以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(1).ディーゼルエンジンの全体構造
まず、主として図1〜図5を参照しながら、コモンレール式のディーゼルエンジン70の全体構造について説明する。なお、以下の説明では、クランク軸線aと平行な両側部(クランク軸線aを挟んで両側の側部)を左右、フライホイールハウジング78設置側を前側、冷却ファン76設置側を後側と称して、これらを便宜的に、ディーゼルエンジン70における四方及び上下の位置関係の基準としている。
図1〜図3に示すように、ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと平行な一側部に吸気マニホールド73を、他側部に排気マニホールド71を備えている。実施形態では、シリンダヘッド72の左側面に吸気マニホールド73が配置されており、シリンダヘッド72の右側面に排気マニホールド71が配置されている。シリンダヘッド72は、クランク軸74とピストン(図示省略)が内蔵されたエンジンブロック75上に搭載されている。エンジンブロック75の前後両側面から、クランク軸74の前後先端側を突出させている。ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと交差する一側部には、冷却ファン76が設けられている。実施形態では、エンジンブロック75の後側面側に冷却ファン76が位置している。クランク軸74の後端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成されている。
図1〜図3に示す如く、ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと交差する他側部(実施形態ではエンジンブロック75の前側面側)に、フライホイールハウジング78が固着されている。フライホイールハウジング78内にフライホイール79が配置されている。フライホイール79はクランク軸74の前端側に軸支されていて、クランク軸74と一体的に回転するように構成されている。作業機械(例えば油圧ショベルやフォークリフト等)の作動部に、フライホイール79を介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成されている。
また、エンジンブロック75の下面にはオイルパン81が配置されている。エンジンブロック75の左右側面とフライホイールハウジング78の左右側面とには、機関脚取付部82がそれぞれ設けられている。各機関脚取付部82には、防振ゴムを有する機関脚体83がボルト締結されている。ディーゼルエンジン70は、各機関脚体83を介して、作業機械(例えば油圧ショベルやフォークリフト等)等のエンジン支持シャーシ84に防振支持される。
吸気マニホールド73の入口側は、後述するEGR装置91(排気ガス再循環装置)のコレクタ92を介してエアクリーナ(図示省略)に連結されている。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は、当該エアクリーナにて除塵・浄化されたのち、コレクタ92を介して吸気マニホールド73に送られ、そして、ディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。
EGR装置91は、ディーゼルエンジン70の再循環排気ガス(排気マニホールド71からのEGRガス)と新気(エアクリーナからの外部空気)とを混合させて吸気マニホールド73に供給する中継管路としてのコレクタ(EGR本体ケース)92と、エアクリーナにコレクタ92を連通させる吸気スロットル部材93と、排気マニホールド71にEGRクーラ94を介して接続する還流管路としての再循環排気ガス管95と、再循環排気ガス管95にコレクタ92を連通させるEGRバルブ部材96とを有している。
すなわち、吸気マニホールド73と新気導入用の吸気スロットル部材93とがコレクタ92を介して連通接続されている。コレクタ92には、再循環排気ガス管95の出口側につながるEGRバルブ部材96が連通接続されている。コレクタ92は、前後長手の略筒状に形成されていて、当該コレクタ92の給気取入れ側(長手方向の前部側)に吸気スロットル部材93がボルト締結されている。コレクタ92の給気排出側は吸気マニホールド73の入口側にボルト締結されている。なお、EGRバルブ部材96は、その内部にあるEGRバルブ97(図15参照)の開度を調節することにより、コレクタ92へのEGRガスの供給量を調節するものである。
コレクタ92内には新気が供給されると共に、排気マニホールド71からEGRバルブ部材96を介してコレクタ92内にEGRガス(排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部)が供給される。新気と排気マニホールド71からのEGRガスとがコレクタ92内で混合されたのち、コレクタ92内の混合ガスが吸気マニホールド73に供給される。すなわち、ディーゼルエンジン70から排気マニホールド71に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド73からディーゼルエンジン70に還流されることによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が下がり、ディーゼルエンジン70からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減されることになる。
以上の構成から明らかなように、吸気マニホールド73と新気導入用の吸気スロットル部材93とを連通させる中継管路としてのコレクタ92を備えており、排気マニホールド71から延びる還流管路の出口側がEGRバルブ部材96を介してコレクタ92に連通接続されているから、新気とEGRガスとが吸気マニホールド73に送り込まれる前に混合されることになる。このため、混合ガス中においてEGRガスを広く分散でき、吸気マニホールド73に送り込まれる前段階でガス混合状態のバラツキ(ムラ)が少なくなる。その結果、ディーゼルエンジン70の各気筒にムラの少ない混合ガスを分配でき、各気筒間のEGRガス量のバラツキを抑制できる。その結果、黒煙の発生を抑制して、ディーゼルエンジン70の燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を低減できる。
図1及び図3に示すように、シリンダヘッド72の右側方で排気マニホールド71の上方には、ターボ過給機100が配置されている。ターボ過給機100は、タービンホイール(図示省略)を内蔵したタービンケース101と、ブロアホイール(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース102とを有している。タービンケース101の排気ガス取入れ管105に、排気マニホールド71の出口側が接続されている。タービンケース101の排気ガス排出管103には、排気ガス浄化装置としてのディーゼルパティキュレートフィルタ1(以下、DPFという)を介してテールパイプ(図示省略)が接続される。ディーゼルエンジン70の各気筒から排気マニホールド71に排出された排気ガスは、ターボ過給機100及びDPF1等を経由して、テールパイプから外部に放出される。
一方、コンプレッサケース102の給気取入れ側に、給気管104を介してエアクリーナの給気排出側が接続される。コンプレッサケース102の給気排出側に、過給管108を介して吸気スロットル部材93の給気取入れ側が接続される。エアクリーナにて除塵された新気(外部空気)は、コンプレッサケース102から吸気スロットル部材93及びコレクタ92を経由して、吸気マニホールド73に送られ、そして、ディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。
排気ガス浄化装置としてのDPF1は、排気ガス中の粒子状物質(PM)等を捕集するためのものであり、図1〜図4に示すように、平面視でクランク軸74と交差する左右方向に長く延びた略円筒形状で、シリンダヘッド72の前側面に相対向するようにフライホイールハウジング78上に配置されている。DPF1の左右両側(長手方向一端側と長手方向他端側)には、排気ガス取入れ側と排気ガス排出側とが左右振り分けて設けられている。DPF1の排気ガス取入れ側は、タービンケース101の排気ガス排出管103に接続されている。DPF1の排気ガス排出側は、テールパイプ107の排気ガス取入れ側に接続されている。
DPF1は、耐熱金属材料製のDPFケーシング60に内蔵された略筒型の内側ケース4,20に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒2とハニカム構造のスートフィルタ3とを直列に並べて収容した構造になっている(図6参照)。図1〜図4に示すように、実施形態のDPF1は、支持体としての左右一対のブラケット脚61,62を介してフライホイールハウジング78に取り付けられている。この場合、左ブラケット脚61の一端側は、DPFケーシング60の外周側に設けられたフランジにボルト締結されている。右ブラケット脚62の一端側は、DPFケーシング60の外周側に溶接固定されている。左右両ブラケット脚61,62の他端側は、フライホイールハウジング78の上面に形成されたDPF取付部80にボルト締結されている。つまり、上記したDPF1は、左右両ブラケット脚61,62とタービンケース101の排気ガス排出管103とにより、高剛性部材であるフライホイールハウジング78の上部に安定的に連結支持されている。
