JP2014091641A - レーザ加工方法及び電子デバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強化ガラス板を備える板状の加工対象物から一部分を精度良く切り出すことができるレーザ加工方法及び電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】このレーザ加工方法は、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、内側部分17の外周面19に沿うように延在する環状の第1切断予定ライン51に沿って、集光点Pを相対的に移動させることにより、第1改質領域71を形成する工程と、その工程の後に、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第1切断予定ライン51に対して強化ガラス板10の厚さ方向における一方の側且つ当該厚さ方向から見た場合における第1切断予定ライン51の内側において外周面19に沿うように延在する環状の第2切断予定ライン52Aに沿って、集光点Pを相対的に移動させることにより、第2改質領域72Aを形成する工程と、を備える。
【選択図】図10
【解決手段】このレーザ加工方法は、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、内側部分17の外周面19に沿うように延在する環状の第1切断予定ライン51に沿って、集光点Pを相対的に移動させることにより、第1改質領域71を形成する工程と、その工程の後に、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第1切断予定ライン51に対して強化ガラス板10の厚さ方向における一方の側且つ当該厚さ方向から見た場合における第1切断予定ライン51の内側において外周面19に沿うように延在する環状の第2切断予定ライン52Aに沿って、集光点Pを相対的に移動させることにより、第2改質領域72Aを形成する工程と、を備える。
【選択図】図10
Description
本発明は、強化ガラス板を備える板状の加工対象物から少なくとも一部分を切り出すためのレーザ加工方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
上記技術分野のレーザ加工方法として、板状の加工対象物にレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に改質領域を形成し、その改質領域から発生した亀裂を加工対象物の厚さ方向に伸展させることにより、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、板状ではなくブロック状の合成石英ガラスを加工対象物とするものではあるものの、特許文献2には、合成石英ガラスの内部に焦点を合わせてエキシマレーザビームを合成石英ガラスの上面から照射することにより、多光子吸収を利用して合成石英ガラスの内部に微細なクラックを発生させ、エキシマレーザビームの焦点位置を底面から上方に(垂直方向及び水平方向に)移動させることにより、微細なクラックを円筒形の切断予定面の全体に渡って連続させ、合成石英ガラスを切断加工する、切断加工方法が記載されている。
しかしながら、上述したようなレーザ加工方法を実施することにより、強化ガラス板を備える板状の加工対象物から一部分を切り出そうとすると、当該一部分の外周面に沿うように延在する環状の切断予定ラインから外側に亀裂の一部が伸展し、切断面にバリ等が生じる場合がある。
そこで、本発明は、強化ガラス板を備える板状の加工対象物から一部分を精度良く切り出すことができるレーザ加工方法及び電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明のレーザ加工方法は、強化ガラス板を備える板状の加工対象物から少なくとも一部分を切り出すためのレーザ加工方法であって、強化ガラス板の内部にレーザ光の集光点を合わせて、一部分の外周面に沿うように延在する環状の第1切断予定ラインに沿って、集光点を相対的に移動させることにより、加工対象物の表面及び裏面のそれぞれに向かって伸展する第1亀裂を発生させる第1改質領域を、第1切断予定ラインに沿って強化ガラス板の内部に形成する第1工程と、第1工程の後に、強化ガラス板の内部に集光点を合わせて、第1切断予定ラインに対して強化ガラス板の厚さ方向における一方の側且つ当該厚さ方向から見た場合における第1切断予定ラインの内側において一部分の外周面に沿うように延在する環状の第2切断予定ラインに沿って、集光点を相対的に移動させることにより、加工対象物の表面及び裏面のそれぞれに向かって伸展する第2亀裂を発生させる第2改質領域を、第2切断予定ラインに沿って強化ガラス板の内部に形成する第2工程と、を備える。
このレーザ加工方法では、強化ガラス板の内部にレーザ光の集光点を合わせて、環状の第1切断予定ラインに沿って、集光点を相対的に移動させ、その後に、強化ガラス板の内部にレーザ光の集光点を合わせて、第1切断予定ラインに対して強化ガラス板の厚さ方向における一方の側且つ当該厚さ方向から見た場合における第1切断予定ラインの内側に位置する環状の第2切断予定ラインに沿って、集光点を相対的に移動させる。これにより、第1改質領域及び第2改質領域はそれぞれ環状に形成され、第2改質領域は、第1改質領域に対して強化ガラス板の厚さ方向における一方の側且つ当該厚さ方向から見た場合における第1改質領域の内側に形成されることになる。このように環状の第1改質領域及び第2改質領域をこの順序で形成すると、例えば、強化ガラス板の厚さ方向から見た場合に重なるように環状の第1改質領域及び第2改質領域を形成する場合に比べ、環状の第1切断予定ラインから外側に第1亀裂の一部が伸展したり、環状の第2切断予定ラインから外側に第2亀裂の一部が伸展したりするのを抑制することができる。よって、このレーザ加工方法によれば、強化ガラス板を備える板状の加工対象物から一部分を精度良く切り出すことが可能となる。
第1切断予定ライン及び第2切断予定ラインを含む面の傾斜角は、強化ガラス板の厚さ方向に対して20°以下であってもよい。これによれば、環状の第1切断予定ラインから外側に第1亀裂の一部が伸展したり、環状の第2切断予定ラインから外側に第2亀裂の一部が伸展したりするのをより確実に抑制することができる。
強化ガラス板のDOLは40μm以上であってもよい。本発明者らは、引張応力層、及びその引張応力層の両側に形成された圧縮応力層を有する強化ガラス板において、圧縮応力層の厚さを示すDOLが40μm以上になると、改質領域から亀裂が発生し易く且つ伸展し易い傾向があるものの、当該亀裂が暴れて切断予定ラインから外れ易い傾向があるとの知見を見出した。この知見に鑑み、DOLが40μm以上である強化ガラス板に対して、上述したように環状の第1改質領域及び第2改質領域をこの順序で形成することで、第1改質領域及び第2改質領域から第1亀裂及び第2亀裂が発生し易く且つ伸展し易い傾向を維持しつつ、当該第1亀裂が暴れて第1切断予定ラインから外れたり、当該第2亀裂が暴れて第2切断予定ラインから外れたりするのを抑制することができる。なお、この場合、強化ガラス板の厚さは、当然に[DOL+引張応力層の厚さ+DOL]となっている。
