以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る通電加熱装置の概略平面図である。図2は、図1におけるY2A方向及びY2B方向から見た前記通電加熱装置の側面図であり、図2(a)及び図2(b)はそれぞれ、Y2A方向及びY2B方向から見た通電加熱装置の側面図である。なお、図2(a)及び図2(b)ではそれぞれ、後述する位置決め部材の一部を二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
通電加熱装置1は、平板状に形成された板状ワーク(ブランク)に互いに離間する電極を取り付けて通電することにより板状ワークに生じるジュール熱によって板状ワークを加熱するものであり、本実施形態では、板状ワークに該板状ワークの加熱を補助するための加熱補助部材を重ね合わせて板状ワークを加熱するものである。
図1及び図2に示すように、通電加熱装置1は、所定の電気抵抗率及び所定の厚さを有する導電性の板状ワークW1に平板状に形成された所定の電気抵抗率及び所定の厚さを有する導電性の加熱補助部材W2を重ね合わせた状態で板状ワークW1を電気的に加熱するための通電手段10を備えている。
通電手段10は、互いに離間して平行に配置される一対の電極11と、電極11に直流又は交流の電力を供給する電源12と、電源12と電極11とを接続するケーブル13とを備え、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の両端部に一対の電極11を接触させて通電することにより板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱するように構成されている。
一対の電極11は、例えば銅などの材料を用いて略直方体状に形成されたバー電極であり、板状ワークW1及び加熱補助部材W2の通電方向に略直交する方向に延びている。一対の電極11は、一方の電極11aが正電極として使用され、他方の電極11bが負電極として使用される。
図1及び図2では、板状ワークW1に加熱補助部材W2を重ね合わせた状態で加熱補助部材W2に一対の電極11を直接接触させているが、板状ワークW1に一対の電極11を直接接触させるようにしてもよく、また、板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11をそれぞれ直接接触させるようにしてもよい。
通電加熱装置1は、図2に示すように、一対の電極11の上方にそれぞれ配置されるクランプ部材15を備えている。クランプ部材15は、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部16と、板状ワークW1及び加熱補助部材W2に接触する先端部を備えたピン部17と、クランプ基部15とピン部17とに結合されるスプリング18とを備え、クランプ基部16が、図示しないクランプ基部移動手段に連結されて矢印Z1に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
クランプ部材15は、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を挟んで電極11の反対側に配置され、前記クランプ基部移動手段によってクランプ基部16が下方へ移動されることにより下方へ移動される。板状ワークW1及び加熱補助部材W2に電極11を取り付ける際には、クランプ部材15が下方へ移動され、電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1及び加熱補助部材W2を挟持して取り付けることができる。これにより、比較的簡便な方法によって板状ワークW1及び加熱補助部材W2に電極11を確実に取り付けることができる。
通電加熱装置1は、板状ワークW1を所定位置に保持するための位置決め部材21,22を備えている。位置決め部材21は、略直方体状に形成されており、一対の電極11の外側に配置され、図2(a)に示すように、一対の電極11においてそれぞれ他方の電極11が配置される側と反対側の面に、電極11よりも上方へ延びるように結合されている。
これにより、位置決め部材21は、板状ワークW1の周縁部の一部、具体的には板状ワークW1の平行な対辺W1aを該位置決め部材21と係合させることで、電極11の延びる方向に直交する方向において板状ワークW1を所定位置に保持することができるようになっている。
位置決め部材21はまた、板状ワークW1に重ね合わせられる加熱補助部材W2の周縁部の一部、具体的には加熱補助部材W2の平行な対辺W2aを該位置決め部材21と係合させることで、電極11の延びる方向に直交する方向において加熱補助部材W2を所定位置に保持することができるようになっている。
通電加熱装置1では、一対の電極11にそれぞれ位置決め部材21が結合され、電極11と位置決め部材21とが別体で形成されているが、位置決め部材を電極によって形成し、電極と位置決め部材とを一体的に形成するようにしてもよい。
一方、位置決め部材22は、一対の電極11の内側に配置され、図1に示すように、一対の電極11の間において、板状ワークW1及び加熱補助部材W2の形状に応じて電極11の延びる方向に直交する方向に延びるように形成されている。本実施形態では、位置決め部材22は、平面視で逆V字状に形成され、長手方向の中央部が板状ワークW1の長手方向中央部と係合するように設けられると共に長手方向全体が加熱補助部材W2と係合するように設けられている。位置決め部材22は、図2(a)において二点鎖線で示すように、電極11よりも上方へ延びるように設けられている。
これにより、位置決め部材22は、板状ワークW1の周縁部の一部、具体的には板状ワークW1の平行な対辺W1aと略直交する方向に延びる辺W1bの中央部を該位置決め部材22と係合させることで、電極11の延びる方向において板状ワークW1を所定位置に保持することができるようになっている。
位置決め部材22はまた、板状ワークW1に重ね合わせられる加熱補助部材W2の周縁部の一部、具体的には加熱補助部材W2の平行な対辺W2aと略直角する方向に延びる辺W2bを該位置決め部材22と係合させることで、電極11の延びる方向において加熱補助部材W2を所定位置に保持することができるようになっている。
位置決め部材21は、電極11の延びる方向に延びるように形成され、位置決め部材22は、電極11の延びる方向に直交する方向に延びるように形成されているが、位置決め部材は、略円柱状に形成したピン等で構成するようにしてもよい。かかる場合には、後述するように、通電加熱装置1をプレス成形装置に組み込んだとき、成形型への板状ワークの挿入又は搬出を容易に行うことができる。
通電加熱装置1には、該通電加熱装置1に関連する構成を総合的に制御する制御ユニット(不図示)が備えられ、該制御ユニットは、通電手段10及び前記クランプ基部移動手段等の作動を制御することができるようになっている。なお、前記制御ユニットは、好ましくは、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
