さと得られるポリウレタンの物性のバランスが優れる点において1,4−ブタンジオールが好ましい。
これらの鎖延長剤についても、バイオマス資源由来のものを用いることもでき、その場合の製造方法は、前述のバイオマス資源由来のジヒドロキシ化合物の製造方法と同様である。
これらの鎖延長剤のうち、イソシアネート化合物として芳香族ポリイソシアネートを使用する時には水酸基を有するものが、一方、脂肪族ポリイソシアネートを使用する時にはアミノ基を有するものが好ましい。また、これらの鎖延長剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、ポリエステルポリオール1当量に対し、通常0.1当量以上10当量以下であることが好ましい。
鎖延長剤の使用量を上記上限以下とすることにより、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)が硬くなりすぎるのを防ぎ、所望の特性が得られ、溶媒に溶け易く加工が容易である。また、上記下限以上とすることにより、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)が柔らかすぎることなく、十分な強度、弾性回復性能又は弾性保持性能が得られ、高温特性を向上させることができる。
本発明において、鎖延長剤として、糖及び/又はその誘導体を含むものを用いて反応系に糖及び/又はその誘導体の所定量を存在させるようにすることもできる。その場合、鎖延長剤中の糖及び/又はその誘導体の含有量は、反応系に糖及び/又はその誘導体を前述の存在量で存在させることができるような量であればよいが、例えば糖及び/又はその誘導体を0.1〜800重量ppm、特には0.5〜100重量ppm、更には10〜100重量ppm含む鎖延長剤を好ましく用いることができる。なお、ここで糖及び/又はその誘導体の含有量は、糖及び/又はその誘導体を含んだ鎖延長剤中の含有量、即ち、糖及び/又はその誘導体と鎖延長剤との合計に対する糖及び/又はその誘導体の含有量である。
なお、ポリウレタンの製造原料として糖及び/又はその誘導体を含むポリエステルポリオールと糖及び/又はその誘導体を含む鎖延長剤を用いて反応系に糖及び/又はその誘導体が存在するようにすることもできる。
(3)鎖停止剤
本発明においてはまた、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することもできる。これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノヒドロキシ化合物、並びにアミノ基を有するモルホリン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンが例示される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(4)架橋剤
本発明においてはまた、得られるポリウレタンの耐熱性や強度を上げる目的で、必要に応じて3個以上の活性水素基やイソシアネート基を持つ架橋剤を使用することができる。これらの架橋剤にはトリメチロールプロパンやグリセリン並びにそのイソシアネート変性物、ポリメリックMDI等が使用できる。
(5)ポリウレタンの製造
本発明においては、前述のポリエステルポリオールとイソシアネート化合物と、必要に応じて、上述の鎖延長剤、鎖停止剤等を用いて所定量の糖及び/又はその誘導体の存在下にポリウレタンを製造する。
本発明において、ポリウレタンはバルクつまり無溶剤で反応させて製造しても、また非プロトン性極性溶媒の様なポリウレタンの溶解性に優れた溶媒中で反応させて製造してもよい。
下記に製造方法の一例を示すが、何ら以下の方法に限定されるものではない。製造方法としては、例えば、一段法及び二段法が挙げられる。
一段法とは、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及び鎖延長剤を同時に反応させる方法である。
また、二段法とは、まずポリエステルポリオールとイソシアネート化合物を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、プレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、イソシアネート基末端の二段法とも言う)である。また、両末端が水酸基のプレポリマーを調製した後に、プレポリマーとイソシアネート化合物とを反応させる方法も挙げられる。
この中でも、イソシアネート基末端の二段法は、ポリエステルポリオールをあらかじめ1当量以上のイソシアネート化合物と反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネートで封止された中間体を調製する工程を経るものである。
プレポリマーをいったん調製した後に鎖延長剤と反応させることにより、ソフトセグメント部分の分子量を調整しやすく、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がしっかりとなされやすく、エラストマーとしての性能を出しやすい特徴がある。
特に鎖延長剤がジアミンの場合には、ポリエステルポリオールの水酸基と比較して、イソシアネート基との反応速度が大きく異なるため、プレポリマー法でポリウレタンウレア化を実施することがより好ましい。
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及び鎖延長剤を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。各化合物の使用量は、上記記載の量を使用すればよい。
