上記特許文献1に開示のブレーキ制御装置では、マスタシリンダから出力される1系統のみの液圧をメカニカル弁に導入するため、ブレーキ制御装置のシステム異常時に当該系統の液圧が低下した場合にはメカニカル弁を作動させることができず、その結果、マスタシリンダから車輪のホイルシリンダに適正な液圧を供給することができない。従って、この種のブレーキ制御装置では、システム異常時においてもマスタシリンダの液圧を車輪のホイルシリンダに確実に供給したいという要請がある。
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、車輪に制動力を付与するためのブレーキ制御装置において、マスタシリンダから出力される液圧をシステム異常時に車輪のホイルシリンダに確実に供給するのに有効な技術を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係るブレーキ制御装置は、車両に搭載されるものであり、マスタシリンダ、液圧発生源、第1接続経路、第2接続経路、第3接続経路及びメカニカル弁を含む。
マスタシリンダは、第1マスタシリンダピストン、第2マスタシリンダピストン、第1マスタシリンダ室、第2マスタシリンダ室及び背面室を含む。第1マスタシリンダピストン及び第2マスタシリンダピストンはいずれも、ブレーキペダルのブレーキ操作に応じてそれぞれ加圧方向に移動することができる。このとき、第1マスタシリンダピストンの加圧方向の移動によって第1マスタシリンダ室に液圧が発生し、また第2マスタシリンダピストンの加圧方向の移動によって第2マスタシリンダ室に液圧が発生する。背面室は、第1マスタシリンダピストン及び第2マスタシリンダピストンの双方を当該マスタシリンダピストンの加圧方向に付勢するために用いられる。この場合、背面室は、第1マスタシリンダピストン及び第2マスタシリンダピストンのいずれか一方に割り当てられてもよいし、或いは第1マスタシリンダピストン及び第2マスタシリンダピストンの双方にそれぞれ割り当てられてもよい。液圧発生源は、マスタシリンダの外部に設けられ、ブレーキペダルのブレーキ操作とは独立して液圧を発生させる機能を果たす。
第1接続経路は、マスタシリンダの第1マスタシリンダ室で発生した液圧を車輪に制動力を付与するためのホイルシリンダに供給するために、第1マスタシリンダ室及びホイルシリンダを接続する。第2接続経路は、マスタシリンダの第2マスタシリンダ室で発生した液圧をホイルシリンダに供給するために、第2マスタシリンダ室及びホイルシリンダを接続する。第3接続経路は、液圧発生源によって発生した液圧をホイルシリンダに供給するために、液圧発生源及びホイルシリンダを接続する。
メカニカル弁は、第1接続経路、第2接続経路及び第3接続経路のそれぞれに当該接続経路に作用する液圧を導入可能に接続されている。このメカニカル弁は、ブレーキ制御装置のシステム異常時に第1接続経路及び第2接続経路の少なくとも一方の接続経路から導入した液圧によって作動する。この場合、第1接続経路及び第2接続経路のいずれか一方から、或いは第1接続経路及び第2接続経路の双方から液圧が導入されることによって、メカニカル弁が作動する。このメカニカル弁は、その作動状態では液圧発生源によって発生した液圧を第3接続経路から導入してマスタシリンダの背面室に出力する。このとき、第1マスタシリンダピストン及び第2マスタシリンダピストンの双方は、メカニカル弁から背面室に出力された液圧(液圧発生源の液圧)によって加圧方向に付勢され、マスタシリンダから第1接続経路及び第2接続経路のそれぞれに液圧が出力される。この場合、第1接続経路及び第2接続経路の二系統のいずれか一方の系統で作動液の液漏れが発生した場合であっても、他方の系統に作用する液圧を利用してメカニカル弁を作動させることができる。その結果、ブレーキ制御装置のシステム異常時においてもマスタシリンダから出力される液圧をメカニカル弁を利用して車輪のホイルシリンダに確実に供給することができる。また、第1接続経路や第2接続経路に作用する液圧によって作動する簡単な構造のメカニカル弁を用いることによって、コスト低減効果の高いブレーキ制御装置を実現することができる。
本発明に係る上記のブレーキ制御装置は、ブレーキペダルのブレーキ操作に応じた反力を生成するためのストロークシミュレータを備え、このストロークシミュレータは当該ブレーキ制御装置のシステム異常時にマスタシリンダのうち背面室に連通しない領域(非連通領域)のみに接続されているのが好ましい。この場合、ストロークシミュレータは、メカニカル弁から背面室に出力される液圧に影響を受け難いため、この液圧の導入のためにストロークシミュレータを大型化する必要がなく、ブレーキ制御装置の更なるコスト低減を図ることができる。
本発明に係る上記のブレーキ制御装置では、マスタシリンダの第1マスタシリンダ室が第1接続経路を通じて接続されるホイルシリンダの数と、マスタシリンダの第2マスタシリンダ室が第2接続経路を通じて接続されるホイルシリンダの数とが同一であるのが好ましい。第1接続経路及び第2接続経路のそれぞれに係る液圧負荷を同レベルにすることができる。
本発明に係る上記のブレーキ制御装置では、マスタシリンダの第1マスタシリンダ室は、第1接続経路を通じて4つの左右前後車輪のうち右前輪に対応する第1ホイルシリンダに接続され、マスタシリンダの第2マスタシリンダ室は、第2接続経路を通じて4つの左右前後車輪のうち左前輪に対応する第2ホイルシリンダに接続されているのが好ましい。これにより、ブレーキ制御装置のシステム異常時に、4つの左右前後車輪のうち特にブレーキ寄与度の高い2つの前輪のみに制動力を付与することができる。
