JP2014117347A - 血清の調製方法及び血清 - Google Patents

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Abstract

【課題】高濃度の増殖因子を含有する血清の調製方法及び高濃度の増殖因子を含有する血清を提供すること。
【解決手段】抗凝固剤を含有する血液1を遠心分離することにより、液性成分からなる上層2と、その他の成分からなる下層3とに分離する第一の分離工程S1と、上層2と下層3とに分離された血液1から、前記上層の一部を除去する除去工程S2と、前記上層の一部が除去された血液1に、血液凝固促進材4を添加することによって、下層3に含まれる血小板を活性化し、血液1を凝固させるとともに、前記血小板から増殖因子を放出させる活性化工程S3と、放出された前記増殖因子を含む血液1を、遠心分離することにより、前記増殖因子を含む血清6と、血液1の成分が凝固した血餅5とに分離する第二の分離工程S4と、分離された血清6を回収する回収工程S5と、を有する血清6の調製方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、血清の調製方法及び血清に関する。
現在、再生医療分野においては、対象者から採取した幹細胞を体外で増殖又は分化させたうえで対象者に移植することで対象者の組織の再生を促進させるという研究が行われている。幹細胞は、種々の組織や器官に分化する多分化能を有し、再生医療のカギを握る細胞として注目されている。
幹細胞の体外培養増殖では、培地に対して血清を添加すれば効果的であることが知られている。しかし、ヒトの治療を目的とする場合には、ヒト以外の動物を由来とする血清を用いることは安全上の問題から避けるべきことであり、ヒト由来、特に対象者本人から採取した血液より調製した血清を用いることが要求される。また、血液検査と比べると再生医療の分野における幹細胞の培養には、比較的多くの血清が必要となる。このような求めに応じて、多くの血清を比較的簡便に調製する装置や方法も開発されてきており、実用化もされている(例えば、特許文献1参照)。
一方、多血小板血漿(PRP)は、血小板を濃縮した血漿であり、増殖因子を高濃度で含有することから、細胞培養だけでなく創傷治癒、骨再生、美容分野におけるフェイスリフト等の様々な医療分野において利用されている(例えば、特許文献2参照)。これらの分野においては、高濃度の増殖因子を含有するPRPの利用が有効であると考えられている。
特許第4682591号公報 特開2003−55237号公報
しかし、PRPの調製は操作が煩雑であり、PRPのもとになる血液のドナーや、PRPを調製する操作者によって、調製されるPRPの組成や品質にばらつきが生じていた。
そこで、調製に煩雑な操作を必要するPRPに代わって、高濃度の増殖因子を含有し、細胞培養だけでなく、創傷治癒、骨再生、美容等の様々な医療分野においても利用することのできる血清が求められている。
本発明は、高濃度の増殖因子を含有する血清の調製方法及び高濃度の増殖因子を含有する血清を提供することを目的とする。
本発明は、抗凝固剤を含有する血液を遠心分離することにより、液性成分からなる上層と、その他の成分からなる下層とに分離する第一の分離工程と、前記第一の分離工程において、前記上層と前記下層とに分離された前記血液から、前記上層の一部を除去する除去工程と、前記除去工程において、前記上層の一部が除去された前記血液に、血液凝固促進材を添加することによって、前記下層に含まれる血小板を活性化し、前記血液を凝固させるとともに、前記血小板から増殖因子(細胞増殖因子)を放出させる活性化工程と、前記活性化工程において放出された前記増殖因子を含む前記血液を、遠心分離することにより、前記増殖因子を含む血清と、前記血液の成分が凝固した血餅とに分離する第二の分離工程と、前記第二の分離工程によって分離された前記血清を回収する回収工程と、を有する血清の調製方法に関する。
また、本発明は、前記血清の調製方法によって調製された血清に関する。
本発明によれば、高濃度の増殖因子を含有する血清の調製方法及び高濃度の増殖因子を含有する血清を提供することができる。
