JP2014116224A - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】真空搬送時に段付ロールを用いた場合であっても、機能層の形成等の処理を精度よく可能とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
【解決手段】真空下、帯状基材50に対して帯状基材50の搬送方向に第1張力を付与し、少なくとも段付ロール20に帯状基材50を接触させながら搬送させ、前記第1張力が付与された状態で、所定位置まで帯状基材50の搬送を行う基材搬送工程と、前記所定位置まで帯状基材50の搬送が行われ、帯状基材50の搬送が停止された後、帯状基材50に対して付与する張力を、前記第1張力の1.5倍以上2.5倍以下の大きさの第2張力に変化させる張力上昇工程と、前記第2張力が帯状基材50に付与された状態で、帯状基材50に対して処理を行う基材処理工程と、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関し、詳しくは、精度よく機能層を形成可能な有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
可撓性を有する長尺の帯状基材がロールツーロール方式により搬送されつつ、その帯状基材に所定の処理(パターニングによる機能層の形成等)を施す技術が知られている。この技術は、例えば、発光素子として注目されている有機エレクトロルミネッセンス(Electro−Luminescence;EL)素子の製造に適用可能である。
有機EL素子の製造にこの技術を適用する場合、例えば、はじめに、巻回された帯状基材がロールから繰り出される。そして、帯状基材の搬送方向に張力が付与され、通常は複数備えられる搬送ロールに接触しながら基材が所定位置まで搬送され、繰り出された基材上に有機EL構造体(機能層)がパターニング等により形成される。次いで、有機EL構造体が形成された基材は例えばラミネート等により封止され、別のロールに巻き取られ、必要に応じて所定の大きさに切断されることで、有機EL素子が得られる。このようなロールツーロール方式による製造は、連続生産が可能で、生産効率が向上可能であるという利点がある。
しかし、この場合、基材に対して行う処理(例えば機能層の形成等)によっては、処理された領域が搬送ロールに接触されないようにすることが好ましいことがある。これは、搬送ロールに処理領域が接触すると、処理領域に、ゴミ、異物等が付着したり、傷が付くことがあるからである。また、例えば処理領域上に機能層を形成した後に搬送ロールに接触した場合には、機能層が例えば接触によって削り取られたり、傷が付いたりすることもある。そして、これらにより、機能層の有する機能が損なわれることがある。
そこで、基材が搬送ロールにできるだけ接触しないように、搬送ロール表面に設けられた通気孔を介してエアを噴出させ、これにより、基材の搬送ロールへの接触を避ける方法がある。ただし、この方法は、真空下で機能層を形成したり搬送したりする場合には適用し難い。
そこで、例えば真空下でも適用可能にするため、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の技術においては、通常の平滑な搬送ロール(平ロール)とは異なり、機能層が形成された部分は接触せず、機能層が形成された部分以外の部分において基材を保持する搬送ロールが用いられている。このロールは、例えば段付ロールと呼称される(段差付ロールと呼称されることもある)。
この段付ロールは、基材の搬送方向と直交する方向である幅方向において、機能層が形成された部分以外の部分において基材に接触している。このような状態では、基材の幅方向において、基材が支持されている部分と、基材が支持されていない部分とが生じることになる。そして、この基材が支持されていない部分に処理が行われる領域を配置すれば、搬送ロールの接触による機能層の機能が損なわれることを抑制することができる。
しかしながら、段付ロールにより基材を搬送すると、特に支持されていない部分において、基材が変形し易くなる。そこで、特許文献2には、このような基材の変形の程度を検出し、変形が生じたバリアフィルム部分のバリア性能を判定する製造装置が記載されている。
特開2011−241015号公報 特開2011−184790号公報
特許文献2においては、基材の変形について言及されているものの、基材の変形そのものを防止する方法は一切開示されていない。従って、特許文献2に記載の技術は、基材の変形を防止する技術としては依然として不十分である。
搬送ロールとして段付ロールを用いる場合、特に搬送ロールに支持されていない部分において、特許文献2にも記載されているように基材の変形が生じ易い。この変形は、本発明者らの検討によれば、搬送ロールに支持されている部分では基材と搬送ロールとの間で摩擦が生じているものの、支持されていない部分では摩擦が生じないことによるものであると考えられる。従って、基材の搬送方向に張力が付与されると、摩擦が生じない支持されていない部分で、シワや折れ曲がりが特に発生し易くなる。そして、基材が変形すれば、そのような変形した基材に対して機能層の形成等の処理が行われることになり、位置精度や膜厚精度と行った精度の低下等により、有機EL素子の性能が低下する。
そこで、このような段付ロールを用いる場合、平ロールを用いる場合と比べて、基材に対する張力を低くすることが好ましい。張力を低くすれば、特に搬送ロールに支持されていない部分における変形を抑制することができる。
しかしながら、基材の張力が低くなると、基材のたるみや撓みが生じることがある。これにより、基材の平面性が低下することがある。そのため、基材の平面性が低下している状態で機能層を形成すると、例えば機能層の膜厚分布が不均一になることがある。即ち、機能層の膜厚の精度が低下する。
