JP2014130789A - 酸化物超電導線材、酸化物超電導線材の接続構造体及びその製造方法並びに超電導機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】テープ状の基材に中間層と酸化物超電導層と安定化層が積層されてなる酸化物超電導線材1であって、前記酸化物超電導線材1の長手方向両端部1aに被覆部材21が被着していることを特徴とする酸化物超電導線材1。また、前記被覆部材21として、金属部材40と当該金属部材40の少なくとも前記酸化物超電導線材1と対向する面に形成された接続層42とを有することを特徴とする酸化物超電導線材1。
【選択図】図2
Description
また、接続層として半田からなる半田層を形成する場合においては、半田層の外周をさらに金属部材で覆う構成を有することによって、半田層と酸化物超電導線材の端部の密着性が低い場合であっても、金属部材によって外周を覆っているため確実に水分の浸入を防ぐことができる。また、半田層の外周を金属部材で覆うことにより半田層によって形成される層を薄くすることが可能となり、酸化物超電導線材の端部の厚み及び幅寸法が肥大化することを抑制することができる。
本発明の酸化物超電導線材の接続構造体は、接続部分において、重ね合わせ部の長手方向中央部が導電性接合材によって接合されており、重ね合わせ部内の長手方向の端部は、導電性接合材によって接合されていない。導電性接合材によって接合されていない領域が設けられていることで、重ね合わせ部から導電性接合材がはみ出し、重ね合わせ部の両外側で凝固することを抑制する。したがって、接続構造体において導電性接合材による接合部が局所的に厚く形成されることがなく、局所的に曲げに弱い部分が形成されることを抑制することができる。
また、補強板は酸化物超電導線材の先端の蓋をするように覆う役割を果たし、酸化物超電導線材の先端に水分が侵入することをより確実に防ぐことができる。
加えて、補強板が導電性を有する場合においては、補強板を電気的な接点として使用することができる。
また、接続部分において、重ね合わせ部の長手方向両側にマスキングを施し、導電性接合材によって接合されていない領域を形成することができる。これによって、第1の酸化物超電導線材及び第2の酸化物超電導線材の重ね合わせ部において、導電性接合材による接合部が均一に形成され、局所的に曲げに弱い部分が形成されることを抑制することができる。
以下、本発明に係る第1実施形態の酸化物超電導線材1について説明する。
図1は、本発明に係る酸化物超電導積層体(酸化物超電導線材)20の端部20aを示す模式図であり、図2は、本発明に係る酸化物超電導線材1の端部1aを示す模式図である。本実施形態の酸化物超電導線材1は、テープ状であり、酸化物超電導積層体20の長手方向端部20aを被覆部材21により被覆して形成されている。
図1、図2を基に、酸化物超電導線材1の各構成要素に関して詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
拡散防止層は、この層よりも上面に他の層を形成する際に加熱処理した結果、基材10や他の層が熱履歴を受ける場合に、基材10の構成元素の一部が拡散し、不純物として酸化物超電導層12側に混入することを抑制する機能を有する。拡散防止層の具体的な構造としては、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、不純物の混入を防止する効果が比較的高いAl2O3、Si3N4、又はGZO(Gd2Zr2O7)等から構成される単層構造あるいは複層構造が望ましい。
ここで、キャップ層にCeO2を用いる場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
第2の安定化層14の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜300μmとすることができる。
また、上述したように金属テープをフォーミングし積層物15の周面を覆うように金属層を形成する他に、積層物15の外周全体にめっきを施すことにより被覆し、積層部15外周の金属層及び第2の安定化層14とを一体的に形成しても良い。この場合、めっき層の厚さは、10μm以上とすることで、ピンホールのないめっき層を形成することが可能となり、水分の浸入を確実に防ぐことができる。