強化ガラス板の厚さ方向における一方の側は、加工対象物のレーザ光入射面側であってもよい。これによれば、第1切断予定ライン及び第2切断予定ラインを含む面の傾斜角が強化ガラス板の厚さ方向に対して比較的小さい場合であっても、形成済みの第1改質領域によってレーザ光の集光が邪魔されないため、第2改質領域を確実に形成することができる。
一部分の外周面が、互いに交差する関係を有する平面状の第1側面及び第2側面、並びに第1側面と第2側面との間に設けられた面取り面を含む場合には、第1工程では、一部分の外側から、第1切断予定ラインのうち第1側面又は第2側面に沿うように延在する第1直線部分に進入するように、集光点が合わせられる位置を相対的に移動させて、第1直線部分の所定点を始点としてレーザ光の照射を開始させ、第2工程では、一部分の外側から、第2切断予定ラインのうち第1側面又は第2側面に沿うように延在する第2直線部分に進入するように、集光点が合わせられる位置を相対的に移動させて、第2直線部分の所定点を始点としてレーザ光の照射を開始させてもよい。これによれば、強化ガラス板に対する集光点位置(集光点が合わせられる位置)の相対的な移動速度を安定させてから、レーザ光の照射を開始させることができるので、第1改質領域及び第2改質領域を確実に形成することができる。
本発明のレーザ加工方法は、一部分の外周面が、互いに交差する関係を有する平面状の第1側面及び第2側面、並びに第1側面と第2側面との間に設けられた面取り面を含む場合において、一部分を有効部として使用するときには、第2工程の後に、強化ガラス板の内部に集光点を合わせて、一部分の外側から面取り面に至るように延在する第3切断予定ラインに沿って、集光点を相対的に移動させることにより、加工対象物の表面及び裏面のそれぞれに向かって伸展する第3亀裂を発生させる第3改質領域を、第3切断予定ラインに沿って強化ガラス板の内部に形成する第3工程を更に備えてもよい。本発明者らは、第1改質領域及び第2改質領域を形成する際には、面取り面の外側の領域に歪が生じ易く、その結果、第1改質領域から発生した第1亀裂の一部が第1切断予定ラインから外れて面取り面の外側の領域に伸展し易く、同様に、第2改質領域から発生した第2亀裂の一部が第2切断予定ラインから外れて面取り面の外側の領域に伸展し易い傾向があるとの知見を見出した。このような傾向があるため、例えば、第3改質領域を形成した後に第1改質領域及び第2改質領域を形成すると、第1改質領域から発生した第1亀裂の一部が第1切断予定ラインから外れて第3改質領域に向かって伸展したり、第2改質領域から発生した第2亀裂の一部が第2切断予定ラインから外れて第3改質領域に向かって伸展したりし、面取り面にバリ等が生じ易くなるのである。そこで、第1改質領域及び第2改質領域を形成した後に第3改質領域を形成することで、第1亀裂の一部及び第2亀裂の一部が第3改質領域に向かって伸展するような事態を防止し、有効部として使用する一部分を第1切断予定ライン及び第2切断予定ラインに沿って精度良く切り出すことができる。更に、当該一部分の外側から面取り面に至るように延在する第3切断予定ラインに沿って第3改質領域を形成することで、面取り面の外側の領域に生じた歪を解放し、当該一部分からその周囲部分を容易に取り除くことができる。
このとき、第3切断予定ラインは、第1側面及び第2側面のそれぞれと連続するように一対設定されており、一対の第3切断予定ラインは、互いに交差していてもよい。これによれば、面取り面の外側の領域に生じた歪をより確実に解放し、有効部として使用する一部分からその周囲部分をより容易に取り除くことができる。更に、第3改質領域から発生した第3亀裂の一部が第3切断予定ラインから外れて有効部内に伸展するのを抑制することができる。
第3工程では、第1側面と連続するように設定された第3切断予定ラインに沿って、第1側面に近付くように集光点を相対的に移動させ、一対の第3切断予定ラインが交差する個所と第1側面との間でレーザ光の照射を終了させると共に、第2側面と連続するように設定された第3切断予定ラインに沿って、第2側面に近付くように集光点を相対的に移動させ、一対の第3切断予定ラインが交差する個所と第2側面との間でレーザ光の照射を終了させてもよい。これによれば、第3改質領域から発生した第3亀裂の一部が第3切断予定ラインから外れて有効部内に伸展するのをより確実に抑制することができる。
第2工程では、第1亀裂及び第2亀裂を連続させて加工対象物の表面及び裏面に到達させてもよい。これによれば、第1亀裂の一部及び第2亀裂の一部が第3改質領域に向かって伸展するような事態をより確実に防止することができる。
本発明のレーザ加工方法は、一部分の外周面が、互いに交差する関係を有する平面状の第1側面及び第2側面、並びに第1側面と第2側面との間に設けられた面取り面を含む場合において、加工対象物のうち一部分の周囲部分を有効部として使用するときには、第2工程の後に、強化ガラス板の内部に集光点を合わせて、一部分を横切るように且つ第1側面、第2側面及び面取り面の少なくとも1つと交差するように延在する第4切断予定ラインに沿って、集光点を相対的に移動させることにより、加工対象物の表面及び裏面のそれぞれに向かって伸展する第4亀裂を発生させる第4改質領域を、第4切断予定ラインに沿って強化ガラス板の内部に形成する第4工程を更に備えてもよい。このように第1改質領域及び第2改質領域を形成した後に第4改質領域を形成することで、有効部として使用する周囲部分内に第4亀裂の一部が伸展するような事態を防止し、当該周囲部分が損傷するのを抑制することができる。更に、当該周囲部分からその内側の一部分を容易に取り除くことができる。
このとき、第4工程では、強化ガラス板の内部に集光点を合わせて、第2切断予定ラインの内側において延在する環状の第5切断予定ラインに沿って、集光点を相対的に移動させることにより、加工対象物の表面及び裏面のそれぞれに向かって伸展する第5亀裂を発生させる第5改質領域を、第5切断予定ラインに沿って強化ガラス板の内部に形成してもよい。これによれば、有効部として使用する周囲部分からその内側の一部分をより容易に取り除くことができる。
第2工程では、第1亀裂及び第2亀裂を連続させて加工対象物の表面及び裏面に到達させてもよい。これによれば、有効部として使用する周囲部分内に第4亀裂の一部が伸展するような事態をより確実に防止することができる。
本発明の電子デバイスの製造方法は、上述したレーザ加工方法で切断された強化ガラス板を用いて電子デバイスを製造する。このように、本発明は、例えば電子デバイス(携帯電話やタブレット等の携帯端末)に利用される強化ガラスの切断に有効に利用される。
本発明によれば、強化ガラス板を備える板状の加工対象物から一部分を精度良く切り出すことができるレーザ加工方法及び電子デバイスの製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
