JP2014103312A - 表示装置または入力装置に用いられる電極、および電極形成用スパッタリングターゲット - Google Patents
表示装置または入力装置に用いられる電極、および電極形成用スパッタリングターゲット Download PDFInfo
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Abstract
【課題】良好な電気抵抗率を有し、高精度な微細加工が容易であり、且つAg合金膜(単層)と同程度の高反射率を有する電極構造を提供すること。
【解決手段】本発明の表示装置または入力装置に用いられる電極は、Al合金からなる基板側に形成された第1層と、その上方に形成されたAg合金からなる第2層を含む積層膜を有し、前記電極の膜厚は100〜800nmであり、前記第2層の膜厚は60〜480nmであり、且つ前記電極の膜厚に占める前記第2層の膜厚比率は10〜70%で、前記電極の膜厚に占める前記第1層の膜厚比率は30%以上であり、前記Al合金は、合金元素として、希土類元素、Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種、Ti、Ta、W、およびNbよりなる群から選択される少なくとも一種、よりなる群から選択される少なくとも一種を所定量含有すること。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の表示装置または入力装置に用いられる電極は、Al合金からなる基板側に形成された第1層と、その上方に形成されたAg合金からなる第2層を含む積層膜を有し、前記電極の膜厚は100〜800nmであり、前記第2層の膜厚は60〜480nmであり、且つ前記電極の膜厚に占める前記第2層の膜厚比率は10〜70%で、前記電極の膜厚に占める前記第1層の膜厚比率は30%以上であり、前記Al合金は、合金元素として、希土類元素、Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種、Ti、Ta、W、およびNbよりなる群から選択される少なくとも一種、よりなる群から選択される少なくとも一種を所定量含有すること。
【選択図】図1
Description
本発明は、表示装置または入力装置の電極、および電極形成用スパッタリングターゲットに関し、詳細には液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示装置やタッチパッドなどの入力装置に用いられる電極、および当該電極の形成に用いられるスパッタリングターゲットに関するものである。
Ag合金は主に電極材料として用いられており、電極としては、液晶ディスプレイ(LDC)における薄膜トランジスタ用のゲート電極、ソース−ドレイン電極、有機EL(OELD)における薄膜トランジスタ用のゲート電極、ソース−ドレイン電極並びに反射電極、フィールドエミッションディスプレイ(FED)におけるカソードおよびゲート電極、蛍光真空管(VFD)におけるアノード電極、プラズマディスプレイ(PDP)におけるアドレス電極、無機ELにおける背面電極などが挙げられる。またAg合金は、上記液晶ディスプレイや有機ELなどの表示装置にタッチパネルなどの入力機能を備えた入力装置や、タッチパッドなどのように表示装置とは独立した入力装置においても同様に電極として用いられている。
以下では、表示装置として自発光型のフラットパネルディスプレイの1つである有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と記載する)ディスプレイを代表的に取り上げ、説明するがこれに限定する趣旨ではない。
有機ELディスプレイは、ガラス板などの基板上に有機EL素子をマトリックス状に配列して形成した全固体型のフラットパネルディスプレイである。有機ELディスプレイでは、陽極(アノード)と陰極(カソード)とがストライプ状に形成されており、それらが交差する部分が画素(有機EL素子)にあたる。この有機EL素子に外部から数Vの電圧を印加して電流を流すことで、有機分子が励起状態に押し上げられ、この励起状態の有機分子が元の基底状態(安定状態)へ戻るときに生じるエネルギーが光として放出される。この発光色は有機材料に固有のものである。
有機EL素子は、自発光型かつ電流駆動型の素子であり、その駆動方式にはパッシブ型とアクティブ型がある。パッシブ型は構造が簡単であるが、フルカラー化が困難である。一方アクティブ型は大型化が可能であり、フルカラー化にも適しているが、TFT基板が必要である。このTFT基板には低温多結晶Si(p−Si)またはアモルファスSi(a−Si)などのTFTが使われている。
このアクティブ型の有機ELディスプレイの場合、複数のTFTや配線が障害となって、有機EL画素に使用できる面積が小さくなる。駆動回路が複雑となりTFTが増えてくると、さらにその影響は大きくなる。そこで最近では、ガラス基板から光を取り出すのではなく、上面側から光を取り出す構造(トップエミッション)にすることで、開口率を改善する方法が注目されている。
このようなアクティブ型のトップエミッション有機ELディスプレイでは、有機層の下面(TFT基板側)の陽極(アノード電極)に、正孔注入に優れるITO(酸化インジウムスズ)やIZO(酸化インジウム亜鉛)に代表される透明酸化物導電膜が用いられる。また、発光層から放射された光を反射する目的を兼ねて、上記アノード電極は、上記透明酸化物導電膜と反射膜との積層構造とされる。該反射膜としては、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)や銀(Ag)などの反射性金属膜が用いられることが多い。例えば、既に量産されているトップエミッション方式の有機ELディスプレイにおける反射アノード電極には、ITOと純Ag膜またはAgを主体として含むAg合金膜との積層構造が採用されている。
純Ag膜またはAg合金膜は反射率が高いため有用である。しかしながら純AgまたはAg合金膜は、ウェットエッチング時のエッチングレートが速いため、エッチング特性に問題があることが指摘されている。例えばAg合金膜は、リン硝酢酸などのウェットエッチング液によりエッチングされる速度が早く、特に大面積基板においてエッチング精度よく微細加工することが難しい。特に等方性エッチングによるAg合金膜のサイドエッチが増加し、形成された側面の側面(サイドエッチ)が凹凸になるなどエッチング精度に問題があり、寸法精度よく微細加工することが困難であった。したがって、Ag合金膜は所望の寸法精度や形状で加工することが難しいため、発光不良や漏れ光、電気的接触不良などの原因となり、有機ELディスプレイなどの表示装置自体の信頼性低下を招いていた。
このような問題を解決する技術として、特許文献1には、Ag合金から構成される陽極の寸法及び形状を精度良く制御する技術として、陽極をAlで構成される密着層と、前記密着層の上方に設けられ、Ag合金で構成される反射層とを含み、前記反射層の端面及び前記密着層の端面は連続し、前記反射層の膜厚が50nm以上80nm以下である有機EL素子が提案されている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、良好な電気抵抗率を有し、Ag合金単層膜では困難であった高精度な微細加工が容易であり、且つAg合金膜(単層)と同程度の高反射率を有する表示装置または入力装置に用いられる電極を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明とは、表示装置または入力装置に用いられる電極であって、前記電極は、Al合金からなる基板側に形成された第1層と、その上方に形成されたAg合金からなる第2層を含む積層膜を有し、前記電極の膜厚は100〜800nmであり、前記第2層の膜厚は60〜480nmであり、且つ前記電極の膜厚に占める前記第2層の膜厚比率は10〜70%で、前記電極の膜厚に占める前記第1層の膜厚比率は30%以上であり、前記Al合金は、合金元素として、(1−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、(1−B)Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5〜1.5原子%、(1−C)Ti、Ta、W、およびNbよりなる群から選択される少なくとも一種を0.05〜0.7原子%、よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することに要旨を有する電極である。
また前記Ag合金はAgを98原子%以上99.98原子%以下含有することも好ましい実施態様である。