本発明に係る上記のブレーキ制御装置では、メカニカル弁は、第1パイロット圧室、第1パイロットピストン、第2パイロット圧室、第2パイロットピストン及び出力弁を含むのが好ましい。第1パイロット圧室には、第1接続経路に作用する液圧が導入され、この第1パイロット圧室の液圧に応じて第1パイロットピストンが移動することができる。同様に、第2パイロット圧室には、第2接続経路に作用する液圧が導入され、この第2パイロット圧室の液圧に応じて第2パイロットピストンが移動することができる。そして、出力弁は、第3接続経路から導入した液圧を第1パイロットピストン及び第2パイロットピストンの少なくとも一方の移動に応じてマスタシリンダの背面室に出力するように作動する。この場合、マスタシリンダの第1マスタシリンダピストン及び第2マスタシリンダピストンのうち移動抵抗が相対的に小さいマスタシリンダピストンの移動に係るマスタシリンダ室と、メカニカル弁の第1パイロットピストン及び第2パイロットピストンのうち移動抵抗が相対的に小さいパイロットピストンの移動に係るパイロット圧室とが接続されるのが好ましい。これにより、メカニカル弁の動作をより少ない負荷でレスポンス良く行うことが可能になる。
本発明に係る上記のブレーキ制御装置は、更に導入経路及び開閉弁を含むのが好ましい。導入経路は第3接続経路に作用する液圧をメカニカル弁に導入する機能を果たす。開閉弁はこの導入経路に開閉可能に設けられ、当該ブレーキ制御装置のシステム正常時に閉止状態になり、当該ブレーキ制御装置のシステム異常時に開放状態になる。これにより、ブレーキ制御装置のシステム異常時に開閉弁が開放され、第3接続経路に作用する液圧をこの第3接続経路から導入経路を通じてメカニカル弁に容易に導入することができる。
本発明に係る上記のブレーキ制御装置では、開閉弁は、当該ブレーキ制御装置のシステム異常時に更に前記液圧発生源又は前記第3接続経路において液漏れの可能性がある場合には、開放状態から閉止状態に切り換わるのが好ましい。これにより、メカニカル弁を作動液の液漏れに係る接続経路から容易に遮断することができる。
本発明に係る上記のブレーキ制御装置は、更に第1マスタカット弁、第2マスタカット弁、第1増圧弁及び第2増圧弁を含むのが好ましい。第1マスタカット弁は第1接続経路に開閉可能に設けられ、第2マスタカット弁は第2接続経路に開閉可能に設けられている。第1増圧弁は第1接続経路のうち第1マスタカット弁とホイルシリンダとの間に開閉可能に設けられている。この場合、制御部は、第1マスタカット弁及び第2マスタカット弁の少なくとも一方が開放状態の場合、第1増圧弁及び第2増圧弁のうち開放状態のマスタカット弁に対応する接続経路に設けられている増圧弁を開放制御するのが好ましい。これにより、開放状態のマスタカット弁に対応する接続経路の液圧が第3接続経路を逆向きに伝達してメカニカル弁に導入される。これにより、液圧発生源において作動液の液漏れの可能性がある場合には、開放状態のマスタカット弁に対応する接続経路に作用する液圧を第3接続経路及び導入経路を通じてメカニカル弁に導入してメカニカル弁を作動させることができる。その結果、信頼性の高いブレーキ制御装置を低コストで実現することができる。
以上のように、本発明によれば、車輪に制動力を付与するためのブレーキ制御装置において、マスタシリンダから出力される液圧をシステム異常時に車輪のホイルシリンダに確実に供給することが可能になった。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の「ブレーキ制御装置」の一実施形態であるブレーキ制御装置10が示されている。このブレーキ制御装置10は、車輪に付与される制動力を制御するべく車両に搭載されるものであり、所謂「ブレーキ・バイ・ワイヤ」によるシステムに適用される装置である。このブレーキ制御装置10は、その構成要素がマスタシリンダ100、液圧アクチュエータ200、及び制御部300に大別される。なお、以下の説明では、ブレーキ制御装置10を作動させるための媒体の一例として作動液(典型的には、作動油)を用いる場合について記載している。また、図1及びその他の図面では、図中の左方向を第1方向D1とし、図中の右方向を第1方向D1と反対方向の第2方向D2として定義している。
マスタシリンダ100は、長筒状の筐体を構成するハウジング101,102を備えており、これらハウジング101,102内の空間部に複数の構成要素を収容している。この複数の構成要素には、入力ピストン104、第1マスタシリンダピストン106、第2マスタシリンダピストン108、スプリング105,107,109、及びストロークシミュレータ120が含まれる。特に、ハウジング101,102の長手方向である第1方向D1に関し、図1中の右側から入力ピストン104、第1マスタシリンダピストン106及び第2マスタシリンダピストン108の順に配置されている。これら入力ピストン104、第1マスタシリンダピストン106及び第2マスタシリンダピストン108はいずれも円柱状に構成されている。このマスタシリンダ100が本発明の「マスタシリンダ」に相当する。
入力ピストン104は、入力ロッド103を介してブレーキペダル11に連結され、後述する反力室110を挟んで第1マスタシリンダピストン106に対向配置されている。また、この入力ピストン104とハウジング102との間にスプリング105が介装されている。このため、車両乗員によってブレーキペダル11のブレーキ操作(踏み込み操作)が行われた作動状態では、ブレーキペダル11に作用した踏力によって入力ロッド103が第1方向D1の荷重を受ける。このとき入力ピストン104は、スプリング105の弾性付勢力に抗して入力ロッド103によって第1方向D1に押圧され、入力ロッド103及び入力ピストン104がそれぞれの作動位置に移動する。一方で、ブレーキペダル11のブレーキ操作が解除された初期状態では、入力ロッド103及び入力ピストン104はいずれもスプリング105の弾性付勢力にしたがって前記の作動位置から第2方向D2に移動した初期位置に復帰する。
