JP2014088937A - 発進クラッチの制御装置および制御方法 - Google Patents

発進クラッチの制御装置および制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】制御ゲインの適合負荷を軽減しつつ、原動機と変速機の入力軸との回転速度差を目標スリップ速度に一致させるスリップ制御の応答性をより向上させる。
【解決手段】ロックアップクラッチを制御する変速ECUは、目標スリップ速度u*と適応制御により調整される第1、第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2とに基づいて油圧指令値Upの第1、第2フィードフォワード項FF1,FF2を設定すると共に、エンジン12と自動変速機30の入力軸31との回転速度差ΔNと適応制御により調整されるフィードバックゲインKfbとに基づいて油圧指令値Upのフィードバック項FBを設定し(S170)、第1、第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2およびフィードバックゲインKfbの適応ゲインΓff1,Γff2,Γfbは、エンジン12の回転数Neに応じて変更される(S140)。
【選択図】図4

Description

本発明は、車両の原動機と変速機の入力軸とを連結すると共に両者の連結を解除することができる発進クラッチの制御装置および制御方法に関する。
従来、ロックアップクラッチの制御装置として、制御系の設計をH∞制御の混合感度問題として整理し、特性変動を近似した次数と同程度の次数で設計されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この制御装置は、クラッチの実際のスリップ回転速度(原動機と変速機の入力軸との回転速度差)を検出するスリップ回転速度検出手段と、操作量指令値(油圧指令値)と実際のスリップ回転速度との入出力周波数特性の変化を近似する高次の関数を用いて、スリップ状態をフィードバック制御する系の応答性および安定性を充足するよう設定された定数を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された定数を用いて、離散的に現時点から複数回前までの操作量指令値を反映した第1のパラメータを求める操作量指令値来歴手段と、記憶手段に記憶された定数を用いて、離散的に現時点から複数回前までの目標スリップ回転速度と実際のスリップ回転速度との偏差量を反映した第2のパラメータを求める制御量偏差来歴手段と、第1および第2のパラメータに基づいて、次の操作量指令値を求める操作指令値演算手段とを備える。
特開平7−198035号公報
しかしながら、上記従来のロックアップクラッチの制御装置は、スリップ状態をフィードバック制御する系の応答性および安定性を充足する定数の適合に際して、操作量指令値と実際のスリップ回転速度との入出力周波数特性の変化を近似する高次の関数を用いるものであり、当該定数の適合に多大な工数を要するものである。また、スリップ状態の調整すなわちスリップ制御の実行に際してスリップ回転速度をある一定量だけ変化させるためには、原動機の回転数が高いほどロックアップクラッチへの油圧指令値を大きく変化させる必要があり、スリップ制御の実行中に原動機の回転速度が急変すると、それに伴ってロックアップクラッチの特性(応答性)が変化することになる。このため、上記従来のロックアップクラッチの制御装置を用いても、スリップ制御の実行中に原動機の回転速度が急変した場合、目標スリップ回転速度と原動機の回転数とに応じた操作量指令値を速やかに得られなくなって実際のスリップ回転速度が目標スリップ回転速度から乖離してしまうおそれがある。従って、上記従来のロックアップクラッチの制御装置には、スリップ制御の応答性の面でなお改善の余地がある。
そこで、本発明は、制御ゲインの適合負荷を軽減しつつ、原動機と変速機の入力軸との回転速度差を目標スリップ速度に一致させるスリップ制御の応答性をより向上させることを主目的とする。
本発明による発進クラッチの制御装置および制御方法は、上記主目的を達成するために以下の手段を採っている。
本発明による発進クラッチの制御装置は、
車両の原動機と変速機の入力軸との回転速度差が前記車両の状態に応じた目標スリップ速度に一致するように油圧式発進クラッチへの油圧指令値を設定し、該油圧指令値に基づいて前記油圧式発進クラッチを制御する発進クラッチの制御装置において、
前記目標スリップ速度と、適応制御により調整されるフィードフォワードゲインとに基づいて前記油圧指令値のフィードフォワード項を設定するフィードフォワード項設定手段と、
前記回転速度差と、適応制御により調整されるフィードバックゲインとに基づいて前記油圧指令値のフィードバック項を設定するフィードバック項設定手段と、
を備え、
前記フィードフォワードゲインおよび前記フィードバックゲインの適応ゲインは、前記原動機または前記入力軸の回転速度に応じて変更されることを特徴とする。
この制御装置は、原動機と変速機の入力軸との回転速度差を目標スリップ速度に一致させるスリップ制御を実行するものであり、目標スリップ速度と、適応制御により調整されるフィードフォワードゲインとに基づいて油圧指令値のフィードフォワード項を設定するフィードフォワード項設定手段と、原動機と変速機の入力軸との回転速度差と、適応制御により調整されるフィードバックゲインとに基づいて油圧指令値のフィードバック項を設定するフィードバック項設定手段とを備える。そして、この制御装置において、フィードフォワードゲインおよびフィードバックゲインの適応ゲインは、原動機または入力軸の回転速度に応じて変更される。
このように、適応制御により自動的に調整されるフィードフォワードゲインやフィードバックゲインを用いて油圧指令値のフィードフォワード項やフィードバック項を設定することで、制御ゲインすなわちフィードフォワードゲインやフィードバックゲインの適合負荷を大幅に軽減することができる。ここで、適応制御によりフィードフォワードゲインやフィードバックゲインが調整される場合、フィードバックゲインやフィードバックゲインが収束することで所望の制御応答性が得られることになるが、原動機の回転速度が急変した場合には、原動機の回転速度変化により油圧式発進クラッチの特性(応答性)が変化し、油圧式発進クラッチの特性の変化にゲインの適応が追従しきれず、フィードバックゲインやフィードバックゲインの収束に時間を要してしまうおそれがある。この場合、単純に適応ゲインを大きくしても、フィードバックゲインやフィードバックゲインがオーバーシュートしてしまい、所望の制御応答性が得られなくなってしまうおそれがある。これに対して、適応ゲインを原動機または入力軸の回転速度に応じて変更することで、スリップ制御の実行中に原動機の回転速度変化に起因して油圧式発進クラッチの特性が変化しても、フィードフォワードゲインおよびフィードバックゲインを速やかに収束させることができる。この結果、この制御装置では、フィードフォワードゲインおよびフィードバックゲインの適合負荷を軽減しつつ、スリップ制御の応答性をより向上させることが可能となる。なお、「発進クラッチ」とは、係合時(完全係合時およびスリップ係合時)に原動機からの動力(トルク)を変速機の入力軸(車軸側)に伝達可能とするものを意味し、トルクコンバータ等の流体伝動装置やダンパ機構と組み合わされるものであってもよく、ダンパ機構のみと組み合わされるものや単独で用いられるもの(トルクコンバータ等の流体伝動装置と組み合わされないもの)であってもよい。
