JP2014101836A - 内燃機関の排気浄化システム - Google Patents

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Abstract

【課題】SCRとEGR装置を備えた内燃機関の排気浄化システムにおいて、SCRの温度が高く、かつ、EGRガス量の増大が制限されているときに、大気中へ排出されるNOxの増加を抑制する。
【解決手段】SCRの温度が排気内の窒素酸化物を還元するための所定範囲を超えるとき、または、内燃機関の運転状態に基づいてSCRの温度がこの所定範囲を超えると予測されるときであって、EGR装置による窒素酸化物の低減が制限されるときに、SCRの温度を低下させる制御を行うようにした。
【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関の排気浄化システムに関し、特に選択還元型触媒とEGR装置を備えた排気浄化システムに関する。
従来、内燃機関の排気通路に選択還元型触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)を設け、排気内の窒素酸化物(NOx)をアンモニア(NH)等の還元剤を用いて窒素(N)に還元することによって浄化する技術が知られている。また、排気通路から吸気通路へ排気の一部をEGRガスとして供給する(還流させる)EGR装置を設け、燃料の燃焼時に生成されるNOx量を低減させる技術も知られている。そして、双方を備えた内燃機関の排気浄化システムにおいて、低負荷運転時、暖機運転時やSCRによる浄化が効果的でないときに、EGR装置によってNOx量を低減させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、EGR装置によってSCRに流入するNOx量を調節する技術も知られている(例えば、特許文献2、3を参照)。
特開2002−512666号公報 特開2009−544883号公報 特開2006−274844号公報 特開2006−29239号公報
ところで、SCRは、該SCRの温度が凡そ400℃以上に上昇すると、還元剤を吸着(または吸蔵)する能力が低下する傾向にある。つまり、当該温度域においては、SCRのNOxの浄化能(還元能)も低下する傾向にあるため、未浄化のNOx量が増加する可能性がある。ここで、EGR装置も併せて備える内燃機関であれば、吸気通路に還流されるEGRガス量を増大させて気筒内の燃焼温度を低下させることによって、NOxの発生を抑制させることが考えられる。しかしながら、内燃機関の排気通路に設けられたパティキュレートフィルタの粒子状物質の捕集量が多い場合等は、EGRガス量の増大が制限されるため、上述の方法でNOxの発生を抑制させることは困難である。
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、SCRの温度が高く、かつ、EGRガス量の増大が制限されているときに、大気中へ排出されるNOxの増加を抑制することができる技術の提供にある。
上記した課題を解決するために、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムは、
内燃機関の排気通路に設けられ、還元剤により排気内の窒素酸化物を選択還元する選択還元型触媒と、
前記排気通路を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気通路に還流させるEGR装置と、
前記EGR装置によるEGRガス量を増大させることによって排気内の窒素酸化物を低減させる窒素酸化物低減手段と、
前記選択還元型触媒の温度が排気内の窒素酸化物を還元するための所定範囲を超えると
き、または、前記内燃機関の運転状態に基づいて前記選択還元型触媒の温度が前記所定範囲を超えると予測されるときであって、前記窒素酸化物低減手段による窒素酸化物の低減が制限されるときに、前記選択還元型触媒の温度を低下させる制御を行う制御手段と、
を備えるようにした。