さらには、基材に対する処理として例えば機能層を形成するとき、例えば温度調節プレート等を基材近傍に設置し、基材の温度を制御することがある。このような場合においては、基材のたるみ等により平面性が低下していると、温度調節プレートによる基材の温度制御が、一様に行われないことがある。これにより、基材の温度調節を精度よく行うことができず、機能層が形成される領域で温度分布が発生することがある。そのため、所望の機能層が形成されず、機能層が本来奏する機能が十分に発生されなかったり、機能層の性能にばらつきが発生したりする。
これらの課題は、基材が可撓性を有する場合に顕著となる。特に、有機EL素子は、機能層等において精密さが要求されることが多い。そのため、基材の処理時にこのような課題が存在すると、例えば位置精度の低下、温度不均一等のほか、機能層を形成する場合には、機能層の膜厚分布不均一等が発生する。これらにより、作製される有機EL素子の使用時に、例えば輝度分布が不均一になり易くなる。勿論、これらの課題を解決するために基材を高張力で搬送させることも考えられるが、そのようにすると、前記のように基材の変形が発生しやすくなる。これにより、例えば発光時に非発光部面積の増大を引き起こし易くなる。
本発明は、前記の課題に鑑みて為されたものである。そこで、本発明が解決すべき課題は、真空搬送時に段付ロールを用いた場合であっても、機能層の形成等の処理を精度よく可能とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することである。
本発明の要旨は、以下の通りである。
1.回転方向に凸部が形成され、前記凸部に可撓性の帯状基材が接触した状態で前記帯状基材を搬送可能な段付ロールを含む複数の搬送ロールを備える製造装置において行われる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
真空下、前記帯状基材に対して前記帯状基材の搬送方向に第1張力を付与し、少なくとも前記段付ロールに前記帯状基材を接触させながら搬送させ、前記第1張力が付与された状態で、所定位置まで前記帯状基材の搬送を行う基材搬送工程と、
前記所定位置まで前記帯状基材の搬送が行われ、前記帯状基材の搬送が停止された後、前記帯状基材に対して付与する張力を、前記第1張力の1.5倍以上2.5倍以下の大きさの第2張力に変化させる張力上昇工程と、
前記第2張力が前記帯状基材に付与された状態で、前記帯状基材に対して処理を行う基材処理工程と、を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
2.前記張力上昇工程及び前記基材処理工程のうちの少なくとも一方は真空条件下で行われることを特徴とする、前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
3.前記基材処理工程は真空中で行われ、
前記基材処理工程における処理は、前記帯状基材の表面改質及び機能層の形成の少なくとも一方であることを特徴とする、前記1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
本発明によれば、真空搬送時に段付ロールを用いた場合であっても、機能層の形成等の処理を精度よく可能とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法のフローである。 本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置である。 本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法における張力上昇工程を説明するための図である。 実施例において用いた段付ロールの寸法を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。ただし、本実施形態は以下の内容に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
以下、はじめに、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法について説明し、次いで、その製造方法により製造可能な有機エレクトロルミネッセンス素子の構成について説明する。
[1.有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法]
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」という)の製造方法は、回転方向に凸部が形成され、前記凸部に可撓性の帯状基材が接触した状態前記帯状基材を搬送可能な段付きロールを含む複数の搬送ロールを備える製造装置において行われる有機EL素子を製造する方法である。
本実施形態に係る有機EL素子の製造方法は、真空下、前記帯状基材に対して前記帯状基材の搬送方向に第1張力を付与し、少なくとも前記段付ロールに前記帯状基材を接触させながら搬送させ、前記第1張力が付与された状態で、所定位置まで前記帯状基材の搬送を行う基材搬送工程と、前記所定位置まで前記帯状基材の搬送が行われ、前記帯状基材の搬送が停止された後、前記帯状基材に対して付与する張力を、前記第1張力の1.5倍以上2.5倍以下の大きさの第2張力に変化させる張力上昇工程と、前記第2張力が前記帯状基材に付与された状態で、前記帯状基材に対して処理を行う基材処理工程とを含むものである。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法のフローである。また、図2は、本実施形態に係る有機EL素子の製造装置である。図1に示すフローは、例えば図2に示す製造装置100により実行することが可能である。
