JP2014091868A - ポリフェニレンサルファイドモノフィラメントおよび工業用織物 - Google Patents
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Abstract
【課題】工業用織物の製織工程において糸切れなどの不具合を生じることが少ない必要十分な引張強度を保持しつつ、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、且つ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を備えた、工業用織物の構成素材として好適なポリフェニレンサルファイドモノフィラメントおよびこれを用いた各種工業用織物を提供する。
【解決手段】シラノール基量が質量比率で2〜10%であるシリコーン系化合物を、ポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部含有せしめてなる樹脂組成物からなるモノフィラメントであって、ASTM D1238−86に記載の方法に準拠した前記ポリフェニレンサルファイド樹脂のメルトフローレイト(MFR)が110g/10分以下であること特徴とするポリフェニレンサルファイドモノフィラメント。
【選択図】なし
【解決手段】シラノール基量が質量比率で2〜10%であるシリコーン系化合物を、ポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部含有せしめてなる樹脂組成物からなるモノフィラメントであって、ASTM D1238−86に記載の方法に準拠した前記ポリフェニレンサルファイド樹脂のメルトフローレイト(MFR)が110g/10分以下であること特徴とするポリフェニレンサルファイドモノフィラメント。
【選択図】なし
Description
本発明は、工業用織物の製織工程において糸切れなどの不具合を生じることが少ない必要十分な引張強度を保持しつつ、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、且つ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を備え、工業用織物の構成素材として好適なポリフェニレンサルファイドモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物に関するものである。
一般にポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートからなるモノフィラメントに代表される繊維は、優れた力学特性、耐熱性などを有していることから、従来から各種工業用部品、衣料用および工業用繊維材料、各種織物などに使用されてきた。
また、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPSという)からなるモノフィラメントは、ポリエチレンテレフタレートに比べて耐熱性および耐薬品性に優れており、また溶融成形が可能であることから、近年では工業用繊維材料として高い注目を集めている。中でも抄紙ドライヤーカンバスなどの高温・高湿条件下にて使用される用途では、加水分解劣化するポリエチレンテレフタレートからなるモノフィラメントの代替として、PPSモノフィラメントが好適に使用されるようになってきている。
しかしながら、PPSモノフィラメントを例えば抄紙用織物に使用した場合においては、紙原料中の各種填料、スライム、木材ピッチおよび古紙原料に付着していたガムテープ汚れなどのガムピッチ汚れなどが、抄紙用織物類に付着することにより、濾水効率の低下、搾水効率の低下および乾燥効率の低下などの問題を生じるばかりか、これらのガムピッチ汚れが紙へ転写することによる製品紙の品位低下や紙破れによる生産性低下などが重大な問題となっていた。
このような欠点を解決するため従来から様々な提案が行われてきた。
例えば、PPSモノフィラメントに防汚性を付与する方法として、0.05〜3質量%のカルナバワックスを含有するPPS樹脂組成物からなる繊維(例えば、特許文献1参照)が知られているが、この技術で得られる繊維は、ガムピッチ汚れに対してある程度の防汚性は得られるものの、含有量が少ないため、モノフィラメント表面に析出するカルナバワックスの量が少ないばかりか、防汚性の持続性が不十分であり、実用的ではないという問題があった。
また、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂に防汚性を付与する方法についても提案がなされており、例えば、フッ素系のポリマーを添加したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献2参照)が知られている。
なお、本発明者らもポリエステルモノフィラメントに防汚性を付与する方法として、少なくとも表層部に、溶融混練されたポリシロキサンを含有するポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献3参照)および少なくとも表層部に、溶融混練されたフッ素系のポリマーとシリコーンオイルを含有するポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献4および5参照)などを提案しているが、これらの技術はポリエステル繊維に防汚性能を付与する技術としては相応の効果を発揮するものの、これをPPS樹脂に適用した場合には、ガムピッチ汚れに対する防汚性がいまだに不十分なものであった。
さらに、合成樹脂モノフィラメントからなる経糸及び緯糸により製織した各構成糸の表面に親水性ポリエステル樹脂を被覆してなる織物(例えば、特許文献6参照)および二液反応型エポキシ樹脂と、硬化剤としてのフェノールスルホン酸の初期重合物を配合してなる樹脂組成物を被覆してなる織物(例えば、特許文献7参照)が知られているが、これらの技術においても、ガムピッチ汚れに対する防汚性や防汚性の持続性がいまだに不十分なものであり、これらの方法では、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムピッチ汚れに対しては十分な防汚性効果が得られないことから、更なる改善が望まれていた。