第1実施形態の酸化物超電導線材1の端部1aに構成される被覆部材21は、1対の金属部材40、40と接続層42からなる。
本実施形態における金属部材40は、例えばCu等の金属箔を用いる事ができる。また、接続層42は、例えば半田からなる半田層として構成することができる。
なお、金属部材40に形成される接続層42は、金属部材40の片面に形成されていても、両面に形成されていても良い。また、金属部材40に接続層42を形成する以外に、半田からなる箔を挟み込み、当該箔を加熱により溶融させても良い。
酸化物超電導積層体20と金属部材40との境界面及び、金属部材40、40同士の接触部は、接続層42により接合され完全に封止されているため、当該境界面及び接触部からの水分の浸入を抑制することができる。
したがって、被覆部材21で覆われる酸化物超電導積層体20の長手方向の長さLは1〜30mmであることが好ましい。
以下、本発明に係る第2実施形態の酸化物超電導線材7について図3に基づいて説明する。なお、上述の第1実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
第2実施形態の酸化物超電導線材7は、第1実施形態の酸化物超電導線材1と比較して、被覆部材の構成に違いを有する。即ち、第2実施形態の酸化物超電導線材7は、図3に示すように、被覆部材21に代えて樹脂材料からなる樹脂被覆部材41によって端部7aが被覆されている。第1実施形態の酸化物超電導線材1の被覆部材21は、接続層42とその外周を覆う金属部材40から構成されているのに対して、第2実施形態の酸化物超電導線材7の被覆部材は、樹脂被覆部材41のみで構成される。樹脂被覆部材41を構成する樹脂材料としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ワックス等の化学反応や相転移等により液体から固体に変わる材料を用いる事ができる。樹脂被覆部材41は、ディッピングや、型にはめて成型することにより形成することが可能で、この場合、均一な層を容易に形成することができる。
係る構成を有することにより、酸化物超電導積層体20の端部20aから水分が浸入し、超電導線材が劣化することを抑制できる。
また、第1実施形態の酸化物超電導線材1の端部1aにおいて、金属部材40の縁部40cが幅方向及び、端部1aの幅寸法を肥大化させる。しかしながら、第2実施形態の酸化物超電導線材7においては、幅寸法が肥大化することがなく、当該酸化物超電導線材7を接続する場合において、接続部をコンパクトに形成することが可能となる。即ち、螺旋巻きして超電導ケーブルに加工する場合や、巻回して超電導コイルに加工する場合に、接続部の肥大化による巻き線が不均一となる事を抑制できる。
以下、本発明に係る第3実施形態の酸化物超電導線材8について図4に基づいて説明する。なお、上述の第1実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図4(d)に示すように、第3実施形態の酸化物超電導線材8の被覆部材24は、第1実施形態の酸化物超電導線材1の被覆部材24と同様に半田などからなる接続層43とその外周を覆う箔状の金属部材44から構成されているが、金属部材44による被覆方法が異なる。
まず、図4(a)に示すように、酸化物超電導積層体20の端部20aを、矩形状を有し、少なくとも上面に接続層43からなる層を備えた金属部材44の中央付近に配置する。この時、酸化物超電導積層体20の端部20aの先には、長さJの金属部材44の余剰を確保する。長さJは0.5mm以上とすることで、後の接続層42を溶融する工程において、端部20aを確実に被覆することが可能となり好ましい。
被覆部材24の包囲部24aによって酸化物超電導積層体20の外周面を覆い、先端部24bが酸化物超電導積層体20の長手方向端部20aを覆い、各部において被覆部材21は、接続層43を介して酸化物超電導積層体20と接合されている。また、先端部24bにおいて金属部材44は、酸化物超電導積層体20の端部20a近傍を上下方向から閉じ、それぞれの上下の金属部材44同士は先端部24bにおいて接続層43により接合されている。
