JP2014132851A - 水田用落水量調整装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】操作が簡易で、多量の降雨時にのみ落水量調整機能が得られる水田用落水量調整装置を提供する。
【解決手段】水田2に可動管3を昇降可能に立設し、この可動管3の上部に上部排水口部4を設け、この上部排水口部4から水田2の水が導入し可動管3に連通する水田2の水田排水部5へと排水し、上部排水口部4の高さ設定により水田2の水位を設定する水田用落水量調整装置において、可動管3内に、上部排水口部4に連通すると共に該上部排水口部4より開口面積が小さい落水量調整孔6を設け、可動管3を昇降し、水田2の設定水位に上部排水口部4の高さを合わせて使用する。そして、可動管3内の落水量調整孔6と上部排水口部4との相対的位置関係は、昇降操作によって変化しないため、農家の操作が落水量調整機能に影響を与えず、安定的な落水量調整機能が発揮される。
【選択図】図4
【解決手段】水田2に可動管3を昇降可能に立設し、この可動管3の上部に上部排水口部4を設け、この上部排水口部4から水田2の水が導入し可動管3に連通する水田2の水田排水部5へと排水し、上部排水口部4の高さ設定により水田2の水位を設定する水田用落水量調整装置において、可動管3内に、上部排水口部4に連通すると共に該上部排水口部4より開口面積が小さい落水量調整孔6を設け、可動管3を昇降し、水田2の設定水位に上部排水口部4の高さを合わせて使用する。そして、可動管3内の落水量調整孔6と上部排水口部4との相対的位置関係は、昇降操作によって変化しないため、農家の操作が落水量調整機能に影響を与えず、安定的な落水量調整機能が発揮される。
【選択図】図4
Description
本発明は、水田を利用した洪水緩和の取組「田んぼダム」において不可欠な、水田からの雨水の流出量を調整する水田用落水量調整装置に関するものである。
従来、この種のものとして、水田排水部に連結する取付管に本体筒部を連結する構成とし、本体筒部を取付管に対して昇降自在となる可動管を有する構成とし、本体筒部の上部に上部排水口部を設け、上部排水口部より下方の周面に上部排水口部より小さい周面排水口部を設け、雨水を周面排水口部より排水して水位を保持し、水田への雨水の流入量が周面排水口部からの排水量を超えると水位が上昇して、上部排水口部に達するまでの増水量が水田に貯水されるように構成した横孔式落水量調整装置(例えば特許文献1)がある。
図9に示すように、上記横孔式落水量調整装置では、可動管101の側面に周面排水口部102を設け、この周面排水口部102を田面水位に合わせて設定し、前記可動管101の上端が上部排水口部103となる。これによって、水田からの落水量を抑制すると同時に田面水位を管理することができる。
即ち、前記周面排水口部102は、落水量調整機能と田面水位管理機能の両機能を持つ。こうした仕組みを「機能一体型」と称するが、これには以下の問題がある。
農家の水田の湛水を強制的に落水するために、可動管101の上部排水口部103を田面水位に下げた場合、周面排水口部102が田面以下に埋没するため、上部排水口部103から可動管101内に水が流れ込んで落水量調整機能が失われるなど、農家が頻繁に行う田面水位管理操作によって落水量調整機能が従属的に影響を受ける。また、降雨初期には流出断面積が制限され、少量の降雨でも落水量調整機能が発揮されるため、落水速度が遅く、農家の田面水位管理目標の設定が困難になる。
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、操作が簡易で、多量の降雨時のみに落水量調整機能が得られる水田用落水量調整装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、水田に可動管を昇降可能に立設し、この可動管の上部に上部排水口部を設け、この上部排水口部から水田の水が導入し前記可動管に連通する水田排水部へと排水し、前記上部排水口部の高さ設定により水田の水位を設定する水田用落水量調整装置において、前記可動管内に、前記上部排水口部に連通すると共に該上部排水口部より開口面積が小さい落水量調整孔を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、前記可動管内に内部管を設け、この内部管の下部に前記落水量調整孔を設けたことを特徴とする。
請求項3の発明は、前記内部管が下方に向かって縮小する縮小管であることを特徴とする。