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、工業用織物の製織工程において糸切れなどの不具合を生じることが少ない必要十分な引張強度を保持しつつ、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、且つ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を備えた、抄紙ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用原糸として極めて好適に利用し得るPPSモノフィラメントおよびこれを用いた各種工業用織物を提供することにある。
上記の目的を達成するため本発明によれば、シラノール基量が質量比率で2〜10%であるシリコーン系化合物を、ポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部含有せしめてなる樹脂組成物からなるモノフィラメントであって、ASTM D1238−86に記載の方法に準拠した前記ポリフェニレンサルファイド樹脂のメルトフローレイト(MFR)が110g/10分以下であること特徴とするポリフェニレンサルファイドモノフィラメントが提供される。
なお、本発明のPPSモノフィラメントにおいては、
前記シリコーン系化合物に含まれる有機基がフェニル基であり、且つこのフェニル基の含有量が、全有機基に対するモル比率で85%以上であること、および
前記シリコーン系化合物の重量平均分子量が500〜100000であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、この条件を満足することによってさらに優れた効果を得ることができる。
前記シリコーン系化合物に含まれる有機基がフェニル基であり、且つこのフェニル基の含有量が、全有機基に対するモル比率で85%以上であること、および
前記シリコーン系化合物の重量平均分子量が500〜100000であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、この条件を満足することによってさらに優れた効果を得ることができる。
また、本発明の工業用織物は、前記PPSモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用したことを特徴とし、とりわけ抄紙ドライヤーカンバスを代表とする抄紙用織物に好適に使用できる。
本発明によれば、以下に説明する通り、工業用織物の製織工程において糸切れなどの不具合を生じることが少ない必要十分な引張強度を保持しつつ、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、且つ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を備えた、工業用織物の構成素材として好適なPPSモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を得ることができる。
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のPPSモノフィラメントに使用されるPPS樹脂とは、ポリマーの繰り返し単位がp−フェニレンサルファイド単位やm−フェニレンサルファイド単位からなるフェニレンサルファイド単位を含有するポリマーを意味する。これらのポリマー中でも、繰り返し単位の90%以上がp−フェニレンサルファイド単位からなるポリマーが好ましく用いられる。
本発明において特に好ましく用いることのできるPPS樹脂は、p−ジクロルベンゼンに硫化ナトリウムを重縮合反応させることにより製造できるが、p−ジクロルベンゼンに10モル%未満のトリクロルベンゼンを分岐成分として共重縮合させることによって製造したものであっても良い。
また、本発明で用いるPPS樹脂は、モノフィラメントの引張強度を向上させるためにASTM D1238−86によって測定されたMFRが110g/10分以下であることが必須である。PPS樹脂のMFRが110g/10分を越える場合は、得られるモノフィラメントの引張強度が低下し、製織時に糸切れして工程通過性に悪影響をきたすことすことがある。
ここで、市販品として使用できるPPS樹脂としては、例えば東レ(株)製であるE1880、E2080、E2280、E2481、M2488およびM2588などを挙げることができる。
PPS樹脂は、通常粉末で得られるものであるが、溶融紡糸に供する前にエクストルダーなどで粉末PPS樹脂を融点以上の温度に加熱し、溶融・混練した後、必要に応じフィルター類で異物を濾過除去し、ガット状に押出して冷却し、その後カッティングするなどの方法によりペレット状に加工して用いることができる。そして、PPS樹脂粉体あるいはPPS樹脂ペレットは、概ね100〜180℃で5〜24時間程度、減圧真空下で乾燥してから紡糸に供することが好ましい。
さらに、使用するPPS樹脂は、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジリコニウム酸など各種無機粒子や架橋高分子粒子のほか、従来公知の酸化防止剤、各種着色剤、各種界面活性剤、各種強化繊維類などが添加されたものであってもよい。
次に、本発明のPPSモノフィラメントは、シリコーン系化合物を含有すること特徴とする。シリコーン系化合物の含有量はPPS樹脂100質量部に対して質量比率で0.5〜10質量部であることが必須であり、含有量が0.5質量部未満では防汚性が不足し、10質量部を上回ると得られるモノフィラメントの引張強度が著しく低下し、製織時に糸切れしてしまうなど工程通過性に影響をきたしてしまう。