このようにして構成された通電加熱装置1では、クランプ部材15がそれぞれ上方へ移動された状態で、所定形状にそれぞれ形成された板状ワークW1と加熱補助部材W2とを用意し、位置決め部材21,22によって所定位置に位置決めされた状態で電極11上に板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせ、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に対してクランプ部材15を下方へ移動させることにより電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1及び加熱補助部材W2を密着させた状態で挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付け、その後に、両電極11間を通電して板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱することが行われる。
ここで、本実施形態に係る通電加熱装置1において加熱される板状ワークW1及び加熱補助部材W2について説明する。
図3は、前記通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材を説明するための説明図であり、図3(a)は、板状ワークを示し、図3(b)は、加熱補助部材を示している。
通電加熱装置1では、高張力鋼板などの所定の電気抵抗率及び所定の厚さを有する導電性の板状ワークW1が高張力鋼板などの所定の電気抵抗率及び所定の厚さを有する導電性の加熱補助部材W2とともに通電加熱によって加熱される。加熱される板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、同一又は異なる電気抵抗率を有すると共に同一又は異なる厚さを有するものが用いられる。
図3(a)に示す板状ワークW1は、これに限定されるものではないが、車体構成部材であるバンパレインを成形するためのものであり、通電加熱によって加熱された後に、所定形状にプレス成形される。板状ワークW1は、平行な対辺W1aと直交する方向において対辺W1a間の中央部に向かうにつれて通電方向に直交する方向の幅が大きくなるように、図3(a)において上下左右対称に6角形状に形成されている。板状ワークW1の両端部には、一対の電極11がそれぞれ取り付けられる電極取付部W1cが設けられ、板状ワークW1の長手方向中央部には、電極取付部W1cよりも通電方向に直交する方向の幅が大きい最大幅部W1dが設けられている。
一方、図3(b)に示す加熱補助部材W2は、板状ワークW1に応じて形成され、平行な対辺W2aと直交する方向において対辺W2a間の中央部に向かうにつれて通電方向に直交する方向の幅が小さくなるように、図3(b)において上下左右対称に6角形状に形成されている。加熱補助部材W2の長手方向中央部には、通電方向に直交する方向の幅が最も小さい最小幅部W2cが設けられている。板状ワークW1と加熱補助部材W2とは、板状ワークW1の最大幅部W1dの幅と加熱補助部材W2の最小幅部W2cの幅とが略同一となるように形成されている。
図4は、前記通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の通電方向に直交する断面における断面積と電気抵抗率の逆数との積について説明するための説明図であり、図4(a)は、板状ワークと加熱補助部材とを電極上に重ね合わせた状態を示し、図4(b)は、電極間の通電方向における正電極からの距離と板状ワーク及び加熱補助部材の通電方向に直交する断面における断面積と電気抵抗率の逆数との積との関係を示している。
なお、図4(b)では、板状ワークW1及び加熱補助部材W2についてそれぞれ通電方向に直交する断面における断面積と電気抵抗率の逆数との積をラインL1(破線)、ラインL2(一点鎖線)で示し、通電方向に直交する断面における板状ワークの断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和をラインL3(実線)で示している。
通電加熱装置1では、電極11上に板状ワークW1及び加熱補助部材W2が重ね合わせられて所定位置に配置される。板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、それらの対辺W1a,W2aがそれぞれ一致するように、且つ板状ワークW1の最大幅部W1dと加熱補助部材W2の最小幅部W2cとが一致するようにして重ね合わせられ、板状ワークW1及び加熱補助部材W2の両端部に電極11が取り付けられるように配置される。
図4(a)に示すように、電極11間の通電方向における正電極11aからの距離x1において、板状ワークW1、加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向の幅をy1,y2とし、板状ワークW1及び加熱補助部材W2がともに所定の厚さtを有するとすると、板状ワークW1,加熱補助部材W2の通電方向に直交する断面における断面積S1,S2はそれぞれ、(y1・t),(y2・t)によって表される。
また、板状ワークW1が所定の電気抵抗率ρ1を有し、加熱補助部材W2が所定の電気抵抗率ρ2を有するとすると、通電方向における正電極11aからの距離x1において、板状ワークW1の断面積S1と電気抵抗率ρ1の逆数との積は、(S1/ρ1)によって表され、加熱補助部材W2の断面積S2と電気抵抗率ρ2の逆数との積は、(S2/ρ2)によって表される。
重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2では、通電方向における正電極11aからの距離x1において、通電方向に直交する断面における板状ワークW1の断面積S1と電気抵抗率ρ1の逆数との積(S1/ρ1)と通電方向に直交する断面における加熱補助部材W2の断面積S2と電気抵抗率ρ2の逆数との積(S2/ρ2)との総和(S1/ρ1+S2/ρ2)は、(y1・t/ρ1+y2・t/ρ2)で表される。
図4(a)に示す板状ワークW1では、図4(b)に示すように、通電方向における正電極11aからの距離が大きくなるにつれて、電極11a,11b間の中央位置xcまでは、板状ワークW1の通電方向に直交する断面における断面積S1と電気抵抗率ρ1の逆数との積(S1/ρ1)は大きくなり、電極11a,11b間の中央位置xcを超えると、板状ワークW1の通電方向に直交する断面における断面積S1と電気抵抗率ρ1の逆数との積(S1/ρ1)は小さくなる(ラインL1参照)。
