JP2014131020A - CuO薄膜製造方法及びCuO薄膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】CuO薄膜の製作を容易化するとともに、製造コストを大幅に低減可能なCuO薄膜製造方法及び太陽電池材料として好適なCuO薄膜を提供する。
【解決手段】ミストCVD法を用いたCuO薄膜の製造方法であって、1価及び/又は2価の銅イオンを含む銅イオン溶液から、超音波振動子等のミスト発生手段により発生させたミストを、石英炉心管22等を備える反応部20中に配置された基板28上に導き、基板28を加熱しつつ基板28上にCuO薄膜32を形成させる。
【選択図】図1
【解決手段】ミストCVD法を用いたCuO薄膜の製造方法であって、1価及び/又は2価の銅イオンを含む銅イオン溶液から、超音波振動子等のミスト発生手段により発生させたミストを、石英炉心管22等を備える反応部20中に配置された基板28上に導き、基板28を加熱しつつ基板28上にCuO薄膜32を形成させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、CuO薄膜の製造方法に関し、銅イオンを含む原料溶液から発生させたミストを利用して基板上に成膜するCuO薄膜の製造方法及び当該製造方法により製造されるCuO薄膜に関する。
従来、太陽電池の材料として、例えばGaAs、Cu(In, Ga)Se2、アモルファスSi等が用いられて来た。
上述した材料のうちGaAsは、光の吸収係数が高く、例えば太陽光の強度が高い2eV近傍の光の吸収係数が5×104〜1×105cm―1であり、実際に25%程度の高い変換効率を示すことが知られている。
上述した材料のうちGaAsは、光の吸収係数が高く、例えば太陽光の強度が高い2eV近傍の光の吸収係数が5×104〜1×105cm―1であり、実際に25%程度の高い変換効率を示すことが知られている。
また、Cu(In, Ga)Se2は、上述した光吸収係数がGaAsよりやや高く、GaAs程度の変換効率を示すことが知られている。またアモルファスSiは、上述した光吸収係数や変換効率がGaAsやCu(In, Ga)Se2に及ばないものの、今日の太陽電池パネルの太陽電池材料として主流を占めている。
しかし、GaAsは材料が高価で製造コストも高く、また有毒なAsを含むため、例えば宇宙用等の限られた分野で用いられるものの一般民生用途としては普及していない。また、Cu(In, Ga)Se2は、Se等の有毒な物質を含むため、大量生産された場合、環境上の問題に繋がる虞があるという問題を抱えている。さらに、アモルファスSiは、真空中において高純度ガスを用いたCVDが製造方法として主流であり、製造コストが高いという問題があった。
また近年では、二酸化チタンを利用した色素増感型太陽電池も安価でクリーンな太陽電池として着目されているが、変換効率の点でGaAs或いはCu(In, Ga)Se2には及ばず、また色素の吸着量によって変換効率が変動する虞があるという問題がある。
また近年では、二酸化チタンを利用した色素増感型太陽電池も安価でクリーンな太陽電池として着目されているが、変換効率の点でGaAs或いはCu(In, Ga)Se2には及ばず、また色素の吸着量によって変換効率が変動する虞があるという問題がある。
そのため、安価で有毒な元素も含まず、しかも製造コストも安価でなおかつ高変換効率を期待できる太陽電池材料の開発が喫緊の課題となっている。そこで発明者は、地球上に多く存在する金属の酸化物を太陽電池材料として注目した。
このような金属酸化物の一つにCuOが挙げられる。このCuOに関しては、その結晶構造が単斜晶構造を有し、上述した2eV近傍の光の吸収係数が略1.5×105cm―1程度と高い値を示すという報告例がある(例えば非特許文献1参照)。また、その製造方法についての報告例もみられる(例えば非特許文献1及び特許文献1参照)。
このような金属酸化物の一つにCuOが挙げられる。このCuOに関しては、その結晶構造が単斜晶構造を有し、上述した2eV近傍の光の吸収係数が略1.5×105cm―1程度と高い値を示すという報告例がある(例えば非特許文献1参照)。また、その製造方法についての報告例もみられる(例えば非特許文献1及び特許文献1参照)。
Takayuki ItO et al., "Optical Properties of CuO Studied by Spectroscopy Ellipsometry",Journal of the Physical Society of Japan, Vol.67,No.9,September,1998,pp.3304−3309
非特許文献1によれば、多結晶CuOの製造方法や光学特性についての知見が開示されている。しかし非特許文献1によれば、多結晶CuOはフローティングゾーン法で製作されているため、CuOの粉を棒状に圧縮して900℃で3日間熱処理する等、多結晶CuOの製作に時間がかかりその製造が煩雑になる虞があるという問題があった。
また、特許文献1によれば、Cu金属塩と、アルカリ金属アルコキシドを混合して金属交換反応を生じせしめることにより得られたCuアルコキシドの溶液にキレート剤を添加してアルカリ金属塩を沈殿除去した後、この溶液を所定の基板表面に塗布し、600〜1000℃の温度で焼成することを特徴とするCuO薄膜の製法が開示されている。しかし特許文献1によれば、アルカリ金属アルコキシドとCu金属塩との金属交換反応によりCuアルコキシドを合成する工程、次に前記Cuアルコキシドを2−ブタノールを溶媒とした溶液にキレート剤を添加したCuアルコキシド溶液を作製する工程、次に前記Cuアルコキシド溶液を基体表面に塗布する工程、そしてこの基体を酸化性雰囲気で焼成する工程等を経る必要があるため、CuO薄膜の製造に多くの材料を必要として製造コストが高くなる虞や、製造が長時間化する虞があるという問題があった。
そこで、発明者は、このCuO薄膜を、容易にしかも低コストで製造する方法の研究に鋭意取り組み、大気圧中で金属酸化物を製造可能なミストCVD法に着目して本発明に至ったのである。
そこで、本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、CuO薄膜の製作を容易化するとともに、製造コストを大幅に低減可能なCuO薄膜製造方法及びCuO薄膜を提供することにある。
