JP2014101497A - シート成形用樹脂組成物、それを用いた樹脂シート及び加熱処理用包装体 - Google Patents

シート成形用樹脂組成物、それを用いた樹脂シート及び加熱処理用包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性、柔軟性、耐熱性、耐低温衝撃性、2次加工適性に優れたシート成形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A−i)〜(A−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)1〜98wt%、(B−i)を満たす改質材(B)1〜50wt%および(C−i)を満たす分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)1〜50wt%を含有するプロピレン系樹脂組成物(X)からなることを特徴とするシート成形用樹脂組成物。
(A−i)融解ピーク温度が120〜170℃のプロピレン(共)重合体成分30〜70wt%、α−オレフィン含有量が7〜30wt%のプロピレン−α−オレフィンランダム重合体成分70〜30wt%を含有する。
(A−ii)MFRが0.5〜20g/10分
(B−i)エチレン−α−オレフィン共重合体およびスチレン系エラストマーから選ばれる改質材
(C−i)溶融張力(MT)(単位:g)が、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、または、 MT≧15
のいずれかを満たす。
【選択図】なし

Description

本発明は、シート成形用樹脂組成物、それを用いた樹脂シート及び加熱処理用包装体に関し、詳しくは、加圧蒸気処理もしくは加圧熱水処理などの加圧下での加熱処理を行なっても、変形を起こし難い、優れた耐熱性を有しながら、良好な透明性、柔軟性、耐衝撃性、2次加工適性を併せ持ち、さらには良好な成形性をも有するシート用樹脂組成物、それを用いたプロピレン系樹脂シート及び加熱処理用包装体に関する。
レトルト用包装体や薬液等の輸液バッグなど、加圧処理を行って殺菌、滅菌が必要な包装袋に求められる性能として、内容物を確認可能なための透明性、空気孔を開けずとも排液可能にするための柔軟性、極寒地(例えば−20℃といった環境)での運搬時に乱雑に取り扱っても破袋しないための耐低温衝撃性、121℃の滅菌、殺菌処理でも変形、融着しないための耐熱性、および易製袋性のためのヒートシール特性等の二次加工適性等が挙げられる。
とりわけ輸液バッグに関しては、かつては上述の性能を満たす材料として、塩化ビニル樹脂が使用されていたが、可塑剤の溶出、廃棄処理に難があること、近年の地球環境への配慮等の問題があることから、ポリオレフィン系樹脂に代替されてきている。
ポリエチレンを主構成とする輸液バッグは、柔軟性、耐衝撃性に優れるものの、耐熱性に乏しく、オーバーキル条件である121℃の滅菌温度では変形等の外観不良が発生し、輸液バッグとしての性能を満たすことはできない(例えば特許文献1参照。)。一方、ポリプロピレンを主構成とする輸液バッグは、良好な耐熱性を有しているが、輸液バッグ材料としては硬く、低温での耐衝撃性が不足しているため、こちらも上述の性能を満たすことはできない(例えば特許文献2参照。)。
そこで、ポリプロピレンにエラストマー成分を添加し、柔軟性・耐衝撃性を付与した技術が開示されている(例えば特許文献3参照。)。しかし、ポリプロピレンの耐熱性が犠牲となり、また、滅菌後の低分子量成分がブリードアウトし、透明性も悪化する問題がある。エラストマー成分としてスチレン系エラストマーを添加する技術の開示(例えば特許文献4参照。)もあるが、ブロッキングが起こりやすくなり、生産性に優れているとは言い難く、また、スチレン系エラストマーは、オレフィン系エラストマーに比較して高価であり、コスト的にも課題が残る。
それとは別に、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて連続重合によりエラストマー成分を添加するポリプロピレンブロック共重合体が開発されている(例えば特許文献5参照。)が、やはり、滅菌後のブリードアウトが発生し、透明性は良くない。一方で、メタロセン系触媒を用いて連続重合によりエラストマー成分を添加するプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる水冷インフレーションフィルム(例えば、特許文献6参照。)が提案されており、40℃条件下でのブリードアウトの改良が見られているが、低温での耐衝撃性が未だ不十分なものであった。また、異質ブレンドを含む医療用フィルム(例えば特許文献7参照)が提案されているが、低温での耐衝撃性が不十分なものであった。
このように、耐熱性・透明性・柔軟性・耐衝撃性を十分バランスよく備え、尚かつ、低コストの輸液バッグ材料が求められているが、満足する材料が見つかっていないのが現状であった。
また、輸液バッグ製袋工程には、スパウト、排出ポート・注入ポートなどの射出部品などとの融着させる工程があり、十分な融着のためにはフィルムを溶融させることが必要である。そのために非常に過酷(高温、高圧、長時間等)なヒートシールがされる。十分な溶融状態では、シールバーに溶融樹脂がくっついてしまい、生産性の悪化は否めない。そこで、積層により外層、内層の融点差をつけることにより、外層を固体のまま、内層を溶融させる技術が開示されている(例えば特許文献7参照。)。しかし、内層がポリエチエレン系の樹脂であるため、滅菌温度115℃には耐えられるが、121℃滅菌ではフィルム内面同士が融着してしまい、耐熱性は十分ではない。
さらに、特許文献8では、透明、柔軟、耐熱性、耐衝撃性(落袋衝撃)に優れたシートが提案されている。しかしながら、極低温下(例えば−20℃)での耐衝撃性が不足しており、寒冷地での輸送時にシートが破壊される恐れがあった。
上述の課題である極低温下での耐衝撃性および製袋工程適性の付与、詳しくは、製袋後のヒートシール部の形状保持を可能にする技術(特許文献9参照。)が開示されている。しかし、ヒートシール部の大変形が抑えられる形状保持温度は向上しているものの、形状保持温度以下の温度での変形は発生しており、形状保持率の改良の余地は残されている。また、特許文献9記載の組成物は、シート成形安定性が十分でなく、例えば、シート表面荒れの解消や、物性の異方性を抑制するために、リップ幅が広かったり、ブロー比の小さい成形機での成形を行う場合は、シートの厚み変動が大きく、良好なシートを得ることはできない課題があった。
特開平9−308682号公報 特開平9−99036号公報 特開平9−75444号公報 特開平9−324022号公報 特開2006−307072号公報 特表2008−524391号公報 特開2007−245490号公報 特開2010−138211号公報 特開2012−82405号公報
加熱処理用包装袋に必要な性能である透明性、耐熱性、柔軟性、耐衝撃性、2次加工適性およびシート成形性をバランスよく兼ね備えるには、耐熱性を発現するプロピレン(共)重合体と、透明性を損なわずに柔軟化可能な特定のα−オレフィン量を添加したプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の組み合わせを用いることが効果的である。一方で、そのままでは過酷なヒートシール条件に耐えられず、ヒートシール部の肉厚が薄くなり、内容物を入れた状態で加熱処理包装体を落下させた時に、ヒートシールぎわから亀裂が入り、破袋してしまう可能性がある。また、リップ幅が広かったり、ブロー比が小さい成形機では、ドローレゾナンスと呼ばれる伸長流動不安定現象が発生する可能性がある。
したがって、本発明の目的は、このような上記の課題を解決し、柔軟性、透明性、耐熱性、耐衝撃性、特に極低温下(例えば−20℃)での耐衝撃性に優れ、かつ、製袋時の過酷なヒートシール条件に耐えられる上に、シート成形性にも優れたシート用樹脂組成物およびそれを用いた加熱処理用包装体を提供することにある。
本発明者らは、上記問題点の解決のために多様な検討、解析を実施した結果、特定のプロピレン−α−オレフィン共重合体の混合物と、特定の改質材と、分岐構造を有する特定のポリプロピレン樹脂を、それぞれ特定量配合することにより、上記問題点をバランス良く解決できることを見出し、以上の樹脂組成により、上記課題を解決するシートが得られるとの知見を得て、本発明に至った。
本発明は、以下のシート成形用樹脂組成物、プロピレン系樹脂シート及び加熱処理用包装体を提供する。
[1]下記(A−i)〜(A−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)1〜98wt%、下記(B−i)を満たす改質材(B)1〜50wt%および下記(C−i)を満たす分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)1〜50wt%(ただし、A+B+C=100wt%)を含有するプロピレン系樹脂組成物(X)からなることを特徴とするシート成形用樹脂組成物。
・プロピレン系樹脂組成物(A):
(A−i)プロピレン系樹脂組成物(A)は、融解ピーク温度(Tm(A1))が120〜170℃のプロピレン(共)重合体成分(A1)30〜70wt%、α−オレフィン含有量(E[A2])が7〜30wt%のプロピレン−α−オレフィンランダム重合体成分(A2)70〜30wt%を含有する。
(A−ii)メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
・改質材(B):
(B−i)エチレン−α−オレフィン共重合体およびスチレン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の改質材。
・分岐構造を有するプロピレン樹脂(C):
(C−i)溶融張力(MT)(単位:g)が、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、または、 MT≧15
のいずれかを満たす。
[2]上記[1]に記載のシート成形用樹脂組成物からなる層を少なくとも一層以上含むことを特徴とするプロピレン系樹脂シート。
[3]厚みが0.01mm〜1.0mmであることを特徴とする上記[2]に記載のプロピレン系樹脂シート。
[4]上記[2]または[3]に記載のプロピレン系樹脂シートを用いた加熱処理用包装体。
[5]加熱処理用包装体が輸液バックであることを特徴とする上記[4]に記載の加熱処理用包装体。
本発明のシート成形用樹脂組成物およびそれを用いたプロピレン系樹脂シート、加熱処理用包装体における基本的な要件は、少なくとも一層に特定のプロピレン系樹脂組成物(A)、特定の改質材(B)、分岐構造を特定の有するポリプロピレン樹脂(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物(X)を用いることにあり、プロピレン系樹脂組成物(X)に用いるプロピレン系樹脂組成物(A)は、特定の範囲に融解ピーク温度示すプロピレン(共)重合体成分(A1)と、特定のα−オレフィン含有量を持つプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)を含有することで、耐熱性、透明性、柔軟性が高く、得られるシートに透明性および柔軟性を付与することができる。
プロピレン系樹脂組成物(X)に用いる改質材(B)は、エチレン−α−オレフィン共重合体およびスチレン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の改質材であり、得られるシートに優れた柔軟性と耐低温衝撃性を付与させることができる。
また、プロピレン系樹脂組成物(X)に用いる分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)は、溶融張力により特定されるものであり、得られるシートに良好な2次加工適性とシート成形性を付与させることができる。
したがって、本発明のプロピレン系樹脂シートおよび該シートを用いた加熱処理用包装体は、透明性、柔軟性、耐低温衝撃性、2次加工適性に加え、シート成形性に優れるものであり、レトルト包装体、輸液バッグ等の用途に、特に好適に使用することができる。
製造例(A−1)で得られたプロピレン系樹脂組成物(A−1)の水冷インフレシートの固体粘弾性測定(DMA)により得られた温度−損失正接(tanδ)曲線を示すグラフ図であり、単一なピークが0℃以下に有することの一例を示す。
本発明のシート成形用樹脂組成物は、前記(A−i)〜(A−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)1〜98wt%、前記(B−i)を満たす改質材(B)1〜50wt%および前記(C−i)を満たす分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)1〜50wt%(ただし、A+B+C=100wt%)を含有するプロピレン系樹脂組成物(X)からなることを特徴とする。
そして、本発明のプロピレン系樹脂シートは、上記シート成形用樹脂組成物からなる層を少なくとも一層以上含むことを特徴とし、さらに、本発明の加熱処理用包装体は、このプロピレン系樹脂シートを用いたことを特徴とする。
以下、本発明のプロピレン系樹脂組成物(X)の各構成成分、各構成成分の製造、プロピレン系樹脂シート及び加熱処理用包装体について、詳細に説明する。
<主層(1)プロピレン系樹脂組成物(X)>
プロピレン系樹脂シートの主層に用いるプロピレン系樹脂組成物(X)を構成するプロピレン系樹脂組成物(A)、改質材(B)、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)につき、以下説明する。
(1)プロピレン系樹脂組成物(A)
・プロピレン系樹脂組成物(A)の特性
プロピレン系樹脂組成物(X)の一成分として用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)(以下、成分(A)ということもある。)は、透明性、柔軟性が高いことが必要である。これらの要求を高い水準で満たすために、成分(A)は、以下の(A−i)〜(A−ii)の条件を満たすことが必要である。
・成分(A)の基本規定
成分(A)は、下記条件(A−i)〜(A−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)である。
(A−i):
融解ピーク温度(Tm(A1))が120〜170℃のプロピレン(共)重合体成分(A1)30〜70wt%、炭素数が2または4〜8のα−オレフィン含有量(α[A2])が7wt%以上で30wt%未満のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)70〜30wt%を含有する。
(A−ii):
メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
・プロピレン(共)重合体成分(A1)の融解ピーク温度(Tm(A1))
成分(A1)は、プロピレン系樹脂組成物(成分(A))において結晶性を決定する成分である。成分(A)の耐熱性を向上させるためには、成分(A1)の融解ピーク温度Tm(A1)(以下、Tm(A1)ということもある。)が高いことが必要である反面、Tm(A1)が高すぎると、柔軟性や透明性が阻害される。また、Tm(A1)が低すぎると、耐熱性が悪化し、ヒートシール時に薄肉化が進んでしまう。Tm(A1)は、120〜170℃の範囲にあることが必要である。
ここでの融解ピーク温度Tmは、示差走査型熱量計(TAインスツルメンツ社製DSC)で求める値であり、具体的には、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度として求める値である。
・成分(A)中に占める成分(A1)の割合
成分(A)中に占める成分(A1)の割合W(A1)は、成分(A)に耐熱性を付与する成分であるが、W(A1)が多すぎると、柔軟性や透明性および耐衝撃性を充分に発揮することができない。そこで成分(A1)の割合は、70wt%以下である必要がある。
一方、成分(A1)の割合が少なくなりすぎると、Tm(A1)が十分であっても耐熱性が低下し、滅菌、殺菌工程において変形してしまう恐れがあるため、成分(A1)の割合は、30wt%以上でなければならない。
・プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)中のα−オレフィン含有量α[A2]
成分(A2)は、成分(A)の柔軟性と耐衝撃性及び透明性を向上させるのに必要な成分であり、好ましくはメタロセン系触媒を用いて得られる。一般に、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体において、α−オレフィン含有量が増加することで、結晶性は低下し、柔軟性向上効果は大きくなるため、成分(A2)中のα−オレフィン含有量α[A2](以下、α[A2]ということもある。)は、7wt%以上であることが必要である。