本発明の実施態様に係る血清の調製方法を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、本発明に係る血清の調製方法の好ましい一実施態様について、図1に沿って説明する。
本実施態様の血清の調製方法は、第一の分離工程(S1)と、除去工程(S2)と、活性化工程(S3)と、第二の分離工程(S4)と、回収工程(S5)と、を備える。
本実施態様に係る血清の調製方法では、血液が血清の原料として用いられる。
本実施態様における「血液」とは、血球成分(赤血球、白血球、血小板)と液性成分である血漿(血清)からなる全血をいう。また、採取した血液は放置することによって流動性が低下し、赤い凝固塊(血餅)と淡黄色の液体とに分離される。この淡黄色の液体を「血清」という。
本実施態様に係る血清の調製方法で用いられる容器(遠沈管)の大きさや形は、遠心分離器に用いることができるものであれば特に限定されない。
本実施態様に係る血清の調製方法で用いられる容器の材質としては、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂、ガラス等が挙げられる。本実施態様に係る血清の調製方法では、耐遠心性が強いことから、ポリプロピレン(PP)製の容器を用いることが好ましい。
本実施態様において、血液は抗凝固剤を含有する。血液は抗凝固剤を含有することにより凝固し難くなることから、長期間に亘って保存をすることが可能になる。用いられる抗凝固剤は、特に限定されないが、クエン酸ナトリウム、EDTA、ヘパリン等が挙げられる。血清の調製前、あるいは調製中の血液における血小板の保存性の観点から、クエン酸ナトリウムを抗凝固剤として用いるのが好ましい。
前記第一の分離工程(S1)では、抗凝固剤を含有する血液1(図1(a))を遠心分離することにより、液性成分からなる上層2と、その他の成分からなる下層3とに分離する(図1(b))。
上層2は、血漿等を含有する。
下層3は、赤血球層31と、バフィーコート層32とからなる(図1(b))。
赤血球層31は、主に赤血球を含有し、バフィーコート層32は、主に白血球及び血小板を含有する。
第一の分離工程(S1)における遠心分離の遠心加速度は800〜7000gであることが好ましい。第一の分離工程(S1)において、800gよりも小さい遠心加速度で遠心分離を行うと、血液1が上層2と下層3に分離し難くなる傾向にあり、7000gよりも大きな遠心加速度で遠心分離を行うと、血小板が遠沈管の壁面に付着してしまい、後述する活性化工程(S3)において血小板から放出される増殖因子が減少してしまう場合がある。
第一の分離工程(S1)における遠心分離は、3〜20分行うことが好ましい。第一の分離工程(S1)における遠心分離を、3分よりも短い時間行うと血液1が上層2と下層3に分離し難くなる傾向にあり、20分よりも長い時間行うと、血小板が遠沈管の壁面に付着してしまい、後述する活性化工程(S3)において血小板から放出される増殖因子が減少してしまう場合がある。
第一の分離工程(S1)における遠心分離は、4〜37℃の条件下で行うことが好ましい。第一の分離工程(S1)における遠心分離を、4℃未満の条件下で行うと、溶血する傾向にあり、37℃よりも高い温度のもとで行うと、増殖因子の生理活性が低下する、あるいは溶血する傾向にある。
第一の分離工程(S1)における遠心分離の具体的な条件としては、「2000g×15分、25℃」や「5000g×5分、25℃」が挙げられる。
前記除去工程(S2)では、第一の分離工程(S1)において、上層2と下層3とに分離された血液1(図1(b))から、上層2の一部を除去する。
除去工程(S2)では、上層2の全部ではなく一部を除去する。後述する、血清6の含有する増殖因子はバフィーコート層32に含まれる血小板から放出される。従って、血清6の含有する増殖因子を減少させないために、除去工程(S2)では、バフィーコート層32の一部を廃棄することのないように、また、バフィーコート層32をできる限り乱さないように上層2の一部を除去する。