一般に、EGR装置によって還流されるEGRガス量を増大させると、混合気内のEGRガス量が増大して燃焼温度が低くなるため、窒素酸化物(以下、「NOx」と記す)の発生量が減少する。上述の「窒素酸化物低減手段」は、この方法を用いて排気内のNOxを低減させる。そして、上述の「窒素酸化物低減手段による窒素酸化物の低減が制限されるとき」は、EGR装置によってEGRガス量を増大させてNOxの発生を低減させることができないときを意味する。また、SCRの温度が、排気内のNOxを還元するのに必要な量の還元剤(アンモニア等)を吸着または吸蔵(以下、単に「吸着」と記す)できる所定範囲内にある場合は、吸着された還元剤を用いて排気中のNOxを還元させてNやHOに転化させることができる。つまり、流入する排気内のNOxを還元するためには、SCRの温度がこの所定範囲(以下、「NOx浄化ウィンド」と記す)内にあることが必要である。
これに対し、内燃機関の高負荷運転が継続された場合等には、SCRの温度がNOx浄化ウィンドの上限温度を超える可能性がある。このときには、SCRに吸着される還元剤の量が必要量を下回るため、SCRのNOx浄化能が低下して未浄化のまま大気中へ排出されるNOxの量が多くなる可能性がある。
ここで、SCRのNOx浄化能が低下したときであっても、窒素酸化物低減手段によってEGRガス量を増大させれば、排気内のNOxが低減されることによって大気中へ排出されるNOxの増加を抑制することができる。しかしながら、内燃機関の構成や運転状態によっては、窒素酸化物低減手段による窒素酸化物の低減が制限される場合がある。この場合には、EGRガス量の増大によって排気内のNOx量を低減させることができない。
そこで、本発明の内燃機関の排気浄化システムは、SCRの温度が排気内のNOxを還元するための所定範囲(NOx浄化ウィンド)を超えるとき、または、内燃機関の運転状態に基づいてSCRの温度がこの所定範囲を超えると予測されるときであって、窒素酸化物低減手段によるNOxの低減が制限されるときに、制御手段によってSCRの温度を低下させるようにした。これにより、過昇温によるSCRのNOx浄化能の低下を抑制して、大気中へ排出されるNOxの増加を抑制することができる。なお、「予測されるとき」とは、SCRの温度がNOx浄化ウィンド内にあるものの、内燃機関が高負荷運転状態等にあるために、当該温度がさらに上昇してNOx浄化ウィンドを超えると予測されるときを意味している。つまり、本発明の排気浄化システムによれば、SCRの温度がNOx浄化ウィンド内にあるときから予めSCRの温度を低下させる制御を行うことによって、大気中へ排出されるNOxの増加を予防的に抑制することも可能になる。
なお、内燃機関がディーゼルエンジン等である場合には、内燃機関から排出されるカーボン等の粒子状物質(パティキュレート・マター。以下、「PM」と記す)を捕集するパティキュレートフィルタが排気通路に配置される場合がある。この場合には、上述の制御手段は、パティキュレートフィルタに捕集されたPMの捕集量が所定量以上のときに、SCRの温度を低下させるようにしてもよい。ここで、EGR装置によって還流されるEGRガス量が増大すると、混合気の燃焼温度が低くなって燃焼によるPMの発生量が増大する傾向にあるため、パティキュレートフィルタに流入するPM量が増大する可能性がある。つまり、パティキュレートフィルタに所定量以上のPMが捕集されているときは、捕集量の過度な増大を抑制するために、窒素酸化物低減手段によるNOxの低減が制限されて、EGRガス量の増大が制限される。そこで、本発明の内燃機関の浄化システムによれば
、パティキュレートフィルタに捕集されたPMの捕集量が所定量以上のときに、制御手段によってSCRの温度を低下させる制御が行われる。これにより、PM捕集量の増大によるパティキュレートフィルタの目詰まりや、再生処理(捕集されているPMを酸化及び除去するための処理)の実行頻度が増加する事態を回避しながら、大気中へ排出されるNOxの増加を抑制することができる。
また、本発明の内燃機関の排気浄化システムにおいて、上述の制御手段は、内燃機関の排気の温度がSCRの温度より低いときは、SCRに流入する排気量を増大させてこのSCRの温度を低下させてもよい。これにより、SCRの温度を効果的に低下させて、大気中へ排出されるNOxの増加を抑制することができる。
本発明によれば、SCRとEGR装置を備えた内燃機関の排気浄化システムにおいて、SCRの温度が高く、かつ、EGRガス量の増大が制限されているときに、大気中へ排出されるNOxの増加を抑制することができる。
