JP2014124681A - 圧力媒体、及び黒鉛材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】黒鉛材料の製造に用いるCIP成形装置の圧力媒体であって、圧力媒体に黒鉛材料の原材料が混ざっても、容易に除去することができる圧力媒体、及びそれを用いた黒鉛材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】ピッチとコークス粉とからなる原材料粉をCIP(冷間静水圧加圧)成形する黒鉛材料の製造に使用する圧力媒体であって、前記圧力媒体は、該原材料粉に対して親和性を有する油状物質と、水と、界面活性剤と、からなるエマルションであることを特徴とする圧力媒体。ピッチとコークス粉とからなる原材料粉を、上記圧力媒体を用いてCIP成形する黒鉛材料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、黒鉛材料のCIP(Cold Isostatic Pressing;冷間静水圧加圧)成形に使用する圧力媒体、及びそれを用いた黒鉛材料の製造方法に関する。
黒鉛材料をはじめとするセラミック材料の製造工程において、形状を付与するための手段としてCIP(Cold Isostatic Pressing;冷間静水圧加圧)が広く用いられている。
CIP成形は、粉体を軟質の成形容器に入れ密封した後、液体の圧力媒体を用いて加圧することにより成形品を得る方法である。
CIP成形は、液体の圧力媒体を用い等方的に加圧するので、材料の特性が等方性に得られること、軟質の成形容器の形状によって成形品の形状が決定されるので、金型などを必要とせず、様々な形状の成形品が容易に得られる特徴がある。
特許文献1には成形後の加工が、不要ないし容易である成形容器(加圧成形型とも言う)として 外型と、該外型の内部に配置された中子型とを有する加圧成形型であって、外型が軟質材よりなることを特徴とする加圧成形型が知られている。具体的には、セラミックの加圧成形型として、中子型にセラミックス粉末を入れ、中子型ごとビニール袋(軟質樹脂の袋)などの外型に入れ密封するCIP成形の方法が知られている(特許文献1)。
特開平7−24819号公報
黒鉛材料は大型化し、CIP成形に使用する成形容器も大型化している。このような黒鉛材料の成形には、前記特許文献1の加圧成形型ごとビニール袋(軟質樹脂の袋)に入れ密封する加圧成形型は扱いにくい。大型の成形容器には、作業性をよくするために成形容器を包む軟質樹脂の袋を使用することなく直接成形容器を加圧することが一般的である。黒鉛材料の原材料粉は、高強度の得るために微細な黒鉛組織を形成することができる粒子径の小さなものが使用される。成形容器に、黒鉛材料の原材料粉を投入する際、このような原材料粉は粉塵となって周囲に飛散しやすく、成形容器の外部にも少なからず付着する。
一方、CIP成形装置は、液体を圧力媒体として加圧する装置である。圧力媒体に、異物などが混入すると、弁、パッキンなどのシール部分周囲に入り込み、弁、パッキンなどを傷つけたり、異物として挟まり密封できなくなり、液漏れしやすくなり圧力を上げられなくなる。
本発明は、黒鉛材料の製造に用いるCIP成形装置の圧力媒体であって、圧力媒体に黒鉛材料の原材料が混ざっても、容易に除去することができる圧力媒体、及びそれを用いた黒鉛材料の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための本発明の圧力媒体は、ピッチとコークス粉とからなる原材料粉をCIP(冷間静水圧加圧)成形する黒鉛材料の製造に使用する圧力媒体であって、前記圧力媒体は、該原材料粉に対して親和性を有する油状物質と、水と、界面活性剤と、からなるエマルションであることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための本発明の黒鉛材料の製造方法は、ピッチとコークス粉とからなる原材料粉を、圧力媒体を用いたCIP(冷間静水圧加圧)成形した後、焼成、黒鉛化する黒鉛材料の製造方法であって、前記圧力媒体は、該原材料粉に対して親和性を有する油状物質と、水と、界面活性剤と、からなるエマルションであることを特徴とする。