図1〜図4に示すように、DPFケーシング60には、内部の詰り状態を検出する差圧センサ63の入口側感知体64と出口側感知体65とが設けられている。差圧センサ63は、DPF1内におけるスートフィルタ3を挟んだ上流側及び下流側間の圧力差を検出するためのものである。当該圧力差に基づいてスートフィルタ3の粒子状物質堆積量を換算され、DPF1内の詰り状態を把握できる。差圧センサ63にて検出された圧力差に基づいて例えば吸気スロットル部材93を作動させることによって、スートフィルタ3の再生制御を実行するように構成されている。実施形態では、シリンダヘッド72の前側面に固定されたセンサブラケット66に検出本体67が取り付けられている。DPFケーシング60側の両感知体64,65は、それぞれハーネス68,69を介して差圧センサ63の検出本体67に接続されている。
上記の構成において、ディーゼルエンジン70の排気ガスは、タービンケース101の排気ガス排出管103から、DPFケーシング60のうちディーゼル酸化触媒2より上流側の空間に流入し、ディーゼル酸化触媒2からスートフィルタ3の順に通過して浄化処理される。排気ガス中の粒子状物質は、この段階でスートフィルタ3における各セル間の多孔質な仕切り壁を通り抜けできずに捕集される。その後、ディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3を通過した排気ガスがテールパイプ107に放出される。
排気ガスがディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3を通過するに際して、排気ガス温度が再生可能温度(例えば約300℃)を超えていれば、ディーゼル酸化触媒2の作用にて、排気ガス中のNO(一酸化窒素)が不安定なNO2(二酸化窒素)に酸化する。そして、NO2がNOに戻る際に放出するO(酸素)にて、スートフィルタ3に堆積した粒子状物質が酸化除去されることにより、スートフィルタ3の粒子状物質捕集能力が回復する(スートフィルタ3が再生する)ことになる。
(2).コモンレールシステム及びディーゼルエンジンの燃料系統構造
次に、図2、図7及び図8を参照しながら、コモンレールシステム117とディーゼルエンジン70の燃料系統構造を説明する。なお、図8では説明の便宜上、吸気マニホールド73に取り付けられるコレクタ92、EGRバルブ部材96等のEGR装置91の図示を省略している。図2、図7及び図8に示すように、ディーゼルエンジン70に設けられた4気筒分の各インジェクタ115に、燃料ポンプ116とコモンレールシステム117とを介して、燃料タンク118が接続されている。各インジェクタ115は、電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ119を有している。コモンレールシステム117は、円筒状のコモンレール120(蓄圧室)を有している。
図2、図7及び図8に示すように、燃料ポンプ116の吸入側には、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料タンク118が接続される。燃料タンク118内の燃料が、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料ポンプ116に吸い込まれる。一方、燃料ポンプ116の吐出側には、高圧管123を介してコモンレール120が接続される。円筒状のコモンレール120の長手中途部に高圧管コネクタ124が設けられている。当該高圧管コネクタ124に、高圧管123の端部が高圧管コネクタナット125の螺着にて連結されている。また、コモンレール120には、4本の燃料噴射管126を介して4気筒分の各インジェクタ115がそれぞれ接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向に4気筒分の燃料噴射管コネクタ127が設けられている。当該燃料噴射管コネクタ127に、燃料噴射管126の端部が燃料噴射管コネクタナット128の螺着にて連結されている。
上記の構成により、燃料タンク118の燃料が燃料ポンプ116によってコモンレール120に圧送され、高圧の燃料がコモンレール120に蓄えられる。各燃料噴射バルブ119がそれぞれ開閉制御されることによって、コモンレール120内の高圧の燃料が各インジェクタ115からディーゼルエンジン70の各気筒に噴射される。すなわち、各燃料噴射バルブ119を電子制御することによって、各インジェクタ115から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。このため、ディーゼルエンジン70から排出される窒素酸化物(NOx)を低減できると共に、ディーゼルエンジン70の騒音振動を低減できる。
なお、図7に示すように、燃料タンク118には、ポンプ燃料戻り管129を介して燃料ポンプ116が接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向の端部に、コモンレール120内の燃料の圧力を制限する圧力調整バルブ付きの戻り管コネクタ130を介して、コモンレール燃料戻り管131が接続されている。燃料ポンプ116の余剰燃料とコモンレール120の余剰燃料とは、ポンプ燃料戻り管129及びコモンレール燃料戻り管131を介して、燃料タンク118に回収されることになる。
(3).ディーゼルエンジンの吸気系構造の詳細
次に、主として図8〜図11を参照しながら、ディーゼルエンジン70の吸気系構造の詳細を説明する。ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと平行な一側部(実施形態ではシリンダヘッド72の左側面)には、ディーゼルエンジン70の各気筒に向かう吸気ポート(図示省略)を開口させていると共に、これら各吸気ポートに新気及びEGRガスの混合ガスを分配するための吸気マニホールド73が取り付けられている(図8〜図10参照)。
吸気マニホールド73は横方向内向きに開口した前後長手の箱型に形成されている。実施形態では、横方向内向きのヘッド側開口部141の周囲に一体形成されたヘッド側フランジ142を複数本のボルト143にてシリンダヘッド72の左側面に締結することにより、吸気マニホールド73は、前記吸気ポート群に被さって連通した状態でシリンダヘッド72の左側面にフランジ接合されている。なお、図示は省略するが、ヘッド側フランジ142とシリンダヘッド72の左側面との間には、ヘッド側開口部141の周囲を囲う軟質材製のシール部材が介挿されている。吸気マニホールド73の横外側面(左側面)のうち冷却ファン76寄りの後部側には、入口側である給気取入れ側開口部144が形成されている。給気取入れ側開口部144の周囲には吸気側フランジ145が一体形成されている。
図8及び図9に示すように、吸気マニホールド73の下面側には前後一対の締結台部133が一体形成されている。また、コモンレール120には、吸気マニホールド73の締結台部133に対応する上向き突出状の締結ボス部134が一体形成されている。横方向外側(左側)からのレール取付ボルト135にて締結台部133に締結ボス部134を締結することにより、コモンレール120は、吸気マニホールド73に沿って延びる姿勢で当該吸気マニホールド73に着脱可能に吊り下げ固定されている。実施形態では、吸気マニホールド73の左斜め下方の角隅部にコモンレール120を近接させている。また、コモンレール120は、これに設けられた高圧管コネクタ124及び燃料噴射管コネクタ127が横方向外向き(左外向き)になるように長手軸線回りに傾倒している(寝かされている)。
一方、EGR装置91を構成する中継管路としてのコレクタ92は、吸気マニホールド73の横方向外側(実施形態では左側)に位置している。前述の通り、コレクタ92は前後長手の略筒状に形成されていて、吸気マニホールド73の横外側面(左側面)に、吸気マニホールド73の長手方向(前後方向)に沿って延びるように取り付けられている。従って、吸気マニホールド73とコレクタ92とは横並び状の配置関係に設定されている。
コレクタ92の横内側面(右側面)のうち冷却ファン76寄りの後部側には、給気排出側開口部146が形成されている。給気排出側開口部146の周囲にはコレクタ側フランジ147が一体形成されている。吸気マニホールド73の吸気側フランジ145にコレクタ側フランジ147を重ね合わせて複数本のボルト148にて締結することにより、吸気マニホールド73とコレクタ92とは、給気取入れ側開口部144と給気排出側開口部146とを連通させた状態でフランジ接合されている。そして、前述の通り、吸気スロットル部材93は、コレクタ92の給気取入れ側である長手方向の前部側にボルト締結されている。
従って、図11に示すように、吸気マニホールド73及びコレクタ92の内部は、吸気スロットル部材93から両開口部144,146の連通部分を経て各吸気ポートに至るまでの間をUターン状に折り返した吸気通路になっている。また、吸気マニホールド73とコレクタ92との連通部分(両開口部144,146の連通部分でもある)は、冷却ファン76寄りの後部側に位置している。なお、図示は省略するが、吸気側フランジ145とコレクタ側フランジ147との間には、給気取入れ側開口部144及び給気排出側開口部146の周囲を囲う軟質材製のシール部材が介挿されている。
図10及び図11に示すように、コレクタ92における連通部分寄りの部位には、平面視で吸気マニホールド73に近付くに連れてクランク軸線aと交差する方向(実施形態では左右方向)の長さが短くなる傾斜部150が形成されている。換言すると、コレクタ92における連通部分寄りの部位は、平面視で角を斜めに切り落としたような形状の傾斜部150になっている。図11に示すように、傾斜部150の傾斜内面151は、コレクタ92の給気取入れ側の通路に被さる状態になっていて、吸気スロットル部材93から流入する新気のうち一方の内側面(左内側面)に沿って流れるものを、傾斜内面151にて中心(真ん中寄り)の方向に偏流させるように構成されている。コレクタ92の上面のうち傾斜部150の上流側には、上向きに開口する還流開口部152が形成されている。還流開口部152の周囲にはバルブ用フランジ153が一体形成されている。バルブ用フランジ153上にEGRバルブ部材96のEGRガス排出側がボルト締結されている。