本発明を適用する内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。 SCRの温度とNOx浄化率との関係を示す図である。 本発明の実施例におけるNOx低減制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。 EGRガス量とNOx発生量と排気温度との関係を示す図である。 燃料噴射時期と排気温度との関係を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
[実施例1]
まず、本発明の第1の実施例について説明する。図1は、本発明が適用される内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、複数の気筒を有する自動車用の圧縮着火式の内燃機関(ディーゼルエンジン)である。なお、本発明を適用する内燃機関は、圧縮着火式の内燃機関に限られず、希薄燃焼運転される火花点火式の内燃機関(ガソリンエンジン)であってもよい。
内燃機関1は、気筒内へ燃料を噴射する燃料噴射弁1aを備えている。また、内燃機関1には、吸気通路2と排気通路3が接続されている。吸気通路2は、大気中から取り込まれた新気(空気)を内燃機関1の気筒へ導く通路である。排気通路3は、内燃機関1の気筒内から排出される既燃ガス(排気)を流通させるための通路である。
吸気通路2の途中には、吸気絞り弁(スロットル弁)4が配置されている。スロットル弁4は、吸気通路2の通路断面積を変更することにより、内燃機関1の気筒内に吸入される空気量を調整する弁機構である。なお、スロットル弁4は、弁体と該弁体を開閉駆動するための電動機とを備え、電動機は後述するECU10によって制御される。
排気通路3の途中には、第一触媒ケーシング5と第二触媒ケーシング6が上流側から直列に配置されている。第一触媒ケーシング5は、筒状のケーシング内に酸化触媒とパティキュレートフィルタを内装している。その際、酸化触媒は、パティキュレートフィルタの上流に配置される触媒担体に担持されてもよく、あるいはパティキュレートフィルタに担
持されてもよい。
また、第二触媒ケーシング6は、筒状のケーシング内に、選択還元型触媒(SCR)が担持された触媒担体を収容したものである。触媒担体は、例えば、コーディライトやFe−Cr−Al系の耐熱鋼から成るハニカム形状の横断面を有するモノリスタイプの基材に、アルミナ系またはゼオライト系の活性成分(担体)をコーティングしたものである。さらに、触媒担体には、酸化能を有する貴金属触媒(例えば、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等)が担持されている。
なお、第二触媒ケーシング6の内部において、SCRより下流には酸化触媒を担持した触媒担体が配置されるようにしてもよい。その場合の酸化触媒は、後述する還元剤添加弁7からSCRへ供給される還元剤のうち、SCRをすり抜けた還元剤を酸化するためのものである。
第一触媒ケーシング5と第二触媒ケーシング6との間の排気通路3には、アンモニア(NH)またはアンモニアの前駆体である還元剤を排気中へ添加(噴射)するための還元剤添加弁7が取り付けられている。還元剤添加弁7は、ニードルの移動により開閉される噴孔を有する弁装置である。還元剤添加弁7は、ポンプ70を介して還元剤タンク71に接続されている。ポンプ70は、還元剤タンク71に貯留されている還元剤を吸引するとともに、吸引された還元剤を還元剤添加弁7へ圧送する。還元剤添加弁7は、ポンプ70から圧送されてくる還元剤を排気通路3内へ噴射する。
ここで、還元剤タンク71に貯留される還元剤としては、尿素やカルバミン酸アンモニウム等の水溶液や、アンモニアガスを用いることができる。本実施例では、還元剤として、尿素水溶液を用いる例について述べる。
還元剤添加弁7から尿素水溶液が噴射されると、尿素水溶液が排気とともに第二触媒ケーシング6へ流入する。その際、尿素水溶液が排気や第二触媒ケーシング6の熱を受けて熱分解または加水分解される。尿素水溶液が熱分解または加水分解されると、アンモニアが生成される。このようにして生成されたアンモニアは、SCRに吸着(または吸蔵)される。SCRに吸着されたアンモニアは、排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)と反応して窒素(N)や水(HO)を生成する。つまり、アンモニアは、NOxの還元剤として機能する。
