JP2014132249A - セシウム抽出法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属のアルカリ塩混合物を除染対象土壌と混和する工程と、前記ハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属の混合物の溶融塩形成範囲の温度に、前記除染対象土壌と前記ハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属の混合物との混和物を加熱することにより、セシウムを前記除染対象土壌から溶融塩に抽出して分離する工程と、前記分離された土壌と抽出したセシウムを含む溶融塩を冷却する工程と、この冷却された溶融塩を水で溶解して、セシウムを水溶液として回収する工程とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
しかし、汚染された土壌等は大量であるため、体積、重量を減らすことが重要である。そこで、汚染された土壌に含まれる放射性セシウムを分離し回収する必要がある。しかし、セシウムは土壌と強く結合することが知られており、これを安価な費用で効果的に分離することは現状では困難である。
他方、放射能汚染された土壌の改善も、特許文献2、3で提案されている。しかし、特許文献2、3の処理対象とする放射性物質はプルトニウムやウランのような重金属を対象としており、セシウムのようなアルカリ金属を対象とするものではない。
(a)水に溶けたセシウムは,土壌中で1価の陽イオンとして振る舞い,負に帯電している土壌粒子表面の粘土層である薄い層状構造の間に取り込まれて,きわめて強く「固定」され,他の陽イオンによって簡単に置き換えることができない。
(b)セシウムを吸着した土壌をセシウムの沸点である685℃や、セシウムの化合物の融点や沸点を考慮した1300℃程度に加熱しても,セシウムの顕著な揮発挙動は見られない。
他方、非特許文献2では、除染対象物が土壌、手法が熱処理で、高性能反応促進剤を特徴とする除染実証技術が開示されている。福島原子力発電所付近の除染対象地域での実証試験の結果によると、当該除染実証技術の除染率は99.9%と湿式分級と比較して格段に高いが、処理費用も20万円/トンと10倍以上の費用がかかる問題点がある。
アルカリ土類金属はカルシウムCa・ストロンチウムSr・バリウムBa・ラジウムRaをいい、ベリリウムBeとマグネシウムMgは第2族元素であるものの、共有結合性を強く反映するためアルカリ土類金属に含めない。
本発明のセシウム抽出法において、好ましくは、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、又はハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属のアルカリ塩混合物の何れか1種類と前記除染対象土壌との混和比は、除染対象土壌に対して重量比で0.025倍以上であるとよい。重量比で0.025倍であれば、一回の処理での除染対象土壌からのセシウム除染率が33%となり、数回の処理を繰り返すことで所望の除染率が得られる。また、塩の重量比は高いほど効果が良いが、3倍程度でも土壌から95%のセシウムを水溶液中に抽出することができる。
本発明のセシウム抽出法において、好ましくは、セシウム揮発促進剤は、塩化ナトリウムであることを特徴とする。セシウム揮発促進剤を添加することで、セシウムを揮発させて除染対象物の除染が行えると共に、揮発性セシウムは別途気相状態で分離固定することで、周囲環境へのセシウム飛散が防止される。
本発明のセシウム抽出法において、好ましくは、塩化ナトリウムは、除染対象物に対する重量比で0.06から0.3の範囲であるとよい。この重量比の範囲では、セシウム揮発率として最大値領域となるため、溶融塩中へのセシウム抽出が効率的に行える。
図1は本発明の一実施例を示す除染対象土壌からのセシウム抽出方法(S10)を説明する流れ図である。
図において、まず除染対象土壌を篩分けして(S100)、除染対象土壌中に含まれる岩石等の粗大物を取り除く。除染対象土壌は、セシウム137を含有する除染対象の土壌で、ここでは0.5−1gの場合を示していると共に、放射能の量は、後述する表1の『当初の土壌』に示すような値となっている。ここで、1ベクレル(1Bq)は1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量を示している。
アルカリ塩混合物を除染対象土壌と混和する際には、溶媒としての水を用いると均質な混和が行われてよい。水の量は、上記の除染対象土壌が0.5−1gで、アルカリ塩混合物が0.03−3gの場合に、5−20gに定める。そして、アルカリ塩混合物を水に溶かして、次に除染対象土壌と混和する。