また、前記フィードバック項設定手段は、前記目標スリップ速度と予め定められた規範モデルとから得られるモデル回転速度差と、前記回転速度差と、前記フィードバックゲインとに基づいて前記フィードバック項を設定するものであってもよい。これにより、フィードバック項を油圧式発進クラッチの特性により合致したものとなるように調整することが可能となる。
更に、前記制御装置は、少なくとも前記モデル回転速度差と、適応制御により調整される第2フィードフォワードゲインとに基づいて前記油圧指令値の第2フィードフォワード項を設定する第2フィードフォワード項設定手段を備えてもよく、前記第2フィードフォワードゲインの適応ゲインは、前記原動機または前記入力軸の回転速度に応じて変更されてもよい。これにより、油圧指令値を油圧式発進クラッチの特性により合致したものとなるように設定することが可能となる。
また、前記制御装置は、前記フィードバック項に並列フィードフォワード補償を施して該フィードバック項の設定に際して用いられる補正量を生成する補正量生成手段を備えてもよい。このように、フィードフォワードゲインやフィードバックゲインの適応制御と、並列フィードフォワード補償とを組み合わせることにより、フィードフォワードゲインやフィードバックゲインが収束するまでの間や過渡状態における油圧指令値をより適正に設定すると共に、フィードフォワードゲインやフィードバックゲインの適応制御をより単純化することが可能となる。
更に、前記フィードフォワードゲインおよび前記フィードバックゲインの適応ゲインは、前記原動機または前記入力軸の回転速度と、前記油圧式発進クラッチへの作動油の温度とに応じて変更されてもよい。これにより、適応ゲインをより適正なものとすることが可能となる。
本発明による発進クラッチの制御方法は、
車両の原動機と変速機の入力軸との回転速度差が前記車両の状態に応じた目標スリップ速度に一致するように油圧式発進クラッチへの油圧指令値を設定し、該油圧指令値に基づいて前記油圧式発進クラッチを制御する発進クラッチの制御方法において、
前記目標スリップ速度と、適応制御により調整されるフィードフォワードゲインとに基づいて前記油圧指令値のフィードフォワード項を設定すると共に、前記回転速度差と、適応制御により調整されるフィードバックゲインとに基づいて前記油圧指令値のフィードバック項を設定するステップを含み、
前記フィードフォワードゲインおよび前記フィードバックゲインの適応ゲインを前記原動機または前記入力軸の回転速度に応じて変更するものである。
この方法によれば、フィードフォワードゲインおよびフィードバックゲインの適合負荷を軽減しつつ、スリップ制御の応答性をより向上させることが可能となる。
本発明による発進クラッチの制御装置を含む車両である自動車10の概略構成図である。 ロックアップクラッチ28を含む動力伝達装置20の概略構成図である。 変速ECU21のロックアップ制御モジュール211による油圧指令値Upの設定手順を示す制御ブロック図である。 ロックアップ制御モジュール211により実行されるスリップ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 並列フィードフォワード補償の有無による周波数特性の変化を示すボード線図である。 補償量PFCを生成する並列フィードフォワード補償器のブロック線図である。 並列フィードフォワード補償器のゲインをエンジン回転数が比較的低い状態に適合させた場合の周波数特性を示すボード線図である。 PFCゲイン設定マップの一例を示す説明図である。
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による発進クラッチの制御装置を含む車両である自動車10の概略構成図である。同図に示す自動車10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を出力する原動機としてのエンジン(内燃機関)12や、エンジン12を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)16、エンジン12に接続されると共にエンジン12からの動力を左右の駆動輪DWに伝達する動力伝達装置20等を含む。動力伝達装置20は、トランスミッションケース22や、発進装置23、有段式の自動変速機30、油圧制御装置50、これらを制御する変速用電子制御ユニット(以下、「変速ECU」という)21等を有する。
エンジンECU14は、図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。図1に示すように、エンジンECU14には、アクセルペダル91の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Accや車速センサ99からの車速V、クランクシャフトの回転位置を検出する図示しないクランクシャフトポジションセンサといった各種センサ等からの信号、ブレーキECU16や変速ECU21からの信号等が入力され、エンジンECU14は、これらの信号に基づいて電子制御式のスロットルバルブ13や図示しない燃料噴射弁および点火プラグ等を制御する。また、エンジンECU14は、クランクシャフトポジションセンサにより検出されるクランクシャフトの回転位置に基づいてエンジン12の回転数(回転速度)Neを算出すると共に、例えば回転数Neや図示しないエアフローメータにより検出されるエンジン12の吸入空気量あるいはスロットルバルブ13のスロットル開度THR、予め定められたマップあるいは計算式に基づいてエンジン12から出力されているトルクの推定値であるエンジントルクTeを算出する。