請求項1の発明は、ミストCVD法によるCuO薄膜の製造方法であって、1価及び/又は2価の銅イオンを含む銅イオン溶液から、ミスト発生手段により発生させたミストを、加熱された基板上にキャリアガスで導き、前記基板上にCuO薄膜を形成させる、CuO薄膜製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1記載のCuO薄膜製造方法において、前記銅イオン溶液において、溶媒は水からなることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のCuO薄膜製造方法において、前記ミスト発生手段は、超音波振動子を備えることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のCuO薄膜製造方法において、前記基板の温度は、500℃〜850℃であることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のCuO薄膜製造方法において、前記基板は、単結晶基板からなることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5記載のCuO薄膜製造方法により製造されるCuO薄膜において、前記単結晶基板上にエピタキシャル成長されるCuOの多結晶を含むことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6記載のCuO薄膜において、バンドギャップ値が、1.2eV〜1.56eVからなることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項6又は7記載のCuO薄膜において、光エネルギー略2eVにおける光吸収係数が、1×104cm―1〜2×105cm―1であることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項6〜8のいずれかに記載のCuO薄膜において、Li、Na、K、Agの群から選ばれた一つの元素及び/又は、N、P、As、Sbの群から選ばれた一つの元素からなるp型ドーパントを含むことを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項6〜9のいずれかに記載のCuO薄膜において、B、Al、Ga、Inの群から選ばれた一つの元素及び/又は、F、Cl、Br、Iの群から選ばれた一つの元素からなるn型ドーパントを含むことを特徴とする。
本発明によれば、ミストCVD法によるCuO薄膜の製造方法であって、1価及び/又は2価の銅イオンを含む銅イオン溶液から、ミスト発生手段により発生させたミストを、加熱された基板上にキャリアガスで導き、前記基板上にCuO薄膜を形成させる構成であるから、大気圧中で膜形成を行えるため、例えば真空チャンバや加圧装置等を設けることなく成膜できることから、複雑な製造装置を必要とせず、また原料溶液も銅イオン溶液だけで済むため、CuO薄膜の製作を容易化できるとともに、製造コストを大幅に低減可能なCuO薄膜製造方法を提供できる。
また、前記銅イオン溶液において、溶媒は水からなる構成であるから、原材料のコスト低減を更に図ることが可能なCuO薄膜製造方法を提供できる。
また、前記ミスト発生手段は、超音波振動子を備える構成であるから、例えば銅イオン溶液を貯留した容器に超音波振動子を設けるという簡単な構造でミストを発生できるので、CuO薄膜の製作をさらに容易化するとともに、製造コストを大幅に低減可能なCuO薄膜製造方法を提供できる。
また、前記基板の温度は、500℃〜850℃である構成であるから、例えば公知の石英炉等の加熱炉を用いて容易に基板温度を設定できることから、製造コストを大幅に低減可能なCuO薄膜製造方法を提供できる。
また、前記基板は、単結晶基板からなる構成であるから、単結晶面を有する基板上に結晶性の良好なCuO薄膜を成長させることができる。
また、上述したCuO薄膜製造方法によって製造されるCuO薄膜において、前記単結晶基板上にエピタキシャル成長されるCuOの多結晶を含む構成であるから、例えば真空チャンバ等を用いることなく成膜されるため、製作が容易で低コストで製作可能であるとともに結晶性にすぐれたCuO薄膜を提供できる。
また、前記CuO薄膜は、バンドギャップ値が、1.2eV〜1.56eVからなる、構成であるから、太陽電池材料として高変換効率が期待できるCuO薄膜を提供できる。
以下、本発明の好適な実施形態の例について、図を用いて説明する。
以下の説明において「ミスト」とは、液状かつガス状の性質をもつ液滴微粒子を意味する。
また、以下の説明において、「ミストCVD(Chemical Vapor Deposition)法」とは、大気圧中における基板上への成膜方法であり、原料溶液から発生させたミストを、キャリアガスによって基板上に運び、加熱された基板上で熱エネルギーにより反応させ、当該基板上に成膜させる方法のことを言う。
以下の説明において「ミスト」とは、液状かつガス状の性質をもつ液滴微粒子を意味する。
また、以下の説明において、「ミストCVD(Chemical Vapor Deposition)法」とは、大気圧中における基板上への成膜方法であり、原料溶液から発生させたミストを、キャリアガスによって基板上に運び、加熱された基板上で熱エネルギーにより反応させ、当該基板上に成膜させる方法のことを言う。
まず図1を用いて、本実施形態に係るCuO薄膜製造方法を説明する。図1は、ミストCVD法を具体化した成膜装置10である。
本実施形態の成膜装置10は、図1に示すように、ミスト発生部12と、反応部20と、ミスト供給管40とを備える。
ミスト発生部12は、図1に示すように、容器14と、ミスト発生手段16と、キャリアガス導入管18とを備える。
容器14は、例えば円筒状の槽からなり、図1に示すように、1価及び/又は2価の銅イオンを含む銅イオン溶液を原料溶液Mとして貯留する。
本実施形態の成膜装置10は、図1に示すように、ミスト発生部12と、反応部20と、ミスト供給管40とを備える。
ミスト発生部12は、図1に示すように、容器14と、ミスト発生手段16と、キャリアガス導入管18とを備える。
容器14は、例えば円筒状の槽からなり、図1に示すように、1価及び/又は2価の銅イオンを含む銅イオン溶液を原料溶液Mとして貯留する。
本実施形態の銅イオン溶液は、例えば水を溶媒とし、塩化銅(2価)を溶質とした溶液を用いてもよい。なお、銅イオン溶液における塩化銅(2価)のモル濃度は、0.03〜0.2mol/Lが好ましい。塩化銅(2価)のモル濃度が0・03より小さい場合、基板上に運ばれる原材料の供給量が少ないためCuO膜の厚さが薄くなり、逆に塩化銅(2価)のモル濃度が0.2molより大きい場合、銅イオン溶液の粘度が増加しミストが発生しづらくなるからである。
