JP2014134140A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】制御弁の断線等の異常によって吸気バルブのバルブタイミングが第2位相に固定されることに起因して機関の始動時にプレイグニッションが生じることを好適に抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、自動停止条件が成立したときには機関運転を自動停止し、自動始動条件が成立したときには機関を自動始動する自動停止始動制御を行う。また、機関温度が所定の基準温度以上において自動始動を行うときに、吸気バルブのバルブタイミングが中間位相に固定されている場合には、該バルブタイミングが最遅角位相に固定されている場合に比べて、クランキング中の燃料噴射の開始時期を遅延させる遅延制御を行う。
【選択図】図9

Description

本発明は、吸気バルブのバルブタイミングを変更するバルブタイミング可変機構が設けられた内燃機関を制御する制御装置に関する。
例えば特許文献1に記載の内燃機関には可変動弁装置が設けられている。この可変動弁装置には、吸気バルブのバルブタイミングを変更するバルブタイミング可変機構が設けられている。また、最遅角位相にバルブタイミングを固定する第1固定機構、最遅角位相と最進角位相との中間の位相である中間位相にバルブタイミングを固定する第2固定機構、及びバルブタイミング可変機構及びこれら固定機構への作動油の給排を制御するオイルコントロールバルブが設けられている。
また、同文献には、自動停止条件が成立したときには機関運転を自動停止し、自動始動条件が成立したときには機関を自動始動する自動停止始動制御を行う内燃機関の制御装置が開示されている。
また、同文献の段落[0109]には、イグニッションスイッチのオフ操作によって機関が停止された場合には、吸気バルブのバルブタイミングを中間位相に固定するようにオイルコントロールバルブを制御することが開示されている。また、イグニッションスイッチによらず機関が自動停止された場合には、吸気バルブのバルブタイミングを最遅角位相に固定するようにオイルコントロールバルブを制御することが開示されている。
特開2012―26275号公報
ところで、機関の自動停止時に吸気バルブのバルブタイミングを最遅角位相に固定すべきところ、例えばオイルコントロールバルブの配線が断線することによって同バルブタイミングが中間位相に固定されることがある。この場合、機関の自動始動が行なわれると、実圧縮比が高くなることでプレイグニッションが生じるおそれがある。
本発明の目的は、制御弁の断線等の異常によって吸気バルブのバルブタイミングが第2位相に固定されることに起因して機関の始動時にプレイグニッションが生じることを好適に抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための内燃機関の制御装置は、吸気バルブのバルブタイミングを変更するバルブタイミング可変機構と、予め定められた第1位相に前記バルブタイミングを固定する第1固定機構と、予め定められた位相であって第1位相よりも進角側の第2位相に前記バルブタイミングを固定する第2固定機構と、バルブタイミング可変機構及びこれら固定機構への作動油の給排を制御する制御弁と、を備える油圧式の可変動弁装置を搭載した内燃機関に適用され、自動停止条件が成立したときには機関運転を自動停止し、自動始動条件が成立したときには機関を自動始動する自動停止始動制御を行う内燃機関の制御装置であって、前記自動始動を行うときに、前記バルブタイミングが第2位相に固定されている場合には、該バルブタイミングが第1位相に固定されている場合に比べて、クランキング中の燃料噴射の開始時期を遅延させる遅延制御を行う燃料噴射制御部を備える。
例えば制御弁の断線等の異常によって機関が自動停止されるときに吸気バルブのバルブタイミングが第1位相よりも進角側の第2位相に固定されることがある。また、機関が自動停止されるときには機関温度が高いことが多く、次に機関が自動始動されるときには直前に機関が自動停止されてからそれほど時間が経過していないことが多く、機関温度が高いことが多い。こうした場合、上記構成によれば、次の自動始動時には上記遅延制御が実行され、クランキング中の燃料噴射の開始時期が遅延される。このため、上記遅延制御が実行されない場合に比べて、燃料噴射が行なわれることなくクランキングのみが行なわれる期間が延長される。これにより、気筒内の換気が促進され、気筒内の冷却が促進される。従って、プレイグニッションの発生が抑制される。
このように、上記構成によれば、制御弁の断線等の異常によって吸気バルブのバルブタイミングが第2位相に固定されることに起因して機関の始動時にプレイグニッションが生じることを好適に抑制することができる。
この場合、前記燃料噴射制御部は、クランキング中に機関回転速度が所定回転速度以上になると燃料噴射を開始するものであり、前記遅延制御においては、クランキング中に機関回転速度が前記所定回転速度以上となってから所定期間が経過した後に燃料噴射を開始する、といった構成が好ましい。
同構成によれば、吸気バルブのバルブタイミングが第1位相に固定されている状態での正常な自動始動時においては、クランキング中に機関回転速度が所定回転速度以上になると燃料噴射が開始される。一方、吸気バルブのバルブタイミングが第2位相に固定されている状態での異常な自動始動時においては、遅延制御が実行されることで、クランキング中に機関回転速度が所定回転速度以上となってから所定期間が経過した後に燃料噴射が開始される。従って、遅延制御を的確且つ容易に行なうことができる。
また、前記燃料噴射制御部は、前記自動始動を行うときの機関温度が所定の基準温度以上のときには前記遅延制御を実行し、該機関温度が前記基準温度よりも低いときには前記遅延制御の実行を禁止する、といった構成が好ましい。
機関の自動停止が行われるときの機関温度が低い場合や、機関の自動停止期間がある程度長い場合には、自動始動時の機関温度が低く、プレイグニッションが発生する可能性が低くなる。こうした場合においても上記遅延制御が実行されると、燃料噴射の開始時期が遅延されることで機関の始動性が不要に悪化することとなる。
この点、上記構成によれば、機関の自動始動が実行されるときの機関温度が高く、プレイグニッションが発生する可能性が高いときには遅延制御が実行される。一方、機関の自動始動が実行されるときの機関温度が低く、プレイグニッションが発生する可能性が低い場合には遅延制御が実行されることはない。従って、機関の始動時にプレイグニッションが生じることを好適に抑制することができるとともに、機関の始動性が不要に悪化することを好適に抑制することができる。
