JP2014108400A - 塗装装置及び塗装方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗料の種類によらず効率良く塗料貯留部内を洗浄できる塗装装置及び塗装方法を提供すること。
【解決手段】塗料タンク及び色替弁機構20等の塗料供給源と、塗装ガン60と、これら塗料供給源と塗装ガン60の間に設けられた塗料貯留装置10と、を備え、塗料貯留装置10がシリンダ11とシリンダ11内を摺動可能なピストン12を含んで構成された静電塗装装置1において、シリンダ11とピストン12の先端面12aの間に形成された塗料貯留部14内に洗浄液Wを充填して塗料貯留部14内の圧力が流体Fの所定の一定供給圧を超えたときに、ピストン本体120に対するピストン12の先端面12aの位置を変位させることで、シリンダ11に対するピストン12の先端面12aの位置を変位させる変位機構17を備えることを特徴とする静電塗装装置1である。
【選択図】図2

Description

本発明は、塗装装置及び塗装方法に関する。詳しくは、シリンダと当該シリンダ内を摺動可能なピストンを含んで構成された塗料貯留装置を備える塗装装置に関する。
従来、自動車車体の静電塗装装置として、ボルテージブロック方式の静電塗装装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この静電塗装装置では、接地電位から絶縁された塗料貯留装置としての中間貯留装置に、塗料供給源から導電性塗料を導入して一時的に貯留する。その後、中間貯留装置と塗料供給源とを連通する供給路を洗浄して乾燥させることで電圧ブロックを形成し、中間貯留装置と塗料供給源とを電気的に絶縁する。そして、この状態で、導電性塗料に高電圧を印加して塗装ガンに供給することで、被塗装物に対して静電塗装を行う。
ところで、上記の静電塗装装置では、塗色を切り替える際には、次の塗色の導電性塗料を導入する前に、中間貯留装置を洗浄する必要がある。中間貯留装置の洗浄が不十分である場合には、次回塗装する塗色と前回塗装した塗色とが混色する。また、中間貯留装置を十分に洗浄するために洗浄に時間をかけると、サイクルタイムが長くなる。そこで特許文献1では、塗料が貯留される中間貯留装置のシリンダ室に開口する注入孔部から、洗浄液をシリンダ室に注入してシリンダ室を洗浄し、洗浄後の廃液を吐出孔部から排出することが開示されている。
特開2004−275977号公報
しかしながら、注入孔部からシリンダ室に注入された洗浄液は、シリンダ室内に残存する塗料を押し出しながら、吐出孔部へと流れる。即ち、シリンダ室内に残存する塗料は、洗浄液の流れに対して抵抗となる。このとき、洗浄液は、残存する塗料を押し出しながら注入孔部と吐出孔部とを直線状に結ぶ最短経路を流れ、当該最短経路の洗浄が完了すると、抵抗が小さくなったこの最短経路を流れ続ける。そのため、その他の部位、特に吐出孔部側における最短経路の両脇部の洗浄に時間がかかるという問題があった。
また、塗料は、その種類(塗色、中塗りや上塗り等の塗料タイプ)ごとに粘性が異なる特性を有する。そのため、塗料の種類に応じて、洗浄液の供給圧やピストンの押し下げ位置(洗浄ポジション)を調整し、洗浄液及び塗料のロスを抑制する必要がある。しかしながら、これらの調整を塗料の種類ごとに適切に行うことは困難である。