JP2014129839A - 多孔性金属摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩擦摩耗性と親油性の双方の特性を有する保護膜を備える摺動部材を提供すること。
【解決手段】焼結金属材料で形成された金属基材と該金属基材の上方に中間層を介して設けられたダイヤモンドライクカーボン層とを有し、該中間層は少なくとも該金属基材上の金属下地層を有してなる摺動部材であって、前記ダイヤモンドライクカーボン層は、金属基材側の単層の低硬度ダイヤモンドライクカーボン層とその反対側の単層の高硬度ダイヤモンドライクカーボン層とのみから構成されることを特徴とする、摺動部材。
【選択図】図2

Description

本発明は、耐摩耗性、親油性に優れた摺動部材に関し、詳細には、多孔性材料である焼結金属材料にて形成されるすべり軸受の摺動面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を施した摺動部材に関する。
従来より、モータの軸受として、粉末冶金技術を利用し製造された多孔性の焼結金属材料を軸受材料に使用し、該材料に存在する多数の気孔に潤滑油を含浸させ、自己給油状態で使用する(自己潤滑性)焼結含油軸受が使用されている。焼結含油軸受は低コストで生産できる点や騒音が少ない点が利点とされる。
軸受内に含浸させた油は、シャフトの回転に伴うポンプ作用及び発熱により、軸受内部から摺動面に滲み出し、潤滑油膜を形成し、潤滑性能を発揮することとなる。ここで軸にラジアル方向から負荷がかかる構造体であると、軸受と回転軸とが接触する頻度が増えるため、軸受に対して高い硬度が求められることとなる。
またこの他モータの軸受として、オイルを流体とした流体動圧軸受(FDB:Fluid Dynamic Bearing)が用いられている。流体動圧軸受は、ボールベアリング(玉軸受)と比較して長寿命であり、また低騒音であるため、ハードディスクドライブや廃熱ファンなどに採用されている。
流体軸受の摺動面には、動圧発生溝に加えて、表面に高潤滑性のコーティングが施される場合がある。そのコーティングは炭素を主体とするダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCとも称する)層が用いられていることが多い。DLC層は、一般に、耐摩擦摩耗性に優れ、高い硬度を有する。
ところで、高い硬度を有するDLC層は、高密度であるが故に膜応力が高く、基材との密着性が低いため、基材から剥離するという問題がある。そのため従来より、DLC層と基材との密着性を向上させるために、クロム等の金属からなる下地層を設けることが行われてきた。しかしながら、金属からなる下地層では、硬度が10GPa程度の低硬度なDLC層の剥離は防止できるものの、例えば30GPa程度の対摩擦摩耗性に優れる高硬度なDLC層の剥離を十分に防ぐことができない。
このため、基材と高硬度DLC層との密着性を高める技術として、金属の下地層上に膜厚方向において硬度が変化するDLCの硬度傾斜層を設ける提案(特許文献1)がなされ、また、金属下地層及び硬度が連続的又は段階的に変化するDLC層に加え、低硬度DLC層と高硬度DLC層を交互に積層した多層膜を有する摺動部材(特許文献2)が開示されている。
特開2004−10923号公報 特開2008−81630号公報
上述のように、含油軸受において高い硬度が求められる場合、表面硬度の向上のみならず、軸受内部(気孔)から潤滑油が滲み出し軸受表面に潤滑油膜を形成するという含油軸受特有の特徴は維持し、またこの特徴を活かすべく軸受表面の親油性についても検討する必要がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、耐摩擦摩耗性と親油性の双方の特性を有する保護膜を備える摺動部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、焼結金属材料にて形成される軸受の摺動面において、中間層(金属からなる下地層)を介して膜応力の低い低硬度DLC層とその上に高硬度DLC層を設けることにより、耐摩擦摩耗特性に優れる高硬度DLC層の密着性に優れた保護膜を形成することができ、また、焼結金属材料有のポーラス構造による自己潤滑性を妨げることなく好適に保持できる摺動部材となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、焼結金属材料で形成された金属基材と、該金属基材の上方に中間層を介して設けられたダイヤモンドライクカーボン層とを有し、該中間層は少なくとも該金属基材上の金属下地層を有してなる摺動部材であって、前記ダイヤモンドライクカーボン層は、金属基材側の単層の低硬度ダイヤモンドライクカーボン層とその反対側の単層の高硬度ダイヤモンドライクカーボン層とのみから構成されることを特徴とする、摺動部材に関する。