また、銅イオン溶液は、上述した塩化銅(2価)を溶質とする溶液に限るものではなく、例えば硝酸銅(2価)、硫酸銅(2価)或いは酢酸銅(2価)、を溶質としてもよいし、金属銅を硝酸あるいは硫酸に溶かした塩、酸化銅を硝酸、塩酸、硫酸、酢酸に溶解した塩の水溶液でもよい。また、二価イオンに限る物でなく、一価イオン塩の塩化銅(1価)、ヨウ化銅(1価)、シアン化銅(1価)、酢酸銅(1価)、シュウ酸銅(1価)でも良いが、溶解度に乏しいため二価イオンの銅塩が適している。
また、銅イオン溶液の溶媒は、水が好ましいが、例えばアルコール等の有機溶媒を含んでもよい。
また、銅イオン溶液の溶媒は、水が好ましいが、例えばアルコール等の有機溶媒を含んでもよい。
次に、本実施形態のミスト発生手段16は、例えば公知の圧電素子を有する超音波振動子を備える。より詳しくは、圧電素子を介して液体に超音波の振動エネルギーを与え、液面や液内部に周波数固有の毛細表面波やキャビテーションを発生させることにより、液体の表面張力を減少させてミストを発生させる。この超音波振動子は、一般工業的に用いられており、溶液中に浸漬させて3MHz程度の周波数で発信させると略3μm径のミストを発生できることが知られている。そして、超音波振動子は、図1に示すように、容器14の例えば底部に設けられる。
なお、ミスト発生手段は、本実施形態の超音波振動子を備えるものに限らず、例えばベンチュリー管を利用して流速を増加させたガスを原料溶液Mと衝突させることにより、ミストを飛散させるものであってもよい。また、例えば、高速回転しているディスク上に原料溶液Mを滴下し、遠心力を利用してディスクの端で原料溶液Mをミスト化するものであってもよい。また、オリフィスの振動を利用したものでもよい。発生したミストの流路に対して垂直な板を複数設置することで、粒径が過大なミストの除去、ミスト濃度の調整も可能である。
次に、キャリアガス導入管18は、容器14内にキャリアガスとしてのN2を導入するための管であり、図1に示すように、一端側が容器14に連結され、他端側はキャリアガスを充填させたボンベ(図示せず)等のキャリアガス供給源に連結される。また、キャリアガス導入管18は、図示しない流量計やキャリアガス導入管18を開閉する開閉弁等を備える。
次に、ミスト供給管40は、ミスト発生部12で発生したミストを後述する反応部20に運ぶための管であり、図1に示すように、一端がミスト発生部12の天井部に連結され他端が反応部20に連結される。そして、図1に示すように、この中をミストがキャリアガスによって運ばれて反応部20に導かれる。
次に、反応部20は、図1に示すように、石英ガラス製の石英炉心管22と、加熱手段24とを備える。
石英炉心管22は、図1に示すように、両端が開放した流路23を有し、流路23が略水平となる様に配置される。そして、図1に示すように、この流路23の基端25にミスト供給管40が連結され、他端26は大気開放される。この流路23中をミストがキャリアガスによって運ばれて基板28上に導かれる。
本実施形態の石英炉心管22は、流路23の中途に基板28を略水平状態で嵌合させる嵌合部30を穿設し、嵌合部30に基板28を保持する。
石英炉心管22は、図1に示すように、両端が開放した流路23を有し、流路23が略水平となる様に配置される。そして、図1に示すように、この流路23の基端25にミスト供給管40が連結され、他端26は大気開放される。この流路23中をミストがキャリアガスによって運ばれて基板28上に導かれる。
本実施形態の石英炉心管22は、流路23の中途に基板28を略水平状態で嵌合させる嵌合部30を穿設し、嵌合部30に基板28を保持する。
なお、本実施形態において基板28は、サファイア単結晶基板を用いた。より詳しくは、基板28は、図2に示すように、オリエンテーションフラット(以下「OF」という。)を有する円板状のサファイア単結晶を、OFに直交する方向で半割りにした半割り状の基板を用いた。
なお、基板はサファイア単結晶基板に限るものではなく、例えば合成石英ガラス基板や板ガラスなどのアモルファス基板、シリコン単結晶基板、多結晶シリコン基板、或いは銅基板等の金属基板であってもよい。また、単結晶基板としては、サファイア基板の他に、シリコン基板、フッ化カルシウム基板、酸化マグネシウム基板、チタン酸ストロンチウム基板、二酸化チタン基板、酸化亜鉛基板、窒化ガリウム基板、シリコンカーバイト基板を用いてもよい。そして、これらの基板表面にはバッファー層を設けても良い。また、アモルファス基板やプラスティック基板上に、結晶性のナノシートを配置し、その上にCuO薄膜を成長させても良い。
なお、基板はサファイア単結晶基板に限るものではなく、例えば合成石英ガラス基板や板ガラスなどのアモルファス基板、シリコン単結晶基板、多結晶シリコン基板、或いは銅基板等の金属基板であってもよい。また、単結晶基板としては、サファイア基板の他に、シリコン基板、フッ化カルシウム基板、酸化マグネシウム基板、チタン酸ストロンチウム基板、二酸化チタン基板、酸化亜鉛基板、窒化ガリウム基板、シリコンカーバイト基板を用いてもよい。そして、これらの基板表面にはバッファー層を設けても良い。また、アモルファス基板やプラスティック基板上に、結晶性のナノシートを配置し、その上にCuO薄膜を成長させても良い。
また、本実施形態の流路23は、図1に示すように、基板28が配置される箇所の流路23の幅よりやや拡幅された幅を有する滞留部29を、基端近傍に備える。この滞留部29は、キャリアガス中に浮遊しているミストが充分に拡散するための空間である。
次に、加熱手段24は、公知のヒータやヒータの温度を制御する温度コントローラ等を備え、基板28の温度を制御する。
なお、本実施形態の成膜装置10は、一つのミスト発生部12を備える構成であるが、成膜装置はミスト発生部12を一つ備えるものに限らず、複数のミスト発生部12を備えてもよい。そして、それぞれのミスト発生部12から発生させたミストを混合して反応部20に導く構成であってもよいし、切替えつつ反応部20に導く構成であってもよい。
なお、本実施形態の成膜装置10は、一つのミスト発生部12を備える構成であるが、成膜装置はミスト発生部12を一つ備えるものに限らず、複数のミスト発生部12を備えてもよい。そして、それぞれのミスト発生部12から発生させたミストを混合して反応部20に導く構成であってもよいし、切替えつつ反応部20に導く構成であってもよい。