また、内燃機関1は、吸気通路2と排気通路3を連通するEGR通路100、及び該EGR通路100の通路断面積を変更するEGR弁101を含むEGR装置を備えている。EGR通路100は、排気通路3を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気通路2のスロットル弁4より下流へ導く通路である。EGR弁101は、前記EGR通路100の通路断面積を変更することにより、排気通路3から吸気通路2へ供給されるEGRガス量を調整する弁機構である。なお、EGR弁101は、弁体と該弁体を開閉駆動するための電動機とを備え、電動機は後述するECU10によって制御される。
また、第一触媒ケーシング5と第二触媒ケーシング6との間の排気通路3には、該排気通路3内へ空気(2次エア)を供給する2次エア供給装置15が設けられている。この2次エア供給装置15も、後述するECU10によって制御される。
このように構成された内燃機関1には、ECU10が併設されている。ECU10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等を備えた電子制御ユニットである。ECU10は、第一排気温度センサ8、第二排気温度センサ9、クランクポジションセンサ11、アクセルポジションセンサ12、水温計13、差圧センサ14、第一NOxセンサ1
6、第二NOxセンサ17等の各種センサと電気的に接続されている。
第一排気温度センサ8は、第一触媒ケーシング5より下流、かつ第二触媒ケーシング6より上流の排気通路3に配置され、第一触媒ケーシング5から流出し、第二触媒ケーシング6に流入する排気の温度に相関する電気信号を出力する。第二排気温度センサ9は、第二触媒ケーシング6より下流の排気通路3に配置され、第二触媒ケーシング6から流出する排気の温度、つまり、第二触媒ケーシング6に収容されたSCRの温度に相関する電気信号を出力する。
クランクポジションセンサ11は、内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)の回転位置に相関する電気信号を出力する。アクセルポジションセンサ12は、内燃機関1が搭載される自動車のアクセルペダルの操作量(アクセル開度)に相関する電気信号を出力する。水温計13は、内燃機関1の冷却水温度に相関する電気信号を出力する。また、差圧センサ14は、排気通路3に配置されており、第一触媒ケーシング5の上流側の排気圧力と下流側の排気圧力との差圧に相関する電気信号を出力する。上述のように、第一触媒ケーシング5はパティキュレートフィルタを内装しているため、差圧センサ14による出力値からパティキュレートフィルタのPM捕集量を求めることが可能になる。
また、第一NOxセンサ16は、第一触媒ケーシング5より下流、かつ第二触媒ケーシング6より上流の排気通路3に配置され、第二触媒ケーシング6に流入する排気内のNOx濃度に相関する電気信号を出力する。また、第二NOxセンサ17は、第二触媒ケーシング6より下流の排気通路3に配置され、第二触媒ケーシング6から流出する排気内のNOx濃度に相関する電気信号を出力する。上述のように、第二触媒ケーシング6はSCRを内装しているため、第一NOxセンサ16及び第二NOxセンサ17による出力値から、SCRのNOx浄化率(SCRへ流入するNOx量に対するSCRで浄化されるNOx量の比率)を求めることが可能になる。
そして、ECU10は、燃料噴射弁1a、スロットル弁4、還元剤添加弁7、2次エア供給装置15、ポンプ70、及びEGR弁101等の各種機器と電気的に接続されている。また、ECU10は、前記した各種センサの出力信号に基づいて、前記各種機器を電気的に制御する。例えば、ECU10は、内燃機関1の燃料噴射制御や、還元剤添加弁7から間欠的に還元剤を噴射させる添加制御等の既知の制御を実行する。また、ECU10は、第二触媒ケーシング6に収容されたSCRの温度が高温域に達して、SCRのNOx浄化率が低下したときには、SCRを通過して大気中へ排出されるNOxの増大を抑制するNOx低減処理を実行する。以下、本実施例におけるNOx低減制御について詳述する。
まず、NOx低減制御の実行時期について図2を用いて説明する。図2は、SCRの温度とNOx浄化率の関係を示すグラフであり、横軸は温度を示し、縦軸はNOx浄化率を示している。なお、図2に示されるNOx浄化率の下限値とは、SCR内に流入するNOxを還元するのに必要なNOx浄化率の所定値(最小値)であって、予め実験等によって求められる。つまり、SCRのNOx浄化率が当該下限値未満のときには、大気中へ排出される未浄化のNOx量が多くなる可能性がある。