更に、本発明においては、前記Ag合金は、合金元素として(2−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、(2−B)Biおよび/またはCuを0.05〜1.0原子%、(2−C)Pd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種を0.1〜1.5原子%、(2−D)Znおよび/またはInを0.1〜1.5原子%、よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することも好ましい実施態様である。
上記希土類元素がNd、La、Gd、およびCeよりなる群から選択される少なくとも一種であることも好ましい。
上記電極は、ゲート電極、ソース−ドレイン電極、反射電極として好ましく用いられる。また本発明の電極を備えた有機EL素子、薄膜トランジスタ、入力装置が含まれる。
また本発明には、電極形成用Al合金スパッタリングターゲットも含まれており、該スパッタリングターゲットは、(1−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、(1−B)Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5〜1.5原子%、(1−C)Ti、Ta、W、およびNbよりなる群から選択される少なくとも一種を0.05〜0.7原子%、よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することに要旨を有する。
同様に本発明には、電極形成用Ag合金スパッタリングターゲットも含まれており、該スパッタリングターゲットは、(2−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、(2−B)Cuを0.05〜1.0原子%、および/またはBiを0.25〜5.0原子%、(2−C)Pd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種を0.1〜1.5原子%、(2−D)Znおよび/またはInを0.1〜1.5原子%、よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することに要旨を有する。
更に上記Al合金スパッタリングターゲット、およびAg合金スパッタリングターゲットが希土類元素を含む場合、希土類元素はNd、La、GdおよびCeよりなる群から選択される少なくとも一種であることが推奨される。
本発明の電極は、Al合金からなる第1層(基板側)と、Ag合金からなる第2層とを含む積層膜を有し、且つ膜厚、成分組成を適切に制御しているため、優れたエッチング特性と高い反射率を示すと共に良好な電気抵抗率を示す。その結果、本発明に係る電極は、従来のAg合金単層膜では困難であった高精度な微細加工が容易となり、また、Ag合金単層と同等の高反射率を奏することが可能となる。
また本発明によれば、上記本発明に係る表示装置または入力装置に用いられる電極の形成に好適なスパッタリングターゲットを提供することが可能となる。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、表示装置または入力装置に用いられる電極において、電極を、基板側から順に、Al合金からなる第1層と、その上方に形成されたAg合金からなる第2層(前記第1層と直接接していてもよいし、直接接していなくてもよい)とを含む積層膜とし、該電極、および該電極を構成する第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)の各膜厚、および第1層(Al合金)の成分組成を適切に制御すればよいことを見出し、本発明を完成した。
本発明に到達した経緯は以下の通りである。まず、従来のAg合金膜(単層)の問題点、すなわち、レジストをマスクとしたウェットエッチングによるパターニングに際してエッチング精度よく微細加工することが難しいという問題に対しては、Al膜とAg合金膜の積層構造とすることでエッチングレートを調整でき、解決できることが知られている(上記特許文献1)。これはAl膜のエッチングレートがAg合金膜のエッチングレートよりも遅いため、Al膜がエッチングレートコントロール機能を奏するからである。この技術によれば電極をAg合金膜とAl膜の積層構造とすることで、エッチングレートの調整が図られ、Ag合金膜の過剰エッチングを抑制することが可能となり、寸法を高精度で加工することができる。
しかしながら、近年、表示装置の電極には配線の微細化と共に電気抵抗率の抑制という相反する特性が求められている。更に有機ELディスプレイなどの反射電極は、配線の微細化や電気抵抗率の抑制に加えて高反射率も求められている。そのため特許文献1に開示されているような従来技術は、配線を高精度でエッチング加工することはできるものの、対象となる陽極の膜厚は100〜300nm程度と薄いため、配線を微細化した際の電気抵抗率の抑制が難しく、またAg合金膜も50〜80nmと薄いため安定した高反射率を確保することも困難であった。更にAl膜は上記エッチングレートコントロール機能だけでなく、下層(平坦化膜)との密着性向上に有用であるものの、十分な反射率を有さないため、高反射率を確保することが難しかった。
特許文献1には厚膜化した場合の高精度の微細加工や反射率については何ら開示しておらず、また後記するように特許文献1の構成では、反射率が低いなどの問題があった。
本発明者らが検討した結果、反射率を考慮しつつ厚膜化しても良好な電気抵抗率や微細加工性を確保するには純Al(或いはAl酸化物やAl金属間化合物)では困難であり、特定の合金元素を所定量含むAl合金膜を用いることが有用であることがわかった。そして本発明者らがAl合金膜(基板側)とAg合金膜の積層膜を有する反射電極を作製し、反射率、膜厚、および微細加工性(パターニングした際の寸法精度)の関係について検討した結果、後記実施例の表1から以下の知見を得た。
すなわち、Ag合金膜の膜厚が薄くなるとAg合金膜の反射率が低下し、Ag合金膜を透過してAl合金膜で反射する光が多くなることがわかった。Ag合金膜の透過率が上昇すると、Al合金膜で反射する光の割合が上昇するが、Al合金膜はAg合金膜に比べて反射率が低く、またAl合金膜で反射した光の一部はAg合金膜を透過せずに反射してしまうため、反射電極の反射率が低下することがわかった(No.1)。一方、Ag合金膜の膜厚が厚くなると、反射電極の反射率も良好になるが(90%以上)、高精度な微細加工が困難になることがわかった(No.12)。更にAl合金膜とAg合金膜の積層膜では、該積層膜の膜厚に対するAl合金膜、およびAg合金膜の膜厚比率が微細加工性に影響を及ぼすことがわかった。すなわち、Ag合金膜の膜厚比率が70%を超えるとエッチングされるAg合金膜が多くなるため、微細加工性が悪化した(No.5、9、12)。同様にAl合金膜の膜厚比率が30%を下回ると、エッチングレートコントロール機能を十分に発揮し得ず、微細加工性が悪化した(No.5、9、12)。この傾向はAg合金膜の膜厚にかかわらず、積層膜に対する比率が70%を超えた場合(或いはAl合金膜が30%を下回る場合)に生じた。これらの結果から、良好な微細加工性と反射率を確保するには、単にAg合金膜とAl合金膜を積層するだけでなく、所定の膜厚の範囲内において、積層膜の膜厚に対するAg合金膜やAl合金膜の膜厚の比率を適切に制御する必要があることがわかった。このように膜厚を適切に制御することで、良好な電気抵抗率を得るために電極を厚膜化(例えば800nm程度まで)しても、良好な反射率と微細加工性を確保できることを見出した。
次に本発明者らは電極を構成する第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)の成分組成が反射率、微細加工性、電気抵抗率に及ぼす影響について検討した。まず、第1層(Al合金膜)について、様々な合金元素を添加して上記特性との関係を調べたところ、表2に示すように希土類元素、Si、Cu、Ge、Ti、Ta、W、およびNbが微細加工性の向上に有効であることがわかった。またこれら合金元素を添加する場合、反射率や電気抵抗率との関係で好ましい含有量が存在した。すなわち、合金元素を含有しない純Al膜は(No.1)、電気抵抗率は良好であったが、反射率が低く、反射電極に要求される反射率は満足できなかった。また上記合金元素を添加した場合でも、含有量が多くなり過ぎるとかえって電気抵抗率が悪化すると共に、Al合金膜の反射率が低下して、反射電極の反射率も低くなることがわかった(No.5、9、12)。
また第2層(Ag合金膜)についても、第1層(Al合金膜)と同様に様々な合金元素を添加して上記特性との関係を調べたところ、表3に示すように、希土類元素、Bi、Cu、Pd、Pt、Au、Zn、およびInが微細加工性向上に有効であることがわかった。またこれらの合金元素には、反射率や電気抵抗率との関係では好ましい含有量が存在した。すなわち、合金元素を添加しない純Ag膜は(No.1;特許文献1の密着層を模擬した実施例)、反射率が低く、反射電極に要求される反射率を満足できなかった。また上記合金元素を添加した場合であっても、含有量が多くなりすぎると、電気抵抗率が低下すると共に、反射率も低下することがわかった(No.5、10、14、20、24)。