本発明によれば、黒鉛材料のCIP成形に用いる圧力媒体は、親油成分である油状物質と、親水成分である水と、を含むエマルションであり、ピッチとコークス粉とからなる原材料粉は、親油成分側である油状物質に親和性を有するので、原材料粉は、油状物質側に取り込まれ凝集する。このため、エマルションである圧力媒体を濾過することにより、原材料粉を効率良く取り除くことができる圧力媒体を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、黒鉛材料のCIP成形に用いる圧力媒体は、親油成分である油状物質と、親水成分である水と、を含むエマルションであり、ピッチとコークス粉とからなる原材料粉は、親油成分側である油状物質に親和性を有するので、原材料粉は、油状物質側に取り込まれ凝集する。このため、エマルションである圧力媒体を濾過することにより、原材料粉を効率良く取り除くことができ、CIP成形装置での液漏れを防止することのできる黒鉛材料の製造方法を提供することができる。
圧力媒体として、エマルション、又は界面活性剤水溶液を用いたときの原材料粉の状態を模式的に説明する図である。図1(a)は、圧力媒体としてエマルションを用いた場合、図1(b)は、圧力媒体として界面活性剤水溶液を用いた場合である。
本発明の圧力媒体は、ピッチとコークス粉とからなる原材料粉をCIP(冷間静水圧加圧)成形する黒鉛材料の製造に使用する圧力媒体であって、前記圧力媒体は、該原材料粉に対して親和性を有する油状物質と、水と、界面活性剤と、からなるエマルションであることを特徴とする。
本発明に用いられる油状物質は、水に乳濁される。従って、本発明の圧力媒体は、エマルションである。界面活性剤(助剤)が乳化剤として作用することにより乳濁される。
この圧力媒体の原材料粉に対して親和性を有する油状物質とは、圧力媒体に黒鉛材料の原材料粉(以下、「黒鉛材料の原材料粉」を「原材料粉」ともいう)が混入した際、原材料粉は、油状物質側と結びつきやすいことを示し、これにより原材料粉を凝集させることができる。原材料粉が凝集しやすいので、沈降あるいは濾過により圧力媒体から除去しやすくなる。
一方、圧力媒体として、界面活性剤と水のみが混合した界面活性剤水溶液を用いた場合には、原材料粉は、凝集しにくいので、圧力媒体中に浮遊あるいは分散したままの状態となり、除去が困難である。
圧力媒体として、エマルション、又は界面活性剤水溶液を用いたときの原材料粉の上記状態を図1に模式的に示している。
図1(a)において、原材料粉の粒子2は、点で示されているが、圧力媒体であるエマルション1b中の油滴3に吸着、分散した凝縮体4を形成する。油滴3は、凝縮体4内の白地部分である。
図1(b)において、原材料粉の粒子2は、同じく点で示されているが、圧力媒体である界面活性剤水溶液1a中を浮遊している。
圧力媒体中に、原材料粉が残留すると下記メカニズムで、圧力が上げられなくなる。
CIP成形を行うCIP成形装置は、原材料粉を充填された成形容器を、圧力容器に入れ加圧する装置である。加圧の方法は、いくつかの形式がある。第1の形式の装置は、圧力媒体を満たしたシリンダ状の圧力容器と、ピストンとからなり、ピストンに圧力を加えることにより内部に原材料粉を有する成形容器を加圧する形式の装置、第2の形式の装置は圧力容器に成形容器を入れた後、圧力容器に、圧力媒体を圧入することにより、内部に原材料粉を有する成形容器を加圧する形式の装置、等がある。第1の形式の装置、第2の形式の装置ともに、圧力媒体がパッキン、弁などシール部品に接している。圧力媒体に原材料粉が混入するとその隙間に原材料粉が入り込むことによって圧力媒体の液漏れ、パッキン、シール部品の摩耗の原因となる。
さらに、第2の形式では、圧力媒体を圧入するために外部にシリンダと弁を設け、内部のピストンの往復運動と弁の作用によって連続的に加圧することができる。特に第2の方法では、1回の加圧処理でピストン及び弁が繰り返し使用されるので、圧力媒体中に原材料粉が混入していると、より圧力媒体の液漏れ、パッキン、弁などシール部品の摩耗が発生しやすくなり、圧力の上昇が困難になる。本発明の圧力媒体では、原材料粉を沈降あるいは濾過により圧力媒体から除去することが容易であるので、液漏れ、パッキン、弁などのシール部品の摩耗が発生しにくく、圧力の上昇が阻害されにくい圧力媒体を提供することができる。