また、前記燃料噴射制御部は、前記遅延制御において、前記自動始動を行うときの機関温度が高いときほど前記所定期間を長く設定する、といった構成ことが好ましい。
同構成によれば、遅延制御において、機関の自動始動が実行されるときの機関温度が高いときほど、すなわちプレイグニッションが発生しやすいときほど上記所定期間が長くされる。このため、燃料噴射が行なわれることなくクランキングのみが行なわれることで気筒内の冷却が促進される期間がプレイグニッションの発生のしやすさに応じて可変設定される。従って、機関の始動時にプレイグニッションが生じることを一層好適に抑制することができるとともに、機関の始動性が不要に悪化することを好適に抑制することができる。
また、前記自動停止を行うときには前記第1固定機構によって前記バルブタイミングが第1位相に固定されるように制御弁を制御する制御弁制御部を備える、といった態様が好ましい。
前述したように、機関が自動停止された後に自動始動されるときには直前に機関が自動停止されてからそれほど時間が経過していないことが多く、機関温度が高いことが多い。従って、こうした自動始動時においては、機関の始動性を向上させることよりも、再始動時の機関振動を抑えることを要求される場合が多い。
上記構成によれば、自動停止を行うときには第1固定機構によってバルブタイミングが第1位相に固定されるように制御弁が制御される。従って、次の機関始動時には実圧縮比が低くなり、再始動時の機関振動を抑えることができる。
この場合、前記制御弁制御部は、前記自動停止を行うときの機関温度が所定の判定温度以上のときには前記第1固定機構によって前記バルブタイミングが固定されるように制御弁を制御し、該機関温度が前記判定温度よりも低いときには前記第2固定機構によって前記バルブタイミングが固定されるように制御弁を制御する、といった態様が好ましい。
同構成によれば、機関が自動始動されるときにバルブタイミングが第2位相に固定されているときには、第1位相に固定されているときよりもバルブタイミングが進角側になっているため、実圧縮比が高くなる。そのため、制御弁の断線等の異常がない正常時においては低温時の機関の始動性が向上する。
ここで、前述したように自動停止時の機関温度と、次の自動始動時の機関温度とは比較的近いことが多い。そこで上記構成では、自動停止を行うときの機関温度が所定の判定温度以上であり、自動停止後の再始動時における機関温度が比較的高い状態に維持されている可能性が高いときには、第1固定機構によってバルブタイミングが第1位相に固定されるように制御弁が制御されるため、再始動時の機関振動を抑えることができる。
一方、自動停止を行うときの機関温度が所定の判定温度よりも低く、次の自動始動時における機関温度が比較的低い状態に維持されている可能性が高いときには、第2固定機構によってバルブタイミングが第2位相に固定されるように制御弁が制御されるため、制御弁の断線等の異常がない正常時においては低温時の機関の始動性を向上させることができる。
このように上記構成によれば、自動停止時におけるバルブタイミングの固定値が自動停止時の機関温度に応じて変更されるため、次の機関始動時におけるバルブタイミングを、機関温度に応じた適切な状態にしておくことができる。
また、上記目的を達成するための内燃機関の制御装置は、吸気バルブのバルブタイミングを変更するバルブタイミング可変機構と、予め定められた第1位相に前記バルブタイミングを固定する第1固定機構と、予め定められた位相であって第1位相よりも進角側の第2位相に前記バルブタイミングを固定する第2固定機構と、バルブタイミング可変機構及びこれら固定機構への作動油の給排を制御する制御弁と、を備える油圧式の可変動弁装置を搭載した内燃機関を制御する制御装置であって、機関温度が所定の基準温度以上において機関の始動を行うときに、前記バルブタイミングが第2位相に固定されている場合には、該バルブタイミングが第1位相に固定されている場合に比べて、クランキング中の燃料噴射の開始時期を遅延させる遅延制御を行う燃料噴射制御部を備える。
同構成によれば、機関温度が基準温度以上において機関の始動が実行されるときに、バルブタイミングが第2位相に固定されている場合にはプレイグニッションが発生する可能性が高いとして遅延制御が実行される。従って、制御弁の断線等の異常によって吸気バルブのバルブタイミングが第2位相に固定されることに起因してプレイグニッションが生じることを好適に抑制することができる。
第1実施形態における内燃機関の概略構造を示す概略図。 同実施形態におけるバルブタイミング可変機構の平面構造を示す平面図。 同実施形態における第1固定機構の側部断面構造を示す断面図。 同実施形態の第1固定機構による固定状態を示す断面図。 同実施形態の第2固定機構による固定状態を示す断面図。 同実施形態の可変動弁装置における油圧供給経路を示す模式図。 同実施形態のオイルコントロールバルブの動作モードを示す図。 同実施形態における自動停止時のオイルコントロールバルブの制御処理の手順を示すフローチャート。 同実施形態における自動始動時の燃料噴射制御処理の手順を示すフローチャート。 第2実施形態における機関温度と所定期間との関係を規定したグラフ。 第3実施形態における自動停止時のオイルコントロールバルブの制御処理の手順を示すフローチャート。
<第1実施形態>
以下、図1〜図9を参照して内燃機関の制御装置を具体化した第1実施形態について説明する。
図1に示すように、内燃機関300には複数の気筒41が設けられており、各気筒41には吸気通路42及び排気通路43が接続されている。尚、同図においては1つの気筒41のみが図示されているが、他の気筒41の構造も同図に示される構造と同一である。
気筒41内にはピストン48が往復動可能に設けられており、同ピストン48とクランクシャフト50とはコネクティングロッド51を介して連結されている。ピストン48の頂面と気筒41の内周面とによって燃焼室49が区画される。また、気筒41内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁46や、燃料噴射弁46から噴射された燃料と吸気通路42を通じて気筒41内に導入された空気との混合気に火花点火する点火プラグ47が設けられている。また、クランクシャフト50には図示しないワンウェイクラッチを介してスタータモータ55が連結されている。
内燃機関300には吸気バルブ44及び排気バルブ45をそれぞれ開閉する吸気カムシャフト52及び排気カムシャフト53が設けられている。
