JP2014107497A - スピン注入電極構造、及びスピン伝導素子 - Google Patents

スピン注入電極構造、及びスピン伝導素子 Download PDF

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Abstract

【課題】半導体チャンネル層とトンネル層、及びトンネル層と強磁性層との間の格子定数のずれによって生じる界面でのスピン散乱を抑制し、高出力を得るためのスピン注入電極構造、又はスピン伝導素子を提供する。
【解決手段】半導体チャンネル層上にトンネル層と強磁性層を設け、半導体チャンネル層と接する第一トンネル層の格子定数と、強磁性層と接する第二トンネル層の格子定数が異なり、さらに、第一トンネル層と第二トンネル層は、それぞれ異なる結晶系である。
【選択図】図4

Description

本発明は、スピン注入電極構造、及びスピン伝導素子に関する。
近年、半導体を用いたチャンネルにスピンを蓄積する技術が知られている。半導体を用いたチャンネルにおけるスピン拡散長は、金属を用いたチャンネルにおけるスピン拡散長よりも格段に長い。例えば下記非特許文献1〜4には、シリコンにスピンを注入する技術が記載されている。
特開2010−239011号公報
Tomoyuki Sasaki et al., Applied Physics Express 2, p053003-1〜053003-3, (2009) O. M. J. van't Erve et al., APPLIED PHYSICS LETTERS 91, p212109-1〜212109-3, (2007) Y. Ando et al., APPLIED PHYSICS LETTERS 94, p182105-1〜182105-3, (2009) Saroj P. Dash et al., nature, vol.462, p491〜494,(2009) T. Suzuki et al., AppliedPhysics Express 4, p023003-1〜023003-3, (2011)
シリコンでのスピンの注入・伝導・検出の応用のためには、室温での十分な出力特性を得ることが望まれている。例えば、上記非特許文献1〜3では、シリコンでのスピンの注入・伝導・検出が報告されているものの、いずれも150K以下の低温での事象である。また、上記非特許文献4では、300Kでのシリコンでのスピンの蓄積が観測されているものの、室温においてシリコンでのスピンの伝導現象は観測されておらず、幅広い応用が期待できないのが現状である。一方、上記非特許文献5では、室温においてシリコンでのスピンの伝導現象が観測されているものの、出力特性は十分ではない。このように、室温において充分な出力特性が得られない理由の一つとしては、シリコンとトンネル層との間の格子定数のずれによって界面でのスピン散乱が誘発されてしまうことが考えられる。このような状況の中、シリコンに限らず、半導体において、室温で充分な出力特性が得られるスピンの伝導を実現する効果的なスピンの注入を実現することが望まれている。
シリコンとトンネル層との間の格子定数のずれによって界面でのスピン散乱を抑制する方法は特許文献1にも記載されている。界面においてスピン散乱を抑制することは、充分な出力特性に繋がる。特許文献1では、シリコン上に第一非晶質酸化マグネシウムを形成し、シリコンと酸化マグネシウムの間の格子不整合によるスピン散乱を抑制すること、及び、第一非晶質酸化マグネシウム上に第一結晶質酸化マグネシウムを形成し、一部コヒーレント効果を残すことで高出力化している。しかし、室温において充分な出力特性を得るには、トンネル層である酸化マグネシウムと第一強磁性層との界面においてもスピン散乱を抑制する必要がある。
一般的に、上記のような二層のトンネル層を形成する場合には、一方の材料が非晶質であり、結晶系は問題とならない。さらに、強磁性層に接するトンネル層材料としては、一般的にMgOなどの結晶層が良いことが知られている。また、半導体チャンネル層に接するトンネル層材料としても、MgOなどのトンネル材料が知られているが、結晶質の場合は、半導体チャンネル層とトンネル材料の界面において、結晶格子の違いによる歪によってスピンが強く散乱されるために高出力化が実現できず、充分な出力特性が得られない。
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、室温において従来よりも高出力な出力特性を得るため、半導体チャンネル層におけるスピンの効果的な注入を可能とする、スピン注入電極構造及びスピン伝導素子を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明のスピン注入電極構造は、半導体チャンネル層と、半導体チャンネル層上に設けられた第一トンネル層と、第一トンネル層上に設けられた第二トンネル層と、第二トンネル層上に設けられた強磁性層とを備え、第一トンネル層と第二トンネル層は格子定数が異なり、さらに第一トンネル層と第二トンネル層が異なる結晶系であることを特徴とする。
本発明では半導体チャンネル層に接する第一トンネル層の界面、および、強磁性層に接する第二トンネル層の界面は、結晶質であり、半導体チャンネル層と第一トンネル層の界面、および、第二トンネル層と強磁性層の界面を、第一トンネル層と第二トンネル層の界面よりも優先させ、異なる結晶系の材料を組み合わせることによって、従来よりも高出力な出力特性が得られた。
上記のように、異なる結晶系のトンネル層材料を積層した場合、トンネル層の界面では、それぞれの層を結晶化させるために界面における歪エネルギーを最小にする結晶格子緩衝領域が必要である。
