以下に、本発明の実施形態に係る防水装置のシートにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
図1から図4を参照して、実施形態1について説明する。実施形態1は、構造物の開口部を防水する防水装置のシート(以下、単にシートと記す)に関する。図1は、本発明の実施形態1に係るシートを備えた開口部の防水装置を示す斜視図、図2は、実施形態1に係るシートを備えた開口部の防水装置の水平断面図、図3は、図2中のIII−III線に沿う断面図、図4は、実施形態1に係るシートの屋内側からみた平面図である。
建物等の構造物の外部開口部には、開閉体としてのシャッターが付けられることが多い。例えば、洪水時などに浸水しやすい地下駐車場の入口や、浸水すると商品が毀損されやすい店舗の入口等にもシャッターが付けられていることが多い。シャッターは、隙間が多い構造であるため、ゲリラ豪雨や洪水時にはシャッターの隙間を介した浸水によってこれらの施設が被害に遭う可能性がある。
浸水対策として、シャッターの下部を防水板(パネル)に変更する方法も考えられるが、一般的に高額となりやすいため、ユーザーにとって受け入れにくい場合がある。
本実施形態のシートは、開口部の防水装置1を構成し、開閉体としてのシャッターの前に設置されて、簡易的にかつ安価に止水することを可能とする。シートは、シャッターとその周囲の構造物とを一体に覆うことで、シャッターと構造物との隙間を閉塞し、適切に止水することができる。よって、本実施形態の開口部の防水装置1によれば、水害による建物内部の被害を軽減することができる。
図1に示す開口部の防水装置1は、構造物Sの開口部2(図1に示す)を閉塞し、屋外側から屋内側への水の浸入を抑制するものである。構造物Sは、例えば、工場、倉庫、車庫、店舗、家屋等の建築構造物であり、開口部2を有している。開口部2は、構造物Sの壁部等に形成されており、構造物Sの屋外側と屋内側とを連通している。
屋内側、屋外側とは説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、屋外側とは、水が浸入する場合の上流側のことであり、屋内側とは、上流側から水が浸入する可能性がある側であり、本発明においては水が浸入してくるのを阻止や抑制したい側のことである。開閉扉や壁等とともに防水装置1を、例えば単なる道路の防水用仕切りとして使用したり、外部空間における門等の箇所に取り付ける等のように、家屋や部屋等の概念がない箇所に設けても良い。また、開口部2は、前述の屋外側と屋内側とを連通するものとすることができる。実施形態1の開口部2は、構造物Sの外殻をなす壁部3に形成されており、壁部3を貫通して構造物Sの屋外と屋内とを連通している。壁部3には、開口部2を形成する壁面3aと壁面3bを有する。壁面3aと壁面3bとは、開口部2の幅方向において互いに対向している。なお、これに限らず、開口部2は、構造物Sの内部を仕切る壁部に形成されたものであってもよい。
シャッター4は、開口部2を開閉する開閉体である。シャッター4は、開閉方向、実施形態1では鉛直上下方向に移動する。シャッター4は、図1及び図3に示すように、金属で構成された複数のスラット4aを開閉方向即ち鉛直方向に連接して形成されたスラット連接体である。実施形態1では、開方向が上方向、閉方向が下方向となる。
シャッター4は、図1及び図2に示すように、幅方向の両端がガイドレール5(支持部材に相当)により保持されて、鉛直方向の移動が案内される。ガイドレール5は、壁面3a,3bの屋内側の縁にそれぞれ設けられており、幅方向において互いに対向している。シャッター4の幅方向の両端は、それぞれ、ガイドレール5の溝部5aに挿入されている。溝部5aは、開閉方向即ち鉛直方向に延在しており、シャッター4を開閉方向即ち鉛直方向に移動自在に案内する。
また、シャッター4は、開口部2の上端部に設けられたホイルかご(図示せず)に巻き取り可能である。シャッター4は、ホイルかごに巻き取られることで、開口部2を解放することができ、ホイルかごから繰り出されることで開口部2を閉鎖することができる。シャッター4の巻き取り繰り出しは、手動でなされても、モータ等の駆動装置によってなされても良い。実施形態1のシャッター装置は、シャッター4、ガイドレール5及びホイルかごなどを有する。