これら実験結果から、電気抵抗率は厚膜化することで良好になる傾向を示し、また特定の合金元素を添加することで微細加工性は向上することがわかった。一方で、第1層(Al合金膜)ないし第2層(Ag合金膜)に添加する合金元素、およびその含有量によっては電気抵抗率や反射率が悪化することがあるため、合金元素、およびその含有量は適切に制御する必要があることを実験の結果見出した。そして本発明ではこのような結果に基づいて後記するように合金元素、およびその含有量について規定した。
なお、本発明に係る電極の特性として、電気抵抗率がおおむね、7.0μΩcm以下であることが好ましく、より好ましくは5μΩcm以下である。
以下、本発明に係る表示装置または入力装置に用いられる電極について説明する。
(電極の構成)
表示装置または入力装置に用いられる電極は、基板側に形成されたAl合金からなる第1層と、その上方に形成されたAg合金からなる第2層を含む積層膜で構成されている。
(電極の構成)
表示装置または入力装置に用いられる電極は、基板側に形成されたAl合金からなる第1層と、その上方に形成されたAg合金からなる第2層を含む積層膜で構成されている。
本発明の上記積層膜は、基板側から順に、上記第1層(Al合金膜)および上記第2層(Ag合金膜)がこの順番で積層された二層構造とすることも好ましい実施態様である。
なお、本発明の積層膜は、上記第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)からなる積層膜も好ましい実施態様であるが、これに限定されず、任意の層(第3層)を含んでも良い趣旨である。したがって第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)の間に任意の第3層が形成されていてもよい。第3層としては第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)との密着性向上に寄与する密着性向上膜が例示される。
(電極の膜厚)
本発明において、電極(積層膜)の膜厚は、100〜800nmとする。膜厚が100nmを下回ると配線抵抗が増大すると共に、安定した反射率が得られなくなるなどの問題が生じる。一方、800nmを超えると微細加工性の悪化や上層膜(パシベーション膜など)のカバレッジが悪くなり断層などの問題が生じる。電極の好ましい膜厚は120nm以上、より好ましくは150nm以上であって、好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下である。本発明によれば上記のように電極を厚膜としても、良好な電気抵抗率、反射率、微細加工性を発揮することができる。
本発明において、電極(積層膜)の膜厚は、100〜800nmとする。膜厚が100nmを下回ると配線抵抗が増大すると共に、安定した反射率が得られなくなるなどの問題が生じる。一方、800nmを超えると微細加工性の悪化や上層膜(パシベーション膜など)のカバレッジが悪くなり断層などの問題が生じる。電極の好ましい膜厚は120nm以上、より好ましくは150nm以上であって、好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下である。本発明によれば上記のように電極を厚膜としても、良好な電気抵抗率、反射率、微細加工性を発揮することができる。
(第1層(Al合金膜)の膜厚)
第1層(Al合金膜)は、第2層(Ag合金膜)を透過した光を反射すると共に、ウェットエッチング時のエッチングレートのコントロール層としての役割を担う層である。このような効果を発揮するためには第1層(Al合金膜)の膜厚は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上である。一方、第1層(Al合金膜)の膜厚が厚くなりすぎると、上記電極の膜厚との関係で第2層(Ag合金膜)の膜厚が薄くなりすぎて、反射率が低下する。したがって第1層(Al合金膜)の膜厚の上限は、650nm以下とすることが好ましく、より好ましくは450nm以下である。
第1層(Al合金膜)は、第2層(Ag合金膜)を透過した光を反射すると共に、ウェットエッチング時のエッチングレートのコントロール層としての役割を担う層である。このような効果を発揮するためには第1層(Al合金膜)の膜厚は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上である。一方、第1層(Al合金膜)の膜厚が厚くなりすぎると、上記電極の膜厚との関係で第2層(Ag合金膜)の膜厚が薄くなりすぎて、反射率が低下する。したがって第1層(Al合金膜)の膜厚の上限は、650nm以下とすることが好ましく、より好ましくは450nm以下である。
(第2層(Ag合金膜)の膜厚)
第2層(Ag合金膜)は、特に反射電極における反射膜としての役割を担う。高い反射率を確保するためには、60nm以上とする必要があり、好ましくは90nm以上、より好ましくは100nm以上である。一方、第2層(Ag合金膜)の膜厚が厚すぎると、ウェットエッチング時のエッチング量が増加して所望の配線幅が得られず微細加工性が悪化するため、480nm以下とする必要があり、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下である。
第2層(Ag合金膜)は、特に反射電極における反射膜としての役割を担う。高い反射率を確保するためには、60nm以上とする必要があり、好ましくは90nm以上、より好ましくは100nm以上である。一方、第2層(Ag合金膜)の膜厚が厚すぎると、ウェットエッチング時のエッチング量が増加して所望の配線幅が得られず微細加工性が悪化するため、480nm以下とする必要があり、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下である。
なお、第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)の膜厚の関係は特に限定されず、第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)の膜厚は、同じであってもよいし、異なっていてもよく、また異なる場合は、第1層(Al合金膜)が第2層(Ag合金膜)よりも厚膜であっても薄膜であってもよい。より高精度な微細加工を達成するには、第1層(Al合金膜)の膜厚が第2層(Ag合金膜)の膜厚よりも厚膜(第1層>第2層)、或いは同じ膜厚(第1層=第2層)とすることが好ましく、第1層(Al合金膜)の膜厚は第2層(Ag合金膜)の膜厚以上となるように設定することが好ましい(第1層≧第2層)。
本発明に係る電極(積層膜)の膜厚(100〜800nm)に占める第2層(Ag合金膜)の膜厚比率は10〜70%である。第2層(Ag合金膜)の膜厚比率が低下すると所望の反射率が得られないため、第2層(Ag合金膜)の膜厚比率は10%以上とする必要があり、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。一方、第2層(Ag合金膜)の比率が高くなりすぎると、第1層(Al合金膜)による上記エッチングレートコントロール効果が十分に得られず、ウェットエッチング時のエッチング量が増えて高精度な微細加工が困難となる。したがって、第2層(Ag合金膜)の膜厚比率は70%以下とする必要があり、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
なお、上記第1層(Al合金膜)のエッチングレートコントロール効果を発現するためには、第1層(Al合金膜)の膜厚比率は30%以上とする必要があり、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。第1層(Al合金膜)の膜厚比率の上限は特に限定されず、上記第2層(Ag合金膜)の膜厚比率との関係で規定すればよい。
(第1層(Al合金膜)の成分組成)
本発明において、第1層(Al合金膜)の成分組成は、電極を厚膜化しつつ、良好な反射率、電気抵抗率、微細加工性を発揮するためには、以下の合金元素を所定の範囲で含有する必要がある。
本発明において、第1層(Al合金膜)の成分組成は、電極を厚膜化しつつ、良好な反射率、電気抵抗率、微細加工性を発揮するためには、以下の合金元素を所定の範囲で含有する必要がある。
Al合金に添加する合金元素は、[(1−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、(1−B)Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5〜1.5原子%、(1−C)Ti、Ta、WおよびNbよりなる群から選択される少なくとも一種を0.05〜0.7原子%]よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することである。これら元素は、単独で添加してもよいし、任意の二種以上を併用してもよい。すなわち、(1−A)群、(1−B)群、および(1−C)群のうち、いずれか一群を単独で用いてもよいし、任意の二群の組合せ、または全部(三群)を併用してもよい。また各群を構成する元素は、単独、または任意の二種以上を併用することができる。