上記結晶格子緩衝領域は非結晶質である。結晶格子緩衝領域を非晶質とすることによって、積層されるトンネル層が異なる結晶系であっても、結晶格子による歪を生じさせることなく形成することが可能であり、スピン散乱が抑制されるため、充分な出力特性が得られる。
結晶格子緩衝領域は、第一トンネル層と第二トンネル層の構成元素を一部、あるいは、全部を含む構成元素から成る。第一トンネル層と第二トンネル層は異なる結晶系であるが、トンネル層形成時に構成元素が拡散する。拡散した元素は、第一トンネル層と第二トンネル層の主の構成元素とはならず、第一トンネル層と第二トンネル層はそれぞれ所定の結晶構造になるが、第一トンネル層と第二トンネル層の界面付近では拡散した構成元素同士が混ざり合った非晶質の層となっている。
第一トンネル層及び第二トンネル層は、Al、Mg、Si、Zn、Tiのいずれかの元素を含む酸化物から構成される。これらの材料を選択した場合には、異なる結晶系のトンネル層を積層した場合においても高出力を得ることができる。
第一トンネル層は、スピネル構造である。半導体チャンネル層に対してスピネル構造を持つトンネル層は界面における結晶格子の歪が小さく、高出力を得ることができる。
第二トンネル層は、NaCl構造である。トンネル層がNaCl構造の場合、強磁性層から注入されたスピンが高スピン分極率でトンネルし、高出力を得ることができる。
半導体チャンネル層は、シリコン、ゲルマニウム、あるいは、ガリウム砒素の何れかの材料からなる。これらの材料はスピン拡散長が長く、又、スピン抵抗が高いため、高出力を得ることができる。
上記のスピン注入電極構造を半導体チャンネル層の第一部分に設け、更に、前記半導体チャンネル層の第二部分上に設けられた第二トンネル層と、第二トンネル層上に設けられた第二強磁性層と、を備えたスピン伝導素子であることが好ましい。このような構造にすることで、スピン注入電極構造から注入されたスピンを別のスピン注入電極構造で検出することができる。これによって、磁気センサ、Spin−MOSFET、あるいは、スピン伝導素子として機能する。
また、強磁性層の結晶構造は、体心立方格子構造(BCC)であることが好適である。この場合、非磁性スピネル膜からなるトンネル層上に強磁性層を部分的にエピタキシャル成長させることができる。
また、強磁性層は、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は前記群から選択される1以上の元素とホウ素(B)とを含む化合物であることが好ましい。これらの材料はスピン分極率の大きい強磁性材料であるため、スピンの注入電極としての機能を好適に実現することが可能である。
さらに、強磁性層は、ホイスラー合金であることがより好ましい。強磁性層は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属でありXの元素種をとることもでき、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSiやCoMnSiなどが挙げられる。
また、強磁性層上に形成された反強磁性層を更に備え、反強磁性層は、強磁性層の磁化の向きを固定することが好適である。反強磁性層が強磁性層と交換結合することにより、強磁性層の磁化方向に一方向異方性を付与することが可能となる。この場合、反強磁性層を設けない場合よりも、高い保磁力を一方向に有する強磁性層が得られる。
また、半導体チャンネル層に設けられたスピン注入電極構造の第一部分と第二部分の強磁性層とは、形状異方性によって保磁力差がつけられていることが好適である。この場合、保磁力差をつけるための反強磁性層を省略することができる。
一般的に、半導体チャンネル層には、導電性を付与するためのイオンが打ち込まれる。半導体チャンネル層の表面は、このイオンの打ち込みに起因するダメージが形成されるおそれがある。そこで、半導体チャンネル層は、第一部分と第二部分との間に表面から底部に向かってミリングによって窪みを形成し、その窪みの深さは10nm以上20nm以下であることが好適である。
また、スピン伝導デバイスは、上述のスピン注入電極構造を有することが好適であり、室温での半導体チャンネル層におけるスピンの効果的な注入を可能とするスピン伝導素子デバイスを提供できる。
本発明によれば、従来のトンネル層よりも半導体チャンネルとトンネル層の界面におけるスピン散乱を抑制しつつ、トンネル層と強磁性層の界面におけるスピン散乱も同時に抑制でき、室温において従来よりも高出力な出力特性が得られ、半導体チャンネル層におけるスピンの効果的な注入を可能とするスピン注入電極構造、スピン伝導素子およびスピン伝導デバイスを提供できる。
図1は、本実施形態に係るスピン伝導素子の斜視図である。 図2(a)は、本実施形態に係るスピン伝導素子の上面図である。図2(b)は、図2(a)に示す領域Bの拡大図である。 図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。 図4は、第一トンネル層13A及び第二トンネル層13Bと、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの間の結晶格子緩和領域16の構成図である。 図5は、NL測定法における印加磁場と電圧出力の関係を示すグラフである。 図6は、NL−Hanle測定法における印加磁場と電圧出力の関係を示すグラフである。 図7は、第一トンネル層13A及び第二トンネル層13BをEDXにて評価したスペクトルである。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るスピン伝導素子の好適な実施形態について詳細に説明する。図中には、必要に応じてXYZ直交座標軸系が示されている。図1は、本実施形態に係るスピン伝導素子の斜視図である。図2(a)は、本実施形態に係るスピン伝導素子の上面図である。図2(b)は、図2(a)に示す領域Bの拡大図である。図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。
