JP2014113599A - 精密機器用部品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鍛造品を用いることなく鋳物を用いて得ることができる精密機器用部品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】精密機器である露光装置に用いられる部品、例えば光源装置のミラー部2における架台12は、鋳物素材に熱間静水圧プレス処理が施されて内在欠陥が圧着され、内在欠陥の面積率が0.15%以下とされて、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器である露光装置に悪影響を及ぼさない程度に抑制される。
【選択図】 図1
【解決手段】精密機器である露光装置に用いられる部品、例えば光源装置のミラー部2における架台12は、鋳物素材に熱間静水圧プレス処理が施されて内在欠陥が圧着され、内在欠陥の面積率が0.15%以下とされて、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器である露光装置に悪影響を及ぼさない程度に抑制される。
【選択図】 図1
Description
本発明は、鋳造品(鋳物ともいう)からなる精密機器用部品およびその製造方法に関する。
精密機器としては、例えば、半導体デバイスや液晶表示装置に用いられる露光装置が代表的なものとして挙げることができる。このような露光装置においては、LSIの高集積化や液晶パネルの大画面化を実現するため、高精度化、高スループット化が進んでいる。精度の向上にとって熱変形は大きな障害となるため、特に精度の要求される部品には低膨張合金が採用されている。このような精度の要求される部品としては、鏡筒定盤等の大型のものも存在し、このような大型の部品には、低熱膨張合金の鋳造品が用いられている(例えば特許文献1)。
このような精密機器に用いられる低熱膨張合金としては、インバー合金、スーパーインバー合金や、特許文献2に開示されたものが知られている。
ところで、大気環境下で用いる従来の露光装置であれば、鋳物を問題なく使用することが可能であったが、鋳造品には凝固収縮にともなう「引け巣」が必然的に発生するため、それに起因する欠陥部(空隙)に吸着していた水分や油分等の不純物成分が装置の稼働中にわずかに染み出すことがあり、今後のより高精度の露光装置ではこのようなわずかな成分放出による汚染であっても装置性能に対する影響が懸念される。特に、次世代のEUV露光装置や電子ビーム露光装置のような高真空雰囲気で稼働する装置においては、装置汚染に加えて空隙に入り込んだ不純物成分のアウトガスの発生が真空度を劣化させる等の問題を引き起こす。このため、より高精度や高真空が要求される今後の装置においては、鋳造品の使用は不可能であると考えられている(例えば特許文献3)。
このため、現状、このような用途には低熱膨張材の鍛造品が用いられている。鍛造品は、素材に内在する欠陥を鍛造により圧着することができるので、高精度や高真空が要求される今後の装置にも適用可能である。
しかしながら、鍛造品は鍛造により欠陥を圧着することは可能であるものの、低熱膨張材の鍛造可能温度範囲が狭いため、加熱と鍛造を何回も繰り返す必要があることや、形状自由度に制限があるため、鍛造素材の相当量を除去加工しなければならず、材料歩留まりが低い。このため部品コストが高くなり、環境負荷も大きくなるといった問題がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、鍛造品を用いることなく鋳造品を用いて得ることができる精密機器用部品およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねた。その結果、より高精度や高真空が要求される精密機器に用いられる部品には対応不可能とされた鋳造品であっても、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理を施して空隙等の内在欠陥の面積率を0.15%以下とすることにより、欠陥から当該精密機器に悪影響を及ぼす成分の放出を排除できることを見出した。
鋳物素材に熱間静水圧プレスを施すこと自体は、特開平7−11482号公報、特開2007−162041号公報に開示されているが、これらの技術は機械的性質の改善やめっき品質の改善を目的としており、欠陥に吸着した物質が放出されることにより生ずる精密機器への悪影響を回避することを目的としたものは未だ存在しない。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、以下の(1)〜(11)を提供する。