請求項4の発明は、前記内部管の上部に前記可動管の上縁に係止する係止部を設けたことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、可動管を昇降し、水田の設定水位に上部排水口部の高さを合わせて使用する。そして、可動管内の落水量調整孔と上部排水口部との相対的位置関係は、昇降操作によって変化しないため、農家の操作が落水量調整機能に影響を与えず、安定的な落水量調整機能が発揮される。また、上部排水口部への田面水の流入が、落水量調整孔からの流出量を超えない限り、落水量調整機能が働かないため、洪水を引き起こすような多量の降雨時のみに落水量調整機能が発揮される。
請求項2の発明によれば、落水量調整孔を設けた内部管を、可動管内に配置することにより、可動管内に落水量調整孔を簡便に設けることができる。
請求項3の発明によれば、少量の降雨時に上部排水口部から流入した水が、縮小管に案内されて落水量調整孔からスムーズに落下する。
請求項4の発明によれば、内部管に可動管を係止して可動管に内部管を簡便に取り付けることができる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
以下、本発明の実施例1を図1〜図5に基づいて説明する。本実施例の水田用落水量調整装置1は、水田2に可動管3を昇降可能に立設し、この可動管3の上部に上部排水口部4を設け、この上部排水口部4から水田2の水を導入し前記可動管3に連通する水田2の水田排水部5へと排水し、前記上部排水口部4の高さ設定により水田2の水位を設定し、前記可動管3内に、上部排水口部4に連通すると共に該上部排水口部4より開口面積が小さい落水量調整孔6を設けた構成を採用する。
具体的には、前記水田排水部5は、水田2と水田2の外部に設けられた側溝などの排水路11とを連通する連通孔部であり、前記水田排水部5の水田2側に取付管12を埋設状態に連結し、この取付管12の位置より排水路11側に排水パイプ13を埋設状態に設け、前記取付管12の縦管部14に可動管3を昇降自在に連結する。尚、この例では、可動管3の下部を縦管部14内に昇降可能に挿入して、縦管部14に可動管3を連結している。また、排水パイプ13は円筒状のものを図示したが、蛇腹状のパイプでもよい。
水田2の畔15寄りにコ字状に形成された保護枠16を設け、この保護枠16に下方に排水パイプ13を連設した取付管12を、水田2の田面より3〜5cm低くなるよう埋設し、この取付管12の縦管部14に前記可動管3が昇降自在に立設するよう設けられている(図4参照)。また、前記保護枠16は取付管12の縦管部14と可動管3とを囲むように配置されている。
また、前記排水パイプ13は、河川に排水される排水路11に連通するよう設けられている。
前記可動管3は合成樹脂製の断面円形のパイプなどからなり、その上部開口に前記上部排水口部4が設けられ、下端部20が斜めに形成され、使用状態において前記上部排水口部4は水平となる。
前記可動管3内には下方に向かって縮小する内部管たる縮小管21が設けられている。この縮小管21は、下方に向かって縮小する縮小管部22と、この縮小管部22の下部を閉塞する底板部23と、前記可動管3の上縁に係止する係止部たる係止縁部24とを一体に備え、この係止縁部24は、縮小管21の上縁に周設した横縁部24Yと、この横縁部24Yの外周から下方に垂設した垂設部24Sとを備え、前記横縁部24Yの下面に前記可動管3の上縁が当接する。そして、前記可動管3の上部開口に前記縮小管21の係止縁部24が係止することにより、前記縮小管21の内周上端が前記上部排水口部4となる。尚、縮小管21は、例えば、市販の合成樹脂製のバケツの底板部に落水量調整孔6を穿設して構成することもできる。
前記底板部23の中央に前記落水量調整孔6が穿設されている。この落水量調整孔6の開口面積は前記上部排水口部4の開口面積より小さく、1/2未満である。一例として、落水量調整孔6の直径は60mm程度、上部排水口部4の直径は140mmである。
前記落水量調整孔6の大きさは、降水量が少なく排水パイプ13から排水して河川へと流れ込む水田排水量が許容される量となる大きさであって、降水量が多くなって前記許容される水田排水量を超えた時、水田2が増水して貯水される大きさに設定する。
また、前記可動管3の上部には取っ手25が回動自在に設けられ、図2に示すように、前記取っ手25の端部26を、可動管3の上縁と縮小管21の係止縁部24に挿通係止しており、その取っ手25は起立位置と水平位置との間で回動可能である。また、可動管3の上縁と縮小管21の係止縁部24に、前記端部26を挿通係止することにより、可動管3に縮小管21を組み込むことができる。
次に、前記水田用落水量調整装置の使用方法について説明する。使用者は水田2の設定水位Sに可動管3の上端の上部排水口部4を合わせるように可動管3を昇降する。この場合、取っ手25を持って可動管3を持ち上げたり、可動管3を押下げたりして高さを調整する。
そして、雨や給水により、水田2の水が上部排水口部4を上回ると、水田2の水が上部排水口部4から可動管3内へ導入されて、落水量調整孔6を通り取付管12へ排出され、取付管12から排水された水は取付管12に連通させた排水パイプ13を通り、排水路11を通り、河川へと排水される。