さらにCuO薄膜をp型半導体化するため、本実施形態に係るCuO薄膜製造方法において、1族の元素であるLi、Na、K、Agの群から選ばれた一つの元素及び/又は、5族の元素であるN、P、As、Sbの群から選ばれた一つの元素をp型ドーパントとし、ドープ量を調整して用いてもよい。例えば、Liの場合、CuOのCu(銅)の位置に置換させてホールを生成させることができる。また例えば、Nの場合、CuOのO(酸素)の位置に置換させてホールを生成できる。なお、Li、Na、Kの実施例について、後ほど、詳述する。
また、CuO薄膜をn型半導体化するため、本実施形態に係るCuO薄膜製造方法において、3族の元素であるB、Al、Ga、Inの群から選ばれた一つの元素及び/又は、7族の元素であるF、Cl、Br、Iの群から選ばれた一つの元素をn型ドーパントとし、ドープ量を調整して用いてもよい。例えば、B又はAlの場合、CuOのCu(銅)の位置に置換させて電子を生成させることができる。また例えば、Fの場合、CuOのO(酸素)の位置に置換させて電子を生成できる。
また、CuO薄膜をn型半導体化するため、本実施形態に係るCuO薄膜製造方法において、3族の元素であるB、Al、Ga、Inの群から選ばれた一つの元素及び/又は、7族の元素であるF、Cl、Br、Iの群から選ばれた一つの元素をn型ドーパントとし、ドープ量を調整して用いてもよい。例えば、B又はAlの場合、CuOのCu(銅)の位置に置換させて電子を生成させることができる。また例えば、Fの場合、CuOのO(酸素)の位置に置換させて電子を生成できる。
次に、本実施形態のCuO薄膜製造方法の実施例について図を用いて説明する。
なお、以下の実施例において基板はサファイア単結晶基板を用い、そのa面上にCuO薄膜を成膜した。但し、CuO薄膜を成膜する基板面はサファイア単結晶基板のa面に限るものではなく、r面、c面或いはm面であってもよい。
[実施例1]
まず、無添加、すなわちノンドープのCuO薄膜の実施例について説明する。
原料溶液Mは、上述した塩化銅(2価)水溶液を用い、塩化銅(2価)のモル濃度を0.1mol/Lとした塩化銅(2価)水溶液50mLを容器14内に貯留させた。
次に、超音波振動子の発信周波数を3MHzでミストを発生させた。そして、キャリアガスとしてのN2ガスを2L/分の流量で流し、図1に示す様に、ミストを基板28上に導き、CuO薄膜32を基板28上に成膜させた。
具体的には、基板温度をパラメータとし、基板温度500℃のサンプルA、基板温度600℃のサンプルB及び基板温度700℃のサンプルCを製作した。
なお、以下の実施例において基板はサファイア単結晶基板を用い、そのa面上にCuO薄膜を成膜した。但し、CuO薄膜を成膜する基板面はサファイア単結晶基板のa面に限るものではなく、r面、c面或いはm面であってもよい。
[実施例1]
まず、無添加、すなわちノンドープのCuO薄膜の実施例について説明する。
原料溶液Mは、上述した塩化銅(2価)水溶液を用い、塩化銅(2価)のモル濃度を0.1mol/Lとした塩化銅(2価)水溶液50mLを容器14内に貯留させた。
次に、超音波振動子の発信周波数を3MHzでミストを発生させた。そして、キャリアガスとしてのN2ガスを2L/分の流量で流し、図1に示す様に、ミストを基板28上に導き、CuO薄膜32を基板28上に成膜させた。
具体的には、基板温度をパラメータとし、基板温度500℃のサンプルA、基板温度600℃のサンプルB及び基板温度700℃のサンプルCを製作した。
実施例1におけるCuO薄膜の評価結果について説明する。
以下の説明における基板28上の測定位置は、図2に示す様に、基板28の上端から略5mm内側で、基板28の左端、すなわちOFからミストの流れ方向Fに向かって6mm程度内側を測定位置1とし、測定位置1を起点として、方向Fに沿って略8mmの間隔を順次設けた位置を測定位置2、3、4及び5とした。
[膜厚測定]
段差計を用いてCuO薄膜の膜厚を測定したところ、サンプルA(基板温度500℃)では略0.5μmの膜厚、サンプルB(基板温度600℃)では略1.7μmの膜厚、サンプルC(基板温度700℃)では、略2.0μmの膜厚がそれぞれ得られた。
以下の説明における基板28上の測定位置は、図2に示す様に、基板28の上端から略5mm内側で、基板28の左端、すなわちOFからミストの流れ方向Fに向かって6mm程度内側を測定位置1とし、測定位置1を起点として、方向Fに沿って略8mmの間隔を順次設けた位置を測定位置2、3、4及び5とした。
[膜厚測定]
段差計を用いてCuO薄膜の膜厚を測定したところ、サンプルA(基板温度500℃)では略0.5μmの膜厚、サンプルB(基板温度600℃)では略1.7μmの膜厚、サンプルC(基板温度700℃)では、略2.0μmの膜厚がそれぞれ得られた。
[結晶性評価]
次に、2θ―θ法によるXRDの結果を図3及び図4に示す。図3(a)はサンプルAのXRDデータ、図3(b)はサンプルBのXRDデータ、図3(c)はサンプルCのXRDデータをそれぞれ示す。また、図4は、サンプルAの測定位置3のXRDグラフの35.2〜35.8degの範囲を拡大したグラフである。
図3及び図4に示すように、回折角35.4〜35.5deg付近に単一ピークが検出される。これは、CuO結晶構造(単斜晶)に対応する回折ピークであり、良好な結晶が形成されたことを示している。なお、図3において、38deg付近に観察されるピークはサファイア単結晶基板のピークを示す。
次に、2θ―θ法によるXRDの結果を図3及び図4に示す。図3(a)はサンプルAのXRDデータ、図3(b)はサンプルBのXRDデータ、図3(c)はサンプルCのXRDデータをそれぞれ示す。また、図4は、サンプルAの測定位置3のXRDグラフの35.2〜35.8degの範囲を拡大したグラフである。
図3及び図4に示すように、回折角35.4〜35.5deg付近に単一ピークが検出される。これは、CuO結晶構造(単斜晶)に対応する回折ピークであり、良好な結晶が形成されたことを示している。なお、図3において、38deg付近に観察されるピークはサファイア単結晶基板のピークを示す。
