JP2014136314A - 印刷装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷媒体の浮上りを正確に検出し、印刷媒体の被印刷面に対する印刷ヘッドの擦れや衝突を効果的に抑制する。
【解決手段】絞り53またはレンズで構成される光学素子、光源52および受光素子54を有し、光源52から光L1を照射するとともに被印刷面PSで反射した反射光のうち拡散反射光L3を光学素子を通じて受光素子54に入射させて光源52からの光L1が反射した被印刷面PSの位置に関する位置情報を受光素子54から出力する位置検出部5と、受光素子54から出力される位置情報に基づき印刷媒体Pの浮上りを検出すると、キャリッジの移動を停止させるコントローラーとを備え、受光素子54は、拡散反射光L3を受光する受光面54aが光源52から被印刷面PSに照射される光L1の光軸と平行となるように配置される。
【選択図】図2

Description

この発明は、印刷手段を搭載したキャリッジを移動させて印刷媒体の被印刷面に画像を形成する印刷装置に関するものである。
この種の印刷装置の代表例として、インクジェット方式の印刷装置が周知である。この印刷装置では、印刷媒体の搬送方向、いわゆる副走査方向に対して直交する主走査方向に印刷ヘッドなどの印刷手段が印刷媒体表面(被印刷面)から上方に離間した位置で移動しながらインク滴を印刷媒体表面に向けて吐出するとともに、印刷媒体が副走査方向に順次搬送される。こうして、印刷媒体に対して画像や文字等が印刷される。
この印刷装置では、印刷媒体の搬送中における搬送ずれにより当該印刷媒体にしわが発生することがある。また、印刷媒体のインク吸収や印刷媒体の加温による伸び等によって印刷媒体が波打つ、いわゆるコックリングが発生することがある。これら現象が発生すると、印刷媒体が部分的に浮上り、印刷動作中に印刷ヘッドが印刷媒体表面と擦れる、あるいは衝突することがある。
そこで、このような問題を抑制するために、例えば特許文献1に記載の装置が提案されている。この装置は、印刷媒体と印刷ヘッドとのギャップ(間隔)を検出するセンサを設け、当該センサによる検出結果が規定量から外れた場合に、印刷媒体の浮上りが発生したと判定し、キャリッジの移動を停止する。これによって、当該装置は印刷媒体表面に対する印刷ヘッドの擦れや衝突を抑制している。
特開平5−262019号公報(段落[0035]) 特開2006−168138号公報(図12)
ところで、印刷ヘッドの擦れや衝突を抑制するためには、印刷媒体の浮上りを検出することが重要である。そこで、従来では、印刷媒体と印刷ヘッドとのギャップを検出するために、例えば特許文献2に記載された技術が提案されている。この特許文献2に記載の装置は、印刷媒体に光を照射するとともに印刷媒体表面からの正反射光をラインセンサで受光し、当該ラインセンサからの出力に基づいて印刷ヘッドから印刷媒体までの距離、いわゆる印刷媒体距離を算出する。
しかしながら、正反射光を用いて印刷媒体距離を求めているため、被印刷面の表面状態、特に印刷媒体に浮上りが生じているか否かによって印刷媒体に傾きを生じ正反射の角度が変化してしまい、正確な印刷媒体距離を算出することが困難となる場合がある。したがって、特許文献2に記載の発明を印刷媒体の浮上りを検出する手段として特許文献1に記載の装置に適用した場合、印刷媒体表面(被印刷面)に対する印刷ヘッドの擦れや衝突を回避できない、あるいは擦れや衝突が発生しない場合であってもキャリッジの移動を停止させてしまう可能性があり、擦れ等の抑制効果が十分に発揮されないおそれがある。
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、印刷媒体の浮上りを正確に検出し、印刷媒体の被印刷面に対する印刷手段の擦れや衝突を効果的に抑制することができる印刷装置を提供することを目的とする。
この発明にかかる印刷装置は、印刷手段を搭載したキャリッジを移動させて印刷媒体の被印刷面に画像を形成する印刷装置であって、絞りまたはレンズで構成される光学素子、光源および受光素子を有し、光源から光を照射するとともに被印刷面で反射した反射光のうち拡散反射光を光学素子を通じて受光素子に入射させて光源からの光が反射した被印刷面の位置に関する位置情報を受光素子から出力する位置検出部と、受光素子から出力される位置情報に基づき印刷媒体の浮上りを検出すると、キャリッジの移動を停止させるコントローラーとを備え、受光素子は、拡散反射光を受光する受光面が光源から被印刷面に照射される光の光軸と平行となるように配置されることを特徴としている。
このように構成された印刷装置では、被印刷面で反射した反射光のうち拡散反射光が光学素子を通じて受光素子に入射し、受光素子の受光面への拡散反射光の検出位置から受光素子は位置情報を出力する。したがって、印刷媒体に浮上りが生じているか否かによって印刷媒体に傾きを生じた場合でも正確な印刷媒体距離を算出することができ、印刷媒体の被印刷面に対する印刷手段の擦れや衝突を効果的に抑制することができる。しかも、受光面が光源から被印刷面に照射される光の光軸と平行となるように受光素子を配置しているため、本発明は次の作用効果も備えている。
本発明は、受光面における受光位置に基づいて印刷手段から印刷媒体までの距離(印刷媒体距離)を検出可能となっている点で特許文献2に記載の発明(以下「先行発明」と称する)と共通する。しかしながら、本発明では拡散反射光を用いているため、後で図面を用いて詳述するが、先行発明と同様に受光面を被印刷面と平行に配置すると、次のような問題が生じる。すなわち、受光面での拡散反射光の検出位置は印刷媒体距離によって変化し、しかも当該変化量は、印刷媒体距離が比較的長いときには小さいのに対し、印刷媒体距離が縮まるにしたがって大きくなっていき、印刷媒体距離に対する拡散反射光の検出位置は双曲線により表現される態様で変化する。したがって、コントローラーは上記変化態様を予め校正する必要があり、受光素子から出力される位置情報に基づく印刷媒体距離の演算も複雑なものとなり、しかも印刷媒体距離を高精度に算出することも難しくなる。このことは印刷の高速化および高精度化にとって不利に作用する。これに対し、本発明では、受光面が光源から被印刷面に照射される光の光軸と平行となるように受光素子が配置されているため、印刷媒体距離に対する拡散反射光の検出位置は一次関数で変化する。したがって、コントローラーは簡単な演算処理により印刷媒体距離を算出することができ、印刷の高速化および高精度化が可能となる。
