JP2014121288A - 担子菌培養食品 - Google Patents

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静乃 ▲高▼橋
Shizuno Takahashi
Fuyuki Shimoda
芙雪 下田
Kenichi Nishikawa
健一 西川
Norimasa Yanai
徳正 矢内
Kenichi Ohata
賢一 尾畑
Mariko Tabata
麻里子 田畑
Tokumitsu Matsui
徳光 松井
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Abstract

【課題】
食品としていっそう優れた呈味及び香味を示す担子菌培養物を提供すること。
【解決手段】
微生物培養物の残渣を培地として担子菌を培養又は発酵させ、当該培養体及び/又は発酵液をそのまま或いは抽出して、呈味性の食品素材を得る。好適な当該微生物培養物の残渣は、酵母残渣及び酒粕である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、担子菌培養物を利用した食品に関する。特に、微生物培養物の残渣を培養基材として用いた担子菌培養物の利用に関する。
担子菌の培養物を利用した食品や調味料の開発について、いくつかの報告がなされている。例えば、特許文献1は、マンネンタケ(ヒダナシタケ目サルノコシカケ科マンネンタケ)を、グルコース及び小麦胚芽を必須成分とする液体培地中で培養することで、やや甘く、小麦胚芽の香ばしい風味を有したエキスが得られることを開示している。当該エキスの主成分は、多糖類及び糖蛋白質であったとされている。
特許文献2は、おから、或いはおから及び米、麦、ふすま又は米糠を培地に用いて担子菌を培養することで、遊離アミノ酸に富んだ食品素材が得られることを開示している。当該発明では、マイタケ、ヒラタケ、ブナハリタケ、アイアナタケ、スエヒロタケ、カワラタケ、アカメバタケ、シイタケ等の、広範な食用菌類が利用可能であるとされている。
特許文献3は、食用菌類を穀類に繁殖させることにより、麹を得る方法を開示している。つまり、従来から用いられてきたアスペルギルス属等の麹カビに代えて担子菌類を用いることで、アルコール飲料やアルコール含有調味料の製造に利用可能な麹を得る技術である。当該麹は、その後、炭素源としてサッカロマイセス属酵母などにより発酵され、清酒等のアルコール飲料として利用可能になるとされている。
特許文献4は、担子菌を用いたアルコール発酵そのものに関連している。すなわち、アミラーゼ活性及びアルコール脱水素酵素活性を有する担子菌により、蒸し米、麦芽及び葡萄から、それぞれ、清酒、ビール及びワインを製造する技術が開示されている。
特許文献5は、蒸煮大豆を担子菌により発酵させることで、血栓症予防効果等、納豆と同様な機能性を有しつつ、特有のうま味を有するものの納豆のような臭気や粘りのない食品が得られることを開示している。当該発明では、ハラタケ類、ヒダナシタケ類、腹菌類、キクラゲ類等の、広範な担子菌が利用可能であるとされている。
特許文献6は、糖質および梅酢を主成分とする培地中に青梅を浸漬させ、当該青梅を、カワラタケ、スエヒロタケ、マンネンタケ、カイガラタケ又はスジチャダイゴケ等の担子菌により発酵させることで、保存性が高く、呈味性に優れ、さらに機能性に富んだ発酵梅が得られることを開示している。
特許文献7は、豆乳を、プロテアーゼ活性を有する担子菌により発酵させることで、調味料や飲料として呈味性に優れ、さらに血栓症の予防効果等の機能性に富んだ発酵豆乳が得られることを開示している。
特許文献8は、野菜および果実を主材料とするウスターソース用材料の混合液を、セルラーゼ活性を有する担子菌により発酵させることで、呈味性に優れ、さらに抗酸化活性等の生理活性に富んだウスターソース類が得られることを開示している。当該発明においても広範な担子菌が利用可能であり、マスタケ、ムキタケ、ヒラタケ、マイタケ、カワラタケ等が好適なものとして挙げられている。それらの担子菌により、野菜や果実の搾汁、煮出し汁、ピューレ等を混合或いは濃縮したものを主材料にし、適宜、砂糖類、食酢、食塩、香辛料、でん粉、調味料(アミノ酸等)、はちみつ、酒類等の調味材料が添加されたウスターソース用材料が発酵される。