ワンショット法は溶媒を用いても用いなくてもよい。溶媒を用いない場合は、イソシアネート化合物とポリエステルポリオール等を低圧発泡機や高圧発泡機を使用して反応させてもよいし、高速回転混合機を使用して攪拌混合して反応させてもよい。
溶媒を用いる場合は、溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン及びシクロヘキサン等の炭化水素類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、クロルベンゼン、トリクレン及びパークレン等のハロゲン化炭化水素類、並びにγ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これら有機溶媒の中でも、溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒の好ましい具体例を挙げると、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びジメチルスルホキシドが挙げられ、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
ワンショット法の場合、NCO/活性水素基(ポリエステルポリオールと鎖延長剤)の反応当量比は下限が通常0.50であることが好ましく、より好ましくは0.8であり、上限が通常1.5であることが好ましく、より好ましくは1.2の範囲である。
前記反応当量比を前記1.5以下とすることにより、過剰のイソシアネート基が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与えるのを防ぐことができる。また、0.50以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がり、強度又は熱安定性に問題を生じるのを防ぐことができる。
反応は、好ましくは0〜100℃の温度で行われるが、この温度は溶媒の量、使用原料の反応性、反応設備等により調整することが好ましい。反応温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が悪く、また高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下にて脱泡しながら行ってもよい。
また、反応系には必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。
触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、あらかじめイソシアネート化合物とポリエステルポリオールとを、好ましくは0.1〜10.00の反応当量比で反応させたプレポリマーを製造する。次いで該プレポリマーにイソシアネート化合物、鎖延長剤である活性水素化合物成分を加えて2段階反応させる。特にポリエステルポリオールに対して当量以上のイソシアネート化合物を反応させて両末端NCOプレポリマーを得、続いて鎖延長剤である短鎖ジオール又はジアミンを作用させてポリウレタンを得る方法が有用である。
二段法は溶媒を用いても用いなくてもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、クロルベンゼン、トリクレン及びパークレン等のハロゲン化炭化水素類、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
本発明では、これら有機溶媒の中でも、溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒の好ましい具体例を挙げると、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びジメチルスルホキシドが挙げられ、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
イソシアネート基末端プレポリマーを合成する場合、(1)まず溶媒を用いないで直接イソシアネート化合物とポリエステルポリオールを反応させてプレポリマーを合成しそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶解させて使用してもよいし、(3)溶媒を用いてイソシアネート化合物とポリエステルポリオールを反応させてプレポリマーを合成してもよい。
(1)の場合には、鎖延長剤と作用させるにあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を導入するなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが好ましい。
プレポリマー合成時のNCO/活性水素基(ポリエステルポリオール)の反応当量比は、下限が通常0.6であることが好ましく、より好ましくは0.8であり、上限が通常10であることが好ましく、より好ましくは5、更に好ましくは3の範囲である。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基またはOH基の当量に対して、下限が通常0.8であることが好ましく、より好ましくは0.9であり、上限が通常2であることが好ましく、より好ましくは1.2の範囲である。この比を2以下とすることにより、過剰の鎖延長剤が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与えるのを防ぐことができる。また、この比を0.8以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がり、強度や熱安定性に問題を生じるのを防ぐことができる。