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料の種類によらず効率良く塗料貯留部内を洗浄できる塗装装置及び塗装方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は、塗料供給源(例えば、後述の塗料タンク,色替弁機構20)と、塗装ガン(例えば、後述の塗装ガン60)と、これら塗料供給源と塗装ガンの間に設けられた塗料貯留装置(例えば、後述の塗料貯留装置10,90)と、を備え、当該塗料貯留装置がシリンダ(例えば、後述のシリンダ11)と当該シリンダ内を摺動可能なピストン(例えば、後述のピストン12,92)を含んで構成された塗装装置(例えば、後述の静電塗装装置1)において、前記シリンダと前記ピストンの先端面(例えば、後述の先端面12a,92a)の間に形成された塗料貯留部(例えば、後述の塗料貯留部14)内に洗浄液(例えば、後述の洗浄液W)を充填して前記塗料貯留部内の圧力が所定圧力(例えば、後述の流体Fの供給圧)を超えたときに、前記ピストンの本体(例えば、後述のピストン本体120,920)に対する前記ピストンの先端面の位置を変位させることで、前記シリンダに対する前記ピストンの先端面の位置を変位させる変位機構(例えば、後述の変位機構17,97)を備えることを特徴とする塗装装置を提供する。
本発明では、塗料貯留部内に洗浄液を充填し、塗料貯留部内の圧力が所定圧力を超えたときに、ピストンの本体に対するピストンの先端面の位置を変位させることで、シリンダに対するピストンの先端面の位置を変位させる変位機構を設ける。
本発明によれば、洗浄時に、塗料貯留部内に残存する塗料が洗浄液の流れに対して抵抗となり、塗料貯留部内の圧力が上昇して所定圧力を超えると、制御することなく自動的に、ピストンの本体に対するピストンの先端面の位置が変位することで、シリンダに対するピストンの先端面の位置が変位する。これにより、塗料貯留部内の容積が増大し、塗料貯留部内に残存する塗料に対する洗浄液の量が増大して塗料の粘性が低下するため、洗浄効率を向上できる。従って、本発明によれば、塗料の種類によらず効力良く塗料貯留部内を洗浄できる。
この場合、塗装中に、前記ピストンの本体(例えば、後述のピストン本体920)に対する前記ピストンの先端面(例えば、後述のピストンの先端面92a)の位置が変位しないように前記変位機構(例えば、後述の変位機構97)を制御する制御手段(例えば、後述の制御装置70)をさらに備えることが好ましい。
この発明では、塗装中、即ち、塗料貯留部内に充填した塗料を押し出すときに、ピストンの本体に対するピストンの先端面の位置が変位しないように制御する。
この発明によれば、塗装中においては、ピストンの本体に対するピストンの先端面の位置を変位させないため、正確な量の塗料を塗装ガンに供給できる。
また、塗料供給源(例えば、後述の塗料タンク,色替弁機構20)と、塗装ガン(例えば、後述の塗装ガン60)と、これら塗料供給源と塗装ガンの間に設けられた塗料貯留装置(例えば、後述の塗料貯留装置10,90)と、を備え、当該塗料貯留装置がシリンダ(例えば、後述のシリンダ11)と当該シリンダ内を摺動可能なピストン(例えば、後述のピストン12,92)を含んで構成された塗装装置(例えば、後述の静電塗装装置1)を用いた塗装方法において、前記シリンダと前記ピストンの先端面(例えば、後述の先端面12a,92a)の間に形成された塗料貯留部(例えば、後述の塗料貯留部14)内に洗浄液(例えば、後述の洗浄液W)を充填するとともに、前記シリンダに対して前記ピストンの先端面の位置を変位させることを特徴とする塗装方法を提供する。
この塗装方法の発明では、洗浄時に塗料貯留部内に洗浄液を充填するとともに、シリンダに対するピストンの先端面の位置を変位させる。これにより、上記発明と同様に、塗料の種類によらず効力良く塗料貯留部内を洗浄できる。
本発明によれば、塗料の種類によらず効率良く塗料貯留部内を洗浄できる塗装装置及び塗装方法を提供できる。
第1実施形態に係る静電塗装装置の概略構成図である。 低粘度塗料洗浄時、塗料貯留部内に供給されている流体の供給圧よりも塗料貯留部内の圧力が低いときにおける上記実施形態に係る塗料貯留装置の拡大断面図である。 高粘度塗料洗浄時、塗料貯留部内に供給されている流体の供給圧よりも塗料貯留部内の圧力が高いときにおける上記実施形態に係る塗料貯留装置の拡大断面図である。 低粘度塗料洗浄時における塗料貯留部内の圧力とピストンの先端面の位置との関係を示す図である。 高粘度塗料洗浄時における塗料貯留部内の圧力とピストンの先端面の位置との関係を示す図である。 第2実施形態に係る塗料貯留装置の拡大断面図である。