図3に示すように、スピン伝導素子1は、半導体としてシリコンを用いた場合において、シリコン基板10と、酸化珪素膜11と、シリコンチャンネル層12と、第一トンネル層13Aと、第二トンネル層13Bと、第三トンネル層13Cと、第四トンネル層13Dと、第一強磁性層14Aと、第二強磁性層14Bと、第一参照電極15Aと、第二参照電極15Bと、酸化膜7aと、酸化膜7bと、を備える。シリコンチャンネル層12と、第一トンネル層13Aと、第二トンネル層13Bと、第一強磁性層14Aとが、スピン注入電極構造IEを構成している。
図4に示すように、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bは積層した構造であり、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの界面近傍には、結晶格子緩和領域16が設けられている。結晶格子緩和領域16は二つの構造をとる。一つは非結晶質の構造である。すなわち、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの界面近傍では格子定数の差を解消するために、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの一方、あるいは、両方のトンネル層の一部が非結晶化しているものであり、MBE法で成膜した場合に形成される。もう一つは、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの界面近傍で結晶化したまま混ざり合った構造である。この場合、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの界面は不明瞭である。これはスパッタ法で形成した場合に形成されやすい。
基板10、酸化珪素膜11、およびシリコンチャンネル層12として、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることができる。基板10はシリコン基板であり、酸化珪素膜11は基板10上に設けられている。酸化珪素膜11の膜厚は例えば200nmである。また、シリコンチャンネル層12は、シリコンの代わりにゲルマニウム、あるいは、ガリウム砒素を用いてもほぼ同様の結果が得られる。
シリコンチャンネル層12は、スピンが伝導する層として機能する。シリコンチャンネル層12の上面は例えば(100)面である。シリコンチャンネル層12は、例えばZ軸方向(厚み方向)から見てX軸を長軸方向とする矩形状を有している。シリコンチャンネル層12はシリコンからなり、シリコンチャンネル層12には必要に応じて導電性を付与するための不純物イオンが添加されている。イオン濃度は、例えば5.0×1019cm−3である。シリコンチャンネル層12の膜厚は例えば100nmである。あるいは、第一トンネル層13Aと、シリコンチャンネル層12との界面におけるショットキー障壁を調整できるように、当該界面からシリコンチャンネル層12における10nmの深さにイオン濃度のピークがあるような構造を有するシリコンチャンネル層12でもよい。また、シリコンチャンネル層12のイオン濃度が低い場合、酸化珪素膜11に電圧を印加し、シリコンチャンネル層12にキャリアを誘起させるなどの手法がある。
図3に示すように、シリコンチャンネル層12は側面に傾斜部を有しており、その傾斜角θは50度から60度である。この傾斜角θとは、シリコンチャンネル層12の底部と側面のなす角度である。なお、シリコンチャンネル層12はウェットエッチングにより形成することができる。
図3に示すように、シリコンチャンネル層12は、第一凸部(第一部分)12A、第二凸部(第二部分)12B、第三凸部(第三部分)12C、第四凸部(第四部分)12D、および主部12Eを含む。第一凸部12A、第二凸部12B、第三凸部12C、および第四凸部12Dは、主部12Eから突出するように延在する部分であり、この順に所定軸(図3に示す例ではX軸)方向に所定の間隔を置いて配列している。
第一凸部12A、第二凸部12B、第三凸部12C、および第四凸部12Dの膜厚(図3に示す例ではZ軸方向の長さ)H1は、例えば20nmである。主部12Eの膜厚(図3に示す例ではZ軸方向の長さ)H2は、例えば80nmである。第一凸部12Aと第三凸部12Cとの間の距離L1は、例えば100μm以下である。第一凸部12AのX軸方向の長さの中央部と、第二凸部12BのX軸方向の長さの中央部との間の距離dは、スピン拡散長以下であることが好ましい。室温(300K)でのシリコンチャンネル層12におけるスピン拡散長は例えば0.8μmである。第一強磁性層14Aから第一凸部12Aに注入されたスピン、あるいは第二強磁性層14Bから第二凸部12Bに注入されたスピンは、主部12Eにおける第一凸部12Aと第二凸部12Bとの間の領域を拡散・伝導する。
第一トンネル層13Aおよび第二トンネル層13Bは、第一強磁性層14Aのスピン分極と、シリコンチャンネル層12のスピン分極とを効率的に接続するためのトンネル絶縁膜として機能する。第一トンネル層13Aは、シリコンチャンネル層12の第一部分である第一凸部12A上に設けられている。第二トンネル層13Bは第一トンネル層13A上に設けられ、第二トンネル層13Bの上には第一強磁性層14Aが設けられている。このような構造により、第一強磁性層14Aまたは第二強磁性層14Bからシリコンチャンネル層12へスピン偏極した電子を多く注入することが可能となり、スピン伝導素子1の電位出力を高めることが可能となる。