図2に示す製造装置100は、回転方向に凸部(図2では図示していない、例えば図3等参照)が形成され、前記凸部に可撓性の帯状基材50(以下、単に「基材50」という)が接触した状態で張力が付与されることで基材50を搬送可能な段付ロール20a〜20jを備えている。また、製造装置100は、基材50が接触した状態で張力が付与されて基材50及び保護フィルム51を搬送可能な、表面が平滑の円筒形状の平ロール30a〜30nを備えている。張力が付与された状態で基材50が搬送されると、基材50との摩擦により、段付ロール20及び平ロール30は回転するようになっている。
以下、「段付ロール20a〜20j」をまとめて適宜「段付ロール20」と呼称し、「平ロール30a〜30n」をまとめて適宜「平ロール30」と呼称する。
また、段付ロール20及び平ロール30を区別せずに呼称するときは、「搬送ロール」と呼称するものとする。付する符号は、特定のロールを表す場合には、当該特定のロールの符号と同じものを付すものとする。即ち、具体的には、例えば「段付ロール20a」は「搬送ロール20a」と呼称することがある。
製造装置100は、陽極が形成された可撓性の帯状基材ロール11(以下、単に「ロール11」という)から基材50を巻き出す巻き出し室1と、基材50の搬送方向に直行する方向の位置ずれを起こさない機構、搬送方向への移動距離補正機構等が配置された搬送補助室2とを備えている。
また、製造装置100は、基材50に対し、有機EL素子の各機能層を構成する材料を蒸着する第1成膜室3と、前記の搬送補助室2と同様の構成を備える搬送補助室4と、前記第1成膜室3において形成された機能層上にさらに別の機能層を形成する第2成膜室5とを備えている。
さらに、製造装置100は、前記の搬送補助室2,4と同様の構成を備える搬送補助室6と、基材50上に形成された膜を保護するためのロール12からの保護フィルム51を張り付けるラミネート室7とを備えている。
また、製造装置100は、前記の搬送補助室2,4,6と同様の構成を備える搬送補助室8と、保護フィルム51がラミネートされて得られた有機ELシート52をロール13に巻き取る巻取り室9と、を備えている。
これらの室1〜9内は、本実施形態においては、当該室内で行われる処理に応じて、雰囲気が制御されている。具体的には、機能層の形成(基材処理工程)、基材50に付与される張力の変化(張力上昇工程)及び基材の搬送(基材搬送工程)が行われる第1成膜室3及び第2成膜室5は、真空になっている。また、基材の搬送(基材搬送工程)が行われる補助搬送室2,4,6,8においても、真空になっている。また、ラミネート室7においては不活性雰囲気(例えば窒素ガス下)になっている。さらに、巻き出し室1及び巻き取り室9においては、大気下になっている。特に、本実施形態においては、段付ロールが設けられ、基材搬送工程が行われる室(第1成膜室3及び第2成膜室5、並びに、補助搬送室2,4,6,8)が、真空になっている。
また、搬送ロールの配置に関して、第1成膜室3及び第2成膜室5において形成される機能層の配置側に応じて、段付ロール20又は平ロール30が備えられている。即ち、詳細は図3(b)を参照しながら後記するが、基材50上の機能層の形成面と接触するように段付ロール20が備えられている。このとき、形成された機能層は段付ロール20の凸部間を通り、機能層が形成されていない部分と基材50の凸部上面とが接触することで、基材50の機能層が意図せず搬送ロールに接触することがないようになっている。また、基材50上の機能層形成面の逆側の面と接触するように、平ロール30が備えられている。
巻き出し室1に備えられるロール11の巻き芯、及び、巻き取り室9に備えられるロール13の巻き芯は、基材50を巻き取った際に変形することがなく、150℃程度の雰囲気に晒された場合でも変形しないものが好ましい。また、巻き芯は、製造装置100への着脱や減圧室等への移送時に、発塵しないことが好ましい。さらに、巻き芯の表面部分のうちで、基材50の接する部分は平滑であることが好ましく、具体的には表面粗さRaが30nm以下、Rtが100nm以下であることが好ましい。巻き芯の材質としては、ガラス繊維強化プラスチックやステンレスであることが好ましい。
さらに、基材50の巻き芯の軸方向両端部には、巻き出しや巻き取りの際の、コア上のウェブ表面と、この上に重なるウェブの背面が強く擦りあうことを防止するために、ナーリング加工(エンボス加工ともいう)を施してもよい。この高さは、例えば2μmから50μm程度とすることが好ましい。
以下、主に図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法を説明する。なお、以下の説明においては、機能層を形成する室数は、説明の簡略化のために、第1成膜室3及び第2成膜室5の2室としている。ただし、これは、形成する機能層の層数や種類に応じて適宜変更可能である。
また、第1成膜室3における機能層の形成と、第2成膜室5における機能層の形成とは、同一の基材50に対して行われる。具体的には、第1成膜室3における機能層の形成と、第2成膜室5における機能層の形成とは、基材50上の異なる機能層パターン付与エリア50a(後記する)に対して同時に行われる。ただし、以下の説明においては、説明の便宜上、一つの機能層パターン付与エリア50aのみ注目し、当該一つの機能層パターン付与エリア50aに対して行われる処理を中心に説明する。
まず、基材50が、巻き出し室1に設置されたロール11から巻き出されるとともに、基材50の全体に対して、張力(搬送時張力、第1張力)が付与される(第1張力付与工程;ステップS101)。これにより、基材50のたるみ等が解消され、基材搬送の準備が完了する。このときの張力は、基材50の厚み等によっても異なるため一概にはいえないが、例えば厚みが120μmである場合、基材50の幅1mあたりの張力として、より安定した搬送できるという観点から、通常30N以上、好ましくは50N以上、また、通常150N以下、好ましくは120N以下とする。なお、この基材50には、予め陽極(電極)パターニングが施されている。