なお、各群の含有量は、単独で含むときは単独の含有量であり、複数の元素を含むときは合計量である(第2層(Ag合金膜)についても同じ)。
上記効果との関係で、より好ましい実施態様としては、Al合金の好ましくは90原子%以上、より好ましくは95原子%以上がAlとなるように調整することが望ましい。
第1層を構成するAl合金は、好ましくは上記元素を含み、残部:Alおよび不可避的不純物である。
(1−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%
希土類元素は、Al合金の組織の粗大化を抑えて反射率の低下抑制に寄与する元素である。このような効果を発揮させるため希土類元素は0.05原子%以上、好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.15原子%以上である。組織の粗大化抑制の観点からは希土類元素の含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると電気抵抗率が悪化すると共に、反射率もかえって低下することがあるため、1.0原子%以下、好ましくは0.8原子%以下、より好ましくは0.6原子%以下である。
希土類元素は、Al合金の組織の粗大化を抑えて反射率の低下抑制に寄与する元素である。このような効果を発揮させるため希土類元素は0.05原子%以上、好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.15原子%以上である。組織の粗大化抑制の観点からは希土類元素の含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると電気抵抗率が悪化すると共に、反射率もかえって低下することがあるため、1.0原子%以下、好ましくは0.8原子%以下、より好ましくは0.6原子%以下である。
上記希土類元素とは、ランタノイド元素(周期表において、原子番号57のLaから原子番号71のLuまでの合計15元素)に、Sc(スカンジウム)とY(イットリウム)とを加えた元素群を意味する。好ましい希土類元素は、Nd、La、Gd、およびCeよりなる群から選択される少なくとも一種(より好ましい希土類元素は、Nd、La)である。
(1−B)Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5〜1.5原子%
Si、Cu、およびGeは、Al合金の組織の粗大化を抑えて反射率の低下抑制に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためSi、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種は、0.5原子%以上、好ましくは0.6原子%以上、より好ましくは0.7原子%以上である。上記粗大化抑制の観点からはSi、Cu、Geの含有量は高いほどよいが、含有量が多すぎると電気抵抗率が悪化すると共に、反射率も低下することがあるため、1.5原子%以下、好ましくは1.2原子%以下、より好ましくは1.0原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Cuである。
Si、Cu、およびGeは、Al合金の組織の粗大化を抑えて反射率の低下抑制に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためSi、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種は、0.5原子%以上、好ましくは0.6原子%以上、より好ましくは0.7原子%以上である。上記粗大化抑制の観点からはSi、Cu、Geの含有量は高いほどよいが、含有量が多すぎると電気抵抗率が悪化すると共に、反射率も低下することがあるため、1.5原子%以下、好ましくは1.2原子%以下、より好ましくは1.0原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Cuである。
(1−C)Ti、Ta、WおよびNbよりなる群から選択される少なくとも一種を0.05〜0.7原子%
Ti、Ta、WおよびNbは、上記希土類元素やSi、Cu、Geと同じく、組織粗大化を抑えて反射率低下抑制に寄与する元素である。このような効果を発揮させるため、Ti、Ta、WおよびNbよりなる群から選択される少なくとも一種は、0.05原子%以上、好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.15原子%以上である。上記粗大化抑制の観点からはTi、Ta、WおよびNbの含有量は高いほどよいが、含有量が多すぎると電気抵抗率が悪化すると共に、反射率も低下することがあるため、0.7原子%以下、好ましくは0.5原子%以下、より好ましくは0.4原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Ti、Taである。
Ti、Ta、WおよびNbは、上記希土類元素やSi、Cu、Geと同じく、組織粗大化を抑えて反射率低下抑制に寄与する元素である。このような効果を発揮させるため、Ti、Ta、WおよびNbよりなる群から選択される少なくとも一種は、0.05原子%以上、好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.15原子%以上である。上記粗大化抑制の観点からはTi、Ta、WおよびNbの含有量は高いほどよいが、含有量が多すぎると電気抵抗率が悪化すると共に、反射率も低下することがあるため、0.7原子%以下、好ましくは0.5原子%以下、より好ましくは0.4原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Ti、Taである。
上記(1−A)〜(1−C)群の合金元素を含有する好ましい第1層(Al合金膜)の成分組成としてはAl−0.2Nd、Al−0.2Nd−0.3Taが例示される。
(第2層(Ag合金膜)の成分組成)
本発明において、第2層(Ag合金膜)の成分組成は、特に限定されず、従来から用いられているAg合金膜の成分組成を採用することが可能であるが、電極を厚膜化しつつ、良好な反射率、電気抵抗率、微細加工性を発揮するためには、以下の合金元素を所定の範囲で含有することが好ましい。
本発明において、第2層(Ag合金膜)の成分組成は、特に限定されず、従来から用いられているAg合金膜の成分組成を採用することが可能であるが、電極を厚膜化しつつ、良好な反射率、電気抵抗率、微細加工性を発揮するためには、以下の合金元素を所定の範囲で含有することが好ましい。
合金元素として好ましくは、[(2−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、(2−B)Biおよび/またはCuを0.05〜1.0原子%、(2−C)Pd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種を0.1〜1.5原子%、(2−D)Znおよび/またはInを0.1〜1.5原子%]よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することである。これら元素は、上記第1層(Al合金膜)と同様、単独で添加してもよいし、任意の二種以上を併用してもよい。また各群の含有量は、上記したように単独の含有量、或いは合計量である。
上記効果との関係で、より好ましい実施態様としては、Ag合金の98原子%以上99.98原子%以下がAgとなるように調整することである。Ag含有量が少なくなりすぎると、Ag合金膜の反射率が低下することがある。
第2層を構成するAg合金は、好ましくは上記元素を含み、残部:Agおよび不可避的不純物である。
(2−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%
希土類元素は、熱履歴によるAg結晶粒の成長を抑えて反射率低下を抑制すると共に、ハロゲンイオンに起因する凝集抑制(耐ハロゲン性)に寄与する元素である。このような効果を発揮させるため希土類元素は好ましくは0.05原子%以上、より好ましくは0.1原子%以上、更に好ましくは0.15原子%以上である。上記効果向上の観点からは希土類元素の含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると反射率がかえって低下することがあるため、好ましくは1.0原子%以下、より好ましくは0.7原子%以下、更に好ましくは0.5原子%以下である。
