JP2014076498A - 多関節ロボット及び半導体ウェハ搬送装置 - Google Patents

多関節ロボット及び半導体ウェハ搬送装置 Download PDF

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Abstract

【課題】軌道のずれを抑制し、動作の正確性に優れた多関節ロボット。
【解決手段】複数の関節により順次接続されるアーム要素11〜13と、アーム要素11〜13の相対位置又は姿勢を変更するモータと、ハンド部Hの位置及び姿勢の制御を行う制御部3と、を具備し、制御部3が直交座標系基準指令設定部31と、直交座標系成形指令生成部32と、冗長領域判定部36と、を備えており、冗長領域判定部36において直交座標系成形指令値が冗長領域外に対応するものと判定した場合には、直交座標系成形指令値を各関節に対応する関節座標系に変換した関節座標系変換指令値を生成して、関節座標系変換指令値を基に各モータの制御を行い、直交座標系成形指令値が冗長領域内に対応するものと判定した場合には、冗長領域外に対応する直交座標系成形指令値を基に関節座標系補間指令値を生成して、関節座標系補間指令値を基に各モータの制御を行うように構成した。
【選択図】図2

Description

本発明は、複数のアーム要素が順次接続されており、アクチュエータによって関節ごとにアーム要素を相対動作させることで、先端のハンド部の位置及び姿勢を変更可能に構成した多関節ロボット、及び、これを用いた半導体ウェハ搬送装置に関するものである。
従来より、複数のアーム要素を関節によって順次接続し、各関節に対応したアクチュエータを制御することによって、先端のハンド部の位置及び姿勢変更を変更可能にした多関節ロボットとして、数多くのものが知られている。
こうした多関節ロボットで用いられる関節は、対をなすアーム要素を相対的に直線運動させるものと回転運動させるものに分類され、これらの種類および個数を組み合わせることで、種々様々な動作を行わせることが可能になっている。
また、多関節ロボットの中でも、アクチュエータとしてモータ等による回転機構を関節に備えたいわゆる水平多関節型ロボットや、垂直多関節型ロボットが、製造業等においてより広く一般的に利用されている。例えば、半導体ウェハ搬送装置においては、特許文献1に記載されるような水平多関節型ロボットが好適に用いられており、先端に設けたハンド部上に半導体ウェハを載置させた状態で各関節を回転駆動させ、半導体ウェハを所定の位置に搬送することができるようになっている。
こうした多関節ロボットに所定の動作を行わせるためには、各関節に対応して設けられたアクチュエータを制御部により統合して制御することが必要となる。この際、制御部からは各アクチュエータに適した指令信号を個別に出力することになる。すなわち、関節が回転自由度を有するものであり、これを動作させるためにサーボモータ等の回転モータが使用されている場合には、モータの回転角度または回転角速度等を指令信号として出力し、所定の動作を行わせることになる。そして、上述の特許文献1に記載されているような、回転自由度を有する関節を3つ備えたタイプのロボットにおいては、3つの関節に対応するモータのそれぞれに対して上記と同様の指令信号を与えることで回転運動を行わせ、先端のハンド部を所望の位置および姿勢に変更することが可能になっている。
多関節ロボットでは一般に振動の低減が求められており、その中でも上記の半導体用途など精密加工を要する分野においてはこうした要求が特に大きなものとなっている。同時に、搬送時間の短縮などを目的に益々の高速化も求められてきている。しかしながら、動作速度を向上させた場合には、大きな加速度が働いて動作停止時の残留振動が大きくなる傾向にあるため、この残留振動を低減させることも必要となる。
そのため、下記特許文献2および非特許文献1では、上述した振動抑制のための手法としてインプットシェーピング制御を用いるものが開示されている。なお、インプットシェーピング制御をプリシェーピング制御と称することもあるが、両者は同一のものである。このインプットシェーピング制御では、予め振動測定を行うことで得た振動測定値を基にして、制振対象とする次数までの固有周波数と減衰係数とを装置特有の振動特性として同定しておき、アクチュエータに与えるべき基準指令値に対応する逆位相の信号を上記固有周波数及び減衰係数を基に作り出し、上記基準指令値に重畳させた制御指令値としてアクチュエータに与えるものである。このようにアクチュエータに与える制御指令値を予め適切なものに変更するフィルタ処理を行うことで、振動の抑制効果を得ることが可能となっている。
特開2011−216729号公報 特許第3015396号公報
Minh Duc Duong ,Kazuhiko Terashima ,Toshio Kamigaki ,and HirotoshiKawamura"Development of a Vibration Suppression GUITool Based on Input Preshaping and its Application to Semiconductor WaferTransfer Robot"(Int.J.ofAutomation Technology Vol.2 No.6,2008)
しかしながら、上記特許文献2および非特許文献1に記載のものは、アクチュエータが一個のみで構成される単純な構造体に適用する例を示したものであり、特許文献1記載のロボットのような、実際の製造ラインで使用可能な複数の関節を有するものに適用した例を開示するものではない。
そこで、上記特許文献2および非特許文献1に記載されるインプットシェーピング制御を特許文献1のような多関節ロボットに適用する場合には、各関節を駆動するモータにそれぞれ与えられる回転角度または回転角速度等の指令値に対して、インプットシェーピング制御に係るフィルタ処理を独立して適用することが考えられる。こうすることで、上記と同様に、多関節ロボットにおいても振動抑制効果を得ることが可能となる。