図2に示されるように、SCRの温度が第一温度Te1より低いときは、NOx浄化率が下限値より低くなる。これは、SCRの温度が低すぎるときには、触媒活性が低いために還元能力も低いからである。一方、SCRの温度が、より高温域にある第二温度Te2より高いときも、NOx浄化率が下限値より低くなっている。これは、高温域においてはSCRの吸着可能なアンモニア量が徐々に低下し、SCRの温度が第二温度Te2を超えると、SCR内に流入するNOxを還元するのに必要な量のアンモニアが吸着されなくなるためである。つまり、SCRは、第一温度Te1から第二温度Te2までの温度範囲(
NOx浄化ウィンド)において有効なNOx浄化能力を発揮する。なお、前記第二温度Te2は、SCRの担持量や容量等によって変化するが、凡そ400℃程度である。
ところで、内燃機関1の高負荷運転状態が継続された場合等は、SCRの温度が第二温度Te2より高くなる可能性がある。SCRの温度が第二温度Te2より高くなると、SCRのNOx浄化率が上述の下限値より低くなるために、未浄化で大気へ排出されるNOxの量が多くなる可能性がある。ここで、EGR装置によって吸気通路2に還流されるEGRガス量を増大させると、混合気内のEGRガス量が増大して燃焼温度が低くなるために、NOxの発生量が減少する。このようにして内燃機関1から排出されるNOxを低減させることにより、大気へ排出されるNOxの増加を抑制することが可能になる。
しかしながら、内燃機関1のように、排気通路3にPMを捕集するパティキュレートフィルタを有する内燃機関では、PMの捕集量が所定量以上の場合には、EGR装置によってEGRガス量を増大させることが好ましくないときがある。これは、EGRガス量が増大すると、混合気の燃焼温度が低くなってPMが発生しやすくなるために、パティキュレートフィルタに流入するPM量が増大する可能性があるからである。つまり、PMの捕集量が所定量以上のときにEGRガス量の増大が実行されると、NOx発生量が低減されるものの、パティキュレートフィルタのPM捕集量がさらに増大する。その結果、パティキュレートフィルタの目詰まりや、再生処理の実行頻度の増加等の事態が生じる虞がある。特に、再生処理が頻繁に実行される事態になると、パティキュレートフィルタが高熱に晒される頻度が増すために、寿命の点から好ましくない。そこで、このような事態を回避するために、本実施例においては、パティキュレートフィルタに捕集されたPMの捕集量が所定量以上の場合には、EGRガス量の増大がECU10によって制限される。つまり、この制限中においては、過昇温によってSCRのNOx浄化能が低下していても、EGRガス量の増大によるNOx低減は実行されない。
そこで、ECU10は、SCRの温度が上述の第二温度Te2を超えるときであって、EGR装置によるEGRガス量の増大が制限されるときには、SCRの温度を低下させてNOx浄化率を上昇させる。これにより、SCRの浄化能が回復されるため、EGRガス量を増大させることなく、大気へ排出されるNOxの増加を抑制することが可能になる。
次に、本実施例におけるNOxの低減制御の実行手順について図3に沿って説明する。図3は、NOx低減制御が実行される際にECU10が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。図5の制御ルーチンは、ECU10のROMに記憶されているルーチンであり、ECU10によって周期的に実行されるルーチンである。
制御ルーチンが開始されると、ECU10は、S101の処理において、内燃機関1の運転状態、SCRの温度Tscr、SCRに流入する排気の温度Tex及びパティキュレートフィルタのPM捕集量ΣPMを読み込む。内燃機関1の運転状態としては、機関回転数、水温、アクセル開度や燃料噴射量等である。これらの値は上述の各種センサ等からECU10へ出力される。ここで、SCR温度Tscrとしては、第二排気温度センサ9の検出値を用いればよく、また、排気温度Texとしては、第一排気温度センサ8の検出値が用いればよい。また、パティキュレートフィルタのPM捕集量ΣPMは、差圧センサ14から出力される第二触媒ケーシング6の前後差圧と、排気通路3の排気流量を検出する不図示のエアフローメータの測定値等から演算される。
