JP2014091751A - 異形押出成形体用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを用いた成形体 - Google Patents

異形押出成形体用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを用いた成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】肉厚が均一で、外観が美麗なポリプロピレン系異形押出成形品を製造できるポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特定のMFR、40℃以下可溶成分量、mm、分子量分布、分岐指数および溶融張力を有する、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)1〜30重量%と、チーグラー・ナッタ触媒によって重合されたMFRが0.3〜20g/10分のポリプロピレン重合体(Y)99〜70重量%からなり、溶融張力が0.9g以上で、剪断速度とスウェル比が特定の関係を満たすことを特徴とする異形押出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系異形押出成形体用樹脂組成物およびそれを用いた成形体に関し、さらに詳しくは、特に肉厚の均一性に優れたポリプロピレン系異形押出成形体およびその成形体に関する
ポリプロピレン系樹脂は、安価で物理的、化学的性質が優れているために、射出成形によるバンパー、インスツルメントパネル等の自動車用部品、フィルム成形による軟包装材、熱成形による容器に多く用いられている。一方、異形押出成形による成形品には、ドローダウン性や肉厚の不均一性から一部の分野に用いられているのみである。
一般的なポリプロピレン樹脂は、その分子構造が線状であり、分子量もそれほど大きくないために、異形押出に重要な指標である溶融張力が低い樹脂であって、異形押出には不向きである。その欠点を補うために、過去に様々な技術開発がなされてきた。
たとえば、特許文献1には、高エネルギーイオン化放射線により、ポリプロピレンに長鎖分岐を導入することで、溶融張力の向上を図る技術が開示されている。また、同様に、有機過酸化物を利用してポリプロピレン樹脂に長鎖分岐を導入する方法として、特許文献2、特許文献3、特許文献4など、多くの技術が開示されている。しかしながら、高エネルギーイオン化放射線照射や有機過酸化物の使用によりポリプロピレンに長鎖分岐を導入する技術は、前者では製造時の高コスト化、黄変の問題、経時による物性変化、後者においては、有機過酸化物の分解物による汚染、臭気、黄変、製造時の安全性等の問題が有り、これらとは異なる方法での高溶融張力ポリプロピレンの製造技術が望まれていた。
近年、メタロセン触媒を利用したマクロマー共重合法が提案されている。例えば、重合第一段階(マクロマー合成工程)で特定の錯体と特定の重合条件により、末端にビニル構造をもつプロピレンマクロマーを製造し、その後、重合第二段階(マクロマー共重合工程)で特定の触媒と特定の重合条件によりプロピレンと共重合を行うことにより、高次の架橋がなく、ポリプロピレンとしての本来の化学的安定性が損なわれることなく、リサイクル性にも優れ、溶融張力改良に対してゲルの発生の懸念がない方法(マクロマー共重合法)が考案されている(例えば、特許文献5、特許文献6参照)。しかしながら、この方法では、前段でマクロマーとして必要な末端ビニル構造を効率的に得るために、特定の錯体で比較的高温かつ低圧で重合する必要がある。その為生成するマクロマーは、分子量及び立体規則性が低いマクロマーとなってしまう。
また、前述した多段階重合法に対して、特定の錯体でマクロマー合成工程とマクロマー共重合工程を同時に行う単段重合法(in situ マクロマー生成共重合法)が考案されている(例えば、特許文献7参照)。しかしながら、この方法では、マクロマーの生成量とマクロマー共重合量が必ずしも充分ではなく、溶融物性改善の効果は不十分なレベルである。
さらに、特許文献8および特許文献9において開示された技術によれば、マクロマー共重合法における先行技術の種々の問題が解決され、極めて高い溶融張力を良好な伸張粘度特性を有する長鎖分岐含有ポリプロピレン樹脂を得ることが出来る。
しかしながら、高溶融張力を有する樹脂そのものを異形押出する場合、押出機内での流動性の悪さから負荷が上がり易く押出レートを上げ難しかったり、異形押出成形する場合に肉厚の均一性が悪化するなどの問題を生じる恐れがあった。
その他の溶融張力を改良する従来の手法として、ポリプロピレンを架橋する方法、ポリプロピレン樹脂にポリテトラフルオロエチレンを含有させる方法等が挙げられる(例えば、特許文献10参照)。しかし、これらいずれの方法でも溶融張力の上昇に伴い溶融弾性も上昇してしまうという相関性があり、異形押出成形の場合問題となる。
従って、従来の溶融張力と溶融弾性のバランスを崩す材料は未だ得られていない。更に、これら従来の方法では剪断速度の上昇に伴い溶融弾性が大きくなる問題が未解決である。
特開昭62−121704号公報 特開平6−157666号公報 WO99/27007号公報 特開2004−339365号公報 特表2001−525460号公報 特開平10−338717号公報 特表2002−523575号公報 特開2009−57542号公報 特開2009−275207号公報 特開平5−214184号公報
本発明の目的は、上記従来技術の現状に鑑み、異形押出成形の分野において、より均一な肉厚の異形押出成形品が可能なポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の物性を有する、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とチーグラー・ナッタ触媒によって重合されたポリプロピレン樹脂成分(Y)との特定割合での配合の樹脂組成物が、異形押出成形において、成形が容易で、均一な肉厚を有し、外観が美麗なポリプロピレン系異形押出成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、以下の(i)〜(vi)の特性を有する、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)1〜30重量%とチーグラー・ナッタ触媒によって重合されたMFRが0.3〜20g/10分のポリプロピレン樹脂成分(Y)70〜99重量%からなり、230℃に於ける溶融物性が以下の(vii)〜(viii)の特性を有することを特徴とする異形押出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
(i)MFRが0.1〜30g/10分
(ii)温度上昇溶解度分別(TREF)による40℃以下可溶成分量がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して3.0重量%以下
(iii)13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が、95%以上
(iv)GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0以上10.0以下、且つMz/Mwが2.5以上10.0以下
(v)絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’が0.30以上1.00未満
(vi)溶融張力(MT)(単位:g)が、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 またはMT≧15 のいずれかを満たす。
(vii)溶融張力(MT)が0.9g以上
(viii)剪断速度24〜243sec−1の範囲で剪断速度とスウェル比との関係が以下の関係式を満たす。
(SRγa−SRγb)/(logγa−logγb)≦0.08
(ここで、γa、γbは24〜243sec−1の範囲での任意の剪断速度(但し、γa>γb)であり、SRγa、SRγbは剪断速度γa、γbでのスウェル比である。)
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明の異形押出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて押出成形した異形押出成形品が提供される。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、肉厚が均一で、外観が美麗なポリプロピレン系異形押出成形品が得られる優れた材料を提供することができる。
そして、得られるポリプロピレン系異形押出成形品は、外観、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性等に優れていることより、自動車部品、文具、建材、土木製品などに、特に好適に利用することが出来る。
実施例で製造したF形の異形押出品を示す平面図である。
本発明の異形押出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、分岐構造を有する特定のポリプロピレン樹脂成分(X)1〜30重量%とチーグラー・ナッタ触媒によって重合されたMFRが1〜20g/10分のポリプロピレン樹脂成分(Y)70〜99重量%からなることを特徴とする。
<分岐構造を有するポリプロピレン樹脂成分(X)>
本発明においては、まず、以下の(i)〜(vi)の特性を有する分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を使用することを特徴とする。
(i)MFRが0.1〜30g/10分