一方、水田2のダム化の必要が生じるような大雨の時、即ち、河川の決壊の危険が生じるような大雨の時には、即ち、降雨量が落水量調整孔6から排水可能な量を超えるとダム化機能が働き始め、排水量を超えた降雨量が水田2に貯水され水位Sが上昇する。
従って、小雨時にはダム化機能が働かずに十分な排水能力を確保し、大雨になった時に水田2に雨水を貯水できる。
次に、小雨時における効果を実験により説明する。ここで図9の従来技術で示した装置を「従来品」として、可動管101の直径を140mm、周面排水口部102を60mmとし、これと同条件で、本実施例を「本実施例」として、可動管3の直径を140mm、落水量調整孔6の直径を60mmとした。また、「本実施例」において、縮小管21のないものを「落水量調整孔なし」とした。
上記の3つを用い、「従来品」は管理水位Kに周面排水口部102の下縁を合わせ、他の2つは管理水位Kに上部排水口部4を合わせて実験を行った。図5は横軸に時間、縦軸に管理水位Kを基準とした水深(m)を採ったグラフであり、一日の降水量が図5(A)は10mm、図6(B)は30mm、図6(C)は50mmの場合の結果を示す。
図5(A)(B)では「本実施例」と「落水量調整孔なし」は同じであり、これに対して、「従来品」が管理水位Kに達するまでに時間が掛かることが分かる。また、図5(C)では「本実施例」と「落水量調整孔なし」はほぼ同じであり、これに対して、「従来品」が管理水位Kに達するまでに時間が掛かることが分かる。このように少量の降雨時に「本実施例」は従来と変わらずに水位を調整できる。
以上のように、本発明は、水田2を利用した洪水緩和の取組である「田んぼダム」に不可欠な水田2からの落水量を調整する装置として利用される。従来の装置は農家の営農に影響を与えるため、普及性に問題があったことに加え、農家の田面水位管理によって設計上の落水量調整機能が発揮されない場合が散見された。本発明は田面水位管理機能と落水量調整機能を分離することによって、営農への影響と農家の操作による機能不全の両問題点の排除が実現できる。
このように本実施例では、請求項1に対応して、水田2に可動管3を昇降可能に立設し、この可動管3の上部に上部排水口部4を設け、この上部排水口部4から水田2の水が導入し可動管3に連通する水田2の水田排水部5へと排水し、上部排水口部4の高さ設定により水田2の水位を設定する水田用落水量調整装置において、可動管3内に、上部排水口部4に連通すると共に該上部排水口部4より開口面積が小さい落水量調整孔6を設け、可動管3を昇降し、水田2の設定水位Sに上部排水口部4の高さを合わせて使用する。そして、可動管3内の落水量調整孔6と上部排水口部4との相対的位置関係は、昇降操作によって変化しないため、農家の操作が落水量調整機能に影響を与えず、安定的な落水量調整機能が発揮される。また、上部排水口部4への田面水の流入が、落水量調整孔6からの流出量を超えない限り、落水量調整機能が働かないため、洪水を引き起こすような多量の降雨時のみに落水量調整機能が発揮される。
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、可動管3内に内部管たる縮小管21を設け、この縮小管21の下部に落水量調整孔6を設け、落水量調整孔6を設けた縮小管21を、可動管3内に配置することにより、可動管3内に落水量調整孔6を簡便に設けることができる。
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、内部管が下方に向かって縮小する縮小管21であるから、少量の降雨時に上部排水口部4から流入した水が、縮小管21に案内されて落水量調整孔6からスムーズに落下する。
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、内部管たる縮小管21の上部に可動管3の上縁に係止する係止部たる係止縁部24を設けたから、縮小管21に可動管3を係止して可動管3に縮小管21を簡便に取り付けることができる。
また、実施例上の効果として、上記「従来品」の場合、水田2に湛水するために可動管101を大きく引き上げる必要があり、構造的に可動管101の長さが不足するという課題があった。これは、取付管12の最上部と蛇腹部の屈曲部までの高低差が可動管101の長さを規定しているためである。農家にとっては、可動管101の長さが長いほど、昇降幅が大きくなり、田面水位設定の自由度が広がる。「本実施例」の可動管3はこれまでの可動管101の長さと変わらないが、横に孔が設けられていない分、水田2に湛水をする際により高水位に田面水位を設定することが可能となる。また、可動管3の上縁と縮小管21の係止縁部24に、取っ手25の端部26を挿通係止することにより、可動管3に縮小管21を取り付けることができる。