本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る静電塗装装置1の概略構成図である。本実施形態に係る静電塗装装置1は、本発明に係る塗装方法を実行可能となっている。
静電塗装装置1は、塗料貯留装置10と、第1洗浄弁21を備える色替弁機構20と、第1ダンプ弁31と、第1トリガ弁32と、第2ダンプ弁41と、第2トリガ弁42と、第2洗浄弁51と、塗装ガン60と、制御装置70と、を備える。
色替弁機構20は、接地されており、後段で詳述する塗料貯留装置10の第1孔部141に接続されている。色替弁機構20は、第1洗浄弁21と、複数の塗料弁22,23と、を備える。
第1洗浄弁21は、図示しない洗浄液タンク及びエア供給源が接続されており、洗浄液W及び乾燥用エアAの供給を制御する。複数の塗料弁22,23は、図示しない複数の塗料タンクが接続されており、異なる塗色の導電性塗料の供給を制御する。
第2ダンプ弁41は、第2排出路43が接続されている。第1洗浄弁21により、後述する塗料貯留装置10の塗料貯留部14に供給された洗浄液Wは、塗料貯留部14を洗浄して廃液となり、第2ダンプ弁41及び第2排出路43を介して排出される。
第1トリガ弁32は、色替弁機構20の複数の塗料弁22,23からの導電性塗料の供給を制御する。また、第1トリガ弁32は、色替弁機構20の第1洗浄弁21からの洗浄液W及び乾燥用エアAの供給を制御する。
塗料貯留装置10は、シリンダ11と、ピストン12と、サーボモータ13と、を備える。本実施形態では、塗料貯留装置10は、図示しないロボットアームに搭載されて、自在にその向きが変更可能となっている。
シリンダ11は、略円筒形状であり、絶縁樹脂製である。シリンダ11内には、ピストン12先端面12aとの間のシリンダ室により、導電性塗料が貯留される塗料貯留部14が形成される。シリンダ11の先端部110には、塗料貯留部14に開口する第1孔部141及び第2孔部142が穿設されている。
第1孔部141は、色替弁機構20に接続されており、第2孔部142は、後述する塗装ガン60に接続されている。
ピストン12は、絶縁樹脂製であり、後述するようにピストン本体120を含んで構成される。ピストン本体120には、サーボモータ13が図示しないボールねじ機構を介して連結されている。サーボモータ13を駆動させることで、その回転運動がボールねじ機構により直線運動に変換される。これにより、ピストン12がシリンダ11に対して進退することで、ピストン12がシリンダ11内を摺動可能となっている。
色替弁機構20と塗料貯留装置10との間には、図示しないボルテージブロック機構が設けられている。このボルテージブロック機構により、色替弁機構20と塗料貯留装置10とが電気的に絶縁されることで、塗料貯留装置10に連結された後述する塗装ガン60にて、導電性塗料に高電圧を印加することが可能となっている。
第2トリガ弁42は、後述する塗装ガン60への導電性塗料の供給を制御する。また、第2トリガ弁42は、後述する第2洗浄弁51からの洗浄液W及び乾燥エアAの供給を制御する。
第2洗浄弁51は、図示しない洗浄液タンク及びエア供給源が接続されており、洗浄液W及び乾燥用エアAの供給を制御する。
塗装ガン60は、塗料貯留装置10の第2孔部142に接続されている。塗装ガン60は、図示しないロボットアームに搭載され、図示しない高電圧印加部を備える。第2トリガ弁42を介して塗装ガン60に供給された導電性塗料は、高電圧印加部により高電圧が印加された状態で、塗装ガン60の先端から噴出される。
