JP2014084955A - 一方向クラッチ - Google Patents

Abstract

【課題】つづら折りされた圧縮板ばねの付勢を低温時に強くすることができる一方向クラッチを提供する。
【解決手段】内輪２と、内輪２の径方向外側に配置された環状の外輪３と、外輪３の内周面に形成され、且つ内輪２の外周面との間に周方向にくさび状に形成されるポケット４と、ポケット４に配置されるころ５と、ころ５をポケット４の狭小方向に付勢する圧縮板ばね６と、を備え、圧縮板ばね６は、回転軸に平行な面６１と、面６１の径方向端部から折り返す折り返し部６２と、を有し、面６１と折り返し部６２とが交互に連続してつづら折り状に形成されてなる一方向クラッチ１において、折り返し部６２には、ばね追加部材７が一体に形成され、ばね追加部材７は、圧縮板ばね６との低温時における収縮率の差により圧縮板ばね６の付勢を強くする。
【選択図】図２

Description

本発明は、一方向クラッチに関する。

自動二輪車等の車両には、エンジン始動用のスタータモータが設けられており、このスタータモータとエンジンのクランクシャフトとの間にはスタータクラッチが設けられている。このスタータクラッチは一方向クラッチからなり、スタータモータの出力軸に減速機構を介して連結される内輪と、クランクシャフトに連結される外輪と、この内外輪間に配置されるころと、を備える。スタータモータの出力軸が一方向に回転すると、外輪と内輪との間にころが噛み込むことによって内輪と外輪とが一体に回転し、スタータモータの回転動力がクランクシャフトに伝達される。エンジンの始動後スタータモータを停止させると、クランクシャフトに相対してスタータモータの出力軸が他方向に回転し、外輪と内輪との間のころの噛み込みが解除され、クランクシャフトとスタータモータとの間の動力伝達が遮断されるようになっている。

上記の一方向クラッチは、内外輪間にくさび状のポケットを形成し、このポケットにころと、つづら折りされて周方向に圧縮することによりころをポケットの狭小方向に付勢する圧縮板ばねとを配置し、エンジンオイルにより潤滑されて構成されている。（例えば、特許文献１を参照）

特開２０１１−２５６９２９号公報

しかしながら、上記の一方向クラッチでは、寒冷地におけるスタータモータ回転時は、低温のためエンジンオイルの粘度が高くなって圧縮板ばねが伸縮しづらくなる。そして、スタータモータを回転させたときに、圧縮板ばねの付勢が弱くなって外輪と内輪との間のころの噛み込みが弱くなり、所謂クラッチがすべる状態となる場合がある。その場合、スタータモータの回転動力がクランクシャフトに伝達されず、エンジンが始動しないこととなる。そこで、一方向クラッチは、つづら折りされた圧縮板ばねの付勢を低温時に強くすることが課題となっていた。

本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、つづら折りされた圧縮板ばねの付勢を低温時に強くすることができる一方向クラッチを提供することを目的とする。

上記の課題を解決するため、請求項１に係る一方向クラッチの構成上の特徴は、内側回転体と、この内側回転体の径方向外側に配置された環状の外側回転体と、この外側回転体の内周面に形成され、且つ前記内側回転体の外周面との間に周方向にくさび状に形成されるポケットと、このポケットに配置されるころと、このころを前記ポケットの狭小方向に付勢する圧縮板ばねと、を備え、前記圧縮板ばねは、回転軸に平行な面と、この面の径方向端部から折り返す折り返し部と、を有し、前記面と前記折り返し部とが交互に連続してつづら折り状に形成されてなる一方向クラッチにおいて、前記折り返し部には、ばね追加部材が一体に形成され、このばね追加部材は、前記圧縮板ばねとの低温時における収縮率の差により前記圧縮板ばねの付勢を強くすることである。

請求項１の一方向クラッチによれば、圧縮板ばねの折返し部に一体的に形成されたばね追加部材により、圧縮板ばねとの低温時における収縮率の差により圧縮板ばねの付勢を強くすることができる。

請求項２に係る一方向クラッチの構成上の特徴は、前記折り返し部の周方向両端には貫通孔が形成され、前記ばね追加部材は、前記圧縮板ばねに対して低温時における収縮率が大きい部材にて形成され、前記折り返し部の外側に重ね合わせ、周方向両端には爪が形成され、この爪がその周囲に隙間を設けて前記貫通孔に挿通して前記圧縮板ばねに係合し、低温時には、前記爪が前記貫通孔の中で引っ張られることにより前記折り返し部が広がることである。