しかしながら、関節に対応するアクチュエータに与える指令値に独立してフィルタ処理を行った場合、ハンド部の動作軌跡が大きく異なってしまう可能性がある。
具体的には、制御対象となる多関節ロボットが、関節の一部に回転自由度を有するものとされている場合には、一般にはモータによってこれを駆動するため、その回転角度または回転角速度等を指令値として制御が行われる。そのため、この指令値とハンド部の移動距離とは比例関係になることがなく、インプットシェーピング制御に係るフィルタ処理の影響は関節ごとに異なることになる。従って、ハンド部に直線軌道で動作させる指令値を与えた場合であっても、振動抑制のため関節ごとの指令値に独立してインプットシェーピング制御に係るフィルタ処理を適用すると、目標の軌道よりずれが生じハンド部は直線的な動作が不能となってしまう。
そのため、ハンド部を他の装置の内部に挿入させる場合など、他の装置や壁面等の障害物が近くに存在する状態でハンド部を直線的に動作させる際には、これらの障害物にハンド部が衝突して損傷することが考えられる。また、ハンド部が半導体ウェハ等のワークを保持して動作する場合には、ワークを他の装置や壁面などに衝突させて損傷させる可能性もある。
また、上記のインプットシェーピング制御だけではなく、振動抑制のための他のフィルタ処理を適用する場合にも同様の問題が生じ得る。さらに、振動抑制といった目的のみならず、ハンド部の速度・加速度等の適正化等の異なる目的の基にフィルタ処理を行う場合であっても、同様の問題が生じることになる。
本発明は、上記のような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には、アクチュエータを動作させる際の基準指令値に対して入力整形を行うことによる動作の軌道のずれを抑制し、入力整形による効果を得つつも動作の軌道を正確に保つことが可能な多関節ロボット及び半導体ウェハ搬送装置を提供することを目的としている。
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
すなわち、本発明の多関節ロボットは、直動又は回動可能な複数の関節により順次接続されるアーム要素と、各関節に接続されるアーム要素の相対位置又は姿勢を変更するアクチュエータと、当該アクチュエータの制御を行うことで末端のアーム要素に設けられたハンド部の位置及び姿勢の制御を行う制御部と、を具備し、前記関節のうち少なくとも2つが互いに平行な軸回りの回転自由度を有する多関節ロボットであって、前記制御部が、前記ハンド部の位置又は姿勢を制御するための基準指令値をその少なくとも一部が直交座標系となる直交座標系基準指令値として得る直交座標系基準指令設定部と、当該直交座標系基準指令設定部により得られる前記直交座標系基準指令値に対して所定の入力整形を行って直交座標系成形指令値を生成する直交座標系成形指令生成部と、前記直交座標系成形指令生成部より得られる前記直交座標系成形指令値が、これを関節座標系に変換する場合に無限個数の解が得られる冗長姿勢位置を含む一定の冗長領域内に対応するものであるか否かを判定する冗長領域判定部と、を備えており、前記冗長領域判定部において前記直交座標系成形指令値が前記冗長領域外に対応するものと判定した場合には、前記直交座標系成形指令値を各関節に対応する関節座標系に変換した関節座標系変換指令値を生成して、当該関節座標系変換指令値を基に各アクチュエータの制御を行い、前記冗長領域判定部において前記直交座標系成形指令値が前記冗長領域内に対応するものと判定した場合には、冗長領域外に対応する直交座標系成形指令値を基に関節座標系補間指令値を生成して、当該関節座標系補間指令値を基に各アクチュエータの制御を行うように構成されていることを特徴とする。
このように構成すると、直交座標系にて得た制御指令値を基にして所定の入力整形を行った後に関節座標系に変換することで、入力整形による効果と軌道の正確性とを両立させることが可能となる上に、特定の冗長領域において座標変換の影響により位置制御が不安定となることを抑制しつつ入力成形の効果を維持させることができるため、よりアーム要素の軌道の正確性を高めることが可能となる。
また、冗長領域内にあるか否かを簡単な演算処理により判断しつつ制御を行うことを可能とするためには、前記冗長領域判定部が、前記直交座標系成形指令生成部より得られる前記直交座標系成形指令値を基にして関節の相対距離を算出し、当該相対距離が予め定めた所定値未満である場合に、当該直交座標系成形指令値が前記冗長領域内に対応するものとして判定するように構成することが好適である。
また、ハンド部の位置制御を高速で且つ高精度に行うことを可能とするためには、関節座標系補間指令値をより簡単な手法で高速に演算させることが効果的であるため、前記冗長領域に入る直前に対応する直交座標系整形指令値と、前記冗長領域より出た直後に対応する直交座標系成形指令値とを基にして、前記冗長領域内で各アクチュエータが等速運動を行うように前記関節座標系補間指令値を生成するよう構成することが好適である。
また、上記冗長領域の判定をより具体的な簡便な手法により行うためには、関節同士が重なり合う位置、又は、関節とハンド部の基準位置とが重なり合う位置を中心としてアーム要素が所定の範囲内にある姿勢を前記冗長姿勢とするように構成することが好適である。
また、ハンド部の位置精度をより一層高めるとともに、残留振動を抑制することで高速化を可能とするためには、前記直交座標系成形指令生成部にて行う所定の入力整形が、前記ハンド部の振動を抑制するためのインプットシェーピング制御としてのフィルタ処理とするように構成することが好適である。
また、本願発明の半導体ウェハ装置は、上記の多関節ロボットを備えるとともに、当該多関節ロボットを水平多関節型ロボットとして構成し、前記ハンド部上に半導体ウェハを載置させつつ、当該半導体ウェハの搬送を行うように構成したものであり、このように構成することで、精密な動作を要する半導体ウェハ搬送装置を効果的に実現することが可能となる。