ここで、光源、光学素子および受光素子を含む仮想平面が被印刷面の法線に対して傾斜した状態となるように、光源、光学素子および受光素子を配置してもよい。この仮想平面が被印刷面の法線と平行となるように配置した場合、被印刷面に印刷が施され印刷濃度が上昇すると拡散反射光は減少するが正反射光は減少しないためこれらが同時に受光素子に入射している場合は正反射光の影響が大きくなる。また、被印刷面の表面状態によっては正反射光が光学素子を通じて受光素子に入射することがある。これに対し、仮想平面が被印刷面の法線に対して傾斜すると、被印刷面に浮上りが発生した程度では当該浮上り部分に光源からの光が入射しても正反射した正反射光は常に光学素子および受光素子から遠ざかる方向に進む。したがって、被印刷面での浮上りの有無にかかわらず受光素子への正反射光の入射が防止され、受光素子には拡散反射光のみが入射し、被印刷面までの距離が正確に検出出来る。しかも、仮想平面が被印刷面の法線に対して傾斜した分だけ印刷媒体距離の検出分解能は高くなる。例えば傾斜角をθとした場合、受光素子の分解能はcosθを乗じた値となり、仮想平面を被印刷面の法線と平行に配置した場合に比べて上記検出分解能は向上する。このため印刷状態や被印刷面の表面状態の影響を受けることなく、高い分解能で印刷媒体距離が求められ、印刷媒体の浮上りを正確に検出することができる。その結果、印刷媒体の被印刷面に対する印刷手段の擦れや衝突をさらに効果的に抑制することができる。なお、上記傾斜方向については任意であり、例えばキャリッジが移動する主走査方向、あるいは上記主走査方向と直交する副走査方向であってもよい。
また、傾斜方向を主走査方向に設定する場合、光源からの光が印刷手段から主走査方向に離れた位置で反射するように位置検出部をキャリッジに取り付けるのが好適であり、次の作用効果が得られる。すなわち、上記構成を採用した場合、被印刷面のうち主走査方向においてキャリッジよりも前方に位置する表面部位、つまり印刷前段階にある表面部位に浮上りが発生しているか否かを検出することができる。このように浮上り部分への印刷手段の到着前にキャリッジの移動停止を開始することが可能となっている。換言すると、キャリッジ移動の停止に要する許容時間、つまり停止マージンが広がっている。その結果、印刷ヘッドの擦れや衝突をより一層効果的に抑制することができる。
また、位置検出部が光学素子、光源および受光素子を収容するハウジングと、被印刷面で反射した反射光のうち正反射光に対して非透過性の材料で構成された遮光部材とを有し、遮光部材はハウジングから正反射光の進む方向に延設されて正反射光を遮光するように構成してもよい。このように、遮光部材を設けることで正反射光がハウジング側に戻るのを防止し、迷光発生を抑制することができる。更に遮光部材は外部からの光の影響も抑制することができる。その結果、印刷媒体距離をより正確に検出することが可能となる。
また、正反射光が入射する遮光部材の入射面に反射防止部材を設けると、入射面での正反射光の反射が反射防止部材により防止され、迷光発生と外光の影響をさらに抑制することができ、印刷媒体距離をさらに正確に検出することが可能となる。
また、印刷媒体の浮上りを正確に検出してキャリッジの移動を適切に停止させるために、例えばコントローラーが、受光素子から出力される位置情報に基づき印刷手段から被印刷面までの印刷媒体距離を求める距離導出部と、距離導出部により求められた印刷媒体距離に基づき印刷媒体の浮上りを検出する浮上り検出部と、浮上り検出部が印刷媒体の浮上りを検出したときキャリッジの移動を停止させる移動停止部とを備えるように構成してもよい。
印刷媒体の浮上検出については、次のような構成を採用してもよい。例えば、印刷媒体距離が予め設定されたしきい値よりも短いか否かに基づいて浮上り検出部が印刷媒体の浮上りを検出するように構成してもよい。これにより、印刷手段が印刷媒体に接近した時点でキャリッジの移動が停止され、印刷媒体の被印刷面に対する印刷手段の擦れや衝突が抑制される。
さらに、別の構成として、キャリッジが予め設定された距離だけ移動したと仮定したときの印刷媒体距離、つまり予測距離を浮上り検出部が求め、当該予測距離が予め設定されたしきい値よりも短いか否かに基づいて浮上り検出部が印刷媒体の浮上りを検出するように構成してもよい。このように印刷手段の印刷媒体への接近を予測することで、印刷手段がしきい値で示される距離にまで接近する前に、キャリッジの移動停止動作を開始することができ、印刷媒体の被印刷面に対する印刷手段の擦れや衝突の抑制をより確実なものとすることができる。なお、このような予測制御を行う場合、予測距離を高精度に求めるのが好適であり、例えばキャリッジの移動に伴う印刷媒体距離の変化を求め、その変化に基づいて予測距離を求めるように構成してもよい。
本発明にかかる印刷装置の第1実施形態を示す図。 図1に示す印刷装置の位置検出部の構成を示す図。 図1に示す印刷装置の動作を示すフローチャート。 キャリッジ位置に対する印刷媒体距離の変化の一例および印刷装置の動作を示すグラフ。 印刷装置の比較例を示す図。 本発明にかかる印刷装置の第2実施形態を示す図。 図6に示す印刷装置の位置検出部の内部構造を示す図。 本発明にかかる印刷装置の第3実施形態を示す断面図。 本発明にかかる印刷装置の第4実施形態を示す図。 図9に示す印刷装置の位置検出部の内部構造を示す図。 本発明にかかる印刷装置の第5実施形態の動作を示すフローチャート。 本発明にかかる印刷装置の第5実施形態の動作を示すグラフ。
A.第1実施形態