入力ピストン104、第1マスタシリンダピストン106及びハウジング102によって反力室110が区画形成される。この反力室110は、ストロークシミュレータ120に供給される作動液を貯留する空間として構成される。即ちこの反力室110は、接続経路230を通じてストロークシミュレータ120の導入口121に接続されている。このため、ブレーキペダル11のブレーキ操作時に入力ピストン104がスプリング105の弾性付勢力に抗して第1方向D1に移動して第1マスタシリンダピストン106との間の距離が相対的に小さくなるように近接動作すると、反力室110の作動液が加圧される。反力室110で加圧された作動液は接続経路230を通ってストロークシミュレータ120の導入口121に導入される。
第1マスタシリンダピストン106及び第2マスタシリンダピストン108は、ブレーキペダル11のブレーキ操作に応じてそれぞれ加圧方向(第1方向D1)に移動可能である。この場合、第1マスタシリンダピストン106の加圧方向の移動によって第1マスタシリンダ室111に液圧が発生し、第2マスタシリンダピストン108の加圧方向の移動によって第2マスタシリンダ室112に液圧が発生する。これら2つのマスタシリンダ室111,112がそれぞれ本発明の「第1マスタシリンダ室」及び「第2マスタシリンダ室」に相当し、当該マスタシリンダ室に設けられたマスタシリンダピストン106,108がそれぞれ本発明の「第1マスタシリンダピストン」及び「第2マスタシリンダピストン」に相当する。
第1マスタシリンダピストン106、第2マスタシリンダピストン108及びハウジング101によって第1マスタシリンダ室111が区画形成される。また、第1マスタシリンダピストン106と第2マスタシリンダピストン108との間にスプリング107が介装されている。このため、第1マスタシリンダピストン106及び第2マスタシリンダピストン108が、スプリング107の弾性付勢力に抗して互いに近接する方向に移動すると第1マスタシリンダ室111の容積が相対的に減少する。その結果、第1マスタシリンダ室111に貯留されている作動液が加圧される。
同様に、第2マスタシリンダピストン108、閉鎖部材101a及びハウジング101の対向空間によって第2マスタシリンダ室112が区画形成される。また、第2マスタシリンダピストン108と閉鎖部材101aとの間にスプリング109が介装されている。このため、第2マスタシリンダピストン108がスプリング109の弾性付勢力に抗して第1方向D1(第1マスタシリンダピストン106とは反対方向)に移動すると第2マスタシリンダ室112の容積が相対的に減少する。その結果、第2マスタシリンダ室112に貯留されている作動液が加圧される。
これら2つのマスタシリンダ室111,112は、4つの車輪のそれぞれに制動力を付与するためのホイルシリンダ12,13,14,15に供給される作動液を貯留する空間として構成される。この場合、ホイルシリンダ12は左前輪用のホイルシリンダであり、ホイルシリンダ13は右前輪用のホイルシリンダであり、ホイルシリンダ14は左後輪用のホイルシリンダであり、ホイルシリンダ15は右後輪用のホイルシリンダである。これらホイルシリンダ12,13,14,15が本発明の「ホイルシリンダ」に相当する。
なお、上記構成のマスタシリンダ100では、第2マスタシリンダピストン108のピストン径が第1マスタシリンダピストン106のピストン径に比べて大きくなるように構成されている。このため、同一の液圧が作用した場合には、第2マスタシリンダピストン108は第1マスタシリンダピストン106に比べて加圧方向に容易に移動することができる。換言すれば、第2マスタシリンダピストン108は第1マスタシリンダピストン106に比べて移動抵抗が小さい。
液圧アクチュエータ200には、それぞれ作動液が流通する接続経路210,230,240,250,260が含まれる。
接続経路210は、マスタシリンダ100の第1マスタシリンダ室111で発生した液圧をホイルシリンダ12,13,14,15に供給するために、第1マスタシリンダ室111及びホイルシリンダ12,13,14,15を接続する。このため、第1マスタシリンダ室111で加圧された作動液は接続経路210を通ってホイルシリンダ12,13,14,15に導入され得る。一方で、この接続経路210には制御部300によって制御される第1マスタカット弁211が開閉可能に設けられている。この第1マスタカット弁211は、第1マスタシリンダ室111に貯留された作動液が接続経路210を通ってホイルシリンダ12,13,14,15に供給される供給状態と当該供給が遮断された遮断状態とを切り換える切り換え弁としての機能を果たす。接続経路210は本発明の「第1接続経路」に相当し、またこの接続経路210に設けられた第1マスタカット弁211が本発明の「第1マスタカット弁」に相当する。
なお制御部300は、CPU、ROM、RAMなどを主要構成要素とするマイクロコンピュータによって構成されており、この制御部300が少なくとも液圧アクチュエータ200を制御する機能を果たす。即ち、この制御部300は液圧アクチュエータ200に専用の制御手段であってもよいし、或いは車両の他の制御対象の制御手段と兼務してもよい。