また、内燃機関300には吸気バルブ44のバルブタイミングを変更するバルブタイミング可変機構31が設けられている。
図2に示すように、バルブタイミング可変機構31は、ベーンロータ1及びハウジングロータ2の2つの回転体を備えている。
ベーンロータ1は、略円筒形状のロータ本体3と、ロータ本体3の外周から径方向に突出する複数(同図のものでは3つ)のベーン4とを有して構成されている。こうしたベーンロータ1は、吸気カムシャフト52の先端に一体回転可能に固定されている。
一方、ハウジングロータ2は略円環形状に形成されるとともに、その内周にベーン4を収容する、ベーン4と同数の凹部5を備えて構成されている。凹部5の内部は、ベーン4によって2つの油室に区画されている。このうち、ベーン4のカムシャフト回転方向前方(同図の時計回り方向前方)に形成された油室は、ハウジングロータ2に対してベーンロータ1をカムシャフト反回転方向に相対回動させるための油圧が導入される遅角室6となっている。またベーン4のカムシャフト回転方向後方(同図の時計回り方向後方)に形成された油室は、ハウジングロータ2に対してベーンロータ1をカムシャフト回転方向に相対回動させるための油圧が導入される進角室7となっている。
ハウジングロータ2は、クランクシャフト50に同期して回転するスプロケット8と一体回転可能に固定されており、ベーンロータ1に対して同一の軸心を有して相対回動可能とされている。
こうしたバルブタイミング可変機構31では、遅角室6に作動油が供給されるとともに、進角室7から作動油が排出されると、ベーン4両側の油圧差によってハウジングロータ2に対してベーンロータ1がカムシャフト回転方向に相対回動される。これにより、吸気カムシャフト52の回転位相が遅らされるようになり、吸気バルブ44のバルブタイミングが遅角される。
一方、進角室7に作動油を供給されるとともに、遅角室6から作動油が排出されると、ベーン4両側の油圧差により、ベーンロータ1がハウジングロータ2に対してカムシャフト回転方向に相対回動される。これにより、吸気カムシャフト52の回転位相が進められるようになり、吸気バルブ44のバルブタイミングが進角される。
バルブタイミング可変機構31のベーン4のうちの1つには、吸気バルブ44のバルブタイミングを予め定められた第1位相に固定する第1固定機構200Aが設けられている。第1位相は、吸気バルブ44のバルブタイミングが最も遅角側になる位相(最遅角位相)に設定されている。吸気バルブ44のバルブタイミングがこの最遅角位相になっているときには、吸気バルブ44の閉弁時期は、吸気下死点よりも遅角側の時期になる。
また、第1固定機構200Aが設けられたベーン4とは異なる別のベーン4の1つには、吸気バルブ44のバルブタイミングを予め定められた第2位相に固定する第2固定機構200Bが設けられている。この第2固定機構200Bの構造は、第1固定機構200Aの構造と同一である。そして上記第2位相は、第1位相よりも進角側の位相であって、最遅角位相と最進角位相との中間に位置する中間位相に設定されている。この中間位相として、本実施形態では、低温時の機関始動に適した位相を設定しているが、この他の位相を設定してもよい。
ちなみに、最遅角位相とは、ハウジングロータ2に対してベーンロータ1が最もカムシャフト回転方向後方に相対回動されたときの位相であり、最進角位相とは、ハウジングロータ2に対してベーンロータ1が最もカムシャフト回転方向前方に相対回転されたときの位相である。
図3に示すように、第1固定機構200Aは、インナーピン10及びアウターピン11の2つのピンを備えている。円筒状に形成されたインナーピン10の外周には、円環状に形成されたアウターピン11が、図中上下方向に摺動可能に挿入されている。これら2つのピンは、ベーン4に形成された収容孔12に、図中上下方向に摺動可能に収容されている。インナーピン10は、収容孔12から図中下方に突出することで、スプロケット8に形成された係止穴91Aに係合する。この係止穴91Aは、吸気バルブ44のバルブタイミングが上記第1位相になったときのインナーピン10の位置に合わせて形成されている。そしてインナーピン10が係止穴91Aに係合すると、ハウジングロータ2に対するベーンロータ1の相対回転が規制される。係止穴91Aの側方には、ベーン4が回動したときのインナーピン10の軌跡に沿うようにして係止穴91Aよりも進角側の所定位置にまで延びており、かつ係止穴91Aよりも底の浅い係止溝90Aが形成されている。
収容孔12の図中上側の開口は、スプリングガイドブッシュ13により閉塞されている。また、収容孔12の図中下側の開口には、インナーピン10の先端が通過できるだけの円孔14aが中央に形成されたリングブッシュ14が固定されている。
インナーピン10とスプリングガイドブッシュ13との間には、インナーピンスプリング15が配設されている。また、アウターピン11とスプリングガイドブッシュ13との間には、アウターピンスプリング16が配設されている。そして、これらスプリング15、16によりインナーピン10及びアウターピン11は図中下方に向けてそれぞれ常時付勢されている。
アウターピン11とリングブッシュ14との間には解除室17が区画形成されている。油路を介して解除室17に作動油が供給されると、アウターピン11がアウターピンスプリング16の付勢力に抗して図中上方に変位する。アウターピン11が上方に変位すると、インナーピン10の外周面に形成された拡径部10aがアウターピン11によって押されることでインナーピン10もインナーピンスプリング15の付勢力に抗して図中上方に変位する。このようにインナーピン10が図中上方に変位することで、インナーピン10と係止穴91Aとの係合が解除されて、インナーピン10は収容孔12に収納される。これにより第1固定機構200Aによるバルブタイミングの固定が解除されて、バルブタイミング可変機構31によるバルブタイミングの変更が可能になる。
収容孔12には、バルブタイミング可変機構31の遅角室6及び進角室7にそれぞれ連通する油室連通路19、20が接続されている。アウターピン11が図中下方に変位したときには、アウターピン11とスプリングガイドブッシュ13との間の空間を通じて油室連通路19、20は互いに連通され、アウターピン11が図中上方に変位したときには、油室連通路19、20の互いの連通がアウターピン11によって遮断される。従って、解除室17の油圧が低下して、アウターピン11が図中下方に変位したときには、バルブタイミング可変機構31の遅角室6と進角室7とが互いに連通される。