以上説明した本発明によれば、アクチュエータを動作させるための基準指令値に対して入力整形を行うことで生じるハンド部の軌道のずれを抑制し、入力整形による効果を得つつも軌道を正確に保つことが可能な多関節ロボット及び半導体ウェハ搬送装置を提供することが可能となる。
本発明の第1実施形態に係る多関節ロボット及びこれを備えた半導体ウェハ搬送装置の平面図。 同多関節ロボットを模式的に示す構成図。 同多関節ロボットにおけるアーム要素の構成を模式的に示す平面図。 同多関節ロボットにおける各関節の駆動手段を模式的に示す構成図。 同多関節ロボットにおける各関節の座標の定義を示す説明図。 各関節を駆動するモータに与える指令値を決定するためのブロック線図。 冗長領域における制御指令値の変化の一例を示す説明図。 冗長領域として関節座標系補間指令値を作成する区間の一例を示す説明図。 同多関節ロボットによるハンド部のXY平面内軌道の一例を本発明適用前後で比較して示す説明図。 図9に係る動作を行わせた際の残留振動を本発明適用前後で比較して示す説明図。 本発明との比較例として関節座標系の軌道データを基に生成した制御指令値により動作させた際のXY平面内軌道の一例を示す説明図。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態における多関節ロボット1を中心として、これを備えた半導体ウェハ搬送装置TDとして構成したものである。多関節ロボット1はフレームFrを介して、ロードポートLP1〜LP4と接続されており、このロードポートLP1〜LP4内に収容するウェハ(半導体ウェハ)Wの入替作業を行うことができるようになっている。
ロードポートLP1〜LP4は多関節ロボット1に対向しつつ、一列に並んで配置されており、多関節ロボット1の位置は、ロードポートLP1とLP2の中間となるように設定されている。
ここで、本発明においては、ロードポートLP1〜LP4を配置する方向、すなわち図中の右方向をX方向として定義し、これに直交する方向、すなわち図中の上方向をY方向として定義する。そして、鉛直上方向、すなわち紙面手前方向をZ方向として定義する。さらに、平面視においてX軸を基準に反時計回りの方向をφ方向と定義する。
図中においてウェハWの内部に記載している黒丸印は、このウェハWの中心位置であり、多関節ロボット1の制御を行う際の基準位置Pwとなる。そして、各ロードポートLP1〜LP4において記載した黒丸印は、ウェハWの搬送先を示すものであり、これらの位置に上記の基準位置Pwを合致させるように行わせる。
この多関節ロボット1の構成を図2に示す。多関節ロボット1は大きく分けて機械装置部2と制御部3とから構成されており、制御部3から与えられる制御指令値に基づいて、機械装置部2が動作するようになっている。
まずは、この機械装置部2の構成について図3を基に説明する。機械装置部2は、ベース4より順次関節J1,J2,J3を介して接続された第1アーム要素11、第2アーム要素12及び第3アーム要素13を備える水平多関節型に構成されており、各アーム要素11〜13が、XY平面に平行で且つZ方向にずれた平面内で回動可能となっている。
具体的には、第1アーム要素11はベース4上の所定位置に回転軸STを中心とする回転自由度を有する第1関節J1を介して回動可能となるように設けられている。また、この第1アーム要素11の先端には、回転軸SRを中心とする回転自由度を有する第2関節J2を介して、第2アーム要素12が回動可能に設けられている。さらに、この第2アーム要素12の先端には、回転軸SHを中心とする回転自由度を有する第3関節J3を介して第3アーム要素13が回動可能に設けられている。上記回転軸ST,SR,SHは、互いに平行となるように設定されており、こうすることで第1〜第3アーム要素11〜13は、互いに平行な平面内を回動するようになっている。また、それぞれZ方向にずれた位置に設けられているため、第1〜第3アーム要素11〜13および第1〜第3関節J1〜J3は相互に干渉することが無く、互いに回動を妨げることがないようになっている。
末端となる第3アーム13の先端にはU字型のハンド部Hが、先端側を開放する向きに設けられており、第3アーム13と一体化して動作するようになっている。このハンド部H上に、ワークとしてのウェハWを保持することが可能となっており、U字型の中心近傍に上述の基準位置Pwが設定されている。
機構上は、第1関節J1の中心となる回転軸STより第2関節J2の中心となる回転軸SRまでが第1リンク11Lを構成し、第2関節J2の中心となる回転軸SRより第3関節J3の中心となる回転軸SHまでが第2リンク12Lを構成することになる。同様に、第3関節J3の中心となる回転軸SHより上記基準位置Pwまでを第3リンク13Lとして考える。
第1〜第3関節J1〜J3には、それぞれ対応するサーボモータM1〜M3が組み込まれている。第1サーボモータM1は、固定部がベース4に取り付けられて回転部が第1アーム要素11に取り付けられているため、制御指令値を通じてベース4に対する第1アーム要素11の回転角度を規制することになる。第2サーボモータM2は、固定部が第1アーム要素11に取り付けられて回転部が第2アーム要素12に取り付けられているため、制御指令値を通じて第1アーム要素11に対する第2アーム要素12の回転角度を規制することになる。第3サーボモータM3は、固定部が第2アーム要素12に取り付けられて回転部が第3アーム要素13に取り付けられているため、制御指令値を通じて第2アーム要素12に対する第3アーム要素13の回転角度を規制することになる。
サーボモータM1〜M3には、図4に示すように、制御部3よりサンプリング周期ごとで適宜制御指令値が与えられて駆動がなされる。制御指令値は、角速度指令としてサーボドライバD1〜D3に与えられ、サーボドライバD1〜D3では適宜モータM1〜M3に適した形式で動力が与えられる。モータM1〜M3と関節J1〜J3の間には減速機を設けることも好適である。本実施形態では、制御指令値として角速度指令を使用したが、角速度指令に代えて角度指令を用いるように構成することも可能であり、サーボドライバによる設定の容易性等を考慮して適宜変更することが適切である。