(ii)温度上昇溶解度分別(TREF)による40℃以下可溶成分量がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して3.0重量%以下
(iii)13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が、95%以上
(iv)GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0以上10.0以下、且つMz/Mwが2.5以上10.0以下
(v)絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’が0.30以上1.00未満
(vi)溶融張力(MT)(単位:g)が、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 またはMT≧15 のいずれかを満たす。
以下、本発明で規定する上記各要件について、具体的に述べる。
(i)MFR
本発明における分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30g/10分の範囲であることが必要であり、好ましくは0.3〜20、更に好ましくは0.5〜10g/10分である。この範囲を外れるものは、流動性不足或いは張力不足により、シート成形に向かないものである。
なお、MFRはJIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したもので、単位はg/10分である。
(ii)温度上昇溶解度分別(TREF)による40℃以下可溶成分量
本発明の分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、立体規則性が高く、製品となったときにベタツキやブリードアウトの原因となる低結晶性成分が少ないことが特徴であり、低結晶性成分に関しては、温度上昇溶解度分別法(TREF)の40℃可溶分によって評価され、それが成分(X)全量に対して3.0重量%以下であることが必要であり、好ましくは2.0重量%以下であり、更に好ましくは1.0重量%以下あり、特に好ましくは0.5重量%以下である。
昇温溶出分別(TREF)による溶出成分の測定法の詳細は、以下の通りである。
試料を140℃でオルトジクロロベンゼンに溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼンを1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
なお、TREF装置の細部は以下の通りである。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:オルトジクロロベンゼン
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
検出器:波長固定型赤外検出器、FOXBORO社製、MIRAN、1A
測定波長:3.42μm
(iii)13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率
本発明の分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は立体規則性が高いことを特徴とする。立体規則性の高さは13C−NMRによって評価でき、13C−NMRによって得られるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上の立体規則性を有するものである。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど、高度に制御されていることを意味する。mm分率がこの値より小さいと、製品の弾性率が低下するなど機械的物性が低下してしまう。従って、mm分率は、好ましくは96%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。
なお、13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率の測定法の詳細は、以下の通りである。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定した。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定した。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
フリップ角:90度
パルス間隔:10秒
共鳴周波数:100MHz以上
積算回数:10,000回以上
観測域:−20ppmから179ppm
データポイント数:32768
mm分率の測定は、前記の条件により測定された13C−NMRスペクトルを用いて行う。
スペクトルの帰属は、Macromolecules,(1975年)8卷,687頁やPolymer, 30巻 1350頁(1989年)を参考に行う。
なお、mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に詳細に記載されており、本発明においてもこの方法に従って行うものとする。
(iv)GPCによる分子量分布
また、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、分子量分布が比較的広いことが必要であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる分子量分布Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が3.0以上10以下であることが必要である。その好ましい範囲としては3.2〜8.0、更に好ましくは3.5〜6.0の範囲である。
さらに、分子量分布の広さをより顕著に表すパラメータとして、Mz/Mw(ここで、MzはZ平均分子量である)が2.5以上10.0以下であることが必要である。Mz/Mwの好ましい範囲は2.8〜8.0、更に好ましくは3.0〜6.0の範囲である。
分子量分布の広いものほど成形加工性が向上するが、Mw/MnおよびMz/Mwがこの範囲にあるものは、成形加工性に特に優れるものである。
なお、Mn、Mw、Mzの定義は「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算可能である。
GPCの具体的な測定手法は以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/min
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4、α=0.7
PP : K=1.03×10−4、α=0.78
(v)分岐指数g’
分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が分岐を有することの直接的な指標として、g’をあげることが出来る。g’は分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわちに[η]br/[η]linよって与えられ、分岐が存在すると、1よりも小さな値をとる。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers,1983)記載されており、当業者にとって公知の指標である。g’は例えば下記に記すような光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。
本発明で使用する分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが100万の時に、g’が0.30以上1.00未満であることを特徴とし、好ましくは0.55以上0.98以下、更に好ましくは0.75以上0.96以下、最も好ましくは、0.78以上0.95以下である。
なお、g’の下限値を規定したのは以下の理由による。
「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering vol.2」 (John Wiley & Sons 1985 p.485)によると、櫛型ポリマーのg’値は以下の式で表されている。
Figure 2014091751
ここで、gはポリマーの回転半径比で定義される分岐指数であり、εは分岐鎖の形状と溶媒によって決まる定数で、同文献のp.487のTable3によれば、良溶媒中の櫛型鎖ではおおよそ0.7〜1.0程度の値が報告されている。λは櫛型鎖における主鎖の割合、pは平均の分岐数である。この式によると、櫛型鎖であれば、分岐数が極めて大きくなる。すなわちpが無限大の極限で、g’=gε=λεとなり、λεの値以下にはならないことになり、一般に下限値が存在することになる。
一方で、電子線照射や過酸化物変成の場合において生じると考えられる、従来公知のランダム分岐鎖の式は同文献中の485ページ式(19)で与えられており、これによると、ランダム分岐鎖では分岐点が多くなるにつれ、g’およびg値は、特に下限値が存在することなく単調に減少する。つまり、本発明においてg’値に下限値があるということは、本発明の分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が、櫛型鎖に近い構造を有しているということを意味しており、これにより、電子線照射や過酸化物変成によって生成されるランダム分岐鎖との区別が可能である。
具体的なg’の算出方法は以下の通りである。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(酸化防止剤「Irganox1076」を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の参考文献を参考にして計算を行った。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V.Dawkins ed. Applied Science Publishers,1983.Chapter1.)