制御装置70は、色替弁機構20、第1ダンプ弁31、第1トリガ弁32、塗料貯留装置10、第2ダンプ弁41、第2トリガ弁42、第2洗浄弁51及び塗装ガン60を制御する。具体的には、制御装置70は、各弁の開閉制御、塗料貯留装置10のサーボモータ13の駆動制御、後述する変位機構17の駆動源の駆動制御及び塗装ガン60の駆動制御をすることで、導電性塗料の供給及び噴出と、洗浄液W及び乾燥用エアAの供給及び排出を制御する。これにより、静電塗装の実行と、静電塗装実行後の洗浄の実行が可能となっており、ひいては塗色の切り替えが可能となっている。
なお制御装置70は、洗浄時においては、サーボモータ13を制御して、ピストン12をシリンダ11の先端部110近傍まで摺動させてピストン12の駆動を停止させ、この状態で洗浄を実行する。
また制御装置70は、塗装中においては、サーボモータ13を制御して、ピストン12をシリンダ11に対して前進させながら塗装を実行する。
以下、本実施形態に係る塗料貯留装置10について、詳しく説明する。
図2及び図3は、いずれも、本実施形態に係る塗料貯留装置10の構成を示す拡大断面図である。より詳しくは、図2は、低粘度塗料洗浄時、塗料貯留部14内に供給されている流体Fの所定の一定供給圧よりも塗料貯留部14内の圧力が低いときにおける塗料貯留装置10の先端部の拡大断面図であり、図3は、高粘度塗料洗浄時、塗料貯留部14内に供給されている流体Fの所定の一定供給圧よりも塗料貯留部14内の圧力が高いときにおける塗料貯留装置10の先端部の拡大断面図である。
図2及び図3に示すように、ピストン12は、ピストン本体120と、変位機構17と、を含んで構成される。ピストン12は、変位機構17により、その先端面12aの位置がピストン本体120に対して変位することで、その先端面12aの位置がシリンダ11に対して変位する。
ピストン本体120は、シリンダ11内を摺動可能となっている。
変位機構17は、ピストン本体120の先端に設けられる。変位機構17は、円筒部171と、変位部172と、変位部172を変位させる図示しない駆動源と、を備える。
円筒部171は、ピストン本体120の先端面120aから、シリンダ11の先端部110に向かって延設され、当該先端面120aに複数のボルト120bで固定されている。円筒部171は、先端側に形成され且つ後述する円筒大径部171bよりも内径が小さい円筒小径部171aと、基端側に形成され且つ円筒小径部171aよりも内径が大きい円筒大径部171bと、から構成される。
ピストン本体120の先端面120aに接する円筒部171の基端側には、円環状のOリングからなるシール部171cが嵌設されている。これにより、後述する駆動源から供給される流体Fが外部に漏れるのが回避される。
変位部172は、変位部本体172bと、先端フランジ部172cと、基端フランジ部172dと、から構成される。
変位部本体172bは、略円柱状に形成され、円筒部171内を摺動可能となっている。より詳しくは、変位部本体172bは、円筒部171の円筒小径部171a内を摺動可能となっている。変位部本体172bの外周には、円環状のOリングからなるシール部172eが嵌設されている。これにより、後述する駆動源から供給される流体Fが外部に漏れるのが回避される。
先端フランジ部172cは、変位部本体172bの先端に形成され、全周に亘って径方向に延出されたフランジを有する。ここで、本実施形態におけるピストン12の先端面12aとは、変位部172の先端面172a(先端フランジ部172cの先端面)を意味する。
なお、ピストン12の先端面12a(172a)と、シリンダ11の先端部110とで囲まれた空間により、上述の塗料貯留部14が形成される。
