JP2014102237A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるレーダ装置を得ることを目的とする。
【解決手段】信号送信処理部2が、全パルスで共通である単一のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、単一のアンテナパターンを用いて、キャリア信号が所定の時間間隔でパルス変調されている信号を空間に放射し、信号受信処理部4が、パルス毎に異なる複数のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、複数のアンテナパターンを用いて、目標に反射されて戻ってきた信号を受信し、信号処理器5が受信信号を周波数領域に変換する。
【選択図】図1

Description

この発明は、指向性のあるアンテナパターンを用いて、サイドローブクラッタや妨害波等の抑圧を行って、目標を検出するレーダ装置に関するものである。
例えば、以下の非特許文献1に開示されているレーダ装置は、ある特定の方向から入射されるクラッタや妨害波等を抑圧するため、主アンテナの他に補助アンテナを実装し、補助アンテナを用いて、主アンテナのアンテナパターンにおけるクラッタや妨害波等の信号到来方向にヌルを形成するようにしている。
このレーダ装置では、ある特定の方向から入射されるクラッタや妨害波等を抑圧することができるため、目標の検出性能の向上が期待される。
菊間信良、"アレーアンテナによる適応信号処理"、科学技術出版(1999)、pp.13-21、pp.67-86
従来のレーダ装置は以上のように構成されているので、ある特定の方向から入射されるクラッタや妨害波等を抑圧することができるが、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合、抑圧性能が劣化して、目標の検出性能が低下してしまうなどの課題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるレーダ装置を得ることを目的とする。
この発明に係るレーダ装置は、複数の素子アンテナから構成されているアレーアンテナと、単一のアンテナパターン又は複数のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、そのアンテナパターンを用いて、キャリア信号が所定の時間間隔でパルス変調されている信号を空間に放射する信号送信手段と、複数のアンテナパターン又は単一のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、そのアンテナパターンを用いて、信号送信手段から放射された後、目標に反射されて戻ってきた信号を受信する信号受信手段とを設け、周波数領域変換手段が、信号受信手段により受信された信号を周波数領域の信号に変換するようにしたものである。
この発明によれば、信号送信手段が、単一のアンテナパターン又は複数のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、そのアンテナパターンを用いて、キャリア信号が所定の時間間隔でパルス変調されている信号を空間に放射し、信号受信手段が、複数のアンテナパターン又は単一のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、そのアンテナパターンを用いて、信号送信手段から放射された後、目標に反射されて戻ってきた信号を受信するように構成したので、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができる効果がある。
この発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態1によるレーダ装置の空中線1、信号送信処理部2及び送受信切替処理部3を示す構成図である。 この発明の実施の形態1によるレーダ装置の空中線1、送受信切替処理部3及び信号受信処理部4を示す構成図である。 この発明の実施の形態1によるレーダ装置に形成されたアンテナパターンを示す説明図である。 メインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタとの受信電力(アンテナパターンゲイン調整前の受信電力)を示す説明図である。 メインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタとの受信電力(アンテナパターンゲイン調整後の受信電力)を示す説明図である。 アンテナパターンゲイン調整部6による受信時のアンテナパターンの効果を示す説明図である。 アンテナパターンゲイン調整前後の雑音電力を示す説明図である。 パルス間で電力が一定である場合と、電力が変化する場合のコヒーレント積分(FFT)の原理を示す説明図である。 パルス間で電力が一定である場合と、電力が変化する場合のコヒーレント積分(FFT)を示す説明図である。 この発明の実施の形態1によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標とサイドローブで受信されるクラッタのFFT後の結果を示す説明図である。 複数のアンテナパターンの差分を示す説明図である。 目標候補検出部8によるサイドローブ内の目標候補の有無の判定処理を説明する説明図である。 この発明の実施の形態2によるレーダ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態2によるレーダ装置の空中線1、送受信切替処理部3及び信号受信処理部30を示す構成図である。 8素子のアンテナパターン(Σパターン、Δパターン)を示す説明図である。 4素子のアンテナパターン(Σパターン、Δパターン)を示す説明図である。 4素子のΣパターンと8素子のΔパターンの関係を示す説明図である。 /2素子のΣパターンとN素子のΔパターンを形成するための荷重係数を示す説明図である。 /2素子のΣパターンとN素子のΔパターンとのゲインの差を示す説明図である。 Σパターンのメインローブで受信される目標と、Δパターンのサイドローブで受信されるクラッタの受信電力(アンテナパターンゲイン調整前の受信電力)を示す説明図である。 Σパターンのメインローブで受信される目標と、Δパターンのサイドローブで受信されるクラッタの受信電力(アンテナパターンゲイン調整後の受信電力)を示す説明図である。 /2素子のΣパターンとN素子のΔパターンにおけるゲイン調整調整後のゲインと位相差(位相補償前の位相差)を示す説明図である。 /2素子のΣパターンとN素子のΔパターンにおけるゲイン調整調整後のゲインと位相差(位相補償後の位相差)を示す説明図である。 この発明の実施の形態2によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタのFFT後の結果を示す説明図である。 この発明の実施の形態3によるレーダ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態3によるレーダ装置の空中線1、送受信切替処理部3及び信号受信処理部50を示す構成図である。 受信時の荷重係数番号nΣの加算後の受信ビデオ信号を示す説明図である。 異なるアンテナパターンのメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタの受信電力(アンテナパターンゲイン調整前の受信電力)を示す説明図である。 異なるアンテナパターンのメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタの受信電力(アンテナパターンゲイン調整後の受信電力)を示す説明図である。 フィルタ処理部62によるフィルタ処理の効果を示す説明図である。 この発明の実施の形態3によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタのFFT後の結果を示す説明図である。 この発明の実施の形態4によるレーダ装置を示す構成図である。 フィルタ処理部71によるフィルタ処理の効果を示す説明図である。 この発明の実施の形態4によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタのFFT後の結果を示す説明図である。 この発明の実施の形態5によるレーダ装置を示す構成図である。 パルス間で電力が一定の信号を符号変調した場合のコヒーレント積分(FFT)の原理を示す説明図である。 パルス間で電力が変化する信号を符号変調した場合のコヒーレント積分(FFT)の結果を示す説明図である。 符号変調を行う場合の目標とクラッタのパルスドップラ処理(FFT)結果を示す説明図である。 フィルタ処理部82によるフィルタ処理の効果を示す説明図である。 この発明の実施の形態6によるレーダ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態6によるレーダ装置の空中線1、送受信切替処理部3及び信号受信処理部90を示す構成図である。 振幅調整器101−nの受信時の荷重係数を示す説明図である(パルス数N=8の場合)。 振幅調整器101−nの受信時の荷重係数と位相器102−nの符号変調との関係を示す説明図である(パルス数N=8の場合)。 この発明の実施の形態6によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標のFFT後の結果を示す説明図である。 目標候補検出部92のドップラ周波数の判定動作を示す説明図である。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図である。
図1において、空中線1は複数の素子アンテナから構成されているアレーアンテナである。
信号送信処理部2は全パルスで共通のアンテナパターン(単一のアンテナパターン)を空中線1に形成し、送受信切替処理部3を通じて、キャリア信号が所定の時間間隔でパルス変調されている信号(以下、「送信RF信号」と称する)を空間に放射する処理を実施する。なお、信号送信処理部2は信号送信手段を構成している。
送受信切替処理部3は信号送信処理部2が送信RF信号を空間に放射する際には信号送信処理部2を空中線1に接続し、信号受信処理部4が反射RF信号(空中線1から放射された送信RF信号が、目標に反射されて戻ってきた信号)を受信する際には信号受信処理部4を空中線1に接続する処理を実施する。
信号受信処理部4はパルス毎に異なるアンテナパターン(複数のアンテナパターン)を空中線1に形成し、送受信切替処理部3を通じて、反射RF信号を受信するとともに、その反射RF信号に対する所定の信号処理を実施して、受信ビデオ信号を出力する処理を実施する。なお、信号受信処理部4は信号受信手段を構成している。
この実施の形態1では、信号送信処理部2が単一のアンテナパターンを空中線1に形成し、信号受信処理部4が複数のアンテナパターンを空中線1に形成する例を説明するが、信号送信処理部2が複数のアンテナパターンを空中線1に形成し、信号受信処理部4が単一のアンテナパターンを空中線1に形成するようにしても、以下の信号処理器5が同様の処理を実施することで、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるようになる。
また、信号送信処理部2が複数のアンテナパターンを形成して信号を送信し、信号受信処理部4が複数のアンテナパターンを形成して信号を受信するようにしても、以下の信号処理器5が同様の処理を実施することで、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるようになる。
信号処理器5はアンテナパターンゲイン調整部6、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9から構成されており、信号受信処理部4から出力された受信ビデオ信号を解析して、目標の候補を検出するとともに、その目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する処理を実施する。
この実施の形態1では、信号処理器5を構成しているアンテナパターンゲイン調整部6、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9が、専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコン)で構成されているものを想定しているが、信号処理器5がコンピュータで構成されていてもよい。
信号処理器5がコンピュータで構成されている場合、アンテナパターンゲイン調整部6、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
信号処理器5のアンテナパターンゲイン調整部6は信号受信処理部4により複数のアンテナパターンのメインローブで受信される反射RF信号の受信電力を規則的に変化させることで、複数のアンテナパターンのサイドローブで受信される反射RF信号の受信電力を均一にするゲイン調整処理を実施する。なお、アンテナパターンゲイン調整部6はゲイン調整手段を構成している。
信号処理器5の周波数領域変換部7はアンテナパターンゲイン調整部6によるゲイン調整処理後の受信ビデオ信号を周波数領域の信号に変換する処理を実施する。なお、周波数領域変換部7は周波数領域変換手段を構成している。
信号処理器5の目標候補検出部8は周波数領域変換部7により変換された周波数領域の信号から目標候補を検出する処理を実施する。
また、目標候補検出部8は信号受信処理部4により単一のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補と、信号受信処理部4により複数のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補とを比較することで、サイドローブ内に存在している目標候補を判別する処理を実施する。
なお、目標候補検出部8は目標候補検出手段を構成している。
信号処理器5の目標相対速度算出部9は目標候補検出部8により検出された目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する処理を実施する。なお、目標相対速度算出部9は相対速度算出手段を構成している。
表示器10は例えば液晶ディスプレイなどから構成されており、信号処理器5により検出された目標候補や、目標候補の相対速度などの情報を表示する処理を実施する。
図2はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置の空中線1、信号送信処理部2及び送受信切替処理部3を示す構成図である。
また、図3はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置の空中線1、送受信切替処理部3及び信号受信処理部4を示す構成図である。
図2及び図3では、素子数N=8の等間隔リニアアレーについて示している。以下、nは素子番号を表すものとする。ただし、n=1,2,・・・,Nである。
図2及び図3において、局部発振器11は一定周波数の局部発振信号L(t)を生成し、その局部発振信号L(t)をパルス変調器12及び信号受信処理部4の受信機21−nに出力する処理を実施する。
パルス変調器12は局部発振器11から出力された局部発振信号L(t)をパルス変調し、パルス変調後の局部発振信号L’(t)を位相器13−nに出力する処理を実施する。
位相器13−nはパルス変調器12から出力されたパルス変調後の局部発振信号L’(t)に対する位相調整処理を実施して、位相調整後の局部発振信号L’0,na(t)を生成し、位相調整後の局部発振信号L’0,na(t)を振幅調整器14−nに出力する処理を実施する。
振幅調整器14−nは位相器13−nから出力された位相調整後の局部発振信号L’0,na(t)に対する振幅調整処理を実施して、振幅調整後の局部発振信号である送信RF信号L”0,na(t)を生成し、その送信RF信号L”0,na(t)を送受切替器15−nに出力する処理を実施する。
送受切替器15−nは受信切替処理部3を構成しており、振幅調整器14−nから出力された送信RF信号L”0,na(t)を素子アンテナ16−nに出力する一方、素子アンテナ16−nに入射された反射RF信号を受信機21−nに出力する処理を実施する。
素子アンテナ16−nは空中線1を構成しており、送受切替器15−nから出力された送信RF信号L”0,na(t)を空間に放射する一方、目標に反射されて戻ってきた反射RF信号を送受切替器15−nに出力する処理を実施する。
受信機21−nは送受切替器15−nから出力された反射RF信号に対して、局部発振器11から出力された局部発振信号L(t)を用いてダウンコンバートするとともに、A/D変換を実施することで、受信IF(Intermediate Frequency)信号Vna(n,θ)を生成し、その受信IF信号Vna(n,θ)を振幅調整器22−nに出力する処理を実施する。ただし、nはパルス番号を表し、θは入射角を表すものとする。
振幅調整器22−nは受信機21−nから出力された受信IF信号Vna(n,θ)に対して、パルス毎に、第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)と第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)を切り替えながら重み付けを実施し、重み付け後の受信IF信号V”na(n,θ)を位相器23−nに出力する処理を実施する。
位相器23−nはメインローブの指向方向θからの受信信号が最大になるように、振幅調整器22−nから出力された重み付け後の受信IF信号V”na(n,θ)の位相を調整し、位相調整後の受信IF信号V’’’na(n,θ)を加算器24に出力する処理を実施する。
加算器24は位相器23−nから出力された位相調整後の受信IF信号V’’’na(n,θ)を加算して、受信ビデオ信号V(n,θ)を生成する処理を実施する。
次に動作について説明する。
最初に、送信時のアンテナパターンが形成されて、送信RF信号L”0,na(t)が空間に放射されるまでの処理内容を説明する。
まず、信号送信処理部2の局部発振器11は、一定周波数の局部発振信号L(t)を生成し、その局部発振信号L(t)をパルス変調器12及び信号受信処理部4の受信機21−nに出力する。
信号送信処理部2のパルス変調器12は、局部発振器11から局部発振信号L(t)を受けると、その局部発振信号L(t)をパルス変調し、パルス変調後の局部発振信号L’(t)を位相器13−nに出力する。
信号送信処理部2の位相器13−nは、パルス変調器12からパルス変調後の局部発振信号L’(t)を受けると、指向性のあるアンテナパターンを形成するために、下記の式(1)に示すように、パルス変調後の局部発振信号L’(t)の位相を調整し、位相調整後の局部発振信号L’0,na(t)を振幅調整器14−nに出力する。

