JP2014119327A - 放射性汚染物運搬車両の計測システム - Google Patents

放射性汚染物運搬車両の計測システム Download PDF

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裕士 太田
Masamitsu Sasaki
正充 佐々木
Hisatomo Fukui
久智 福井
Hiroyuki Hirano
裕之 平野
Yoshihiko Hattori
良彦 服部
Takashi Ozawa
貴志 小澤
Kosuke Hiraoka
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Abstract

【課題】運搬車両の空間線量率を自動的に計測できるシステムを提供する。
【解決手段】放射性汚染物2を積載した運搬車両1の通過ゲート10の片側又は両側にその通過ゲート10と対向させて空間線量率計12を設け,通過ゲート10上の運搬車両1の停車を停車検知手段27により検知し,空間線量率計12の出力値Vと停車検知手段27の検知信号Eとを計測手段26に入力する。計測手段26において,停車検知時点後における空間線量率計12の出力安定化時間T経過後の出力値Vによって運搬車両1の空間線量率Sを計測する。
【選択図】 図1

Description

本発明は放射性汚染物運搬車両の計測システムに関し,とくに放射性汚染物の運搬車両の空間線量率を自動的に計測するシステムに関する。
原子力発電所の事故により放出された放射性物質で汚染された廃棄物等(以下,放射性汚染物という)をできる限り早く回収して処理・処分するため,被災地から放射性汚染物をダンプトラックやコンテナ車等の運搬車両に積載して搬出し,処理・処分地まで公道を介して搬送する必要が生じている。放射性汚染物を車両で運搬する場合は,放射性物質による沿道及び周囲環境への影響を最小限に抑えるため,運搬中の車両からの放射性汚染物の飛散・流出・漏出し等を防止すると共に,被災地から公道へ出る前(搬出前)に運搬車両の放射線強度を求めて安全を確認し,放射線強度が許容限度を超える場合は放射線を遮蔽する等の措置を講じることが求められる。
運搬車両の放射線強度を求める場合は,主に外部被ばくを防止する観点から,1m程度離れた位置にγ線を計測できる空間線量率計を近付けて空間線量率(1センチメートル線量当量率)を計測する(非特許文献1参照)。空間線量率計の一例は,γ線を吸収して発光するシンチレータ(ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl)),ヨウ化セシウム(CsI(Tl))等)と光電子倍増管・フォトダイオード等とを組み合わせたシンチレーション検出器である。シンチレーション検出器は,γ線の吸収に応じたシンチレータの発光を光電子倍増管等で電気信号に変換し,1時間当たりの実効線量(単位:μSv/h)として空間線量率を検出して出力する(非特許文献2,特許文献1参照)。シンチレータの発光は温度等の条件に依存するので,予め放射能が既知の放射性物質(試験用線源試料)を用いて校正されたシンチレーション検出器を使用する。
図5は,校正されたNaI(Tl)シンチレーション検出器(グラフA)及びCsI(Tl)シンチレーション検出器(グラフB)を試験用線源試料(1.0MBqの137Cs)に近付けたときの出力値の変化を示す。同図から分かるように,シンチレーション検出器は,変化した空間線量率の計測を開始したのち出力値が安定するまでの時間(以下,安定化時間ということがある)Tが必要であり,空間線量率を検出するために出力安定化時間Tの経過を待たなければならない。出力値の安定化時間Tは検出器により相違しており,図示例のNaI(Tl)シンチレーション検出器では90秒(=120−30)程度,図示例のCsI(Tl)シンチレーション検出器では5秒(=35−30)程度)であるが,安定化時間Tの経過後の出力値は何れの検出器でも同じである。
