JP2014093979A - 薬効評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記薬効評価方法は、所望細胞を平面培養した後、前記所望細胞の発育が阻止される薬剤濃度を確認する薬剤濃度確認ステップ、平均繊維径3μm以下の無機系ナノファイバーからなり、内部を含む全体が接着剤で接着した培養基材に、前記と同じ所望細胞を三次元に培養した後、(イ)前記薬剤濃度確認ステップで確認した薬剤濃度の薬剤を、前記三次元培養した所望細胞に2回以上作用させる、及び/又は(ロ)前記薬剤濃度確認ステップで確認した薬剤濃度よりも高濃度の薬剤を、前記三次元培養した所望細胞に作用させる薬剤作用ステップ、前記薬剤作用ステップ後における薬効を評価する薬効評価ステップを含む。
【選択図】なし
Description
このようなスフェロイドは、スフェロイドを構成する細胞が自ら生産したものではない「外因性の細胞凝集剤」を使用して作製されるため、作製過程が煩雑であった。また、一般的に、スフェロイドは、固相との接着性が悪いため、薬効を評価する過程で、培養液を交換する際に、スフェロイドを吸引してしまい、取り扱い性が悪いばかりでなく、データの信頼性の低いものであった。
所望細胞を平面培養した後、前記所望細胞の発育が阻止される薬剤濃度を確認する薬剤濃度確認ステップ、
平均繊維径3μm以下の無機系ナノファイバーからなり、内部を含む全体が接着剤で接着した培養基材に、前記と同じ所望細胞を三次元に培養した後、(イ)前記薬剤濃度確認ステップで確認した薬剤濃度の薬剤を、前記三次元培養した所望細胞に2回以上作用させる、及び/又は(ロ)前記薬剤濃度確認ステップで確認した薬剤濃度よりも高濃度の薬剤を、前記三次元培養した所望細胞に作用させる薬剤作用ステップ、
前記薬剤作用ステップ後における薬効を評価する薬効評価ステップ、
を含む、薬効評価方法
により解決することができる。
また、本発明で用いる培養基材は平均繊維径3μm以下の無機系ナノファイバーからなり、表面積が広いため、細胞とナノファイバーとの接着面積が広く、結果として、細胞がナノファイバーにしっかりと接着しており、培養液を交換した際に、細胞が破損や剥離しにくいため、取り扱い性にも優れている。
しかも、本発明で用いる培養基材は細胞凝集剤などの薬剤を使用しなくても、細胞がナノファイバーにしっかりと接着するため、培養細胞の作製が簡便である。
特に、抗癌剤の薬効評価においては、癌細胞株細胞としては、例えば、表1に示すように、肺癌(A549)、乳癌(MCF−7、MDA−MB−453)、子宮癌(HeLa)、卵巣癌(NIH:OVCAR−3)、大腸癌(HT−29、DLD−1)、前立腺癌(DU−145)、肝癌(HepG2、Huh−7)、膵癌(SUIT−2、MIA PaCa−2)細胞株などが挙げられる。
例えば、培養用シャーレに、所望の細胞を、使用シャーレに対してコンフルエントになる細胞数で播種する。使用培地は、所望細胞により適宜選択する。細胞播種後、一晩培養し、続いて、濃度の異なる評価用薬剤を含む調整培地に交換する。72時間培養後、スルホローダミンB(SRB)による比色定量により、生細胞数を測定する。一方で、基準として、評価用薬剤含有調整培地に交換しなかった系での生細胞数を測定する。基準系の生細胞数を100とした時に、評価用薬剤を使用した系での生細胞数が1以上発育阻害が生じた時の薬剤濃度を確認する。
なお、後述の薬剤作用ステップにおいて、薬剤を2回以上作用させる場合には、薬効を評価しやすいように、所望細胞の発育が50%以上阻止される薬剤濃度であるのが好ましく、細胞種及び/又は薬剤によって、60%以上阻止、70%以上阻止、又は80%以上阻止される濃度であることができる。
(1)無機成分を主体とする化合物を含む紡糸用無機系ゾル溶液から、静電紡糸法により無機系繊維を紡糸する工程(紡糸工程)、
(2)前記無機系繊維とは反対極性のイオンを照射し、集積させ、無機系繊維集合体を形成する工程(集積工程)、