酸化物超電導積層体20と金属部材44との境界面及び、金属部材44同士の接触部は、接続層43により接合され完全に封止されているため、当該境界面及び接触部からの水分の浸入を抑制することができる。
他にも、図4(b)に示す被覆部材24の先端部24bを厚み方向上下に閉じた状態から、更に別途用意した少なくとも1面に接続層43からなる層を備える金属部材を、先端部24bの先端縁24cを被せるように被覆し、幅方向にはみ出した金属部材を切断工具によって切断して構成しても良い。
被覆部材24で覆われる酸化物超電導積層体20の長手方向の長さLは、第1実施形態の酸化物超電導線材1と同様に1〜30mmであることが好ましい。
以下、本発明に係る第4実施形態の酸化物超電導線材9について図5に基づいて説明する。なお、本実施形態は、上述の第3実施形態と類似した構成を有し、同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図5(d)に示すように第4実施形態の酸化物超電導線材9は、第3実施形態の酸化物超電導線材8と比較して、被覆部材23が、酸化物超電導積層体20と共に補強板45を被覆している点が異なる。
また、補強板45は酸化物超電導積層体20の端部20aの蓋をするように覆う役割を果たし、酸化物超電導積層体20の端部20aが水分に触れることを抑制する。
補強板45が銅等の導電性を有する材料からなる場合においては、前記補強板45を電気的な接点として使用することができる。
補強板45として、ステンレスからなるものを用いる場合においては、ステンレスは剛性が高いため、酸化物超電導線材9の端部9aの補強効果を高めることができる。
まず、図5(a)に示すように、酸化物超電導積層体20の端部20aを、矩形状を有し、少なくとも上面に接続層43を形成した金属部材44の中央付近に配置する。さらに、酸化物超電導積層体20の長手方向端部20aの先に補強板45を配置する。補強板45は、酸化物超電導積層体20の端部20aと隙間なく配置することが望ましい。補強板45は、金属部材44の縁部からはみ出していても、完全に内側に配置されていても良い。また、図5(a)に示すように、補強板45の縁部と金属部材44の縁部が一致するように配置しても良い。
更に図5(d)に示すように、金属部材44の酸化物超電導積層体20の端部20aの先に構成される部分を閉じるように加圧し、更に加熱することで金属部材44上の接続層43を溶融させ接合する。
係る手順により酸化物超電導線材9を構成することにより、上述の第3実施形態の酸化物超電導線材8と同様の効果を得ることができるのみならず、補強板の効果により、より確実に水分浸入を防ぐことができ、加えて、金属部材44の破損を抑制できる。
この場合、めっき被覆層は、電解めっき、無電解めっき、溶融めっき、真空蒸着の何れか1つ又は2つ以上の組合せによって形成することができる。
次に、本発明に係る接続構造体の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図6に本発明に係る接続構造体の第1実施形態である第1の酸化物超電導線材2及び第2の酸化物超電導線材3を接続した接続構造体30について説明する。
即ち、第1の酸化物超電導線材2及び第2の酸化物超電導線材3は、図6(b)に示すように、テープ状の基材10に中間層11、酸化物超電導層12、第1の安定化層13と第2の安定化層14が積層された構造を有しており、特に第2の安定化層14は基材10において中間層11を形成していない側の裏面中央部を除いて積層物15の周面を横断面C字型をなすように覆っている。第2の安定化層14により覆われていない基材10の裏面側の中央部は半田層16(図1参照)により覆われ、半田層16は第2の安定化層14の端縁どうしが形成する凹部を埋めるように形成され、酸化物超電導積層体20の外周から水分が浸入しない酸化物超電導積層体20を形成している。また、酸化物超電導積層体20の接続しようとする端部20aは、被覆部材21により所定の長さL(図2参照)被覆されており、第1の酸化物超電導線材2及び第2の酸化物超電導線材3を形成している。なお、被覆部材21によって覆われる第1の酸化物超電導線材2及び第2の酸化物超電導線材3の長手方向の長さLは、1〜30mmとされる。