希土類元素は、熱履歴によるAg結晶粒の成長を抑えて反射率低下を抑制すると共に、ハロゲンイオンに起因する凝集抑制(耐ハロゲン性)に寄与する元素である。このような効果を発揮させるため希土類元素は好ましくは0.05原子%以上、より好ましくは0.1原子%以上、更に好ましくは0.15原子%以上である。上記効果向上の観点からは希土類元素の含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると反射率がかえって低下することがあるため、好ましくは1.0原子%以下、より好ましくは0.7原子%以下、更に好ましくは0.5原子%以下である。
上記希土類元素とは、上記第1層と同じくランタノイド元素、Sc、Yを意味し、好ましい希土類元素は、Nd、La、Gd、およびCeよりなる群から選択される少なくとも一種(より好ましい希土類元素は、Nd、La)である。
(2−B)Biおよび/またはCuを0.05〜1.0原子%
Bi、Cuは、上記希土類元素と同じく、Ag結晶粒の成長抑制や耐ハロゲン性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためBiおよび/またはCuは好ましくは0.05原子%以上、より好ましくは0.07原子%以上、更に好ましくは0.1原子%以上である。上記効果向上の観点からはBi、Cuの含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると反射率がかえって低下することがある。Biおよび/またはCuは好ましくは1.0原子%以下、より好ましくは0.7原子%以下、更に好ましくは0.5原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Biである。
Bi、Cuは、上記希土類元素と同じく、Ag結晶粒の成長抑制や耐ハロゲン性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためBiおよび/またはCuは好ましくは0.05原子%以上、より好ましくは0.07原子%以上、更に好ましくは0.1原子%以上である。上記効果向上の観点からはBi、Cuの含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると反射率がかえって低下することがある。Biおよび/またはCuは好ましくは1.0原子%以下、より好ましくは0.7原子%以下、更に好ましくは0.5原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Biである。
(2−C)Pd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種を0.1〜1.5原子%
Pd、Pt、およびAuは、上記希土類元素やBi、Cuと同じく、Ag結晶粒の成長抑制や耐ハロゲン性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためPd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種は好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.15原子%以上、更に好ましくは0.2原子%以上である。上記効果向上の観点からはPd、Pt、およびAuの含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると反射率がかえって低下することがあるため、好ましくは1.5原子%以下、より好ましくは1.0原子%以下、更に好ましくは0.8原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Pd、Ptである。
Pd、Pt、およびAuは、上記希土類元素やBi、Cuと同じく、Ag結晶粒の成長抑制や耐ハロゲン性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためPd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種は好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.15原子%以上、更に好ましくは0.2原子%以上である。上記効果向上の観点からはPd、Pt、およびAuの含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると反射率がかえって低下することがあるため、好ましくは1.5原子%以下、より好ましくは1.0原子%以下、更に好ましくは0.8原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Pd、Ptである。
(2−D)Znおよび/またはInを0.1〜1.5原子%
Zn、Inは、上記元素と同じくAg結晶粒の成長抑制や耐ハロゲン性向上に寄与すると共に、耐酸化性、耐硫化性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためZnおよび/またはInは好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.3原子%以上、更に好ましくは0.5原子%以上である。上記効果向上の観点からはZn、Inの含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると反射率がかえって低下することがあるため、好ましくは1.5原子%以下、より好ましくは1.3原子%以下、更に好ましくは1.1原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Znである。
Zn、Inは、上記元素と同じくAg結晶粒の成長抑制や耐ハロゲン性向上に寄与すると共に、耐酸化性、耐硫化性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためZnおよび/またはInは好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.3原子%以上、更に好ましくは0.5原子%以上である。上記効果向上の観点からはZn、Inの含有量が高いほどよいが、含有量が多すぎると反射率がかえって低下することがあるため、好ましくは1.5原子%以下、より好ましくは1.3原子%以下、更に好ましくは1.1原子%以下である。これらの中でも好ましい元素は、Znである。
上記(2−A)〜(2−D)群の合金元素を含有する好ましい第2層(Ag合金膜)の成分組成としてはAg−0.3Bi−0.5Ndが例示される。
(第1層(Al合金膜)の形成方法)
本発明に係る電極を構成する積層膜に含まれる第1層(Al合金膜)の形成方法として、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などが挙げられる。本発明では、細線化や膜内の合金成分の均一化を図ることができ、かつ添加元素量を容易にコントロールできる等の観点から、第1層(Al合金膜)をスパッタリング法にてスパッタリングターゲットを用いて形成することが望ましい。
本発明に係る電極を構成する積層膜に含まれる第1層(Al合金膜)の形成方法として、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などが挙げられる。本発明では、細線化や膜内の合金成分の均一化を図ることができ、かつ添加元素量を容易にコントロールできる等の観点から、第1層(Al合金膜)をスパッタリング法にてスパッタリングターゲットを用いて形成することが望ましい。
スパッタリング法で上記第1層(Al合金膜)を形成する場合、上記第1層(Al合金膜)を構成する(1−A)〜(1−C)に対応した元素を所定量含むAl合金スパッタリングターゲットの使用が有用である。具体的には[(1−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、(1−B)Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5〜1.5原子%、(1−C)Ti、Ta、W、およびNbよりなる群から選択される少なくとも一種を0.05〜0.7原子%]よりなる群から選択される少なくとも一種を含有するAl合金スパッタリングターゲットが望ましい。
基本的には、これらの元素を含み、所望のAl合金膜と同一組成のAg合金スパッタリングターゲットを用いれば、組成ズレの恐れがなく、所望とする成分組成のAl合金膜を形成することができる。
もっともスパッタリングターゲットは一つのスパッタリングターゲットにAl合金膜の成分組成に対応した元素すべて含有している必要がなく、元素を所定量含むスパッタリングターゲットを同時スパッタ(例えば、チップオンによるコスパッタリング)することも、所望とする成分組成のAl合金膜の形成に有用である。