尚、上述したように第1固定機構200Aと第2固定機構200Bとは同一の構造であるため、第2固定機構200Bの説明は省略する。ただし、第1固定機構200Aのインナーピン10が係合する係止穴91A及び係止溝90Aと、第2固定機構200Bのインナーピン10が係合する係止穴91B及び係止溝90Bの形成位置は異なっている。
図4に示すように、第1固定機構200Aのインナーピン10が係合する係止穴91Aは、上述したように、吸気バルブ44のバルブタイミングが上記第1位相(最遅角位相)になったときのインナーピン10の位置に合わせて形成されている。従って、第1固定機構200Aのインナーピン10が係止穴91Aに係合すると、吸気バルブ44のバルブタイミングは、最遅角位相に固定される。
このようにして吸気バルブ44のバルブタイミングが最遅角位相に固定された状態では、バルブタイミングが最遅角位相よりも進角側で固定された場合と比較して、機関の実圧縮比が低くなる。そのため、機関始動時の機関振動、より詳細にはスタータモータ55による内燃機関300のクランキング中における機関振動を抑えることができる。また、クランキング開始後における機関回転速度の上昇速度が速くなるため、例えば初爆(クランキング開始後の最初の混合気の燃焼)発生までの時間が短くなる。
図5に示すように、第2固定機構200Bのインナーピン10が係合する係止穴91Bは、吸気バルブ44のバルブタイミングが上記第2位相(中間位相)になったときのインナーピン10の位置に合わせて形成されている。係止穴91Bの側方には、ベーン4が回動したときのインナーピン10の軌跡に沿うようにして係止穴91Bよりも進角側の所定位置にまで延びており、かつ係止穴91Bよりも底の浅い係止溝90Bが形成されている。第2固定機構200Bのインナーピン10が係止穴91Bに係合すると、ハウジングロータ2に対するベーンロータ1の相対回転が規制される。従って、第2固定機構200Bのインナーピン10が係止穴91Bに係合すると、吸気バルブ44のバルブタイミングは、上記中間位相に固定される。
このようにして吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相に固定された状態では、バルブタイミングが、上記最遅角位相に固定されているときよりも進角側になっている。そのため、内燃機関300の実圧縮が高くなって低温時の機関の始動性が向上する。
図6に示すように、オイルパン60に貯留されている作動油は、吸込油路71を介してオイルポンプ61に汲み上げられる。このオイルポンプ61は、クランクシャフト50の回転によって駆動されるポンプである。そして、オイルポンプ61から吐出された作動油は、バルブタイミング可変機構31等の内燃機関300の各部位に供給される。
オイルパン60とオイルポンプ61とは上記吸込油路71で接続されており、オイルポンプ61とオイルコントロールバルブ63とは第1供給油路72で接続されている。また、オイルコントロールバルブ63とオイルパン60とは第1排出油路73で接続されている。オイルコントロールバルブ63と進角室7とは進角油路74で接続されている。また、オイルコントロールバルブ63と遅角室6とは遅角油路75で接続されている。また、第1固定機構200A及び第2固定機構200Bの解除室17とオイルコントロールバルブ63とは解除油路76でそれぞれ接続されている。
オイルポンプ61とオイルコントロールバルブ63とを繋ぐ上記第1供給油路72の途中には、オイルコントロールバルブ63からオイルポンプ61への作動油の流れを阻止する逆止弁85が設けられている。
オイルポンプ61と逆止弁85との間の第1供給油路72には、第1分岐油路80が接続されており、この第1分岐油路80は、作動油を貯留するタンク81に接続されている。タンク81と電動式の油圧ポンプ(以下、電動ポンプ83という)とは、ポンプ油路82で接続されている。電動ポンプ83の吐出口には、第2分岐油路84が接続されており、この第2分岐油路84は、オイルコントロールバルブ63と逆止弁85との間の第1供給油路72に接続されている。
こうした油路を備えることにより、オイルコントロールバルブ63には、オイルポンプ61によってオイルパン60から吸い込まれた作動油が供給される。また、機関停止中や機関始動時等のようにオイルポンプ61の作動油供給能力が低下するときには、電動ポンプ83が駆動され、タンク81に貯留された作動油がオイルコントロールバルブ63に供給される。
上記オイルコントロールバルブ63は、複数のポートが設けられた単一のハウジングと、このハウジング内に設けられた単一のスプールとにより構成されている。そして、このスプールがハウジングに対して移動することにより、遅角室6、進角室7、及び解除室17に対する作動油の給排状態は、図7に示す第1モードM1〜第5モードM5に変更される。
(第1モードM1)
進角室7への作動油の供給及び同進角室7からの作動油の排出が共に停止され、且つ遅角室6への作動油の供給及び同遅角室6からの作動油の排出が共に停止され、且つ解除室17から作動油が排出されるモード。
この第1モードM1では、進角室7及び遅角室6での作動油の出入りが無いため、吸気バルブ44のバルブタイミングは現状値のまま保持される。また、第1固定機構200A及び第2固定機構200Bのインナーピン10は、収容孔12から突出する方向に付勢されており、バルブタイミングが最遅角位相となっているときには、第1固定機構200Aによってバルブタイミングは最遅角位相に固定された状態に維持される。一方、バルブタイミングが中間位相となっているときには、第2固定機構200Bによってバルブタイミングは中間位相に固定された状態に維持される。従って、第1モードM1では、進角室7や遅角室6に作動油を供給することができない場合でも、第1固定機構200A又は第2固定機構200Bの作動によってバルブタイミングの固定状態を保持することができる。この第1モードM1は、例えば機関停止中に選択される。
(第2モードM2)
進角室7から作動油が排出され、且つ遅角室6に作動油が供給され、且つ解除室17から作動油が排出されるモード。
この第2モードM2では、吸気バルブ44のバルブタイミングは遅角側に変化する。また、第1固定機構200A及び第2固定機構200Bのインナーピン10は、収容孔12から突出する方向に付勢されており、バルブタイミングが最遅角位相になったときには、第1固定機構200Aによってバルブタイミングは最遅角位相に固定される。一方、バルブタイミングが中間位相となったときには、第2固定機構200Bによってバルブタイミングは中間位相に固定される。この第2モードM2は、例えば機関停止に際してバルブタイミングを固定するときに選択される。