本発明の一実施形態のレーザ加工方法では、切断予定ラインに沿って加工対象物にレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成する。そこで、加工対象物の材料を限定せずに、改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の駆動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
加工対象物1としては、種々の材料(例えば、ガラス、半導体材料、圧電材料等)からなる板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示すように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示すように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
ちなみに、ここでのレーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点P近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
ところで、本実施形態で形成される改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック等)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン、ガラス、LiTaO3又はサファイア(Al2O3)からなる基板やウェハ、又はそのような基板やウェハを含むものが挙げられる。
また、本実施形態においては、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することによって、改質領域7を形成している。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分であり、改質スポットが集まることにより改質領域7となる。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。
この改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することが好ましい。
[第1実施形態]
[第1実施形態]
図7(a)に示すように、加工対象物1は、表面1a及び裏面1bを有する矩形板状の部材であり、強化ガラス板10を備えている。強化ガラス板10は、引張応力層、及びその引張応力層の両側に形成された圧縮応力層を有するガラス板である。強化ガラス板10は、通常のガラス(フロートガラス)板を溶融塩に浸漬させ、イオン交換によってガラス板の表面層に圧縮応力層を形成したり(イオン交換法)、通常のガラス板を加熱した後、ガラス板の表面に空気を吹き付けるなどしてガラス板を急冷させたり(風冷強化法)することで製造される。強化ガラス板10では、その厚さ方向が、引張応力層及び圧縮応力層の配列方向と一致している。なお、強化ガラス板10の厚さは例えば700μmであり、強化ガラス板10のDOL(圧縮応力層の厚さ)は例えば48μmである。
以上のように構成された加工対象物1から、以下のように、矩形板状の内側部分(一部分)17を切り出し、当該内側部分17を有効部として使用する。なお、図7(b)に示すように、内側部分17は、表面17a及び裏面17b、並びに面取りされた4つの角部18を有するものであり、各角部18は、その面取り面18aが凸曲面となるようにR面取りされたものである。つまり、内側部分17の外周面19は、互いに交差する関係を有する平面状の第1側面17c及び第2側面17d、並びに第1側面17cと第2側面17dとの間に設けられた面取り面18aを含んでいる。また、内側部分17の外周面19は、加工対象物1の表面1a側に縮小する錘台状の傾斜面となっている。このような内側部分17は、携帯型端末のディスプレイの保護基板等に用いられる。
まず、加工対象物1をレーザ加工装置100の支持台107上に載置する。このとき、加工対象物1の裏面1bにテープを貼ったり、或いは支持台107を多孔質状に形成して加工対象物1を真空吸着したりするなど、支持台107上において加工対象物1を保持する。そして、加工対象物1に対し、環状の第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52B(図7(a)における一点鎖線)並びに第3切断予定ライン53(図7(a)における破線)を設定する。
第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52Bは、内側部分17の外周面19に沿うように延在している。より具体的には、第1切断予定ライン51は、強化ガラス板10の厚さ方向における中心よりも加工対象物1の裏面1b側に位置している。第1切断予定ライン51は、内側部分17の各側面17c,17dに沿うように延在する第1直線部分51aと、内側部分17の各面取り面18aに沿うように延在する第1曲線部分51bと、を有している。
第2切断予定ライン52Aは、強化ガラス板10の厚さ方向における中心に位置しており、強化ガラス板10の厚さ方向から見た場合には第1切断予定ライン51の内側に位置している。つまり、第2切断予定ライン52Aは、第1切断予定ライン51に対して加工対象物1の表面1a側(強化ガラス板10の厚さ方向における一方の側)且つ強化ガラス板10の厚さ方向から見た場合における第1切断予定ライン51の内側において内側部分17の外周面19に沿うように延在している。第2切断予定ライン52Aは、内側部分17の各側面17c,17dに沿うように延在する第2直線部分52aと、内側部分17の各面取り面18aに沿うように延在する第2曲線部分52bと、を有している。
第2切断予定ライン52Bは、強化ガラス板10の厚さ方向における中心よりも加工対象物1の表面1a側に位置しており、強化ガラス板10の厚さ方向から見た場合には第2切断予定ライン52Aの内側に位置している。つまり、第2切断予定ライン52Bは、第2切断予定ライン52Aに対して加工対象物1の表面1a側且つ強化ガラス板10の厚さ方向から見た場合における第2切断予定ライン52Aの内側において内側部分17の外周面19に沿うように延在している。第2切断予定ライン52Bは、内側部分17の各側面17c,17dに沿うように延在する第2直線部分52aと、内側部分17の各面取り面18aに沿うように延在する第2曲線部分52bと、を有している。
第3切断予定ライン53は、内側部分17の外側から各面取り面18aに至るように延在している。より具体的には、第3切断予定ライン53は、各角部18において、各側面17c,17dと連続するように一対設定されており、一対の第3切断予定ライン53は、互いに交差している。第3切断予定ライン53は、加工対象物1のうち内側部分17の周囲部分21を取り除くためのラインであり、加工対象物1の側面1cに至っている。