上記Al合金スパッタリングターゲットの作製方法として、真空溶解法や粉末焼結法が挙げられるが、特に真空溶解法での作製が、ターゲット面内の組成や組織の均一性を確保できる観点から望ましい。
スパッタリング法での成膜条件は特に限定されないが、例えば以下のような条件を採用することが好ましい。
・基板温度:室温〜150℃
・雰囲気ガス:Ar、窒素、などの不活性ガス
・成膜時の(Ar)ガス圧:1.0〜5.0mTorr
・スパッタパワー:100〜2000W
・到達真空度:1×10−5Torr以下
・基板温度:室温〜150℃
・雰囲気ガス:Ar、窒素、などの不活性ガス
・成膜時の(Ar)ガス圧:1.0〜5.0mTorr
・スパッタパワー:100〜2000W
・到達真空度:1×10−5Torr以下
(第2層(Ag合金膜)の形成方法)
反射電極を構成する第2層(Ag合金膜)の形成方法も上記第1層(Al合金膜)と同様各種成膜方法を採用できるが、第1層(Al合金膜)と同様の理由により、第2層(Ag合金膜)はスパッタリング法にてスパッタリングターゲットを用いて形成することが望ましい。
反射電極を構成する第2層(Ag合金膜)の形成方法も上記第1層(Al合金膜)と同様各種成膜方法を採用できるが、第1層(Al合金膜)と同様の理由により、第2層(Ag合金膜)はスパッタリング法にてスパッタリングターゲットを用いて形成することが望ましい。
スパッタリング法で上記第2層(Ag合金膜)を形成する場合、上記(2−A)〜(2−D)の任意の元素を所定量含むAg合金スパッタリングターゲットの使用が有用である。
具体的には[(2−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、(2−B)Cuを0.05〜1.0原子%、および/またはBiを0.25〜5.0原子%(2−C)Pd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種を0.1〜1.5原子%、(2−D)Znおよび/またはInを0.1〜1.5原子%]よりなる群から選択される少なくとも一種を含有するAg合金スパッタリングターゲットを用いればよい。
基本的には、これらの元素を含み、所望の第2層(Ag合金膜)と同一組成のAg合金スパッタリングターゲットを用いれば、組成ズレの恐れがなく、所望とする成分組成のAg合金膜を形成することができる。但し、Biは成膜過程で飛散し易く、また膜表面近傍に濃化し易い元素であるため、Ag合金膜中のBi量に対しておおむね5倍程度のBiをスパッタリングターゲット中に含有させることが好ましく、上記膜中のBi含有量に対応してBiは好ましくは0.25原子%以上、より好ましくは0.35原子%以上、更に好ましくは0.5原子%以上であって、好ましくは5.0原子%以下、より好ましくは3.5原子%以下、更に好ましくは2.5原子%以下である。
もっともスパッタリングターゲットは一つのスパッタリングターゲットにAg合金膜の成分組成に対応した元素すべて含有している必要がなく、元素を所定量含むスパッタリングターゲットを同時スパッタ(例えば、チップオンによるコスパッタリング)することも、所望とする成分組成のAg合金膜の形成に有用である。
Ag合金スパッタリングターゲットの作製方法としては上記各種方法が挙げられるが、上記Al合金スパッタリングターゲットと同様、真空溶解法が望ましい。
第2層(Ag合金膜)は、第1層(Al合金膜)をスパッタリング法で形成後、続けてスパッタリング法で形成してもよい。
スパッタリング法での成膜条件は特に限定されないが、例えば以下のような条件を採用することが好ましい。
・基板温度:室温〜150℃
・雰囲気ガス:Ar、窒素などの不活性ガス
・成膜時の(Ar)ガス圧:1〜5mTorr
・スパッタパワー:100〜2000W
・到達真空度:1×10−5Torr以下
・基板温度:室温〜150℃
・雰囲気ガス:Ar、窒素などの不活性ガス
・成膜時の(Ar)ガス圧:1〜5mTorr
・スパッタパワー:100〜2000W
・到達真空度:1×10−5Torr以下
なお、上記Al合金スパッタリングターゲット、および上記Ag合金スパッタリングターゲットの形状は、スパッタリング装置の形状や構造に応じて任意の形状(角型プレート状、円形プレート状、ドーナツプレート状など)に加工したものが含まれる。
以上、本発明の特徴部分である積層膜を構成する第1層(Al合金膜)および第2層(Ag合金膜)について説明した。以下では、上記第1層(Al合金膜)および第2層(Ag合金膜)を含む積層膜を用いた表示装置や入力装置に用いられる電極を、有機ELの反射電極として用いた有機EL素子の構造について説明する。
但し、本発明は上記構造に限定する趣旨ではなく、反射電極以外にも例えばゲート電極、ソース−ドレイン電極(ソース電極、ドレイン電極)などの電極にも適用される。
図1に示す有機ELディスプレイを例に用いて、本発明の第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)を含む積層膜で構成された電極を反射電極として含む有機EL素子を説明する。下記では、本発明の有機EL素子を、有機ELディスプレイに適用する場合について説明するが、本発明の有機EL素子は、その適用が有機ELディスプレイに限定されるものではなく、有機EL照明等にも適用することができる。また図1は、有機ELディスプレイの一例を示すものである。本発明は、反射電極が前記第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)を含む積層膜で構成され、かつ該反射電極、第1層、第2層の各膜厚、および第1層の構成を適切に制御する点に特徴があり、それ以外の構成は図1に限定されず、有機ELディスプレイの分野で通常用いられる公知の構成を採用することができる。更に、本発明にかかる反射電極は、上記反射アノード電極に限定されず、その他の反射電極にも使用しうる。
まず図1に示す通り、基板1上にTFT2およびパシベーション膜3が形成され、さらにその上に平坦化層4が形成される。TFT2上にはコンタクトホール5が形成され、コンタクトホール5を介してTFT2のソース−ドレイン電極(図示せず)と、本発明に係る反射電極を構成する第1層(Al合金膜)6とは電気的に接続されている。
更に第1層(Al合金膜)6の直上に第2層(Ag合金膜)7が形成される。上記第1層(Al合金膜)6と第2層(Ag合金膜)7の形成は、上述した方法で行うことができる。
次いで、第2層(Ag合金膜)7の上に、有機層8が形成される。上記有機層8には、有機発光層の他に例えば正孔輸送層や電子輸送層などが含まれ得る。さらに有機層8の上にカソード電極9が形成される。この図1の場合、カソード電極9を構成する材料については特に問わず、従来より用いられているものを使用することができる。
上記有機ELディスプレイでは、有機層8中の有機発光層から放射された光が本発明の反射アノード電極(特には第2層(Ag合金膜)7)で効率よく反射されるので、優れた発光輝度を実現できる。なお反射電極(第1層(Al合金膜)6+第2層(Ag合金膜)7)の反射率は高いほどよく、一般的には90%以上、好ましくは92%以上の反射率が求められる。
また、反射アノード電極は有機層8への正孔注入特性が高いほど好ましい。
以上、本発明の電極を備えた反射電極、および該電極を備えた有機EL素子について説明した。
上記説明した本発明の表示装置の電極は、各種表示装置(入力装置を含む)の電極として用いることができる。例えば図2に例示される液晶ディスプレイ(LDC)における薄膜トランジスタ用のゲート電極、ソース−ドレイン電極(ソース電極、ドレイン電極)、例えば図3に例示される有機ELディスプレイ(OELD)における薄膜トランジスタ用のゲート電極、ソース−ドレイン電極、例えば図4に例示されるフィールドエミッションディスプレイ(FED)におけるカソード電極、およびゲート電極、例えば図5に例示される蛍光真空管(VFD)におけるアノード電極、例えば図6に例示されるプラズマディスプレイ(PDP)におけるアドレス電極、例えば図7に例示される無機ELディスプレイにおける背面電極などが挙げられる。
また本発明の電極は入力装置にも適用できる。入力装置としてはタッチパネルなどのように上記表示装置に入力手段を備えた入力装置やタッチパッドのような表示装置を有さない入力装置も含まれる。具体的には上記各種表示装置と位置入力手段を組み合わせ、画面上の表示を押すことで機器を操作する入力装置や、位置入力手段上の入力位置に対応して別途設置されている表示装置を操作する入力装置の電極(例えば上記した各種電極)にも本発明の電極を用いることができる。なお位置入力手段としてはマトリックス・スイッチ、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式など各種公知の動作原理を採用できる。
これら表示装置または入力装置の電極に本発明に係る電極を用いた場合に、上記所定の効果が得られることは実験により確認済である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(成膜)