図5は、上述した第1〜第3リンク11L〜13Lを模式的に示したものである。ここで、各リンク11L〜13Lの長さをそれぞれL,L,Lとする。本実施形態では、第1リンク11Lと第2リンク12Lとは同一の長さ(L=L)となるように設定しており、これらに対して第3リンク13Lの長さLを80%程度に設定し、ハンド部HにウェハW(図3参照)を保持させた場合のウェハWの先端までの長さが、第1リンク11L及び第2リンク12Lと同等になるようにしている。こうすることで、ウェハWを広い領域内で自由に動作させることが可能となっている。なお、L,LとLとの関係は必須ではなく、ロボットの剛性確保や配置等によっては、L,LよりもLを大きく(L>L,L>L)するような設定も可能である。
ベース部4(図3参照)に対する第1リンク11Lの相対角度θ、第1リンク11Lに対する第2リンク12Lの相対角度θ、第2リンク12Lに対する第3リンク13Lの相対角度θを決定することで、ハンド部Hにおける基準位置Pwの絶対的な位置を決定することができる。この基準位置PwのXY平面上における座標x,yは、後述する運動学変換によって相対角度θ,θ,θによって表すことが可能となる。同様に、ハンド部Hの姿勢としての第3リンク13Lの絶対角度φも、相対角度θ,θ,θによって決定することができる。
ここで、ハンド部Hの基準位置Pwを示すXY平面上での座標データ(x,y)及びハンド部Hの姿勢を示すXY平面上での角度データ(φ)は、ハンド部Hの絶対的な位置及び姿勢を示すものであり、これらをまとめて、直交座標系位置データ(x,y,φ)と称し、これを時系列に従って変化させたデータを直交座標系軌道データ(x,y,φ)と称す。
このハンド部Hの位置及び姿勢は、上述したように、図5に示す各リンク11L〜13Lの回転角θ〜θと長さL〜Lによっても表すことができるが、各リンク11L〜13Lの長さL〜Lは固定値となるために、結局のところ各リンク11L〜13Lの回転角θ〜θ、すなわち各関節J1〜J3におけるリンク11L〜13Lの相対回転角θ〜θのみを変数として表すことが可能である。そこで、これらの回転角θ〜θをまとめて、関節座標系位置データ(θ,θ,θ)と称し、これを時系列に従って変化させたデータを関節座標系軌道データ(θ,θ,θ)と称す。
次に、図2に戻って、制御部3の構成について説明を行う。
制御部3は、直交座標系基準指令設定部31と、直交座標系整形指令生成部32と、関節座標系変換指令生成部33と、振動特性記憶部34と、冗長領域設定記憶部35と、冗長領域判定部36と、関節座標系補間指令生成部37とを備えている。これら各部は、CPU、ROM、各種インターフェイス等を備えたパソコン等の情報処理装置において、予め記憶されている制御指令値生成ルーチンをCPUが実行することで制御指令値を生成し、この制御指令値を、サーボドライバD1〜D3を介してモータM1〜M3(図3,図4参照)に与えるまでの動作をソフトウェア及びハードウェアが協働して実現するものである。
直交座標系基準指令設定部31では、具体的な制御指令値を決定するための基準となる基準指令値として、ハンド部Hの位置を時系列で表した直交座標系軌道データ(x,y,φ)を基に、直交座標系速度データ(v,v,vφ)を設定する。直交座標系軌道データ(x,y,φ)は、外部より直接与えることも、内部に記憶しておくように構成することも可能である。また、他のデータを基にして演算によって求めるようにすることも可能であり、本実施形態においては、データの共有化を図るために、各関節の角速度目標値(Ω,Ω,Ω)を記憶しておき、これを基に直交座標系速度データ(v,v,vφ)を演算によって導出して設定するようにしている。
具体的には、まず、各関節の角速度目標値(Ω,Ω,Ω)を積分することによって各関節の角度目標値(θ,θ,θ)を導出する。そして、この角度目標値(θ,θ,θ)を基に、次のような順運動学変換式を用いて直交座標系軌道データ(x,y,φ)を導出する。
Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
さらに、こうして得られた直交座標系軌道データ(x,y,φ)より、サンプリング時間Δtによる変化量、すなわち直交座標系速度データ(v,v,vφ)を次のような式を用いて導出する。
Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
上記のようにして得られた直交座標系速度データ(v,v,vφ)は、直交座標系基準指令設定部31において、具体的な制御指令値を決定するための基準となる直交座標系基準指令値として設定される。
そして、直交座標系整形指令生成部32においては、上記のハンド部Hの直交座標系速度データ(v,v,vφ)に対して、振動特性記憶部34に記憶されている固有角周波数f及び減衰係数ξを読み出しつつ、これらに基づいてインプットシェーピング制御に係るフィルタ処理としてのデータ処理を行うことで入力整形を行い、直交座標系整形指令値(^vxn(t),^vyn(t),^vφn(t))を生成する。
ここで、各記号に付した添え字の位置は数式に記載しているものが正しく、「^」は、振動抑制のための入力成形後の指令であることを意味している。また、iは考慮する振動のモード数(i=1,2,…,n)を指し、予めオフラインで行っておく振動測定結果より、機械装置部2における固有角周波数f及び減衰係数ξの同定を行い、これらを振動特性として振動特性記憶部34に記憶させておく。また、入力整形とは、制御に用いる入力信号の波形を異なる波形に整形するための処理を指し、デジタル信号、アナログ信号による処理の双方を含む概念で用いられる。
直交座標系整形指令値(^vxn(t),^vyn(t),^vφn(t))の導出は、次の数7〜11記載の式を繰り返し計算することによって行い、n次モードまでの制振効果を付加する。ただし、ω=2πfである。
Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