続いて、図8(a)に示すように、内側部分17の外側から、第1切断予定ライン51の第1直線部分51aに進入するように、レーザ光Lの集光点位置(集光点Pが合わせられる位置)CPを相対的に移動させて、第1直線部分51aの一端(所定点)を始点SPとしてレーザ光Lの照射を開始させる。そして、図8(b)に示すように、加工対象物1の表面1aをレーザ光入射面として強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを位置させた状態で、第1切断予定ライン51に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。そして、図9(a)に示すように、第1直線部分51aの一端(所定点)を終点EPとしてレーザ光Lの照射を終了させる。
つまり、図10に示すように、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第1切断予定ライン51に沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。これにより、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第1亀裂81を発生させる第1改質領域71を、第1切断予定ライン51に沿って強化ガラス板10の内部に形成する(第1工程)。
続いて、第1改質領域71を形成するためのレーザ光Lの照射と同様に、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第2切断予定ライン52Aに沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。これにより、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第2亀裂82Aを発生させる第2改質領域72Aを、第2切断予定ライン52Aに沿って強化ガラス板10の内部に形成する(第2工程)。
続いて、第1改質領域71を形成するためのレーザ光Lの照射と同様に、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第2切断予定ライン52Bに沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。これにより、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第2亀裂82Bを発生させる第2改質領域72Bを、第2切断予定ライン52Bに沿って強化ガラス板10の内部に形成する(第2工程)。
そして、図9(b)に示すように、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bの形成後に、加工対象物1に何ら外力を作用させることなく、第1亀裂81及び第2亀裂82A,82Bを連続させて加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させる。なお、図10に示すように、第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52Bを含む面(外周面19に一致する面)の傾斜角θは、強化ガラス板10の厚さ方向に対して3°となっている。
第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bを形成した後に、図11(a)に示すように、加工対象物1の表面1aをレーザ光入射面として強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、各第3切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。これにより、図11(b)に示すように、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第3亀裂83を発生させる第3改質領域73を、各第3切断予定ライン53に沿って強化ガラス板10の内部に形成する(第3工程)。そして、第3切断予定ライン53に対する第3改質領域73の形成後に、加工対象物1に何ら外力を作用させることなく、第3改質領域73から発生した第3亀裂83を加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させる。
上述した第3改質領域73を形成するためのレーザ光Lの照射について、より詳細に説明する。まず、図11(a)に示すように、第1側面17cと連続するように設定された第3切断予定ライン53に沿って、第1側面17cに近付くようにレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させ、一対の第3切断予定ライン53の交差点(交差する個所)IPと第1側面17cとの間でレーザ光Lの照射を終了させる。同様に、第2側面17dと連続するように設定された第3切断予定ライン53に沿って、第2側面17dに近付くようにレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させ、一対の第3切断予定ライン53の交差点IPと第2側面17dとの間でレーザ光Lの照射を終了させる。
なお、第1側面17cと連続するように設定された第3切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lを照射する場合、当該レーザ光Lの照射を終了させる位置は、例えば、パルスピッチ(レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度をレーザ光Lの繰返し周波数で除した値)に相当する距離以上且つ強化ガラス板10の厚さに相当する距離以下の距離だけ、第1側面17cの一端から離れた位置である。同様に、第2側面17dと連続するように設定された第3切断予定ライン53に沿ってレーザ光Lを照射する場合、当該レーザ光Lの照射を終了させる位置は、例えば、パルスピッチに相当する距離以上且つ強化ガラス板10の厚さに相当する距離以下の距離だけ、第2側面17dの一端から離れた位置である。
以上の順序で第1改質領域71、第2改質領域72A,72B及び第3改質領域73を形成することで、図7(b)に示すように、加工対象物1から周囲部分21を取り除いて、有効部として内側部分17を得る。なお、各切断予定ライン51,52A,52B,53に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させるために、加工対象物1側(支持台107等)を移動させてもよいし、レーザ光L側(レーザ光源101、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105等)を移動させてもよいし、或いは、加工対象物1側及びレーザ光L側の両方を移動させてもよい。また、支持台107上における加工対象物1の保持は、全ての改質領域71,72A,72B,73を形成した後に解除する。