従って,例えば作業員が放射性汚染物の運搬車両から1m程度離れた位置に校正されたシンチレーション検出器を近付けて対向させ,安定化時間T経過後の出力値を読み取ることにより運搬車両の空間線量率(放射線強度)を検出し,検出した空間線量率を所定の許容限度(例えば最大値100μSv/h)と比較することにより運搬車両の安全を確認することができる。運搬車両の空間線量率が許容限度を超えた場合は,例えば放射性汚染物の数量や種類の調整,遮蔽体の設置,積載位置の変更,遮蔽効果のある内張付きの容器を用いる等の措置を講じることにより空間線量率の低減を図る。或いは,当該車両による運搬を中止し,積載した放射性汚染物を遮蔽された仮置き場等へ戻すことにより沿道及び周囲環境への影響を回避する。
特開平8−043535号公報 特開平10−090042号公報
環境省「廃棄物関係ガイドライン(事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理等に関するガイドライン)第5部・放射能濃度等測定方法ガイドライン」平成23年12月27日,インターネット(URL:http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14643) 藥袋佳孝・谷田貝文夫「今知りたい放射線と放射能−人体への影響と環境でのふるまい」オーム社,2011年12月25日発行
しかし,上述したように作業員がシンチレーション検出器を近付けて運搬車両の空間線量率を手動で計測する方法は,計測に手間がかかる問題点がある。被災地の放射性汚染物はできる限り速やかに処理・処分地へ搬出することが求められており,放射性汚染物の搬出施設は例えば1台/1分程度の割合で運搬車両が出入りできるように設計されている。このような施設の能力を最大限に活用して放射線汚染物を効率的に搬出するには,運搬車両1台当たりの空間線量率の計測時間を30秒以下に抑えることが望ましく,図5のNaI(Tl)シンチレーション検出器(グラフA)では出力値の安定化時間Tが長すぎる。図5のCsI(Tl)シンチレーション検出器(グラフB)を用いれば計測時間を短縮できるが,空間線量率を手動で計測する場合は作業員と運搬車両とが輻輳して危険があるため,計測時間を30秒以下にまで短縮することは難しい。運搬車両1台当たりの計測時間を30秒以下に抑えるためには,作業員を介さずに運搬車両の空間線量率を自動的に計測できるシステムが必要である。
そこで本発明の目的は,運搬車両の空間線量率を自動的に計測できるシステムを提供することにある。
本発明者は,放射性汚染物の搬出施設の通過ゲートに空間線量率計(例えばシンチレーション検出器)を設置し,通過する運搬車両の空間線量率を定点計測することに着目した。放射性汚染物を積載した運搬車両が通過ゲートに進入し,図5のように通過ゲートに設置した空間線量率計の出力値(空間線量率)に変化が生じれば,その変化によって車両の進入を検知し,その安定化時間T経過後の出力値により運搬車両の空間線量率を自動的に計測できると一般的には考えられる。しかし,本発明者の知見によれば,図4に示すように,通過ゲート上に運搬車両が進入したか否かを空間線量率計だけで検知・判定することは不可能である。
図4(A)は,運搬車両1の進入前における通過ゲートに設置した空間線量率計12の計測状態を図式的に表し,通過ゲートの周囲から飛来するγ線(図中に白丸及び実線矢印で示す)がそのままバックグラウンド(BG)として空間線量率計12の出力値(V)となることを示している(V=BG)。これに対し図4(B)及び(C)は,放射線汚染物2の運搬車両1の進入後における通過ゲートの空間線量率計12の計測状態を図式的に表し,バックグラウンドBGに加えて放射線汚染物2及び運搬車両1の発生するγ線(α)が飛来することを示している。また,通過ゲートに進入した運搬車両1及び放射性汚染物2は,γ線を発生するだけでなく,同図に点線矢印で示すように周囲から飛来するγ線を遮蔽する効果(β)も同時に発揮するので,空間線量率計12の出力値には,放射線汚染物2の運搬車両1の発生するγ線(α)及び遮蔽するγ線(β)の両者が反映される(V=BG+α−β)。
