JP2014123603A - Ptc素子の製造方法、ptc素子、及び発熱モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】 BaTiO系でBaの一部をBiやNaで置換した組成の半導体磁器組成物に電極を形成したPTC素子において、耐電圧が大きく、室温抵抗率が小さいPTC素子の製造方法、PTC素子、及び発熱モジュールを提供する。
【解決手段】 組成式が[(Bi・A)(Ba1−y1−x](Ti1−z)aの原料を準備し、前記原料を仮焼し、成形し、得られた成形体を、密度が5.00g/cm以上5.70g/cm以下となるように焼結して半導体磁器組成物とし、前記半導体磁器組成物に電極ペーストを塗布し、前記電極ペーストを550℃以上で焼付けしてPTC素子とし、その後、前記PTC素子に、200℃以上500℃以下で、0.1時間以上5時間以下の範囲で保持する熱処理を施すことを特徴とするPTC素子の製造方法。
【選択図】 図1

Description

この発明は、正の抵抗温度係数を有するPTC素子の製造方法、PTC素子、及び発熱モジュールに関する。
従来、PTC特性(正の抵抗率温度係数:Positive Temperature Coefficient of resistivity)を示す材料としてBaTiOで表される組成に様々な半導体化元素を加えた半導体磁器組成物が提案されている。PTC特性とはキュリー点以上の高温になると急激に抵抗値が増大する特性であり、PTC特性を持つ半導体磁器組成物を使用した素子はPTC素子と呼ばれている。このPTC素子は、PTCサーミスタ、PTCヒータ、PTCスイッチ、温度検知器などの発熱モジュールに用いられる。
PTC特性は、結晶粒界に形成された抵抗(ショットキー障壁による抵抗)が増大するために起こると考えられている。PTC素子に用いられる半導体磁器組成物は、この抵抗の増大が高い(抵抗温度係数が高い)ものが要求されている。
また、一般的なBaTiO系の半導体磁器組成物のキュリー温度は120℃前後であるが、キュリー温度が高い半導体磁器組成物が要望される。従来は、キュリー温度を上げることができる添加元素としてPbTiO等の鉛材が用いられていた。しかし、鉛は環境汚染を引き起こす元素であり、近年、鉛材を使用しない非鉛系の半導体磁器組成物が要望されている。
非鉛系でキュリー温度が高いBaTiO系半導体磁器組成物として、Baの一部をBiやNaで置換した組成のものが知られている。
このようなBaの一部をBiやNaで置換した組成のBaTiO系半導体磁器組成物に対する新たな課題として、通電等による経時変化が指摘されており、これを抑制する手法の提案もある。
たとえば、特許文献1では、理論焼結密度に対する実測焼結密度を焼成時に70〜90%に調整することで、経時変化を抑制する手法が開示されている。
また、本願出願人は、特許文献2において、Baの一部をBiやNaで置換した組成のBaTiO系の半導体磁器組成物に対して、100℃以上600℃以下で0.5時間以上24時間以下の熱処理を施すことで、経時変化を抑制する方法を開示している。
特開2012−209292号公報 特開2009―234849号公報
PTC素子の基本性能として、耐電圧は室温比抵抗R25と最大抵抗Rにより求められるΔR=log(RL/R25)で算出される桁数ΔRをできるだけ高いものとする必要がある。また、PTC素子には耐電圧特性が必要とされるが、耐電圧はこの桁数ΔRが高いほど高くできる。
また、PTC素子のエネルギーロスを小さくするために室温抵抗率を小さく必要がある。
上述した特許文献1および特許文献2に開示される手法は、これらの文献で記載されるとおりPTC素子の経時変化を抑制するという点で優れたものである。
しかし、これらの文献は、PTC素子の基本性能である桁数ΔR自体を改善し、かつ室温比抵抗を小さくする具体的な手法については、明確な開示がなく、熱処理によって熱処理前と熱処理後の桁数ΔRについても開示が無い。
以降では、熱処理前の半導体磁器組成物の桁数ΔRをΔRb、熱処理した後の桁数ΔRをΔRaと呼ぶ。
本発明の目的は、BaTiO系でBaの一部をBiやNaで置換した組成の半導体磁器組成物に電極を形成したPTC素子において、耐電圧を十分に確保でき、かつ実用的な室温抵抗率を持つPTC素子が得られるPTC素子の製造方法を提供することである。
また、その製造方法を用いて製造したPTC素子、及び、そのPTC素子を用いた発熱モジュールを提供することである。
本発明は、組成式が[(Bi・A)(Ba1−y1−x](Ti1−z)a(ただし、AはNa、Li、Kのうち少なくとも1種、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種)で表され、前記a,x、y、zが、0.90≦a≦1.10、0<x≦0.30、0≦y≦0.050、0≦z≦0.010(但し、y+z>0)を満足するように原料を準備し、
前記原料を仮焼し、成形し、
得られた成形体を、密度が5.00g/cm以上5.70g/cm以下となるように焼結して半導体磁器組成物とし、
前記半導体磁器組成物に電極ペーストを塗布し、前記電極ペーストを550℃以上で焼付けしてPTC素子とし、
その後、前記PTC素子に、200℃以上500℃以下で、0.1時間以上5時間以下の範囲で保持する熱処理を施すことを特徴とするPTC素子の製造方法である。
前記yが0.010≦y≦0.050であり、RがYを含む2種類以上の希土類元素であることが好ましい。
上記の製造方法によりPTC素子を得ることができる。