Figure 2014102237

式(1)において、λ(=c/f)は波長、cは光速、fは送信周波数、dは素子間隔、θはメインローブの指向方向である。
また、floor(X)は変数Xを越えない最大の整数を表し、符号±は素子番号nが奇数の場合+、偶数の場合−が代入される。
信号送信処理部2の振幅調整器14−nは、位相器13−nから位相調整後の局部発振信号L’0,na(t)を受けると、下記の式(2)に示すように、送信時の荷重係数wTx,Σ(n)を用いて、位相調整後の局部発振信号L’0,na(t)の振幅を調整し、振幅調整後の局部発振信号である送信RF信号L”0,na(t)を送受切替器15−nに出力する。

Figure 2014102237

送信時の荷重係数wTx,Σ(n)としては、矩形窓、Taylor窓、Dolph−Chebyshev窓などが考えられ、サイドローブレベルやメインローブ幅を用途に合わせて任意に設定することができる。
この実施の形態1では、送信時の荷重係数wTx,Σ(n)は、パルス毎に変化せず、全パルスで共通であるものとして説明する。
送受切替器15−nは、信号送信処理部2の振幅調整器14−nから送信RF信号L”0,na(t)を受けると、その送信RF信号L”0,na(t)を素子アンテナ16−nに出力する。
これにより、素子アンテナ16−nから送信RF信号L”0,na(t)が空間に放射される。
このとき、空中線1の素子アンテナ16−nに形成されるアンテナパターンは、図4(a)に示すように、指向性を持つメインローブとサイドローブからなる。
なお、送信時の荷重係数wTx,Σ(n)は全パルスで共通であり、パルス毎に変化しないため、送信時のアンテナパターンは変化しない。
次に、受信時のアンテナパターンが形成されて、受信ビデオ信号V(n,θ)が生成されるまでの処理内容を説明する。
ここでは、入射角θにある目標(あるいは、クラッタ)を想定して説明する。
空間に放射された送信RF信号L”0,na(t)は目標に反射され、目標に反射された送信RF信号L”0,na(t)は反射RF信号として空中線1の素子アンテナ16−nに入射される。
空中線1の素子アンテナ16−nは、入射された反射RF信号を送受切替器15−nに出力する。
送受切替器15−nは、素子アンテナ16−nから反射RF信号を受けると、その反射RF信号を信号受信処理部4の受信機21−nに出力する。
信号受信処理部4の受信機21−nは、送受切替器15−nから反射RF信号を受けると、その反射RF信号に対して、局部発振器11から出力された局部発振信号L(t)を用いてダウンコンバートするとともに、A/D変換を実施することで、受信IF信号Vna(n,θ)を生成し、その受信IF信号Vna(n,θ)を振幅調整器22−nに出力する。
ここで、受信RF信号は、全入射角からの信号であるが、振幅調整器22−n、位相器23−n及び加算器24での説明の都合上、入射角θからの受信IF信号Vna(n,θ)として説明する。また、メインローブの指向方向をθ=0として説明する。なお、nはパルス番号を表している。
信号受信処理部4の振幅調整器22−nは、受信機21−nから受信IF信号Vna(n,θ)を受けると、下記の式(3)に示すように、その受信IF信号Vna(n,θ)に対して、パルス毎に、第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)と第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)を切り替えながら重み付けを実施し、重み付け後の受信IF信号V”na(n,θ)を位相器23−nに出力する。ただし、Nはパルス数を表している。

Figure 2014102237
受信時の第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)と第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)としては、図4(b)に示すように、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(n,θ)におけるサイドローブと、第2のアンテナパターンΣRx,2(n,θ)におけるサイドローブとを比較したとき、サイドローブの形状はほぼ同じになるが、ゲイン(サイドローブレベル)は異なるような特性を有する荷重係数(窓関数)が用いられる。
例えば、下記の式(4)に示されるようなDolph−Chebyshev窓が用いられる。
Figure 2014102237
式(4)におけるβは、下記の式(5)で表される。

Figure 2014102237

式(5)において、SLLはサイドローブの減衰量(サイドローブレベル)である。
また、cosh(X)は変数Xの双曲線余弦関数である。
信号受信処理部4の位相器23−nは、振幅調整器22−nから重み付け後の受信IF信号V”na(n,θ)を受けると、下記の式(6)にしたがって、メインローブの指向方向θからの受信信号が最大になるように、重み付け後の受信IF信号V”na(n,θ)の位相を調整し、位相調整後の受信IF信号V’’’na(n,θ)を加算器24に出力する。

Figure 2014102237

ただし、式(6)の符号±は、素子番号nが奇数の場合+、偶数の場合−が代入される。
信号受信処理部4の加算器24は、位相器23−nから位相調整後の受信IF信号V’’’na(n,θ)を受けると、下記の式(7)にしたがって、それらの受信IF信号V’’’na(n,θ)の総和を求めることで、受信ビデオ信号V(n,θ)を生成する。

Figure 2014102237
なお、信号受信処理部4の加算器24により生成された受信ビデオ信号V(n,θ)は、送信時と受信時のアンテナパターンを用いて送受信された受信ビデオ信号になり、入射角θにある相対距離v、相対速度R、振幅Aの目標(あるいはクラッタ)からの受信ビデオ信号V(n,θ)は、下記の式(8)で表される。
Figure 2014102237

ただし、式(8)において、Tpriはパルス繰り返し周期、ΣTx,(N,θ)は送信時のアンテナパターン(式(9))、ΣRx,1(n,θ)は受信時の第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)で形成された受信時の第1のアンテナパターン(式(10))、ΣRx,2(n,θ)は受信時の第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)で形成された受信時の第2のアンテナパターン(式(11))である。

Figure 2014102237

Figure 2014102237

Figure 2014102237
加算器24は、受信ビデオ信号V(n,θ)を生成すると、下記の式(12)に示すように、受信ビデオ信号V(n,θ)を加算することで、全入射角θからの受信ビデオ信号V’(n)を生成し、その受信ビデオ信号V’(n)を信号処理器5に出力する。

Figure 2014102237
信号処理器5は、信号受信処理部4の加算器24から全入射角θからの受信ビデオ信号V’(n)を受けると、その受信ビデオ信号V’(n)を解析して、目標候補を検出するとともに、その目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する。
以下、目標はメインローブで受信され、クラッタ(あるいは干渉波)はサイドローブで受信されるとして、信号処理器5の処理内容を具体的に説明する。
信号処理器5のアンテナパターンゲイン調整部6には、全入射角θからの受信ビデオ信号V’(n)が入力されるが、この実施の形態1では、図4(b)に示すように、パルス毎に、サイドローブレベルが異なる第1のアンテナパターンΣRx,1(n,θ)と、第2のアンテナパターンΣRx,2(n,θ)とで受信される。
このとき、パルス毎に一定のゲインを有するメインローブで受信される目標は、図5(a)に示すように、パルス毎に一定の受信電力で受信される。
一方、パルス毎にゲインが異なるサイドローブで受信されるクラッタは、図5(b)に示すように、パルス毎に、サイドローブレベルの変化に応じて受信電力が規則的に変化する。
アンテナパターンゲイン調整部6は、サイドローブで受信されるクラッタの受信電力を一定にするために、第1のアンテナパターンΣRx,1(n,θ)におけるサイドローブのレベルと、第2のアンテナパターンΣRx,2(n,θ)におけるサイドローブのレベルとの差αSLL(あるいは、レベルの比)を用いて、下記の式(13)に示すように、受信ビデオ信号V’(n)のゲインを調整し、ゲイン調整後の受信ビデオ信号V(n)を周波数領域変換部7に出力する。

Figure 2014102237
アンテナパターンゲイン調整部6によりゲイン調整が行われることで、メインローブで受信される目標は、図6(a)に示すように、パルス毎に規則的に変化する受信電力になる。
一方、サイドローブで受信されるクラッタは、図6(b)に示すように、パルス毎に一定の受信電力になる。
したがって、アンテナパターンゲイン調整部6のゲイン調整処理により、図7に示すように、サイドローブはほぼ変化せず、メインローブは規則的に変化する所望の複数の受信アンテナパターンを用いたことと等価になる。
このように、所望の複数のアンテナパターンを用いたことにより、メインローブで受信される目標の振幅のみが変調されて、サイドローブで受信されるクラッタの振幅は変調されないため、目標とクラッタに異なる変調を行うことが可能になる。
また、アンテナパターンゲイン調整部6では、サイドローブレベルの差による振幅差αSLLを用いて、サイドローブレベルを一定にしているが、受信時の第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)に対して振幅差αSLLで減算するようにしてもよい。
この場合、アンテナパターンゲイン調整部6を用いなくても、サイドローブはほぼ変化せず、メインローブは規則的に変化する所望の複数の受信アンテナパターンで受信された信号を得ることが可能になる。
また、アンテナパターンゲイン調整部6によりゲイン調整が行われることで、目標と図8(b)に示す雑音も電力が変化する。
信号処理器5の周波数領域変換部7は、アンテナパターンゲイン調整部6からゲイン調整後の受信ビデオ信号V(n)を受けると、下記の式(14)に示すように、ゲイン調整後の受信ビデオ信号V(n)を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)することで、周波数領域の受信ビデオ信号F(k)を生成し、周波数領域の受信ビデオ信号F(k)を目標候補検出部8に出力する。
Figure 2014102237

式(14)において、kは周波数領域のサンプリング番号、NFFTはFFT点数を表している。
ただし、NFFT>Nのときには、受信ビデオ信号V(n)に0を代入する。
なお、周波数領域変換部7は、パルス数Nよりも多いFFT点数NFFTで周波数領域変換を行うようにしている、これにより、周波数領域の受信ビデオ信号F(k)が高サンプリングされるため、高精度なドップラ周波数(目標相対速度)を算出することが可能になる。
周波数領域変換部7は、ゲイン調整後の受信ビデオ信号V(n)を高速フーリエ変換して、周波数領域の受信ビデオ信号F(k)を生成すると、例えば、ブラックマン窓関数等を用いて、窓関数処理を行うことで、周波数領域の信号におけるサイドローブを抑圧する。
そのため、目標がそれ以外の信号のサイドローブに埋もれることを避けることが可能になり、目標の検出性能が向上する。
ここで、周波数領域変換部7が式(14)のFFTを行うことによる効果について説明する。
FFT(コヒーレント積分)によって、ゲイン調整後の受信ビデオ信号V(n)が周波数領域の信号に変換されるが、目標はコヒーレントに目標ドップラ周波数に積分され、雑音はノンコヒーレントに様々なドップラ周波数に積分される。
周波数領域変換部7がFFT(コヒーレント積分)を行うことで、FFTによるSNR(Signal to Noise Ratio)の改善度SNRFFT,impが下記の式(15)で表され、周波数領域の目標のSNRが、時間領域の目標よりSNRが向上するため、目標の検出性能が向上する。

