JP2014120742A - 圧粉成形体、及び圧粉成形体の表面加工方法 - Google Patents

圧粉成形体、及び圧粉成形体の表面加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁心を構築した場合に低損失であり、表面性状にも優れる圧粉成形体、及びこのような圧粉成形体が得られる圧粉成形体の表面加工方法を提供する。
【解決手段】金属粒子間に絶縁材が介在する粉末圧縮物10を用意し、粉末圧縮物10の表面を研磨する。この研磨は、砥粒を具える帯状の研磨フィルム200をロール300に掛け、研磨フィルム200の表面のうち、この表面に対向する背面がロール300に接触して支持された領域に対して、粉末圧縮物10を動かしながら(例えば、回転させながら)接触させて行う。帯状の研磨フィルム200を利用すると共に、ロール300に支持させた研磨フィルム200に対して、被加工材である粉末圧縮物10を動かしながら接触させることで、研磨フィルム200やロール300を加工抵抗により変形させられる。そのため、表面加工に伴う金属粒子の塑性変形を抑制でき、この塑性変形に起因する損失の増大を抑制できる上に、良好な表面性状が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁心などに利用される圧粉成形体、及び圧粉成形体の表面加工方法に関するものである。特に、磁心に用いた場合に低損失で、表面性状にも優れる圧粉成形体、このような圧粉成形体が得られる圧粉成形体の表面加工方法に関する。
鉄などの軟磁性材料からなる磁心と、この磁心に配置されるコイルとを具える磁気部品が種々の分野で利用されている。上記磁心として、圧粉成形体を素材とした圧粉磁心がある(特許文献1参照)。圧粉成形体は、代表的には、貫通孔を有するダイと、柱状の上パンチ及び下パンチとを具える成形用金型を用いて製造される。貫通孔(ダイの内周面)と下パンチの端面とで成形空間を形成し、この成形空間に充填した原料粉末を下パンチと上パンチとで加圧圧縮し、成形した圧縮物をダイから抜き出すことで、粉末圧縮物(圧粉成形体の一形態)が得られる。
上記磁気部品を交流磁場で使用する場合、磁心には、鉄損(概ね、ヒステリシス損と渦電流損との和)を低減することが望まれる。特に、数kHz以上といった高周波数で利用される磁心では、渦電流損が大きくなることから、渦電流損の低減が望まれる。上述の粉末圧縮物に熱処理を施した熱処理材(圧粉成形体の一形態)とすると(特許文献1の明細書の段落[0043])、圧縮によって鉄などに導入された歪みを除去でき、磁心の損失を低減できる。また、原料粉末に、鉄などの金属粒子の外周に絶縁被膜を具える被覆粉末を利用すると(特許文献1の明細書の段落[0043]など)、金属粒子間に介在する絶縁被膜によって金属粒子間を絶縁でき、圧粉成形体の電気抵抗を高められる。この圧粉成形体を磁心に用いることで、渦電流損を効果的に低減でき、より低損失な磁心とすることができる。
上述の圧縮物をダイから抜き出す際、ダイの内周面と圧縮物とが摺接する。そのため、同じ成形用金型を用いて連続して成形を行うと、ダイと圧縮物との滑り性が低下し、摺接時の摩擦抵抗によって、原料粉末中の金属成分がダイの内周面に凝着したり(焼き付いたり)、凝着物によって粉末圧縮物の表面が荒れたり(ムシレが生じたり)して、表面性状の劣化を招く。また、圧縮物におけるダイとの接触領域に存在する金属粒子が、ダイに摺り合って塑性変形し得る。特に、薄片状に変形した金属粒子が別の金属粒子に接触して、電気的に導通することがある。上述の被覆粉末を用いた場合でも、金属粒子の変形に十分に追従できずに絶縁被膜が損傷すると、上述の導通部分を生じ得る。このような導通部分が存在すると、導通部分に渦電流が流れて、渦電流損の増大を招く。特許文献1は、ダイから抜き出した粉末圧縮物に熱処理を施した後、この熱処理材の表面をcBNの切削チップ(刃具)によって切削することで、表面性状に優れた圧粉成形体が得られることを開示している。上記導通部分が形成されていた場合には、この切削によって、導通部分を除去できる。切削チップ以外の加工工具には、砥石やブラシがある。切削以外の表面加工方法には、濃塩酸などを用いた酸処理がある。
特開2005-238357号公報
低損失で、表面性状にも優れる圧粉磁心の開発が望まれている。
上述の刃具や砥石、ブラシといった加工工具を用いて、粉末圧縮物や熱処理材に表面加工を施すと、これらの加工工具は、主として鉄などからなる粉末圧縮物に比較して硬いことで、上記粉末圧縮物の加工面に加工工具からの負荷が加えられる。この負荷によって、加工面を構成する金属粒子が塑性流動して、上述のような薄片状に変形して導通部分を形成することがある。そのため、刃具などを用いた表面加工を施して得られた圧粉成形体を磁心に利用した場合、損失の増大を招く恐れがある。また、刃具を用いた表面加工では、特許文献1の図5に示すように筋状の切削痕が残ることがあり、切削痕に起因する表面性状の劣化を招く。
酸処理を行った場合には、粉末圧縮物や熱処理材の表面を構成する金属粒子の溶解度合いに斑が生じるなどして、上述の切削加工を行った場合よりも表面性状に劣ることがある。