図1は、本発明にかかる印刷装置の第1実施形態であるインクジェットプリンターの構成の概略を示す図である。インクジェットプリンター1は、周知の汎用コンピューターとして構成されたユーザー・パーソナルコンピュータ(以下「ユーザーPC」と称する)100から送られてきた印刷データに基づき普通紙、塗工紙、フィルムなどの印刷媒体Pの表面に画像や文字などを印刷する装置である。このインクジェットプリンター1は、図1に示すように、印刷媒体送りモーター21により紙送りローラー22を駆動することにより印刷媒体Pを搬送方向、つまり走査方向Yに搬送する紙送り機構2と、紙送り機構2によりプラテン31上に搬送された印刷媒体Pの表面に印刷ヘッド32からインク滴を吐出して印刷を行なうプリンター機構3と、インクジェットプリンター1全体をコントロールするコントローラー4とを備えている。
プリンター機構3は、メカフレーム33の一方端(同図の右手端)に配置されたキャリッジモーター34aと、メカフレーム33の他方端(同図の左手端)に配置された従動ローラー34bとを有している。そして、キャリッジモーター34aと従動ローラー34bとにキャリッジベルト35が架設されている。このキャリッジベルト35の一部にキャリッジ36が連結されている。このため、コントローラー4からの動作指令に基づいてキャリッジモーター34aが作動すると、キャリッジ36がキャリッジ軸37に沿って走査方向X(同図の左右方向)に往復動する。さらに、キャリッジ36の背面には、キャリッジ36の移動に伴ってパルス状の信号をコントローラー4に出力するリニア式エンコーダー(図示省略)が配置されており、リニア式エンコーダーからの信号に基づいてコントローラー4は走査方向Xにおけるキャリッジ36のポジションを管理する。
キャリッジ36には、印刷ヘッド32、インクカートリッジ38および位置検出部5が搭載されており、キャリッジ36と一体的に走査方向Xに移動する。インクカートリッジ38は、溶媒としての水に着色剤としての染料または顔料を含有したシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のCMYKの各色のインクを個別に収容している。そして、印刷ヘッド32はインクカートリッジ38からインクの供給を受けてインク滴を吐出する。なお、位置検出部5はキャリッジ36の(+X)方向側の側面に取り付けられ、印刷ヘッド32からプラテン31上の印刷媒体Pまでの距離(以下「印刷媒体距離」という)に関連する信号をコントローラー4に出力する。この位置検出部5の構成については後で詳述する。
コントローラー4は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)41を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、上記CPU41以外に、各種処理プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)42、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)43、データの書込/消去可能なフラッシュメモリー44、外部機器との情報のやり取りを行なうインターフェース(I/F)45および図示しない入出力ポートなどを備えている。RAM43には、印刷バッファー領域が設けられており、ユーザーPC100からインターフェース(I/F)45を介して送られてきた印刷データが印刷バッファー領域に記憶される。そして、CPU41は、印刷媒体送りモーター21に駆動信号を出力して印刷媒体Pを走査方向Yに順次搬送する毎に、キャリッジモーター34aに駆動信号を出力してキャリッジ36を走査方向Xに往復動させる。また、CPU41は、印刷媒体Pの搬送およびキャリッジ36の往復動に対応して印刷ヘッド32に駆動信号を与えて印刷ヘッド32からインク滴を吐出する。これによって、印刷データに対応する画像や文字などを印刷媒体Pの表面、つまり被印刷面PS(図2参照)に印刷する。
このように印刷媒体Pへの印刷を行っている間、CPU41は次に説明するように構成された位置検出部5との間で種々の信号のやり取りを行い、印刷媒体距離を導出する。そして、CPU41は当該印刷媒体距離に基づいて被印刷面PSの浮上りを検出すると、キャリッジ36を急速停止させる。以下、位置検出部5の構成を図2を参照しつつ説明した後で、上記動作および作用効果について図3ないし図5を参照しつつ詳述する。
図2は位置検出部の構成を示す図である。この位置検出部5は図示を省略するハウジングの内部に光源52、絞り53および受光素子54を収容したものであり、走査方向Xおよび走査方向Yに対して直交する高さ方向Zにおける印刷媒体Pの表面、つまり被印刷面PSの位置を検出し、それに関連する位置情報を出力する。より具体的には、ハウジングは、内部に光源52、絞り53および受光素子54を配置するための空間が形成されたボックス構造を有する。また、ハウジングの底部は樹脂やガラス板などの光源52の光ビームL1に対して透明部材で構成されている。この光源52は発光面(図示省略)を被印刷面PSのうち光源52の鉛直下方に位置する被測定領域RXに向けた状態で固定されている。このため、光源52が点灯すると、光ビームL1が被印刷面PSの法線とほぼ平行に進み、被印刷面PSの被測定領域RXに照射される。つまり、本実施形態では、光ビームL1の光軸が被印刷面PSの法線とほぼ平行となるように光源52が配置されている。なお、本明細書における「法線」とは、印刷の際に皺や浮きなど無いように印刷媒体Pを載置し、被印刷面PSが平坦な状態にあるときの法線を意味している。
上記光ビームL1は被測定領域RXで反射し、拡散反射光の一部は絞り53の開口部(図示省略)を通過して受光素子54に入射する。受光素子54は上下方向に延びたPSD(Position Sensitive Detector)、ラインセンサ、ホトダイオードアレイ等で構成されており、光源52に対して(+X)方向に離間した位置で、しかも受光面54aが光ビームL1の光軸とほぼ平行となるように配置されている。このため、浮上りが発生していない場合、つまり被測定領域RXが印刷ヘッド32から十分に離れた高さ位置に位置している場合には、受光素子54は受光面54aの被印刷面PSから離れた側、例えば検出位置541で拡散反射光L3を受光する。これに対し、浮上りが発生すると、被測定領域RXが印刷ヘッド32に近づき、それに伴って受光素子54は受光面54aの被印刷面PSに近い側、例えば検出位置542で拡散反射光L3を受光する。したがって、本実施形態では、印刷媒体距離に対する拡散反射光L3の検出位置は一次関数で変化し、これを利用して拡散反射光L3を受光した位置、つまり受光量が最大となる位置を被測定領域RXの高さ位置とし、これに関連する信号を受光素子54は被測定領域RXの高さ位置を示す位置情報としてコントローラー4に出力する。
