JP2014133906A - マスクの保持具 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャンローラに巻き付けられた基材に蒸着を行う場合に、基材に形状に応じて、マスクを適切な形状で保持できるようにする。
【解決手段】キャンローラに巻き付けられた基材に対して蒸着を行う際に使用されるマスクを保持するマスクの保持具であって、キャンローラの周面に対応してマスクを湾曲変形させて保持する保持部を備える。
【選択図】 図2
【解決手段】キャンローラに巻き付けられた基材に対して蒸着を行う際に使用されるマスクを保持するマスクの保持具であって、キャンローラの周面に対応してマスクを湾曲変形させて保持する保持部を備える。
【選択図】 図2
Description
本発明は、真空蒸着の際に使用されるマスクの保持具に関する。
従来、真空蒸着による有機EL素子の製造方法として、帯状の基材が所定の走行方向に沿って走行するように、基材を走行させる工程と、蒸着源から気化材料を吐出させて基材に蒸着させる工程とを備える製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、斯かる製造方法によれば、帯状のシャドーマスクを帯状の基材に面合わせで密接させると共に、シャドーマスクを基材と一体的に走行させることにより、所望のパターンで気化材料を基材に蒸着させることができる。
ところで、特許文献1に係る製造方法においては、シャドーマスクを送り出す送り出しローラや、シャドーマスクを巻き取る巻き取りローラや、シャドーマスクを支持する複数の支持ローラが設けられており、一般的に、装置が大型になるという問題を生じさせている。また、異なるパターンで気化材料を基材に蒸着させたい場合には、所定のシャドーマスクに交換(型替え)するために、複雑な作業が必要となるという問題を生じさせている。
この問題を解決するために、従来のシャドーマスクを使用せずに、小型化したマスクを使用することが考えられるが、この場合は、マスクが基材に重ねられる際に、基材から所定の距離だけ離れた位置でマスクを保持する保持具(ホルダ)が必要になる。
また、例えば、帯状の基材がキャンローラ(特許文献1における大径ガイドロール5b)に巻き付けられた状態で蒸着を行う場合、基材は、キャンローラの周面の形状に応じて変形する。このことから、基材に適切な蒸着を行うために、基材の変形に応じて、マスクを適切な形状で保持することが必要になる。
本発明は、斯かる事情に鑑み、キャンローラに巻き付けられた基材に蒸着を行う場合に、基材の形状に応じて、マスクを適切な形状で保持する保持具を提供することを課題とする。
本発明は上記の課題を解決するためのものであって、キャンローラに巻き付けられた基材に対して蒸着を行う際に使用されるマスクを保持するマスクの保持具であって、キャンローラの周面に対応してマスクを湾曲変形させて保持する保持部を備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、マスクは、保持具の保持部によって、キャンローラの周面の形状に対応して変形した状態で保持されることになる。すなわち、マスクは、キャンローラに巻き付けられて変形する基材の形状に合わせて変形することができ、これによって、基材に適切な蒸着を行うことができるようになる。
また、本発明に係るマスクの保持具によれば、前記保持部は、キャンローラの半径とほぼ等しい曲率半径を有して湾曲する保持面を有することが望ましい。
かかる構成によれば、保持面の曲率半径がキャンローラの半径とほぼ等しくなっているので、マスクは、この保持面に沿って変形することで、キャンローラに巻き付けられて変形する基材の形状に対応した形状になる。これにより、キャンローラに巻き付けられた基材に適切な蒸着を行うことができるようになる。
また、本発明に係るマスクの保持具によれば、前記マスクを保持面に固定する固定部材を備える構成を採用できる。
かかる構成によれば、マスクを所定位置に確実に固定して、最適な蒸着を行うことができるようになる。
本発明によれば、キャンローラに巻き付けられた基材に蒸着を行う場合に、基材に形状に応じて、マスクを適切な形状で保持することができる。
以下、本発明に係るマスクの保持具の一実施形態について、添付図面を参酌して説明する。本実施形態において、保持具は、有機EL素子の製造装置(以下、単に「製造装置」という)の一部品として使用される。以下の説明においては、保持具が装着された製造装置についての説明を行う中で、保持具の説明を適宜行うこととする。