一方、図4(a)に示す加熱補助部材W2では、図4(b)に示すように、通電方向における正電極11aからの距離が大きくなるにつれて、電極11a,11b間の中央位置xcまでは、加熱補助部材W2の通電方向に直交する断面における断面積S2と電気抵抗率ρ2の逆数との積(S2/ρ2)は小さくなり、電極11a,11b間の中央位置xcを超えると、加熱補助部材W2の通電方向に直交する断面における断面積S2と電気抵抗率ρ2の逆数との積(S2/ρ2)は大きくなる(ラインL2参照)。
しかしながら、通電方向に直交する断面における板状ワークW1の断面積S1と電気抵抗率ρ1の逆数との積と通電方向に直交する断面における加熱補助部材W2の断面積S2と電気抵抗率ρ2の逆数との積との総和(S1/ρ1+S2/ρ2)は、通電方向における正電極11aからの距離に関わらず略一定となるように(ラインL3参照)板状ワークW1及び加熱補助部材W2が用意され重ね合わせられる。
通電方向に直交する断面における板状ワークW1の断面積S1と電気抵抗率ρ1の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積S2と電気抵抗率ρ2の逆数との積との総和(S1/ρ1+S2/ρ2)が、通電方向において略一定となるようにしたのは、通電方向において板状ワークW1の単位長さあたりの抵抗(ΔR1=ρ1・ΔL/S1)と加熱補助部材W2の単位長さあたりの抵抗(ΔR2=ρ2・ΔL/S2)とを並列回路とみなし、通電方向において板状ワークW1及び加熱補助部材W2の単位長さ当たりの合成抵抗を略一定にするためである。なお、前記ΔLは、通電方向の単位長さを表し、前記ΔR1,ΔR2はそれぞれ、通電方向における板状ワークW1及び加熱補助部材W2の単位長さ当たりの抵抗を表している。
本実施形態ではまた、板状ワークW1として、一対の電極取付部W1cを備えると共に電極取付部W1c間に電極取付部W1cよりも通電方向に直交する方向の幅が大きい最大幅部W1dを備えて所定形状に形成されたものが用いられ、板状ワークW1と加熱補助部材W2とは、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1と加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向の幅が略同一となるように用意され重ね合わせられる。
板状ワークW1と加熱補助部材W2とは、同一又は異なる電気抵抗率を有すると共に同一又は異なる厚さを有するものが用いられるが、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークの断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように用意され重ね合わせられる。
このように、本実施形態では、板状ワークW1に互いに離間する一対の電極11を取り付けて通電することにより板状ワークW1を加熱する通電加熱において、電極取付部W1cを備えると共に最大幅部W1dを備えて所定形状に形成された板状ワークW1と加熱補助部材W2とを用意し、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせ、一対の電極11を取り付けて、両電極11間を通電する。
その場合、板状ワークW1と加熱補助部材W2とは、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように用意され重ね合わせられる。
これにより、両電極11間を通電する際に、通電方向において重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の抵抗値を略一定にして板状ワークW1及び加熱補助部材W2から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、比較的簡単に板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができる。非矩形状に形成された板状ワークを加熱する場合においても、板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
また、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1と加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向の幅が略同一となるように板状ワークW1と加熱補助部材W2とが用意され重ね合わせられることにより、板状ワークW1の最大幅部W1dに重ね合わせられる加熱補助部材W2の最小幅部W2cが過度に加熱されることを抑制することができ、板状ワークW1の最大幅部W1dが過度に加熱されることを抑制することができる。
本実施形態ではまた、図3(a)に示す板状ワークW1に図3(b)に示す加熱補助部材W2を重ね合わせて通電することにより板状ワークW1を加熱し、板状ワークW1の加熱温度を実際に測定した。
図5は、実施例1として用いた通電加熱によって加熱される板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図であり、図5では、実施例1として用いた板状ワーク、加熱補助部材及び電極のみを示している。図5(a)は、板状ワーク、加熱補助部材及び電極の配置を示す平面図、図5(b)は、図5(a)においてY5B方向から見た板状ワーク、加熱補助部材及び電極の側面図を示している。
板状ワークW1及び加熱補助部材W2として、同一の電気抵抗率を有するとともに同一の厚さ1.6mmを有する冷間圧延高張力鋼板SPFC440を用い、図5(a)に示すように、長さが共に280mmであるものを用いた。板状ワークW1は、両端部の幅が22mmであり、中央部に向かうにつれて幅が大きくなり、中央部の幅が44mmであるものを用いた。加熱補助部材W2は、両端部の幅が66mmであり、中央部に向かうにつれて幅が小さくなり、中央部の幅が44mmであるものを用いた。
板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、通電加熱装置1において、図5(a)に示すように、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように、且つ、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて板状ワークW1と加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向の中央部が一致するように板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせた。
板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせた後に、電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1及び加熱補助部材W2を挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に電極11を取り付けて両電極11間を通電し、板状ワークW1を加熱した。通電は、直流電源を用い、電流値を5.2kAに設定して10秒間行った。