上記のPTC素子を用いて発熱モジュールとすることができる。
本発明によれば、BaTiO系でBaの一部をBiやNaで置換した組成の半導体磁器組成物に電極を形成したPTC素子において、耐電圧を十分に改善でき、かつ実用的な室温抵抗率を持つPTC素子を提供できる。耐電圧が確保できるので電圧破壊に強くなり、製品信頼性を高めることができる。
また、この製造方法により得られるPTC素子、および、このPTC素子を用いた発熱モジュールを提供できる。
本実施形態の半導体磁器組成物の断面観察写真である。 平均ボイド間距離の測定手段を説明するための模式図である。 平均ボイド間距離と内部の抵抗温度係数αinの関係を示す図である。 焼結体密度と内部の抵抗温度係数αinの関係を示す図である。 抵抗温度係数αinの測定手段を説明するためのグラフである。 抵抗温度係数αinの測定手段を説明するための別のグラフである。 本発明で規定する密度を持つ半導体磁器組成物の部位によるポテンシャルエネルギーの違いを説明する模式図である。 5.70g/cm超の密度を持つ半導体磁器組成物の部位によるポテンシャルエネルギーの違いを説明する模式図である。 本発明の一実施形態に係るPTC素子を用いた発熱モジュールの模式図である。 一般的なPTC特性の温度と比抵抗の関係を示す図である。
本発明は、密度が低い半導体磁器組成物に熱処理を施すことを主な特徴とし、これにより上記効果が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の半導体磁器組成物における材料の組成について述べる。
本発明の半導体磁器組成物は、組成式が[(Bi・A)(Ba1−y1−x](Ti1−z)a(ただし、AはNa、Li、Kのうち少なくとも1種、Rは希土類元素(Yを含む)のうち少なくとも1種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも1種)で表される。
本発明のABO型の半導体磁器組成物において、aは、Bi、Aの元素、Ba、及びR元素からなる[(Bi・A)(Ba1−y1−x]で示すサイト(以下、「Baサイト」という)とTi及びM元素からなる(Ti1−z)で示すサイト(以下、「Tiサイト」という)のモル比の許容範囲を示す値である。aは0.90以上1.10以下とする。aが0.90未満か1.10を超えると室温抵抗率R25が1000Ωcmを超えてしまう。
BiやA元素の添加量xは0を超え0.30以下とする。xを0超とすることでキュリー温度を130℃以上に高めることができる。
xが0.30を超えてしまうと室温抵抗率R25が1000Ωcmを超えてしまう。また、BiやAの元素は焼結中に蒸発しやすいのでTiサイトに比較してBaサイトの元素のモル数が少なくなる。その結果、半導体磁器組成物がTiリッチになるので、Tiリッチ相が異相となって析出してしまう。焼結中にTiリッチ相の一部は溶融するので歩留まりが悪くなったり、所望の形状の半導体磁器組成物が得られなくなる。
本発明においては、希土類元素Rの添加量y、M元素の添加量zの少なくとも一方を必須、つまりy+z>0とする。
本発明においては、希土類元素の添加量yの範囲は0以上0.050以下とする(但しy+z>0)。yが0.050を超えるとΔRaが小さく、耐電圧の良い半導体磁器組成物にならない。また、焼結に必要な温度が高くなってしまい、この温度が焼結炉の耐電圧を超えてしまう可能性があるので製造上好ましくない。
本発明においては、半導体化元素であるRは、yが0.010≦y≦0.050であり、RがYを含む2種類以上の希土類元素であることが好ましい。これにより通電による抵抗の経時変化をより抑えることができる。希土類元素Rはキャリアをドープするために導入されるが、粒界に析出すると通電による経時変化を起こりにくくする効果があることが分かっている。Yは比較的結晶粒内に入りにくいが、他の希土類元素と共に加えることでさらに粒界にY化合物が析出しやすくなり、経時変化を抑えることができる。
RがYを含む2種類以上の希土類元素である場合、yの下限値は0.015以上が好ましく、0.020以上がさらに好ましい。yの上限値は0.045以下が好ましい。
また、Yの添加量だけを見た場合、Yはyの範囲のうち0.010<y<0.045を占めることが好ましい。
RがYを含む2種類以上の希土類元素である場合、Y以外の希土類元素を原料として(BaR)TiMO系の仮焼粉(α仮焼粉)を製造し、その後にYを含む化合物、(Bi・Na)TiO系の仮焼粉(β仮焼粉)をそれぞれ混合することが望ましい。Y以外の希土類元素を添加したα仮焼粉を得てからYを含む化合物を加えると、焼成後において、より粒界にYが析出しやすくなる。これにより、経時変化を抑える効果を高めることができる。
M元素量zの範囲は0以上0.010以下とする(但しy+z>0)。zが0.010を超えると室温抵抗率R25が1000Ωcmを超えてしまう。また、半導体磁器組成物の機械的強度が下がりPTC素子にした際に割れが発生しやすくなってしまうため製造上好ましくない。
上記組成の半導体磁器組成物は、密度が5.00g/cm以上5.70g/cm以下であれば、図7に示すように、電極の近傍だけでなく半導体磁器組成物の内部でも大きい抵抗温度係数を持つ。図7の(a)は複数の結晶粒からなる半導体磁器組成物が一対の電極に挟まれた状態を示す模式図であり、図7の(b)は図7の(a)中の直線X−Xのポテンシャルエネルギーを示す模式図である。図7の(b)中の曲線aは室温でのポテンシャルエネルギーを示し、曲線bは200℃でのポテンシャルエネルギーを示す。ポテンシャルエネルギーが高い部位ほど、高い抵抗温度係数を持つ。