(1)精密機器に用いられる精密機器用部品であって、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理が施されて内在欠陥が圧着され、内在欠陥の面積率が0.15%以下とされて、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制されることを特徴とする精密機器用部品。
(2)前記熱間静水圧プレス処理は、前記鋳造品素材の最大肉厚に基づく下記の関係式の範囲の加熱温度で施されて、成分偏析が緩和されることを特徴とする(1)に記載の精密機器用部品。
6×√t+1080≦加熱温度(℃)≦6×√t+1180
ただし、t:鋳造品素材の最大肉厚mm
(3)前記鋳造品素材の水素、酸素、Alの含有率が以下に記載する範囲であることを特徴とする(1)または(2)に記載の精密機器用部品。
水素≦4ppm、全酸素≦40ppm、Al≦100ppm
(4)室温付近の熱膨張係数が6×10−6/℃以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の精密機器用部品。
(5)前記精密機器は露光装置であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の精密機器用部品。
(6)精密機器に用いられる精密機器用部品の製造方法であって、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理を施して内在欠陥を圧着し、内在欠陥の面積率を0.15%以下として、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制することを特徴とする精密機器用部品の製造方法。
(7)前記熱間静水圧プレス処理を、前記鋳造品素材の最大肉厚に基づく下記の関係式の範囲の加熱温度で施して、成分偏析を緩和することを特徴とする(6)に記載の精密機器用部品の製造方法。
6×√t+1080≦加熱温度(℃)≦6×√t+1180
ただし、t:鋳造品素材の最大肉厚mm
(8)前記鋳造品素材は、真空脱ガス処理および介在物浮上分離の精錬を行った溶湯で鋳造されることを特徴とする(6)または(7)に記載の精密機器用部品の製造方法。
(9)前記精錬を行って、水素、酸素、Alの含有率が以下に記載する範囲の溶湯で鋳造されることを特徴とする(8)に記載の精密機器用部品の製造方法。
水素≦4ppm、全酸素≦40ppm、Al≦100ppm
(10)前記精密機器用部品の室温付近の熱膨張係数が6×10−6/℃以下であることを特徴とする(6)から(9)のいずれかに記載の精密機器用部品の製造方法。
(11)前記精密機器は露光装置であることを特徴とする(6)から(10)のいずれかに記載の精密機器用部品の製造方法。
(1)精密機器に用いられる精密機器用部品であって、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理が施されて内在欠陥が圧着され、内在欠陥の面積率が0.15%以下とされて、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制されることを特徴とする精密機器用部品。
(2)前記熱間静水圧プレス処理は、前記鋳造品素材の最大肉厚に基づく下記の関係式の範囲の加熱温度で施されて、成分偏析が緩和されることを特徴とする(1)に記載の精密機器用部品。
6×√t+1080≦加熱温度(℃)≦6×√t+1180
ただし、t:鋳造品素材の最大肉厚mm
(3)前記鋳造品素材の水素、酸素、Alの含有率が以下に記載する範囲であることを特徴とする(1)または(2)に記載の精密機器用部品。
水素≦4ppm、全酸素≦40ppm、Al≦100ppm
(4)室温付近の熱膨張係数が6×10−6/℃以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の精密機器用部品。
(5)前記精密機器は露光装置であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の精密機器用部品。
(6)精密機器に用いられる精密機器用部品の製造方法であって、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理を施して内在欠陥を圧着し、内在欠陥の面積率を0.15%以下として、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制することを特徴とする精密機器用部品の製造方法。
(7)前記熱間静水圧プレス処理を、前記鋳造品素材の最大肉厚に基づく下記の関係式の範囲の加熱温度で施して、成分偏析を緩和することを特徴とする(6)に記載の精密機器用部品の製造方法。
6×√t+1080≦加熱温度(℃)≦6×√t+1180
ただし、t:鋳造品素材の最大肉厚mm