また、反応時に一官能性の有機アミンやアルコールを共存させてもよい。
反応温度は、好ましくは0〜250℃とされるが、この温度は溶媒の量、使用原料の反応性、反応設備等により調整することが好ましい。反応温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が悪く、また高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下にて脱泡しながら行ってもよい。
また、反応系には必要に応じて、触媒及び安定剤等を添加することもできる。
触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。しかしながら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。
安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
ポリウレタン製造時に、一般的に使用されている石油由来のジカルボン酸成分を使用すると、ウレタン反応時に反応の制御がし難く、ゲル化等により分子量が異常に高くなったり、分子量分布が異常に大きくなったりするが、ポリエステルポリオール製造原料として、前記有機酸の含有量が特定範囲である前記ジカルボン酸成分を使用すると、ウレタン化反応時の反応制御が可能で、上記の問題が発生しない。したがって、線状のポリウレタンが製造できるので、得られるポリウレタンの取り扱い性が向上し、またその用途によって処方を調整することによって、幅広い分野で使用することが可能となる。
本発明のポリウレタン製造時に、耐熱性や強度が必要な用途で、架橋剤を添加する場合は、一般的に使用されている石油由来のジカルボン酸成分を使用する時よりも、添加量を多くするのが好ましい。また、本発明のポリウレタン製造時は得られるポリウレタンの粘度が低いので、ポリウレタンを後処理、加工する際に、石油由来のコハク酸を使用する時よりも、温度を少し下げるのが好ましく、結果として取り扱い性、安全性、経済性の点で好ましい。
(6)ポリウレタンの物性等
本発明のポリウレタンの製造方法により製造されるポリウレタン(以下「本発明のポリウレタン」と称す場合がある。)は、25℃におけるpKa値が3.7以下である有機酸単位、を少なくとも構成単位として含み、該有機酸単位の含有量が、該ジカルボン酸単位に対し0モル%超0.09モル%以下であることが好ましい。
前記有機酸単位の含有量の下限は特に制限されないが、前記ジカルボン酸単位に対し、好ましくは9×10−8モル%以上、より好ましくは9×10−7モル%以上、更に好ましくは4.5×10−6モル%以上、特に好ましくは6.3×10−6モル%以上、最も好ましくは9×10−6モル%以上で、上限は9×10−2モル%以下であることが好ましく、より好ましくは7.2×10−2モル%以下、更に好ましくは5.4×10−2モル%以下である。
前記有機酸単位の含有量が0.09モル%を超えると、ポリウレタン化反応の際のゲル化等により、分子量が異常に高かったり、分子量分布が異常に大きい、柔軟性や伸度等の機械特性が悪いポリウレタンになる傾向がある。また、前記有機酸単位の含有量が0.09モル%を超えると、その含有量にばらつきが出やすく、得られるポリウレタンの物性が一定しないだけでなく、製造工程においても、安定に操業することが難しくなる傾向がある。一方、0モル%超とすることにより、機械強度が高いポリウレタンになる傾向がある。
また、本発明のポリウレタンは以下のような物性を示すことが好ましい。
本発明のポリウレタンの物性は、ポリブチレンサクシネート又はポリブチレンサクシネートアジペートのような脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸のポリウレタンを例に説明すると、23℃における引張破断応力5〜150Mpa、破断伸度100〜1500%、というような非常に幅広い物性特性を保有することが好ましい。
また、特定の用途を対象とした場合には、前記のような範囲の域を超えた、任意の広範囲の特性を保有するポリウレタンとすることができる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリウレタン原料や添加物の種類、重合条件或いは成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。
以下に詳細に本発明のポリウレタンが有する代表的な物性値の範囲を開示する。
ポリウレタンの組成比は、ジオール単位(ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位)とジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが好ましい。
本発明のポリウレタン中の硫黄原子含有量は、該ポリウレタン質量に対して原子換算として、上限が、50ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下、最も好ましくは0.3ppm以下である。一方、下限は、特に限定されないが、0.0001ppm以上であることが好ましく、より好ましくは0.001ppm以上、更に好ましくは0.01ppm以上であり、特に好ましくは0.05ppm以上であり、最も好ましくは0.1ppm以上である。