密度が5.00g/cm未満であると抵抗温度係数が小さくなったり機械強度が小さくなりすぎるために、実用に用いることができない。密度は好ましくは5.20g/cm以上とする。
密度が5.70g/cm超であると、図8に示すように、表面に形成された電極と半導体磁器組成物との界面のショットキー障壁に起因して界面の近傍でのみ大きな抵抗温度係数を持ち、電極から離れた当該組成物の内部では大きな抵抗温度係数を持たないPTC素子となる。
図8の(a)は複数の結晶粒からなる半導体磁器組成物が一対の電極に挟まれた状態を示す模式図であり、図8の(b)は図8の(a)中の直線Y−Y上のポテンシャルエネルギーを示す模式図である。図8の(b)中の曲線cは室温でのポテンシャルエネルギーを示し、曲線dは200℃でのポテンシャルエネルギーを示す。図8に示すような半導体磁器組成物を用いたPTC素子では、実施例で説明するように、熱処理を行ってもΔRaが十分には改善せず、耐電圧を高くする効果は実質的に望めない。また、図8に示すような半導体磁器組成物を用いたPTC素子では、表面に形成された電極の近傍の抵抗温度係数のみが半導体磁器組成物全体のPTC特性を担う(半導体磁器組成物の内部はPTC特性が小さい)ため、表面に形成する電極との密着性により電極の近傍の抵抗温度係数が変わると、それに伴って半導体磁器組成物全体のPTC特性も変わることになる。電極と半導体磁器組成物の密着度を一定にしない限りは、PTC素子の特性がばらついてしまう。このため、この半導体磁器組成物を用いてPTC素子を大量生産すると、製品の品質信頼性を損なう恐れが有る。
電極を形成した後、熱処理を行う。
熱処理は200℃以上500℃以下で0.1時間以上5時間以下の範囲で保持するように加熱する。熱処理を施すことによって耐電圧を高めることができる。熱処理温度が200℃よりも小さいとΔRaが大きくならず耐電圧を高める効果が十分に得られない。保持時間が0.1時間より短い場合も同様である。熱処理温度が500℃より高いと室温抵抗率が高くなってしまい、所望の特性が得られ難くなるため好ましくない。保持時間が5時間より長い場合も同様である。
熱処理は酸化性雰囲気中で行うことができる。大気中で行うこともできるし、酸素雰囲気中でも行うことができる。昇温速度は1℃/分〜100℃/分の範囲であることが好ましい。
以下、製造工程に沿ってさらに詳細に説明する。
半導体磁器組成物を得るためのさらに好ましい製造方法を説明する。
半導体磁器組成物は、組成式[(Bi・A)(Ba1−y1−x](Ti1−z)aで表される組成になるように、(Ba1−y)TiMOの組成からなる仮焼粉(以下、α仮焼粉という。)と(Bi・A)TiOの組成からなる仮焼粉(以下、β仮焼粉という。)を別々に用意して混合する。その後、上記α仮焼粉とβ仮焼粉を適宜混合した混合仮焼粉を用いて成形体を製造し、焼結する。このようにα仮焼粉とβ仮焼粉を別途用意し、これらを混合した混合仮焼粉を成形して焼結する製造方法(以下、「分割仮焼法」という)を採用することが好ましい。
α仮焼粉とβ仮焼粉はそれぞれの原料粉末に応じた適正温度で仮焼することで得られる。例えば、β仮焼粉の原料粉は、通常TiO、Bi、NaCOが用いられる。しかし、Biは、これらの原料粉の中では融点が最も低いので焼成による揮散がより生じ易い。そこでBiがなるべく揮散しないで、かつNaの過反応が無いように700〜950℃の比較的低温で仮焼する。一旦、β仮焼粉となした後は、β仮焼粉自体の融点は高い値で安定するので、α仮焼粉と混合してもより高い温度で焼成できる。
分割仮焼法を適用する事は必須ではないが、分割仮焼法を適用することによりBiの揮散とNaの過反応を抑え、秤量値に対しBiとNaの組成ずれの小さいβ仮焼粉が得られる。これにより室温における抵抗率が低く、キュリー温度のバラツキが抑制されたPTC材料が得られる。BiとNaの比は1:1を基本とするが、BiとNaの比にずれが生じたものでもよい。例えば、BiとNa比が配合時は1:1であるが、仮焼の際にBiが揮散して焼結後では1:1になっていなくてもよい。
α仮焼粉とβ仮焼粉を混合した後、焼結前に加熱することが好ましい。加熱することでα仮焼粉の組成とβ仮焼粉の組成とをより互いに固溶させることができ、半導体磁器組成物の内部の組成のバラツキを低減することができる。この加熱は、α仮焼粉とβ仮焼粉との混合物を1000℃〜1200℃の温度範囲で加熱することができる。以後、この加熱を固溶処理とする。
仮焼粉の粉砕粉にPVAを10質量%添加し、混合した後、造粒装置によって造粒することができる。成形は1軸プレス装置で行うことができる。成形体を400〜700℃で脱バインダ後、所定の焼結条件で焼結することで半導体磁器組成物が得られる。得られた半導体磁器組成物を切削等して所望の形状にする。
焼結後の半導体磁器組成物に電極を形成する。電極は既知の組成、例えばAg、Ni、Al、又はそれらの合金の粉末を用いた電極ペーストを用いることができる。
電極ペーストは550℃以上に加熱することで焼き付けることができる。
電極を焼き付ける際は通常大気雰囲気中で行うが、不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。不活性ガス雰囲気中で電極を形成することで界面の酸化を抑え界面抵抗を低減することができる。不活性ガスは窒素やアルゴンガスなどを用いることができる。また、酸化を抑えるために真空中で電極を形成することもできる。室温抵抗率の小さい半導体磁器組成物を得る場合には、雰囲気中の酸素濃度を500ppm以下、さらには100ppm以下とすることが好ましい。