また、被覆部材21が、図3を基に説明したように、樹脂材料からなる樹脂被覆部材41であり、導電性接合材22が半田である場合においては、樹脂と半田は接合されないため、必然的に樹脂被覆部材41と導電性接合材(半田)22は、接合されない。
最初に、第1の酸化物超電導線材2の端部2a近傍と第2の酸化物超電導線材3の端部3a近傍の第2の安定化層14、14同士を対向して重ね合わせ、重ね合わせ部50を形成する。このとき、当該重ね合わせ部50において、長手方向の両側の、非接合領域52、52を所定の長さH52だけマスキング材によってマスキングする。次に、前記重ね合わせ部50の非接合領域(マスキング部)52、52を除いた部分を導電性接合材22によって接合することによって接続する。導電性接合材22として半田を用いる場合においては、重ね合わせ部50を形成する際にマスキングを行うと共に、重ね合わせ部50の長手方向中央部51に半田用の箔を挟み、重ね合わせ部50を加圧しながら加熱することで、半田を溶融させて接合する。この場合半田固着後にマスキング材を除去し、非接合領域52、52を形成する。
マスキング材としては、半田が固着しなければ特に限定されるものではなく、例えばカプトン(登録商標)、テフロン(登録商標)等からなるテープや、シートを使用することができる。
導電性接合材22によって接合される中央部51の長手方向の長さH51を大きくすることで、第1の酸化物超電導線材2から第2の酸化物超電導線材3、あるいは第2の酸化物超電導線材3から第1の酸化物超電導線材2への電流経路において、電流方向に対する導電性接合材22の断面積を大きくすることができ、全体として接続構造体30の接続部分における抵抗値を抑制することができる。したがって、導電性接合材22によって接合される中央部51の長手方向の長さH51は、長いほうが接続部分の電気抵抗の観点において好ましく、具体的には、10mm以上であることが望ましい。しかしながら、導電性接合材22によって接合される中央部51の長手方向の長さH51が120mmを超える場合は、接続部分が長くなりすぎて、接続構造体30の屈曲性が悪くなる。したがって導電性接合材22によって接合される中央部51の長手方向の長さH51は、120mm以下が望ましい。
また、非接合領域52の長手方向の長さH52が100mmを超えると、接続部分が長くなり、接続構造体30の取り回しが悪くなり好ましくない。
また、接続部分において、重ね合わせ部50の長手方向中央部51が導電性接合材22によって接合されており、重ね合わせ部50内の長手方向の端部を含む両側には、導電性接合材22によって接合されていない非接合領域52、52が形成されている。重ね合わせ部50内の非接合領域52は、重ね合わせ部50から導電性接合材22がはみ出し、重ね合わせ部50の両外側で凝固することを抑制する。したがって、接続構造体30において導電性接合材22による接合部が局所的に厚く形成されることがなく、局所的に曲げに弱い部分が形成されることを抑制することができる。
更に、本実施形態の接続構造体30は、重ね合わせ部50内において、被覆部材21が非接合領域52に設置されており、導電性接合材22によって接合されていない。剛性が高く屈曲性が低い被覆部材21を導電性接合材22によって接合しないことで、接続部分に曲げを印加した際に被覆部材21近傍の酸化物超電導層12に過大な負荷がかかることを抑制することができる。
以下、本発明に係る接続構造体の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図7に本発明の第2実施形態である第1の酸化物超電導線材4及び第3の酸化物超電導線材5を接続した接続構造体31について説明する。上述の第1実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
なお、本実施形態の接続構造体31において接続される、第1の酸化物超電導線材4及び第3の酸化物超電導線材5は、図2を基に説明した第1実施形態の酸化物超電導線材1と同構造である。また、第2の酸化物超電導線材6は、酸化物超電導線材1と同等構造であり、しかもその両端部である第1端部6a及び第2端部6bは被覆部材21によって覆われている。