次に、S102の処理では、ECU10は、S101で取得されたSCR温度Tscrが、NOx浄化ウィンドの上限値である第二温度Te2を超えているかを判定する。この処理において肯定判定された場合(Tscr>Te2)は、SCRのNOx浄化率が既に排気内のNOxを浄化するのに必要な所定値(図2の下限値)を下回っていると考えられ
る。そこで、ECU10は、NOx低減処理を実行すべくS103の処理に進む。一方、本処理において否定判定された場合は、SCRのNOx浄化率が必要な所定値より低下していないことを意味するため、NOx低減処理は不要と判断されて本ルーチンは終了する。
次に、S103の処理では、ECU10は、S101の処理で取得されたパティキュレートフィルタのPM捕集量ΣPMが、所定の閾捕集量ΣPMth以上であるかが判定される。ここで、閾捕集量ΣPMthは、予め実験等によって求められた量であって、パティキュレートフィルタの目詰まりや再生処理の実行頻度の増加を予防するために適当な量である。本処理において否定判定された場合は、PM量の増大が許容されるため、ECU10は、S105の処理へ進んでEGRガス量を増大させる処理を実行する。上述のように、EGRガス量が増大されると、燃焼温度の低下によってNOxの発生量が低下する。これにより、内燃機関10から排出されるNOx量が低減されるため、SCRのNOx浄化率が過昇温によって低下しているときであっても、大気に排出されるNOxの増加を抑制することが可能になる。なお、この処理において増大されたPMがパティキュレートフィルタに捕集されても、パティキュレートフィルタに目詰まり等が発生することは回避される。そして、S105の処理が終了すると、本ルーチンは終了する。
これに対し、S103の処理において肯定判定された場合、つまり、パティキュレートフィルタのPM捕集量ΣPMが閾捕集量ΣPMth以上である場合は、PM量の増大が制限されるために、EGRガス量の増大によるNOxの低減は制限される。そこで、ECU10は、SCRの温度を低下させてNOx浄化率を上昇させるべく、S104の処理へ進む。
S104の処理では、ECU10は、内燃機関1が燃料カット(燃料噴射弁1aよる燃料噴射の停止)を実行しており、かつ、SCRに流入する排気の温度TexがSCR温度Tscr未満であるかを判定する。この処理において肯定判定が下される場合としては、例えば、内燃機関1が搭載される自動車の減速時が考えられる。肯定判定された場合は、SCRに流入する排気を用いてSCRを冷却することができるため、ECU10は、S106の処理へ進んで、より効果的な冷却を実行するためにSCRに流入する排気量を増大させる処理を行う。一方、本処理において否定判定された場合は、排気温度を低下させるためにS107の処理に進む。
S106の処理では、ECU10は、吸気通路2に配置されたスロットル弁4をできる限り開放する処理を行う。これにより、より多くの空気を各気筒内に流入させて、内燃機関1から排出される排気量を増大させることができる。また、ECU10は、EGR弁101をできる限り閉塞する処理を行ってもよい。これにより、排気通路3から吸気通路1に還流されるEGRガス量が低減されるため、より多くの排気をSCR内へ流入させることができる。なお、燃料カット中に内燃機関1から排出される排気は、実質的には空気であるためにNOx量が極めて低い。そのため、燃料カット中に排気量を増大させれば、SCRに流入するNOx量を増大させることなくSCRを冷却することが可能になる。
以上のようにして、SCRに流入する排気量が増大されると、SCRが効果的に冷却されてNOx浄化率が上昇する。これにより、大気に排出されるNOxの増加が抑制される。なお、SCRに流入する空気の流量を増大させる方法としては、第二触媒ケーシング6の上流側に配置された2次エア供給装置15を用いてもよい。この方法においても、SCRに低温の空気を供給することができるため、効果的にSCRを冷却することができる。そして、S106の処理が終了すると、本ルーチンは終了する。
一方、S107の処理では、ECU10は、排気温度Texを低下させる処理を行う。
つまり、上述のS104の処理において、排気温度TexがSCR温度Tscrより高いと判定されているため、SCRを冷却させるためには、排気温度TexをSCR温度Tscr未満にする必要がある。そこで、ECU10は、本処理において、EGRガス量の減量や燃料噴射時期の進角化を実行して排気温度Texを低下させる。以下、これらの処理について図面を用いて説明する。