しかしながら、いずれの文献も、もっぱら担子菌の天然の繁殖基材である植物体を発酵等するものである。従って、いずれの文献も、微生物培養物の残渣を、担子菌の培養基材として用いることを開示するものではなく、況や、そのような培養基材を用いて得られた担子菌培養体や発酵液が、食品として優れた呈味及び香味を示し得ることを示唆していない。
特開昭60−43356号公報 特開昭62−14759号公報 特開平11−290064号公報 特開2001−286276号公報 特開2005−65588号公報 特開2008−79535号公報 特開2008−79536号公報 特開2012−44932号公報
本発明は、食品としていっそう優れた呈味及び香味を示す担子菌培養物を提供することを課題とする。
本発明者らは、担子菌を培養ないし発酵させる際の培養基材を選択することで、それにより得られる培養物等の呈味及び/又は香味が改善する可能性を探求してきた。驚くべきことに、これまでに担子菌の培養基材としては通常用いられてこなかった微生物培養物の残渣を培地として培養ないし発酵させることで、得られた菌糸体及び発酵液が従来のものよりも有意に優れた呈味及び香味を示すことが見出された。従って、本発明の第1の局面は、
(1)微生物培養物の残渣を培地として担子菌を培養又は発酵させることにより得られることを特徴とする呈味食品、である。
また、前記の微生物培養物の残渣が酵母残渣である場合、特に呈味と香味の量、質、バランスともに優れていた。従って、本発明の好適な態様は、
(2)微生物培養物の残渣が酵母残渣である、上記(1)記載の呈味食品、である。
酵母残渣は、例えば飼料や食品へ添加する有用成分の製造の際に、副生成物のトルラ酵母抽出粕として多量に発生するし、或いは、ビール製造の際に、副生成物のビール酵母粕として多量に発生する。故に、それらの酵母残渣を、本発明の目的において有効に活用することの産業的意義は大きい。従って、本発明の更に好適な態様は、
(3)前記酵母がトルラ酵母又はビール酵母である、上記(2)記載の呈味食品、である。
また、前記の微生物培養物の残渣が酒粕である場合にも、それにより培養ないし発酵された担子菌の菌糸体およびその抽出物等が優れた呈味及び香味を示すことが見出された。従って、本発明の別の好適な態様は、
(4)微生物培養物の残渣が酒粕である、上記(1)記載の呈味食品、である。
本発明の微生物培養物残渣から本質的に成る培地を液体培地とすると、担子菌のいっそう簡便な培養・発酵が可能になる。また、当該培地が付加的な炭素源ないし炭水化物、典型的には糖類を含むと、担子菌の生育を促進し得る。従って、本発明の好適な態様は、
(5)培地が液体培地である、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の呈味食品;
(6)前記培地が、微生物培養物の残渣及び炭水化物から成る、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の呈味食品;
(7)前記炭水化物が糖質である、上記(6)に記載の呈味食品、を包含する。
本発明の担子菌の菌糸体や発酵液及びそれに由来する抽出物等は、他の食品に微量で添加した際にも、当該食品の風味を顕著に改善することが確認された。従って、本発明は、
(8)食品が調味料である、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の呈味食品、も意図する。
本発明により、優れた呈味及び/又は香味を示す食品素材が提供される。また、トルラ酵母、ビール酵母及び酒粕が本発明における担子菌の培養基材として利用される場合には、それらの有効活用にも貢献できる。
本発明の担子菌培養上清の官能評価結果を示すグラフである。図中、「トルラ培地」は実施例1、「ビール酵母培地」は実施例2、及び「酒粕培地」は実施例3、並びに「おから」は比較例1である。「各未発酵液」は対照であり、それを対応する上清に対する基準点の4点として示している。上段のグラフはエノキタケの培養上清の結果であり、下段のグラフはスエヒロタケの培養上清の結果である。 本発明の担子菌培養上清をコンソメ溶液に添加した場合の官能評価結果を示すグラフである。図中、「トルラ培地」は実施例1、「ビール酵母培地」は実施例2、及び「酒粕培地」は実施例3、並びに「おから」は比較例1である。「各未発酵液」は対照であり、それを対応する上清に対する基準点の4点として示している。上段のグラフはエノキタケの培養上清の結果であり、下段のグラフはスエヒロタケの培養上清の結果である。 本発明の呈味食品(培養上清)をバター醤油ライスに添加して、官能評価を行った結果である。 本発明の呈味食品(培養上清)をドレッシングに添加して、官能評価を行った結果である。 本発明の呈味食品(培養上清)をデミグラスソースに添加して、官能評価を行った結果である。 本発明の呈味食品(培養上清)をハンバーグに添加して、官能評価を行った結果である。 本発明の呈味食品(菌糸体)をハンバーグに添加して、官能評価を行った結果である。