次に、分離された土壌と抽出したセシウムを含む溶融塩を冷却する(S108)。冷却過程としては10℃/分で冷却して室温に戻す。坩堝の中には、乾燥した溶融塩処理後の土壌とアルカリ塩混合物の混和物が残る。この溶融塩処理後の土壌とアルカリ塩混合物の混和物について、放射能の量は表1の『処理後の土壌』に示すような値となっている。
続いて、この冷却された溶融塩を水で溶解して(S110)、セシウムを水溶液として回収する(S112)。例えば、上記混和物をフラスコと濾紙のような固液分離装置で液体と残さ物とに分離する。液体としてフラスコの内部に塩溶解水が蓄えられ、残さ土壌が濾紙に残る。この塩溶解水と残さ土壌の放射能の量は表1の『抽出水』と『濾紙残留土壌』に示すような値となっている。
[除染率]=1−[残存率] (1)
また、放射性セシウムを含む土壌は、福島県にて平成24年5月に採取したものである。
比較例1での放射能は、当初は除染対象土壌に4150Bq、処理は2900Bq、水は160Bq、濾紙に2750Bqである。セシウムの揮発率は約30%、土中残存率は66%、水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は5.5%である。
なお、比較例1では、塩化ナトリウム単体がセシウム揮発促進剤として有用であることを示している。比較例1の処理条件で、除染対象土壌のセシウムは30%揮発していることが確認された。
比較例2での放射能は、当初は除染対象土壌に6900Bq、処理は7600Bq、水は98Bq、濾紙に6080Bqである。セシウムの揮発率は0%、土中残存率は88%、水中溶解分が12%である。水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は1.6%である。
実験1での放射能は、当初は除染対象土壌に7500Bq、処理は3400Bq、水は850Bq、濾紙に3440Bqである。セシウムの揮発率は54%、土中残存率は約46%である。水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は19.9%である。
実験2での放射能は、当初は除染対象土壌に12300Bq、処理は5400Bq、水は3980Bq、濾紙に1120Bqである。セシウムの揮発率は56%、土中残存率は9%で、残りは大部分が水中に溶解し、または塩類に吸収されている。水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は約78%である。
実験3での放射能は、当初は除染対象土壌に12600Bq、処理は7600Bq、水は5700Bq、濾紙に980Bqである。セシウムの揮発率は39%、土中残存率は7.8%、水中溶解分は約53%である。水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は約85%である。
実験4での放射能は、当初は除染対象土壌に8500Bq、処理は7160Bq、水は3680Bq、濾紙に319Bqである。セシウムの揮発率は16%、土中残存率は3.8%、水中溶解分は約80%である。水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は約92%である。
実験5での放射能は、当初は除染対象土壌に7950Bq、処理は7500Bq、水は5570Bq、濾紙に309Bqである。セシウムの揮発率は5.8%、土中残存率は3.9%、水中溶解分は約90%である。水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は約95%である。
除染対象土壌へのセシウム残存率は、除染対象土壌:塩化ナトリウム:塩化カルシウム=1:0.1:0.2(実験2参照)で10%を切っており、従って除染率は90%超となる。他方、水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は78%であるから、土壌と溶融塩の混和物洗浄水に大部分のセシウムが抽出される。
y=0.9xe−12.02x (2)
ここで、yは一回の処理での残存率、xは塩添加量と土壌量の重量比である。2.5%の塩の添加で土壌中のセシウムの1/3が回収でき、繰返し処理を行うに足る除去率となるから、塩添加量の下限値を2.5質量%とする。
比較例3での放射能は、当初は除染対象土壌に17600Bq、処理は測定値なし、水は2200Bq、濾紙に14700Bqである。セシウムの揮発率は未測定、土中残存率は84%、水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は13%である。
比較例4での放射能は、当初は除染対象土壌に17600Bq、処理は14700Bq、水は3900Bq、濾紙に12900Bqである。セシウムの揮発率は16%、土中残存率は74%、水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は23%である。