第2実施形態の接続構造体31は、上述した第1実施形態の接続構造体30を第1の酸化物超電導線材4の一端(端部4a近傍)と第2の酸化物超電導線材6の一端(第1端部6a近傍)とに適用して接続し、さらに第2の酸化物超電導線材6の他端(第2端部6b近傍)と第3の酸化物超電導線材5の一端(端部5a近傍)とに適用して接続したものであると説明できる。
まず、第1の酸化物超電導線材4の端部4aと第3の酸化物超電導線材5の端部5aを距離eだけ離間して隣接させる。このとき、第1の酸化物超電導線材4及び第3の酸化物超電導線材5は、基材10、10に対して酸化物超電導層12、12を形成した側を揃えて配置する。
また導電性接合材22によって接合される中央部61、71の長手方向の長さH61、H71は、第1実施形態の接続構造体30と同様に、接続構造体31の電気抵抗及び屈曲性の観点から10〜120mmが望ましい。
加えて、非接合領域62、72の長手方向の長さH62、H72は、マスキングの作業性及び接続構造体31の取り回しの観点から、1mm以上100mm以下であることが好ましい。
第1の酸化物超電導線材4の端部4aと第3の酸化物超電導線材5の端部5aの距離eは、特に限定されるものではなく、第2の酸化物超電導線材6の長さ並びに第1の重ね合わせ部60及び第2の重ね合わせ部70の長さH60、H70等に応じて適宜決定すればよい。
また、接続部分において、重ね合わせ部60、70の長手方向中央部61、71が導電性接合材22によって接合されており、重ね合わせ部60、70内の長手方向の端部を含む両側には、導電性接合材22によって接合されていない非接合領域62、72が形成されている。重ね合わせ部60、70内の非接合領域62、72は、重ね合わせ部60、70から導電性接合材22がはみ出し、重ね合わせ部60、70の両外側で凝固することを抑制する。したがって、接続構造体31において、導電性接合材22による接合部が局所的に厚く形成されることがなく、局所的に曲げに弱い部分が形成されることを抑制することができる。
更に、本実施形態の接続構造体31は、重ね合わせ部60、70内において、被覆部材21が非接合領域62、72に設置されており、導電性接合材22によって接合されていない。剛性が高く屈曲性が低い被覆部材21を導電性接合材22によって接合しないことで、接続部分に曲げを印加した際に被覆部材21近傍の酸化物超電導層12に過大な負荷がかかることを抑制することができる。
加えて、接続する第1の酸化物超電導線材4と第3の酸化物超電導線材5とが同方向に積層されて配置されているため、接続部分で第1の酸化物超電導線材4及び第3の酸化物超電導線材5の表裏の逆転がなく、取扱いが容易となる。
上述したように作製された第1又は第2実施形態の接続構造体30、31によって接続された酸化物超電導線材1(即ち、酸化物超電導線材2、3、4、5)は、図8に部分断面略図の一例を示す超電導ケーブル80として使用することができる。超電導ケーブル80の中心にあるケーブルコア85は、金属製(例えば銅製)フォーマ81の周りに、複数列のテープ状の酸化物超電導線材1を、絶縁層82を挟んで2層にわたって螺旋状に巻きつけ、更に導電性のケーブル用安定化層83によって覆われて形成されている。このケーブルコア85は可撓性を有する金属製の二重断熱管84の中に収納されている。二重断熱管84は、内管84aと外管84cを有し、内管84aと外管84cの間には、真空断熱層84bが形成されており、外部からの熱の影響を排除する構造となっている。
このような超電導ケーブル80に、第1又は第2実施形態の接続構造体30、31によって接続された酸化物超電導線材1を用いる事によって、製造ラインの大きさに係らず、様々な長さの超電導ケーブル80を作製することができる。
また、複数本の超電導ケーブル80を接続する際に、その接続部において第1又は第2実施形態の接続構造体30、31を採用し、酸化物超電導線材1を接続することができる。
また、上述した第1又は第2実施形態の接続構造体30、31によって接続された酸化物超電導線材1を用いて図9に一例を示す超電導限流器99を作製することができる。