本発明では、微生物培養物の残渣を培地として担子菌を培養又は発酵させ、当該培養体及び/又は発酵液をそのまま利用するか、或いは抽出してから利用することで、呈味性の食品素材が得られる。前記のいずれの先行文献も、微生物培養物の残渣を担子菌の培養基材として用いること、並びにそのようにして得られた担子菌培養体及び/又は発酵液が、食品として優れた呈味及び香味を示し得ることを示唆していない。具体的に、本発明は以下のようにして実施可能である。
<微生物培養物の残渣>
本発明においては、「残渣」とあるように、微生物を培養した際の培養物から別の有用物質を分離した後に残った菌体、特に当該菌体の細胞壁構造を物理的及び/又は化学的に破壊して、菌体の内容物を抽出した後の残骸が用いられる。従って、本発明の残渣は、微生物培地の材料として市販されているような酵母エキスとの対比で説明すると、当該酵母エキスの絞り粕に対応する。要するに、市販の酵母エキスは、酵母の細胞壁成分を除去したものであるのに対して、本発明の残渣とは細胞壁成分を必須で主要な成分として含むものと言い得る。本発明の残渣は、通常は液体である前記培養物を濾過して、濾別された固形分として分離することができる。或いは、液体である培養物を遠心分離して、その沈殿として分離することができる。さらに、そのようにして濾別された固形分や遠心分離による沈殿として回収された菌体を、超音波やホモミキサーなどで物理的に破砕するか、アルカリ水等により化学的に変成させ、細胞内成分を抽出した後のものを、本発明の残渣として利用する。但し、酒粕のように、培養物から菌体のみをほぼ完全に分離することが不可能であるか、著しく煩雑なときは、そのように分離が困難な他の成分を若干含んだものも、本発明の残渣といい得る。
従って、本発明の微生物は、典型的には、工業的スケールで培養される微生物であり得る。例えば、ビールの製造に用いられるビール酵母(サッカロマイセス・セレビシェ、サッカロマイセス・ウバルム等)は、ビール製造時に大量に培養されるので、それら酵母は本発明の微生物として好適である。また、トルラ酵母(キャンディダ・ユティリス)も、その培養物から核酸、有機酸やグルタチオンを抽出する目的で工業的に利用されているので(特開2004−313178号公報、特開2009-261253号公報、特開2012−235714号公報、特開2011−68569号公報等)、当該酵母も本発明の微生物として好適である。更に、サッカロマイセス・セレビシェのうち酒精酵母として利用されるもの(日本醸造協会7号酵母等)も、勿論、本発明の好適な微生物の例である。或いは、パン酵母も、欧州等では酵母エキスを製造する際に大量培養されて、その残渣が利用可能であるので、好適な微生物の例である。
すなわち、本発明の目的のために特段に微生物を培養する必要はなく、そうすることは単に経済的に不利なだけである。本発明においては、要するに、前記のようなビール製造や有用物質生産において、副生成物として発生する菌体又は抽出後の残骸から成る所謂「酵母残渣」や、清酒醸造の際に副生成物として発生する「酒粕」を用いればよい。
同様の理由から、工業的スケールで培養されている糸状菌(アスペルギルス、ペニシリウム等)、藻類(クロレラ、ユーグレナ等)の微生物培養物残渣も本発明に利用し得る。
<担子菌>
本発明では、食用可能な担子菌であれば、いずれのものも使用可能である。担子菌は、その子実体が所謂キノコとして知られているものであるが、典型的には、ハラタケ目、ヒダナシタケ目、キクラゲ目、腹菌類を含む。本発明において好適な担子菌は、オキナタケ科、キクラゲ科、キシメジ科、サルノコシカケ科、サンゴハリタケ科、スエヒロタケ科、タコウキン科、トンビマイタケ科、ハラタケ科、ヒラタケ科及びマンネンタケ科のものであり、特にキシメジ科、サンゴハリタケ科、スエヒロタケ科、トンビマイタケ科、ハラタケ科及びヒラタケ科が好ましい。属レベルでは、エノキタケ属、カワラタケ属、キクラゲ属、キツネタケ属、サンゴハリタケ属、シイタケ属、スエヒロタケ属、タマチョレイタケ属、タモギタケ属、ハラタケ属、ヒラタケ属、ブクリョウ属、フミヅキタケ属、マイタケ属及びマンネンタケ属が好ましく、そのうちで、エノキタケ属、サンゴハリタケ属、スエヒロタケ属、ハラタケ属、ヒラタケ属及びマイタケ属を特に好適なものとして例示できる。