(第3モードM3)
進角室7から作動油が排出され、且つ遅角室6に作動油が供給され、且つ解除室17に作動油が供給されるモード。
この第3モードM3では、吸気バルブ44のバルブタイミングは遅角側に変化する。また、第1固定機構200A及び第2固定機構200Bのインナーピン10は、収容孔12に収容されている。従って、第1固定機構200Aや第2固定機構200Bによるバルブタイミングの固定は解除されている。この第3モードM3は、バルブタイミングを遅角側に変更するときに選択される。
(第4モードM4)
進角室7への作動油の供給及び同進角室7からの作動油の排出が共に停止され、且つ遅角室6への作動油の供給及び同遅角室6からの作動油の排出が共に停止され、且つ解除室17に作動油が供給されるモード。
この第4モードM4では、進角室7及び遅角室6での作動油の出入りが無いため、吸気バルブ44のバルブタイミングは現状値のまま保持される。また、第1固定機構200A及び第2固定機構200Bのインナーピン10は、収容孔12に収容されている。従って、第1固定機構200Aや第2固定機構200Bによるバルブタイミングの固定は解除されている。つまり、第4モードM4では、第1モードM1と異なり、バルブタイミングの保持が進角室7及び遅角室6での作動油の保持によって行われる。そして、インナーピン10によるバルブタイミングの固定は解除されているため、第3モードM3や後述の第5モードM5にモードが切り替えられると、ベーン4は速やかに回動し、バルブタイミングも速やかに変更される。この第4モードM4は、機関運転中においてバルブタイミングを任意の位相に保持するときに選択される。
(第5モードM5)
進角室7に作動油が供給され、且つ遅角室6から作動油が排出され、且つ解除室17に作動油が供給されるモード。
この第5モードM5では、吸気バルブ44のバルブタイミングは進角側に変化する。また、第1固定機構200A及び第2固定機構200Bのインナーピン10は、収容孔12に収容されている。従って、第1固定機構200Aや第2固定機構200Bによるバルブタイミングの固定は解除されている。この第5モードM5は、バルブタイミングを進角側に変更するときに選択される。
上記バルブタイミング可変機構31、各固定機構200A、200B、これら各機構に作動油を供給する油圧機構や油路等によって、油圧式の可変動弁装置30が構成されている。
先の図1及び図6に示すように、可変動弁装置30を備える内燃機関300の各種制御は、制御装置100によって行われる。制御装置100は、演算処理を行うCPU、制御に必要なプログラムやデータが記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入力したり出力したりするためのポート等を備えている。
内燃機関300には、機関運転状態等を検出する各種のセンサ等が設けられている。例えば、吸気カムポジションセンサ101は、吸気カムシャフト52の回転位相を検出する。クランク角センサ102は、機関回転速度NEの算出に必要なクランクシャフト50の回転角を検出する。水温センサ103は内燃機関300の冷却水の温度を検出する。アクセル操作量センサ104はアクセルペダルの操作量を検出する。車速センサ105は内燃機関300が搭載された車両の車速SPを検出する。また、制御装置100にはイグニッションスイッチ(以下、IGスイッチ106という)の操作状態に応じた信号が入力される。すなわち、制御装置100は、IGスイッチ106がオン操作されると運転者による機関始動要求があると判断し、IGスイッチ106がオフ操作されると運転者による機関停止要求があると判断する。
制御装置100は、上記各種センサ等からの検出信号に基づいて機関運転状態を把握し、その把握した機関運転状態に応じた各種制御を行う。例えば制御装置100は、クランキング制御、燃料噴射制御、点火時期制御、オイルコントロールバルブ63の駆動制御を通じた吸気バルブ44のバルブタイミング制御、電動ポンプ83の駆動制御等を行う。
また、制御装置100は、予め定められた自動停止条件が成立したときに内燃機関300を自動停止させる自動停止制御と、予め定められた自動始動条件が成立したときに内燃機関300を自動始動させる自動始動制御を行う。
(手動停止時のオイルコントロールバルブ63の制御処理)
制御装置100は、IGスイッチ106のオフ操作によって内燃機関300が手動停止されるときには、第2固定機構200Bによって吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相に固定されるようにオイルコントロールバルブ63を制御する。これは以下の理由による。すなわち、機関の手動停止時においては、次に機関始動が行われるまでの経過時間が、自動停止時と比較して長くなりやすい。従って、手動停止が行われたときには、自動停止時と比較して、次の機関始動時の機関温度が低くなっている可能性が高い。また、機関が始動されるときに吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相に固定されているときには、最遅角位相に固定されているときよりもバルブタイミングが進角側となる。このため、実圧縮比が高くなり、低温時の機関の始動性が向上する。
(自動停止時のオイルコントロールバルブ63の制御処理)
次に、内燃機関300が自動停止されるときの吸気バルブ44のバルブタイミングを設定するオイルコントロールバルブ63の制御処理について説明する。尚、この制御処理は、制御装置100によって所定の期間毎に繰り返し実行される実行される。
図8に示すように、本処理が開始されるとまず、自動停止条件が成立しているか否かが判断される(S100)。この自動停止条件としては、例えば次の条件SP1〜SP3等が設定されている。
SP1:アクセル操作量ACCPが「0」であり、内燃機関300の運転状態がアイドル運転状態であること。
SP2:内燃機関300が冷間状態ではないこと。尚、冷間状態か否かの判定は、冷却水温THW等に基づいて行うことができる。
SP3:車速SPが所定値以下であること。
これら条件SP1〜SP3などが全て満たされる場合には、自動停止条件が成立したと判断される。
ステップS100にて、自動停止条件が成立していると判断されないときには(S100:NO)、本処理は、一旦終了される。
一方、ステップS100にて、自動停止条件が成立していると判断されたときには(S100:YES)、吸気バルブ44のバルブタイミングが最遅角位相に固定されるように、バルブタイミング可変機構31及び第1固定機構200Aを駆動すべくオイルコントロールバルブ63が制御される(S110)。