上記の構成において、吸気スロットル部材93からコレクタ92内に流入した新気は冷却ファン76(後方側)に向けて流れる。前記新気のうち一方の内側面(左内側面)に沿って流れるものは、傾斜部150の傾斜内面151に衝突して、還流開口部152の下方付近で中心の方向に偏流する。このため、還流開口部152の下方付近では、新気の流れが図11に示す反時計回りの渦を形成するかのように乱れることになる。このように乱れた新気の流れに対して、再循環排気ガス管95からのEGRガスは、EGRバルブ部材96を介して上方から流入するから、EGRガスは、コレクタ92内への流入と同時に、内部を流れる新気にスムーズに混合される。従って、コレクタ92内において、新気とEGRガスとを吸気マニホールド73に送り込む前に撹拌しながら効率よく混合でき(混合ガス中においてEGRガスをスムーズに分散でき)、コレクタ92内でのガス混合状態のバラツキ(ムラ)をより確実に抑制できる。
還流開口部152の下方付近で混合された混合ガスは、傾斜部150の傾斜内面151に沿って給気排出側開口部146(連通部分)に案内され、給気取入れ側開口部144からフライホイールハウジング78側(前方側)に方向転換して、吸気マニホールド73内を流れ、ディーゼルエンジン70の各気筒に分配される。このように吸気マニホールド73内部の混合ガスの流れ方向は、給気取入れ側開口部144からフライホイールハウジング78側に向かう一方方向になるから、ディーゼルエンジン70の各気筒にムラの少ない混合ガスを分配して、各気筒間のEGRガス量がばらつくのを格段に低減できる。その結果、黒煙の発生が抑制され、ディーゼルエンジン70の燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を低減できる。すなわち、特定の気筒で失火を招来することなく、EGRガスの還流による排気ガスの清浄化(クリーン化)を達成できるのである。
上記の記載並びに図1、図2、図9及び図10から明らかなように、クランク軸線aと平行な一側部に吸気マニホールド73を、他側部に排気マニホールド71を備えていると共に、前記排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールド73に還流させるEGR装置91を備えているエンジン70であって、前記吸気マニホールド73と新気導入用の吸気スロットル部材93とを連通させる中継管路92を備えており、前記排気マニホールド71から延びる還流管路95の出口側が前記中継管路92に連通接続されており、前記中継管路92は、前記吸気マニホールド73の横外側部に、前記吸気マニホールド73に沿って延びるように取り付けられているから、新気とEGRガスとを前記吸気マニホールド73に送り込む前に混合して、ガス混合状態のバラツキ(ムラ)を少なくできる。その上、前記中継管路92を前記吸気マニホールド73の横外側方に位置させて、前記エンジン70の全高を低く抑制でき、前記エンジン70のコンパクト化に寄与するという効果を奏する。
また、前記中継管路92は、前記吸気マニホールド73の横外側部に、前記吸気マニホールド73に沿って延びるように取り付けられているから、前記中継管路92の長さを前記吸気マニホールド73の長手方向に沿って長くできるので、新気とEGRガスとの混合空間が広がり、新気とEGRガスとの混合促進に寄与する(混合ガス中においてEGRガスをより効率よく拡散させることが可能になる)という効果を奏する。
上記の記載並びに図1、図2、図9及び図10から明らかなように、前記クランク軸線aと交差する一側部に冷却ファン76を備えており、前記吸気マニホールド73と前記中継管路92との連通部分144,146が前記冷却ファン76寄りに形成されているから、吸気マニホールド73内部の混合ガスの流れ方向が一方方向になる。このため、前記エンジン70の各気筒にムラの少ない混合ガスを分配でき、前記各気筒間のEGRガス量がばらつくのを格段に低減できる。また、前記吸気マニホールド73と前記中継管路92との連通部分144,146に冷却ファン76からの冷却風が当たるので、ムラの少なくなった混合ガスの冷却に効果的である。その結果、黒煙の発生が抑制され、前記エンジン70の燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を確実に低減できる。すなわち、特定の気筒で失火を招来することなく、EGRガスの還流による排気ガスの清浄化(クリーン化)を達成できるという効果を奏する。
上記の記載並びに図9〜図11から明らかなように、前記中継管路92における前記連通部分寄りの部位には、平面視で前記吸気マニホールド73に近付くに連れて前記クランク軸線aと交差する方向の長さが短くなる傾斜部150が形成されており、前記中継管路92のうち前記傾斜部150の上流側に前記還流管路95の出口側が連通接続されているから、前記中継管路92に流入した新気のうち一方の内側面(左内側面)に沿って流れるものは、前記傾斜部150の内面側に衝突して、前記中継管路92における前記還流管路95の出口側付近で中心の方向に偏流する。このため、前記中継管路92における前記還流管路95の出口側付近では、新気の流れが渦を形成するかのように乱れる。このように乱れた新気の流れに対して、前記還流管路95からのEGRガスが前記中継管路92内に流入するから、EGRガスは、前記中継管路92内への流入と同時に、内部を流れる新気にスムーズに混合される。従って、前記中継管路92内において、新気とEGRガスとを前記吸気マニホールド73に送り込む前に撹拌しながら効率よく混合でき(混合ガス中においてEGRガスをスムーズに分散でき)、前記中継管路92内でのガス混合状態のバラツキ(ムラ)をより確実に抑制できるという効果を奏する。
(4).再循環排気ガス管とEGRバルブ部材との接続構造
次に、主として図12〜図15を参照しながら、再循環排気ガス管95とEGRバルブ部材96との接続構造について説明する。図1、図2、図12及び図13に示すように、吸気マニホールド73の上方には、吸気マニホールド73へのEGRガスの供給量を調節するためのEGRバルブ部材96が配置されている。実施形態では、吸気マニホールド73の横方向外側(実施形態では左側)に位置するコレクタ92上に、EGRバルブ部材96が吸気マニホールド73の長手方向(クランク軸線aと平行な前後方向)に沿って延びた姿勢で配置されている。コレクタ92のバルブ用フランジ153に、EGRバルブ部材96における下向き開口状のEGRガス排出側がボルト締結されている。
一方、シリンダヘッド72の上面のうち吸気マニホールド73寄りの部位からは、4気筒分のインジェクタ115の上部側が、クランク軸線aと平行な前後方向に並んだ状態で上向きに突出している。シリンダヘッド72の上面のうち排気マニホールド71寄りの部位にはヘッドカバー160が取り付けられている。従って、各インジェクタ115の上部側は、ヘッドカバー160にて覆われずにシリンダヘッド72上に露出している。また、EGRバルブ部材96とヘッドカバー160とは、例えば冷却ファン76側から見た側面視で、シリンダヘッド72及び吸気マニホールド73の上面に比して一段高い状態になっている。従って、ディーゼルエンジン70の上部(EGRバルブ部材96とヘッドカバー160との間)は上向き凹状に凹んでいて、当該凹み空間(EGRバルブ部材96とヘッドカバー160との間において前後に延びる凹み空間)が、冷却ファン76からフライホイールハウジング78側へ向かう冷却風が通過する通風路161になっている。
図12及び図14に示すように、排気マニホールド71から延びる還流管路としての再循環排気ガス管95の出口側を、平面視で通風路161寄りに位置させるべく、EGRバルブ部材96のEGRガス取入れ側に対してオフセットさせている。そして、再循環排気ガス管95の出口側とEGRバルブ部材96のEGRガス取入れ側とが中間継手162を介して連結されている。なお、図15に示すように、EGRバルブ部材96のEGRガス取入れ側の開口部には、当該開口部を開閉するためのEGRバルブ97が設けられている。
図12、図14及び図15に示すように、中間継手162は平面視逆S字の筒状に形成されている。中間継手162におけるガス管側開口部163の直径Dgは、バルブ側開口部164の直径Dbより小さく設定されている。ガス管側開口部163の中心線Cgはバルブ側開口部164の中心線Cbに対して適宜寸法だけ上方にオフセットしている。中間継手162におけるガス管側開口部163とバルブ側開口部164との間の中間連通部165には、両開口部163,164の直径Dg,Db及びオフセット位置の関係で、ガス管側開口部163からバルブ側開口部164に向けて段状に下がる段差166が形成されている。中間継手162の中間連通部165のうち段差166と対峙する内部には、当該段差166の上方に被さるように内向き突出する隆起部167が形成されている。中間継手162のバルブ側開口部164付近では、内向き突出状の隆起部167の存在によって、ガス管側開口部163から段差166を介して流れ降りてくるEGRガスを、バルブ側開口部164の中心線Cb回りに旋回させて、渦流を形成するように構成されている。