図1に示すように、製造装置は、内部が真空である複数(図例では3つ)の真空室1と、帯状の基材81が真空室1の内部を通過するように、基材81を所定の方向(以下、「走行方向」ともいう)Xに沿って走行させる走行装置2と、基材81の搬送経路の中途部に設けられるととともに、この基材81が巻き付けられる複数のキャンローラ3と、基材81に向けて気化材料を吐出する複数の蒸着源4と、キャンローラ3に一体に設けられるとともに、キャンローラ3に巻き付けられる基材81を所定の位置において蒸着源4から遮蔽する遮蔽装置5とを備える。
各真空室1は、走行方向Xに沿って連設されている。また、各真空室1の内部が真空となるように、各真空室1には、真空ポンプ等の真空発生装置(図示していない)が接続されている。
走行装置2は、基材81を送る送り出しローラ21と、基材81(詳しくは、気化材料を基材81に蒸着して形成された有機EL素子8)を巻き取る巻き取りローラ22と、送り出しローラ21及び巻き取りローラ22間に配置され、基材81を支持する複数の支持ローラ23とを備える。
送り出しローラ21は、真空室1の内部で且つ上流側に配置されている。巻き取りローラ22は、真空室1の内部で且つ下流側に配置されている。また、複数の支持ローラ23は、真空室1の内部に配置されている。複数の支持ローラ23には、基材81が掛け渡されている。
各蒸着源4は、真空室1の内部に配置されていると共に、キャンローラ3の半径方向において、基材81と対面するように配置されている。そして、上流側及び下流側の真空室1には、蒸着源4がそれぞれ1つ設けられていると共に、中間の真空室1には、3つの蒸着源4が走行方向Xに沿って並設されている。また、各蒸着源4は、加熱により気化させた気化材料を、基材81に向けて吐出している。
図2〜図10に示すように、遮蔽装置5は、マスク9を保持する保持具51と、保持具51の位置を切り替える切替機構52を備える。
保持具51は、金属(例えばステンレス鋼)によって板状に構成される。より具体的には、保持具51は、平面視において、四角形状(長方形状)に構成される。図3に示すように、保持具51における厚さ方向における一方側の面は、所定の曲率半径による湾曲面とされている。保持具51の他方の面は、平坦面とされている。
図2〜図4に示すように、保持具51は、マスク9を保持する保持部53と、そのほぼ中央部に形成される開口部54と、切替機構52に取り付けられる取付部55と、マスク9を保持部53に固定するための固定部材56と、固定部材56を保持部53に取り付けるための取付孔57とを備える。
保持部53は、保持具51における一方の面に形成される凹部を有する。この凹部は、保持具51の長手方向に沿って長尺状に構成されている。また、この凹部は、開口部54の周囲を囲むように、平面視において、ほぼ四角形状に構成される。
この凹部の底面58は、所定の曲率半径による円弧状の湾曲面となっている。この底面58の曲率半径は、保持具51の一方の面の曲率半径とほぼ等しくなっている。この底面58は、マスク9が保持具51に取り付けられたときに、マスク9が所定の形状に変形した状態を維持しつつ、このマスク9を保持する保持面である。
開口部54は、保持具51の厚さ方向に貫通して形成されている。蒸着源4からの気化材料を、マスク9を通じて基材81に向けて通過させるためのものである。開口部54は、平面視においてほぼ四角形状に構成される。
取付部55は、四角形状の保持具51の一辺(長辺)から突出する板状の部分である。取付部55は、厚さ方向に貫通する孔59を有する。この孔59には、ボルト等の固定具が挿通される。
図4に示すように、固定部材56は、金属によって長方形状の薄板状に構成される。この構成により、固定部材56は、可撓性を有し、保持具51に取り付けられたときに、保持具51の形状に対応して弾性変形可能である。また、固定部材56は、厚さ方向に貫通する複数(図例では5つ)の孔60を有する。
図2、図3に示すように、取付孔57は、保持具51の厚さ方向に貫通して形成されている。本実施形態における取付孔57の数は、固定部材56に形成される孔60の数と同じである。
図5に示すように、マスク9は、所定の金属によって長方形状の薄板状に構成される。この構成により、マスク9は、可撓性を有し、保持具51に取り付けられたときに所定の形状に弾性変形可能である。また、マスク9は、蒸着源4からの気化材料を通過させるための開口部10を有する。なお、マスク9は、可撓性を有しない薄膜状のものその他の種々の形状のものであってもよい。