ステップS110の処理によって吸気バルブ44のバルブタイミングが固定されると、自動停止が実行され、燃料噴射及び燃料点火が停止されることにより機関運転が停止され(S120)、本処理は、一旦終了される。
この自動停止時のオイルコントロールバルブ63の制御処理が実行されることにより、自動停止時には、吸気バルブ44のバルブタイミングが最遅角位相に固定された後に、機関運転が停止される。
(自動始動時の燃料噴射制御処理)
次に、内燃機関300が自動始動されるときの燃料噴射制御処理について説明する。尚、この燃料噴射制御処理も、制御装置100によって所定の期間毎に繰り返し実行される。
図9に示すように、本処理が開始されるとまず、自動始動条件が成立しているか否かが判断される(S200)。この自動始動条件としては、例えば次の条件ST1〜ST3などが設定されている。
ST1:アクセル操作量ACCPが「0」よりも大きく、運転者がアクセル操作をしている。
ST2:車室内の冷房能力又は暖房能力が不足している。
ST3:バッテリの充電量が不足している。
これら条件ST1〜ST3などのうち、いずれかが満たされる場合には、自動始動条件が成立したと判断される。
ステップS200にて、自動始動条件が成立していると判断されないときには(S200:NO)、本処理は、一旦終了される。
一方、ステップS200にて、自動始動条件が成立していると判断されたときには(S200:YES)、機関温度が所定の基準温度以上であるか否かが判断される(S210)。この基準温度としては、吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相に固定されている状態で機関を始動させた場合に、プレイグニッションが発生する最低温度が設定されている。尚、機関温度は、冷却水温THWや作動油の油温と相関する。そこで、本実施形態では、冷却水温THWに対して上記基準温度を設定しているが、その他のパラメータ、例えば油温に対して上記判定温度を設定してもよい。
ステップS210にて、機関温度が基準温度よりも低いと判断されたときには(S210:「NO」)、機関の自動始動が実行される(S240)。すなわち、スタータモータ55が駆動されてクランキングが実行され、機関回転速度NEが所定回転速度Nth以上になると燃料噴射弁46が駆動されて燃料噴射が開始される。そして、本処理は、一旦終了される。
一方、ステップS210にて、機関温度が基準温度以上であると判断されたときには(S210:「YES」)、バルブタイミングが中間位相で固定されているか否かが判断される(S220)。
その結果、バルブタイミングが中間位相で固定されていると判断されないときには(ステップS220:「NO」)、機関の自動始動が実行され(S240)、本処理は、一旦終了される。
一方、直前の機関の自動停止時において最遅角位相に固定されているべきバルブタイミングが、例えばオイルコントロールバルブ63の断線等の異常によってバルブタイミングが中間位相に固定されることがある。従って、直前に機関が停止される際に、吸気カムポジションセンサ101及びクランク角センサ102の検出信号に基づいてバルブタイミングが中間位相に固定されていると判断されたときには(S220:YES)、次に、遅延制御の実行を伴う機関の自動始動が実行される(S230)。すなわち、クランキングが実行され、機関回転速度NEが所定回転速度Nth以上になってから所定期間Δtが経過した後に燃料噴射が開始される。
次に、本実施形態の作用について説明する。
機関の自動始動が実行されるときに、吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相に固定されている場合には、プレイグニッションが発生する可能性が高いとして上記遅延制御が実行される。これにより、クランキング中の燃料噴射の開始時期が遅延されるため、上記遅延制御が実行されない場合に比べて、燃料噴射が行なわれることなくクランキングのみが行なわれる期間が延長される。その結果、気筒41内の換気が促進され、気筒41内の冷却が促進される。従って、プレイグニッションの発生が抑制される。
ところで、機関の自動停止が行われるときの機関温度が低い場合や、機関の自動停止期間がある程度長い場合には、自動始動時の機関温度が低く、プレイグニッションが発生する可能性が低くなる。こうした場合においても上記遅延制御が実行されると、燃料噴射の開始時期が遅延されることで機関の始動性が不要に悪化することとなる。
この点、上記実施形態によれば、機関の自動始動が実行されるときの機関温度が基準温度以上のとき、すなわちプレイグニッションが発生するときに限って遅延制御が実行される。一方、機関の自動始動が実行されるときの機関温度が基準温度よりも低く、プレイグニッションが発生しない場合には遅延制御が実行されることはない。従って、プレイグニッションが生じることが好適に抑制されるとともに、機関の始動性が不要に悪化することが好適に抑制される。
以上説明した本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)制御装置100は、機関温度が所定の基準温度以上において自動始動を行うときに、吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相に固定されている場合には、該バルブタイミングが最遅角位相に固定されている場合に比べて、クランキング中の燃料噴射の開始時期を遅延させる遅延制御を行う。こうした構成によれば、機関の自動始動が実行されるときに、機関温度が高く、且つバルブタイミングが中間位相に固定されているときにはプレイグニッションが発生する可能性が高いとして上記遅延制御が実行される。一方、機関の自動始動が実行されるときの機関温度が低いときにはプレイグニッションが発生する可能性が低いとして上記遅延制御が実行されることはない。従って、オイルコントロールバルブ63の断線等の異常によって吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相に固定されることに起因してプレイグニッションが生じることを好適に抑制することができるとともに、機関の始動性が不要に悪化することを好適に抑制することができる。
(2)制御装置100は、クランキング中に機関回転速度NEが所定回転速度Nth以上になると燃料噴射を開始するものであり、遅延制御においては、クランキング中に機関回転速度NEが前記所定回転速度Nth以上となってから所定期間Δtが経過した後に燃料噴射を開始する。こうした構成によれば、遅延制御を的確且つ容易に行なうことができる。