上記の構成において、排気マニホールド71から再循環排気ガス管95を介して中間継手162のガス管側開口部163内に流入したEGRガスは、中間連通部165のうち段差166より上流側の湾曲内面168に衝突して、段差166側に流れ降りていく。このとき、再循環排気ガス管95の出口側が平面視で通風路161寄りにオフセットして位置している関係上、中間継手162の湾曲内面168周辺(外周部)は、EGRバルブ部材96よりも通風路161寄りに突き出ていて、冷却ファン76からの冷却風が当たっている。このため、冷却風による中間継手162の温度上昇を抑制し、ひいてはその内部のEGRガス温度を低下できる。その結果、混合ガスの冷却に寄与して、混合ガスによるNOx量低減効果を適正な状態に維持し易くなるという効果を奏する。
ガス管側開口部163から段差166を介して流れ降りてくるEGRガスは、内向き突出状の隆起部167の存在にて、バルブ側開口部164付近でその中心線Cb回りに旋回し渦流を形成しながら、EGRバルブ部材96のEGRガス取入れ側に送り込まれる。そうすると、渦流状のEGRガスは、EGRバルブ97の開放時に、EGRバルブ97に遮られることなく、EGRバルブ97とEGRガス取入れ側の開口部との間の隙間にスムーズに流入することになる。従って、EGRバルブ部材96を経由したEGRガスと新気との混合の円滑化を図れるという効果を奏する。かかる構成は、実施形態のように、ターボ過給機100を用いて新気を圧縮して吸気マニホールド73に供給する場合に特に有益である。吸気マニホールド73やコレクタ92内の圧縮空気の圧力は、EGRバルブ部材96内にEGRガスを流入し難くする方向に寄与するが、EGRガスを渦流にすることによって、流入し難さを打ち消す方向に貢献できるからである。
なお、実施形態では、中間継手162におけるガス管側開口部163の直径Dgがバルブ側開口部164の直径Dbより小さく設定されているから、ガス管側開口部163からバルブ側開口部164に至る経路の断面積を中間連通部165において拡大できる。従って、ガス管側開口部163からバルブ側開口部164に至るEGRガスの流れ抵抗の増大を回避できるという利点もある。
さて、図2、図9及び図12に示すように、中間継手162のうち隆起部167より上流側(実施形態ではガス管側開口部163付近の外面側)には、中間継手162に流入したEGRガスの温度を検出するEGRガス温度センサ171が取り付けられている。また、コレクタ92のうち吸気スロットル部材93寄りの部位に、新気の温度を検出する新気温度センサ172が取り付けられている。コレクタ92の傾斜部150には、混合ガスの温度を検出するための混合ガス温度センサ173が取り付けられている。温度センサ171〜173群は、混合ガスのEGR率を求めるのに用いられるものである。ここで、EGR率とは、EGRガス量と新気量との和で、EGRガス量を割った値(=EGRガス量/(EGRガス量+新気量))のことを言う。
この場合、各ガスの流量や流速を検出するための手段(センサ)がなくても、新気温度、EGRガス温度及び混合ガス温度を用いて、簡単に精度よくEGR率を算出できる。また、これらの算出結果に基づいてEGRバルブ部材96をフィードバック制御する構成を採用することによって、各ガスの流量や流速を検出してEGR率を求める複雑な制御システムを構築しなくても、コレクタ92に適正量のEGRガスを供給できる。
更に、EGRガス温度センサ171が中間継手162のうち隆起部167より上流側に取り付けられているので、EGRバルブ部材96に流入する前の比較的流速が速い箇所に、EGRガス温度センサ171は位置することになる。このため、EGRガスによるEGRガス温度センサ171の汚れや性能劣化を防止できるという効果を奏する。その上、新気が混ざり得ない箇所でEGRガスの温度測定をすることになるから、正確なEGRガス温度を測定できるというメリットもある。
上記の記載並びに図12〜図15から明らかなように、シリンダヘッド72のうちクランク軸線aと平行な一側部に吸気マニホールド73を、他側部に排気マニホールド71を備えていると共に、前記排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールド73に還流させるEGR装置91を備えているエンジン70であって、前記吸気マニホールド73の上方に配置されたEGRバルブ部材96と、前記シリンダヘッド72上のヘッドカバー160との間は、冷却ファン76からの冷却風が通過する通風路161になっており、前記排気マニホールド71から延びる還流管路95の出口側を、平面視で前記通風路161寄りに位置するように前記EGRバルブ部材96に対してオフセットさせ、前記還流管路95の出口側と前記EGRバルブ部材96のEGRガス取入れ側とが中間継手162を介して連結されているから、前記中間継手162のうち前記通風路161寄りの部位には、前記冷却ファン76からの冷却風が当たることになる。このため、冷却風による前記中間継手162の温度上昇を抑制し、ひいてはその内部のEGRガス温度を低下できる。その結果、混合ガスの冷却に寄与して、混合ガスによるNOx量低減効果を適正な状態に維持し易くなるという効果を奏する。
上記の記載並びに図14及び図15から明らかなように、前記中間継手162のうちEGRガス排出側の内部には、EGRガスを前記EGRガス排出側の中心線Cb回りに旋回させるための隆起部167が形成されているから、EGRガス取入れ側163から流れてくるEGRガスは、内向き突出状の前記隆起部167の存在にて、前記EGRガス排出側164付近でその中心線Cb回りに旋回し渦流を形成しながら、前記EGRバルブ部材96のEGRガス取入れ側に送り込まれる。そうすると、渦流状のEGRガスは、EGRバルブ97の開放時に、前記EGRバルブ97に遮られることなく、前記EGRバルブ部材96のEGRガス取入れ側の開口部と前記EGRバルブ97との間の隙間にスムーズに流入することになる。従って、前記EGRバルブ部材96を経由したEGRガスと新気との混合の円滑化を図れるという効果を奏する。
上記の記載並びに図12、図14及び図15から明らかなように、前記中間継手162のうち前記隆起部167より上流側に、EGRガスの温度を検出するためのEGRガス温度センサ171が取り付けられているから、前記EGRバルブ部材96に流入する前の比較的流速が速い箇所に、前記EGRガス温度センサ171は位置することになる。このため、EGRガスによる前記EGRガス温度センサ171の汚れや性能劣化を防止できるという効果を奏する。その上、新気が混ざり得ない箇所でEGRガスの温度測定をすることになるから、正確なEGRガス温度を測定できるというメリットもある。
(5).コモンレールシステムの配置構造の詳細
次に、図8、図9、図13及び図16〜図19を参照しながら、コモンレールシステム117の配置構造の詳細について説明する。図8、図9、図13及び図16〜図19に示すように、エンジンブロック75における吸気マニホールド73側の左側面に、コモンレール120に高圧燃料を供給するための燃料ポンプ116が、吸気マニホールド73の下方で且つ冷却ファン76側に寄せた状態で配置されている。燃料ポンプ116は、燃料タンク118内の燃料を吸い込むためのフィードポンプ177と、フィードポンプ177による燃料吸込み量を調整するための調量弁178と、調量弁178を経由した燃料を加圧してコモンレール120に供給するためのプランジャ179とを備えている。クランク軸74の回転駆動によって、フィードポンプ177が駆動して燃料タンク118内の燃料が燃料フィルタ121を介して吸い込まれる。また、クランク軸74の回転駆動は、プランジャ179を往復駆動させ、調量弁178を経由した燃料を加圧してからコモンレール120に圧送する。
図16〜図19に示すように、燃料ポンプ116におけるフライホイールハウジング78寄りの前側面に、フィードポンプ177が配置されている。燃料ポンプ116の上部側からは、調量弁178の上部とプランジャ179の上部とが上向きに突出している。実施形態では、クランク軸線a方向から見て、横方向内側(右側、エンジンブロック75側)にプランジャ179が位置し、横方向外側(左側)に調量弁178が位置している。また、クランク軸線a方向から見て、調量弁178及びプランジャ179の上部は、燃料ポンプ116の上部側においてV字状に並んで配置されている。従って、調量弁178の上部とプランジャ179の上部との間には、V字状のデッドスペース180が存在することになる。
図8、図9及び図16〜図19に示す如く、コモンレール120は、吸気マニホールド73の左外寄りの斜め下方に位置するように、吸気マニホールド73に直接取り付けられている。実施形態では、吸気マニホールド73の下面側に、前後一対の締結台部133がヘッド側フランジ142とは別に一体形成されている。これに対して、コモンレール120には、各締結台部133に対応する上向き突出状の締結ボス部134が一体形成されている。横方向外側(左側)からのレール取付ボルト135にて締結台部133に締結ボス部134を締結することにより、コモンレール120は、吸気マニホールド73に沿って延びる姿勢で当該吸気マニホールド73に着脱可能に吊り下げ固定されている。この場合、吸気マニホールド73の左斜め下方の角隅部にコモンレール120が近接している。従って、コモンレール120は、エンジンブロック75の一側面(左側面)と適宜間隔ΔLを開けて対峙している。換言すると、コモンレール120は、エンジンブロック75の一側面(左側面)から適宜間隔ΔLだけ、横方向外側に離して配置されている。
また、図8、図9及び図16〜図19に示すように、コモンレール120は、これに設けられた高圧管コネクタ124及び燃料噴射管コネクタ127が横方向外向き(左外向き)になるように長手軸線回りに傾倒している(寝かされている)。高圧管コネクタ124と4気筒分の燃料噴射管コネクタ127とは、長手方向(前後方向)に同じピッチ間隔Pで並べて設けられている。実施形態では、コモンレール120の長手中央部に高圧管コネクタ124が配置されている。そして、高圧管コネクタ124を挟んだ両側に、燃料噴射管コネクタ127が2つずつ配置されている。一方の締結ボス部134は、コモンレール120における最前端(戻り管コネクタ130側の端部)の燃料噴射管コネクタ127の箇所から上向きに突出している。他方の締結ボス部134は、最後端の燃料噴射管コネクタ127の箇所から上向きに突出している。