そして、通電加熱によって板状ワークW1を10秒間加熱した直後に、熱電対を用いて板状ワークW1の各測定位置において温度測定を行った。具体的には、図5(a)及び図5(b)に示すように、板状ワークW1の上面においてP1〜P5で示す各位置で測定した。
実施例1において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表1に示す。なお、表1では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、板状ワークW1の最も高い測定温度と各測定位置における温度差とを示している。
本実施形態ではまた、板状ワークW1に重ね合わせる加熱補助部材W2について、通電方向に直交する方向の幅を変えたものを用意し、これらについても板状ワークに重ね合わせて通電することにより板状ワークW1を加熱し、板状ワークW1の加熱温度を実際に測定した。
図6は、実施例2として用いた通電加熱によって加熱される板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図であり、図6では、実施例2として用いた板状ワーク、加熱補助部材及び電極のみを示している。実施例2では、板状ワークW1は実施例1と同様のものを用い、加熱補助部材W2は、実施例1と通電方向に直交する方向の幅のみ異なるものを用い、両端部の幅が55mmであり、中央部に向かうにつれて幅が小さくなり、中央部の幅が33mmであるものを用いた。
実施例2においても、加熱補助部材W2は、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように形成されている。
実施例2において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表2に示す。なお、表2では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、板状ワークW1の最も高い測定温度と各測定位置における温度差とを示している。実施例2では、実施例1と同様にして通電加熱を行い、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
図7は、実施例3として用いた通電加熱によって加熱される板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図であり、図7では、実施例3として用いた板状ワーク、加熱補助部材及び電極のみを示している。実施例3では、板状ワークW1は実施例1と同様のものを用い、加熱補助部材W2は、実施例1と通電方向に直交する方向の幅のみ異なるものを用い、両端部の幅が77mmであり、中央部に向かうにつれて幅が小さくなり、中央部の幅が55mmであるものを用いた。
実施例3においても、加熱補助部材W2は、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように形成されている。
実施例3において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表3に示す。なお、表3では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、板状ワークW1の最も高い測定温度と各測定位置における温度差とを示している。実施例3では、実施例1と同様にして通電加熱を行い、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
図8は、比較例1として用いた通電加熱によって加熱される板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図であり、図8では、比較例1として用いた板状ワーク、加熱補助部材及び電極のみを示している。比較例1では、板状ワークW1は実施例1と同様のものを用い、加熱補助部材W2は、実施例1と通電方向に直交する方向の幅のみ異なるものを用い、両端部の幅が33mmであり、中央部に向かうにつれて幅が小さくなり、中央部の幅が11mmであるものを用いた。
比較例1においても、加熱補助部材W2は、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように形成されているが、比較例1では、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1と加熱補助部材W2の幅が略同一ではなく、板状ワークW1の幅に対して加熱補助部材W2の幅が非常に小さく形成されている。
比較例1において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表4に示す。なお、表4では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、板状ワークW1の最も高い測定温度と各測定位置における温度差とを示している。比較例1では、実施例1と同様にして通電加熱を行い、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1について、板状ワークW1の最大幅部W1dにおける板状ワークW1の幅(A)、板状ワークW1の最大幅部W1dに重ね合わせられる加熱補助部材W2の幅(B)、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1の幅(A)に対する加熱補助部材W2の幅(B)の割合である幅比(B/A)、最大温度差をそれぞれ以下の表5に示す。
図9は、板状ワークの最大幅部における板状ワークと加熱補助部材の幅比と板状ワークの最大温度差との関係を示すグラフであり、図9では、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1の幅(A)に対する加熱補助部材W2の幅(B)の割合である幅比(B/A)を横軸にとり、板状ワークW1の最大温度差を縦軸にとって表示している。
表1から表5及び図9に示すように、比較例1では、測定される板状ワークW1の最大温度差が487.4℃であるのに対し、実施例1では、測定される板状ワークW1の最大温度差が29.6℃であり、実施例2では、測定される板状ワークW1の最大温度差が74.2℃であり、実施例3では、測定される板状ワークW1の最大温度差が38.8℃であり、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように、且つ、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1と加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向の幅が略同一となるように用意して重ね合わせることで、通電加熱によって加熱される板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。