そこで、本発明の目的の一つは、低損失で、表面性状に優れる圧粉成形体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低損失で、表面性状に優れる圧粉成形体が得られる圧粉成形体の表面加工方法を提供することにある。
表面加工を施す加工工具と、表面加工が施される被加工材とが接触することで、相互に加工抵抗(接触抵抗)による変形(弾性変形、塑性変形)が生じ得る。上述のcBNの切削チップといった高硬度の加工工具を用いると、加工工具は、弾性変形も塑性変形も実質的に生じず、加工工具に比較して柔らかい被加工材(粉末圧縮物)が主として変形する(特に粉末圧縮物では塑性変形する)、と考えられる。そこで、本発明者らは、加工工具における加工抵抗による変形が、被加工材における加工抵抗による変形よりも大きくなるような表面加工方法を検討した結果、特定の工具を特定の状態で利用することが好ましい、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明は、特定の研磨方法を利用することで上記目的を達成する。本発明の圧粉成形体の表面加工方法は、金属粒子間に絶縁材が介在する粉末圧縮物を用意する準備工程と、上記粉末圧縮物の表面を研磨して、圧粉成形体を得る研磨工程とを具える。上記研磨工程では、砥粒を具える帯状の研磨フィルムをロールに掛け、上記研磨フィルムの表面のうち、この表面に対向する背面が上記ロールに接触して支持された領域に対して、上記粉末圧縮物を動かしながら接触させて研磨する。
上記研磨フィルムは、それ自体が薄い帯材であることから、ある程度伸縮可能であり、(弾性)変形し易い、といえる。特に、この研磨フィルムをロールに掛けることで、研磨フィルムの背面のうち、長さ方向の一部のみをロールに接触させて支持し、他部をロールに直接接触させないように研磨フィルムを配置できる。この配置状態からも、研磨フィルムは、(弾性)変形し易い、といえる。また、研磨フィルムとロールとは独立した部材であるため、ロールの構成材料を研磨フィルムとは無関係に選択できる。例えば、ロール自体もある程度変形可能な柔軟な材料からなるものを利用することで、研磨フィルムとロールとの双方が(弾性)変形でき、加工工具における加工抵抗による変形代を十分に確保できる。これらの点から、本発明の圧粉成形体の表面加工方法は、表面加工に伴う金属粒子の塑性変形を抑制しつつ、ムシレなどの表面欠陥を除去でき、表面性状に優れる圧粉成形体を形成できる。従って、本発明の圧粉成形体の表面加工方法によって得られた圧粉成形体を磁心に用いた場合、表面加工に伴う損失の増大を抑制でき、好ましくは損失を低減することができ、低損失な磁心とすることができる。また、本発明の圧粉成形体の表面加工方法を適用することで、用意した圧縮成形物の表面に上述の導通部分が存在していても、この導通部分も除去できる。そのため、本発明の圧粉成形体の表面加工方法によって得られた圧粉成形体を磁心に用いた場合、表面加工前よりも損失を低減でき、より低損失な磁心とすることができる。更に、本発明の圧粉成形体の表面加工方法によって得られた圧粉成形体は、表面性状に優れることから、商品価値も高い。
本発明の一形態として、上記研磨工程では、柱状又は環状の上記粉末圧縮物の軸を上記ロールの軸に平行に配置し、上記粉末圧縮物の軸を中心として上記粉末圧縮物を回転させながら上記研磨フィルムに上記粉末圧縮物を接触させて研磨する形態が挙げられる。
粉末圧縮物の軸を中心に粉末圧縮物を回転させながら研磨フィルムに接触させることで、粉末圧縮物の外周面の全域に亘って、均一的に、かつ容易に研磨を施せる。そのため、上記形態は、圧粉成形体の外周面の全域に亘って表面性状に優れる圧粉成形体を容易に得られる。また、上記形態は、圧粉成形体の外周面の全域に亘って導通部分が実質的に存在せず、低損失な磁心を構築できる圧粉成形体が得られる。
本発明の一形態として、上記研磨フィルムの基材が樹脂から構成され、上記研磨フィルムの基材の厚さが20μm以上150μm以下である形態が挙げられる。
上記形態は、加工抵抗による変形(特に弾性変形)を十分に行える材質や厚さの研磨フィルムを用いることで、表面性状に優れる上に低損失な磁心を構築できる圧粉成形体が得られる。
本発明の一形態として、上記砥粒が酸化アルミニウムから構成されており、上記砥粒の粒度番号が#320以上#2500以下である形態が挙げられる。
上記粒度番号の砥粒を具える研磨フィルムを用いることで、比較的粗い加工(粒度番号が小さいものを用いた加工)や、鏡面加工といった比較的細かい加工(粒度番号が大きなものを用いた加工)など、所望の表面状態の加工を行える。
本発明の一形態として、上記研磨工程では、上記砥粒の粒度の大きさが異なる研磨フィルムを用いて多段に研磨を行い、各段の研磨は、上記砥粒の粒度番号が小さいものから大きいものに変化させる形態が挙げられる。
上記形態は、砥粒の粒度番号が小さい、つまり、大きな砥粒を具える研磨フィルムを用いた比較的粗い加工から、砥粒の粒度番号が大きい、つまり、微細な砥粒を具える研磨フィルムを用いた仕上げ加工といった研磨を順次行う。そのため、上記形態は、表面加工の初期に、粗加工によって効率的に表面欠陥を除去でき、後期に、仕上げ加工によって表面の平滑性が高い加工が行えて、表面性状により優れる上に低損失な磁心を構築できる圧粉成形体が得られる。