ブレーキECU16も図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。図1に示すように、ブレーキECU16には、ブレーキペダル93が踏み込まれたときにマスタシリンダ圧センサ94により検出されるマスタシリンダ圧や車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14や変速ECU21からの信号等が入力され、ブレーキECU16は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。
動力伝達装置20を制御する変速ECU21も図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を備える。図1に示すように、変速ECU21には、アクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Accや車速センサ99からの車速V、複数のシフトレンジの中から所望のシフトレンジを選択するためのシフトレバー95の操作位置を検出するシフトレンジセンサ96からのシフトレンジSR、油圧制御装置50の作動油の油温Toilを検出する油温センサ55、自動変速機30の入力回転数(タービンランナ25または自動変速機30の入力軸31の回転速度)Ninを検出する回転数センサ33(図2参照)といった各種センサ等からの信号、エンジンECU14やブレーキECU16からの信号等が入力され、変速ECU21は、これらの信号に基づいて発進装置23や自動変速機30、すなわち油圧制御装置50を制御する。
動力伝達装置20に含まれる発進装置23は、図2に示すように、入力部材としてのフロントカバー18を介してエンジン12のクランクシャフト16に連結される入力側流体伝動要素としてのポンプインペラ24や、タービンハブを介して自動変速機30の入力軸31に固定される出力側流体伝動要素としてのタービンランナ25、ポンプインペラ24およびタービンランナ25の内側に配置されてタービンランナ25からポンプインペラ24への作動油の流れを整流するステータ26、ステータ26の回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ26c、タービンハブに連結されたダンパ機構27、発進クラッチとしてのロックアップクラッチ28等を含む。
ポンプインペラ24、タービンランナ25およびステータ26は、ポンプインペラ24とタービンランナ25との回転速度差が大きいときにはステータ26の作用によりトルク増幅機として機能し、両者の回転速度差が小さくなると流体継手として機能する。ただし、発進装置23において、ステータ26やワンウェイクラッチ26cを省略し、ポンプインペラ24およびタービンランナ25を流体継手として機能させてもよい。また、ダンパ機構27は、例えば、ロックアップクラッチ28に連結される入力要素や、複数の第1弾性体を介して入力要素に連結される中間要素、複数の第2弾性体を介して中間要素に連結されると共にタービンハブに固定される出力要素等を含む。ダンパ機構27は、ロックアップクラッチ28の係合時にフロントカバー18とタービンハブ(入力軸31)との間で振動を減衰する。
ロックアップクラッチ28は、ポンプインペラ24とタービンランナ25、すなわちフロントカバー18とタービンハブに固定された自動変速機30の入力軸31とを機械的に(ダンパ機構27を介して)連結するロックアップおよび当該ロックアップの解除を選択的に実行するものである。本実施形態において、ロックアップクラッチ28は、油圧式の多板摩擦クラッチとして構成され、フロントカバー18により軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン280と、複数の摩擦係合プレート281と、ロックアップピストン280よりもダンパ機構27側に位置するようにフロントカバー18に対して固定されてロックアップピストン280と共に係合側油室28aを画成する環状のフランジ部材(油室画成部材)285とを有する。複数の摩擦係合プレート281には、フロントカバー18に固定されたクラッチハブに嵌合される相手板と、ダンパ機構27の入力要素に連結されるクラッチドラムに嵌合される摩擦板とが含まれる。そして、ロックアップクラッチ28は、係合側油室28a内の油圧を高めて複数の摩擦係合プレートを圧着させるようにロックアップピストン280をフロントカバー18に向けて移動させることで係合する。なお、ロックアップクラッチ28は、ロックアップピストンを含む油圧式の単板摩擦クラッチとして構成されてもよい。また、発進装置23からポンプインペラ24、タービンランナ25、およびステータ26等を省略し、ロックアップクラッチ28をダンパ機構27のみと組み合わされるものや単独で用いられるもの(流体伝動装置と組み合わされないもの)としてもよい。
自動変速機30は、変速段を複数段階に変更しながら入力軸31に伝達された動力を図示しない出力軸に伝達可能なものであり、複数の遊星歯車機構や、入力軸31から出力軸までの動力伝達経路を変更するための複数のクラッチ、ブレーキ、ワンウェイクラッチ等を含む。そして、自動変速機30の出力軸は、図示しないギヤ機構および差動機構を介して駆動輪DWに連結される。また、複数のクラッチやブレーキは、油圧制御装置50からの油圧により係脱される。
油圧制御装置50は、発進装置23や自動変速機30への油圧を生成するために、図示しないオイルポンプからの作動油を調圧してライン圧PLを生成するプライマリレギュレータバルブや、例えばプライマリレギュレータバルブのドレン圧を調圧してセカンダリ圧Psecを生成するセカンダリレギュレータバルブ、ライン圧PLを調圧して一定のモジュレータ圧Pmodを生成するモジュレータバルブ、例えばモジュレータ圧Pmodをアクセル開度Accあるいはスロットルバルブ13の開度THRに応じて調圧してプライマリレギュレータバルブへの信号圧を生成するリニアソレノイドバルブ、シフトレバー95の操作位置に応じて作動油を自動変速機30の複数のクラッチやブレーキに供給可能とするマニュアルバルブ、それぞれマニュアルバルブからの作動油(ライン圧PL)を調圧して対応するクラッチやブレーキに出力可能な複数のリニアソレノイドバルブ等を含む(何れも図示省略)。
また、油圧制御装置50は、印加される電流値に応じて例えばモジュレータ圧Pmodを調圧してロックアップソレノイド圧Psluを生成するロックアップソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)SLUと、ロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluを信号圧として作動し、上記セカンダリ圧Psecを調圧してロックアップクラッチ28へのロックアップ圧Plupを生成するロックアップコントロールバルブ51と、ロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluを信号圧として作動し、ロックアップコントロールバルブ51からロックアップクラッチ28の係合側油室28aへのロックアップ圧Plupの供給を許容・規制するロックアップリレーバルブ52とを含む。