第一トンネル層13Aおよび第二トンネル層13Bの合わせた膜厚は2.2nm以下であることが好ましい。この場合、得られるスピン出力に対して界面抵抗率を1MΩμm以下に低くしてノイズを抑えることができるので、スピンの注入や出力を好適に行える。また、第一トンネル層13Aおよび第二トンネル層13Bの膜厚は、0.6nm以上であることが好適であり、この場合、シリコンチャンネル層12上に均一に成膜された第一トンネル層13Aおよび第二トンネル層13Bを用いることができる。
第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bの一方は、シリコンチャンネル層12にスピンを注入するための電極として機能し、他方は、シリコンチャンネル層12内のスピンを検出するための電極として機能する。第一強磁性層14Aは、第二トンネル層13B上に設けられている。第二強磁性層14Bは、第四トンネル層13D上に設けられている。
第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bは強磁性材料からなる。第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bの材料の一例として、CoおよびFeからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は、前記群から選択される1以上の元素とホウ素(B)とからなる化合物があげられる。第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bの結晶構造は、体心立方格子構造であることが好適である。これにより、第二トンネル層13B上に第一強磁性層14Aを部分的にエピタキシャル成長させることができるとともに、第四トンネル層13D上に第二強磁性層14Bを部分的にエピタキシャル成長させることができる。但し、スパッタ法で形成した場合には強磁性材料はコバルト、鉄、ホウ素からなる合金を用い、成膜後にアニールを実施することによって、強磁性層およびトンネル層の結晶化が促進される。
図1に示す例では、第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bは、Y軸方向を長軸とした直方体形状を有している。第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bの形状異方性によって、第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bとは保磁力差が付けられていることが好適である。第一強磁性層14Aの幅(X軸方向の長さ)は、例えば350nm程度となっている。第二強磁性層14Bの幅(X軸方向の長さ)は、例えば2μm程度となっている。図1に示す例では、第一強磁性層14Aの保磁力は、第二強磁性層14Bの保磁力よりも大きくなっている。
第一参照電極15Aおよび第二参照電極15Bは、シリコンチャンネル層12に検出用電流を流すための電極としての機能と、スピンによる出力を読み取るための電極としての機能とを有する。第一参照電極15Aは、シリコンチャンネル層12の第三凸部12C上に設けられている。第二参照電極15Bは、シリコンチャンネル層12の第四凸部12D上に設けられている。第一参照電極15A及び第二参照電極15Bは、導電性材料からなり、例えばAlなどのSiに対して低抵抗な非磁性金属からなる。
酸化膜7aは、シリコンチャンネル層12の側面に形成されている。また、酸化膜7bは、シリコンチャンネル層12、酸化膜7a、第一トンネル層13A、第二トンネル層13B、第三トンネル層13C,第四トンネル層13D、第一強磁性層14A、第二強磁性層14B、第一参照電極15A、及び第二参照電極15Bの側面上に形成されている。また、シリコンチャンネル層12の上面のうち、第一強磁性層14A、第二強磁性層14B、第一参照電極15A、および第二参照電極15Bの設けられていない主部12E上には、酸化膜7bが形成されている。酸化膜7bは、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bとの間において、シリコンチャンネル層12の主部12E上に設けられている。酸化膜7bは、シリコンチャンネル層12、第一トンネル層13A、第二トンネル層13B、第三トンネル層13C、第四トンネル層13D、第一強磁性層14A、第二強磁性層14B、第一参照電極15A、および第二参照電極15Bの保護膜として機能し、これらの層の劣化を抑制する。酸化膜7bは、例えば酸化珪素膜である。
図1に示すように、第一参照電極15A上及び酸化膜7b(シリコンチャンネル層12の傾斜した側面)上に、配線18Aが設けられている。同様に、第一強磁性層14A上及び酸化膜7b上に、配線18Bが設けられている。第二強磁性層14B上及び酸化膜7b上に、配線18Cが設けられている。第二参照電極15B上及び酸化膜7b上に、配線18Dが設けられている。配線18A〜18Dは、Cuなどの導電性材料からなる。酸化膜7b上に配線を設けることにより、この配線によってシリコンチャンネル層12内を伝導するスピンが吸収されることを抑制できる。また、酸化膜7b上に配線を設けることにより、配線からシリコンチャンネル層12へ電流が流れることを抑制でき、スピン注入効率を向上できる。また、配線18A〜18Dのそれぞれの端部には、測定用の電極パッドE1〜E4が設けられている。配線18A〜18Dの端部及び測定用の電極パッドE1〜E4は、酸化珪素膜11上に形成されている。電極パッドE1〜E4は、Auなどの導電性材料からなる。