一方、成分(A2)の結晶性を下げるためにα[A2]を増加させ過ぎると、透明性が低下してしまう。そこで本発明に用いられる成分(A)中の成分(A2)のα[A2]は、30wt%以下であることが必要である。
成分(A1)および成分(A2)に使用するコモノマーとしてのα−オレフィンは、好ましくは炭素数が2または4〜20のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどのプロピレン以外のα−オレフィン、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物等から選択される。これらのコモノマーは、二種以上共重合されていてもよい。コモノマーは、エチレン及び/又は1−ブテンであるのが望ましい。
・成分(A)中に占める成分(A2)の割合
成分(A)中に占める成分(A2)の割合W(A2)は、多過ぎると耐熱性が低下するため、W(A2)は、70wt%以下に抑えることが必要である。
一方、W(A2)が少なくなり過ぎると、柔軟性と耐衝撃性の改良効果が得られないため、W(A2)は、30wt%以上であることが必要である。
ここで、W(A1)及びW(A2)は、温度昇温溶離分別法(TREF)により求める値であり、α−オレフィン含有量α[A1]とα[A2]は、NMRにより求める値である。
具体的には、次の方法による。
・温度昇温溶離分別法(TREF)によるW(A1)とW(A2)の特定
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等の結晶性分布を温度昇温溶離分別法(TREF)により評価する手法は、当業者によく知られているものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本発明に用いられる成分(A)は、成分(A1)と成分(A2)各々の結晶性に大きな違いがあり、また、両成分がメタロセン系触媒を用いて製造されると、各々の結晶性分布が狭くなっていることから、双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く分別することが可能である。
本発明において、TREF測定は、具体的には次のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒である−15℃のo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)を1ml/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
得られた溶出曲線において、成分(A1)と成分(A2)は、結晶性の違いにより各々の温度T(A1)とT(A2)にその溶出ピークを示し、その差は、充分大きいため、中間の温度T(A3)(={T(A1)+T(A2)}/2)において、ほぼ分離が可能である。
ここで、T(A3)までに溶出する成分の積算量をW(A2)wt%、T(A3)以上で溶出する部分の積算量をW(A1)wt%と定義すると、W(A2)は、成分(A2)の量と対応しており、T(A3)以上で溶出する成分の積算量W(A1)は、結晶性が比較的高い成分(A1)の量と対応している。
測定に用いた装置、仕様を以下に示す。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー製デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm
窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
〔測定条件〕
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)
試料濃度:5mg/ml
試料注入量:0.1ml
溶媒流:1ml/分
・α[A1]とα[A2]の特定
各成分のα−オレフィン(好ましくはエチレン)含有量α[A1]とα[A2]は、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、各成分を分離し、NMRにより各成分のα−オレフィン(好ましくはエチレン)含有量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecukes 21 314−319(1988)に開示されたような測定方法をいう。
具体的には、本発明において以下の方法を用いた。
・昇温カラム分別
直径50mmで高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/ml)200mlを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(A3)(TREF測定に得られる)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(A3)に保持したまま、T(A3)のo−ジクロロベンゼンを20ml/分の流速で800ml流すことにより、カラム内に存在するT(A3)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次に、10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒のo−ジクロロベンゼンを20ml/分の流速で800ml流すことにより、T(A3)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mlまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーを濾過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
13C−NMRによるエチレン含有量の測定
上記分別により得られた成分のα−オレフィン(好ましくはエチレン)含有量α[A2]は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した、13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置
(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/ml
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules 17 1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、表1の通りである。表中Sααなどの記号は、Carmanら(Macromolecules 10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 2014101497
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中には、PPP、PPE、EPE、PEP、PEE、及びEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度とスペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]は、トリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は、全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。
従って、[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 …(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)は、Tββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体には、少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、表2に示す微小なピークを生じる。
Figure 2014101497
正確なα−オレフィン(エチレン)含有量を求めるには、これら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本発明のエチレン含有量は、実質的に異種結合を含まないチーグラー・ナッタ系触媒で製造された共重合体の解析と同じく(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は、以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
(ここで、Xは、モル%表示でのエチレン含有量である。)
・プロピレン系樹脂組成物(A)の製造方法
本発明に用いられる成分(A)の好ましい製造方法としては、メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度Tm(A1)が120〜170℃の範囲にあるプロピレン(共)重合体成分(A1)を30〜70wt%、第2工程でα−オレフィン含有量α[A2]が7wt%以上で30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)を70〜30wt%、逐次重合することで得られる。メタロセン系触媒を用いて、第1工程で成分(A1)を重合し、第2工程で成分(A2)を逐次重合する具体的方法は、例えば特開2005−132979号公報に記載の方法を用いることができ、ここで言及したことで同公報の全内容が本明細書に取り込まれたものとする。
また、成分(A)は、逐次重合品でなくても、上記融解ピーク温度Tm(A1)を満たすプロピレン−α−オレフィン共重合体(A1)と、α−オレフィン含有量α[A2]を満たすプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)のブレンド物であっても良い。
(A−ii)成分(A)のメルトフローレートMFR(A)
本発明に用いられる成分(A)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)(以下、MFR(A)ということもある。)は、0.5〜20g/10分の範囲であることが必要である。
MFR(A)は、成分(A1)および成分(A2)に対応する各々のMFR(以下、MFR(A1)およびMFR(A2)ということもある。)の比率によって決定付けられるが、本発明においては、MFR(A)が0.5〜20g/10分の範囲にあれば、MFR(A1)およびMFR(A2)は、本発明の目的を損ねない範囲で任意である。ただし、両者のMFR差が大きく異なる場合には、外観不良等が生じる恐れがあるため、MFR(A1)およびMFR(A2)は、共に0.5〜20g/10分の範囲にあることが望ましい。
MFR(A)が低く過ぎると、成形機スクリュの回転への抵抗が大きくなるために、モータ負荷や先端圧力が上昇するばかりでなく、シートの表面が荒れることで外観を悪化させるといった問題が生じるため、MFR(A)は、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上である。
一方で、MFR(A)が高すぎると、成形が不安定になりやすく、均一なシートを得ることが困難となるため、MFRは、好ましくは20g/10分以下であり、より好ましくは10g/10分以下である。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
メルトフローレート(MFR)は、逐次重合の場合は、重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量を制御したりすることにより、容易に調整を行うことができる。
また、成分(A)は、下記特性(A−iii)を有することが好ましい。
(A−iii)水冷インフレ法にて成形した200μm厚のシートで測定した固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60℃〜20℃の範囲に観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークは、単一ピークを0℃以下に示すこと。
成分(A)が相分離構造を取る場合には、成分(A1)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(A2)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは、単一ではなくなる。この場合には、シートとしての透明性が悪化しやすいという問題が生じる。
なお、測定に使用する装置やサンプルの柔軟性によっては、200μm厚のシートでは応力の検知が不十分となり、測定が困難な場合がある。このような場合は当該シートを複数枚重ねて、例えば2枚重ねて測定を行えばよく、当該方法で測定することによって同様の結果が得られる。
ここで、固体粘弾性測定(DMA)は、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。周波数は1Hzを用い、測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると、0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは、非晶部のガラス転移を観測するものであり、本発明では、本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
なお、水冷インフレ法による200μm厚のシートの製造条件は、後記の実施例で詳記した方法により行う。但し、後述の方法において、各押出機に投入する原料はプロピレン系樹脂組成物(A)のみである。
・プロピレン系樹脂組成物(A)の構成要素の制御方法
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)の各要素は、以下のように制御され、プロピレン系樹脂組成物(A)に必要とされる構成要件を満たすよう製造することができる。
成分(A1)の融解ピーク温度(Tm(A1))の制御は、重合槽に供給するプロピレンとα−オレフィンの量比を、適宜調整する等により可能である。融解ピーク温度(Tm(A1))を、例えば120℃〜170℃に、制御するためには、使用する触媒の種類にも依存するが、α−オレフィン含有量(α[A1])が概ね0〜10w%程度の範囲で調整することにより、所望の融解ピーク温度(Tm(A1))を有する成分(A1)を製造できる。
また、成分(A2)のα−オレフィン含有量(α[A2])を所定の範囲に制御するためには、逐次重合による場合は、第2工程における重合槽に供給するプロピレンとα−オレフィンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレンα−オレフィンランダム共重合体中のα−オレフィン含量の関係は、メタロセン触媒を用いる場合、その種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするα−オレフィン含有量(α[A2])を有する成分(A2)を製造することができる。
成分(A1)の量W(A1)と成分(A2)の量W(A2)は、逐次重合の場合は、成分(A1)を製造する第1工程の製造量と第2工程での成分(A2)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。
成分(A)のメルトフローレートの調整は、前述したとおりである。
・プロピレン系樹脂組成物(X)における成分(A)の割合
プロピレン系樹脂組成物(成分(A))の主層構成に占める割合は、成分(A)と成分(B)および成分(C)の合計量100wt%に対して、1〜98wt%の範囲であることが必要である。
成分(A)の含有量が少なすぎると、良好な柔軟性、透明性が得られない。一方で、成分(A)の含有量が多くなりすぎると、低温下での耐衝撃性が低下しやすくなる。
(2)改質材(B)
・成分(B)の特性
本発明のプロピレン系樹脂シートのプロピレン系樹脂組成物(X)の一成分として用いられる改質材(B)(以下、成分(B)ということもある。)は、エチレン−α−オレフィン共重合体およびスチレン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の改質材であることが必要である。成分(B)は、プロピレン系樹脂組成物(X)の耐衝撃性、柔軟性を向上させる働きをする成分である。
エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと、好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示でき、市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティー(AFFINITY)及びエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。