次に、サンプルAの測定位置3に対して行ったΦスキャン法によるXRDの結果を図5に示す。図5に示すように、0〜360degまでスキャンしたとき、180deg間隔のピークが2組観測された。具体的には、40deg付近と220deg付近に観察される第1組のピークPa1,Pa2と、110deg付近と290deg付近に観察される第2組のピークPb1,Pb2である。図5で観察されるサファイアa面のピークPs1を基準にして、Pa2は、53.4degずれており、Pb1はPa2と逆方向に54.1degずれていることがわかる。
図5のデータによれば、本実施例のCuO薄膜は、図6に示すように、a面上で時計方向に54.1deg回転した結晶と、a面上で反時計方向に53.4deg回転した結晶とを含む。すなわち、a面上で2方向へ配向しているといえる。この理由として、例えばサファイア中のO2−イオンとCuO中のCu2+イオンが、クーロン力により面内で接近するモデルが考えられる。
このように、本実施例のCuO薄膜は、サファイア単結晶基板の基板面に応じて配向したCuOの多結晶を含んでおり、結晶性に優れたCuO薄膜を形成できた。
このように、本実施例のCuO薄膜は、サファイア単結晶基板の基板面に応じて配向したCuOの多結晶を含んでおり、結晶性に優れたCuO薄膜を形成できた。
次に、図7のSEM像で示すように、本実施例のCuO薄膜中の結晶粒径は、1〜2μm程度であり、基板温度が上昇するに従って、粒径が大きくなる傾向が見られた。このように、本実施例のCuO薄膜は、サファイア単結晶基板のa面上にエピタキシャル成長されるCuOの多結晶を含む。言い換えると、この多結晶は、サファイア単結晶基板の格子定数の整数倍(1を含む)に一致する格子定数からなるものであり、サファイア単結晶基板のa面において局所的なホモエピタキシャル又はヘテロエピタキシャルの関係を有するものである。
[光吸収係数]
サンプルの光透過率Tと、光吸収係数αと、膜厚dとの関係は、T=exp(−αd)の関係で示される。したがって、光吸収率測定器でCuO薄膜の光透過率Tを測定し、上述の様にして求めた膜厚dと光透過率Tとから前記関係に基づいて光吸収係数αを求めた。このようにして求めた光吸収係数αのデータを図8に示す。なお、図8(a)は、サンプルAの光吸収係数α、図8(b)は、サンプルBの光吸収係数α、図8(c)は、サンプルCの光吸収係数αをそれぞれ示す。
サンプルの光透過率Tと、光吸収係数αと、膜厚dとの関係は、T=exp(−αd)の関係で示される。したがって、光吸収率測定器でCuO薄膜の光透過率Tを測定し、上述の様にして求めた膜厚dと光透過率Tとから前記関係に基づいて光吸収係数αを求めた。このようにして求めた光吸収係数αのデータを図8に示す。なお、図8(a)は、サンプルAの光吸収係数α、図8(b)は、サンプルBの光吸収係数α、図8(c)は、サンプルCの光吸収係数αをそれぞれ示す。
図8に示すように、本実施例のCuO薄膜は略1×104〜2×105cm―1の光吸収係数を有している。特にサンプルBの測定位置2では、2eVのエネルギーの光に対して、6.7×104cm―1の値を示している。この値は、図9に示すように、GaAsの吸収係数と同等の値であり、GaAsと同等の膜厚で高い変換効率を期待できる。
[バンドギャップ評価]
表1にバンドギャップの評価結果を示す。表1において、左欄はサンプル及びバンドギャップ測定位置を示す。具体的には、「500℃―測定位置4」は、サンプルAの測定位置4を示し、「600℃―測定位置4」は、サンプルBの測定位置4を示し、「700℃―測定位置3」は、サンプルCの測定位置3を示す。
また、表1において、「直接遷移」は、図8の光吸収係数のデータを、直接遷移を仮定したTaucプロットに変換することで見積もったバンドギャップ値を意味し、「間接遷移」は、図8の光吸収係数のデータを、間接遷移を仮定したTaucプロットに変換することで見積もったバンドギャップ値を意味し、「直接禁制遷移」は、図8の光吸収係数のデータを、直接禁制遷移を仮定したTaucプロットに変換することで見積もったバンドギャップ値を意味する。
表1で明らかな様に、バンドギャップ値は、約1.2eV〜1.4eVの値を示した。ここで、太陽電池のエネルギー変換効率の観点からすると、単一バンドギャップからなる太陽電池においては、バンドギャップの値として1.4eV程度が最適とされる。本実施例のCuO薄膜は、ほぼ最適値を示すものであり、高変換効率を有する太陽電池材料として期待できる。
また、表1において、「直接遷移」は、図8の光吸収係数のデータを、直接遷移を仮定したTaucプロットに変換することで見積もったバンドギャップ値を意味し、「間接遷移」は、図8の光吸収係数のデータを、間接遷移を仮定したTaucプロットに変換することで見積もったバンドギャップ値を意味し、「直接禁制遷移」は、図8の光吸収係数のデータを、直接禁制遷移を仮定したTaucプロットに変換することで見積もったバンドギャップ値を意味する。
表1で明らかな様に、バンドギャップ値は、約1.2eV〜1.4eVの値を示した。ここで、太陽電池のエネルギー変換効率の観点からすると、単一バンドギャップからなる太陽電池においては、バンドギャップの値として1.4eV程度が最適とされる。本実施例のCuO薄膜は、ほぼ最適値を示すものであり、高変換効率を有する太陽電池材料として期待できる。
[実施例2]
次に、成膜装置10を用いて不純物がドープされたCuO薄膜の製作を行った。
原料溶液Mは、硝酸銅(2価)のモル濃度0.03mol/Lからなる硝酸銅水溶液をベース溶液として、ドーピング溶液を加えたものとした。このドーピング溶液として、塩化ナトリウムのモル濃度0.03mol/Lからなる塩化ナトリウム水溶液、酢酸カリウムのモル濃度0.03mol/Lからなる酢酸カリウム水溶液、塩化リチウムのモル濃度0.03mol/Lからなる酢酸リチウム水溶液をそれぞれ用いた。
成膜条件は、超音波振動子の発信周波数を3MHzとし、キャリアガスとしてのN2ガスを1.7L/分の流量で流し、基板温度を800℃とし、成膜時間を20分とした。また、比較のため、ドーピング溶液を加えない硝酸銅水溶液のみを原料溶液としたノンドープサンプルも作製した。
次に、成膜装置10を用いて不純物がドープされたCuO薄膜の製作を行った。
原料溶液Mは、硝酸銅(2価)のモル濃度0.03mol/Lからなる硝酸銅水溶液をベース溶液として、ドーピング溶液を加えたものとした。このドーピング溶液として、塩化ナトリウムのモル濃度0.03mol/Lからなる塩化ナトリウム水溶液、酢酸カリウムのモル濃度0.03mol/Lからなる酢酸カリウム水溶液、塩化リチウムのモル濃度0.03mol/Lからなる酢酸リチウム水溶液をそれぞれ用いた。