前記摺動部材において、前記中間層とダイヤモンドライクカーボン層(低硬度ダイヤモンドライクカーボン層及び高硬度ダイヤモンドライクカーボン層)との合計膜厚は0.2μm乃至2.0μmであることが好ましい。
また前記ダイヤモンドライクカーボン層(低硬度ダイヤモンドライクカーボン層及び高硬度ダイヤモンドライクカーボン層)は5原子%以下の水素含有率を有することが好ましく、また30原子%以下の金属含有率を有することが好ましい。
また前記ダイヤモンドライクカーボン層(低硬度ダイヤモンドライクカーボン層及び高硬度ダイヤモンドライクカーボン層)はアモルファス構造を有することが好ましい。
本発明によれば、金属下地層(中間層)と単層の低硬度ダイヤモンドライクカーボン層及び単層の高硬度ダイヤモンドライクカーボン層のみからなるダイヤモンドライクカーボン層を基材上に設ける構成とすることにより、金属基材との密着性に優れ、しかも硬度と摩耗性の双方の特性を同時に満足させたDLC膜が形成された摺動部材を提供することができる。このため本発明の摺動部材は、信頼性が向上した高寿命の部品として用いることができる。
また本発明の摺動部材は、多孔性の焼結金属材料で形成された金属基材を使用したとき、適切な膜厚の中間層とダイヤモンドライクカーボン層とを形成することによりポーラス構造を保持しており、またその最表面(摺動面)は親油性のダイヤモンドライクカーボン層で構成されている。このため本発明の摺動部材は、焼結金属特有のポーラス構造によって実現する自己潤滑性を妨げることなく好適に保持し、また親油性の最表面層においても潤滑油等の流体の移動を妨げず、且つ前述の高い硬度をも有する摺動部材とすることができる。
さらに本発明の摺動部材は、前述の通り中間層及びダイヤモンドライクカーボン層の形成後においても、すなわち中間層及びダイヤモンドライクカーボン層の自体もポーラス構造を保持してなる。このため、高硬度のダイヤモンドライクカーボン層特有の高い膜応力が緩和され、基材への密着力が向上した高硬度膜を保持する摺動部材とすることができる。
そして本発明の摺動部材は、ポーラス構造をその表面に有してなることにより、摺動面が他の部材と接触した際に発生し得る剥離物等を摺動面から除去する効果をも有してなる。
図1は、多孔性の焼結金属材料の表面の概念図を示す図である。 図2は、本発明の摺動部材の中間層及びダイヤモンドライクカーボン層の断面模式図である。 図3は、実施例の摺動部材の中間層及びダイヤモンドライクカーボン層のSEM写真である。 図4は、実施例において用いたボールオンディスク試験機の概略図である。 図5は、高硬度DLC層の膜厚変化に対する相対寿命の変化を示す図である。 図6は、高硬度DLC層の金属含有量変化に対する相対寿命の変化を示す図である。
前述した通り、含油軸受等に使用されてきた粉末成形焼結品などの金属部品は多孔性(ポーラス)構造を有しており、その表面に保護膜等を成膜した場合、膜の厚みを制御することにより、空隙(粒界間)を残した状態とすることができる(図1参照)。
本発明者らは、多孔性金属材料から構成される含油軸受の表面硬度の向上にあたり、親油性で潤滑油等との親和性が高いDLC膜を保護膜の形成において採用し、基材(金属材料)との密着性の向上を図ると共に、多孔性金属材料のポーラス構造による自己潤滑性を阻害しない構造を検討し、良好な耐摩擦摩耗特性と基板との密着性を両立させた保護膜を有する含油軸受に好適な摺動部材の構成を以下の通り考案した。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の摺動部材について模式図を用いて説明する。図2に示すように、摺動部材1は、金属基材2と、金属基材2の上方に設けられた中間層3と、該中間層3を介して設けられたダイヤモンドライクカーボン層4とを有する。なお、以降の説明において、金属基材上に設けられた中間層とダイヤモンドライクカーボン層とをまとめて“保護膜”と称する場合もある。