スチレン系エラストマーは、市販されているものの中から、適宜選択して使用することができる。例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としてクレイトンポリマージャパン(株)より「クレイトンG」として、また、旭化成工業(株)より「タフテック」の商品名で、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「セプトン」の商品名で、スチレン−ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「ハイブラー」の商品名で、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物としてJSR(株)より「ダイナロン」の商品名で、販売されており、これらの商品群より、適宜選択して用いる。
・成分(B)エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法
本発明に用いられる成分(B)は、透明性の観点から、密度を低くすることが好ましく、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには、結晶性及び分子量の分布が狭いことが望ましい。そこで、成分(B)の製造には、結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒を用いることが望ましい。
以下に、メタロセン触媒およびそれを用いた重合方法について説明する。
・メタロセン系触媒
メタロセン触媒としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合に用いられる公知の各種触媒を用いることができる。具体的には、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35006号、特開平3−163088号の各公報などに記載されているメタロセン系触媒を例示できる。
・重合方法
具体的な重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などが挙げられる。好ましい製造法としては、高圧バルク重合が挙げられる。
・プロピレン系樹脂組成物(X)における成分(B)の割合
成分(B)のプロピレン系樹脂組成物(X)中に占める割合は、成分(A)と成分(B)および成分(C)の合計量100wt%に対して、1〜50wt%の範囲であることが必要である。成分(B)の含有量が1wt%より少ないと、耐低温衝撃性の付与が不十分である。一方で、成分(B)の含有量が多くなりすぎると、耐熱性が悪化し、またシートの厚みムラを生じやすく、良好な外観のシートを得ることができない。
(3)分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)
・成分(C)の特性
本発明のプロピレン系樹脂組成物(X)には、以下に示す分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)を添加することで成形性、薄肉化抑制を発現することができる。
プロピレン系樹脂組成物(X)の主成分として用いられる成分(A)は、積層シートに高い柔軟性と透明性を付与させるのに極めて有効であるが、成分(A1)は、通常の線状ポリプロピレンであるため、高溶融張力成分が少なく、ヒートシール時の薄肉化等、思いもかけず成形時の厚み不安定性の問題を有している。
そこで、成分(A)の分子量分布を拡げ、相対的に高分子量成分、すなわち高溶融張力成分を増やすそうとすると、必然的に低分子量成分も増し、結果として、それがシート表面へのブリードアウトによるべたつき、外観不良といった問題が生じさせるため、透明性が要求される用途には、不向きとなる。また、通常の分岐を有さないポリプロピレンでの分子量分布拡大では、高溶融張力成分の確保が充分ではなく、そのため、分岐を有する特定のポリプロピレン樹脂による高溶融張力成分の確保が望ましい方法である。
高溶融張力成分の少ない成分(A)に対し、成分(C)を特定量添加することにより、低分子量成分の増加なしで、高溶融張力成分を増加させることができ、その結果として、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、厚み変動や界面荒れなどの外観不良、ヒートシール時の薄肉化を抑制することが可能となる。
成分(C)は、以下の(C−i)の条件を満たす分岐を有するポリプロピレン樹脂であり、好ましくはさらに、以下の(C−ii)〜(C−iv)を満たし、より好ましくはさらに、以下の(C−v)〜(C−vi)を満たす。
(C−i)溶融張力(MT)(単位:g)が、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、または、MT≧15
のいずれかを満たす。
(C−ii)GPCによる分子量分布において、Mw/Mnが3.0以上10.0以下、且つMz/Mwが2.5以上10.0以下
(C−iii)MFRが0.1〜30g/10分
(C−iv)25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満
(C−v)絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’が0.30以上1.00未満
(C−vi)13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
(i):溶融張力(MT)
本発明で使用する成分(C)は、以下の溶融張力(MT)とMFRの関係式:
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7
又は
MT≧15
のうちのいずれかを満たすことを必要とする。
ここで、MTは、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて、キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm、シリンダー径:9.55mm、シリンダー押出速度:20mm/分、引き取り速度:4.0m/分、温度:230℃の条件で、測定したときの溶融張力を表し、単位はグラムである。ただし、成分(C)のMTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。また、MFRの測定条件、単位は前述の通りである。
この規定は、成分(C)が成形性およびヒートシール後の薄肉化抑制のために充分な溶融張力を有するための指標であり、一般に、MTは、MFRと相関を有していることから、MFRとの関係式によって記述している。
このように溶融張力MTをMFRとの関係式で規定する手法は、当業者にとって通常の手法であって、例えば、特開2003−25425号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
log(MS)>−0.61×log(MFR)+0.82
(ここで、MSは、MTと同義である。)
また、特開2003−64193号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
11.32×MFR−0.7854≦MT
さらに、特開2003−94504号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
MT≧7.52×MFR−0.576
本発明においては、成分(C)が、関係式:
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 又は MT≧15
のいずれかを満たせば、充分に溶融張力の高い樹脂といえ、成形性およびヒートシール後の薄肉化抑制に有用である。
また、成分(C)は、以下の関係式:
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.9 又は MT≧15
を満たすことがより好ましく、以下の関係式を満たすことが更に好ましい。
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+1.1 又は MT≧15
MTの上限値については、これを特に設ける必要はないが、MTが40gを超えるような場合には、上記測定手法では引き取り速度が著しく遅くなり、測定が困難となる。このような場合は、樹脂の延展性も悪化しているものと考えられるため、好ましくは40g以下、さらに好ましくは35g以下、もっとも好ましくは30g以下である。
上記したMTとMFRの関係式を満足するためには、成分(C)の長鎖分岐量を増大させて、溶融張力を高くすればよく、後述する好ましいメタロセン触媒の選択やその組み合わせ、およびその量比、ならびに予備重合条件を制御して、長鎖分岐を多く導入することにより可能となる。
(ii):GPCによる分子量分布
また、成分(C)は、分子量分布が比較的広いことが必要であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる分子量分布Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が3.0以上10.0以下であることが好ましい。また、成分(C)の分子量分布Mw/Mnは、より好ましい範囲としては3.5〜8.0、更に好ましくは4.1〜6.0の範囲である。
さらに、分子量分布の広さをより顕著に表すパラメータとして、Mz/Mw(ここで、MzはZ平均分子量)が2.5以上10.0以下であることが好ましい。Mz/Mwのより好ましい範囲は2.8〜8.0、更に好ましくは3.0〜6.0の範囲である。
分子量分布の広いものほど成形加工性が向上するが、Mw/MnおよびMz/Mwがこの範囲にあるものは、成形性に特に優れる。
なお、Mn、Mw、Mzの定義は「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算可能である。
そして、GPCの具体的な測定手法は、以下の通りである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
Mw/Mnを3.0以上、10.0以下、Mz/Mwを2.5以上10.0以下にするには、プロピレン重合の温度や圧力条件を変えるか、または、最も一般的な手法としては、水素等の連鎖移動剤をプロピレン重合時に添加する方法により、容易に調整を行なうことができる。さらに、後述するメタロセン触媒の種類、触媒を2種以上使用する場合は、その量比を変えることで制御することができる。
(iii):MFR
本発明に用いる成分(C)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.3〜20.0g/10分、さらに好ましくは0.5〜10.0g/10分である。この範囲を下回ると、流動性不足となり、成形時の押出機の負荷が高すぎるなどの問題が生じやすく、一方、上回るものは、張力不足により、高溶融張力材としての特性が乏しくなり、適さないものとなりやすい。
MFR値の制御の方法は周知であり、成分(C)の重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
(iv):25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)
本発明に用いる成分(C)は、立体規則性が高く、製品となったときにベタツキやブリードアウトの原因となる低結晶性成分が少ないことが好ましい。この低結晶性成分は、25℃キシレン可溶成分量(CXS)によって評価され、それが成分(C)全量に対して、5.0重量%未満であることが好ましく、より好ましくは3.0重量%以下であり、さらに好ましくは1.0重量%以下あり、特に好ましくは0.5重量%以下である。下限については、特に制限されないが、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.03重量%以上である。
なお、CXS測定法の詳細は、以下の通りである。
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し室温キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合(重量%)をCXSと定義する。
CXSを5重量%未満にするには、後述するように、メタロセン触媒を使用して製造することで可能となるが、触媒の純度を一定以上に保つことに加え、触媒の製造方法や重合時の反応条件を、極端に高温にしないことやメタロセン錯体に対する有機アルミニウム化合物の量比を上げすぎないことが必要である。
(v):分岐指数g’
本発明で使用する成分(C)が長鎖分岐を有することの直接的な指標として、分岐指数gを挙げることができる。gは、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]lin によって与えられ、長鎖分岐構造が存在すると、1よりも小さな値をとる。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V.Dawkins ed. Applied Science Publishers,1983)に、記載されており、当業者にとって公知の指標である。
分岐指数gは、例えば、下記に記すような光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。
本発明で使用する成分(C)は、光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが100万の時に、g’が0.30以上1.00未満であることが好ましく、より好ましくは0.55以上0.98以下、さらに好ましくは0.75以上0.96以下、特に好ましくは0.78以上0.95以下である。
本発明で使用する成分(C))は、分子構造としては好ましくは櫛型鎖が生成していると考えられ、分岐指数g’が0.30未満であると、主鎖が少なく側鎖の割合が極めて多いこととなり、このような場合には、溶融張力が向上しなかったり、ゲルが生成するおそれがあるため、シート用途において好ましくない。一方、1.00である場合には、これは長鎖分岐が存在しないことを意味し、溶融張力が不足しやすくなり、成形性およびヒートシール後の薄肉化抑制に適さない。
なお、g’の下限値が上記の値であると好ましいのは、以下の理由による。
文献「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering vol.2」(John Wiley & Sons 1985 p.485)によると、櫛型ポリマーのg値は、以下の式で表されている。
Figure 2014101497
ここで、gは、ポリマーの回転半径比で定義される分岐指数であり、εは、分岐鎖の形状と溶媒によって決まる定数で、上記文献のp.487のTable3によれば、良溶媒中の櫛型鎖では、おおよそ0.7〜1.0程度の値が報告されている。λは櫛型鎖における主鎖の割合、pは平均の分岐数である。この式によると、櫛型鎖であれば、分岐数が極めて大きくなる、すなわち、pが無限大の極限で、g=gε=λεとなり、λεの値以下にはならないことになり、一般に下限値が存在することになる。
一方、電子線照射や過酸化物変成の場合において生じると考えられる従来公知のランダム分岐鎖の式は、同文献中の485頁の式(19)で与えられており、これによると、ランダム分岐鎖では、分岐点が多くなるにつれ、g’およびg値は、特に下限値が存在することなく、単調に減少する。つまり、本発明において、g’値に下限値があるということは、本発明に用いる長鎖分岐構造を有する成分(C)が、櫛型鎖に近い構造を有しているということを意味しており、これにより、従来の電子線照射や過酸化物変成によって生成されるランダム分岐鎖との区別が、より明確となる。
また、g’が上記の範囲にある櫛型鎖に近い構造を有する分岐状ポリマーにおいては、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さく、工業的にシートを生産する工程で、例えば端部をカットすることで生じる端材等を、リサイクル材として再度成形に供する際に、物性や成形性の低下が小さくなることになる。
なお、分岐指数g’の具体的な算出方法は、以下の通りである。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いる。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V.Dawkins ed. Applied Science Publishers,1983.Chapter1.)