本実施形態では、通電加熱によって加熱される板状ワークW1の許容最大温度差が100℃に設定され、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1の幅(A)に対する加熱補助部材W2の幅(B)の割合である幅比(B/A)が0.75以上1.25以下である場合、板状ワークW1の最大幅部W1dに重ね合わせられる加熱補助部材W2の最小幅部W2cが過度に加熱されることを抑制することができ、板状ワークW1の最大幅部W1dが過度に加熱されることを抑制することができる。
本実施形態ではまた、比較例2として、通電加熱装置1において、電極11上に板状ワークW1のみを配置して通電することにより板状ワークW1を加熱し、板状ワークW1の加熱温度を実際に測定した。加熱補助部材W2を重ね合わせていないことを除き、実施例1と同様にして通電加熱を行い、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
図10は、比較例2として用いた通電加熱によって加熱される板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図であり、図10では、比較例2として用いた板状ワーク及び電極のみを示している。図10(a)は、板状ワーク及び電極の配置を示す平面図、図10(b)は、図10(a)においてY10B方向から見た板状ワーク及び電極の側面図を示している。
比較例2として用いた板状ワークW1は、実施例1に用いた板状ワークW1と同様のものを用い、電極11上に実施例1と同じ位置に配置した。比較例2についても、電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1を挟持して板状ワークW1に電極11を取り付けて両電極11間を通電し、板状ワークW1を加熱した。比較例2では、板状ワークW1への投入エネルギーが実施例1と等しくなるように通電加熱し、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
比較例2において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表6に示す。なお、表6では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、板状ワークW1の最も高い測定温度と各測定位置における温度差とを示している。
表1から表4及び表6の結果から、板状ワークW1のみを加熱する場合に比して、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように用意して重ね合わせることで、通電加熱によって加熱される板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。
図11は、加熱補助部材の形状による板状ワークの最大温度差の変化を説明するための説明図であり、図11(a)は、実施例1として用いた板状ワークW1及び加熱補助部材W2を示し、図11(b)は、比較例1として用いた板状ワークW1及び加熱補助部材W2を示している。
図11(b)に示す比較例1では、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて加熱補助部材W2の幅D2が板状ワークW1の幅に対して非常に小さく、この部位において加熱補助部材W2を流れる電流Iの電流密度が大きくなって過度に加熱され、板状ワークW1の最大幅部W1dが過度に加熱されるが、図11(a)に示す実施例1では、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて加熱補助部材W2の幅D1が板状ワークW1の幅と等しく、この部位において加熱補助部材W2を流れる電流Iの電流密度が大きくなることを抑制することができ、加熱補助部材W2が過度に加熱されることが抑制されることにより板状ワークW1の最大幅部W1dが過度に加熱されることが抑制される。
また、図11(b)に示す比較例1では、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて加熱補助部材W2との接触面積が小さく、この部位において接触抵抗が大きくなって加熱補助部材W2が過度に加熱され、板状ワークW1の最大幅部W1dが過度に加熱されるが、図11(a)に示す実施例1では、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて加熱補助部材W2との接触面積が大きく、この部位において接触抵抗が小さく加熱補助部材W2が過度に加熱されることが抑制されることにより板状ワークW1の最大幅部W1dが過度に加熱されることが抑制される。
前述したように、通電加熱装置1を用いて板状ワークW1を加熱した後には、加熱された板状ワークW1を、搬送ロボットや搬送ベルトなどの搬送手段を用いて成形型を備えたプレス成形装置に搬送してプレス成形することで、板状ワークW1を熱間プレス成形することができるが、通電加熱装置1をプレス成形装置に組み込んで、通電加熱によって加熱された板状ワークをプレス成形するようにしてもよい。
図12は、前記通電加熱装置を備えたプレス成形装置の一例を示す概略図である。図12に示す通電加熱装置1を備えたプレス成形装置31は、下方側へ突出する突出部41を備えたパンチ40と、突出部41に対応して凹状に形成された凹部51を備えたダイ50とを有する成形型30を備え、突出部41と凹部51とを組み合わせることで板状ワークW1を所定形状に形成することができるように構成されている。
パンチ40は、スプリング42及びスプリングガイド43を介してパンチプレート44に取り付けられ、該パンチプレート44がパンチホルダー45に取り付けられている。パンチホルダー45は、図示しないパンチ移動機構に連結されており、前記パンチ移動機構によってパンチホルダー45が上下方向に移動されることにより、パンチ40が上下方向に移動可能に構成されている。一方、ダイ50は、ダイホルダー52に取り付けられて固定されている。
プレス成形装置31には、前述した通電手段10を有する通電加熱装置1が備えられ、ダイ50には、ダイ50の凹部51を挟んで凹部51の両側に一対の電極11が取り付けられている。一対の電極11は、ダイ50の上面よりも突出するように設けられ、ケーブル13によって電源12に接続されている。また、一対の電極11の上方にはクランプ部材15が取り付けられている。