図4は、吸気通路に還流されるEGRガス量を減少させた場合における、排気温度[℃]とNOx発生量(内燃機関1から単位時間に排出されるNOxの量)[g/h]との関係を示す図である。なお、図4中においては、右へ進むほどEGRガス量が少なくなっている。図4に示されるように、EGRガス量が減少するほど、排気温度が低下している。これは、EGRガス量が減少すると、気筒内に流入する吸気(空気とEGRガス)の温度が低下するため、排出される排気全体の温度も低下するからである。つまり、EGR装置によって吸気通路2に還流されるEGRガス量を減少させれば、内燃機関1の排気の温度を低下させることができる。より具体的には、ECU10は、EGR通路100に配置されたEGR弁101を閉塞させる処理を行ってEGRガス量を減少させる。このようにして温度を低下させた排気がSCRに流入すると、SCRの温度も低下するため、SCRのNOx浄化率を上昇させることができる。
なお、図4に示されるように、EGRガス量が減少するとNOx発生量は増加する。これは、EGRガス量が減少すると、吸気内の酸素濃度が増大することによって、燃焼時のピーク温度が高くなってNOxの発生が増大するからである。しかしながら、S107の処理においては、EGRガス量が減少されるとSCRのNOx浄化率は上昇するため、大気に排出されるNOxが増大することは抑制される。ここで、EGR弁101の閉塞量は、EGRガス量の減少によって増大するNOx量が浄化される限りにおいて適宜定めればよく、完全に閉塞することによってEGRガス量をゼロにしてもよい。
次に、図5は、燃料噴射弁1aによるメイン噴射の時期[degATDC]と、排気温度[℃]との関係を示す図である。なお、図5中においては、左へ進むほどメイン噴射の時期が早くなっているが、より詳細には、左へ進むほどメイン噴射時期の遅角量が減少されて圧縮上死点に近づいているといえる。つまり、図5には、メイン噴射による混合気の着火時期が圧縮上死点に近づくほど、排気温度が低下することが示されている。これは、着火時期が圧縮上死点に近づくほど、より多くの燃焼エネルギーがピストンを下降させる仕事に費やされることになるため、排出される排気のエネルギーがより低位になって温度が低下するからである。したがって、燃料噴射弁1aによるメイン噴射の時期が進角化されると、内燃機関1から排出される排気の温度が低下する。その結果、温度が低下した排気によってSCRが冷却されるため、SCRのNOx浄化率を上昇させることができる。
なお、図5には示されていないが、メイン噴射時期が圧縮上死点に近づくほど、混合気の着火時点における圧縮比が高くなって燃焼温度が上昇するため、NOxの発生量が増大する。しかしながら、S107の処理においては、メイン噴射時期の進角化によってSCRのNOx浄化率は上昇するため、大気に排出されるNOxが増大することは抑制される。ここで、噴射時期の進角量は、進角化によって増大するNOx量を浄化できる限りにおいて適宜定めればよい。
以上より、ECU10は、S107の処理において、EGRガス量の減量やメイン噴射時期の進角化を実行して排気温度を低下させる。なお、これらの処理は、一方のみでもよいし、両方を併せて実行してもよい。このようにして、燃料噴射時においても排気温度を低下させることによって、SCRを冷却させてNOx浄化率を上昇化させることが可能になる。その結果、大気に排出されるNOxの増加を抑制することが可能になる。そして、この処理が終了すると、本ルーチンは終了する。
以上のようにしてECU10が図3の制御ルーチンを実行することにより、本実施例におけるNOx低減処理が実行される。これにより、過昇温によってSCRのNOx浄化率が必要な所定値より低くなっているときであって、EGRガス量の増大が制限されているときであっても、SCRの温度を低下させてNOx浄化率を上昇させることが可能になる。その結果、大気へ排出されるNOxの増大を抑制することができる。
また、本ルーチンによれば、パティキュレートフィルタのPM捕集量が所定量以上であることによってEGRガス量の増大が制限されているときであっても、SCRの温度を低下させることによって、PM量を増大させることなく大気へ排出されるNOxの増大を抑制することができる。
また、本実施例によれば、SCRに流入する排気の温度がSCRの温度よりも低い場合には、排気量を増大させる処理を行う。これにより、例えば、内燃機関の燃料カット時において、大気へ排出されるNOxを増大させることなく、効率的にSCRを冷却することが可能になる。
[実施例2]