前記硫黄含有量を50ppm以下とすることにより、ポリウレタンの熱安定性又は耐加水分解性を向上することができる。また、0.001ppm以上とすることにより、精製コストが著しく高くなるのを防ぎ、ポリウレタンの製造においては経済的に有利である。
本発明のポリウレタンは、通常、着色の少ないポリウレタンであることが好ましい。本発明のポリウレタンのYI値(JIS−K7105に準拠)は、その上限が、通常20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20以上であることが好ましく、より好ましくは−5以上、更に好ましくは−1以上である。
YI値が20以下であるポリウレタンは、フィルム及びシート等の使用用途が制限されないという利点を有する。一方、YI値が−20以上であるポリウレタンは、ポリウレタンを製造するための製造プロセスが煩雑となることが無く、極めて高額の設備投資が不要であり、経済的に有利である。
ポリウレタンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量は、用途により異なるが、ポリウレタン重合溶液として、通常1万〜100万であることが好ましく、より好ましくは5万〜50万、更に好ましくは10万〜40万、特に好ましくは10万〜30万である。分子量分布としてはMw/Mnが1.5〜3.5であることが好ましく、より好ましくは1.8〜2.5、更に好ましくは1.9〜2.3である。
前記分子量を100万以下とすることにより、溶液粘度が高くなり過ぎるのを防ぎ、取り扱い性が向上する。また、1万以上とすることにより、得られるポリウレタンの物性が低下し過ぎるのを防ぐことができる。分子量分布を1.5以上とすることにより、ポリウレタン製造の経済性が悪化し過ぎるのを防ぎ、得られるポリウレタンの弾性率が向上する。また、3.5以下とすることにより溶液粘度が高くなり過ぎるのを防ぎ、取り扱い性が向上し、また、得られるポリウレタンの弾性率が高くなり過ぎるのを防ぎ、弾性回復性が向上する。
例えば合成皮革・人工皮革、靴底用ポリウレタン、フィルム、シート、チューブ、透湿性樹脂等の用途においては、ポリウレタンの重量平均分子量は、通常1万〜100万であることが好ましく、より好ましくは5万〜50万、更に好ましくは10万〜40万、特に好ましくは15万〜35万である。分子量分布としてはMw/Mnが1.5〜3.5であることが好ましく、より好ましくは1.8〜2.5、さらに好ましくは1.9〜2.3である。
前記分子量を100万以下とすることにより、溶融粘度が高くなり過ぎるのを防ぎ、取り扱い性が良好となる。また、5万以上とすることにより、得られるポリウレタンの物性が低下し過ぎるのを防ぐことができる。分子量分布を1.5以上とすることにより、ポリウレタン製造の経済性が良好となり、得られるポリウレタンの弾性率を向上することができる。また、3.5以下とすることにより、溶融粘度が高くなり過ぎるのを防ぎ、取り扱い性が良好となり、また、得られるポリウレタンの弾性率が高くなり過ぎるのを防ぎ、弾性回復性を向上することができる。
本発明のポリウレタンを非プロトン性溶媒に溶解させた溶液(以下、「ポリウレタン溶液」ともいう。)は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さいなど保存安定性が良く、また、チクソトロピー性も小さいため、フィルム及び糸等に加工するためにも都合がよい。
ポリウレタン溶液中のポリウレタンの含有量は、ポリウレタン溶液の全重量に対して、通常1〜99重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜90重量%、更に好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。ポリウレタン溶液中のポリウレタンの含有量を1重量%以上とすることにより、大量の溶媒を除去することが必要になることがなく、生産性を向上することができる。また、99重量%以下とすることにより、溶液の粘度を抑え、操作性又は加工性を向上することができる。
ポリウレタン溶液は、特に指定はされないが、長期にわたり保存する場合は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
(7)ポリウレタンの添加剤
本発明のポリウレタンには、必要に応じて各種の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては、例えば、CYANOX1790[CYANAMID(株)製]、IRGANOX245、IRGANOX1010[以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製]、Sumilizer GA−80(住友化学(株)製)及び2,6−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、TINUVIN622LD、TINUVIN765[以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製]、SANOL LS−2626、LS−765[以上、三共(株)製]等の光安定剤、TINUVIN328及びTINUVIN234(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機リン化合物、リン及びハロゲン含有有機化合物、臭素又は塩素含有有機化合物、ポリリン酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤、二酸化チタン等の顔料、染料及びカーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン及び白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤並びに有機溶媒などが挙げられる。また、水並びに代替フロン等の発泡剤も加えてもよい。特に靴底用ポリウレタンフォームには有用である。