本実施形態において、ロックアップソレノイドバルブSLUは、印加される電流値が比較的小さいときにはロックアップソレノイド圧Psluを値0に設定し(ロックアップソレノイド圧Psluを生成せず)、印加される電流値がある程度大きくなると、それ以後、電流値が大きいほどロックアップソレノイド圧Psluを高く設定する。また、ロックアップコントロールバルブ51は、ロックアップソレノイドバルブSLUによりロックアップソレノイド圧Psluが生成されるときにロックアップソレノイド圧Psluが低いほど元圧であるセカンダリ圧Psecを減圧してロックアップ圧Plupを低く設定し、ロックアップソレノイド圧Psluが予め定められたロックアップ係合圧P1以上になるとセカンダリ圧Psecをそのままロックアップ圧Plupとして出力する。更に、ロックアップリレーバルブ52は、ロックアップソレノイドバルブSLUからロックアップソレノイド圧Psluが供給されないときに発進装置23の流体伝動室23aに上記セカンダリ圧Psecよりも低く調圧された循環圧Pcirを供給し、かつロックアップソレノイドバルブSLUからロックアップソレノイド圧Psluが供給されるときに流体伝動室23aに循環圧Pcirを供給すると共にロックアップクラッチ28の係合側油室28aにロックアップコントロールバルブ51からのロックアップ圧Plupを供給するように構成されている。
これにより、ロックアップソレノイドバルブSLUによりロックアップソレノイド圧Psluが生成されないときには、ロックアップリレーバルブ52から流体伝動室23a内に作動油(潤滑圧Pcir)が供給されると共にロックアップピストン280とフロントカバー18との間に形成される油路に当該作動油が流入するのに対し、係合側油室28a内に作動油(ロックアップ圧Plup)が供給されないことから、ロックアップクラッチ28はロックアップを実行することなく解放される。一方、ロックアップソレノイドバルブSLUにより生成されたロックアップソレノイド圧Psluがロックアップコントロールバルブ51およびロックアップリレーバルブ52に供給されるときには、ロックアップリレーバルブ52から流体伝動室23a内に作動油すなわち潤滑圧Pcirが供給されると共に、ロックアップコントロールバルブ51により生成されたロックアップ圧Plupがロックアップリレーバルブ52からロックアップクラッチ28の係合側油室28aに供給される。従って、ロックアップ圧Plupが潤滑圧Pcirよりも高くなると、ロックアップピストン280がフロントカバー18に向けて移動し、ロックアップソレノイド圧Psluがロックアップ係合圧P1以上になってロックアップ圧Plupがセカンダリ圧Psecに一致すると、ロックアップクラッチ28が完全係合してロックアップが完了することになる。
上述の油圧制御装置50に含まれる複数のリニアソレノイドバルブや、ロックアップソレノイドバルブSLU、図示しない他のソレノイドバルブ(オンオフソレノイドバルブ)等は、変速ECU21により制御される。そして、変速ECU21には、図2に示すように、CPUやROM,RAMといったハードウエアと、ROMにインストールされた制御プログラムといったソフトウェアとの協働により、変速制御モジュール210や、ロックアップ制御モジュール211が機能ブロックとして構築される。
変速制御モジュール210は、予め定められた図示しない変速線図からアクセル開度Acc(あるいはスロットルバルブ13の開度THR)および車速Vに対応した目標変速段を取得すると共に、現変速段から目標変速段への変更に伴って係合されるクラッチやブレーキに対応したリニアソレノイドバルブへの係合圧指令値と、現変速段から目標変速段への変更に伴って解放されるクラッチやブレーキに対応したリニアソレノイドバルブへの解放圧指令値を設定する。また、変速制御モジュール210は、現変速段から目標変速段への変更中や目標変速段の形成後に、係合されているクラッチやブレーキに対応したリニアソレノイドバルブへの保持圧指令値を設定する。
ロックアップ制御モジュール211は、上述のロックアップソレノイドバルブSLUに対する油圧指令値Upを設定するものである。ロックアップ制御モジュール211は、予め定められたロックアップ条件が成立した際に、ロックアップクラッチ28によりロックアップが実行されるように油圧指令値Upを設定し、図示しない補機バッテリからロックアップソレノイドバルブSLUのソレノイド部に当該油圧指令値Upに応じた電流が印加されるように図示しない駆動回路を制御する。また、ロックアップ制御モジュール211は、予め定められたスリップ制御実行条件が成立すると、ロックアップクラッチ28の半係合により入力部材としてのフロントカバー18(エンジン12)と自動変速機30の入力軸31との回転速度差ΔN(スリップ速度)を自動車10の状態に応じた目標スリップ速度u*に一致させるスリップ制御を実行する。このようなスリップ制御をロックアップクラッチ28のロックアップに際して実行することで、ロックアップクラッチ28のトルク容量を徐々に増加させて、ロックアップに伴うトルク変動に起因した振動の発生を良好に抑制することができる。また、自動車10の加速中や減速時等にロックアップクラッチ28にスリップを生じさせるようにスリップ制御を実行することで、動力の伝達効率やエンジン12の燃費を向上させることができる。
次に、上記自動車10におけるロックアップクラッチ28のスリップ制御について説明する。
図3は、変速ECU21のロックアップ制御モジュール211による油圧指令値Upの設定手順を示す制御ブロック図である。図3に示すように、スリップ制御の実行に際して、ロックアップ制御モジュール211は、目標スリップ速度u*と、適応制御(単純適応制御)により調整される第1フィードフォワードゲインKff1とに基づいて油圧指令値Upの第1フィードフォワード項FF1を設定すると共に、目標スリップ速度u*と予め定められた規範モデルとから得られるモデル回転速度差ymと、適応制御(単純適応制御)により調整される第2フィードフォワードゲインKff2とに基づいて油圧指令値Upの第2フィードフォワード項FF2を設定する。また、ロックアップ制御モジュール211は、上記モデル回転速度差ymと、フィードバックされる回転速度差ΔNと、適応制御(単純適応制御)により調整されるフィードバックゲインKffbとに基づいて油圧指令値Upのフィードバック項FBを設定し、第1および第2フィードフォワード項FF1,FF2とフィードバック項FBとを加算することにより油圧指令値Upを設定する。更に、本実施形態のロックアップ制御モジュール211は、フィードバック項FBに並列フィードフォワード補償を施して補正量としての並列フィードフォワード補償量(以下、単に「補償量」という)PFCを生成し、フィードバック項FBの設定に際して補償量PFCによりフィードバック項FBを補正する。