上記原材料粉とは、少なくともピッチとコークス粉を含む炭素材料であり、CIP成形を経て黒鉛化され得る粉体を意味する。原材料粉はピッチとコークス粉とを混練したのち、粉砕することにより得ることができる。原材料粉の中でピッチは、CIP成形時にコークス粉を結合し、焼成、黒鉛化を経ることによって、コークス粉を結合させたまま、黒鉛に変化するバインダとしての機能を発揮する。
コークス粉、ピッチともに黒鉛材料の原材料に使用できるものであれば特に限定されない。コークス粉としては、石油系、石炭系のいずれのコークスも使用することができ、これらを生コークス、仮焼コークスなどどのような形態で使用しても良い。ピッチは、石炭系、石油系いずれでも使用することがでる。ピッチの軟化点については特に限定されることなく、例えば60〜200℃の範囲のものであれば、コークス粉と混練し、揮発分を除去したのち、粉砕することによって原材料粉を得ることができる。
本発明において、油状物質は、例えば、鉱油類、脂肪酸エステル類等が上げられる。鉱油類としては、原油を減圧蒸留して得られる高沸点留分等が挙げられ、例えば分子量200〜2000程度の留分を使用することができる。具体的には潤滑油などが使用できる。
また、脂肪酸エステル類としては、油脂(脂肪酸トリエステル)、ジエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
本発明に用いられる脂肪酸エステル類としては、脂肪酸とグリセリンのトリエステルに限定されるものではなく、そのモノエステル、ジエステルを包含し、更に脂肪酸、脂肪酸とグリセリン以外のアルコールとのエステル、それらの金属塩等が挙げられ、これらは各々単独又は組合せて用いることができる。上記単独またはエステル、塩等に用いられる脂肪酸としては、飽和、不飽和、直鎖、分岐、環状等の単独又は組合せを含む構造の任意のものが挙げられ、単独又は組合せて用いることができるが、それらの炭素数は、例えば、5〜20個のものが利用できる。
本発明において、界面活性剤は、特に限定されない。陰イオン系界面活性剤、陽イオン系系面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
陰イオン系界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩等が挙げられる。
陽イオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばアルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等が挙げられる。
本発明は、水、油状物質、及び界面活性剤以外に、任意の機能(例えば、消泡、防錆、防腐等)を有する公知成分を含有させることができる。例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどを含有する塩基を含有していても良い。塩基を含有していると、水素イオン濃度を低く維持することができるのでCIP成形装置の金属部品の腐食を防止することができる。望ましい水素イオン濃度pHは、7〜11である。pHが、7以上であれば、CIP成形装置の腐食を防止することができ、pHが11以下であれば、圧力媒体に含まれる成分の加水分解などによる変質を防止することができる。
尚、油状物質と、界面活性剤とを配合した液体として、エマルション型の水溶性切削油を利用することができる。エマルション型の水溶性切削油は、油状物質と、油状物質を乳化させるための界面活性剤とを含有しているため、水に適宜希釈することによって圧力媒体として使用することができる。
本発明の圧力媒体の調製は、水に油状物質、界面活性剤、その他の成分を混合し、少なくとも系を乳化しエマルションにすることが必要である。この場合、油状物質、界面活性剤、その他の成分の添加順序、攪拌方法乃至手段等は適宜設定できる。
前記記載の圧力媒体は、主要成分が水であることが好ましい。CIP成形では、短時間で高い圧力に到達する。このため、成形容器の底などに空洞部を有し、空気が溜まる構造をとっている場合に、溜まった空気は急激に断熱圧縮されるので加熱され、圧力媒体に引火しやすくなる。圧力媒体に引火すると、ゴムなどでできた成形容器が、劣化し寿命が短くなる。この現象は、成形容器の底などに空洞部を有する場合の他、空洞部に発泡スチロールなどの断熱性の構造物があると更に空気が加熱されやすくなるので、成形容器の劣化しやすくなり寿命が短くなる。圧力媒体の主要成分が水であると、空洞部の空気が加熱されても、成形容器に付着する圧力媒体が奪う気化熱が大きい上に、引火性がないので成形容器を長く使うことができる。