接続経路220は、マスタシリンダ100の第2マスタシリンダ室112で発生した液圧をホイルシリンダ12,13,14,15に供給するために、第2マスタシリンダ室112及びホイルシリンダ12,13,14,15を接続する。このため、第2マスタシリンダ室112で加圧された作動液は接続経路220を通ってホイルシリンダ12,13,14,15に導入され得る。一方で、この接続経路220には制御部300によって制御される第2マスタカット弁221が開閉可能に設けられている。この第2マスタカット弁221は、第2マスタシリンダ室112に貯留された作動液が接続経路220を通ってホイルシリンダ12,13,14,15に供給される供給状態と当該供給が遮断された遮断状態とを切り換える切り換え弁としての機能を果たす。接続経路220は本発明の「第2接続経路」に相当し、またこの接続経路220に設けられた第2マスタカット弁211が本発明の「第2マスタカット弁」に相当する。
ストロークシミュレータ120は、ハウジング101によって区画形成された空間部122を有し、この空間部122に第1可動ピストン123、第2可動ピストン124及び閉鎖部材101bを収容している。特に、第1方向D1に関し、図1中の右側から第1可動ピストン123、第2可動ピストン124及び閉鎖部材101bの順に配置されている。第1可動ピストン123と第2可動ピストン124との間にスプリング125が介装されており、また第2可動ピストン124と閉鎖部材101bとの間にスプリング126が介装されている。これにより、運転者によるブレーキペダル11のブレーキ操作時には、第1可動ピストン123は、ストロークシミュレータ120の導入口121から空間部122に導入された作動液の液圧、即ち反力室110の液圧によってスプリング125の弾性付勢力に抗して第1方向D1に押圧される。その後、運転者によるブレーキペダル11の踏み込み量が増えて反力室110の液圧が更に高まると、空間部122の作動液の液圧上昇にともなって第1可動ピストン123は第2可動ピストン124に当接した後、この第2可動ピストン124をスプリング125の弾性付勢力に抗して第1方向D1に押圧する。このとき、反力室110に生じる液圧は、入力ピストン104、入力ロッド103及びブレーキペダル11を介して、ブレーキ操作時のブレーキ反力として運転者に伝達される。このストロークシミュレータ120が本発明の「ストロークシミュレータ」に相当する。このストロークシミュレータ120は、マスタシリンダ100のハウジング101内に設けられたストロークシミュレータ室として構成されており、ブレーキ制御装置10のコンパクト化が図られるようになっている。
接続経路230は、接続経路210,220に連通することなく反力室110とストロークシミュレータ120の導入口121とを接続している。この接続経路230が本発明の「第2接続経路」に相当する。この接続経路230のうち反力室110と導入口121との間には、反力室110側から順に、制御部300によって開閉制御される開閉弁231、圧力センサ232及び233が設けられている。この接続経路230は更に、ストロークシミュレータ120の導入口121から分岐して加圧室113まで延在している。加圧室113は、第1マスタシリンダピストン106とハウジング101とによって区画された環状空間であり、反力室110から供給された作動液の液圧によって、第1マスタシリンダピストン106に第2方向D2に付勢する機能を果たす。このため、開閉弁231が閉止制御された状態では、反力室110の作動液の液圧、即ち接続経路230のうち開閉弁231の上流領域の液圧はストロークシミュレータ120側に供給されない(伝達されない)。従って、開閉弁231は、ストロークシミュレータ120側への液圧の供給をカットするシミュレータカット弁とも称呼される。一方で、開閉弁231が開放制御された状態では、反力室110の作動液の液圧(接続経路230のうち開閉弁231の上流領域の液圧)は、接続経路230のうち開閉弁231の下流領域のストロークシミュレータ120及び加圧室113の双方に供給される(伝達される)。この場合、この下流領域の液圧が2つの圧力センサ232,233によってそれぞれ検出され、その圧力検出情報が制御部300に伝送される。少なくともこれら2つの圧力センサを用いることによって、一方の圧力センサの不具合に対処することができ、車輪に制動力を付与するための制御に用いる圧力検出情報に関する一定の信頼性が確保される。
接続経路240は、接続経路230のうち開閉弁231の下流から分岐して、ハウジング101と入力ピストン104とによって区画形成された区画室114に接続されている。この区画室114は、ハウジング101に設けられた開口115を通じて大気に連通している。また、接続経路240には制御部300によって開閉制御される開閉弁241が設けられている。このため、開閉弁231が閉止制御された状態では、区画室114の作動液の液圧(接続経路240のうち開閉弁241の下流領域の液圧)が大気圧になる。一方で、開閉弁241が開放制御された状態では、接続経路240のうち開閉弁241の上流領域の液圧と、接続経路230のうち少なくとも開閉弁231の下流領域の液圧とが共に大気圧になる。
接続経路250は、ハウジング101,102と第1マスタシリンダピストン106とによって区画形成された背面室116をメカニカル弁280に接続する。この背面室116は、第1マスタシリンダピストン106のうち第1マスタシリンダ室111側を前面としたその反対側を背面とした場合、当該背面によって区画される区画室である。この背面室116は、第1マスタシリンダピストン106をスプリング107の弾性付勢力に抗して加圧方向(第1方向D1)に付勢するのに用いられる。第1マスタシリンダピストン106が加圧方向に付勢されて移動すると、第2マスタシリンダピストン108もスプリング109の弾性付勢力に抗して加圧方向(第1方向D1)に付勢されて移動する。従って、背面室116は、第1マスタシリンダピストン106及び第2マスタシリンダピストン108の双方を当該マスタシリンダピストンの加圧方向(第1方向D1)に付勢するのに用いられる。この背面室116が本発明の「背面室」に相当する。