ここでシリコーン系化合物は、RSiO1.5(T単位)単独で構成されていても良く、T単位を少なくとも含有していれば、さらにR3SiO0.5(M単位)、R2SiO1.0(D単位)、SiO2.0(Q単位)などの複数の構造単位からなっていても良いが、耐熱性の観点からT単位をシリコーン系化合物に対してモル比率で90%以上含有することが好ましく、更には95%以上含有することがより好ましい。
なお、本発明におけるシリコーン系化合物は、シラノール基量を質量比率で2〜10%含有していることを必須とする。ここでシラノール基とはSiOH基のことであり、このシラノール基を含有することで、PPSモノフィラメント表面にシラノール基が存在し、表面活性が大きく、また会合し網目構造を形成することによって見掛けの分子量が大きくなり、表面活性が大きいことと見掛けのファンデルワールス力が大きくなることが相乗するため、PPSモノフィラメント表面に対する定着性が大きくなり、PPSモノフィラメント表面には超親水性、つまり防汚性が維持されることになる。
このシラノール基量の測定には29Si−NMRにおいてシラノール基を含有しない構造由来のSiO2.0、RSiO1.5、R2SiO1.0、R3SiO0.5のピークの面積(積分値)とシラノール基を含有する構造由来のSi(OH)4、SiO0.5(OH)3、SiO1.0(OH)2、SiO1.5(OH)、RSi(OH)3、RSiO0.5(OH)2、RSiO1.0(OH)、R2Si(OH)2、R2SiO0.5(OH)、R3Si(OH)のピークの面積(積分値)の比からシラノール基量を算出することが可能である。
例えば、RSiO1.5とRSiO1.0(OH)の積分値の比が1.5(RSiO1.5):1.0(RSiO1.0(OH))であれば下記式の通り求めることができる。
シラノール基量(%)={(17×RSiO1.0(OH)の積分値の比)/(RSiO1.0(OH)の分子量×RSiO1.0(OH)の積分値の比+RSiO1.5の分子量×RSiO1.5の積分値の比)}×100
=17×1.0/(138×1.0+129×1.5)×100
=5.13
なお、本発明におけるシリコーン系化合物は、汎用性や耐熱性の観点から有機基として水酸基、メチル基、フェニル基を含有することが好ましく、更に好ましくはフェニル基をシリコーン系化合物中に含まれる全有機基に対してモル比率で85%以上含有することが好ましい。
=17×1.0/(138×1.0+129×1.5)×100
=5.13
なお、本発明におけるシリコーン系化合物は、汎用性や耐熱性の観点から有機基として水酸基、メチル基、フェニル基を含有することが好ましく、更に好ましくはフェニル基をシリコーン系化合物中に含まれる全有機基に対してモル比率で85%以上含有することが好ましい。
また、本発明におけるシリコーン系化合物は、GPCで測定されポリスチレン換算で求められる重量平均分子量がPPS樹脂への分散性の観点から500〜100000の範囲が好ましく、更に好ましくは1000〜10000の範囲である。
次に、本発明のPPSモノフィラメントは、JIS L1013:2008に記載の方法に準拠した引張強度が2.0cN/dtex以上となり、工業用織物の製織工程において製織時に糸切れが少なくなるなど、生産安定性が向上するという利点を有する。引張強度が2.0cN/dtexを下回ると製織時に糸切れが頻発するなど、極めて好ましくない結果を招くこととなるばかりか、得られる工業用織物の実用強度までもが低くなるなどの悪影響を及ぼすこととなる。
また、本発明におけるPPSモノフィラメントは、ガムピッチ汚れが付着し難く、且つ付着したガムピッチ汚れを剥がれやすくするために、布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力測定試験方法において求めたガムピッチ防汚指数(PPS樹脂のみで組成されるPPSモノフィラメントを100とした時)が90以下であることが重要である。このガムピッチ防汚指数は小さいほどガムピッチ汚れに対して優れた防汚性を有していることを示し、ガムピッチ防汚性指数が90を越える値ではガムピッチ汚れに対する防汚性が不十分となってしまう。
次に、本発明のPPSモノフィラメントの好ましい製造例としては、1軸もしくは2軸エクストルダーのホッパーに、必要量の乾燥したPPSペレットを、またシリコーン系化合物については単独あるいは高濃度に含有したPPSマスターバッチペレットをそれぞれ計量供給し、PPS樹脂の融点以上の温度で溶融混練した後、エクストルダー先端に設けた計量ギアポンプを介して紡糸口金より押し出し、冷却・延伸・熱セットを行うなどの方法を挙げることができる。
ここでシリコーン系化合物の製造方法としては、一般的な重縮合によって製造することができる。例えばR3SiCl(トリオルガノクロロシラン)、R2SiCl2(ジオルガノジクロロシラン)、RSiCl3(モノオルガノトリクロロシラン)、SiCl4(テトラクロロシラン)をモノマーとして用い、目的とするM、D、T、Q単位のいずれかから構成されるシリコーン系化合物を、R3SiCl(M単位に相当)、R2SiCl2(D単位に相当)、RSiCl3(T単位に相当)、SiCl4(Q単位に相当)から所望のモル比で酸もしくはアルカリの触媒下で縮合せしめ、シリコーン系化合物を合成する方法で製造することができる。
また、シリコーン系化合物に含有される各有機基の含有量は前記したモノマーのRを所望の有機基で置換することで、所望の量の有機基を含有したシリコーン系化合物を製造することができる。
なお、シリコーン系化合物に含有されるシラノール基の含有量は反応時間によって制御可能であるが、シラノール基を制御するために封鎖剤としてR3SiClやR3SiOHをシラノール基と反応させることでシラノール基の含有量を制御することも可能である。
このようにして得られた本発明のPPSモノフィラメントの太さは、特に限定されるものではないが、工業用織物として使用する場合は0.05mm〜3mm、特に0.1mm〜2.5mmの範囲が好ましい。
また、本発明のPPSモノフィラメントの断面形状についても、特に限定されるものではなく、円形、楕円形、三角形、正方形、扁平形、菱形、半月形、五角形以上の多角形、多葉形、ドッグボーン形および繭型などが挙げられるが、特に工業用織物の構成素材として用いる場合は、円形、楕円または扁平形であることが好ましい。