前述の通り、コモンレール120は、吸気マニホールド73に沿って延びる姿勢で当該吸気マニホールド73に着脱可能に吊り下げ固定されている。その上で、クランク軸線a方向から見た場合は、燃料ポンプ116上の調量弁178とプランジャ179との間にコモンレール120の長手方向の一端部(後端部)が位置するように、燃料ポンプ116とコモンレール120との配置関係が設定されている(図13及び図17参照)。すなわち、クランク軸線a方向から見た場合は、調量弁178の上部とプランジャ179の上部との間のデッドスペース180に、コモンレール120の長手方向の一端部(後端部)を位置させている(デッドスペース180にコモンレール120の後端部を臨ませている)。
ところで、EGR装置91を構成するコレクタ92は、前述した通り、吸気マニホールド73の横外側面(左側面)に、吸気マニホールド73の長手方向(前後方向)に沿って延びるように取り付けられている(図8〜図10参照)。一方、コモンレール120は、吸気マニホールド73の左外寄りの斜め下方に位置していて、各燃料噴射管コネクタ127を横方向外側(左外側)に向けて突出させている。横方向外向きの各燃料噴射管コネクタ127に、対応する燃料噴射管126の燃料入口側が燃料噴射管コネクタナット128の螺着にて連結されている。各燃料噴射管126の燃料出口側は、対応するインジェクタ115に接続されている。そして、各燃料噴射管126は、コレクタ92又は吸気マニホールド73の外形に沿わせて湾曲させている。
ここで、図16の説明では、ディーゼルエンジン70のフライホイールハウジング78側(前側)に位置した燃料噴射管126から後方への並び順に、第1燃料噴射管、第2燃料噴射管・・・と称し、それぞれの符号に、並び順に対応したアルファベットを付している(例えば第1燃料噴射管の符号は126a、第2燃料噴射管の符号は126b等)。
図16に示すように、第1及び第2燃料噴射管126a,126bは、吸気マニホールド73の外形に沿わせて湾曲させている。この場合、吸気マニホールド73と吸気スロットル部材93との間の隙間に、第1及び第2燃料噴射管126a,126bの中途部を通している。第1及び第2燃料噴射管126a,126bのうち吸気マニホールド73上に位置する部分は、金属製のクランプ181を介して、まとめて吸気マニホールド73の上面にボルト締結されている。また、第3及び第4燃料噴射管126c,126dは、コレクタ92(傾斜部150付近)の外形に沿わせて湾曲させている。第3及び第4燃料噴射管126c,126dのうち吸気マニホールド73上に位置する部分も、金属製のクランプ181を介して、まとめて吸気マニホールド73の上面にボルト締結されている。これら全ての燃料噴射管126は、コレクタ92又は吸気マニホールド73の外形に沿わせて湾曲させることによって、等長化している。
上記の記載並びに図16〜図19から明らかなように、エンジンブロック75の一側方に、吸気マニホールド73に近接させてコモンレール120を配置しているエンジン70であって、前記コモンレール120は、前記吸気マニホールド73の外側斜め下方に位置するように前記吸気マニホールド73に直接取り付けられていて、前記エンジンブロック75の一側面と適宜間隔を開けて対峙させているから、剛性品である前記吸気マニホールド73にて前記コモンレール120を強固に支持できると共に、前記コモンレール120を前記エンジンブロック75の一側面から離しているので、前記エンジン70の燃焼熱による影響が前記コモンレール120に及ぶのを抑制でき、過熱による前記コモンレール120の損傷を未然に防止できるという効果を奏する。
上記の記載並びに図16〜図19から明らかなように、前記コモンレール120は、前記吸気マニホールド73の長手方向に沿って延び且つ前記コモンレール73に設けられた燃料噴射管コネクタ126を横方向外側に向けた姿勢で、横方向外側からのボルト135によって前記吸気マニホールド73に吊り下げ固定されているから、前記吸気マニホールド73に対する前記コモンレール120の取付け・取外し作業(ボルト135締結・締結解除作業)を簡単に実行できる。また、前記燃料噴射管コネクタ127に燃料噴射管126を接続するナット螺着作業等も簡単に実行できる。すなわち、前記コモンレール120やその配管の取付け・取外し作業性を向上できるという効果を奏する。
上記の記載並びに図16〜図19に示すように、前記吸気マニホールド73の下方に、前記コモンレール120に高圧燃料を供給する燃料ポンプ116が配置されており、クランク軸線aの方向から見て、前記燃料ポンプ116の上部から上向き突出する調量弁178とプランジャ179との間に前記コモンレール120の一端部が位置するように、前記燃料ポンプ116と前記コモンレール120との配置関係が設定されているから、前記調量弁178の上部と前記プランジャ179の上部との間に形成されるデッドスペース180を利用して、前記燃料ポンプ116と前記コモンレール120とを極力近接させて配置することが可能になる。このため、前記燃料ポンプ116、前記コモンレール120及び前記吸気マニホールド73の配置関係(コモンレールシステムの配置関係)をコンパクト化でき、搭載対象エンジンの制約を少なくできるという効果を奏する。例えば小型エンジンへの前記コモンレール120の搭載も可能になる。
上記の記載並びに図16〜図19から明らかなように、排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールド73に還流させるEGR装置91と、吸気量を調節する吸気スロットル部材93と前記吸気マニホールド73とを連通させる中継管路92を備えており、前記中継管路92は、前記吸気マニホールド73の横外側部に、前記吸気マニホールド73に沿って延びるように取り付けられており、前記コモンレール120と各インジェクタ115とをつなぐ燃料噴射管126を、前記中継管路92又は前記吸気マニホールド73の外形に沿わせて湾曲させているから、前記各燃料噴射管126の湾曲角度を前記中継管路92又は前記吸気マニホールド73の外形に沿わせることで大きく形成できる。このため、前記各インジェクタ115に供給される高圧燃料の配管抵抗を低減でき、前記エンジン70性能を向上できるという効果を奏する。
(6).気筒数の異なるエンジン間でのコモンレールシステムの配置態様
次に、図16、図20〜図22を参照しながら、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間でのコモンレールシステム117の配置態様について説明する。図16に示すディーゼルエンジン70は4気筒型のものであるのに対して、図20に示すディーゼルエンジン70′は3気筒型のものである。これらのディーゼルエンジン70,70′において目立つ相違点は、エンジンブロック75,75′及びシリンダヘッド72,72′のクランク軸線a方向の前後長さに関して、3気筒型のディーゼルエンジン70′のほうが1気筒少ない分だけ短くなっている点である。これに伴い、3気筒型のディーゼルエンジン70′の吸気マニホールド73′も、クランク軸線a方向の前後長さが4気筒型の場合より短くなっている。なお、以下の説明において、コモンレールシステム117の構成は、4気筒型の場合と3気筒型の場合とで基本的に共通するものなので、先に説明した4気筒型のときの符号をそのまま用いることとする。
図16に示す4気筒型のディーゼルエンジン70と、図20に示す3気筒型のディーゼルエンジン70′との比較において、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係は、4気筒型の場合より3気筒型の場合のほうが、コモンレール120が燃料ポンプに近付くように、コネクタ124,127の並びピッチ間隔Pだけずらされている。従って、図20及び図21に示すように、3気筒型の場合は、コモンレール120の長手方向の一端部(後端部)が燃料ポンプ116上の調量弁178とプランジャ179との間のデッドスペース180に入り込んでいる。3気筒型の場合は、コモンレール120における最前端の燃料噴射管コネクタ127が塞がれている。前から2番目のコネクタが高圧管コネクタ124に設定されている。残りの3つの燃料噴射管コネクタ127が燃料噴射管126を介して3気筒分の各インジェクタ115に接続されている。
ここで、4気筒型で用いられた第3及び第4燃料噴射管126c,126dは、3気筒型でも使用されている。換言すると、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係をコネクタ124,127群のピッチP分だけずらすことによって、コネクタ124,127群に接続される少なくとも複数の燃料噴射管126c,126dを、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のディーゼルエンジン70,70′間で共通部品にしている。
すなわち、第3燃料噴射管126cは、3気筒型における真ん中のインジェクタ115と、コモンレール120における長手中央部の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。第4燃料噴射管126dは、3気筒型における冷却ファン76側のインジェクタ115と、コモンレール120における前から4番目の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。また、4気筒型で用いられた高圧管123も、その湾曲形状を変更しない共通部品として3気筒型で使用されている。この場合、コモンレール120における前から2番目の高圧管コネクタ124と、燃料ポンプ116とが前述の高圧管123を介してつながっている。なお、3気筒型におけるフライホイールハウジング78側のインジェクタ115と、コモンレール120における最後端の燃料噴射管コネクタ127とをつなぐ燃料噴射管126eは、3気筒型専用の湾曲形状をした燃料噴射管である。