接続経路260は、作動液が貯留されたリザーバ251とホイルシリンダ12,13,14,15とを接続する経路である。この接続経路260にはポンプ261、アキュムレータ261a及び圧力センサ261bが設けられている。ポンプ261は、制御部300からの制御信号によって制御される電動モータによって駆動され、作動液を圧縮して高圧化する。アキュムレータ261aは、ポンプ261で高圧化された作動液を蓄える。これらポンプ261及びアキュムレータ261aは、マスタシリンダ100の外部に設けられ、ブレーキペダル11のブレーキ操作とは独立して、リザーバ251に貯留されている作動液を加圧して所定の液圧を発生させる機能を果たすものであり、本発明の「液圧発生源」を構成している。この場合、接続経路260は、液圧発生源261,261aによって発生した液圧をホイルシリンダ12,13,14,15に供給するために、液圧発生源261,261a及びホイルシリンダ12,13,14,15を接続する。この接続経路260が本発明の「第3接続経路」に相当する。圧力センサ261bは、ポンプ261及びアキュムレータ261aによって高圧化された作動液の液圧を検出する機能を果たす。制御部300はこの圧力センサ261bによって検出された液圧情報に基づいて、アキュムレータ261aにおける作動液の液漏れ発生の判定を行うことができる。
上述の接続経路210、接続経路220及び接続経路260はいずれも、ホイルシリンダ12,13,14,15との間に、制御部300によって開閉制御される増圧弁262,263,264,265が介在する経路を備えている。これら増圧弁262,263,264,265は、必要に応じてホイルシリンダ12,13,14,15の作動液の増圧に利用される。一方で、ホイルシリンダ12,13,14,15はそれぞれ、制御部300によって開閉制御される減圧弁272,273,274,275を介して減圧経路270に接続されている。これら減圧弁272,273,274,275は、必要に応じてホイルシリンダ12,13,14,15の作動液の減圧に利用される。
メカニカル弁280は、接続経路210、接続経路220及び接続経路260のそれぞれに当該接続経路に作用する液圧を導入可能に接続されている。即ち、このメカニカル弁280では、後述の第1パイロット圧室284が導入経路210aを通じて接続経路210に接続され、後述の第2パイロット圧室285が導入経路220aを通じて接続経路220に接続され、また後述の高圧室287が導入経路260aを通じて接続経路260に接続されている。導入経路260aには、制御部300によって制御される開閉弁252が開閉可能に設けられている。液圧発生源261,261aによって高圧化された作動液の液圧は、開閉弁252の閉止状態でホイルシリンダ12,13,14,15に供給される一方、開閉弁252の開放状態でメカニカル弁280に導入される。また、このメカニカル弁280では、後述の出力室286が接続経路250を通じてマスタシリンダ100の背面室116に接続されており、この出力室286の液圧が接続経路250を通じて背面室116に出力される。即ち、このメカニカル弁280は、接続経路250に出力室286の液圧を出力可能に接続されている。このメカニカル弁280は、接続経路210及び接続経路220のそれぞれに作用する液圧(「パイロット圧」ともいう)を利用して作動する調整弁であり、「レギュレータ」或いは「パイロット弁」とも称呼される。このメカニカル弁280が本発明の「メカニカル弁」に相当する。
このメカニカル弁280の詳細な構成については図2が参照される。
図2に示すように、メカニカル弁280は、1又は複数の構成要素によって構成された長尺筒状のハウジング280a内に、いずれも円柱状の第1パイロットピストン281及び第2パイロットピストン282を直列的に収容している。ハウジング280aには、円筒状のシリンダボアが形成されており、このシリンダボアは筒径が相対的に異なる大径部及び小径部を含む。大径部には第1パイロットピストン281及び第2パイロットピストン282がそれぞれ摺動可能に嵌合し、小径部には高圧室287が形成される。第1パイロットピストン281とハウジング280aとの間に第1パイロット圧室284が形成される。第1パイロットピストン281は、第1パイロット圧室284の液圧に応じて第2方向D2に移動することができる。第1パイロットピストン281と第2パイロットピストン282との間に第2パイロット圧室285が形成される。第2パイロットピストン282は、第2パイロット圧室285の液圧に応じて第2方向D2に移動することができる。これら第1パイロットピストン281及び第2パイロットピストン282がそれぞれ本発明の「第1パイロットピストン」及び「第2パイロットピストン」に相当する。第2パイロットピストン282と、シリンダボアの大径部及び小径部の段差との間に出力室(「サーボ圧室」ともいう)286が形成される。出力室286と高圧室287との間に作動弁283が設けられている。作動弁283は、概して接続経路260から導入した液圧を第1パイロットピストン281及び第2パイロットピストン281の少なくとも一方の第2方向D2の移動に応じてマスタシリンダ100の背面室116に出力するように作動する。この作動弁283は、ハウジング280aの長尺方向である第1方向D1及び第2方向D2の双方に移動可能であり、その弁体283aがスプリング288によって弁座部材289の弁座289aに着座するように弾性付勢されている。この作動弁283が本発明の「作動弁」に相当する。また、ハウジング280aに対する弁座部材289の相対位置を規定するべく、弁座部材289とハウジング280aとの間にスプリング290が設けられている。