超電導限流器99において、接続構造体30、31によって接続された酸化物超電導線材1は、巻胴に複数層に渡って巻回され超電導限流器用モジュール90を構成し、当該超電導限流器用モジュール90として液体窒素98が充填された液体窒素容器95に格納されている。さらに液体窒素容器95は、外部との熱を遮断する真空容器96の内部に格納されている。
液体窒素容器95は、上部に、液体窒素充填部91と冷凍機93を有し、冷凍機93の下方には、熱アンカー92と熱板97が設けられている。
また、超電導限流器99は、超電導限流器用モジュール90に外部電源(図示略)を接続するための電流リード部94を有する。
以上のような、超電導限流器99の超電導限流器用モジュール90として使用する場合において、酸化物超電導線材1は、図1を基に説明したように第2の安定化層14にNi−Cr等の高抵抗金属を用いたものを使用する。
図10(a)、(b)に、第1又は第2実施形態の接続構造体30、31によって接続された酸化物超電導線材1を用いて構成された超電導モータ130の一例を示す。超電導モータ130は、円筒状の密閉型の容器131の内部に、回転自在に軸支された軸型の回転子132を備え構成されている。
超電導モータ用コイル135は、第1又は第2実施形態の接続構造体30、31によって接続された酸化物超電導線材1を適当なスミRを有する矩形状のボビンに巻回して形成されている。
回転軸133の内部には冷却ガスを流入させるか流出させるための複数の配管が設けられ、外部に別途設けられている図示略の冷媒供給装置から容器131の内部に冷却ガスを導入し、冷却ガスにより超電導モータ用コイル135を臨界温度以下に冷却できるように構成されている。なお、超電導モータ用コイル135は臨界温度以下に冷却されるが、常電導コイル136は常温部として構成される。
上述したように作製された第1又は第2実施形態の接続構造体30、31によって接続された酸化物超電導線材1を巻回して、図11(b)に示す超電導コイル101を構成することができる。また超電導コイル101を複数個積層し、それぞれの超電導コイル101同士を第1又は第2実施形態の接続構造体30、31によって接続することにより、図11(a)に示す強力な磁力を発する超電導コイル積層体100を形成することができる。
ここで、超電導機器は、前記酸化物超電導線材1を有するものであれば特に限定されず、例えば、超電導ケーブル、超電導モータ、超電導変圧器、超電導限流器、超電導電力貯蔵装置などを例示できる。
幅5mm、厚さ0.1mmのテープ状のハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)製の基材上に、スパッタ法によりAl2O3(拡散防止層;膜厚150nm)を成膜し、その上に、イオンビームスパッタ法によりY2O3(ベッド層;膜厚20nm)を成膜した。次いで、このベッド層上に、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)によりMgO(金属酸化物層;膜厚10nm)を形成し、その上にパルスレーザー蒸着法(PLD法)により0.5μm厚のCeO2(キャップ層)を成膜した。次いでCeO2層上にPLD法により2.0μm厚のGdBa2Cu3O7−δ(酸化物超電導層)を形成し、さらに酸化物超電導層上にスパッタ法により2μm厚のAg層(第1の安定化層)を形成し、さらに0.2mm厚のCuテープを横断面C字型をなすようにフォーミングし、積層物(基材と中間層と酸化物超電導層と第1の安定化層の積層物)の周面を覆い、半田によって被着した。これによって、図1に示す酸化物超電導積層体20を複数作製した。この酸化物超電導積層体20を以下の実施例A、B、C及び比較例A、Bで共通して使用する。
上述した酸化物超電導積層体20を用いて、第1実施形態の酸化物超電導線材1(図2参照)と同様の構成を有する実施例A、並びに第2実施形態の酸化物超電導線材2(図3参照)と同様の構成を有する実施例Bを作製した。
実施例Aにおいて、金属部材40として、両面に接続層42としてのSnが2μmめっきされた、厚さ20μmの銅箔を使用した。また、図2に示す酸化物超電導積層体20の端部20aから被覆部材21で覆う長さLを5mmとした。