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
分岐指数g’は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐構造が導入されると、同じ分子量の線状のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐構造が導入されるに従い、同じ分子量の線状ポリマーの極限粘度([η]lin)に対する分岐ポリマーの極限粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)は、小さくなっていく。
したがって、分岐指数(g’=[η]br/[η]lin)が1より小さい値になる場合には、分岐が導入されていることを意味する。ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標)、グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
分岐指数g’を0.30以上、1.00未満にするには、長鎖分岐を多く導入することにより達成され、後述する好ましいメタロセン触媒の選択やその組み合わせ、およびその量比、ならびに予備重合条件を制御して重合することで可能となる。
(vi):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率
本発明に用いる成分(C)は、立体規則性が高いことが好ましい。立体規則性の高さは、13C−NMRによって評価することができ、13C−NMRによって得られるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上であることが好ましい。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合の上限は100%である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど、高度に制御されていることを意味する。mm分率がこの値より小さいと、機械的物性が低下する傾向にある。
従って、mm分率は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは96%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。
なお、13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率の測定法の詳細は、以下の通りである。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
フリップ角:90度
パルス間隔:10秒
共鳴周波数:100MHz以上
積算回数:10,000回以上
観測域:−20ppmから179ppm
データポイント数:32768
mm分率の解析は、測定された13C−NMRスペクトルを用いて行う。
スペクトルの帰属は、Macromolecules,(1975年)8卷,687頁やPolymer,30巻、1350頁(1989年)を参考に行う。
なお、mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に詳細に記載されており、本発明においても、この方法に従って行うものとする。
mm分率を95%以上にするには、高結晶性の重合体を達成する重合触媒により可能であり、後述する好ましいメタロセン触媒を使用して重合することで可能となる。
・分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)の製造方法
分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)は、上記した(i)〜(vi)の特性を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、低い低結晶性成分量、高い立体規則性、比較的広い分子量分布、分岐指数gの範囲、高い溶融張力の全ての条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば、特開2009−57542号公報に開示される方法が挙げられる。
この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の触媒成分と、高分子量でマクロマー共重合能力を有する特定の構造の触媒成分とを、組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法であり、これによれば、バルク重合や気相重合といった工業的に有効な方法で、特に実用的な圧力温度条件下の単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の製造が可能である。
また、従来は、立体規則性の低いポリプロピレン成分を使用して結晶性を落とすことによって、分岐生成効率を高めなければならなかったが、上記の方法では、充分に立体規則性の高いポリプロピレン成分を、側鎖に簡便な方法で、導入することが可能であり、本発明に用いるポリプロピレン樹脂(C)として好ましい、高い立体規則性と低い低結晶性成分量に係る前記(vi)及び(iv)の特性を満足するのに好適である。
また、上記手法を用いれば、重合特性の大きく異なる二種の触媒を使用することで、分子量分布を広くでき、本発明に用いる分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)に必要な前記(i)〜(ii)、(v)の特性を同時に満たすことが可能であり、好ましい。
そこで、以下に、本発明に使用される分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)の好ましい製造法について、詳細に記載する。
分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)を製造する好ましい方法として、プロピレン重合触媒に下記の触媒成分(M)、(N)および(O)を用いるプロピレン系重合体の製造方法が挙げられる。
(M):下記一般式(m1)で表される化合物である成分[M−1]から少なくとも1種類と、後記一般式(m2)で表される化合物である成分[M−2]から少なくとも1種類の、2種以上の周期表4族の遷移金属化合物。
(N):イオン交換性層状珪酸塩。
(O):有機アルミニウム化合物。
以下、触媒成分(M)、(N)および(O)について、詳細に説明する。
・触媒成分(M)
(i)成分[M−1]:下記一般式(m1)で表される化合物
Figure 2014101497
[一般式(m1)中、R11およびR12は、各々独立して、炭素数4〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基を示す。また、R13およびR14は、各々独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基を表す。さらに、X11およびY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表す。]
上記R11およびR12の炭素数4〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基としては、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基であり、さらに好ましくは、置換された2−フリル基である。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14の炭素数6〜16の、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい、アリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有していてもよい。
13およびR14としては、好ましくは少なくとも1つが、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、2,3―ジメチルフェニル基、3,5―ジ−t−ブチルフェニル基、4−フェニル−フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、又はフェナンスリル基であり、更に好ましくはフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基である。また、R13およびR14が互いに同一である場合が好ましい。
一般式(m1)中、X11およびY11は、補助配位子であり、触媒成分(N)の助触媒と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X11とY11は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を示す。
また、一般式(m1)中、Q11は、二つの五員環を結合する、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基のいずれかを示す。シリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
上記一般式(m1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウムジクロライド、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−iプロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウムなどを挙げることができる。
これらのうち、更に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−iプロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウムである。
また、特に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−iプロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウムである。
(ii)成分[M−2]:一般式(m2)で表される化合物
Figure 2014101497
[一般式(m2)中、R21およびR22は、各々独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、R23およびR24は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい、炭素数6〜16のアリール基である。X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表す。M21は、ジルコニウムまたはハフニウムである。]
上記R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
また、上記R23およびR24は、それぞれ独立して、炭素数6〜16の、好ましくは炭素数6〜12の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。好ましい例としては、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
また、上記X21およびY21は、補助配位子であり、触媒成分(N)の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX21およびY21は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を示す。
また、上記Q21は、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基であり、好ましくは置換シリレン基あるいは置換ゲルミレン基である。ケイ素、ゲルマニウムに結合する置換基は、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、二つの置換基が連結していてもよい。
21の具体的な例としては、メチレン、ジメチルメチレン、エチレン−1,2−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレン、メチルフェニルゲルミレン等が挙げられる。
さらに、上記M21は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
上記一般式(m2)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを好ましく挙げることができる。
ただし、以下は、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載しており、本発明は、これら化合物に限定して解釈されるものではなく、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明なことである。また、以下では、中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、ジルコニウムに代替した化合物も、本明細書に開示されたものとして取り扱われる。
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムなどが挙げられる。
これらの中で好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
また、特に好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
・触媒成分(N)
ポリプロピレン樹脂(C)を製造するのに好ましく使用される触媒成分(N)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
・・イオン交換性層状珪酸塩の種類
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある。)とは、イオン結合などによって構成される面が、互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然では主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、触媒成分(N)に含まれる。
使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよく、また、それらを含んでもよい。
珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
すなわち、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等である。
珪酸塩は、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。層間カチオンの種類は、特に限定されないが、工業原料として比較的容易に且つ安価に入手し得る観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を層間カチオンの主成分とする珪酸塩が好ましい。
・・イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
触媒成分(N)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここでイオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができ、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
酸処理
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
処理に用いる塩類(次項で説明する)および酸は、2種以上であってもよい。塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は、室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
なお、以下の酸類、塩類を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。また、これら酸類、塩類の組み合わせであってもよい。
・塩類処理
塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な1族金属の陽イオンの好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸および有機酸から成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物であり、更に好ましくは、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、Cl、Br、I、F、PO、SO、NO、CO、C、ClO、OOCCH、CHCOCHCOCH、OCl、O(NO、O(ClO、O(SO)、OH、OCl、OCl、OOCH、OOCCHCH、CおよびC等から成る群から選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物である。
このような塩類の好ましい具体例としては、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、Li(CHCOO)、LiCO、Li(C)、LiCHO、LiC、LiClO、LiPO、CaCl、CaSO、CaC、Ca(NO、Ca(C、MgCl、MgBr、MgSO、Mg(PO、Mg(ClO、MgC、Mg(NO、Mg(OOCCH、MgC等が挙げられる。
また、Ti(OOCCH、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、Zr(OOCCH、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、ZrOCl、ZrO(NO、ZrO(ClO、ZrO(SO)、HF(OOCCH、HF(CO、HF(NO、HF(SO、HFOCl、HFF、HFCl、V(CHCOCHCOCH、VOSO、VOCl、VCl、VCl、VBr等が挙げられる。