前記圧力媒体の望ましい水の含有率は、90〜99vol%である。水の含有率が90vol%以上であれば、加圧時に圧力媒体に含まれる油状物質に断熱圧縮空気から引火しにくくすることができる。水の含有率が99vol%以下であると、圧力溶媒中に原材料粉が混入したとき、原材料粉どうしを結びつける作用を有する油状物質が十分な量を含有されているので凝集させ易くすることができる。
圧力媒体の水を除く残部のうち油状物質の含有率は、60〜95vol%であることが好ましい。圧力媒体の水を除く残部のうち油状物質の含有率が60vol%以上であると油状物質に親和性のある原材料粉を効率良く凝集させることができる。圧力媒体の水を除く残部のうち油状物質の含有率が95vol%以下であると、油状物質を乳化させるために必要な界面活性剤などを十分に含有させることができる。
前記油状物質は、0〜100℃の任意温度において水よりも蒸気圧が低いことが好ましい。油状物質の蒸気圧が水より低いと、圧力媒体が蒸発する際、水の蒸発が先に起こり、油状物質は残留し易くなる。
油状物質は、0〜100℃の任意温度において水よりも蒸気圧が低いことが好ましい理由を以下に詳しく説明する。
大型の成形容器を用いた場合など、作業性をよくするために直接原材料粉が成形容器に充填される。黒鉛材料の原材料粉は、高強度を得るために微細な黒鉛組織を形成することができる粒子径の小さなものが使用される。成形容器に、黒鉛材料の原材料粉を投入する際、このような原材料粉は粉塵となって周囲に飛散しやすく、成形容器の外部にも少なからず堆積する。
堆積した黒鉛材料の原材料粉が圧力媒体で濡れた後スラリー化し乾固すると、硬い固形物を形成する。CIP成形装置では、圧力媒体に硬い固形物が混入し、圧力容器のパッキン、弁などのシール部分周囲に入り込むと、パッキンを傷つけたり、密封できなくなり、液漏れしやすくなり、圧力を上げられなくなる。
油状物質は、0〜100℃の任意温度において水よりも蒸気圧が低いと、スラリー化した原材料粉を乾固しにくくすることができる。原材料粉の混入した圧力媒体は、乾燥する際水の蒸発が先に進行し、油状物質の蒸発は起こりにくい。更に油状物質は原材料粉との親和性が高いので完全に乾固しにくく、ペースト状になって残留する。完全乾固せずペースト状で残留するので、圧力容器のパッキンなどのシール部分周囲に入り込んでも、パッキン、弁などを傷つけにくく、圧力漏れを起こしにくくすることができる。また、成形容器を構成する蓋と本体との密封部分に硬い固形物を混入または付着しにくくすることが出来るので、CIP成形装置の圧力漏れだけでなく、成形容器内でプレスされる成形体への圧力媒体の浸入を防ぐことができる。成形体に圧力媒体が浸入すると、浸入した部分では原材料粉どうしの接合を阻害されるので高密度の成形体が得られにくくなる。
CIP成形装置に搬入する前に、洗浄槽で成形容器の外部に付着した原材料粉を除去する工程を加えても良い。洗浄槽では、例えば液体を噴霧あるいは液体に浸漬することにより、成形容器の外部に付着した原材料粉を除去する。このような洗浄槽でも原材料の除去を完全に行うことが困難であり、洗浄液で原材料がスラリー化し残留することがある。残留するスラリー状の原材料粉が、CIP成形装置内に持ち込まれても悪影響を及ぼさないように前記記載の圧力媒体を洗浄槽での洗浄液として使用することが好ましい。成形容器の洗浄液として前記圧力媒体を使用すると、CIP成形装置と同一成分であるので、洗浄液が成形容器に付着して残留しても圧力媒体に余分な成分が混入されにくくすることができる。また、洗浄槽ではCIP成形装置よりも、原材料粉と接触しやすいので、原材料粉のスラリーを大量に形成しやすいが、前述のように本発明の圧力媒体を洗浄液に使用するとスラリーが乾固しにくく、CIP装置内に異物が持ち込まれにくくすることができる。