図4(B)は,放射線汚染物2の運搬車両1の発生するγ線(α)が遮蔽するγ線(β)より大きい場合を示し(α>β),図4(C)は,放射線汚染物2及び運搬車両1が少量の放射性物質しか含んでおらず,発生するγ線(α)よりも遮蔽するγ線(β)が大きい場合を示す(α<β)。何れの場合も,空間線量率計12の出力値(V)がバックグラウンドBGより大きくなるか(V>BG)又は小さくなれば(V<BG),出力値(V)の変化によって通過ゲートへの車両1の進入を一応検知できる。しかし,同図から想像できるように,放射線汚染物2の運搬車両1の発生するγ線(α)と遮蔽するγ線(β)とはそれぞれ独立に変動するので,両者が等しいときは,車両1が通過ゲートに進入しているにも拘らず空間線量率計12の出力値(V)がバックグラウンドBGから変化せず,出力値(V)から車両1の進入を検知することができない。すなわち,通過ゲート上に運搬車両が進入したことを検知・判定して空間線量率を自動的に計測するためには,空間線量率計とは別に,運搬車両の進入を検知する手段が必要である。本発明は,この知見に基づく研究開発の結果,完成に至ったものである。
図1及び図2の実施例を参照するに,本発明による放射性汚染物運搬車両の計測システムは,放射性汚染物2を積載した運搬車両1の通過ゲート10の片側又は両側にその通過ゲート10と対向させて設けた空間線量率計12,通過ゲート10上の運搬車両1の停車を検知する停車検知手段27,及び空間線量率計12の出力値Vと停車検知手段27の検知信号Eとを入力し且つ停車検知時点後における空間線量率計12の出力安定化時間T経過後の出力値Vにより運搬車両1の空間線量率Sを計測する計測手段25を備えてなるものである。
好ましくは,停車検知手段27に空間線量率計12の隣接位置で通過ゲート10と交差する信号光の透過又は反射を検出する光電センサ14を含める。或いは停車検知手段27に通過ゲート10上の車両1の荷重Wを測定する荷重計11を含め,その荷重計11の測定値Wの振幅変動収束により車両1の停車を検知するか,又は,その荷重計11の測定値Wの上昇終焉により車両1の停車を検知することも可能である。望ましくは,計測手段25により,出力安定化時間T経過後から所定時間tにわたる空間線量率計12の出力値Vの平均によって運搬車両1の空間線量率Sを計測する。
更に好ましくは,通過ゲート10上の車両1の荷重Wを測定する荷重計11を設け,計測手段25に空間線量率計12の出力値Vと停車検知手段27の検知信号Eと荷重計11の測定値Wとを入力し且つ停車検知時点後における空間線量率計12の出力安定化時間T経過後から荷重計11の測定値Wの振幅変動収束時点までの空間線量率計12の出力値Vの平均により運搬車両1の空間線量率Sを計測する。この場合において,出力安定化時間T経過後から荷重計11の測定値Wの振幅変動収束時点までの時間が所定時間tより短い場合は,出力安定化時間T経過後から所定時間tにわたる空間線量率計12の出力値Vの平均によって運搬車両1の空間線量率Sを計測してもよい。望ましくは,運搬車両1の空間線量率Sを許容限度Mと比較してゲート通過の許否を判定する判定手段26を設ける。
本発明による放射性汚染物運搬車両の計測システムは,放射性汚染物2を積載した運搬車両1の通過ゲート10に空間線量率計12と共に停車検知手段27を設け,空間線量率計12の出力値Vと共に停車検知手段27の検知信号Eを計測手段25に入力し,検知信号Eによる運搬車両1の停車検知時点後における空間線量率計12の出力安定化時間T経過後の出力値Vにより運搬車両1の空間線量率Sを計測するので,次の有利な効果を奏する。
(イ)放射線汚染物2を搭載した運搬車両1の発生するγ線及び遮蔽するγ線が等しく,空間線量率計12の出力値VがバックグラウンドBGから変化しない場合でも,停車検知手段27による運搬車両1の停車検知後の出力値Vを用いることにより,運搬車両1の空間線量率Sを自動的に計測できる。
(ロ)また,出力安定化時間Tが比較的短い空間線量率計12を用いることにより,空間線量率Sの自動計測に必要な運搬車両1の停車を短時間に抑え,各運搬車両1の計測時間を30秒以下に抑えるシステムとすることができる。