基端フランジ部172dは、変位部本体172bの基端に形成され、全周に亘って径方向に延出されたフランジを有する。基端フランジ部172dは、変位部本体172bの基端面に複数のボルト172fで固定されている。基端フランジ部172dは、円筒大径部171b内を摺動可能となっている。基端フランジ部172dの径は、円筒小径部171aの内径よりも大きく形成されているため、基端フランジ部172dは円筒大径部171b内のみを摺動する。これにより、変位部172の変位距離が規制されている。
なお、基端フランジ部172dの基端面と、ピストン本体120の先端面120aとの間の空間により、後述する流体Fが供給される流体室17aが形成される。
変位機構17の駆動源としては、流体Fを供給する図示しない流体供給源が設けられる。流体Fとしては、例えばエアや水等が用いられる。流体供給源は、これら流体Fを、ピストン本体120の内部でその軸方向に延設され且つ先端面120aに開口する流体供給路120cを介して、流体室17aに供給する。
流体供給源による流体Fの供給圧は、制御装置70により制御される。具体的には、洗浄時には、流体Fの供給圧は所定の一定供給圧に制御される。また、塗装時には、塗料貯留部14内の圧力よりも常に高い供給圧となるように制御される。
以上の構成を備えるピストン12の先端外周、具体的には円筒部171の外周には、円環状のシール部15が嵌設されている。シール部15は、絶縁樹脂製(例えば、テフロン(登録商標)製)のシール本体151と、シール本体151の先端外周から先端側に突出するシール先端部152と、を含んで構成される。これにより、塗料貯留部14内に供給される導電性塗料や洗浄液Wが外部に漏れるのが回避される。
色替弁機構20に接続された第1孔部141と、塗装ガン60に接続された第2孔部142は、シリンダ11の先端部110の外周縁近傍に、シリンダ11の中心軸に対して互いに略対称となる位置に穿設されている。また、第1孔部141及び第2孔部142は、シリンダ11の径方向の位置が、導電性塗料が残存し易いシール部15の近傍となるようにそれぞれ設けられている。これにより、かかるシール部15の近傍に向けて洗浄液Wを供給できるため、洗浄効率が向上する。
以上の構成を備える塗料貯留装置10では、図2及び図3に示すように洗浄時には、ピストン12の先端面12a(172a)を、シリンダ11の先端部110近傍まで摺動させる。これにより、ピストン12の先端面12a(172a)と、シリンダ11の先端部110との間の微小な空間により、塗料貯留部14が形成される。この小さな容積の塗料貯留部14内には導電性塗料が残存し、残存した導電性塗料は、洗浄時に洗浄液Wにより洗浄されて除去される。
以下、図2を参照して、低粘度塗料洗浄時、塗料貯留部14内に供給されている流体Fの供給圧よりも塗料貯留部14内の圧力が低いときにおける静電塗装装置1の動作について説明する。また、図3を参照して、高粘度塗料洗浄時、塗料貯留部14内に供給されている流体Fの供給圧よりも塗料貯留部14内の圧力が高いときにおける静電塗装装置1の動作について説明する。
なお本実施形態では、洗浄時においては、制御装置70により、流体Fの供給圧は所定の一定供給圧に設定される。また洗浄時においては、制御装置70により、ピストン12、具体的にはピストン本体120を停止させた状態で、洗浄が実行される。
先ず、塗料の粘度が低い場合には、塗料貯留部14内を流れる洗浄液Wの流れは良好であり、経路圧力は低い。そのため、流体Fの供給圧よりも塗料貯留部14内の圧力の方が低いことから、図2に示すように変位部172は変位せず、ピストン本体120及びシリンダ11に対して、ピストン12の先端面12a(172a)の位置は変位しない。これにより、ピストン12の先端面12a(172a)とシリンダ11の先端部110との隙間C1は小さい状態が維持され、その結果、塗料貯留部14の容積は小さい状態が維持される。