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
分岐指数(g’)の算出
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度([η]lin)に対する分岐ポリマーの極限粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=[η]br/[η]lin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味する。ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては市販のホモポリプロピレン(グレード名:FY6(日本ポリプロ社製))を用いた。
(vi)溶融張力(MT)
さらに、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、以下の条件(1)を満たす必要がある。
・条件(1)
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15 のいずれかを満たす。
ここで溶融張力MTは、東洋精機社製メルトテンションテスターあるいはキャピログラフを用いて、キャピラリー:直径2.1mm、長さ40mm、シリンダー径:9.6mm、シリンダー押出速度:10mm/分、引き取り速度:4.0m/分、温度:230℃の条件で測定したときの溶融張力を表し、単位はグラムである。ただし、成分(X)のMTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。MFRの測定条件、単位は前述の通りである。
この規定は、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が異形押出成形のために充分な溶融張力を有するための指標であり、一般に、MTはMFRと相関を有していることから、MFRとの関係式によって記述している。
このように、MTをMFRとの関係式で規定する手法は、当業者にとって通常の手法であって、例えば、特開2003−25425号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
log(MS)>−0.61×log(MFR)+0.82 (230℃)
(ここでMSはMTと同義)
また、特開2003−64193号公報には高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、 11.32×MFR−0.7854≦MT (230℃)の関係式が提案されている。さらに、特開2003−94504号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、 MT≧7.52×MFR−0.576 (MTは190℃、MFRは230℃で測定した値)の関係式が提案されている。
分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が、上記条件(1)を満たせば、充分に溶融張力の高い樹脂といえ、発泡成形に有用である。また、以下の条件(1)’を満たすことがより好ましく、条件(1)”を満たすことが更に好ましい。
・・条件(1)’
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.9 または MT≧15のいずれかを満たす。
・・条件(1)”
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+1.1 または MT≧15のいずれかを満たす。
分岐構造を有するこのようなポリプロピレン樹脂(X)は、上記した(i)〜(vi)の物性を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、高い立体規則性、低い低結晶性成分量、比較的広い分子量分布、分岐指数g’の範囲、高い溶融張力等の全ての条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば特開2009−57542号公報に開示される方法が挙げられる。
この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の成分と、高分子量でマクロマー共重合能力を有する特定の構造の成分を、組み合わせた触媒を用いて分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法であり、これによれば、バルク重合や気相重合といった工業的に有効な方法で、特に実用的な圧力温度条件下の単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の製造が可能である。
また、従来は、立体規則性の低い成分を使用して結晶性を落とすことによって、分岐生成効率を高めなければならなかったが、上記の方法では、充分に立体規則性の高い成分を、側鎖に簡便な方法で導入することが可能であり、本発明のポリプロピレン樹脂(X)が必要とする高立体規則性と低い低結晶性成分量の規定を満足するのに好適である。
また、上記手法を用いれば、重合特性の大きく異なる二種の触媒を使用することで分子量分布を広くでき、本発明の分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)に必要な特性を同時に満たすことが可能であり、好ましい。
そこで、以下に、本発明に使用される分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の好ましい製造法について詳細に記載する。
分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を製造する好ましい方法として、プロピレン重合触媒として、下記の触媒成分(A)、(B)及び(C)を用いるプロピレン系重合体の製造方法が挙げられる。
(A):下記一般式(a1)で表される化合物である成分[A−1]から少なくとも1種類、および下記一般式(a2)で表される化合物である成分[A−2]から少なくとも1種類を選んだ2種以上の周期律表4族の遷移金属化合物。
成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
成分[A−2]:一般式(a2)で表される化合物
(B):イオン交換性層状珪酸塩
(C):有機アルミニウム化合物
以下、触媒成分(A)、(B)及び(C)について、詳細に説明する。
(1)触媒成分(A)
(i)成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
Figure 2014091751
(一般式(a1)中、各々R11およびR12は、独立して、炭素数4〜16の窒素または酸素、硫黄を含有する複素環基を示す。また、各々R13およびR14は、独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16の窒素または酸素、硫黄を含有する複素環基を表す。さらに、X11及びY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表す。)
上記R11およびR12の炭素数4〜16の窒素または酸素、硫黄を含有する複素環基としては、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基であり、さらに好ましくは、置換された2−フリル基である。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14の炭素数6〜16の、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有していてもよい。
13およびR14としては、好ましくは少なくとも1つが、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−iプロピルフェニル基、4−tブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、3,5−ジtブチルフェニル基、4−フェニル−フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、又はフェナンスリル基であり、更に好ましくはフェニル基、4−iプロピルフェニル基、4−tブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基である。また、R13およびR14が互いに同一である場合が好ましい。
一般式(a1)中、X11およびY11は、補助配位子であり、成分(B)の助触媒と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X11とY11は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を示す。
一般式(a1)中、Q11は、二つの五員環を結合する、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることが出来る。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