種としては、アミスギタケ、アラゲキクラゲ、エノキタケ、エリンギ、カワラタケ、キツネタケ、サンゴハリタケ、シイタケ、シロタモギタケ、スエヒロタケ、ツクリタケ、ヒラタケ、ブクリョウ、ブナシメジ、マイタケ、マンネンタケ、ヤナギマツタケ及びヤマブシタケを挙げることができ、そのうちで、エノキタケ、サンゴハリタケ、スエヒロタケ、ツクリタケ、ヒラタケ及びマイタケが好ましい。或いは、マイタケ、ツクリタケ、エノキタケ、アラゲキクラゲ、エリンギ、シイタケ、ヤナギマツタケ、スエヒロタケ、サンゴハリタケ、ヒラタケ、ブナシメジ、マンネンタケ、カワラタケ、アミスギタケ、ナメコ及びマツタケが好ましい別の態様もある。これらの担子菌は、単独でも、また2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
<培養又は発酵>
本発明は、前記の微生物培養物の残渣を培地として、担子菌を培養又は発酵させることを特徴とする。なお、本明細書において、培養とは、主に生育した担子菌の菌糸等(培養体)を採取し、それをそのまま或いは抽出等して本発明の食品に利用することを意図し、一方、発酵とは、主に担子菌を生育させた後の培地である発酵液を、そのまま或いは抽出等して本発明の食品に利用することを意図しているが、実際には両者を厳密に区別する必要はなく、要するに、本発明において「培養又は発酵」とは、広義に、本発明の微生物培養物の残渣を培地として担子菌を生育させて得られたもの(したがって、菌糸及び培養液等を含む。)を利用することを意味する。
また、本発明において、微生物培養物の残渣を培地に用いるとは、当該微生物培養物の残渣を培養基材として利用することを意味する。言い換えれば、本発明の培地の主成分が、本発明の微生物培養物の残渣であることを要する。すなわち、後記実施例及び比較例で示すように、酵母の細胞壁を主要成分として含んだ本発明の微生物培養物の残渣を用いた場合にのみ、呈味の量、質、バランスが優れることが見出された。例えば、本発明の好適な液体培地には、質量基準(W/W)で、本発明の微生物培養物の残渣(固形分として)が約3〜50%、より好ましくは約7〜30%含まれ得る。
しなしながら、本発明の培地には、担子菌の生育を補助する目的で炭素源を含ませてもよい。そのような炭素源は、使用する担子菌により容易に資化されるものであればいずれのものでも構わないが、例えば炭水化物、特に糖類が適している。当該糖類としては、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース、ラクトース、オリゴ糖、澱粉等が挙げられるが、これに限定されない。ただし、当該炭素源は、担子菌の生育補助のみの目的で使用されるので、過剰に用いられるべきでない。まず、過剰な炭素源の添加は、本発明を実施する際の経済性を損ねる。また、理論に拘束されるわけではないが、過剰の炭素源の添加は担子菌の発酵パターンに影響を与えて、好ましいバランスの呈味発現に悪影響を与える可能性がある。従って、本発明の培地への炭水化物の添加量は、本発明の微生物培養物の残渣に対して、質量基準で20%未満であり、好ましくは1〜10%である。
従って、本発明の培地を液体培地の形態とする際には、当該液体培地は、水のほかに本発明の微生物培養物の残渣及び炭水化物から本質的に成り、通常は、質量基準で、3〜50%の本発明の微生物培養物の残渣(固形分として)及び10%未満の炭水化物から成る、好適には、7〜30%(固形分として)の本発明の微生物培養物の残渣及び0.1〜3%の炭水化物から成る。なお、本発明の液体培地は、通常の担子菌培養において補助的に用いられているような培地原料、例えばpHを担子菌の生育に至適な範囲に調整するための緩衝塩、担子菌の生育に有用なビタミン、核酸や無機塩等を含んでいても差し支えなく、そのような培地も本発明の微生物培養物の残渣及び炭水化物から本質的に成るものの範囲内である。
次いで、前記培地における担子菌の培養/発酵は、例えば担子菌の培養・維持のために広く用いられているポテトデキストロース寒天(PDA)培地上で、20〜30℃の培養温度下、7日〜14日程度生育させた菌糸体を、本発明の培地に接種することで開始される。その後、本発明の培地において担子菌を、その生育に適した条件下で培養/発酵すればよい。