図6(a)に示すように、マスク9は、保持具51に取り付けられていない場合には、平板状のままであるが、保持具51に取り付けられた場合には、保持部53の保持面(底面)58に接触した状態で、所定の形状に弾性変形する。すなわち、マスク9は、図6(b)に示すように、保持部53の保持面58の曲率半径に応じて、側面視円弧状に弾性変形する。この際の、マスク9の曲率半径は、キャンローラ3の半径とほぼ等しくなることが望ましい。本実施形態では、キャンローラ3の半径は約300mmであり、これに対応して、保持面58の曲率半径は、約300mmとされている。したがって、保持面58によって弾性変形した際のマスク9の曲率半径は、約300mmとなる。キャンローラ3の半径及びマスク9の曲率半径は、300mmに限定されず、600mm、900mmその他の最適な寸法に設定され得る。
マスク9は、以下のようにして、保持具51に取り付けられる。まず、マスク9をある程度弾性変形させておき、保持部53としての凹部に入れる。このとき、マスク9の長手方向における端部は、凹部の長手方向における端部61に当接する。このとき、マスク9の一方の面が凹部の底部に形成される保持面58に接触した状態になる。これにより、マスク9は所定の曲率半径による円弧形状に湾曲した状態になる。
次に、固定部材56を、保持具51において湾曲状に形成されている一方の面に取り付ける。具体的には、固定部材56に形成されている孔60を保持具51に形成されている取付孔57に一致させ、ボルトを両者に挿通し、このボルトにナットを嵌めて締結する。このとき、固定部材56は、保持具51の一方の面の湾曲形状に応じて弾性変形することになる。また、固定部材56の一部62が、保持部53としての凹部の縁部63を越えてマスク9の一部と重なり合う。ただし、この固定部材56の一部62は、マスク9の開口部10と重ならないように位置決めされる。これにより、固定部材56は、保持具51の保持部53から外れないように、マスク9を固定する。以上によって、マスク9の保持具51への取り付けが完了する。
マスク9が保持具51に保持されて状態において、マスク9の開口部10は、保持具51の開口部54と重なった状態になる。これにより、マスク9は、開口部10を通じて蒸着源4からの気化材料を通過させることができる。一方、保持具51の開口部54は、マスク9の開口部10と重なる部分のみが気化材料を通過させることができる。
図7〜図10に示すように、切替機構52は、保持具51を遮蔽位置と遮蔽解除位置とに位置変更可能に構成される。ここで、「遮蔽位置」とは、保持具51が蒸着源4及び基材81間に配置されて基材81を遮蔽する位置をいう。また、「遮蔽解除位置」とは、保持具51が蒸着源4及び基材81間から退避して基材81を遮蔽するのを解除する位置をいう。保持具51が遮蔽位置にある場合、保持具51は、マスク9を基材81から離れた位置で保持することができる。マスク9と基材81との離間間隔は約1mm程度であることが望ましい。また、本明細書において、「遮蔽」とは、蒸着源4からの気化材料がマスク9の開口部10を通過することを許容するとともに、マスク9において開口部10を除く部分が蒸着源4からの気化材料の通過を阻止することをいう。
切替機構52は、キャンローラ3に固定される本体部64を備える。また、切替機構52は、キャンローラ3の駆動軸11に平行な軸で回転するように本体部64に固定される第1回転体65と、第1回転体65の軸と直交する方向に沿って配置される軸で回転するように本体部64に固定され、かつ、第1回転体65の駆動を受ける第2回転体66とを備える。
第1回転体65及び第2回転体66の内部には、磁性体(又は磁石)がそれぞれ設けられている。これにより、第1回転体65が回転するのに伴って、第2回転体66の磁性体が第1回転体65の磁性体から磁力を受けるため、第2回転体66が回転する。なお、第1回転体65と第2回転体66とは、離間して配置されている。
また、切替機構52は、第1回転体65に連結される第1リンク体67と、第2回転体66に連結される一対の第2リンク体68と、保持具51を支持する支持部材(以下、「第1支持部材」という)69と、第1支持部材69をスライド可能に支持する支持部材(以下、「第2支持部材」という)70とを備える。さらに、切替機構52は、第1リンク体67に回転可能に取り付けられるカムフォロア71と、カムフォロア71に摺接されるカム72とを備える。