上記のようにして、直交座標系整形指令生成部32では、直交座標系整形指令値として制振効果を付加した直交座標系速度データ(^vxn(t),^vyn(t),^vφn(t))を得る。
関節座標系変換指令生成部33では、上記直交座標系速度データ(^vxn(t),^vyn(t),^vφn(t))を関節座標系に変換し、関節座標系変換指令値として、制振効果を付加した関節座標系速度データ(^ω,^ω,^ω)を導出する。具体的には、まず、直交座標系速度データ(^vxn(t),^vyn(t),^vφn(t))を積分することによって、制振効果を付加した直交座標系軌道データ(^x,^y,^φ)を導出する。さらに、この制振効果を付加した直交座標系軌道データ(^x,^y,^φ)を基にして、次のような逆運動学変換式を用いて制振効果を付加した関節座標系軌道データ(^θ,^θ,^θ)を導出する。なお、この逆運動学変換式は、LとLが同じ長さであるときのものである。
Figure 2014076498
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Figure 2014076498
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Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
ここで、A,Bは、図5に示した回転軸SHのX,Y座標を各々示すものであり、Lは、回転軸STと回転軸SHとの相対距離を示すものである。
さらに、関節座標系変換指令生成部33では、この関節座標系軌道データ(^θ,^θ,^θ)を基にして、次のような式を用いることで、関節座標系変換指令値として、制振効果を付加した関節座標系速度データ(^ω,^ω,^ω)を導出する。
Figure 2014076498
Figure 2014076498
Figure 2014076498
ここで、数12〜20記載の式、その中でも特に数15記載の式より分かるように、回転軸SHの座標(A,B)が回転軸ST(0,0)の座標と同一になる場合には無限個数の解が得られ、両者が近づくことで関節座標系軌道データ(^θ,^θ,^θ)は大きく値が変化することになる。
これは実機においては、次のことを意味する。本実施形態のように、第1リンク11Lと第2リンク12Lの長さが同一である場合、第1関節J1と第3関節J3とが、より具体的には回転軸SHと回転軸STとが重なり合う状態において、回転軸SRの位置は無限に選択することができる。これは、回転軸SHと回転軸STとが近接した状態となる姿勢において、関節J2の位置が不安定になることを示しており、こうした姿勢のことを冗長姿勢と称し、こうした姿勢を採る各アーム要素11〜13の位置を冗長姿勢位置と称する。本実施形態においては、この冗長姿勢位置を含む、位置制御が不安定となる可能性のある制御領域を冗長領域と称する。
具体的な例としては、図1に示す位置より多関節ロボット1を動作させて、ウェハWの中心を示す基準位置PwがX軸の負の方向(図中の右方向)にずれたロードポートLP2のY方向手前の位置より、ロードポートLP3のY方向手前の位置までX方向に平行移動させた場合に、図7のような関節角度の変化が生じる。何らの補正(補間)を行っていない場合には、図中白丸のプロット点に示すデータから分かるように、冗長姿勢となるポイントの前後で、大きく関節角度が変化することになる。こうした急激な関節角度の変化は、搬送中の振動を助長するものとなり好ましくない。
そこで、本実施形態においては、上記冗長領域より僅かにおおきな領域を各冗長領域に対応する補間領域として、その区間内で関節角度が滑らかに変化するようにしている。
この補間領域の判断基準として、本実施形態においては冗長領域設定記憶部35において、図8に示すようなテーブルデータを備えている。以下、図1を参照しつつ図8の説明を行なう。
表中に記載した搬送開始点及び搬送終了点は、ロードポートLP1〜LP4に対応する位置を示すものであり、LP1と記載している箇所は、ロードポートLP1のY方向手前の位置、すなわち図1記載の状態よりウェハWをX軸の負の方向(図中の左方向)に搬送させた位置を示している。そして、LP2(EX)と記載した位置は、ロードポートLP2の内部(図中の黒丸の位置)にまでウェハWを収容させるよう、アーム要素11〜13(図2参照)を伸張させた状態とすることを示している。
すなわち、搬送開始点LP1、搬送終了点LP2とするものは、ロードポートLP1のY方向手前の位置より、ウェハWをX軸に平行な向き(図中の右方向)に移動させ、ロードポートLP2のY方向手前に位置させ、さらにアーム要素11〜13を伸張させることで、Y方向(図中上方向)にウェハWを搬送させて、ロードポートLP2内に収容することを意味している。この場合においては、冗長領域を通過することがないために、補間は不要である。
同様に、ロードポートLP2のY方向手前からロードポートLP1の内部までの搬送経路、ロードポートLP3のY方向手前からロードポートLP4の内部までの搬送経路、及び、ロードポートLP4のY方向手前からロードポートLP3の内部までの搬送経路においては、冗長領域を通過しないために補間は必要としない。これは、本実施形態における機械装置部2は、ロードポートLP2とLP3との間に設けられているために、この中心位置を跨ぐことで回転軸STと回転軸SH(図5参照)とは近接して冗長姿勢をとることになるが、中心位置を跨ぐことが無い限り回転軸STと回転軸SHとは一定以上に近接することが無く、冗長姿勢とならないためである。
そのため、この中心位置を跨ぐ搬送経路、例えば、ロードポートLP1のY方向手前からロードポートLP3の内部までの搬送経路においては、冗長領域を通過するために補間を必要とする。表中で記載した補間区間(LP1,2側)、及び、補間区間(LP3,4側)との部分は、当該搬送経路中で冗長領域として判断するための基準となる関節J1と関節J3の相対距離、すなわち回転軸STと回転軸SH間の相対距離であり、この範囲内にある限り冗長領域に対応する補間領域にあると判断する。