本発明においては、金属基材2として含油軸受装置に用いられる多孔性の焼結金属材料を使用する。このような材料としては、例えば銅系又は鉄系、或いはその双方を主成分とする焼結金属で形成され、銅を20〜95%使用して形成されていることが望ましい。
中間層3は少なくとも金属下地層を有して構成される。
金属下地層は、後述する低硬度DLC層41の基材への密着性(付着性)を向上させるために金属基材2に接して形成され、それには例えばCr、Ti、Ta、W、V、Nb、Mo等を用いることができ、これら金属を含む合金層としても良い。また、金属下地層は単層又は複数の層から形成されていてもよい。なかでも、汎用性や生産効率の観点から、特にCr層、さらに好ましくはCr100%層とすることが好ましい。
金属下地層の膜厚は、密着性、保護膜全体の生産効率、並びに保護膜の機械特性等の観点から、保護膜(中間層とDLC層)全体の厚さに対して5〜50%程度の厚さとすることができる。例えば保護膜(中間層とDLC層)全体の合計膜厚が2.0μmである場合には100nm〜1000nmの範囲とすることができる。
中間層3上のダイヤモンドライクカーボン(DLC)層4は、金属基材2側の単層の低硬度ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層41と、その反対側、すなわち該低硬度ダイヤモンドライクカーボン層41上に設けられた単層の高硬度ダイヤモンドライクカーボ
ン(DLC)層42のみから構成される。
単層の低硬度DLC層41は、高硬度DLC層42に比較して硬度の低いDLCから構成され、その硬度は層内で均一(層内で連続又は段階的な硬度変化がない)であり、ISO 14577に基づくナノインデンテーション法に従う測定にて、17GPa以下の表面硬さを有することが好ましく、7GPa〜15GPaの表面硬さであることがより好ましい。低硬度DLC層41の硬度を上述の範囲とすることにより、保護膜は基材との十分な密着性を得ることができる。
低硬度DLC層41は後述するスパッタ装置を用いた成膜プロセスにおいて、例えば基材2に付加するバイアス電圧をゼロ、すなわちバイアス無しでDLCを成膜することによって得ることができる。バイアス無しで成膜することにより、得られるDLCはナノインデンテーション法による硬さが例えば20GPa未満となるように調整でき、この層は、硬さが例えば28GPa以上である高硬度DLC層42(最上層)よりも、中間層(金属下地層)3に対する密着性に優れるので層の剥離がより効果的に防止される。
単層の高硬度DLC層42は、低硬度DLC層41に比較して硬度の高いDLCから構成され、その硬度は層内で均一(層内で連続又は段階的な硬度変化がない)であり、ISO 14577に基づくナノインデンテーション法に従う測定にて、28GPa以上の表面硬さを有することが好ましく、33GPa〜40GPaの表面硬さであることがより好ましい。高硬度DLC層42の硬度を上述の範囲とすることにより、保護膜は良好な耐摩擦摩耗特性を有すると同時に、基材との十分な密着性を保持することができる。
なお上記各DLC層の硬度は、詳細には、薄膜の硬度測定に適したナノインデンテーション法(計装化押し込み試験法)用いて測定した値を意味する。ナノインデンテーション法はISO 14577−1、2、3、4で規格化されており、膜厚がナノオーダーからミクロンオーダーの薄膜の硬度測定に適する。
また本明細書において、「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)」とは、炭素の同素体、又は炭化水素から成る非晶質(アモルファス)の硬質膜を意味する。
本発明の摺動部材は、図2に示すように、最上層に高硬度DLC層42を設けることで、摺動部材1が必要とする耐摩擦摩耗特性を十分に得ることができる共に、高硬度DLC層42を膜応力の低い単層の低硬度DLC層41上に直接形成することで、金属基材2及び中間層(金属下地層)3との十分な密着性も得ることができる。
このように、本発明においては、摺動部材の保護膜を設けるにあたり、金属基材2上に中間層(金属下地層)3と、単層の低硬度DLC層41及び単層の高硬度DLC層42のみからなるDLC層4とを設けるという構成を採用したことにより、金属基材2との十分な密着性と耐摩擦摩耗性の双方を実現させることができる。このため、中間層3とDLC層4を有する本発明の摺動部材1は、信頼性が向上した高寿命の部品として用いることができる。