(8)前記鋳造品素材は、真空脱ガス処理および介在物浮上分離の精錬を行った溶湯で鋳造されることを特徴とする(6)または(7)に記載の精密機器用部品の製造方法。
(9)前記精錬を行って、水素、酸素、Alの含有率が以下に記載する範囲の溶湯で鋳造されることを特徴とする(8)に記載の精密機器用部品の製造方法。
水素≦4ppm、全酸素≦40ppm、Al≦100ppm
(10)前記精密機器用部品の室温付近の熱膨張係数が6×10−6/℃以下であることを特徴とする(6)から(9)のいずれかに記載の精密機器用部品の製造方法。
(11)前記精密機器は露光装置であることを特徴とする(6)から(10)のいずれかに記載の精密機器用部品の製造方法。
本発明によれば、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理を施して内在欠陥が圧着され、内在欠陥の面積率が0.15%以下とされて、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制されるので、鋳物素材を用いても、より高精度や高真空が要求される精密機器に十分対応することが可能となる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の精密機器用部品は、精密機器一般に適用されるものであるが、本実施形態では精密機器として露光装置を例にとって説明する。露光装置としては、液晶用露光装置および半導体用露光装置を挙げることができる。
本発明の精密機器用部品は、精密機器一般に適用されるものであるが、本実施形態では精密機器として露光装置を例にとって説明する。露光装置としては、液晶用露光装置および半導体用露光装置を挙げることができる。
図1は、このような本発明の精密機器用部品が適用される精密機器の一例である半導体用極紫外線(EUV)露光装置の一部を構成する光源装置を示す概略構成図である。光源装置は、光源部1とミラー部2を主要部として構成されている。
光源部1には励起用レーザ3が設けられており、励起用レーザ3からのレーザ光がターゲット4に照射されることによりEUV光が発生する。ターゲット4の後方には、球面ミラー5が設けられている。
ミラー部2の底面にはアクティブ防振マウント9が設けられており、その上にステージベース10が搭載されている。ステージベース10の上には円弧ガイド11を介して架台12が搭載されている。楕円ミラー6は、取付部材14を介して架台12に固定されている。一方、平面鏡7は1軸ピエゾ駆動系駆動装置15と取付部材16を介して架台12に固定されている。ステージベース10と架台12の間には架台12を回動させる円弧モータ13が設けられている。
光源部1のターゲット4から放出された光と球面ミラー5で反射された光はミラー部2中に入り、楕円ミラー6で反射され、さらに平面鏡7で反射されて、EUV露光装置のレチクルが置かれる面であるレチクル面8に集光される。
EUV光を使用する場合、楕円ミラー6や平面鏡7に多くのEUV光が吸収されて熱が発生する。よって、これらに液体を循環させることにより冷却して熱を拡散させることが望ましい。また、ステージベース10、円弧ガイド11、架台12、取付部材14、取付部材16を構成する部材として、低熱膨張材料を使用し、これら部材の熱変形により光学的な関係が狂わないようにすることが好ましい。
このように構成される露光装置光源装置のうち、例えば、架台12が本発明の精密機器用部品として構成される。架台12は大型部品であり、鍛造品を用いる場合には、部品コストが高くなり、環境負荷も大きくなるため、鋳造品部品が用いられる。しかし、本例の次世代のEUV露光装置は高真空雰囲気で稼働するため、従来の鋳造品のように引け巣(最終凝固部に発生したミクロポロシティー)等の欠陥部が内在すると、その欠陥部に存在する不純物により露光装置自体が汚染されたりアウトガスの発生が真空度を劣化させたりする等の問題を引き起こす。高精度の液晶用露光装置や、次世代の電子ビーム露光装置も同様である。このため、鋳造素材に熱間静水圧プレス処理を施して内在欠陥を圧着させ、内在欠陥の面積率を0.15%以下として、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器(本例ではEUV露光装置)に悪影響を及ぼさない程度に抑制されるようにする。
また、架台12のような露光装置用の部品は、高精度が要求されるため低熱膨張合金が用いられる。低熱膨張合金とは室温付近の熱膨張係数が通常鉄鋼材料の1/2の6×10−6/℃以下の材料をいう。好ましくは、その熱膨張係数が1×10−6/℃以下、より好ましくは、その熱膨張係数が5×10−7/℃以下である。