コントローラー4では、CPU41がROM42に記憶されている処理プログラムに従って上記位置情報に基づいて印刷媒体距離を算出し、それを測定値としている(印刷媒体距離の測定)。また、CPU41は測定値に基づいて印刷媒体Pの浮上りの有無を検出するとともに、浮上り検出時にはキャリッジ36の走査方向Xの移動を停止させる。このように、本実施形態では、CPU41は本発明の「距離導出部」、「浮上り検出部」および「移動停止部」として機能しており、装置各部を制御して図3に示す動作を実行する。
図3は図1に示す印刷装置の動作を示すフローチャートである。本実施形態では、印刷動作中、上記した印刷媒体距離の測定処理が繰り返して実行される(ステップS1)。当該測定処理の繰り返しにより、例えば図4に示すようなキャリッジ位置に対する印刷媒体距離の変化が得られる。同図では、キャリッジ位置200[mm]付近で印刷媒体Pの浮上りが発生して印刷媒体距離が大幅に減少して印刷媒体Pの被印刷面PS(図2参照)が印刷ヘッド32と衝突する。そこで、本実施形態では、プラテン31と印刷ヘッド32との間隔の10%ないし30%程度の値を「しきい値」として設定し、測定値がしきい値以上である間(ステップS2で「NO」)はキャリッジ36を走査方向Xに移動させながら印刷媒体距離の測定を継続して行う。一方、測定値がしきい値未満になる(ステップS2で「YES」)と、CPU41からの移動停止指令に応じてキャリッジ36の移動が強制停止される(ステップS3)。これによって、印刷媒体Pに対する印刷ヘッド32の擦れや衝突を効果的に抑制することが可能となっている。
以上のように、本実施形態によれば、拡散反射光L3を受光した受光素子54から出力される位置情報に基づいてコントローラー4が印刷媒体距離を算出するように構成しているため、印刷媒体Pに浮上りが生じているか否かにかかわらず正確な印刷媒体距離を算出することができ、印刷媒体Pの被印刷面PSに対する印刷ヘッド32の擦れや衝突を効果的に抑制することができる。しかも、受光面54aが光ビームL1の光軸と平行となるように受光素子54が配置されているため、次のような作用効果が得られる。以下、先行発明と同様に受光面54aを配置した比較例を図5に例示し、当該比較例との対比において上記作用効果を説明する。
この比較例(図5)が本実施形態(図2)と相違する点は受光素子54の配設位置である。つまり、比較例では、図5に示すように、受光面54aが光ビームL1の光軸とほぼ直角となる状態で受光素子54が光源52から(+X)方向に離間して配置されている。このため、浮上りが発生していない場合、つまり被測定領域RXが印刷ヘッド32から十分に離れた高さ位置に位置している場合には、受光素子54は受光面54aの光源に近い側(−X方向側)の検出位置543で拡散反射光L3を受光する。これに対し、浮上りが発生すると、被測定領域RXが印刷ヘッド32に近づき、それに伴って受光素子54は受光面54aの光源より遠い側(+X方向側)の検出位置544で拡散反射光L3を受光する。このように被測定領域RXの高さ位置、つまり印刷媒体距離に応じて検出位置が変化するが、その変化量は、浮上りが発生していない(印刷媒体距離が比較的長いとき)には小さいのに対し、浮上りが発生して印刷媒体距離が縮まるにしたがって大きくなっていき、印刷媒体距離に対する拡散反射光L3の検出位置は双曲線で表現される態様で変化する。したがって、コントローラー4は上記変化態様を予め校正する必要がある。つまり、少なくとも3つの印刷媒体距離での校正が必要である。より具体的には、3種類の印刷媒体距離Y1、2、3に対する各検出位置X1、2、3より、
1、2、3=a/(X1、2、3+b)+c
の三連立方程式をガウス・ジョルダン法などを用いて係数a、b、cを算出する。あるいは、二次曲線Y1、2、3=a(X1、2、3)2+bx+cで近似し、以下の連立方程式により係数a、b、cを算出する。
Figure 2014136314
このように、比較例では、受光素子54から出力される位置情報に基づく印刷媒体距離の演算も複雑なものとなり、しかも印刷媒体距離を高精度に算出することも難しくなる。これに対し、本実施形態によれば、上記したように印刷媒体距離に対する拡散反射光の検出位置は一次関数で変化するため、コントローラー4は簡単な演算処理により印刷媒体距離を算出することができ、印刷の高速化および高精度化が可能となる。
このように本実施形態では、印刷ヘッド32が本発明の「印刷手段」の一例に相当している。また、方向Zにおける被測定領域RXの位置、つまり高さ位置が「光源からの光が反射した被印刷面の位置」に相当する。さらに、絞り53が本発明の「光学素子」の一例に相当している。
B.第2実施形態
ところで、上記第1実施形態では、光ビームL1の光軸が被印刷面PSの法線とほぼ平行となるように光源52が配置されており、光源52、絞り53および受光素子54を含む仮想平面は被印刷面PSの法線と平行になっている。この場合、被印刷面PSに印刷が施され印刷濃度が上昇すると拡散反射光L3は減少するが正反射光は減少しないためこれらが同時に受光素子54に入射している場合は正反射光の影響が大きくなる。また、被印刷面PSの表面状態によっては正反射光が絞り53を通じて受光素子54に入射することがある。これを防止するためには、例えば第2実施形態ないし第4実施形態で詳しく説明するように、仮想平面が被印刷面PSの法線に対して傾斜するように構成するのが好適である。以下、第2実施形態ないし第4実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本発明にかかる印刷装置の第2実施形態を示す図であり、同図(a)は位置検出部のキャリッジへの取り付け状態を示す斜視図であり、同図(b)は位置検出部を構成する各部品の配置関係を示す図である。また、図7は位置検出部の内部構造を示す図である。第2実施形態にかかるインクジェットプリンター(印刷装置)1が第1実施形態と相違する点は、仮想平面が被印刷面PSの法線に対して傾斜している点のみであり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。したがって、第2実施形態における位置検出部5の構成および動作を中心に説明し、その他の構成(紙送り機構2、プリンター機構3、コントローラー4など)については同一符号を付して説明を省略する。なお、この点に関しては、第3実施形態および第4実施形態においても全く同様である。