次いで、基材50に対して張力(搬送時張力)が付与された状態(即ち、たるみ等が生じていない状態)で、基材50が搬送される(基材搬送工程;ステップS102)。具体的には、基材50において機能層形成を所望する位置(後記する機能層パターン付与エリア50a、図3(a)参照)が、第1成膜室3内になるように、基材50が搬送される。基材50が所定位置まで搬送された後、基材50の搬送が停止される(搬送停止工程;ステップS103)。なお、このとき、張力は、搬送時張力が付与されたままであり、たるみ等は生じていない。
そして、第1成膜室3内で搬送停止している基材50において、付与する張力を上昇させる制御が行われる(張力上昇工程;ステップS104)。具体的には、ステップS104においては、ステップS101において付与した張力(搬送時張力、第1張力)よりも大きな張力(処理時張力、第2張力)が、基材50に対して付与される。この点を、図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法における張力上昇工程を説明するための図である。図3は、第1成膜室3に設置された各手段を拡大して示すものでもある。
基材50は搬送され、基材50の機能層パターン付与エリア50aが搬送ロール30c,30dの間に位置したときに、搬送が停止される。このとき、基材50には、ステップS101において付与した搬送時張力が、そのまま付与されている。なお、機能層パターン付与エリア50aは、発明を把握し易くするために、簡略化して示している。
そして、この状態で、平ロール30c,30d(搬送ロール)が、図示しない駆動手段によって、左下方向(平ロール30c)及び右下方向(平ロール30d)にやや移動する(図3(a)参照)。このとき、基材50は停止しているため、基材50の位置は変化しない。そうすると、平ロール30c,30dの移動に伴い、基材50に付与されている張力が上昇して変化し、新たな張力(処理時張力)が付与される(ステップS104)。新たに付与される処理時張力は、前記のように、搬送時張力よりも大きいものである(図3(b)参照)。そして、処理時張力が付与された状態で、基材50の機能層パターン付与エリア50aに機能層が形成(即ち成膜)される(第1成膜工程;ステップS105)。
ここで、ステップS101において付与する搬送時張力(第1張力)と、ステップS104において新たに付与する処理時張力(第2張力)との関係について説明する。本実施形態においては、ステップS101において付与する搬送時張力をTR、ステップS104において新たに付与する処理時張力をTSとしたときに、TSをTRで除した値(TS/TR)が通常1.5以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.75以上、さらに好ましくは2以上、また、通常2.5以下、好ましくは2.25以下である。即ち、本実施形態においては、基材50の搬送停止中の成膜時、搬送時張力に対してこれら範囲に含まれる係数を乗じて得た大きさの処理時張力が新たに付与される。この範囲になるように処理時張力を制御することで、精度よく機能層を形成することができる。これにより、得られる有機EL素子の性能を良好なものとすることができる。
また、図3(b)に示すように、基材50の下方には、機能層を形成するための蒸着材料が放出される蒸着源3aと、基材50の下面(段付ロール20が接触する面)に所望のパターンの機能層を形成するための、微調整可能なパターン形成用マスク3b(以下、「マスク3b」という)とが配置される。また、基材50の上方には、蒸着中の基材50の温度を維持するための温度調整プレート3cが配置される。
基材50上への蒸着(成膜)は、以下のようにして行われる。即ち、まず、蒸着源3aは予め決められた蒸着割合で蒸着材料が放出されるように調整されて維持され、意図せず基材50に付着しないよう、シャッタ(図示しない)等により遮断されている。基材50には、アライメントマーク(図示しない)を設ける等して、機能層パターン付与エリア50aに対する目印が付されている。そして、第1成膜室3には、その目印が読み込まれるカメラ(図示しない)等が設置されている。これにより、基材50は、カメラがアライメントマークを読み込むことができる所定の位置まで任意の速度で搬送された後、停止する。その後、前記のように、搬送時張力よりも大きな処理時張力が基材50に対して付与される。
次いで、この処理時張力が付与された状態で、カメラによってアライメントマークが読み取られ、マスク3bがアライメントマークの位置に合うように微調整される。その後、温度調整プレート3cが下降して基材50と密着接触する一方で、マスク3bは上昇し、密着接触、又は、わずかに間隙を設けた位置で停止する。
そして、蒸着源3aのシャッタが開にされ、基材50上に機能層がパターン状に形成される。このとき、決められた膜厚になるように蒸着時間等が制御し、決められた膜厚になった時点でシャッタが閉とされる。その後、マスク3bが下降されて基準位置に戻され、温度調整プレート3cも上昇されて基準位置に戻される。そして、平ロール30c,30dが図3(a)に示す元の位置に戻されることで、基材50に対する張力が搬送時張力にまで戻される(ステップS106;張力戻し工程)。その後、基材50の搬送が再開される(ステップS107;基材搬送工程)。