かくしてなる本発明のPPSモノフィラメントは、工業用織物の製織工程において糸切れなどの不具合を生じることが少ない必要十分な引張強度を保持しつつ、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、且つ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を備えることから、抄紙ドライヤーカンバスを代表とする各種工業用織物の構成素材として有用なものである。
さらに、本発明における工業用織物とは、本発明のPPSモノフィラメントを織物の経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用した各種工業用途に使用される織物のことであり、例えば、抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機に装着される織物類のことである。抄紙ワイヤーは、平織、二重織および三重織など様々な織物として、紙の漉上げ工程で使用される織物のことで、長網あるいは丸網などとして用いられるものである。また、抄紙ドライヤーカンバスとは、平織り、二重織および三重織など様々な織物(相前後する緯糸と緯糸とがスパイラル状の経糸用モノフィラメントによって織継がれたスパイラル状織物を含む)として、抄紙機のドライヤー内で紙を乾燥させるために使用される織物のことであり、これら織物の中でも本発明のPPSモノフィラメントは、特にガムピッチ汚れが顕著である抄紙ドライヤーカンバスへの適用において、優れた防汚性を発揮する。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、各種特性の評価は、以下に説明する方法にしたがって行った。
1.PPS樹脂のMFR
ASTM D1238−86に準拠して、316℃、オリフィス径2.095mm、オリフィス長さ8.00mm、荷重5kgの条件で測定した値であり、10分あたりの流出ポリマー量(g)で表される。
ASTM D1238−86に準拠して、316℃、オリフィス径2.095mm、オリフィス長さ8.00mm、荷重5kgの条件で測定した値であり、10分あたりの流出ポリマー量(g)で表される。
2.モノフィラメントの引張強度
JIS L1013:2008に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求め、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を求めた。
JIS L1013:2008に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求め、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を求めた。
3.モノフィラメントの防汚性
(布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力測定試験方法(以下、布粘着ガムテープ剥離試験という))
(1)厚さ150〜250μm、横幅30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm幅の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ240mm、横幅30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横幅10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横幅方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断したPPSモノフィラメント試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記PPSモノフィラメントの余端を鋏で切除し、PPSモノフィラメント試料貼付フィルムを得る。
(4)平坦な硝子板(厚さ約8mm、縦約80mm、横約250mm)の上に前記PPSモノフィラメント試料貼付フィルムを乗せ、PPSモノフィラメントを貼付けた面を上向き、かつPPSモノフィラメントを貼付けた側のフィルムの左側になるようにしてから、横幅10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を、該布粘着テープの長手方向左端を前記PPSモノフィラメント試料貼付フィルムのPPSモノフィラメントを貼付けた側のフィルムの左端と合わせて、前記PPSモノフィラメント上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記PPSモノフィラメントを貼付けた側のフィルム右端を越えてPPSモノフィラメントを貼付けていない側のフィルム上に30mm残っている前記布粘着テープを、前記PPSモノフィラメントを貼付けていない側のフィルム面にしっかりと貼付する。
(5)前記PPSモノフィラメント貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(6)前記PPSモノフィラメント貼付フィルムのPPSモノフィラメントを貼付けた面を上向きにし、PPSモノフィラメントを貼付けた部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記PPSモノフィラメントの表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、質量1.43kg、幅50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、前記布粘着テープを前記PPSモノフィラメント試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(7)前記剥離