第1リンク体67は、長尺状の板部材からなる。第1リンク体67の一端部は、第1回転体65に連結されている。第1リンク体67の他端部には、カムフォロア71が取り付けられている。第1リンク体67は、カムフォロア71をカム72に係合させるとともに、カムフォロア71の動きに対応して所定の回動を行うことで、第1回転体65を回転又は回動させるためのものである。
第2リンク体68は、第1回転体65の回転に応じて第2回転体66が回転したときに、この回転に応じて回動することで、第1支持部材69を第2支持部材70に対してスライドさせるためのものである。第2リンク体68は、長尺状の板部材からなる。第2リンク体68の一端部は、第2回転体66の軸に固定されている。第2リンク体68の他端部側の部分には、厚さ方向に貫通するほぼ四角形状の開口部73が形成されている。
第1支持部材69は、保持具51を着脱自在に支持する支持部74と、第2リンク体68に連結される連結部75と、第2支持部材70に係合する係合部76とを備える。
支持部74は、図9、図10に示すように、その上端部に保持具51の取付部55が重ねられるように構成される。支持部74は、保持具51の取付部55に形成される孔59に対応するねじ孔(図示せず)を有する。保持具51は、このねじ孔に取付部55の孔59を一致させるとともに、これらにねじ部材を入れて締め付けることによって、支持部74に固定される。
連結部75は、図7、図8に示すように、上方又はキャンローラ3の半径方向外方に向かって突出する一対の突起部である。連結部75は、図9、図10に示すように、第2リンク体68に係合する係合軸部77を有する。係合軸部77は、第2リンク体68に形成されるほぼ四角形状の開口部73に入れられている。係合軸部77の直径は、第2リンク体68の開口部73よりも小さくなっている。係合軸部77は、保持具51が遮蔽位置及び遮蔽解除位置にある場合には、第2リンク体68の開口部73の縁部に接触していないが、第2リンク体68によって第1支持部材69が移動している場合には、開口部73の縁部に接触するように構成される。
係合部76は、図9、図10に示すように、第1支持部材69の下端部に設けられている。この係合部76は、第1支持部材69が第2支持部材70に支持されつつ、所定の方向に移動できるようにするためのものである。係合部76は、第1支持部材69がキャンローラ3に対して接近離反できるように、第2支持部材70と係合する。
第2支持部材70は、本体部64の上端部に固定されている。この第2支持部材70は、第1支持部材69の係合部76が係合する係合溝78を有する。係合溝78は、キャンローラ3の回転軸の軸心方向に沿って長く形成されている。係合溝78は、第1支持部材69の係合部76を、長手方向に沿ってスライドさせることができる。
カム72は、図7、図8に示すように、ほぼ円形の板状に構成される。カム72は、キャンローラ3を駆動するための駆動軸11と同心状に配置されている。しかしながら、カム72は、駆動軸11及びキャンローラ3とともに回転することはなく、真空室1において保持されている。
カム72は、保持具51を遮蔽解除位置に維持するための第1領域72aと、保持具51を遮蔽解除位置から遮蔽位置に移動させるための第2領域72bと、保持具51を遮蔽位置において維持するための第3領域72cと、保持具51を遮蔽位置から遮蔽解除位置への移動させるための第4領域72dを備える。
第1領域72aは、円板状のカム72の外周面に所定の曲率半径で側面視円弧状のカム面を有する。第2領域72bは、所定の傾斜角度で傾斜する側面視直線状のカム面を有する。この第2領域72bは、その一端部が円弧状の第1領域72aの一端部に繋がっている。
第3領域72cは、所定の曲率半径による側面視円弧状のカム面を有する。第3領域72cの曲率半径は、第1領域72aの曲率半径よりも小さく設定されている。第3領域72cは、その一端部が第2領域72bの他端部に繋がっている。
第4領域72dは、所定の傾斜角度で傾斜する側面視直線状のカム面を有する。この第4領域72dの傾斜の方向は、第2領域72bの傾斜の方向とは逆に設定されている。この第4領域72dは、一端部が第3領域72cの他端部に繋がっている。また、この第4領域72dは、その他端部が第1領域72aの他端部に繋がっている。
カムフォロア71は、カム72の第1領域72aから第4領域72dへと順に移動するように構成される。