成膜条件は、超音波振動子の発信周波数を3MHzとし、キャリアガスとしてのN2ガスを1.7L/分の流量で流し、基板温度を800℃とし、成膜時間を20分とした。また、比較のため、ドーピング溶液を加えない硝酸銅水溶液のみを原料溶液としたノンドープサンプルも作製した。
実施例2におけるCuO薄膜の評価結果について説明する。
[添加物評価]
図10(a)は、上述した硝酸銅水溶液30mLに酢酸リチウム水溶液20mLを加えた原料溶液Mを用いたサンプルDのXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)のグラフである。図10(a)に示すように、56eV付近にLiのピークを検出しており、CuO薄膜中にLiがドープされたことが確認できた。また、光電子のカウント数から、当該CuO薄膜はCu:Li=98.5%:1.5%の構成比を有することが判る。
[添加物評価]
図10(a)は、上述した硝酸銅水溶液30mLに酢酸リチウム水溶液20mLを加えた原料溶液Mを用いたサンプルDのXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)のグラフである。図10(a)に示すように、56eV付近にLiのピークを検出しており、CuO薄膜中にLiがドープされたことが確認できた。また、光電子のカウント数から、当該CuO薄膜はCu:Li=98.5%:1.5%の構成比を有することが判る。
次に、図10(b)は、硝酸銅水溶液40mLに酢酸カリウム水溶液10mLを加えた原料溶液Mを用いたサンプルE、並びに硝酸銅水溶液30mLに酢酸カリウム水溶液20mLを加えた原料溶液Mを用いたサンプルQのXRF(X−ray Florescence)のグラフである。図10(b)に示すように、136.5deg付近にKのピークを検出しており、CuO薄膜中にKがドープされたことが確認できた。また、X線強度から、サンプルEの場合、Cu:K=99.84%:0.16%の構成比で、サンプルQの場合、Cu:K=99.92%:0.08%の構成比であることが判る。
次に、図10(c)は、硝酸銅水溶液40mLに塩化ナトリウム水溶液10mLを加えた原料溶液Mを用いたサンプルH、並びに硝酸銅水溶液30mLに塩化ナトリウム水溶液20mLを加えた原料溶液Mを用いたサンプルJのXRFのグラフである。
図10(c)に示すように、47.0deg付近に現われるNaのピークは顕著ではなかった。
図10(c)に示すように、47.0deg付近に現われるNaのピークは顕著ではなかった。
[エネルギーバンド及び光吸収係数評価]
図11(a)は、直接遷移型バンドギャップ値、図11(b)は、間接遷移型バンドギャップ値、図11(c)は、直接禁制遷移型バンドギャップ値を示すグラフである。ここで直接遷移型バンドギャップ値、間接遷移型バンドギャップ値及び直接禁制遷移型バンドギャップ値は、表1で説明したと同様に、光吸収係数のデータから、それぞれの遷移型を仮定したTaucプロットに変換することで見積もったバンドギャップ値を意味する。
図11において横軸は、原料溶液M中のドーピング溶液の液量比=ドーピング溶液量(mL)/{ベース溶液量(mL)+ドーピング溶液量(mL)}を示す。例えば液量比20%は、硝酸銅水溶液40mLにドーピング溶液10mLを加えた原料溶液Mを用いたCuO薄膜であることを示す。このように、本実施形態において、液量比は、原料溶液M中の不純物濃度に相当する。
また、図11において、○印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸カリウム水溶液を用いた場合のバンドギャップ、△印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸リチウム水溶液を用いた場合のバンドギャップ、□印を含む線は、ドーピング溶液として塩化ナトリウム水溶液を用いた場合のバンドギャップをそれぞれ示す。
図11に示すように、それぞれのバンドギャップ値は、ドーピング溶液の種類によっては殆ど変化しないことが判った。ノンドープのバンドギャップ値、すなわち図11の横軸0%に対応するバンドギャップ値は、1.3eV〜1.56eVであり、変換効率から最適とされる1.4eV〜1.5eVと略同じ値を示した。
図11(a)は、直接遷移型バンドギャップ値、図11(b)は、間接遷移型バンドギャップ値、図11(c)は、直接禁制遷移型バンドギャップ値を示すグラフである。ここで直接遷移型バンドギャップ値、間接遷移型バンドギャップ値及び直接禁制遷移型バンドギャップ値は、表1で説明したと同様に、光吸収係数のデータから、それぞれの遷移型を仮定したTaucプロットに変換することで見積もったバンドギャップ値を意味する。
図11において横軸は、原料溶液M中のドーピング溶液の液量比=ドーピング溶液量(mL)/{ベース溶液量(mL)+ドーピング溶液量(mL)}を示す。例えば液量比20%は、硝酸銅水溶液40mLにドーピング溶液10mLを加えた原料溶液Mを用いたCuO薄膜であることを示す。このように、本実施形態において、液量比は、原料溶液M中の不純物濃度に相当する。
また、図11において、○印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸カリウム水溶液を用いた場合のバンドギャップ、△印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸リチウム水溶液を用いた場合のバンドギャップ、□印を含む線は、ドーピング溶液として塩化ナトリウム水溶液を用いた場合のバンドギャップをそれぞれ示す。
図11に示すように、それぞれのバンドギャップ値は、ドーピング溶液の種類によっては殆ど変化しないことが判った。ノンドープのバンドギャップ値、すなわち図11の横軸0%に対応するバンドギャップ値は、1.3eV〜1.56eVであり、変換効率から最適とされる1.4eV〜1.5eVと略同じ値を示した。
また、光吸収係数は、ドーピング溶液の種類や液量比による傾向は見られないものの、いずれのサンプルにおいても3〜8×104cm―1を示した。
[電気特性]
ゼーベック特性を測定した結果、ノンドープのCuO薄膜を含めたすべてのサンプルでp型半導体の特性を示した。
また、図12は、原料溶液におけるドーピング溶液の液量比に対する抵抗率を示すグラフである。図12に示す様に、液量比が増加するに伴って、すなわち不純物濃度が上昇するに伴って抵抗率が低下する傾向がみられることから、CuO薄膜のp型化が促進されていると考えられる。