本発明の一形態として、上記粉末圧縮物は、軟磁性材料からなる金属粒子の表面に絶縁被覆が施された被覆粉末を用いた成形体である形態が挙げられる。
上記被覆粉末を用いることで、金属粒子間に絶縁材が介在する粉末圧縮物(成形体)を容易に製造できる。従って、上記形態は、被加工材である粉末圧縮物の生産性に優れ、ひいては圧粉成形体の生産性の向上に寄与することができる。
本発明の圧粉成形体として、上記本発明の圧粉成形体の表面加工方法により得られたものを提案する。
本発明の圧粉成形体は、上述の特定の表面加工が施されていることで、表面性状に優れる上に、この表面加工に伴う導通部分が実質的に形成されておらず、磁心に用いた場合に低損失である。
本発明の圧粉成形体の表面加工方法は、低損失で、表面性状に優れる圧粉成形体が得られる。本発明の圧粉成形体は、表面性状に優れる上に、低損失な磁心を構築できる。
本発明の圧粉成形体の表面加工方法の一例を説明する説明図であり、(A)は概略斜視図、(B)は正面図である。 試験例で作製した試料No.2の圧粉成形体の粗さ曲線を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図において同一符号は、同一名称物を示す。まず、表面加工に用いる加工工具を説明する。なお、図1では、分かり易いように研磨フィルムを実物よりも厚くしている。
[加工工具]
本発明の圧粉成形体の表面加工方法では、図1に示すように、砥粒を具える薄い帯状の研磨フィルム200と、研磨フィルム200を支持する円柱状のロール300とを具える加工工具を好適に利用することができる。
(研磨フィルム)
研磨フィルム200は、砥粒(図示せず)と、砥粒を保持する帯状の基材202とを具える。研磨フィルム200の一面(表面)は、被加工材である粉末圧縮物10に接触して、被加工材の表面を砥粒によって削って平滑にする研磨面として利用され、対向する他面(背面)は、ロール300に接触して支持される支持面として利用される。
砥粒は、粉末圧縮物10を主として構成する金属に比較して、一般に高硬度であるセラミックスなどの非金属無機材料からなるものが挙げられる。具体的な材質は、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリコンカーバイド、酸化クロム、ダイヤモンドなどが挙げられる。特に、酸化アルミニウムは、粉末圧縮物10に対して、適度な硬度と適度な靱性とをバランスよく有しており、表面加工時、粉末圧縮物10に負荷を与え難く、利用し易いと考えられる。また、酸化アルミニウムは、種々の粒度、形状のものが市販されており、入手し易い点からも利用し易い。
砥粒の粒度(=粒径)は、例えば、粒度番号が#320(粒度60μm)以上#2500(粒度6μm)以下程度が挙げられる。粒度が小さ過ぎると、ムシレなどの表面欠陥の除去にあたり、長時間に及ぶ表面加工が必要となって作業性の低下を招く。粒度が大き過ぎると、良好な表面性状が十分に得られない恐れがある。特に、粒度番号が#400(粒径40μm)以上#2000(粒径9μm)以下であると、良好な表面性状を有する圧粉成形体を生産性よく得られる。
砥粒を保持する基材202の材質は、ポリエステルなどの樹脂が挙げられる。基材202が樹脂製であることで、主として鉄などの金属から構成される粉末圧縮物10よりも柔軟性に富み、変形し易い(弾性変形し易い)。
基材202に保持される砥粒の量は、少なくとも基材202の表面に満遍なく存在する程度であればよい。
基材202の厚さは、例えば、20μm以上150μm以下が挙げられる。20μm以上であれば、上述の粒度の砥粒を十分に保持できる上に、表面加工時、加工抵抗による力を受けても破断などし難い。150μm以下であれば、基材202が十分に薄く、表面加工時、加工抵抗による変形を容易に行えると考えられる。
基材202の幅は、被加工材である粉末圧縮物10の大きさに応じて選択するとよい。例えば、粉末圧縮物10が図1(A)に示すような柱状体である場合、基材202の幅は、この柱状体の軸方向の長さ(高さ)と同等以上の長さとすると、好ましくは上記軸方向の長さよりも長くすると、粉末圧縮物10の外周面の全長に対し、研磨フィルム10を一度に接触できる。そのため、粉末圧縮物10の外周面の全長に亘って表面加工を行う場合に、更には外周面の全域に亘って表面加工を行う場合に、細長い柱状体などでも、表面加工を一様に施すことができる。
研磨フィルム200は、所望の材質・大きさ(粒度)の砥粒と、この砥粒を保持し、所望の材質・大きさ(厚さ、幅)の基材とを具える市販品を利用することができる。
研磨フィルム200は、図1(B)に破線矢印で示すように、繰り出しロール(図示せず)から引き出し、中間部を後述するロール300に掛け、端部を巻き取りロール(図示せず)で巻き取るように配置することが挙げられる。例えば、ロール300の支持軸302に対して平行するように研磨フィルム200を配置する、即ち、図1(B)では、研磨フィルム200を上下方向に延びるよう配置することができる。しかし、この場合、研磨フィルム200における背面がロール300に接触して支持される領域が、一直線に近くなる。図1に示すように、ロール300を包むように研磨フィルム200を配置すると、研磨フィルム200における背面がロール300に接触して支持される領域を大きくとることができ、研磨フィルム200の表面のうち、上記領域に被加工材を接触させ易い。研磨フィルム200の繰り出し及び巻き取りを適宜行うことで、研磨フィルム200における砥粒が十分に存在する領域、代表的には、まだ研磨に利用していない新しい領域(=目立てされている領域)を常に被加工材に接触させることができる。