図4は、ロックアップ制御モジュール211により実行されるスリップ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。同図に示すスリップ制御ルーチンは、例えば自動車10の運転者によりアクセルペダル91が踏み込まれた状態でロックアップクラッチ28にスリップを生じさせる際に、ロックアップ制御モジュール211により所定時間おきに繰り返し実行されるものである。図4のスリップ制御ルーチンの開始に際して、ロックアップ制御モジュール211(CPU)は、アクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Acc、エンジンECU14からのエンジン12の回転数Ne、回転数センサ33からの入力回転数Nin、油温センサ55からの油温Toil(ロックアップクラッチ28への作動油の温度)といった制御に必要なデータの入力処理を実行する(ステップS100)。
ステップS100の入力処理の後、ロックアップ制御モジュール211は、ステップS100にて入力したアクセル開度Accおよびエンジン12の回転数Neに対応した目標スリップ速度u*を設定する(ステップS110)。本実施形態では、アクセル開度Accおよびエンジン12の回転数Neと目標スリップ速度u*との関係が予め定められて図示しない目標スリップ速度設定マップとして変速ECU21のROMに記憶されている。そして、ステップS110では、与えられたアクセル開度Accおよび回転数Neに対応する目標スリップ速度u*が当該目標スリップ速度設定マップから導出・設定される。なお、目標スリップ速度u*は、スロットルバルブ13の開度THRと回転数Neとに基づいて設定されてもよく、アクセル開度Accおよび回転数Neに加えて更に他のパラメータに基づいて設定されてもよく、アクセル開度Accおよび回転数Ne以外のパラメータに基づいて設定されてもよい。
ステップS110にて目標スリップ速度u*を設定した後、ロックアップ制御モジュール211は、目標スリップ速度u*と上述の規範モデルとに基づいてモデル回転速度差ymを算出する(ステップS120)。本実施形態では、例えばプラントとしてのロックアップクラッチ28が一次遅れ要素であるとみなされ、規範モデルとして一次遅れ要素が用いられる。そして、ステップS120では、次式(1)に従ってモデル回転速度差ymが算出される。ただし、式(1)において、“Tm”は、規範モデルにおける時定数であり、“dt”は、スリップ制御ルーチンの実行周期であり、“前回ym”は、本ルーチンの前回実行時に設定されたモデル回転速度差であって図示しないRAMに格納されたものである。なお、規範モデルとして例えば二次遅れ要素といった一次遅れ要素以外のものを用いてもよいことはいうまでもない。更に、ロックアップ制御モジュール211は、次式(2)に従い、ステップS120にて算出したモデル回転速度差ymからステップS100にて入力した回転数NeおよびNinに基づく回転速度差ΔNを減じることにより、偏差eを算出する(ステップS130)。
ym=前回ym/Tm+(u*-前回ym)/Tm …(1)
e=ym-ΔN=ym-(Ne-Nin) …(2)
次いで、ロックアップ制御モジュール211は、ステップS100に入力したエンジン12の回転数Neおよび油温Toilに基づいて、上述のように適応制御により調整される第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2の適応ゲインΓff1,Γff2と、同様に適応制御により調整されるフィードバックゲインFBの適応ゲインΓfbとを設定する(ステップS140)。ここで、適応制御により第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbが調整される場合、これらのゲインが収束することで所望の制御応答性が得られることになるが、エンジン12の回転数Neが急変した場合には、エンジン12の回転数変化によりロックアップクラッチ28の特性(応答性)が変化し、ロックアップクラッチ28の特性の変化に各ゲインの適応が追従しきれず、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbの収束に時間を要してしまうおそれがある。そして、この場合、単純に適応ゲインΓff1,Γff2,Γfbを大きくしても、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbがオーバーシュートしてしまい、所望の制御応答性が得られなくなってしまうおそれがある。
これを踏まえて、本実施形態では、適応ゲインΓff1,Γff2,Γfbがエンジン12の回転数Neに応じて変更される。すなわち、本実施形態では、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2ならびにフィードバックゲインFBごとに、エンジン12の回転数Neおよび油温Toilと適応ゲインΓff1,Γff2またはΓfbとの関係が予め定められて図示しない適応ゲイン設定マップとして変速ECU21のROMに記憶されている。そして、ステップS140では、与えられた回転数Neおよび油温Toilに対応する適応ゲインΓff1,Γff2およびΓfbがこれらの適応ゲイン設定マップから導出・設定される。これにより、スリップ制御の実行中にエンジン12の回転数変化に起因してロックアップクラッチ28の特性が変化しても、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbを速やかに収束させることが可能となる。
本実施形態において、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2ならびにフィードバックゲインFBに対応した適応ゲイン設定マップは、実験・解析を経て、それぞれ適応ゲインΓff1,Γff2またはΓfbを回転数Neが高いほど大きく、かつ油温Toilが低いほど大きく設定するように予め作成される。ただし、適応ゲイン設定マップの特性(傾向)は、ロックアップクラッチ28等の特性に応じて定められるものであり、上述のような傾向以外の傾向をもつように作成され得ることはいうまでもない。また、エンジン12の回転数Neに基づいて適応ゲインΓff1,Γff2およびΓfbを設定する代わりに、適応ゲイン設定マップを入力回転数Ninおよび油温Toilと適応ゲインΓff1,Γff2またはΓfbとの関係を規定するように作成し、入力回転数Ninに基づいて適応ゲインΓff1,Γff2およびΓfbを設定してもよい。