位置検出部5はハウジング51の内部に光源52、絞り53および受光素子54を収容したものであり、被印刷面PSの位置を検出し、それに関連する位置情報を出力する。より具体的には、ハウジング51は、図7に示すように、内部に光源52、絞り53および受光素子54を配置するための空間が形成されたボックス構造を有する。また、ハウジング51の底部は樹脂やガラス板などの光源52の光ビームL1に対して透明部材で構成されている。そして、ハウジング51の下端部が上端部よりも(+Y)方向側に位置するように被印刷面PSの法線Nに対して所定の傾斜角θだけ(+Y)方向に傾斜し、上記透明部材が被印刷面PSのうち光源52の鉛直下方位置よりも(+Y)方向側に位置する被測定領域RXを向いた状態で図示を省略するハウジング固定具によりハウジング51はキャリッジ36の(+X)側面に取り付けられている。
このハウジング51の内部空間では、図6(a)に示すように、光源52および受光素子54が互いに走査方向Xに離間して配置されている。これらのうち光源52は受光素子54に対して(−X)方向側で発光面52aを上記被測定領域RXに向けた状態で固定されている。このため、光源52で発生した光ビームL1はハウジング51と同様に角度θだけ被印刷面PSの法線Nに対して(+Y)方向に傾斜して放出され、透明部材(図示省略)を介して被測定領域RXに照射される。そして、当該光ビームL1は被測定領域RXで反射し、図2中の2点鎖線で示すように反射光のうち正反射光L2はキャリッジ36およびハウジング51から離れる方向に進む。一方、拡散反射光の一部は次のように配置された絞り53の開口部53aを通過して受光素子54に入射する。なお、本実施形態では、赤外あるいは赤色の光ビームL1を用いており、そのビーム径を2〜10[mm]に設定している。また、正反射光L2の一部でも受光素子54に入り込んで検出精度が低下するのを回避するために、上記したようにハウジング51を傾斜して取り付け、光源52の鉛直下方位置から少なくとも光ビームL1のビーム径以上離れた位置を被測定領域RXとしている。その傾斜角θとしては例えば15゜以上に設定するのが望ましいが、その一方で傾斜角θが45゜を超えると、受光素子54に入射する拡散反射光の光量が大幅に低下してしまう。したがって、傾斜角θとしては、15゜以上45゜以下に設定するのが望ましく、本実施形態では25゜に設定している。なお、光源52の構成および傾斜角θについては、第3実施形態および第4実施形態においても同様に構成している。
受光素子54は、第1実施形態と同様に、光源52に対して(+X)方向に離間した位置でしかも受光面54aが光ビームL1の光軸とほぼ平行となるように配置されている。
絞り53は、図6(b)に示すように光源52の発光面52aおよび受光素子54の受光面54aを含む仮想平面VP上に開口部53aが位置するように透明部材の上面に配置されている。これら光源52、絞り53および受光素子54はハウジング51に対して固定されているため、例えば同図(b)中で点線で示すように、被測定領域RXが浮上ると、絞り53の開口部53aを通過して受光素子54に入射する拡散反射光L3の角度が浮上り前と異なり、その結果、受光面54aで拡散反射光L3を受光する位置も変化する。具体的には、浮上りが発生していない場合、つまり被測定領域RXが印刷ヘッド32から十分に離れた高さ位置に位置している場合には、受光素子54は受光面54aの被印刷面PSから離れた側、例えば検出位置541で拡散反射光L3を受光する。これに対し、浮上りが発生すると、被測定領域RXが印刷ヘッド32に近づき、それに伴って受光素子54は受光面54aの被印刷面PSに近い側、例えば検出位置542で拡散反射光L3を受光する。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、印刷媒体距離に対する拡散反射光L3の検出位置は一次関数で変化し、これを利用して拡散反射光L3を受光した位置、つまり受光量が最大となる位置を被測定領域RXの高さ位置とし、これに関連する信号を受光素子54は被測定領域RXの高さ位置を示す位置情報としてコントローラー4に出力する。なお、コントローラー4は第1実施形態と同様に受光素子54からの位置情報に基づいて浮上りの有無を検出するとともに、浮上り検出時にはキャリッジ36の走査方向Xの移動を停止させる。
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られるのみならず、光源52、絞り53および受光素子54を含む仮想平面VPが被印刷面PSの法線Nに対して(+Y)方向に傾斜するように光源52、絞り53および受光素子54が配置されているため、次のような作用効果も得られる。すなわち、被印刷面PSで正反射した正反射光L2は図6中の2点鎖線で示すように絞り53および受光素子54から遠ざかる方向に進む。したがって、被印刷面PSの表面状態にかかわらず受光素子54への正反射光L2の入射を確実に防止することができ、受光素子54には拡散反射光L3のみが入射する。しかも、被印刷面PSの法線Nに対して傾斜した分だけ印刷媒体距離の検出分解能は高くなる。つまり、受光素子54の分解能は、第1実施形態の分解能にcosθを乗じた値となり、第1実施形態に比べて上記検出分解能を向上させることができる。このように、被印刷面PSの印刷状態や表面状態の影響を受けることなく、高い分解能で印刷媒体距離を求めることができ、印刷媒体Pの浮上りを正確に検出することができる。その結果、印刷媒体Pの被印刷面PSへの印刷ヘッド32の擦れや衝突を効果的に抑制することができる。
C.第3実施形態