除去工程(S2)において、除去する上層2の量を調整することによって最終的に得られる血清6の濃度を調整することもできる。すなわち、除去する上層2の量を多くすると血清6の増殖因子の濃度は高くなり、除去する上層2の量を少なくすると血清6の増殖因子の濃度は低くなる。また、上層2の一部が除去された血液1に、必要に応じて少量の生理食塩水を加えてもよい。
除去工程(S2)において除去する上層2の量は、上層2(血漿)全体の量の30〜90%が好ましく、50〜80%がより好ましい。除去する上層2の量が、上層2(血漿)全体の量の20%未満であると、高濃度の増殖因子を含有する血清を得ることが困難になり、上層2(血漿)全体の量の90%よりも多いと、最終的に得られる血清の容量が少なくなってしまう。
除去工程(S2)における上層2の除去手段としては、ピペットによる吸引等を挙げることができるが、これに限定されない。
除去工程(S2)において上層2の一部が除去された血液1は、懸濁をした上で後述の活性化工程(S3)に供することが好ましい。懸濁することによって、活性化工程(S3)における血小板の活性化が円滑に進行する。
前記活性化工程(S3)では、除去工程(S2)において、上層2の一部が除去された血液1(図1(c))に、血液凝固促進材4を添加することによって、血液1を凝固させるとともに、下層3に含まれる血小板を活性化し、前記血小板から増殖因子を放出させる。
活性化工程(S3)においては、血小板が活性化され、増殖因子が放出される。また、血小板が活性化されることにより、血液成分が凝固して血餅5が生成される。
血小板にはα顆粒と呼ばれる顆粒状の構造物が含まれている。血小板は、α顆粒中に血小板由来の成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、上皮成長因子(EGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等の増殖因子を含有する。活性化工程(S3)においては、血小板を活性化することにより、これら増殖因子を放出させる。
活性化工程(S3)において用いられる血液凝固促進材4は、ガラスビーズ等の二酸化ケイ素からなる物質、塩化カルシウム、トロンビン、コラーゲン等が挙げられる。血液凝固促進材4としては、塩化カルシウム及びトロンビンのいずれか、あるいは両方を用いることが好ましく、2〜10質量%の塩化カルシウム水溶液を、血清の原料として用いた血液量の1〜5%の容量用いることがより好ましい。抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムを、血液凝固促進材4として塩化カルシウムを用いた場合、塩化カルシウムに由来するカルシウムイオンにクエン酸が配位して、キレートを形成するのでクエン酸による抗凝固作用が弱まり、血小板の活性化が進行する。
また、抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムを、血液凝固促進材4として塩化カルシウムを用いた場合であっても、更に血液の凝固を促進させるために、必要に応じてガラスビーズ等の二酸化ケイ素からなる物質を血液凝固促進材4として用いることもできる。
活性化工程(S3)では、血小板の活性化を10分〜24時間行うことが好ましく、5〜15分行うことがより好ましい。血小板の活性化の時間が10分に満たない場合には、血小板から十分に増殖因子が放出されない傾向にあり、血小板の活性化の時間が24時間を超えても、血小板から放出される増殖因子の量は大幅には増加しない。
活性化工程(S3)における、血小板の活性化温度は4〜37℃であることが好ましく、20〜30℃であることがより好ましい。血小板の活性化温度が4℃未満あるいは37℃を超える場合、血小板の活性化が円滑に進行し難い傾向にある。
活性化工程(S3)では、容器を振とうすることによって血小板の活性化を促進してもよい。
前記第二の分離工程(S4)では、活性化工程(S3)において放出された前記増殖因子を含む血液1(図1(d))を、遠心分離することにより、前記増殖因子を含む血清6と、血液1の成分が凝固した凝固成分(血餅5)とに分離する(図1(e))。