ゼーベック特性を測定した結果、ノンドープのCuO薄膜を含めたすべてのサンプルでp型半導体の特性を示した。
また、図12は、原料溶液におけるドーピング溶液の液量比に対する抵抗率を示すグラフである。図12に示す様に、液量比が増加するに伴って、すなわち不純物濃度が上昇するに伴って抵抗率が低下する傾向がみられることから、CuO薄膜のp型化が促進されていると考えられる。
[結晶性評価]
図13(a)は、本実施例に係るCuO薄膜のサンプルのうちドーピング溶液を加えていないノンドープサンプルのXPS結果を示すグラフであり、図13(b)は、図13(a)における一部を拡大したグラフである。図13によれば、934.5eV付近にピークを有することから、本サンプルを構成する支配的なイオンはCu2+であり、Cu1+は関与していないことが確認された。
図13(a)は、本実施例に係るCuO薄膜のサンプルのうちドーピング溶液を加えていないノンドープサンプルのXPS結果を示すグラフであり、図13(b)は、図13(a)における一部を拡大したグラフである。図13によれば、934.5eV付近にピークを有することから、本サンプルを構成する支配的なイオンはCu2+であり、Cu1+は関与していないことが確認された。
[実施例3]
実施例3において、原料溶液Mは、酢酸銅(2価)のモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸銅水溶液をベース溶液とし、これにドーピング溶液を加えたものとした。その際、このドーピング溶液として、酢酸リチウムのモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸リチウム水溶液、酢酸ナトリウムのモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウムのモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸カリウム水溶液をそれぞれ用いた。
そして、上述した液量比をパラメータとした複数種類の原料溶液Mを用い、それぞれに成膜サンプルを作製した。その際、成膜条件は実施例2と同じ条件とした。
実施例3において、原料溶液Mは、酢酸銅(2価)のモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸銅水溶液をベース溶液とし、これにドーピング溶液を加えたものとした。その際、このドーピング溶液として、酢酸リチウムのモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸リチウム水溶液、酢酸ナトリウムのモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウムのモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸カリウム水溶液をそれぞれ用いた。
そして、上述した液量比をパラメータとした複数種類の原料溶液Mを用い、それぞれに成膜サンプルを作製した。その際、成膜条件は実施例2と同じ条件とした。
[電気特性]
これらの成膜サンプルの抵抗率の測定結果を図14に示す。図14において、横軸は、上述した液量比を示し、縦軸は抵抗率を示す。また、図14において、○印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸カリウム水溶液を用いた場合の液量比と抵抗率との関係を、□印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸ナトリウム水溶液を用いた場合の液量比と抵抗率との関係を、▲印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸リチウム水溶液を用いた場合の液量比と抵抗率との関係を示す。図14よれば、ドーピング溶液として酢酸リチウム水溶液を用いると、他のドーピング溶液を用いた場合よりも低抵抗の成膜が得られたことがわかる。特に、液量比が10%の成膜サンプルから3Ωcmという最も低い抵抗値が得られ、太陽電池材料としての実用性が高いCuO薄膜を提供できる。
これらの成膜サンプルの抵抗率の測定結果を図14に示す。図14において、横軸は、上述した液量比を示し、縦軸は抵抗率を示す。また、図14において、○印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸カリウム水溶液を用いた場合の液量比と抵抗率との関係を、□印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸ナトリウム水溶液を用いた場合の液量比と抵抗率との関係を、▲印を含む線は、ドーピング溶液として酢酸リチウム水溶液を用いた場合の液量比と抵抗率との関係を示す。図14よれば、ドーピング溶液として酢酸リチウム水溶液を用いると、他のドーピング溶液を用いた場合よりも低抵抗の成膜が得られたことがわかる。特に、液量比が10%の成膜サンプルから3Ωcmという最も低い抵抗値が得られ、太陽電池材料としての実用性が高いCuO薄膜を提供できる。
[実施例4]
実施例4において、原料溶液Mは、酢酸銅(2価)のモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸銅水溶液をベース溶液とし、これにドーピング溶液を加えたものとした。このドーピング溶液として、酢酸アルミニウムのモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸アルミニウム水溶液を用いた。
そして、上述した液量比をパラメータとした複数種類の原料溶液Mを用い、それぞれに成膜サンプルを作製した。その際、成膜条件は実施例2と同じ条件とした。
実施例4において、原料溶液Mは、酢酸銅(2価)のモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸銅水溶液をベース溶液とし、これにドーピング溶液を加えたものとした。このドーピング溶液として、酢酸アルミニウムのモル濃度0.05mol/Lからなる酢酸アルミニウム水溶液を用いた。
そして、上述した液量比をパラメータとした複数種類の原料溶液Mを用い、それぞれに成膜サンプルを作製した。その際、成膜条件は実施例2と同じ条件とした。
[電気特性]