上記研磨フィルム200の繰り出し及び巻き取りは、上述の研磨フィルム200における目立てされた領域を引き出すために行う。従って、上記繰り出し及び巻き取りは、代表的には、複数の粉末圧縮物の表面加工を連続的に行う場合に粉末圧縮物を交換するときなど、研磨フィルム200と粉末圧縮物10とが接触していない状態(両者が離れた状態)で行うとよい。換言すれば、表面加工時、研磨フィルム200は、繰り出し及び巻き取りがなされず、実質的に固定された状態である。
(ロール)
ロール300は、薄く変形し易い研磨フィルム200が粉末圧縮物10の表面に十分に接触できるように、研磨フィルム200の他面(背面)を支持する円柱状の部材であり、被加工材である粉末圧縮物10に接触しない。このロール300は、研磨フィルム200を渦巻き状に巻き取ったりせず、上述のように研磨フィルム200の一部のみを接触させて支持する。研磨フィルム200における背面をロール300に接触して支持された領域は、ロール300の支持によって剛性をある程度高められることで、研磨フィルム200の表面のうち、上記領域によって、粉末圧縮物10の表面を十分に研磨できながら、弾性変形を可能とする。
ロール300の材質は、例えば、ウレタンなどの樹脂が挙げられる。特に、ウレタンなどの樹脂は、主として鉄などから構成される粉末圧縮物10よりも十分に柔軟性があり、このような材質のロール300を利用すると、ロール300自体も弾性変形が十分に可能となり、粉末圧縮物10の塑性変形をより抑制し易いと期待される。また、ロール300自体もある程度柔らかいことで、粉末圧縮物10が錘台体状などの異形状であっても、粉末圧縮物10の外周面に研磨フィルム200を沿わせ易く、種々の形状の粉末圧縮物10に対して、表面加工を良好に行えると期待される。但し、研磨フィルム200が上述のように薄く、特に粉末圧縮物10に比較して柔軟性を有する材料で構成されることで、ロール300の材質は、ある程度硬いもの(例えば、ステンレス鋼やアルミニウムなどの金属)でもよいと考えられる。
ロール300の大きさ(直径、軸方向の長さ)は、粉末圧縮物10の径や軸方向の長さに応じて選択するとよい。粉末圧縮物10の径に対して、ロール300の径を十分に大きくする(例えば、粉末圧縮物10の径の2倍以上10倍以下程度)と、研磨フィルム200における背面がロール300に接触して支持された領域を十分に広く確保でき、この領域の表面によって、粉末圧縮物10に良好に表面加工を施すことができる。
ロール300は、例えば、上述の研磨フィルム200の繰り出し及び巻き取り時などで研磨フィルム200の摺動によって回転可能なように支持軸302で支持することが挙げられる。即ち、研磨フィルム200の送り移動に対して従動して回転するようにロール300を支持する。こうすることで、研磨フィルム200が実質的に移動しない表面加工時には、ロール300も実質的に回転しない。すると、粉末圧縮物10に所望の研磨を施せる程度の圧力で粉末圧縮物10を研磨フィルム200に押し付けた場合、研磨フィルム200及びロール300は、この押圧力を十分に受けられ、粉末圧縮物10の表面を適切に研磨できる。
(支持部材)
本発明の圧粉成形体の表面加工方法では、ロール300に背面支持された研磨フィルム200に対して、粉末圧縮物10を動かしながら上記研磨フィルム200に接触させて表面加工を行うことを特徴の一つとする。そこで、所望の運動状態が可能なように粉末圧縮物10を支持部材400にて支持する。例えば、粉末圧縮物10が図1(A)に示すような円柱状体であり、この円柱状体の外周面に表面加工を施す場合、粉末圧縮物10の軸を中心として粉末圧縮物10を回転させながら研磨フィルム200に接触させることが挙げられる。この場合、支持部材400によって、粉末圧縮物10を回転可能に支持するとよい。具体的には、図1(A)に示すように、一組の棒状の支持部材400を用意し、各支持部材400の先端部分で柱状の粉末圧縮物10の各端面をそれぞれ支持することが挙げられる。各支持部材400はそれぞれ、図示しない回転機構に取り付けるとよい。そして、粉末圧縮物10は、その軸がロール300の軸と平行になるように配置し、粉末圧縮物10の軸(支持部材400の軸)を中心として粉末圧縮物10を回転することで、例えば、粉末圧縮物10の外周面の全域に亘って研磨を施すことができる。図1(A)に示す矢印は、粉末圧縮物10の回転方向の一例である。