図1に戻り、開口部の防水装置(以下、防水装置と呼ぶ)1は、保持部材20、シート10、押圧部材30を備える。
保持部材20は、シート10をシャッター4よりも屋外側に位置付けて構造物Sに対して保持する。図1に示すように、保持部材20は、アルミニウム合金等で構成され、一対設けられている。保持部材20は、壁面3a,3bにそれぞれ設けられている。なお、実施形態1では、保持部材20は、ガイドレール5よりも屋外側に配置されている。即ち、ガイドレール5が、保持部材20よりも屋内側に配置されている。保持部材20は、断面C字形状のC字状部21と、C字状部21に連なった平板状部22とを備えている。保持部材20のC字状部21は、屋内側に対向する面にスリット21aが形成されている。平板状部22は、C字状部21のスリット21aの背面側即ち屋外側に連なり、壁面3a,3bに取り付けられる。保持部材20は、鉛直方向に延在しており、シャッター4の所定部41に対応する範囲に配置されている。すなわち、保持部材20は、シャッター4の下端から所定部41の上端までの範囲に対応して配置されている。保持部材20は、シート10や心材11と一体に形成に形成されていてもよい。材質もシート10を保持できれば任意であり、アルミニウム合金に替えて例えば硬質性の樹脂等でもよい。
シート10は、開口部2に設置されるものであり、開口部2の鉛直方向下端側の領域を閉塞することが可能な幅および長さを有している。シート10は、図4に示すように、例えば、矩形のシート本体12と、シート本体12に設けられた心材11と、シート本体12に設けられた止水ゴム50とを備える。シート本体12は、遮水性を有しており、開口部2のシートとして機能することができる。また、シート本体12は、可撓性を有しており、伸縮可能であってもよい。シート本体12の素材は、例えば、樹脂、ゴム、表面を樹脂などでコーティングした布とすることができる。シート本体12は、水圧によるシャッター4等の開閉体の変形に追従できる素材で構成されることが好ましい。
シート本体12の幅は、シャッター4の幅よりも大きい。また、シート本体12の幅は、開口部2の幅、言い換えると壁面3aと壁面3bとの距離よりも大きいことが好ましい。シート本体12の鉛直方向の長さは、対応すべき水深に基づいて定められている。すなわち、シャッター4の下端から鉛直方向上側に向けてどの範囲をシート10によって覆い防水するかに基づいてシート10の全長が定められている。以下の説明では、シャッター4においてシート10によって覆われるべき部分を「所定部」(図1の符号41参照)と称する。所定部41は、シャッター4の鉛直方向下端側の部分である。
心材11は、図4に示すように、シート本体12の幅方向の両端それぞれに配置されている。心材11は、軽量でかつ可撓性を有する素材、例えば樹脂素材で形成されている。心材11は、シート本体12の幅方向の両端の上端から所定部41の下端に対応する箇所、即ち、シート本体12の幅方向の両端のシート下部13を除く箇所に配置されている。心材11は、シート本体12の長さ方向(鉛直方向)に延在している。心材11は、円柱状に形成され、シート本体12の壁面3a,3b及びシャッター4に対向する面に設けられ、保持部材20のC字状部21に挿入可能である。保持部材20のC字状部21のスリット21aの幅は、シート本体12と心材11をあわせた厚みよりも小さいため、心材11がスリットを介してC字状部21から抜け出ることが規制される。なお、心材11は、円柱状のものには限定されず、例えば、断面が矩形などの多角形の平板状であってもよい。
心材11とシート本体12の幅方向の両縁がC字状部21内に挿入されて、シート10は、保持部材20に保持される。シート本体12が、シャッター4の所定部41と、構造物Sのうち所定部41に隣接する部分とを一体に覆うことで開口部2の鉛直方向下端部を閉塞させるように、シート10は、保持部材20に保持される。また、シート本体12の鉛直方向下端部が床面6に沿って屋外側に向けて延在するようにシート本体12の幅方向の両端が保持部材20に保持する。これにより、シート本体12即ちシート10は、シャッター4が有する隙間やシャッター4と構造物Sとの隙間を塞ぎ、屋内側への浸水を抑制することができる。なお、本明細書では、シート本体12の鉛直方向下端部であって、シート本体12即ちシート10が保持部材20によって保持された状態で床面6に沿って延在する部分を、以下「シート下部13」と記載する。本発明でいう床面とは、説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、通常の床面6のみならず、コンクリート面や地面等の開口部2の下方に位置する面を総称する。