搬送が再開されると、基材50の機能層パターン付与エリア50aは、搬送補助室4を経由して第2成膜室5まで搬送され、その後停止される(ステップS108;搬送停止工程)。そして、第2成膜室5において、第1成膜室3における形成と同様にして金属蒸着が行われ、陰極が形成(陰極形成処理)される(ステップS109;張力上昇工程、ステップS110;第2成膜工程、及び、ステップS111;張力戻し工程)。
その後、基材50は再び搬送され(ステップS112;基材搬送工程)、基材50の機能層パターン付与エリア50aは、搬送補助室6を経由して、ラミネート室7に送られる。ラミネート室7においては、基材50が搬送されながら、陰極表面を覆おうようにして保護フィルム51が貼着される(ステップS113;ラミネート工程)。これにより、有機ELシート52が得られる。そして、ラミネートされることにより得られた有機ELシート52は、搬送補助室8を経由して巻き取り室9に搬送され、ロール13に巻き取られる。最後に、必要に応じてロール13から巻き出し、所定の大きさに切断することで、有機EL素子が得られる。最後に、搬送時に基材50に対する搬送時張力の付与が解除され(ステップS114;第1張力解除工程)、一連のフローが完了する。
このように、本実施形態に係る製造装置100においては、搬送ロールとして、機能層の接触面側に段付ロール20が備えられている。そして、搬送が停止され、機能層が形成される時には、基材50に付与する処理時張力が、搬送時張力より大きくなるように制御している。これにより、基材50の撓みをより確実かつ簡便に防止することができる。そのため、機能層の形成等の処理を精度よく行うことができ、良好な性能の有機EL素子を得ることができる。
図2に示す製造装置100は、段付ロール20を含む複数の搬送ロールを用いて、ロールツーロール方式により、有機EL素子を製造している。具体的には、前記したように、ロール状に巻いた可撓性を有する長尺の基材50をロール11から巻き出して、間欠的に搬送しながら、基材50上にサブミクロンの機能層(機能性材料層)を形成したり、有機EL構造体(機能層や電極等)の一部又は全部を形成したりして、再び、ロール13に巻き取っている。ロール11に巻回された基材50は、巻き芯を含めて「元巻き」を呼称することもある。また、搬送中の基材50の一部分を表す場合、ウェブとも呼称されることもある。具体的には例えば、図示はしないが、透明導電層を真空成膜装置中で繰り出して、一箇所又は複数の箇所でスパッタ等により成膜後、真空中で巻き取る場合である。
また、機能層を真空中で形成後、真空中で保護フィルム51をラミネートしたり、真空から、一段階又は複数段階の減圧室を経由して常圧に戻してから、保護フィルム51をラミネートしたりしてから巻き取る場合も、所謂ロールツーロール方式と呼称する。
また、保護フィルム51でラミネートして有機ELシート52が得られた後、可撓性があったとしても敢えて巻き取ることをせずに、断裁処理等して枚葉の状態のままの製造工程を採ることもある。これにより、ロール13を介さずに有機EL素子が得られることになるが、この場合も、広い意味でロールツーロール方式と呼称する。また、ラミネート後に大気圧下へ戻すまでウェブの状態のまま搬送する場合も、広い意味でロールツーロール方式と呼称する。このように、処理面側を実質的に非接触として搬送することにより、性能、品質、生産性等を向上させることができる。
以上、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法を説明したが、本実施形態の有機EL素子の製造方法は前記の例に限定されるものではない。
例えば、製造装置100の構成はあくまでも例であり、本実施形態に係る製造方法が適用可能な製造装置であればどのような構成であってもよい。
また、例えば、処理時張力を搬送時張力から上昇させる方法として、本実施形態では図3に示すように平ロール30を移動させているが、張力上昇の方法としては、図示の方法に限定されない。例えば、ダンサロールを用いてもよいし、ブレーキ等を用いて張力を制御するようにしてもよい。
さらに、図示の例では、基材50の搬送停止後に機能層の形成する処理を行っているが、基材50に対して行う処理はこれに限られず、どのような処理でも同様に行うことができる。例えば、基材50の搬送を停止した後に基材50の表面改質を行うことで、精度よく表面改質を行うことができる。さらに、1種の処理に限られず、複数の処理が行われるようにしてもよい。
また、前記の例では、基材搬送工程に加えて、張力付与工程及び基材処理工程も真空で行われるようにしたが、基材搬送工程が真空で行われればこれに限られず、張力上昇工程及び基材処理工程は必ずしも真空で行われる必要はない。
[2.有機EL素子]
次に、本実施形態に係る製造方法により製造可能な有機EL素子(以下、適宜「本実施形態に係る有機EL素子」という)について説明する。本実施形態に係る有機EL素子は、基材上に電極及び種々の機能層が形成されたものである。
本実施形態に係る有機EL素子に備えられる基材(支持体)は、可撓性を有する帯状のものである。可撓性を有する基材としては、例えば透明な樹脂フィルム(プラスチックフィルム)が好ましい。具体的には、その厚みとして例えば10μm以上、好ましくは30μm以上、また、250μm以下、好ましくは200μm以下であり、外径が7.7cmから30cmの巻き芯(コアともいう)に巻回可能な高分子有機材料からなるフィルム(比較的厚い場合はシートともいう)が好ましい。
より具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、2,6−ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン(PES)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