以上のような補間区間は装置特有の所定値として各搬送経路に対応させ個別に設定しているが、これを全ての搬送路で共通のものとすることも、さらに細かい数値データとして記憶させておくことも可能である。
なお、冗長領域としての判断基準として、回転軸の相対距離以外のものを使用することも可能である。例えば、本実施形態の多関節ロボット1ではLとLの長さが同じであるため、冗長領域の判断をθとθの相対角度を基に行うこともできる。この場合、所定の角度Δαを設定して、π−Δα<θ−θ<π+Δαを満たす範囲を冗長領域とすることができる。
図2に記載した冗長領域判定部36は、上記冗長領域設定記憶部35に記憶された補間区間データを読み出しつつ、指令値に対応する回転軸STと回転軸SHの位置が、冗長領域に対応するものであるか否かを判定する。この判定に当たっては、上述した直行座標系整形指令生成部32より得られる直交座標系整形指令値としての直交座標系速度データ(^vxn(t),^vyn(t),^vφn(t))を基に、これを積分して直交座標系軌道データ(^x,^y,^φ)を導出した上で、上述の数12〜14記載の式を用いて、回転軸STと回転軸SHとの間の距離Lを導出する。
この回転軸STと回転軸SHとの間の相対距離Lを導出する過程は、上記関節座標系変換指令生成部33における機能と同一であるため、演算の一部を共有するものとして両者を構成することも可能である。
冗長領域判定部36は、搬送経路の設定に応じて、導出した回転軸STと回転軸SHとの間の相対距離Lが、冗長領域設定記憶部35に記憶された補間区間データの範囲内にあるものか否かを判定し、当該データの範囲にある場合には冗長領域に対応した補間領域にあるものとする。
そして、補間領域にある場合には、上記関節座標系変換指令部33に指令を行い、対応するデータを使用禁止とさせる。こうすることで、補間領域内では、制御上の発散が生じて不安定となる恐れのある関節座標系速度データ(^ω,^ω,^ω)を使用しないことになる。
また一方で、冗長領域判定部36は、補間領域にある場合に、関節座標系補間指令生成部37に対して指令を与えて、上記使用禁止とした関節座標系速度データ(^ω,^ω,^ω)に代わる関節座標系補間指令値を作成させる。
関節座標系補間指令生成部37では、その指令を受けて、次のようにして関節座標系補間指令値を作成する。
まず、直交座標系整形指令生成部32より得られる直交座標系速度データ(^vxn(t),^vyn(t),^vφn(t))を基に、上記搬送経路の中で、補間領域に入る直前と補間領域より出た直後の各関節の角度位置データ(^θ,^θ,^θ)を得る。すなわち、関節ごとに、図7に示す補間領域直前の関節角度Dt1と、補間領域直後の関節角度Dt2とを求める。
そして、これら関節角度Dt1と関節角度Dt2とを直線Liで結び、この直線をサンプリング周期Δtによって、分割した点における関節角度を個々の位置における関節座標系補間指令値として設定する。すなわち、関節角度の変化曲線Lrのうち、急激な変化を示す冗長領域に対応する部分が直線Liによって滑らかに補間される。これは、関節角度Dt1より関節角度Dt2に至るまで、等角速度で補間したことになる。
これらの関節座標系補間指令値は、関節座標系変換指令生成部33によって生成した関節座標系速度データ(^ω,^ω,^ω)に代わるものとして使用される。この場合において、関節角度が滑らかに変化しているために、冗長領域でも制御上の発散を生じず、安定した制御が可能となる。また、関節座標系補間指令値を生成する基礎となる関節角度Dt1、Dt2とは、制振効果を付加した角度位置データ(^θ,^θ,^θ)であるために、関節座標系補間指令値においても制振効果が発揮され、他の領域と同様、振動の低減を図ることが可能となっている。
上記のように構成された制御部3では、上述のように各機能ブロックが働くことで、結果として図6に記載したような流れで制御指令値を生成し、サーボドライバD1〜D3に与えることができるようになっている。以下、図2を参照しつつ図6を用いて説明する。
まず、直交座標基準指令設定部31において、直交座標系の動作経路として直交座標基準指令値(x,y,φ)を生成または記憶部より読み込み(BL1)、さらに、その差分を計算することで直交座標系速度データ(v,v,vφ)を生成する(BL2)。
そして、直交座標系整形指令生成部32において、インプットシェーピング制御に係るフィルタ処理を行うことで、振動抑制指令として、制振効果を付加した直交座標系速度データ(^v,^v,^vφ)を生成する(BL3)。
さらに、関節座標系変換指令生成部33において、直交座標系速度データ(^v,^v,^vφ)を積算、すなわち積分することで、直交座標系軌道データ(^x,^y,^φ)を得て(BL4)、これを逆運動学変換することにより関節座標系軌道データ(^θ,^θ,^θ)を得る(BL5)。
さらに、冗長領域判定部36によって、搬送経路中に冗長姿勢となる領域が含まれると判定した場合には、当該領域の周辺を補間領域として、関節座標系軌道データ(^θ,^θ,^θ)の一部を関節座標系補間指令値に置き換えた関節座標系補間軌道データ(^θ’,^θ’,^θ’)を生成する。
関節座標系補間軌道データ(^θ’,^θ’,^θ’)からは、差分が計算され、関節座標系補間速度データ(^ω’,^ω’,^ω’)が生成され、これが制御指令値としてサーボドライバD1〜D3に与えられる。なお、サーボドライバD1〜D3のタイプによっては、直接関節座標系補間軌道データ(^θ’,^θ’,^θ’)を与えることでも制御を行うことが可能となる。
上記のように構成した多関節ロボット1を用いて動作を行わせた一例を図9及び図10に示す。図1及び図2を参照しつつ説明を行う。この動作例においては、ウェハWをロードポートLP2のY方向手前から、ロードポートLP4のY方向手前にまでX方向に移動させた後に、ロードポートLP4の内部にまで収容させた搬送経路としている。ロードポートLP4のY方向手前から内部に収容されるまでの間は、壁面に衝突させることが無いよう真っ直ぐにウェハWを搬送させるために、直線状に目標の軌道を設定している。