第2パイロットピストン282は、開弁部材291が嵌合する嵌合穴282aと、開弁部材291を貫通する貫通穴291aに連通する連通路282bを備えている。開弁部材291の貫通穴291aは、一方の端部が作動弁283の弁体283aに対向して開口し、他方の端部が連通路282bに接続されている。連通路282bは、リザーバに接続されている。弁座部材289と開弁部材291との間には、開弁部材291及び第2パイロットピストン282を第2方向D2へ弾性付勢するスプリング292が設けられている。これにより、第2パイロットピストン282は、第2パイロット圧室285の液圧に対して出力室286の液圧を高くする増圧弁としての機能を果たす。なお、第2パイロットピストン282のピストン径が第1パイロットピストン281のピストン径に比べて大きくなるように構成されている。このため、同一の液圧が作用した場合には、第2パイロットピストン282は第1パイロットピストン281に比べて加圧方向に容易に移動することができる。換言すれば、第2パイロットピストン282は第1パイロットピストン281に比べて移動抵抗が小さい。
第1パイロット圧室284は、ハウジング280aの第1ポート280b及び導入経路210aを通じて接続経路210に接続されている。これにより、接続経路210に作用する液圧は、導入経路210a及び第1ポート280bを通じて第1パイロット圧室284に導入される。また、第2パイロット圧室285は、ハウジング280aの第2ポート280c及び導入経路220aを通じて接続経路220に接続されている。これにより、接続経路220に作用する液圧は、導入経路220a及び第2ポート280cを通じて第2パイロット圧室285に導入される。これら第1パイロット圧室284及び第2パイロット圧室285がそれぞれ本発明の「第1パイロット圧室」及び「第2パイロット圧室」に相当する。更に、高圧室287は、ハウジング280aの第3ポート280d及び導入経路260aを通じて接続経路260に接続されている。これにより、開閉弁252が開放状態である場合には、液圧発生源261,261aによって高圧化された作動液の液圧は、接続経路260、導入経路260a及び第3ポート280dを通じて高圧室287に作用する。この場合、導入経路260aは、接続経路260に作用する液圧をメカニカル弁280に導入するための経路となる。一方で、出力室286は、ハウジング280aの第4ポート280e及び接続経路250を通じてマスタシリンダ100の背面室116に接続されている。これにより、出力室286の液圧は、第4ポート280e及び接続経路250を通じて背面室116に作用し、背面室116の液圧によって第1マスタシリンダピストン106の背面が加圧方向(図1中の第1方向D1)に付勢される。この場合、出力室286の液圧と背面室116の液圧とが概ね同一になる。
次に、ブレーキ制御装置10の動作について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
図1に示すブレーキ制御装置10のシステム正常時には、第1マスタカット弁211及び第2マスタカット弁221はいずれも制御部300によって閉止状態に制御される。また、制御部300によって開閉弁231は開放状態に制御され、且つ開閉弁241は閉止状態に制御される。従って、運転者によるブレーキペダル11のブレーキ操作時において、入力ピストン104によって加圧された作動液が接続経路230を通じてストロークシミュレータ120に供給される。これによりストロークシミュレータ120が作動状態になり、そのときに生じるブレーキ反力が運転者に伝達される。そして、運転者が要求する要求制動力が車輪に付与されるように、このブレーキ反力に応じてポンプ261及びアキュムレータ261aによって高圧化された作動液がホイルシリンダ12,13,14,15にそれぞれ供給される。この場合、運転者が要求する要求制動力が得られている場合には、背面室116に液圧が供給されず、第1マスタシリンダ室111及び第2マスタシリンダ室112ではいずれも作動液が加圧されない。また、開閉弁252は制御部300によって閉止状態に制御される。これにより、接続経路260の液圧が導入経路260aを通じてメカニカル弁280に導入されるのが阻止される。
一方で、運転者が要求する要求制動力が得られない場合、例えばブレーキ制御装置10のシステム異常時には、第1マスタカット弁211及び第2マスタカット弁221はいずれも閉止状態から開放状態なり、且つ開閉弁252は閉止状態から開放状態になる。また、開閉弁231は開放状態から閉止状態になり、且つ開閉弁241は閉止状態から開放状態になる。これにより、運転者によるブレーキペダル11のブレーキ操作時において入力ピストン104がスプリング105の弾性付勢力に抗して第1方向D1に移動した場合、第1マスタシリンダピストン106及び第2マスタシリンダピストン108がそれぞれ第1方向D1に移動する。そして、第1マスタシリンダピストン106によって加圧された第1マスタシリンダ室111の作動液が接続経路210に供給され、また第2マスタシリンダピストン108によって加圧された第2マスタシリンダ室112の作動液が接続経路220に供給される。この場合、接続経路210の作動液は、接続経路210から分岐した導入経路210aを通じてメカニカル弁280に導入され、また接続経路220の作動液は、接続経路210から分岐した導入経路220aを通じてメカニカル弁280に導入される。その結果、メカニカル弁280は、接続経路210及び接続経路220の少なくとも一方の接続経路から導入した液圧によって作動する。一方で、このシステム異常時に開閉弁252が閉止状態から開放状態になるため、液圧発生源261,261aによって発生し接続経路260に作用する液圧をこの接続経路260から導入経路260aを通じてメカニカル弁280に容易に導入することができる。その結果、メカニカル弁280の作動状態では、液圧発生源261,261aによって発生した液圧を接続経路260からメカニカル弁280に導入し、更にこのメカニカル弁280からマスタシリンダ100の背面室116に出力することができる。