実験7は、処理温度が800℃、処理時間が3時間である。実験7での放射能は、当初は除染対象土壌に12600Bq、処理は10300Bq、水は8700Bq、濾紙に290Bqである。セシウムの揮発率は18%、土中残存率は2.3%、水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は96%である。
実験8での放射能は、当初は除染対象土壌に9450Bq、処理は未測定、水は3900Bq、濾紙に6200Bqである。セシウムの揮発率は未測定、土中残存率は65%、水と土壌の合計に対する水のセシウム配分比率は39%である。
図5はCaCl2−NaClの溶融塩形成条件を説明する状態図で、横軸にはNaCl/(CaCl2+NaCl)のモル比を示し、縦軸には温度を示している。塩化ナトリウムの融点は801℃であり、塩化カルシウムの融点は771℃である。特に塩化ナトリウムのモル比で0.479の場合に、最低の溶融塩形成温度として504℃が得られる。最低の溶融塩形成温度となる場合に、塩化ナトリウムと塩化カルシウムの重量比は、大略1:2となる。また、塩化ナトリウムのモル比で0.797の場合に、504℃にて固溶体とNaCl(固体)の境界点が現れる。
Cs+(1/2)O2=(1/2)・Cs2O(g) (3)
Cs+(1/2)Cl2=CsCl (4)
図7は酸化セシウムと塩化ナトリウムの各温度における自由エネルギー変化の説明図で、横軸には絶対温度(K)を示し、縦軸にはギプスの自由エネルギーを示している。常温から1000℃程度の温度領域において、塩化ナトリウムの存在下では、セシウムは次式の反応で塩化されて安定化する。
(1/2)Cs2O+NaCl+(1/4)O2=CsCl+(1/2)Na2O2 (5)
図8は本発明の一実施例を示す回分処理方式システムの原理説明図である。
回分処理方式では、除染対象土壌10とアルカリ塩混合物20を混和物容器12に投入する。そして、混和物容器12を用いて混和物を溶融温度加熱槽42に投入し、アルカリ塩混合物20を溶融塩状態とし、所定の処理時間の間、溶融温度(例えば600℃〜800℃)に保持する。混和物容器12は、溶融温度加熱槽42に混和物を運搬するための容器であり、高温に曝されることがないから、耐熱性材料である必要はなく、鋼製やプラスチック製で差支えない。
次に、溶融塩処理済みの混和物52を溶融温度加熱槽42から取出し、水洗装置61で水洗して、溶融塩を水に溶解する。洗浄水は濾過装置62で濾過されて、固液分離される。濾過装置62の固形分は除染土壌82とし、濾過水はセシウムを水溶液に含むため、セシウムの吸着材90でセシウムを分離回収する。濾過・吸着済みの水分は、乾燥させて、残余の固形分をアルカリ塩混合物20として混和物容器12に戻す。
ボックス方式では、除染対象土壌とアルカリ塩混合物を混和物容器に投入する。混和物容器は、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、アルミナ等の高温耐食性に優れた材料よりなるもので、閉鎖することが可能な形状をしている。混和物容器は、例えば、蓋と箱とよりなるものである。
そして、混和物容器を溶融温度加熱炉に搬入して、アルカリ塩混合物20を溶融塩状態とし、所定の処理時間の間、溶融温度(例えば600℃〜800℃)に保持する。次に、溶融塩処理済みの混和物を収容している混和物容器を溶融温度加熱炉から取出す。続いて、混和物容器の内容物を水洗装置で水洗して、溶融塩を水に溶解する。洗浄水は濾過装置62で濾過されて、固液分離される。濾過装置の固形分は除染土壌とし、濾過水はセシウムを水溶液に含むため、セシウムの吸着材等でセシウムを分離回収する。
連続溶融塩浸漬方式では、まず除染対象土壌10を篩分けして、除染対象土壌10を供給用筒体14に投入し、アルカリ塩混合物20を溶融温度加熱槽44に投入する。供給用筒体14は、溶融温度加熱槽44に除染対象土壌10を徐々に供給するための筒体である。
そして、溶融温度加熱槽44のアルカリ塩混合物20を溶融塩状態とし、供給用筒体14から除染対象土壌10を連続的に供給する。溶融温度加熱槽44の構造は、溶融塩と供給された除染対象土壌の混和物を、所定の処理時間の間、溶融温度(例えば600℃〜800℃)に保持するようなものとする。混和物容器14は、溶融温度に曝されるが1000℃以上の高温には曝されないことから、高温耐食性に優れた材料が好ましいが、耐熱性はボックス方式と比較して低くて良い。
揮発セシウム溶融塩捕獲方式では、まず除染対象土壌10を篩分けして(S200)、除染対象土壌10中に含まれる岩石等の粗大物を取り除く。次に、除染対象土壌10とアルカリ塩混合物20を焼却炉38に投入して、除染対象物にセシウム揮発促進剤を添加する(S202)。なお、除染対象土壌10にはセシウムを含有する樹木や草本を含む廃棄物を含んでも良い。アルカリ塩混合物20は、除染対象物に対するセシウム揮発促進剤として作用する。