電極を形成した後、熱処理を行う。
熱処理の温度、保持時間は上記で説明したとおりである。
以下、実施例によって具体的に本発明の半導体磁器組成物について説明する。以後、焼結後の半導体磁器組成物は単に焼結体という。なお、本発明は実施例の形態に限定されるものではない。
本発明では、耐電圧の良否判定としてΔRaとΔRbの比(以後、ΔRa/ΔRb)が1.10以上、室温抵抗率R25が1000Ωcm以下であるPTC素子が得られたものを実施例としている。
図10にPTC特性を示す図(横軸:温度、縦軸(対数表記):比抵抗)を示す。焼結体の評価方法については以下の通りである。
(桁数ΔR)
桁数ΔRは、式(1)に示すように、室温から500℃の間で最大の抵抗を示した最大抵抗Rの値を、25℃における抵抗R25の値で除した値を対数換算した値である。
ΔR=log(R/R25 )・・・(1)
例えば抵抗が10倍の差があれば桁数ΔRは1.0である。
(焼結体の内部の抵抗温度係数αin)
焼結体の内部の抵抗温度係数αinは次のようにして求めた。
両端面に電極を設けた厚みの異なる複数のPTC素子を用意する。室温から260℃まで5℃間隔でそれぞれ両電極間の抵抗値を4端子法で測定し、横軸に厚み(単位:mm)、縦軸に抵抗値をプロットしたデータを取る。図5は厚みと抵抗値を説明するための概略図であり、この図5では15℃〜260℃(15℃、180℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃)で測定した値を示している。
図5のように作成したデータから厚みと抵抗値との間の近似直線を求める。例えば180℃での近似曲線を図5に示す。この近似直線をR=a・Δt+Rと表すと、Δtは焼結体の厚み、Rは焼結体全体の抵抗値、傾きaは焼結体の内部での厚み1mmあたりの抵抗値(抵抗率)と見なせる。なお、抵抗値Rと抵抗率ρはR=ρ(d/S)の関係がある。(d:焼結体の電極間の厚み、S:焼結体と電極の接触面積)
各温度での抵抗率ρをプロットすると、図6に示すような曲線が描ける。(図6の縦軸は対数軸である)
抵抗温度係数αinは下記式で算出した。
αin=(lnR−lnR)×100/(T−T
は最大抵抗率、TはRを示す温度、Tはキュリー温度、RはTにおける抵抗率である。ここでTは抵抗率が室温抵抗率の2倍となる温度とした。
焼結体を複数用意できない場合には、その焼結体を順次薄くしながら上記測定を行う事で内部の抵抗温度係数αinを測定できる。例えば焼結体に電極を形成して室温から260℃まで5℃間隔でそれぞれ抵抗値を測定し、その後、切削で厚さを3/4にして同様に室温から260℃まで抵抗値を測定する。同様に厚さを基の1/2、1/4にして順次図ることで内部の抵抗温度係数αinを測定できる。
(室温抵抗率R25
室温抵抗率R25は、室温25℃で、4端子法で測定した。
(平均ボイド間距離)
平均ボイド間距離は、小さい方が抵抗温度係数αinが大きくなるため好ましい。焼結体の密度も抵抗温度係数αinと相互関係が有るが、平均ボイド間距離の方がさらに抵抗温度係数αinとの相互関係が確認できる。実施例35で述べる。
平均ボイド間距離は焼結体のSEM観察像より調べた。ボイドかどうかの判断はSEM画像で黒色部およびエッジ効果で周囲が白く囲まれている部分をボイドとした。図2は図1のSEM写真の一部を拡大して模式化した図である。SEM(scanning electron microscope)を用いて4000倍の視野で観察を行い、図2に示すように、各視野で無作為に1つのボイド(但し最大径が0.1μm以上10μm以下のもの)を選び、そのボイドから5か所の近接ボイドとの距離を測定して平均値を算出した。この作業を20回繰り返してすべての平均値を算出した。ボイドの距離はボイド同士の最も近い端と端の距離を測定した。
なお、最大径とは、あるボイドに外接する平行な2直線を複数引き、その間隔が最も広くなる位置での間隔を指すものとする。
(実施例1)
分割仮焼法を用いて以下の焼結体を得た。BaCO、TiO、Laの原料粉末を準備し、(Ba0.994La0.006)TiOとなるように配合し、純水で混合した。得られた混合原料粉末を900℃で4時間、大気中において仮焼し、α仮焼粉を用意した。
NaCO、Bi、TiOの原料粉末を準備し、Bi0.5Na0.5TiOとなるように秤量配合し、エタノール中で混合した。得られた混合原料粉末を、800℃で2時間、大気中において仮焼し、β仮焼粉を用意した。
用意したα仮焼粉とβ仮焼粉をモル比で73:7となるように配合し、純水を媒体としてポットミルにより、混合仮焼粉の平均粒径が1.0μm〜2.0μmになるまで混合、粉砕した後、乾燥させた。混合仮焼粉の粉砕粉にPVAを10質量%添加し、混合した後、造粒装置によって造粒した。得られた造粒粉を一軸プレス装置で成形し成形体とした。この成形体を700℃で脱バインダー後、酸素濃度0.01%(100ppm)の窒素雰囲気中にて1400℃で4時間保持し、その後徐冷して50mm×25mm×4mmの焼結体を得た。
得られた焼結体を10mm×10mm×1.00mm、10mm×10mm×0.75mm、10mm×10mm×0.50mm、10mm×10mm×0.25mmの板状に加工して試験片を4種類作製した。次に、電極材料の金属成分を100質量%としたときAgとZnの質量%を50:50とした電極ペーストを作製し、スクリーン印刷で10mm×10mmの両面にそれぞれ塗布した。さらにカバー電極としてAgペーストを重ねてスクリーン印刷でそれぞれ塗布した。塗布した電極を150℃で乾燥後、大気中、昇温24℃/分、降温24℃/分、600℃、10分保持で焼き付けて電極を形成した。なお、上記電極ペーストには、上記金属成分100質量%に対し、ガラスフリットを3質量%、有機バインダー25質量%を一律に添加した電極材料とした。