図22は、3気筒型のディーゼルエンジン70′において、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合のように設定した例を示している。すなわち、図22は、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合と同じにした例を示している。この例では、コモンレール120における長手方向の他端部(後端部)がエンジンブロック75のフライホイール側の前面より外にはみ出すことになるが、4気筒型で用いられた第2、第3及び第4燃料噴射管126b,126c,126dと、高圧管123とが、共通部品として3気筒型でも使用されている。
すなわち、第2燃料噴射管126bは、3気筒型におけるフライホイールハウジング78側のインジェクタ115と、コモンレール120における前から2番目の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。第3燃料噴射管126cは、3気筒型における真ん中のインジェクタ115と、コモンレール120における前から4番目の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。第4燃料噴射管126dは、3気筒型における冷却ファン76側のインジェクタ115と、コモンレール120における最後端の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。コモンレール120における真ん中の高圧管コネクタ124と、燃料ポンプ116とが前述の高圧管123を介してつながっている。
上記の記載並びに図16〜図22から明らかなように、エンジンブロック75,75′の一側方に、吸気マニホールド73,73′に近接して配置されるコモンレール120を有する燃料噴射システム117であって、前記コモンレール120には、その長手方向に同じピッチ間隔Pで並ぶコネクタ124,127が設けられており、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で、吸気マニホールド73,73′の下方にある燃料ポンプ116に対する前記コモンレール120の位置関係を同じにするか、又は、前記コネクタ124,127群のピッチP分だけずらすかすることによって、前記コネクタ124,127群に接続される少なくとも複数の燃料噴射管126を、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で共通部品にしているから、前記コモンレール120だけでなく、湾曲形状の異なる様々な燃料噴射管126を前記エンジン70,70′の型式毎に準備する必要がなく、部品点数を削減できる。従って、前記燃料噴射システム117を採用するに当たってコストダウンを図れるという効果を奏する。
上記の記載並びに図16〜図22から明らかなように、前記コモンレール120のコネクタ124,127群は、エンジン70,70′の各気筒に対応するインジェクタ115に燃料噴射管126を介して接続される複数の燃料噴射管コネクタ127と、前記燃料ポンプ116に高圧管123を介して接続される高圧管コネクタ124とにより構成されており、前記高圧管123を、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で共通部品にしているから、前記燃料噴射管126と同様に、前記高圧管123についても、前記エンジン70,70′の型式毎の専用部品にしなくて済み、部品点数の更なる削減、ひいてはより一層のコストダウンに寄与できるという効果を奏する。
(7).DPFの構造
次に、図6及び図23〜図28を参照しながら、排気ガス浄化装置の構造について説明する。図6及び図23〜図27に示す如く、排気ガス浄化装置としての連続再生式のディーゼルパティキュレートフィルタ1(DPF)を備えている。DPF1によって、排気ガス中の粒子状物質(PM)の除去に加え、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を低減できる。
図6及び図27に示す如く、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガスを浄化するフィルタの一例であるディーゼル酸化触媒2は、耐熱金属材料製で略筒型の触媒内側ケース4内に設けられている。触媒内側ケース4は、耐熱金属材料製で略筒型の触媒外側ケース5内に設けられている。すなわち、ディーゼル酸化触媒2の外側に、セラミックファイバー製でマット状の触媒断熱材6を介して、触媒内側ケース4を被嵌させている。また、触媒内側ケース4の外側に、端面L字状の薄板製支持体7を介して触媒外側ケース5を被嵌させている。触媒外側ケース5は、前述したDPFケーシング60を構成する要素の1つである。なお、触媒断熱材6によってディーゼル酸化触媒2が保護される。触媒内側ケース4に伝わる触媒外側ケース5の応力(変形力)を薄板製支持体7にて低減させる。
図6及び図27に示す如く、触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5の一側端部に円板状の側蓋体8を溶接にて固着している。側蓋体8の外面側には外蓋体9がボルト及びナットにて締結されている。ディーゼル酸化触媒2の一側端面2aと側蓋体8とをガス流入空間用一定距離L1だけ離間させて対向させる。ディーゼル酸化触媒2の左側端面2aと左側蓋体8との間に排気ガス流入空間11を形成している。触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5には、排気ガス流入空間11に臨む排気ガス流入口12を開口させている。図示は省略するが、触媒内側ケース4の開口縁と触媒外側ケース5の開口縁の間に閉塞リング体を挟持状に固着している。触媒内側ケース4の開口縁と触媒外側ケース5の開口縁の間の隙間を閉塞リング体にて閉鎖することにより、触媒内側ケース4と触媒外側ケース5の間に排気ガスが流入するのを防止している。
図6、図23、図24及び図27に示す如く、排気ガス流入口12が形成された触媒外側ケース5の外側面に排気ガス入口管16を配置している。排気ガス入口管16の一方の開口端部は、ターボ過給機100におけるタービンケース101の排気ガス排出管103にフランジ接合されている(図1及び図3参照)。従って、排気ガス入口管16は、タービンケース101の排気ガス排出管103を介して、ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71に連結されている。排気ガス入口管16の他方の開口端部は、排気ガス流入口12を外側から覆うようにして、触媒外側ケース5の外側面に溶接されている。
上記の構成により、ディーゼルエンジン70の排気ガスが、排気マニホールド71から排気ガス入口管16に入り込み、排気ガス入口管16から排気ガス流入口12を介して排気ガス流入空間11に入り込み、ディーゼル酸化触媒2にこの左側端面2aから供給される。ディーゼル酸化触媒2の酸化作用によって、二酸化窒素(NO2)が生成される。
図6及び図27に示す如く、フィルタの一例であるスートフィルタ3は、耐熱金属材料製で略筒型のフィルタ内側ケース20内に設けられている。フィルタ内側ケース20は、耐熱金属材料製で略筒型のフィルタ外側ケース21内に設けられている。すなわち、スートフィルタ3の外側に、セラミックファイバー製でマット状のフィルタ断熱材22を介して、フィルタ内側ケース20を被嵌させている。フィルタ外側ケース21は、触媒外側ケース5と共に、前述したDPFケーシング60を構成する要素の1つである。なお、フィルタ断熱材22によってスートフィルタ3が保護される。
図6及び図27に示す如く、触媒内側ケース4は、ディーゼル酸化触媒2を収容する小径筒部4aと、後述するフィルタ内側ケース20が挿入される大径筒部4bとにより構成されている。この場合、小径筒部4aの下流側の端部を大径筒部4bの上流側の端部に嵌め込んで、小径筒部4aと大径筒部4bとの重複部位を溶接にて固定することにより、一部を二重筒構造にした触媒内側ケース4が構成されている。
触媒内側ケース4の下流側の端部に、触媒外側ケース5の外周側(半径外側)にはみ出る薄板状の触媒側接合フランジ25が溶接固定されている。触媒側接合フランジ25の外周側に、触媒外側ケース5の下流側の端部が溶接固定されている。フィルタ内側ケース20の長手中途部に、フィルタ外側ケース21の外周側(半径外側)にはみ出る薄板状のフィルタ側接合フランジ26が溶接固定されている。フィルタ側接合フランジ26の外周側に、フィルタ外側ケース21の上流側の端部が溶接固定されている。
図6及び図23〜図27に示すように、パッキン24を介して触媒側接合フランジ25とフィルタ側接合フランジ26とを突き合わせ、各外側ケース5,21の外周側を囲う一対の厚板状の中央挟持フランジ51,52にて、両接合フランジ25,26を排気ガス移動方向の両側から挟持し、ボルト27及びナット28にて、両中央挟持フランジ51,52を両接合フランジ25,26ごと締結することにより、触媒外側ケース5とフィルタ外側ケース21とが連結される。なお、触媒内側ケース4における円筒形の小径筒部4aの直径寸法と、円筒形のフィルタ内側ケース20の直径寸法とが略同一寸法である。また、円筒形の触媒外側ケース5の直径寸法と、円筒形のフィルタ外側ケース21の直径寸法とが略同一寸法である。