図8は、本発明にかかる印刷装置の第3実施形態を示す断面図であり、第3実施形態で採用した位置検出部の構造を示している。この第3実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、遮光部材55および反射防止部材56が追加されている点であり、その他の構成は基本的に第2実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
遮光部材55はハウジング51の(+Y)側下方端部から(+Y)方向に延設されており、被印刷面PSを部分的に上方より覆っている。より詳しくは、図8に示すように、遮光部材55は傾斜部位551および水平部位552を有している。傾斜部位551はハウジング51と同様に角度θで傾斜して光ビームL1と平行に延設され、その上端部はハウジング51の(+Y)側下方端部に固定されている。また、傾斜部位551の下端部は被測定領域RXの直上位置まで延びている。この傾斜部位551の下端部に対し、水平部位552の(−Y)側端部が接続されている。そして、水平部位552が(+Y)方向に延設されて被測定領域RXならびに被測定領域RXよりも(+Y)側に位置する被印刷面PSを上方より覆っている。このため、被測定領域RXで正反射した光L2は水平部位552で遮光される。その結果、ハウジング51側に戻るのを防止し、迷光発生を抑制することができる。
また、正反射光L2が入射する遮光部材55の入射面、つまり水平部位552の下面に対し、艶消しや静電植毛などの反射防止部材56が設けられている。このため、水平部位552の下面で正反射光L2が反射するのが反射防止部材56により防止され、迷光発生をさらに抑制することができる。なお、本実施形態では、水平部位552のみならず、傾斜部位551のうち被印刷面PSを臨む面に対しても反射防止部材56が設けられ、傾斜部位551での光反射により迷光が発生するのを確実に防止している。更に遮光部材55や反射防止部材56によって外部からの光の影響も抑制することができる。
以上のように、第3実施形態によれば、遮光部材55を追加することで迷光発生や外光の影響を抑制して印刷媒体距離の検出精度を高めることができる。また、遮光部材55に加えて反射防止部材56を設けているため、迷光発生や外光の影響をより効果的に抑制することができ、印刷媒体距離をさらに正確に検出することができる。そのため、印刷媒体Pの被印刷面PSへの印刷ヘッド32の擦れや衝突をさらに高精度に抑制することができる。
D.第4実施形態
図9は、本発明にかかる印刷装置の第4実施形態を示す図であり、同図(a)は位置検出部のキャリッジへの取り付け構造を示す斜視図であり、同図(b)は位置検出部を構成する各部品の配置関係を示す図である。また、図10は位置検出部の内部構造を示す図である。この第4実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、傾斜方向がX方向である点のみであり、その他の構成は基本的に第2実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
第4実施形態では、ハウジング51の下端部が上端部よりも(+X)方向側に位置するように被印刷面PSの法線Nに対して所定の傾斜角θだけ(+X)方向に傾斜し、上記透明部材が被印刷面PSのうちキャリッジ36よりも(+X)方向側に位置する被測定領域RXを向いた状態で図示を省略するハウジング固定具によりハウジング51はキャリッジ36の(+X)側面に取り付けられている。
このハウジング51の内部空間では、図9(a)に示すように、光源52および受光素子54が互いに走査方向Yに離間して配置されている。これらのうち光源52は受光素子54に対して(+Y)方向側で発光面52aを上記被測定領域RXに向けた状態で固定されている。このため、光源52で発生した光ビームL1はハウジング51と同様に角度θだけ被印刷面PSの法線Nに対して(+X)方向に傾斜して放出され、透明部材を介して被測定領域RXに照射される。そして、当該光ビームL1は被測定領域RXで反射し、図9の2点鎖線で示すように反射光のうち正反射光L2はキャリッジ36およびハウジング51から離れる方向、つまり(+X)方向に進む。一方、拡散反射光の一部は次のように配置された絞り53の開口部53aを通過して受光素子54に入射する。
受光素子54は、光源52に対して(−Y)方向に離間した位置でしかも受光面54aが光ビームL1の光軸とほぼ平行となるように配置されている。
絞り53は、図9(b)に示すように光源52の発光面52aおよび受光素子54の受光面54aを含む仮想平面VP上に開口部53aが位置するように透明部材の上面に配置されている。これら光源52、絞り53および受光素子54はハウジング51に対して固定されているため、例えば同図(b)中で点線で示すように、被測定領域RXが浮上ると、絞り53の開口部53aを通過して受光素子54に入射する拡散反射光L3の角度が浮上り前と異なり、その結果、受光面54aで拡散反射光L3を受光する位置も変化する。具体的には、浮上りが発生していない場合、つまり被測定領域RXが印刷ヘッド32から十分に離れた高さ位置に位置している場合には、受光素子54は受光面54aの被印刷面PSから離れた側、例えば検出位置541で拡散反射光L3を受光する。これに対し、浮上りが発生すると、被測定領域RXが印刷ヘッド32に近づき、それに伴って受光素子54は受光面54aの被印刷面PSに近い側、例えば検出位置542で拡散反射光L3を受光する。したがって、第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、印刷媒体距離に対する拡散反射光L3の検出位置は一次関数で変化し、これを利用して拡散反射光L3を受光した位置、つまり受光量が最大となる位置を被測定領域RXの高さ位置とし、これに関連する信号を受光素子54は被測定領域RXの高さ位置を示す位置情報としてコントローラー4に出力する。なお、コントローラー4は第1実施形態と同様に受光素子54からの位置情報に基づいて浮上りの有無を検出するとともに、浮上り検出時にはキャリッジ36の走査方向Xの移動を停止させる。