また、架台12には剛性も要求されるため、室温付近の熱膨張係数が6×10−6/℃以下、好ましくは、1×10−6/℃以下、より好ましくは、5×10−7/℃以下という特性を満たしつつ、比較的剛性の高い低熱膨張合金であるインバー合金、スーパーインバー合金のような鉄基低熱膨張合金を好適に用いることができる。また、これらインバー合金、スーパーインバー合金は被削性が低いため、特開2001−262277号公報に記載された、より被削性を改善した低熱膨張鉄基合金がより好適である。
鋳造品素材への熱間静水圧プレス(HIP)処理は、Ar等の不活性雰囲気中で、温度:1100〜1300℃の範囲、圧力:50〜130MPaの範囲で行うことが好ましい。これにより、鋳造品素材中の引け巣等の内在欠陥を圧着して、その面積率を0.15%以下とすることができ、その部品の内在欠陥からの汚染成分の放出が、それが搭載されている精密機器(本実施形態の場合は露光装置)に悪影響を及ぼさない程度に抑制することができる。具体的には、HIP処理して内在欠陥が圧着されて面積率を0.15%以下となった部品から放出されるガス量(ガスリーク量)は、真空引きを行った際に、真空度を悪化させることがない1×10−7Pa・m3/s以下とすることができる。鋳造品素材の組成やHIP処理の条件によっては、内在欠陥面積率を0.1%以下、さらには0.05%以下に小さくすることも可能で、ガスリーク量を5×10−8Pa・m3/s以下にすることができる。
本発明においては、HIP処理により内在欠陥を圧着して、内在欠陥の面積率を0.15%以下とすることにより、内在欠陥からの汚染成分の放出を当該精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制するものであるが、その際の温度を適切に規定することにより鋳造品に顕著である成分偏析を緩和することもできる。
HIP処理は、通常、高温高圧処理によって素材の緻密度を向上させるために行われるが、本発明ではHIP処理の際の高温処理を利用して、鋳造品素材の偏析の程度に応じて処理温度を調整することによって、偏析を緩和するという機能をも発揮することができるのである。HIP処理をこのように偏析緩和に利用する点は従来の用い方とは全く異なっている。
本発明に係る精密機器部品は、インバー、スーパーインバー等の低熱膨張合金の鋳造品であり、その熱膨張係数は図2に示すように、最小となるNi量またはNi当量があり、Ni量またはNi当量が最適値より小さくても、大きくても熱膨張係数が急激に増大する。従って成分偏析が存在すると、分析値が最適であっても所望の熱膨張係数が得られないということになる。
本発明が利用される精密機器、特に先端分野の半導体露光装置部品には、好ましくは1×10−6/℃以下、より好ましくは、5×10−7/℃以下の非常に小さな熱膨張係数が要求されるため、偏析を可能な限り緩和して低熱膨張化する必要がある。
本発明では、鋳造品素材の最大肉厚に基づいて下記の関係式でHIP処理温度を規定して、HIP処理を実施することにより、内在欠陥の面積率を0.15%以下とするとともに、素材の成分偏析を緩和して所望の熱膨張係数の鋳造品を得ることができる。偏析は初期凝固部と最終凝固部で合金成分濃度が異なる現象や状態をいい、合金が凝固するとき必然的に起こる。鍛造品では加熱と鍛造を繰り返すことで偏析が緩和するが、鋳造品においては偏析が凝固時の状態のまま存在するために問題となる。典型的な低熱膨張材であるFe−Ni(−Co)系合金において、HIP処理における加熱温度が6×√t+1080未満では顕著な偏析緩和効果が認められず、また、6×√t+1180を超えても偏析緩和効果が飽和するとともに、HIP処理コストの増大を招くため、HIP処理の加熱温度範囲を下記の関係式で規定した。
6×√t+1080≦加熱温度(℃)≦6×√t+1180
ただし、t:鋳造品素材の最大肉厚mm
6×√t+1080≦加熱温度(℃)≦6×√t+1180
ただし、t:鋳造品素材の最大肉厚mm
なお、このようなHIP処理による成分偏析を緩和する手法は、内在欠陥の面積率を0.15%以下として内在欠陥からの汚染成分の放出が精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制する機能と切り離して、そのようなことを目的としない場合でも有効である。
鋳造品素材は、真空脱ガス処理および介在物浮上分離の精錬を行った溶湯で鋳造されることが好ましい。
真空脱ガス処理および介在物浮上分離の精錬は、一次精錬である電気炉精錬を行った後の溶湯を、二次精錬用の容器に移し、溶湯表面にスラグを存在させた状態で容器内を真空引きし、溶湯の真空脱ガスを行うとともに、溶湯中の介在物を浮上させてスラグに吸着させることにより行う。
真空脱ガス処理としては、RH法やタンク式脱ガス法があるが、これらは比較的規模の大きな特殊鋼メーカーに適する方法であり、鋳造品の処理設備としてより好ましいのは、図3に示すよりコンパクトな真空脱ガス精錬設備である。