Figure 2014102237

式(15)において、Atgtは目標の振幅、σnoiseは雑音の振幅を表している。
なお、コヒーレントな目標信号に対して、振幅情報しか用いないノンコヒーレント積分をした場合は、SNRが向上しないため、振幅情報と位相情報を用いるFFTは、SNRを向上させ、検出性能を向上させるために有効な手段となる。
図9はパルス間で電力が一定である場合と、電力が変化する場合のコヒーレント積分(FFT)の原理を示す説明図である。
図9を参照しながら、コヒーレント積分(FFT)について説明する。
図9(a)はパルス間(パルス繰り返し周期PRI:Pulse Repetition Interval)で電力が一定の場合を示し、図9(b)はパルス間(PRI)で電力が変化する場合を示している。
図9の左図は、真のドップラ周波数ωの積分を示し、右図は真のドップラ周波数(真のドップラ周波数ωと位相πだけ異なる位相)ω+πの積分を示している。
このとき、真のドップラ周波数(位相)ωは、下記の式(16)で表される。ただし、fは真のドップラ周波数、vは目標あるいはクラッタのドップラ速度を表している。

Figure 2014102237
図9(a)の左図に示すパルス間で電力一定の場合(図6(b))、真のドップラ周波数(位相)ωの積分では同位相になって積分される。
図9(a)の右図に示すパルス間で電力一定の場合(図6(b))、真のドップラ周波数ω+πの積分では、パルス間で逆位相になり、電力(振幅)が同じであるため、相殺されて積分されない。
したがって、図10(a)に示すように、パルス間で電力一定の場合、FFT後、真のドップラ周波数(位相)ωのみに積分される。
一方、図9(b)の左図に示すパルス間で電力が変化する場合(図6(a))、真のドップラ周波数(位相)ωの積分では、電力(振幅)がパルス毎に変化するが、同位相のため積分される。
図9(b)の右図に示すパルス間で電力が変化する場合(図6(a))、真のドップラ周波数ω+πの積分では、パルス間で逆位相になるが、電力(振幅)が異なるため、相殺されず、パルス毎の電力(振幅)の差分が積分される。
したがって、図10(b)に示すように、パルス間で電力が変化する場合、FFT後、真のドップラ周波数(位相)ωだけでなく、真のドップラ周波数ω+πにも積分される。
ここで、図11はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタのFFT後の結果を示す説明図である。
特に、図11(a)は単一のアンテナパターンを用いる場合を示し、図11(b)は複数のアンテナパターンを用いる場合を示している。
図11(a)より、サイドローブクラッタに埋もれる目標は、検出が困難であることが分かる。
非特許文献1に開示されているレーダ装置は、サイドローブクラッタの抑圧のために、補助アンテナを用いて、ある特定の方向にヌルを形成しているアンテナパターンを用いるが、図11(a)のように、幅広い方向にヌルを形成することは困難であるため、サイドローブクラッタを抑圧することができず、目標を検出することはできなかった。
図11(b)より、パルス間で電力一定のサイドローブクラッタは、図11(a)と同様に存在するが、異なる位相に積分されることはない。ただし、厳密にはゲイン調整後のパルス間のサイドローブクラッタの電力の差分が異なる位相ω+π周辺に積分されるが、位相ω+π周辺では、図12に示すように、サイドローブが十分に抑圧されたアンテナパターンで受信された受信信号と等価になり、位相ωの 周辺のサイドローブクラッタと比べて十分に抑圧され、目標の検出が可能になる。
一方、複数のアンテナパターンとアンテナパターンゲイン調整部6によって、受信電力がパルス毎に規則的に変化するメインローブで受信する目標は、位相がπだけ異なる成分が生じて、サイドローブクラッタの分離と抑圧が可能になる。したがって、この実施の形態1により、サイドローブクラッタの抑圧性能が向上し、目標の検出性能が向上したレーダ装置を得ることが可能になる。
上記で示したように、目標がサイドローブと位相がπだけ異なる周波数で検出できるようにするために、信号送信処理部2は、下記の式(17)に示すように、想定するクラッタの周波数帯域fw,cltからパルス繰り返し周期Tpriの条件を算出し、この条件の下で動作する。
Figure 2014102237
クラッタの周波数帯域fw,cltは、静止クラッタを想定した場合、レーダ装置の速度vrdrから、下記の式(18)のように算出することができる。

Figure 2014102237

したがって、式(17)及び式(18)からレーダ装置の速度vrdrより低い相対速度の目標がクラッタに埋もれることなく、検出することが可能になる。
信号処理器5の目標候補検出部8は、周波数領域変換部7から周波数領域の受信ビデオ信号F(k)を受けると、その受信ビデオ信号F(k)に対して、例えば、信号電力に基づく、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実施することで目標候補を検出する。CFAR処理自体は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
また、目標候補検出部8は、信号受信処理部4により単一のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補(例えば、図13(a)を参照)を事前に記憶しておき、受信ビデオ信号F(k)に対するCFAR処理を実施することで、信号受信処理部4により複数のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補(例えば、図13(b)を参照)を検出すると、単一のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補と、複数のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補とを比較することで、サイドローブ内に存在している目標候補を判別する。
単一のアンテナパターンが用いられた場合には検出されないが、複数のアンテナパターンが用いられた場合には検出される目標候補は、サイドローブ内に存在している目標候補であると判別される。
信号処理器5の目標相対速度算出部9は、目標候補検出部8が目標候補を検出すると、下記の式(19)に示すように、その目標候補のドップラ周波数fd,tgtから目標候補の相対速度vtgtを算出する。

Figure 2014102237

ただし、目標候補検出部8によりサイドローブ内に存在している判定された目標候補については、下記の式(20)に示すように、目標候補の相対速度vtgtを算出する。
Figure 2014102237
式(20)において、PRFはパルス繰り返し周波数(Pulse Repetition Frequency)である。
信号処理器5により検出された目標候補や、目標候補の相対速度vtgtなどの情報は、表示器10により表示される。
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、信号送信処理部2が、全パルスで共通である単一のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、単一のアンテナパターンを用いて、キャリア信号が所定の時間間隔でパルス変調されている信号を空間に放射し、信号受信処理部4が、パルス毎に異なる複数のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、複数のアンテナパターンを用いて、目標に反射されて戻ってきた信号を受信するように構成したので、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができる効果を奏する。
即ち、この実施の形態1によれば、全パルスにおいて変化しない送信時のアンテナパターンを用いて信号を送信する一方、パルス毎にサイドローブレベルが規則的に変化する受信時のアンテナパターンを用いて信号を受信する。そして、サイドローブで受信される受信信号の電力がほぼ一定になるようにゲイン調整を行うことで、メインローブで受信される目標は受信電力が規則的に変化し、サイドローブで受信されるクラッタは受信電力がほぼ一定となる。このため、目標とクラッタで異なる変調を行うことになり、FFTによる周波数領域変換後、メインローブで受信される目標のみ、位相πだけ異なる位相にも積分されるため、単一アンテナパターンではサイドローブクラッタに埋もれて検出が困難な目標を、サイドローブ分離・抑圧ができて、検出性能が向上したレーダ装置を得ることができる。
この実施の形態1では、アンテナパターンゲイン調整部6から出力されたゲイン調整後の受信ビデオ信号V(n)が周波数領域変換部7に入力されるものを示したが、アンテナパターンゲイン調整部6と周波数領域変換部7の間にフィルタ処理部(フィルタ処理手段)を実装し、フィルタ処理後の受信ビデオ信号V(n)が周波数領域変換部7に入力されるようにしてもよい。
アンテナパターンゲイン調整部6と周波数領域変換部7の間に実装されるフィルタ処理部としては、例えば、アンテナパターンゲイン調整部6から出力されたゲイン調整後の受信ビデオ信号V(n)に対して、下記の式(21)に示すようなパルス間のフィルタ処理を実施して、フィルタ処理後の受信ビデオ信号VG,MTI(n)を生成するものが考えられる。

Figure 2014102237
フィルタ処理後の受信ビデオ信号VG,MTI(n)は、サイドローブクラッタが抑圧されるため、目標の検出性能が向上する。
ここでは、フィルタ処理として、式(21)で表されるMTI(Moving Target Indicator)を用いているが、例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタや、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタなどを用いるようにしてもよい。
この実施の形態1では、信号送信処理部2が単一のアンテナパターンを形成して信号を送信し、信号受信処理部4が複数のアンテナパターンを形成して信号を受信するものを示したが、信号送信処理部2が複数のアンテナパターンを形成して信号を送信し、信号受信処理部4が単一のアンテナパターンを形成して信号を受信するようにしても、信号処理器5が同様の処理を実施することで、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるようになる。
また、信号送信処理部2が複数のアンテナパターンを形成して信号を送信し、信号受信処理部4が複数のアンテナパターンを形成して信号を受信するようにしても、信号処理器5が同様の処理を実施することで、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるようになる。
この実施の形態1では、複数のアンテナパターンのサイドローブで受信される信号の電力をほぼ一定にして、メインローブで受信される信号の電力を規則的に変化させる処理を、アンテナパターンゲイン調整部6の信号処理で実現しているため、H/W規模の改修が少なくてよい効果が得られる。
また、アンテナパターンゲイン調整部6の処理は、図3の振幅調整器15-naで行うようにしても良い。この場合は、パルス毎にメインローブで受信される信号の電力が規則的に変化して、サイドローブで受信される信号電力はほぼ一定になり、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるようになる。
また、この実施の形態1では、アレーアンテナである空中線1がリニアアレーであるものを示したが、例えば、平面アレー等の2次元アレーである場合も同様の効果が得られる。
この実施の形態1では、パルス毎にサンプリングした受信ビデオ信号として説明したが、PRI内をサンプリングして信号処理を行う場合も同様の効果がある。
また、この実施の形態1では、補助アンテナが不要で、H/W規模を小さくできる効果がある。
実施の形態2.
図14はこの発明の実施の形態2によるレーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図15はこの発明の実施の形態2によるレーダ装置の空中線1、送受信切替処理部3及び信号受信処理部30を示す構成図であり、図において、図3と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図15では、素子数N=8の等間隔リニアアレーについて示している。以下、nは素子番号を表すものとする。ただし、n=1,2,・・・,Nである。
信号受信処理部30は複数のアンテナパターンを空中線1に形成し、送受信切替処理部3を通じて、反射RF信号を受信するとともに、その反射RF信号に対する所定の信号処理を実施して、受信ビデオ信号を出力する処理を実施する。なお、信号受信処理部30は信号受信手段を構成している。
信号受信処理部30の振幅調整器31−nは受信機21−nから出力された受信IF信号Vna(n,θ)に対して、Σパターン用の受信時の荷重係数wRx,Σ(n)を用いて重み付けを実施して、重み付け後の受信IF信号V”Σ,na(n,θ)を位相器32−nに出力する。また、受信機21−nから出力された受信IF信号Vna(n,θ)に対して、Δパターン用の受信時の荷重係数wRx,Δ(n)を用いて重み付けを実施して、重み付け後の受信IF信号V”Δ,na(n,θ)を位相器32−nに出力する処理を実施する。
位相器32−nはメインローブの指向方向θからの受信信号が最大になるように、振幅調整器31−nから出力された重み付け後の受信IF信号V”Σ,na(n,θ)及びの受信IF信号V”Δ,na(n,θ)の位相を調整して、Σパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Σ,na(n,θ)を加算器33aに出力し、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を加算器33b,33cに出力する処理を実施する。
加算器33aは位相器32−nから出力されたΣパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Σ,na(n,θ)を加算して、Σパターンの受信IF信号VΣ(n,θ)を生成するとともに、そのΣパターンの受信IF信号VΣ(n,θ)から全入射角θからのΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ(n)を算出する処理を実施する。
加算器33bは位相器32−1,32−3,32−5,32−7から出力されたΔパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を加算して、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号VΔ,1(n,θ)を生成する処理を実施する。
加算器33cは位相器32−2,32−4,32−6,32−8から出力されたΔパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を加算して、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号VΔ,2(n,θ)を生成する処理を実施する。
減算器34は加算器33bにより生成された受信IF信号VΔ,1(n,θ)から加算器33cにより生成された受信IF信号VΔ,2(n,θ)を減算して、Δパターンの受信ビデオ信号VΔ(n,θ)を生成するとともに、そのΔパターンの受信IF信号VΔ(n,θ)から全入射角θからのΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)を算出する処理を実施する。
信号処理器40はアンテナパターンゲイン調整部41、アンテナパターン位相補償部42、周波数領域変換部43、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部44から構成されており、信号受信処理部30から出力された受信ビデオ信号を解析して、目標候補を検出するとともに、その目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する処理を実施する。
この実施の形態2では、信号処理器40を構成しているアンテナパターンゲイン調整部41、アンテナパターン位相補償部42、周波数領域変換部43、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部44が、専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコン)で構成されているものを想定しているが、信号処理器40がコンピュータで構成されていてもよい。
信号処理器40がコンピュータで構成されている場合、アンテナパターンゲイン調整部41、アンテナパターン位相補償部42、周波数領域変換部43、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部44の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
信号処理器40のアンテナパターンゲイン調整部41は素子数が異なることによるサイロローブゲインの差に基づき、信号受信処理部30から出力された4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ(n)のゲインを調整して、ゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)を生成し、ゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と信号受信処理部30から出力された8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)をアンテナパターン位相補償部42に出力する処理を実施する。なお、アンテナパターンゲイン調整部41はゲイン調整手段を構成している。
信号処理器40のアンテナパターン位相補償部42はアンテナパターンゲイン調整部41から出力されたゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)間の位相差を補償し、ゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と位相補償後の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)を周波数領域変換部43に出力する処理を実施する。なお、アンテナパターン位相補償部42は位相補償手段を構成している。
信号処理器40の周波数領域変換部43はアンテナパターン位相補償部42から出力されたゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と位相補償後の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)を高速フーリエ変換して、周波数領域の受信ビデオ信号FΣ,Δ(k)を生成する処理を実施する。なお、周波数領域変換部43は周波数領域変換手段を構成している。
信号処理器40の目標相対速度算出部44は目標候補検出部8により検出された目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する処理を実施する。なお、目標相対速度算出部44は相対速度算出手段を構成している。
次に動作について説明する。
上記実施の形態1では、パルス毎に異なる受信時のアンテナパターンを得るために、受信時の荷重係数を変化させた異なるΣパターンで実現しているものを示したが、この実施の形態2では、受信時の複数のアンテナパターンを得るために、ΣパターンとΔパターンで実現するものを説明する。
即ち、この実施の形態2では、受信時の複数のアンテナパターンにおけるサイドローブはほぼ変化せずに、メインローブが規則的に変化するものとして、複数のアンテナパターンをΣパターンとΔパターンで実現する方法について説明する。
信号送信処理部2及び送受信切替処理部3の処理内容は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
下記の式(22)で表される入射角θから各素子アンテナ16−nに入射される受信ビデオ信号Sna(t,θ)を用いて説明を行う。