図4は、第一トンネル層13A及び第二トンネル層13Bの断面図である。第一トンネル層13A及び第二トンネル層13Bの間には結晶格子緩和領域16が形成されている。第一トンネル層16Aは、シリコンチャンネル層12上に結晶成長しているか、あるいは、シリコンチャンネル層12上に部分的に結晶成長している。同様に、第三トンネル層13C及び第四トンネル層13Dには結晶格子緩和領域16が形成されている。第三トンネル層16Cは、シリコンチャンネル層12上に結晶成長しているか、あるいは、シリコンチャンネル層12上に部分的に結晶成長している。
第一トンネル層13Aは、アルミニウム、亜鉛、シリコン、チタン、あるいは、マグネシウムを含むスピネル構造のトンネル層が適している。これらの材料が結晶化した場合にはコヒーレントトンネル効果によって高いスピン分極率を持ったトンネル層として機能する。
元素表記が、元素記号の場合と仮名表記の場合とで混在しているようです。統一した方が好ましいと思います。
第二トンネル層13Bは、NaCl構造からなるトンネル層が適している。特に、酸化マグネシウムの場合には高いスピン分極率が得られることから、スピネル構造のトンネル層よりも低抵抗で、高出力になる。
以下、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの間に形成されている結晶格子緩和領域16について説明する。前述したように、結晶格子緩和領域16は、MBE法によって、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの界面で非結晶質の構造とする。または、スパッタ法とアニールを用いた方法によって、第一トンネル13Aと第二トンネル層13Bの界面で結晶化したまま混ざり合った構造として形成される。
結晶格子緩和領域16は、非結晶質構造であることが好ましい。この場合、お互いの結晶格子の違いに伴う格子歪みの影響を受けないため、高いスピン分極率が得られる。また、結晶格子緩和領域16は、MBE法で形成することが好ましい。MBE法であることによって非結晶質構造が形成されやすく、さらに、非結晶質構造の膜厚が薄い状態で、第二トンネル層13Bの結晶化が容易に形成できる。
また、結晶格子緩和領域16は、別々の構造の層が結晶化したまま混ざり合った構造でも良い。この場合、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bは結晶化しているため、スピンはコヒーレントトンネルがしやすい。しかしながら、結晶格子緩和領域においてスピンが強く緩和してしまう。また、結晶格子緩和領域が別々の構造の層が結晶化したまま混ざり合った構造の場合の形成方法は、スパッタ法とアニールを併用した作成方法が好ましい。これはアニールを実施することによって結晶化が進むため、結晶格子緩和領域まで結晶化が進むという利点がある。
第一強磁性層14Aの結晶構造は、体心立方格子構造(BCC)であることが好適である。第一強磁性層14Aの材料がCoおよびFeからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は前記群から選択される1以上の元素とホウ素(B)とを含む化合物である場合、第一強磁性層14Aは第二トンネル層13B上にエピタキシャル成長しやすくなる。
さらに、第一強磁性層14Aはホイスラー合金であることがより好ましい。ホイスラー合金(またはフルホイスラー合金とも言う)とは、XYZの化学組成をもつ金属間化合物の総称であり、ここで、Xは周期表上で、Co、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素である。YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属でありXと同じ元素種をとることもできる。ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金XYZはX・Y・Zの規則性から3種類の結晶構造に分けられる。結晶の周期性を利用したX線回折等の分析により、3元素の区別ができるX≠Y≠Zとなる最も規則性の高い構造がL21構造、次に規則性の高いX≠Y=Zとなる構造がB2構造、そして3元素の区別ができないX=Y=Zとなる構造がA2構造である。
以下、本実施形態に係るスピン伝導素子1のNL(非局所)測定法を用いる動作の一例について説明する。NL測定法では、図3に示すように、スピン伝導素子1は例えばY軸方向の外部磁場B1を検出する。第一強磁性層14Aの磁化方向G1(Y軸方向)を第二強磁性層14Bの磁化方向G2(Y軸方向)と同一方向に固定する。また、図1に示すように、電極パッドE1及びE3を交流電流源70に接続することにより、第一強磁性層14Aに検出用電流を流す。強磁性体である第一強磁性層14Aから、第二トンネル層13B及び第一トンネル層13Aを介して、非磁性体のシリコンチャンネル層12へ検出用電流が流れることにより、第一強磁性層14Aの磁化の向きG1に対応するスピンを有する電子がシリコンチャンネル層12へ注入される。注入されたスピンは第二強磁性層14B側へ拡散していく。このように、シリコンチャンネル層12に流れる電流及びスピン流が、主に所定の軸(X軸)方向に流れる構造とすることができる。そして、外部磁場B1によって変化される第一強磁性層14Aの磁化の向き、すなわち電子のスピンと、シリコンチャンネル層12の第二強磁性層14Bと接する部分の電子のスピンとの相互作用により、シリコンチャンネル層12と第二強磁性層14Bの間において出力が発生する。この出力は、電極パッドE2及びE4に接続した出力測定器80により検出する。