また、Cr(CHCOCHCOCH、Cr(OOCCHOH、Cr(NO、Cr(ClO、CrPO、Cr(SO、CrOCl、CrF、CrCl、CrBr、CrI、Mn(OOCCH、Mn(CHCOCHCOCH、MnCO、Mn(NO、MnO、Mn(ClO、MnF、MnCl、Fe(OOCCH、Fe(CHCOCHCOCH、FeCO、Fe(NO、Fe(ClO、FePO、FeSO、Fe(SO、FeF3、FeCl、FeC等が挙げられる。
また、Co(OOCCH、Co(CHCOCHCOCH、CoCO、Co(NO、CoC、Co(ClO、Co(PO、CoSO、CoF、CoCl、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等が挙げられる。
さらに、Zn(OOCCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、GeBr、GeI等が挙げられる。
・アルカリ処理
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される。
・有機物処理
また、有機物処理に用いられる有機処理剤の例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム等が挙げられる。
また、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えば、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの処理剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について、組み合わせて用いてもよい。また化学処理は、同一または異なる処理剤を用いて複数回行うことも可能である。
これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれる。本発明においては、これらの吸着水および層間水を除去して触媒成分(N)として使用するのが好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は、特に制限されないが、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の触媒成分(N)の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下であることが好ましい。
以上のように、触媒成分(N)として特に好ましいものは、塩類処理及び/又は酸処理を行って得られた、水分含有率が3重量%以下の、イオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩は、触媒形成または触媒として使用する前に、後述する有機アルミニウム化合物の触媒成分(O)で処理を行うことが可能で、好ましい。イオン交換性層状珪酸塩1gに対する触媒成分(O)の使用量に制限は無いが、通常20mmol以下、好ましくは0.5mmol以上、10mmol以下で行う。処理温度や時間の制限は無く、処理温度は、通常0℃以上、70℃以下、処理時間は10分以上、3時間以下で行う。処理後に洗浄することも可能で、好ましい。溶媒は、後述する予備重合やスラリー重合で使用する溶媒と同様の炭化水素溶媒を使用する。
また、触媒成分(N)は、平均粒径が5μm以上の球状粒子を用いるのが好ましい。粒子の形状が球状であれば、天然物あるいは市販品をそのまま使用してもよいし、造粒、分粒、分別等により粒子の形状および粒径を制御したものを用いてもよい。
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ−を用いてもよい。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
・触媒成分(O)
触媒成分(O)は、有機アルミニウム化合物である。触媒成分(O)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR31 3−q で示される化合物が好適である。
本発明では、この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができることはいうまでもない。この式中、R31は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素原子、アルコキシ基またはアミノ基を示す。qは1〜3の、pは1〜2の整数を各々表す。
31としては、アルキル基が好ましく、また、Zは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、p=1、q=3のトリアルキルアルミニウムおよびアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R31が炭素数1〜8のアルキル基であるトリアルキルアルミニウムである。
・触媒の形成・予備重合について
触媒は、上記の各触媒成分(M)〜(O)を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃〜150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
触媒成分(O)を使用する場合、触媒成分(M)と触媒成分(N)を接触させる前に、触媒成分(M)と、あるいは触媒成分(N)と、または触媒成分(M)および触媒成分(N)の両方に触媒成分(O)を接触させること、または、触媒成分(M)と触媒成分(N)を接触させるのと同時に触媒成分(O)を接触させること、または、触媒成分(M)と触媒成分(N)を接触させた後に触媒成分(O)を接触させることが可能であるが、好ましくは、触媒成分(M)と触媒成分(N)を接触させる前に、触媒成分(O)といずれかに接触させる方法である。
また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
使用する触媒成分(M)、(N)および(O)の使用量は任意である。例えば、触媒成分(N)に対する触媒成分(M)の使用量は、触媒成分(N)1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。また触媒成分(M)に対する触媒成分(O)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×10、特に好ましくは0.1〜1×10の範囲内が好ましい。
前記成分[M−1](一般式(m1)で表される化合物)と前記成分[M−2](一般式(m2)で表される化合物)の使用割合は、ポリプロピレン樹脂(C)の前記特性を満たす範囲において任意であるが、各成分[M−1]と[M−2]の合計量に対する[M−1]の遷移金属のモル比で、好ましくは0.30以上、0.99以下である。
この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能である。つまり、成分[M−1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分[M−2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。したがって、成分[M−1]の割合を変化させることで、生成する重合体の平均分子量、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、分岐指数g’、溶融張力、延展性といった溶融物性を制御することができる。
分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)を製造するためには、前記モル比は、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.40以上であり、更に好ましくは0.5以上である。また、上限に関しては、好ましくは0.99以下であり、高い触媒活性で効率的にポリプロピレン樹脂(C)を得るためには、好ましくは0.95以下であり、更に好ましくは0.90以下の範囲である。
また、上記範囲で成分[M−1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
触媒は、好ましくは、これにオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付される。予備重合処理を行うことにより、本重合を行った際に、ゲルの生成を防止できる。その理由としては、本重合を行った際の重合体粒子間で長鎖分岐が均一に分布させることができるためと考えられ、また、そのことにより溶融物性を向上することができる。
予備重合時に使用するオレフィンは、特に限定はないが、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができる。オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。
予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合の量は、予備重合ポリマー量が触媒成分(N)に対し、重量比で好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。また、予備重合時に触媒成分(O)を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
また、上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
・触媒の使用/プロピレン重合について
重合様式は、前記触媒成分(M)、触媒成分(N)および触媒成分(O)を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
また、重合温度は、通常0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は80℃以下が好ましく、更に好ましくは75度以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。特に、バルク重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.7MPa以上である。また上限は2.5MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.3MPa以下である。
さらに、分子量調節剤として、また活性向上効果のために、補助的に水素をプロピレンに対してモル比で、好ましくは1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、MFR、分岐指数、溶融張力MT、延展性といった、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを特徴付ける溶融物性を制御することができる。
そこで水素は、プロピレンに対するモル比で、1.0×10−6以上で用いるのがよく、好ましくは1.0×10−5以上であり、さらに好ましくは1.0×10−4以上用いるのがよい。また上限に関しては、1.0×10−2以下で用いるのがよく、好ましくは0.9×10−2以下であり、更に好ましくは0.8×10−2以下である。
また、プロピレンモノマー以外に、用途に応じて、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンコモノマー、例えば、エチレン及び/又は1−ブテンをコモノマーとして使用する共重合をおこなってもよい。
そこで、本発明に用いるポリプロピレン樹脂(C)として、触媒活性と溶融物性のバランスのよいものを得るためには、エチレン及び/又は1−ブテンを、プロピレンに対して15モル%以下で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%以下であり、更に好ましくは7モル%以下である。
ここで例示した触媒、重合法を用いてプロピレンを重合すると、触媒成分[M−1]由来の活性種から、β−メチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応により、ポリマー片末端が主としてプロペニル構造を示し、所謂マクロマーが生成する。このマクロマーは、より高分子量を生成することができ、より共重合性がよい触媒成分[M−2]由来の活性種に取り込まれ、マクロマー共重合が進行すると考えられる。したがって、生成する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の分岐構造としては、櫛型鎖が主であると考えられる。
・プロピレン系樹脂組成物(X)における成分(C)の割合
成分(C)のプロピレン系樹脂組成物(X)中に占める割合は、成分(A)と成分(B)および成分(C)の合計量100wt%に対して、1〜50wt%の範囲であることが必要である。成分(C)の含有量が1wt%より少ないと、成形性およびヒートシール後の薄肉化抑制効果の付与が不十分である。一方で、成分(C)の含有量が多くなりすぎると、透明性および柔軟性が悪化し、良好なシート物性バランスが得られない。
<外層(2)>
本発明のシートには、プロピレン系樹脂組成物(X)から構成される主層(1)以外に外層(2)を配することが好ましい。外層を設ける場合、主層(1)と外層(2)の間に必要に応じて、任意の層、例えば接着層を設けることも本発明の趣旨に反するものではない。
なお、外層を設ける場合、以後、主層(1)を内層(1)という。
外層(2)は、耐熱性、透明性を損なわなければ特に限定されるものではなく、例えばポリエステル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、プロピレン系樹脂などが挙げられる。その中でもプロピレン系樹脂組成物(Y)から形成されることが好ましい。
・プロピレン系樹脂組成物(Y)の特性
プロピレン系樹脂シートの外層(2)として、好ましく用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)(以下、成分(Y)ということもある。)は、透明性及び、耐熱性が優れていることが重要である。シートとしての透明性を得るには、内層(1)だけではなく、外層(2)も透明化しなければならない。加えて、外層(2)は、耐熱性も有していなければならず、殺菌、滅菌などの加熱処理でも変形しないこと、二次加工であるヒートシールにおいてヒートシールバーにくっつかないことが必要である。
これらの要求を高い水準で満たすために、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、融解ピーク温度Tm(D)が150〜170℃の範囲にあるプロピレン系樹脂(D)(以下、成分(D)ということもある。)を含有することが好ましい。
(D−i)融解ピーク温度Tm(D)
成分(D)の融解ピーク温度Tm(D)は、150〜170℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは155〜170℃、更に好ましくは158〜168℃である。
Tm(D)が150℃未満であると、耐熱性が不十分であり、ヒートシール時にヒートシールバーにくっついてしまい易くなる問題がある。Tm(D)が170℃を超えるものは、工業的に製造することは難しい。
(D−ii)メルトフローレートMFR(D)
成分(D)は、積層時の界面荒れ、表面荒れを発生せず、また、厚み変動などを起こさない易成形性を得るために、適度な流動性を有することが重要であり、流動性の尺度であるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重)(以下、MFR(D)ということもある。)は、2〜20g/10分の範囲にあることが好ましく、2〜15g/10分の範囲にあることがより好ましく、さらに好ましくは4〜15g/10分である。
MFR(D)が2g/10分未満の場合には、界面荒れ、表面荒れを発生しやすく、外観良好なシートが得られない恐れがある。一方、MFR(D)が20g/10分を超える場合には、厚み変動が起こりやすく、成形性に難がある場合が多い。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
・成分(D)の製造方法
本発明で用いるプロピレン系樹脂(D)は、上記の融点範囲を満足すればプロピレンホモポリマーであってもよく、他のα−オレフィンとのランダム共重合体、あるいは他のα−オレフィンとのブロック共重合体であってもよい。
このような成分(D)は、いかなる方法で製造しても良い。プロピレン系(共)重合体成分(D1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)からなる組成物(いわゆるブロック重合体)を製造する場合には、別々に製造されたプロピレン系(共)重合体(D1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)を、混合装置を用いてプロピレン系樹脂(D)を製造しても、プロピレン系(共)重合体(D1)を製造し、引き続きプロピレン系(共)重合体(D1)の存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)を製造して、プロピレン系樹脂(D)を連続的に製造しても良い。
なお、成分(D)は、市販されているものの中から適宜選択し、使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製商品名ノバテックPP(NOVATEC PP)、日本ポリプロ社製商品名ニューコン(NEWCON)、三菱化学社製商品名ゼラス(ZELAS)などが挙げられる。これらの使用において本発明の条件である融解ピーク温度、MFRを満足するグレードを適宜選択すればよい。
・改質材(D3)
プロピレン系樹脂(D)には、さらに低温での耐衝撃性を付与するために、下記のエラストマー成分(D3)を添加してもよい。
プロピレン系樹脂シートの外層(2)に配合することのできるエラストマー成分としては、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体、スチレン系エラストマーが挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンと好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示できる。