(ハ)空間線量率計12の隣接位置で通過ゲート10と交差する信号光を検出する光電センサ14を停車検知手段27に含め,信号光の透過の遮断又は反射(図3の光電センサの検出時tr参照)によって運搬車両1の停車を検知することにより,通過ゲート10への進入した運搬車両1の停車を迅速に検知して計測時間を更に短縮することができる。
(ニ)また,通過ゲート10上の車両1の荷重Wを測定する荷重計11を停車検知手段27に含め,荷重計11の測定値Wの振幅変動収束(図3の振幅変動収束時tw参照)又は上昇終焉(図3の上昇終焉時時tw´参照)によって停車を検知することにより,運搬車両1の空間線量率Sと共に荷重Wを自動的に計測するシステムとすることができる。
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
は,本発明による計測システムの一実施例の説明図である。 は,図1の実施例の平面図である。 は,本発明による計測手段の入力信号及びそれに基づく計測方法の説明図である。 は,放射線汚染物を搭載した運搬車両によるγ線の発生効果(α)及びγ線の遮蔽効果(β)の説明図である。 は,線源試料に近付けたときのシンチレーション検出器の出力値の変化を示すグラフである。
図1は,被災地の搬出施設から放射性汚染物2をコンテナに積載して搬出する運搬車両1の通過ゲート10に本発明の計測システムを適用した実施例を示す。図示例のシステムは,通過ゲート10の片側又は両側に設置する空間線量率計12と,空間線量率計12の隣接位置で通過ゲート10と交差する信号光の透過又は反射を検出する光電センサ14と,空間線量率計12の出力値V及び光電センサ14の検出信号Rを入力して運搬車両1の空間線量率Sを計測するコンピュータ20とを有する。
図2は,通過ゲート1の平面図を示す。通過ゲート10は,例えば搬出施設の信号器24を設けた出口車線の停車位置等に設けることができる。また図示例のように,搬出施設の出口で各運搬車両1の荷重Wを測定する荷重計(トラックスケール)11をシステムに含め,その荷重計11の測定台を通過ゲート10としてもよい。通過ゲート10を荷重計11の測定台として利用することにより,本発明のシステムによって運搬車両1の空間線量率Sと荷重Wとを同時に計測することができる。
図示例の空間線量率計12は,通過ゲート10上で停車した運搬車両1(例えば車両1のコンテナ側面の中心点)と対向するように,通過ゲート10の片側又は両側の1m程度離れた位置に設置する。図示例はコンテナ1台を搭載した運搬車両1の空間線量率Sを計測する場合を示しているが,複数台(例えば3台)のコンテナを搭載可能な運搬車両1の空間線量率Sを計測する場合は,通過ゲート1の片側又は両側に各コンテナと対向するように複数(3つ又は6つ)の空間線量率計12を設置することができる。必要に応じて,通過ゲート10の片側又は両側に加えて,上方又は下方から運搬車両1(例えば車両1のコンテナ頂面又は底面の中心点)と対向するように追加的な空間線量率計12を設置してもよい。
空間線量率計12の一例はシンチレーション検出器であるが,できるだけ空間線量率Sの計測時間を短縮できるように出力安定化時間Tの短い検出器とすることが望ましい。例えば,図5に示すCsI(Tl)シンチレーション検出器を通過ゲート10の両側に設置して空間線量率計12とする。空間線量率計12の出力安定化時間T(例えば図5に示すCsI(Tl)シンチレーション検出器では約5秒間)は,後述するコンピュータ20の記憶手段21に記憶しておく。
また,空間線量率計12は,通過ゲート10上に運搬車両1が進入する前後にわたり継続的に空間線量率を計測し,空間線量率計12の出力値Vを後述するコンピュータ20の計測手段25に継続的に入力する。車両1の進入前における空間線量率計12の出力値Vは,計測手段25において通過ゲート10の空間線量率のバックグラウンドBGとして使用する。好ましくは,空間線量率計12による計測を24時間にわたり継続し,計測手段25において放射性汚染物2の運搬作業を停止した期間中(例えば夜間中)の出力値Vの平均から空間線量率のバックグラウンドBGを求める。長期間かけてバックグラウンドBGを計測することにより,バックグラウンドBGの精度を高めることができる。計測手段25で求めた空間線量率のバックグラウンドBGも,後述するコンピュータ20の記憶手段21に記憶しておく。