基材は、均一な連続したフィルムであることが望ましいが、異種又は同種の基材の末端を接合(スプライス)したものでもよい。この場合、接合部は基材より薄い粘着テープにより、搬送中に破断しないように接合することが好ましい。基材の透明性は特に限定されないが、有機EL素子を構成する場合には、可視光線の透過率が50%以上99%以下である、所謂透明又は半透明のものが好ましい。複数の高分子材料を積層したものであっても構わない。基材としては、特開2005−38661号公報に記載の積層フィルムを用いることもできる。
また、基材表面には、ガスバリア層が形成されていることが好ましい。即ち、詳細は後記するが、基材上に形成される機能層と基材との間には、ガスバリア層が形成されていることが好ましい。これにより、特に発光層等の機能層が有する電気的機能に影響を及ぼしうる水分や酸素等の気体成分が、当該機能層に到達することを防止することができる。
ガスバリア層は例えば無機蒸着膜であり、水蒸気透過係数が1×10−14g・cm/(cm・sec・Pa)以下の防湿層が挙げられる。このような基材を用いることで、基材から機能性層への水蒸気透過度等のガス透過性を低下させることができる。また、これにより、通常の大気下(所謂常温常湿の環境下)での駆動寿命を長期化することができ、良好な有機EL素子とすることができる。
ガスバリア層を構成可能な材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のセラミック蒸着層、また、これらのセラミック層と衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成を有する防湿層、さらには、金属箔、例えば銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔等が挙げられる。これらは、複数積層されたものとすることもできる。
ガスバリア層の厚さは、例えば0.02μm以上、好ましくは6μm以上、また、50μm以下、好ましくは20μm以下程度とすることができる。ガスバリア層は、例えばスパッタ、プラズマCVD(化学気相蒸着法)等により形成することができる。
また、ガスバリア層は、図2を参照しながら説明した保護フィルムの外側面に対して形成したり、同等の性能を有する保護フィルムをラミネートして形成したりすることが好ましい。保護フィルムの外表面にガスバリア層が形成される形態としては、例えば、保護フィルムの外表面にガスバリア性を有するフィルム等がラミネートされた形態が挙げられる。このようなガスバリア性を有するフィルムとしては、例えば凸版印刷社製のGXフィルム等のPETを基材とした蒸着フィルム等が挙げられる。ラミネートに際しては、例えば熱硬化性接着剤又は光硬化性接着剤が適用可能である。
さらには、保護フィルムを貼着する前の陰極上にガスバリア層を形成し、その後に保護フィルムを貼着するようにしてもよい。ガスバリア層を形成した後に保護フィルムが貼着される場合、保護フィルムは、真空中で貼着されてもよく、大気圧下で貼着されてもよい。ただし、この場合、窒素気流下等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
前記したように、本実施形態に係る有機EL素子は、基材上に、電極及び機能層が形成されている。このような機能層は、通常は有機層である。従って、本実施形態に係る有機EL素子は、基材と保護フィルムとの間に配置された一対の電極間に、通常は単数又は複数の有機層が積層されてなる。
具体的な有機層の構成としては、例えば、陽極/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極等の構成等が挙げられる。また、最も単純には、陽極/発光層/陰極等の構成が挙げられる。さらに、これらの層以外にも、電子阻止層、正孔阻止層、バッファー層等が適宜設けられる。これら各有機層、各薄膜の膜厚は、1nm〜数μmの範囲にわたり、電極からキャリアを注入することで層中の発光材料が発光する。両極から注入された正孔及び電子等のキャリア移動がスムースに行われるよう、各層が構成されている。
有機EL素子を構成可能な各有機層について説明する。
有機EL素子を構成可能な各有機層のうち、発光層中に含有される発光材料(成膜材料)には種々の蛍光性物質が適用可能である。このような発光材料は特に限定されるものではないが、例えば、カルバゾール、カルボリン、ジアザカルバゾール等の芳香族複素環化合物、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等及びこれらの単独オリゴ体或いは複合オリゴ体等が挙げられる。
また、発光層中には、好ましくは0.1質量%〜20質量%程度のドーパント材料が含有されることが好ましい。ドーパントとしては、例えばペリレン誘導体、ピレン誘導体等公知の蛍光色素等、また、リン光発光タイプの発光層の場合、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジン)(ピコリナート)イリジウム、等に代表されるオルトメタル化イリジウム錯体等の錯体化合物が前記発光材料と共に0.1質量%〜20質量%程度含有可能である。
有機EL素子の発光の方式は特に制限されないが、例えばりん光発光方式が好ましい。りん光発光方式は、発光層内部に発光領域を有すると考えられ、比較的発光ムラが起こりづらく、貼合法の最大の難点である接合界面でのムラや、キャリア移動が遅くなるという現象を起こしにくく好ましい。
正孔注入・輸送層に用いられる材料としては、フタロシアニン誘導体、ヘテロ環アゾール類、芳香族三級アミン類、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などに代表される導電性高分子等の高分子材料、また、発光層に用いられる、例えば、4,4′−ジカルバゾリルビフェニル、1,3−ジカルバゾリルベンゼン等のカルバゾール系発光材料、(ジ)アザカルバゾール類、1,3,5−トリピレニルベンゼンなどのピレン系発光材料に代表される低分子発光材料、ポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリビニルカルバゾール類等に代表される高分子発光材料等が挙げられる。