なお、切替機構52においては、付勢装置(図示していない)により、カムフォロア71がカム72の各領域(第1領域72a〜第4領域72d)に接触した状態を維持するように付勢されている。
本実施形態に係る遮蔽装置5の動作について説明する。この説明は、製造装置の上流側に位置する真空室1内のキャンローラ3及び遮蔽装置5の1つを参照する。
まず、基材81は、送り出しローラ21から巻き取りローラ22に向かって搬送される。このとき、基材81は、真空室1内に設けられるキャンローラ3に接して搬送される。キャンローラ3に設けられている遮蔽装置5は、保持具51を遮蔽解除位置から遮蔽位置へと移動させ、基材81の所定部位を蒸着源4から遮蔽する。
遮蔽装置5は、キャンローラ3とともにその駆動軸11回りに回転(公転)している。保持具51は、カムフォロア71が、カム72の第1領域72aから第2領域72bへと移動したとき、遮断解除位置(図10参照)から遮蔽位置(図9参照)へと移動し始める。カムフォロア71が第2領域72bに沿って第3領域72cへと移動すると、第1リンク体67が第1回転体65の回転軸まわりに回動する。これに連動して、第1回転体65が回転する。さらに第1回転体65の回転に連動して、第2回転体66が回転する。このとき、第2回転体66の動きに連動して、第2リンク体68が第2回転体66の回転軸回りに回動する。このとき、第2リンク体68の開口部73の縁部が第1支持部材69の係合軸部77に接触する。さらに、第2リンク体68は、その回動により、第1支持部材69を第2支持部材70の係合溝78に沿ってキャンローラ3に向かうように移動させる。これによって、保持具51は、遮蔽解除位置から遮蔽位置へと移動する。
カムフォロア71が第2領域72bから第3領域72cに移動し、この第3領域72cに沿って移動する間、第1リンク体67は回動せず、したがって、保持具51は、遮蔽位置に位置した状態を維持している。このとき、保持具51及び保持具51に保持されるマスク9は、図10に示すように、基材81と蒸着源4との間で、基材81に重なるように配置される。この状態において、保持具51に保持されるマスク9は、保持面58によって、円弧状に湾曲している。マスク9の曲率半径が、キャンローラ3の半径と同じに設定されていることから、マスク9は、キャンローラ3に巻き付けられて変形する基材81の湾曲形状とほぼ同じ湾曲形状になる。すなわち、マスク9と基材81とは、ほぼ平行に配置されることになる。これにより、基材81には、マスク9の開口部10を通過する気化材料が均一に蒸着されることになる。
次に、カムフォロア71が第3領域72cから第4領域72dへと移動したとき、この保持具51は、遮蔽位置から遮蔽解除位置へと退避し始める。カムフォロア71は、第4領域72dに沿って移動することで、第1リンク体67を第1回転体65の回転軸回りに回動させる。このとき、第1リンク体67は、カムフォロア71が第2領域72bを移動するときの回動の方向とは逆の方向に回動する。この第1リンク体67の回動に連動して、第1回転体65、第2回転体66が回転し、さらに、第2リンク体68が回動する。これにより、保持具51は、遮蔽位置から遮蔽解除位置へと移動する。
その後、カムフォロア71は、第4領域72dから第1領域72aへと移動する。カムフォロア71が第1領域72aに沿って移動する間、第1リンク体67は回動せず、したがって、保持具51は、遮蔽解除位置に位置した状態のままである。
図11は、製造装置によって製造される有機EL素子8の一例を示す。有機EL素子8は、基材81の一方側の面に蒸着源4からの気化材料が蒸着されて形成される下部電極層82と、下部電極層82の上から気化材料が蒸着されて形成される有機層83と、有機層83の上から気化材料が蒸着されて形成される上部電極層84とを備える。そして、有機EL素子8は、基材81の幅方向に亘って気化材料が蒸着されていない部位、即ち、各層82,83,84が設けられていない部位を備えている。
基材81は、導電性を有する導電層81aと、絶縁性を有する絶縁層81bとを備える。そして、導電層81aは、金属基板で構成されており、例えば、ステンレス、銅、ニッケル等の金属で形成されている。また、絶縁層81bは、導電層81aの一方側の面全体を覆うように配置され、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の光硬化性樹脂や、薄ガラス等で形成されている。