図9は、こうした目標の軌道に沿って動作させたインプットシェーピング制御適用前の軌道と、本発明手法の構成を適用した場合の軌道を示すものである。この図から分かるように、両者の軌道にほとんど変化は見られず、本発明手法の構成を適用したものであっても、回転軸ST,SH間が近接するX=0の近傍位置において制御は安定しており、極端な位置変動や振動は生じていない。すなわち、直交座標系から関節座標系へのデータ変換を逆運動学変換によって行い、指令を生成しているにかかわらず冗長領域による影響は見られない。
さらに、ロードポートLP4のY方向手前から、内部に収容するまでの軌道についても、ほぼ直線を維持しており、軌道のずれはほとんど見ることができない。
これに対して比較例として、関節座標系のままで、各関節に対応する角速度指令にインプットシェーピング制御に係るフィルタ処理を施した結果を、図11に示す。なお、この比較例においては、ロードポートLP1のY方向手前より、ロードポートLP2のY方向手前までX方向に移動させた後、ロードポートLP2の内部に直線状に収容させる搬送経路を採ったものである。この場合には、逆運動学変換を行わないために、当然制御上の発散は生じず安定して搬送を行うことができる。ただし、ロードポートLP2の内部に収容するための直線状の動作経路は、大きくX方向に膨らんでしまい、インプットシェーピング制御適用による軌道のずれが大きく生じていることが分かる。
他方、図9を用いて上述したように、本発明手法による構成を採用した場合には、正確に直線状の軌道を確保することが可能となる。これは、直交座標系によりインプットシェーピング制御に係るフィルタ処理を行った後に関節座標系に変換して制御指令値を生成した効果といえる。
また、こうした動作を行わせた場合に生じる残留振動を図10に示す。これから分かるように、インプットシェーピング制御適用前のものに比べて、残留振動が小さく、目標となる振動レベル以下にまで、素早く減衰することが分かる。このため、高速な動作と、高い位置精度とを好適に両立させることが可能となっている。
以上のように、本実施形態における多関節ロボット1は、複数の関節J1〜J3により順次接続されるアーム要素11〜13と、各関節J1〜J3に接続されるアーム要素11〜13の相対位置又は姿勢を変更するモータM1〜M3と、モータM1〜M3の制御を行うことで末端のアーム要素13に設けられたハンド部Hの位置及び姿勢の制御を行う制御部3と、を具備し、関節J1〜J3が互いに平行な軸回りの回転自由度を有する多関節ロボット1であって、制御部3が、ハンド部Hの位置又は姿勢を制御するための基準指令値をその少なくとも一部が直交座標系となる直交座標系基準指令値として得る直交座標系基準指令設定部31と、直交座標系基準指令設定部31により得られる直交座標系基準指令値に対して所定の入力整形を行って直交座標系成形指令値を生成する直交座標系成形指令生成部32と、直交座標系成形指令生成部32より得られる直交座標系成形指令値が、これを関節座標系に変換する場合に無限個数の解が得られる冗長姿勢位置を含む一定の冗長領域内に対応するものであるか否かを判定する冗長領域判定部36と、を備えており、冗長領域判定部36において直交座標系成形指令値が冗長領域外に対応するものと判定した場合には、直交座標系成形指令値を各関節J1〜J3に対応する関節座標系に変換した関節座標系変換指令値を生成して、関節座標系変換指令値を基に各モータM1〜M3の制御を行い、冗長領域判定部36において直交座標系成形指令値が冗長領域内に対応するものと判定した場合には、冗長領域外に対応する直交座標系成形指令値を基に関節座標系補間指令値を生成して、関節座標系補間指令値を基に各モータM1〜M3の制御を行うように構成したものである。
このように構成しているため、直交座標系にて得た指令値を基にして所定の入力整形を行った後に関節座標系に変換することで、入力整形による効果と軌道の正確性とを両立させることが可能となる上に、冗長領域内の指令値は冗長領域外の指令値を基にして生成することで、各アーム要素11〜13の制御の発散を防止してよりハンド部Hの位置安定性を高めることが可能となる。
また、冗長領域判定部36が、直交座標系成形指令生成部32より得られる直交座標系成形指令値を基にして関節J1,J3の相対距離Lを算出し、この相対距離Lが予め定めた所定値未満である場合に、直交座標系成形指令値が冗長領域内に対応するものとして判定するように構成されているため、関節J1〜J3間の相対距離Lを基準として、冗長領域にあるか否かを判定することが可能となり、簡単な演算処理でアーム要素11〜13の制御を実現することができる。
また、冗長領域に入る直前に対応する直交座標系整形指令値と、冗長領域より出た直後に対応する直交座標系成形指令値とを基にして、冗長領域内で各モータM1〜M3が等速運動を行うように関節座標系補間指令値を生成するよう構成しているため、関節座標系補間指令値を簡単な演算処理で決定して制御に用いることが可能となるため、制御遅れを生じること無く、適切にハンド部Hの位置制御を行うことが可能となる。
また、関節J1,J3同士が重なり合う位置を中心としてアーム要素11〜13が所定の範囲内にある姿勢を冗長姿勢としているため、より簡便に冗長領域の判定が可能となっている。
また、直交座標系成形指令生成部32にて行う所定の入力整形が、ハンド部Hの振動を抑制するためのインプットシェーピング制御としてのフィルタ処理であるように構成しているため、振動抑制とハンド部Hの軌道ずれの抑制とを両立させたより位置精度の高い動作が可能となるとともに、残留振動を低減して高速化を図ることも可能となる。