以下、本発明の第2の実施例について説明する。なお、実施例2と上記した実施例1との相違点は、図3のフローチャートのS102の処理において否定判定(SCR温度Tscrが第二温度Te2を超えていない)された後に、さらにSCR温度Tscrが第二温度Te2を超えると予測される点にある。以下、これについて説明する。
S102の処理において、SCR温度Tscrが第二温度Te2を超えていないと判定された場合であっても、内燃機関1の運転状態によっては、当該判定後においてSCR温度Tscrが上昇して第二温度Te2を超えるときがある。そこで、本実施例においては、当該判定後において、内燃機関1の運転状態に基づいて、SCR温度Tscrがさらに上昇して第二温度Te2を超えるかを予測する。ここで、SCRの温度がさらに上昇すると予測される内燃機関1の運転状態とは、例えば、燃料噴射弁1aによる燃料噴射量が高噴射量で維持されている状態や、さらに高い噴射量の操作が実行されるとき等であり、S101の処理で読み込まれた運転状態から適宜判断される。そして、内燃機関1の運転状態がこのような状態にあり、さらにSCR温度TscrがNOx浄化ウィンド内にあるものの、第二温度Te2近傍の温度にあるとき等には、ECU10は、SCR温度Tscrが第二温度Te2を超えると予測する。
このようにして、SCR温度Tscrが第二温度Te2を超えると予測された場合には、ECU10は、S103の処理に進んで、NOx低減処理を進行させる。つまり、本実施例によれば、SCR温度Tscrが第二温度Te2を超えることによってNOx浄化率が必要な所定値より低くなる前に、予防的にNOx低減処理が実行される。特に、EGRガス量の増大が制限される場合には、SCR温度が第二温度Te2を超える前に、S106やS107の処理が実行されてSCRが冷却される。これにより、過昇温によるSCRのNOx浄化率の低下を予め回避することができるため、大気へ排出されるNOxの増大をより効果的に抑制することができる。また、上述したように、S107の処理において排気温度を低下させる処理が実行されると、一時的にNOx量が増大する可能性がある。しかしながら、本実施例によれば、S107の処理が実行される場合であっても、SCRのNOx浄化率は必要な所定値より低くなっていない。したがって、本実施例によれば、S107の処理によって増大したNOxの大気への排出も、より効果的に抑制することが可能になる。
1 内燃機関
1a 燃料噴射弁
2 吸気通路
3 排気通路
5 第一触媒ケーシング
6 第二触媒ケーシング
8 第一排気温度センサ
9 第二排気温度センサ
10 ECU
100 EGR通路
101 EGR弁

Claims (3)

  1. 内燃機関の排気通路に設けられ、還元剤により排気内の窒素酸化物を選択還元する選択還元型触媒と、
    前記排気通路を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気通路に還流させるEGR装置と、
    前記EGR装置によるEGRガス量を増大させることによって排気内の窒素酸化物を低減させる窒素酸化物低減手段と、
    前記選択還元型触媒の温度が排気内の窒素酸化物を還元するための所定範囲を超えるとき、または、前記内燃機関の運転状態に基づいて前記選択還元型触媒の温度が前記所定範囲を超えると予測されるときであって、前記窒素酸化物低減手段による窒素酸化物の低減が制限されるときに、前記選択還元型触媒の温度を低下させる制御を行う制御手段と、
    を備える内燃機関の排気浄化システム。
  2. 請求項1において、前記排気通路に設けられたパティキュレートフィルタをさらに備え、
    前記制御手段は、前記選択還元型触媒の温度が前記所定範囲を超えるとき、または、前記内燃機関の運転状態に基づいて前記選択還元型触媒の温度が前記所定範囲を超えると予測されるときであって、前記パティキュレートフィルタに捕集された粒子状物質の捕集量が所定量以上のときに、前記選択還元型触媒の温度を低下させる制御を行う内燃機関の排気浄化システム。
  3. 請求項1または2において、前記制御手段は、前記選択還元型触媒に流入する排気の温度が該選択還元型触媒の温度より低いときに、前記選択還元型触媒に流入する排気量を増大させて該選択還元型触媒の温度を低下させる制御を行う内燃機関の排気浄化システム。
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