(8)ポリウレタン成形体・用途
本発明のポリウレタン及びそのポリウレタン溶液は、多様な特性を発現させることができ、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医用材料、人工皮革等に広く用いることができる。以下、その用途を挙げるが、本発明のポリウレタン及びポリウレタン溶液の用途は何ら以下のものに限定されるものではない。
(1) 注型ポリウレタンエラストマーとしての用途。例えば、圧延ロール、製紙ロール、事務機器及びプレテンロールなどのロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車及び運搬車などのソリッドタイヤ、キャスター、並びにコンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン及びサイクロンライナーなどの工業製品。OA機器のベルト、紙送りロール、スクシジー、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラーなど。
(2) 熱可塑性エラストマーとしての用途。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器及び産業用ロボットなどにおけるチューブ又はホース類、スパイラルチューブ並びに消防ホース。丸ベルト、Vバルト及び平ベルトなどのベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器及び印刷機械など。
(3) 履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロールなどの機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルトなど。
(4) 自動車部品として、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品及びタイヤチェーン代替品、キーボードフィルム及び自動車用フィルムなどのフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品並びに接着剤など。
(5) 溶剤系二液型塗料としての用途。例えば、楽器、仏壇、家具、化粧合板及びスポーツ用品などの木材製品。またタールエポキシウレタンとして自動車補修用。
(6) 湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化方塗料などの成分。
例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルムなどのオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコートなど。
(7) 接着剤として、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材及び構造部材など。低温用接着剤、ホットメルトの成分。
(8) バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム及びガラス繊維サイジングなど。
(9) 繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工、撥水加工など。
(10) シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り、壁式PC目地、ALC目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラント及び自動車用シーラントなど。
(11) 靴底用ポリウレタン、合成皮革、人工皮革用途。この場合、原料ポリエステルポリオール成分中にアジピン酸、セバシン酸などの骨格を有してもよい。また、ポリウレタンが植物由来で生分解性も有する場合、靴用樹脂の様に非耐久消費材に更に好適である。
(9)人工皮革・合成皮革
以下、本発明のポリウレタンの代表的な用途の一例である人工皮革又は合成皮革について詳細に説明する。
人工皮革又は合成皮革は、基布と接着剤層と表皮層とを主要構成要素とする。表皮層は本発明のポリウレタンにその他の樹脂、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を混合してポリウレタン溶液を作成し、これに着色剤及び有機溶剤等を混合して得られる表皮層配合液からなる。ポリウレタン溶液には、その他必要に応じて、加水分解防止剤、顔料、染料、難燃剤、充填材及び架橋剤などを添加することができる。
その他の樹脂としては、例えば、本発明のポリウレタン以外のポリウレタン、ポリ(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂、並びにポリアミド樹脂等などが挙げられる。