Figure 2014102237

式(22)において、S(t)は入射波の時間波形、tは時刻である。±が上下逆転している符号は素子番号nが奇数の場合−、偶数の場合+が代入される。
また、信号受信処理部30の振幅調整器31−nでの振幅調整は矩形窓、位相器32−nでの位相調整はメインローブの指向方向θ=0(sinθ=0)として記述を省略している。
8素子の受信ビデオ信号Sna(t,θ)の和(Σ)信号S8,Σ(t,θ)と差(Δ)信号S8,Δ(t,θ)は、それぞれ下記の式(23)と式(24)で表される。ここで、Σ(8,θ)は8素子のΣパターン、Δ(8,θ)は8素子のΔパターンである。
Figure 2014102237

Figure 2014102237
図16は8素子のアンテナパターン(Σパターン、Δパターン)を示す説明図である。ただし、Σパターンの最大ゲインで正規化している。
図16に示すように、同じ8素子のΣパターンとΔパターンでヌル(null)となる入射角とサイドローブレベルが異なることが分かる。
この実施の形態2では、所望の複数のアンテナパターンを実現するために、Δパターンでメインローブの中心(図16では、角度0度)にヌルを形成し、かつ、Σパターンのサイドローブと同じ入射角にヌルを形成している。
以下、ΣパターンとΔパターンがヌルとなる入射角について説明する。
図16に示すように、入射角(メインビームの指向方向)が0度の場合、Σパターンは最大ゲイン、Δパターンはヌルになる。
どの素子数の場合においても、入射角0度のΔパターンはヌルになる。したがって、パルス毎に、ΣパターンとΔパターンで交互に切り替えたメインローブで受信された受信信号の電力は、規則的に変化することが可能になる。
入射角0度以外では、上記の式(23)と式(24)より、8素子のΣパターンΣ(8,θ)、ΔパターンΔ(8,θ)がヌルを形成する条件の一つとして、それぞれ下記の式(25)と式(26)を満たす必要がある。

Figure 2014102237

Figure 2014102237
したがって、入射角0度以外に、式(25)より式(27)の場合、8素子のΣパターンΣ(8,θ)がヌルを形成し、式(26)より式(28)の場合、ΔパターンΔ(8,θ)がヌルを形成する。

Figure 2014102237

Figure 2014102237
式(27)と式(28)より、ΣパターンとΔパターンのヌルとなる入射角を一致するためには、以下のどちらかを満たす必要がある。
(1)素子間隔が同じ場合、Σパターンの素子数に比べて、Δパターンの素子数を2倍に
する。
(2)素子数が同じ場合、Σパターンの素子間隔に比べて、Δパターンの素子間隔を2倍
にする。
以降、(1)のように、ΣパターンとΔパターンの素子間隔が同じとして、素子数が4,8の場合について説明する。
式(23)と式(24)と同様に、4素子を想定して展開すると、4素子のΣパターンとΔパターンは図17のように表される。
図17の4素子のΣパターンと図16の8素子のΔパターンは、図18に示すように、メインローブの形状が異なるが、サイドローブのヌルとなる入射角がほぼ一致し、かつ、サイドローブの形状がほぼ一致することが分かる。ただし、異なる素子数による受信電力の差は調整されているとして説明する。
したがって、この実施の形態2では、複数のアンテナパターンとして、異なる素子数のΣパターンとΔパターンで交互に受信することによって、サイドローブクラッタの分離・抑圧性能の向上したレーダ装置を実現することができる。
以下、上記の(1)のように、ΣパターンとΔパターンの素子間隔が同じとし、受信時のアンテナパターンとして、4素子のΣパターン、8素子のΔパターンの場合について説明する。
信号受信処理部30の受信機21−nは、送受切替器15−nから反射RF信号を受けると、上記実施の形態1と同様に、その反射RF信号に対して、局部発振器11から出力された局部発振信号L(t)を用いてダウンコンバートするとともに、A/D変換を実施することで、受信IF信号Vna(n,θ)を生成し、その受信IF信号Vna(n,θ)を振幅調整器31−nに出力する。
信号受信処理部30の振幅調整器31−nは、受信機21−nから受信IF信号Vna(n,θ)を受けると、下記の式(29)に示すように、その受信IF信号Vna(n,θ)に対して、Σパターン用の受信時の荷重係数wRx,Σ(n)を用いて重み付けを実施し、重み付け後の受信IF信号V”Σ,na(n,θ)を位相器32−nに出力する。

Figure 2014102237

また、下記の式(30)に示すように、その受信IF信号Vna(n,θ)に対して、Δパターン用の受信時の荷重係数wRx,Δ(n)を用いて重み付けを実施し、重み付け後の受信IF信号V”Δ,na(n,θ)を位相器32−nに出力する。

Figure 2014102237
Σパターン用の受信時の荷重係数wRx,Σ(n)と、Δパターン用の受信時の荷重係数wRx,Δ(n)として、矩形窓、ハミング窓、Taylor窓、Dolph−Chebyshev窓等が考えられ、サイドローブレベルやメインローブ幅を用途に合わせて任意に設定することができる。
ただし、加算する4素子の受信IF信号Vna(n,θ)に対して、同じ窓関数を用いるものとする。ここでは、ハミング窓を用いた場合として説明する。
振幅調整器31−nがハミング窓を用いる場合、図19に示すように、下記の式(31)にしたがってΣパターン用の受信時の荷重係数wRx,Σ(n)を算出し、下記の式(32)にしたがってΔパターン用の受信時の荷重係数wRx,Δ(n)を算出する。

Figure 2014102237

Figure 2014102237

ただし、Σパターン用の受信時の荷重係数wRx,Σ(n)の算出にハミング窓を用い、Δパターン用の受信時の荷重係数wRx,Δ(n)の算出にハミング窓とその他の窓関数を乗算したもの(例えば、コサイン窓)を用いることで、よりサイドローブレベルの形状をほぼ同じにすれば、サイドローブクラッタの抑圧性能が向上する。
信号受信処理部30の位相器32−nは、振幅調整器31−nから重み付け後の受信IF信号V”Σ,na(n,θ)及び受信IF信号V”Δ,na(n,θ)を受けると、メインローブの指向方向θからの受信信号が最大になるようにするために、重み付け後の受信IF信号V”Σ,na(n,θ)及び受信IF信号V”Δ,na(n,θ)の位相を調整する。
位相器32−nは、Σパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Σ,na(n,θ)を加算器33aに出力し、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を加算器33b,33cに出力する。
即ち、位相器32−1〜32−4は、Σパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Σ,na(n,θ)を加算器33aに出力し、位相器32−1,32−3,32−5,32−7は、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を加算器33bに出力し、位相器32−2,32−4,32−6,32−8は、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を加算器33cに出力する。
信号受信処理部30の加算器33aは、位相器32−1〜32−4からΣパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Σ,na(n,θ)を受けると、下記の式(33)に示すように、Σパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Σ,na(n,θ)を加算して、Σパターンの受信IF信号VΣ(n,θ)を生成する。

Figure 2014102237

また、加算器33aは、Σパターンの受信IF信号VΣ(n,θ)から、下記の式(34)に示すように、全入射角θからのΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ(n)を算出する。
Figure 2014102237
信号受信処理部30の加算器33bは、位相器32−1,32−3,32−5,32−7からΔパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を受けると、下記の式(35)に示すように、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を加算して、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号VΔ,1(n,θ)を生成する。

Figure 2014102237
信号受信処理部30の加算器33cは、位相器32−2,32−4,32−6,32−8からΔパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を受けると、下記の式(36)に示すように、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号V’’’Δ,na(n,θ)を加算して、Δパターン用の位相調整後の受信IF信号VΔ,2(n,θ)を生成する。

Figure 2014102237
信号受信処理部30の減算器34は、加算器33bが受信IF信号VΔ,1(n,θ)を生成し、加算器33cが受信IF信号VΔ,2(n,θ)を生成すると、下記の式(37)に示すように、その受信IF信号VΔ,1(n,θ)から受信IF信号VΔ,2(n,θ)を減算して、Δパターンの受信ビデオ信号VΔ(n,θ)を生成する。

Figure 2014102237

また、減算器34は、Δパターンの受信IF信号VΔ(n,θ)から、下記の式(38)に示すように、全入射角θからのΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)を算出する。

Figure 2014102237
信号処理器40のアンテナパターンゲイン調整部41には、信号受信処理部30からΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ(n)と、Δパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)が入力される。
受信時の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ(n)と、受信時の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)は、1素子に受信される電力が同じとした場合、素子数が異なるため、生成された受信ビデオ信号の電力は異なる。
したがって、図20に示すように、素子数が異なることによって、受信時の4素子のΣパターンと8素子のΔパターンのサイドローブレベルが異なり、図21(b1)(b2)に示すように、サイドローブで受信される信号の電力が同じにならない。
アンテナパターンゲイン調整部41は、素子数が異なることによるサイロローブゲインの差に基づき、下記の式(39)にしたがって4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ(n)のゲインを調整して、ゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)を生成する。

Figure 2014102237

アンテナパターンゲイン調整部41は、4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ(n)のゲインを調整すると、ゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と信号受信処理部30から出力された8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)をアンテナパターン位相補償部42に出力する。
信号処理器40のアンテナパターン位相補償部42は、アンテナパターンゲイン調整部41からゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)を受けると、異なるアンテナパターンである受信時の4素子のΣパターンと、受信時の8素子のΔパターンで受信された受信ビデオ信号をコヒーレントに積分できるようにするために、ゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)間の位相差を補償する。
具体的には、以下の通りである。
周知のように余弦関数cos(θ)と正弦関数sin(θ)は、位相差±90度(π/2)の関係にある。
また、式(23)より8素子のΣパターンは、余弦関数cos(2π/λdsinθ)の項、式(24)より8素子のΔパターンは正弦関数sin(2π/λdsinθ)の項が含まれており、この位相差±90度(π/2)の関係がある。
ここでは、同じ素子間隔で、異なる素子数のΣパターンとΔパターンで受信されるが、余弦関数cosと正弦関数sinの関係があり、図23(b)に示すように、入射角θによって、受信時にΣパターンで受信された受信ビデオ信号と受信時にΔパターンで受信された受信ビデオ信号では、±90度(π/2)の位相差がある。
この実施の形態2では、受信時の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と受信時の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)をパルス毎に交互に受信した受信ビデオ信号として、FFTを行うが、位相差±90度(π/2)がある場合、信号をコヒーレントに積分することができない。
そこで、アンテナパターン位相補償部42は、異なるアンテナパターンである受信時の4素子のΣパターンと受信時の8素子のΔパターンで受信された受信ビデオ信号をコヒーレントに積分を可能にするために、8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ(n)に対して、下記の式(40)に示すような位相補償を実施して、位相補償後の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)を生成する。

