JP2014099342A - 医療用加速器駆動型小型中性子源用リチウムターゲットの製造方法 - Google Patents

医療用加速器駆動型小型中性子源用リチウムターゲットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】例えば、Li薄膜/Cu冷却基盤の接合体の直径×膜厚がφ20mm〜40mm×100〜200μm±10μmの範囲にあるような大型のリチウムターゲットを製造すること。
【解決手段】リチウムターゲットを構成するCu冷却基盤をホットプレート上に載せる工程と、窒素雰囲気内において、前記Cu冷却基盤をホットプレートにより20〜70℃±0.1℃の精度で加熱する工程と、前記Cu冷却基盤をホットプレートで加熱しながら、Li薄膜を前記Cu冷却基盤上に載置し、両者をローラでプレスして仮接着する工程と、その後、前記Li薄膜/Cu冷却基盤の接合体を、前記ホットプレートから外し、数秒以内にプレス圧15〜25MPaでかつ温度20〜70℃±0.1℃以内の条件下で両者を接合させる工程を備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、代表的には、例えばホウ素中性子捕捉治療(BNCT)用の小型中性子源や、各種非破壊検査用の中性子源として使用される、リチウム(Li)ターゲット及びその製造方法に関する。
上述のBNCT(Boron Neutron Capture Therapy)とは、Liターゲットへの加速プロトン照射による7Li(p, n)7Be反応で得られる中性子を利用した治療法である。BNCTにおいて、プロトンを照射して7Li(p, n)7Be反応により中性子を発生させるためのLiターゲットの製造方法の一つが、特許文献1に開示されている。この特許文献1には、冷却基盤であるCu(銅)板と、Li薄板を、不活性雰囲気内において、押圧手段により圧延圧着することで、Liターゲットを製造する方法が開示されている。また、非特許文献1乃至3には、BNCTについてのこれまでの基礎的研究内容が開示されている。
特開2007−303983号公報
B. Bayanov, V. Belov, and et al., Applied Radiation and lsotopes 61(2004)817-821. B. Bayanov, and et al., Nucl. Lnstrum. Methods A 413, 397-426(1998) V. Belov, et al., Neutron producing target for accelerator based neutron source for NCT In: Sauerwein, W., Moss, R., Witting, A.(Eds), Research and Development in Neutron Capture Therapy. Monduzzi Editore, Bologna, Italy, pp.247-252
上述したように、BNCTでは、加速されたプロトンをLiターゲットに照射することで、治療に必要な中性子を得るようにしている。しかし、Liの融点は約180℃程度であるため、プロトン照射によってLiターゲットが急激に加熱されると、Cu冷却基盤での冷却にもかかわらずターゲットからLiが蒸発し、Liターゲットの寿命が短くなることから、そのための交換による患者への治療時間の長期化、治療費の高額化や照射信頼性を損なう等患者への様々な負担が考えられる。そのため、本発明者らは、実用装置としてLiターゲットの(1)製作コストの安価な製作方法、(2)照射精度を高めるための製作精度の向上、(3)大規模照射による治療、(4)治療時間の短縮のためのマルチターゲット交換方式の行えるLiターゲット製造技術を提案する。特に、従来のLiターゲット製作法は製作精度は高いものの、製作時間がかかること、ならびに製作寸法制限(精々直径φ20mm、膜厚100μm程度)があることなどから、高コスト化と小規模照射を招く原因となっていた(特許文献1を参照)。
このような課題は、Liターゲットの直径φと膜厚を増大させることによって解決されるが、大面積で膜厚が厚いLi薄膜をCu冷却基盤との間で接合全面において接合欠陥が生じないように、かつ膜厚が均一になるように強固に接合することはこれまで不可能であった。