本発明に好適に用いることのできるエチレン−α−オレフィン共重合体としては、成分(D)との屈折率差を小さくするために、密度を合わせるが必要であり、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには、結晶性及び分子量分布が狭いことが望ましい。そこで、結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒により重合されたものを用いることが望ましい。
なお、成分(D3)としてのエチレン−α−オレフィン共重合体は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。
市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティー(AFFINITY)及びエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。これらの使用においては、透明性、ベタツキ、ブリードアウト等の問題をおこさいよう適宜密度とMFRを選定すればよい。
また、スチレン系エラストマーとしては、市販されているものの中から適宜選択して使用することができる。例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としてクレイトンポリマージャパン(株)より「クレイトンG」として、また、旭化成工業(株)より「タフテック」の商品名で、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「セプトン」の商品名で、スチレン−ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「ハイブラー」の商品名で、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物としてJSR(株)より「ダイナロン」の商品名で、販売されており、これらの商品群より適宜選択して用いてもよい。
・外層における成分(Y)中の各成分の割合
本発明に好適に用いることのできる成分(D3)を用いる場合、成分(D)の外層(2)構成中に占める割合は、60〜99wt%の範囲であることが好ましく、成分(D3)の外層(2)構成中に占める割合は、1〜40wt%の範囲であることが好ましい。より好ましくは成分(D)の含有量が70〜95wt%、成分(D3)の含有量が5〜30wt%である。
成分(D)の含有量が60wt%未満、即ち成分(D3)の含有量が40wt%以上であると、耐熱性が不十分であり、加熱処理工程において変形が生じる恐れがある。成分(D)の含有量が99wt%以上、即ち成分(D3)の含有量が1wt%未満であると、低温耐衝撃性付与効果が不十分である。
<最内層(3)>
本発明のシートは、最内層(3)を、外層(2)、内層(1)、最内層(3)の順で有する少なくとも3層からなるシートであることも好ましい。この最内層(3)は、シートのヒートシール性を制御するために、また、あるいは低温シール性や易剥離性の付与のため等に設けられるが、その目的は問わない。
最内層に使用する樹脂組成物(Z)には、特に制限はなく、その目的に応じて各種の樹脂を使用することができるが、積層時の界面荒れ、表面荒れを発生せず、また、厚み変動などを起こさない易成形性を得るために適度な流動性を有することが好ましく、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重)は、2〜15g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは2.5〜10g/10分である。
樹脂組成物(Z)のMFR(MFR(Z)ともいう。)が2g/10分未満の場合には、界面荒れ、表面荒れを発生しやすく、外観良好なシートが得られない恐れがある。一方、MFR(Z)が15g/10分を超える場合には、厚み変動が起こりやすく、成形性に難がある。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
最内層に使用する好ましい成分として、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体と、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン−αオレフィン共重合体からなるプロピレン系樹脂組成物やプロピレン系樹脂組成物(A)と改質材(B)およびプロピレン系樹脂(D)からなるプロピレン系樹脂組成物を好ましく例示することができる。
メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体の市販品としては、日本ポリプロ社製商品名「ウィンテック(WINTEC)」等を挙げることができ、エチレン−α−オレフィン共重合体の市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティー(AFFINITY)及びエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。
<付加的成分(添加剤)>
本発明のプロピレン系樹脂シートにおける内層(1)、外層(2)、最内層(3)に用いられる各プロピレン系樹脂組成物(X)、(Y)および(Z)は、シートとして好適に用いられるため、ブリードアウトなど本発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意の添加剤や樹脂を配合することができる。
このような任意成分としては、通常のポリオレフィン樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤等や、ポリエチレン系樹脂を挙げることができる。さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、柔軟性を付与する成分としてエラストマーを配合することができる。
各種添加剤や樹脂について、以下に詳しく述べる。
(i)酸化防止剤
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
これら酸化防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
酸化防止剤の配合量は、各々の樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部、配合量が上記範囲未満では、熱安定性の効果が得られず、樹脂を製造する際に劣化が起こり、ヤケとなってフィッシュアイの原因となる。また、上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(ii)アンチブロッキング剤
アンチブロッキング剤としては、平均粒子径が1〜7μm、好ましくは1〜5μm、さらに好ましくは1〜4μmである。平均粒子径が1μm未満では、得られるシートの滑り性、開口性が劣り好ましくない。一方、7μmを超えると、透明性、耐傷つき性が著しく劣り好ましくない。ここで平均粒子径は、コールターカウンター計測による値である。
アンチブロッキング剤の具体例としては、たとえば無機系としては、合成または天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等が使用される。
また、有機系としては、ポリメチルメタクリレート、ホリメチルシリルトセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂等を用いることができる。
特に合成シリカ、ポリメチルメタクリレートが分散性、透明性、耐ブロッキング性、耐傷つき性のバランスから好適である。
また、アンチブロッキング剤は、表面処理されたものを用いてもよく、表面処理剤としては、界面活性剤、金属石鹸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッソ樹脂、シランカップリング剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩等を用いることができ、特に有機酸処理なかでもクエン酸処理されたものが好適である。処理方法は、特に限定されるものではなく、表面噴霧、浸漬等公知の方法を採用することができる。
アンチブロッキング剤は、いかなる形状であってもよく球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状等任意の形状とすることができる。
これらアンチブロッキング剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
アンチブロッキング剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。配合量が上記範囲未満では、シートのアンチブロッキング性、滑り性、開口性が劣りやすくなる。上記範囲を超えると、シートの透明性を損ない、また、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(iii)スリップ剤
スリップ剤としては、モノアマイド類、置換アマイド類、ビスアマイド類等が挙げられ、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
モノアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
不飽和脂肪酸モノアマイドとしては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。
置換アマイド類の具体例としては、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルチミン酸アマイド等が挙げられる。
ビスアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
芳香族系ビスアマイドとしては、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイドなどが挙げられる。
これらの中では、特に、脂肪酸アマイドのうち、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイドが好適に使用される。
スリップ剤を配合する場合の配合量としては、樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。上記範囲未満では、開口性や滑り性が劣り易くなる。上記範囲を超えると、スリップ剤の浮き出しが過剰となり、シート表面にブリードし透明性が悪化する。
(iv)核剤
核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウム、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物((株)ADEKA製、商品名NA21)等が挙げられる。
上記核剤を配合する場合の配合量としては、各々の樹脂100重量部に対して、0.0005〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.05重量部である。上記範囲未満では、核剤としての効果が得られない。上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
また、上記以外の核剤として、高密度ポリエチレン樹脂を挙げることができる。高密度ポリエチレン樹脂としては、密度が、0.94〜0.98g/cm、好ましくは、0.95〜0.97g/cmである。密度がこの範囲を外れると、透明性改良効果が得られない。高密度ポリエチレン樹脂の190℃におけるメルトフローレイト(MFR)は、5g/10分以上、好ましくは7〜500g/10分、さらに好ましくは、10〜100g/10分である。MFRが5g/10分より小さいときは、高密度ポリエチレン樹脂の分散径が充分に小さくならず、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。また、高密度ポリエチレン樹脂が微分散するためには、好ましくは高密度ポリエチレン樹脂のMFRが、本発明のプロピレン系樹脂のMFRより大きい方がよい。
核剤として使用される高密度ポリエチレン樹脂の製造は、目的の物性を有する重合体を製造し得る限りその重合方法や触媒について特に制限はない。触媒については、チーグラー型触媒(すなわち、担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づくもの)、カミンスキー型触媒(すなわち、担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンの組み合わせに基づくもの)が挙げられる。高密度ポリエチレン系樹脂の形状については制限がなく、ペレット状であってもよく、また、粉末状であってもよい。
核剤として使用する場合、高密度ポリエチレンの配合量としては、樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。上記範囲未満では、核剤としての効果が得られない。上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(v)中和剤
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学工業(株)製)などを挙げることができる。
中和剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。配合量が上記範囲未満では、中和剤としての効果が得られず、押出機内部の劣化樹脂を掻き出してフィッシュアイの原因となる。また、上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(vi)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が好適に使用され、従来公知のピペリジンの2位および6位の炭素に結合している全ての水素がメチル基で置換された構造を有する化合物が特に限定されることなく用いられるが、具体的には、以下のような化合物が用いられる。
具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
これらのヒンダードアミン系安定剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
ヒンダードアミン系安定剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して、0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが望ましい。
ヒンダードアミン系安定剤の含有量が、0.005重量部未満であると、耐熱性、耐老化性等の安定性の向上効果がなく、2重量部より多いと、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(vii)帯電防止剤
帯電防止剤としては、従来から静電防止剤または帯電防止剤として使用されている公知のものであれば、特に限定されることなく使用でき、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸またはロジン酸セッケン、N−アシルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミン塩等のカルボン酸塩;スルホコハク酸塩、エステルスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩;硫酸化油、硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸エーテル塩、硫酸アミド塩等の硫酸エステル塩;リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸エーテル塩、リン酸アミド塩等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩等のアミン塩;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウム塩、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム塩、N−アルキルアルカンアミドアンモニウムの塩等の第4級アンモニウム塩;1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−1−アルキル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体;イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、イソキノリニウム塩などが挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、p−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル等のエーテル形;脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ソルビトールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセリンポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル形;脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、2価アルコールエステル、ホウ酸エステル等のエステル形;ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミド、アルカノールアミンエステル、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミン、アミンオキシド、アルキルポリエチレンイミン等の含窒素形などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、モノアミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸等のアミノ酸形;N−アルキルアミノプロピオン酸塩、N,N−ジ(カルボキシエチル)アルキルアミン塩等のN−アルキル−β−アラニン形;N−アルキルベタイン、N−アルキルアミドベタイン、N−アルキルスルホベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン等のベタイン形;1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシ−1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−スルホエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