上記一般式(a1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウムジクロライド、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−iプロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、更に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−iプロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
また、特に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−iプロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
(ii)成分[A−2]:一般式(a2)で表される化合物
Figure 2014091751
(一般式(a2)中、各々R21およびR22は、独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、R23およびR24は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基である。X21及びY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表す。M21は、ジルコニウムまたはハフニウムである。)
上記R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
また、上記R23およびR24は、それぞれ独立して、炭素数6〜16の、好ましくは炭素数6〜12の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。好ましい例としてはフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
また、上記X21及びY21は、補助配位子であり、成分(B)の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX21及びY21は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を示す。
また、上記Q21は、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基であり、好ましくは置換シリレン基あるいは置換ゲルミレン基である。
ケイ素、ゲルマニウムに結合する置換基は、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、二つの置換基が連結していてもよい。具体的な例としては、メチレン、ジメチルメチレン、エチレン−1,2−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレン、メチルフェニルゲルミレン等が挙げられる。
さらに、上記M21は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
上記一般式(a2)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
ただし、以下は、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載しており、本発明はこれら化合物に限定して解釈されるものではなく、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。また中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、ジルコニウムに代替した化合物も本願明細書に開示されたものとして取り扱われる。
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
また、特に好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
(2)触媒成分(B)
ポリプロピレン樹脂(X)を製造するのに好ましく使用される触媒成分(B)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の種類
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある。)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、成分(B)に含まれる。
本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよく、また、それらを含んでもよい。
珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
すなわち、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等である。
珪酸塩は、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。層間カチオンの種類は、特に限定されないが、工業原料として比較的容易に且つ安価に入手し得る観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を層間カチオンの主成分とする珪酸塩が好ましい。
(ii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
本発明に係る触媒成分(B)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここでイオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができ、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
<酸処理>:
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
処理に用いる塩類(次項で説明する)および酸は、2種以上であってもよい。塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は、室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
なお、以下の酸類、塩類を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。また、これら酸類、塩類の組み合わせであってもよい。
<塩類処理>:
塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な1族金属の陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸および有機酸から成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物であり、更に好ましくは、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンとCl、Br、I、F、PO、SO、NO、CO、C、ClO、OOCCH、CHCOCHCOCH、OCl、O(NO、O(ClO、O(SO)、OH、OCl、OCl、OOCH、OOCCHCH、CおよびCから成る群から選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物である。
このような塩類の具体例としては、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、Li(CHCOO)、LiCO、Li(C)、LiCHO、LiC、LiClO、LiPO、CaCl、CaSO、CaC、Ca(NO、Ca(C、MgCl、MgBr、MgSO、Mg(PO、Mg(ClO、MgC、Mg(NO、Mg(OOCCH、MgC等が挙げられる。
また、Ti(OOCCH、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、Zr(OOCCH、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、ZrOCl、ZrO(NO、ZrO(ClO、ZrO(SO)、HF(OOCCH、HF(CO、HF(NO、HF(SO、HFOCl、HFF、HFCl、V(CHCOCHCOCH、VOSO、VOCl、VCl、VCl、VBr等が挙げられる。
また、Cr(CHCOCHCOCH、Cr(OOCCHOH、Cr(NO、Cr(ClO、CrPO、Cr(SO、CrOCl、CrF、CrCl、CrBr、CrI、Mn(OOCCH、Mn(CHCOCHCOCH、MnCO、Mn(NO、MnO、Mn(ClO、MnF、MnCl、Fe(OOCCH、Fe(CHCOCHCOCH、FeCO、Fe(NO、Fe(ClO、FePO、FeSO、Fe(SO、FeF3、FeCl、FeC等が挙げられる。
また、Co(OOCCH、Co(CHCOCHCOCH、CoCO、Co(NO、CoC、Co(ClO、Co(PO、CoSO、CoF、CoCl、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等が挙げられる。
さらに、Zn(OOCCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、GeBr、GeI等が挙げられる。
<アルカリ処理>:
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される。
<有機物処理>:
また、有機物処理に用いられる有機処理剤の例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