実施例Bにおいて、図3に示す酸化物超電導積層体20の端部20aから樹脂被覆部材41で覆う長さLを5mmとした。
また、上述した酸化物超電導積層体20を酸化物超電導線材の比較例Aとした。
これに対して、比較例Aは、プレッシャークッカー試験によって大きな劣化が見られた。これは、端部からプレッシャークッカー試験によって水分が浸入し、酸化物超電導層が劣化したためであると考えられる。
実施例Cにおいて、金属部材40として、両面に接続層42としてのSnが2μmめっきされた、厚さ20μmの銅箔を使用した。また、図4(d)に示す酸化物超電導積層体20の端部20aから被覆部材21で覆う長さLを5mmとした。加えて、図4(a)、(c)にそれぞれ示す長さJ及び幅Kは、0.8mmとした。
また、上述した酸化物超電導線材の実施例Aの図2に示す酸化物超電導線材1の幅方向両側に形成された縁部40cを切断工具によって切断し、幅方向両側の縁部40cの幅を0.2mmとした比較例Bを作製した。
これに対して、比較例A、Bは、プレッシャークッカー試験によって大きな劣化が見られた。これは、端部からプレッシャークッカー試験によって水分が浸入し、酸化物超電導層が劣化したためであると考えられる。
幅5mm、厚さ0.1mmのテープ状のハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)製の基材上に、スパッタ法によりAl2O3(拡散防止層;膜厚150nm)を成膜し、その上に、イオンビームスパッタ法によりY2O3(ベッド層;膜厚20nm)を成膜した。次いで、このベッド層上に、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)によりMgO(金属酸化物層;膜厚10nm)を形成し、その上にパルスレーザー蒸着法(PLD法)により0.5μm厚のCeO2(キャップ層)を成膜した。次いでCeO2層上にPLD法により2.0μm厚のGdBa2Cu3O7−δ(酸化物超電導層)を形成し、さらに酸化物超電導層上にスパッタ法により10μm厚のAg層(第1の安定化層)を形成し、さらに0.1mm厚のCuテープを横断面C字型をなすようにフォーミングし、積層物(基材と中間層と酸化物超電導層と第1の安定化層の積層物)の周面を覆い、半田によって被着した。これによって、図1に示す酸化物超電導積層体20を複数作製した。この酸化物超電導積層体20を以下の実施例1、2及び比較例1、2で共通して使用する。
まず、長さ500mを有する第1の酸化物超電導線材4の端部4a及び第3の酸化物超電導線材5の端部5a並びに、長さ65mmを有する第2の酸化物超電導線材6の両端(第1端部6a及び第2端部6b)を、各端部4a、5a、6a、6bから5mmの長さに渡り(即ち、図2に示すL=5として)、厚さ0.02mmの銅製の一対の箔状の金属部材40、40と半田によって被覆部材21を形成した。
また、実施例1、2及び比較例1、2の接続構造体について曲げ試験を行った。曲げ試験は、各試料の接続構造体を、積層方向に沿って様々な曲げ半径で曲げ、その前後での臨界電流の比(劣化率)を測定した。インジウム半田で接合された実施例1と比較例2の試料の曲げ半径と劣化率のグラフを図15にまとめ、スズ半田で接合された実施例2と比較例3の資料の曲げ半径と劣化率のグラフを図16にまとめて示す。
これに対して、比較例1、2は、プレッシャークッカー試験によって大きな劣化が見られた。これは、端部からプレッシャークッカー試験によって水分が浸入し、酸化物超電導層が劣化したためであると考えられる。
更に、接続する半田としてスズ半田を用いた実施例2と比較例2の曲げ試験の結果を比較すると(図16参照)、実施例1は、曲げ半径40mmにおいて、臨界電流の劣化が顕著にみられるのに対して、比較例1では、曲げ半径70mmで、劣化が顕著にみられる。
比較例1、2では、接続部において重ね合わせ部全面が接合されているため、半田が重ね合わせ部の両側に溜り凝固し、当該両側において接続構造体が局所的に厚くなる。これらの接続構造体に曲げを加えると接続部分に過大な応力が発生し、酸化物超電導層の結晶構造が破壊されたため、臨界電流値が劣化すると考えられる。またこの現象は、接続する際に用いる導電性接合材が、インジウム半田であってもスズ半田であっても起こることが確認された。