これらの中では、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、中でもモノグリセリド、ジグリセリド、ホウ酸エステル、ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、アミド等のエステル形または含窒素形の非イオン性界面活性剤;ベタイン形の両性界面活性剤が好ましい。
なお、帯電防止剤としては、市販品を使用することができ、例えば、エレクトロストリッパーTS5(花王(株)製、商標、グリセリンモノステアレート)、エレクトロストリッパーTS6(花王(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製、商標、ラウリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA−7(花王(株)製、商標、ポリオキシエチレンラウリルアミンカプリルエステル)、デノン331P(丸菱油化(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート)、デノン310(丸菱油化(株)製、商標、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル)、レジスタットPE−139(第一工業製薬(株)製、商標、ステアリン酸モノ&ジグリセリドホウ酸エステル)、ケミスタット4700(三洋化成(株)製、商標、アルキルジメチルベタイン)、レオスタットS(ライオン(株)製、商標、アルキルジエタノールアミド)などが挙げられる。
帯電防止剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部、もっとも好ましくは0.2〜0.5重量部である。これら帯電防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。帯電防止剤の配合量が、0.01重量部未満では、表面固有抵抗を減らして帯電による障害を防止することができない。一方、2重量部より多いと、ブリードによるシート表面に粉吹きが発生しやすくなる。
(viii)ポリエチレン系樹脂
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意に添加することができる。
<プロピレン系樹脂シートの各層を構成する樹脂組成物の製造>
本発明のプロピレン系樹脂シートにおける内層(1)を構成するプロピレン系樹脂組成物(X)は、上述したプロピレン系樹脂組成物(A)、改質材(B)および分岐を有するポリプロピレン樹脂(C)、さらに、他の付加的成分を、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合して得られ、必要に応じて単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
本発明のプロピレン系樹脂シートにおける外層(2)を構成するプロピレン系樹脂組成物(Y)は、上述したプロピレン系樹脂(D)および必要に応じて他の付加的成分を、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合して得られ、必要に応じて、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
本発明のプロピレン系樹脂シートにおける最内層(3)を構成するプロピレン系樹脂組成物(Z)は、所望の樹脂成分に、必要に応じて他の付加的成分を、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合して得られ、必要に応じて、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
また、上記各成分は同時に混合してもよいし、一部をマスターバッチとした上で、混合混練してもよい。
<プロピレン系樹脂シート>
本発明のプロピレン系樹脂シートは、上記プロピレン系樹脂組成物を用い公知の方法で製造することができる。例えば、Tダイ、サーキュラーダイを用いた押出成形等の公知の技術によって製造する。
本発明のプロピレン系樹脂シートは、厚みが0.01mm〜1.0mmであることが好ましい。
また、シート全体の厚みを100としたときの内層の割合は、好ましくは50〜98であり、より好ましくは60〜90である。内層の割合が50より少ないと、柔軟性、耐衝撃性が劣りやすくなり、一方、98を超えると、耐熱性が劣りやすくなる。
本発明のプロピレン系樹脂シートの外層は、シート全体の厚みを100としたときに、好ましくは2以上50未満であり、より好ましくは5以上30未満である。
本発明のプロピレン系樹脂シートに更に最内層を設ける場合は、シートの全体の厚みを100としたときに、2以上48未満であることが好ましく、より好ましくは5以上30未満である。
本発明のプロピレン系樹脂シートは、柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性、クリーン性に優れ、厚みムラ、界面荒れなどの外観不良による透明性悪化を抑制でき、かつ、極低温下での耐衝撃性に優れるため、殺菌や滅菌などの加熱処理工程が必要な加熱処理用包装袋、特に輸液バッグ等に好適である。
本発明のプロピレン系樹脂シートは、加熱処理後も優れた柔軟性を有していることを特徴としており、柔軟性の尺度である引張弾性率が400MPa以下であることが望ましい。引張弾性率が400MPa以下、好ましくは380MPa以下、更に好ましくは360MPaであると、ごわごわ感がなくなるため、触感が良く、高級感を醸し出すことができるという点で、非常に優れている。
また、本発明のプロピレン系樹脂シートは、透明性の尺度である内部ヘイズ(Haze)が加熱処理後で好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、更に好ましくは7%以下であると、内容物を明瞭に見せることができ、内容物に異物が入っていないかどうか、確認可能であるという点で非常に優れている。
本発明のプロピレン系樹脂シートは、耐衝撃性、とりわけ、例えば−20℃等の極低温での耐衝撃性が優れており、低温衝撃性の尺度である−20℃における衝撃強度試験において5kJ/m以上という優れた耐衝撃性を有し、運搬工程、保存工程などで万が一落としても破袋せず、製品として使用可能であるという点で優れている。
また、本発明のプロピレン系樹脂シートは、優れた耐熱性を有しており、121℃前後の加熱処理を行っても変形を起こさないという優れた耐熱性を有している。変形したものは外観が悪く、製品価値が下がってしまい、製品として用いることはできない。
また、本発明のプロピレン系樹脂シートは、優れたクリーン性を有しており、内容物と接する最内層(3)において内容物を汚染する可能性がある低分子量成分、低規則性成分が極めて少ないメタロセン触媒を用いて得られるプロピレン系樹脂組成物を使用することが望ましい。
また、本発明のプロピレン系樹脂シートは、ヒートシールを行った場合のヒートシール部の形状保持率が高く、2次加工適性に優れている。一般に、プロピレン系樹脂シートをヒートシールすると、形状が変化する、即ちヒートシール部が薄肉となったり、ヒートシール部の周囲に肉厚部ができる。ここでいう形状保持率は、145℃でのヒートシールによって上記のような形状変化でのシート厚み保持率のことをいい、具体的にはヒートシールされていない部分の厚みに対する、ヒートシールされた部分の厚みの比率である。
詳細は以下の方法によって決定される。
即ち、プロピレン系樹脂シートをヒートシール(ヒートシール条件:圧力3.4kgf/cm、時間1.5秒、温度145℃)し、当該ヒートシール部を光学顕微鏡にて観察し、ヒートシール部とヒートシールされていない部分の厚みを測定する。形状保持率は、下記の式で表す。
形状保持率(%)=ヒートシール部厚み÷ヒートシールされていない部分の厚み×100
形状保持率が高いものは、シート厚みが保持されているため、シート強度も保持されており、包装体として、破袋しにくい良好なヒートシール形状である。形状保持率が72%以上であると、ヒートシール部の薄肉化が抑制され、強度保持に優れており、75%以上が好ましく、77%以上が特に好ましい。
以下において、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例及び比較例との対照において説明し、本発明の構成の要件の合理性と有意性を実証するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた物性測定法、特性評価法、樹脂材料は以下の通りである。
1.樹脂物性の測定方法
(イ)MFR:
プロピレン系樹脂組成物(A)、分岐を有するポリプロピレン樹脂(C)、プロピレン系樹脂(D)は、JIS K7210 A法 条件Mに従い、試験温度:230℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.00mmで測定した。
また、改質材(B)の一種であるエチレン−α−オレフィン共重合体は、JIS K7210 A法 条件Dに従い、試験温度:190℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.00mmで測定した。
(ロ)密度:
JIS K7112 D法に準拠して密度勾配管法で測定した。
(ハ)融解ピーク温度:
TAインスツルメント社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
(ニ)tanδピーク温度測定
試料は、下記条件により水冷インフレ成形で得た厚さ200μmのシートから、10mm幅×18mm長の短冊状に切り出したものを用いた。なお、厚さ200μmのシートを使用する場合に応力の検知が困難な場合は、当該シートを2枚重ねて測定を行った。装置は、レオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
水冷インフレ成形(後記プロピレン系樹脂PP(A−1)に対して):
内層用押出機として、口径30mmの単軸押出機、外層用および最内層用押出機として、口径18mmの単軸押出機を用い、全ての押出機にプロピレン系樹脂Aを投入し、マンドレル口径50mm、Lip幅1.0mmのサーキュラーダイから設定温度200℃にて押出し、10℃に調整した水冷リングにて水冷して、3m/minの速度で、折り幅90mmとなるように、水冷インフレーション成形を行い、厚さ200μmのシートを得た。
(ホ)ダイスウェル測定
プロピレン系樹脂組成物(X)のダイスウェルは、東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径3.8mm、長さ8mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:10mm/分
・引き取り速度:10m/分
・温度:190℃
・ダイスウェル検出器:レーザースキャンマイクロメーター(LSM5100、ミツトヨ社製)
・ダイスウェル検出箇所:ノズル下より10mm
・ダイスウェル測定頻度:10秒ごとに測定(1.6mごとに測定)
・ダイスウェル測定点数:20点(全33m測定)
ダイスウェルの最大値と最小値の差を計算し、差が大きいほどストランド径の変動が大きく、シート成形において厚みの変動が大きいことを示し、差が小さいほどストランド径の変動が小さく、シート成形において厚みの変動が小さい。すなわちダイスウェル最大値と最小値の差が小さいものほど、シート成形性に優れており、差が0.25以下であると、十分な成形性を示し、0.23以下であることが好ましく、0.22以下が特に好ましい。
(ヘ)25℃パラキシレン可溶成分量(CXS、単位:重量%):
前述した方法に従って、測定した。
(ト)mm分率:
日本電子社製超伝導核磁気共鳴装置GSX−400(400MHz)、FT−NMRを用い、前述したとおり、特開平2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に記載の方法で測定した。
(チ)分子量分布Mw/MnおよびMz/Mn:
前述した方法に従って、GPC測定により求めた。
(リ)分岐度g’:
前述したように、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCによって求めた。
(ヌ)溶融張力MT(単位:グラム):
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。
(ル)成分(A1)、(A2)の量W(A1)、W(A2)および成分(A1)、(A2)のα−オレフィン含有量α[A1]、α[A2]は、前述の方法で測定した。
2.シートの評価方法
(イ)耐熱性:
<実施例1〜3および比較例1の積層シートの耐熱性評価>
円筒状になっているプロピレン系樹脂シートを流れ方向に210mmの大きさに切り出し、切り出した一方を、インパルスシーラーを用いてヒートシールして袋状にした。ついでその中に水を250ml充填し、もう一辺を、インパルスシーラーを用いてヒートシールして密封した。ヒートシールとヒートシールの間の距離は、200mmとなるようにシールした。
このようにして得られたサンプル袋を、高温高圧調理殺菌試験機(日阪製作所製、RCS−40RTGN型)の中に入れた後、加圧し、121℃まで雰囲気温度を上昇させて、その温度を30分間保持した。その後、約40℃まで冷却し、該サンプル袋を試験機から取り出した。(以下、この殺菌処理をしたシート(サンプル袋)を加熱処理後シートということもある。)
加熱処理後シートの耐熱性評価は、以下の基準で行った。
×:変形、しわ、内面融着を起こしており、使用不可
○:変形、しわ、内面融着を起こしていないか、ごく僅かであり使用可能なレベル
なお、評価結果の表6の項目欄においては、外観と表記した。
(ロ)透明性(内部ヘイズ):
加熱処理後積層シートの両面を流動パラフィンによりスライドグラスで密着させ、JIS K7136−2000に準拠し、ヘイズメータで測定した。得られた値が小さいほど、透明性がよいことを意味し、この値が10%以下であると、内容物確認しやすく、ディスプレイ効果を得る点で優れており、8%以下が好ましく、7%以下が特に好ましい。
(ハ)柔軟性(引張弾性率):
JIS K7127−1989に準拠し、下記の条件にて、加熱処理後積層シートの流れ方向(MD)についての引張弾性率を測定した。得られた値が小さいほど、柔軟性に優れていることを意味し、この値が400MPa以下であると、触感のよい手触りで高級感を得る点で優れており、380MPa以下が好ましく、360MPa以下が特に好ましい。
サンプル長さ:110mm
サンプル幅:10mm
チャック間距離:50mm
クロスヘッド速度:0.5mm/min
(ニ)衝撃強度(単位:KJ/m):
東洋精機製フィルムインパクトテスターを用い、単位シート厚み当たりの貫通破壊に要した仕事量を測定した。具体的には、加熱処理後積層シートを−20℃の雰囲気下に24時間以上放置し、状態調整を行った後、−20℃にて試験シートを直径50mmのホルダーに固定し、12.7mmφの半球型の金属貫通部を打撃させ、貫通破壊に要した仕事量(KJ)から、そのシートの衝撃に対する脆さを測定した。この値が5KJ/m以上であると、極低温での輸送工程を経ても破袋を抑制できる点で優れていることを示している。
(ホ)2次加工適性(形状保持率):
円筒状になっているプロピレン系樹脂シートを流れ方向に100mmの大きさに切り出し、切り出した一方をヒートシール(ヒートシール条件:圧力3.4kgf/cm、時間1.5秒、温度145℃)し、23℃、50%RH雰囲気下で24時間状態調整した。
その後、プロピレン系樹脂シートのヒートシール部の中央部を流れ方向に切り出し、ミクロトームにて流れ方向断面を20μm厚の切片を得た。切片を光学顕微鏡にて観察し、、ヒートシール部とヒートシールされていない部分の厚みを測定した。形状保持率は、下記の式で表す。
形状保持率(%)=ヒートシール部厚み÷ヒートシールされていない部分の厚み×100
形状保持率が高いものは、シート厚みが保持されているため、シート強度も保持されており、包装体として破袋しにくい良好なヒートシール形状である。形状保持率が72%以上であると、ヒートシール部の薄肉化が抑制され、強度保持に優れており、75%以上が好ましく、77%以上が特に好ましい。
3.使用樹脂
(1)プロピレン系樹脂組成物(A)
下記の製造例(A−1)により逐次重合で得られたプロピレン系樹脂組成物PP(A−1)およびブレンドによって得られたプロピレン系樹脂組成物PP(A−2)を用いた。
[製造例(A−1):PP(A−1)の製造]
(i)予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製商品名「ベンクレイSL」、平均粒径=25μm、粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(珪酸塩の乾燥)
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様及び乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm
傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素 96リットル/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(触媒の調製)
撹拌および温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。
次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
(予備重合/洗浄)