Figure 2014102237

式(40)において、φcorは位相補償量を表している。
位相補償前は位相差±π/2あり、位相補償量として、そのどちらかを設定するが、例えば、位相補償量φcor=−π/2(−90度)を設定した場合、図24(b)に示すように、位相補償前の位相差π/2は位相補償によって、位相補償後の位相差が0になる。または、位相補償前の位相差−π/2は位相補償によって、位相補償後の位相差がπになる。
その結果、異なるアンテナパターンである受信時の4素子のΣパターンと受信時の8素子のΔパターンで受信された受信ビデオ信号をパルス毎に交互に受信した信号に対して、コヒーレント積分が可能になり、サイドローブクラッタの分離・抑圧が可能になる。
アンテナパターン位相補償部42は、ゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と位相補償後の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)を周波数領域変換部43に出力する。
信号処理器40の周波数領域変換部43は、アンテナパターン位相補償部42からゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と位相補償後の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)を受けると、下記の式(41)にしたがって、ゲイン調整後の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と位相補償後の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)とがパルス毎に交互に受信されたように、時間領域のΣパターンとΔパターンの受信ビデオ信号V’Σ,Δ,cor(n)を生成する。

Figure 2014102237
周波数領域変換部43は、時間領域のΣパターンとΔパターンの受信ビデオ信号V’Σ,Δ,cor(n)を生成すると、下記の式(42)に示すように、その受信ビデオ信号V’Σ,Δ,cor(n)を高速フーリエ変換(FFT)して、周波数領域の受信ビデオ信号FΣ,Δ(k)を生成する。

Figure 2014102237
図25はこの発明の実施の形態2によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタのFFT後の結果を示す説明図である。
/2素子のΣパターンとN素子のΔパターンの位相補償後の位相差が0の場合の周波数領域後の信号と、πの場合の周波数領域後の信号とについて説明する。
図25(a)に示すように、単一のアンテナパターンの場合、目標、クラッタの本来のドップラ周波数にのみ積分される。
図24(a)に示すように、位相補償後、入射角によって位相差が0かπになる。入射角θとサイドローブクラッタのドップラ周波数fd,cltは、レーダとサイドローブクラッタのジオメトリから下記の式(43)によって一意に算出することができるため、図25(b)に示すように、領域A,B,C,Dの位相補償後の位相差を算出することができる。

Figure 2014102237

式(43)において、vclt(θ)は入射角θのサイドローブクラッタのドップラ速度である。
したがって、位相補償後の位相差0の領域Aと領域Cは、サイドローブクラッタが抑圧されない。
一方、位相補償後の位相差0の領域A,Cと位相πだけ異なる領域A’と領域C’は、電力差分が積分される。目標は電力差分が大きく、サイドローブクラッタは電力差分が小さいため、サイドローブクラッタが大きく抑圧されて、目標の検出が可能になる。
位相補償後の位相差πの領域Bと領域Dは電力差分が積分され、目標は電力差分が大きく、サイドローブクラッタは電力差分が小さいため、サイドローブクラッタは大きく抑圧され、目標の検出が可能になる。
位相補償後の位相差πの領域B.Dと位相πだけ異なる領域B’と領域D’は、位相差0となり、サイドローブクラッタは抑圧されない。
信号処理器40の目標候補検出部8は、周波数領域変換部43が周波数領域の受信ビデオ信号FΣ,Δ(k)を生成すると、上記実施の形態1と同様に、その受信ビデオ信号FΣ,Δ(k)に対して、例えば、信号電力に基づく、CFAR処理を実施することで目標候補を検出する。
また、目標候補検出部8は、信号受信処理部30により単一のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補(例えば、図13(a)を参照)を事前に記憶しておき、受信ビデオ信号FΣ,Δ(k)に対するCFAR処理を実施することで、信号受信処理部30により複数のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補(例えば、図13(b)を参照)を検出すると、単一のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補と、複数のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補とを比較することで、サイドローブ内に存在している目標候補を判別する。
信号処理器40の目標相対速度算出部44は、目標候補検出部8が目標候補を検出すると、上記の式(19)に示すように、その目標候補のドップラ周波数fd,tgtから目標候補の相対速度vtgtを算出する。
ただし、サイドローブ内に存在している判定された目標候補のうち、図25(c)に示す領域A’と領域C’の目標候補については、上記の式(20)にしたがって目標候補の相対速度vtgtを算出する。
図25(c)に示す領域Bと領域Dの目標候補については、上記の式(19)にしたがって目標候補の相対速度vtgtを算出する。
信号処理器40により検出された目標候補や、目標候補の相対速度vtgtなどの情報は、表示器10により表示される。
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、全パルスにおいて変化しない送信時のアンテナパターンを用いて信号を送信し、受信時のアンテナパターンとしてΣパターンとΔパターンを用いて信号を受信し、ΣパターンとΔパターンのサイドローブで受信される受信信号の電力がほぼ一定になるようにゲイン調整を行うことで、メインローブで受信される目標は受信電力が規則的に変化し、サイドローブで受信されるクラッタは受信電力がほぼ一定になる。そして、ΣパターンとΔパターンで受信された信号の位相差をアンテナパターン位相補償を行うことで、ΣパターンとΔパターンをパルス毎に交互に受信した信号のコヒーレント積分を可能にしたため、単一アンテナパターンではサイドローブクラッタに埋もれて検出困難な目標を、サイドローブの分離・抑圧ができて、検出性能が向上したレーダ装置を得ることができる。
この実施の形態2では、所望の複数のアンテナパターンを得るために、同じ素子間隔で、Σパターンの素子数に比べて、Δパターンの素子数をほぼ2倍にしている場合について説明したが、素子数が同じで、Σパターンの素子間隔に比べて、Δパターンの素子間隔を2倍にしている場合においても、同様の効果を得ることができる。
この実施の形態2では、信号送信処理部2が単一のアンテナパターンを形成して信号を送信し、信号受信処理部30が複数のアンテナパターンを形成して信号を受信するものを示したが、信号送信処理部2が複数のアンテナパターンを形成して信号を送信し、信号受信処理部30が単一のアンテナパターンを形成して信号を受信するようにしても、信号処理器40が同様の処理を実施することで、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるようになる。
この実施の形態2では、各パルスにおいて、ΣパターンとΔパターンで受信した場合を説明したが、パルス毎に交互に受信した場合も、同様の効果を得る事ができる。
また、アンテナパターンゲイン調整部41の処理は、図15の振幅調整器31-naで行うようにしても良い。この場合は、パルス毎に、メインローブで受信される信号の電力が規則的に変化して、サイドローブで受信される信号電力はほぼ一定になり、複数の方向からクラッタや妨害波が入射される場合でも、高精度で目標を検出することができるようになる。
また、この実施の形態2では、アレーアンテナである空中線1がリニアアレーであるものを示したが、例えば、平面アレー等の2次元アレーである場合も同様の効果が得られる。
この実施の形態2では、パルス毎にサンプリングした受信ビデオ信号として説明したが、PRI内をサンプリングして信号処理を行う場合も同様の効果がある。
また、この実施の形態2では、補助アンテナが不要で、H/W規模を小さくできる効果がある。
実施の形態3.
図26はこの発明の実施の形態3によるレーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図27はこの発明の実施の形態3によるレーダ装置の空中線1、送受信切替処理部3及び信号受信処理部50を示す構成図であり、図において、図15と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図27では、素子数N=8の等間隔リニアアレーについて示している。以下、nは素子番号を表すものとする。ただし、n=1,2,・・・,Nである。
信号受信処理部50は各パルスにおいて、複数のアンテナパターンを空中線1に形成し、送受信切替処理部3を通じて、反射RF信号を受信するとともに、その反射RF信号に対する所定の信号処理を実施して、受信ビデオ信号を出力する処理を実施する。なお、信号受信処理部50は信号受信手段を構成している。
信号受信処理部50の振幅調整器51−nは各パルスにおいて、受信機21−nから出力された受信IF信号Vna(n,θ)に対して、受信時の第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)を用いて重み付けを実施して、重み付け後の受信IF信号V”na,Σ,1(n,θ)を位相器52−nに出力するとともに、受信機21−nから出力された受信IF信号Vna(n,θ)に対して、受信時の第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)を用いて重み付けを実施して、重み付け後の受信IF信号V”na,Σ,2(n,θ)を位相器52−nに出力する処理を実施する。
信号受信処理部50の位相器52−nは振幅調整器51−nから出力された重み付け後の受信IF信号V”na,Σ,1(n,θ),V”na,Σ,2(n,θ)の位相を調整し、位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,1(n),V’’’na,Σ,2(n)を加算器53に出力する処理を実施する。
信号受信処理部50の加算器53は位相器52−nから出力された位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,1(n)及び位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,2(n)を加算して、受信ビデオ信号VnΣ(n)を生成する処理を実施する。
信号処理器60はアンテナパターンゲイン調整部61、フィルタ処理部62、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9から構成されており、信号受信処理部50から出力された受信ビデオ信号を解析して、目標候補を検出するとともに、その目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する処理を実施する。
この実施の形態3では、信号処理器60を構成しているアンテナパターンゲイン調整部61、フィルタ処理部62、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9が、専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコン)で構成されているものを想定しているが、信号処理器60がコンピュータで構成されていてもよい。
信号処理器60がコンピュータで構成されている場合、アンテナパターンゲイン調整部61、フィルタ処理部62、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
信号処理器60のアンテナパターンゲイン調整部61は異なるアンテナパターンのサイドローブで受信されるクラッタの受信電力を一定にするために、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)と受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)のサイドローブレベルの差による振幅の差(比)αSLLを用いて、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)のゲインを調整し、ゲイン調整後の受信ビデオ信号V1,G(n)を生成する処理を実施する。
また、アンテナパターンゲイン調整部61はゲイン調整後の受信ビデオ信号V1,G(n)及び受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)をフィルタ処理部62に出力する処理を実施する。なお、アンテナパターンゲイン調整部61はゲイン調整手段を構成している。
信号処理器60のフィルタ処理部62はアンテナパターンゲイン調整部61から出力されたゲイン調整後の受信ビデオ信号V1,G(n)及び受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)に対して、サイドローブで受信された信号を抑圧するフィルタ処理を実施して、フィルタ処理後の受信ビデオ信号VG,MTI(n)を生成する処理を実施する。なお、フィルタ処理部62はフィルタ処理手段を構成している。
次に動作について説明する。
上記実施の形態1では、異なる時刻に得られた受信信号に対し、異なる荷重係数を用いて重み付けを行うものを示したが、この実施の形態3では、同一時刻に得られた受信信号に対し、異なる複数の荷重係数を用いて重み付けを行うことで、複数の受信ビデオ信号を得るようにしている。
この実施の形態3では、送信時のアンテナパターンは変化せず、受信時は同一パルスの受信信号を異なるアンテナパターンで受信した場合について説明する。
信号送信処理部2及び送受信切替処理部3の処理内容は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
信号受信処理部50の受信機21−nは、送受切替器15−nから反射RF信号を受けると、上記実施の形態1と同様に、その反射RF信号に対して、局部発振器11から出力された局部発振信号L(t)を用いてダウンコンバートするとともに、A/D変換を実施することで、受信IF信号Vna(n,θ)を生成し、その受信IF信号Vna(n,θ)を振幅調整器51−nに出力する。
信号受信処理部50の振幅調整器51−nは、受信機21−nから受信IF信号Vna(n,θ)を受けると、下記の式(44)に示すように、その受信IF信号Vna(n,θ)に対して、受信時の第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)を用いて重み付けを実施して、重み付け後の受信IF信号V”na,Σ,1(n,θ)を位相器52−nに出力するとともに、受信機21−nから出力された受信IF信号Vna(n,θ)に対して、受信時の第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)を用いて重み付けを実施して、重み付け後の受信IF信号V”na,Σ,2(n,θ)を位相器52−nに出力する。