各々の担子菌の成育に適した条件は当業者に周知である。例えば、エノキタケやスエヒロタケ、シイタケを液体培地内で生育させる場合は、pH3.0〜8.0、好ましくはpH5.0〜8.0程度で、20℃〜30℃の範囲に維持すればよい。生育は、嫌気的条件下でも好気的条件下でも構わないが、一般的には好気的条件下で培養するのが、成育速度等の面で好ましい。液体培地中で好気的に培養/発酵する際には、例えばフラスコ振盪培養やジャー・ファーメンターでの攪拌及び通気培養を用いることができる。エノキタケやスエヒロタケ、シイタケを液体培地内で生育させる場合は、1日〜50日程度の培養期間が例示でき、好ましくは1〜30日程度である。
培養時間は、担子菌が十分に生育するまでの時間であってよい。担子菌の生育状況は、当業者であれば、経時的に肉眼で観察するだけで容易に判別可能である。或いは、液体培養の場合には、培養上清中の全窒素量、炭水化物量やpHなどを経時的に測定することでも容易に判別できる。
<呈味食品>
本発明の呈味食品は、本発明の微生物培養物の残渣を培地として担子菌を生育させて得られたものを主成分として利用することで製造される。担子菌が液体培地中で生育させられたときには、その培養液を利用するのが簡便である。そのような培養液の回収は、当業者に周知のいかなる方法によってもよく、例えば、篩、濾布やフィルターを利用して濾過したり、遠心分離機を用いて担子菌の菌糸体を除去したりすればよい。そのようにして回収した培養液は、通常、加熱処理などで殺菌され、所望の場合には、更なるフィルター濾過等による清澄化や、水分の添加或いは加熱濃縮によるBrix調整などが施される。
また、本発明の呈味食品では、上記のようにして濾過や遠心分離により分離された菌糸体も利用可能である。そのような菌糸体は、例えばハンバーグ等のようにテクスチャーを有する食品に配合することにより、味のみではなく当該テクスチャーにも寄与する場合がある。菌糸体を利用する場合は、培養液から分離したものをそのまま利用することも可能ではあるが、流通時の保存性を高めたり、使用時のハンドリング性を高めたりする観点から、乾燥して用いることもできる。その際には、例えば、棚段式乾燥、ベルト乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥後の菌糸体の含水率は1〜10質量%程度であることが、腐敗等の問題が生じにくくなるので、好ましい。更に、乾燥した菌糸体は、粉体の方が取り扱い易いので、粉砕処理して粉体状にすることも好ましい。当該粉砕処理には、例えば、カッターミル等の一般的に普及している装置を用いればよい。
更に、本発明の呈味食品では、必ずしも前記のように培養液と菌糸体を分離して用いる必要はない。つまり、例えば担子菌を生育させて得られたものをそのままホモゲナイザー等によりスラリーにして用いてもよい。或いは、一旦分離した培養液と菌糸体を、用途に応じた最適な比率で、再混合しても差し支えない。
勿論、本発明では、担子菌を、本発明の微生物培養物の残渣から本質的に成る固体培地上で生育させてもよいが、その場合には、当該生育後の菌糸体(場合により子実体を含む)と培地を、本発明の呈味食品として利用することもできる。例えば、生育後の菌糸体と培地を、棚段式乾燥、ベルト乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の方法で乾燥し、乾燥物の含水率を1〜10質量%程度にして、カッターミル等で粉砕して粉体状にして利用することができる。
本発明の呈味食品は、言うなれば、食品の風味、香味及び/又は食感等を改善するために他の食品に配合される呈味性の食品素材である。典型的には、そのような食品素材は、調味料の範疇に入り得る。しかして、本発明の呈味食品は、前記のものの抽出物であってもよい。例えば、担子菌の発酵液を一旦乾燥し熱水やエタノール等の有機溶剤で抽出したり、担子菌の菌糸体や固体培養を同様に抽出したりして、必要により溶媒を留去すればよい。溶媒を留去した後の固形分をそのまま利用したり、それを再度水や緩衝液に溶解させたりすることも自由である。また、本発明の呈味食品を製造するに際しては、前記のいずれのものに対しても、所望により、他の食品成分、例えば食塩や胡椒などの香辛料、香料、保存料等を添加しても構わない。そのような任意の食品成分、その添加量及び添加方法は、当業者が熟知している。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り、「%」は質量/質量%を意味する。
以下の実施例では、以下の材料及び方法を用いた。