続いて、槽内温度を40℃昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5,600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5,600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ、有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mM/L、Zr濃度は、8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は、0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン系樹脂組成物の製造を行った。
(ii)第一重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に上記の方法で調整した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.568g/hr、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/hrで連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.1MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.07、水素濃度が100ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/hrであった。
第一重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、MFRは6.0g/10分、エチレン含有量は2.2wt%であった。
(iii)第二重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)に、第一工程より抜き出したプロピレン−エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を2.0MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.453、水素濃度が330ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が17.9kg/hrになるように活性抑制剤として酸素を供給し、第二重合工程での重合反応量を制御した。活性は31.429kg/g−触媒であった。
こうして得られたプロピレン系樹脂組成物PP(A−1)の各種分析結果を、下記の表3に示す。
図1は、PP(A−1)の水冷インフレシートの固体粘弾性測定(DMA)により得られた温度−損失正接(tanδ)曲線を示すグラフ図であり、単一なピークを0℃以下に示すことがわかる。
(造粒)
さらに、得られたプロピレン系樹脂PP(A−1)100重量部に対し、下記酸化防止剤1を0.05重量部、下記酸化防止剤2を0.05重量部添加し、充分に撹拌混合し、スクリュ口径30mmの池貝製作所製PCM二軸押出機にて、スクリュ回転数200rpm、吐出量10kg/hr、押出機温度200℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することで、プロピレン系樹脂組成物PP(A−1)を得た。
酸化防止剤1:
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン株式会社製商品名「イルガノックス1010」)
酸化防止剤2:
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製商品名「イルガホス168」)
[製造例(A−2):PP(A−2)の調製]
成分(A1)として、メタロセン触媒によって製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体「WINTEC WFW4M」(商品名、日本ポリプロ社製、MFR7、融点135℃)56wt%と、成分(A2)として、メタロセン触媒によって製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体「VISTAMAXX 3000」(商品名、エクソンモービルケミカル社製、MFR8、エチレン含量11wt%)44wt%を、二軸スクリュ押出機により、混練したものを用いた。
こうして得られたプロピレン系樹脂組成物PP(A−2)の各種分析結果を、下記の表3に示す
Figure 2014101497
(2)改質材(B)
下記製造例(B−1)で得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(B−1)を使用した。
(製造例B−1)
エチレンとヘキセン−1の共重合体を製造した。
触媒の調製は、特表平7−508545号公報の実施例の「触媒系の調製」に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して、等倍モル加え、トルエンで10リットルに希釈して、触媒溶液を調製した。
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が73重量%となるように供給し、反応器内の圧力を130MPaに保ち、127℃で反応を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.5kgであった。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(B−1)の各種分析結果を、以下の表4に示す。
Figure 2014101497
(3)分岐を有するポリプロピレン樹脂(C)
下記製造例(C−1)で得られた本発明の範囲を満たす分岐を有するポリプロピレン樹脂PP(C−1)および下記に示す本発明で規定する(C−i)の条件を満たさない分岐を有しない市販品PP(C−2)を使用した。
PP(C−2):
市販品、日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP FY6H」
プロピレン単独重合体 MFR:1.9、融点:167℃、MT:2.2
[製造例(C−1):PP(C−1)の製造]
<触媒成分(M−1)の合成例1>
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(成分[M−1](錯体1)の合成):
(i)4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、4−i−プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4−ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
(ii)2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に4−(4−i−プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO:200mlを加え、ここにN−ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p−トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
(iii)2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−メチルフラン6.7g(82m1mol)、DME:100mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン19.8gg(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。
放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
(iv)ジメチルビス(2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、THF200mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
(v)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についてのH−NMRによる同定値を以下に記す。
H−NMR(C6D6)同定結果:
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
<触媒成分(M−2)の合成例2>
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(成分[M−2](錯体2)の合成):
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11―240909号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、実施した。
<触媒合成例1>
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製商品名「ベンクレイSL」、平均粒径19μm)4Lを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーを蒸留水4,000g加えた後にろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え、硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ上固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4L加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理モンモリロナイト220gを得た。
この化学処理モンモリロナイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
(ii)触媒調製及び予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上で得られた化学処理モンモリロナイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分(M−1)の合成例1で作製した前記触媒成分[M−1]の錯体1、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(210μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分(M−2)の合成例2で作製した前記触媒成分[M−2]の錯体2、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(90μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
先ほどの化学処理モンモリロナイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後更にトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒56.4gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.82であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
<重合>
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これに水素7.3NL(0.65g)、トリイソブチルアルミニウム(0.12mol:濃度50g/Lのへプタン溶液を0.47L)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで、予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、18.2kgのプロピレン重合体(以下、PP(C−1)という)を得た。
触媒活性は、7600(g−PP/g−cat)であった。
上記製造例(C−1)で製造したプロピレン系樹脂PP(C−1)100重量部に対し、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名「IRGANOX1010」、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名「IRGAFOS 168」、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部を配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサー、商品名)を用い室温下で3分間混合した後、二軸押出機にて溶融混練して、ポリプロピレン樹脂(C)のペレットPP(C−1)を得た。
なお、二軸押出機には、テクノベル社製KZW−25を用い、スクリュー回転数は400RPM、混練温度は、ホッパ下から80、160、210、230(以降、ダイス出口まで同温度)℃設定とした。
得られたポリマーの各種分析を行った。表5に分析結果を示す。
Figure 2014101497
なお、PP(C−1)のその他の分析結果は、下記のとおりである。
CXS:0.1wt%
mm:98.0%
Mw/Mn:4.8
Mz/Mw:3.7
Mabsが100万における分岐指数g’:0.88
(4)外層用樹脂組成物(Y)
市販のプロピレン系樹脂等を用い、以下の外層用樹脂組成物(Y−1)を調製して、使用した。
外層用樹脂組成物(Y−1):
プロピレン系樹脂(D−1)として、市販品の日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MA3」(プロピレン単独重合体、MFR:11g/10分、融点163℃)を用い、PP(D−1)70wt%と、前記PP(A−1)のプロピレン系樹脂組成物21wt%及び前記PE(B−1)のエチレン−α−オレフィン共重合体9wt%からなる樹脂組成物。
(5)最内層用樹脂組成物(Z)
市販のプロピレン系樹脂等を用い、以下の内層用樹脂組成物(Z−1)を調製して、使用した。
内層用樹脂組成物(Z−1):
前記PP(A−1)のプロピレン系樹脂74wt%と、前記PE(B−1)のエチレン−α−オレフィン共重合体25wt%及び市販品の日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MA3」(プロピレン単独重合体、g/10分、融点163℃)1wt%からなる樹脂組成物。
[実施例1〜3]
下記表6に記載された各層用の原料ペレットを、表6に記載の比率にて配合し、ドライブレンドを行った後、二軸押出機(テクノベル社製KZW−25)にて溶融混練しペレットを得た。内層用押出機として、口径30mmの単軸押出機、外層用および最内層用押出機として、口径18mmの単軸押出機を用い、マンドレル口径50mm、リップ幅1.0mmのサーキュラーダイから設定温度200℃にて押出し、水冷して、3m/minの速度で、折り幅90mmとなるように、水冷インフレーション成形を行い、表6に記載の層構成からなり、総厚み200μmの筒状成形体を得た。
次に、得られた積層シートからなる筒状成形体を前述の方法で加熱処理を行った後に、23℃、50%RHの雰囲気下において、24時間以上保持した後、積層シートの物性を評価した。評価結果を表6に示す。
本発明の構成を満たす積層シートは、透明性、柔軟性、耐熱性、耐衝撃性、外観に優れるものであった。
[比較例1]
表6に記載の成分を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、積層シートを得た。評価結果を表6に示す。
比較例1は、成分(C)のMTが低いために、ダイスウェル、形状保持率に劣るものであった。
Figure 2014101497
本発明のシート成形用樹脂組成物は、成形性に優れ、さらに、本樹脂組成物を用いたプロピレン系樹脂シートは、透明性、柔軟性、耐熱性、耐低温衝撃性、2次加工適性に優れるものであり、それを用いた加熱処理用包装体は、輸液バッグやレトルト包装用途に極めて有用である。

Claims (5)

  1. 下記(A−i)〜(A−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)1〜98wt%、下記(B−i)を満たす改質材(B)1〜50wt%および下記(C−i)を満たす分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(C)1〜50wt%(ただし、A+B+C=100wt%)を含有するプロピレン系樹脂組成物(X)からなることを特徴とするシート成形用樹脂組成物。
    ・プロピレン系樹脂組成物(A):
    (A−i)プロピレン系樹脂組成物(A)は、融解ピーク温度(Tm(A1))が120〜170℃のプロピレン(共)重合体成分(A1)30〜70wt%、α−オレフィン含有量(E[A2])が7〜30wt%のプロピレン−α−オレフィンランダム重合体成分(A2)70〜30wt%を含有する。
    (A−ii)メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
    ・改質材(B):
    (B−i)エチレン−α−オレフィン共重合体およびスチレン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の改質材。
    ・分岐構造を有するプロピレン樹脂(C):
    (C−i)溶融張力(MT)(単位:g)が、
    log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、または、 MT≧15
    のいずれかを満たす。
  2. 請求項1に記載のシート成形用樹脂組成物からなる層を少なくとも一層以上含むことを特徴とするプロピレン系樹脂シート。
  3. 厚みが0.01mm〜1.0mmであることを特徴とする請求項2に記載のプロピレン系樹脂シート。
  4. 請求項2又は3に記載のプロピレン系樹脂シートを用いた加熱処理用包装体。
  5. 加熱処理用包装体が輸液バックであることを特徴とする請求項4に記載の加熱処理用包装体。
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