止水ゴム50は、屋内への浸水を抑制するものである。止水ゴム50は、発泡ゴムなどの防水性と弾性を有した合成樹脂で構成され、図2及び図3に示すように、シート本体12のシャッター4に対向する面に取り付けられて、あたかもシート本体12に一体に形成されている。止水ゴム50は、シート本体12の幅方向の両端それぞれの屋内側の面(すなわち、壁面3a,3bに対向する面であり、便宜上、シート10の裏面ということもある。言い換えれば、シート10の裏面とは壁面3a,3b、床面6と対向する面のことである。また、裏面の反対側の面を、便宜上、シート10の表面ということもあり、到達する水を受ける面である。)に取り付けられ、心材11よりもシート本体12の幅方向の内側に配置されている。また、シート10が壁面3a,3bや床面6に取り付けられる前のシート10単体の状態において、止水ゴム50は、断面矩形の平板形状であり、シート本体12の長さ方向(鉛直方向)に延在し、シート本体12の所定部41に対応する範囲とシート下部13に対応する範囲の例えば中央とに亘って設けられている。即ち、止水ゴム50は、心材11の下端よりもシート10の鉛直方向下方に延在している。
止水ゴム50は、シート本体12の両端と心材11が保持部材20に保持されると、図2に示すように、所定部41に対応する範囲では、壁面3a,3bのガイドレール5と保持部材20との間に設けられるとともに、図1乃至図3に示すように、壁面3a,3bと床面6との境界部分を含めて所定部41に対応する範囲に連続して、シート下部13の裏面側に、すなわち、シート下部13と床面6との間の所定の範囲に設けられる。ここで、シート下部13と床面6との間に設けられる止水ゴム50の範囲である壁面3a,3bから離間する距離は、例えば、所定部41に対応する長さ以下や半分以下等(無論0ではない)、使用上における止水目的、特に壁面3a,3bと床面6との境界部分の止水を達成できれば任意であるが、押圧部材30を載置できる長さであることが好ましい。また、勿論、シート下部13と床面6との間に設けられる止水ゴム50をシート下部13の開口部幅全体(言い換えれば、壁面3a,3b間全範囲)や略全体に亘って設けてもよい。なお、止水ゴム50の所定部41に対応する長さ(設置時における高さ)は、保持部材20の長さ(設置時における高さ)と同じか略同じが好ましい。
押圧部材30は、シート10のシート下部13上に配置されて、シート10を構造物Sに向けて押圧するものであり、例えばシート10を床面6に向けて押圧する。押圧部材30は、図1、図2及び図3に示すように、シート下部13上に開口部2の幅方向に沿って連続的に配置される。押圧部材30は、棒状あるいは板状であることが好ましい。実施形態1に係る押圧部材30は、板状のフラットバーである。押圧部材30は、例えば、金属で構成され、浮力に抗してシート下部13を床面6に向けて押圧することができる質量や密度を有している。押圧部材30は、シート下部13が床面6に沿って配置された後でシート下部13上に設置される。これにより、押圧部材30は、シャッター4の下端部の近傍においてシート10を床面6に密着させておくことができる。押圧部材30は、一本でもよいし、複数に分割されていても結果として開口部2の幅方向に沿って連続的に配置されていてもよい。なお、使用上における止水目的を達成できれば、連続的でなく、若干途切れている箇所があってもよい。
また、防水装置1は、図2及び図3に示すように、シャッター4を支持するシャッター用支持部材60を備えている。シャッター用支持部材60は、シート10を開口部2に設置する場合、即ち、防水装置1を組み立てる場合に、シャッター4よりも屋内側の床面6上に設置されて、シャッター4の内面と当接してシャッター4の厚さ方向の変形を抑制する。実施形態1では、シャッター用支持部材60は、側方からみて直角三角形に形成され、床面6から上方に向けて延在して鉛直方向と平行な当接部61が、水圧によって屋内側に撓んだシャッター4の内面と当接することで、シャッター4の更なる変形を抑制する。つまり、シャッター用支持部材60は、屋外側からの水圧による力に抗してシャッター4を支持することで、シャッター4の変形を抑制する。