その後、熱処理を行った。大気中で昇降温速度60℃/分、最高温度400℃、保持時間30分で加熱した。
得られたPTC素子の密度、平均ボイド間距離、キュリー温度、室温抵抗率R25、抵抗温度係数αin、桁数ΔRを測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1の焼結体は密度が5.49g/cmである。
熱処理後の桁数ΔRaは5.5であり、熱処理をしていない焼結体の桁数ΔRbの4.4に対して1.25倍である。つまり熱処理によって耐電圧が十分高まる。
室温抵抗率R25は553Ω・cmと実用に用いることができるものが得られている。
また、抵抗温度係数αinが8.9%/℃と高く、焼結体の内部でもPTC特性を持つ。つまり、電極と焼結体の接合状態によって抵抗温度係数が左右されにくい材料組成といえる。
Figure 2014123603
(実施例2)
実施例1に対して組成式中のaが1.05となるようにα仮焼粉とβ仮焼粉を用意した。また、焼結温度は1380℃とした。それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表1に示す。
実施例2の焼結体は密度が5.52g/cmである。
熱処理後の桁数ΔRaは5.2であり、熱処理をしていない焼結体の桁数ΔRbに対して1.24倍である。つまり熱処理によって耐電圧が高まる。
室温抵抗率R25は752Ω・cmと実用に用いることができるものが得られている。
また、抵抗温度係数αinが8.7%/℃と高く、焼結体の内部でもPTC特性を持つ。つまり、電極と焼結体の接合状態によって抵抗温度係数が左右されにくい。
(比較例1)
実施例1に対して焼結温度を1340℃とし、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表1に示す。
比較例1の焼結体は密度が5.75g/cmである。
熱処理後の桁数ΔRaは4.7であり、熱処理をしていない焼結体の桁数ΔRbに対して1.04倍と、実施例1や実施例2(密度が5.49g/cm、5.52g/cm)のPTC素子よりも、ΔRの向上効果が小さい。つまり、密度が高い焼結体を用いたPTC素子は熱処理による耐電圧の向上効果が十分に得られない。
また、抵抗温度係数αinが0.0%/℃であり、焼結体の内部ではPTC特性を持たない(但し、電極と焼結体の界面の近傍では大きな抵抗温度係数を持つ)。つまり、電極と焼結体の接合状態によって抵抗温度係数が左右されやすい。
(比較例2)
実施例1に対して組成式中のaが1.05となるようにα仮焼粉とβ仮焼粉を用意した。また、焼結温度は1320℃とした。それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表1に示す。
比較例1の焼結体は密度が5.73g/cmである。
PTC特性を示さなかったため、桁数ΔRa、桁数ΔRb、抵抗温度係数αinは測定することができなかった。
(実施例3〜7、比較例3〜6)
実施例1に対して熱処理の保持温度と保持時間を表2に示す値に変え、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表2に示す。
実施例3〜7のPTC素子では、いずれも桁数ΔRaが桁数ΔRbに対して1.10倍以上であり、熱処理により耐電圧が十分に改善されている。また、全ての実施例において室温抵抗率R25は1000Ωcm以下である。また、桁数ΔRaは3.0以上である。
比較例3は保持温度を190℃としたものである。桁数ΔRaが4.5であり、桁数ΔRbに対して1.02倍で、熱処理による耐電圧の改善効果が小さい。
比較例4は保持温度を510℃としたものである。桁数ΔRaが5.7であり、桁数ΔRbに対して1.30倍と高くなっているものの、室温抵抗率R25が1000Ωcmを越えている(1051Ωcm)。
比較例5は保持時間を5分としたものである。桁数ΔRaが4.6であり、桁数ΔRbに対して1.05倍で、熱処理による耐電圧の改善効果が小さい。
比較例6は保持時間を320分としたものである。桁数ΔRaが5.7であり、桁数ΔRbに対して1.30倍と高くなっているものの、室温抵抗率R25が1000Ωcmを越えている(1072Ωcm)。
Figure 2014123603
(実施例8〜12、比較例7)
実施例1に対して組成式中のx及びyの量を表3に示す値に変え、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表3に示す。
実施例8〜12のPTC素子では、いずれも桁数ΔRaが桁数ΔRbに対して1.10倍以上であり、熱処理により耐電圧が十分に改善されている。また、全ての実施例において室温抵抗率R25は1000Ωcm以下である。また、桁数ΔRaは3.0以上である。
比較例7は組成式中のxの値を0.31としたものである。桁数ΔRaが5.5であり、桁数ΔRbに対して1.28倍と高くなっているものの、室温抵抗率R25が1000Ωcmを越えている(1124Ωcm)。
Figure 2014123603
(実施例13〜15、比較例8,9)
実施例1に対して組成式中のaの値を表4に示す値に変え、また、焼結温度を実施例13、比較例8,9は1400℃、実施例14,15は1340℃とし、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表4に示す。