溶融温度加熱槽46の排出口47からは、揮発性セシウムが除去された排ガスが排出される。好ましくは、焼却炉38ではダイオキシンが生成する可能性があるので、通常の燃焼炉の排ガス処理設備を付帯するとよい。
図2、図3に示すように、セシウム揮発促進剤としての塩化ナトリウムの添加割合は、土壌量との重量比で0.06から0.3の場合に、セシウム揮発率として最大値領域となる55%程度が得られている。他方で、塩化ナトリウムの添加割合が増えると低下し、土壌量との重量比で0.6の場合に、40%のセシウム揮発性となるが、土壌量との重量比で1.0の場合に30%、土壌量との重量比で1.5の場合に17%、土壌量との重量比で3.0の場合に約7%となる。そこで、セシウム揮発促進剤としての塩化ナトリウムの添加割合は、土壌量との重量比で0.06から0.3の範囲が好ましい。
12 混和物容器
14、16 供給用筒体
20 アルカリ塩混合物
42、44、46 溶融温度加熱槽
52 溶融塩処理済みの混和物
61、65 水洗装置
62、66 濾過装置
82 除染土壌
90 吸着材
Claims (7)
- ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、又はハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属のアルカリ塩混合物の何れか1種類を、除染対象土壌と混和する工程と、
前記ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、又はハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属の混合物の何れか1種類の溶融塩形成範囲の温度に、前記除染対象土壌と、前記ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、又はハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属の混合物の何れか1種類との混和物を加熱することにより、セシウムを前記除染対象土壌から溶融塩に抽出して分離する工程と、
前記分離された土壌と抽出したセシウムを含む溶融塩を冷却する工程と、
この冷却された溶融塩を水で溶解して、セシウムを水溶液として回収する工程と、
を有することを特徴とするセシウム抽出法。 - 前記除染対象土壌と、前記ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、又はハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属の混合物の何れか1種類との混和物は、前記除染対象土壌の土壌粒子表面を前記溶融塩が覆う状態で前記分離が行われることを特徴とする請求項1に記載のセシウム抽出法。
- 前記ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、又はハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属のアルカリ塩混合物の何れか1種類と前記除染対象土壌との混和比は、前記除染対象土壌に対して重量比で0.025倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセシウム抽出法。
- 前記ハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属のアルカリ塩混合物は、前記ハロゲン化アルカリ金属が塩化ナトリウムであり、前記ハロゲン化アルカリ土類金属は塩化カルシウムであって、両者の混合物全体に対する塩化ナトリウムのモル比で、0.35〜0.60であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のセシウム抽出法。
- 除染対象物にセシウム揮発促進剤を添加する工程と、
前記除染対象物と前記セシウム揮発促進剤との添加混合物を、前記セシウムの蒸気圧が所定圧力となる温度に加熱する工程と、
前記加熱工程で生成する揮発セシウムを溶融塩に触れさせて前記溶融塩中にセシウムを抽出する工程と、
冷却された前記溶融塩を水に溶解して、当該水溶液中にセシウムを抽出する工程と、
を有することを特徴とするセシウム抽出法。 - 前記セシウム揮発促進剤は、塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項5に記載のセシウム抽出法。
- 前記塩化ナトリウムは、前記除染対象物に対する重量比で、0.06から0.3の範囲であることを特徴とする請求項6に記載のセシウム抽出法。
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