図6〜図7は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例の縮小管21は、上端から下端にテーパー状に縮小し、底板部を設けずに、その下端に前記落水量調整孔6が設けられている。
また、下部が開口した略コ字型の上縁部材31を備え、この上縁部材31により可動管3の上縁と縮小管21の上縁とを挟んだ状態で固定している。さらに、上縁部材31と可動管3の上縁と縮小管21の上縁に、前記取っ手25の端部26を挿通係止している。そして、前記可動管3の上部開口に前記縮小管21を上縁部材31により取り付けることにより、前記縮小管21の上部開口が前記上部排水口部4となる。尚、上縁部材31として、横縁部と、この横縁部の外周から下方に垂設した垂設部を有し、横縁部の内周から垂設した垂設部のないものを用い、その上縁部材31を可動管3の上縁と縮小管21の上縁に適宜手段により固定し、可動管3の上縁に縮小管21の上縁を固定してもよい。
このように本実施例では、内部管がコーン形をなし、上記実施例1と同様な作用・効果を奏し、また、この例では縮小管21が上部排水口部4と落水量調整孔6とをテーパー状に連結するから、水がスムーズに落下するとともに、ゴミ詰まりを回避する。
図8は、本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では前記可動管3と水田排水部5との間に、下部管32を設けている。また、可動管3の下端を水平に形成し、この水平にした下端にストッパー33を一体に設け、下部管32の上端には、断面コ字状の固定環34がビス35止めにより固定されている。そして、この例でも前記可動管3内に上記実施例1又は実施例2の前記縮小管21を設け、この縮小管21の下部に前記落水量調整孔6を設けている。
これによって、可動管3は下部管32に連接され、よって、上部管である可動管3を引き上げた際に前記ストッパー33が固定環34に当接し、可動管3は下部管32に対し昇降操作しても抜け出ることが防止されることとなる。
また、前記下部管32の下部を前記取付管12の縦管部14内に挿入して連結すると共に、縦管部14に対して下部管32を昇降可能とする。
そして、可動管3を下部管32に対して昇降したり、可動管3と下部管32とを一体にして縦管部14に対して昇降したり、可動管3を下部管32に対して昇降且つ下部管32を縦管部14に対して昇降したりすることにより、可動管3を昇降し、上部排水口部4の高さを調整することができる。
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏し、また、この例では下部管32を設けることにより、昇降寸法を大きく取ることができる。
尚、本発明は以上の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、円形の可動管を示したが、角型などでもよい。
1 水田用落水量調整装置
2 水田
3 可動管
4 上部排水口部
6 落水量調整孔
21 縮小管(内部管)
24 係止縁部(係止部)
2 水田
3 可動管
4 上部排水口部
6 落水量調整孔
21 縮小管(内部管)
24 係止縁部(係止部)
Claims (4)
- 水田に可動管を昇降可能に立設し、この可動管の上部に上部排水口部を設け、この上部排水口部から水田の水が導入し前記可動管に連通する水田の水田排水部へと排水し、前記上部排水口部の高さ設定により水田の水位を設定する水田用落水量調整装置において、前記可動管内に、前記上部排水口部に連通すると共に該上部排水口部より開口面積が小さい落水量調整孔を設けたことを特徴とする水田用落水量調整装置。
- 前記可動管内に内部管を設け、この内部管の下部に前記落水量調整孔を設けたことを特徴とする請求項1記載の水田用落水量調整装置。
- 前記内部管が下方に向かって縮小する縮小管であることを特徴とする請求項2記載の水田用落水量調整装置。
- 前記内部管の上部に前記可動管の上縁に係止する係止部を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の水田用落水量調整装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013002163A JP2014132851A (ja) | 2013-01-09 | 2013-01-09 | 水田用落水量調整装置 |
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-
2013
- 2013-01-09 JP JP2013002163A patent/JP2014132851A/ja active Pending
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