応力測定用試料の2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープを貼付けた面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部からPPSモノフィラメント上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出したPPSモノフィラメント貼付フィルム端部を、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方のPPSモノフィラメントの貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(8)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定をn10で行い、その平均値を布粘着ガムテープ剥離応力とする。
(布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力測定試験方法(以下、布粘着ガムテープ剥離試験という))
(1)厚さ150〜250μm、横幅30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm幅の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ240mm、横幅30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横幅10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横幅方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断したPPSモノフィラメント試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記PPSモノフィラメントの余端を鋏で切除し、PPSモノフィラメント試料貼付フィルムを得る。
(4)平坦な硝子板(厚さ約8mm、縦約80mm、横約250mm)の上に前記PPSモノフィラメント試料貼付フィルムを乗せ、PPSモノフィラメントを貼付けた面を上向き、かつPPSモノフィラメントを貼付けた側のフィルムの左側になるようにしてから、横幅10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を、該布粘着テープの長手方向左端を前記PPSモノフィラメント試料貼付フィルムのPPSモノフィラメントを貼付けた側のフィルムの左端と合わせて、前記PPSモノフィラメント上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記PPSモノフィラメントを貼付けた側のフィルム右端を越えてPPSモノフィラメントを貼付けていない側のフィルム上に30mm残っている前記布粘着テープを、前記PPSモノフィラメントを貼付けていない側のフィルム面にしっかりと貼付する。
(5)前記PPSモノフィラメント貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(6)前記PPSモノフィラメント貼付フィルムのPPSモノフィラメントを貼付けた面を上向きにし、PPSモノフィラメントを貼付けた部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記PPSモノフィラメントの表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、質量1.43kg、幅50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、前記布粘着テープを前記PPSモノフィラメント試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(7)前記剥離応力測定用試料の2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープを貼付けた面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部からPPSモノフィラメント上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出したPPSモノフィラメント貼付フィルム端部を、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方のPPSモノフィラメントの貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(8)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定をn10で行い、その平均値を布粘着ガムテープ剥離応力とする。
なお、上記した布粘着ガムテープ剥離試験を採用することによって、製織することなく本発明のPPSモノフィラメントを構成素材とする織物の防汚性を定量的に相対評価することが可能であり、布粘着ガムテープ剥離応力が低いほどガムピッチ汚れに対する防汚性が優れることを表す。また、通常の比較サンプル(比較例1とする)となる布粘着ガムテープ剥離応力をガムピッチ防汚指数100とし、ガムピッチ防汚指数が90を越える場合は効果が得られないものとして、90以下を目標とした。なお、下記式によりガムピッチ防汚指数を求めた。
ガムピッチ防汚指数=試験剥離応力値/比較サンプル剥離応力値×100。
4.製織時の工程通過性
PPSモノフィラメントを経糸に使用し、2重織の抄紙用ドライヤーカンバスを作製した。このドライヤーカンバスを長さ方向に5m製織するに際し、緯糸打ち込み時の糸切れ状況を確認し、以下の基準で判断した。
PPSモノフィラメントを経糸に使用し、2重織の抄紙用ドライヤーカンバスを作製した。このドライヤーカンバスを長さ方向に5m製織するに際し、緯糸打ち込み時の糸切れ状況を確認し、以下の基準で判断した。