図6に示すように、両中央挟持フランジ51,52及び両接合フランジ25,26を介して、触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21を連結した状態では、触媒内側ケース4の下流側の端部に、フィルタ内側ケース20の上流側の端部がセンサ取付け用一定間隔L2だけ離れて対峙している。図6及び図25に示すように、触媒内側ケース4における小径筒部4aの排気ガス移動方向の円筒長さL3よりも、触媒外側ケース5の排気ガス移動方向の円筒長さL4が長く形成されている。フィルタ内側ケース20の排気ガス移動方向の円筒長さL5よりも、フィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の円筒長さL6が短く形成されている。センサ取付け空間29の一定間隔L2と、触媒内側ケース4の小径筒部4aの円筒長さL3と、フィルタ内側ケース20の円筒長さL5とを加算した長さ(L2+L3+L5)が、触媒外側ケース5の円筒長さL4と、フィルタ外側ケース21の円筒長さL6とを加算した長さ(L4+L6)にほぼ同程度になるように構成されている。
フィルタ内側ケース20の上流側の端部は、フィルタ外側ケース21の上流側の端部から、それらの長さの差(L7=L5−L6)だけ突出している。すなわち、触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21を連結した状態では、フィルタ内側ケース20の上流側の端部が、オーバーラップ寸法L7だけ、触媒外側ケース5の下流側(大径筒部4b)内に挿入されることになる。
上記の構成により、ディーゼル酸化触媒2の酸化作用によって生成された二酸化窒素(NO2)が、スートフィルタ3に一側端面3a側から供給される。スートフィルタ3に捕集されたディーゼルエンジン70の排気ガス中の粒子状物質(PM)が、二酸化窒素(NO2)によって連続的に酸化除去される。ディーゼルエンジン70の排気ガス中の粒状物質(PM)の除去に加え、ディーゼルエンジン70の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が低減される。
図6、図26及び図27に示す如く、ディーゼルエンジン70が排出した排気ガス音を減衰させる消音器30は、耐熱金属材料製で略筒型の消音内側ケース31と、耐熱金属材料製で略筒型の消音外側ケース32と、消音外側ケース32の下流側の側端部に溶接にて固着した円板状の側蓋体33とを有している。消音外側ケース32内に消音内側ケース31が設けられている。消音外側ケース32も、触媒外側ケース5及びフィルタ外側ケース21と共に、前述したDPFケーシング60を構成する要素の1つである。なお、円筒形の消音外側ケース32は、円筒形の触媒外側ケース5の直径寸法及び円筒形のフィルタ外側ケース21の直径寸法と略同一寸法である。
消音内側ケース31の排気ガス移動方向の両側端部には、円盤状の内蓋体36,37がそれぞれ溶接にて固着されている。これら両内蓋体36,37の間には一対の排気ガス導入管38が設けられている。これら両排気ガス導入管38の上流側は上流内蓋体36を貫通している。両排気ガス導入管38の下流側は下流内蓋体37にて塞がれている。各排気ガス導入管38の外周側には複数の連通孔39が形成されている。消音内側ケース31における両内蓋体36,37の間は、連通孔39を介して両排気ガス導入管38と連通する膨張室45になっている。
消音内側ケース31及び消音外側ケース32には、両排気ガス導入管38の間を通る排気ガス出口管34を貫通させている。排気ガス出口管34の一端側が出口蓋体35によって閉塞されている。消音内側ケース31の内部における排気ガス出口管34の全体に多数の排気孔46が開設されている。両排気ガス導入管が、複数の連通孔39、膨張室45及び多数の排気孔46を介して、排気ガス出口管34に連通されている。テールパイプや既設の消音部材(共に図示省略)が排気ガス出口管34の他端側に接続される。上記の構成により、消音内側ケース31の両排気ガス導入管38内に入り込んだ排気ガスは、複数の連通孔39、膨張室45及び多数の排気孔46を介して排気ガス出口管34を通過し、消音器30外に排出されることになる。
図6及び図27に示す如く、フィルタ内側ケース20の下流側の端部に、フィルタ外側ケース21の外周側(半径外側)にはみ出る薄板状のフィルタ出口側接合フランジ40が溶接固定されている。フィルタ出口側接合フランジ40の外周側に、フィルタ外側ケース21の下流側の端部が溶接固定されている。消音内側ケース31の上流側の端部に、消音外側ケース32の外周側(半径外側)にはみ出る薄板状の消音側接合フランジ41が溶接固定されている。消音側接合フランジ41の外周側に、消音外側ケース32の上流側の端部が溶接固定されている。
図6及び図23〜図27に示すように、パッキン24を介してフィルタ出口側接合フランジ40と消音側接合フランジ41とを突き合わせ、各外側ケース21,32の外周側を囲う一対の厚板状の出口挟持フランジ53,54にて、両接合フランジ40,41を排気ガス移動方向の両側から挟持し、ボルト42及びナット43にて、両出口挟持フランジ53,54を両接合フランジ40,41ごと締結することにより、フィルタ外側ケース21と消音外側ケース32とが連結される。
図6及び図27に示すように、消音内側ケース31の排気ガス移動方向の円筒長さL8より、消音外側ケース32の排気ガス移動方向の円筒長さL9が短く形成されている。消音内側ケース31の上流側の端部は、消音外側ケース32の上流側の端部から、それらの長さの差(L10=L8−L9)だけ突出している。すなわち、フィルタ外側ケース21に消音外側ケース32を連結した状態では、消音内側ケース31の上流側の端部が、オーバーラップ寸法L10だけ、フィルタ外側ケース21の下流側(フィルタ出口側接合フランジ40)内に挿入されることになる。
図6及び図23〜図27に示すように、厚板状の中央挟持フランジ51(52)は、触媒外側ケース5(フィルタ外側ケース21)の周方向に複数(実施形態では2つ)に分割されたユニット51a,51b(52a,52b)にて構成されている。実施形態の各ユニット51a,51b(52a,52b)は円弧状(ほぼ半円状)に形成されている。触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21を連結した状態では、両ユニット51a,51b(52a,52b)の端部同士が円周方向に沿って突き合わさり、触媒外側ケース5(フィルタ外側ケース21)の外周側を環状に囲うことになる。触媒側のユニット51a,51bと、フィルタ側のユニット52a,52bとは、いずれも同一形態(同一種類)である。
中央挟持フランジ51(52)には、周方向に沿った等間隔で、貫通穴付きのボルト締結部55が複数設けられている。実施形態では、1組の中央挟持フランジ51に付き8箇所のボルト締結部55を備えている。各ユニット51a,51b(52a,52b)単位で見ると、円周方向に沿った等間隔で4箇所ずつボルト締結部55が設けられている。一方、触媒側接合フランジ25及びフィルタ側接合フランジ26には、中央挟持フランジ51(52)の各ボルト締結部56に対応するボルト孔56が貫通形成されている。
触媒外側ケース5とフィルタ外側ケース21とを連結するに際しては、触媒外側ケース5の外周側を触媒側の両ユニット51a,51bで囲うと共に、フィルタ外側ケース21の外周側をフィルタ側の両ユニット52a,52bで囲い、パッキン24を挟持した触媒側接合フランジ25とフィルタ側接合フランジ26とを、これらユニット群(中央挟持フランジ51,52)にて排気ガス移動方向の両側から挟持する。この状態で、両側の中央挟持フランジ51,52のボルト締結部55と、両接合フランジ25,26のボルト孔56とに、ボルト27を挿入してナット28で締め付ける。その結果、両接合フランジ25,26が両中央挟持フランジ51,52で挟み固定され、触媒外側ケース5とフィルタ外側ケース21との連結が完了する。ここで、触媒側のユニット51a,51bと、フィルタ側のユニット52a,52bとの端部同士の突合せ部分は、お互いに90°程度位相をずらして位置させるように構成されている。
図6及び図23〜図27に示すように、厚板状の出口挟持フランジ53(54)は、フィルタ外側ケース21(消音外側ケース32)の周方向に複数(実施形態では2つ)に分割されたユニット53a,53b(54a,54b)にて構成されている。実施形態の各ユニット53a,53b(54a,54b)は、中央挟持フランジ51(52)のユニット51a,51b(52a,52b)と基本的に同じ形態のものである。出口挟持フランジ53(54)にも、周方向に沿った等間隔で、貫通穴付きのボルト締結部57が複数設けられている。一方、フィルタ出口側接合フランジ40及び消音側接合フランジ41には、出口挟持フランジ53(54)の各ボルト締結部57に対応するボルト孔58が貫通形成されている。
フィルタ外側ケース21と消音外側ケース32とを連結するに際しては、フィルタ外側ケース21の外周側をフィルタ出口側の両ユニット53a,53bで囲うと共に、消音外側ケース32の外周側を消音側の両ユニット54a,54bで囲い、パッキン24を挟持したフィルタ出口側接合フランジ40と消音側接合フランジ41とを、これらユニット群(出口挟持フランジ53,54)にて排気ガス移動方向の両側から挟持する。この状態で、両側の出口挟持フランジ53,54のボルト締結部57と、両接合フランジ40,41のボルト孔58とに、ボルト42を挿入してナット43で締め付ける。その結果、両接合フランジ40,41が両出口挟持フランジ53,54で挟み固定され、フィルタ外側ケース21と消音外側ケース32との連結が完了する。ここで、フィルタ出口側のユニット53a,53bと、消音側のユニット54a,54bとの端部同士の突合せ部分は、お互いに90°程度位相をずらして位置させるように構成されている。