以上説明したように、第1実施形態のレーザ加工方法では、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、環状の第1切断予定ライン51に沿って、集光点Pを相対的に移動させ、その後に、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第1切断予定ライン51に対して加工対象物1の表面1a側且つ強化ガラス板10の厚さ方向から見た場合における第1切断予定ライン51の内側に位置する環状の各第2切断予定ライン52A,52Bに沿って、集光点Pを相対的に移動させる。これにより、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bはそれぞれ環状に形成され、各第2改質領域72A,72Bは、第1改質領域71に対して加工対象物1の表面1a側且つ強化ガラス板10の厚さ方向から見た場合における第1改質領域71の内側に形成されることになる。このように環状の第1改質領域71、第2改質領域72A及び第2改質領域72Bをこの順序で形成すると、例えば、強化ガラス板10の厚さ方向から見た場合に重なるように環状の第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bを形成する場合に比べ、各切断予定ライン51,52A,52Bから外側に各亀裂81,82A,82Bの一部が伸展するのを抑制することができる。よって、第1実施形態のレーザ加工方法によれば、強化ガラス板10を備える板状の加工対象物1から内側部分17を精度良く切り出して、当該内側部分17を有効部として使用することが可能となる。なお、第1実施形態のレーザ加工方法で切断された強化ガラス板を用いて電子デバイスを製造することができる。本発明は、例えば電子デバイス(携帯電話やタブレット等の携帯端末)に利用される強化ガラスの切断に有効に利用される。
また、第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52Bを含む面(外周面19に一致する面)の傾斜角θは、強化ガラス板10の厚さ方向に対して3°となっている。当該傾斜角θが強化ガラス板10の厚さ方向に対して20°以下(より好ましくは、10°以下)であると、各切断予定ライン51,52A,52Bから外側に各亀裂81,82A,82Bの一部が伸展するのを確実に抑制することができる。
また、第1実施形態のレーザ加工方法では、DOLが40μm以上(より好ましくは、45μm以上)である強化ガラス板10に対して、上述したように環状の第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bを形成する。これにより、各改質領域71,72A,72Bから各亀裂81,82A,82Bが発生し易く且つ伸展し易い傾向を維持しつつ、当該各亀裂81,82A,82Bが暴れて各切断予定ライン51,52A,52Bから外れるのを抑制することができる。
また、第1実施形態のレーザ加工方法では、第1改質領域71に対して、レーザ光入射面である加工対象物1の表面1a側に第2改質領域72Aを形成し、更に、第2改質領域72Aに対して、レーザ光入射面である加工対象物1の表面1a側に第2改質領域72Bを形成する。これによれば、第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52Bを含む面の傾斜角θが強化ガラス板10の厚さ方向に対して比較的小さい場合であっても、形成済みの各改質領域71,72Aによってレーザ光Lの集光が邪魔されないため、各第2改質領域72A,72Bを確実に形成することができる。
また、第1実施形態のレーザ加工方法では、内側部分17の外側から、第1切断予定ライン51の第1直線部分51aに進入するように、レーザ光Lの集光点位置CPを相対的に移動させて、第1直線部分51aの一端を始点SPとしてレーザ光Lの照射を開始させる。これにより、強化ガラス板10に対する集光点位置CPの相対的な移動速度を安定させてから、レーザ光Lの照射を開始させることができるので、第1改質領域71を確実に形成することができる。第2切断予定ライン52Aに沿っての第2改質領域72Aの形成、及び第2切断予定ライン52Bに沿っての第2改質領域72Bの形成についても、同様である。
また、第1実施形態のレーザ加工方法では、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bを形成した後に、内側部分17の外側から面取り面18aに至るように延在する第3切断予定ライン53に沿って第3改質領域73形成する。第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bを形成する際には、面取り面18aの外側の領域に歪が生じ易く、その結果、各改質領域71,72A,72Bから発生した各亀裂81,82A,82Bの一部が各切断予定ライン51,52A,52Bから外れて面取り面18aの外側の領域に伸展し易い傾向があるものの、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bを形成した後に第3改質領域73を形成することで、各亀裂81,82A,82Bの一部が第3改質領域73に向かって伸展するような事態を防止し、有効部として使用する内側部分17を精度良く切り出すことができる。更に、内側部分17の外側から面取り面18aに至るように延在する第3切断予定ライン53に沿って第3改質領域73を形成することで、面取り面18aの外側の領域に生じた歪を解放し、内側部分17からその周囲部分21を容易に取り除くことができる。
特に、第1実施形態のレーザ加工方法では、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bの形成後且つ第3改質領域73の形成前に、第1亀裂81及び第2亀裂82A,82Bを連続させて加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させているので、各亀裂81,82A,82Bの一部が第3改質領域73に向かって伸展するような事態が確実に防止される。
また、第1実施形態のレーザ加工方法では、各角部18において、第3切断予定ライン53が各側面17c,17dと連続するように一対設定されており、一対の第3切断予定ライン53が互いに交差している。これにより、面取り面18aの外側の領域に生じた歪を確実に解放し、内側部分17から周囲部分21を容易に取り除くことができる。更に、第3改質領域73から発生した第3亀裂83の一部が第3切断予定ライン53から外れて内側部分17内に伸展するのを抑制することができる。