電子注入・輸送層材料としては、例えば8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物又は以下に挙げられた含窒素五員環誘導体等がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
各有機層の厚みは特に制限されるものではないが、例えば0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下である。有機層は、例えば蒸着法、塗布法、印刷法等により形成することができる。
電極材料のうち正孔の注入を行う陽極に使用される導電性材料としては、例えば4eVより大きな仕事関数を有する材料が好ましい。具体的には、例えば、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、酸化スズ、酸化インジウム、ITO(酸化インジウムスズ)等の酸化金属、更にはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂等が挙げられる。中でも、透光性であることが好ましく、具体的には透明電極であるITOが好ましい。ITO透明電極の形成方法としては、例えばスパッタ、マスク蒸着、フォトリソパターニング等が適用可能であるが、これらに限られるものではない。
また、陰極に使用される導電性物質としては、例えば4eVより小さな仕事関数を有する材料が好ましい。具体的には、例えば、マグネシウム、アルミニウム等、合金としては、マグネシウム/銀、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられる。また、その形成方法は、スパッタ、マスク蒸着、フォトリソパターニング、メッキ、印刷等が適用可能であるが、これらに限られるものではない。
なお、前記の有機EL素子は、例えば照明用の単色或いは白色の有機EL素子である。ただし、有機層のうち発光層を赤、緑及び青のそれぞれ3色ごとにパターニングして構成し、駆動回路を組み込むことで、フルカラー表示体とすることもできる。
以下、実施例を挙げて、本実施形態をより具体的に説明する。
<有機EL素子の作製>
図1に示したフローに沿って、図2に示した製造装置100を用いて、有機EL素子を作製した。
まず、幅1000mm、厚さ120μmの帯状のポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム;基材)上に、有機EL成膜面(機能層が形成される面)側にガス遮蔽膜(バリア膜)が80nmの厚みで全面に形成され、その上にITO膜が厚さ130nmで形成されたものを準備した。なお、ITO膜は、搬送方向280mm、搬送方向と直交する方向(幅方向)280mmに、パターニングしたものである。ITO膜の表面比抵抗は40Ω/□であった。ちなみに、このパターニングされたITO膜が、図3を参照しながら説明した「機能層パターン付与エリア50a」に相当する(ただし、図3においては、説明の簡略化のために、幅方向に一つしか設けていない)。
隣接する、パターニングされたITO膜(即ち、「機能層パターン付与エリア50a」)の搬送方向の間隔は、製造装置100の各室に差圧を形成するためのゲートで挟み込まれる部分を予め確保するため、60mmとした。また、幅方向の間隔は50mmずつ設けた(フィルム両端からは30mmずつ)。
これを巻回してロール11を得て、得られたロール11は、図2に示す製造装置100の巻き出し室1にセットした。そして、ロール11の基材50に対し、100N/基材幅の搬送時張力(図1を参照しながら説明した第1張力)を付与し、製造装置100の運転を開始した。製造装置において用いた段付ロール20の寸法は、図4に示すとおりである。
図2に示す第1成膜室3においては、ロール11からの基材50の搬送を停止した後、基材50に対して付与していた搬送時張力を、搬送時張力以上の処理時張力(図1を参照しながら説明した第2張力)に変化させた。その後、この処理時張力が維持された状態で、機能層を構成する材料を蒸着した。処理時張力の大きさは、実験結果とともに表1に後記する。その後は張力を搬送時張力に戻し、基材50を搬送し、以降の第2成膜室5に供した。
第1成膜室3において蒸着させた材料としては、α−NPD(厚さ40nm)、CBP(共蒸着成分としてIr(ppy)を6質量%含有)(厚さ35nm)、BAlq(厚さ5nm)、Alq(厚さ40nm)、フッ化リチウム(厚さ0.5nm)であり、これらを基材50に対してこの順で蒸着した。蒸着に用いた材料の構造式を以下に示す。
Figure 2014116224
第2成膜室5においては、アルミニウムを110nm蒸着した。第2成膜室5における電極の形成も、前記の第1成膜室3における機能層の形成と同様にした。即ち、基材50の搬送を停止させた後、基材50に対して付与する張力を、前記第1成膜室3において変化させた処理時張力と同じ張力に変化させ、その後、この張力が維持された状態で、機能層を構成する材料を蒸着した。その後は張力を搬送時張力に戻し、基材50を搬送し、以降のラミネート室7に供した。
そして、ラミネート室7においては、封止樹脂(接着剤)が40μm厚で塗布されているガスバリア層形成済みのPETフィルム(PETフィルムの厚みとして80μm)を、窒素気流下でラミネートした。なお、PETフィルムに形成されているガスバリア層は、ロール11に巻回されているPETフィルムに形成されているガスバリア層と同様である。これにより、有機ELシート52が得られ、得られた有機ELシート52は、巻き取り室9においてロール13に巻き取られ、緑色りん光を発光する有機EL素子が作製された。