以上のように、第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られるのみならず、光源52、絞り53および受光素子54を含む仮想平面VPが被印刷面PSの法線Nに対して(+X)方向に傾斜するように光源52、絞り53および受光素子54が配置されているため、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。また、第4実施形態では、光源52からの光ビームL1が印刷ヘッド32から走査方向X(+X)に離れた被測定領域RXで入射するように位置検出部5をキャリッジ36に取り付けている。このような構成を採用することで、印刷前段階にある被測定領域RXに浮上りが発生しているか否かを検出することができる。その結果、キャリッジ移動の停止に要する許容時間(停止マージン)が広がり、被印刷面PSに対する印刷ヘッド32の擦れや衝突をより効果的に抑制することができる。
E.第5実施形態
図11は、本発明にかかる印刷装置の第5実施形態の動作を示すフローチャートであり、図12は、本発明にかかる印刷装置の第5実施形態の動作を示すグラフである。第5実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は印刷媒体距離の予測動作を追加した点である。すなわち、第1実施形態では、CPU41は、印刷媒体距離の測定毎に当該測定値がしきい値を下回ったか否かを判定することで印刷媒体Pの浮上りを検出している。したがって、印刷媒体距離の測定値がしきい値以上となっている間、つまりステップS2で「NO」と判定している間、CPU41は単にキャリッジ36の移動に同期して印刷媒体距離を繰り返して測定しているに過ぎない。これに対し、第5実施形態では、CPU41は、ステップS2で印刷媒体Pの浮上りを実際に検出する前に、印刷媒体距離を測定する毎に、当該測定値とそれ以前に測定された測定値とに基づいて印刷媒体Pの浮上りを予測し、キャリッジ36の移動停止を行う。なお、第5実施形態では、RAM43は測定値をN個(N≧2)記憶する配列(メモリ空間)を有しており、FIFO(First-In First-Out)方式で測定値の書き換えを行い、CPU41は当該配列に記憶される測定値に基づき以下のように装置各部を制御する。以下、図11および図12を参照しつつ予測動作について詳述する。
印刷動作中、上記した印刷媒体距離の測定処理が繰り返して実行される(ステップS1)。そして、印刷媒体距離を測定する毎に、CPU41は、測定値がしきい値を下回ったか否かを判定し(ステップS2)、当該ステップS2で「YES」と判定すると、第1実施形態と同様にキャリッジ36の移動を強制停止させる(ステップS3)。
一方、当該ステップS2で「NO」と判定すると、CPU41は印刷媒体距離の測定値をRAM43の配列に新たに追加する(ステップS4)。なお、測定値の追加に対応して配列に記憶されていた測定値のうち最も古い測定値はRAM43から削除される。こうして、印刷媒体距離の測定をN回実行した後においては、最新のN個の測定値がRAM43の配列に記憶されている。
次のステップS5で、最新の測定値が予測計算距離を下回ったか否かをCPU41は判定する。この「予測計算距離」は印刷媒体距離の予測動作の実行開始基準となるものであり、予測計算距離を設定することで無駄な予測計算(ステップS6、S7)を省いている。つまり、印刷媒体距離が十分に大きく、浮上りが発生していない、あるいは浮上量が微小である間(ステップS5で「NO」)、次に説明する予測計算処理(ステップS6、S7)を行うことなく、ステップS1に戻って印刷媒体距離の測定を実行する。なお、本実施形態では、図12に示すように予測計算距離をプラテン31と印刷ヘッド32との間隔の40%程度の値に設定しているが、しきい値より大きい値であれば、予測計算距離の設定値は任意である。ただし、無駄な予測計算(ステップS6、S7)を省くという観点からすれば、50%未満を上限とするのが好適である。
一方、CPU41は、ステップS5で「YES」と判定すると、RAM43の配列からはN個の測定値を読み出し、それらに基づいてキャリッジの移動に伴う印刷媒体距離の変化を予測計算式として導出する(ステップS6)。本実施形態では、図12の点線で示すように、最小二乗法により求めた一次関数式を予測計算式としている。もちろん、予測計算式はこれに限定されるものではなく、外挿法(あるいは補外法ともいう)に適した計算式を求めればよい。
次のステップS7でCPU41は測定時点でのキャリッジ位置よりも先の位置、例えば5[mm]先のキャリッジ位置での印刷媒体距離(以下「予測距離」という)を予測計算式に基づいて算出する。そして、予測距離がしきい値以上である間(ステップS8で「NO」)、CPU41はステップS1に戻ってキャリッジ36を走査方向Xに移動させながら印刷媒体距離の測定を継続して行う。一方、予測距離がしきい値未満になる(ステップS8で「YES」)と、CPU41はキャリッジ36の移動を強制停止させる(ステップS3)。
以上のように、第5実施形態では、第1実施形態と同様にして印刷媒体Pの浮上りを検出しているので、第1実施形態と同様に作用効果が得られる。また、第5実施形態においては印刷媒体距離の変化を予測して浮上りを検出しており、第1実施形態に比べて早期に印刷媒体Pの浮上りを検出することができる。このため、第5実施形態は第1実施形態の作用効果をさらに補強することができる。つまり、第5実施形態によれば、予測検出を行うことで余裕を持ってキャリッジ36を強制停止させることができ、被印刷面PSへの印刷ヘッド32の擦れや衝突を抑制する効果をさらに高めることができる。
F.その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、拡散反射光L3が絞り53を通じて受光素子54の受光面54aに入射するように構成しているが、絞り53の代わりにレンズを用いてもよく、この場合、レンズが本発明の「光学素子」として機能する。
また、上記第2実施形態では、仮想平面VPが法線Nに対して(+Y)方向に傾斜するように構成されているが、例えば仮想平面VPが法線Nに対して(−Y)方向に傾斜するように構成してもよい。