特に、第1実施形態のレーザ加工方法では、第1側面17cと連続するように設定された第3切断予定ライン53に沿って、第1側面17cに近付くようにレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させ、一対の第3切断予定ライン53の交差点IPと第1側面17cとの間でレーザ光Lの照射を終了させる。同様に、第2側面17dと連続するように設定された第3切断予定ライン53に沿って、第2側面17dに近付くようにレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させ、交差点IPと第2側面17dとの間でレーザ光Lの照射を終了させる。これにより、第3改質領域73から発生した第3亀裂83の一部が第3切断予定ライン53から外れて内側部分17内に伸展することが確実に抑制される。
[第2実施形態]
[第2実施形態]
第2実施形態のレーザ加工方法は、図12(a)に示すように、加工対象物1から矩形板状の内側部分17を切り出し、図12(b)に示すように、当該内側部分17の周囲部分21を有効部として使用する点で、上述した第1実施形態のレーザ加工方法と主に相違している。第2実施形態のレーザ加工方法では、加工対象物1に対し、環状の第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52B(図12(a)における一点鎖線)並びに第4切断予定ライン54及び第5切断予定ライン55(図12(a)における破線)を設定する。
第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52Bは、第1実施形態のレーザ加工方法と同様に、内側部分17の外周面19に沿うように延在している。第4切断予定ライン54は、対向する第1側面17c間、対向する第2側面17d間、及び対向する面取り面18a間に設定されている。各第4切断予定ライン54は、内側部分17を横切るように且つ第1側面17c、第2側面17d及び面取り面18aのそれぞれと交差するように延在しており、内側部分17の中央部において互いに交差している。第5切断予定ライン55は、第2切断予定ライン52Bの内側において環状に延在しており、各第4切断予定ライン54と交差している。
続いて、図13(a)に示すように、内側部分17の外側から、第1切断予定ライン51の第1直線部分51aに進入するように、レーザ光Lの集光点位置CPを相対的に移動させて、第1直線部分51aの一端を始点SPとしてレーザ光Lの照射を開始させる。そして、図13(b)に示すように、加工対象物1の表面1aをレーザ光入射面として強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを位置させた状態で、第1切断予定ライン51に沿って加工対象物1にレーザ光Lを照射する。そして、図14(a)に示すように、第1直線部分51aの一端を終点EPとしてレーザ光Lの照射を終了させる。
つまり、図10に示すように、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第1切断予定ライン51に沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。これにより、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第1亀裂81を発生させる第1改質領域71を、第1切断予定ライン51に沿って強化ガラス板10の内部に形成する(第1工程)。
続いて、第1改質領域71を形成するためのレーザ光Lの照射と同様に、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第2切断予定ライン52Aに沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。これにより、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第2亀裂82Aを発生させる第2改質領域72Aを、第2切断予定ライン52Aに沿って強化ガラス板10の内部に形成する(第2工程)。
続いて、第1改質領域71を形成するためのレーザ光Lの照射と同様に、強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、第2切断予定ライン52Bに沿って、レーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。これにより、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第2亀裂82Bを発生させる第2改質領域72Bを、第2切断予定ライン52Bに沿って強化ガラス板10の内部に形成する(第2工程)。
そして、図14(b)に示すように、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bの形成後に、加工対象物1に何ら外力を作用させることなく、第1亀裂81及び第2亀裂82A,82Bを連続させて加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させる。なお、図10に示すように、第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52Bを含む面(外周面19に一致する面)の傾斜角θは、強化ガラス板10の厚さ方向に対して3°となっている。
第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bを形成した後に、図15(a)に示すように、加工対象物1の表面1aをレーザ光入射面として強化ガラス板10の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせて、各第4切断予定ライン54及び第5切断予定ライン55に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動(スキャン)させる。これにより、図15(b)に示すように、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第4亀裂84を発生させる第4改質領域74を、各第4切断予定ライン54に沿って強化ガラス板10の内部に形成すると共に、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのそれぞれに向かって伸展する第5亀裂85を発生させる第5改質領域75を、第5切断予定ライン55に沿って強化ガラス板10の内部に形成する(第4工程)。
そして、第4切断予定ライン54に対する第4改質領域74の形成後に、加工対象物1に何ら外力を作用させることなく、第4改質領域74から発生した第4亀裂84を加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させる。同様に、第5切断予定ライン55に対する第5改質領域75の形成後に、加工対象物1に何ら外力を作用させることなく、第5改質領域75から発生した第5亀裂85を加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させる。