また、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの処理剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について、組み合わせて用いてもよい。また化学処理は、同一または異なる処理剤を用いて複数回行うことも可能である。
これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれる。本発明においては、これらの吸着水および層間水を除去して成分(B)として使用するのが好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は、特に制限されないが、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の成分(B)の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、であることが好ましい。
以上のように、本発明において、成分(B)として、特に好ましいものは、塩類処理および/または酸処理を行って得られた、水分含有率が3重量%以下の、イオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩は、触媒形成または触媒として使用する前に、後述する有機アルミニウム化合物成分(C)で処理を行うことが可能で、好ましい。イオン交換性層状珪酸塩1gに対する成分(C)の使用量に制限は無いが、通常20mmol以下、好ましくは0.5mmol以上、10mmol以下で行う。処理温度や時間の制限は無く、処理温度は、通常0℃以上、70℃以下、処理時間は10分以上、3時間以下で行う。処理後に洗浄することも可能で、好ましい。溶媒は後述する予備重合やスラリー重合で使用する溶媒と同様の炭化水素溶媒を使用する。
また、成分(B)は、平均粒径が5μm以上の球状粒子を用いるのが好ましい。粒子の形状が球状であれば、天然物あるいは市販品をそのまま使用してもよいし、造粒、分粒、分別等により粒子の形状および粒径を制御したものを用いてもよい。
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ−を用いてもよい。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
(3)触媒成分(C)
触媒成分(C)は、有機アルミニウム化合物である。成分(C)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR31 3−q で示される化合物が適当である。
本発明では、この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができることは言うまでもない。この式中、R31は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは1〜3の、pは1〜2の整数を各々表す。R31としては、アルキル基が好ましく、またZは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、p=1、q=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R31が炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
(4)触媒の形成・予備重合について
触媒は、上記の各触媒成分(A)〜(C)を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃から150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
成分(C)を使用する場合、成分(A)と成分(B)を接触させる前に、成分(A)と、あるいは成分(B)と、または成分(A)及び成分(B)の両方に成分(C)を接触させること、または、成分(A)と成分(B)を接触させるのと同時に成分(C)を接触させること、または、成分(A)と成分(B)を接触させた後に成分(C)を接触させることが可能であるが、好ましくは、成分(A)と成分(B)を接触させる前に、成分(C)といずれかに接触させる方法である。
また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
使用する触媒成分(A)、(B)および(C)の使用量は任意である。例えば、触媒成分(B)に対する触媒成分(A)の使用量は、触媒成分(B)1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。また触媒成分(A)に対する触媒成分(C)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×10、特に好ましくは0.1〜1×10の範囲内が好ましい。
本発明で使用する前記成分[A−1](一般式(a1)で表される化合物)と前記成分[A−2](一般式(a2)で表される化合物)の割合は、プロピレン系重合体の前記特性を満たす範囲において任意であるが、各成分[A−1]と[A−2]の合計量に対する[A−1]の遷移金属のモル比で、好ましくは0.30以上、0.99以下である。
この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能である。つまり、成分[A−1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分[A−2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。したがって、成分[A−1]の割合を変化させることで、生成する重合体の平均分子量、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
より高い歪硬化のプロピレン系重合体を製造するために、モル比は0.30以上が好ましく、より好ましくは0.40以上であり、更に好ましくは0.5以上である。また、上限に関しては好ましくは0.99以下であり、高い触媒活性で効率的に本発明の重合体を得るためには、より好ましくは0.95以下であり、更に好ましくは0.90以下の範囲である。
また、上記範囲で成分[A−1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
本発明に係る触媒は、これにオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付される。予備重合処理を行うことにより、本重合を行った際に、ゲルの生成を防止できる。その理由としては、本重合を行った際の重合体粒子間で長鎖分岐が均一に分布させることができるためと考えられ、また、そのことにより溶融物性を向上することができる。
予備重合時に使用するオレフィンは、特に限定はないが、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができる。オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。
予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(B)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。また、予備重合時に成分(C)を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
また、上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
(5)触媒の使用/プロピレン重合について
重合様式は、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
また、重合温度は、0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は80℃以下が好ましく、更に好ましくは75度以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。特に、バルク重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.7MPa以上である。また上限は2.5MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.3MPa以下である。
さらに、分子量調節剤として、また活性向上効果のために、補助的に水素をプロピレンに対してモル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、溶融張力を制御することができる。
そこで水素は、プロピレンに対するモル比で、1.0×10−6以上で用いるのがよく、好ましくは1.0×10−5以上であり、さらに好ましくは1.0×10−4以上用いるのがよい。また上限に関しては、1.0×10−2以下で用いるのがよく、好ましくは0.9×10−2以下であり、更に好ましくは0.8×10−2以下である。
また、プロピレンモノマー以外に、用途に応じて、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンコモノマー、例えば、エチレン及び/又は1−ブテンをコモノマーとして使用する共重合をおこなってもよい。
そこで触媒活性と溶融物性のバランスよい本発明のポリプロピレン樹脂(X)を得るためには、エチレン及び/又は1−ブテンを、プロピレンに対して15モル%以下で使用することが好ましく、より好ましくは10.0モル%以下であり、更に好ましくは7.0モル%以下である。