具体的には図2が参照されるように、第1ポート280bから第1パイロット圧室284に作動液が導入されると、この作動液によって第1パイロット圧室284の液圧が高まり第1パイロットピストン281を第2方向D2に押圧する第1荷重が生じる。また、第2ポート280cから第2パイロット圧室285に作動液が導入されると、この作動液によって第2パイロット圧室285の液圧が高まり、第2パイロットピストン282を第2方向D2に押圧する第2荷重が生じる。従って、第1パイロット圧室284及び第2パイロット圧室285のうち第1パイロット圧室284のみの液圧が高まった場合には第1荷重によって第2パイロットピストン282が第2方向D2に押圧され、第2パイロット圧室285のみの液圧が高まった場合には第2荷重によって第2パイロットピストン282が第2方向D2に押圧される。また、第1パイロット圧室284及び第2パイロット圧室285の双方の液圧が高まった場合には、第1荷重及び第2荷重が加算された荷重によって第2パイロットピストン282が第2方向D2に押圧される。
このとき、第2パイロットピストン282の押圧荷重がスプリング292の弾性付勢力に打ち勝って当該第2パイロットピストン282が第2方向D2に移動する。そして、開弁部材291が作動弁283の弁体283aに当接して、更にこの弁体283aを弁座部材289の弁座289aから離間するように第2方向D2に押圧することによって、作動弁283が開放状態になる。作動弁283の開放状態では、出力室286と高圧室287が連通するため、出力室286の液圧は高圧室287と概ね同一の液圧まで高まり、この液圧が第4ポート280e及び接続経路250を通じてマスタシリンダ100の背面室116に作用する。この場合、開閉弁252は制御部300によって閉止状態から開放状態に制御されている。従って、高圧室287には接続経路260から分岐した導入経路260a及び第3ポート280dを通じて作動液が導入されており、高圧室287の液圧が高められている。
なお、前述のようにマスタシリンダ100においては、第2マスタシリンダ室112の作動液を加圧するための第2マスタシリンダピストン108は、第1マスタシリンダ室111の作動液を加圧するための第1マスタシリンダピストン106に比べて移動抵抗が小さい。一方で、メカニカル弁280においては、第2パイロット圧室285の作動液を加圧するための第2パイロットピストン282は、第1パイロット圧室284の作動液を加圧するための第1パイロットピストン281に比べて移動抵抗が小さい。そこで、本実施の形態では、マスタシリンダ100の2つのマスタシリンダピストンのうち移動抵抗が相対的に小さい第2マスタシリンダピストン108に係る第2マスタシリンダ室112と、メカニカル弁280の2つのパイロットピストンのうち移動抵抗が相対的に小さい第2パイロットピストン282に係る第2パイロット圧室285とを接続経路220を通じて接続する組み合わせを選択している。これにより、メカニカル弁280の動作をより少ない負荷でレスポンス良く行うことが可能になる。
また、ブレーキ制御装置10のシステム異常時に、4つの左右前後車輪のうち特にブレーキ寄与度の高い2つの前輪のみに制動力が付与されるように、制御部300によって増圧弁262,263,264,265及び減圧弁272,273,274,275のそれぞれが制御されるのが好ましい。典型的には、マスタシリンダ100の第1マスタシリンダ室111が接続経路210を通じて右前輪用のホイルシリンダ13のみに接続され、且つマスタシリンダ100の第2マスタシリンダ室112が接続経路220を通じて左前輪用のホイルシリンダ12のみに接続される。この場合、第1マスタシリンダ室111及び第2マスタシリンダ室112のそれぞれに接続するホイルシリンダの数を同一にする(即ち、各接続経路に接続するホイルシリンダの数を1つ或いは2つにする)のが好ましい。これにより、接続経路210及び接続経路220のそれぞれに係る液圧負荷を同レベルにすることができる。
その結果、図1が参照されるように、マスタシリンダ100においては、第1マスタシリンダピストン106はその背面が加圧方向(図1中の第1方向D1)に付勢されて第1方向D1に移動し、第1マスタシリンダ室111及び第2マスタシリンダ室112のそれぞれが高圧化する。そして、高圧化した第1マスタシリンダ室111の液圧を接続経路210を通じて右前輪用のホイルシリンダ13のみに作用させ、且つ高圧化した第2マスタシリンダ室112の液圧を接続経路220を通じて左前輪用のホイルシリンダ12のみに作用させることができる。