又は、例えば、粉末圧縮物10が、角柱などの外周面の少なくとも一部に平面を有する形状であり、その一面(一面の一部でもよい)のみに表面加工を施す場合、粉末圧縮物10の一面(表面加工を施したい面)をロール300の外周面に対して接線方向に配置して、この一面を、上記接線方向に沿って往復運動可能に支持することが挙げられる。この場合も、一組の棒状の支持部材400を用意し、各支持部材400の先端部分で粉末圧縮物10の対向する各端面をそれぞれ支持し、各支持部材400はそれぞれ直線運動が可能な移動機構に取り付けるとよい。又は、粉末圧縮物10が、角柱などの角部を有する形状である場合、上述のように一組の支持部材400によって回転可能に支持し、かつ角部のみが研磨フィルム200に接触するように粉末圧縮物10と研磨フィルム200との位置を調整することが挙げられる。この場合、回転時に研磨フィルム200に接触する粉末圧縮物10の角部のみに表面加工を施すことができる。
[表面加工方法]
上述の研磨フィルム200とロール300とを用いて、被加工材(粉末圧縮物10)の表面加工を行う手順を説明する。
まず、所望の粒度、材質の砥粒を具える研磨フィルム200を用意して、ロール300に掛ける。上述のようにロール300が研磨フィルム200の一部のみを背面支持するようにロール300に研磨フィルム200を配置する。研磨フィルム200の厚さや幅、ロール300の大きさは、粉末圧縮物10の大きさ(径、軸方向の長さ)に応じて適宜選択する。
粉末圧縮物10を所望の運動が可能なように支持部材400で支持する。また、研磨フィルム200の表面のうち、ロール300に背面支持された領域に、所望の運動状態にある粉末圧縮物10の外周面がある程度の接圧で接触するように、粉末圧縮物10と研磨フィルム200との位置を調整する。
粉末圧縮物10とロール300との間に研磨フィルム300を介在させ、粉末圧縮物10に所望の運動(例えば、回転)をさせた状態で、ロール300に背面支持された研磨フィルム200に所定の時間接触させることで、粉末圧縮物10の外周面を研磨することができる。加工時間(研磨時間)、粉末圧縮物10の運動速度(例えば、回転速度)、粉末圧縮物10における研磨フィルム200への接圧などは、適宜選択することができる。加工時間が長いほど、表面性状を向上でき、加工時間が短いほど、量産性に優れる。運動速度が速いほど、加工時間を短縮でき、運動速度が遅いほど、粉末圧縮物10が過度に研磨され難い。接圧が大きいほど、加工時間を短縮でき、接圧が小さいほど、粉末圧縮物10が過度に研磨され難い。
粉末圧縮物10の表面加工範囲は適宜選択することができる。代表的には、ムシレなどの表面欠陥が生じ易いダイとの摺接面(図1では円柱状の外周面)の少なくとも一部が挙げられる。上記ダイとの摺接面の全域に表面加工を施すことで、表面性状に優れる圧粉成形体が得られる。
この表面加工は、湿式及び乾式のいずれもが利用できる。湿式の場合、表面加工部分に研削液を供給する供給機構(図示せず)を利用するとよい。
研磨フィルム200の粒度の大きさが異なる複数の研磨フィルム200を用いて、多段に表面加工を行うことができる。例えば、1段目の研磨では、砥粒の粒度番号が小さい研磨フィルムを用いて粗加工を行い、表面欠陥を効率的に除去し、2段目以降の研磨では、砥粒の粒度番号を順次大きくした研磨フィルムを用いて、仕上げ加工を行い、表面の平滑性を高めることが挙げられる。このように粒度番号が小さい研磨フィルムから粒度番号が大きい研磨フィルムに替えて、多段に研磨を行うことで、表面欠陥を良好に除去しつつ、表面性状により優れる圧粉成形体を得ることができる。各段の加工は、湿式でも乾式でもよく、双方を含んでいてもよい。
[粉末圧縮物]
次に、被加工材である粉末圧縮物10を説明する。粉末圧縮物10は、代表的には、貫通孔を具える環状のダイと、一対の柱状のパンチとを具える成形用金型を用いて、原料粉末を加圧圧縮することで製造できる。即ち、粉末圧縮物10は、公知の圧粉成形体の製造方法に基づいて製造したものが利用できる。
粉末圧縮物10は、主として金属粒子から構成され、金属粒子間に介在される絶縁材を含む。金属粒子の材質は、軟磁性材料からなる金属、具体的には、純鉄(99質量%以上がFe)、鉄を主成分とする鉄合金が挙げられる。鉄合金は、Fe-Si系合金,Fe-Al系合金,Fe-N系合金,Fe-Ni系合金,Fe-C系合金,Fe-B系合金,Fe-Co系合金,Fe-P系合金,Fe-Ni-Co系合金,Fe-Al-Si系合金などが挙げられる。
金属粒子の大きさや形状は、原料粉末の大きさや形状に影響を受ける。例えば、原料粉末に平均粒径が10μm以上500μm以下程度のものを用いると、成形し易く圧縮成形物10の製造性に優れる上に、得られた圧粉成形体を磁心とした場合、ヒステリシス損を低減したり、磁心を高周波数で使用した場合でも渦電流損を低減したりできる。上記平均粒径は、50%粒径(質量)をいう。
粉末圧縮物10を構成する金属粒子間に存在する絶縁材は、代表的には、金属粒子の周囲を覆うように一様な膜状に存在する形態が挙げられる。金属粒子間の絶縁が確保できれば、金属粒子の周囲に連続して絶縁材が一様に存在する必要がなく、絶縁材が膜状に存在しなくてもよい。但し、金属粒子の周囲に一様な膜状に絶縁材が存在する粉末圧縮物10は、原料粉末に後述の被覆粉末を用いると容易に製造できるため、粉末圧縮物10の生産性に優れて好ましい。