<第2実施形態>
以下、図10を参照して第2実施形態について説明する。
本実施形態では、図10に示すように、自動始動を行うときの機関温度(冷却水温THW)が高いときほど、遅延制御において機関回転速度NEが所定回転速度Nth以上になってから燃料噴射が開始されるまでの遅延時間である所定期間Δtが長く設定される点が異なっている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
遅延制御において、機関の自動始動が実行されるときの機関温度が高いときほど、すなわちプレイグニッションが発生しやすいときほど上記所定期間Δtが長くされる。このため、燃料噴射が行なわれることなくクランキングのみが行なわれることで気筒41内の冷却が促進される期間がプレイグニッションの発生のしやすさに応じて可変設定される。
以上説明した本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、第1実施形態の効果(1)、(2)に加えて、新たに以下に示す効果が得られるようになる。
(3)制御装置100は、遅延制御において、自動始動を行うときの機関温度(冷却水温THW)が高いときほど所定期間Δtを長く設定する。こうした構成によれば、燃料噴射が行なわれることなくクランキングのみが行なわれることで気筒41内の冷却が促進される期間がプレイグニッションの発生のしやすさに応じて可変設定される。従って、機関の始動時にプレイグニッションが生じることを好適に抑制することができるとともに、機関の始動性が不要に悪化することを一層好適に抑制することができる。
<第3実施形態>
以下、図11を参照して第3実施形態について説明する。
本実施形態では、以下の点が先の第1、2実施形態と異なっている。
すなわち、機関の自動停止が行われるときの機関温度が所定の判定温度以上のときにはバルブタイミングが最遅角位相に固定されるようにオイルコントロールバルブ63が制御され、該機関温度が上記判定温度よりも低いときにはバルブタイミングが中間位相に固定されるようにオイルコントロールバルブ63が制御される。
(自動停止時のオイルコントロールバルブ63の制御処理)
次に、内燃機関300が自動停止されるときの吸気バルブ44のバルブタイミングを設定するオイルコントロールバルブ63の制御処理について説明する。尚、この制御処理は、制御装置100によって所定の期間毎に繰り返し実行される実行される。
図11に示すように、本処理が開始されるとまず、自動停止条件が成立しているか否かが判断される(S300)。この自動停止条件は先の第1実施形態と同一である。
ステップS300にて、自動停止条件が成立していないと判断されたときには(S300:NO)、本処理は、一旦終了される。
一方、ステップS300にて、自動停止条件が成立していると判断されたときには(S300:YES)、機関温度が判定温度以上であるか否かが判断される(S310)。この判定温度としては、吸気バルブ44のバルブタイミングを最遅角位相に固定した状態で機関を始動させた場合に、内燃機関300が良好な状態で始動することができる最低温度が設定されている。尚、機関温度は、冷却水温THWや作動油の油温と相関する。そこで、本実施形態では、冷却水温THWに対して上記判定温度を設定しているが、その他のパラメータに対して上記判定温度を設定してもよい。また、本実施形態では、上記判定温度として、先の第1、2実施形態において例示した基準温度と同一の値を設定しているが、同基準温度とは異なる値に設定してもよい。
ステップS310にて、機関温度が判定温度以上であると判断されたときには(S310:YES)、吸気バルブ44のバルブタイミングが最遅角位相に固定されるように、バルブタイミング可変機構31及び第1固定機構200Aを駆動すべくオイルコントロールバルブ63が制御される(S320)。
一方、ステップS310にて、機関温度が判定温度よりも低いと判定されるときには(S310:NO)、吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相で固定されるように、バルブタイミング可変機構31及び第2固定機構200Bを駆動すべくオイルコントロールバルブ63が制御される(S340)。
ステップS320の処理、又はステップS340の処理によって吸気バルブ44のバルブタイミングが固定されると、自動停止が実行され、燃料噴射及び燃料点火が停止されることにより機関運転が停止され(S330)、本処理は、一旦終了される。
この自動停止時のオイルコントロールバルブ63の制御処理が実行されることにより、自動停止時には、吸気バルブ44のバルブタイミングが最遅角位相又は中間位相のいずれかに固定された後に、機関運転が停止される。従って、機関停止中や次の機関始動直前における吸気バルブ44のバルブタイミングは、自動停止時に固定されたバルブタイミングになっている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
機関が自動始動されるときに吸気バルブ44のバルブタイミングが中間位相に固定されているときには、最遅角位相に固定されているときよりもバルブタイミングが進角側になっているため、実圧縮比が高くなる。そのため、オイルコントロールバルブ63の断線等の異常がない正常時においては低温時の機関の始動性が向上する。
ここで、前述したように自動停止時の機関温度と、次の自動始動時の機関温度とは比較的近いことが多い。そこで本実施形態では、自動停止が行われるときの機関温度が所定の判定温度以上であり、自動停止後の再始動時における機関温度が比較的高い状態に維持されている可能性が高いときには、バルブタイミングが最遅角位相に固定されるようにオイルコントロールバルブ63が制御されるため、再始動時の機関振動が抑えられる。
自動停止が行われるときの機関温度が所定の判定温度よりも低く、次の自動始動時における機関温度が比較的低い状態に維持されている可能性が高いときには、バルブタイミングが中間位相に固定されるようにオイルコントロールバルブ63が制御される。このため、オイルコントロールバルブ63に断線等の異常がない正常時においては低温時の機関の始動性が向上する。