また、本発明の圧力媒体は、CIP成形装置に付随する圧力媒体の再生装置によって再生させることができる。再生装置は、種々の工程、例えば、CIP成形工程、洗浄工程等で圧力媒体中に生じた凝縮体の除去工程、油状物質、水等の補完工程等を設けることができる。この除去工程では、遠心分離、ろ過、自然沈殿、等の方法が用いられる。また、本発明では、再生乃至新たに用いる圧力媒体の原材料粉に対する洗浄性能を試験する工程を設けてもよい。その試験では、実際に用いる原材料粉を適量、圧力媒体に投入、攪拌し、その凝縮体の生成等の結果を観察することにより行うことができる。
以上説明したように、本発明の圧力媒体は、CIP成形装置の圧力媒体、それに用いられる成形容器等の洗浄槽の洗浄液としての機能を有することは上記から明らかであり、CIP成形時とは独立にCIPの成形容器等の洗浄槽の洗浄液に用いることができる。また、上記からこの洗浄に使用した圧力媒体は、再生装置で上記凝集物等を除去し、必要により油状物質等を追加し、繰り返し使用することができる。
本発明の黒鉛材料の製造方法は、本発明の圧力媒体をCIP成形装置の圧力容器に使用して黒鉛材料の原材料粉のCIP成形を行ったのち、焼成、黒鉛化するものである。本発明の黒鉛材料の製造方法では、この圧力媒体は、洗浄槽で使用する洗浄液でもあるので、CIP成形自体がCIP成形に関与する機器の洗浄も兼ねているが、CIP成形とは独立にCIP成形処理工程のいかなる工程、例えば、CIP成形装置、CIP成形容器、その他のCIP成形に関連する部材の洗浄を含む工程においても用いることができる。CIP成形工程では、原材料粉は、CIP成形容器に充填された後にCIP成形の圧力容器に搬入される。この圧力容器に収容された成形容器は、本発明の圧力媒体によって圧力が印加され、成形容器に充填されている原材料粉は、型である成形容器の形状に応じた所望の形状に成形される。この原材料粉の充填工程、CIP成形工程で、原材料粉は少なからず該成形容器、該圧力容器、及び圧力媒体に接触することになるが、上記圧力媒体の特性により混入した原材料粉は上述のような安全な形態に変化し、CIP成形は円滑、かつ支障なく実施することができる。また、本発明の方法は、成形容器への原材料粉の該充填作業等、原材料粉の漏れによる機器、それに備えられているシール材等の汚れ、あるいは圧力媒体への混入を防止するために厳密な管理をする必要がないので、工程管理を簡素化でき、有利である。上記理由から、特に、本発明の方法は、原材料粉の漏れが生じ易い、成形容器が大サイズ、例えば、成形部のサイズがφ300(底面)×400(高さ)mm〜φ2000(底面)×1500(高さ)mmの場合に好適である。
本発明の黒鉛材料の製造方法における原材料粉は、ピッチとコークス粉とを混練して得ることができる。
本発明の黒鉛材料の製造方法におけるピッチは、どのようなものでも良く特に限定されず、石油系ピッチ、石炭系ピッチなどが利用できる。ピッチの軟化点は、例えば60〜200℃のものが利用できる。
本発明の黒鉛材料の製造方法におけるコークス粉は、コークスを粉砕して得ることができる。コークス粉のメジアン径は例えば20〜100μmのものが利用できる。コークスは特に限定されず、石炭系コークス、石油系コークスのいずれでも良い。また、か焼の有無は特に限定されず、生コークス、か焼コークスのいずれでも使用できる。
本発明の黒鉛材料の製造方法における焼成は公知の方法を利用でき特に限定されない。例えば焼成缶に成形体を詰め、ガス炉、電気炉などで焼成する方法が利用できる。
本発明の黒鉛材料の製造方法における黒鉛化は公知の方法を利用でき特に限定されない。例えばアチェソン炉、誘導炉などを利用して黒鉛化する方法が利用できる。
また、本発明の黒鉛材料の製造方法は、圧力媒体の再生装置を設けることもできる。再生装置は、種々の工程、例えば、CIP成形工程、洗浄工程等で圧力媒体中に生じた凝縮体の除去工程、油状物質、水等の補完工程等を設けることができる。この除去工程では、遠心分離、ろ過、自然沈殿、等の方法が用いられる。また、本発明では、再生乃至新たに用いる圧力媒体の原材料粉に対する洗浄性能を試験する工程を設けてもよい。その試験では、実際に用いる原材料粉を適量、圧力媒体に投入、攪拌し、その凝縮体の生成等の結果を観察することにより行うことができる。
以下、本発明の実施例及び比較例について、黒鉛材料の原材料粉との相互作用について比較しながら説明するが、本発明はこれらに制限されないことは明らかである。
[実施例]
石油系炭化水素(鉱油類)を主成分とし、界面活性剤を含有するエマルション型の水溶性切削油が6.0vol%となるように水に加え、圧力媒体とした。水溶性切削油は、透明な液体であったが、水に添加すると乳化し、エマルションを形成した。