また、キャリッジ36の(+X)方向側に位置検出部5を取り付けているが、当該位置検出部5に代えて、位置検出部をキャリッジ36の(−X)方向側に取り付けてもよい。また、(+X)方向側および(−X)方向側に位置検出部5を取り付けてもよく、この場合、キャリッジ36が(+X)方向に移動する間に(+X)方向側の位置検出部5により印刷媒体Pの浮上りを検出する一方、キャリッジ36が(−X)方向に移動する間に(−X)方向側の位置検出部5により印刷媒体Pの浮上りを検出するように構成してもよい。
また、上記第3実施形態では、仮想平面VPが法線Nに対して(+Y)方向に傾斜した位置検出部5に対して遮光部材55および反射防止部材56を追加的に設けているが、遮光部材55や反射防止部材56の適用対象はこれに限定されるものではなく、仮想平面VPを法線Nに対して傾斜させた位置検出部全般に対して適用することができる。
また、上記実施形態に限らず、キャリッジ36を主走査方向および副走査方向に移動させることで、印刷媒体Pの被印刷面PSに画像を形成してもよいし、印刷ヘッド32に対して印刷媒体Pを主走査方向および/または副走査方向に搬送させることで、印刷媒体Pの被印刷面PSに画像を形成してもよい。前述のいずれの形態でも、位置検出部5は、印刷ヘッド32に対して、印刷ヘッド32および印刷媒体Pの相対的な移動方向の少なくとも一方に取り付けるのが好ましく、印刷ヘッド32の(+Y)方向側および(−Y)方向側の少なくとも一方に位置検出部5を取り付けてもよい。印刷媒体Pを搬送させて画像を形成する場合、位置検出部5により印刷媒体Pの浮上りを検出した時には、それまでに印刷媒体Pを搬送させていた方向への印刷媒体Pの搬送を停止し、印刷媒体Pと印刷ヘッド32の接触を抑制する。
なお、本発明において、主走査方向とは、印刷ヘッド32と印刷媒体Pが相対的に位置を変えながら主に画像を形成する走査の方向を指し、副走査方向とは、主走査方向とは交差する方向であって印刷ヘッド32と印刷媒体Pが相対的に位置を変える方向を指すものとする。
1…インクジェットプリンター(印刷装置)、 4…コントローラー、 5…位置検出部、 32…印刷ヘッド(印刷手段)、 36…キャリッジ、 41…CPU(距離導出部、浮上り検出部、移動停止部)、 52…光源、 53…絞り(光学素子)、 54…受光素子、 L1…光ビーム、 L2…正反射光、 L3…拡散反射光、 N…法線、 P…印刷媒体、 PS…被印刷面、 RX…被測定領域、 VP…仮想平面、 X…走査方向、Y…走査方向

Claims (11)

  1. 印刷手段を搭載したキャリッジを移動させて印刷媒体の被印刷面に画像を形成する印刷装置であって、
    絞りまたはレンズで構成される光学素子、光源および受光素子を有し、前記光源から光を照射するとともに前記被印刷面で反射した反射光のうち拡散反射光を前記光学素子を通じて前記受光素子に入射させて前記光源からの光が反射した前記被印刷面の位置に関する位置情報を前記受光素子から出力する位置検出部と、
    前記受光素子から出力される位置情報に基づき前記印刷媒体の浮上りを検出すると、前記キャリッジの移動を停止させるコントローラーとを備え、
    前記受光素子は、前記拡散反射光を受光する受光面が前記光源から前記被印刷面に照射される光の光軸と平行となるように配置されることを特徴とする印刷装置。
  2. 請求項1に記載の印刷装置であって、
    前記光源、前記光学素子および前記受光素子を含む仮想平面が前記被印刷面の法線に対して傾斜した状態である印刷装置。
  3. 請求項2に記載の印刷装置であって、
    前記仮想平面の傾斜方向は、前記キャリッジが移動する主走査方向である印刷装置。
  4. 請求項3に記載の印刷装置であって、
    前記位置検出部は、前記光源からの光が前記印刷手段から前記主走査方向に離れた位置で反射するように前記キャリッジに取り付けられる印刷装置。
  5. 請求項2に記載の印刷装置であって、
    前記仮想平面の傾斜方向は、前記キャリッジが移動する主走査方向と直交する副走査方向である印刷装置。
  6. 請求項2ないし5のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
    前記位置検出部は、前記光学素子、前記光源および前記受光素子を収容するハウジングと、前記被印刷面で反射した反射光のうち正反射光に対して非透過性の材料で構成された遮光部材とを有し、
    前記遮光部材は前記ハウジングから前記正反射光の進む方向に延設されて前記正反射光を遮光する印刷装置。
  7. 請求項6に記載の印刷装置であって、
    前記位置検出部は、前記正反射光が入射する前記遮光部材の入射面に設けられて前記入射面での前記正反射光の反射を防止する反射防止部材を有する印刷装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
    前記コントローラーは、
    前記受光素子から出力される位置情報に基づき前記印刷手段から前記被印刷面までの印刷媒体距離を求める距離導出部と、
    前記距離導出部により求められた印刷媒体距離に基づき前記印刷媒体の浮上りを検出する浮上り検出部と、
    前記浮上り検出部が前記印刷媒体の浮上りを検出したとき前記キャリッジの移動を停止させる移動停止部とを備える印刷装置。
  9. 請求項8に記載の印刷装置であって、
    前記浮上り検出部は、前記印刷媒体距離が予め設定されたしきい値よりも短いか否かに基づいて前記印刷媒体の浮上りを検出する印刷装置。
  10. 請求項8に記載の印刷装置であって、
    前記浮上り検出部は、前記キャリッジが予め設定された距離だけ移動したと仮定したときの印刷媒体距離を予測距離として求め、前記予測距離が予め設定されたしきい値よりも短いか否かに基づいて前記印刷媒体の浮上りを検出する印刷装置。
  11. 請求項10に記載の印刷装置であって、
    前記浮上り検出部は、前記キャリッジの移動に伴う前記印刷媒体距離の変化を求め、前記変化に基づいて前記予測距離を求める印刷装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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