ステップS140にて適応ゲインΓff1,Γff2およびΓfbを設定した後、ロックアップ制御モジュール211は、次式(3)に従って適応ゲインΓff1と目標スリップ速度u*と偏差eとから第1フィードフォワードゲインKff1を設定すると共に、次式(4)に従って適応ゲインΓff2とモデル回転速度差ymと偏差eとから第2フィードフォワードゲインKff2を設定する(ステップS150)。更に、次式(4)に従って適応ゲインΓfbと偏差eとからフィードバックゲインKfbを設定する(ステップS150)。これにより、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2ならびにフィードバックゲインKfbが適応制御により自動的に調整され、その結果、制御ゲインすなわち第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2ならびにフィードバックゲインKfbの適合負荷を大幅に軽減することが可能となる。なお、式(3)〜(5)における“前回Kff1”、“前回Kff2”および“前回Kfb”は、本ルーチンの前回実行時に設定された第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbであって、それぞれ図示しないRAMに格納されたものである。また、規範モデルとして二次遅れ要素が用いられた場合、第2フィードフォワード項FF2は、当該規範モデルの状態変数(内部変数)に基づいて設定されることになる。
Kff1=前回Kff1+Γff1×u*×e …(3)
Kff2=前回Kff2+Γff2×ym×e …(4)
Kfb=前回Kfb+Γfb×e×e …(5)
上記式(3)〜(5)は、何れも比較的単純な数式であり、これらの式(3)〜(5)を用いて第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2ならびにフィードバックゲインKfbを設定すれば、変速ECU21における演算負荷を大幅に軽減することができる。ただし、上記式(3)〜(5)により第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2ならびにフィードバックゲインKfbを設定した場合、スリップ制御の実行中に油圧指令値Upが短い周期で変動すると、油圧指令値Upの変動と、スリップ制御に起因したエンジン12の回転数Neの変動との間に位相差を生じてしまい、位相差が大きくなるほどスリップ制御の安定性が損なわれてしまう。すなわち、例えば油圧指令値Upを正弦波状に周期的に変動させた場合、図5において破線で示すように、油圧指令値Upの変動の周波数が大きいほど(周期が短いほど)、油圧指令値Upに対するエンジン12の回転数Neの振幅比(Ne/Up)が低下すると共に、油圧指令値Upの変動に対する回転数Neの変動の位相の遅れが大きくなってしまい、スリップ制御による回転数Neの変動の油圧指令値Upに対する応答性が悪化してしまう。
これを踏まえて、プラントとしてのロックアップクラッチ28に、いわゆる概強正実性を付与すべく、ロックアップ制御モジュール211は、本ルーチンの前回実行時に設定されてRAMに格納されたフィードフォワード項FBである前回フィードフォワード項FBに並列フィードフォワード補償を施して当該フィードバック項FBすなわちエンジン12の回転数Neに対する補償量(補正量)PFCを生成する(ステップS160)。補償量PFCを生成する並列フィードフォワード補償器としては、任意のものを採用することができるが、例えばプラントとしてのロックアップクラッチ28が次式(6)に示すような伝達関数Gcl(s)を有する二次遅れ要素であるとみなした場合には、並列フィードフォワード補償器の伝達関数Gpfc(s)として次式(7)に示すものを選択することが可能である。そして、このような並列フィードフォワード補償器を用いて図5において二点鎖線で示すような特性の補償量PFCを生成し、当該補償量PFCによりフロントカバー18(エンジン12)と自動変速機30の入力軸31との回転速度差ΔNを補正することで、図5において実線で示すように、油圧指令値Upの変動の周波数が比較的大きくなっても、油圧指令値Upに対する回転数Neの振幅比(Ne/Up)を概ね一定に保つと共に、油圧指令値Upの変動に対する回転数Neの変動の見かけ上の位相遅れを大幅に(例えば90°以内に)抑制することが可能となる。なお、式(6)における“Kcl”および式(7)における“Kpfc”は、各伝達関数のゲインであり、式(7)における“τ”は、当該伝達関数の時定数である。また、図6に補償量PFCを生成する並列フィードフォワード補償器のブロック線図を示す。
Gcl(s)=Kpfc/{(s+1)・(s+1)}…(6)
Gpfc(s)=Kpfc/(τ・s+1)-Kpfc/{(τ・s+1)・(τ・s+1)} …(7)
上記式(7)に示す伝達関数Gpfc(s)を有する並列フィードフォワード補償器が用いられる場合、ステップS160では、伝達関数Gpfc(s)の状態変数に基づく演算処理が実行され、それにより補償量PFCが生成される。ここで、式(7)に示す伝達関数Gpfc(s)のゲインKpfcを例えばエンジン12の回転数Neが比較的低い状態(例えば800〜1000rpm程度)に適合された一定の値とした場合、回転数Neが比較的低くければ、補償量PFCによるフィードバック項FBの補正を行うことで、図7において一点鎖線で示すように、油圧指令値Upの変動の周波数が大きくなっても(周期が短くなっても)、エンジン12の回転数変動の振幅をある程度大きく保つと共に、油圧指令値Upの変動に対する回転数Neの変動の見かけ上の位相遅れを抑制することができる。しかしながら、このようにゲインKpfcをエンジン12の回転数Neが比較的低い状態に適合された一定の値とすると、図7において二点鎖線で示すように、油圧指令値Upが比較的小さい周波数(比較的長い周期)で変動した際に、回転速度差ΔNが必要以上に補正されることで、回転数Neの変動の振幅が大きくなると共に、油圧指令値Upの変動とエンジン12の回転数Neの変動との間の位相差が大きくなってしまうおそれがある。また、油圧指令値Upが比較的高い周波数(比較的短い周期)で変動した際にも、回転速度差ΔNが必要以上に補正されることで、回転数変動の振幅が大きくなり過ぎるおそれもある。