別途、石炭から得られたコークスとピッチとを混練し、粉砕して得られた黒鉛材料の原材料粉を準備した。黒鉛材料の原材料粉の50%体積粒子径は30μmである。原材料粉に水溶性切削油を滴下すると浸透していくのに対し、原材料粉に水を滴下しても浸透しなかった。原材料粉は、芳香環の発達した石炭から得られたコークスとピッチとを原材料としているので油状物質と親和性があると考えられる。
得られた圧力媒体に過剰の原材料粉を加え撹拌した。撹拌した圧力媒体は上澄み液と沈殿物に分離した。
上澄み液を採取し1日放置すると上澄み液中から、原材料粉が凝集し析出した。
沈殿物を分離して室温(25℃)で1週間放置した。水分が蒸発したが、油状物質が残り、主に原材料粉と油状物質とからなるペースト状の固形物ができたが、乾固することはなかった。
[比較例]
水に0.5%程度の界面活性剤(ツイン20:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)を滴下し、界面活性剤溶液を形成した。本比較例の圧力媒体は、透明な液状であった。
別途、実施例と同様に石炭から得られたコークスとピッチとを混練し、粉砕して得られた黒鉛材料の原材料粉を準備した。原材料粉に本比較例の界面活性剤溶液を滴下すると浸透していくのに対し、原材料粉に水を滴下しても浸透しなかった。原材料粉は、芳香環の発達した石炭から得られたコークスとピッチとを原材料としているので水とは親和性が無いが界面活性剤の作用によって親和性が形成されると考えられる。
得られた界面活性剤溶液に過剰の原材料粉加え撹拌した。撹拌した圧力媒体は上澄み液と沈殿物に分離した。
上澄み液は黒く濁り、少量の原材料粉が分散しているのが確認された。上澄み液を採取し1日放置すると、原材料粉が凝集することなく沈殿した。
沈殿物を分離して室温(25℃)で1週間放置した。水分が蒸発し乾固した。
実施例の圧力媒体では、混合した黒鉛材料の原材料粉が凝集し、粗粒化したのに対し、比較例の界面活性剤溶液では、混合した黒鉛材料の原材料粉が凝集することがなかった。このため、実施例の圧力媒体を用いたことによって濾過により除去しやすくなった。
また、実施例の圧力媒体では、原材料粉の沈殿物が乾固しにくいので、圧力容器のパッキンなどのシール部分周囲に入り込むと、パッキンを傷つけたりしにくく、圧力漏れを起こしにくくすることができる。また、成形容器の蓋と本体との密封部分に硬い固形物を混入しにくくすることが出来るので、CIP成形装置の圧力漏れだけでなく、成形容器内でプレスされる成形体への圧力媒体の浸入を防ぐことができると考えられる。
1a…界面活性剤水溶液、1b…エマルション、2…原材料粉の粒子、3…油滴、4…凝縮体。

Claims (8)

  1. ピッチとコークス粉とからなる原材料粉をCIP(冷間静水圧加圧)成形する黒鉛材料の製造に使用する圧力媒体であって、前記圧力媒体は、該原材料粉に対して親和性を有する油状物質と、水と、界面活性剤と、からなるエマルションであることを特徴とする圧力媒体。
  2. 主要成分が水である、請求項1に記載の圧力媒体。
  3. 前記圧力媒体の水の含有率が90〜99vol%である、請求項1又は2に記載の圧力媒体。
  4. 前記油状物質は、0〜100℃の任意温度において水よりも蒸気圧が低い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧力媒体。
  5. ピッチとコークス粉とからなる原材料粉を、圧力媒体を用いたCIP(冷間静水圧加圧)成形した後、焼成、黒鉛化する黒鉛材料の製造方法であって、前記圧力媒体は、該原材料粉に対して親和性を有する油状物質と、水と、界面活性剤と、からなるエマルションであることを特徴とする黒鉛材料の製造方法。
  6. 主要成分が水である、請求項5に記載の黒鉛材料の製造方法。
  7. 前記圧力媒体の水の含有率が90〜99vol%である、請求項5又は6に記載の黒鉛材料の製造方法。
  8. 前記油状物質は、0〜100℃の任意温度において水よりも蒸気圧が低い、請求項5〜7のいずれか1項に記載の黒鉛材料の製造方法。
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