第二の分離工程(S4)における遠心分離の遠心加速度は2000〜7000gであることが好ましく、3000〜5000gであることがより好ましい。第二の分離工程(S4)において、2000gよりも小さい遠心加速度で遠心分離を行うと、血餅5が十分に分離し難くなる傾向にあり、7000gよりも大きな遠心加速度で遠心分離を行っても、分離の効率はそれほど向上しない。
第二の分離工程(S4)における遠心分離は、4〜37℃の条件下で行うことが好ましい。第二の分離工程(S4)における遠心分離を、4℃未満の条件下で行うと、溶血する傾向にあり、37℃よりも高い温度のもとで行うと、増殖因子の生理活性が低下する、あるいは溶血する傾向にある。
前記回収工程(S5)では、前記第二の分離工程(S4)によって分離された血清6(図1(e))を回収する。
回収工程(S5)における血清6の回収手段としては、ピペットによる吸引等を挙げることができるが、これに限定されない。
以上、説明したような血清の調製方法によって調製される血清は、高濃度の増殖因子を含有する。
本実施態様の血清の含有する増殖因子のうち、PDGF−ABの濃度は、13ng/mL以上であり、29ng/mL以上であることが好ましい。PDGF−ABの濃度を13ng/mL以上とした血清は、医療分野において好ましく用いることができる。
本実施態様の血清の含有する増殖因子のうち、PDGF−BBの濃度は、5ng/mL以上であることが好ましく、7ng/mL以上であることがより好ましい。PDGF−BBの濃度を5ng/mL以上とした血清は、医療分野において好ましく用いることができる。
本実施態様の血清の含有する増殖因子のうち、TGF−β1の濃度は、63ng/mL以上であることが好ましく、80ng/mL以上であることがより好ましい。TGF−β1の濃度を63ng/mL以上とした血清は、医療分野において好ましく用いることができる。
PDGF−AB、PDGF−BB、TGF−β1は、市販の定量キットを用いた酵素結合免疫吸着法によって求めることができる。市販の定量キットとしては、R&D system社製の「Quantikine human ELISA」が挙げられる。
このように、本実施形態の血清は、高濃度の増殖因子を含有する。上に列挙した、本実施形態の血清の含有する増殖因子の濃度は、全血をそのまま活性化して凝固させた後に遠心分離をすることによって得られる通常の血清の含有する増殖因子の濃度と比較して、概ね1.4倍以上の値となる。
ところで、本実施態様の血清の含有するタンパク質の濃度は、全血をそのまま活性化して凝固させた後に遠心分離をすることによって得られる通常の血清の含有するタンパク質の濃度とほぼ同等である。つまり、本実施態様の血清は増殖因子を高濃度で含有するが、タンパク質についてはほとんど濃縮されておらず、通常の生体におけるタンパク質濃度に近い。
なお、全血をそのまま活性化して凝固させた後に遠心分離をすることによって得られる通常の血清を濃縮することによっても濃縮血清を得ることは可能である。しかし、通常の血清を濃縮した濃縮血清は、タンパク質についても濃縮されてしまう。タンパク質濃度の高い血清は、粘度が高いことから取り扱いが困難である上に、細胞や組織との浸透圧の差が大きく、そのまま細胞培養等に用いると細胞や組織を破壊してしまうおそれもある。
一方、本発明に係る血清は、増殖因子を高濃度で含有する上にタンパク質濃度は通常の生体におけるタンパク質濃度とそれほど差はないので、細胞培養だけでなく、創傷治癒、骨再生、美容等の様々な医療分野においても利用することが可能である上に、粘性が低く、扱いやすい。
なお、本実施態様の血清は、上記のように抗凝固剤を含有する。この抗凝固剤は採血後の血液に添加されるものであり、特に限定されないが、クエン酸ナトリウム、EDTA、ヘパリン等が挙げられる。血清の調製前、あるいは調製中の血液における血小板の保存性の観点から、クエン酸ナトリウムを抗凝固剤として用いるのが好ましい。
次に、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「%」は、全て質量基準である。