以上説明した本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(3)制御装置100は、自動停止を行うときの機関温度が所定の判定温度以上のときにはバルブタイミングが固定されるようにオイルコントロールバルブ63を制御し、該機関温度が上記判定温度よりも低いときにはバルブタイミングが固定されるようにオイルコントロールバルブ63を制御する。こうした構成によれば、自動停止時における吸気バルブ44のバルブタイミングの固定値が自動停止時の機関温度に応じて変更されるため、次の機関始動時における吸気バルブ44のバルブタイミングを、機関温度に応じた適切な状態にしておくことができる。
尚、本発明に係る内燃機関の制御装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・機関の自動始動が行われるときの機関温度を、水温センサ103等によって直接検出するようにしてもよいし、機関が自動停止されたときに検出された機関温度と自動停止期間とに基づいて推定するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、機関の自動始動時における燃料噴射制御及びその遅延制御について例示したが、IGスイッチ106のオン操作による機関の手動始動時において機関温度が所定の基準温度以上のときに遅延制御を適用すれば、同様にしてプレイグニッションの発生が生じることを抑制することができる。
1…ベーンロータ、2…ハウジングロータ、3…ロータ本体、4…ベーン、5…凹部、6…遅角室、7…進角室、8…スプロケット、10…インナーピン、10a…拡径部、11…アウターピン、12…収容孔、13…スプリングガイドブッシュ、14…リングブッシュ、14a…円孔、15…インナーピンスプリング、16…アウターピンスプリング、17…解除室、19…油室連通路、20…油室連通路、30…可変動弁装置、31…バルブタイミング可変機構、41…気筒、42…吸気通路、43…排気通路、44…吸気バルブ、45…排気バルブ、46…燃料噴射弁、47…点火プラグ、48…ピストン、49…燃焼室、50…クランクシャフト、51…コネクティングロッド、52…吸気カムシャフト、53…排気カムシャフト、55…スタータモータ、60…オイルパン、61…オイルポンプ、63…オイルコントロールバルブ(制御弁)、71…吸込油路、72…第1供給油路、73…第1排出油路、74…進角油路、75…遅角油路、76…解除油路、80…第1分岐油路、81…タンク、82…ポンプ油路、83…電動ポンプ、84…第2分岐油路、85…逆止弁、90A…係止溝、90B…係止溝、91A…係止穴、91B…係止穴、100…制御装置(制御弁制御部、燃料噴射制御部)、101…吸気カムポジションセンサ、102…クランク角センサ、103…水温センサ、104…アクセル操作量センサ、105…車速センサ、106…イグニッションスイッチ(IGスイッチ)、200A…第1固定機構、200B…第2固定機構、300…内燃機関。

Claims (7)

  1. 吸気バルブのバルブタイミングを変更するバルブタイミング可変機構と、予め定められた第1位相に前記バルブタイミングを固定する第1固定機構と、予め定められた位相であって第1位相よりも進角側の第2位相に前記バルブタイミングを固定する第2固定機構と、バルブタイミング可変機構及びこれら固定機構への作動油の給排を制御する制御弁と、を備える油圧式の可変動弁装置を搭載した内燃機関に適用され、自動停止条件が成立したときには機関運転を自動停止し、自動始動条件が成立したときには機関を自動始動する自動停止始動制御を行う内燃機関の制御装置であって、
    前記自動始動を行うときに、前記バルブタイミングが第2位相に固定されている場合には、該バルブタイミングが第1位相に固定されている場合に比べて、クランキング中の燃料噴射の開始時期を遅延させる遅延制御を行う燃料噴射制御部を備える、
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記燃料噴射制御部は、クランキング中に機関回転速度が所定回転速度以上になると燃料噴射を開始するものであり、前記遅延制御においては、クランキング中に機関回転速度が前記所定回転速度以上となってから所定期間が経過した後に燃料噴射を開始する、
    請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記燃料噴射制御部は、前記自動始動を行うときの機関温度が所定の基準温度以上のときには前記遅延制御を実行し、該機関温度が前記基準温度よりも低いときには前記遅延制御の実行を禁止する、
    請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記燃料噴射制御部は、前記遅延制御において、前記自動始動を行うときの機関温度が高いときほど前記所定期間を長く設定する、
    請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記自動停止を行うときには前記第1固定機構によって前記バルブタイミングが第1位相に固定されるように制御弁を制御する制御弁制御部を備える、
    請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記制御弁制御部は、前記自動停止を行うときの機関温度が所定の判定温度以上のときには前記第1固定機構によって前記バルブタイミングが固定されるように制御弁を制御し、該機関温度が前記判定温度よりも低いときには前記第2固定機構によって前記バルブタイミングが固定されるように制御弁を制御する、
    請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 吸気バルブのバルブタイミングを変更するバルブタイミング可変機構と、予め定められた第1位相に前記バルブタイミングを固定する第1固定機構と、予め定められた位相であって第1位相よりも進角側の第2位相に前記バルブタイミングを固定する第2固定機構と、バルブタイミング可変機構及びこれら固定機構への作動油の給排を制御する制御弁と、を備える油圧式の可変動弁装置を搭載した内燃機関を制御する制御装置であって、
    機関温度が所定の基準温度以上において機関の始動を行うときに、前記バルブタイミングが第2位相に固定されている場合には、該バルブタイミングが第1位相に固定されている場合に比べて、クランキング中の燃料噴射の開始時期を遅延させる遅延制御を行う燃料噴射制御部を備える、
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
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