ここで例示した触媒、重合法を用いてプロピレンを重合すると、触媒成分[A−1]由来の活性種から、β−メチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応により、ポリマー片末端が主としてプロペニル構造を示し、所謂マクロマーが生成する。このマクロマーは、より高分子量を生成することができ、より共重合性がよい触媒成分[A−2]由来の活性種に取り込まれ、マクロマー共重合が進行すると考えられる。したがって、生成する分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の分岐構造としては、櫛型鎖が主であると考えられる。
本発明の分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の付加的な特徴として、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)が6.0以上であることが挙げられる。歪硬化度(λmax)は、溶融時強度を表す指標であり、この値が大きいと、溶融張力が向上する効果がある。その結果、異形押出成形を行ったときに、たれを防止することができる。この歪硬化度は、6.0以上であるとたれを防止するでき、好ましくは10.0以上である。
λmaxの算出方法の詳細を、以下に記す。
・λmax算出方法
歪み速度=0.1/secの場合の伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。具体的には、まず伸張粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては伸張粘度の測定データは離散的であることを考慮し、種々の平均法を利用する。たとえば隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法等が挙げられる。伸張粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸張粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは低歪み領域では時間と共に減少傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸張粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。そこで歪み量が1より小さい範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めてその点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmaxと定義する。
<ポリプロピレン樹脂成分(Y)>
上記した分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とともに配合されるポリプロピレン樹脂成分(Y)としては、チーグラー・ナッタ触媒によって重合されたMFRが1〜20g/10分のポリプロピレン重合体を用いる。
成分(Y)は、ポリプロピレンのホモポリマーであっても良いし、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体であっても良いし、またはそれらの複数の成分の混合物でも良い。中でも、剛性と衝撃強度のバランスに優れたプロピレン−エチレンブロック共重合体が好適に用いられる。
成分(Y)は従来から公知のチーグラー・ナッタ系触媒によって製造されるものであり、MFRが0.3〜20g/10分であることが必要であり、好ましくは0.5〜15g/10分、より好ましくは0.7〜10g/10分である。MFRが0.3〜20g/10分の範囲にあることで成分(X)との相溶性が良いものとなり、成形品の概観が優れたものとなる。
また、融点は、130〜170℃であることが好ましく、より好ましくは135〜168℃であり、また、分子量分布はMw/Mnで好ましくは3.0〜10.0、より好ましくは3.2〜8.0の範囲のものが好適に用いることができる。
なお、融点は示差操作熱量測定(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度とする。Mw/Mnは前述と同じ方法によって求める。
チーグラー・ナッタ触媒は、たとえば「ポリプロピレンハンドブック」エドワード・P・ムーアJr.編著、保田哲男・佐久間暢翻訳監修、工業調査会(1998)の2.3.1節(20〜57ページ)に概説されているような触媒系のことであり、例えば、三塩化チタンとハロゲン化有機アルミニウムからなる三塩化チタニウム系触媒や、塩化マグネシウム、ハロゲン化チタン、電子供与性化合物を必須として含有する固体触媒成分と有機アルミニウムと有機珪素化合物からなるマグネシウム担持系触媒や、固体触媒成分を有機アルミニウム及び有機珪素化合物を接触させて形成した有機珪素処理固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物成分を組み合わせた触媒のことを指す。
ポリプロピレン樹脂成分(Y)の製造方法について特に制限はなく、従来公知のスラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等のいずれでも製造可能であり、また、前述の物性の範囲内であれば、多段重合法を利用して製造することも可能である。
成分(Y)は、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)1〜30重量%に対して、70〜99重量%の範囲で配合する。このようにすることで、流動性や成形品の肉厚を改良することが出来、異形押出成形において好適に使用可能な樹脂組成物を得ることが出来る。
好ましい組成の範囲としては、成分(X)1〜20重量%、成分(Y)80〜99重量%、更に好ましい範囲は、成分(X)1〜10重量%、成分(Y)90〜99重量%の範囲である。従来公知のチーグラー・ナッタ系触媒によって得られる樹脂であることから、製造コストとしても安価な成分(Y)を多く配合すれば、最終製品のコストを抑えることが出来る利点もある。
<ポリプロピレン樹脂組成物>
本発明のポリプロピレン系異形押出成形体に用いられるポリプロピレン樹脂組成物において、上記プロピレン樹脂(X)とプロピレン樹脂(Y)の配合量割合は、プロピレン系重合体(X)が1〜30重量%で、プロピレン系重合体(Y)が70〜99重量%であり、好ましくはプロピレン系重合体(X)が1〜20重量%で、プロピレン系重合体(Y)が80〜99重量%である。プロピレン系重合体(X)の配合量が1重量%未満であると溶融張力が低下し成形不能になり、30重量%を超えるとコストアップとなる恐れがある。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、溶融張力が0.9g以上であることが重要である。溶融張力が0.9g未満では、押出された樹脂が垂れて成形できなくなる恐れがある。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、剪断速度24〜243sec−1の範囲で剪断速度とスウェル比との関係が以下の関係式を満たすことが重要である。
(SRγa−SRγb)/(logγa−logγb)≦0.08
ここで、γa、γbは24〜243sec−1の範囲での任意の剪断速度(但し、γa>γb)であり、SRγa、SRγbは剪断速度γa、γbでのスウェル比である。
(SRγa−SRγb)/(logγa−logγb)の値が0.08を超えると、成形品の肉厚が不均一となったり、サイザー金型の部分で樹脂がひっかかり成形できなくなる恐れがある。
<その他の配合剤>
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、前記成分(X)、成分(Y)および必要に応じて他の重合体、酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤などの各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
他の重合体としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、成分(X)及び(Y)以外のポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンコポリマー、ポリ−4−メチル−ペンテン−1等のα−ポリオレフィン、エチレン−プロピレンエラストマー等のオレフィン系エラストマー、またはこれらと共重合可能な他の単量体、例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体および混合物等を挙げることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤およびチオ系酸化防止剤などが例示でき、中和剤としては、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩類が例示でき、光安定剤および紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン類、ニッケル錯化合物、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類などが例示できる。
また、無機充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが例示でき、滑剤としては、ステアリン酸アマイドなどの高級脂肪酸アマイド類が例示できる。