実施例13〜15のPTC素子では、いずれも桁数ΔRaが桁数ΔRbに対して1.10倍以上であり、熱処理により耐電圧が十分に改善されている。また、全ての実施例において室温抵抗率R25は1000Ωcm以下である。また、桁数ΔRaは3.0以上である。
比較例8は、組成式中のaの値を0.89としたものである。桁数ΔRaが5.0であり、桁数ΔRbに対して1.22倍と高くなっているものの、室温抵抗率R25が1000Ωcmを越えている(1529Ωcm)。
比較例9は、組成式中のaの値を1.11としたものである。桁数ΔRaが5.4であり、桁数ΔRbに対して1.29倍と高くなっているものの、室温抵抗率R25が1000Ωcmを越えている(1285Ωcm)。
Figure 2014123603
(実施例16〜20、比較例10)
実施例1に対して半導体化元素として希土類元素を用いずに(y=0)、Tiサイトの一部をM元素とし、M元素の種類と組成式のzの値を表5に示す値に変え、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。
実施例16〜18、比較例10では、α仮焼粉を次のように用意した。
BaCO、TiO、及び、Ta原料粉末を準備し、Ba(Ti0.991Ta0.003〜0.011)Oとなるように配合し、純水で混合した。得られた混合原料粉末を900℃で4時間大気中で仮焼し、α仮焼粉を用意した。
実施例19では、α仮焼粉を次のように用意した。
BaCO、TiO、Nbの原料粉末を準備し、Ba(Ti0.997Nb0.003)Oとなるように配合し、純水で混合した。得られた混合原料粉末を900℃で4時間大気中で仮焼し、α仮焼粉を用意した。
実施例20では、、α仮焼粉を次のように用意した。
BaCO、TiO、Sbの原料粉末を準備し、Ba(Ti0.997Sb0.003)Oとなるように配合し、純水で混合した。得られた混合原料粉末を900℃で4時間大気中で仮焼し、α仮焼粉を用意した。
実施例16〜20、比較例10において、β仮焼粉の作製は、実施例1と同様に行った。また、その後のα仮焼粉とβ仮焼粉の混合、成形、焼結、電極形成、熱処理、及び評価は実施例1と同様の方法で行いPTC素子とした。得られた結果を表5に示す。
Figure 2014123603
実施例16〜20のPTC素子では、いずれも桁数ΔRaが桁数ΔRbに対して1.10倍以上であり、熱処理により耐電圧が十分に改善されている。また、全ての実施例において室温抵抗率R25は1000Ωcm以下である。また、桁数ΔRaは3.0以上である。
比較例10は、組成式中のzの値を0.11としたものである。桁数ΔRaが4.8であり、桁数ΔRbに対して1.2倍と高くなっているものの、室温抵抗率R25が1000Ωcmを越えている(1388Ωcm)。
(実施例21,22)
実施例1に対して組成式中のaが1.05となるようにα仮焼粉とβ仮焼粉を用意し、かつ半導体化元素として希土類元素RをLaからY,Ndに置換し、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。得られた結果を表6に示す。
実施例21,22のPTC素子では、いずれも桁数ΔRaが桁数ΔRbに対して1.10倍以上であり、熱処理により耐電圧が十分に改善されている。また、全ての実施例において室温抵抗率R25は1000Ωcm以下である。また、桁数ΔRaは3.0以上である。
Figure 2014123603
(実施例23,24)
実施例1に対して組成式中のaが1.05となるようにα仮焼粉とβ仮焼粉を用意し、かつ組成式の元素であるAをNaからK,Liに置換し、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。得られた結果を表7に示す。
実施例23,24のPTC素子では、いずれも桁数ΔRaが桁数ΔRbに対して1.10倍以上であり、熱処理により耐電圧が十分に改善されている。また、全ての実施例において室温抵抗率R25は1000Ωcm以下である。また、桁数ΔRaは3.0以上である。
Figure 2014123603
(実施例25)
実施例25は希土類元素にLaとYの2種類を用いた例である。
分割仮焼法を用いて以下の焼結体を得た。BaCO、TiO、Laの原料粉末を準備し、(Ba0.994La0.006)TiOとなるように配合し、純水で混合した。得られた混合原料粉末を900℃で4時間、大気中において仮焼し、α仮焼粉を用意した。
NaCO、Bi、TiOの原料粉末を準備し、Bi0.5Na0.5TiOとなるように秤量配合し、エタノール中で混合した。得られた混合原料粉末を、800℃で2時間、大気中において仮焼し、β仮焼粉を用意した。
用意したα仮焼粉とβ仮焼粉をモル比で73:7となるように配合し、純水を媒体としてポットミルにより、混合仮焼粉の平均粒径が1.0μm〜2.0μmになるまで混合、粉砕した後、乾燥させた。次いで1150℃で4時間の固溶処理をしてα−β仮焼粉を得た。得られたα−β仮焼粉にさらにYを1.0モル%加え、得られた仮焼粉を純水を媒体としてポットミルにより、混合仮焼粉の平均粒径が1.0μm〜2.0μmになるまで混合、粉砕した後、乾燥させた。混合仮焼粉の粉砕粉にPVAを10質量%添加し、混合した後、造粒装置によって造粒した。得られた造粒粉を一軸プレス装置で成形し成形体となした。この成形体を700℃で脱バインダー後、酸素濃度0.01%(100ppm)の窒素雰囲気中にて1420℃で4時間保持し、その後徐冷して50mm×25mm×4mmの焼結体を得た。