また、本実施形態の半導体ウェハ装置TDは、上記のように水平多関節型ロボットとして構成した多関節ロボット1を備え、前記ハンド部H上に半導体ウェハWを載置させつつ、半導体ウェハWの搬送を行うようにしているため、上述した効果を生かして、精密な動作を要する半導体ウェハ搬送装置TDとして効果的に実現することができ、半導体ウェハWの高精度な加工に利用することが可能となる。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態における多関節ロボット1は、全ての関節J1〜J3が回転自由度を有する3リンク方式のものとなっていたが、本願発明の効果は、回転自由度を3個有するもののみに限られず、回転自由度が2個のみのものにおいても同様に得られる。例えば、本願実施形態の構成より第3の関節J3が無くし、各リンクの長さを同一とした構成を考えた場合、関節J1(回転軸ST)とウェハWの基準位置Pwとが重なる位置は、上記と同様に冗長姿勢になるといえる。この場合にも上記と同様の本願発明手法を適用することができる。すなわち、本願発明は、互いに平行な軸回りの回転自由度を有する複数のアーム要素を備えており、これらの関節が重なり合う位置を採りうるものであれば適用でき、アーム要素や関節の個数が多いものであっても上述の効果を得ることが可能といえる。
また、関節を駆動するためのアクチュエータは、モータM1〜M3に限らず回転駆動するものであれば同様の効果が得られる。
また、上述の実施形態においては、多関節ロボット1の先端に設けたハンド部Hを略U字形に形成し、その上面にワークとしてのウェハ(半導体ウェハ)Wを載置することでこれを保持するようにしていたが、ハンド部Hはこれに限らず様々な形状及び構成に変更することが可能である。
また、直交座標系基準指令値に対して所定の入力整形を行った後に、関節座標系に変換して関節座標系指令値を生成することによって、ハンド部Hの軌道のずれを抑制する効果は、インプットシェーピング制御に係るフィルタ処理のみでなく、ローパスフィルタやノッチフィルタなど他のフィルタ処理を用いる場合でも同様に得ることが可能であり、目標と合致した軌道で動作させることができる。また、こうした振動抑制を目的としたフィルタ処理以外にも、他の目的を有する様々な入力整形を用いることが可能である。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
1…多関節ロボット
2…機械装置部
3…制御部
11…第1アーム要素
12…第2アーム要素
13…第3アーム要素
31…直交座標系基準指令設定部
32…直交座標系整形指令生成部
33…関節座標系変換指令生成部
36…冗長領域判定部
H…ハンド部
J1…第1関節
J2…第2関節
J3…第3関節
M1〜M3…モータ(アクチュエータ)
TD…半導体ウェハ搬送装置
W…半導体ウェハ(ワーク)

Claims (6)

  1. 直動又は回動可能な複数の関節により順次接続されるアーム要素と、
    各関節に接続されるアーム要素の相対位置又は姿勢を変更するアクチュエータと、
    当該アクチュエータの制御を行うことで末端のアーム要素に設けられたハンド部の位置及び姿勢の制御を行う制御部と、を具備し、
    前記関節のうち少なくとも2つが互いに平行な軸回りの回転自由度を有する多関節ロボットであって、
    前記制御部が、
    前記ハンド部の位置又は姿勢を制御するための基準指令値をその少なくとも一部が直交座標系となる直交座標系基準指令値として得る直交座標系基準指令設定部と、
    当該直交座標系基準指令設定部により得られる前記直交座標系基準指令値に対して所定の入力整形を行って直交座標系成形指令値を生成する直交座標系成形指令生成部と、
    前記直交座標系成形指令生成部より得られる前記直交座標系成形指令値が、これを関節座標系に変換する場合に無限個数の解が得られる冗長姿勢位置を含む一定の冗長領域内に対応するものであるか否かを判定する冗長領域判定部と、を備えており、
    前記冗長領域判定部において前記直交座標系成形指令値が前記冗長領域外に対応するものと判定した場合には、前記直交座標系成形指令値を各関節に対応する関節座標系に変換した関節座標系変換指令値を生成して、当該関節座標系変換指令値を基に各アクチュエータの制御を行い、
    前記冗長領域判定部において前記直交座標系成形指令値が前記冗長領域内に対応するものと判定した場合には、冗長領域外に対応する直交座標系成形指令値を基に関節座標系補間指令値を生成して、当該関節座標系補間指令値を基に各アクチュエータの制御を行うように構成されていることを特徴とする多関節ロボット。
  2. 前記冗長領域判定部が、
    前記直交座標系成形指令生成部より得られる前記直交座標系成形指令値を基にして関節の相対距離を算出し、当該相対距離が予め定めた所定値未満である場合に、当該直交座標系成形指令値が前記冗長領域内に対応するものとして判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の多関節ロボット。
  3. 前記冗長領域に入る直前に対応する直交座標系整形指令値と、前記冗長領域より出た直後に対応する直交座標系成形指令値とを基にして、前記冗長領域内で各アクチュエータが等速運動を行うように前記関節座標系補間指令値を生成するよう構成されていることを特徴とする請求項2記載の多関節ロボット。
  4. 関節同士が重なり合う位置、又は、関節とハンド部の基準位置とが重なり合う位置を中心としてアーム要素が所定の範囲内にある姿勢を前記冗長姿勢としていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多関節ロボット。
  5. 前記直交座標系成形指令生成部にて行う所定の入力整形が、前記ハンド部の振動を抑制するためのインプットシェーピング制御としてのフィルタ処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多関節ロボット。
  6. 請求項1〜5記載の多関節ロボットを備えるとともに、当該多関節ロボットを水平多関節型ロボットとして構成し、前記ハンド部上に半導体ウェハを載置させつつ、当該半導体ウェハの搬送を行うようにしたことを特徴とする半導体ウェハ搬送装置。
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