ここで、図4は、低粘度塗料洗浄時における塗料貯留部14内の圧力とピストン12の先端面12a(172a)の位置との関係を示す図である。図4に示すように、低粘度塗料洗浄時においては、洗浄が開始されると塗料貯留部14内の圧力が上昇するものの、塗料貯留部14内の圧力が流体Fの供給圧を超えることがない。そのため、変位部172は変位せず、シリンダ11及びピストン本体120に対して、ピストン12の先端面12a(172a)の位置は変位せず元の位置のままである。
これに対して、塗料の粘度が高い場合には、塗料貯留部14内を流れる洗浄液Wの流れは悪く、経路圧力は高い。そのため、流体Fの供給圧よりも塗料貯留部14内の圧力の方が高いことから、図3に示すように変位部172が変位し、シリンダ11及びピストン本体120に対して、ピストン12の先端面12a(172a)の位置が変位する。具体的には、ピストン12の先端面12a(172a)の位置が、シリンダ11及びピストン本体120に対して基端側(図3の上側)に変位する。これにより、ピストン12の先端面12a(172a)とシリンダ11の先端部110との隙間C2は、図2に示すC1よりも大きい状態となり、その結果、塗料貯留部14の容積はより大きい状態となる。
ここで、図5は、高粘度塗料洗浄時における塗料貯留部14内の圧力とピストン12の先端面12a(172a)の位置との関係を示す図である。図5に示すように、高粘度塗料洗浄時においては、洗浄が開始されると塗料貯留部14内の圧力が上昇し、塗料貯留部14内の圧力が流体Fの供給圧を超える。そのため、変位部172が変位し、ピストン本体120及びシリンダ11に対して、ピストン12の先端面12a(172a)の位置が基端側に変位する。
また、ピストン12の先端面12a(172a)の位置が基端側に変位すると、塗料貯留部14内に残存する導電性塗料に対する洗浄液Wの量が増大し、残存していた導電性塗料の粘性が低下するため、洗浄が促進され、洗浄効率が向上する。洗浄が進むと、図5に示すように、塗料貯留部14内の圧力が低下し、流体Fの供給圧よりも塗料貯留部14内の圧力の方が低くなるため、変位部172が徐々に元の位置に戻る。これにより、ピストン12の先端面12a(172a)の位置も元の位置に戻る。即ち、ピストン12の先端面12a(172a)とシリンダ11の先端部110との隙間C2の大きさがC1の大きさに戻り、塗料貯留部14の容積は図2に示す元の小さい状態となる。
次に、塗装時における静電塗装装置1の動作について説明する。
先ず、制御装置70により、第1ダンプ弁31、第2ダンプ弁41及び第2トリガ弁42を閉弁し、いずれかの塗料弁及び第1トリガ弁32を開弁する。また、制御装置70により、塗料貯留装置10のサーボモータ13を駆動する。これにより、所定の塗色の導電性塗料が塗料貯留装置10の塗料貯留部14へと圧送され、第2トリガ弁42まで導電性塗料が供給される。
次いで、塗料貯留部14への導電性塗料の充填が終了すると、制御装置70により、図示しないボルテージブロック機構を制御して、色替弁機構20と塗料貯留装置10とを電気的に絶縁する。
次いで、制御装置70により、第2トリガ弁42を開弁し、サーボモータ13の駆動作用でピストン12をシリンダ11に対して前進させる。すると、塗料貯留部14に貯留されていた導電性塗料が、塗装ガン60に向けて圧送される。塗装ガン60に圧送された導電性塗料は、高電圧印加部で高電圧が印加され、この状態で、塗装ガン60の先端から吐出される。これにより、被塗装物に対して導電性塗料が静電塗装される。
ここで、塗料吐出時は、制御装置70により、流体Fの供給圧が常に塗料貯留部14内の圧力よりも高くなるように、流体供給源を制御する。これにより、ピストン12の先端面12a(172a)の位置が変位しないように制御され、塗装ガン60への供給量が正確に制御される。
なお、ピストン12をシリンダ11に対して前進させる際に、異常や位置ずれでピストン12の先端部がシリンダ11の内壁等に衝突した場合でも、変位機構17により衝撃が吸収されるため、ピストン本体120やサーボモータ13の負荷が軽減される。