Figure 2014102237

式(44)において、nΣは受信時の荷重係数番号を表している。受信時の第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)と受信時の第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)は、上記実施の形態1で説明しているものと同じである。
信号受信処理部50の位相器52−nは、振幅調整器51−nから重み付け後の受信IF信号V”na,Σ,1(n,θ),V”na,Σ,2(n,θ)を受けると、 上記の式(6)にしたがって、メインローブの指向方向θからの受信信号が最大になるように、重み付け後の受信IF信号V”na,Σ,1(n,θ)の位相を調整し、位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,1(n)を加算器53に出力する。
また、上記の式(6)にしたがって、メインローブの指向方向θからの受信信号が最大になるように、重み付け後の受信IF信号V”na,Σ,2(n,θ)の位相を調整し、位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,2(n)を加算器53に出力する。
信号受信処理部50の加算器53は、各パルスにおいて、位相器52−nから位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,1(n)及び位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,2(n)を受けると、下記の式(45)に示すように、位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,1(n)及び位相調整後の受信IF信号V’’’na,Σ,2(n)を加算して、受信時の荷重係数番号nΣの受信ビデオ信号VnΣ(n)を生成する。
Figure 2014102237
図28は受信時の荷重係数番号nΣの加算後の受信ビデオ信号を示す説明図である。
図28(a)に示すように、受信時の荷重係数番号nΣ=1の受信ビデオ信号V(n)は、パルス毎に、受信時の第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)を用いて生成される。
また、図28(b)に示すように、受信時の荷重係数番号nΣ=2の受信ビデオ信号V(n)は、パルス毎に、受信時の第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)を用いて生成される。
したがって、受信ビデオ信号は、異なる荷重係数で生成されており、同時刻に異なるアンテナパターンで受信された信号、つまり、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)と、受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)となる。
信号処理器60のアンテナパターンゲイン調整部61は、異なるアンテナパターンのサイドローブで受信されるクラッタの受信電力を一定にするために、下記の式(46)に示すように、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)と受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)のサイドローブレベルの差による振幅の差(比)αSLLを用いて、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)のゲインを調整し、ゲイン調整後の受信ビデオ信号V1,G(n)を生成する処理を実施する。
Figure 2014102237

また、アンテナパターンゲイン調整部61は、ゲイン調整後の受信ビデオ信号V1,G(n)及び受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)をフィルタ処理部62に出力する。
図29は異なるアンテナパターンのメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタの受信電力(アンテナパターンゲイン調整前の受信電力)を示す説明図である。
図29に示すようにゲイン調整前は、メインローブ、サイドローブで受信される目標、クラッタは、各パルスで同じ電力で受信される。ただし、サイドローブレベルが異なるアンテナパターンで受信されるクラッタの電力が異なる。
アンテナパターンゲイン調整部61によって、サイドローブが同じ電力となるようにゲイン調整をするために、図30に示すように、ゲイン調整後は、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)のサイドローブで受信されるクラッタ(図30(b1))と、受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)のサイドローブで受信されるクラッタ(図30(b2))とは同パルスで同じ受信電力になる。
一方、アンテナパターンゲイン調整部61によって、図30に示すように、ゲイン調整後は、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)のメインローブで受信される目標(図30(a1))と、受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)のメインローブで受信される目標(図30(a2))とは同パルスで異なる受信電力になる。
したがって、アンテナパターンゲイン調整部61のゲイン調整処理によって、図7に示すように、同パルスにおいて、サイドローブはほぼ変化せず、メインローブは規則的に異なる所望の複数の受信アンテナパターンを用いたことと等価になる。
信号処理器60のフィルタ処理部62は、アンテナパターンゲイン調整部61からゲイン調整後の受信ビデオ信号V1,G(n)及び受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)を受けると、下記の式(47)に示すように、ゲイン調整後の受信ビデオ信号V1,G(n)及び受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)の受信ビデオ信号V(n)に対して、サイドローブで受信された信号を抑圧するフィルタ処理を実施して、フィルタ処理後の受信ビデオ信号VG,MTI(n)を生成する。

Figure 2014102237
図31はフィルタ処理部62によるフィルタ処理の効果を示す説明図である。
フィルタ処理部62が、同じパルス(同時刻)の受信ビデオ信号に対して、フィルタ処理を実施することで、図31(a)に示すように、メインローブで受信される目標は、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)のメインローブ(ゲイン調整後)と、受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)のメインローブとの差が残る。
一方、図31(b)に示すように、サイドローブで受信されるクラッタは、受信時の第1のアンテナパターンΣRx,1(Na,θ)のサイドローブ(ゲイン調整後)と、受信時の第2のアンテナパターンΣRx,2(Na,θ)のサイドローブとの差が小さいため、抑圧される。
一般的には、異なる信号に対するフィルタ処理では、通過域と遮断域が生じ、遮断域の目標も抑圧されてしまうが、フィルタ処理部62では、同時刻に異なるアンテナパターンで受信される信号に対してフィルタ処理を実施しており、異なるアンテナパターンで電力がほぼ同じものは抑圧し、電力が異なる場合は、その差分が通過するため、サイドローブに対して全域が遮断域になる。
一方、目標は全域が通過域となるため、サイドローブ抑圧性能が向上したレーダ装置を得ることが可能になる。
ここでは、2つの受信時のアンテナパターンの受信ビデオ信号に対するフィルタ処理について示し、3つ以上の受信時のアンテナパターンの受信ビデオに対するフィルタ処理として、式(47)で表されるMTI(Moving Target Indicator)を用いたが、例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタや、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ処理などを用いてもよい。
信号処理器60の周波数領域変換部7は、フィルタ処理部62がフィルタ処理後の受信ビデオ信号VG,MTI(n)を生成すると、上記の式(14)にしたがってフィルタ処理後の受信ビデオ信号VG,MTI(n)を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)することで、周波数領域の受信ビデオ信号F(k)を生成し、周波数領域の受信ビデオ信号F(k)を目標候補検出部8に出力する。
図32はこの発明の実施の形態3によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタのFFT後の結果を示す説明図である。
図32(b)に示すように、同パルス(同時刻)に異なるアンテナパターンで得られた受信ビデオ信号に対して、フィルタ処理を行う実施の形態3の周波数領域変換部7の処理結果は、図32(a)に示されている単一アンテナパターンの場合の処理結果と異なり、サイドローブクラッタが抑圧されて、目標の検出が可能になっている。
また、図11(b)に示されているパルス間で異なるアンテナパターンで得られた受信ビデオ信号に対する実施の形態1の周波数領域変換部7の処理結果のように、位相πだけ異なる位相に積分されることなく、つまり、目標が2つの位相(目標のドップラ周波数の位相と、目標のドップラ周波数の位相に位相πだけ異なる位相)に積分されない。
このため、この実施の形態3では、目標候補検出部8は、検出された位相に対するドップラ周波数のみ記憶すればよく、処理内容が簡易になる。
また、同パルスに受信時に異なるアンテナパターンで得られた受信ビデオ信号に対してィルタ処理を行うことで、サイドローブクラッタを抑圧するため、アンテナパターンのサイドローブレベルより抑圧性能が向上する。
以降、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9は、上記実施の形態1と同様に動作する。
ただし、上述したように、位相πだけ位相に積分されないため、事前に検出した目標候補の情報が必要なく、また、目標相対速度算出部9は、式(19)にしたがって目標の相対速度vtgtを算出する。
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、全パルスにおいて変化しない送信時のアンテナパターンを用いて送信し、受信時は同パルスにサイドローブレベルが異なるアンテナパターンで受信した信号を生成し、異なるサイドローブで受信された受信信号の電力が同じになるようにアンテナパターンゲイン調整することによって、メインローブで受信される受信信号の電力は規則的に異なり、サイドローブで受信される受信信号はほぼ一定にしている。このため、フィルタ処理によって、メインローブで受信される受信信号の電力は差が残り、サイドローブで受信される受信信号は抑圧され、目標が周波数領域で検出可能になり、サイドローブ抑圧性能を向上したレーダ装置を得ることが可能になる。
また、フィルタ処理後の信号は電力が一定になっているため、FFT後に位相πだけ異なる位相には積分されず、目標検出や目標相対速度算出の処理が簡易になり、処理量の軽減が可能になる。
実施の形態4.
図33はこの発明の実施の形態4によるレーダ装置を示す構成図であり、図において、図1及び図14と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
信号処理器70はアンテナパターンゲイン調整部41、アンテナパターン位相補償部42、フィルタ処理部71、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9から構成されており、信号受信処理部30から出力された受信ビデオ信号を解析して、目標候補を検出するとともに、その目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する処理を実施する。
この実施の形態4では、信号処理器70を構成しているアンテナパターンゲイン調整部41、アンテナパターン位相補償部42、フィルタ処理部71、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9が、専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコン)で構成されているものを想定しているが、信号処理器70がコンピュータで構成されていてもよい。
信号処理器70がコンピュータで構成されている場合、アンテナパターンゲイン調整部41、アンテナパターン位相補償部42、フィルタ処理部71、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
信号処理器70のフィルタ処理部71はアンテナパターン位相補償部42による位相補償後の位相差がπの領域を抑圧する場合、ゲイン調整後の受信時の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と、位相補償後の受信時の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)とに対して、同じパルス番号の受信ビデオ信号のフィルタ処理を実施することで、フィルタ処理後の受信ビデオ信号VΣΔ,MTI(n)を生成する処理を実施する。なお、フィルタ処理部71はフィルタ処理手段を構成している。
次に動作について説明する。
上記実施の形態2では、同一時刻に得られた受信時の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号と受信時の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号を、周波数領域変換部43によって、パルス毎に交互に受信されたように並べた後にFFTを行っているものを示したが、この実施の形態4では、同一時刻に得られた受信時の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号と受信時の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号に対して、フィルタ処理部71がフィルタ処理を実施して、フィルタ処理後の受信ビデオ信号を周波数領域変換部7に与えるようにしている。
信号処理器70のフィルタ処理部71は、信号受信処理部30からゲイン調整後の受信時の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と、位相補償後の受信時の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)とを受けると、下記の式(48)に示すように、ゲイン調整後の受信時の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と、位相補償後の受信時の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)とに対して、同じパルス番号の受信ビデオ信号のフィルタ処理を実施することで、フィルタ処理後の受信ビデオ信号VΣΔ,MTI(n)を生成する。

Figure 2014102237
図34はフィルタ処理部71によるフィルタ処理の効果を示す説明図である。
図34を参照しながら、位相補償量φcor =−π/2(−90度)の場合のフィルタ処理の効果について説明する。
図34(a)に示すように、ゲイン調整後の受信時の4素子のΣパターンのメインローブで受信される目標は、位相補償後の受信時の8素子のΔパターンのメインローブがヌルのため、同じパルス番号のフィルタ処理を行っても影響がなく、そのまま通過し、目標信号が残る。
一方、図34(b)に示すように、位相補償後の位相差が0の場合、ゲイン調整後の受信時の4素子のΣパターンのサイドローブで受信されるクラッタと、位相補償後の受信時の8素子のΔパターンのサイドローブで受信されるクラッタは、電力がほぼ同じで、位相差が0のため、同じパルス番号のフィルタ処理によって抑圧される。
また、図34(c)に示すように、位相補償後の位相差がπの場合、ゲイン調整後の受信時の4素子のΣパターンのサイドローブで受信されるクラッタと、位相補償後の受信時の8素子のΔパターンのサイドローブで受信されるクラッタは、電力がほぼ同じであるが、位相差がπであるため、同じパルス番号のフィルタ処理を行っても、抑圧されない。
したがって、図34(c)に示すように、位相補償後の位相差がπの領域を抑圧する場合、フィルタ処理部71は、入力されたゲイン調整後の受信時の4素子のΣパターンの受信ビデオ信号V’Σ,G(n)と、位相補償後の受信時の8素子のΔパターンの受信ビデオ信号V’Δ,cor(n)とに対して、下記の式(49)にしたがって、同じパルス番号の受信ビデオ信号のフィルタ処理を実施することで、フィルタ処理後の受信ビデオ信号VΣΔ,MTI(n)を生成する。