[実施例]
<抗凝固剤の調製>
クエン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を超純水に溶解し、3.2%クエン酸ナトリウム水溶液を調製した。
<採血>
3名の健常者(表1では、それぞれドナーI,J,Kと表記)から採血し、それぞれ9mlの全血を、容量が15mLの遠沈管(材質:ポリプロピレン、株式会社サンプラテック製)に入れた。続いて、全血の入った遠沈管に、調製した3.2%クエン酸ナトリウム水溶液を1mL加えて混合した。
<1回目の遠心分離>
続いて、抗凝固剤入りの全血を遠心分離した(条件:5000g×5分、25℃)。遠心分離によって、血液は上層(血漿)と下層(赤血球層及びバフィーコート層)に分離される。
<上層の除去>
上層と下層に分離した血液の上層(血漿)をピペットで少しずつ採取し、上層(血漿)の80%を除去することによって約1mLの上層(血漿)を残した。残りの血液成分(赤血球、バフィーコート及び約1mLの血漿)は、よく懸濁した。
<血小板の活性化>
血液凝固促進材として、塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社)を超純水に溶解し、2%塩化カルシウム水溶液を調製した。
上記の残りの血液成分に、0.148mLの2%塩化カルシウム水溶液を添加し、よく混和した後、1時間室温で静置することにより、血液成分を凝固させた。
<2回目の遠心分離及び濃縮血清の回収>
続いて、血小板の活性化後の血液成分を遠心分離した(条件:5000g×10分、25℃)。遠心分離によって、血液成分は上層(濃縮血清)と下層(血餅)に分離される。
遠心分離後に濃縮血清をピペットにより回収した。
[比較例]
<採血>
3名の健常者(上記実施例のドナーI,J,Kと同じ)から採血し、それぞれ10mlの全血を、ガラスビーズ(粒径4mm、ブライト標識工業株式会社製)が2個入った、容量15mLの遠沈管(材質:ポリプロピレン、株式会社サンプラテック製)に入れた。
<血小板の活性化>
上記の全血を1時間室温で振とうすることにより、血液成分を凝固させた。
<遠心分離及び血清の回収>
続いて、血小板の活性化後の全血を遠心分離した(条件:2330g×10分、25℃)。遠心分離によって、血液成分は上層(血清)と下層(血餅)に分離される。
遠心分離後に血清をピペットにより回収した。
[参考例]
<抗凝固剤の調製>
クエン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を超純水に溶解し、3.2%クエン酸ナトリウム水溶液を調製した。
<採血>
3名の健常者(上記実施例のドナーI,J,Kと同じ)から採血し、それぞれ9mlの全血を、容量が15mLの遠沈管(材質:ポリプロピレン、株式会社サンプラテック製)に入れた。続いて、全血の入った遠沈管に、調製した3.2%クエン酸ナトリウム水溶液を1mL加えて混合した。
<1回目の遠心分離>
続いて、抗凝固剤入りの全血を遠心分離した(条件:900g×5分、25℃)。遠心分離によって、血液は上層(血漿)と下層(赤血球層及びバフィーコート層)に分離される。
<血漿とバフィーコートの回収>
上層(血漿)とバフィーコート層をピペットにより回収して、別の遠沈管(ポリプロピレン製、容量15mL)に移した
<2回目の遠心分離及び上層の除去>
上層(血漿)とバフィーコート層を再度遠心分離して、上層(血漿)と下層(バフィーコート層)に分離した。続いて、上層(血漿)をピペットで少しずつ採取し、上層(血漿)約1mL及びバフィーコート層を残した。残った血漿及びバフィーコートはよく懸濁することで活性化前の(血小板を含有する)PRPとした。
<血小板の活性化>
塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社)を超純水に溶解し、2%塩化カルシウム水溶液を調製した。
上記活性化前の(血小板を含有する)PRPに、0.148mLの2%塩化カルシウム水溶液を添加し、よく混和した後、1時間室温で静置した。
<3回目の遠心分離及びPRPの回収>