本発明の摺動部材1において、中間層3とDLC層4(高硬度DLC層42と低硬度DLC層41)との合計膜厚は、生産効率、そして特に機械特性の観点から、0.2μm〜2.0μm、好ましくは0.5μm〜1.5μmであることが望ましい。
なお、高硬度DLC層42と低硬度DLC層41との合計膜厚に対する、高硬度DLC層42の膜厚の割合は、75%〜95%であることが好ましい。高硬度DLC層の膜厚42の割合を上述の範囲とすることで、更に良好な耐摩擦摩耗特性を有し、且つ金属基材2との十分な密着性を得る事ができる。なお、高硬度DLC層42と低硬度DLC層41の膜厚比を変えることで、密着特性を制御することが可能である。
また、DLC層4(高硬度DLC層42及び低硬度DLC層41)は、5原子%以下、
好ましくは5原子%程度の水素含有率を有することが望ましい。
これは、水素の含有を排除することにより、DLC層の硬度を高め、また後述するように導電特性を高めることはできるものの、親油性が低下してしまうため、基材表面の空隙における潤滑油等の浸透が悪くなったり、潤滑油等の流体の円滑な移動の妨げに繋がる虞があり、ひいては耐摩擦摩耗特性の低下に繋がる可能性がある。
さらにDLC層4(高硬度DLC層42及び低硬度DLC層41)は、Cr、Ti、Zr、W、Ni、Cu、Zn、V、Nb及びMo等の金属(添加物)を含んでいてもよい。DLC層中に金属を含有する場合、その割合としては30原子%以下であることが好ましく、特に20原子%以下、中でも7〜13原子%であることが好適である。
金属添加物は、一般に潤滑油に含まれる添加剤等との親和性が高いとされており、本発明の摺動部材において上述の数値範囲程度の金属添加物をDLC層に含有させることにより、潤滑油等の流体の移動を円滑にし、耐摩擦摩耗特性の向上の一助となることができる。
本発明の摺動部材の製造方法について説明する。
摺動部材1は金属基材2の上に中間層(金属下地層)3、そしてその上にDLC層4として低硬度DLC層41、高硬度DLC層42の順に成膜することによって製造することができる。
これら中間層3及びDLC層4の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、CVD法等の一般の成膜方法を用いることができる。中でもスパッタリング法は、成膜方法として一般的且つ汎用性の高い方法であり、膜の密着度の変更や膜の緻密化が可能であるため高硬度な膜を容易に成膜することができるといった観点からも好ましく、例えば本発明においてはマグネトロン・スパッタ装置等を用いて好適に成膜することができる。
DLC層は種々の方法により硬度を調整して成膜することで、低硬度DLC層41又は高硬度DLC層42として成膜することができる。例えばスパッタリング法にて成膜する場合、基材側に印加するバイアス電圧の強度や、DLC層中の水素含有量を調整することにより、DLC層の硬度を調整できる。一般に印加するバイアス電圧を高くすることでDLC層の硬度を上げることができ、またDLC層中の水素含有量を増加させることでDLC層の硬度を下げることができる。
また本発明において、中間層3及びDLC層4をスパッタリング法により成膜する場合、各層の原材料となるターゲット材料は、中間層(金属下地層)3用のターゲット(例えばCr材によるCrターゲット)と、DLC層4(高硬度DLC層42及び低硬度DLC層41)の炭素ターゲット(炭素材によるCターゲット)の最低2種類のターゲット材料で足りる。また放電用ガスも、各層、全て共通のAr等の希ガスの1種のみの使用で適用可能である。このようにスパッタリング法は、製造工程数を少なくでき且つ製造コストを低く抑えることができるという観点からも好適である。
なお、スパッタリング法による成膜時の標準的な条件は、放電用ガス(Arガス)圧力1〜5Pa程度、バイアス電圧0〜−200V、スパッタ出力0.4〜10kWである。
本発明の摺動部材は、DLC皮膜によって回転電気機械の始動時あるいは停止時における軸と軸受部の接触による摩耗が抑制され、かつ回転中はポーラス構造の摺動面から滲み出る潤滑油によって良好な油膜が得られるので、例えばハードディスクドライブのスピンドルモータに用いられる軸受装置(流体動圧軸受)や、ステッピングモータ、ファンモータ、DCモータ等に用いられる含油軸受など、あらゆる回転電気機械の軸受として好適に使用される。