絶縁材の材質は、例えば、金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、Fe,Al,Ca,Mn,Zn,Mg,V,Cr,Y,Ba,Sr,及び希土類元素(Yを除く)などから選択された1種以上の金属元素と、酸素、窒素、及び炭素から選択された1種以上との化合物(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物)、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物などが挙げられる。又は、非金属元素を含む化合物として、例えば、燐化合物、珪素化合物などが挙げられる。その他、金属塩化合物、例えば、燐酸金属塩化合物(代表的には、燐酸鉄や燐酸マンガン、燐酸亜鉛、燐酸カルシウムなど)、硼酸金属塩化合物、珪酸金属塩化合物、チタン酸金属塩化合物などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂や非熱可塑性樹脂といった樹脂、シリコーン系有機化合物や高級脂肪酸塩なども絶縁材を構成することができる。
粉末圧縮物10の形状は、適宜選択することができ、代表的には、柱状体や環状体が挙げられる。柱状体は、図1(A)に示すような端面形状が円形状である円柱体、その他、直方体や多角柱体などが挙げられる。環状体は、代表的には、円環体が挙げられる。また、粉末圧縮物10は、錘台体(環状でもよい)とすることもできる。更に、粉末圧縮物10は、図1(A)に示すような端面の径に対する軸方向の長さが大きい柱状体、又は環状体とすることができる。端的に言うと、粉末圧縮物10は細長いものでもよい。例えば、上記端面の径に対する軸方向の長さが2倍以上である柱状体や環状体が挙げられる。このような細長い形状であっても、上述のように研磨フィルム200の幅を調整することで、粉末圧縮物10の外周面の全長に亘って、研磨フィルム200を一度に接触させることができる。なお、上記端面の径とは、粉末圧縮物10の端面形状が円形の場合、その直径とし、粉末圧縮物10の端面形状が多角形を含む異形状の場合、その端面の外接円の直径とする。
粉末圧縮物10は、上述の軟磁性材料からなる金属粒子の表面に、上述の材質からなる絶縁被覆が施された被覆粉末を用いた成形体とすることができる。被覆粉末に具える絶縁被覆が、変形性に優れる上に鉄系材料との密着性にも優れる燐酸金属塩化合物から構成される場合、この絶縁被覆は、金属粒子の変形に追従して容易に変形し易く、絶縁被覆が損傷したり剥離したりせず健全な状態で存在する粉末圧縮物10を得易い。被覆粉末に具える絶縁被覆が耐熱性に優れるシリコーン樹脂などのシリコーン系有機化合物から構成される場合、表面処理後などに熱処理を施しても、分解し難く、絶縁被覆が健全な状態で存在する粉末圧縮物10を得易い。絶縁被覆の厚さは、例えば、10nm以上1μm以下が挙げられる。10nm以上であると、金属粒子間の絶縁を確保でき、1μm以下であると、絶縁被覆の存在に伴う圧粉成形体中の金属成分の割合の低下を抑制できる。なお、原料粉末に被覆粉末を用いた場合に後工程で熱処理を施すと、絶縁被覆が熱変性されたり、分解されたりして、金属粒子間に介在する絶縁材の材質が、原料粉末の材質と異なる場合がある。しかし、上述の材質の絶縁被覆を具える被覆粉末を用いていれば、熱処理によって熱変性や分解が生じても、絶縁材が存在できる。
被覆粉末における絶縁被覆の形成には、例えば、燐酸塩化成処理といった化成処理、溶剤の吹きつけ、前駆体を用いたゾルゲル処理などが利用できる。シリコーン系有機化合物の絶縁被覆を形成する場合、有機溶剤を用いた湿式被覆処理や、ミキサーによる直接被覆処理など、公知の被覆方法を適宜利用できる。
粉末圧縮物10の製造にあたり、原料粉末に潤滑剤を添加すると、成形時の潤滑性を高められ、金属粒子の塑性変形の低減や抑制を図ることができる。潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウムなどの金属石鹸、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドなど、その他、窒化硼素やグラファイトなどの無機物が挙げられる。潤滑剤の添加量は、金属粉末(絶縁被覆を具えていてもよい)と潤滑剤との合計を100質量%とするとき、0.1質量%以上2.0質量%以下程度が挙げられる。潤滑剤は、粉末状でも液状でもよい。
粉末圧縮物10の製造にあたり、成形圧力は、例えば、390MPa以上1500MPa以下(好ましくは500MPa以上1300MPa以下)が挙げられる。
粉末圧縮物10は、代表的には、ダイから抜き出したままのもの(グリーン材)が挙げられる。又は、粉末圧縮物10は、グリーン材に、加圧圧縮時に導入された歪みの低減・除去を目的とした熱処理を施した熱処理材とすることができる。この熱処理の温度は、例えば、金属粒子間に存在する絶縁材の熱分解温度未満の範囲が挙げられる。具体的には、温度が300℃以上700℃以下程度、保持時間が30分以上60分以下程度、が挙げられる。絶縁材が上述した燐酸鉄や燐酸亜鉛などの非晶質燐酸塩からなる場合、上記温度は500℃程度までが好ましい。絶縁材が金属酸化物やシリコーン樹脂などの耐熱性に優れる場合、上記温度は550℃以上、更に600℃以上、特に650℃以上に高められる。この熱処理の温度が高いほど、歪みを十分に除去して、低損失な磁心を構築できる圧粉成形体が得られる。