このため、本実施形態では、並列フィードフォワード補償器すなわち伝達関数Gpfc(s)のゲインKpfcがエンジン12の回転数Neに応じて変更される。すなわち、本実施形態では、エンジン12の回転数Neおよび油温ToilとゲインKpfcとの関係が予め定められて図示しないPFCゲイン設定マップとして変速ECU21のROMに記憶されている。そして、ステップS160では、与えられた回転数Neおよび油温Toilに対応するゲインKpfcが当該PFCゲイン設定マップから導出・設定される。本実施形態において、PFCゲイン設定マップは、実験・解析を経て、図8に示すように、ゲインKpfcを回転数Neが高いほど大きく、かつ油温Toilが低いほど大きく設定するように予め作成される。
これにより、エンジン12の回転数Neに応じた並列フィードフォワード補償を実行することが可能となり、フィードバック項FBをより適正に設定してスリップ制御の安定性をより一層向上させることができる。また、上述のような特性のPFCゲイン設定マップを用いれば、エンジン12の回転数Neの高低に拘わらず、油圧指令値Upが比較的短い周期で変動した際に油圧指令値Upの変動とエンジン12の回転数Neの変動との間における見かけ上の位相差を小さくしつつ、油圧指令値Upが比較的長い周期で変動した際に、回転速度差ΔNがなるべく補正されないようにしてロックアップクラッチ28の制御応答性を向上させることが可能となる。ただし、PFCゲイン設定マップの特性(傾向)は、ロックアップクラッチ28等の特性に応じて定められるものであり、上述のような傾向以外の傾向をもつように作成され得ることはいうまでもない。また、エンジン12の回転数Neに基づいてゲインKpfcを設定する代わりに、PFCゲイン設定マップを入力回転数Ninおよび油温ToilとゲインKpfcとの関係を規定するように作成し、入力回転数Ninに基づいてゲインKpfcを設定してもよい。更に、上述のように伝達関数Gpfc(s)のゲインKpfcをエンジン12の回転数Ne(または入力回転数Nin)および油温Toilに応じて変更する代わりに、回転数Ne(または入力回転数Nin)および油温Toilに応じて並列フィードフォワード補償における伝達関数Gpfc(s)自体を変更してもよい。すなわち、プラントとしてのロックアップクラッチ28の応答性を示す伝達関数Gcl(s)を例えばエンジン12の回転数Ne(または入力回転数Nin)が比較的低い状態と比較的高い状態とで変更することが好ましい場合には、回転数Ne等に応じて並列フィードフォワード補償における伝達関数Gpfc(s)自体を変更すると好ましい。
ステップS160にて補償量PFCを生成した後、ロックアップ制御モジュール211は、目標スリップ速度u*に第1フィードフォワードゲインKff1を乗じて第1フィードフォワード項FF1を設定すると共に、モデル回転速度差ymに第2フィードフォワードゲインKff2を乗じて第2フィードフォワード項FF2を設定する(ステップS170)。更に、ステップS170において、ロックアップ制御モジュール211は、ステップS130にて算出した偏差e(=Ne−Nin)から補償量PFCを減じた値にフィードバックゲインKfbを乗じてフィードバック項FBを設定する(ステップS170)。これにより、回転速度差ΔNが補償量PFCにより補正され、当該補償量PFCにより補正されたフィードバック項FBが得られる。そして、ロックアップ制御モジュール211は、第1フィードフォワード項FF1,FF2およびフィードバック項FBの和を油圧指令値Upに設定し(ステップS180)、当該油圧指令値Upに基づいてロックアップソレノイドバルブSLUのソレノイド部への電流を設定する図示しない駆動回路を制御する(ステップS190)。その後、ロックアップ制御モジュール211は、本ルーチンの次の実行タイミングが到来すると、再度ステップS100以降の処理を実行する。
以上説明したように、ロックアップクラッチ28の制御装置である変速ECU21(ロックアップ制御モジュール211)は、エンジン12と自動変速機30の入力軸31との回転速度差ΔNを目標スリップ速度u*に一致させるスリップ制御を実行するものであり、目標スリップ速度u*と、適応制御により調整される第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2とに基づいて油圧指令値Upの第1および第2フィードフォワード項FF1,FF2を設定すると共に、エンジン12と自動変速機30の入力軸31との回転速度差ΔNと、適応制御により調整されるフィードバックゲインKfbとに基づいて油圧指令値Upのフィードバック項FBを設定する(ステップS170)。そして、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2ならびにフィードバックゲインKfbの適応ゲインΓff1,Γff2,Γfbは、エンジン12の回転数Neに応じて変更される(ステップS140)。
このように、適応制御により自動的に調整される第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbを用いて油圧指令値Upの第1および第2フィードフォワード項FF1,FF2やフィードバック項FBを設定することで、制御ゲインすなわち第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbの適合負荷を大幅に軽減することができる。更に、適応ゲインΓff1,Γff2,Γfbをエンジン12の回転数Neに応じて変更することで、スリップ制御の実行中にエンジン12の回転数変化に起因してロックアップクラッチ28の特性が変化しても、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2ならびにフィードバックゲインKfbを速やかに収束させることができる。この結果、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2およびフィードバックゲインKfbの適合負荷を軽減しつつ、スリップ制御の応答性をより向上させることが可能となる。そして、上記実施形態のように、適応ゲインΓff1,Γff2,Γfbをエンジン12の回転数Ne(または入力回転数Nin)と、ロックアップクラッチ28への作動油の油温Toiとに応じて変更すれば、適応ゲインΓff1,Γff2,Γfbをより適正なものとすることができる。
また、上記実施形態のように、目標スリップ速度u*と予め定められた規範モデルとから得られるモデル回転速度差ymと、回転速度差ΔNと、フィードバックゲインKfbとに基づいてフィードバック項FBを設定すれば、フィードバック項FBをロックアップクラッチ28の特性により合致したものとなるように調整することが可能となる。