以下、本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
[試料の作製]
基材として銅系焼結金属を用い、下地金属層としてCr層を膜厚0.2μmにてスパッタリング法により成膜した。Cr層の成膜は、ターゲットとして金属クロムターゲットを用い、スパッタリング装置の成膜チャンバ内における成膜時の圧力を2Pa、スパッタ出力(Cr)6kWとし、放電用ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを200cc/分で導入した。また基材に印加したバイアス電圧は−100Vであった。
次に、成膜したCr層上に、低硬度DLC層を膜厚0.3μmにて、スパッタリング法により成膜した。
低硬度DLC層の成膜は、ターゲットとしてカーボンターゲットを用い、スパッタリング装置の成膜チャンバ内における成膜時の圧力を2Pa、スパッタ出力(C)を6kWとし、放電用ガスとしてArガスを200cc/分で導入した。なお低硬度DLC層の成膜にあたっては基材にバイアス電圧を印加せずに成膜工程を行った。なお水素含有率、金属(Cr)含有量はそれぞれ5atm%、13atm%とした。
成膜した低硬度DLC層の硬度をナノインデンテーション方式の硬さ試験機((株)エリオニクス製、ENT−1100a)を用いて、上述のナノインデンテーション法により測定した。なお、硬度測定においては、測定可能な膜厚とするため同じ成膜条件で2.0μmの厚さに成膜した低硬度DLC層を用いて測定を行い、その値は14.3GPaであった。
次いで、低硬度DLC層上に、高硬度DLC層をスパッタリング法により成膜した。
高硬度DLC層の成膜は、ターゲットとしてカーボンターゲット及び金属クロムターゲットを用い、スパッタリング装置の成膜チャンバ内における成膜時の圧力を2Pa、放電用ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを200cc/分で導入した。
なお、以下に示す通り膜厚又は金属(Cr)含有量を変化させるよう、スパッタ出力(C、Cr)及びバイアス電圧を適宜を変化させて成膜を行い、膜厚や金属含有量の異なる種々の試料を作製した。
1)水素含有率を5atm%、金属(Cr)含有量を0atm%に固定し、膜厚を0〜10μmに変化させて成膜。
2)水素含有率を5atm%、膜厚1.5μmに固定し、金属(Cr)含有量を0〜100atm%に変化させて成膜。
なお成膜した高硬度DLC層の硬度をナノインデンテーション方式の硬さ試験機((株)エリオニクス製、ENT−1100a)を用いて、上述のナノインデンテーション法により測定した。高硬度DLC層の硬度は20〜35GPaであった。
なお図3に、得られた試料の中間層及びダイヤモンドライクカーボン層の断面写真(金属基材2上に形成されたクロムからなる金属下地層である中間層3、低硬度DLC層41及び高硬度DLC層42のみからなるDLC層4)の代表例を示す。尚図3には、低硬度DLC層41と高硬度DLC層42との境界を明確に示すために、写真に破線を記載している。
[耐摩擦摩耗性試験]
上述の如く得られた試料を、ボールオンディスク法による摩擦摩耗試験を利用した評価法により、摩擦摩耗性を評価した。摩擦摩耗試験にはボールオンディスク試験機を用いた。なお図4にボールオンディスク試験機5の概略図を示す。
上記手順に従って成膜した各試料を図4に示すディスク6(φ30mm)とし、このときDLC層側にFDB用低粘度オイルを含浸させ、これを試験機内に配置した。
各試料の保護膜(中間層+DLC層)上にボールホルダ7に取り付けられてなるボール8(ボール直径:φ6mm、SUS製)を設置し、ボール8を固定し、且つ上から錘9により荷重20N(=1.7GPa)をかけた状態で、回転半径2mm、ディスク6の回転数3,000rpmで回転させたときの摩擦力を測定し、これより摩擦係数を算出した(なお、図4中のディスク6上の摩耗痕10は、摩擦摩耗試験後にボール8により形成されるものである)。そして摩擦係数の値が保護膜(中間層+DLC層)無しの基板(焼結金属面)の値と同じとなった時点を各試料の寿命(時間)とした。
なお、高硬度DLC層の膜厚が1.5μmであり、金属(Cr)含有量が0atm%である試料の寿命を1.0とし、各試料の結果(寿命)を相対比較した。このとき、保護膜(中間層+DLC層)無しの基板(焼結金属面)の相対寿命は0.4であった。