プレス成形装置31では、パンチ40が上方へ移動された状態で、板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように、且つ、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1と加熱補助部材W2の幅が略同一となるように重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11とクランプ部材15とによって挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けた後に、両電極11間を通電して板状ワークW1を加熱することが行われる。
そして、板状ワークW1が加熱された後には、クランプ部材15が上方へ移動され、図示しない搬送手段を用いて加熱補助部材W2がプレス成形装置31から取り除かれ、次いで、パンチ40が下方へ移動され、加熱された板状ワークW1が成形型30を用いてプレス成形され、板状ワークW1の熱間プレス成形が行われる。
図12に示すように、通電加熱装置1を組み込んだプレス成形装置31を用い、通電加熱装置1によって板状ワークW1を加熱し、その後に、成形型30を用いて加熱された板状ワークW1をプレス成形して、熱間プレス成形を行うようにしてもよい。なお、熱間プレス成形は、板状ワークを焼入れ温度以上に加熱してプレス成形するものに限らず、板状ワークを焼入れ温度未満の温度に加熱してプレス成形するものも含むものとする。
このように、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように、且つ板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1と加熱補助部材W2の幅が略同一となるように重ね合わせられた板状ワークW1と加熱補助部材W2とを通電加熱し、成形型を用いて前記加熱された板状ワークW1をプレス成形することにより、板状ワークW1の最大幅部W1dが過度に加熱されることを抑制しつつ板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制して板状ワークW1を迅速に加熱することができ、板状ワークW1の材料特性にバラツキが生じることを抑制することができるとともに板状ワークW1のプレス成形サイクルタイムを短縮することが可能である。
図13は、本発明の第2実施形態に係る通電加熱装置の概略図であり、図13(a)は、前記通電加熱装置の概略平面図、図13(b)は、図13(a)におけるY13B方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。なお、図13(b)では、位置決め部材22を二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
本発明の第2実施形態に係る通電加熱装置61は、通電加熱装置1において板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11間でクランプするクランプ手段がさらに設けられたものであり、通電加熱装置1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図13(a)及び図13(b)に示すように、本発明の第2実施形態に係る通電加熱装置61においても、互いに離間する一対の電極11を有し、板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けて通電することにより板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱する通電手段10を備え、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱するようになっている。
通電加熱装置61にはまた、電極11間の略中央部において、具体的には板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて板状ワークW1及び加熱補助部材W2をクランプするクランプ手段65が設けられ、クランプ手段65は、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を上方からクランプする上側クランプ部材71と、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を下方からクランプする下側クランプ部材75とによって構成されている。
上側クランプ71は、クランプ部材15と同様に構成され、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部72と、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に接触する先端部を備えたピン部73と、クランプ基部72とピン部73とに結合されるスプリング74とを備え、クランプ基部72が、図示しない上側クランプ移動手段に連結されて矢印Z2に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
一方、下側クランプ75は、上側クランプ71を上下反転したものであり、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部76と、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に接触する先端部を備えたピン部77と、クランプ基部76とピン部77とに結合されるスプリング78とを備え、クランプ基部76が、図示しない下側クランプ移動手段に連結されて矢印Z3に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
クランプ手段65では、前記上側クランプ移動手段によってクランプ基部71が下方へ移動されることにより上側クランプ部材71が下方へ移動され、前記下側クランプ移動手段によってクランプ基部76が上方へ移動されることにより下側クランプ部材75が上方へ移動される。
これにより、クランプ手段65は、電極11上に配置された板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11間における板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて上側クランプ部材71と下側クランプ部材75とによってクランプすることができるようになっている。
このようにして構成される通電加熱装置61においても、クランプ部材15及び上側クランプ部材71が上方へ移動されると共に下側クランプ部材75が下方へ移動された状態で、所定形状に形成された板状ワークW1及び加熱補助部材W2を用意し、電極11上に板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせ、クランプ部材15を下方へ移動させることにより電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1及び加熱補助部材W2を挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けることが行われる。