架橋剤としては、例えば、有機ポリイソシアネート、クルードMDI、トリメチロールプロパンのTDIアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
基布としては、例えば、テトロン/レーヨン、綿起毛布、メリヤス及びナイロントリコット等が挙げられる。また、接着剤としては、例えば、ポリウレタンとポリイソシアネート化合物及び触媒とからなる2液型ポリウレタンが挙げられる。
また、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンのTDIアダクト等が挙げられる。触媒としては、例えば、アミン系又は錫系等の触媒が挙げられる。
次に本発明のポリウレタンを用いた合成皮革の製造方法について説明する。
即ち、本発明のポリウレタンにその他の樹脂等を混合し、ポリウレタン溶液を作成し、これに着色剤等を混合して、表皮層配合液を作る。次にこの配合液を離型紙の上に塗布し、乾燥させてから、更に接着剤を塗布して接着剤層を形成させ、その上に起毛布等を張り合わせ乾燥させてから、室温で数日熟成後、離型紙を剥離することにより人口皮革・合成皮革が得られる。
製造された人工皮革・合成皮革は衣料用、靴用、鞄用などに使用できる。
本発明の靴底用ポリウレタンについて詳細に説明する。
前述の本発明のポリエステルポリオールを用いた靴底用ポリウレタンフォームの製造法には、主として、(1)ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応、発泡させてポリウレタンフォームを製造する際に、ポリオール成分として、前記ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分を用いる方法(以下、製法Aという)、及び(2)ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られるイソシアネートプレポリマーと、ポリオール成分とを反応及び発泡させることにより、ポリウレタンフォームを製造する際に、イソシアネートプレポリマーの原料として用いられるポリオール成分として、前記ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分を用いる方法(以下、製法Bという)がある。
まず、製法Aについて説明する。
製法Aにおいては、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応及び発泡させてポリウレタンフォームを製造する際に用いられるポリオール成分として、前記ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分が用いられる。
ポリオール成分には、前記ポリエステルポリオール以外に、他のポリエステルポリオール、ポリプロピレングリコール及びポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、並びにポリカーボネートポリオール等を含有させることができる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
製法Aに用いられるポリイソシアネート成分の代表例としては、イソシアネートプレポリマー等が挙げられる。イソシアネートプレポリマーは、ポリイソシアネートモノマーとポリオールとをポリイソシアネートモノマーの過剰の存在下で、常法により攪拌、反応させることによって得られる。
ポリイソシアネートモノマーの具体例としては、トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、それらの変性体、例えば、カルボジイミド変性体等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートの単独使用又は4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとそのカルボジイミド変性体との併用が好ましい。
イソシアネートプレポリマーのNCO%は、その粘度が高くなって低圧発泡機での成形が困難とならないようにする観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは17%以上であり、粘度が低くなって発泡機の計量精度が低くなることを避ける観点から、好ましくは25%以下、より好ましくは23%以下、更に好ましくは22%以下である。
イソシアネートプレポリマーは、15℃以上の温度で液状を呈し、低圧でも吐出可能であるので、例えば、40〜50℃の成形温度でもポリウレタンフォームを容易に製造することができる。
製法Aにおいては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させる際には、両者の割合は、イソシアネートインデックスが95〜110となるように調整することが好ましい。
製法Aにおいては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを成形機で混合、攪拌し、成形型に注入し、発泡させることにより、ポリウレタンフォームを製造することができる。より具体的には、例えば、タンク等を用いてポリオール成分の温度を通常、40℃程度の温度に調節した後、自動混合注入型発泡機及び自動混合射出型発泡機等の発泡機を用いてポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合し、反応させることにより、ポリウレタンフォームを製造することができる。