(3)前記無機系繊維集合体の内部を含む全体に、接着剤溶液を付与し、余剰の接着剤溶液を通気により除去し、内部を含む全体において、接着剤で接着した無機系繊維構造体を形成する工程(接着工程)
を含み、所望により、
(4)金属イオン含有化合物含有溶液を前記無機系繊維構造体に付与し、無機系繊維構造体に機能性を付与する工程(金属イオン含有化合物含有溶液付与工程)
を更に含むことができる。
前記製造方法では、前記金属イオン含有化合物含有溶液付与工程(4)に代えて、あるいは、前記工程(4)に加えて、紡糸工程(1)で使用する紡糸用無機系ゾル溶液、及び/又は、接着工程(3)で使用する接着剤溶液に金属イオン含有化合物を添加することができる。
無機系ゲル状繊維とは、溶媒を含む状態の繊維であり、例えば、無機系繊維の原料がテトラエトキシシラン(TEOS)、エタノール、水、塩酸からなる場合は、最も沸点の高い物質が水であるため、100℃未満の温度で熱処理をした、又は熱処理をしていない繊維である。
「平均繊維径」は50点における繊維径の算術平均値をいい、「繊維径」は無機系繊維構造体を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した繊維の太さをいう。
P=[1−Wf/(V×SG)]×100
ここで、Pは空隙率(%)、Wfは繊維重量(g)、Vは体積(cm3)、SGは繊維の比重(g/cm3)をそれぞれ表す。
例えば、不織布のように厚さが均一な場合は、次の式から算出することができる。
P={1−Wn/(t×SG)}×100
ここで、Pは空隙率(%)、Wnは目付(g/m2)、tは厚さ(μm)、SGは繊維の比重(g/cm3)をそれぞれ表す。
なお、目付は、最も面積の広い面の面積と重量を測定し、1m2当たりの重量に換算した値であり、厚さは、最も面積の広い面における荷重が30g/cm2となるように設定したマイクロメーター法で測定した値である。
製品名:小型引張試験機
型式:TSM−01−cre サーチ株式会社製
試験サイズ:5mm幅×40mm長
チャック間間隔:20mm
引張速度:20mm/min.
初荷重:50mg/1d
金属イオン含有化合物を構成する金属としては、例えば、カルシウム、ナトリウム、鉄、マグネシウム、カリウム、銅、ヨウ素、セレン、クロム、亜鉛、又はモリブデンなどを挙げることができる。これらの金属は、細胞機能誘導因子として作用できる。
金属イオン含有化合物は、例えば、金属塩であることができる。金属塩としては、例えば、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、リン酸水素塩、炭酸水素塩、硝酸塩、水酸化物などを挙げることができる。特に、カルシウムイオン含有塩、マグネシウムイオン含有塩、アパタイト(りん灰石)を付与した機能性を有する無機系繊維構造体は、細胞機能を高めた細胞培養を行うことができる。
同濃度の薬剤を2回以上作用させる場合、作用回数は薬効を確認できる程度の回数行えば良い。このように、薬剤を2回以上作用させることは、実際の投与に近いため、薬効を評価するのに好適である。
一方、高濃度の薬剤を作用させる場合、薬剤の濃度は薬効を確認できる程度の濃度であり、平面培養時の薬剤濃度によって異なるため、特に限定するものではない。なお、高濃度の薬剤を2回以上作用させることもできる。
(1)薬剤濃度確認ステップ
表3に示すような癌細胞を培養皿で平面培養した後、表3に示す抗癌剤による、平面培養において癌細胞の発育が80%阻害される薬剤濃度を次の手順により確認した。この結果は表3に示す通りであった。
癌細胞を培養皿で培養した後、培養皿から培養液を除去し、癌細胞をPBSで1回洗浄した。続いて、トリプシン/EDTA(Nacalai)処理により、癌細胞を培養皿から剥離した。そして、癌細胞の生細胞数をトリパンブルー染色によりカウントした。