続いて、活性化後の(血小板を含有する)PRPを遠心分離した(条件:5000g×10分、25℃)。遠心分離によって、血液成分は上層(PRP)と下層に分離される。
遠心分離後に上層(PRP)をピペットにより回収した。
[評価方法]
<血小板の利用率>
実施例(濃縮血清の調製)での血小板の利用率については、次の式(1)により求めた。
Figure 2014117347
比較例(血清の調製)での血小板の利用率は100%とした。
参考例(PRPの調製)での血小板の利用率については、次の式(2)により求めた。
Figure 2014117347
上記式(1)及び上記式(2)において用いられる血小板数は、多項目自動血球分析装置(XT−1800i、シメックス社製)を用いて測定した値である。求められた血小板の利用率は、表1に示す。
<増殖因子の濃度>
実施例、比較例及び参考例でそれぞれ調製した濃縮血清、血清及びPRPの含有する濃縮因子の濃度(PDGF−AB、PDGF−BB、TGF−β1)は、これらの濃度を測定するキット(Quantikine human ELISA、R&D system社製)を用いて測定した。測定された増殖因子の濃度は、表1に示す。
Figure 2014117347
表1に示すように、実施例の(濃縮)血清の調製方法では、全血中の96%以上の血小板を利用できた。一方、参考例に示したPRPの調製方法では、血小板の利用率がドナーごとにばらつきがあり、平均でも30%を下回った。このように、実施例の(濃縮)血清の調製方法では、全血に含まれる血小板を有効利用することができる。
また、表1に示すように、実施例の(濃縮)血清の調製方法で調製された血清は、比較例で調製された通常の血清と比較して、平均でPDGF−ABは約5.1倍、PDGF−BBは約8.9倍倍、TGF−β1は約5.8倍倍濃縮され、参考例で調製されたPRPと同等か、それ以上の増殖因子を含有していた。なお、比較例の血清の調製方法で調製された血清は抗凝固剤を含有していないが、抗凝固剤を含有する血液から調製される血清と抗凝固剤を含有しない血液から調製される血清とでは、増殖因子の濃度に大きな差はない。
また、表1には示していないが、実施例の血清の調製方法において除去された血漿には、ほとんど増殖因子が含まれていなかった。このことからも、実施例の血清の調製方法における増殖因子の損失は非常に少ないと言える。
上記のように、実施例の血清の調製方法によって調製された血清は高濃度の増殖因子を含有する。このような高濃度の増殖因子を含有する血清は、細胞培養だけでなく、創傷治癒、骨再生、美容等の様々な医療分野において利用することが可能である。
1 血液
2 上層
3 下層
4 血液凝固促進材
5 血餅(凝固成分)
6 血清

Claims (2)

  1. 抗凝固剤を含有する血液を遠心分離することにより、液性成分からなる上層と、その他の成分からなる下層とに分離する第一の分離工程と、
    前記第一の分離工程において、前記上層と前記下層とに分離された前記血液から、前記上層の一部を除去する除去工程と、
    前記除去工程において、前記上層の一部が除去された前記血液に、血液凝固促進材を添加することによって、前記下層に含まれる血小板を活性化し、前記血液を凝固させるとともに、前記血小板から増殖因子を放出させる活性化工程と、
    前記活性化工程において放出された前記増殖因子を含む前記血液を、遠心分離することにより、前記増殖因子を含む血清と、前記血液の成分が凝固した凝固成分とに分離する第二の分離工程と、
    前記第二の分離工程によって分離された前記血清を回収する回収工程と、を有する血清の調製方法。
  2. 請求項1記載の血清の調製方法によって調製された血清。
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WO2017086356A1 (ja) * 2015-11-16 2017-05-26 研一 山原 ウシ血清組成物及びそのウシ血清組成物を添加剤として使用する細胞の培養方法

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