更に、上記実施形態のように、モデル回転速度差ymと、適応制御により調整される第2フィードフォワードゲインKff2とに基づいて油圧指令値Upの第2フィードフォワード項FF2を設定すると共に、第2フィードフォワードゲインKff2の適応ゲインΓff2をエンジン12の回転数Neに応じて変更すれば、油圧指令値Upをロックアップクラッチ28の特性により合致したものとなるように設定することが可能となる。
また、上記実施形態のように、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbの適応制御と、並列フィードフォワード補償とを組み合わせることにより、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbが収束するまでの間や過渡状態における油圧指令値Upをより適正に設定すると共に、第1および第2フィードフォワードゲインKff1,Kff2やフィードバックゲインKfbの適応制御をより単純化することが可能となる。
ここで、上記実施形態における主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、上記実施形態では、図4のステップS110〜S150の処理を実行して油圧指令値Upの第1および第2フィードフォワード項FF1,FF2やフィードバック項FBを設定する変速ECU21のロックアップ制御モジュール211が「フィードフォワード項設定手段」、「フィードバック項設定手段」、「第2フィードフォワード項設定手段」に相当し、図4のステップS160の処理を実行してフィードバック項FBの設定に際して用いられる補正量としての並列フィードフォワード補償量PFCを生成する変速ECU21のロックアップ制御モジュール211が「補正量生成手段」に相当する。
ただし、上記実施形態における主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施形態はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
本発明は、ロックアップクラッチの製造産業等において利用可能である。
10 自動車、12 エンジン、13 スロットルバルブ、14 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、15 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、16 クランクシャフト、18 フロントカバー、20 動力伝達装置、21 変速用電子制御ユニット(変速ECU)、22 トランスミッションケース、23 発進装置、23a 流体伝動室、24 ポンプインペラ、25 タービンランナ、26 ステータ、26c ワンウェイクラッチ、27 ダンパ機構、28 ロックアップクラッチ、28a 係合側油室、280 ロックアップピストン、281 摩擦係合プレート、285 フランジ部材、30 自動変速機、31 入力軸、33 回転数センサ、50 油圧制御装置、51 ロックアップコントロールバルブ、52 ロックアップリレーバルブ、55 油温センサ、91 アクセルペダル、92 アクセルペダルポジションセンサ、93 ブレーキペダル、94 マスタシリンダ圧センサ、95 シフトレバー、96 シフトレンジセンサ、99 車速センサ、210 変速制御モジュール、211 ロックアップ制御モジュール、SLU ロックアップソレノイドバルブ。

Claims (6)

  1. 車両の原動機と変速機の入力軸との回転速度差が前記車両の状態に応じた目標スリップ速度に一致するように油圧式発進クラッチへの油圧指令値を設定し、該油圧指令値に基づいて前記油圧式前記フィードフォワードゲインおよび前記フィードバックゲインの適応ゲインは、前記原動機または前記入力軸の回転速度に応じて変更されることを特徴とする発進クラッチの制御装置。
    クラッチを制御する発進クラッチの制御装置において、
    前記目標スリップ速度と、適応制御により調整されるフィードフォワードゲインとに基づいて前記油圧指令値のフィードフォワード項を設定するフィードフォワード項設定手段と、
    前記回転速度差と、適応制御により調整されるフィードバックゲインとに基づいて前記油圧指令値のフィードバック項を設定するフィードバック項設定手段と、
    を備え、
    前記フィードフォワードゲインおよび前記フィードバックゲインの適応ゲインは、前記原動機または前記入力軸の回転速度に応じて変更されることを特徴とする発進クラッチの制御装置。
  2. 請求項1に記載の発進クラッチの制御装置において、
    前記フィードバック項設定手段は、前記目標スリップ速度と予め定められた規範モデルとから得られるモデル回転速度差と、前記回転速度差と、前記フィードバックゲインとに基づいて前記フィードバック項を設定することを特徴とする発進クラッチの制御装置。
  3. 請求項2に記載の発進クラッチの制御装置において、
    少なくとも前記モデル回転速度差と、適応制御により調整される第2フィードフォワードゲインとに基づいて前記油圧指令値の第2フィードフォワード項を設定する第2フィードフォワード項設定手段を更に備え、
    前記第2フィードフォワードゲインの適応ゲインは、前記原動機または前記入力軸の回転速度に応じて変更されることを特徴とする発進クラッチの制御装置。
  4. 請求項1から3の何れか一項に記載の発進クラッチの制御装置において、
    前記フィードバック項に並列フィードフォワード補償を施して該フィードバック項の設定に際して用いられる補正量を生成する補正量生成手段を更に備えることを特徴とする発進クラッチの制御装置。
  5. 請求項1から3の何れか一項に記載の発進クラッチの制御装置において、
    前記フィードフォワードゲインおよび前記フィードバックゲインの適応ゲインは、前記原動機または前記入力軸の回転速度と、前記油圧式発進クラッチへの作動油の温度とに応じて変更されることを特徴とする発進クラッチの制御装置。
  6. 車両の原動機と変速機の入力軸との回転速度差が前記車両の状態に応じた目標スリップ速度に一致するように油圧式発進クラッチへの油圧指令値を設定し、該油圧指令値に基づいて前記油圧式発進クラッチを制御する発進クラッチの制御方法において、
    前記目標スリップ速度と、適応制御により調整されるフィードフォワードゲインとに基づいて前記油圧指令値のフィードフォワード項を設定すると共に、前記回転速度差と、適応制御により調整されるフィードバックゲインとに基づいて前記油圧指令値のフィードバック項を設定するステップを含み、
    前記フィードフォワードゲインおよび前記フィードバックゲインの適応ゲインを前記原動機または前記入力軸の回転速度に応じて変更する発進クラッチの制御方法。
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