96穴プレートの3ウェルに、表4に示す培地に10%血清および抗生物質を添加した培養液100μLを添加し、前培養で得た癌生細胞を表4に示すような量だけ播種した後、温度37℃、95%空気/5%CO2下で一晩培養した。その後、抗癌剤を含む培養液に交換した後、72時間培養した。72時間後、スルホローダミンB(SRB)による比色定量により生細胞数の測定を行った。
96穴プレートの3ウェルに、表4に示す培地に10%血清および抗生物質を添加した培養液100μLを添加し、前培養で得た癌生細胞を表4に示すような量だけ播種した後、温度37℃、95%空気/5%CO2下で一晩培養した。その後、新鮮な培養液に交換した後、72時間培養した。72時間後、SRBによる比色定量により生細胞数の測定を行った。
本培養を抗癌剤の濃度を変えて繰り返し行い、本培養後における生細胞数の、基準培養後における生細胞数に対する比率が20%となる時の抗癌剤濃度を見つけ、癌細胞の発育が80%阻害される薬剤濃度とした。
(2)−1 平面培養
表3に示すような癌細胞を培養皿で培養した後、培養皿から培養液を除去し、癌細胞をPBSで1回洗浄した。続いて、トリプシン/EDTA(Nacalai)処理により、癌細胞を培養皿から剥離した。そして、癌細胞の生細胞数をトリパンブルー染色によりカウントした。
24穴プレートにシリカナノファイバーからなる培養担体(国際公開番号WO2010/082603号パンフレットに記載の実施例6、1cm×1cm、平均繊維径:0.8μm、熱処理温度:800℃、厚さ:94.2μm、見掛密度:0.111g/cm3、空隙率:94.4%、引張り破断強度:0.568MPa、シリカゾルで接着)を設置した。前記プレートの2ウェルに、表5に示す培地に10%血清および抗生物質を添加した培養液1mLを添加し、前記平面培養で得た癌生細胞を、表5に示すような量だけ播種した。その後、温度37℃、95%空気/5%CO2下で培養し、培養3日目に、培養基材と培養した細胞培養物を別の培養容器へ移すとともに、培養液を交換した。また、培養5日目と、7日目に、培養液を交換した。そして、培養8日目に、培養基材と培養した細胞培養物を別の培養容器へ移すとともに、表5に示す培地に10%血清および抗生物質を添加した培養液に、表3に示す平面培養において癌細胞の発育が80%阻害される薬剤濃度の薬剤を添加した抗癌剤調整培養液1mLに交換した。培養9日目以降、抗癌剤調整培養液を、24時間毎に交換し、4日間培養した。
抗癌剤調整培養液に交換した後、4日目(細胞播種日からカウントすると12日目)の培養基材と培養した細胞培養物を回収し、生細胞数の計測を行った。また、細胞の形態観察を行った。具体的には以下の手順で実施した。
Hoechst33258を用いたDNA定量により行った。より具体的には、サンプルの培養液を除去し、PBSで1回洗浄した。DNA定量キット(株式会社プライマリーセル、DNA Quantity kit,Code No.AK06)付属の緩衝液を1ウェルあたり0.5mL加えて、超音波破砕機(TAITEC)で細胞を冷却しながら破砕した(Sonicationの条件:パルス強度:5、時間:10秒)。破砕した溶液を回収した後、更にウェルごとに0.5mLの緩衝液で回収した。回収した溶液を遠心分離(11000rpm、20分、4℃)し、上清を回収した。上清はDNA定量キットに準じてDNAを定量した。
細胞の形態をSEMにより観察した。より具体的には、培養細胞をSEM観察するために、以下の前処理(細胞の固定化、脱水、凍結乾燥)を実施した後に、SEMによりその形状を観察した。
培養液を10%ホルマリン溶液に置換した(暗黒下)。次いで、2%グルタルアルデヒド/10%ホルマリン溶液に一晩置換した。その後、HEPESバッファー(20mM、pH:7.4)で5分間の置換を2回行い、残存ホルマリンを洗浄除去した。
(イ)10%エタノール溶液、50%エタノール溶液、60%エタノール溶液で順番に置換し、各々15分間放置した。
(ロ)70%エタノール溶液、80%エタノール溶液で順番に置換し、15分間放置する操作を2回繰り返した。