図3の真空脱ガス精錬設備は、一次精錬後の溶湯を貯留した取鍋21を収容するチャンバー22と、チャンバー22を真空吸引ダクト23および集塵装置24を介して真空排気する真空ポンプ25とを有している。また、真空脱ガス前に電極27が取り付けられた蓋28をチャンバー22に装着し、電極加熱電気室29から電極27に通電することにより溶湯を加熱することができる。実際の真空脱ガスの際には、電極のない蓋をチャンバー22に装着する。チャンバー22に装着される蓋や真空ポンプ25および真空吸引ダクト23には冷却ポンプ30から冷却水配管31を介して冷却水が供給される。
このような真空脱ガス精錬設備では、溶湯を貯留した取鍋21をチャンバー22に挿入し、溶湯を加熱した後、チャンバー22に真空脱ガス用の蓋が装着され、真空ポンプ25によりチャンバー22内を真空引きすることにより、取鍋21内の溶湯が真空脱ガスされる。
図3の真空脱ガス精錬設備の代わりに、取鍋21の上部に真空排気装置を直接取り付け、溶湯上にスラグを浮遊させた状態で真空排気する手法を採用することもできる。
このとき、溶湯中に水素が4ppm超存在すると、前記HIP処理によって内在欠陥を減少させにくくなるため、内在欠陥の面積率を0.15%以下とする観点から真空脱ガス処理によって水素を4ppm以下にすることが好ましい。また、全酸素が40ppm超存在すると、脱酸に必要なAlが増して、アルミナ系介在物の生成量が増加し、介在物は前記HIP処理によっても消失しないため、内在欠陥の面積率を0.15%以下とする観点から全酸素を40ppm以下にすることが好ましい。同様にAlの含有率が100ppmを超えると、全酸素を40ppm以下にしても、鋳造過程で大気中の酸素と結びついてアルミナ系介在物を生成し、介在物は前記HIP処理によっても消失しないため、内在欠陥の面積率を0.15%以下とする観点からAlを100ppm以下にすることが好ましい。
また、前記真空脱ガスの減圧度は50Torr以下であることが好ましい。50Torrを超えると溶湯中の水素を4ppm以下、かつ全酸素を40ppm以下として脱酸に必要なAlを100ppm以下とすることが困難となる。より好ましくは10Torr以下である。
以上のように、本実施形態によれば、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理を施して内在欠陥が圧着され、内在欠陥の面積率が0.15%以下とされ、内在欠陥からの汚染成分の放出が露光装置に悪影響を及ぼさない程度に抑制されるので、部品に鋳物素材を用いても、より高精度の露光装置や、次世代のEUV露光装置や電子ビーム露光装置のような高真空雰囲気で稼働する露光装置に十分対応することが可能となる。特に、半導体用露光装置は、今後EUV露光装置や電子ビーム露光装置のような高真空雰囲気で稼働する装置が主流となると考えられ、本実施形態の部品は極めて適している。
なお、上記露光装置の中で本発明の精密機器用部品として適用されるのは、架台12に限らず、円弧ガイド11、架台12、取付部材14、取付部材16等を本発明の精密機器用部品として適用してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限るものではない。例えば、上記実施形態では精密機器として露光装置を用いた例について示したが、これに限らずエレクトロビーム溶接機や、電子顕微鏡等、他の精密機器であってもよく、これらの部品についても本発明を適用することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
特開2001−262277号公報に記載された、低熱膨張鉄基合金(C=0.023,Si=0.15,Mn=0.47,S=0.017,Ni=33.2,Co=3.75,残部Fe主体合金)を、高周波誘導炉を用いて大気溶解し、アルカリフェノール系樹脂をバインダーとするムライト系砂の鋳型に鋳造し、サイズがφ200mm×600mmの鋳造品素材を2個製作した。1個は1200℃×120MPa×2時間の条件でHIP処理を施し、1個はHIP処理を施さず鋳造ままとした。各素材の端面から300mm、表面から50mmの位置より、50mm×50mm×10mmのサンプルを作成した。
特開2001−262277号公報に記載された、低熱膨張鉄基合金(C=0.023,Si=0.15,Mn=0.47,S=0.017,Ni=33.2,Co=3.75,残部Fe主体合金)を、高周波誘導炉を用いて大気溶解し、アルカリフェノール系樹脂をバインダーとするムライト系砂の鋳型に鋳造し、サイズがφ200mm×600mmの鋳造品素材を2個製作した。1個は1200℃×120MPa×2時間の条件でHIP処理を施し、1個はHIP処理を施さず鋳造ままとした。各素材の端面から300mm、表面から50mmの位置より、50mm×50mm×10mmのサンプルを作成した。