<作製された有機EL素子についての特性評価>
(1)非発光部面積の評価
作製した有機EL素子の素子発光部をデジタル画像で撮影し、画像処理ソフトを用いて画像を二値化し、発光部と非発光部との面積比を算出し、得られた面積比を以下の基準に従って評価した。
◎:面積比が1%以下(全面に亘って発光しており、大変良好である)
○:面積比が1%より大きく2%以下(大部分が発光しており、良好である)
△:面積比が3%より大きく10%以下(発光しているが、発光していない部分もある)
×:面積比が10%より大きい(発光していない部分が目立っている)
(2)輝度分布(発光ムラ)の評価
作製した有機EL素子を室温下1000cd/mとなるように発光させ、2次元色彩輝度計 CA−2000(コニカミノルタオプティクス社製)で輝度分布を測定した。そして、素子発光部における輝度の最大値と最小値との差を1000cd/mで除し、得られた値を以下の基準に従って評価した。
◎:値が5%未満(全面に亘って特に均一に発光しており、目視可能な発光ムラは生じていない)
○:値が5%以上10%未満(全面に亘って均一に発光しており、発光ムラは殆ど生じていない)
△:値が10%以上15%未満(略全面に亘って均一に発光しているが、ところどころに発光ムラが見出される)
×:値が15%以上(発光強度の相異が目立ち、発光ムラが散見される)
以上の結果について、搬送時張力、及び、処理時張力とともに表1に示す。なお、表1中、張力の項目は、軸方向(即ち搬送方向に垂直な方向)の基材幅1mあたりに付与した張力を示している。また、表1及び表2中、「(処理時張力)/(搬送時張力)」は、処理時張力を搬送時張力で除して得られた値である。
Figure 2014116224
また、PETフィルムの厚さを150μmとし、搬送時張力を150N/基材幅とし、処理時張力を搬送時張力に対応させて変更したこと以外は、前記の場合と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。その結果を、処理時張力とともに表2に示す。
Figure 2014116224
表1及び表2に示すように、処理時張力を搬送時張力で除して得られる値が1.5以上2.5以下であるときに、非発光部面積及び輝度分布が良好であった。即ち、このような条件を満たしたときに、発光していない部分の面積が小さく、かつ、発光ムラの少ない有機EL素子が得られた。特に、(処理時張力)/(搬送時張力)の値が2以上2.5以下程度の時に、より良好な結果が得られた。従って、処理時張力は、搬送時張力の2倍から2.5倍程度にすることが好ましいことがわかった。
また、張力の大きさの関係((処理時張力)/(搬送時張力))は、基材の厚さが120μmであっても150μmであっても同様の傾向を示し、基材の厚さによらず良好な結果が得られることがわかった。
発光していない部分の面積が小さく、かつ、発光ムラの少ない有機EL素子が得られたのは、例えば発光層等の機能層が、精度よく、均一な膜厚で基材上に形成されたためであると考えられる。即ち、精度よく機能層が形成されたため発光していない部分の面積が小さくなったと考えられる。また、均一な膜厚で機能層が形成されたため、発光ムラが少なくなったと考えられる。
これらは、機能層形成等の処理時の張力(処理時張力)を所定範囲内まで上昇させたために得られた結果であると考えられる。即ち、処理時張力を所定範囲内まで上昇させることで、基材50のたるみや撓みが解消され、これにより、基材50が平面に近い状態になる。そして、このような平面性の高い基材50上に機能層を形成することで、機能層が精度よく均一に形成されたものと考えられる。即ち、機能層が、所望の形態で精度よく形成されたものと考えられる。これにより、良好な性能の有機EL素子が得られる。
20 段付ロール(搬送ロール)
30 平ロール(搬送ロール)
50 基材
51 保護フィルム
52 有機ELシート

Claims (3)

  1. 回転方向に凸部が形成され、前記凸部に可撓性の帯状基材が接触した状態で前記帯状基材を搬送可能な段付ロールを含む複数の搬送ロールを備える製造装置において行われる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    真空下、前記帯状基材に対して前記帯状基材の搬送方向に第1張力を付与し、少なくとも前記段付ロールに前記帯状基材を接触させながら搬送させ、前記第1張力が付与された状態で、所定位置まで前記帯状基材の搬送を行う基材搬送工程と、
    前記所定位置まで前記帯状基材の搬送が行われ、前記帯状基材の搬送が停止された後、前記帯状基材に対して付与する張力を、前記第1張力の1.5倍以上2.5倍以下の大きさの第2張力に変化させる張力上昇工程と、
    前記第2張力が前記帯状基材に付与された状態で、前記帯状基材に対して処理を行う基材処理工程と、を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 前記張力上昇工程及び前記基材処理工程のうちの少なくとも一方は真空条件下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  3. 前記基材処理工程は真空中で行われ、
    前記基材処理工程における処理は、前記帯状基材の表面改質及び機能層の形成の少なくとも一方であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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