したがって、本発明の目的は、加速プロトン照射による7Li(p, n)7Be反応で中性子を発生させるリチウムターゲットにおいて使用される、大面積かつ膜厚の厚いLi薄膜(例えば、直径φ20mmを超える大面積であってかつ膜厚100〜200μmのLi薄膜)を、接合全面において接合欠陥がなく、高い厚み加工精度(例えば、最大±10μm)で冷却基盤へ強固に接合する方法を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明に係る、加速プロトン照射による7Li(p, n)7Be反応で中性子を発生させるリチウムターゲットの製造方法は、リチウムターゲットを構成するCu冷却基盤を、窒素雰囲気内において、20〜70℃±0.1℃以内の温度範囲に加熱し、その状態でLi薄膜を前記Cu冷却基盤上に載置して、両者を仮接着させた後、仮接着状態にあるLi薄膜/Cu冷却基盤の接合体を、前記温度範囲に保った状態で素早くプレスして接合させることを特徴とする。
上述のリチウムターゲットの製造方法においては、塑性流動による加工誤差を抑えるために、上述のプレス接合時の圧力は、15〜25MPaが好適である。また、Li薄膜がCu冷却基盤から剥離することを防止するため、窒素雰囲気の湿度は、5%以下のドライ雰囲気中(露点-30℃以下)とすることが好適である。
本発明の製造方法によって、従来のホットプレス法では得られなかった、直径φ20mm〜40mm×膜厚100〜200μm±10μmの高精度のリチウムターゲットを得ることができるようになった。本発明により、大面積かつ膜厚が厚いLi薄膜を、冷却基盤に高精度かつ短時間に接合できるようになるため、リチウムターゲットを大量かつ安価に製造することができ、BNCTの治療時間の短縮や治療費の低減が図られる。
中性子源用Liターゲット部の基本構造を示す概略構成図。 従来のホットプレス法によるCu/Li接合試験の結果を説明するための模式図。 ホットプレス(従来法)と低温プレス(本発明)による接合試験の説明図。 本発明に係る低温プレス法によるリチウムターゲットの製造方法の説明図。 接合時の雰囲気の影響を説明するための写真を示す図。 室温接合時のLi厚み加工精度と加圧レベルの関係を示すグラフ。 Li厚み加工精度と加熱温度と加圧レベルとの関係を示すグラフ。 低温プレスにより製造したLiマルチターゲットシステムの説明図。
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるリチウムターゲットの製造方法について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例に係る製造方法により製造された、リチウムターゲットの外観を示す概略構成図である。図1において、10は例えば直径×膜厚が、φ20mmより大×100〜200μmの Li薄膜であり、20は高熱伝導性無酸素銅またはアルミナ分散強化銅から成る冷却基盤である。Liターゲット部は、Cu冷却基盤20上にLi薄膜(箔)10を載せ、後述する冷温プレスによって接合して製作されている。このような大型のリチウムターゲットのCu/Li接合部を、高精度でしかも無欠陥で製作するためには、接合する100μmオーダーのLi薄膜に均等に接合圧力を加える必要があるとともに、加圧後の加工変形精度を±10μmオーダーで抑える必要がある。
本発明の製造方法についての理解を助けるために、本発明の製造方法を説明する前に、図2を参照して、従来のホットプレス法による接合試験の結果について説明する。図2の模式図は、φ25mm× 5mmtのCu冷却基盤と膜厚φ20mm×110μmのLi箔の接合を50MPa加圧かつ70℃加熱状態で実施して作製したリチウムターゲットの剥離状態を示している。この方法で作製されたリチウムターゲットは、図2に示されるように、Li薄膜/Cu冷却基盤間に大規模な剥離部が生じるとともに、接合部中心O及びA〜Fにおける膜厚が39〜128μmの極めて広範囲のばらつきを示した(表1を参照)。
Figure 2014099342