また、製法Aによれば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを混合した後、通常40〜50℃程度に調温された発泡機によってウレタン靴底を成形することができる。
次に、製法Bについて説明する。
製法Bにおいては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させることによって得られるイソシアネートプレポリマーと、ポリオール成分とを反応及び発泡させてポリウレタンフォームを製造する際に、イソシアネートプレポリマーを調製する際に用いられるポリオール成分として、前記ポリエステルポリオールを含有するポリオール成分が用いられる。
イソシアネートプレポリマーを調製する際に用いられるポリオール成分に含まれるポリエステルポリオールとして、本発明のポリエステルポリオールを使用する。イソシアネートプレポリマーの製造原料であるポリイソシアネート成分としては、例えば、製法Aで用いられるポリイソシアネートモノマー等が挙げられる。
ポリイソシアネートモノマーとしては、製法Aで用いられるポリイソシアネートモノマーの具体例と同じものが例示される。なお、これらの例示したものの中では、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートの単独使用又は4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとそのカルボジイミド変性体との併用が好ましい。
製法Bにおいては、前記ポリエステルポリオールを用いることにより、得られるイソシアネートプレポリマーの粘度を好適に保持することができるので、優れた機械的強度を有するポリウレタンフォームを得ることができる。
ポリオール成分には、前記ポリエステルポリオール以外に、他のポリエステルポリオールを含有させることができる。他のポリエステルポリオール成分としては、例えば、製法Aで用いられるものと同じものが例示される。
ポリオール成分中における前記ポリエステルポリオールの含有量は、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%であり、他のポリエステルポリオールの含有量は、好ましくは0〜90重量%、より好ましくは0〜50重量%である。
また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との割合は、NCO基/OH基の当量比が、通常、好ましくは5〜30程度となるように調整することが好ましい。
次に、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分及び必要により添加剤を常法により混合し、攪拌及び反応させることにより、イソシアネートプレポリマーが得られる。
この様にして得られるイソシアネートプレポリマーのNCO%は、粘度を低減させ、低圧発泡機での成形を容易にする観点から、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上であり、粘度を適度に付与し、発泡機の計量精度を向上させる観点から、好ましくは25%以下、より好ましくは23%以下、更に好ましくは22%以下である。
イソシアネートプレポリマーは、15℃以上の温度で液状を呈し、低圧でも吐出させることができるので、例えば、40〜50℃の成形温度でもポリウレタンフォームを良好に製造することができる。
次に、イソシアネートプレポリマーとポリオール成分とを反応、発泡させることにより、ポリウレタンフォームが得られる
イソシアネートプレポリマーとの反応に用いられるポリオール成分としては、製法Aにおいて、ポリオール成分に用いられるポリエステルポリオール以外の他のポリオールと同じものが例示される。
なお、イソシアネートプレポリマーとの反応に用いられるポリオール成分には、必要により、鎖延長剤、発泡剤、ウレタン化触媒、安定剤、顔料等を適宜、適量で添加してもよい。
製法Bにおいては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させる際に、両者の割合は、イソシアネートインデックスが好ましくは95〜110となるように調整することが好ましい。
製法Bにおいては、イソシアネートプレポリマー、ポリオール成分及び必要により添加剤を、成形機により混合及び攪拌し、成形型に注入して発泡させることにより、ポリウレタンフォームを製造することができる。より具体的には、例えば、タンク等を用いてポリオール成分を、通常40℃程度の温度に調温した後、自動混合注入型発泡機、自動混合射出型発泡機等の発泡機を用いてイソシアネートプレポリマーと混合し、反応させることにより、ポリウレタンフォームを製造することができる。
また、製法Bによれば、イソシアネートプレポリマー及びポリオール成分を混合した後、通常40〜50℃程度に調温された発泡機によってウレタン靴底を成形することができる。製法Bを靴底の製造に用いた場合には、得られるポリウレタンフォームは、単位体積あたりの樹脂量が減るにもかかわらず、引張り強度、引裂強度等の機械的強度を充分に向上させることができる。
かくして、製法A又は製法Bによって得られるポリウレタンフォームの成形体密度は、十分な機械的強度を有し、低密度化を図る観点から、好ましくは0.15〜1.0g/cm3、より好ましくは0.2〜0.4g/cm3である。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、各成分の物性等の分析方法は以下の通りである。