通電加熱装置61ではまた、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせた後、両電極11間を通電する前に、上側クランプ部材71を下方へ移動させると共に下側クランプ部材75を上方へ移動させることにより上側クランプ部材71と下側クランプ部材75とによって板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて板状ワークW1及び加熱補助部材W2をクランプし、その後に、両電極11間を通電して板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱することが行われる。
このように、通電加熱装置61を用いる場合においても、板状ワークW1に、板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように、且つ板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられる板状ワークW1と加熱補助部材W2の幅が略同一となるように加熱補助部材W2が重ね合わせられることにより、電極11間を通電する際に板状ワークW1及び加熱補助部材W2から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができると共に板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて板状ワークW1が過度に加熱されることを抑制することができ、比較的簡単に板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
また、通電加熱装置61では、クランプ手段65を用いて板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて板状ワークW1及び加熱補助部材W2をクランプすることにより、板状ワークW1の最大幅部W1dにおいて重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の間に隙間が生じることを防止することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
図14は、本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置の概略図であり、図14(a)は、前記通電加熱装置の概略平面図、図14(b)及び図14(c)はそれぞれ、図14(a)におけるY14B方向及びY14C方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。
本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置81は、通電加熱装置1において板状ワークW1と加熱補助部材W2の間に溶着防止部材がさらに設けられたものであり、通電加熱装置1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図14(a)〜図14(c)に示すように、本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置81では、板状ワークW1と加熱補助部材W2の間に、一対の溶着防止部材14が備えられる。一対の溶着防止部材14は、例えば銅などの材料を用いて板状に形成されるが、これに限定されるものでなく、板状ワークW1及び加熱補助部材W2よりも電気抵抗率の小さい材料から形成することができる。溶着防止部材14はまた、電極11と同様の略直方体状に形成することも可能である。一対の溶着防止部材14は、一方の溶着防止部材14aが正電極11aの上方に配置され、他方の溶着防止部材14bが負電極11bの上方に配置される。
前述したように、板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、それらの両端部がクランプ部材15によってクランプされる。板状ワークW1及び加熱補助部材W2のクランプされた部分では、板状ワークW1及び加熱補助部材W2が通電加熱によって加熱される際に、溶着が発生する畏れがある。
通電加熱装置81では、板状ワークW1及び加熱補助部材W2の間に、板状ワークW1及び加熱補助部材W2よりも電気抵抗率の小さい材料からなる溶着防止部材14を介在させることにより、板状ワークW1と加熱補助部材W2の接触抵抗よりも板状ワークW1又は加熱補助部材W2と溶着防止部材14の接触抵抗が小さく、発熱量が少ないので、板状ワークW1と加熱補助部材W2の溶着を防止することができる。
板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、通電時に流れる電流による磁界によって互いに引き合う力が生じ、溶着防止部材14を介在させた場合においても接触することとなるが、溶着防止部材14の厚さが厚く板状ワークW1と加熱補助部材W2とが接触し難い場合は、溶着防止部材14の厚さを薄くしたりクランプ手段によってクランプしたりして少なくとも板状ワークW1と加熱補助部材W2の中央部同士を通電時に接触させることが行われる。
前述した実施形態では、板状ワークW1として、図3(a)に示すように、板状ワークW1の長手方向中央部に電極取付部W1cよりも通電方向に直交する方向の幅が最も大きい最大幅部W1dが設けられたものを用い、加熱補助部材W2として、図3(b)に示すように、加熱補助部材W2の長手方向中央部に通電方向に直交する方向の幅が最も小さい最小幅部W2cが設けられたものを用いているが、板状ワークとして、図3(b)に示す加熱補助部材W2のように、長手方向中央部に電極取付部よりも通電方向に直交する方向の幅が最も小さい最小幅部が設けられたものを用い、加熱補助部材として、図3(a)に示す板状ワークW1のように、長手方向中央部に通電方向に直交する方向の幅が最も大きい最大幅部が設けられたものを用いることも可能である。
かかる場合においても、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークの断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように、且つ板状ワークの最小幅部において重ね合わせられる板状ワークと加熱補助部材の幅が略同一となるように板状ワークと加熱補助部材とが用意され重ね合わせられることにより、板状ワークの最小幅部が過度に加熱されることを抑制することができ、板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制することができる。