得られた結果を表1及び表2、並びに図5及び図6に示す。
表1及び図5に示すように、高硬度DLC層の膜厚を1.5μmとして成膜した試料において、寿命(相対値)が最も高いとする結果が得られ、これは保護膜(中間層+DLC層)を形成しない場合の金属基材の寿命(0.4)のおよそ3倍の値となった。これは、高硬度DLC層の膜厚が薄すぎると耐摩擦摩耗性が劣り、一方、膜厚を厚く設定しすぎると、基材の多孔性焼結金属表面に存在する空隙が狭くなり、潤滑油の浸透・流出が悪く、結果として耐摩擦摩耗性が劣る結果となったものとみられる。
特に高硬度DLC層の膜厚を5.0μm以上(5.0μm、10.0μm)とした試料は、保護膜無し(焼結金属面)の試料に比べて、寿命(相対値)が極端に短くなる(≦0.02)という結果となった。これは、膜応力の大きな高硬度DLC層を厚く(例えば≧5.0μmにて)成膜したことにより、耐衝撃性の悪化が進むことによるDLC膜の摩耗ではなく、剥離破壊の発生による耐摩耗性の急激な低下が引き起こされたこと、そして前述した通り、膜厚の増加により軸受面に存在する空隙(気孔)が閉塞され、潤滑油の滲み出しが減少することによる油切れの影響から、急速に軸受面の消耗が進んだことなどが重なり、短寿命を引き起こしたと考えられる。
また表2及び図6に示すように、高硬度DLC層における金属(Cr)含有率を約13%としたときに寿命(相対値)のピークがみられた。
前述したとおり、金属(Cr)添加物は、潤滑油に含まれる添加剤などとの親和性が高く、潤滑油の浸透性(保持性)を向上させ潤滑油の移動を円滑にすることから耐摩擦摩耗性の向上につながるが、一定以上の金属の添加はかえって硬度の低下をもたらし得るため、適当な添加量の設定が必要であることを示す結果となった。
とりわけ高硬度DLC層における金属(Cr)含有率を100%とした試料において、保護膜無し(焼結金属面)の試料よりも寿命(相対値)が短いという結果は、軸受表面が滑り軸受用金属(例えば焼結金属)から100%金属スパッタ膜(例えばCr膜)となったことによる耐摩擦摩耗特性の劣化のためとみられる。
1 摺動部材
2 金属基材
3 中間層(金属下地層)
4 ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層
41 低硬度ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層
42 高硬度ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層
5 ボールオンディスク試験機
6 ディスク
7 ボールホルダ
8 ボール
9 錘
10 摩耗痕

Claims (5)

  1. 焼結金属材料で形成された金属基材と
    該金属基材の上方に中間層を介して設けられたダイヤモンドライクカーボン層とを有し、該中間層は少なくとも該金属基材上の金属下地層を有してなる摺動部材であって、
    前記ダイヤモンドライクカーボン層は、金属基材側の単層の低硬度ダイヤモンドライクカーボン層とその反対側の単層の高硬度ダイヤモンドライクカーボン層とのみから構成されることを特徴とする、摺動部材。
  2. 前記中間層とダイヤモンドライクカーボン層との合計膜厚が0.2μm乃至2.0μmである、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記ダイヤモンドライクカーボン層が、5原子%以下の水素含有率を有する、請求項1に記載の摺動部材。
  4. 前記ダイヤモンドライクカーボン層が、30原子%以下の金属含有率を有する、請求項1に記載の摺動部材。
  5. 前記ダイヤモンドライクカーボン層がアモルファス構造を有する、請求項1に記載の摺動部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2016098217A1 (ja) * 2014-12-17 2016-06-23 オーエスジー株式会社 非晶質炭素被膜および非晶質炭素被膜被覆工具
JP2018052784A (ja) * 2016-09-30 2018-04-05 株式会社長町サイエンスラボ 導電性dlc膜の製造方法
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