また、ブレーキ制御装置10のシステム異常時に、制御部300によって開閉弁231が閉止状態に制御され、且つ開閉弁241が開放状態に制御されるため、加圧室113は接続経路230及び接続経路240を通じて大気に連通する。従って、メカニカル弁280の作動時に第1マスタシリンダピストン106が第1方向D1に移動しても、加圧室113の液圧、更には接続経路210の液圧及び接続経路220の液圧がストロークシミュレータ120に作用しない。即ち、ストロークシミュレータ120は、ブレーキ制御装置10のシステム異常時に、マスタシリンダ100のうち背面室116に連通しない加圧室113(背面室116に対する非連通領域)のみに接続される。この場合、ストロークシミュレータ120は、メカニカル弁280から背面室116に出力される液圧に影響を受け難いため、この液圧の導入のためにストロークシミュレータ120を大型化する必要がなく、ブレーキ制御装置10のコスト低減を図ることができる。なお、加圧室113以外の領域であって、背面室116に対する非連通領域にストロークシミュレータ120が接続されてもよい。
上記構成によれば、ブレーキ制御装置10のシステム異常時に、運転者によるブレーキペダル11のブレーキ操作時に接続経路210及び接続経路220の二系統のうち少なくとも一方に適正な液圧が出力されれば当該液圧によってメカニカル弁280を作動させることができる。その結果、ポンプ261及びアキュムレータ261aによって高圧化された作動液の液圧をマスタシリンダ100の背面室116に確実に作用させることができる。従って、接続経路210及び接続経路220のいずれかにおいて適正な液圧が出力されないような不具合(典型的には、作動液の液漏れ等)が生じた場合であっても、当該不具合に対処することができる。また、接続経路210や接続経路220に作用する液圧によって作動する簡単な構造のメカニカル弁280を用いることによって、コスト低減効果の高いブレーキ制御装置10を実現することができる。
また上記構成のブレーキ制御装置10では、制御部300は開閉弁252を開放状態に制御しているときに、例えば圧力センサ261bによって検出された液圧情報に基づいて、液圧発生源261,261a(特にはアキュムレータ261a)又は接続経路260において作動液の液漏れが発生したと判定したときには、開閉弁252を開放状態から閉止状態に制御するのが好ましい。これにより、開閉弁252が開放状態から閉止状態に切り換るため、メカニカル弁280を作動液の液漏れに係る接続経路260から容易に遮断することができる。なお、制御部300は圧力センサ261bをはじめ他の検出情報に鑑みて作動液の液漏れが発生した可能性が多少でもある場合には、常に当該液漏れが発生したと判定するのが好ましい。
また上記構成のブレーキ制御装置10では、ブレーキ制御装置10のシステム異常時に、制御部300はアキュムレータ261aにおいて作動液の液漏れが発生したと判定したときには、接続経路210及び接続経路220のうちの少なくとも一方の接続経路の作動液がメカニカル弁280に導入されるように、増圧弁262,263を制御するのが好ましい。増圧弁263は、接続経路210のうち第1マスタカット弁211とホイルシリンダ13との間に開閉可能に設けられており、増圧弁262は、接続経路220のうち第2マスタカット弁221とホイルシリンダ12との間に開閉可能に設けられている。これら増圧弁263及び増圧弁262がそれぞれ本発明の「第1増圧弁」及び「第2増圧弁」に相当する。例えば、第1マスタカット弁211のみが開放制御されている場合には、制御部300は増圧弁262,263のうち開放状態の第1マスタカット弁211に対応する接続経路210に設けられている増圧弁263を開放制御することができる。これにより、接続経路210の液圧が接続経路260を逆向きに伝達してメカニカル弁280に導入される。同様に、第2マスタカット弁221のみが開放制御されている場合には、制御部300は増圧弁262,263のうち開放状態の第2マスタカット弁221に対応する接続経路220に設けられている増圧弁262を開放制御することができる。これにより、接続経路220の液圧が接続経路260を逆向きに伝達してメカニカル弁280に導入される。また、第1マスタカット弁211及び第2マスタカット弁221の双方が開放制御されている場合には、制御部300は増圧弁262,263の双方を開放制御することができる。これにより、接続経路210の液圧及び接続経路220の液圧がともに接続経路260を逆向きに伝達してメカニカル弁280に導入される。その結果、信頼性の高いブレーキ制御装置10を低コストで実現することができる。
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記実施の形態では、第1マスタシリンダピストン106の背面に、メカニカル弁280に接続された背面室116を設ける場合について記載したが、本発明では、背面室116に相当する領域を第2マスタシリンダピストン108の背面に追加することもできる。この場合、メカニカル弁280の作動時に第1マスタシリンダピストン106及び第2マスタシリンダピストン108の双方がそれぞれに割り当てられた背面室によって独立して加圧方向に付勢される。
上記実施の形態では、ストロークシミュレータ120は、ブレーキ制御装置10のシステム異常時に、マスタシリンダ100のうち背面室116に連通しない非連通領域のみに接続される場合について記載したが、ストロークシミュレータ120の仕様等、必要に応じては背面室116に連通する領域にストロークシミュレータ120が接続されてもよい。
上記実施の形態では、導入経路260aに開閉弁252を設ける場合について記載したが、構造を簡素化するためにこの開閉弁252を省略することもできる。
上記実施の形態では、ストロークシミュレータ120をマスタシリンダ100とともにハウジング101内に組み込んだ構造について記載したが、本発明では、このストロークシミュレータ120をマスタシリンダ100とは別体の装置として構成することもできる。