Figure 2014102237

信号処理器70の周波数領域変換部7は、フィルタ処理部71がフィルタ処理後の受信ビデオ信号VΣΔ,MTI(n)を生成すると、FFTを実施することで、周波数領域の受信ビデオ信号FΣ,Δ(k)を生成する。
図35はこの発明の実施の形態4によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標と、サイドローブで受信されるクラッタのFFT後の結果を示す説明図である。
図35は位相補償量φcor =−π/2(−90度)により、N/2素子のΣパターンとN素子のΔパターンの位相補償後の位相差が0である場合と、位相差がπの場合を示している。
図35(c)に示すように、同じパルス番号の受信時に異なるアンテナパターンで得られた受信ビデオ信号に対してフィルタ処理を行う実施の形態4の周波数領域変換部7の処理結果は、図35(a)に示されている単一アンテナパターンの場合の処理結果と異なり、図35(c)に示す位相差0の領域Aと領域Cのサイドローブクラッタが抑圧され、目標検出が可能になる。
また、図25(c)に示されているパルス毎に交互に、受信時のΣパターンとΔパターンで得られた受信ビデオ信号に対する実施の形態2の周波数領域変換部43の処理結果のように、位相πだけ異なる位相に積分されることなく、つまり、目標が2つの位相(目標のドップラ周波数の位相と、目標のドップラ周波数の位相に位相πだけ異なる位相)に積分されない。
このため、この実施の形態4では、目標候補検出部8は、検出された位相に対するドップラ周波数のみ記憶すればよく、処理内容が簡易になり、処理量軽減が可能になる。
位相補償量φcor =−π/2(−90度)の場合は、領域Aと領域Cが位相差が0になり、サイドローブクラッタは抑圧されるが、領域Bと領域Dが位相差が0になり、サイドローブクラッタは抑圧されるため、抑圧する領域に応じて位相補償量を選択する。あるいは、式(48)又は式(49)のどちらかを選択する。あるいは、位相補償量φcor =−π/2(−90度)の場合とφcor =π/2(90度)の場合のそれぞれの処理結果を得ることで、所望の領域での目標検出が可能になる。
また、同じパルス番号の受信時にΣパターンとΔパターンで得られた受信ビデオ信号に対して、フィルタ処理を行うことでサイドローブクラッタを抑圧するため、アンテナパターンのサイドローブレベルより抑圧性能が向上する。
フィルタ処理部71のフィルタ処理により、上記実施の形態2のように、目標が位相πだけ異なる位相に積分されないため、サイドローブクラッタ領域以外はクラッタフリー領域となるため、クラッタフリー領域での目標検出の利点がありながら、サイドローブクラッタ領域を抑圧し、サイドローブクラッタ内目標検出性能が向上したレーダ装置を得ることが可能になる。
以上で明らかなように、この実施の形態4によれば、全パルスにおいて変化しない送信時のアンテナパターンを用いて送信し、受信時は同じパルス番号に異なる素子数のΣパターンとΔパターンで受信した信号を生成し、ゲイン調整や位相補償後によって、メインローブで受信される受信信号の電力は規則的に異なり、サイドローブで受信される受信信号はほぼ一定になる。このため、フィルタ処理部71のフィルタ処理によって、メインローブで受信される受信信号の電力は残り、サイドローブで受信される受信信号は抑圧され、目標が周波数領域で検出可能になり、サイドローブ抑圧性能を向上したレーダ装置を得ることが可能になる。
また、フィルタ処理部71のフィルタ処理後の信号は電力が一定になっているため、FFT後に位相πだけ異なる位相には積分されず、目標検出や目標相対速度算出の処理が簡易になり、処理量の軽減が可能になる。
実施の形態5.
図36はこの発明の実施の形態5によるレーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
信号処理器80はアンテナパターンゲイン調整部6、符号変調部81、フィルタ処理部82、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9から構成されており、信号受信処理部4から出力された受信ビデオ信号を解析して、目標候補を検出するとともに、その目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する処理を実施する。
この実施の形態5では、信号処理器80を構成しているアンテナパターンゲイン調整部6、符号変調部81、フィルタ処理部82、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9が、専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコン)で構成されているものを想定しているが、信号処理器70がコンピュータで構成されていてもよい。
信号処理器80がコンピュータで構成されている場合、アンテナパターンゲイン調整部6、符号変調部81、フィルタ処理部82、周波数領域変換部7、目標候補検出部8及び目標相対速度算出部9の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
信号処理器80の符号変調部81はアンテナパターンゲイン調整部6によるゲイン調整処理後の受信ビデオ信号V(n)の符号変調を実施して、符号変調後の受信ビデオ信号Vφ(n)を出力する処理を実施する。なお、符号変調部81は符号変調手段を構成している。
信号処理器80のフィルタ処理部82は符号変調部81から出力された符号変調後の受信ビデオ信号Vφ(n)に対して、サイドローブクラッタを抑圧するフィルタ処理を実施して、フィルタ処理後の受信ビデオ信号VMTI(n)を出力する処理を実施する。
次に動作について説明する。
符号変調部81とフィルタ処理部82を追加している点で、上記実施の形態1と相違している。
符号変調部81及びフィルタ処理部82以外は、上記実施の形態1と同様であるため、符号変調部81とフィルタ処理部82の処理内容だけを説明する。
この実施の形態5では、素子数N=8の等間隔リニアアレーの場合について説明する。
符号変調部81は、アンテナパターンゲイン調整部6からゲイン調整処理後の受信ビデオ信号V(n)を受けると、下記の式(50)に示すように、ゲイン調整処理後の受信ビデオ信号V(n)の符号変調を実施して、符号変調後の受信ビデオ信号Vφ(n)をフィルタ処理部82に出力する。なお、符号変調部81による符号変調の処理は、図3の位相器13−nで行うようにしてもよい。

Figure 2014102237
以下、図37と図38を参照しながら、符号変調した場合のコヒーレント積分(FFT)について説明する。
図37はパルス間で電力が一定の信号を符号変調した場合のコヒーレント積分(FFT)の原理を示す説明図である。
ただし、図37(a)は符号変調なしの場合であり、上記実施の形態1と同様である。図37(b)は符号変調ありの場合である。
符号変調なしの場合、ドップラ周波数にのみ積分されるのに対して、符号変調ありの場合、ドップラ周波数に位相πだけ異なる位相に積分される。
図38はパルス間で電力が変化する信号を符号変調した場合のコヒーレント積分(FFT)の結果を示す説明図である。
ただし、図38(a)は符号変調なしの場合であり、上記実施の形態1と同様である。
図38(b)は符号変調ありの場合である。
図38(a)(b)共にドップラ周波数と、ドップラ周波数と位相πだけ異なる位相に積分される。
図39は符号変調を行う場合の目標とクラッタのパルスドップラ処理(FFT)結果を示す説明図である。
ただし、図39(a)は上記実施の形態1のように、符号変調なしで、複数アンテナパターンの場合(パルス間で異なるアンテナパターン)を示し、図39(b)は符号変調ありで、複数アンテナパターンの場合を示している。
図39(a)より、目標がドップラ周波数とπだけ異なる位相に積分されて、目標検出が行われるため、サイドローブクラッタ内の目標候補と判定された目標候補は、目標相対速度を算出するのに式(20)を用いる必要があったが、この実施の形態5では、符号変調部81が符号変調を行うことで、図39(b)に示すように、目標のドップラ周波数で検出されるため、サイドローブクラッタ内の目標候補と判定された目標候補も式(19)にしたがって目標相対速度を算出することが可能になる。このため、算出方法を変更することがなく、信号処理負荷の低減が可能になる。
フィルタ処理部82は、符号変調部81から符号変調後の受信ビデオ信号Vφ(n)を受けると、下記の式(51)に示すように、その受信ビデオ信号Vφ(n)に対して、サイドローブクラッタを抑圧するフィルタ処理を実施して、フィルタ処理後の受信ビデオ信号VMTI(n)を周波数領域変換部7に出力する。
Figure 2014102237
ここで、図40はフィルタ処理部82によるフィルタ処理の効果を示す説明図である。
図40(a)に示すように、フィルタ処理を行わない場合、信号強度が大きいサイドローブクラッタのサイドローブに目標が埋もれ、目標の検出が困難になる。
図40(b)に示すように、フィルタ処理を行う場合、サイドローブクラッタが抑圧されるため、目標の検出性能が向上する。
ここでは、フィルタ処理として、式(51)で表されるMTIを用いているが、FIR(Finite Impulse Response)フィルタや、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタなどのフィルタ処理を用いるようにしてもよい。
以上で明らかなように、この実施の形態5によれば、符号変調部81が、アンテナパターンゲイン調整部6によるゲイン調整処理後の受信ビデオ信号V(n)の符号変調を実施するように構成したので、目標がドップラ周波数に積分されて、サイドローブクラッタがドップラ周波数とπだけ異なる位相に積分されるようになる。そのため、目標のドップラ周波数周辺のサイドローブクラッタが抑圧されて、目標の検出性能が向上する効果が得られる。
また、目標相対速度を算出するのが簡易になり、信号処理負荷の低減が可能になる効果が得られる。
また、フィルタ処理部82が符号変調部81から出力された符号変調後の受信ビデオ信号Vφ(n)に対して、サイドローブクラッタを抑圧するフィルタ処理を実施するように構成したので、サイドローブクラッタが抑圧されて、さらに、目標の検出性能を高めることができる効果が得られる。
実施の形態6.
図41はこの発明の実施の形態6によるレーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
信号受信処理部90は図1の信号受信処理部4と同様に、パルス毎に異なるアンテナパターン(複数のアンテナパターン)を空中線1に形成し、送受信切替処理部3を通じて、反射RF信号を受信するとともに、その反射RF信号に対する所定の信号処理を実施して、受信ビデオ信号を出力する処理を実施する。
ただし、図1の信号受信処理部4では、パルス毎に、2つのアンテナパターンを交互にアレーアンテナに形成するようにしているが、信号受信処理部90では、交互にアレーアンテナに形成する2つのアンテナパターンの順番を途中で変更するようにしている点で相違している。なお、信号受信処理部90は信号受信手段を構成している。
信号処理器91はアンテナパターンゲイン調整部6、周波数領域変換部7、目標候補検出部92及び目標相対速度算出部9から構成されており、信号受信処理部90から出力された受信ビデオ信号を解析して、目標の候補を検出するとともに、その目標候補のドップラ周波数から目標候補の相対速度を算出する処理を実施する。
この実施の形態6では、信号処理器91を構成しているアンテナパターンゲイン調整部6、周波数領域変換部7、目標候補検出部92及び目標相対速度算出部9が、専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコン)で構成されているものを想定しているが、信号処理器91がコンピュータで構成されていてもよい。
信号処理器91がコンピュータで構成されている場合、アンテナパターンゲイン調整部6、周波数領域変換部7、目標候補検出部92及び目標相対速度算出部9の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
信号処理器91の目標候補検出部92は図1の目標候補検出部8と同様に、周波数領域変換部7により変換された周波数領域の信号から目標候補を検出する処理を実施する。
また、目標候補検出部92は信号受信処理部90により単一のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補と、信号受信処理部4により複数のアンテナパターンが用いられた場合の目標候補とを比較することで、サイドローブ内に存在している目標候補を判別する処理を実施する。
さらに、目標候補検出部92はドップラ周波数が異なる複数の信号の強度に基づいて、目標の候補のドップラ周波数を算出する処理を実施する。
なお、目標候補検出部92は目標候補検出手段を構成している。
図42はこの発明の実施の形態6によるレーダ装置の空中線1、送受信切替処理部3及び信号受信処理部90を示す構成図であり、図において、図3と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図42では、素子数N=8の等間隔リニアアレーについて示している。以下、nは素子番号を表すものとする。ただし、n=1,2,・・・,Nである。
振幅調整器101−nは図3の振幅調整器22−nと同様に、受信機21−nから出力された受信IF信号Vna(n,θ)に対して、パルス毎に、第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)と第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)を切り替えながら重み付けを実施し、重み付け後の受信IF信号V”na,ε(n,θ)を位相器102−nに出力する処理を実施する。
ただし、図3の振幅調整器22−nの場合、例えば、パルス番号1〜8において、第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)→第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)→・・・→第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)→第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)の順番で切り替えるようにしている。
一方、図42の振幅調整器101−nの場合、パルス番号1〜4では、第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)→第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)→第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)→第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)の順番で切り替えるが、パルス番号5〜8では、その順番を入れ替えて、第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)→第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)→第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)→第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)の順番で切り替えるようにしている。
位相器102−nはメインローブの指向方向θからの受信信号が最大になるように、振幅調整器101−nから出力された重み付け後の受信IF信号V”na,ε(n,θ)の位相を調整するとともに、受信時の荷重係数に応じて符号変調を実施し、符号変調後の受信IF信号V’’’na,ε(n,θ)を加算器24に出力する処理を実施する。
次に動作について説明する。
この実施の形態6では、素子数N=8の等間隔リニアアレーの場合について説明する。
信号受信処理部90の振幅調整器101−nは、受信機21−nから受信IF信号Vna(n,θ)を受けると、その受信IF信号Vna(n,θ)に対して、パルス毎に、第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)と第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)を切り替えながら重み付けを実施し、重み付け後の受信IF信号V”na,ε(n,θ)を位相器102−nに出力する。
ここで、図43は振幅調整器101−nの受信時の荷重係数を示す説明図である(パルス数N=8の場合)。
図43(a)は上記実施の形態1における図3の振幅調整器22−nの受信時の荷重係数を示し、図43(b)はこの実施の形態6における図42の振幅調整器101−nの受信時の荷重係数を示している。
上記実施の形態1における図3の振幅調整器22−nは、図43(a)に示すように、パルス毎に、第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)と第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)を交互に切り替えているが、振幅調整器101−nは、図43(b)に示すように、パルス番号の前半と後半で、交互に切り替える荷重係数の順番を変更している。
即ち、振幅調整器101−nは、下記の式(52)に示すように、パルス番号1〜4では、第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)→第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)→第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)→第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)の順番で切り替えるが、パルス番号5〜8では、その順番を入れ替えて、第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)→第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)→第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)→第1の荷重係数wRx,Σ,1(n)の順番で切り替えるようにしている。ただし、式(52)はパルス数が偶数の場合を示し、Nはパルス数を表している。