静電塗装が終了した後、第2トリガ弁42を閉弁し、塗装ガン60への高電圧の印加を解除する。また、ボルテージブロック機構による色替弁機構20と塗料貯留装置10との電気的絶縁を解除する。
次いで、制御装置70により、第1洗浄弁21、第1トリガ弁32及び第2ダンプ弁41を開弁し、第1ダンプ弁31及び第2洗浄弁51を閉弁する。これにより、第1孔部141から洗浄液Wを供給し、洗浄後の廃液を第2孔部142から排出することで、塗料貯留部14を洗浄する。
以上により、塗料貯留部14を洗浄した後、新たに異なる塗色の導電性塗料を上述の手順と同様の手順で供給することで、静電塗装を実行する。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、塗料貯留部14内に洗浄液Wを充填することで塗料貯留部14内の圧力が所定圧力、具体的には流体Fの所定の一定供給圧を超えたときに、ピストン本体120に対するピストン12の先端面12a(172a)の位置を変位させることで、シリンダ11に対するピストン12の先端面12a(172a)の位置を変位させる変位機構17を設けた。
本実施形態によれば、洗浄時に塗料貯留部14内に残存する導電性塗料が洗浄液Wの流れに対して抵抗となり、塗料貯留部14内の圧力が上昇して流体Fの所定の一定供給圧を超えると、制御することなく自動的に、ピストン本体120に対するピストン12の先端面12a(172a)の位置が変位することで、シリンダ11に対するピストン12の先端面12a(172a)の位置が変位する。これにより、塗料貯留部14内の容積が増大し、塗料貯留部14内に残存する導電性塗料に対する洗浄液Wの量が増大して導電性塗料の粘性が低下するため、洗浄効率を向上できる。従って、本実施形態によれば、導電性塗料の種類によらず効力良く塗料貯留部14内を洗浄できる。
また本実施形態では、塗装中、即ち、塗料貯留部14内に充填した導電性塗料を押し出すときに、ピストン本体120に対するピストン12の先端面12aの位置が変位しないように制御した。
本実施形態によれば、塗装中においては、ピストン本体120に対するピストン12の先端面12a(172a)の位置を変位させないため、正確な量の導電性塗料を塗装ガン60に供給できる。
また、本実施形態に係る静電塗装装置1を用いた塗装方法によれば、洗浄時に塗料貯留部14内に洗浄液Wを充填するとともに、シリンダ11に対してピストン12の先端面12a(172a)の位置を変位させることで、導電性塗料の種類によらず効率良く塗料貯留部14内を洗浄できる。
[第2実施形態]
第2実施形態に係る静電塗装装置は、変位機構の構成が第1実施形態と異なる以外は、第1実施形態と同一の構成である。
図6は、第2実施形態に係る静電塗装装置の塗料貯留装置90の拡大断面図である。図6に示すように、塗料貯留装置90が備える変位機構97の駆動源は、第1実施形態の流体Fの流体供給源とは異なり、複数の圧縮ばね等からなる弾性体19で構成される。そのため、ピストン本体920の内部には流体供給路は設けられていない。
複数の弾性体19は、第1実施形態の流体室17aよりも大きい弾性室97a内に設けられる。弾性室97aは、ピストン本体920の先端面に基端側に凹んで形成された凹部922と、変位部172の基端フランジ部172dとの間に形成される。
複数の弾性体19は、塗装前の初期状態において、変位部172を先端側に付勢する。これにより、塗装前の初期状態では、図6に示すように基端フランジ部172dの先端面が円筒小径部171aの基端面に当接し、変位部172は最も先端側に配置される。
また本実施形態では、洗浄時には、塗料貯留部14内に洗浄液Wを充填して塗料貯留部14内の圧力がその付勢力を超えたときに、制御することなく自動的に変位部172が変位する。具体的には、ピストン本体920に対してピストン92の先端面92aの位置が自動的に基端側に変位することで、シリンダ11に対してピストン92の先端面92aの位置を自動的に基端側に変位させることができる。