得られた焼結体を10mm×10mm×1.00mm、10mm×10mm×0.75mm、10mm×10mm×0.50mm、10mm×10mm×0.25mmの板状に加工して試験片を4種類作製した。次に、電極材料の金属成分を100質量%としたときAgとZnの質量%を50:50とした電極ペーストを作製し、スクリーン印刷で10mm×10mmの両面にそれぞれ塗布した。さらにカバー電極としてAgペーストを重ねてスクリーン印刷でそれぞれ塗布した。塗布した電極を150℃で乾燥後、大気中、昇温24℃/分、降温24℃/分、600℃、10分保持で焼き付けて電極を形成した。なお、上記電極ペーストには、上記金属成分100質量%に対し、ガラスフリットを3質量%、有機バインダー25質量%を一律に添加した電極材料とした。
その後、熱処理を行った。熱処理は、大気中で昇降温速度60℃/分、最高温度400℃、保持時間30分で加熱する条件とした。
得られたPTC素子の密度、平均ボイド間距離、キュリー温度、室温抵抗率R25、抵抗温度係数αin、桁数ΔRを測定した。
また、得られた素子をアルミフィン付きのヒータに組み込み、風速4m/sで冷却しながら13Vを印加して500時間行った。通電試験後の25℃での室温抵抗率を測定し、通電試験前と500時間通電後の室温抵抗率の差を通電試験前の室温抵抗率で除して抵抗変化率(%)を求め、経時変化を調べた。経時変化率は次式で定義される。
{(500時間通電した時の室温抵率抗)−(通電試験前の室温抵抗率)}/(通電試験前の室温抵抗率)}×100(%)
得られた結果を表8に示す。
実施例25の焼結体は密度が5.60g/cmである。
熱処理後の桁数ΔRaは4.2であり、熱処理をしていない焼結体の桁数ΔRb3.1に対して1.35倍である。つまり熱処理によって耐電圧が十分に高まる。
室温抵抗率R25は45Ω・cmと非常に小さい値のものが得られている。特に高い電流効率が要望されるPTC素子に有用である。
また、抵抗温度係数αinは5.8%/℃であり、焼結体の内部でもPTC特性を持つ。つまり、電極と焼結体の接合状態によって抵抗温度係数が左右されにくい材料組成といえる。
さらに、実施例25のPTC素子は経時変化が9.2%であり、実用的に好ましい10%以下のレベルに抑えられている。
Figure 2014123603
(実施例26,27)
実施例25に対して組成式中のyの値を表8に示す値に変え(La量は実施例25と同じy=0.006とし、Y量をy=0.030、0.040に増加)、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表8に示す。
実施例26の焼結体は、密度が5.51g/cmである。熱処理後の桁数ΔRaは4.1であり、熱処理をしていない焼結体の桁数ΔRb3.0に対して1.37倍である。つまり熱処理によって耐電圧が十分に高まる。室温抵抗率R25は30Ω・cmと非常に小さい値のものが得られている。また、抵抗温度係数αinは5.6%/℃であり、焼結体の内部でもPTC特性を持つ。さらに、経時変化が2.1%と極めて低く、実用として実施例25よりもさらに好ましい6%以下のレベルに抑えられている。
実施例27の焼結体は、密度が5.46g/cmである。熱処理後の桁数ΔRaは4.0であり、熱処理をしていない焼結体の桁数ΔRb2.9に対して1.38倍である。つまり熱処理によって耐電圧が十分に高まる。室温抵抗率R25は22Ω・cmと非常に小さい値のものが得られている。また、抵抗温度係数αinは5.1%/℃であり、焼結体の内部でもPTC特性を持つ。さらに、経時変化が1.9%と極めて低く、実用として実施例25よりもさらに好ましい6%以下のレベルに抑えられている。
(実施例28〜30)
実施例25に対して組成式中のaの値を表9に示す値に変え、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表9に示す。
実施例28〜30のPTC素子では、いずれも桁数ΔRaが桁数ΔRbに対して1.20倍以上であり、熱処理により耐電圧が十分に改善されている。また、室温抵抗率R25は100Ωcm以下である。また、経時変化が6%以下のレベルに抑えられている。また、桁数ΔRaは3.0以上である。
Figure 2014123603
(実施例31〜34)
実施例25に対して組成式中のaの値を1.03に変え、かつ、熱処理の温度と保持時間を表10に示す値に変え、それ以外は同様の製造工程でPTC素子を作製した。測定結果を表10に示す。
実施例31〜34のPTC素子では、いずれも桁数ΔRaが桁数ΔRbに対して1.10倍以上であり、熱処理により耐電圧が十分に改善されている。また、全ての実施例において室温抵抗率R25は100Ωcm以下である。また、桁数ΔRaは3.0以上である。また、経時変化が6%以下のレベルに抑えられている。
Figure 2014123603
(実施例35)
図3は焼結体の平均ボイド間距離と焼結体内部の抵抗温度係数αinの関係を示す図、図4は密度と抵抗温度係数αinの関係を示す図である。
図4に示すように密度と抵抗温度係数αinはさほど相関がないが、図3に示すように平均ボイド間距離と抵抗温度係数αinには高い相関が見られ、平均ボイド間距離を近づける事で高い抵抗温度係数αinが得られることがわかる。
内部に存在するボイド同士の間隔の平均値(以下、平均ボイド間距離という)が短いほど、内部の抵抗温度係数が大きい焼結体が得られる。平均ボイド間距離は8.0μm以下、さらには7.0μm以下、さらには5.0μm以下であることが好ましい。