本実施形態ではまた、板状ワーク及び加熱補助部材として、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークの断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように、且つ板状ワークの最小幅部において重ね合わせられる板状ワークと加熱補助部材の幅が略同一となるように重ね合わせたものを用い、通電加熱による板状ワークの加熱温度を実際に測定した。
具体的には、図3(b)に示す加熱補助部材を板状ワークとして用い、図3(a)に示す板状ワークを加熱補助部材として用い、板状ワークをW2とし、加熱補助部材をW1として重ね合わせ、通電加熱による板状ワークの加熱温度を測定した。実施例4として用いた板状ワークW2及び加熱補助部材W1はそれぞれ、図5に示す実施例1の加熱補助部材W2及び板状ワークW1と同様のものを用いた。実施例4では、実施例1と同様にして通電加熱を行い、板状ワークW2の加熱温度を、図5(a)及び図5(b)においてP6〜P8で示す各位置で測定した。
また、実施例5として、図6に示す実施例2の加熱補助部材W2及び板状ワークW1と同様のものを板状ワークW2及び加熱補助部材W1として用い、実施例6として、図7に示す実施例3の加熱補助部材W2及び板状ワークW1と同様のものを板状ワークW2及び加熱補助部材W1として用い、比較例3として、図8に示す比較例1の加熱補助部材W2及び板状ワークW1と同様のものを板状ワークW2及び加熱補助部材W1として用い、それぞれ、実施例4と同様にして通電加熱を行い、実施例4と同様の位置において板状ワークW2の加熱温度を測定した。
実施例4、実施例5、実施例6及び比較例3について、板状ワークW2の最小幅部W2cにおける板状ワークW2の幅(A)、板状ワークW2の最小幅部W2cに重ね合わせられる加熱補助部材W1の幅(B)、板状ワークW2の最小幅部W2cにおいて重ね合わせられる板状ワークW2の幅(A)に対する加熱補助部材W1の幅(B)の割合である幅比(B/A)、測定位置P6〜P8における測定温度の最大温度差をそれぞれ以下の表7に示す。
表7に示すように、比較例3では、測定される板状ワークW2の最大温度差が282.5℃であるのに対し、実施例4では、測定される板状ワークW2の最大温度差が44.4℃であり、実施例5では、測定される板状ワークW2の最大温度差が45.4℃であり、実施例6では、測定される板状ワークW2の最大温度差が55.4℃であり、板状ワークW2と加熱補助部材W1とを、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW2の断面積と電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W1の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように、且つ、板状ワークW2の最小幅部W2cにおいて重ね合わせられる板状ワークW2と加熱補助部材W1の通電方向に直交する方向の幅が略同一となるように用意して重ね合わせることで、通電加熱によって加熱される板状ワークW2の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。
また、板状ワークW2の最小幅部W2cにおいて重ね合わせられる板状ワークW2の幅(A)に対する加熱補助部材W1の幅(B)の割合である幅比(B/A)が0.80以上1.33以下である場合、通電加熱によって加熱される板状ワークW2の最大温度差が100℃以下であり、板状ワークW2の最小幅部W2cが過度に加熱されることを抑制することができる。
このように、板状ワークとして、長手方向中央部に電極取付部よりも通電方向に直交する方向の幅が最も小さい最小幅部が設けられたものを用い、加熱補助部材として、長手方向中央部に通電方向に直交する方向の幅が最も大きい最大幅部が設けられたものを用いる場合、クランプ手段を用いて板状ワークの最小幅部において板状ワーク及び加熱補助部材をクランプするようにすることが好ましい。これにより、板状ワークの最小幅部において重ね合わせられた板状ワーク及び加熱補助部材の間に隙間が生じることを防止することができる。
前述した実施形態に係る通電加熱装置1、61、81では、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを用意した後に電極11上に重ね合わせ、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11とクランプ部材15とによって挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けているが、通電加熱装置1,61,81において、電極11と加熱補助部材W2とを一体的に形成し、電極11と一体的に形成された加熱補助部材W2に板状ワークW1を重ね合わせるようにすることも可能である。これにより、電極11と加熱補助部材W2とが別体で形成されている場合に比して、通電加熱装置の構成を簡素化することができる。
また、通電加熱装置1,61,81において、加熱補助部材W2をクランプ部材15側に配置するとともにクランプ部材15と加熱補助部材W2とを一体的に形成し、クランプ部材15と一体的に形成された加熱補助部材W2と板状ワークW1とを重ね合わせるようにすることも可能である。この場合、通電加熱後に板状ワークW1を搬送する場合、加熱補助部材W2をクランプ部材15とともに移動させることができるので、板状ワークW1の搬送を容易に行うことができる。
このように、加熱補助部材W2と電極11とを一体的に形成したり加熱補助部材W2とクランプ部材15とを一体的に形成したりする通電加熱装置において、板状ワークW1を連続的に通電加熱によって加熱する場合、両電極11間を通電する前に、加熱補助部材W2が板状ワークW1に対して高温状態になる畏れがある。
この場合、好ましくは、両電極11間を通電する前に、板状ワークW1と加熱補助部材W2とが略同一温度になるように、例えば板状ワークW1を加熱炉に保持して板状ワークW1を予め加熱したり、例えば加熱補助部材W2に冷風を供給して加熱補助部材W2を予め冷却したりすることが行われる。これにより、加熱補助部材W2が板状ワークW1に比して高温状態にある場合、通電加熱前に板状ワークW1と加熱補助部材W2との温度を略等しくすることができる。
なお、本実施形態に係る通電加熱において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材は、高張力鋼板などの金属製の板状ワーク及び加熱補助部材に限らず、所定の電気抵抗率をそれぞれ有する導電性の板状ワーク及び加熱補助部材であれば、樹脂製などのその他の板状ワーク及び加熱補助部材を使用することも可能である。また、加熱補助部材を電極やクランプ部材と一体的に形成して使用する場合、加熱補助部材として、板状ワークと同一の材料からなる部材に限らず、例えば、酸化しにくいステンレスや鋳鉄などからなる部材を用いるようにしてもよい。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。