次に、本実施形態に係るスピン伝導素子1のNL−Hanle測定法を用いる動作の一例を説明する。NL−Hanle測定法ではHanle効果を利用する。Hanle効果とは、電流によって強磁性電極からチャンネルに注入されたスピンが他の強磁性電極に向かって拡散・伝導する際に、スピンの向きと垂直な方向から外部磁場が印加されたときに、ラーモア歳差を起こす現象である。NL−Hanle測定法では、図3に示すように、スピン伝導素子1は例えばZ軸方向の外部磁場B2を検出する。第一強磁性層14Aの磁化方向G1(Y軸方向)は、第二強磁性層14Bの磁化方向G2(Y軸方向)と同一方向に固定する。そして、第一強磁性層14Aおよび第一参照電極15Aを交流電流源70に接続することにより、第一強磁性層14Aにスピンの検出用電流を流すことができる。強磁性体である第一強磁性層14Aから第一トンネル層13A及び第二トンネル層13Bを介して、非磁性体のシリコンチャンネル層12へ電流が流れることにより、第一強磁性層14Aの磁化の向きG1に対応する向きのスピンを有する電子がシリコンチャンネル層12の第一凸部12Aへ注入される。第一凸部12Aに注入されたスピンは、主部12Eを通って第二強磁性層14B側へ拡散していく。このように、シリコンチャンネル層12に流れる電流およびスピン流が主にX軸方向に流れる構造となる。
ここで、シリコンチャンネル層12に外部磁場B2を印加しないとき、すなわち外部磁場がゼロのとき、シリコンチャンネル層12のうち第一強磁性層14Aと第二強磁性層14Bとの間の領域を拡散するスピンの向きは回転しない。よって、予め設定された第二強磁性層14Bの磁化の向きG2と同一方向のスピンが、シリコンチャンネル層12における第二強磁性層14B側の領域に拡散してくることとなる。従って、外部磁場がゼロのとき、出力(例えば抵抗出力や電圧出力)は極値となる。なお、電流や磁化の向きで極大値または極小値をとりうる。出力は、第二強磁性層14Bおよび第二参照電極15Bに接続した電圧測定器などの出力測定器80により評価できる。
対して、シリコンチャンネル層12に外部磁場B2を印加する場合を考える。外部磁場B2は、第一強磁性層14Aの磁化方向G1(図3の例ではY軸方向)および第二強磁性層14Bの磁化方向G2(図3の例ではY軸方向)に対して垂直な方向(図3の例ではZ軸方向)から印加する。外部磁場B2を印加すると、シリコンチャンネル層12内を拡散・伝導するスピンの向きは、外部磁場B2の軸方向(図3の例ではZ軸方向)を中心として回転する(いわゆるHanle効果)。シリコンチャンネル層12における第二強磁性層14B側の領域まで拡散してきたときのこのスピンの回転の向きと、予め設定された第二強磁性層14Bの磁化の向きG2、すなわちスピンの向きと、の相対角により、シリコンチャンネル層12と第二強磁性層14Bの界面の出力(例えば抵抗出力や電圧出力)が決定される。外部磁場B2を印加する場合、シリコンチャンネル層12内を拡散するスピンの向きは回転するので、第二強磁性層14Bの磁化の向きと向きが揃わない。よって、出力は、外部磁場がゼロのときに極大値をとる場合、外部磁場B2を印加するときには極大値以下となる。また、出力は、外部磁場がゼロのときに極小値をとる場合、外部磁場B2を印加するときには極小値以上となる。
従って、NL−Hanle測定法では、外部磁場がゼロのときに出力のピークが現われ、外部磁場B2を増加または減少させると出力が減少していく。つまり、外部磁場B2の有無によって出力が変化するので、本実施形態に係るスピン伝導素子1は、例えば磁気センサとして使用できる。
また、上述のスピン伝導素子1を複数備えた磁気検出装置とすることができる。例えば、上述のスピン伝導素子1を複数並列あるいは複数積層して、磁気検出装置とすることができる。この場合、各スピン伝導素子1の出力を合算することができる。このような磁気検出装置は、例えば癌細胞などを検知する生体センサなどに適用できる。
また、上述のスピン注入電極構造IEやスピン伝導素子1は、例えば磁気ヘッド、磁気抵抗メモリ(MRAM)、論理回路、核スピンメモリ、量子コンピュータなどの種々のスピン伝導デバイスに用いることができる。
また、スピン検出部(第二強磁性層14B、第三トンネル層13C、第四トンネル層13D、およびシリコンチャンネル層12の第二凸部12B)の構成は、上記実施形態に限定されず、例えば電流を流すことによってスピンを検出するものでもよい。
以下、実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。また、上記はシリコンチャンネル層を例に出したが、シリコンをゲルマニウムやガリウム砒素に置き換えた例でもほぼ同様な結果が得られ、材料もシリコンに限定されるものではない。同様に、シリコンとゲルマニウムの化合物であってもよい。
(実施例1)
まず、基板、絶縁膜、及びシリコン膜からなるSOI基板を準備した。基板にはシリコン基板、絶縁膜には200nmの酸化珪素層を用い、シリコン膜は100nmであった。シリコン膜に導電性を付与するリンイオンの打ち込みを行った。その後、900℃のアニールにより不純物を拡散させて、シリコン膜の電子濃度の調整を行った。この際、シリコン膜全体の平均電子濃度が5.0×1019cm−3となるようにした。
次いで、RCA洗浄を用いて、SOI基板の表面の付着物、有機物、及び自然酸化膜を除去した。その後、HF洗浄液を用いてSOI基板の表面を水素で終端させた。続いて、SOI基板を分子線エピタキシー(MBE)装置に搬入した。ベース真空度(積層処理を実際に施す前の装置内の真空度)を2.0×10−9Torr以下とした。SOI基板の加熱によるフラッシング処理を行った。これにより、シリコン膜表面の水素を離脱させ、清浄表面を形成した。
続いて、MBE法を用いて、シリコン膜上に第一トンネル層を形成した。まず、酸化アルミニウムを結晶化させて第一トンネル層13Aを形成し、次に酸化マグネシウムを結晶化させて第二トンネル層13Bを形成した。酸化マグネシウム形成初期にはRHEEDパターンが消失し、非結晶質の層が形成されたことを示している。その後、酸化マグネシウムの形成を続け、RHEEDパターンが得られることから形成終期には結晶化が進んでいることを確認した。その後、強磁性層として鉄膜、及び保護膜としてチタン膜をこの順に成膜し、積層体を得た。成膜時における真空度は5×10−8Torr以下であった。チタン膜は、強磁性層としての鉄膜の酸化による特性劣化を抑制するための保護膜である。