また、ピストン92の先端面92aの位置が基端側に変位すると、塗料貯留部14内に残存する導電性塗料に対する洗浄液Wの量が増大し、残存していた導電性塗料の粘性が低下するため、洗浄が促進され、洗浄効率が向上する。洗浄が進むと、塗料貯留部14内の圧力が低下し、複数の弾性体19の付勢力よりも塗料貯留部14内の圧力の方が低くなるため、変位部172が徐々に元の位置に戻り、ピストン92の先端面92aの位置が元に戻る。
従って、本実施形態によれば、第1実施形態よりも簡易な構成により、洗浄時において第1実施形態と同様の効果が奏される。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、上記第1実施形態では変位機構の駆動源として流体Fを用い、上記第2実施形態では変位機構の駆動源として複数の弾性体を用いたが、これに限定されない。これら流体F又は弾性体の代わりに、モータを変位機構の駆動源として用いてもよい。変位機構の駆動源としてモータを用いる場合には、塗料貯留部内の圧力を検出する圧力検出手段を設け、その検出値に基づいて制御装置がモータの回転数を制御するように構成すればよい。
具体的には、洗浄時において、検出された塗料貯留部内の圧力が所定圧力に達したときには、制御装置がモータの回転数を抑制するように制御し、塗装時には、検出された塗料貯留部内の圧力に応じて、シリンダに対するピストンの先端面の位置が変位しないようにモータの回転数が制御するように構成すればよい。
1…静電塗装装置(塗装装置)
10,90…塗料貯留装置
11…シリンダ
12,92…ピストン
13…サーボモータ
14…塗料貯留部
17,97…変位機構
17a…流体室(変位機構)
19…弾性体
20…色替弁機構(塗料供給源)
60…塗装ガン
70…制御装置(制御手段)
12a,92a…ピストンの先端面
120,920…ピストン本体
120c…流体供給路(変位機構)
141…第1孔部
142…第2孔部
171…円筒部(変位機構)
171a…円筒小径部(変位機構)
171b…円筒大径部(変位機構)
172…変位部(変位機構)
172b…変位部本体(変位機構)
172c…先端フランジ部(変位機構)
172d…基端フランジ部(変位機構)

Claims (3)

  1. 塗料供給源と、塗装ガンと、これら塗料供給源と塗装ガンの間に設けられた塗料貯留装置と、を備え、当該塗料貯留装置がシリンダと当該シリンダ内を摺動可能なピストンを含んで構成された塗装装置において、
    前記シリンダと前記ピストンの先端面の間に形成された塗料貯留部内に洗浄液を充填して前記塗料貯留部内の圧力が所定圧力を超えたときに、前記ピストンの本体に対する前記ピストンの先端面の位置を変位させることで、前記シリンダに対する前記ピストンの先端面の位置を変位させる変位機構を備えることを特徴とする塗装装置。
  2. 請求項1に記載の塗装装置において、
    前記塗装装置は、塗装中に、前記ピストンの本体に対する前記ピストンの先端面の位置が変位しないように前記変位機構を制御する制御手段をさらに備える塗装装置。
  3. 塗料供給源と、塗装ガンと、これら塗料供給源と塗装ガンの間に設けられた塗料貯留装置と、を備え、当該塗料貯留装置がシリンダと当該シリンダ内を摺動可能なピストンを含んで構成された塗装装置を用いた塗装方法において、
    前記シリンダと前記ピストンの先端面の間に形成された塗料貯留部内に洗浄液を充填するとともに、前記シリンダに対して前記ピストンの先端面の位置を変位させることを特徴とする塗装方法。
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