ガラス基板(無アルカリガラス、板厚0.7mm、直径4インチ)上に、表1〜3に示す成分組成の第1層(Al合金膜:残部はAlおよび不可避的不純物)と同一成分組成を有するスパッタリングターゲット(直径4インチの円盤型)を用いてDCマグネトロンスパッタリング装置を用い、下記スパッタリング条件で成膜した。続いて第1層の直上に、表1〜3に示す成分組成の第2層(Ag合金膜:残部はAgおよび不可避的不純物)と同一成分を有するスパッタリングターゲット(直径4インチの円盤形)を用いて下記スパッタリング条件で成膜して試料を作製した。なお、表2のNo.1の第1層は純Alスパッタリングターゲット、表3のNo.1の第2層は純Agスパッタリングターゲットを用いた。またターゲット中のBi含有量は、第2層(Ag合金膜)中のBi含有量に対して5倍となるように添加した(例えば表2のNo.1ではAg−0.5原子%Bi−1.0原子%Znのスパッタリングターゲットを用いて、Ag−0.1原子%Bi−1.0原子%Znの第2層(Ag合金膜)を形成した)。
ガラス基板(無アルカリガラス、板厚0.7mm、直径4インチ)上に、表1〜3に示す成分組成の第1層(Al合金膜:残部はAlおよび不可避的不純物)と同一成分組成を有するスパッタリングターゲット(直径4インチの円盤型)を用いてDCマグネトロンスパッタリング装置を用い、下記スパッタリング条件で成膜した。続いて第1層の直上に、表1〜3に示す成分組成の第2層(Ag合金膜:残部はAgおよび不可避的不純物)と同一成分を有するスパッタリングターゲット(直径4インチの円盤形)を用いて下記スパッタリング条件で成膜して試料を作製した。なお、表2のNo.1の第1層は純Alスパッタリングターゲット、表3のNo.1の第2層は純Agスパッタリングターゲットを用いた。またターゲット中のBi含有量は、第2層(Ag合金膜)中のBi含有量に対して5倍となるように添加した(例えば表2のNo.1ではAg−0.5原子%Bi−1.0原子%Znのスパッタリングターゲットを用いて、Ag−0.1原子%Bi−1.0原子%Znの第2層(Ag合金膜)を形成した)。
成膜後の第1層(Al合金膜)、および第2層(Ag合金膜)の組成は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)質量分析法で確認した(表中、「第1層」と「第2層」中の含有率はいずれも原子%である)。
(Al合金スパッタリング条件)
・基板温度:室温
・Arガス流量:30sccm
・Arガス圧:2mTorr
・スパッタパワー:260W
・到達真空度:3×10-6Torr
(Ag合金スパッタリング条件)
・基板温度:室温
・Arガス流量:30sccm
・Arガス圧:2mTorr
・スパッタパワー:130W
・到達真空度:3×10-6Torr
・基板温度:室温
・Arガス流量:30sccm
・Arガス圧:2mTorr
・スパッタパワー:260W
・到達真空度:3×10-6Torr
(Ag合金スパッタリング条件)
・基板温度:室温
・Arガス流量:30sccm
・Arガス圧:2mTorr
・スパッタパワー:130W
・到達真空度:3×10-6Torr
(膜厚の測定方法)
上記第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)の各膜厚を触針式段差計(KLA−Tencor製、Alpha−step)で測定した。膜厚の測定は、薄膜の中心部から半径方向に向って5mm間隔ごとに合計3点の膜厚を測定し、その平均値を「薄膜の膜厚」(nm)とした。また第1層(Al合金膜)の膜厚と第2層(Ag合金膜)の膜厚を合計して積層膜の膜厚とした(表中、「合計」)。
上記第1層(Al合金膜)と第2層(Ag合金膜)の各膜厚を触針式段差計(KLA−Tencor製、Alpha−step)で測定した。膜厚の測定は、薄膜の中心部から半径方向に向って5mm間隔ごとに合計3点の膜厚を測定し、その平均値を「薄膜の膜厚」(nm)とした。また第1層(Al合金膜)の膜厚と第2層(Ag合金膜)の膜厚を合計して積層膜の膜厚とした(表中、「合計」)。
(加工性評価)
上記作製した試料(積層膜)に10μm幅のラインアンドスペースのレジストパターンを形成して、エッチング加工性を評価した。詳細には、40℃に加温して混酸エッチング液(リン酸:硝酸:酢酸:水=50:0.2:30:19.8)に積層膜を浸漬し、エッチング完了時間+20秒(オーバーエッチング時間)エッチングを行なった。エッチング後の配線パターン寸法を光学顕微鏡(倍率1000倍)で観察し、配線寸法を測定してサイドエッチングについて評価した。本実施例では、以下の基準で評価して、◎または○を合格(エッチング性良好)と判定した(表中、「微細加工性」)。
◎:9μm以上
○:8μm以上、9μm未満
×:8μm未満
上記作製した試料(積層膜)に10μm幅のラインアンドスペースのレジストパターンを形成して、エッチング加工性を評価した。詳細には、40℃に加温して混酸エッチング液(リン酸:硝酸:酢酸:水=50:0.2:30:19.8)に積層膜を浸漬し、エッチング完了時間+20秒(オーバーエッチング時間)エッチングを行なった。エッチング後の配線パターン寸法を光学顕微鏡(倍率1000倍)で観察し、配線寸法を測定してサイドエッチングについて評価した。本実施例では、以下の基準で評価して、◎または○を合格(エッチング性良好)と判定した(表中、「微細加工性」)。
◎:9μm以上
○:8μm以上、9μm未満
×:8μm未満
(反射率の測定)
JIS R 3106に基づき、D65光源での波長380〜780nmの光によって可視光反射率を分光光度計(日本分光株式会社製:可視・紫外分光光度計「V−570」)を用いて測定した。具体的には、基準ミラーの反射光強度に対して、上記作製した試料の反射光強度(測定値)を「反射率」(=[試料の反射光強度/基準ミラーの反射光強度]×100%)とした。そして本実施例では、λ=450nmにおける上記試料の反射率を以下の基準で評価し、○を合格と判定した。
○:90%以上
×:90%未満
JIS R 3106に基づき、D65光源での波長380〜780nmの光によって可視光反射率を分光光度計(日本分光株式会社製:可視・紫外分光光度計「V−570」)を用いて測定した。具体的には、基準ミラーの反射光強度に対して、上記作製した試料の反射光強度(測定値)を「反射率」(=[試料の反射光強度/基準ミラーの反射光強度]×100%)とした。そして本実施例では、λ=450nmにおける上記試料の反射率を以下の基準で評価し、○を合格と判定した。
○:90%以上
×:90%未満
(電気抵抗率)
積層膜に10μm幅のラインアンドスペースパターンに形成した試料を用いて電気抵抗率を測定した。詳細には、一般に用いられる四端子法で電気抵抗率を測定した。そして本実施例では、以下の基準で評価して、○を合格と判定した。
○:7μΩcm以下
×:7μΩcm超
積層膜に10μm幅のラインアンドスペースパターンに形成した試料を用いて電気抵抗率を測定した。詳細には、一般に用いられる四端子法で電気抵抗率を測定した。そして本実施例では、以下の基準で評価して、○を合格と判定した。
○:7μΩcm以下
×:7μΩcm超
上記試験結果を表1〜3に示す。
表1は第1層(Al合金膜)、及び第2層(Ag合金膜)の各成分組成を同一にして膜厚のみを変化させて反射率と微細加工性に及ぼす影響を調べた結果である。表1より次のことがわかる。
No.1とNo.2は合計膜厚がいずれも100nmで同じであるが、第2層(Ag合金膜)の膜厚が薄いNo.1(50nm)は反射率が低下した。このことから第2層(Ag合金膜)が少なくとも60nm以上であれば、所望の反射率が得られることがわかる。
なお、反射率のみに着目すると、第2層(Ag合金膜)の膜厚が60nm以上であれば(No.2〜12)反射率は良好であった。
No.12は本発明で規定する合計膜厚の範囲内であるが(800nm以下)、第2層(Ag合金膜)の膜厚の上限(480nm以下)を超えると共に、第2層(Ag合金膜)の膜厚比率が高い例である。この例では第1層(Al合金膜)の膜厚比率が30%を下回ったため(第2層(Ag合金膜)の比率が高い)、Al合金膜でエッチングレートを適切にコントロールできなかったため、微細加工性が悪化した。
またNo.5、およびNo.9は、本発明で規定する合計膜厚、および第2層(Ag合金膜)の膜厚は満足するが、第2層(Ag合金膜)の膜厚比率が高い例である。これら例もNo.12と同じく第1層(Al合金膜)の膜厚比率が30%を下回ったため(第2層(Ag合金膜)の比率が高い)、エッチングレートを適切にコントロールできず、微細加工性が悪化した。
なお、微細加工性については、第1層(Al合金)の膜厚が第2層(Ag合金膜)の膜厚よりも厚く形成されている場合(第1層膜厚>第2層膜厚)、より一層高精度なエッチング加工(「微細加工性」が◎)ができた(No.3、4、7、8)。