図示例のコンピュータ20は,キーボード等の入力装置22と,ディスプレイ等の出力装置23と,空間線量率計12の出力安定化時間T及び空間線量率のバックグラウンドBG等を記憶する記憶手段21とを有する。また内蔵プログラムとして,通過ゲート10上の運搬車両1の停車を検知する停車検知手段27と,空間線量率計12の出力値Vと停車検知手段27の検知信号Eとを入力して運搬車両1の空間線量率Sを計測する計測手段25とを有している。更に図示例のコンピュータ20は,記憶手段21に運搬車両1の空間線量率Sの許容限度Mを記憶し,内蔵プログラムとして運搬車両1の空間線量率Sを許容限度Mと比較してゲート通過の許否を判定する判定手段26を有している。ただし,本発明は運搬車両1の空間線量率Sを計測できれば足り,判定手段26は本発明に必須のものではない。
図示例の光電センサ14,14は,通過ゲート10と交差する信号光(透過光)を発射する投光部とその信号光の遮断(遮光)を検出する受光部とからなり,運搬車両1による信号光の遮断を検出して検出信号Rを出力する。コンピュータ20の停車検知手段27は,光電センサ14の検出信号Rを入力することにより運搬車両1の停車を検知する。すなわち,図示例の停車検知手段27は光電センサ14を含めて構成されており,光電センサ14の検出信号Rに応じて運搬車両1の停車検知信号Eを出力する。なお,図示例のように通過ゲート10の両側に投光部と受光物とを対向配置する透過型の光電センサ14に代えて,通過ゲート10の片側に投光部と受光物と同じ向きに配置して信号光の反射を検出する反射型の光電センサ14とすることも可能である。
コンピュータ20の計測手段25は,空間線量率計12の出力値Vと,停車検知手段27の検知信号Eと,記憶手段21に記憶した空間線量率計12の出力安定化時間Tとを入力し,図3(C)及び(B)のタイムチャートに示すように,検知信号Eの入力時点から出力安定化時間Tの経過後の空間線量率計12の出力値Vによって運搬車両1の空間線量率Sを計測する。すなわち,運搬車両1が通過ゲート10に進入した時点(=0秒)を基準とすると,検知信号Eの入力時点は光電センサ14が検出信号Rを発した時点tr(=約3秒)とほぼ同時であり,その入力時点から空間線量率計12の出力安定化時間T(=約5秒間)が経過した時点(=約8秒)の出力値Vによって運搬車両1の空間線量率S(=V)を計測する。
なお,コンピュータ20の計測手段25は,検知信号Eの入力時点から出力安定化時間Tの経過時点における空間線量率計12の出力値Vを運搬車両1の空間線量率Sとすることもできるが,出力安定化時間Tの経過後の適当な所定時間tにわたる空間線量率計12の出力値Vの平均値によって運搬車両1の空間線量率Sを計測することもできる。図5のグラフからわかるように,空間線量率計12の出力値Vにはγ線の発生する頻度の時間的変化による計測値の変化が含まれており,特定の時点(例えば出力安定化時間Tの経過時点)の出力値Vのみから空間線量率Sを計測すると誤差が大きくなりうる。出力安定化時間Tの経過時点から平均化に適した所定時間t(例えば5〜15秒程度)にわたる出力値Vの平均によって空間線量率Sを計測することにより,空間線量率Sの精度を高めることができる。
図示例のように光電センサ14を用いて停車検知手段27を構成することにより,図3(C)及び(B)のタイムチャートに示すように,通過ゲート10に進入した運搬車両1の停車を迅速に検知し,運搬車両1の空間線量率Sの計測時間を約8秒程度(5秒程度の平均をとる場合は約13秒程度)にまで短縮することができる。ただし,本発明の停車検知手段27は光電センサ14を用いたものに限定されない。例えば,光電センサ14に代えて,通過ゲート10の停車位置を撮影する撮像機(図示せず)をコンピュータ20に接続し,撮像機とコンピュータ20の画像処理プログラムとにより停車検知手段27を構成し,撮像機の画像をコンピュータ20の画像処理プログラムで解析することによって運搬車両1の停車を検知してもよい。撮像機を用いて停車検知手段27を構成した場合も,停車検知手段27の停車検知信号Eを計測手段25へ入力すれば,上述した光電センサ14の場合と同様に,計測手段25において運搬車両1の空間線量率Sを計測できる。