[圧粉成形体]
本発明の圧粉成形体は、粉末圧縮物10の表面の少なくとも一部(好ましくはダイとの摺接面の少なくとも一部、より好ましくはダイとの摺接面の全域)に上述の表面加工が施されていることで、表面性状に優れる。例えば、表面粗さRz(十点平均粗さ、JIS B 0601(1994))が10μm以下、更に5μm以下、特に2μm以下を満たす。また、本発明の圧粉成形体は、粉末圧縮物10の表面の少なくとも一部に上述の表面加工が施されていることで、平滑な表面を有するだけでなく、ダイから抜いたときに形成された導通部分が除去されている場合には、低損失な磁心を構築することができる。特に、本発明の圧粉成形体は、上述の熱処理が施された場合には(上述の表面加工の前後のいずれでもよい)、より低損失な磁心を構築することができる。なお、本発明の圧粉成形体の材質、金属粒子の大きさ、絶縁材の厚さ(金属粒子間の間隔)などは、粉末圧縮物10の材質、金属粒子の大きさ、絶縁材の厚さ(金属粒子間の間隔)などを実質的に維持する。
研磨フィルム200によって表面加工が施されて得られた本発明の圧粉成形体は、原料粉末に上述の被覆粉末を用いていても、圧粉成形体の表面を構成する各金属粒子は、表面加工によって一部が切断されて、絶縁被覆に覆われず、金属成分が露出した個所が存在し得る。このような金属成分の一部が露出した金属粒子が存在しても、金属粒子間の接触を阻害するように絶縁材が介在していれば、渦電流損を低減できる。従って、本発明の圧粉成形体は、金属成分が露出した箇所が存在することを許容する。
[試験例]
原料粉末を加圧圧縮した粉末圧縮物を用意し、この粉末圧縮物に適宜表面加工を施して、表面性状、及び磁心を構築したときの損失を調べた。
ここでは、原料粉末に被覆粉末を用いた。被覆粉末は、純鉄粉(平均粒径250μm)に、化成処理により燐酸金属塩化合物からなる絶縁被覆(厚さ20nm以下程度)を形成したものを用意した。この被覆粉末に潤滑剤(市販の脂肪酸アミド、被覆粉末と潤滑剤との合計量に対して0.4質量%)を添加して、直径φ10mm、高さ30mm(端面の径に対する軸方向の長さが3倍)の円柱状の粉末圧縮物を製造した。成形圧力は、800MPaとした。
得られた粉末圧縮物について、断面をとり、その内部組織を確認したところ、金属粒子間に絶縁材(絶縁被覆の構成材料)が介在していた。また、同じ成形用金型を用いて連続して粉末圧縮物を成形したところ、成形個数が多くなるにつれて、得られた粉末圧縮物の表面性状が劣化し、ムシレや薄片状に塑性変形した金属粒子が観察できた。
(試料No.1)
試料No.1では、上述のようにして作製した複数の粉末圧縮物に対して、円柱状の外周面(ダイとの摺動面)が比較的荒れたもの(上述のムシレなどが生じているもの)を対象として、表面加工(湿式)を施した。表面加工は、図1に示すように研磨フィルムをロールに掛け、研磨フィルムの表面のうち、対向する背面がロールに接触して支持された領域に、粉末圧縮物の軸を中心として回転させながら粉末圧縮物を接触させて研磨することで行った。粉末圧縮物は、その軸がロールの軸方向に平行するように支持部材にて回転可能に支持した。また、ここでは、3段階の表面加工を行った。1段階目の表面加工には、粒度番手が#400の酸化アルミニウムからなる砥粒を具える研磨フィルム(厚さ75μm、幅40mm(>30mm)、基材はポリエステル製)を用いて、粗加工を行った。次の2段階目の表面加工には、粒度番手が#1000の酸化アルミニウムからなる砥粒を具える研磨フィルム(厚さ75μm、幅40mm(>30mm)、基材はポリエステル製)を用いた。最後の3段階目の表面加工には、粒度番手が#2000の酸化アルミニウムからなる砥粒を具える研磨フィルム(厚さ75μm、幅40mm(>30mm)、基材はポリエステル製)を用いて、仕上げ加工を行った。そして、3段階の全てを湿式とし、円柱状の外周面の全域に表面加工を施した。
上述の3段階の表面加工(湿式)後、表面粗さRz(十点平均粗さ、μm)を測定した。測定は、市販の粗さ測定装置を用いて行った(測定長4mm)。その結果を表1に示す。また、上記表面加工を施した加工材(圧粉成形体)を環状に組み合せて試験用磁心を作製し、この試験用磁心に巻線で構成したコイルを配置して、損失測定の部材(磁気部品に相当)を作製した。この損失測定の部材に対して、AC-BHカーブトレーサを用いて、励起磁束密度Bm:3kG(=0.3T)、測定周波数:5kHzにおける損失として、渦電流損(W/kg)を測定した。その結果を表1に示す。
(試料No.2)
試料No.2は、上述の試料No.1に対して、3段階の表面加工をいずれも乾式とした点を除いて、試料No.1と同様とした。3段階の表面加工(乾式)後、試料No.1と同様にして表面粗さRzを測定した。その結果を表1及び図2に示す。また、表面加工(乾式)を施した加工材(圧粉成形体)を用いて、試料No.1と同様にして、損失測定の部材(磁気部品に相当)を作製し、試料No.1と同様の条件で、渦電流損(W/kg)を測定した。その結果を表1に示す。
(試料No.100)