次いで、積層体の表面の洗浄を行った後、フォトリソグラフィ法およびリフトオフにより、Taのアライメントマークを基板に形成した。続いて、マスクを用いて、シリコン膜を異方性ウェットエッチングによりパターニングした。これにより、側面に傾斜部を有するシリコンチャンネル層12を得た。この際、シリコンチャンネル層12のサイズは、23μm×300μmであった。また、得られたシリコンチャンネル層12の側面を酸化させて、酸化珪素膜(酸化膜7a)を形成した。
次いで、フォトリソグラフィ法を用いて、チタン膜、鉄膜、及びシリコンチャンネル層12をパターニングすることにより、第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bを形成した。露出したシリコンチャンネル層12の一端側と他端側に、Al膜を形成し、第一参照電極15Aおよび第二参照電極15Bをそれぞれ形成した。
更に、イオンミリングおよびエッチングを用いて、シリコンチャンネル層12の表面のうち、第一強磁性層14A、第二強磁性層14B、第一参照電極15Aおよび第二参照電極15Bの形成されていない部分において、シリコンチャンネル層12の表面から20nmの深さまでシリコンチャンネル層12を掘り込んだ。これにより、シリコンチャンネル層12は、第一凸部12A、第二凸部12B、第三凸部12C、第四凸部12D、および主部12Eを含む構造となった。第一凸部12A、第二凸部12B、第三凸部12C、および第四凸部12Dは、この順にX軸方向に所定の間隔を置いて配列され、主部12Eから突出するように延在する部分である。第一凸部12A、第二凸部12B、第三凸部12C、および第四凸部12Dの膜厚H1は、10nmであった。このような構造により、シリコンチャンネル層12となるシリコン膜に、導電性を付与するイオンの打ち込みの際に形成された表面ダメージが除去された。
さらに、酸化膜7a、第一トンネル層13A、第二トンネル層13B、第三トンネル層13C、第四トンネル層13D、第一強磁性層14A、第二強磁性層14B、第一参照電極15Aおよび第二参照電極15Bの側面上と、シリコンチャンネル層12の上面のうち、第一強磁性層14A、第二強磁性層14B、第一参照電極15Aおよび第二参照電極15Bの形成されていない主部12E上とに、酸化珪素膜(酸化膜7b)を形成した。
次に、第一強磁性層14A、第二強磁性層14B、第一参照電極15Aおよび第二参照電極15B上に配線18A〜18Dをそれぞれ形成した。配線18A〜18Dとして、Ta(厚さ10nm)、Cu(厚さ50nm)、及びTa(厚さ10nm)の積層構造を用いた。さらに、各配線18A〜18Dの端部にそれぞれ電極パッドE1〜E4を形成した。電極パッドE1〜E4として、Cr(厚さ50nm)とAu(厚さ150nm)の積層構造を用いた。このようにして、図1〜4に示すスピン伝導素子1と同様の構成を有する実施例1のスピン伝導素子を作成した。
(NL測定の結果)
NL測定法では、実施例1で作製したスピン伝導素子において、第一強磁性層14Aの磁化方向G1および第二強磁性層14Bの磁化方向G2を外部磁場B1の磁化方向と同一方向(図3に示すY軸方向)に固定した。このスピン伝導素子に対して、第一強磁性層14Aおよび第二強磁性層14Bの磁化方向と平行な方向(Y軸方向)から外部磁場B1を印加した。交流電流源70からの検出用電流を第一強磁性層14Aへ流すことにより、第一強磁性層14Aからシリコンチャンネル層12へスピンを注入した。そして、外部磁場B1による磁化変化に基づく出力を出力測定器80により測定した。この際、測定はいずれも室温にて行った。
図5は、NL測定法における印加磁場と電圧出力の関係を示すグラフである。図5のF1は、外部磁場B1をマイナス側からプラス側に変化させた場合を示し、図5のF2は、外部磁場B1をプラス側からマイナス側に変化させた場合を示す。図5のF1及びF2に示されるように、スピン伝導素子では、約12.8μVの電圧出力であった。
(NL−Hanle測定の結果)
NL−Hanle測定法では、実施例1で作製したスピン伝導素子において、印加する外部磁場B2の方向(図3に示すZ軸方向)を第一強磁性層14Aの磁化方向(図3に示すY軸方向)G1および第二強磁性層14Bの磁化方向(図3に示すY軸方向)G2と垂直方向とした。図6は、NL−Hanle測定法における印加磁場と電圧出力の関係を示すグラフである。図6は、第一強磁性層14Aの磁化方向を第二強磁性層14Bの磁化方向と平行に固定した場合の測定結果である。
図6の測定結果からわかるように、外部磁場B2の印加によって、シリコンチャンネル層を伝導しているスピンが回転・減衰を起こしていることがわかる。したがって、図6の測定結果はスピン伝導によって生じた信号である。
(膜の解析)
トンネル層の評価は、断面TEM(Transmission Electorn Microscopy)、XRD(X Ray Diffraction)、および、EDX(Energy Dispersive X−Ray analysis)によって解析した。断面TEMの結果からトンネル層の厚さは2.2nmであった。また、トンネル層内に非結晶質の層が形成されており、非結晶質の結晶格子緩和領域が形成されていた。