また,図示例のように運搬車両1の荷重計11の測定台を通過ゲート10とした場合は,光電センサ14に代えて,その荷重計11を用いて停車検知手段27を構成することも可能である。すなわち,図3(A)のグラフに示すような荷重計11の測定値Wをコンピュータ20の停車検知手段27に入力し,停車検知手段27において図3(E)のタイムチャートに示すように,測定値Wの変動幅(振幅)が最大変動幅(振幅)に対して±3%程度以下に収束する振幅変動収束時点twを検出し,その測定値Wの振幅変動収束時点tw(=約12秒)によって運搬車両1の停車を検知することができる。また,図3(D)のタイムチャートに示すように,その停車検知手段27の停車検知信号Eを計測手段25へ入力し,検知信号Eの入力時点から出力安定化時間T(=約5秒間)が経過した時点(=約17秒)の空間線量率計12の出力値Vを計測することができる。
荷重計11を用いて停車検知手段27を構成した場合は,光電センサ14を用いた場合のような空間線量率Sの計測時間の短縮はできないが,図3(E)及び(D)のタイムチャートに示すように,約17秒程度で運搬車両1の空間線量率Sを荷重Wと同時に計測することができる。放射性汚染物2を運搬する場合は,運搬した放射性汚染物2の空間線量率Sと共に荷重Wの記録を求められる場合も多い。荷重計11を用いて停車検知手段27を構成する方法は,従来の運搬車両1の荷重計(トラックスケール)11のみを用いて運搬車両1の空間線量率Sと荷重Wとを同時に自動計測して記録できるメリットがある。
好ましくは,光電センサ14と荷重計11との両者を含めて計測システムを構成する。この場合は,停車検知手段27において光電センサ14の検出信号Rにより運搬車両1の停車を迅速に検知し,その停車検知手段27の検知信号Eと空間線量率計12の出力値Vと荷重計11の測定値Wとを計測手段25に入力する。計測手段25において,図3(B)に示す検知信号Eの入力時点tr後における出力値Vの安定化時間T(=約5秒間)の経過時点(=約8秒)から,図3(E)に示す測定値Wの振幅変動収束時点tw(=約12秒)まで,空間線量率計12の出力値Vの平均をとることにより運搬車両1の空間線量率Sを計測する。すなわち,出力値Vが安定してから測定値Wの振幅変動が収束するまでの待ち時間(≒4秒)を利用して空間線量率計12の出力値Vの平均をとることにより,精度を高めた運搬車両1の空間線量率Sと荷重Wとを同時に計測することができる。或いは,この場合において,出力値Vの安定から測定値Wの振幅変動が収束するまでの待ち時間が平均化に適した所定時間tより短い場合は,出力値Vが安定してから所定時間tにわたって空間線量率計12の出力値Vの平均をとることにより運搬車両1の空間線量率Sの精度を高めることも可能である。
計測手段25で計測した運搬車両1の空間線量率S(及び荷重W)は,必要に応じて記憶手段21に記録することができる。また図示例では,計測手段25で計測した運搬車両1の空間線量率S(及び荷重W)を判定手段26へ入力し,判定手段26において空間線量率Sを記憶手段21の許容限度M(例えば最大値100μSv/h)と比較することによりゲート通過の許否を判定している。或いは,許容限度Mに代えて,空間線量率SをバックグラウンドBGと比較する(例えばバックグラウンドBGの3〜5倍を超えているか否かを比較する)ことにより,ゲート通過の許否を判断することも可能である。例えば判定手段26において,空間線量率Sが許容限度M以下(又はバックグラウンドBGの3〜5倍以下)であるときは通過ゲート10の信号器24を青信号に切り替えて運搬車両1の公道への搬出を許容し,空間線量率Sが許容限度M(又はバックグラウンドBGの3〜5倍)を超えたときは運搬車両1を通過ゲート10から積み替え場へ誘導して空間線量率の低減措置を講じさせる。空間線量率の低減措置を講じた後の運搬車両1は,再度通過ゲート10に進入させて空間線量率Sの計測を繰り返す。