上記結果から、反射率と微細加工性を満足するには、第2層(Ag合金膜)の膜厚を制御するだけでなく(No.1、No.12)、積層膜の合計膜厚や、Ag合金膜厚比率を所定の範囲に制御する必要があることがわかる(No.5、9、12)。
表2は第2層(Ag合金膜)の組成、膜厚、Ag合金膜厚比率を一定にし、第1層(Al合金)の成分組成を適宜変更して反射率、微細加工性、電気抵抗率に及ぼす影響を調べた結果である。表2より次のことがわかる。
No.1は合元素分を含まない純Alを第1層とした例である。この例は電気抵抗率、微細加工性共に良好であったが反射率が低かった。一方、合金元素を少なくとも本発明で規定する下限値程度含有していれば(No.2、7、10、13)、所定の反射率が得られた。したがって第1層(Al合金膜)には合金元素を含有させることが有効であることがわかる。
No.2〜5は第1層(Al合金膜)の合金元素の含有量を変化させた例である。これらのうち、合金元素の含有量が所定の範囲内であれば、反射率、微細加工性、電気抵抗率ともに良好な結果が得られるが(No.2〜4)、合金元素の含有量が多くなりすぎると反射率と電気抵抗率が悪化した(No.5)。同様の結果は、No.7〜9、10〜12においても示されており、第1層(Al合金膜)に含まれる合金元素の含有量は多くなり過ぎると、反射率と電気抵抗率に悪影響を及ぼすことがわかる。
なお、第1層(Al合金膜)の合金元素は所定の範囲内であれば複数の合金元素を組み合わせても(No.18)、上記所望の効果を奏することができることがわかる。
表3は第1層(Al合金膜)の組成、膜厚、Ag合金膜厚比率を一定にし、Ag合金の成分組成を適宜変更して反射率、微細加工性、電気抵抗率に及ぼす影響を調べた結果である。表3より次のことがわかる。
No.1は合金元素分を含まない純Agを第2層とした例である。この例は電気抵抗率、微細加工性共に良好であったが反射率が低かった。一方、合金元素を少なくとも本発明で規定する下限値程度含有していれば(No.2、7、11、17など)、所定の反射率が得られた。したがって第2層(Ag合金膜)には合金元素を含有させることが有効であることがわかる。
No.2〜5は第2層(Ag合金膜)の合金元素(Nd)の含有量を変化させた例である。これらのうち、合金元素の含有量が所定の範囲内であれば、反射率、微細加工性、電気抵抗率ともに良好な結果が得られるが(No.2〜4)、合金元素の含有量が多くなりすぎると反射率と電気抵抗率が悪化した(No.5)。同様の結果は、No.7〜10、11〜14、17〜20、21〜24においても示されており、第2層(Ag合金膜)に含まれる合金元素の含有量は多くなり過ぎると、反射率と電気抵抗率に悪影響を及ぼすことがわかる。
なお、第2層(Ag合金膜)の合金元素は所定の範囲内であれば複数の合金元素を組み合わせても(No.25〜32)、上記所望の効果を奏することができる。
1 基板
2 TFT
3 パッシベーション膜
4 平坦化層
5 コンタクトホール
6 第1層(Al合金膜)
7 第2層(Ag合金膜)
8 有機層
9 カソード電極
2 TFT
3 パッシベーション膜
4 平坦化層
5 コンタクトホール
6 第1層(Al合金膜)
7 第2層(Ag合金膜)
8 有機層
9 カソード電極
Claims (14)
- 表示装置または入力装置に用いられる電極であって、
前記電極は、Al合金からなる基板側に形成された第1層と、その上方に形成されたAg合金からなる第2層を含む積層膜を有し、
前記電極の膜厚は100〜800nmであり、前記第2層の膜厚は60〜480nmであり、且つ前記電極の膜厚に占める前記第2層の膜厚比率は10〜70%で、前記電極の膜厚に占める前記第1層の膜厚比率は30%以上であり、
前記Al合金は、合金元素として、
(1−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、
(1−B)Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5〜1.5原子%、
(1−C)Ti、Ta、W、およびNbよりなる群から選択される少なくとも一種を0.05〜0.7原子%、
よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする電極。 - 前記Ag合金はAgを98原子%以上99.98原子%以下含有するものである請求項1に記載の電極。
- 前記Ag合金は、合金元素として、
(2−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、
(2−B)Biおよび/またはCuを0.05〜1.0原子%、
(2−C)Pd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種を0.1〜1.5原子%、
(2−D)Znおよび/またはInを0.1〜1.5原子%、
よりなる群から選択される少なくとも一種を含有するものである請求項1または2に記載の電極。 - 前記(1−A)または(2−A)の希土類元素がNd、La、Gd、およびCeよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の電極。
- 前記電極はゲート電極である請求項1〜4のいずれかに記載の電極。
- 前記電極はソース−ドレイン電極である請求項1〜4のいずれかに記載の電極。
- 前記電極は反射電極である請求項1〜4のいずれかに記載の電極。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電極を備えた有機EL素子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電極を備えた薄膜トランジスタ。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電極を備えた入力装置。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の電極の形成に用いるAl合金スパッタリングターゲットであって、
(1−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、
(1−B)Si、Cu、およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5〜1.5原子%、
(1−C)Ti、Ta、W、およびNbよりなる群から選択される少なくとも一種を0.05〜0.7原子%、
よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする電極形成用Al合金スパッタリングターゲット。 - 前記希土類元素は、Nd、La、GdおよびCeよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項11に記載のスパッタリングターゲット。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の電極の形成に用いるAg合金スパッタリングターゲットであって、
(2−A)希土類元素を0.05〜1.0原子%、
(2−B)Cuを0.05〜1.0原子%、および/またはBiを0.25〜5.0原子%、
(2−C)Pd、PtおよびAuよりなる群から選択される少なくとも一種を0.1〜1.5原子%、
(2−D)Znおよび/またはInを0.1〜1.5原子%、
よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする電極形成用Ag合金スパッタリングターゲット。 - 前記希土類元素は、Nd、La、GdおよびCeよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
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JP2012255360A JP2014103312A (ja) | 2012-11-21 | 2012-11-21 | 表示装置または入力装置に用いられる電極、および電極形成用スパッタリングターゲット |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016118609A (ja) * | 2014-12-19 | 2016-06-30 | ティアック株式会社 | 無線lan機能を備えたポータブル録音再生装置及び録音再生システム |
JP2018518847A (ja) * | 2015-06-23 | 2018-07-12 | ノヴァレッド ゲーエムベーハー | 極性マトリクス、金属ドーパントおよび銀製カソードを含んでいる、有機発光デバイス |
-
2012
- 2012-11-21 JP JP2012255360A patent/JP2014103312A/ja active Pending
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