更に、帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステルなどの脂肪酸部分エステル類が例示でき、金属不活性剤としては、トリアジン類、フォスフォン類、エポキシ類、トリアゾール類、ヒドラジド類、オキサミド類などが例示できる。
<ポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法>
本発明で使用されるポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法としては、パウダー状もしくはペレット状の前記成分(X)および成分(Y)および必要に応じて用いるその他の配合剤をドライブレンド、ヘンシェルミキサー等で混合する方法を挙げることができる。または、あらかじめ単軸、二軸混練機、ニーダ等によって溶融混練してもよい。
<ポリプロピレン系樹脂組成物の異形押出>
ポリプロピレン系異形押出成形体を得る方法としては、ポリプロピレン系樹脂組成物を押出機で溶融し、押出機先端に設けられたダイスより押出される公知の押出成形法により得ることができ、通常は、先端に希望の形状を形作るための金型(賦形ダイ)を取り付けた押出機を用い、押出機内で可塑化されたポリプロピレン系樹脂組成物をこの金型を通して、連続的に一定の断面形状で押出し、押出された溶融状態の樹脂を冷却固化することより、複雑な断面形状の成形品でも容易に製造することができる。金型の形状を変えることにより、望みの断面形状の異形押出成形品を製造できる。
押出機は、一軸押出機、二軸押出機のいずれであってもよく、例えば二軸押出機と単軸押出機を前段−後段に組み合わせたタンデム方式であってもよい。押出された樹脂は、サイザー金型、冷却水槽を通り、引き取り機で引きとられる。
また、本発明のポリプロピレン系異形押出成形品の厚みは、特に限定しないが、0.3mm〜10mm程度が好ましい。更に好ましくは0.5mm〜5mmである。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂異形押出品は、印刷性や塗装性などのために異形押出の表面にコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理等の表面処理をしても何ら差し支えない。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、ポリプロピレン系異形押出その構成成分についての諸物性は、下記の評価方法に従って測定、評価し、使用した樹脂として下記のものを用いた。
1.評価方法
(1)メルトフローレートMFR:
JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。単位はg/10分である。
(2)溶融張力MT:
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダー径:9.55mm
シリンダー押出速度:20mm/分
引き取り速度:4.0m/分
温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。単位はグラムである。
(3)スウェル比
装置として東洋精機製作所製キャピログラフ1−Bを用い、測定温度230℃で、長さ10.0mm、内径1.0mmのキャピラリーを使用し、溶融樹脂の押出速度(剪断速度)24、61、122及び243sec−1にてスウェル比を求めた。キャピラリーより押し出された溶融樹脂は、バラス効果により膨らむ。
スウェル比は次式より求められ、溶融弾性の目安となる。
(スウェル比)=(キャピラリー出口の溶融樹脂の直径)/(キャピラリー内径)
(4)分子量分布 Mw/MnおよびMz/Mn:
前述した方法に従って、GPC測定により求めた。
(5)40℃可溶成分量:
TREF測定によって求めた。TREF測定の詳細は、前述した通りである。
(6)mm分率:
日本電子社製「GSX−400」FT−NMRを用い、前述したとおり、特開平2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に記載の方法で測定した。
単位は%である。
(7)分岐度g’:
前述したように、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCによって求めた。
(8)歪み硬化度λmax:
伸張粘度測定は以下の条件で行った。
装置:Rheometorics社製Ares
冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
測定温度:180℃
歪み速度:0.1/sec
試験片の作成:プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成する。
λmaxの算出法の詳細は、前述した通りである。
(9)密度:
実施例および比較例により得られたポリプロピレン系(多層)異形押出から試験片を切出し、試験片重量(g)を、該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で割って求めた。JIS K7222に準じて測定し、密度を求めた。
(10)成形体の厚み評価:
異形押出して製造した図1に示すF形の形状の異形押出成形体の厚みを、図1中の(1)〜(4)の箇所について行い、(1)〜(4)の箇所の最大厚みと最小厚みの差を求めた。
2.使用材料
(X)分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)
下記の製造例1〜2で製造した重合体(PP−1)〜重合体(PP−3)を用いた。
[製造例1(PP−1の製造)]
<触媒成分(A−1)の合成例1>
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−1](錯体1)の合成):
・4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、4−i−プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4−ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
・2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に4−(4−i−プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO:200mlを加え、ここにN−ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p−トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
・2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−メチルフラン6.7g(82m1mol)、DME 100mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン19.8gg(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。
放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
・ジメチルビス(2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、THF200mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
・ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についてのH−NMRによる同定値を以下に記す。
H−NMR(C6D6)同定結果
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
<触媒成分(A)の合成例2>
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−2](錯体2)の合成):
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11−240909号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、実施した。
<触媒合成例1>
・イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製商品名「ベンクレイSL」平均粒径19μm)4Lを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーを蒸留水4,000g加えた後にろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ上固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4L加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理モンモリロナイト220gを得た。
この化学処理モンモリロナイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
・触媒調製及び予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上で得られた化学処理モンモリロナイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分(A)の合成例1で作製したrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(210μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分(A)の合成例2で作製したrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(90μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