本発明によれば,運搬車両1の通過ゲート10に空間線量率計12と共に停車検知手段27を設け,停車検知手段27による停車検知信号Eと空間線量率計12の出力値Vとから運搬車両1の空間線量率Sを計測するので,空間線量率計12の出力値VがバックグラウンドBGから変化しない場合でも,運搬車両1の空間線量率Sを自動的に計測することができる。また,出力安定化時間Tが十分短い空間線量率計12を用いることにより,各運搬車両1の計測時間を30秒以下に抑えるシステムとすることができ,搬出施設の能力を最大限に活用して被災地の放射線汚染物を効率的に搬出することが可能となる。
こうして本発明の目的である「運搬車両の空間線量率を自動的に計測できるシステム」の提供を達成することができる。
運搬車両1の荷重計11を用いて停車検知手段27を構成した場合において,図3(E)のタイムチャートでは荷重計11の測定値Wの振幅変動収束時点twを待って運搬車両1の停車を検知しているが,測定値Wの振幅変動収束twに代えて測定値Wの上昇終焉Tw´によって運搬車両1の停車を検知することも可能である。すなわち,コンピュータ20の停車検知手段27において測定値Wの今回極大値と前回極大値とを比較し,今回極大値が前回極大値よりも小さくなる上昇終焉時点Tw´を検出し,その上昇終焉時点Tw´(=7秒)によって運搬車両1の停車を検知することにより,振幅変動収束時点twに基づく場合に比して運搬車両1の停車検知時間をΔT(=tw−tw=約5秒)だけ早め,空間線量率Sの計測時間の短縮を図ることができる。
1…運搬車両 2…放射性汚染物質
10…通過ゲート 11…荷重計
12…空間線量率計 14…光電センサ
20…コンピュータ 21…記憶手段
22…入力手段 23…出力手段
24…信号機 25…計測手段
26…判定手段 27…停車検知手段
BG…バックグラウンド T…空間線量率計の出力安定化時間
M…許容限度の空間線量

Claims (7)

  1. 放射性汚染物を積載した運搬車両の通過ゲートの片側又は両側に当該通過ゲートと対向させて設けた空間線量率計,前記通過ゲート上の運搬車両の停車を検知する停車検知手段,及び前記空間線量率計の出力値と停車検知手段の検知信号とを入力し且つ停車検知時点後における空間線量率計の出力安定化時間経過後の出力値により運搬車両の空間線量率を計測する計測手段を備えてなる放射性汚染物運搬車両の計測システム。
  2. 請求項1のシステムにおいて,前記停車検知手段に前記空間線量率計の隣接位置で通過ゲートと交差する信号光の透過又は反射を検出する光電センサを含めてなる放射性汚染物運搬車両の計測システム。
  3. 請求項1のシステムにおいて,前記停車検知手段に前記通過ゲート上の車両の荷重を測定する荷重計を含め,当該荷重計の測定値の振幅変動収束により車両の停車を検知してなる放射性汚染物運搬車両の計測システム。
  4. 請求項1のシステムにおいて,前記停車検知手段に前記通過ゲート上の車両の荷重を測定する荷重計を含め,当該荷重計の測定値の上昇終焉により車両の停車を検知してなる放射性汚染物運搬車両の計測システム。
  5. 請求項1又は2のシステムにおいて,前記通過ゲート上の車両の荷重を測定する荷重計を設け,前記計測手段に空間線量率計の出力値と停車検知手段の検知信号と荷重計の測定値とを入力し且つ停車検知時点後における空間線量率計の出力安定化時間経過後から荷重計測定値の振幅変動収束時点までの空間線量率計の出力値の平均により運搬車両の空間線量率を計測してなる放射性汚染物運搬車両の計測システム。
  6. 請求項1から5の何れかのシステムにおいて,前記計測手段により,前記出力安定化時間経過後から所定時間にわたる空間線量率計の出力値の平均によって運搬車両の空間線量率を計測してなる放射性汚染物運搬車両の計測システム。
  7. 請求項1から6の何れかのシステムにおいて,前記運搬車両の空間線量率を許容限度と比較してゲート通過の許否を判定する判定手段を設けてなる放射性汚染物運搬車両の計測システム。
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