Figure 2014102237
信号受信処理部90の位相器102−nは、振幅調整器101−nから重み付け後の受信IF信号V”na,ε(n,θ)を受けると、下記の式(53)にしたがって、メインローブの指向方向θからの受信信号が最大になるように、重み付け後の受信IF信号V”na,ε(n,θ)の位相を調整する。

Figure 2014102237

ただし、式(53)の符号±は、素子番号nが奇数の場合+、偶数の場合−が代入される。
また、位相器102−nは、図44に示すように、受信時の荷重係数に応じて符号変調を実施し(受信時の荷重係数が第2の荷重係数wRx,Σ,2(n)の場合、位相調整後の受信IF信号V’’’na,ε(n,θ)に対して“−1”を乗算する)、符号変調後の受信IF信号V’’’na,ε(n,θ)を加算器24に出力する。
ここでは、位相器102−nが符号変調を行うようにしているが、上記実施の形態5のように、符号変調部81を信号処理器に搭載して、符号変調部81が符号変調を行うようにしてもよい。
ここで、図45はこの発明の実施の形態6によるレーダ装置により観測されるメインローブで受信される目標のFFT後の結果を示す説明図である。
以下、図45を参照しながら、振幅調整器101−n及び位相器102−nが処理を行う効果を説明する。
図45(a)は上記実施の形態1での目標のFFT後の結果を示しており、一定の順番でパルス毎に交互に受信時の荷重係数を用いることで、位相がπだけ異なる2つの位相に積分されて、スペクトルの形状がほぼ一致し、真の目標ドップラ周波数を特定することができない。そのため、上記実施の形態1では、事前に得た目標候補の情報を用いて、真の目標ドップラ周波数を判定する必要がある。
図45(b)はこの実施の形態6での目標のFFT後の結果を示している。
目標のドップラ周波数は積分されて、目標のドップラ周波数とπだけ異なる位相は積分されないように、振幅調整器101−n及び位相器102−nは、異なる順番で受信時の荷重係数を用い、かつ、受信時の荷重係数に対応して符号変調している。
このため、位相がπだけ異なる位相はヌルになり、その周辺はΔパターンの形状を示し、真の目標ドップラ周波数の位相ωは積分されて、その周辺はsinc関数を示すため、真の目標ドップラ周波数の位相ωを特定することが可能になる。
したがって、この実施の形態6では、事前に目標候補の情報を得る必要がなく、処理量の低減が可能になる。
また、サイドローブクラッタはΔパターンを示すため、目標と誤検出する確率を低減することが可能になる。
信号処理器91の目標候補検出部92は、周波数領域変換部7から周波数領域の受信ビデオ信号F(k)を受けると、図1の目標候補検出部8と同様に、その受信ビデオ信号F(k)に対して、例えば、信号電力に基づく、CFAR処理を実施することで、目標の候補を検出する。
また、目標候補検出部92は、目標候補のドップラ周波数の位相ωの信号と、目標候補のドップラ周波数の位相ωとπだけ異なる位相の信号とを用いて、図46に示すように、信号分解能の2倍の範囲内の信号の両側のピークより強度が大きい場合、目標候補のドップラ周波数の位相ωと判定し、そのドップラ周波数を算出する。
また、位相がπだけ異なる位相に目標候補が検出されず、信号分解能の2倍の範囲内にほぼ同じ強度を持つ目標候補がない場合、目標候補のドップラ周波数の位相ωと判定して、ドップラ周波数を算出する。
信号処理器91の目標相対速度算出部9は、目標候補検出部92が目標候補を検出すると、式(19)にしたがって、目標候補検出部92により算出された目標候補のドップラ周波数fd,tgtから目標候補の相対速度vtgtを算出する。
以上で明らかなように、この実施の形態6によれば、振幅調整器101−nが、パルス番号の前半と後半で、交互に切り替える荷重係数の順番を変更し、位相器102−nが、受信時の荷重係数に応じて符号変調を実施するように構成したので、事前に目標候補の情報を得ることなく、目標のドップラ周波数を算出することが可能になり、信号処理の負荷を低減することができる効果を奏する。また、目標相対速度をアンビギュティになく、算出することができる効果を奏する。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
1 空中線(アレーアンテナ)、2 信号送信処理部(信号送信手段)、3 送受信切替処理部、4 信号受信処理部(信号受信手段)、5 信号処理器、6 アンテナパターンゲイン調整部(ゲイン調整手段)、7 周波数領域変換部(周波数領域変換手段)、8 目標候補検出部(目標候補検出手段)、9 目標相対速度算出部(相対速度算出手段)、10 表示器、11 局部発振器、12 パルス変調器、13−1〜13−8 位相器、14−1〜14−8 振幅調整器、15−1〜15−8 送受切替器、16−1〜16−8 素子アンテナ、21−1〜21−8 受信機、22−1〜22−8 振幅調整器、23−1〜23−8 位相器、24 加算器、30 信号受信処理部(信号受信手段)、31−1〜31−8 振幅調整器、32−1〜32−8 位相器、33a,33b,33c 加算器、34 減算器、40 信号処理器、41 アンテナパターンゲイン調整部(ゲイン調整手段)、42 アンテナパターン位相補償部(位相補償手段)、43 周波数領域変換部(周波数領域変換手段)、44 目標相対速度算出部(相対速度算出手段)、50 信号受信処理部(信号受信手段)、51−1〜51−8 振幅調整器、52−1〜52−8 位相器、53 加算器、60 信号処理器、61 アンテナパターンゲイン調整部(ゲイン調整手段)、62 フィルタ処理部(フィルタ処理手段)、70 信号処理器、71 フィルタ処理部(フィルタ処理手段)、80 信号処理器、81 符号変調部(符号変調手段)、82 フィルタ処理部、90 信号受信処理部(信号受信手段)、91 信号処理器、92 目標候補検出部(目標候補検出手段)、101−1〜101−8 振幅調整器、102−1〜102−8 位相器。

Claims (24)

  1. 複数の素子アンテナから構成されているアレーアンテナと、
    単一のアンテナパターン又は複数のアンテナパターンを上記アレーアンテナに形成し、上記アンテナパターンを用いて、キャリア信号が所定の時間間隔でパルス変調されている信号を空間に放射する信号送信手段と、
    複数のアンテナパターン又は単一のアンテナパターンを上記アレーアンテナに形成し、上記アンテナパターンを用いて、上記信号送信手段から放射された後、目標に反射されて戻ってきた信号を受信する信号受信手段と、
    上記信号受信手段により受信された信号を周波数領域の信号に変換する周波数領域変換手段と
    を備えたレーダ装置。
  2. 信号受信手段は、信号送信手段が単一のアンテナパターンを用いて、信号を空間に放射している場合、複数のアンテナパターンを用いて、目標に反射されて戻ってきた信号を受信し、上記信号送信手段が複数のアンテナパターンを用いて、信号を空間に放射している場合、単一のアンテナパターン又は複数のアンテナパターンを用いて、目標に反射されて戻ってきた信号を受信することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  3. 信号送信手段が単一のアンテナパターン、信号受信手段が複数のアンテナパターンを用いる場合、
    上記信号送信手段は、全パルスで共通のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、上記アンテナパターンを用いて、キャリア信号が所定の時間間隔でパルス変調されている信号を空間に放射し、
    上記信号受信手段は、パルス毎に異なるアンテナパターンを上記アレーアンテナに形成し、上記アンテナパターンを用いて、目標に反射されて戻ってきた信号を受信する
    ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  4. 信号受信手段は、パルス毎に、複数のアンテナパターンを一定順番にアレーアンテナに形成することを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
  5. 信号受信手段は、パルス毎に、アレーアンテナに形成する複数のアンテナパターンの順番を途中で変更することを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
  6. 信号送信手段が単一のアンテナパターン、信号受信手段が複数のアンテナパターンを用いる場合、
    上記信号送信手段は、全パルスで共通のアンテナパターンをアレーアンテナに形成し、上記アンテナパターンを用いて、キャリア信号が所定の時間間隔でパルス変調されている信号を空間に放射し、
    上記信号受信手段は、各パルスにおいて、複数のアンテナパターンを上記アレーアンテナに形成し、複数のアンテナパターンを用いて、目標に反射されて戻ってきた信号を受信する
    ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  7. 信号受信手段は、パルス毎にメインローブまたはサイドローブのレベルが規則的に変化するアンテナパターンをアレーアンテナに形成することを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
  8. 信号受信手段は、パルス毎にメインローブまたはサイドローブが規則的に変化する複数のアンテナパターンをアレーアンテナに形成することを特徴とする請求項6記載のレーダ装置。
  9. 信号受信手段は、パルス毎に、メインローブまたはサイドローブが規則的に変化する複数のアンテナパターンとして、異なる荷重係数のΣパターンをアレーアンテナに形成することを特徴とする請求項7または請求項8記載のレーダ装置。
  10. 信号受信手段は、パルス毎にメインローブが規則的に変化する複数のアンテナパターンとして、ΣパターンとΔパターンをアレーアンテナに形成することを特徴とする請求項7または請求項8記載のレーダ装置。
  11. 信号受信手段は、アレーアンテナを構成している複数の素子アンテナの間隔が同じである場合、Σパターンが使用する素子アンテナの数と比べて、Δパターンが使用する素子アンテナの数が2倍であることを特徴とする請求項10記載のレーダ装置。
  12. 信号受信手段は、Σパターンが使用する素子アンテナの数と、Δパターンが使用する素子アンテナの数とが同数である場合、Σパターンが使用する素子アンテナの間隔と比べて、Δパターンが使用する素子アンテナの間隔が2倍であることを特徴とする請求項10記載のレーダ装置。
  13. 信号受信手段は、Σパターン及びΔパターンの荷重係数として、所望領域のサイドローブに応じた窓関数を用いることを特徴とする請求項11または請求項12記載のレーダ装置。
  14. 信号送信手段が単一のアンテナパターン、信号受信手段が複数のアンテナパターンを用いる場合、
    上記信号受信手段により複数のアンテナパターンのメインローブで受信される信号の受信電力を変化させることで、複数のアンテナパターンのサイドローブで受信される信号の受信電力を均一にするゲイン調整を実施し、ゲイン調整後の受信信号を周波数領域変換手段に出力するゲイン調整手段を備えた
    ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  15. 信号送信手段が単一のアンテナパターン、信号受信手段が複数のアンテナパターンを用いる場合、
    上記信号受信手段により複数のアンテナパターンで受信された信号間の位相差を補償し、位相差補償後の受信信号を周波数領域変換手段に出力する位相補償手段を備えた
    ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  16. 信号送信手段が単一のアンテナパターン、信号受信手段が複数のアンテナパターンを用いる場合、
    上記信号受信手段により複数のアンテナパターンで受信された信号の符号変調を実施し、符号変調後の信号を周波数領域変換手段に出力する符号変調手段を備えた
    ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  17. 信号送信手段が単一のアンテナパターン、信号受信手段が複数のアンテナパターンを用いる場合、
    上記信号受信手段により複数のアンテナパターンのサイドローブで受信された信号を抑圧するフィルタ処理を実施し、フィルタ処理後の受信信号を周波数領域変換手段に出力するフィルタ処理手段を備えた
    ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  18. 周波数領域変換手段は、周波数領域の信号におけるサイドローブを抑圧する窓関数処理を実施することを特徴とする請求項1から請求項17のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
  19. 周波数領域変換手段は、信号受信手段により受信された信号の信号点数よりも多い点数で周波数領域に変換する処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項18のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
  20. 周波数領域変換手段により変換された周波数領域の信号から目標の候補を検出する目標候補検出手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項19のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
  21. 目標候補検出手段は、信号受信手段により単一のアンテナパターンが用いられた場合の目標の候補と、上記信号受信手段により複数のアンテナパターンが用いられた場合の目標の候補とを比較することで、サイドローブ内に存在している目標の候補を判別することを特徴とする請求項20記載のレーダ装置。
  22. 目標候補検出手段は、ドップラ周波数が異なる複数の信号の強度に基づいて、目標の候補のドップラ周波数を算出することを特徴とする請求項20記載のレーダ装置。
  23. 目標候補検出手段により検出された目標の候補のドップラ周波数から目標の候補の相対速度を算出する相対速度算出手段を備えたことを特徴とする請求項20から請求項22のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
  24. 信号送信手段は、想定するクラッタの周波数帯域に対応する時間間隔で、キャリア信号がパルス変調されている信号を空間に放射することを特徴とする請求項1から請求項23のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
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