<培養基材>
・トルラ酵母残渣:商品名「KR酵母」、興人社製(水分量10%)
・ビール酵母残渣:商品名「Inactive Dry Brewers Yeast」、Ekoproduktas社製(水分量8%)
・酒粕:商品名「ハクツル『酒粕』」、米谷商店社製(水分量51%)。
・おから:商品名「味わい生おから」、青蔵屋社製(水分量81%)。
<担子菌前培養>
各担子菌は、PDA培地上で十分に生育するまで培養し、担子菌が生育している培地の2〜3欠片を滅菌スパテラで培地ごとかき取り、本培養の培地に接種した。
<分析>
・全窒素量:改良デュマ法により燃焼式窒素測定装置(製品名「NC−220F」;住化分析センター社製)を使用して測定した。
・グルコース量:試料溶液を3倍希釈して、ポータブルグルコース計(製品名「GF−501」;タニタ社製)により測定した。但し、センサーの測定限界(0.005%)以下であった場合は、試料溶液をそのまま測定した。
・水分:乾燥減量(%)(85℃で16時間乾燥後)を測定した。
・Brix:アタゴ社製の手持屈折計を使用した。
・pH:ガラス電極pHメーター(製品名「HM−30G」;東亜ディーケーケー社製)により測定した。
・塩分・酸度:電位差自動滴定装置(製品名「AT−610」;京都電子工業社製)により測定した。
<官能評価>
5名の専門家パネルが、対照品を4点(基準点)として、評価が高くなる順で1〜7点まで採点し、その平均値を算出した。また、パネルには、喫食した際の印象を自由に記載させた。
[実施例1〜3及び比較例1] 担子菌の培養及び官能評価
(担子菌の培養)
担子菌として、エノキタケ(NBRC30905株)及びスエヒロタケ(NBRC30749株)を使用した。表1に示す組成の培地の100mlを入れた300ml容三角フラスコに蓋をして、121℃、15分間の条件でオートクレーブ滅菌した。滅菌後の液体培地に前培養した各担子菌を接種した。その後、25℃で24日間振盪培養(タイテック社製、製品名「Bio Shaker BR−300LF」を使用し、振幅5cm以下で回転数100rpm)した。培養前後の培養液の全窒素量及びグルコース量の変化を表2に、並びに培養基材としてトルラ酵母残渣を使用した場合の、培養後の培養液のBrix、pH、塩分、酸度(乳酸換算)を表3に、及び菌糸体の全窒素量、水分を表4に、それぞれ、示した。なお、表1中に示されるように、「おから」を培養基材として使用したものを本発明の実施例に対する比較例とした。
Figure 2014121288


Figure 2014121288

Figure 2014121288

Figure 2014121288
(官能評価)
培養後、三角フラスコの内容物から、4℃に冷却しつつ15000rpmで10分間遠心分離して固形分(菌糸体)を除去し、必要に応じて100メッシュの篩で濾過して上清を得た。得られた上清の200μlに対して0.8%食塩水(並塩;ダイヤソルト社製)の400μlを添加して、官能評価に用いた。
官能評価は、ティースプーンに前記試料の100μlを量り取り、試飲することで行った。対照としては、前記培養上清の代わりに発酵前の液(培養0日)を用いて、同様にして官能評価した。評価項目としては、「うま味の強さ」、「塩味の強さ」、「風味のよさ」、「コクの強さ」、「味の伸び」、「味の広がり」及び「総合的評価」とした。その結果を表5及び図1に示す。
更に、上記の各上清を、1.3%コンソメ液(味の素社製;商品名「コンソメ顆粒」を使用して調製。)の100gに対して1.5g添加し、評価した。対照は、上清を添加しないコンソメ液とした。評価項目としては、「塩味の強さ」、「甘味の強さ」、「うま味の強さ」、「風味の強さ」、「味の伸び」、「コクの強さ」及び「総合的評価」とした。結果を表6及び図2に示した。
Figure 2014121288

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上記のとおり、本発明の培養上清は、ほとんど全ての項目で、おからを培養基材として使用した場合の比較例1を上回っていた。また、本発明の培養上清は、そのまま試飲した場合には良好なキノコ的発酵風味のよさが感じられ、コンソメ液に添加した場合には香味野菜的風味を増強した。その他にも、実施例1については、うま味強く味の伸びや広がりを感じたというパネルが多く、実施例2については、実施例1と同様の傾向であるが、若干の苦味もあり、それがコクに感じ美味しいというパネルもいた。実施例4については、フローラルな芳香臭があり、味の広がりを感じたパネルが多かった。他方、比較例については、良好な香気が得られず、薄っぺらい味との評価であった。