(ハ)90%エタノール溶液で置換し、15分放置した。
(ニ)100%エタノール溶液で置換し、30分間放置した。
(ホ)前記(ニ)の半分の量の100%エタノール溶液で置換し、30分間放置した。
(ヘ)前記(ホ)の100%エタノール溶液に対して、t−ブチルアルコール溶液を等量添加して、20分間静置した。
(ト)100%t−ブチルアルコールで置換し、20分間放置する操作を2回繰り返し、t−ブチルアルコールで置換した。
脱水後の培養細胞を冷凍庫(ES−2030、日立凍結乾燥装置)で凍結した後、一晩、凍結乾燥(Bench Top K、VirTisを使用)した。
24穴プレートにシリカナノファイバーからなる培養担体(国際公開番号WO2010/082603号パンフレットに記載の実施例6、1cm×1cm、平均繊維径:0.8μm、熱処理温度:800℃、厚さ:94.2μm、見掛密度:0.111g/cm3、空隙率:94.4%、引張り破断強度:0.568MPa、シリカで接着)を設置した。前記プレートの2ウェルに、表5に示す培地に10%血清および抗生物質を添加した培養液1mLを添加し、(2)薬剤作用ステップの(2)−1平面培養と同様にして、平面培養で得た癌生細胞を表5に示すような量だけ播種した後、温度37℃、5%CO2下で培養し、1日おきに培養液交換し、12日間、培養を行った。なお、培養3日目と培養8日目に、培養基材と培養した細胞培養物を別の培養容器へ移すとともに、培養液を交換した。
細胞播種日からカウントして12日目に、培養基材と培養した細胞培養物を回収し、生細胞数の計測を行った。また、細胞の形態観察を行った。なお、これらの操作は(3)−1生細胞数の計測と(3)−2細胞の形態観察と同様に行った。
(4)−1 生細胞数
基準計測ステップで計測された生細胞数を100とした時の、抗癌剤を使用した時の生細胞数の比率は、表6に示す通りであった。
(3)−4基準計測ステップで撮影したSEM写真を図1〜図12に示す。図1〜図12に示す通り、細胞株がA549(図1)、DU145(図2)、NIH:OVCAR−3(図3)、HepG2(図4)、Huh−7(図5)では、培養基材表面の繊維に沿って、シート状に形成された状態にあり、MDA−MB−453(図6)、HeLa(図7)では、培養基材表面上に球状の密集体が形成された状態にあり、MCF−7(図8)、HT−29(図9)、DLD−1(図10)では、培養基材表面に、シート状に形成された状態にあり、SUIT−2(図11)、MIA PaCa−2(図12)では、培養基材表面に、数珠状に形成された状態にあった。なお、図1〜図12の各図における(a)は培養細胞の平面における電子顕微鏡写真であり、(b)は培養細胞の断面における電子顕微鏡写真である。
なお、細胞株A549に対して、抗癌剤としてエトポシド、マイトマイシンC(MMC)、又はカンプトセシンを用いる場合であっても、抗癌剤の添加回数を2回又は3回とする、或いは薬剤濃度を高くして、1〜3回作用させることによって、平面培養した場合との差が見られる。
また、本発明の培養基材を使用した場合には、細胞凝集剤などの薬剤を使用しなくても、細胞がナノファイバーにしっかりと接着するため、培養細胞の作製が簡便であった。
Claims (1)
- 所望細胞を平面培養した後、前記所望細胞の発育が阻止される薬剤濃度を確認する薬剤濃度確認ステップ、
平均繊維径3μm以下の無機系ナノファイバーからなり、内部を含む全体が接着剤で接着した培養基材に、前記と同じ所望細胞を三次元に培養した後、(イ)前記薬剤濃度確認ステップで確認した薬剤濃度の薬剤を、前記三次元培養した所望細胞に2回以上作用させる、及び/又は(ロ)前記薬剤濃度確認ステップで確認した薬剤濃度よりも高濃度の薬剤を、前記三次元培養した所望細胞に作用させる薬剤作用ステップ、
前記薬剤作用ステップ後における薬効を評価する薬効評価ステップ、
を含む、薬効評価方法。
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