比較として、表面加工を施していない試料No.100を用意し、この試料の表面粗さRzを試料No.1,No.2と同様にして測定した。その結果を表1に示す。また、試料No.100を用いて、試料No.1,No.2と同様にして、損失測定の部材(磁気部品に相当)を作製し、試料No.1,No.2と同様の条件で、渦電流損(W/kg)を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2014120742
表1に示すように、ロールに支持させた帯状の研磨フィルムに被加工材(粉末圧縮物)を動かしながら接触させて研磨する、という特定の表面加工方法によって表面加工を施した試料No.1,No.2はいずれも、表面加工を施していない試料No.100に比較して、表面粗さが小さく(ここでは、いずれも表面粗さRzが2μm以下)であり、表面性状を向上できることが分かる。特に、この試験では、特定の表面加工を施した試料No.1,No.2はいずれも、表面加工を施した円柱状の外周面の全域に亘って、金属光沢を有していた。図2を参照して説明すると、試料No.2の粗さ曲線では、凹みが断続的に存在するものの、凹みを除く箇所は、概ね平坦であることが分かる。これらの凹みは、金属粒子間の粒界を示すものと考えられる。表面加工後の圧粉成形体の表面にこのような凹みが複数存在することは、上記表面を構成する金属粒子間が接触せず離れた状態になっている、つまり、絶縁された状態になっている、といえる。
かつ、特定の表面加工を施した試料No.1,No.2はいずれも、表面加工を施していない試料No.100に比較して、損失が実質的に増大していない。また、試料No.1,No.2はいずれも、表面加工前の損失よりも、表面加工後の損失が低くなっている。この理由の一つとして、上述のように表面に存在する金属粒子が絶縁された状態になっているため、と考えられる。
これらの点から、上述の特定の表面加工方法を行うことで、表面加工前後において損失を実質的に増大させず、好ましくは表面加工後に損失を低減でき、低損失で、表面性状に優れる圧粉成形体を形成できる、といえる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、上記実施の形態では、多段に表面加工を行った例を示したが、1段の表面加工とすることができる。また、2段の表面加工とすることもできる。その他、金属粒子の材質・大きさ、絶縁材の材質・厚さ、圧粉成形体の形状・大きさ、砥粒の種類・大きさ、研磨フィルムの大きさ・厚さ・幅などを適宜変更することができる。また、上記実施の形態では、柱状の粉末圧縮物の外周面に表面加工を施したが、端面にも表面加工を施すこともできる。更に、上記特定の表面加工の前後に熱処理を施すこともできる。
本発明の圧粉成形体は、各種の磁心(リアクトル、トランス、モータ、チョークコイル、燃料インジェクタ、点火コイルなどの磁心)の素材、特に、低損失であることが望まれる磁心の素材に好適に利用することができる。本発明の圧粉成形体の表面加工方法は、上記圧粉成形体の製造に好適に利用することができる。
10 粉末圧縮物 200 研磨フィルム 202 基材 300 ロール 302 支持軸
400 支持部材

Claims (7)

  1. 金属粒子間に絶縁材が介在する粉末圧縮物を用意する準備工程と、
    前記粉末圧縮物の表面を研磨して、圧粉成形体を得る研磨工程とを具え、
    前記研磨工程では、
    砥粒を具える帯状の研磨フィルムをロールに掛け、前記研磨フィルムの表面のうち、この表面に対向する背面が前記ロールに接触して支持された領域に対して、前記粉末圧縮物を動かしながら接触させて研磨する圧粉成形体の表面加工方法。
  2. 前記研磨工程では、柱状又は環状の前記粉末圧縮物の軸を前記ロールの軸に平行に配置し、前記粉末圧縮物の軸を中心として前記粉末圧縮物を回転させながら前記研磨フィルムに前記粉末圧縮物を接触させて研磨する請求項1に記載の圧粉成形体の表面加工方法。
  3. 前記研磨フィルムの基材は、樹脂から構成され、
    前記研磨フィルムの基材の厚さは、20μm以上150μm以下である請求項1又は2に記載の圧粉成形体の表面加工方法。
  4. 前記砥粒は、酸化アルミニウムから構成されており、
    前記砥粒の粒度番号は、#320以上#2500以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉成形体の表面加工方法。
  5. 前記研磨工程では、前記砥粒の粒度の大きさが異なる研磨フィルムを用いて多段に研磨を行い、各段の研磨は、前記砥粒の粒度番号が小さいものから大きいものに変化させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉成形体の表面加工方法。
  6. 前記粉末圧縮物は、軟磁性材料からなる金属粒子の表面に絶縁被覆が施された被覆粉末を用いた成形体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧粉成形体の表面加工方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧粉成形体の表面加工方法により得られた圧粉成形体。
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