請求項２の一方向クラッチによれば、折り返し部の外側に重ね合わせて圧縮板ばねに係合したばね追加部材が、低温時に圧縮板ばねよりも大きく収縮し、爪が貫通孔の中で引っ張られるので、折り返し部が広がることによりつづら折りが広がり、その結果、圧縮板ばねの付勢を強くすることができる。

本発明によれば、つづら折りされた圧縮板ばねの付勢を低温時に強くすることができる一方向クラッチを提供できる。

本発明の一実施形態である一方向クラッチの径方向の断面図である。 図１に示す圧縮板ばねにばね追加部材を装着した状態の断面図である。 図２に示す圧縮板ばねにばね追加部材を装着する前の状態の斜視図である。 図２の要部拡大図である。

以下、本発明の一方向クラッチを具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図１は、本発明の一実施形態である一方向クラッチ１の径方向の断面図である。図１を参照しつつ説明する。

一方向クラッチ１は、例えば、自動二輪車のエンジンのクランクシャフトとスタータモータの出力軸との間に設けられ、エンジン始動時にスタータモータの回転動力をクランクシャフトに伝達するとともに、エンジン始動後はクランクシャフトの回転がスタータモータの出力軸に伝達されないように動力伝達を遮断するものである。

一方向クラッチ１は、スタータモータの出力軸に歯車減速機構等を介して動力伝達可能に連結される内輪（内側回転体）２と、エンジンのクランクシャフトに連結される外輪（外側回転体）３とを有している。
また、一方向クラッチ１は、外輪３の内周面に形成され、且つ内輪２の外周面との間に周方向にくさび状に形成されるポケット４に配置される円筒状のころ５と、つづら折りされて周方向に圧縮することによりころ５をポケットの狭小方向に付勢する圧縮板ばね６とを有し、エンジンオイルにより潤滑されている。

内輪２は、環状に形成されており、その中心の孔２１には転がり軸受等を介してクランクシャフトが挿通される。内輪２の外周面は円筒状に形成されている。

外輪３は、環状に形成されており、その内周面は円筒状に形成されて内輪２の外周面に摺動可能に嵌合している。外輪３の外周面も内周面と同様に円筒状に形成されている。外輪３は、動力伝達部材を介してエンジンのクランクシャフトに連結される。
外輪３の内周面には、複数のポケット４が周方向に間隔をあけて形成されている。本実施形態では、三つのポケット４が周方向等間隔で形成されている。なお、ポケット４の数や配置は適宜変更することができる。

ポケット４は、ころ５を収容する第１収容部４１と、圧縮板ばね６を収容する第２収容部４２とを備える。第１収容部４１と第２収容部４２とは、周方向に隣接して配置されており、第１収容部４１よりも第２収容部４２の方が径方向に浅く形成されている。第１収容部４１は、周方向にくさび状に形成され、周方向の一方が狭小側４１ａとなり、他方が拡大側４１ｂとなり、ころ５が狭小側４１ａと拡大側４１ｂとの間を移動可能に構成される。第２収容部４２は、周方向の一方が拡大側４１ｂに接続され、他方がばね受け面４２ａとなって構成される。

図２は、図１に示す圧縮板ばねにばね追加部材を装着した状態の断面図である。図３は、図２に示す圧縮板ばねにばね追加部材を装着する前の状態の斜視図である。図２及び図３を参照しつつ説明する。
圧縮板ばね６は、回転軸に平行な面６１と、面６１の径方向端部から折り返す折り返し部６２とを有し、面６１と折り返し部６２とが交互に連続してつづら折り状に形成されて構成される。圧縮板ばね６は、周方向の一端部側の面６１がばね受け面４２ａに当接し、他端部側の面６１が第１収容部４１に収容されたころ５に当接し、周方向に圧縮してころ５を第１収容部４１の狭小側４１ａへ付勢している。折り返し部６２の周方向両端には略円形の貫通孔６３が形成される。圧縮板ばね６の材料としては、例えば、ステンレス鋼が用いられる。

圧縮板ばね６の折り返し部６２の外側には、ばね追加部材７が重ね合わせて一体化される。ばね追加部材７は、その周方向両端に爪７１が形成され、爪７１がその周囲に隙間を設けて貫通孔６３に挿通して圧縮板ばね６に係合して構成される。ばね追加部材７の材料としては、例えば、ステンレス鋼が用いられ、圧縮板ばね６に対して熱膨張係数が大きく、低温時における収縮率が大きい部材からなる。

実施例の一方向クラッチ１は以上のように構成され、次にその作用について説明する。図１に示す一方向クラッチ１によると、内輪２が外輪３に対して反時計方向に回転すると、圧縮板ばね６に付勢されたころ５が第１収容部４１の狭小側４１ａへ移動させられ、内輪２と外輪３とがころ５を介して噛み合わされる状態となり、内輪２と外輪３とが一体化して同期回転する。