これらの成膜サンプルの抵抗率の測定結果を図15に示す。図15において、横軸は、上述した液量比を示し、縦軸は抵抗率を示す。また、図15において、▲印と□印との相違は、基板28上の測定位置が異なる点である。具体的には、▲印は、上述したOFからミストの流れ方向に沿って15mmの位置の測定値を示し、□印は、上述したOFからミストの流れ方向に沿って25mmの位置の測定値をそれぞれ示す。また、図15において、文字「p」は、ゼーベック測定した結果p型半導体の特性を示す成膜サンプルであることを示す。また、文字「n」は、ゼーベック測定した結果n型半導体の特性を示す成膜サンプルであることを示す。
図15によれば、本実施例のCuO薄膜は、液量比が0%〜15%の間はp型半導体の特性を示し、液量比が20%以上になるとn型半導体の特性を示すことがわかる。従って、液量比15%〜20%の範囲に真性半導体に近い部分が存在する可能性がある。このように、酢酸アルミニウム水溶液の液量比を調整することにより、p型半導体の特性を有するCuO薄膜及びn型半導体の特性を有するCuO薄膜を形成することができ、本発明により、太陽電池材料としての実用性が高いCuO薄膜を提供できる。
これらの成膜サンプルの抵抗率の測定結果を図15に示す。図15において、横軸は、上述した液量比を示し、縦軸は抵抗率を示す。また、図15において、▲印と□印との相違は、基板28上の測定位置が異なる点である。具体的には、▲印は、上述したOFからミストの流れ方向に沿って15mmの位置の測定値を示し、□印は、上述したOFからミストの流れ方向に沿って25mmの位置の測定値をそれぞれ示す。また、図15において、文字「p」は、ゼーベック測定した結果p型半導体の特性を示す成膜サンプルであることを示す。また、文字「n」は、ゼーベック測定した結果n型半導体の特性を示す成膜サンプルであることを示す。
図15によれば、本実施例のCuO薄膜は、液量比が0%〜15%の間はp型半導体の特性を示し、液量比が20%以上になるとn型半導体の特性を示すことがわかる。従って、液量比15%〜20%の範囲に真性半導体に近い部分が存在する可能性がある。このように、酢酸アルミニウム水溶液の液量比を調整することにより、p型半導体の特性を有するCuO薄膜及びn型半導体の特性を有するCuO薄膜を形成することができ、本発明により、太陽電池材料としての実用性が高いCuO薄膜を提供できる。
これまで説明してきたように、上述してきた実施形態のCuO薄膜製造方法によれば、 CuO薄膜の製作を容易化するとともに、製造コストを大幅に低減可能なCuO薄膜製造方法及び太陽電池材料として高変換効率を期待できるCuO薄膜を提供できる。
以上、本発明の実施形態のうちいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらはあくまでも例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
10 成膜装置
16 ミスト発生手段
24 加熱手段
20 反応部
28 基板
32 CuO薄膜
M 原料溶液(銅イオン溶液)
16 ミスト発生手段
24 加熱手段
20 反応部
28 基板
32 CuO薄膜
M 原料溶液(銅イオン溶液)
Claims (10)
- ミストCVD法によるCuO薄膜の製造方法であって、
1価及び/又は2価の銅イオンを含む銅イオン溶液から、ミスト発生手段により発生させたミストを、加熱された基板上にキャリアガスで導き、前記基板上にCuO薄膜を形成させることを特徴とするCuO薄膜製造方法。 - 前記銅イオン溶液において、溶媒は水からなることを特徴とする請求項1記載のCuO薄膜製造方法。
- 前記ミスト発生手段は、超音波振動子を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のCuO薄膜製造方法。
- 前記基板の温度は、500℃〜850℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のCuO薄膜製造方法。
- 前記基板は、単結晶基板からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のCuO薄膜製造方法。
- 請求項5記載のCuO薄膜製造方法により製造されるCuO薄膜において、前記単結晶基板上にエピタキシャル成長されるCuOの多結晶を含むことを特徴とするCuO薄膜。
- バンドギャップ値が、1.2eV〜1.56eVからなることを特徴とする請求項6記載のCuO薄膜。
- 光エネルギー略2eVにおける光吸収係数が、1×104cm―1〜2×105cm―1であることを特徴とする請求項6又は7記載のCuO薄膜。
- Li、Na、K、Agの群から選ばれた一つの元素及び/又は、N、P、As、Sbの群から選ばれた一つの元素からなるp型ドーパントを含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のCuO薄膜。
- B、Al、Ga、Inの群から選ばれた一つの元素及び/又は、F、Cl、Br、Iの群から選ばれた一つの元素からなるn型ドーパントを含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のCuO薄膜。
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Cited By (2)
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JP2014234344A (ja) * | 2013-10-10 | 2014-12-15 | 株式会社Flosfia | 酸化物結晶薄膜の製造方法 |
US10202685B2 (en) | 2013-06-04 | 2019-02-12 | Flosfia Inc. | Method of manufacturing oxide crystal thin film |
-
2013
- 2013-11-26 JP JP2013244239A patent/JP2014131020A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US10202685B2 (en) | 2013-06-04 | 2019-02-12 | Flosfia Inc. | Method of manufacturing oxide crystal thin film |
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