先ほどの化学処理モンモリロナイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後更にトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒56.4gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.82であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
<重合>
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40kgを導入した。これに水素3.8リットル(標準状態の体積として)、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液470ml(0.12mol)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで、予備重合触媒1を2.8g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、17.4kgの重合体(以下、「PP−1」という)を得た。
触媒活性は、6210(g−PP/g−cat)であった。MFRは0.60g/10分であった。
[製造例2(PP−2の製造)]
添加する水素を4.4リットル、使用する予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)で行う以外は、製造例1と同様に実施した。16.5kgの重合体(以下、「PP−2」という。)を得た。
触媒活性は、6880(g−PP/g−cat)であった。MFRは1.0g/10分であった。
[製造例3(PP−3の製造)]
添加する水素を6.6リットル、使用する予備重合触媒1を1.9g(予備重合ポリマーを除いた重量で)で行う以外は、製造例1と同様に実施した。16.5kgの重合体(以下、「PP−3」という。)を得た。
触媒活性は、8050(g−PP/g−cat)であった。MFRは4.6g/10分であった。
(Y)ポリプロピレン及び/またはプロピレンランダム共重合体成分(Y)
チーグラー・ナッタ触媒によって重合された、以下の市販のポリプロピレン樹脂のペレットY−1、Y−2およびY−3を使用した。
・Y−1:プロピレン−エチレンインパクトコポリマー
MFR=0.7 MT=3.4g
日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP」、グレード名:BC8A
・Y−2:プロピレン−エチレンインパクトコポリマー
MFR=2.3 MT=1.0g
日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP」、グレード名:BC6CB
・Y−3:プロピレン−エチレンインパクトコポリマー
MFR=6.1 MT=0.5g
日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP」、グレード名:BC4L
[PP−1〜PP−3のペレット(X−1)〜(X−3)の製造]
製造例1〜3で製造したプロピレン系樹脂(PP−1〜PP−3)100重量部に対し、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS168、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部を配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサ−、商品名)を用い室温下で3分間混合した後、二軸押出機にて溶融混練して、ポリプロピレン樹脂(X)のペレット(X−1)〜(X−3)を得た。
なお、二軸押出機には、テクノベル社製KZW−25を用い、スクリュー回転数は400RPM、混練温度は、ホッパ下から80、160、210、230(以降、ダイス出口まで同温度)℃設定とした。
これらのペレット(X−1)〜(X−3)について、MFR、TREF、13C−NMR、GPC、分岐指数、MT、伸張粘度の評価を行った。評価結果を表1に示した。
Figure 2014091751
[実施例1]
ペレット(X−1)と上記Y−1のペレット(Y−1)の5:95混合物をブレンダーにより均一に攪拌混合し、スクリュー径50mmΦの単軸押出機で造粒し混合物のペレットを得た。
得られたペレットをスクリュー径50mmφ、L/D=23の単軸押出機で樹脂温度200℃、スクリュー回転数7.5rpmで加熱溶融可塑化し、押出機先端に取付けられた図1のF形のダイを通して押し出し、次いでサイザーおよび冷却水槽(25℃)を通して、引き取りを行った。
得られた異形押出成形体は、肉厚の均一性が良く、変形も少なく良好なものであった。異形押出品の評価結果を表2に示す。
[実施例2]
成分(X)をX−1からX−2に変更した以外は、実施例1と同様にして異形押出を得た。異形押出品の評価結果を表2に示す。
[実施例3]
成分(X)をX−1からX−3に変更した以外は、実施例1と同様にして異形押出を得た。異形押出品の評価結果を表2に示す。
[実施例4]
ペレット(X−2)とY−1のペレット(Y−2)の10:90混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして異形押出を得た。異形押出品の評価結果を表2に示す。
[実施例5]
ペレット(X−2)とY−1のペレット(Y−3)の20:80混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして異形押出を得た。異形押出品の評価結果を表2に示す。
[比較例1]
ペレット(Y−1)を使用した以外は実施例1と同様にして、異形押出を得た。異形押出品の評価結果を表2に示す。
[比較例2]
ペレット(X−2)とY−1のペレット(Y−2)の5:95混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして異形押出を得た。異形押出品の評価結果を表2に示す。
[比較例3]
ペレット(X−2)とY−1のペレット(Y−3)の10:90混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして異形押出を得た。異形押出品の評価結果を表2に示す。
Figure 2014091751
実施例1〜5は、いずれも成形が容易で、成形体の肉厚が均一で、外観に優れたものである。
一方、比較例1〜2では肉厚の均一性に劣り、比較例3では、ドローダウンが大きく成形不能であった。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いた異形押出成形品は、外観、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性等に優れていることより、自動車部品、文具、建材、土木製品などに好適に利用でき、工業的価値は極めて高い。

Claims (2)

  1. 以下の(i)〜(vi)の特性を有する、分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)1〜30重量%とチーグラー・ナッタ触媒によって重合されたMFRが0.3〜20g/10分のポリプロピレン樹脂成分(Y)70〜99重量%からなり、230℃に於ける溶融物性が以下の(vii)〜(viii)の特性を有することを特徴とする異形押出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
    (i)MFRが0.1〜30g/10分
    (ii)温度上昇溶解度分別(TREF)による40℃以下可溶成分量がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して3.0重量%以下
    (iii)13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が、95%以上
    (iv)GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0以上10.0以下、且つMz/Mwが2.5以上10.0以下
    (v)絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’が0.30以上1.00未満
    (vi)溶融張力(MT)(単位:g)が、
    log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 またはMT≧15 のいずれかを満たす。
    (vii)溶融張力(MT)が0.9g以上
    (viii)剪断速度24〜243sec−1の範囲で剪断速度とスウェル比との関係が以下の関係式を満たす。
    (SRγa−SRγb)/(logγa−logγb)≦0.08
    (ここで、γa、γbは24〜243sec−1の範囲での任意の剪断速度(但し、γa>γb)であり、SRγa、SRγbは剪断速度γa、γbでのスウェル比である。)
  2. 請求項1に記載の異形押出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて押出成形した異形押出成形品。
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