<ポリエステルポリオールの数平均分子量>
ポリエステルポリオールの数平均分子量は水酸基価(OH価:mgKOH/g)より求めた。
<ポリウレタンの重量平均分子量>
東ソー社製GPC装置 (製品名HLC−8220、カラムTSKgelGMH−XL・2本、溶媒は臭化リチウム添加N,N−ジメチルアセトアミド)を使用し、ポリウレタンの標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
<水分量>
水分の分析はカールフィッシャー法を用いて行った。装置は三菱化学(株)製の水分分析計CA−21型を用い、陽極液としてアクアミクロンAKXを、陰極液としてアクアミクロンCXUをそれぞれ使用した。
<フィルム物性>
製造されたポリウレタン溶液を9.5MILのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、80℃で15時間乾燥させた。得られたポリウレタンフィルムを幅10mm、長さ100mm、厚み50〜100μmの短冊状とし、引張試験機((株)オリエンテック製テンシロンUTM−III −100)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分、温度23℃(相対湿度40%)の条件下で引張強度を測定した。1サンプルにつき5〜10点測定し、その平均値を採用した。
[実施例1]
乾燥空気を流通しているドライボックス(水分10%以下)中で、温度計、攪拌機及び窒素吹き込み管を備えた反応容器(1Lセパラブルフラスコ)に、D−(+)−グルコースを10重量ppm含むポリブチレンアジペート(水酸基価56KOHmg/g、数平均分子量2004)70.0gと鎖延長剤として1,4−ブタンジオール(三菱化学(株)製)6.3gを加え、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記載)(和光純薬工業(株)特級試薬)240.0gで希釈し、更にジオクチルスズ触媒(日東化成(株):ネオスタンU−830)0.017g(スズとして50モルppm)を添加した。このDMAc溶液が均一になるよう、反応容器をオイルバス(50℃)で1時間程度加熱撹拌した。このDMAc溶液の水分量を測定し、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと記載)(日本ポリウレタン工業(株):ミリオネートMT)の必要量を算出した。具体的には、水1molがMDI1molを失活させるものとして、また該グルコースのOH基数を5として、必要となるNCO基数を計算した。その結果、MDI26.23gで当量となった。
反応容器を70℃に加熱、撹拌しながら徐々にMDIを添加し、都度サンプリングして、GPCを用いて重量平均分子量(Mw)を測定し、また、引張強度を測定した。
その結果、MDI添加量が当量に対して0.95倍の時点でMwは30万であり、300%伸度での応力は21MPaであった。
[実施例2]
D−(+)−グルコースを10重量ppm含むポリブチレンアジペートの代わりにD−(+)−グルコースを含有しないポリブチレンアジペート70.0gを用い、D−(+)−グルコースを100ppm含む1,4−ブタンジオールを鎖延長剤に用いた以外は、実施例1と同様にポリウレタンを製造した。
その結果、MDI添加量が当量に対して0.95倍の時点でMwは30万であり、300%伸度での応力は20MPaであった。
[比較例1]
D−(+)−グルコースを10ppm含むポリブチレンアジペートの代りに、D−(+)−グルコースを含有しないポリブチレンアジペート70.0gを用いた以外は、実施例1と同様にポリウレタンを製造した。
その結果、MDI添加量が当量に対して0.95倍の時点でMwは12万であった。最終的に当量に対して0.97倍のMDIを添加し、Mwは25万となり、300%伸度での応力は14MPaであった。
[比較例2]
D−(+)−グルコースを10ppm含むポリブチレンアジペートの代りに、D−(+)−グルコースを100ppm含むポリブチレンアジペート70.0gを用いた以外は、実施例1と同様にポリウレタンを製造した。
その結果、MDI添加量が当量に対して0.95倍の時点でMwは71万であり、ゲル化が見られた。フィルムは作成できず、引張強度は測定不能であった。
[比較例3]
D−(+)−グルコースを10ppm含むポリブチレンアジペートの代りに、D−(+)−グルコースを1000ppm含むポリブチレンアジペート70.0gを用いた以外は、実施例1と同様にポリウレタンを製造した。
その結果、MDI添加量が当量に対して0.95倍の時点でMwは5万であった。最終的に当量に対して0.98倍のMDIを添加し、Mwは8万となり、300%伸度での応力は10MPaであった。
以上の実施例1,2及び比較例1〜3の結果を、ポリウレタン製造反応系内のD−(+)−グルコースの存在量(反応系内の全ポリヒドロキシ化合物(ポリブチレンアジペートと1,4−ブタンジオール)とD−(+)−グルコースとの合計に対するD−(+)−グルコースの重量割合)と共に、以下の表1にまとめて示す。
実施例1,2と比較例1〜3の結果から、反応系にグルコースを適量存在させることにより、ポリウレタン化の反応速度が速くなり、MDI当量0.95倍で好ましい分子量のポリウレタンを得ることができることが分かる。
また、製造されたポリウレタンは引張強度が高く弾性回復率に優れる特徴があり、特に合成・人工皮革、靴底用発泡樹脂、弾性繊維用途として望ましいことが分かる。