○…緯糸打ち込み時の糸切れが1回以下であった。
×…緯糸打ち込み時の糸切れが2回以上発生した。
[実施例1]
乾燥したPPS樹脂(東レ(株)製PPSペレットE2080 MFR=91g/10分)を用い、シラノール基量の質量比率が3%であるシリコーン系化合物をPPS樹脂:シリコーン系化合物=60質量%:40質量%の配合比で、混練温度320℃、スクリューL/D=30、スクリュー回転数300rpmの条件で2軸押し出し機を用いて混練を行い、PPS中にシリコーン系化合物を混合した樹脂組成物を得た。
乾燥したPPS樹脂(東レ(株)製PPSペレットE2080 MFR=91g/10分)を用い、シラノール基量の質量比率が3%であるシリコーン系化合物をPPS樹脂:シリコーン系化合物=60質量%:40質量%の配合比で、混練温度320℃、スクリューL/D=30、スクリュー回転数300rpmの条件で2軸押し出し機を用いて混練を行い、PPS中にシリコーン系化合物を混合した樹脂組成物を得た。
乾燥したPPS樹脂および上記樹脂組成物を、組成比が、PPS樹脂100質量部に対してシリコーン系化合物3質量部となるように50mmの1軸エクストルダー型溶融紡糸機に供給し、320℃の温度で溶融混練した後、紡糸口金から紡出した。次いで、溶融状態の紡出糸を温水中に導いて冷却固化せしめた後、トータル延伸倍率が4.3倍、160℃の熱風によるヒートセットゾーンにて1.00倍で熱セットし、公知の油剤を付与しボビンに巻き取ることによって、直径0.40mmのPPSモノフィラメントを得た。得られたPPSモノフィラメントの引張強度、ガムピッチ防汚指数および製織時の工程通過性を表1に示す。
[実施例2〜3]
シリコーン系化合物の含有量およびシラノール基量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で直径0.40mmの断面形状が円形のPPSモノフィラメントを得た。
シリコーン系化合物の含有量およびシラノール基量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で直径0.40mmの断面形状が円形のPPSモノフィラメントを得た。
[比較例1〜6]
シリコーン系化合物の含有量およびシラノール基量、PPS樹脂のMFRを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で直径0.40mmの断面形状が円形のPPSモノフィラメントを得た。
シリコーン系化合物の含有量およびシラノール基量、PPS樹脂のMFRを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で直径0.40mmの断面形状が円形のPPSモノフィラメントを得た。
表1の結果から明らかなように、本発明のPPSモノフィラメント(実施例1〜3)は、必要十分な引張強度を保持しつつ、ガムピッチ汚れに対して優れた防汚性を備えており、且つ製織工程において糸切れなどの不具合が生じる事が少なく、抄紙ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用途へ用いるPPSモノフィラメントとして、極めて好適に利用できるものであることがわかる。
これに対して、本発明の規定を満たさないPPSモノフィラメント、つまりシリコーン系化合物の含有量が規定から外れたPPSモノフィラメントなど(比較例1〜6)は、引張強度または防汚性に欠け、また製織工程において糸切れなどの不具合が生じるなど、抄紙用ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用原糸としての要求特性を満足していないことがわかる。
本発明のPPSモノフィラメントは、従来の技術では実現することのできなかった、工業用織物の製織工程において糸切れなどの不具合を生じることが少ない必要十分な引張強度を保持しつつ、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、且つ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を備えることから、抄紙ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用原糸として極めて好適に利用し得るものであり、産業上の利用価値が極めて高いものである。
Claims (7)
- シラノール基量が質量比率で2〜10%であるシリコーン系化合物を、ポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部含有せしめてなる樹脂組成物からなるモノフィラメントであって、ASTM D1238−86に記載の方法に準拠した前記ポリフェニレンサルファイド樹脂のメルトフローレイト(MFR)が110g/10分以下であること特徴とするポリフェニレンサルファイドモノフィラメント。
- 前記シリコーン系化合物に含まれる有機基がフェニル基であり、且つこのフェニル基の含有量が、全有機基に対するモル比率で85%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンサルファイドモノフィラメント。
- 前記シリコーン系化合物の重量平均分子量が500〜100000であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンサルファイドモノフィラメント。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイドモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用したことを特徴とする織物。
- 工業用織物であることを特徴とする請求項4に記載の織物。
- 抄紙用織物であることを特徴とする請求項5に記載の織物。
- 抄紙ドライヤーカンバス用織物であることを特徴とする請求項6に記載の織物。
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