なお、上述した第4改質領域74を形成するためのレーザ光Lの照射において、レーザ光Lの照射を終了させる位置は、例えば、パルスピッチ(レーザ光Lの集光点Pの相対的移動速度をレーザ光Lの繰返し周波数で除した値)に相当する距離以上且つ強化ガラス板10の厚さに相当する距離以下の距離だけ、内側部分17の外周面19から離れた位置である。これにより、第4改質領域74から発生した第4亀裂84の一部が、有効部として使用する周囲部分21内に伸展することが確実に抑制される。
以上の順序で第1改質領域71、第2改質領域72A,72B、第4改質領域74及び第5改質領域75を形成することで、図12(b)に示すように、加工対象物1から内側部分17を取り除いて、有効部として周囲部分21を得る。なお、各切断予定ライン51,52A,52B,54,55に沿ってレーザ光Lの集光点Pを相対的に移動させるために、加工対象物1側(支持台107等)を移動させてもよいし、レーザ光L側(レーザ光源101、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105等)を移動させてもよいし、或いは、加工対象物1側及びレーザ光L側の両方を移動させてもよい。また、支持台107上における加工対象物1の保持は、全ての改質領域71,72A,72B,74,75を形成した後に解除する。
以上説明したように、第2実施形態のレーザ加工方法では、第1実施形態のレーザ加工方法と同様に、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bをそれぞれ環状に形成し、各第2改質領域72A,72Bを、第1改質領域71に対して加工対象物1の表面1a側且つ強化ガラス板10の厚さ方向から見た場合における第1改質領域71の内側に形成する。これにより、各切断予定ライン51,52A,52Bから外側に各亀裂81,82A,82Bの一部が伸展するのを抑制することができる。よって、第2実施形態のレーザ加工方法によれば、強化ガラス板10を備える板状の加工対象物1から内側部分17を精度良く切り出して、当該内側部分17の周囲部分21を有効部として使用することが可能となる。なお、第2実施形態のレーザ加工方法で切断された強化ガラス板を用いて電子デバイスを製造することができる。本発明は、例えば電子デバイス(携帯電話やタブレット等の携帯端末)に利用される強化ガラスの切断に有効に利用される。
また、第2実施形態のレーザ加工方法では、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bを形成した後に、加工対象物1から内側部分17を取り除くための第4切断予定ライン54及び第5切断予定ライン55に沿って第4改質領域74及び第5改質領域75を形成する。これにより、有効部として使用する周囲部分21内に第4亀裂84の一部及び第5亀裂85の一部が伸展するような事態を防止し、周囲部分21が損傷するのを抑制することができる。更に、有効部として使用する周囲部分21から内側部分17を容易に取り除くことができる。しかも、内側部分17が、強化ガラス板10の厚さ方向における一方の側(ここでは、レーザ光入射面である加工対象物1の表面1a側)に縮小する錘台状であるため、強化ガラス板10の厚さ方向における他方の側に内側部分17を押圧することで、加工対象物1から内側部分17を容易に取り出すことができる。
特に、第2実施形態のレーザ加工方法では、第1改質領域71及び第2改質領域72A,72Bの形成後且つ第4改質領域74及び第5改質領域75の形成前に、第1亀裂81及び第2亀裂82A,82Bを連続させて加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させているので、有効部として使用する周囲部分21内に第4亀裂84の一部及び第5亀裂85の一部が伸展するような事態が確実に防止される。
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、加工対象物1、内側部分17及び周囲部分21の形状としては、矩形板状等に限定されず、様々な形状を適用することができる。また、加工対象物1は、強化ガラス板10の表面及び裏面の少なくとも一方に樹脂膜等が形成されたものであってもよい。また、加工対象物1から一部分として複数の内側部分17を切り出してもよい。また、改質領域71〜74としては、レーザ光Lの照射条件等によって、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等や、これらが混在した領域が形成される。
また、第1改質領域71及び第2改質領域72を少なくとも1列ずつ環状に形成し、第2改質領域72を、第1改質領域71に対して強化ガラス板10の厚さ方向における一方の側且つ当該厚さ方向から見た場合における第1改質領域71の内側に形成すれば、強化ガラス板10を備える板状の加工対象物1から内側部分17を精度良く切り出すことができる。
また、第1切断予定ライン51及び第2切断予定ライン52A,52B以外の各切断予定ライン53,54,55に対しては、各改質領域73,74,75を1列形成してもよいし、強化ガラス板10の厚さ方向に並ぶように複数列形成してもよい。1本の切断予定ライン53,54,55に対する改質領域73,74,75の列数は、強化ガラス板10の厚さ等に応じて適宜決定することができる。
また、上記実施形態では、各切断予定ライン51〜55に対する各改質領域71〜75の形成後に、加工対象物1に何ら外力を作用させることなく、各改質領域71〜75から発生した各亀裂81〜85を加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させたが、本発明は、これに限定されない。つまり、各改質領域71〜75から発生した各亀裂81〜85を、加工対象物1の表面1a及び裏面1bのいずれか一方に到達させるだけでもよいし、或いは、加工対象物1の表面1a及び裏面1bの両方に到達させなくてもよい。これらの場合には、各改質領域71〜75を形成した後に、各切断予定ライン51〜55に沿って外力を作用させて、各改質領域71〜75から発生した各亀裂81〜85を加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達させ、それにより、各切断予定ライン51〜55に沿って加工対象物1を切断すればよい。
また、図16に示すように、各切断予定ライン51,52A,52B,52Cに沿って各改質領域71,72A,72B,72Cを形成する際には、強化ガラス板10の厚さ方向における一方の側(ここでは、レーザ光入射面である加工対象物1の表面1a側)に縮小する錘台状の傾斜面(外周面19に一致する面)に沿って、レーザ光Lの集光点Pを螺旋状に移動させてもよい。これにより、改質領域71,72A,72B,72Cは、連続して螺旋状に形成される。この場合にも、錘台状の外周面19を有する内側部分17を精度良く且つ効率良く切り出すことができる。