シート10を開口部2に設置する場合、即ち、防水装置1を組み立てる場合、まず、保持部材20を壁面3a,3bに取り付ける。そして、シート10のシート本体12の幅方向の両端及び心材11を、保持部材20の上端からC字状部21内に挿入し、シート10のシート本体12の両端及び心材11を保持部材20の下端に向けてC字状部21内を移動する。そして、シート10のシート本体12の両端及び心材11が保持部材20のC字状部21に挟持され、シート10のシート本体12の心材11が設けられていないシート下部13を、保持部材20の下端と床面6との間を通して、床面6上に引き出し、床面6に沿って屋外側に向けて延在される。なお、保持部材20がシート10や心材11と一体に形成されていれば、心材11を保持部材20に挿入する作業を省略できる。
すると、シート10のシート本体12の幅は、開口部2の幅よりも大きく、以下に示すような幅に設定している。すなわち、シート10のシート本体12の両端が保持部材20によって保持された状態で、シート10は、たるみを有している。つまり、保持部材20は、シート10がたるみを有した状態でシート10のシート本体12を保持し、シート10が保持部材20よりもシャッター4側に向けて撓んで所定部41と接触することを許容する。従って、シート10のシート本体12が保持部材20によって保持された状態で、シート10を壁面3a,3bおよびシャッター4に沿わせ、壁面3a,3bおよびシャッター4に接触した状態に設置することが可能である。また、シート10のシート本体12が保持部材20によって保持された状態で、シート10を壁面3a,3bおよびシャッター4に沿わせると、止水ゴム50が壁面3a,3bに対向する。なお、保持部材20に保持され、かつ水圧がかかる前の状態において、シート10がシャッター4および壁面3a、3bに密着可能な程度のたるみを有していることが好ましい。
また、シート10のシート本体12の鉛直方向の長さは、シャッター4の所定部41の鉛直方向の長さよりも長く、以下に示すような長さに設定している。すなわち、シート10が保持部材20によって保持された状態で、シート下部13を床面6上に垂らし、床面6に沿わせることが可能である。シート10のシート本体12は、このシート下部13を床面6に沿って屋外側に向けて延在させた状態で設置される。言い換えると、シート10のシート本体12は、シート下部13が床面6と互いに対向し、かつ先端側へ向かうに従いシャッター4から離間するように配置される。なお、シート10のシート本体12は、このシート下部13を床面6に沿って屋外側に向けて延在させた状態で設置される際、シート下部13の幅方向の両縁即ち止水ゴム50が床面6に重ねられ、シート下部13の幅方向の中央部がシート下部13の幅方向の両縁上に重ねられる。
そして、押圧部材30をシート下部13の上に、かつ好ましくはシート下部13と床面6との間に設けられる止水ゴム50の上側になるように配置する。こうして、シート10のシート本体12が所定部41と壁面3a,3bの所定部41に隣接する部分とを一体に覆いかつシート下部13が床面6に沿って屋外側に向けて延在した状態で、押圧部材30によりシート10のシート本体12を床面6、構造物Sの壁面3a,3b及びシャッター4に向けて押圧する。シャッター4よりも屋内側の床面6にシャッター用支持部材60を取り付ける。こうして、防水装置1が組み立てられる。
また、防水装置1は、シート10のシート本体12の上端部を構造物Sのシャッター4に向けて押圧するマグネット70(他の押圧部材に相当)を備えている。マグネット70は、シート10のシート本体12の上端部に配置され、その吸引力によってシート10のシート本体12の上端部をシャッター4に対して固定する。マグネット70は、予めシート10のシート本体12に固定されていても良いが、これに代えて、シート10のシート本体12にポケット部を設けておき、シート10のシート本体12の設置時にマグネット70をポケット部に入れるようにしても良い。マグネット70によって、シート10のシート本体12がシャッター4に向けて吸引されることにより、シート10のシート本体12が垂れ下がることが抑制される。これにより、シート10のシート本体12の上端を狙いとする水位の位置よりも上方に保持しておくことができる。