逆に、平均ボイド間距離が小さくなりすぎると焼結体の機械的強度が低下しやすい。このため、平均ボイド間距離の下限値は1.0μm以上、さらには2.0μm以上、さらには3.0μm以上であることが好ましい。
このボイドは、原料粉末同士の隙間が焼結後も残留して形成されるか、または、焼結によってBiの揮発により形成されるものと推察される。
(発熱モジュール)
図9は、本発明の一実施形態に係る発熱モジュール(PTCヒータ)の模式図である。上述のPTC素子を、図9に示すように金属製の放熱フィン21a、21b、21cに挟み込んで固定し、発熱モジュール20を構成することができる。PTC素子11は焼結体1aと電極2a,2b,2cからなり、電極2a,2cはそれぞれ正極側の電力供給電極20a,20cに熱的および電気的に密着され、他方の面に形成した電極2bは負極側の電力供給電極20bに熱的および電気的に密着される。
また、電力供給電極20a、20b、20cはそれぞれ放熱フィン21a、21b、21cと熱的に接続している。なお、絶縁層2dは電力供給電極20aと電力供給電極20cの間に設けられ、両者を電気的に絶縁している。PTC素子11で生じた熱は電極2a、2b、2c、電力供給電極20a、20b、20c、放熱フィン21a、21b、21cの順に伝わり、主に放熱フィン21a、21b、21cから雰囲気中に放出される。
電源30cを、電力供給電極20aと電力供給電極20bの間、または電力供給電極20cと電力供給電極20bの間に接続すれば消費電力は小さくなり、電力供給電極20aおよび電力供給電極20cの両方と電力供給電極20bの間に接続すれば消費電力は大きくなる。つまり、消費電力を2段階に変更することができる。こうして発熱モジュール20は、電源30cの負荷状況や、希望する加熱の緩急の度合いに応じて加熱能力を切り替えできる。
この加熱能力切り替え可能な発熱モジュール20を電源30cに接続することで加熱装置30を構成することができる。なお、電源30cは直流電源である。発熱モジュール20の電力供給電極20aと電力供給電極20cはそれぞれ別のスイッチ30a、30bを介して電源30cの一方の電極に並列接続され、電力供給電極20bは共通端子として電源30cの他方の電極に接続される。
スイッチ30a、30bの何れか一方のみを導通させれば加熱能力を小さくして電源30cの負荷を軽くすることができ、両方を導通すれば加熱能力を大きくすることができる。
この加熱装置30によれば電源30cに特別な機構を持たせなくても、PTC素子11を一定温度に維持することができる。つまり、大きな抵抗温度係数を有する焼結体1aがキュリー温度付近まで加熱されると、焼結体1aの抵抗値が急激に上昇しPTC素子11に流れる電流が小さくなり、自動的にそれ以上加熱されなくなる。また、PTC素子11の温度がキュリー温度付近から低下すると再び素子に電流が流れ、PTC素子11が加熱される。このようなサイクルを繰り返してPTC素子11の温度、ひいては発熱モジュール20全体の温度を一定にすることができるので、電源30cの位相や振幅を調整する回路、さらには温度検出機構や目標温度との比較機構、加熱電力調整回路なども不要である。
この加熱装置30は、放熱フィン21a〜21cの間に空気を流して空気を暖めたり、放熱フィン21a〜21cの間に水などの液体を通す金属管を接続して液体を温めたりすることができる。このときもPTC素子11が一定温度に保たれるので、安全な加熱装置30とすることができる。
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
例えば、ディーゼルエンジン用のPTCヒータ等の発熱モジュールに本発明は有用である。
1a:焼結体、
2a,2b,2c:電極、
11:PTC素子、
20:発熱モジュール、
20a,20b,20c:電力供給電極、
21a,21b,21c:放熱フィン、
30a,30b:スイッチ、
30c:電源

Claims (4)

  1. 組成式が[(Bi・A)(Ba1−y1−x](Ti1−z)a(ただし、AはNa、Li、Kのうち少なくとも1種、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種、MはNb、Ta、Sbのうち少なくとも一種)で表され、前記a,x、y、zが、0.90≦a≦1.10、0<x≦0.30、0≦y≦0.050、0≦z≦0.010(但し、y+z>0)を満足するように原料を準備し、
    前記原料を仮焼し、成形し、
    得られた成形体を、密度が5.00g/cm以上5.70g/cm以下となるように焼結して半導体磁器組成物とし、
    前記半導体磁器組成物に電極ペーストを塗布し、前記電極ペーストを550℃以上で焼付けしてPTC素子とし、
    その後、前記PTC素子に、200℃以上500℃以下で、0.1時間以上5時間以下の範囲で保持する熱処理を施すことを特徴とするPTC素子の製造方法。
  2. 前記yが0.010≦y≦0.050であり、RがYを含む2種類以上の希土類元素であることを特徴とする請求項1に記載のPTC素子の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の製造方法により得られたPTC素子。
  4. 請求項3に記載のPTC素子を用いた発熱モジュール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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