図23〜図26及び図28に示すように、挟持フランジ51〜54のうち少なくとも1つに、DPFケーシング60(外側ケース5,21,32)をディーゼルエンジン70に支持させる支持体としての左ブラケット脚61が取り付けられている。実施形態では、フィルタ出口側の出口挟持フランジ53のうち一方のユニット53aに、貫通穴付きの支持体締結部59が、隣り合うボルト締結部57の間に位置するように2箇所に一体形成されている。一方、左ブラケット脚61には、前述の支持体締結部59に対応する取付けボス部86が一体形成されている。フィルタ出口側にある一方のユニット53aの支持体締結部59に、左ブラケット脚61の取付けボス部86をボルト締結することにより、フィルタ出口側の出口挟持フランジ53に左ブラケット脚61が着脱可能に固定される。右ブラケット脚62の一端側は、DPFケーシング60(触媒外側ケース5)の外周側に溶接固定され、左右両ブラケット脚61,62の他端側は、フライホイールハウジング78の上面に形成されたDPF取付部80にボルト締結されることは、先の説明の通りである。その結果、DPF1は、左右両ブラケット脚61,62とタービンケース101の排気ガス排出管103とにより、高剛性部材であるフライホイールハウジング78の上部に安定的に連結支持されることになる。
上記の記載並びに図6及び図23〜図28から明らかなように、エンジン70が排出した排気ガスを浄化するフィルタ2,3と、前記フィルタ2,3を内蔵する内側ケース4,20,31と、前記内側ケース4,20,31を内蔵する外側ケース5,21,32とを有している排気ガス浄化装置1であって、前記内側ケース4,20,31は、前記外側ケース5,21,32の外周側にはみ出る接合フランジ25,26,40,41を介して、前記外側ケース5,21,32に連結されており、前記フィルタ2,3、前記内側ケース4,20,31及び前記外側ケース5,21,32の組合せを複数組備えており、前記両接合フランジ25,26(40,41)を一対の挟持フランジ51,52(53,54)にて挟持固定することによって、前記複数の外側ケース5,21,32が連結されているから、隣り合う前記接合フランジ25,26(40,41)を、前記両挟持フランジ51,52(53,54)にて両側から挟み付けて圧接(密着)できる。しかも、前記挟持フランジ51〜54を前記外側ケース5,21,32に溶接することなく別体に構成するので、前記挟持フランジ51〜54と前記外側ケース5,21,32との関係において、溶接に起因する応力集中や歪の問題が生ずるおそれはない。このため、前記両接合フランジ25,26(40,41)の全体に略均一な圧接力を付与できると共に、前記挟持フランジ51〜54のシール面(挟持面)の面圧を高い状態に維持できる。その結果、前記両接合フランジ25,26(40,41)の間からの排気ガス漏れを確実に防止できるという効果を奏する。
上記の記載並びに図6及び図23〜図28から明らかなように、前記挟持フランジ51〜54の少なくとも1つに、前記外側ケース5,21,32を前記エンジン70に支持させるための支持体61が締結されているから、前記支持体61をも、前記挟持フランジ51〜54に溶接することなく別体に構成することになり、前記支持体61と、前記挟持フランジ51〜54の少なくとも1つとの間の関係においても、溶接に起因する応力集中や歪の問題を回避できる。従って、前記支持体61と前記挟持フランジ51〜54の少なくとも1つとの締結時の密着性を向上でき、剛性の向上に寄与するという効果を奏する。
上記の記載並びに図6及び図23〜図28から明らかなように、前記各挟持フランジ51〜54には複数のボルト締結部55,57が設けられており、前記支持体61が締結される前記挟持フランジ53には、隣り合う前記ボルト締結部55の間に、前記支持体締結部59が設けられているから、例えば前記支持体61が前記エンジン70の振動等による応力にて変形しようとしても、隣接する前記ボルト締結部61の作用により、前記支持体締結部59ひいては前記挟持フランジ53まで変形させるおそれを著しく抑制できる。その結果、排気ガス漏れの可能性をより一層少なくできるという効果を奏する。
上記の記載並びに図6及び図23〜図28から明らかなように、前記各挟持フランジ51〜54は、前記外側ケース5,21,32の周方向に複数に分割されたユニット51a,51b(52a,52b,53a,53b,54a,54b)からなり、前記複数のユニット51a,51b(52a,52b,53a,53b,54a,54b)にて前記外側ケース5,21,32の外周側を囲うように構成されているから、前記複数のユニット51a,51b(52a,52b,53a,53b,54a,54b)で構成された挟持フランジ51〜54でありながら一体物と同様の状態になる。このため、組付けが容易であり、組付け作業性を向上できる。また、加工コストや組付けコストを抑制しつつ、シール性の高いDPF1を提供できるという効果を奏する。
次に、図29(a)〜(c)を参照しながら、各接合フランジ25,26,40,41の詳細構造について説明する。ここで、各接合フランジ25,26,40,41の構成はいずれも基本的に同じものなので、触媒内側ケースと触媒外側ケースとに溶接固定される触媒側接合フランジ25を代表例として、以下に説明する。図29(a)は実施形態における触媒側接合フランジ25の拡大側面断面図を示している。図29(a)の触媒側接合フランジ25では、触媒内側ケース4と触媒外側ケース5との間に位置する基端部25aが階段状に折り曲げられた形状になっている。触媒側接合フランジ25の階段状の基端部25aの存在がリブ効果を発揮し、触媒側接合フランジ25の高い剛性が確保されている。触媒側接合フランジ25のはみ出し部25bが挟持フランジ51,52にて挟持されるのは前述の通りである。
図29(b)(c)は触媒側接合フランジ25′,25″の接合構造の別例を示している。図29(b)(c)の触媒側接合フランジ25′,25″は断面L字状に形成されている。図29(b)の第1別例では、触媒側接合フランジ25′のうち触媒内側ケース4の長手方向に沿う基端部25a′が触媒内側ケース4の下流側の端部に溶接固定されている。触媒外側ケース5の下流側の端部は内向き(触媒内側ケース4側)に折り曲げられており、当該折り曲げの先端側が触媒側接合フランジ25′の基端部25a′に溶接固定されている。触媒側接合フランジ25′のはみ出し部25b′が挟持フランジ51,52にて挟持されるのは図29(a)の場合と同様である。図29(c)の第2別例では、触媒側接合フランジ25″の基端部25a″が、触媒内側ケース4の下流側の端部に溶接固定されている。触媒外側ケース5の下流側の端部は、折り曲げられることなく触媒側接合フランジ25″のはみ出し部25b″に溶接固定されている。これら図29(b)(c)の接合構造も採用できる。特に図29(b)の接合構造を採用すると、触媒外側ケース5の下流側の端部を折り曲げ形成することによって、リブ効果にて剛性を確保できる。しかも、触媒外側ケース5と触媒側接合フランジ25′との溶接部分が触媒側接合フランジ25のはみ出し部25b′(両挟持フランジ51,52のシール面(挟持面))から離れるので、ディーゼルエンジン70の振動や応力が、触媒外側ケース5と触媒側接合フランジ25′との溶接部分に影響を及ぼし難く、溶接に起因する応力集中や歪の問題を回避できるというメリットがある。
上記の記載並びに図27〜図29から明らかなように、エンジン70からの排気ガスを浄化する複数のガス浄化フィルタ2,3と、前記各ガス浄化フィルタ2,3を収容する複数のケース4,5,20,21,31,32とを備える排気ガス浄化装置1であって、隣り合う前記ケース5,21(21,32)同士は、その外周側にはみ出る接合フランジ25,26(40,41)を突き合わせ、当該両接合フランジ25,26(40,41)を一対の挟持フランジ51,52(53,54)にて前記突合せ方向に挟持締結することによって連結されているから、挟持フランジ51,52(53,54)をケース5,21(21,32)に溶接することなく別体に構成することになる。このため、挟持フランジ51,52(53,54)とケース5,21(21,32)との関係において、溶接起因の応力集中や歪の問題を回避できる。両接合フランジ25,26(40,41)の全体に略均一な圧接力を付与できると共に、挟持フランジ51,52(53,54)のシール面(挟持面)の面圧を高い状態に維持でき、両接合フランジ51,52(53,54)の間からの排気ガス漏れを確実に防止できる。
上記の記載並びに図27〜図29から明らかなように、前記各ケース4,5,20,21,31,32は、前記ガス浄化フィルタ2,3を内蔵する内側ケース4,20,31と、前記内側ケース4,20,31を内蔵する外側ケース5,21,32とを備えており、前記内側ケース4,20,31と前記外側ケース5,21,32とが前記接合フランジ25,26,40,41を介して固定されているから、接合フランジ25,26,40,41を隣り合うケース4,5,20,21,31,32の連結に供する部材として利用できる。内側ケース4,20,31と外側ケース5,21,32との連結強度向上に貢献する。
(8).その他
なお、本願発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明に係るエンジンは、例えばコンバイン、トラクタ等の農作業機や、バックホウ、フォークリフトカー等の特殊作業用車両のような各種車両に対して広く適用できる。また、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。