なお、シート10のシート本体12をシャッター4に対して保持する手段は、マグネット70に限定されるものではない。例えば、粘着式のテープや面ファスナー、吸盤等によってシート10のシート本体12がシャッター4に対して固定されても良い。
実施形態1の防水装置1では、洪水やゲリラ豪雨等によって屋外の水嵩が増すと、まずシート下部13が水に接する。水圧によってシート下部13は床面6に向けて押圧されて止水ゴム50が床面6に密着する。これにより、シート下部13と床面6との間から水が浸入することが抑制される。また、押圧部材30によってシート下部13が床面6に向けて押圧されていることで、低水位の場合であってもシート下部13と床面6との隙間を介した浸水がより確実に抑制される。また、押圧部材30は、水流等によってシート下部13が浮き上がることを抑制することが可能である。シート10のシート本体12は、水圧によって所定部41と、所定部41に隣接する床面6とを一体に覆うことができる。
また、シート10のシート本体12において、シャッター4、ガイドレール5や壁面3a,3bを覆う部分は、水圧によってシャッター4、ガイドレール5や壁面3a,3bに向けて押圧されて、止水ゴム50が壁面3a,3bに密着する。これにより、シート10のシート本体12は、シャッター4の所定部41と、所定部41に隣接する壁面3a,3bとを一体に覆うことができる。シート10のシート本体12は、水圧によって押圧されることにより、シャッター4、ガイドレール5や壁面3a,3b等に密着し、止水ゴム50が壁面3a,3bに密着する。そして、シート10は、止水ゴム50が壁面3a,3bのガイドレール5と保持部材20との間を止水して、シート10とシャッター4、ガイドレール5、壁面3a,3bとの間に水が浸入することを抑制することができる。
また、シート10は、水圧によって、止水ゴム50が壁面3a,3b及び床面6に密着して、保持部材20と、床面6及び壁面3a,3bとの間の隙間を塞ぐことで、これらの隙間を介した屋内側への浸水を抑制することができる。シート10は、水圧によってシャッター4の所定部41と、所定部41に隣接する床面6との隙間を塞ぐことで、シャッター4と床面6との隙間を介した屋内側への浸水を抑制することができる。
シート10は、水圧によってシャッター4等に向けて押圧され、シャッター4がシャッター用支持部材60に当接するために、水位が増加するに従いシャッター4等に対する密着性が増し、また各隙間を閉塞する閉塞性が増す。よって、シート10は、水位に応じて遮水性能が増し、適切に屋内側への浸水を抑制することができる。
また、シート10は、予めたるみを有した状態で保持部材20によって保持されているため、水位の増加に応じて水圧によって速やかにシャッター4や壁面3a,3b等に密着することが可能である。また、たるみを有しているため、シャッター4と壁面3a,3bとの間の隙間など、各部の隙間の形状に対応して適切に変形・屈曲し、各隙間を速やかにかつ適切に閉塞することができる。
本実施形態のシート10によれば、所定部41に対応する範囲とシート下部13の中央とに亘ってシート本体12の幅方向の両端に止水ゴム50を設けているので、シート10に作用する水圧によって、止水ゴム50が床面6に密着する。したがって、シート10は、止水ゴム50によりシャッター4と床面6との間からの浸水を抑制できる。
また、シート10は、シート本体12の幅方向の両端に止水ゴム50を設けているので、シート10に作用する水圧によって、止水ゴム50が壁面3a,3bに密着する。したがって、シート10は、止水ゴム50により壁面3a,3bとの間からの浸水を抑制することができ、シャッター4の幅方向の両端よりも外側からの浸水を抑制することができる。
このために、シート10に作用する水圧によって、シート10は、止水ゴム50によりシャッター4の下縁と床面6との間からの浸水と、シャッター4の幅方向の両縁の外側からの浸水を抑制することができる。したがって、シート10は、屋内側への浸水を抑制することができる。
また、シート10は、止水ゴム50が心材11よりも下方に延在しているので、水圧によって、止水ゴム50が確実に床面6に密着する。したがって、シート10は、保持部材20と床面6との間からの浸水を確実に抑制することができる。よって、シート10は、屋内側への浸水を抑制することができる。