また、断面TEMの写真からトンネル層部分を切り出して、フリーエ解析を行い、ブラッグ点を解析することで格子定数を見積もった。トンネル層がシリコンチャンネル層と接する部分、トンネル層が強磁性層と接する部分、シリコンチャンネル層に接する部分と強磁性層に接する部分の中間部分をサンプリングした。その結果、トンネル層がシリコンチャンネル層と接する部分の格子定数は、7.8Åであった。この格子定数はスピネル構造のγ型アルミニウム酸化物であることを示している。さらに、トンネル層が強磁性層と接する部分の格子定数は、4.2Åであった。この格子定数はNaCl構造のマグネシウムを主成分とする酸化物であることを示している。このことから、第一トンネル層13Aは、スピネル構造の酸化アルミニウムであり、第二トンネル層13Bは、NaCl構造の酸化マグネシウムであることがわかる。
さらに、EDXにてマグネシウム、アルミニウム、酸素、鉄、及び、シリコンの分析を行った。図7に示したように、アルミニウムのピークとマグネシウムのピークが別々の位置にあり、お互いのピークが重なる位置でそれぞれのピーク形状に肩をもった形状が生じていることから、結晶格子緩和領域ではアルミニウムとマグネシウムがそれぞれ含まれていることを示している。
(実施例2)
実施例1と同様に素子作成を行った。但し、第二トンネル層13Bとして、マグネシウムとアルミニウムからなる非磁性スピネル層を形成した。トンネル層の評価は断面TEM及びEDXにて実施した。断面TEMの結果からトンネル層の厚さは2.0nmであった。また、第一トンネル層13Aは、スピネル構造の酸化アルミニウムからなり、第二トンネル層13Bは、スピネル構造のマグネシウムとアルミニウムの酸化物であることを確認した。さらに、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの間にはアモルファス構造が混ざった結晶格子緩和領域16が形成されていることを確認した。
(実施例3)
実施例1と同様に素子作成を行った。但し、第二トンネル層13Bとして、亜鉛とアルミニウムからなる非磁性スピネル層を形成した。トンネル層の評価は断面TEM及びEDXにて実施した。断面TEMの結果からトンネル層の厚さは2.0nmであった。また、第一トンネル層13Aはスピネル構造の酸化アルミニウムからなり、第二トンネル層13Bはスピネル構造の亜鉛とアルミニウムの酸化物であることを確認した。さらに、第一トンネル層13Aと第二トンネル層13Bの間にはアモルファス構造が混ざった結晶格子緩和領域16が形成されていることを確認した。
(比較例1)
実施例1と同様に素子作成を行った。但し、第二トンネル層13Bはスパッタ法を用いて形成した。さらに、強磁性層にはコバルト、鉄、ホウ素からなる合金を用いた。積層膜を形成後、230℃で3時間のアニールを実施した。
トンネル層の評価は断面TEMにて実施した。断面TEMの結果からトンネル層の厚さは2.2nmであった。また、断面TEMから第二トンネル層13Bは、結晶化が確認されず、アモルファス構造であった。
(比較例2)
実施例1と同様に素子作成を行った。但し、第一トンネル層13Aは形成せず、酸化マグネシウムからなる第二トンネル層13BのみをMBE法にて形成した。
トンネル層の評価は断面TEMにて実施した。断面TEMの結果からトンネル層の厚さは2.0nmであった。フリーエ解析を行って、ブラッグ点を解析することで格子定数を見積もった。格子定数が4.2Åであった。この格子定数はNaCl構造の酸化マグネシウムであることがわかる。
(比較例3)
実施例1と同様に素子作成を行った。但し、第二トンネル層13Bは酸化タンタルとし、MBE法によって形成した。
トンネル層の評価は断面TEMにて実施した。断面TEMの結果からトンネル層の厚さは2.5nmであった。また、断面TEMから第一トンネル層13Aの結晶化は観測されたが、第二トンネル層13Bは非結晶質であった。
このようにして得られたスピン伝導素子について、NL測定法でスピン出力を測定した。
結果を表1に示す。
Figure 2014107497
IE…スピン注入電極構造、1…スピン伝導素子、10…基板、11…酸化珪素膜、12…シリコンチャンネル層、13A…第一トンネル層、13B…第二トンネル層、14A…第一強磁性層、14B…第二強磁性層、15A…第一参照電極、15B…第二参照電極、70…交流電流源、80…出力測定器。

Claims (8)

  1. 半導体チャンネル層と、
    前記半導体チャンネル層上に設けられた第一トンネル層と、
    前記第一トンネル層上に設けられた第二トンネル層と、
    前記第二トンネル層上に設けられた強磁性層と、を備え、
    前記第一トンネル層と前記第二トンネル層は格子定数が異なり、前記第一トンネル層と前記第二トンネル層は異なる結晶系であることを特徴とするスピン注入電極構造。
  2. 前記第一トンネル層と前記第二トンネル層の間に結晶格子緩衝領域が設けられた請求項1に記載のスピン注入電極構造。
  3. 前記結晶格子緩衝領域は、非結晶質である請求項1〜2のいずれか一項に記載のスピン注入電極構造。
  4. 前記結晶格子緩衝領域は、前記第一トンネル層と前記第二トンネル層の構成元素を一部、あるいは、全部を含む構成元素である請求項1〜3のいずれか一項に記載のスピン注入電極構造。
  5. 前記第一トンネル層及び前記第二トンネル層は、Al、Mg、Si、Zn、Tiのいずれかの元素を含む酸化物から構成される、請求項1〜4に記載のスピン注入電極構造。
  6. 前記第一トンネル層は、スピネル構造である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスピン注入電極構造。
  7. 前前記第二トンネル層は、NaCl構造である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスピン注入電極構造。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のスピン注入電極構造を有するスピン伝導素子。
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