1…加工対象物、1a…表面、1b…裏面、10…強化ガラス板、17…内側部分(一部分)、17c…第1側面、17d…第2側面、18a…面取り面、19…外周面、21…周囲部分、51…第1切断予定ライン、51a…第1直線部分、52A,52B…第2切断予定ライン、52a…第2直線部分、53…第3切断予定ライン、54…第4切断予定ライン、55…第5切断予定ライン、71…第1改質領域、72A,72B…第2改質領域、73…第3改質領域、74…第4改質領域、75…第5改質領域、81…第1亀裂、82A,82B…第2亀裂、83…第3亀裂、84…第4亀裂、85…第5亀裂、L…レーザ光、P…集光点、CP…集光点位置(集光点が合わせられる位置)、SP…始点、IP…交差点(交差する個所)。
Claims (13)
- 強化ガラス板を備える板状の加工対象物から少なくとも一部分を切り出すためのレーザ加工方法であって、
前記強化ガラス板の内部にレーザ光の集光点を合わせて、前記一部分の外周面に沿うように延在する環状の第1切断予定ラインに沿って、前記集光点を相対的に移動させることにより、前記加工対象物の表面及び裏面のそれぞれに向かって伸展する第1亀裂を発生させる第1改質領域を、前記第1切断予定ラインに沿って前記強化ガラス板の内部に形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記強化ガラス板の内部に前記集光点を合わせて、前記第1切断予定ラインに対して前記強化ガラス板の厚さ方向における一方の側且つ当該厚さ方向から見た場合における前記第1切断予定ラインの内側において前記一部分の前記外周面に沿うように延在する環状の第2切断予定ラインに沿って、前記集光点を相対的に移動させることにより、前記加工対象物の前記表面及び前記裏面のそれぞれに向かって伸展する第2亀裂を発生させる第2改質領域を、前記第2切断予定ラインに沿って前記強化ガラス板の内部に形成する第2工程と、を備える、レーザ加工方法。 - 前記第1切断予定ライン及び前記第2切断予定ラインを含む面の傾斜角は、前記強化ガラス板の前記厚さ方向に対して20°以下である、請求項1記載のレーザ加工方法。
- 前記強化ガラス板のDOLは40μm以上である、請求項1又は2記載のレーザ加工方法。
- 前記強化ガラス板の前記厚さ方向における前記一方の側は、前記加工対象物のレーザ光入射面側である、請求項1〜3のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
- 前記一部分の前記外周面が、互いに交差する関係を有する平面状の第1側面及び第2側面、並びに前記第1側面と前記第2側面との間に設けられた面取り面を含む場合には、
前記第1工程では、前記一部分の外側から、前記第1切断予定ラインのうち前記第1側面又は前記第2側面に沿うように延在する第1直線部分に進入するように、前記集光点が合わせられる位置を相対的に移動させて、前記第1直線部分の所定点を始点として前記レーザ光の照射を開始させ、
前記第2工程では、前記一部分の外側から、前記第2切断予定ラインのうち前記第1側面又は前記第2側面に沿うように延在する第2直線部分に進入するように、前記集光点が合わせられる位置を相対的に移動させて、前記第2直線部分の所定点を始点として前記レーザ光の照射を開始させる、請求項1〜4のいずれか一項記載のレーザ加工方法。 - 前記一部分の前記外周面が、互いに交差する関係を有する平面状の第1側面及び第2側面、並びに前記第1側面と前記第2側面との間に設けられた面取り面を含む場合において、前記一部分を有効部として使用するときには、前記第2工程の後に、前記強化ガラス板の内部に前記集光点を合わせて、前記一部分の外側から前記面取り面に至るように延在する第3切断予定ラインに沿って、前記集光点を相対的に移動させることにより、前記加工対象物の前記表面及び前記裏面のそれぞれに向かって伸展する第3亀裂を発生させる第3改質領域を、前記第3切断予定ラインに沿って前記強化ガラス板の内部に形成する第3工程を更に備える、請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
- 前記第3切断予定ラインは、前記第1側面及び前記第2側面のそれぞれと連続するように一対設定されており、一対の前記第3切断予定ラインは、互いに交差している、請求項6記載のレーザ加工方法。
- 前記第3工程では、前記第1側面と連続するように設定された前記第3切断予定ラインに沿って、前記第1側面に近付くように前記集光点を相対的に移動させ、一対の前記第3切断予定ラインが交差する個所と前記第1側面との間で前記レーザ光の照射を終了させると共に、前記第2側面と連続するように設定された前記第3切断予定ラインに沿って、前記第2側面に近付くように前記集光点を相対的に移動させ、一対の前記第3切断予定ラインが交差する前記個所と前記第2側面との間で前記レーザ光の照射を終了させる、請求項7記載のレーザ加工方法。
- 前記第2工程では、前記第1亀裂及び前記第2亀裂を連続させて前記加工対象物の前記表面及び前記裏面に到達させる、請求項6〜8のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
- 前記一部分の前記外周面が、互いに交差する関係を有する平面状の第1側面及び第2側面、並びに前記第1側面と前記第2側面との間に設けられた面取り面を含む場合において、前記加工対象物のうち前記一部分の周囲部分を有効部として使用するときには、前記第2工程の後に、前記強化ガラス板の内部に前記集光点を合わせて、前記一部分を横切るように且つ前記第1側面、前記第2側面及び前記面取り面の少なくとも1つと交差するように延在する第4切断予定ラインに沿って、前記集光点を相対的に移動させることにより、前記加工対象物の前記表面及び前記裏面のそれぞれに向かって伸展する第4亀裂を発生させる第4改質領域を、前記第4切断予定ラインに沿って前記強化ガラス板の内部に形成する第4工程を更に備える、請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
- 前記第4工程では、前記強化ガラス板の内部に前記集光点を合わせて、前記第2切断予定ラインの内側において延在する環状の第5切断予定ラインに沿って、前記集光点を相対的に移動させることにより、前記加工対象物の前記表面及び前記裏面のそれぞれに向かって伸展する第5亀裂を発生させる第5改質領域を、前記第5切断予定ラインに沿って前記強化ガラス板の内部に形成する、請求項10記載のレーザ加工方法。
- 前記第2工程では、前記第1亀裂及び前記第2亀裂を連続させて前記加工対象物の前記表面及び前記裏面に到達させる、請求項10又は11記載のレーザ加工方法。
- 請求項1〜12のいずれか一項記載のレーザ加工方法で切断された強化ガラス板を用いて電子デバイスを製造する、電子デバイスの製造方法。
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