これらより、本発明に係る本接続構造体及び接続方法の優位性が確認された。
Claims (9)
- テープ状の基材に中間層と酸化物超電導層と安定化層が積層されてなる酸化物超電導線材であって、
前記酸化物超電導線材の長手方向両端部に被覆部材が被着していることを特徴とする酸化物超電導線材。 - 前記被覆部材として、金属部材と当該金属部材の少なくとも前記酸化物超電導線材と対向する面に形成された接続層とを有することを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材。
- 請求項1又は2に記載の酸化物超電導線材同士が接続された酸化物超電導線材の接続構造体であって、
前記酸化物超電導線材のうち一方を第1の酸化物超電導線材とし、他方を第2の酸化物超電導線材とし、
前記第1の酸化物超電導線材と第2の酸化物超電導線材における互いの端部近傍の前記安定化層同士が対向して重ね合わせ部を形成して配置され、
前記重ね合わせ部の長手方向中央部が導電性接合材によって接合され、前記重ね合わせ部内の長手方向端部が前記導電性接合材によって接合されていないことを特徴とする酸化物超電導線材の接続構造体。 - 請求項3に記載の酸化物超電導線材の接続構造体であって、
前記第1の酸化物超電導線材及び第2の酸化物超電導線材に加えて、第3の酸化物超電導線材を備え、
前記第1の酸化物超電導線材及び第3の酸化物超電導線材が、前記接続しようとする端部同士を隣接させ、基材に対して酸化物超電導層を形成した側を揃えて配置され、
前記隣接された端部を跨るように、前記第1の酸化物超電導線材及び第3の酸化物超電導線材の安定化層に前記第2の酸化物超電導線材の安定化層が橋渡しされ第1の重ね合わせ部及び第2の重ね合わせ部が形成され、
前記第1の重ね合わせ部の長手方向中央部が導電性接合材によって接合され、前記第1の重ね合わせ部内の長手方向端部が導電性接合材によって接合されておらず、
前記第2の重ね合わせ部の長手方向中央部が導電性接合材によって接合され、前記第2の重ね合わせ部内の長手方向端部が導電性接合材によって接合されていないことを特徴とする酸化物超電導線材の接続構造体。 - 前記重ね合わせ部内において、前記被覆部材が前記導電性接合材によって接合されていないことを特徴とする請求項3又は4に記載の酸化物超電導線材の接続構造体。
- 請求項2に記載の酸化物超電導線材であって、
前記酸化物超電導線材の長手方向と同方向に、前記酸化物超電導線材の端部と対向して補強板が配置され、
前記補強板が前記被覆部材によって、前記酸化物超電導線材の長手方向端部と共に被覆され、
前記補強板の幅が前記酸化物超電導線材の幅と略同幅であることを特徴とする酸化物超電導線材。 - 請求項3から5の何れか一項に記載の酸化物超電導線材の接続構造体であって、
請求項6に記載の酸化物超電導線材同士を接続することを特徴とする酸化物超電導線材の接続構造体。 - 請求項1、2もしくは6の何れか一項に記載の酸化物超電導線材または請求項3〜5もしくは7の何れか一項に記載の酸化物超電導線材の接続構造体を有することを特徴とする超電導機器。
- テープ状の基材に中間層と酸化物超電導層と安定化層を積層してなる酸化物超電導線材の接続しようとする端部に被覆部材を形成し第1の酸化物超電導線材及び第2の酸化物超電導線材を形成する工程と、
前記第1の酸化物超電導線材または前記第2の酸化物超電導線材の安定化層表面であって、前記第1の酸化物超電導線材及び前記第2の酸化物超電導線材の互いの端部近傍の前記安定化層同士を対向させる時に、線材同士が互いに覆っている部分において、前記第1の酸化物超電導線材端部及び前記第2の酸化物超電導線材端部に対応する位置に、所定の幅でマスキング材を配置する工程と、
前記マスキング材間に形成される空間に導電性接合材を配置する工程と、
前記第1の酸化物超電導線材及び前記第2の酸化物超電導線材を接合する工程と、
前記マスキング材を除去する工程と、を有することを特徴とする酸化物超電導線材の接続構造体の製造方法。
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