逆に、内輪２が外輪３に対して時計方向に回転すると、ころ５は圧縮板ばね６の付勢力に抗して第１収容部４１の拡大側４１ｂへ移動させられ、内輪２と外輪３とがころ５を介して噛み合わされる状態が解除され、内輪２から外輪３への回転動力の伝達が遮断される。

一方向クラッチ１を、例えば、自動二輪車のエンジンのスタータクラッチに適用した場合、スタータモータを駆動することで内輪２が反時計方向に回転させられ、これによって、
内輪２と外輪３とが一体で回転し、外輪３に連結されたクランクシャフトに動力が伝達される。クランクシャフトが回転されることで、エンジンが始動すると、外輪３は高速回転し、この結果、ころ５は拡大側４１ｂへ移動し、内輪２と外輪３との噛み合いが解除され、外輪３だけが回転を続け、内輪２の回転は停止する。こうして、スタータモータからクランクシャフトへ向かう動力伝達のみが許容される。

寒冷地におけるスタータモータ回転時は、低温のためポケット４内のエンジンオイルの粘度が高くなって圧縮板ばね６が伸縮しづらくなり、圧縮板ばね６の付勢が弱くなる。そこで、低温時の一方向クラッチ１の作用について図４を参照しつつ説明する。図４は、図２の要部拡大図である。
常温時に対して低温時は、圧縮板ばね６が僅かに収縮し、ばね追加部材７は圧縮板ばね６よりも大きく収縮する。低温時は、この収縮率の差によって、ばね追加部材７は矢印Ａの方向に収縮し、爪７１が貫通穴６３の端部６３ａを矢印Ａの方向に引っ張る。その結果、圧縮板ばね６では、折り返し部６２が矢印Ｂの方向に広がる力が働く。そして、つづら折りされた圧縮板ばね６が広がり、圧縮板ばね６の付勢を強くする。

これにより、一方向クラッチ１は、低温時においても、スタータモータを駆動することで内輪２が外輪３に対して反時計方向に回転し、圧縮板ばね６に付勢されたころ５が第１収容部４１の狭小側４１ａへ移動させられ、内輪２と外輪３とがころ５を介して噛み合わされる状態となり、内輪２と外輪３とが一体化して同期回転する。外輪３に連結されたクランクシャフトに動力が伝達され、クランクシャフトが回転されることで、エンジンが始動する。

以上のように、本実施の形態に係る一方向クラッチ１によれば、つづら折りされた圧縮板ばね６の付勢を低温時に強くすることができる。

なお、本発明は本実施形態に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、ばね追加部材７が圧縮板ばね６の折り返し部６２の外側に重ね合わせられ、爪７１が貫通孔６３に挿通して圧縮板ばね６に係合して一体化されるとしたが、それに限るものではなく、例えば、バイメタルのように熱膨張係数が違う金属などを張り合わせた構成に適用しても良い。

１：一方向クラッチ、 ２：内輪（内側回転体）、 ３：外輪（外側回転体）、 ４：ポケット、 ５：ころ、 ６：圧縮板ばね、 ７：ばね追加部材、 ２１：孔、 ４１：第１収容部、 ４１ａ：狭小側、 ４１ｂ：拡大側、 ４２：第２収容部、 ４２ａ：ばね受け面、 ６１：面、 ６２：折り返し部、 ６３：貫通孔、 ７１：爪

Claims (2)

1. 内側回転体と、この内側回転体の径方向外側に配置された環状の外側回転体と、この外側回転体の内周面に形成され、且つ前記内側回転体の外周面との間に周方向にくさび状に形成されるポケットと、このポケットに配置されるころと、このころを前記ポケットの狭小方向に付勢する圧縮板ばねと、を備え、
   前記圧縮板ばねは、回転軸に平行な面と、この面の径方向端部から折り返す折り返し部と、を有し、前記面と前記折り返し部とが交互に連続してつづら折り状に形成されてなる一方向クラッチにおいて、
   前記折り返し部には、ばね追加部材が一体に形成され、
   このばね追加部材は、前記圧縮板ばねとの低温時における収縮率の差により前記圧縮板ばねの付勢を強くすることを特徴とする一方向クラッチ。
2. 前記折り返し部の周方向両端には貫通孔が形成され、
   前記ばね追加部材は、前記圧縮板ばねに対して低温時における収縮率が大きい部材にて形成され、前記折り返し部の外側に重ね合わせ、周方向両端には爪が形成され、この爪がその周囲に隙間を設けて前記貫通孔に挿通して前記圧縮板ばねに係合し、
   低温時には、前記爪が前記貫通孔の中で引っ張られることにより前記折り返し部が広がることを特徴とする請求項１に記載の一方向クラッチ。

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