すなわち、図3の(a)に示されるようなホットプレス法では、接合面積に比べて比較的大面積のプレスからの加圧の際、Li薄膜に均等加圧がかかりにくいとともに、ホットプレス装置はヒーターによる傍温加方式を採用しているため、接合部に温度むらが生じることにより加圧後のLiの均等な塑性変形を妨げるために生じたものである。しかも剥離が大規模に生じたのはLi/Cu接合界面にガス等が閉じ込められたため、図2のような結果になったと考えられる。Cu/Li間にガス層が無いように加圧する前にCu試験片にLi箔をローラ等で仮接着する必要があるが、ホットプレスでは接合直前のCu/Li体の状態を確認することが機構上できないため、高精度の荷重及び温度ならびに接合界面制御の必要なLi薄膜の接合にはホットプレス法は適用できないことが分かった。
これらの接合時の問題点を解消するため、本発明者らは図3の(b)に模式的に示されたような低温プレス法を考案した。以下、本発明で採用する図4の低温プレス法について、同時に図5乃至図7を参照しながら、一実施例について詳細に説明する。
加速プロトン照射による7Li(p, n)7Be反応で中性子を発生させるリチウムターゲットの製造方法に係る本発明の一実施例は、リチウムターゲットを構成するCu冷却基盤をホットプレート上に載せる工程と、窒素雰囲気内において、前記Cu冷却基盤をホットプレートにより20〜70℃±0.1℃の精度で加熱する工程と、前記Cu冷却基盤をホットプレートで加熱しながら、Li薄膜を前記Cu冷却基盤上に載置し、両者をローラでプレスして仮接着する工程と、その後、前記Li薄膜/Cu冷却基盤の接合体を、前記ホットプレートから外し、数秒以内にプレス圧15〜25MPaでかつ温度20〜70℃±0.1℃以内の条件下で両者を接合させる工程を備える。以下、各工程について具体的に説明する。
(1)均等加圧
図4は、プレス機(加圧機)の動作を模式的に示している。ホットプレスによるLi薄膜への不均一加圧を防ぐため、図4に示すように加圧機とLi箔の間に鏡面加工したプレス台(炭素鋼)と加圧機からの不均一負荷を緩和させるための押さえ(例えば硬化ゴム等)を挿入して負荷の均一化を図った。なお、低温プレス法による高精度加圧制御を実現するためには、Li箔と加圧機の間にプレス台及び押さえを挿入することが望ましい。
(2)均加熱性
Li薄膜/Cu境界面での接合時の加温制御を設定温度±0.1℃に制御するためCu試験片側からホットプレートにより20〜70℃±0.1℃の精度で加熱を行うようにした(図3(b)の(1))。
(3)無欠陥化
ホットプレート加熱時にLi箔(直径20mm、膜厚110μm)をCu冷却基盤上に載せ、Cu/Li間にガス層が無いように加圧前にCu試験片にLi箔をローラ等で仮接着する(図3(b)の(2))。その後、ホットプレートを外し、加圧接合中の温度不均一性を解消するため、Cu試験片の温度が20〜70℃±0.1℃以内に保持されるように、速やかに加圧(数秒以内)してLi箔をCuに接合する(図3(b)の(3)) 。
(4)表面劣化対策
図5は、窒素雰囲気中の湿度を変化させた場合のLi/Cu接合体表面の変化を示す。図5において、紙面に向かって左側から1から5まで順に湿度5%、10%、15%、20%、25%の状態での結果を示している。湿度が5%以上になるとLi表面の色が黒色化するとともに後にボロボロと崩れ落ち、やがてCuからの剥離が目立ってくる。この傾向は、湿度の上昇と共に顕著になった。そこで窒素雰囲気中での湿度を5%以下のドライ雰囲気中(露点-30℃以下)でLi/Cu接合体での接合作業中ならびに接合後の保全をすることとした。
(5)接合後のプレスとLiとの乖離性の確保
本発明では、Li接合後のプレス台とLi箔とのくっつきを防止するため下記A〜Cの作業内容を1工程以上実施している。
A工程:ピカールでプレス台を磨き、Li箔の接触する表面にピカールを数%程度残す。
B工程:プレス台にLi箔が当たる面のみに流動パラフィン等のオイル系又は有機物等を塗布する。
C工程:Li箔とプレス台の間にアクリル板又は樹脂製品等のLiがつかない物質を挟む。
次に図6及び図7を参照し、加工精度について説明する。図6のグラフから、室温における加圧接合は加圧レベルの上昇とともに許容誤差を逸脱すること、および、最適加圧レベルは25MPa近傍であることがわかった。 また、図7のグラフから、接合時に加熱することによりLi薄膜の塑性流動現象を利用した均一膜厚の接合が可能であるが、20〜70℃の温度範囲において50MPa以上の加圧は加工誤差を助長することから不適当であること、また、70℃以上ではLi表面からの蒸発が生じることからこれ以上の加熱は不適当であることがわかった。