[実施例4〜8] 各種食品へ添加した場合の呈味改善効果
実施例4〜7は、上記実施例1で得た、エノキタケ(NBRC30905株)及びスエヒロタケ(NBRC30749株)の培養上清を、バター醤油ライス、ノンオイルドレッシング、デミグラスソース、ハンバーグに添加した際の効果に関するものである。また、実施例8は、実施例1で得た各菌糸体を包丁で細かくみじん切りにして添加したハンバーグの官能評価に関するものである。なお、以下の食品試料を作成する際に使用した材料は、いずれも市販品である。
実験に用いたバター醤油ライスは、生米4合に、水(780g)、本みりん(7.0g)、濃口醤油(65.0g)、無塩バター(25.0g)、塩(3.0g)を加えて炊き、炊き上がったライス(100g)に対して上記培養上清を3.0g添加して、均一になるまで混合し、試食して評価した。対照には何も添加しなかった。
ドレッシングは、理研ビタミン社製の商品名「ノンオイル セレクティ/あめ色玉ねぎ」の100gに対して、上記培養上清を5.0g添加・混合して、試食して評価した。対照には何も添加しなかった。
デミグラスソースは、ハインツ日本社製の商品名「デミグラス仕込み煮込みハンバーグソース」の100gに対して、上記培養上清を3.0g添加・混合して、試食して評価した。対照には何も添加しなかった。
ハンバーグは、牛豚挽肉(65.4g)、玉ねぎ(16.0g:みじん切りにして電子レンジ600Wで3分間加熱)、生パン粉(8.00g)、全卵(10.00g)、塩(0.54g)、白コショウパウダー(0.03g)、ナツメグパウダー(0.03g)に対して、本発明の培養上清又は菌糸体を各3.0g加えて混合し、成型後に160℃のスチームオーブンで20分間加熱した。対照には何も添加しなかった。
前記5名の専門家パネルが、ドレッシング以外は50〜60℃に温められた食品を試食した。評価項目は、まず、予備的な試食の後にパネルから挙げられた感想に基づいて決定し、次に、その点数を評価した。いずれも、本発明の培養上清等を添加しないものを4点として、それを基準に評価が高くなる順番で、1〜7点まで採点した。結果を、図3〜7に示した。
[実施例9〜31] 担子菌培養上清の評価
担子菌232菌株を対象にして検討した。そのうちで特徴的であった菌株につき、実施例1と同様にして培養し上清を得て、その官能評価結果を以下に示した。官能評価の方法としては、未発酵液を4点とし、評価が高くなる順番で、1〜7点まで採点した。評価項目は、「良好な風味やうま味を呈しているか」、「良好な風味やうま味が強いか」及び「バランスが良い味であるか」の観点から総合的に評価した。
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本発明により、優れた呈味及び/又は香味を示す食品素材が提供されるので、本発明は食品産業において利用可能である。

Claims (8)

  1. 微生物培養物の残渣を培地として担子菌を培養又は発酵させることにより得られることを特徴とする、呈味食品。
  2. 微生物培養物の残渣が酵母残渣である、請求項1記載の呈味食品。
  3. 前記酵母がトルラ酵母又はビール酵母である、請求項2記載の呈味食品。
  4. 微生物培養物の残渣が酒粕である、請求項1記載の呈味食品。
  5. 培地が液体培地である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の呈味食品。
  6. 前記培地が、微生物培養物の残渣及び炭水化物から成る、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の呈味食品。
  7. 前記炭水化物が糖質である、請求項6に記載の呈味食品。
  8. 食品が調味料である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の呈味食品。
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日本きのこ学会誌, vol. vol. 18, no. 3, JPN6016041931, 2010, pages p. 107-110 *

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