下部電極層82は、少なくとも一部が有機層83及び上部電極層84に覆われておらず、露出するように配置されている。そして、下部電極層82は、本実施形態において、陽極層としており、例えば、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、インジウム−錫酸化物(ITO)等の透明導電材や、金、銀、アルミニウム等の金属で形成されている。
有機層83は、下部電極層82の上に配置される正孔注入層83aと、正孔注入層83aの上に配置される有機EL層83bと、有機EL層83bの上に配置される電子注入層83cとを備える。そして、有機層83は、下部電極層82と上部電極層84とが接触するのを防止するように、下部電極層82及び上部電極層84間に配置されている。
上部電極層84は、本実施形態において、陰極層としている。そして、上部電極層84は、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム銀の合金、アルカリ金属、アルカリ土類金属を含む合金等で形成されている。
したがって、上流側の真空室1に配置される蒸着源4は、下部電極層82を形成する気化材料を吐出し、中間の真空室1に配置される蒸着源4は、上流側から、正孔注入層83aを形成する気化材料、有機EL層83bを形成する気化材料、電子注入層83cを形成する気化材料をそれぞれ吐出し、さらに、下流側の真空室1に配置される蒸着源4は、上部電極層84を形成する気化材料を吐出している。
以上説明したように、本発明に係る保持具51によれば、マスク9は、保持部53によって、キャンローラ3の周面の形状に対応して変形した状態で保持されることになる。これにより、キャンローラ3に巻き付けられた基材81に適切な蒸着を行うことができるようになる。
また、保持部53の保持面58の曲率半径を、キャンローラ3の半径とほぼ等しくすることによって、マスク9は、この保持面に沿って変形されることで、キャンローラ3に巻き付けられて変形する基材81の形状に対応した形状になる。これにより、キャンローラ3に巻き付けられた基材81に適切な蒸着を行うことができるようになる。
また、固定部材56によって、マスク9を所定位置に確実に固定することで、最適な蒸着を行うことができるようになる。
なお、本発明に係る保持具は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る保持具は、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る保持具は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1…真空室、2…走行装置、3…キャンローラ、4…蒸着源、5…遮蔽装置、8…有機EL素子、9…マスク、10…開口部、11…駆動軸、21…送り出しローラ、22…巻き取りローラ、23…支持ローラ、51…保持具、52…切替機構、53…保持部、54…開口部、55…取付部、56…固定部材、57…取付孔、58…保持面、59…取付部の孔、60…固定部材の孔、61…凹部の端部、62…固定部材の一部、63…凹部の縁部、64…本体部、65…第1回転体、66…第2回転体、67…第1リンク体、68…第2リンク体、69…第1支持部材、70…第2支持部材、71…カムフォロア、72…カム、73…開口部、74…支持部、75…連結部、76…係合部、77…係合軸部、78…係合溝、81…基材、81a…導電層、81…絶縁層、82…下部電極層、83…有機層、83a…正孔注入層、83b…有機EL層、83c…電子注入層、84…上部電極層、X…走行方向
Claims (3)
- キャンローラに巻き付けられた基材に対して蒸着を行う際に使用されるマスクを保持するマスクの保持具であって、
キャンローラの周面に対応してマスクを湾曲変形させて保持する保持部を備えることを特徴とするマスクの保持具。 - 前記保持部は、キャンローラの半径とほぼ等しい曲率半径を有して湾曲する保持面を有する請求項1に記載のマスクの保持具。
- 前記マスクを保持面に固定する固定部材を備える請求項2に記載のマスクの保持具。
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Country Status (1)
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2013
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