さらに、シート10では、止水ゴム50が、シート本体12のシャッター4に対向する面に取り付けられて、シート本体12と一体に形成されている。このために、シート本体12の両端を保持部材20で保持することで、止水ゴム50を壁面3a,3b及び床面6に確実に対向させることができ、これらに密着させることができる。したがって、シート本体12の両端を保持部材20で保持することで、屋内側への浸水を抑制することができ、シート10を容易に構造物Sの開口部2に設置することができる。
[実施形態2]
実施形態2について説明する。図5は、実施形態2に係るシートを備えた開口部の防水装置の水平断面図、図6は、図5中のVI−VI線に沿う断面図、図7は、実施形態2に係るシートの屋内側からみた平面図である。図5〜図7において、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2の防水装置1−1が設置される開口部2では、図5及び図6に示すように、ガイドレール5が、レール支持部材7を介して壁部3の表面3cに取り付けられている。実施形態2においても、ガイドレール5は、互いの間に開口部2を位置付け、シャッター4の幅方向の両縁が挿入される溝部5aが互いに対向している。
また、実施形態2の防水装置1−1では、図5に示すように、保持部材20の平板状部22がガイドレール5の外側面5bに取り付けられて、C字状部21が平板状部22よりの幅方向の内側に配置されている。実施形態2の防水装置1−1においても、実施形態1と同様に、図7に示すように、シート本体12の幅方向の両縁の上端から所定部41の下端に対応する箇所に心材11が設けられている。シート10が壁面3a,3bや床面6に取り付けられる前のシート10単体の状態において、止水ゴム50は、断面矩形の平板形状であり、シート10の長さ方向(鉛直方向)に延在し、シート10の所定部41に対応する範囲とシート下部13に対応する範囲の例えば中央とに亘って設けられている。止水ゴム50は、シート10の両端と心材11が保持部材20に保持されると、所定部41に対応する範囲では、壁面3a,3bのガイドレール5と保持部材20との間に設けられるとともに、壁面3a,3bと床面6との境界部分を含めて所定部41に対応する範囲に連続して、シート下部13の裏側に、即ち、シート下部13と床面6との間の所定の範囲に設けられる。ここで、シート下部13と床面6との間に設けられる止水ゴム50の範囲である壁面3a,3bから離間する距離は、例えば、所定部41に対応する長さ以下や半分以下等(無論0ではない)、使用上における止水目的、特に壁面3a,3bと床面6との境界部分の止水を達成できれば任意であるが、押圧部材30を載置できる長さであることが好ましい。また、勿論、シート下部13と床面6との間に設けられる止水ゴム50をシート下部13の開口部幅全体(言い換えれば、壁面3a,3b間全範囲)や略全体に亘って設けてもよい。なお、止水ゴム50の所定部41に対応する長さ(設置時における高さ)は、保持部材20の長さ(設置時における高さ)と同じか略同じが好ましい。
実施形態2の防水装置1−1は、実施形態1と同様に組み立てられる。まず、防水装置1−1は、保持部材20をガイドレール5の外側面5bに取り付け、シート10のシート本体12の幅方向の両端及び心材11を、保持部材20の上端からC字状部21内に挿入して、下方に向けて移動させる。そして、シート10のシート本体12の両端及び心材11が保持部材20のC字状部21に挟持され、シート10のシート本体12の心材11が設けられていないシート下部13を、保持部材20の下端と床面6との間を通して、床面6上に引き出し、床面6に沿って屋外側に向けて延在される。
そして、シート10のシート本体12をガイドレール5の表面及びシャッター4に沿わせ、止水ゴム50をガイドレール5の表面及びシャッター4に対向させる。シート下部13の幅方向の両縁即ち止水ゴム50を床面6に重ね、シート下部13の幅方向の中央部をシート下部13の幅方向の両縁上に重ねる。そして、止水ゴム50が、ガイドレール5とシャッター4とに亘って設けられる。
そして、押圧部材30をシート下部13上に配置する。こうして、シート10のシート本体12が所定部41と壁面3a,3bの所定部41に隣接する部分とを一体に覆いかつシート下部13が床面6に沿って屋外側に向けて延在した状態で、押圧部材30によりシート10のシート本体12を床面6、ガイドレール5の表面及びシャッター4に向けて押圧する。さらに、シャッター4よりも屋内側の床面6にシャッター用支持部材60を取り付ける。こうして、実施形態2の防水装置1−1が組み立てられる。