図4に示す装置を用いて、HIP処理を施したサンプルと、HIP処理を施さないサンプルについて脱ガス性を評価した。図4に示す装置の真空チャンバー41の内部に設けられたヒーター43の上にサンプル42をセットし、ロータリーポンプ49を用いて24h排気後に200℃×12hのベーキング処理を行い、さらに室温で12h排気後にターボ分子ポンプ47を用いて1×10-3Paまで真空引きを行った後、サンプル42から放出するガスを測定系入口ポート44から測定系48に導いて、質量分析計46で定性および定量分析してサンプルのガス放出性を測定した。なお、図4中、45はピラニ真空計である。その結果、HIP処理を行ったサンプル(内在欠陥の面積率が0.1%)のガス放出量は3×10−8Pa・m3/sで、サンプルからのガス放出は非常に少なかったが、HIP処理を行わなかったサンプル(内在欠陥の面積率が0.5%)では、ガス放出量が5×10−4Pa・m3/sと多く、内在欠陥に付着した物質の影響が大きいことが確認された。
1;光源部、2;ミラー部、6;楕円ミラー、7;平面鏡、9;アクティブ防振マウント、10;ステージベース、11;円弧ガイド、12;架台、14;取付部材、15;一軸ピエゾ駆動系駆動装置、16;取付部材
Claims (11)
- 精密機器に用いられる精密機器用部品であって、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理が施されて内在欠陥が圧着され、内在欠陥の面積率が0.15%以下とされて、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制されることを特徴とする精密機器用部品。
- 前記熱間静水圧プレス処理は、前記鋳造品素材の最大肉厚に基づく下記の関係式の範囲の加熱温度で施されて、成分偏析が緩和されることを特徴とする請求項1に記載の精密機器用部品。
6×√t+1080≦加熱温度(℃)≦6×√t+1180
ただし、t:鋳造品素材の最大肉厚mm - 前記鋳造品素材の水素、酸素、Alの含有率が以下に記載する範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の精密機器用部品。
水素≦4ppm、全酸素≦40ppm、Al≦100ppm - 室温付近の熱膨張係数が6×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の精密機器用部品。
- 前記精密機器は露光装置であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の精密機器用部品。
- 精密機器に用いられる精密機器用部品の製造方法であって、鋳造品素材に熱間静水圧プレス処理を施して内在欠陥を圧着し、内在欠陥の面積率を0.15%以下として、内在欠陥からの汚染成分の放出が当該精密機器に悪影響を及ぼさない程度に抑制することを特徴とする精密機器用部品の製造方法。
- 前記熱間静水圧プレス処理を、前記鋳造品素材の最大肉厚に基づく下記の関係式の範囲の加熱温度で施して、成分偏析を緩和することを特徴とする請求項6に記載の精密機器用部品の製造方法。
6×√t+1080≦加熱温度(℃)≦6×√t+1180
ただし、t:鋳造品素材の最大肉厚mm - 前記鋳造品素材は、真空脱ガス処理および介在物浮上分離の精錬を行った溶湯で鋳造されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の精密機器用部品の製造方法。
- 前記精錬を行って、水素、酸素、Alの含有率が以下に記載する範囲の溶湯で鋳造されることを特徴とする請求項8に記載の精密機器用部品の製造方法。
水素≦4ppm、全酸素≦40ppm、Al≦100ppm - 前記精密機器用部品の室温付近の熱膨張係数が6×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の精密機器用部品の製造方法。
- 前記精密機器は露光装置であることを特徴とする請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の精密機器用部品の製造方法。
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JP2022066486A (ja) * | 2018-12-03 | 2022-04-28 | 信越化学工業株式会社 | ペリクル、ペリクル付露光原版、露光方法及び半導体の製造方法 |
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2012
- 2012-12-06 JP JP2012267280A patent/JP2014113599A/ja active Pending
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