(6)加工精度
(ア)加圧条件の最適化
加圧接合後のLi形状及び加工精度の確保を目的に、非加熱時に加圧(15〜100MPa)× 加圧時間(1分)で加圧接合した際のLi箔厚みの変化を示した。これによると、加工精度許容誤差範囲内であるのは加圧力が15〜25MPaの範囲であることがわかる。一方、15MPa加圧の接合試験片に剥離が認められた。
(イ)加圧時間の最適化
プレス圧25MPa× 加圧時間(15〜60秒)の場合でのLi膜厚加工誤差ならびに剥離について確認したが、どの加圧時間においても大きな差異は認められなかった。
(ウ)加熱温度の最適化
プレス圧15〜70MPa× 加圧時間60sec×加熱温度(20〜70℃)におけるLi膜厚加工誤差を図7に示す。加工温度が上昇するにつれてLi軟化が始まり加工誤差が塑性流動により増加している。許容範囲にあるのは、プレス圧15〜25MPaで、かつ温度20〜70℃であった。
(工)接合強度
上記(ウ)での接合条件における各Cu/Li接合体の接合強度試験を実施した。接合強度評価にはJISのピール試験とピンセットによるはぎ取り試験を実施した。その結果、どの接合条件でのCu/Li間では、それぞれ同等な強固な接合状態であることが確認された。
本発明によって作製したLiターゲットは、図8に示されるように、BNCT装置に例えば回転ディスクを設置してそのディスク上に多数の大型Liターゲットを搭載させることで、次のようなメリットもある。すなわち、Liターゲットの真空蒸着法による製作とその補修には、その場作業となることから蒸着装置も込みのBNCT装置となる。そのため単体ターゲットとなり、その場作業のためその形性や補修時間もかかる。これに対して、大型で多くのターゲットを本発明により安価で製作したものをBNCT装置に搭載し、損傷した場合に直ちに別のターゲットに交換することにより患者治療以外の時間を短縮することができる。
10…Li薄膜
20…Cu冷却基盤

Claims (5)

  1. 加速プロトン照射による7Li(p, n)7Be反応で中性子を発生させるリチウムターゲットの製造方法であって、前記リチウムターゲットを構成するCu冷却基盤を、窒素雰囲気内において、20〜70℃±0.1℃以内の温度範囲に加熱し、その状態でLi薄膜を前記Cu冷却基盤上に載置して、両者を仮接着させた後、仮接着状態にあるLi薄膜/Cu冷却基盤の接合体を、前記温度範囲に保った状態で素早くプレスして接合させることを特徴とするリチウムターゲットの製造方法。
  2. 請求項1に記載のリチウムターゲットの製造方法において、前記プレス時のプレス圧が、15〜25MPaの範囲にあることを特徴とするリチウムターゲットの製造方法。
  3. 請求項1に記載のリチウムターゲットの製造方法において、前記Li薄膜/Cu冷却基盤の接合体の直径×膜厚がφ20mm〜40mm×100〜200μm±10μmの範囲にあることを特徴とするリチウムターゲットの製造方法。
  4. 請求項1に記載のリチウムターゲットの製造方法において、前記窒素雰囲気はその湿度が5%以下のドライ雰囲気であり、そのドライ雰囲気中で前記Li薄膜/Cu冷却基盤の接合体の接合作業ならびに接合後の保全を行うことを特徴とするリチウムターゲットの製造方法。
  5. 加速プロトン照射による7Li(p, n)7Be反応で中性子を発生させるリチウムターゲットの製造方法であって、リチウムターゲットを構成するCu冷却基盤をホットプレート上に載せる工程と、窒素雰囲気内において、前記Cu冷却基盤をホットプレートにより20〜70℃±0.1℃の精度で加熱する工程と、前記Cu冷却基盤をホットプレートで加熱しながら、Li薄膜を前記Cu冷却基盤上に載置し、両者をローラでプレスして仮接着する工程と、その後、前記Li薄膜/Cu冷却基盤の接合体を、前記ホットプレートから外し、数秒以内にプレス圧15〜25MPaでかつ温度20〜70℃±0.1℃以内の条件下で両者を接合させる工程を備えたことを特徴とするリチウムターゲットの製造方法。
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