実施形態2の防水装置1−1は、実施形態1と同様に、洪水やゲリラ豪雨等によって屋外の水嵩が増すと、水圧によって止水ゴム50が床面6、ガイドレール5の表面及びシャッター4に密着し、止水ゴム50がガイドレール5とシャッター4との間を止水し、シート下部13と床面6との間を止水する。これにより、シート10は、シャッター4の所定部41と、所定部41に隣接するガイドレール5とを一体に覆い、ガイドレール5とシャッター4との間、ガイドレール5及びシャッター4と床面6との間に水が浸入することを抑制する。
実施形態2のシート10によれば、所定部41に対応する範囲とシート下部13の中央とに亘ってシート本体12の幅方向の両端に止水ゴム50を設けている。このために、シート10に作用する水圧によって、止水ゴム50が、床面6に密着するとともに、所定部41のガイドレール5の表面とシャッター4と床面6とに密着する。このために、止水ゴム50が、シャッター4の下縁と床面6との間からの浸水と、シャッター4の幅方向の両端よりも外側からの浸水を抑制することができる。したがって、シート10は、ガイドレール5とシャッター4との間からの浸水を止水ゴム50により抑制することができ、ガイドレール5及びシャッター4と床面6との間からの浸水を止水ゴム50により抑制することができる。
また、シート10によれば、止水ゴム50が心材11よりも下方に延在して保持部材20と床面6との間からの浸水を確実に抑制することができる。よって、シート10は、屋内側への浸水を抑制することができる。
さらに、シート10では、止水ゴム50がシート本体12と一体に形成されているために、シート本体12の両端を保持部材20で保持することで、止水ゴム50をガイドレール5の表面、シャッター4及び床面6に確実に対向させることができ、これらに密着させることができる。したがって、シート本体12の両端を保持部材20で保持することで、屋内への浸水を抑制することができ、シート10を容易に組み立てることができる。
[変形例]
実施形態2の変形例について説明する。図8は、実施形態2の変形例に係るシートを備えた開口部の防水装置の水平断面図である。図8において、実施形態1、実施形態2と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2の変形例では、図8に示すように、ガイドレール5が開口部2を形成する壁部3の屋外側の縁に埋設されて、ガイドレール5が壁面3a,3bの屋外側の縁に設けられている。また、保持部材20の平板状部22が壁部3の表面3cに取り付けられている。
実施形態2の変形例のシート10によれば、実施形態2と同様に、シート10に作用する水圧によって、止水ゴム50が、床面6に密着するとともに、所定部41のガイドレール5の表面とシャッター4と床面6とに密着する。したがって、シート10は、ガイドレール5とシャッター4との間からの浸水を止水ゴム50により抑制することができ、ガイドレール5及びシャッター4と床面6との間からの浸水を止水ゴム50により抑制することができる。
なお、実施形態1では、防水装置1を組み立てる場合、壁面3a,3bに保持部材20を取り付けるようにしたが、本発明では、予め、壁面3a,3bに保持部材20を取り付けておいても良い。また、防水装置1,1−1を組み立てる時に壁面3a,3bやガイドレール5に保持部材20を取り付ける場合には、予め壁面3a,3bやガイドレール5の保持部材20を取り付ける位置に、保持部材20の位置を示す印(マーキングともいう)を設けても良い。
さらに、本発明では、シート10と止水ゴム50とを一体に形成して、これら全体を発泡ゴムなどの防水性と弾性を有した合成樹脂で構成しても良い。また、本発明では、止水ゴム50をシート10の幅方向の両端の所定部41に対応する範囲とシート下部13との全長に亘って設けても良い。
また、実施形態1及び実施形態2では、開閉体としてシャッター4を示しているが、本発明では、開閉体として、ガラスなどで構成された一対の扉などを備えた開閉扉を用いても良い。この場合、シート10のシート本体12の上端部を構造物Sの開閉体に押圧するために、他の押圧部材として粘着テープや吸盤を用いるのが望ましい。